(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】物品保持装置
(51)【国際特許分類】
B60N 3/10 20060101AFI20230629BHJP
B60R 7/04 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
B60N3/10 A
B60R7/04 Z
(21)【出願番号】P 2020112339
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2022-08-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000135209
【氏名又は名称】株式会社ニフコ
(74)【代理人】
【識別番号】100088708
【氏名又は名称】山本 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】神前 孝行
【審査官】杉▲崎▼ 覚
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-022645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60N 3/10
B60R 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容穴を有した本体と、前記本体に回動可能に支持されて前記収容穴より退いた退避態様から前記収容穴に入れた物品に当接する使用態様に切り換わる回転部材と、前記本体に摺動可能に配されて前記回転部材を前記退避態様に保つ係合位置から前記使用態様時の係合解除位置に切り換えるボタンとを備えた物品保持装置であって、
前記回転部材と前記ボタンの間に配された単一の捻りコイルばねを有し、前記捻りコイルばねの捻り応力により前記回転部材を前記退避態様から前記使用態様の方向へ回動させ、前記捻りコイルばねの圧縮応力により前記ボタンを前記係合解除位置から前記係合位置の方向へ摺動させ
、
また、前記ボタンに突設されたロック爪と、前記回転部材に突設されて前記ロック爪に係脱される係合爪とを有し、前記係合爪が前記ロック爪に係合した状態で前記回転部材を退避態様に保つことを特徴とする物品保持装置。
【請求項2】
前記捻りコイルばねは、コイル部の一端側が前記回転部材に設けられた第一支持部に支持され、コイル部の他端側が前記ボタンに設けられた第二支持部に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の物品保持装置。
【請求項3】
前記ロック爪は、前記ボタンの前記捻りコイルばねの圧縮応力に抗した摺動により前記係合爪と係合解除されることを特徴とする請求項
1に記載の物品保持装置。
【請求項4】
前記ロック爪は、前記第一支持部と前記第二支持部の間の空間と並設した箇所に配されていることを特徴とする請求項
1又は3に記載の物品保持装置。
【請求項5】
前記回転部材は、前記収容穴に入れられる前記物品を側面方向から保持するフラップであることを特徴とする請求項1から
4の何れかに記載の物品保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の乗り物の室内に装備されて、例えば容器類や携帯電話類の物品を安定保持するに好適な物品保持装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7は特許文献1に開示の物品保持装置(ホルダ)で、(a)は回転部材であるフラップの使用態様で示し、(b)はフラップの退避態様で示している。この装置構造では、収容穴12を有した本体(ホルダ)10と、本体10に軸18を介し回動可能に支持されて(b)のごとく収容穴12より収容部周面に設けられた切欠20内に退いた退避態様から、(a)のごとく収容穴12に入れた物品に当接する使用態様に切り換わるフラップ(直径補償エレメント)14と、本体10に摺動可能に配されてフラップ14を退避態様に保つ係合位置から使用態様時の係合解除位置に切り換えるボタン30とを備えている。
【0003】
