(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】仮想可視領域をトラッキングするための表示装置および方法
(51)【国際特許分類】
G02B 30/00 20200101AFI20230629BHJP
G02F 1/13 20060101ALI20230629BHJP
G06F 3/038 20130101ALI20230629BHJP
G06F 3/0346 20130101ALI20230629BHJP
G03H 1/22 20060101ALI20230629BHJP
G03H 1/08 20060101ALI20230629BHJP
G02B 5/32 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
G02B30/00
G02F1/13 505
G06F3/038 310A
G06F3/0346 421
G03H1/22
G03H1/08
G02B5/32
(21)【出願番号】P 2020534603
(86)(22)【出願日】2018-12-21
(86)【国際出願番号】 EP2018086493
(87)【国際公開番号】W WO2019122295
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-11-26
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】507230267
【氏名又は名称】シーリアル テクノロジーズ ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】SEEREAL TECHNOLOGIES S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【氏名又は名称】下山 治
(72)【発明者】
【氏名】ライスター, ノーバート
(72)【発明者】
【氏名】クロール, ボー
【審査官】近藤 幸浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-541159(JP,A)
【文献】特表2012-530950(JP,A)
【文献】特開2016-189008(JP,A)
【文献】特開2001-330711(JP,A)
【文献】特開2013-137454(JP,A)
【文献】特表2007-500371(JP,A)
【文献】特表2013-536451(JP,A)
【文献】特開2000-221309(JP,A)
【文献】特表2010-525384(JP,A)
【文献】特表2008-541145(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0011565(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第04309667(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 30/00
G02B 27/01
G02F 1/13
G03H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2次元および/または3次元のシーンを表現するための表示装置であって、
十分にコヒーレントな光を放射するための少なくとも1つの照射装置と、
ホログラムが単一視差符号化によって符号化される少なくとも1つの空間光変調装置と、
オブザーバの目の位置に少なくとも1つの仮想可視領域を生成するために提供される少なくとも1つの光学システムと、
前記空間光変調装置上のホログラムの符号化方向が変更可能であ
り、前記オブザーバの前記目の変化した位置への少なくとも1つの仮想可視領域をトラッキングするトラッキング装置と、
を含む表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表示装置であって、前記少なくとも1つの仮想可視領域は仮想オブザーバウィンドウとスイートスポットとから形成され、前記仮想オブザーバウィンドウは前記ホログラムの前記符号化方向に設けられ、前記スイートスポットは前記ホログラムの非符号化方向に設けられる表示装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の表示装置であって、前記ホログラムの前記符号化方向は、少なくとも2つの方向の間で変更可能である表示装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の表示装置であって、前記シーンのオブザーバの目、特に目の瞳孔の位置を判定することができる少なくとも1つの位置検出システムが設けられる表示装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の表示装置であって、前記トラッキング装置は、前記少なくとも1つの照射装置と、前記シーンのオブザーバが位置するオブザーバ面との間に配置される少なくとも1つの制御可能な光学素子を備える表示装置。
【請求項6】
請求項5に記載の表示装置であって、前記少なくとも1つの制御可能な光学素子は偏光スイッチとして設計され、前記トラッキング装置は少なくとも1つの受動偏向格子素子
、および1つの方向のみに入射光を散乱する少なくとも2つの受動散乱素子を備え、前記受動偏向格子素子および前記少なくとも2つの受動散乱素子は前記偏光スイッチと組み合わせて動作する表示装置。
【請求項7】
請求項6に記載の表示装置であって、前記少なくとも2つの受動散乱素子が体積格子として設計され、前記少なくとも2つの受動散乱素子が異なる角度選択性を有する表示装置。
【請求項8】
請求項5に記載の表示装置であって、前記少なくとも1つの制御可能な光学素子が偏光スイッチとして設計され、前記トラッキング装置が少なくとも1つのリダイレクト素子
、およびそれぞれの場合に入射光を一方向のみに散乱させる少なくとも2つの受動散乱素子とを含み、少なくとも2つの異なる光路のうちの1つが、前記制御可能な光学素子および前記リダイレクト素子によって選択可能であり、散乱素子が
、前記異なる光路のそれぞれに設けられる表示装置。
【請求項9】
請求項1から5のいずれか1項に記載の表示装置であって、前記トラッキング装置は、回転するように設計された受動散乱素子を備える表示装置。
【請求項10】
請求項1から4のいずれか1項に記載の表示装置であって、前記トラッキング装置が少なくとも2つの制御可能な光学素子を含む表示装置。
【請求項11】
請求項10に記載の表示装置であって
、前記少なくとも2つの制御可能な光学素子は散乱素子として設計され
、前記少なくとも2つの制御可能な光学素子
は異なる方向に入射光を散乱させる表示装置。
【請求項12】
請求項5に記載の表示装置であって、前記少なくとも1つの制御可能な光学素子は散乱素子として設計され、前記少なくとも1つの制御可能な光学素子は一方向のみに入射光を散乱させる表示装置。
【請求項13】
請求項10または11に記載の表示装置であって、第1の制御可能な光学素子が入射光を所定の第1の方向に散乱させ、第2の制御可能な光学素子が光を所定の第2の方向に散乱させ、前記第1の方向と前記第2の方向とが異なる表示装置。
【請求項14】
請求項13に記載の表示装置であって、前記ホログラムの前記符号化方向は、前記第1の制御可能な光学素子および前記第2の制御可能な光学素子の対応する制御によって規定可能である表示装置。
【請求項15】
請求項5に記載された表示装置であって、前記少なくとも1つの制御可能な光学素子が、液晶層が埋め込まれた2つの基板を含む表示装置。
【請求項16】
請求項15に記載の表示装置であって、前記少なくとも1つの制御可能な光学素子の少なくとも1つの基板が、一次元表面構造を有する表示装置。
【請求項17】
請求項16に記載の表示装置であって、前記
一次元表面構造は、前記基板上の位置によってランダムに変化する格子周期を有する表示装置。
【請求項18】
請求項16または17に記載の表示装置であって、前記少なくとも1つの制御可能な光学素子の基板
は、電極配置を備え、前記それぞれの電極配置は少なくとも1つの電極を備える表示装置。
【請求項19】
請求項16から18のいずれか1項に記載の表示装置であって、前記
一次元表面構造を有する前記基板の反対側に位置する前記基板は、前記液晶層における液晶の配向のために設けられる表示装置。
【請求項20】
請求項16から19のいずれか1項に記載の表示装置であって、前記液晶層の液晶材料が第1の屈折率および第2の屈折率を有し、前記第1の屈折率が前記
一次元表面構造の屈折率に本質的に対応し、前記第2の屈折率が前記
一次元表面構造の屈折率と本質的に異なる表示装置。
【請求項21】
請求項16から20のいずれか1項に記載の表示装置であって、少なくとも1つの基板が一次元表面構造を有する複数の制御可能な光学素子が存在する場合、これらの制御可能な光学素子は
、少なくとも1つの基板上に設けられる個々の制御可能な光学素子の一次元表面構造が互いに異なる向きを有するように、ビーム経路内に配置される表示装置。
【請求項22】
請求項21に記載の表示装置であって、前記制御可能な光学素子の
前記一次元表面構造が、互いに対して約90°の角度で配置される表示装置。
【請求項23】
請求項1から22のいずれか1項に記載の表示装置であって、少なくとも1つの偏光素子が、光伝播方向において少なくとも1つの制御可能な光学素子の上流に設けられている表示装置。
【請求項24】
請求項1から4のいずれか1項に記載の表示装置であって、前記トラッキング装置は、回折次数を排除するために設けられたフィルタ装置として設計される表示装置。
【請求項25】
請求項24に記載の表示装置であって、前記フィルタ装置は、制御可能に設計される表示装置。
【請求項26】
請求項1から4のいずれか1項に記載の表示装置であって、前記少なくとも1つの照射装置の少なくとも1つの光源は前記トラッキング装置として設計され、前記少なくとも1つの光源は放射される光のコヒーレンス特性を修正するために制御可能に設計される表示装置。
【請求項27】
請求項1から26のいずれか1項に記載の表示装置であって、前記表示装置はホログラフィック表示装置として設計される表示装置。
【請求項28】
請求項1から27のいずれか1項に記載の表示装置を、オブザーバの左眼用およびオブザーバの右眼用に備えるヘッドマウントディスプレイ。
【請求項29】
十分にコヒーレントな光を放射するための少なくとも1つの照射装置と、少なくとも1つの空間光変調装置と、少なくとも1つの光学システムと、
オブザーバの目の変化した位置への少なくとも1つの仮想可視領域をトラッキングするトラッキング装置と、位置検出システムと、によって2次元および/または3次元シーンを表すための方法であって、
前記位置検出システムはオブザーバの目の位置を判定し、
前記少なくとも1つの空間光変調装置上のホログラムの適切な符号化方向は、前記少なくとも1つの光学システムおよび前記トラッキング装置によって判定され、
ホログラムは単一視差符号化によって、前記少なくとも1つの空間光変調装置への判定された符号化方向に符号化され、
前記少なくとも1つの空間光変調装置は前記少なくとも1つの照射装置によって照射され、前記ホログラムは前記少なくとも1つの光学システムによって再構成され、少なくとも1つの仮想可視領域はオブザーバの目の位置において生成される方法。
【請求項30】
請求項29に記載の方法であって、前記オブザーバの
目の瞳孔との重なりの最大比例エリアを有する前記仮想可視領域における前記符号化方向が、符号化されるべき前記ホログラムに対して選択される方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法であって、前記オブザーバの目の位置が変化した場合、前記位置検出システムにより新しい目の位置が判定され、前記ホログラムのための適切な符号化方向を選択するために、前記仮想可視領域がその固定中心点を中心に回転され、前記仮想可視領域が、前記オブザーバの前記目の瞳孔の領域と重なり比例エリアが最も大きい方向が判定される方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次元および/または三次元シーンを表すための表示装置に関する。本発明は特に、ホログラフィック表示装置、特に、観察者(オブザーバ)の目の近くに設けられた、例えばヘッドマウントディスプレイのような表示装置に関するものである。本発明はさらに、特に小さな領域における仮想可視領域のトラッキングを実施することができる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動立体ディスプレイまたは表示装置(ディスプレイデバイス)と比較して、ホログラフィックディスプレイまたは表示装置はホログラフィック表示装置内に存在し、ホログラムの符号化のために使用される空間光変調装置の解像度に関して、およびホログラムの計算労力に関して、実質的により大きな課題を提起する。
【0003】
国際公開第2006/066919号公報は例えば、これらの要件をどのように低減することができるかを記載している。そこには例えば、仮想オブザーバウィンドウの生成が記載されており、ウィンドウは空間光変調装置において符号化されたホログラムのフーリエスペクトルの回折次数内に設けられており、オブザーバはこのウィンドウを介して、空間光変調装置の前方及び/又は後方に延在することができる再構成空間において、再構築された、好ましくは3次元シーンを観察することができる。
【0004】
個々のオブジェクトの再構成に関して言えば、これは、シーンの任意の所与のオブジェクトポイントに対してサブホログラムが空間光変調装置に符号化されることを意味する。空間光変調装置上のサブホログラムの伸長及び位置は一実施形態では例えば、仮想オブザーバウィンドウ又はオブジェクトポイント上の可視領域の空間光変調装置への投射を通じて規定することができる。多数のオブジェクトポイントを有する好ましくは3次元シーンの全体ホログラムは、3次元シーンの全てのオブジェクトポイントのサブホログラムのオーバレイとして表される。個々のサブホログラムは、互いに完全にオーバーレイするのではなく、再構成されるそのオブジェクトポイントに応じて相対的にシフトされ、その結果、その表面の一部のみが1つ以上のサブホログラムによってオーバーレイされる。
【0005】
言い換えれば、サブホログラム内のオブジェクトポイントの符号化によって、ホログラフィック表示装置内に空間イメージポイントを生成することができる。符号化は、外部の一般的なコンピュータシステムにおいて、またはホログラフィックディスプレイにインストールされた制御ユニットにおいて実行することができる。空間光変調装置における任意のサブホログラムの拡張を、例えば空間光変調装置に関連してオブジェクトポイントの深さ位置のみに依存して固定することができること、または要求に応じて可変とすることは既に知られている。更に、空間光変調装置上のサブホログラムの幾何学的位置及びその伸長は例えば、光変調装置に対する再構成されたシーンのオブザーバの目の位置、又は表現されるべきシーン内のボクセル又はピクセルの位置などの技術的要件に応じて変化し得ることが知られている。ディスプレイポイントの符号化値の計算は一般に、多くのオブジェクト点の符号化値から構成される。符号化値の計算は、通常、実際のパネルビット深度よりも高い解像度を有する計算部において実行される。画素値への正規化およびマッピングは符号化値の計算後にのみ実行され、ここで、例えば、ガンマ曲線の非線形性またはさらなるピクセル依存較正値を考慮することができる。
