(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】高周波伝送装置及び高周波信号伝送方法
(51)【国際特許分類】
H01P 3/08 20060101AFI20230629BHJP
H01P 3/00 20060101ALI20230629BHJP
H01P 3/02 20060101ALI20230629BHJP
H01P 3/06 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
H01P3/08 100
H01P3/08 200
H01P3/00 100
H01P3/02 200
H01P3/06
(21)【出願番号】P 2020558160
(86)(22)【出願日】2019-10-15
(86)【国際出願番号】 JP2019040518
(87)【国際公開番号】W WO2020110491
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2022-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2018222287
(32)【優先日】2018-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000194918
【氏名又は名称】ホシデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104569
【氏名又は名称】大西 正夫
(72)【発明者】
【氏名】近藤 快人
(72)【発明者】
【氏名】笹田 浩介
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-229851(JP,A)
【文献】特開2007-221713(JP,A)
【文献】佐伯 拓,焼成ナノ構造金属の特殊な振る舞い-MHz体高周波での電気抵抗の消失-,プレリリース資料,日本,関西大学,2018年06月25日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 3/08
H01P 3/00
H01P 3/02
H01P 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電体と、
高周波信号を伝送可能な伝送路とを備えており、
前記伝送路の少なくとも一部は、前記誘電体上又は前記誘電体内に位置しており、前記伝送路の少なくとも一部が、微粒子で構成された抵抗低下材料で構成されており、前記抵抗低下材料は、前記伝送路に伝送される高周波信号の周波数が一又は複数の特定周波数帯域にある場合に、交流抵抗値が急激に低下する物性を有しており、
前記伝送路は、少なくとも一部が前記誘電体上又は前記誘電体内に設けられた少なくとも一つの信号導体と、
前記少なくとも一つの信号導体の少なくとも一部に沿って延びる第1グランド導体とを備えており、
前記少なくとも一つの信号導体及び前記第1グランド導体のうちの何れか一方の導体は、前記抵抗低下材料の直流抵抗値よりも小さい直流抵抗値を有する第1導体部と、前記抵抗低下材料で構成されており且つ前記第1導体部に対して他方の導体側に配置された第2導体部とを有している高周波伝送装置。
【請求項2】
誘電体と、
高周波信号を伝送可能な伝送路とを備えており、
前記伝送路の少なくとも一部は、前記誘電体上又は前記誘電体内に位置しており、前記伝送路の少なくとも一部が、微粒子で構成された抵抗低下材料で構成されており、前記抵抗低下材料は、前記伝送路に伝送される高周波信号の周波数が一又は複数の特定周波数帯域にある場合に、前記高周波信号により磁場が生じ、前記磁場により前記抵抗低下材料の中心部において生じる誘導起電力(逆起電力)の向きが逆となる物性を有しており、
前記伝送路は、少なくとも一部が前記誘電体上又は前記誘電体内に設けられた少なくとも一つの信号導体と、
前記少なくとも一つの信号導体の少なくとも一部に沿って延びる第1グランド導体とを備えており、
前記少なくとも一つの信号導体及び前記第1グランド導体のうちの何れか一方の導体は、前記抵抗低下材料の直流抵抗値よりも小さい直流抵抗値を有する第1導体部と、前記抵抗低下材料で構成されており且つ前記第1導体部に対して他方の導体側に配置された第2導体部とを有している高周波伝送装置。
【請求項3】
誘電体と、
高周波信号を伝送可能な伝送路とを備えており、
前記伝送路の少なくとも一部は、前記誘電体上又は前記誘電体内に位置しており、前記伝送路の少なくとも一部が、微粒子で構成された抵抗低下材料で構成されており、前記抵抗低下材料は、前記伝送路に伝送される高周波信号の周波数が一又は複数の特定周波数帯域にある場合に、交流抵抗値が急激に低下する物性を有しており、
前記伝送路は、少なくとも一部が前記誘電体に設けられており且つ互いに隣り合うように配置された第1信号導体及び第2信号導体を備えており、
前記第1信号導体及び前記第2信号導体の何れか一方の導体は、前記抵抗低下材料の直流抵抗値よりも小さい直流抵抗値を有する第1導体部と、前記抵抗低下材料で構成されており且つ前記一方の導体の前記第1導体部に対して他方の導体側に配置された第4導体部とを有している高周波伝送装置。
【請求項4】
誘電体と、
高周波信号を伝送可能な伝送路とを備えており、
前記伝送路の少なくとも一部は、前記誘電体上又は前記誘電体内に位置しており、前記伝送路の少なくとも一部が、微粒子で構成された抵抗低下材料で構成されており、前記抵抗低下材料は、前記伝送路に伝送される高周波信号の周波数が一又は複数の特定周波数帯域にある場合に、前記高周波信号により磁場が生じ、前記磁場により前記抵抗低下材料の中心部において生じる誘導起電力(逆起電力)の向きが逆となる物性を有しており、
前記伝送路は、少なくとも一部が前記誘電体に設けられており且つ互いに隣り合うように配置された第1信号導体及び第2信号導体を備えており、
前記第1信号導体及び前記第2信号導体の何れか一方の導体は、前記抵抗低下材料の直流抵抗値よりも小さい直流抵抗値を有する第1導体部と、前記抵抗低下材料で構成されており且つ前記一方の導体の前記第1導体部に対して他方の導体側に配置された第4導体部とを有している高周波伝送装置。
【請求項5】
請求項
1~4の何れかに記載の高周波伝送装置において、
前記微粒子が導体微粒子であり、
前記抵抗低下材料は、前記導体微粒子で構成された多結晶体で構成されている高周波伝送装置。
【請求項6】
請求項
1~4の何れかに記載の高周波伝送装置において、
前記微粒子は、半導体微粒子であり、
前記抵抗低下材料は、前記半導体微粒子で構成されている高周波伝送装置。
【請求項7】
請求項
1又は2記載の高周波伝送装置において、
前記他方の導体は、前記抵抗低下材料の直流抵抗値よりも小さい直流抵抗値を有する第1導体部と、前記抵抗低下材料で構成された第2導体部とを有しており、
前記少なくとも一つの信号導体の前記第2導体部は、当該信号導体の前記第1導体部に対して前記第1グランド導体側に配置されており、
前記第1グランド導体の前記第2導体部は、前記第1グランド導体の前記第1導体部に対して前記少なくとも一つの信号導体側に配置されている高周波伝送装置。
【請求項8】
請求項
1、2又は7記載の高周波伝送装置において、
前記伝送路は、前記少なくとも一つの信号導体の少なくとも一部に沿って延びる第2グランド導体を更に備えており、
前記第1グランド導体は、前記少なくとも一つの信号導体の一方側に配置され、前記第2グランド導体は、前記少なくとも一つの信号導体の他方側に配置されている高周波伝送装置。