また、機能部材としては、捻りばね22と、ロック手段であるラチェット24,26と、圧縮コイルばね32とを有している。このうち、捻りばね22は、一端が切欠20側に係止され、他端がフラップ14を押圧して収容穴内に突出した水平方向へ付勢している。ラチェット24,26は、フラップ14を捻りばね22の付勢力に抗して退避態様に保つ部材であり、一方ラチェット26がフラップの軸18と相対回動不能に支承され、他方ラチェット24がホルダ10に対し相対回動不能で軸方向に摺動可能に支承されている。圧縮コイルばね32は、ラチェット24,26同士の噛み合いを保持する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上の構造は、フラップを退避態様に保って収容穴を物入れとして活用できるため商品価値を向上できる。しかし、構造的には、捻りばねと、ラチェットと、圧縮コイルばねを必須としているため、部品点数が多く、組立工数及び製造費が高くなる。また、ラチェット等のロック手段が複雑であり、配置スペースも相対的に大きく必要となり、コンパクト化し難かった。これらは文献1に開示された他の変形例でも同様である。
【0006】
本発明は上記した様な課題を解消したものである。その目的は、簡易性を維持しながら、部品点数を削減し、加えて製造費を低減可能にした物品保持装置を実現することにある。他の目的は以下の説明のなかで明らかにする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため本発明は、形態の例で特定すると、収容穴を有した本体と、前記本体に回動可能に支持されて前記収容穴より退いた退避態様から前記収容穴に突出する使用態様に切り換わる回転部材と、前記本体に摺動可能に配されて前記回転部材を前記退避態様に保つ係合位置から前記使用態様時の係合解除位置に切り換えるボタンとを備えた物品保持装置であって、前記回転部材と前記ボタンの間に配された単一の捻りコイルばねを有し、前記捻りコイルばねの捻り応力により前記回転部材を前記退避態様から前記使用態様の方向へ回動させ、前記捻りコイルばねの圧縮応力により前記ボタンを前記係合解除位置から前記係合位置の方向へ摺動させ、また、前記ボタンに突設されたロック爪と、前記回転部材に突設されて前記ロック爪に係脱される係合爪とを有し、前記係合爪が前記ロック爪に係合した状態で前記回転部材を退避態様に保つことを特徴としている。
【0008】
以上の発明において、捻りコイルばねは、コイルばねのうち、コイルの中心軸周りに捻り応力(モーメント)を受ける構成のばねである。また、捻りコイルばねでは、コイル間に隙間を持たせることで圧縮方向の応力を受け、弾性エネルギーを蓄えることができる。本発明では、捻りコイルばねの捻り応力を回転部材が退避態様から使用態様の方向へ回動する弾性力とし、同時に、コイル部の圧縮応力をボタンが係合解除位置から係合位置の方向へ摺動する弾性力として利用するようにしたものである。
【0009】
以上の本発明は請求項2から5の如く具体化されることがより好ましい。すなわち、
(ア)、前記捻りコイルばねは、コイル部の一端側が前記回転部材に設けられた第一支持部に支持され、コイル部の他端側が前記ボタンに設けられた第二支持部に支持されている構成である(請求項2)。
【0010】
(イ)、前記ロック爪は、前記ボタンの前記捻りコイルばねの圧縮応力に抗した摺動により前記係合爪と係合解除される構成である(請求項3)。
(ウ)、前記ロック爪は、前記第一支持部と前記第二支持部の間の空間と並設した箇所に配されている構成である(請求項4)。
(エ)、前記回転部材は、前記収容穴に入れられる前記物品を側面方向から保持するフラップである(請求項5)。なお、物品としては、主に容器類又は携帯電話類を想定しているが、これら以外でも差し支えない。また、容器類には矩形又は円形の容器やコップ等を含む。携帯電話類には多機能化したスマートフォン等も含む。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の本発明では、物品保持装置がボタン操作により退避態様と使用態様に切り換えられる回転部材を有した構成において、単一の捻りコイルばねを使用し、回転部材がその捻り応力により退避態様から使用態様の方向へ回動するようにし、かつ、ボタンがそのコイル部の圧縮応力により係合解除位置から係合位置の方向へ摺動するようにしたものである。この利点は、特許文献1に比べ、部品数を最小化し、それにより製造費の低減、重量軽減、更に配置スペース等をコンパクト化できる。
【0012】
また、本発明では、ボタン側のロック爪と、回転部材側の係合爪との係合により回転部材を退避態様に保つため、特許文献1のごとく複雑なラチェット装置を使用することなく使い勝手を向上できる。
【0013】
請求項2の本発明では、捻りコイルばねが回転部材側の第一支持部とボタン側の第二支持部に支持されているため、形態例のごとく回転部材の幅方向の略中間に捻りコイルばねを配置可能となってフラップの回動特性を安定、良好に維持し易くなる。