【0006】
空間光変調装置の複数の異なるまたは類似のピクセルまたはサブピクセルを、さらにマクロピクセルに組み合わせることができる。しかし、空間光変調装置も、これがそわない場合に存在することができる。本発明によれば、このタイプの空間光変調装置を同様に使用することができる。
【0007】
図1は、空間光変調装置SLMに対して深さの異なる複数のオブジェクトポイントに対して、それぞれのオブジェクトポイントに上の仮想可視領域VWを空間光変調装置SLMに投射したものとして示すサブホログラムSHを生成する装置を示す。空間光変調装置SLM上のサブホログラムの位置は、可視領域VWに対するオブジェクトポイントの位置に依存することは明らかである。サブホログラムの寸法または伸長またはサイズはさらに、符号化されたオブジェクトポイントのz位置に依存し、ここで、zは、オブジェクトポイントと空間光変調装置SLMとの間の距離である。サブホログラムの重なりは、ほとんどの場合に生じる。
【0008】
シーン、好ましくは3次元シーンのホログラフィック再構成のために、サブホログラムは、オブザーバが再構成されたシーンを観察することができる、オブザーバ領域またはオブザーバウィンドウとも呼ばれる仮想可視領域と共に使用される。
【0009】
ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、ヘッドアップディスプレイ(HUD)、または空間光変調装置の実イメージまたは仮想イメージを有する投影ディスプレイ(SLMとも略称される)に関して、本明細書で使用される用語「SLM」は、仮想可視領域から視認されるSLMのイメージを指すことが意図される。
【0010】
空間光変調装置への複素値ホログラムの書込みは、通常、ホログラフィーによる三次元シーンの生成に必要である。空間光変調装置の複数画素は、マクロピクセルを形成するために符号化の手段によってここで組み合わせることができるか、またはマクロピクセルを形成するためにビーム結合器と組み合わせることができる。
【0011】
ホログラフィック表示装置は、とりわけ、空間光変調装置の画素の開口における回折の影響と、光源によって放出されるコヒーレント光の干渉とに基づく。しかしながら、仮想可視領域を生成するホログラフィック表示装置のためのいくつかの重要な条件は幾何光学で定式化され、定義することができ、ここでは簡単に言及されるのであろう。
【0012】
表示装置における照射ビーム経路は、一方ではここで重要である。これは、とりわけ、仮想可視領域を生成するのに役立つ。空間光変調装置は、少なくとも1つの実光源又は仮想光源を含む照射装置によって照射される。次いで、空間光変調装置の異なる画素から出る光は、それぞれの場合に仮想可視領域内に向けられなければならない。これを行うために、空間光変調装置を照射する照射装置の少なくとも1つの光源は、通常、仮想可視領域を有するオブザーバ面内に結像される。この光源の結像は例えば、仮想可視領域の中心に行われる。空間光変調装置が無限遠の光源に相当する平面波で照射される場合、空間光変調装置の異なる画素からの光は例えば、これらの画素に対して垂直に出て行く光は、仮想可視領域の中心に集束される。次に、空間光変調装置の異なる画素から同一の回折角で垂直にではなく、それぞれの場合に同一の回折角で出射する光を、仮想可視領域内の同一位置で各場合に同様に集束させる。しかしながら、仮想可視領域は一般に、少なくとも1つの光源の画像に対して横方向にシフトすることもでき、例えば、少なくとも1つの光源のイメージの位置は、可視領域の右または左エッジと一致することができる。
【0013】
一方、ホログラフィック表示装置では、直視型ディスプレイを除いて、結像ビーム経路が重要である。例えば、その延長が小さい空間光変調装置の拡大画像は、通常、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)において発生される。これは、オブザーバが空間光変調装置自体が位置する距離よりも遠くを見る仮想イメージであることが多い。空間光変調装置の個々の画素は、通常、拡大された形態で結像される。
【0014】
本発明による説明は主に、仮想オブザーバウィンドウ及びスイートスポットを含む仮想可視領域が光源イメージの平面内に存在する場合を指すことを意図している。しかしながら、結像ビーム経路及び照射ビーム経路又は空間光変調装置の平面及びフーリエ平面のそれぞれの転置を通じて、上記の説明は、空間光変調装置を仮想可視領域に結像させるホログラフィック表示装置又はディスプレイの実施形態にも適用可能である。したがって、本発明は、光源イメージの平面内に仮想可視領域、すなわち仮想オブザーバウィンドウまたはスイートスポットを有する場合に限定されるものではない。
【0015】
全視差符号化または単一視差符号化を使用する可能性は、原則として、ホログラムまたはサブホログラムの計算のために知られている。
【0016】
仮想可視領域を生成するホログラフィック表示装置またはディスプレイの場合、全視差エンコードは仮想可視領域が水平延長部および垂直延長部を有することを意味し、これらの2つの延長部は、それぞれの次元において生成された回折次数以下である。回折次数のサイズは、使用される空間光変調装置のそれぞれの水平画素ピッチまたは垂直画素ピッチ、使用される光の波長、および空間光変調装置と仮想可視領域との間の距離によって判定される。仮想可視領域は、2次元の仮想オブザーバウィンドウによって形成される。三次元(3D)シーンのオブジェクトポイントのサブホログラムは、空間光変調装置上の複数画素を通常含む水平方向の拡張と垂直方向の拡張も有する。サブホログラムはオブジェクトポイントが再構成されるように、水平方向と垂直方向の両方に光を集束させる。仮想可視領域及びサブホログラムは両方とも、例えば、長方形の形状を有することができるが、一般的な場合には例えば、円形又は六角形の形状のような他の形状を有することもできる。
【0017】
比較として、ホログラムまたはサブホログラムの空間光変調装置への単一視差エンコードの場合、生成された仮想オブザーバウィンドウの拡張は、以下でホログラムまたはサブホログラムのエンコード方向と呼ばれる、1つの次元または方向のみにおける回折次数の拡張によって制限される。サブホログラムは、通常、水平単一視差符号化の場合には単一画素行の一部を占め、空間光変調装置上で垂直単一視差符号化の場合には単一画素列の一部を占め、したがって、通常、1つの次元または方向のみに2つ以上の画素を含む拡張部を有する。この場合、サブホログラムは基本的に、光を一方向に集束させる円筒レンズに対応する。
【0018】
言い換えれば、この状況は、単一視差符号化の場合、仮想オブザーバウィンドウが1つの次元または方向、すなわちホログラムの符号化方向のみに存在し、ステレオディスプレイに類似するスイートスポットとも呼ばれる最適視野範囲が他の次元または方向、すなわち符号化方向に垂直に存在するように説明することができる。したがって、ホログラムのエンコード方向が参照されていない場合には、本書では「スイートスポット方向」という用語も使用する。次いで、仮想オブザーバウィンドウとスイートスポットは共に、生成されたシーンを観察するためにオブザーバが位置するオブザーバ面内に仮想可視領域を形成する。仮想可視領域のこの指定および意味は、本発明による以下の開示においてさらに使用される。
【0019】
ホログラムまたはサブホログラムの全視差エンコードはすべての方向または空間方向に等しく十分なコヒーレント光を必要とし、光は光源によって放射されなければならない。対照的に、単一視差エンコードは、少なくともホログラムのエンコード方向においてのみ十分なコヒーレント光を必要とする。スイートスポット方向、すなわちホログラムの非符号化方向では、光のコヒーレンスがホログラムの符号化方向よりも小さくすることができる。
【0020】
光のコヒーレンスは例えば、空間光変調装置の照射の角度スペクトルによって設定することができる。ホログラムの符号化方向及びスイートスポット方向における光の異なるコヒーレンスは、例えばスリット状の光源を用いることによって設定することができる。スリット状の光源の長手方向と比較して、スリット状の光源の狭い方向で異なる角度スペクトルと異なるコヒーレンスの光が生成される。
【0021】
符号化方向およびスイートスポット方向における光の異なるコヒーレンスはまた、例えば、光源と仮想可視領域との間に配置され、光伝播方向において空間光変調装置の上流または下流のいずれかであり、ホログラムの符号化方向およびスイートスポット方向において異なる散乱特性、特に符号化方向において非常に狭い散乱角度およびスイートスポット方向において広い散乱角度を有する散乱体によって設定することができる。このタイプの散乱体は、1次元(1D)散乱体としても知られている。散乱体は例えば、一方向に40°、それに垂直な方向に1°の散乱角を有する製品として存在する。
【0022】
しかしながら、ホログラムの符号化方向及びスイートスポット方向において等しくコヒーレントである照射は単一視差符号化の場合にも任意に使用することができ、仮想オブザーバウィンドウの拡張は符号化方向における1回折次数の最大値であり、スイートスポットの拡張は、スイートスポット方向における複数の回折次数とすることができる。
【0023】
水平単一視差符号化または垂直単一視差符号化は、一般に知られている。単一視差符号化は通常、空間光変調装置の矩形形状の画素と組み合わせて、および/またはストリップの形成で配置されたカラーフィルタを有する空間光変調装置上の左目/右目の空間色多重化および/または空間多重化と組み合わせて使用することができる。仮想オブザーバウィンドウのサイズは、画素ピッチの逆数に比例する。したがって、カラーフィルタがないが、矩形ピクセルを有するディスプレイの場合、より小さな仮想オブザーバウィンドウはピクセルの短い方向、すなわち、より小さいピッチの方向よりも、ピクセルの長い方向、すなわち、より大きなピッチの方向に、不利に生成されるのであろう。したがって、小さい方の画素ピッチの方向はカラーフィルタを伴わない表示部において、矩形形状の画素による単一視差符号化の場合に、通常、ホログラムのエンコード方向として使用される。
【0024】
空間色多重化を有するディスプレイでは、ホログラムが異なる色(通常、赤、緑、青)に対してインターリーブされた形態で書き込むことができる。例えば赤色レーザー光で1色の光源で照射する場合、他の色(例えば緑色及び青色)のカラーフィルタは光を遮断する。この光源では、他のカラーフィルターが光を遮る黒い領域に類似した方法で作用する。したがって、1色の光については、カラー画素がカラーフィルタストリップに垂直な方向に、より小さな開口を有する画素と同じように作用する。仮想オブザーバウィンドウにとって不利なことに、この方向の開口が小さいほど、回折次数が高くなる光が多くなる。この場合、仮想オブザーバウィンドウのサイズを判定するカラーフィルタストリップに垂線ピッチは、同じカラーフィルタを持つ最も近いピクセルへのピッチである。
【0025】
例えば、カラーフィルタストリップに平行な方向はホログラムの符号化方向として使用されるのであろう。なぜなら、より大きなピクセル開口が通常この方向に存在し、より多くの光が所望の回折次数で存在するからである。反対に、カラーフィルタストリップに垂直な方向は、より小さい画素開口がより高い回折次数でより多くの光をもたらすという点で有利に使用することができる。というのは複数の回折次数をスイートスポットに使用することもできるからである。スイートスポットを生成するための追加の散乱素子は、場合によっては省略することができる。
【0026】
オブザーバの左右の眼の空間多重化についても同様である。ここで、オブザーバの2つの目に対する多重ストリップに垂直であり、同一の目に対して、そしておそらく同一の色に対して、最も近い画素に対する画素ピッチは、仮想オブザーバウィンドウのサイズを判定するのであろう。多重ストリップは再び、ストリップに垂直な方向において、より小さな開口として有効に作用する。符号化方向は、通常、多重ストリップに平行に選択される。
【0027】
これらの例は、単一視差エンコードが通常、空間光変調器、または色もしくは空間多重化構成の特定のパラメータと組み合わせた固定選択であることを示している。
【0028】
仮想可視領域を使用するホログラフィック表示装置またはディスプレイは通常、オブザーバの目の位置の変化または移動の場合に、仮想可視領域の追跡を必要とする。
【0029】
目の位置は、通常、検出システム(アイファインダ)によって検出される。光学素子、例えば、国際公開第2010/149587A2号公報に開示されるような光偏向のための回折素子はさらに、新しい検出された眼の位置に仮想可視領域をシフトまたはトラッキングするために使用され得る。
【0030】
目の動きに追従するオブザーバの目の新たな位置への仮想可視領域の粗いトラッキング及び細かいトラッキングを組み合わせるための解決策は、従来技術において既に開示されている。異なる光学素子の組合せが使用され、その1つの光学素子は粗いまたは大きなステップで広い角度範囲にわたって仮想可視領域を追跡して、新しい検出された目の位置まで追跡し、これを粗いトラッキングと呼ぶ。しかしながら、第2の光学素子は新たに検出された目の位置に対して細かい又は小さなステップで狭い角度範囲にわたって仮想可視領域を追跡し、これは、細かいトラッキングと呼ばれる。しかしながら、オブザーバ面内の異なる位置への仮想可視領域を追跡するための2つの異なる従来の光学素子の使用は、ある程度面倒であり得る。
【0031】
特定のタイプのホログラフィック表示装置またはディスプレイ、例えばホログラフィックヘッドマウントディスプレイ(HMD)は、小さな視線追跡領域のみを必要とする。HMDは例えば、装置全体が頭部の動きに沿って動くように、眼鏡またはゴーグルと同様にオブザーバの頭部に固定して取り付けることができる。この場合、別個のトラッキングは不要であり、特に、粗いトラッキングは不要である。仮想可視領域の追跡は、オブザーバの目の瞳孔の位置が目の中で実質的に変化するか、または移動するか、さもなければ、仮想可視領域の外に移動する場合にのみ必要とされる。仮想可視領域を追跡するための従来の光学素子の使用はとりわけ、HMDの総体積および重量を増加させるので、ここでもかなり煩わしく、これはオブザーバの頭部に取り付けられた装置の場合に特に不利である。これは更に、光効率及びエネルギー消費に不利な影響を及ぼす可能性があり、これは通常バッテリー動作型のモバイル装置の場合に特に不利となるのであろう。
【0032】
例えば、国際公開第2018/037077A1号公報は、微細追跡のためのプリズム関数による符号化によって、小さな領域にわたって仮想オブザーバウィンドウをシフトさせる可能性を記載している。しかしながら、これは、一般に高い回折次数に向かって減少する再構成の強度のために、少数の回折次数にわたってのみ行うことができる。回折次数が小さいほど、特にプリズム関数の符号化による可能なシフトの面積も小さくなる。