【請求項9】
請求項
8記載の高周波伝送装置において、
前記少なくとも一つの信号導体は、前記抵抗低下材料で構成された第3導体部を更に有しており、
前記少なくとも一つの信号導体の前記第2導体部は、当該信号導体の前記第1導体部に対して前記第1グランド導体側に配置され、当該信号導体の前記第3導体部は、当該信号導体の前記第1導体部に対して前記第2グランド導体側に配置されている高周波伝送装置。
【請求項10】
請求項
8又は9記載の高周波伝送装置において、
前記第2グランド導体は、前記抵抗低下材料の直流抵抗値よりも小さい直流抵抗値を有する第1導体部と、前記抵抗低下材料で構成された第2導体部とを有しており、
前記第2グランド導体の前記第2導体部は、前記第2グランド導体の前記第1導体部に対して前記少なくとも一つの信号導体側に配置されている高周波伝送装置。
【請求項11】
請求項
1、2、7、8、9又は10記載の高周波伝送装置において、
前記第2導体部は、前記第1導体部の少なくとも一部上に固定されている高周波伝送装置。
【請求項12】
請求項9記載の高周波伝送装置において、
前記少なくとも一つの信号導体の前記第3導体部は、当該信号導体の前記第1導体部の少なくとも一部上に固定されている高周波伝送装置。
【請求項13】
請求項1、2又は7記載の高周波伝送装置において、
前記第1グランド導体は、その長さ方向に直交する直交方向において断面視略環状であって、前記少なくとも一つの信号導体の周りに配置されており、
前記少なくとも一つの信号導体の前記第2導体部は、前記直交する方向において断面視略環状であって、当該信号導体の前記第1導体部の少なくとも一部の外周面上に設けられている高周波伝送装置。
【請求項14】
請求項1、2又は7記載の高周波伝送装置において、
前記第1グランド導体の前記第1導体部は、その長さ方向に直交する直交方向において断面視略環状であって、前記少なくとも一つの信号導体の周りに配置されており、
前記第1グランド導体の前記第2導体部は、前記直交方向において断面視略環状であって、前記第1グランド導体の前記第1導体部の少なくとも一部の内周面上に設けられている高周波伝送装置。
【請求項15】
請求項
1、2、7又は13記載の高周波伝送装置において、
前記少なくとも一つの信号導体の前記第1導体部は、当該信号導体の前記第2導体部によって覆われていない接続部を有しており、
前記接続部が、接続対象によって弾性接触又は摺動接触される高周波伝送装置。
【請求項16】
請求項
1、2、7又は13記載の高周波伝送装置において、
前記少なくとも一つの信号導体の前記第1導体部は、当該信号導体の前記第2導体部によって覆われていない接続部を有しており、
前記接続部が、接続対象に対して弾性接触可能な構成である高周波伝送装置。
【請求項17】
請求項
1、2、7、8、9又は10記載の高周波伝送装置において、
前記少なくとも一つの信号導体は、一対であって、互いに隣り合うように配置された第1信号導体及び第2信号導体を含み、
前記第1信号導体及び前記第2信号導体の何れか一方の導体は、前記抵抗低下材料で構成されており且つ前記第1信号導体及び前記第2信号導体の何れかの前記一方の導体の前記第1導体部に対して前記第1信号導体及び前記第2信号導体の他方の導体側に配置された第4導体部を更に有している高周波伝送装置。
【請求項18】
請求項
1、2、7、8、9又は10記載の高周波伝送装置において、
前記少なくとも一つの信号導体は、一対であって、互いに隣り合うように配置された第1信号導体及び第2信号導体を含み、
前記第1信号導体及び前記第2信号導体は、前記抵抗低下材料で構成された第4導体部を各々更に有しており、
前記第1信号導体の前記第4導体部は、当該第1信号導体の前記第1導体部に対して前記第2信号導体側に配置されており、
前記第2信号導体の前記第4導体部は、前記第2信号導体の前記第1導体部に対して
前記第1信号導体側に配置されている高周波伝送装置。
【請求項19】
請求項
3又は4記載の高周波伝送装置において、
前記
他方の導体は、前記抵抗低下材料の直流抵抗値に対して小さい直流抵抗値を有する第1導体部と、前記抵抗低下材料で構成された第4導体部と
を有しており、
前記第1信号導体の前記第4導体部は、当該第1信号導体の前記第1導体部に対して前記第2信号導体側に配置されており、
前記第2信号導体の前記第4導体部は、前記第2信号導体の前記第1導体部に対して前記第1信号導体側に配置されている高周波伝送装置。
【請求項20】
請求項17~19の何れかに記載の高周波伝送装置において、
前記第4導体部は、前記第1導体部の少なくとも一部上に固定されている高周波伝送装置。
【請求項21】
請求項1~20の何れかに記載の高周波伝送装置を用いて高周波信号を伝送する高周波信号伝送方法であって、
前記高周波伝送装置の前記伝送路に前記一又は複数の特定周波数帯域の周波数を有する高周波信号を伝送させることを備えている高周波信号伝送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波伝送装置及び高周波信号伝送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、金属に交流電流を流すと、表皮効果によって、交流電流は、当該金属の表面に近いところに流れる一方、当該金属の中心部には殆ど流れず、当該金属の交流抵抗値は高くなる。これは、金属の中心部で逆起電力が生じており、電流が流れ難くなっているためである。高周波信号も交流電流と同じであるため、金属で構成される伝送路に高周波信号を流すと、当該伝送路の交流抵抗値が上昇し、高周波信号の伝送損失(減衰)が生じやすくなる。
【0003】
下記非特許文献1には、鉄ナノ粒子又は金属グレードシリコンナノ粒子で構成された多結晶体が記載されている。鉄ナノ粒子で構成された多結晶体は、高純度の酸化鉄微粉末を液相レーザーアブレーション法により、還元・ナノ粒子化した後、ペースト化し、その鉄ナノペーストを電気ホットプレートを用いて250度で焼成することによって得られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】関西大学 システム理工学部 電気電子情報工学科 准教授 佐伯 拓 ”焼成ナノ構造金属の特殊な振る舞い -MHz帯高周波での電気抵抗の喪失-”[online]、2018年6月25日発表 2018年10月29日検索、インターネット(URL:http://www.microwave.densi.kansai-u.ac.jp/face/%E3%83%97%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%AA%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B920180625v2.pdf)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した鉄ナノ粒子で構成された多結晶体に周波数3MHz~5MHzの交流電流を流したところ、当該多結晶体の交流抵抗値が実質的に0mΩとなる計測結果が得られている。すなわち、この多結晶体は、周波数3MHz~5MHzの交流電流が流されたときに、交流抵抗値が実質的に0mΩとなる物性を有している。なお、金属グレードシリコンナノ粒子で構成された多結晶体も、上記と同様の製造方法で得られ、同様の物性を有している。
【0006】