【0014】
請求項3の本発明では、ロック爪が捻りコイルばねの圧縮応力に抗したボタンの摺動操作により係合爪と係合解除されるため、ボタンが係合解除した後に元の係合位置に戻るのに伴ってクリック感が得られ、それにより操作性も良好となる。
【0015】
請求項4の本発明では、ボタン側のロック爪が第一支持部と第二支持部の間の空間と並設した箇所に配されているため、ロック爪をコンパクト化を維持しながら配置可能となる。
【0016】
請求項5の本発明では、従来のカップホルダや物品保持装置に付設されるフラップに本発明の構成を採用することにより、部材数を減らし、加工及び組立作業の改善も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明を適用した物品保持装置の構成部材を示す概略分解斜視図である。
【
図2】(a)と(b)は上記物品保持装置をフラップ(回転部材)の使用態様と退避態様で示した斜視図である。
【
図3】(a)と(b)は
図2と同様に上記フラップ(回転部材)の使用態様と退避態様で示した上面図である。
【
図4】(a)は
図3の物品保持装置の正面図、(b)は同物品保持装置の左側面図、(c)は同物品保持装置の右側面図である。
【
図5】(a)は
図3(a)のA-A線拡大断面図、(b)は
図3(b)のB-B線拡大断面図である。
【
図7】(a),(b)は特許文献1の
図1の(a)と(c)を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に、本発明の好適な形態例を図面を参照しながら詳述する。この説明では、装置構造を述べた後、主な作動を利点と共に言及する。
【0019】
(装置構造)物品保持装置6は、
図1~
図6に示されるごとく構成部材として、収容穴12を有した本体1と、本体1に対し枢軸33及び軸孔17の嵌合を介して回動可能に支持されて、収容穴12より退いた退避態様から収容穴12に入れた容器類8や携帯電話類9に当接する使用態様に切り換える回転部材であるフラップ3と、本体1に摺動可能に配されてフラップ3を退避態様に保つ係合位置から使用態様時の係合解除位置に切り換えるボタン4とを備え、また、機能部材として、フラップ3とボタン4の間に配された単一の捻りコイルばね5を有している。
【0020】
なお、本体1とフラップ3は共に樹脂成形品からなる。収容穴12は、複数構成であってもよく、又、蓋体によって開閉されるタイプでも差し支えない。また、物品保持装置6を組み込む配置部7は、インストルメントパネル等に設けられる凹所7aに組み込む態様を想定しているが、アームレストの一部や各種コンソールに一体的に配設する態様でもよい。
【0021】
ここで、本体1は上開口した略矩形の容器10からなる。この容器10は、上側の前後部分が一段張り出した上枠部11を有し、上枠部11内にあって上面と段差を持って設けられた前後壁15a,15bと、前壁15aの下側に位置して対向した内側面13,13同士の間を開口した窓14と、窓14の内側に配置される閉部材2とを有している。
そして、本体の収容穴12は、左右側面、後壁15bの内端面を含む後側面、前壁15aの内端面及び閉部材2とにより区画されている。上枠部11の外面には、後側面に突出された係合爪11aと、左右側面にそれぞれ複数づつ突出された係合爪11bとが設けられ、また、後述する閉部材2には上枠部側の係合爪11aと対応する係合爪11aが設けられている。
【0022】
前壁15aには、
図6のごとく下中央側に位置して左右に延びた前後2列のガイド溝16,16(同図には1列のみ示されている)と、各ガイド溝16よりも左右側に位置してフラップ3を回動可能に軸支する軸孔17と、中央部に位置して上下貫通した矩形孔18と、
図5のごとく左右に位置して厚さ内を空洞にした対の係止穴19とが設けられている。符号Sは後述するフラップ3が
図3及び
図5の各(b)のごとく退避態様から、同各(a)の使用態様に切り換える際にボタン4の摺動操作方向を分かるようにする刻印である。
【0023】
閉部材2は、略L形の板壁20及び板壁20に一体化している半円状の張出部24を有し、フラップ3が退避態様において板壁20の縦壁と張出部24との間に区画された空間に収まる。板壁20の縦壁には、上両側に突出された支柱21,21と、各支柱21の先端から折り返された弾性係合部22と、上縁の左右中間部を段差にした切欠部27と、切欠部27から下向きに延びた対の縦溝28と、縦溝28同士の間に区画された揺動可能な板部23と、
図4(b)のごとく板部23の外面に突出された係合爪11aとが設けられている。