【0033】
原則として、仮想可視領域の広がりがオブザーバの目の瞳孔の広がりよりも小さくなるように、仮想可視領域を選択することも可能である。これは、例えば、空間光変調装置の画素ピッチ、オブザーバ距離、及び光の波長を選択することによってオブザーバの目の瞳孔の広がりよりも小さい回折次数を生成することによって、及び単一の回折次数のみがオブザーバの瞳孔に到達することができるように他の回折次数をフィルタ除去するフィルタ構成を使用することによって行うことができる。
【0034】
仮想可視領域の大きさが例えば約1mmである場合、回折次数が約1mmに過ぎないので、回折次数の少ない範囲内でシフトする可能性のある領域は、例えばプリズム関数のエンコードを介して約±1mmから2mm未満に僅かに制限される。これは例えば、ヘッドマウントディスプレイでは目の中で起こり得る瞳孔の動きの範囲をカバーするのに十分ではない。
【発明の概要】
【0035】
そこで、本発明の目的は、小領域における仮想視認領域の細かい追跡や追跡を簡易な手段で実現可能な表示装置を提供することにある。
【0036】
特に、目の中の瞳孔の動きを伴う仮想可視領域の追跡を実施するために、小さい仮想可視領域、特にオブザーバの目の瞳孔未満の仮想可視領域を生成する、例えば、ホログラフィックヘッドマウントディスプレイなどの、目に近いホログラフィックディスプレイデバイスのための解決策が提供されることが意図される。
【0037】
本発明の目的はさらに、仮想可視領域の細かいトラッキングのための対応する方法を提供することである。
【0038】
本目的は本発明によれば、請求項1の特徴を有する表示装置によって達成される。
【0039】
本発明によれば、特に目の近くのディスプレイとして、ここでは特にヘッドマウントディスプレイとして使用するのに適した表示装置が提供されるが、その使用はこれらのディスプレイまたは表示装置に限定されるものではない。この表示装置は例えば、従来利用されているヘッドアップディスプレイよりも大きな視野を有する将来のヘッドアップディスプレイとして、または仮想可視領域の粗いトラッキングおよび細かいトラッキングを実行することができる直視型ディスプレイとして使用することもできる。
【0040】
しかしながら、本発明は仮想可視領域の細かいトラッキングのみに関連し、この点に関する解決策を提供することを意図している。本発明によれば、仮想可視領域の細かいトラッキングは数ミリメートルの小さな範囲、例えば、約25mmまでの範囲にわたって、それぞれ水平及び/又は垂直方向に延びるトラッキングを意味すると理解されることが意図される。
【0041】
特にホログラフィック表示装置として設計された、2次元および/または3次元のオブジェクトまたは場面を表すための本発明によるこのタイプの表示装置は、十分にコヒーレントな光を放射するための少なくとも1つの照射装置と、入射光を変調するための少なくとも1つの空間光変調装置と、少なくとも1つの光学システムと、トラッキング装置とを備える。ホログラムは、単一視差符号化によって、少なくとも1つの空間光変調装置に符号化される。少なくとも1つの光学システムは、オブザーバの目の位置に少なくとも1つの仮想可視領域を生成するように設けられる。表現すべきシーンのオブジェクトポイントに対するホログラムの符号化方向は、トラッキング装置によって空間光変調装置上で変更可能である。トラッキング装置は特に、オブザーバの目の変化した位置への少なくとも1つの仮想可視領域の細かいトラッキングのために設けることができる。
【0042】
ホログラムはすべてのサブホログラムの合計を表し、サブホログラムは、表されるシーンの各オブジェクトポイントに割り当てられる。ホログラムの符号化方向の変化は、個々のサブホログラムごとに符号化方向も変化することを意味する。
【0043】
少なくとも1つの仮想可視領域は、少なくとも1つの空間光変調装置上のホログラムの符号化方向の変化に起因して、オブザーバの目の瞳の新しい位置に従って、異なる位置に特に有利に移動することができる。ホログラムは単一視差符号化によって少なくとも1つの空間光変調装置に符号化され、すなわち、1次元サブホログラムから一緒に加算される。従って、ホログラムの異なる符号化方向は、少なくとも1つの空間光変調装置上のそれらの元々の中心点から始まる異なる方向への1次元サブホログラムの回転を介して達成することができる。これは、ホログラムの符号化方向が細かいトラッキングのために変更され、したがって、少なくとも1つの仮想可視領域も、ホログラムの回転のために移動、すなわち回転させることができ、その結果、少なくとも1つの仮想可視領域は移動するときにそれに応じて瞳孔をトラッキングするか、または常に瞳孔と重なり合うことができ、その結果、シーンのオブザーバは常に、対応する高解像度で前記シーンを観察することができることを意味する。
【0044】
したがって、空間光変調装置上のホログラムの符号化方向の変化は、サブホログラムが画素行の一部または画素列の一部のいずれかにおいて、または空間光変調装置の対角線上に配置された画素に沿って符号化され、次いで、ホログラムを形成するために一緒に加算され得るように、ホログラム計算が調整されることを意味する。ホログラム計算は結果的に、ホログラムの選択された符号化方向に応じて、好ましくは3次元のシーンで表される同じものについて変化する。
【0045】
本発明によるこのトラッキング能力は特に、少なくとも1つの仮想可視領域の細かいトラッキング、すなわち、例えばヘッドマウントディスプレイが使用される場合に起こり得るような、眼の瞳孔または眼の直接的な小さな動きにのみ適している。オブザーバ自身も、例えば直視型の表示装置と関連して異なる位置に移動する移動に対して、少なくとも1つの仮想可視領域のそのような大きな追跡は粗いトラッキングを通じてのみ実施され、そこでは、本発明に従った細かい追跡を、その後、眼領域との関連において少なくとも1つの仮想可視領域の正確な位置決めのために使用することができる。
【0046】
粗いトラッキングは例えば、約25mmのステップ幅における仮想可視領域の位置を水平及び垂直に変化させるのであろう。ただし、水平約25mm×垂直約25mmの領域内であれば、細かいトラッキングが使用されることになる。しかし、本発明は、この数値例に限定されるものではない。
【0047】
このようにして、例えば、国際公開第2010/149587A2号明細書による回折装置よりも複雑でない追跡装置(トラッキング装置)を提供することができる。したがって、ヘッドマウントディスプレイは、構造的によりコンパクトで、より安価に設計することができる。
【0048】
本発明のさらなる有利な実施形態および改良は、さらなる従属請求項に見出すことができる。
【0049】
少なくとも1つの仮想可視領域は有利には仮想オブザーバウィンドウとスイートスポットとから形成することができ、仮想オブザーバウィンドウはホログラムの符号化方向に設けられ、スイートスポットはホログラムの非符号化方向に設けられる。
【0050】
単一視差符号化の場合、少なくとも1つの仮想可視領域は、ホログラムの符号化方向に生成される仮想オブザーバウィンドウと、非符号化方向、すなわちスイートスポット方向に生成されるスイートスポットとによって形成される。スイートスポット方向において、光は、オブザーバの目の距離よりも狭い広がったスイートスポットにわたって分布される。スイートスポットの拡張は、符号化方向における仮想オブザーバウィンドウの拡張よりもさらに大きい。
【0051】
本発明の特に有利な一実施形態では、ホログラムの符号化方向が少なくとも2つの方向の間で変更可能であることを提供することができる。
【0052】
少なくとも1つの仮想可視領域を眼または瞳孔の新しい位置に調整または追跡するために、ホログラムが符号化される空間光変調装置の画素行または画素列に対して見られる、例えば、水平、垂直、対角線+45度または対角線135度などの4つの可能な符号化方向を使用することができることが好ましい。しかしながら、本発明は、ホログラムのこれらの4つの言及されたエンコード方向に限定されることを意図していない。さらに、これらの4つの符号化方向に加えて、例えば対角線30度のような異なる符号化方向も明らかに可能である。さらに、本発明は少なくとも1つの空間光変調装置の矩形形状の画素にも限定されるものではなく、前記画素は行および列の形成で配置可能である。また、画素は例えば、六角形であってもよく、六つの異なるエンコード方向が、六角形の側面に平行に形成されてもよい。
【0053】
本発明のさらなる有利な実施形態では、シーンのオブザーバの目、特に目の瞳孔の位置を判定することができる少なくとも1つの位置検出システムを設けることができる。さらに、眼の瞳孔の大きさを任意に検出することができる。
【0054】
少なくとも1つの空間光変調装置上のホログラムの適切な符号化方向を判定するために、オブザーバの目の位置を位置検出システムで検出する。検出された目の位置に基づいて、生成された少なくとも1つの仮想可視領域がオブザーバの目にも一致するように、符号化されるホログラムの符号化方向を判定することができる。これを行うために、少なくとも1つの仮想可視領域が眼または瞳孔孔と最良にまたは最も適切に重ね合わされる符号化方向は例えば水平、垂直、対角線などの異なる符号化方向からオブザーバのそれぞれの眼の位置について選択することができ、さらなる方向は除外されることを意図しない。
【0055】
好ましい一実施形態では、水平方向および垂直方向において類似または同一の画素ピッチを有する空間光変調装置を使用することができる。好ましい一実施形態では空間光変調装置の複数の画素から構成されるマクロ画素がシーンのオブジェクトポイントの複素値を表すために使用される場合、空間光変調装置は水平方向および垂直方向において同じマクロ画素ピッチを有することができる。
【0056】
仮想オブザーバウィンドウのサイズまたは拡張と、オブザーバが位置するオブザーバ面内のスイートスポットのサイズまたは拡張との両方は、空間光変調装置上のホログラムの設定された符号化方向によって任意選択的に変化することができる。上述した水平方向の画素ピッチと垂直方向の画素ピッチとが同一または少なくとも類似している空間光変調装置の実施形態では例えば2次画素を用いたホログラムの対角符号化方向が対角方向の画素ピッチが水平方向または垂直方向の画素ピッチよりも(2の平方根)倍大きい結果となり、観測者平面において発生する回折次数の拡張は水平方向または垂直方向の回折次数と対角方向において同様に異なる。したがって、水平方向または垂直方向に生成された仮想オブザーバウィンドウと比較して、対角線上に生成された仮想オブザーバウィンドウも異なるものとして選択することが適切であり得る。オブザーバ面内のスイートスポットの場合には、例えばトラッキング領域の拡張のために、異なるサイズ要件が適用される。例えば、微細トラッキングのための水平トラッキング領域、またはヘッドマウントディスプレイの場合には全体として見られる水平トラッキング領域が垂直トラッキング領域よりも大きくなるように意図される場合、水平スイートスポットの拡張は、垂直スイートスポットの拡張よりも大きくなるように適切に選択することもできる。スイートスポットのサイズは例えば、使用される回折次数を通して、又は散乱素子の散乱角を通して設定することができる。
【0057】
本発明の特に好ましい一実施形態では、トラッキング装置が少なくとも1つの照射装置と、シーンのオブザーバが位置するオブザーバ面との間に配置される少なくとも1つの制御可能な光学素子を備えることができる。
【0058】
ホログラムの符号化方向の変化に対して、トラッキング装置は少なくとも1つの光源を含むことができる少なくとも1つの照射装置とオブザーバ面との間のビーム経路内に、変化した方向にスイートスポット又は仮想オブザーバウィンドウを生成するために、少なくとも1つの光源を含むことができる少なくとも1つの制御可能又は切り替え可能な光学素子を備えることができる。少なくとも1つの制御可能な光学素子は、光伝播方向において空間光変調装置の上流または下流に配置することができる。少なくとも1つの制御可能な光学素子は、入射光を一方向のみに散乱させる散乱素子として設計することができる。このようにして、スイートスポットをこの規定された方向または散乱方向に生成することができる。
【0059】
本発明の異なる有利な実施形態では追跡デバイスの少なくとも1つの制御可能な光学素子が偏光スイッチとして設計することができ、ここで、トラッキング装置は少なくとも1つの受動偏向格子素子、好ましくは偏光格子素子、および1つの方向のみに入射光を散乱する少なくとも2つの受動散乱素子を含み、受動偏向格子素子および少なくとも2つの受動散乱素子は偏光スイッチと組み合わせて動作する。
【0060】
少なくとも1つの制御可能な光学素子は偏光スイッチ、例えば、少なくとも2つの受動散乱素子と組み合わせて機能または作用する、画素化されていない液晶セルまたは液晶層として設計することができる。偏光選択的に偏向角を制御可能な偏向格子素子、例えば、偏光格子素子と、電界により制御可能であり、スイッチング状態に応じて光の偏光状態を発生し、従って、偏向格子素子において偏向角を選択する偏向スイッチとを備えることにより、入射光をそれに応じて散乱させるために、いずれかの散乱素子を選択することができる。偏光スイッチは、この偏向格子素子の光伝搬方向上流の表示装置内に配置することができる。その後、各ケースの散乱素子は、オブザーバ面内で散乱方向にスイートスポットを生成する。さらに、この目的のために、一次元的に設計された散乱素子が提供される。
【0061】
少なくとも2つの受動散乱素子は、少なくとも2つの受動散乱素子が異なる角度選択性を有する体積格子として設計することができる。
【0062】
少なくとも2つの受動散乱素子は例えば、特定の角度選択性を有し、したがって、特定の角度範囲内で入射する光のみを効果的に散乱させる体積格子のように設計することができる。したがって、例えば、個々の散乱素子に対して異なる角度選択性を設定することができる。各受動散乱素子について、それが効率的に散乱する入射光の方向は、他の受動散乱素子の方向とは異なる。例えば、正確に2つの受動散乱素子を設けることができ、その1つの散乱素子は+30度で入射する光を効率的に散乱し、他方の散乱素子は、-30度で入射する光を効率的に散乱する。
【0063】
前述の実施形態では、少なくとも2つの受動散乱素子が任意選択で、異なる散乱特性を有することもでき、例えば、異なる散乱角度を生成することができる。その結果、スイートスポットのサイズは、ホログラムの個々の符号化方向に対して異なるように設定することもできる。
【0064】
1つの代替実施形態ではトラッキング装置が偏光スイッチとして設計された少なくとも1つの制御可能な光学素子を備えることができ、トラッキング装置は少なくとも1つの方向転換素子、好ましくは偏光ビームスプリッタ素子と、入射光をそれぞれの場合に一方向のみに散乱させる少なくとも2つの受動散乱素子とを備えることができ、少なくとも2つの異なる光路のうちの1つは制御可能な光学素子および方向転換素子によって選択可能であり、散乱素子はそれぞれの場合に異なる光路のそれぞれに設けられる。換言すれば、少なくとも2つの受動散乱素子はビーム経路内の異なる経路内に配置され、これらの光経路のうちの1つ、従って、散乱素子のうちの1つは偏光スイッチと組み合わせて、再方向付け素子によって選択することができる。