本発明は、高周波信号を伝送させるときに、交流抵抗値が急激に低下する物性を有する多結晶体等の抵抗低下材料を用いて、高周波信号の伝送損失を低減できる高周波伝送装置及び高周波信号伝送方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の一態様の高周波伝送装置は、誘電体と、高周波信号を伝送可能な伝送路とを備えている。伝送路の少なくとも一部が、誘電体上又は誘電体内に位置している。伝送路の少なくとも一部は、微粒子で構成された抵抗低下材料で構成されている。この抵抗低下材料は、伝送路に伝送される高周波信号の周波数が一又は複数の特定周波数帯域にある場合に、交流抵抗値が急激に低下する物性又は伝送路に伝送される高周波信号の周波数が一又は複数の特定周波数帯域にある場合に、高周波信号により磁場が生じ、その磁場により抵抗低下材料の中心部において生じる誘導起電力(逆起電力)の向きが逆となる物性を有する。
なお、伝送路の誘電体に設けられた少なくとも一部と、伝送路の抵抗低下材料で構成された少なくとも一部とは、同じ部分であっても良いし、異なる部分であっても良い。
【0008】
このような態様の高周波伝送装置による場合、伝送路に伝送される高周波信号の周波数が一又は複数の特定周波数帯域にある場合、伝送路の少なくとも一部である抵抗低下材料の交流抵抗値が急激に低下するため、その高周波信号の伝送損失が軽減される。
【0009】
微粒子は、導体微粒子又は半導体微粒子とすることが可能である。前者の場合、抵抗低下材料は、導体微粒子で構成された多結晶体で構成されていても良い。後者の場合、抵抗低下材料は、半導体微粒子で構成されていても良い。
【0010】
伝送路は、少なくとも一部が誘電体に設けられた少なくとも一つの信号導体と、少なくとも一つの信号導体の少なくとも一部に沿って延びる第1グランド導体を備えた構成とすることが可能である。
【0011】
少なくとも一つの信号導体及び第1グランド導体のうちの少なくとも一方の導体が、抵抗低下材料の直流抵抗値よりも小さい直流抵抗値を有する第1導体部と、抵抗低下材料で構成された第2導体部を有する構成とすることが可能である。
【0012】
少なくとも一つの信号導体が、第1導体部及び第2導体部を有する場合、少なくとも一つの信号導体の第2導体部は、第1導体部に対して第1グランド導体(他方の導体)側に配置された構成とすることが可能である。この場合、少なくとも一つの信号導体側で高周波信号の伝送損失が軽減される。また、少なくとも一つの信号導体の直流抵抗値の低い第1導体部に電子部品、コネクタ、ケーブル又はピン等を接続することが可能になるので、少なくとも一つの信号導体の接続信頼性が向上する。
【0013】
第1グランド導体が第1導体部及び第2導体部を有する場合、第1グランド導体の第2導体部は、第1導体部に対して少なくとも一つの信号導体(他方の導体)側に配置された構成とすることが可能である。この場合、第1グランド導体側で高周波信号の伝送損失が軽減される。また、第1グランド導体の直流抵抗値の低い第1導体部をグランド接続することが可能になるので、第1グランド導体の接続信頼性が向上する。
【0014】
伝送路は、第2グランド導体を更に備えた構成とすることが可能である。第2グランド導体は、少なくとも一つの信号導体の少なくとも一部に沿って延びた構成とすることが可能である。この場合、第1グランド導体は、少なくとも一つの信号導体の一方側に配置され、第2グランド導体は、少なくとも一つの信号導体に対して他方側に配置された構成としても良い。
【0015】
少なくとも一つの信号導体は、抵抗低下材料で構成された第3導体部を更に有する構成とすることが可能である。少なくとも一つの信号導体の第2導体部は、当該信号導体の第1導体部に対して第1グランド導体側に配置され、当該信号導体の第3導体部は、当該信号導体の第1導体部に対して第2グランド導体側に配置された構成とすることが可能である。この場合も、少なくとも一つの信号導体側で高周波信号の伝送損失が軽減される。
【0016】
第2グランド導体は、抵抗低下材料の直流抵抗値よりも小さい直流抵抗値を有する第1導体部と、抵抗低下材料で構成された第2導体部とを有する構成とすることが可能である。この第2グランド導体の第2導体部は、第2グランド導体の第1導体部に対して少なくとも一つの信号導体側に配置された構成とすることが可能である。この場合、第2グランド導体側で高周波信号の伝送損失が軽減される。また、第2グランド導体の直流抵抗値の低い第1導体部をグランド接続することが可能になるので、第2グランド導体の接続信頼性が向上する。
【0017】
上記した何れかの態様の第2導体部は、対応する第1導体部の少なくとも一部上に固定されていても良い。少なくとも一つの信号導体の第3導体部は、当該信号導体の前記第1導体部の少なくとも一部上に固定されていても良い。
【0018】
第1グランド導体は、その長さ方向に直交する直交方向において断面視略環状であって、少なくとも一つの信号導体の周りに配置された構成とすることが可能である。この場合、少なくとも一つの信号導体の第2導体部は、直交方向において断面視略環状であって、当該信号導体の第1導体部の少なくとも一部の外周面上に設けられた構成とすることが可能である。
【0019】
第1グランド導体の第1導体部は、その長さ方向に直交する直交方向において断面視略環状であって、少なくとも一つの信号導体の周りに配置された構成とすることが可能である。この場合、第1グランド導体の第2導体部は、直交方向において断面視略環状であって、第1グランド導体の第1導体部の少なくとも一部の内周面上に設けられた構成とすることが可能である。
【0020】
上記少なくとも一つの信号導体の第1導体部は、当該信号導体の第2導体部によって覆われていない接続部を有する構成とすることが可能である。接続部が、接続対象によって弾性接触又は摺動接触される構成とすることが可能である。この場合、少なくとも一つの信号導体の第1導体部の接続部が、接続対象によって弾性接触又は摺動接触されるが、少なくとも一つの信号導体の第1導体部の接続部は、前述の通り、第2導体部によって覆われていないため、抵抗低下材料で構成される第2導体部が摩耗したり破損したりするのを防止できる。又は、接続部が、接続対象に対して弾性接触可能な構成とすることも可能である。この場合、接続部が、接続対象に対して弾性接触するときに、抵抗低下材料で構成される第2導体部が摩耗したり破損したりするのを防止できる。
【0021】
少なくとも一つの信号導体は、一対であって、互いに隣り合うように配置された第1信号導体及び第2信号導体を含む構成とすることが可能である。この場合、上記第1グランド導体及び/又は第2グランド導体を省略するか否かは任意に決定できる。
【0022】
第1信号導体及び第2信号導体の少なくとも一方の導体は、抵抗低下材料で構成された第4導体部を更に有する構成とすることが可能である。又は、第1信号導体及び第2信号導体の少なくとも一方の導体は、第2導体部を有さず、第1導体部及び第4導体部を有する構成とすることが可能である。
【0023】
第1信号導体が第1導体部及び第4導体部を有する場合、第1信号導体の第4導体部は、第1信号導体の第1導体部に対して第2信号導体側に配置された構成とすることが可能である。この場合、第1信号導体側で高周波信号の伝送損失が軽減される。また、第1信号導体の直流抵抗値の低い第1導体部に電子部品、コネクタ、ケーブル又はピン等を接続することが可能になるので、第1信号導体の接続信頼性が向上する。
第2信号導体が第1導体部及び第4導体部を有する場合、第2信号導体の第4導体部は、第2信号導体の第1導体部に対して第1信号導体側に配置された構成とすることが可能である。この場合、第2信号導体側で高周波信号の伝送損失が軽減される。また、第2信号導体の直流抵抗値の低い第1導体部に電子部品、コネクタ、ケーブル又はピン等を接続することが可能になるので、第2信号導体の接続信頼性が向上する。