【0024】
このうち、張出部24は、後述するフラップの円弧部31と対応した形状であると共に、内側が空洞である。各支柱21は、対応係止穴19に挿入され、弾性係合部22が係止穴19と交差するよう設けられて不図示の穴に係止されることで、閉部材2を本体1に取付可能にする。符号26は板壁20の水平部に設けられた一対の脚部である。この脚部26は省略しても差し支えない。
【0025】
一方、フラップ3及びボタン4は、
図1と
図5及び
図6に示されるごとく本体の前壁15aに組み付けられる。このうち、フラップ3は、回転板30が物品に当接する側を円弧部31に形成している。円弧部31と反対側の端面には、左右に突出された対の突片32,32と、突片32同士の間に突出された第一支持部34と、第一支持部34と少しずれた位置に突出された係合爪36とが設けられている。各突片32には枢軸33が同軸線上に突出されている。第1保持部34には、捻りコイルばね5を構成しているコイル部5cの一端側を支持する軸部35が設けられている。係合爪36は、
図5(b)から推察されるごとくフラップ3の退避態様において上下方向に配置される。
【0026】
以上のフラップ3は、本体の前壁15aに対し各突片の枢軸33が前壁の対応する軸孔17に嵌合されることで、
図3(a)のごとく収容穴12に水平に突出した態様から、同(b)のごとく板壁20の縦壁と張出部24との間に区画された空間に収まる退避態様に略90度だけ回動して切り換えられる。
【0027】
また、ボタン4は、前壁15aの内面に沿って左右に摺動される矩形のベース40と、ベース40の上面中央に突出された操作部41と、ベース40の下面にあって前後左右、つまり矩形の四隅に突出された抜止め用突起42と、ベース40の下面に突出されてフラップ側の第一支持部34及び軸部35と対向配置される第二支持部43及び軸部44と、係合爪36と係脱されるロック爪45とが設けられている。そして、以上のボタン4は、本体1に対し操作部41が矩形孔18の内側から外へ突出され、かつ、ベースの各突起42が本体の対応するガイド溝16に嵌合された状態で左右に所定距離だけ摺動可能に組み付けられる。
【0028】
その後、捻りコイルばね5が組み込まれる。捻りコイルばね5は、コイル部5cの両側に延長された一端5a及び他端5bが異方向へ突出されており、その一端5aがフラップ3の対応部に係止され、他方の他端5bがボタンの対応部に係止される。また、捻りコイルばね5は、コイル部5cが隙間を持って巻かれており、コイル軸方向に圧縮応力を発現可能となっている。このため、この例では、
図6のごとくコイル部5cの一方端側をフラップ側である第一支持部の軸部35に支持し、コイル部5cの他方端側をボタン側である第二支持部の軸部44に支持するときにコイル部5cが圧縮され、それによりボタン4がその圧縮応力により同図のごとく右側、つまりロック爪45が係合爪36と係合可能となる位置へ摺動される。また、その状態から、ボタン4はコイル部5cの圧縮応力に抗して同図の左側へ摺動操作されると、ロック爪45が係合爪36から係合解除可能となる。
【0029】
以上のようにして作られた物品保持装置6は、
図1から推察されるごとく配置部7であるインストルメントパネル等に設けられる凹所7aに組み込まれる。この凹所7aは上側内周7bが若干張り出している。このため、物品保持装置6は、凹所7aに対し
図1の矢印方向へ押し入れると、上枠部11の係合爪11a、11bが上側内周7bを弾性変位しながら通り抜け、係合爪11a,11bと上枠部11の上張出縁部の間に上側内周7bを上下から挟み込んだ状態で装着される。この場合、物品保持装置6は、特に閉部材2の係合爪11aが縦溝28同士の間の板部23の揺動を伴って上側内周7bの対応部にクリック感を伴って係合される。
【0030】
(作動)次に、以上の物品保持装置6を使用する場合の作動を明らかにする。
(1)
図3及び
図5の各(a)はフラップ3が収容穴12内に突出された使用態様である。この使用態様では、フラップ側の係合爪36がボタン側のロック爪45と係合解除され、それによりフラップ3が捻りコイルばね5の捻り応力により軸孔17と嵌合している枢軸33を支点として回転されて収容穴12内へ突出されて、収容穴12の内底面と略平行となっている。この使用態様において、使用者は容器類8や携帯電話類9などの物品を
図3(a)のごとく収容穴12内に挿入して保持させることができる。この場合、物品の大きさや挿入状態によっては、フラップ3が捻りコイルばね5の捻り応力に抗して下斜めに傾斜され、それにより、物品が収容穴12内でフラップ3の先端と当接し、かつ後壁15bの端面を含む内側面との間に安定保持可能となる。