【0065】
偏光ビームスプリッタ素子に入射する光の偏光は例えば、偏光スイッチで設定される。光は、偏光状態に応じて、偏光ビームスプリッタ素子から90度でまっすぐまたは変更されて出現する。垂直方向に散乱する散乱素子は例えば、偏光ビームスプリッタ素子の1つの出力に近接して配置され、一方、水平方向に散乱する散乱素子は、偏光ビームスプリッタ素子の異なる出力に近接して配置される。光は、偏光スイッチによって設定された偏光に応じて、一方の散乱素子又は他方の散乱素子のいずれかに到達する。更に、光路は、コンバイナ、例えばビームスプリッタキューブによって組み合わせることができるので、両方の散乱素子からの光は更に、オブザーバ面に向かって導かれる。
【0066】
その後、各ケースの散乱素子は、オブザーバ面内で散乱方向にスイートスポットを生成する。ここでは、一次元的に設計された散乱素子も提供する。例えば、光の異なる散乱方向に対して異なるサイズのスイートスポットを生成するために、異なる散乱角度を有する散乱素子を、ここでも任意に使用することができる。
【0067】
本発明のさらなる一実施形態では、トラッキング装置が回転するように設計された受動散乱素子を備えることを有利に提供することができる。
【0068】
トラッキング装置はまた、入射光の散乱方向を変えるために一次元的かつ機械的に回転するように設計された単一の受動散乱素子のみを含むことができる。これは、この受動散乱素子がホログラムの1つの符号化方向からホログラムの異なる符号化方向への変更またはスイッチプロセスのために、開始位置から最終位置へ回転されることを意味する。この最終位置に到達すると、受動散乱素子は、SLM上のホログラムの表示中、その最終位置に留まる。
【0069】
受動散乱素子の複数の符号化方向、例えば、異なる回転角度、例えば4つの異なる回転角度に対応する4つの異なる符号化方向は、単一の受動散乱素子で設定することが有利である。
【0070】
しかしながら、この実施形態では散乱角、したがってスイートスポットのサイズはすべてのエンコード方向について同一である。
【0071】
さらに有利には、トラッキング装置が少なくとも2つの制御可能な光学素子を有するようにすることができる。ホログラムの符号化方向を変更するために、少なくとも2つの制御可能な光学素子を使用することもできる。
【0072】
これらの少なくとも2つの制御可能な光学素子はそれぞれの場合に入射光を一方向のみに、実際にはそれぞれ異なる方向に散乱させる散乱素子として設計することができる。第1の散乱素子は例えば、垂直約20°×水平1°の方向に散乱することができる。次いで、第2の散乱素子は例えば、垂直約1°×水平約20°の方向に散乱することができる。したがって、一方の散乱素子と他方の散乱素子との間の制御またはスイッチによって、ホログラムの符号化方向を空間光変調装置上で90°回転させることができ、対応するサイズのスイートスポットをホログラムの符号化方向に垂線生成することができる。
【0073】
換言すれば、第1の制御可能な光学素子は、第2の制御可能な光学素子が第1の方向と第2の方向とが異なる所定の第2の方向に光を散乱することができる所定の第1の方向に入射光を有利に散乱させることができる。従って、ホログラム又はサブホログラムの符号化方向は、第1の制御可能な光学素子及び第2の制御可能な光学素子の対応する制御を通じて有利に画定可能である。したがって、少なくとも2つの制御可能な光学素子のうちの一方は、それぞれの場合において、光を所望の方向に散乱させるように活性化または制御され、他方の制御可能な光学素子は光を散乱させないように、非活性化または制御されない。制御可能な光学素子は例えば、ホログラムの符号化方向に従ってスイートスポットのサイズを異なるように規定するために、異なるサイズの散乱角を任意に生成するように設計されてもよい。
【0074】
さらに、少なくとも1つの制御可能な光学素子は、液晶層が間に埋め込まれた2つの基板を備えることができる。少なくとも1つの制御可能な光学素子のこれら2つの基板のうちの少なくとも1つの基板は、好ましくは表面構造を有することができる。
【0075】
2つの基板が互いに接合されて、制御可能な光学素子が生成され、そこでは、2つの基板の間の空間が液晶層で満たされる。制御可能な光学素子のうちの1つの基板のみが、好ましくは表面構造を有し、ここで、他の基板は平坦として設計され得る。少なくとも1つの基板の表面構造は特に、基板の一部を形成するポリマー層に刻印することができる一次元の統計的表面構造とすることができる。この場合、「統計的表面構造」は以下に詳細に説明するように、表面プロファイルが規則的な繰り返しパターンを有さず、所定の限界内でランダムな変動を有することを意味する。制御可能な光学素子の散乱特性は表面構造、すなわち、その幅、その高さおよび統計的分布の選択を通じて、事前定義され得る。表面構造は例えば、表面レリーフ回折格子又はブレーズ格子と同様に設計することができる。しかしながら、従来の回折格子素子とは対照的に、回折格子周期及び/又はブレーズ角は基板上の位置によってランダムに変化することができるので、規則的な回折次数は生成されないが、代わりに所定の角度範囲にわたって光が散乱される。言い換えれば、表面構造は、基板上の位置によってランダムに変化する格子周期を有することができる。
【0076】
次に、光散乱角は例えば、最小及び最大格子周期を予め定め、同様に、異なる格子周期の周波数及び/又はブレーズ角の範囲及び分布を予め定めることによって設定することができる。表面プロファイルを計算することができ、次いで、例えばコンピュータを介して乱数発生器を使用して、これらの事前定義を有する表面構造のためのマスタをリソグラフィで生成することができる。次に、このマスタからインプレッションを作成することができる。また、表面構造は一般に、制御可能な光学素子の少なくとも1つの基板上の位置によって、幅および高さがランダムに変化される不規則な高さプロファイルであってもよい。
【0077】
本発明のさらなる有利な実施形態では少なくとも1つの制御可能な光学素子の基板がそれぞれの場合において、電極配置を備え、それぞれの電極配置は少なくとも1つの電極を備えることが提供され得る。少なくとも1つの電極は例えば、平面として設計することができ、すなわち、非画素化することができる。
【0078】
表面構造を有する基板の反対側に位置する基板は、有利には液晶層における液晶の配向のために設けることができる。少なくとも1つの制御可能な光学素子のこの基板は平坦または平面として設計することができ、液晶層内の液晶の配向に使用することができる。これは、例えば、ラビングまたはフォトアラインメントによって行うことができる。
【0079】
液晶層の液晶材料はさらに、第1屈折率および第2屈折率を有することができ、第1屈折率は本質的に、表面構造の屈折率に対応し、第2屈折率は、表面構造の屈折率と本質的に異なる。液晶層の複屈折液晶材料は、表面構造の屈折率と本質的に同一である第1の屈折率、例えば常屈折率を有することができる。なお、液晶材料の常屈折率又は第1屈折率及び少なくとも1つの制御可能な光学素子の表面構造の屈折率は、いずれも例えばn = 1.5である。複屈折液晶材料はさらに、第2屈折率、例えば異常屈折率を有することができ、少なくとも1つの制御可能な光学素子の表面構造の屈折率とは異なる。液晶材料の異常屈折率または第2屈折率は例えば、n = 1.7であり、ここで、表面構造の屈折率はn = 1.5である。
【0080】
少なくとも1つの基板が1次元の表面構造を有する複数の制御可能な光学素子が存在する場合、それぞれの場合に、少なくとも1つの基板上に設けられる個々の制御可能な光学素子の1次元表面構造が互いに異なる向きを有するように、これらの制御可能な光学素子がビーム経路内に配置されることが有利に可能である。
【0081】
複数の制御可能な光学素子、すなわち、少なくとも2つの制御可能な光学素子がビーム経路内で使用される場合、これらの制御可能な光学素子は表面構造、好ましくは統計的表面構造がそれぞれの場合の個々の制御可能な光学素子のそれぞれの基板上で、互いに異なる向きを有するように、互いに関連して配置され得る。
【0082】
2つの制御可能な光学素子の表面構造は、好ましくは互いに対して約90°の角度で配置することができる。このようにして、個々の制御可能な光学素子の表面構造は同様に、互いに対して90°で配置されることが好ましい。しかしながら、もちろん、特に3つ以上の制御可能な光学素子の場合、個々の制御可能な光学素子が、互いに対して、例えば60°または45°などの異なる角度で配置されることも可能である。例えば、1つの制御可能な光学素子が制御されるか、または電圧がそれに印加され、さらなる制御可能な光学素子が制御されないか、またはそれに電圧が印加されない場合、入射光は、第1の方向に散乱されるのであろう。逆に、1つの制御可能な光学素子が制御されないか、またはそれに電圧が印加されないであろうが、さらなる制御可能な光学素子が制御されるか、またはそれに電圧が印加されるのであろう場合、入射光は第2の方向に散乱されるのであろう。
【0083】
個々の制御可能な光学素子の散乱角は選択的に異なるように設計することができ、その結果、スイートスポットの方向に沿って、前記スイートスポットのサイズも異なるように定義することができる。
【0084】
少なくとも1つの偏光素子は、光伝搬方向において、少なくとも1つの制御可能な光学素子の上流にさらに設けることができる。
【0085】
少なくとも1つの偏光素子は偏光格子素子として設計することができ、例えば、入射した左円偏光を+1番目の回折次数に偏向し、右円偏光を-1番目の回折次数に偏向することができる。しかしながら、これは、少なくとも1つの偏光素子によって、異なる偏光が異なる方向に偏向され得ることを示すことのみを意図している。
【0086】
本発明の1つの特定の実施形態では、トラッキング装置が回折次数を排除するために設けられるフィルタ構成として設計されることが提供され得る。本発明は一般に、既に説明したように、ホログラムまたはサブホログラムの符号化方向を変更するための散乱素子または制御可能な光学素子の使用に限定されることを意図していない。その代わりに、トラッキング装置を、ホログラムまたはサブホログラムの符号化方向が少なくとも1つの空間光変調装置上で変更可能であるフィルタ構成として設計することも可能である。この目的のために、コヒーレント光はすべての方向、すなわち、ホログラムまたはサブホログラムの符号化方向および非符号化方向に等しく使用することができる。少なくとも1つの空間光変調装置とオブザーバ面との間のフィルター面において、特に空間光変調装置のフーリエ面において、不要な回折次数はこの目的のためにフィルター除去することができる。ホログラムまたはサブホログラムの符号化方向では、オブザーバはそわなければ再構成されたシーンの望ましくない多重画像を見ることになるので、単一回折次数の光のみがオブザーバの目に到達すべきである。好ましくは三次元シーンの各オブジェクトポイントは、個々の回折次数に対して異なる位置で回折次数毎に一度再構成されるのであろう。しかしながら、ホログラムまたはサブホログラムの符号化方向に垂線、すなわちスイートスポット方向に、異なる回折次数は、オブザーバの目に干渉をもたらさない。オブザーバは、それぞれの場合において、個々の回折次数において同じ再構成シーンを見ることになる。シーンのオブジェクトポイントは、このスイートスポット方向の各回折次数において同じ位置に生成される。
【0087】
複数の回折次数の使用は、一方では光がオブザーバの眼の瞳孔に到達する領域を増加させるのに役立つ。従って、スイートスポットは、オブザーバ面内の複数の回折次数の光によって生成することもできる。
【0088】
次いで、例えば、ホログラムまたはサブホログラムの符号化方向に対応する一方向におけるSLMのフーリエ面におけるフィルタリングによって、1つの回折次数のみを通過させることによって、および他の生成された回折次数をフィルタリングして除去することによって、スイートスポットおよび仮想オブザーバウィンドウを生成することができ、複数の回折次数は、スイートスポット方向に対応するSLMのフーリエ面に垂直な方向に通過させることができる。このフィルタ配置が回折次数をフィルタリングするトラッキング装置として制御可能に設計されていれば、例えば、水平方向に単一の回折次数及び垂直方向に複数の回折次数を有する1つのスイッチング状態から水平方向に単一の回折次数及び複数の回折次数を有する別のスイッチング状態に切り替えることができる。したがって、フィルタ装置が制御可能に設計されていると有利である。フィルタ配置のさらなるスイッチング状態では、対角回折次数、例えば、+45度の方向における回折次数及び-45度の方向における複数の回折次数を使用することもでき、又はその逆も可能である。
【0089】
フィルタ装置のスイッチング状態のこの切り替えまたは変更はフィルタ平面内の開口の機械的回転によって、または様々な実施形態ではフィルタ開口の異なる向きの間で前後に切り替えることができる電気的に切り替え可能なフィルタ開口によって実行することができる。
【0090】
回転フィルタ開口としてのデザインは、ホログラムの異なる符号化方向における同一サイズのスイートスポットの設定のみを可能にする。
【0091】
しかしながら、電気的に制御可能なフィルタ開口では、ホログラムの符号化方向に応じて異なるサイズのスイートスポットを生成するために、開口設定に応じて異なる数の回折次数をスイートスポット方向にフィルタリングすることができる。例えば、水平方向における5つの回折次数であるが、垂直方向における7つの回折次数は水平スイートスポット及び垂直スイートスポットのためのフィルタ平面における異なるサイズの開口又は穴を選択することによって、スイートスポットのために使用することができる。
【0092】
本発明の別の有利な実施形態では、少なくとも1つの照射装置の少なくとも1つの光源がトラッキング装置として設計され、少なくとも1つの光源は、放射される光のコヒーレンス特性を変更するために制御可能なものとして設計されるようにすることができる。
【0093】
異なる実施形態では、光のコヒーレンス特性が例えば、仮想オブザーバウィンドウを生成するための高いコヒーレンス又はスイートスポットを生成するための低いコヒーレンスがそれぞれの場合に異なる方向に存在するような方法で、少なくとも1つの照射装置の光源の制御又はスイッチを介して、既に修正することができる。符号化方向における高いコヒーレンスは、ここではSLM上のサブホログラム内の異なる画素から発する光が互いに干渉するように十分なコヒーレンスを意味するために理解される。スイートスポット方向における低いコヒーレンスは、スイートスポット方向におけるSLMの隣接する画素からの光が互いに干渉する必要がないことを意味する。SLMの照射には、例えば、スロットの長手方向と短手方向とで異なるコヒーレンスを有するスロット状の光源を用いることができる。拡張した準単色光源により発生する放射場の複素コヒーレンス度はvan Cittert‐Zernike定理に従って既知の方法で計算できる。このようなスロット形状の光源は特に、SLMの照射において短い方向とスロットの長い方向とで異なる角度スペクトルを生成することができる。