【0024】
上記何れかの態様の第4導体部は、対応する第1導体部の少なくとも一部上に固定された構成とすることが可能である。
【0025】
本発明の一態様の高周波信号伝送方法は、上記した何れかの態様の高周波伝送装置の伝送路に上記一又は複数の特定周波数帯域の周波数を有する高周波信号を伝送させることを備えている。この高周波信号の伝送は、伝送路の抵抗低下材料の交流抵抗値が急激に低下すること及び/又は高周波信号により磁場が生じ、その磁場により抵抗低下材料の中心部において生じる誘導起電力(逆起電力)の向きが逆となることを含む。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1A】本発明の実施例1に係る高周波伝送装置の概略的平面図である。
【
図1B】前記高周波伝送装置の
図1A中の1B-1B部分断面図である。
【
図2A】本発明の実施例2に係る高周波伝送装置の概略的平面図である。
【
図2B】前記高周波伝送装置の
図2A中の2B-2B部分断面図である。
【
図3A】本発明の実施例3に係る高周波伝送装置の概略的平面図である。
【
図3B】前記高周波伝送装置の
図3A中の3B-3B部分断面図である。
【
図4A】本発明の実施例4に係る高周波伝送装置の概略的平面図である。
【
図4B】前記高周波伝送装置の
図4A中の4B-4B部分断面図である。
【
図5】本発明の実施例5に係る高周波伝送装置の概略的断面図である。
【
図6A】前記高周波伝送装置が同軸コネクタである場合の別実施例の断面図である。
【
図6B】前記高周波伝送装置の
図6A中の6B-6B横断面図である。
【
図7】実施例1の高周波伝送装置の設計変形例を示す概略的断面図である。
【
図8A】実施例5の高周波伝送装置の第1設計変形例を示す概略的断面図である。
【
図8B】実施例5の高周波伝送装置の第2設計変形例を示す概略的断面図である。
【
図8C】実施例5の高周波伝送装置の第3設計変形例を示す概略的断面図である。
【
図8D】実施例5の高周波伝送装置の第4設計変形例を示す概略的断面図である。
【
図8E】第4設計変形例の高周波伝送装置の設計変形例を示す概略的断面図である。
【
図9】本発明の二つの高周波伝送装置を接続させた構造を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の複数の実施例について説明する。
【実施例1】
【0028】
以下、本発明の実施例1を含む複数の実施例に係る高周波伝送装置D1について、
図1A及び
図1Bを参照しつつ説明する。高周波伝送装置D1は、高周波伝送用の基板である。以下、高周波伝送装置D1を伝送用基板D1とも称する。
図1A及び
図1Bには、実施例1の伝送用基板D1が示されている。
【0029】
伝送用基板D1は誘電体100を備えている。
図1Bには、誘電体100の厚み方向であるZ-Z’方向が示されており、Z-Z’方向は、Z方向及びその反対側のZ’方向を含む。誘電体100は、Z方向側の第1面101と、Z’方向側の第2面102とを有している。
【0030】
伝送用基板D1は、高周波信号を伝送可能な伝送路200を更に備えている。伝送路200は、信号導体Sと、グランド導体G(第1グランド導体)とを備えている。伝送路200は、以下の通り、誘電体100上に位置している。信号導体Sは、誘電体100の第1面101上に設けられており且つ当該第1面101の任意の第1位置から前記第1位置と異なる第2位置へ延びている。グランド導体Gは、誘電体100の第2面102上に設けられ、信号導体Sに沿って延びており且つZ-Z’方向において誘電体100を挟んで信号導体Sに対向している。信号導体S及びグランド導体Gが、高周波信号を伝送可能なマイクロストリップラインを構成している。
【0031】
信号導体Sは、その一部又は全部が多結晶体(抵抗低下材料)で構成することが可能である。この場合、グランド導体Gは、その一部又は全部が多結晶体で構成、又は、その全部が多結晶体を含まない導体で構成されていると良い。又は、信号導体Sの全部が多結晶体を含まない導体で構成することが可能である。この場合、グランド導体Gは、その一部又は全部が多結晶体で構成されていると良い。
【0032】
この多結晶体は、導体微粒子で構成されている。導体微粒子は、平均粒径が数nm~10数nmの導体ナノ粒子であって、例えば、鉄ナノ粒子、金属グレードシリコンナノ粒子、銅ナノ粒子又はニッケルナノ粒子などである。この導体ナノ粒子は以下の方法で得られる。導体ナノ粒子の原料となる高純度の酸化導体微粉末を溶媒内に配置し、当該酸化導体微粉末に対して液相レーザーアブレーションを行うことにより、当該酸化導体微粉末を還元し、ナノ粒子化する。
なお、導体ナノ粒子は、上記した液相レーザーアブレーション法以外の周知の液相法、又は周知の気相法によっても作成可能である。液相法としては、共沈法、ゾルゲル法、液相還元法又は水熱合成法などがあり、気相法としては、電気炉法、化学炎法、レーザー法又は熱プラズマ法などがある。
上記した何れかの方法で得られた導体ナノ粒子がバインダーに混入され、ペースト化される。この導体ナノ粒子を主成分とする導電ペーストが焼成される。この焼成によって、バインダーが除去されるため、上記多結晶体は導体ナノ粒子で構成されている。
【0033】
この多結晶体は、伝送路200に伝送させる高周波信号の周波数が、MHz~GHz帯域(例えば、1MHz~20GHz辺りの帯域等)のうちの一又は複数の特定周波数帯域にある場合に、多結晶体の交流抵抗値が急激に低下する物性を有していると良いが、これに限定されるものではない。この多結晶体の物性は、伝送路200に伝送させる高周波信号の周波数が、THz以上の帯域のうちの一又は複数の特定周波数帯域にある場合であっても、発現し得る。この多結晶体の物性は、超伝導現象によって、生じるものではなく、環境温度下で生じるものである。この多結晶体の物性は、より具体的には、以下の通り発現される。
環境温度下で、多結晶体に流される高周波信号(高周波電流)の周波数が上記一又は複数の特定周波数帯域以外の周波数帯域にある場合、その高周波信号により磁場が生じ、その磁場により多結晶体の中心部において高周波信号の流れを妨害する方向に誘導起電力(逆起電力)が生じる。この場合、多結晶体の透磁率の実部は正である。一方、多結晶体に流される高周波信号の周波数が上記一又は複数の特定周波数帯域にある場合、その高周波信号により磁場が生じ、その磁場により多結晶体の中心部において生じる誘導起電力(逆起電力)の向きが逆となる。この場合、多結晶体の透磁率の実部は負である。このように多結晶体の中心部において生じる誘導起電力(逆起電力)の向きが高周波信号の流れを妨害する方向に対して逆となることによって、高周波信号の流れを促進するように作用するため、多結晶体に流される高周波信号の周波数が上記一又は複数の特定周波数帯域にある場合、多結晶体に流される高周波信号の周波数が上記一又は複数の特定周波数帯域以外にある場合に比べて、多結晶体の交流抵抗値が急激に低下し、実質的に0Ω又はマイナス抵抗となる。高周波信号の一又は複数の特定周波数帯域は、高周波信号により生じた磁場の作用によって、多結晶体が磁気共鳴を生ずる周波数帯域であると考えられる。
なお、多結晶体の直流抵抗値は、多結晶化前の原料(すなわち、上記導体ナノ粒子の原料)より高い。以下、伝送路200に一又は複数の特定周波数帯域の高周波信号を伝送させるときを、「高周波信号の伝送時」と称する。
【0034】