【0031】
(2)
図3及び
図5の各(b)は、フラップ3が使用態様から、捻りコイルばね5の捻り応力に抗して回動操作されて収容穴12の外、つまり板壁20の縦壁と張出部24との間に区画された空間に収まった退避態様である。この退避態様では、フラップ側の係合爪36がボタン側のロック爪45と係合され、それによりフラップ3が捻りコイルばね5の捻り応力に抗して退避態様に保たれる。この退避態様において、使用者は収容穴12を容器類8や携帯電話類9を含めた物入れ空間として利用できる。勿論、収容穴12はフラップ3がなく外観見栄えがよい。また、使用者は、操作部41を捻りコイルばね5の圧縮応力に抗して矢印方向へ摺動操作すると、ロック爪45が係合爪36から係合解除し、それに伴ってフラップ3が捻りコイルばね5の捻り応力により回動されて再び使用態様に切り換えられる。
【0032】
(3)ところで、特許文献1の構造では、フラップ14を収容穴から退避する箇所として収容部周面に切欠20を設けているため、フラップ14の使用態様で収容穴に保持している容器類から液体がこぼれると、切欠20から装置外部へ流れ出す虞があり信頼性に欠けていた。これに対し、以上の物品保持装置6では、フラップ3が退避態様で閉部材2の内側にあって板壁20の縦壁と張出部24との間に区画された空間に収まる。これにより、収容穴12はフラップ3が使用態様でも常に上開口した閉空間となっているため、例えば振動が加わって保持している容器類8から液体がこぼれた場合、収容穴から装置外部へ流れ出るというような虞がない。
【0033】
(4)また、この物品保持装置6では、ボタン4の操作により退避態様と使用態様に切り換えられるフラップ(回転部材)3を有した構成において、単一の捻りコイルばね5を使用し、フラップ3がその捻り応力により退避態様から使用態様の方向へ回動するようにし、かつ、ボタン4がそのコイル部5cの圧縮応力により係合解除位置から係合位置の方向へ摺動するようにしたため、特許文献1に比べ、部品数を最小化し、それにより製造費の低減、重量軽減、更に配置スペース等をコンパクト化できる。特に、この装置構造では、捻りコイルばね5がフラップ側の第一支持部34とボタン側の第二支持部43に支持されているため、
図5や
図6のごとくフラップ3の幅方向の略中間に捻りコイルばね5を配置可能となりフラップ3の回動特性を安定、良好に維持し易くなる。
【0034】
(5)しかも、この物品保持装置6では、ボタン側ロック爪45と、フラップ側係合爪36との係合によりフラップ3を退避態様に保つため、特許文献1のごとく複雑なラチェット装置に比べて簡易化を維持しながら使い勝手を向上できる。また、ボタン側のロック爪45が捻りコイルばね5の圧縮応力に抗したボタン4の摺動操作により係合爪36と係合解除されるため、ボタン4が係合解除した後に前記圧縮応力により元の係合位置に戻るのに伴ってクリック感が得られ、それにより操作性も良好となる。更に、ロック爪45が第一支持部34と第二支持部43の間の空間と並設、つまり略平行となる箇所に配されているため、ロック爪45をコンパクト化を維持しながら配置可能となる。
【0035】
なお、以上の形態は本発明の基本例であり、細部構成については種々変形したり展開可能なものである。変形例を挙げれば、例えば、収容穴は特許文献1の
図3に示されるごとく複数の縦穴からなる構成でもよい。穴形状は、缶やカップ等の容器類を入れたり、携帯電話類を入れて保持するに好適な形状に設計される。フラップ(回転部材)は、物品として例えば容器類、携帯電話類、それらに類似のものに当接し易い形状に設計される。展開例を挙げれば、例えば、フラップ(回転部材ん)は収容穴を深く形成して上下に分ける仕切り構成とすることである。
【符号の説明】
【0036】
1・・・・本体
2・・・・本体の前側を構成している閉部材
3・・・・フラップ(回転部材)
4・・・・ボタン
5・・・・捻りコイルばね
5a・・・コイル部から突出された一端
5b・・・コイル部から突出された他端
5c・・・コイル部
6・・・・物品保持装置
7・・・・物品保持装置を組み込む配置部
8・・・・容器類(物品)
9・・・・携帯電話類(物品)
12・・・収容穴
17・・・軸孔
18・・・矩形孔
19・・・係止穴
20・・・板壁
24・・・張出部
30・・・回転板
31・・・円弧部
32・・・突片
33・・・枢軸
34・・・第一支持部
35・・・軸部
36・・・係合爪
40・・・ベース
41・・・操作部
43・・・第二支持部
44・・・軸部
45・・・ロック爪