【0094】
SLMは好ましくは1/60度(すなわち、1アーク分)以下の角度スペクトルを有するホログラムの符号化方向に照射されるが、これは人間の目の解像度と一致するか又はそれを超える解像度を有するホログラフィック再構成を可能にするからである。しかし、スイートスポット方向では、SLMが著しく大きな角度スペクトル、例えば1~2度の角度スペクトルで照射することができる。スロット状光源の長さおよび幅、ならびにSLMからのその距離は、これらの角度スペクトルがSLM上に生成されるように規定することができる。例えば、結像素子、例えば、レンズが光源とSLMとの間に位置し、かつ、光源が物体側の結像素子の焦点距離内に位置する場合、光源は、結像素子によって無限遠に結像される。光源の1つの点からの光は次に、並列SLMに入射する。光源の別の点からの光も、平行に入射するが、第1の点と比較して異なる角度でSLMに入射する。次いで、角度スペクトルは、光源の拡張および結像素子の焦点距離によって判定される。Tan α = x /f(式中、xはスリットまたはスロットの拡張であり、fは焦点距離である)。焦点距離が100mmの結像素子の場合、例えば、光源のスロットの短い方向は、1/60度の角度スペクトルを生成するために29μm幅である。スロットの長い方向は2度の角度スペクトルを生成するために、長さ3.5mmとすることができた。
【0095】
また、仮想可視領域から見えるSLMの拡大画像が生成されるオブジェクトまたは場面のホログラフィック再構成のための表示装置では、有効角度スペクトルは拡大に伴って減少することも考慮しなければならない。スロット状光源の数値例は、ここではオブザーバの視点から直接見ることができる拡大されていないSLMに関する。拡大された形態で画像化されたSLMの場合、光源は同様に、拡大率に比例してより大きくすることができる。例えば、SLMが10倍に拡大されて結像される場合、SLMは1/6度×20度の角度スペクトルで照射されることができ、その結果、1/60度×2度の角度スペクトルは、SLMの生成された画像に入射する。スロット形状の光源は、10倍大きくすることもできる。
【0096】
いずれにしても、本発明は、正確にこのサイズのスロット形状の光源に限定されることを意図していない。数値表示は単に例を表すものであり、例示としての役割を果たす。単一のスロット形状の光源は例えば、ホログラムまたはサブホログラムの符号化方向が変更されることが意図される場合には、スロットの短い方向または長い方向の1つの向きから別の向きに制御され、回転されることができる。異なる実施形態ではスロットの長い方向の向きが異なる複数のスロット形状の光源も使用することができ、ホログラムの符号化方向が変更されることが意図されている場合にはその1つの光源がオンに切り替わり、別の光源がオフに切り替わる。
【0097】
しかしながら、少なくとも1つの空間光変調装置の照射のコヒーレンスは制御可能な光学素子によって調整されることも可能であり、その結果、それぞれの場合において、ホログラムの符号化方向に高いコヒーレンスが存在し、スイートスポット方向に低減された又は低いコヒーレンスが存在する。例えば、一次元的に設計された散乱素子は、散乱方向のコヒーレンスを減少させるのであろう。
【0098】
本発明による表示装置は、好ましくはホログラフィック表示装置として設計することができる。表示装置は特に、ヘッドマウントディスプレイとして設計することができ、ヘッドマウントディスプレイは、それぞれの場合において、オブザーバの左目及びオブザーバの右目のための本発明による表示装置を有する。
【0099】
本発明による目的は、請求項28に記載の二次元及び/又は三次元シーンを表現する方法によって更に達成される。
【0100】
二次元及び/又は三次元シーンを表すための本発明による方法は、十分にコヒーレントな光を放射する少なくとも1つの照射装置と、少なくとも1つの空間光変調装置と、少なくとも1つの光学システムと、トラッキング装置と、位置検出システムとを含む。位置検出システムは、オブザーバの目の位置を判定する。少なくとも1つの空間光変調装置上のシーンのオブジェクトポイントに対するホログラムの適切な符号化方向は、少なくとも1つの光学システムおよびトラッキング装置によって判定される。ホログラムはすべてのサブホログラムの合計を表し、サブホログラムは、表されるシーンの各オブジェクトポイントに割り当てられる。ホログラムの符号化方向の変化は、個々のサブホログラムごとに符号化方向も変化することを意味する。
【0101】
ホログラムは、単一視差符号化によって、少なくとも1つの空間光変調装置に判定された符号化方向に符号化される。少なくとも1つの空間光変調装置は、少なくとも1つの照射装置によって照射され、少なくとも1つの光学システムによってホログラムが再構成される。オブザーバの目の位置に少なくとも1つの仮想可視領域が生成される。
【0102】
このようにして、生成された仮想可視領域は、少なくとも1つの空間光変調装置に符号化されるべきホログラムの符号化方向を変更することによって、単純な手段で且つ低コストで、適当な方法でオブザーバの目を追跡することができる。
【0103】
仮想可視領域がオブザーバの眼の瞳孔と重なり最大の比例エリアを有する符号化方向は、符号化されるホログラムに対して有利に選択することができる。
【0104】
オブザーバの眼の瞳孔内の仮想可視領域の最大比例エリアを提供する符号化方向は、それぞれの場合に選択される。眼の瞳孔と等しく大きい比例する重なり面積を有する適切な符号化方向についての複数の可能性が生じる場合、これらの符号化方向のうちの1つを選択することができる。
【0105】
オブザーバの目の位置、特に、目の瞳孔の位置および場合によってはサイズが変更し、オブザーバの目の位置が変更する場合、位置検出システムを用いて新しい目の位置を判定することができ、符号化されるべきホログラムのための適切な符号化方向を選択するために、仮想可視領域がその固定中心点の周りで回転され、仮想可視領域がオブザーバの目の瞳孔の面積との重なりの最大比例面積を有する方向が判定されることが提供され得る。
【0106】
仮想可視領域の中心点は、ホログラムの適切な符号化方向を規定するために変更されず、常に1つの同じ位置に留まる。これは、仮想可視領域を眼の新しい位置、特に瞳孔に追跡するために、仮想可視領域が異なる位置にシフトされず、常にその中心点が同じ位置にあり、その中心点の周りで回転されるだけであることを意味する。更に、このことは、少なくとも1つの空間光変調装置上のホログラムもその中心点の周囲で回転され、単一視差符号化によってホログラムが符号化されるので、適当な符号化方向が選択されることを意味する。これは、
図1に示されるように、生成されるべきオブジェクトポイントに対して符号化されるべきサブホログラム又はホログラムが再構成されるべきシーンのオブジェクトポイントを通る仮想可視領域から少なくとも1つの空間光変調装置上への仮想オブザーバウィンドウの投射によって判定されるという事実に基づく。
【0107】
ここで、本発明の教示を有利な方法で設計するため、および/または記載された例示的な実施形態または構成を互いに組み合わせるための様々な可能性が存在する。この目的のために、一方では独立請求項に従属する特許請求項を参照することができ、他方では教示の好ましい実施形態も一般的に説明される図面を参照して、本発明の好ましい例示的な実施形態の以下の説明を参照することができる。本発明は記載された例示的な実施形態に基づいて概略的に説明されるが、それに限定されることは意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【
図1】本発明に係るホログラフィック表示装置を透視図の概略図。
【
図2】従来技術に係るオブザーバの目の領域に対する仮想可視領域の概略図。
【
図3】仮想可視領域を追跡するための本発明に係る実施形態の概略図。
【
図4】ホログラムの適切な符号化方向を判定するための概略図。
【
図5】ホログラムの符号化方向を変えることができる本発明に係る表示装置の概略図。
【
図6】
図5に代替的なトラッキング装置を有する本発明に係るホログラフィック表示装置の概略図。
【
図7】
図5および
図6のさらなる代替的なトラッキング装置を有する本発明に係るホログラフィック表示装置の概略図。
【
図8】(a)~(e)は、空間光変調装置上の異なるエンコード方向を有するサブホログラムの概略図を示す図。
【
図9】(a)~(d)は、空間光変調装置上の更に異なるエンコード方向を有するサブホログラムの概略図。
【
図10】本発明に係るトラッキング装置の制御可能な光学素子のデザインの概略図。
【発明を実施するための形態】
【0109】
同じ素子/部品/構成要素もまた、図面において同じ参照番号を有することを簡単に言及すべきである。
【0110】
図1はホログラフィック表示装置を透視図で示し、照射装置及び光学システムの表現を省略して簡略化したものである。このような表示装置は本発明を例示し説明するためのものであり、したがって、もう一度簡単に説明する。この表示装置において、サブホログラムはオブザーバが位置し、ここでは瞳Pを有する目の表現によって表されることが意図されるオブザーバ面における仮想オブザーバウィンドウVWの投射として、空間光変調装置SLM上のそれぞれのオブジェクトポイントを介して、空間光変調装置SLM上への空間光変調装置に関して異なる深さのシーンの複数のオブジェクトポイントに対して生成され、これは、簡潔さのためにSLMと呼ばれる。SLM上のサブホログラムの位置は、仮想オブザーバウィンドウVWに対するオブジェクトポイントの位置に依存することが分かる。サブホログラムの寸法または拡張またはサイズはさらに、符号化されたオブジェクトポイントのz位置に依存し、ここで、zは、オブジェクトポイントとSLMとの間の距離である。サブホログラムの重なりは、ほとんどの場合に生じる。
【0111】
オブザーバの眼の入射の瞳孔から離れた距離に位置する、すなわち、例えば、SLMの平面の近くに位置する、または、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)またはヘッドアップディスプレイ(HUD)の場合には、SLMの仮想平面の近くに位置するオブジェクトポイントがそのサイズまたは拡張に関して小さいサブホログラムを有する。例えば、単一視差符号化とも呼ばれるホログラムの1次元(1D)符号化の場合、小さなサブホログラムは10画素の横方向の拡張を有することができ、または、全視差符号化とも呼ばれるホログラムの2次元(2D)符号化の場合、10×10画素の横方向の拡張を有することができる。
【0112】
シーン、好ましくは3次元シーンのホログラフィック再構成のために、サブホログラムはホログラムの単一視差符号化の場合にはホログラムの符号化方向における仮想オブザーバウィンドウから形成され、ホログラムの非符号化方向におけるスイートスポットから形成されるか、またはホログラムの全視差符号化の場合にはオブザーバが再構成されたシーンを観察することができる2次元仮想オブザーバウィンドウから形成される、仮想可視領域と共に使用される。
【0113】
例えば、
図1による投影方法を用いて、ホログラムを計算し、生成することができる。
【0114】
投影法では、オブザーバ面内の仮想可視領域の輪郭がオブジェクトポイントを介してSLM上に投影され、SLM上にサブホログラムを生成する。言い換えれば、サブホログラムの輪郭は、仮想可視領域の輪郭の投射によってSLM上に形成または生成される。次に、オブジェクトポイントを再構成することを意図した位相関数がサブホログラムに符号化される。最も単純なデザインではサブホログラムにおける振幅関数、あるいは単に振幅はサブホログラムの全ての画素に対して同じ値に設定され、サブホログラムが事前定義された強度でオブジェクトポイントを再構成するような方法で選択される。オブザーバ面内の仮想可視領域は、そのサイズが得られる回折イメージの1回折次数に制限される。他の回折次数は、仮想可視領域が1つの回折次数に制限されているため、仮想可視領域においてオブザーバには見えない。
【0115】
このようにして、仮想可視領域から見える2次元および/または3次元シーンを再構成するホログラムが生成される。
【0116】
ヘッドマウントディスプレイ(HMD)、ヘッドアップディスプレイ(HUD)、またはSLMの実イメージまたは仮想イメージを有する投影ディスプレイに関して、本明細書で使用される用語「SLM」は、仮想可視領域から可視であるSLMのイメージを指すことが意図される。
【0117】
投影法では、サブホログラムの振幅は最も簡単な設計でサブホログラムの拡張にわたって一定である。しかし、この振幅がサブホログラムの拡張にわたって変更可能である設計も提供することができる。これは、例えば、仮想視認領域においてより一層均一な輝度分布を得るために、ピクセル伝送のフーリエ変換の逆数による乗算を介して行うことができる。
【0118】
図1による表示装置によって生成することができるオブザーバ面内の仮想オブザーバウィンドウは、オブザーバの眼の瞳孔よりも小さいか、または任意選択で眼の瞳孔よりも大きいか、または等しい拡張を有することができる。しかしながら、仮想オブザーバウィンドウはさもなければSLMの画素ピッチ及び画素数に厳しい要件を課さなければならないので、典型的には約10mm以下又は最大で約15mm以下であるべきである。
【0119】
しかしながら、仮想オブザーバウィンドウを生成するのと同じSLM、すなわち、SLMの特定のまたは規定されたピクセルピッチおよび特定の数のピクセルを用いて、仮想オブザーバウィンドウよりも広がりが著しく大きくなり得るスイートスポットをオブザーバ面内に生成することが可能である。スイートスポットは例えば、約20mm以上の拡張を有することもできる。オブザーバの目の距離は、直視ディスプレイにおけるスイートスポットの拡張の限界を構成する。従って、一方の目のスイートスポットのための光は、オブザーバの隣接する目に当たることを防止されるべきである。オブザーバの両眼は互いに水平に隣接して位置するので、これはスイートスポットの水平方向の広がりのみに本質的に関連する。したがって、垂直に生成されたスイートスポットは例えば、目の距離よりも大きな広がりを有するものとして選択することもできる。ヘッドマウントディスプレイの場合、スイートスポットの拡張のサイズは、スイートスポットの領域が眼内の瞳孔の典型的な移動範囲をカバーすることができるように有利に選択される。
【0120】
次に、本発明による表示装置としてのホログラフィックヘッドマウントディスプレイ(HMD)の例に基づいて、
図3~
図10を参照して、例示的な実施形態において本発明を説明する。本発明をより明確に理解するために、
図2を参照して、出願人によって以前に実行された仮想可視領域の追跡を説明する。
【0121】
個々のホログラムまたはサブホログラムが単一視差符号化によってシーンの個々のオブジェクトポイントに対してSLMに符号化される、本出願人のヘッドマウントディスプレイでは約1mmの非常に小さな仮想オブザーバウィンドウおよび約10mmのスイートスポットのみが、ほとんど一緒に使用され、オブザーバ面内に仮想可視領域を形成する。全体として、これは、2つの方向で実質的に異なるエッジ長さ又は拡張を有する矩形の仮想可視領域を生成し、その中で、2次元又は3次元シーンの再構成がオブザーバの眼の瞳孔に見える。