信号導体S及びグランド導体Gの少なくとも一方の導体の一部が多結晶体で構成されている場合、当該少なくとも一方の導体は、第1導体部と、上記多結晶体で構成された第2導体部とを有する構成とすることが可能である。
第1導体部は、上記多結晶体(第2導体部)の直流抵抗値よりも小さい直流抵抗値を有する素材及び抗酸化性などの耐腐食性を有する素材の少なくとも一方の素材で構成されている。第1導体部は、例えば、銅メッキ又は銅箔などで構成されていると良い。第1導体部の直流抵抗値は、第1導体部の長さ及び断面積に応じて適宜設定されると良い。
以下、説明の便宜上、信号導体Sの第1導体部に符号S1を付し、信号導体Sの第2導体部に符号S2を付し、グランド導体Gの第1導体部に符号G1を付し、グランド導体Gの第2導体部に符号G2を付してそれぞれ区別する。
【0035】
ところで、高周波信号の伝送時において、表皮効果により、高周波信号の電流密度は、信号導体Sのうちのグランド導体G側の部分(信号導体Sのうちのグランド導体Gとの電気的な結合が強い部分)及びグランド導体Gのうちの信号導体S側の部分(グランド導体Gのうちの信号導体Sとの電気的な結合が強い部分)が高くなる。
【0036】
信号導体Sが第1導体部S1及び第2導体部S2を有する場合、第1導体部S1及び第2導体部S2は更に以下の構成とすることが可能である。第2導体部S2は、誘電体100の第1面101上に設けられており且つ第1位置から第2位置へ延びていると良いが、一又は複数箇所で破断していても良い。第1導体部S1は、第2導体部S2のZ方向側の面上に設けられZ方向の平面視において第1位置から第2位置へ延びている。このように第2導体部S2は、第1導体部S1のZ’方向側の面の少なくとも一部上に固定されており且つ第1導体部S1に対してグランド導体G側に配置されている。換言すると、第2導体部S2が、高周波信号の伝送時に、信号導体Sのうちのグランド導体Gとの電気的な結合が強い部分(高周波信号の電流密度が高い部分)を構成している。なお、第1導体部S1は、第1位置上の第1接続部と、第2位置上の第2接続部を有する。
【0037】
グランド導体Gが第1導体部G1及び第2導体部G2を有する場合、第1導体部G1及び第2導体部G2は更に以下の構成とすることが可能である。第2導体部G2は、誘電体100の第2面102上に設けられており且つ信号導体Sに沿って延びている。第2導体部G2は、一又は複数箇所で切り欠かれていても良い。第1導体部G1は、第2導体部G2のZ’方向側の面上に設けられている。このように第2導体部G2は、第1導体部G1のZ方向側の面の少なくとも一部上に固定されており且つ第1導体部G1に対して信号導体S側に配置されている。換言すると、第2導体部G2が、高周波信号の伝送時に、グランド導体Gのうちの信号導体Sとの電気的な結合が強い部分(高周波信号の電流密度が高い部分)を構成している。
【0038】
伝送用基板D1は送信部300を更に備えていても良い。送信部300は、伝送路200に高周波信号を送信可能なICなどの論理回路、又はプロセッサで処理されるソフトウエアで実現される。送信部300は、誘電体100の第1面101の第1位置上に実装され、信号導体Sに電気的且つ機械的に接続されている。信号導体Sが第1導体部S1を有する場合、送信部300は、第1導体部S1の第1接続部に電気的且つ機械的に接続されている。例えば、送信部300は、第1導体部S1又は第1導体部S1の第1接続部に半田接続されている。なお、送信部300は省略可能である。この場合、伝送用基板D1が電子機器に搭載された状態で、電子機器の送信部に電気的に接続するために、信号導体S又は信号導体Sの第1導体部S1が、コネクタ、又は、ケーブルやピンなどの接続手段に接続可能となっていると良い。
【0039】
信号導体Sの第2位置上の部分に、コネクタ、ケーブルやピンなどの接続手段、又は高周波信号を受信する受信部などの電子部品が接続可能となっていると良い。信号導体Sが第1導体部S1を有する場合、第1導体部S1の第2接続部(すなわち、第2位置上の部分)に、コネクタ、接続手段、又は電子部品が電気的且つ機械的に接続可能となっている。
なお、第1導体部S1の第1接続部及び第2接続部は、Z方向において第2導体部S2に覆われていない。第1導体部S1の第1接続部及び第2接続部の少なくとも一方の接続部は、特許請求の範囲の信号導体の第1導体部の接続部に相当する。この少なくとも一方の接続部のZ方向側の面が、コネクタの端子(接続対象)によって弾性接触又は摺動接触される場合、少なくとも一方の接続部のZ方向側の面上には第2導体部S2が設けられていないので、コネクタの端子の弾性接触又は摺動接触による第2導体部S2の摩耗や破損が防止される。
【0040】
以下、上記した伝送用基板D1の製造方法について説明する。誘電体100を用意する。その後、以下の(1)~(3)の何れかの通り、誘電体100の第1面101上に信号導体S又は信号導体Sの一部を形成し、以下の(4)~(6)の何れかの通り、誘電体100の第2面102上にグランド導体G又はグランド導体Gの一部を形成する。
(1)信号導体Sが多結晶体のみで構成されている場合、上記の通り、導体ナノ粒子を主成分とする導電ペーストを用意し、誘電体100の第1面101上に、周知の印刷法(例えば、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法又はスプレー印刷法)を用いて導電ペーストを印刷する。
(2)信号導体Sが第1導体部S1及び第2導体部S2を有する場合、上記の通り、導体ナノ粒子を主成分とする導電ペーストを用意し、誘電体100の第1面101上に、上記周知の印刷法を用いて導電ペーストを印刷する。
(3)信号導体Sが多結晶体を含まない構成である場合、誘電体100の第1面101上に、上記周知の印刷法を用いて多結晶体を含まない導体を印刷する。
(4)グランド導体Gが多結晶体のみで構成されている場合、上記の通り、導体ナノ粒子を主成分とする導電ペーストを用意し、誘電体100の第2面102上に、上記周知の印刷法を用いて導電ペーストを印刷する。
(5)グランド導体Gが第1導体部G1及び第2導体部G2を有する場合、上記の通り、導体ナノ粒子を主成分とする導電ペーストを用意し、誘電体100の第2面102上に、上記周知の印刷法を用いて導電ペーストを印刷する。
(6)グランド導体Gが多結晶体を含まない構成である場合、誘電体100の第2面102上に、上記周知の印刷法を用いて多結晶体を含まない導体を印刷する。
【0041】
その後、信号導体S及びグランド導体Gの一部又は全部付きの誘電体100を、電気オーブンなど電気式加熱調理器具や電気炉内に入れ、大気圧下で低温(例えば、250℃)で数分~数十分間加熱し、導電ペーストを焼成する。上記(1)の場合、焼成された導電ペーストが上記多結晶体(信号導体S)となる。上記(2)の場合、焼成された導電ペーストが上記多結晶体(第2導体部S2)となる。上記(4)の場合、焼成された導電ペーストが上記多結晶体(グランド導体G)となる。上記(5)の場合、焼成された導電ペーストが上記多結晶体(第2導体部G2)となる。なお、焼成時間は、バインダーの種類などに応じて任意に変更できる。
【0042】
上記(2)の場合、焼成された第2導体部S2上に上記周知の印刷法を用いて第1導体部S1となる導体を印刷する。上記(5)の場合、焼成された第2導体部G2上に上記周知の印刷法を用いて第1導体部G1となる導体を印刷する。以上のように、誘電体100に上記した何れかの態様の信号導体S及びグランド導体Gが形成される。伝送用基板D1が送信部300を備えている場合、送信部300を誘電体100の第1面101上に実装し、信号導体Sに電気的且つ機械的に接続する。以上のようにして伝送用基板D1が製造される。
【0043】
以上のような伝送用基板D1は、以下の技術的特徴及び効果を奏する。
(A)伝送路200に伝送させる高周波信号の周波数が一又は複数の特定周波数帯域にあるとき、当該高周波信号の伝送損失(減衰)が軽減される。その理由は以下の通りである。
伝送路200の信号導体S及びグランド導体Gの少なくとも一方の導体の少なくとも一部を構成する多結晶体の交流抵抗値が、伝送される高周波信号の周波数が一又は複数の特定周波数帯域にある場合、急激に低下するため、高周波信号の伝送損失が軽減される。
また、信号導体Sが多結晶体で構成された第2導体部S2を有する場合、高周波信号の伝送時に、信号導体Sにおいて、高周波信号の電流密度が高くなる部分(グランド導体G側の部分)が第2導体部S2で構成されている。第2導体部S2の交流抵抗値は、伝送される高周波信号の周波数が一又は複数の特定周波数帯域にある場合、急激に低下するため、信号導体S側で高周波信号の伝送損失が軽減される。グランド導体Gが多結晶体で構成された第2導体部G2を有する場合、高周波信号の伝送時に、グランド導体Gにおいて、高周波信号の電流密度が高くなる部分(信号導体S側の部分)が第2導体部G2で構成されている。第2導体部G2の交流抵抗値は、伝送される高周波信号の周波数が一又は複数の特定周波数帯域にある場合、急激に低下するため、グランド導体G側で高周波信号の伝送損失が軽減される。
【0044】
(B)信号導体Sが第1導体部S1及び第2導体部S2を有する場合、伝送用基板D1の送信部300、上記したコネクタ、電子部品又は接続手段に対する接続信頼性が向上する。その理由は以下の通りである。
第1導体部S1が、上記多結晶体の直流抵抗値よりも小さい直流抵抗値を有する素材及び抗酸化性などの耐腐食性を有する素材の少なくとも一方の素材で構成されている。第1導体部S1に、送信部300、コネクタ、電子部品又は接続手段を電気的且つ機械的に接続させることができるので、送信部300、コネクタ、電子部品又は接続手段と伝送用基板D1の接続信頼性が向上する。
グランド導体Gが第1導体部G1及び第2導体部G2を有する場合、伝送用基板D1のグランド接続に対する接続信頼性が向上する。その理由は以下の通りである。
第1導体部G1が、上記多結晶体の直流抵抗値よりも小さい直流抵抗値を有する素材及び抗酸化性などの耐腐食性を有する素材の少なくとも一方の素材で構成されている。第1導体部G1をグランド接続させることができるので、伝送用基板D1のグランド接続に対する接続信頼性が向上する。
【実施例2】
【0045】
以下、本発明の実施例2を含む複数の実施例に係る高周波伝送装置D2について、
図2A及び
図2Bを参照しつつ説明する。高周波伝送装置D2は、高周波伝送用の基板である。以下、高周波伝送装置D2を伝送用基板D2とも称する。
図2A及び
図2Bには、実施例2の伝送用基板D2が示されている。伝送用基板D2は、伝送路200’が、信号導体S’及びグランド導体G(第1グランド導体)に加えて、グランド導体G’(第2グランド導体)を備え且つ信号導体S’が誘電体100’の内部に設けられている点で相違する以外、伝送用基板D1と同様の構成である。以下、その相違点について詳しく説明し、伝送用基板D1と重複する説明は省略する。なお、
図2Bにも、Z-Z’方向が示されている。
【0046】
伝送用基板D2の誘電体100’は、多層基板であって、Z方向側の第1面101’と、Z’方向側の第2面102’とを有している。なお、説明の便宜上、誘電体100’の信号導体S’に対してZ方向側の部分を上層部、誘電体100’の信号導体S’に対してZ’方向側の部分を下層部と称する。
【0047】
伝送用基板D2の伝送路200’の信号導体S’、グランド導体G及びグランド導体G’が、高周波信号を伝送可能なストリップラインを構成している。以下、伝送路200’に一又は複数の特定周波数帯域の高周波信号を伝送させるときを、「高周波信号の伝送時」と称する。伝送路200’ は、以下の通り、誘電体100’上及び誘電体100’内に位置している。信号導体S’は、誘電体100’の内部に設けられており且つ当該内部の任意の第1位置から前記第1位置と異なる第2位置へ延びている。グランド導体Gは、誘電体100’の第2面102’上に設けられ、信号導体S’に沿って延びており且つ誘電体100’の下層部を挟んで信号導体S’のZ’方向側(一方側)に配置されている。グランド導体G’は、誘電体100’の第1面101’上に設けられ、信号導体S’に沿って延びており且つ誘電体100’の上層部を挟んで信号導体S’のZ方向側(他方側)に配置されている。
【0048】
信号導体S’は、その一部又は全部が上記多結晶体で構成することが可能である。この場合、グランド導体G及びグランド導体G’は、以下の(ア)~(ウ)の何れかの構成とすること可能である。
(ア)グランド導体G及びグランド導体G’は、その一部又は全部が多結晶体で構成されている。
(イ)グランド導体Gは、その一部又は全部が多結晶体で構成されており、且つ、グランド導体G’は、その全部が多結晶体を含まない導体で構成されている。又は、その逆としても良い。
(ウ)グランド導体G及びグランド導体G’は、その全部が多結晶体を含まない導体で構成されている。
又は、信号導体S’は、その全部が多結晶体を含まない導体で構成することが可能である。この場合、グランド導体G及びグランド導体G’は、以下の(エ)又は(オ)の構成とすること可能である。
(エ)グランド導体G及びグランド導体G’が、その一部又は全部が多結晶体で構成されている。
(オ)グランド導体Gが、その一部又は全部が多結晶体で構成されており、且つ、グランド導体G’は、その全部が多結晶体を含まない導体で構成されている。又は、その逆としても良い。
【0049】
ところで、高周波信号の伝送時において、表皮効果により、高周波信号の電流密度は、信号導体S’のうちのグランド導体G側の部分(信号導体S’のうちのグランド導体Gとの電気的な結合が強い部分)、信号導体S’のうちのグランド導体G’側の部分(信号導体S’のうちのグランド導体G’との電気的な結合が強い部分)、グランド導体Gのうちの信号導体S’側の部分(グランド導体Gのうちの信号導体S’との電気的な結合が強い部分)及びグランド導体G’のうちの信号導体S’側の部分(グランド導体G’のうちの信号導体S’との電気的な結合が強い部分)が高くなる。
【0050】
信号導体S’の一部が多結晶体で構成されている場合、信号導体S’は、第1導体部S1’及び第2導体部S2’を有する構成、第1導体部S1’及び第3導体部S3’を有する構成、又は、第1導体部S1’、第2導体部S2’及び第3導体部S3’を有する構成とすることが可能である。
第1導体部S1’、第2導体部S2’は、次の点を除き、伝送用基板D1の信号導体Sの第1導体部S1、第2導体部S2と同様の構成である。第1導体部S1’は、Z方向の平面視において誘電体100’内部の第1位置から第2位置へ延びている。
第2導体部S2’は、第1導体部S1’のZ’方向側の面上に設けられており且つZ方向の平面視において誘電体100’内部の第1位置から第2位置へ延びていると良いが、一又は複数箇所で破断していても良い。すなわち、第2導体部S2’は、第1導体部S1’のZ’方向側の面の少なくとも一部上に固定されており且つ第1導体部S1’に対してグランド導体G側に配置されている。
第3導体部S3’は、多結晶体で構成されており、第1導体部S1’のZ方向側の面上に設けられており且つZ方向の平面視において誘電体100’内部の第1位置から第2位置へ延びていると良いが、一又は複数箇所で破断していても良い。すなわち、第3導体部S3’は、第1導体部S1’のZ方向側の面の少なくとも一部上に固定されており且つ第1導体部S1’に対してグランド導体G’側に配置されている。