【0122】
図2は、仮想オブザーバウィンドウVW及びスイートスポットSSから形成される、従来技術による生成された仮想可視領域を示す。このような仮想可視領域はホログラムをSLMに単一視差符号化する際に生成され、符号化されたホログラムまたはサブホログラムは固定された符号化方向、ここでは垂直符号化方向を有する。これにより、垂直方向に、その延長が小さい仮想オブザーバウィンドウVWが生成される。
図2において、仮想オブザーバウィンドウVWの拡張は、オブザーバの目の瞳孔Pのサイズよりも小さい。図から分かるように、ここでは、仮想オブザーバウィンドウVWの広がりよりも著しく大きい広がりを有するスイートスポットSSが水平方向に生成される。
【0123】
図2(a)には、オブザーバの眼の瞳孔Pの位置が仮想視認領域の中央領域に示されている。これは、目の瞳孔Pが各場合において、仮想オブザーバウィンドウVWの中心領域に位置し、スイートスポットSSの中心領域にも位置することを意味する。仮想可視領域に対する瞳孔Pのこの位置において、オブザーバの目は、再構成された、好ましくは3次元のシーンを知覚し観察することができる。
【0124】
図2(b)は、オブザーバの目の瞳孔Pが仮想可視領域の中心に対して、特にここに存在するスイートスポットSSの中心に対して、水平方向に移動した場合を示す。しかしながら、目の瞳孔Pは、仮想可視領域のスイートスポットSS内に依然として位置している。この場合も、好ましくは3次元シーンの再構成は、オブザーバの目に見え、観察可能である。
【0125】
図2(c)では、
図2(b)と比較して、水平移動に加えて、オブザーバの眼の瞳孔Pも仮想可視領域の中心に対して垂直方向に移動した場合が示されている。図から分かるように、目の瞳孔Pはここでは仮想可視領域の外側に位置しており、すなわち、目の仮想可視領域および瞳孔Pは、もはや互いにオーバーレイまたはオーバーラップしない。オブザーバは、再構成されたシーンをもはや観察することができない。従来技術による従来の表示装置では、仮想可視領域がここで、例えば回折装置などの適切な光学手段でシフトされなければならず、眼の瞳孔Pの新しい位置まで追跡されなければならない。このようにして眼の瞳孔Pの新しい位置にシフトされた仮想可視領域は、
図2(c)において破線で示されている。
【0126】
図2と比較して、
図3は、オブザーバの目が位置するオブザーバ面において、仮想オブザーバウィンドウの方向とスイートスポットの方向を本発明に応じて変えられる生成された仮想可視領域を示す。ここでも、ホログラムまたはサブホログラムは、単一視差符号化によって再びSLMに符号化される。したがって、結果として、SLM上のホログラムまたはサブホログラムの符号化方向を変更することができる。
図2に関連して述べたように、このような仮想可視領域はホログラムをSLMに単一視差符号化することによって生成され、符号化されたホログラムまたはサブホログラムは固定された符号化方向、ここでは垂直符号化方向を有する。その結果、縦方向には、拡張において小さい仮想オブザーバウィンドウVWが生成される。ここでも、
図3では単純化のために、また
図2からの例にとどまるために、仮想オブザーバウィンドウVWの拡張はオブザーバの目の瞳孔Pのサイズよりも小さい。図から分かるように、ここでは、仮想オブザーバウィンドウVWの拡張よりも拡張が著しく大きいスイートスポットSSが水平方向に生成される。
【0127】
図3(a)には、オブザーバの目の瞳Pの位置が示されており、この位置に対して、ホログラムまたはサブホログラムの垂直符号化方向が使用されている。眼の位置、特にSLMに対するオブザーバの眼の瞳孔はSLMに符号化されるホログラムの適切な符号化方向を判定するために、位置検出システムによって判定される。次いで、ホログラムの適切な符号化方向が、例えば
図5にさらに詳細に示す表示装置及びトラッキング装置の光学システムによって判定され、これによって、シミュレーションを用いた単一視差符号化によってホログラムがSLM内に符号化され、仮想可視領域がシミュレートされた形で生成される。次に、仮想可視領域がオブザーバの眼の瞳孔に重なるかどうかが判定される。この場合、シミュレートされた仮想可視領域が、ホログラムのこの符号化方向においてオブザーバの目の瞳孔と重なり最大の比例領域を有するかどうかをさらに検証することができる。同様にこの場合、ホログラムはこの判定された符号化方向においてSLMに符号化され、オブジェクトポイントは照射装置及び光学システムを用いたSLMの照射を通して再構成され、オブザーバは実際に生成された仮想可視領域を通してオブジェクトポイントを観察することができる。
【0128】
オブジェクトポイントまたは場面を観察しながら眼または眼の瞳孔が移動する場合、オブザーバが表されたオブジェクトポイントまたは表された場面を見続けることができるように、仮想可視領域は瞳孔を追跡しなければならない。仮想可視領域の追跡は、
図3(b)に示されている。
図3(a)と比較して眼の瞳孔Pの変化した位置がそこに示されている。眼または瞳孔Pは、
図3(a)からの仮想可視領域もはや瞳孔Pに重ならないように垂直に移動している。仮想可視領域が中心点Mの周りの仮想可視領域の回転によって眼の瞳孔の新しい位置まで追跡され、それによって、SLM上のホログラムの符号化方向が同様に変更される。
【0129】
このようにして、ホログラムの符号化方向はシミュレーションによって、すなわち、その中心点Mを中心としてシミュレートされた形で生成された仮想可視領域の回転によって、再度判定され、仮想可視領域の最大比例領域が眼の瞳に重なったり、重なったりするホログラムの符号化方向が適切に選択される。ホログラムの符号化方向が適切に選択される場合、ホログラムは、この選択され判定された符号化方向を用いてSLMに符号化され得る。このようにして、目の瞳孔の新しい位置に重なる仮想可視領域がオブザーバ面内に生成される。仮想オブザーバウィンドウおよびスイートスポットは再び、仮想可視領域の回転によって、したがって符号化方向の回転によって、瞳孔内に部分的に配置され、その結果、オブザーバは、干渉なしに再構成されたシーンを観察することができる。
【0130】
図2と比較すると、
図3による仮想可視領域の追跡中、仮想オブザーバウィンドウとスイートスポットとによって形成される仮想可視領域の矩形領域の中心点Mは、眼または眼の瞳孔の新しい位置への仮想可視領域の追跡後であっても、同じ位置に留まる。したがって、仮想視認領域の中心点Mは、追跡中にシフトされない。
【0131】
瞳孔が異なる位置に移動する場合、オブザーバの移動中に、例えば、直視型ディスプレイの場合のように、瞳孔が例えば、ヘッドマウントディスプレイとして使用される場合には、大きな領域にわたって移動することができないので、瞳孔位置の必要な範囲に応じて、仮想可視領域の回転角度、したがって、任意の所与の小さなステップにおける符号化方向の回転角度を選択する必要はない。仮想可視領域を追跡するためのホログラムの符号化方向の変更はオブザーバの大きな動きに対しても提供されないが、代わりに、例えばヘッドマウントディスプレイの場合に使用することができるように、仮想可視領域の細かいトラッキングに特に有利に適している。瞳孔は限られた領域にわたってしか動かせないため、少数の回転角度設定で十分である。例えば、水平(0°)、垂直(90°)、2つの対角回転角度設定(+45°および-45°)など、4つの回転角度で十分である。
【0132】
図4は、異なる回転角度設定において、約1mmの延長部を有する仮想オブザーバウィンドウと、約10mmの延長部を有するスイートスポットとを有する仮想可視領域を示すアレンジメントを概略的に示す。仮想可視領域はここでは4つの可能な回転角度設定で示され、すなわち、ホログラムの符号化方向は、水平方向(B)、垂直方向(D)、および2つの対角方向(AおよびC)に位置する。仮想オブザーバウィンドウVW及びスイートスポットSSと眼の瞳Pとの重なりの最大比例領域を有する回転角度は、SLMに符号化されるホログラムのための適切な符号化方向を選択及び判定するために選択される。ホログラムのための適切な符号化方向の判定中に、眼の瞳孔Pと仮想可視領域との等しく大きな重なり領域を有する複数の可能な符号化方向が生じる場合、これらの符号化方向のうちの1つを選択し、使用することができる。
【0133】
図4において、眼の瞳孔Pの中心または中心点は、水平線Lまたは仮想可視領域の中心点Mに対して約22.5度の角度で提供される。図からわかるように、垂直符号化方向(D)および対角符号化方向(-45°;C)は、眼の瞳孔Pと同じ重なり領域を有するので、再構成されたオブジェクトポイントまたはシーンの表現において、これらの2つの符号化方向を有するホログラムまたはサブホログラムをSLMに符号化する場合、同じ量の光が瞳孔Pを通過してオブザーバの眼に入る。したがって、これら2つの符号化方向のうちの1つは、SLMに符号化されるホログラムまたはサブホログラムのために選択することができる。
【0134】
原則として、一次元ホログラムの回転によるホログラムの符号化方向の変化は国際公開第2018/037077A2号明細書に開示されているように、ホログラムまたはサブホログラムにおけるプリズム項の符号化による符号化方向における仮想オブザーバウィンドウのシフトとも組み合わせることができ、その開示内容は、その全体が本明細書に組み込まれることが意図されている。線形位相関数(すなわち、プリズム関数)がホログラムの位相に加えられる場合、仮想オブザーバウィンドウは、回折次数の分数だけシフトされる。隣接する画素間のπの差を有する線形位相関数は例えば、回折次数の半分(1/2)だけ仮想オブザーバウィンドウのシフトをもたらし、または一般に2π/xの差は、回折次数の1/xのシフトをもたらす。しかし、個々の回折次数の輝度分布は、ホログラム中の位相関数による仮想オブザーバウィンドウのこのシフトによっては変化しない。オブザーバは通常、好ましくは三次元シーンの正しい再構成を見るが、オブザーバが中心回折次数からより高い回折次数に離れると、シーンの明るさは減少する。この輝度制限のために、プリズム項の符号化を通した仮想オブザーバウィンドウのシフトは、わずかな回折次数の小さな領域にわたってのみ通常適用可能である。
【0135】
仮想オブザーバウィンドウのサイズが眼の瞳孔よりも小さい場合、仮想オブザーバウィンドウの中間イメージを有する光学システムにおける回折次数のフィルタリングによって、1つの回折次数の拡張からの光のみが眼に到達することがさらに保証されるべきである。例えば、仮想オブザーバウィンドウがシフトされていない場合、フィルタリングは、ゼロ次の回折次数から目までの光のみを可能にする。仮想オブザーバウィンドウが例えば、プリズム機能を通して、回折次数の半分だけシフトされる場合、フィルタリングは、ゼロ次の回折次数の半分を通して、かつ、1次の回折次数の半分を通して、この光が目に到達できるようにするべきである。つまり、フィルターの開口は、機械的または電子制御を通して使用されるプリズム機能に応じて、シフト可能なように設計されるべきであるということである。このようなフィルタ開口の使用は、本発明の全ての実施形態と組み合わせて可能である。実施形態において、ホログラムの符号化方向を設定または修正するために、フーリエ面内の任意の場合に回動可能なフィルタ開口が使用される場合、回動可能およびシフト可能の両方と同じフィルタ開口を設計することによって、最も簡単な方法で組合せが可能である。
【0136】
しかしながら、仮想オブザーバウィンドウのサイズがオブザーバの瞳孔よりも大きい場合にはフィルタリングは絶対に必要ではない、というのはフィルタリングがなくても、1つの回折次数の拡張からの光のみが眼に到達することが保証されるからである。しかしながら、
図4に示される例示的な実施形態は、目の瞳孔よりもサイズが小さい仮想オブザーバウィンドウに関する。約10mmの大きなスイートスポットを有する約1mmの大型仮想オブザーバウィンドウは例えば、約3mm×10mmの可能な領域をカバーするために、ホログラムの符号化方向において、±1次回折次数、すなわち±1mmだけ、依然としてシフトされ得る。
【0137】
したがって、ホログラム又はサブホログラムの符号化方向の回転に加えて、例えば、プラス/マイナス1回折次数の小さな領域による仮想可視領域の小さなシフトが、眼の瞳孔をより良好に当てる又はオーバーレイまたはオーバーラップするために行われ得る。したがって、眼の瞳孔Pとの最良のオーバーレイを提供するホログラムの符号化方向を選択する際に、符号化方向の回転と小さなシフトとの組合せも考慮されることができる。
【0138】
ここで、符号化方向の回転のみに関連する前述の場合のように、個々の目の位置に対する符号化方向の割り当ては、それぞれの場合に再計算されるか、又は全ての関連する目の位置に対して事前に1回事前に計算され、例えばルックアップテーブルの形成で記憶されることができる。後者の場合、位置検出システムで検出された眼の瞳孔の位置に応じて、ルックアップテーブル内のこの位置について記憶されたホログラムの符号化方向が選択される。必要であれば、同様にルックアップテーブルに記憶されているプリズム項による仮想オブザーバウィンドウのシフトをさらに行うことができる。
【0139】
図5は、表示装置、特にホログラフィック表示装置を示す。表示装置は、ホログラムの符号化方向を変更することができるトラッキング装置4を備える。
【0140】
スイートスポットは、この散乱素子がSLMの近くまたはSLMの中間イメージ面内に配置される場合、散乱素子によってオブザーバ面内に生成することができる。
【0141】
仮想可視領域から見えるSLMの拡大イメージが生成されるオブジェクトまたは場面のホログラフィック再構成のための表示装置において、散乱素子は拡大された形態で同様に結像され、有効散乱角は拡大に伴って減少することを考慮すべきである。20倍に拡大されたSLMの結像の場合、約20°x1°の散乱角度を有する散乱素子は例えば、約1°x1/20°の実効散乱角度を発生する。仮想可視領域から1mの距離にSLMのイメージが生成される場合、例えば、式tan 1°×1000mmに従い、有効散乱角1°で約17mmの拡張を有するオブザーバ面において、スイートスポットが生成される。
【0142】
この例では、符号化方向における1/20°の角度の結果として、好ましくは3次元シーンの解像度は同様に、符号化方向において20ピクセル/度に制限され、したがって、目に見える最大解像度よりも劣る。しかしながら、数値は再び、例のみを表す。散乱角度が20度×0.3度の散乱素子も使用することができる。
【0143】
図3及び
図4による眼の瞳の新しい位置に仮想可視領域の追跡を提供するために、例えば、散乱素子として設計される複数の制御可能な光学素子を用いて、ホログラム又はサブホログラムの符号化方向を修正することができ、従って、スイートスポット方向も修正することができる。第1の制御可能な光学素子は光を、例えば、垂直に約20°×水平に1°散乱させるであろう。第2の制御可能な光学素子は、垂直に約1°×水平に20°散乱させるであろう。一方の制御可能な光学素子、次いで他方の制御可能な光学素子を制御することによって、ホログラムまたはサブホログラムの符号化方向を90°回転させることができ、対応する大きなスイートスポットを、それぞれの場合において符号化方向に垂線生成することができる。