上記の通り、伝送路200’は、誘電体100’の内部に設けられているため、上記した「Z方向の平面視」は、その対象が伝送用基板D2のZ方向側から看者によって現実に視認されるわけではないことに留意されたい。
なお、第1導体部S1’の第1位置上の第1接続部及び第2位置上の第2接続部には、第2導体部S2’及び/又は第3導体部S3’が設けられていない。
【0051】
グランド導体Gの一部が多結晶体で構成されている場合、グランド導体Gが第1導体部G1及び第2導体部G2を有する構成とすることが可能である。第1導体部G1、第2導体部G2は、伝送用基板D1のグランド導体Gの第1導体部G1、第2導体部G2と同様の構成である。
【0052】
グランド導体G’の一部が多結晶体で構成されている場合、グランド導体G’が第1導体部G1’及び第2導体部G2’を有する構成とすることが可能である。第2導体部G2’は、誘電体100’の第1面101’上に設けられている以外、第2導体部G2と同様の構成である。第1導体部G1’は、第2導体部G2’のZ方向側の面上に設けられている以外、第1導体部G1と同様の構成である。すなわち、第2導体部G2’は、第1導体部G1’のZ’方向側の面の少なくとも一部上に固定されており且つ第1導体部G1’に対して信号導体S’側に配置されている。
【0053】
伝送用基板D2が送信部300を更に備えている場合、送信部300は、誘電体100’の第1面101’上に実装され、信号導体S’の第1位置上の部分に電気的且つ機械的に接続されている。信号導体S’が第1導体部S1’を有する場合、送信部300は、第1導体部S1’の第1接続部に電気的且つ機械的に接続されている。なお、送信部300は、伝送用基板D1と同様に、省略可能である。
【0054】
以下、上記した伝送用基板D2の製造方法について説明する。誘電体100’の下層部を用意する。その後、上記(1)~(3)及び下記(7)の何れかの通り、誘電体100’の下層部のZ方向側の面上に信号導体Sを形成し、上記(4)~(6)の何れかの通り、誘電体100’の下層部の第2面102’上にグランド導体Gを形成する。
(7)信号導体Sが第1導体部S1’及び第3導体部S3’を有する場合、上記の通り、導体ナノ粒子を主成分とする導電ペーストを用意し、誘電体100’の下層部のZ方向側の面上に、上記周知の印刷法を用いて第1導体部S1’となる導体を印刷し、第1導体部S1’上に、上記周知の印刷法を用いて導電ペーストを印刷する。
【0055】
その後、(1)~(3)及び(7)の何れかの工程、(4)~(6)の何れかの工程を経て得られた信号導体S’、及びグランド導体Gの一部又は全部付きの誘電体100’の下層部を、上記電気式加熱調理器具や上記電気炉内に入れ、上記の通り導電ペーストを焼成する。上記(1)の場合、焼成された導電ペーストが上記多結晶体(信号導体S’)となる。上記(2)の場合、焼成された導電ペーストが上記多結晶体(第2導体部S2’)となる。上記(7)の場合、焼成された導電ペーストが上記多結晶体(第3導体部S3’)となる。上記(4)の場合、焼成された導電ペーストが上記多結晶体(グランド導体G)となる。上記(5)の場合、焼成された導電ペーストが上記多結晶体(第2導体部G2)となる。
【0056】
上記(2)の場合、焼成された導電ペースト(第2導体部S2’)上に上記周知の印刷法を用いて第1導体部S1’となる導体を印刷する。上記(2)の場合において、信号導体S’が第3導体部S3’を有する場合、上記の通り、導体ナノ粒子を主成分とする導電ペーストを用意し、第1導体部S1’上に、上記周知の印刷法を用いて導電ペーストを印刷し、当該導電ペーストを上記の通り焼成する。焼成された導電ペーストが上記多結晶体(第3導体部S3’)となる。上記(5)の場合、焼成された第2導体部G2上に上記周知の印刷法を用いて第1導体部G1となる導体を印刷する。
【0057】
その後、誘電体100’の下層部上に上層部を形成する。これにより、信号導体S’が誘電体100’の内部に配置される。その後、下記(8)~(10)の何れか通り、誘電体100’の第1面101’上にグランド導体G’又はグランド導体G’の一部を形成する。
(8)グランド導体G’が多結晶体のみで構成されている場合、上記の通り、導体ナノ粒子を主成分とする導電ペーストを用意し、誘電体100’の第1面101’上に、上記周知の印刷法を用いて導電ペーストを印刷する。
(9)グランド導体G’が第1導体部G1’及び第2導体部G2’を有する場合、上記の通り、導体ナノ粒子を主成分とする導電ペーストを用意し、誘電体100’の第1面101’上に、上記周知の印刷法を用いて導電ペーストを印刷する。
(10)グランド導体G’が多結晶体を含まない構成である場合、誘電体100’の第1面101’上に、上記周知の印刷法を用いて多結晶体を含まない導体を印刷する。
【0058】
上記(8)又は(9)の工程の後、グランド導体G’の一部又は全部付きの誘電体100’を、上記電気式加熱調理器具や上記電気炉内に入れ、上記の通り導電ペーストを焼成する。上記(8)の場合、焼成された導電ペーストが上記多結晶体(グランド導体G’)となる。上記(9)の場合、焼成された導電ペーストが上記多結晶体(第2導体部G2’)となる。この焼成された第2導体部G2’上に上記周知の印刷法を用いて第1導体部G1’となる導体を印刷する。以上のように、誘電体100’に上記した何れかの態様の信号導体S’、グランド導体G及びグランド導体G’が形成される。伝送用基板D2が送信部300を備えている場合、送信部300を誘電体100’の第1面101’上に実装し、信号導体S’に電気的且つ機械的に接続する。以上のようにして伝送用基板D2が製造される。
【0059】
以上のような伝送用基板D2は、伝送路200’に伝送される高周波信号の周波数が一又は複数の特定周波数帯域にある場合、当該高周波信号の伝送損失(減衰)が軽減される。その理由は以下の通りである。
伝送路200’の信号導体S’、グランド導体G及びグランド導体G’のうちの少なくとも一つの導体の少なくとも一部を構成する多結晶体の交流抵抗値が、伝送される高周波信号の周波数が一又は複数の特定周波数帯域にある場合、急激に低下するため、高周波信号の伝送損失が軽減される。
また、信号導体S’が多結晶体で構成された第2導体部S2’及び/又は第3導体部S3’を有する場合、高周波信号の伝送時に、信号導体S’において、高周波信号の電流密度が高くなる部分(グランド導体G側の部分及び/又はグランド導体G’側の部分)が第2導体部S2’及び/又は第3導体部S3’で構成されている。第2導体部S2’及び/又は第3導体部S3’の交流抵抗値は、伝送される高周波信号の周波数が一又は複数の特定周波数帯域にある場合、急激に低下するため、信号導体S’側で高周波信号の伝送損失が軽減される。
グランド導体Gが多結晶体で構成された第2導体部G2を有する場合、高周波信号の伝送時に、グランド導体Gにおいて、高周波信号の電流密度が高くなる部分(信号導体S’側の部分)が第2導体部G2で構成されている。第2導体部G2の交流抵抗値は、伝送される高周波信号の周波数が一又は複数の特定周波数帯域にある場合、急激に低下するため、グランド導体G側で高周波信号の伝送損失が軽減される。
グランド導体G’が多結晶体で構成された第2導体部G2’を有する場合、高周波信号の伝送時に、グランド導体G’において、高周波信号の電流密度が高くなる部分(信号導体S’側の部分)が第2導体部G2’で構成されている。第2導体部G2’の交流抵抗値は、伝送される高周波信号の周波数が一又は複数の特定周波数帯域にある場合、急激に低下するため、グランド導体G’側で高周波信号の伝送損失が軽減される。