【0144】
この配置は任意選択的に、以下のように拡張することができる:第3の制御可能な光学素子は光を、例えば、斜めに+45度の方向に約1°、斜めに-45度の方向に20°散乱させる。第4の制御可能な光学素子は光を、例えば、斜めに-45度の方向に約1°、斜めに+45度の方向に20°散乱させる。この場合、4つの符号化方向から、制御可能な光学素子のうちの1つのそれぞれの場合における制御を介して選択を行うことができる。
【0145】
しかしながら、オブザーバの目の瞳孔の新しい位置への仮想可視領域の追跡のために、少なくとも2つの受動散乱素子をトラッキング装置に設けることもできる。これら少なくとも2つの受動散乱素子は、光散乱用のトラッキング装置の少なくとも1つの制御可能な光学素子によって選択することができる。
【0146】
少なくとも2つの受動散乱素子は例えば体積格子として設計することができ、この目的のために特定の角度選択性を有することができる。この場合、体積格子として設計された個々の散乱素子に対して異なる角度選択性を設定することができる。
【0147】
光散乱用の少なくとも2つの受動散乱素子のうちの1つを選択又は提供するために、偏向格子素子及び制御可能な光学素子を設けることができる。偏向格子素子は例えば、偏光選択の目的のために制御可能又は切替可能な偏向角を有する。偏向格子素子は例えば、左円形又は右円形偏光入射光に対して、各回折次数が異なる偏向角に対応する+1次又は-1次の回折次数のいずれかにこの光を偏向させる偏向格子素子とすることができる。制御可能な光学素子は偏光スイッチ、例えば、電場によって制御可能なLC(液晶)層として設計することができる。偏光スイッチの形態の制御可能な光学素子は偏光スイッチのスイッチング状態に応じて、例えば、1つのスイッチング状態における左円偏光及び別のスイッチング状態における右円偏光の規定された偏光状態を生成する。このようにして、偏向角を偏向格子素子において選択することができ、トラッキング装置の受動散乱素子の1つを散乱素子の角度選択性に基づいて選択することができる。
【0148】
このようなトラッキング装置を備えた表示装置が
図5に示されている。表示装置は少なくとも1つの光源を有する照射装置1と、SLM 2と、光学システム3と、トラッキング装置4とを含み、ここで、表示装置内のさらなる光学素子又は装置は可能であるが、本発明を説明する必要はない。ホログラムまたはサブホログラムはオブザーバのためのシーンを再構成または表現するために、単一視差符号化によってSLM内で符号化されることが意図される。SLMは、十分にコヒーレントな光を照射装置1によって照射される。
【0149】
光学システム3は例えば、レンズ素子のような少なくとも1つの結像素子からなり、SLM 2とオブザーバ面5との間に配置される。光路における光学システム3の配置は、トラッキング装置4がない場合には商社装置1の光を非符号化方向、すなわちスイートスポット方向にオブザーバ面5内に結像させるように設けられている。光学システム3はさらに、オブザーバ面5から見えるSLM 2の拡大仮想イメージ(不図示)を生成する。
【0150】
トラッキング装置4は、光伝搬方向においてSLM 2の下流に配置された2つの受動的な一次散乱素子6及び7を備える。第1の散乱素子6は、垂直方向に20°の散乱角度及び水平方向に1°の散乱角度を生成する。第2の散乱素子7は、ここでは垂直方向に1°、水平方向に20°の散乱角度を生成する。2つの受動1次散乱素子はここでは体積格子として設計することができ、体積格子に典型的な制限された角度許容度を有する。2つの受動一次散乱素子の角度受容範囲は互いに異なるので、受動一次散乱素子6または7は規定された光入射角に基づいて選択することができ、入射光は、それに応じて散乱素子によって散乱される。
【0151】
トラッキング装置4は、ここでは受動一次散乱素子6とSLM 2との間に形成された偏光格子素子の形の偏向格子素子8を更に含む。偏向格子素子8は、それに対応して、規定された方法で偏向された光を偏向させる。偏向格子素子8は例えば、入射した左円偏光を+1次回折次数に偏向し、入射した右円偏光を-1次回折次数に偏向する。これにより、特定の一次散乱素子6又は7を選択することができ、光をその上に向けることができ、光は、それに応じて散乱される。
【0152】
トラッキング装置4はさらに、ここでは偏光スイッチとして設計される制御可能な光学素子9を含む。制御可能な光学素子9は、偏向格子素子8と表示装置のビーム経路内のSLM 2との間に配置される。光の規定された偏光状態を生成するために、偏光スイッチの形態の制御可能な光学素子9を制御することができる。制御可能な光学素子9は例えば、そのスイッチング状態に応じて左円偏光又は右円偏光のいずれかを発生する。従って、偏向格子素子8が光を+1次回折次数又は-1次回折次数に偏向させるか否かを判定するために、制御可能な光学素子9によって選択がなされる。受動一次散乱素子6および7は偏向格子素子8の+1次回折次数の偏向角度が受動一次散乱素子6または7の一方の角度受入範囲内に入り、偏向格子素子8の-1次偏向次数の偏向角度が他方の受動一次散乱素子6または7の角度受入範囲内に入るように、体積格子として設計される。
【0153】
制御可能な光学素子9または偏光スイッチのスイッチング状態によって、および偏向格子素子8によって、2つの受動一次散乱素子6または7のうちの1つは、入射光をそれぞれ散乱させるように選択され、一方、他の受動一次非選択散乱素子6または7はその受光範囲外の角度でそれを通過する光を有し、その結果、光は散乱されない。
【0154】
図5は制御可能な光学素子9の第1の制御状態またはスイッチング状態における受動一次散乱素子6の制御または選択を、
図5(a)において示し、
図5(b)において、受動一次散乱素子6の制御または選択は、制御可能な光学素子9の第2の制御状態またはスイッチング状態において示される。単一視差符号化によって適切な符号化方向でホログラムまたはサブホログラムをSLM 2に符号化するために、符号化されるホログラムの適切な符号化方向を判定するために、仮想可視領域の生成のシミュレーションが事前に必要である。次に、
図5(a)および(b)に示されるようなプロシージャがここで実行され、仮想可視領域がオブザーバの眼または眼の瞳孔と重なり最大領域を有する方向が、
図3および
図4に係るその中心点の周りの仮想可視領域の回転を介してトラッキング装置4によって判定される。それによって、ホログラムまたはサブホログラムがSLM 2に符号化される符号化方向は、眼または眼の瞳孔が異なる位置に移動しても、オブザーバが干渉なしに表されたオブジェクトポイントまたは場面を観察することができるように判定される。
【0155】
制御可能な光学素子9は仮想可視領域を模擬し、従って適切な符号化方向を判定するために、
図5(a)において第1の制御状態に設定されており、その結果、光散乱には、光方向に最初に存在する受動的な1次散乱素子6が選択される。この場合、仮想可視領域がオブザーバ面5内に生成され、生成された仮想オブザーバウィンドウVWが
図5の描画面内に生成され、スイートスポットSSが描画面に垂線生成される。
【0156】
図5(b)の図において、制御可能な光学素子9は、第2の制御状態に設定され、その結果、第1の受動2次散乱素子7に続く第2の受動1次散乱素子7が光散乱のために選択される。この場合、仮想可視領域がオブザーバ面5内に生成され、ここで、生成された仮想オブザーバウィンドウVWが
図5の描画面に垂線生成され、スイートスポットSSが描画面内に生成される。このようにして、オブザーバ面5内の仮想オブザーバウィンドウVWおよびスイートスポットSSの方向はそれらの中心点の周りの回転によって修正することができ、その結果、ホログラムまたはサブホログラムのサイズまたは拡張を判定するために、仮想オブザーバウィンドウのSLM 2上への投射の結果として、ホログラムの符号化方向も変更される。
【0157】
この配置はトラッキング装置4内のさらなる制御可能な光学素子、さらなる偏向格子素子、および2つのさらなる受動1次散乱素子を使用することによって、4つの角度設定方向、すなわち、ホログラムまたはサブホログラムの符号化方向の水平、垂直、および2つの対角角度設定に拡張することができる。第1の制御可能な光学素子9および第1の偏向格子素子8は次に、第1の制御可能な光学素子9の制御状態に従って、2つの可能な偏向角を生成する。次に、第2の制御可能な光学素子は例えば、格子周期が第1の偏向格子素子8と異なる第2の偏向格子素子が+1次回折次数又は-1次回折次数のいずれかに偏向するように、光の偏向を設定することができる。これにより、第1の偏向格子素子の+1次の回折次数又は-1次の回折次数と、2番目の偏向格子素子の+1次の回折次数又は-1次の回折次数とを組み合わせた、合計4つの可能な偏向角が生成される。4つの受動1次散乱素子はそれぞれの場合に、制御可能な光学素子及び偏向格子素子のアレンジメントの4つの偏向角のうちの1つに対応する4つの異なる角度受容範囲を有する体積格子として、それぞれの場合に設計することができる。
【0158】
符号化されるホログラムのために、符号化方向の更なる角度方向が必要とされる場合、トラッキング装置内に、このタイプの更なる光学素子を設けることができる。
【0159】
トラッキング装置が偏向格子素子の代わりに、例えば、偏光ビームスプリッタ素子のような少なくとも1つの再方向付け素子(リダイレクト素子)を有することも可能であり、これは光の偏光を変化させることによって、光路内の異なる光路を選択するためであり、各場合の光路は1次受動散乱素子を有する。個々の経路における散乱素子は、この目的のために異なって整列されるべきである。例えば、1つの受動散乱素子は偏光ビームスプリッタ素子の1つの出力において第1の経路内で水平方向に光を散乱させることができ、別の受動散乱素子は、偏光ビームスプリッタ素子の別の出力において第2の経路内で垂直方向に光を散乱させる。この場合、散乱素子は、角度選択的に設計される必要はない。また、経路の数及び受動散乱素子は、第2の制御可能な光学素子及び第2の偏光ビームスプリッタ素子によって、ここでは多数の4つに拡張することができる。
【0160】
偏向格子素子、制御可能な光学素子、及び2つの受動散乱素子の代わりに、例えば、
図5による表示装置のトラッキング装置4は、入射光の散乱方向を修正するために機械的に回転するように設計された単一の受動散乱素子のみを含むことができる。受動散乱素子をここでは1次元として設計した。単一の受動散乱素子は例えば、1つの方向に20°で、それに垂直な方向に1°で散乱し、20°の方向は受動散乱素子を、例えば、水平方向から垂直方向に、または+45°または-45°の斜め方向に回転させることによって修正することができる。偏向格子素子が不要であり、制御可能な光学素子も不要であるため、必要な光学部品の数は、この設計において有利に低減される。しかし、代わりに散乱素子の機械的回転のための装置が必要である。
【0161】
しかしながら、原則として、本発明は、散乱方向を変更するための特定のタイプの散乱素子の使用に限定されない。その散乱方向に変更可能な単一の電子的に制御可能な一次元散乱素子の使用も考えられるのであろう。
【0162】
オブザーバの目または目の瞳孔の新しい位置まで仮想可視領域を追跡するためのさらなる例示的な実施形態を
図6に示す。そこに示された表示装置は、少なくとも1つの光源を備えた照射装置10と、SLM 20と、光学システム30とを備える。照射装置10の光源は、ここではスリット形状またはスロット形状として設計され、十分にコヒーレントな光でSLM 20を照射する。光学システム30は結像素子を備え、ここでは2つの結像素子31および32であって、結像素子の特別な配置は設けられない。光伝搬方向においてSLM 20の上流又は下流に配置される、例えば1つの単一の結像素子のみを設けることもできる。あるいは、3つ以上の結像素子を提供することもできる。
【0163】
SLM 20は、照射装置10とSLM 20との間に配置された結像素子31によって、ここで光で照射される。光は、SLM 20の下流に配置された光学システム30の更なる結像素子32を光方向して、オブザーバ面50内の仮想可視領域に集束される。
【0164】
図6(a)は、描画面におけるオブザーバ面50内の仮想オブザーバウィンドウVWの生成を示す。照射装置10の光源はスリット状又はスロット状の光源の狭い側又は短い側がSLM 20を照らすように、ここで移動又は回転される。光源はスロット形状を有することを明確にするために、ここでは説明目的のために斜視図で描かれている。厳密に言えば、光源のスロットの長辺は描画面に対して垂直に位置し、側面図では見えない。光の非常に小さな角度スペクトルがこの光伝搬方向における光源の小さな拡張のために、以下の結像素子31の下流で生成される。SLM 20は、本質的に平行光で照射される。しかしながら、ここでは示されていないが、仮想オブザーバウィンドウVWを生成するSLM 20の画素による回折とは別に、SLM 20に符号化されるべきホログラムの符号化方向に対応するこの方向にオブザーバ面50において光源によって放射される光は多かれ少なかれ点状の領域に再び集束される。
【0165】
照射装置10の光源は仮想可視領域をオブザーバの眼又は眼の瞳孔の新しい又は異なる位置に追跡するために、
図6(b)に示すように移動又は回転される。光源は、スリット状又はスロット状の光源の長辺が今度はSLM 20を照射するように移動又は回転される。ここで光源から異なる位置から放射され、連続、点線又は破線として示される光は次いで、異なる角度でSLM 20に当たり、これにより、オブザーバ面50内の異なる位置にある結像素子32によっても結像される。その結果、光はこの方向に散乱される。スイートスポットSSはこのように、SLM 20を照射するために照射装置10のスリット形状またはスロット形状の光源の長辺を使用することにより、オブザーバ面50内に生成される。
【0166】
このように、SLM 20の画素上の回折にかかわらず、仮想オブザーバウィンドウVWが形成される短い方向と、スイートスポットSSが形成される長い方向とで、スリット状またはスロット状の光源のスリット状に形成されたまたはスロット状に形成されたイメージがオブザーバ面50内に生成される。
【0167】
照射装置10のスリット形状又はスロット形状の光源は、SLM 20上のホログラムの適切な符号化方向を判定するために回転される。この場合、光源のスリット又はスロットは例えば、光源の長辺が
図4による水平線Lに対して水平又は垂直方向に又は+45度又は-45度の角度で存在し、光源の短辺又は狭い側が、それぞれこの方向に垂直に設けられるように配置することができる。
【0168】
オブザーバの目または目の瞳孔の新しい位置まで仮想可視領域を追跡するためのさらなる例示的な実施形態を
図7に示す。ここでは、フィルタ配置として表示装置のトラッキング装置を設計した。この目的のために、表示装置は、少なくとも1つの光源を有する照射装置100と、SLM 200と、光学システム300と、フィルタ配置として設計されたトラッキング装置400とを備える。光学システム300は、少なくとも1つの結像素子、ここでは3つの結像素子301、302、および303を備える。SLM 200は照射装置100の光源によって照射され、オブザーバ面500内に仮想可視領域を生成するために、光学システム300の結像素子301によって照射される。光伝搬方向においてSLM 200の下流にあるさらなる結像素子302は、光源の中間イメージまたはSLM 200のフーリエ変換が生成されるフィルター面440内に光を集束させる。したがって、このフィルタ平面440は、光源イメージの中間イメージ面、またはSLM 200のフーリエ面とも呼ばれ得る。次いで、光方向においてフィルタ面440の下流に配置された結像素子303がこの中間イメージ面又はフーリエ面440をオブザーバ面500内に結像し、それによって、仮想オブザーバウィンドウVW及びスイートスポットSSによって形成される仮想可視領域を生成する。SLM 200の画素構造に起因して生成され、破線で示される回折次数は、フィルタ面440内に模式的に描かれる。トラッキング装置400は、それに応じて入射光をフィルタする開口またはダイヤフラム401を備える。これは、特定の所望の回折次数が通過可能であり、他の回折次数がフィルタ面440内の開口401によってフィルタ除去されることを意味する。回折次数の位置およびフィルタ開口401の配向は説明目的のために、この図において斜視図で示される。厳密に言えば、水平な回折次数およびまたフィルタ開口401の長い方向は、
図7(a)の図面の断面平面に対して垂直に位置する。
【0169】
図7(a)の図示において、トラッキング装置400の開口401は垂直方向に1つの回折順序のみを通過させるが、水平方向に複数の回折順序を通過させるように、表示装置内に配置される。このようにして、垂直方向に仮想オブザーバウィンドウVWが生成される。このように配置された開口401は、SLM 200内に符号化されるホログラム又はサブホログラムの垂直方向の符号化に使用することができる。
【0170】
図7(b)では、フィルタ面440内の開口401がここで、開口401が水平方向に1つの回折次数だけ、垂直方向に複数の回折次数だけを通過させるように、表示装置内に配置される。これにより、上下方向にスイートスポットSSが生成される。このように配置されたアパーチャは、SLM200上のホログラムまたはサブホログラムの水平符号化方向に使用することができる。
【0171】
一般に、スイートスポット方向に使用される回折次数の全体が必要ではなく、むしろ、開口401のサイズも回折次数の回折を含むことができる。開口401は例えば、4.4回折次数のサイズを有することができる。開口401は、ホログラムまたはサブホログラムの符号化方向に1回折次数の最大サイズを有するべきである。しかし、開口401はまた、1回折次数よりも小さいサイズであってもよい。さらに、開口401の中心は、回折次数の中心と一致する必要はなく、それに対してオフセットすることもできる。開口401は例えば、ゼロ次スポットのようなアーチファクトをさらに除去するように構成することもできる。最も単純な場合、トラッキング装置400の開口401は、機械的に回動可能な開口ダイヤフラムであり得る。開口401は例えば、液晶(LCD)に基づき、スイッチング状態に従って光を吸収または送信する電気的に制御可能な開口として設計することもできる。
【0172】
すでに説明したように、ホログラムの符号化方向の回転は、本発明の特定の実施形態において、プリズム関数またはホログラム内のプリズム項の符号化を介して仮想オブザーバウィンドウの小さなシフトと組み合わせることもできる。開口が使用される場合、これは、有利には開口を回動可能としてだけでなく、小さな領域、例えば、プラス/マイナス1回折次数だけ符号化方向にシフト可能として設計することによって行うことができる。
図7(a)において、開口401は、したがって、垂直方向に追加的にシフトされるのであろう。
図7(b)では、開口401が仮想可視領域、すなわち、仮想オブザーバウィンドウおよびスイートスポットと眼の瞳孔とのオーバーラップを改善するために、それぞれの場合において水平方向にさらにシフトされる。
【0173】
SLMの画素マトリクスを
図8に示す。図からわかるように、この場合、SLMは正方形の画素を有する。
図8(a)では、このタイプの1つのSLMのみが示されており、
図8(b)~(e)は眼または眼の瞳孔の新しい位置まで仮想可視領域を追跡するために、本発明に従って提供することができる、異なるエンコード方向を有するサブホログラムを示している。
図8(b)は垂直符号化方向を有するサブホログラムを示し、サブホログラムは、灰色の陰影を付けた画素によって示されている。
図8(c)は、水平符号化方向を有するサブホログラムを示す。
図8(d)は、対角符号化方向、ここでは-45度方向を有するサブホログラムを示す。
図8(e)は対角符号化方向と同様にサブホログラムを示すが、ここでのサブホログラムの符号化方向は+45度である。好ましくは3次元シーンのホログラムは、全てのサブホログラムが同じ符号化方向を有する個々のオブジェクトポイントのサブホログラムを合計することによって、それぞれの場合に計算される。
【0174】
図9は、仮想可視領域を追跡するための表示装置に設けることができるSLMの代替設計を示す。ここで、SLMは、矩形画素を有する画素マトリクスを有する。
図9(a)は矩形画素を有するこのタイプのSLMのみを示し、
図9(b)~(d)は、眼または眼の瞳孔の新しい位置まで仮想可視領域を追跡するために本発明に従って提供され得る異なる符号化方向を有するサブホログラムを示す。
図9(b)はサブホログラムの符号化方向を示しており、この場合、画素は、それぞれ、互いに対して対角線方向にオフセットされている。したがって、矩形ピクセルのアスペクト比は、SLMの水平側に対して約25度の角度を生成する。これは本発明が
図8に示される符号化方向の角度、すなわち、水平角度(0°)、垂直角度(90°)および対角角角度(+45°; -45°)に制限されることを意図しないことを示しているが、この場合、例えば、25°の符号化方向も使用することができる。
【0175】
図9(c)および(d)は、ホログラムに対する符号化方向も、SLMの画素マトリクスに依存して補間可能であることを示す。
図9(c)は、50度の符号化方向に対するサブホログラムを示す。これは、SLMの画素行列内で、常に2つの画素を上向きに、1つの画素を右向きに符号化することによって達成される。
図9(d)は、約12.5°の符号化方向に対するサブホログラムを示す。これは、ここではSLM上で常に2つの画素を右に、1つの画素を上に符号化することによって達成される。
【0176】
このタイプのアレンジメントでは、例えば、符号化方向0°、90°、±12.5°、±25°および±50°、したがって、この場合には8つの符号化方向など、4つを超える符号化方向をSLM上のホログラムに使用することもでき、これらの数値はやはり例を表すに過ぎない。異なる可能性のある符号化方向は、ここでは対応する角度設定を可能にする
図5、
図6又は
図7によるトラッキング装置によって達成することができる。これは、散乱素子の形態の少なくとも1つの光学素子、または少なくとも1つの受動散乱素子、またはトラッキング装置としてのフィルタ構成、またはトラッキング装置としての少なくとも1つの光源を用いて、
図9(b)による符号化方向の角度、例えば25°の角度を、
図5、
図6、または
図7によるこの特定のトラッキング装置が使用され得るように設定可能であるべきであることを意味する。前述の角度は、単に例として、説明のために役立つことが意図されている。
【0177】
散乱素子が使用される場合、光の散乱方向、またはスロット形状の光源が使用される場合、スロット形状の光源の長辺、または開口が使用される場合、ディスプレイデバイスのフィルタ面内の開口の長辺は、それぞれの場合において、スイートスポット方向に対応する。スロット状光源の非散乱方向または短辺、またはフィルタ面内の開口の短辺は、符号化方向に対応する。
【0178】
逆に、サブホログラムは符号化方向に複数の画素の延長部を有するが、通常、符号化方向に垂直な1画素の延長部のみである。その結果、サブホログラムの長辺は符号化方向を指し、サブホログラムの短辺は符号化方向と垂線を指す。
【0179】
言い換えれば、光の散乱方向、光源の長辺、またはフィルタ開口の長辺は、いずれの場合も、サブホログラムの長辺に垂直に立っている。
【0180】
図10によれば、トラッキング装置の制御可能な光学素子の設計がここで説明されるが、これは例えば、
図5に係る表示装置が備えることができる。しかしながら、本発明は、このように設計された制御可能な光学素子に限定されることを意図するものではない。従って、トラッキング装置の制御可能な光学素子は、制御可能性または切替可能性を保証する異なるデザインを有することもできる。
【0181】
制御可能な光学素子70は、2つの基板71および72を備える。2枚の基板71、72は互いに接合されており、2枚の基板71、72の間には、液晶LCを有する液晶層73が充填された空間、または液晶層73が埋め込まれた空間が存在する。少なくとも1つの基板、ここでは基板71は、表面構造74をさらに有する。液晶材料は複屈折性であり、第1の屈折率、例えば、表面構造74の屈折率と本質的に同一の常屈折率を有する。液晶LCおよび表面構造74の両方は、n = 1.5の屈折率を有する。複屈折液晶LCはさらに、表面構造74の屈折率とは異なる第2の屈折率、例えば異常屈折率を有する。液晶LCは例えば、異常屈折率n = 1.7を有するのに対して、表面構造74の屈折率はn = 1.5である。
【0182】
表面構造74は特に、ここでは一次元の統計的表面構造であり、例えば、基材71に適用されるポリマー層に刻印される。一方の基板のみが表面構造74を有することが好ましく、他方の基板は平坦に設計される。ここで、これは、基板71が表面構造74を有し、基板72が平坦または平面として設計されることを意味する。基板72はその平坦な設計のために、液晶層73内の液晶LCの位置合わせに使用される。これは、液晶LCがこの基板72上に配向されていることを意味する。液晶LCはそれに応じて、例えば、ラビングまたは光配向によって配向される。
【0183】
制御可能な光学素子70の光散乱特性は表面構造74の選択、すなわち、表面構造74の幅、高さ、統計的分布によって事前定義される。表面構造74は例えば、表面レリーフ格子又はブレーズ格子と同様に設計することができる。しかしながら、従来の格子素子とは対照的に、格子周期及び/又はブレーズ角は基板71上の位置によってランダムに変化することができるので、規則的な回折次数は生成されないが、代わりに所定の角度範囲にわたって光が散乱される。散乱角は例えば、ある範囲にわたって、すなわち、最小および最大格子周期にわたって、および異なる格子周期の周波数にわたって、および/またはブレーズ角の範囲および分布にわたって設定することができる。また、表面構造74は、幅および高さが基板71上の位置によってランダムに変化する不規則な高さプロファイルとすることができる。
【0184】
2つの基板71および72はさらに、それぞれ電極装置75および76を備える。基板71は、少なくとも1つの電極を有する電極装置75を有する。基板72は、同様に少なくとも1つの電極を有する電極配列76を有する。電極装置75および76の電極は平面として設計することができ、すなわち、非画素化することができる。この場合、電極配置75の少なくとも1つの電極は均一な電界プロファイルを生成するために、統計的表面構造74の裏側、すなわち表面構造74と基板71との間に設けられる。
【0185】
光の伝播方向において制御可能な光学素子70の上流の表示装置における偏光素子の使用によって、または例えば、偏光された光を放射する光源を使用して、光路において既に偏光された光によって、入力側で偏光された光は制御可能な光学素子70に当たる。液晶層73の液晶LCは電極装置75及び76に電界が印加されていないときに制御可能な光学素子70の制御状態又はスイッチング状態において、表面構造74の屈折率とは異なる液晶LCの屈折率が入射光に対して有効であるように、基板70によって、例えばラビング又は光配向によって配向される。この状態では、統計的表面構造74が光学的に見える。次いで、表面構造74は、光の散乱効果を引き起こす。これは、
図10(a)に示されている。
【0186】
制御可能な光学素子70の異なる制御状態又はスイッチング状態において、電極配置75及び76に十分強い電界が印加されると、表面構造74の屈折率に対応する液晶LCの屈折率が効果を発揮する。これは、
図10(b)に示されている。統計的表面構造74は表面構造74および液晶LCの同一の屈折率のために、制御可能な光学素子70のこの制御状態において光学的に不可視である。表面構造74および液晶LCは、平行な面板として作用する。したがって、光は、制御可能な光学素子70の下流に散乱されない。
【0187】
液晶LCの位置合わせは、例えば、ECB(electrically controlled birefringence)モードに対応することができる。印加電圧がスイッチオフされると、すなわち、電界が存在しないと、電極装置75、76上で、液晶分子は
図10(a)に示すように、基板72の平面内に配向される。印加電圧がスイッチオンされると、すなわち、電極装置75、76の電極間に電界が存在すると、液晶分子は
図10(b)に示すように、基板72の平面に対して垂直に配向される。しかしながら、本発明は、液晶分子のこの配置に限定されることを意図するものではない。液晶分子の他の配向、例えばVA(垂直配向)モードも存在することができ、このモードでは、印加電圧なしで、液晶分子は基板72の平面に垂直に配向され、印加電圧で、すなわち電極配列75、76の電極間に存在する電界で、液晶分子は基板72の平面に平行に配向される。
【0188】
複数の制御可能な光学素子が表示装置内のトラッキング装置内に存在する場合、方法は、それぞれの場合における方法の統計的表面構造が異なる向きを有するように配置され得る。例えば、同一に設計された制御可能な光学素子は、互いに関連して90度を通って回転され得る。次いで、例えば、電圧が光伝搬方向において、SLMの下流の第1の制御可能な光学素子に印加され、次の第2の制御可能な光学素子に電圧が印加されない場合、入射光は、第1の方向に散乱される。逆に、第1の制御可能な光学素子に電圧が印加されないが、代わりに第2の制御可能な光学素子に電圧が印加される場合、入射光は第1の方向とは異なる第2の方向に散乱される。
【0189】
一般に、複数の制御可能な光学素子、すなわち少なくとも2つの制御可能な光学素子の組合せを用いて、1次元散乱と2次元散乱との間で切り替えること、または散乱状態と非散乱状態との間で選択することも可能である。
【0190】
本発明は、ここに提示される例示的な実施形態に限定されない。最後に、上述の例示的な実施形態は特許請求される開示を説明するためにのみ役立つが、開示は例示的な実施形態に限定されることを意図されないことも、全く具体的に言及されるべきである。