なお、伝送用基板D2は、伝送用基板D1の上記(B)と同様の技術的特徴及び効果も奏する。
【実施例3】
【0060】
以下、本発明の実施例3を含む複数の実施例に係る高周波伝送装置D3について、
図3A及び
図3Bを参照しつつ説明する。高周波伝送装置D3は、高周波伝送用の基板である。以下、高周波伝送装置D3を伝送用基板D3とも称する。
図3A及び
図3Bには、実施例3の伝送用基板D3が示されている。伝送用基板D3は、伝送路200’’が、信号導体S’’及び一対のグランド導体G’’を備えている点で相違する以外、伝送用基板D1と同様の構成である。その相違点について詳しく説明し、伝送用基板D1と重複する説明は省略する。なお、
図3Bには、Z-Z’方向に加えて、信号導体S’’の短手方向であるX-X’方向が示されている。
【0061】
伝送路200’’の信号導体S’’及び一対のグランド導体G’’は、高周波信号を伝送可能なコプレーナーラインを構成している。以下、伝送路200’’に一又は複数の特定周波数帯域の高周波信号を伝送させるときを、「高周波信号の伝送時」と称する。伝送路200’’は、以下の通り、誘電体100上に位置している。信号導体S’’は、誘電体100の第1面101上に設けられ、第1位置から第2位置へ延びている。一対のグランド導体G’’は、第1グランド導体G’’及び第2グランド導体G’’を含む。第1グランド導体G’’は、誘電体100の第1面101上に設けられ、信号導体S’’に沿って延びており且つ信号導体S’’のX方向側(一方側)に間隔をあけて配置されている。第2グランド導体G’’は、誘電体100の第1面101上に設けられ、信号導体S’’に沿って延びており且つ信号導体S’’のX’方向側(他方側)に間隔をあけて配置されている。
【0062】
信号導体S’’は、その一部又は全部が多結晶体で構成することが可能である。この場合、第1グランド導体G’’及び第2グランド導体G’’は、以下の(ア)~(ウ)の何れかの構成とすると良い。
(ア)第1グランド導体G’’及び第2グランド導体G’’は、その一部又は全部が多結晶体で構成されている。
(イ)第1グランド導体G’’は、その一部又は全部が多結晶体で構成されており、且つ第2グランド導体G’’は、その全部が多結晶体を含まない導体で構成されている。又は、その逆としても良い。
(ウ)第1グランド導体G’’及び第2グランド導体G’’は、その全部が多結晶体を含まない導体で構成されている。
又は、信号導体S’’は、その全部が多結晶体を含まない導体で構成することが可能である。この場合、第1グランド導体G’’及び第2グランド導体G’’は、以下の(エ)又は(オ)の構成とすること可能である。
(エ)第1グランド導体G’’及び第2グランド導体G’’が、その一部又は全部が多結晶体で構成されている。
(オ)第1グランド導体G’’が、その一部又は全部が多結晶体で構成されており、且つ、第2グランド導体G’’は、その全部が多結晶体を含まない導体で構成されている。又は、その逆としても良い。
【0063】
ところで、高周波信号の伝送時において、表皮効果により、高周波信号の電流密度は、信号導体S’’のうちの第1グランド導体G’’側の部分(信号導体S’’のうちの第1グランド導体G’’との電気的な結合が強い部分)、信号導体S’’のうちの第2グランド導体G’’側の部分(信号導体S’’のうちの第2グランド導体G’’との電気的な結合が強い部分)、及び第1、第2グランド導体G’’のうちの信号導体S’’側 の部分(第1、第2グランド導体G’’のうちの信号導体S’’との電気的な結合が強い部分)が高くなる。
【0064】
信号導体S’’の一部が多結晶体で構成されている場合、信号導体S’’は、第1導体部S1’’及び第2導体部S2’’を有する構成、第1導体部S1’’及び第3導体部S3’’を有する構成、又は、第1導体部S1’’、第2導体部S2’’及び第3導体部S3’’を有する構成とすることが可能である。
第1導体部S1’’は、誘電体100の第1面101上に設けられており且つ第1位置から第2位置へ延びている以外、伝送用基板D1の第1導体部S1と同様の構成である。
第2導体部S2’’は多結晶体で構成されている。第2導体部S2’’は、誘電体100の第1面101上に設けられ、第1導体部S1’’のX方向側の面の少なくとも一部上に固定されており且つ第1導体部S1’’に対して第1グランド導体G’’側に配置されている。第2導体部S2’’は、第1導体部S1’’のX方向側の面に沿って第1位置から第2位置へ延びていると良いが、一又は複数箇所で破断していても良い。すなわち、第2導体部S2’’が、高周波信号の伝送時に、信号導体S’’のうちの第1グランド導体G’’との電気的な結合が強い部分(高周波信号の電流密度が高い部分)を構成している。
第3導体部S3’’は多結晶体で構成されている。第3導体部S3’’は、誘電体100の第1面101上に設けられ、第1導体部S1’’のX’方向側の面の少なくとも一部上に固定されており且つ第1導体部S1’’に対して第2グランド導体G’’側に配置されている。第3導体部S3’’は、第1導体部S1’’のX’方向側の面に沿って第1位置から第2位置へ延びていると良いが、一又は複数箇所で破断していても良い。すなわち、第3導体部S3’’が、高周波信号の伝送時に、信号導体S’’のうちの第2グランド導体G’’との電気的な結合が強い部分(高周波信号の電流密度が高い部分)を構成している。
なお、第1導体部S1’’の第1接続部及び第2接続部は、Z方向において第2導体部S2’’及び第3導体部S3’’に覆われていない。よって、第1導体部S1’’の第1接続部及び第2接続部の少なくとも一方の接続部は、特許請求の範囲の信号導体の第1導体部の接続部に相当する。この少なくとも一方の接続部のZ方向側の面が、コネクタの端子(接続対象)によって弾性接触又は摺動接触される場合、少なくとも一方の接続部のZ方向側の面上には第2導体部S2’’及び第3導体部S3’’が設けられていないので、コネクタの端子の弾性接触又は摺動接触による第2導体部S2’’及び第3導体部S3’’の摩耗や破損が防止される。
【0065】
一対のグランド導体G’’の少なくとも一方の導体の一部が多結晶体で構成されている場合、少なくとも一方の導体が第1導体部G1’’及び第2導体部G2’’を有する構成とすることが可能である。
第1、第2グランド導体G’’の第1導体部G1’’は、誘電体100の第1面101上で信号導体S’’に沿って延びており且つ信号導体S’’のX方向側、X’方向側に間隔をあけて配置されている。第1、第2グランド導体G’’の第2導体部G2’’は、誘電体100の第1面101上に設けられ、第1、第2グランド導体G’’の第1導体部G1’’のX’方向側の面、X方向側の面の少なくとも一部上に固定されており且つ当該第1導体部G1’’よりも信号導体S’’側に配置されている。第1、第2グランド導体G’’の第2導体部G2’’は、信号導体S’’のX方向側、X’方向側に間隔をあけて配置されている。第1、第2グランド導体G’’の第2導体部G2’’は、第1導体部G1’’のX’方向側の面、X方向側の面に沿って第1位置から第2位置へ延びていると良いが、一又は複数箇所で破断していても良い。すなわち、第1、第2グランド導体G’’の第2導体部G2’’は、高周波信号の伝送時に、第1、第2グランド導体G’’のうちの信号導体S’’との電気的な結合が強い部分(高周波信号の電流密度が高い部分)を構成している。
【0066】
以下、上記した伝送用基板D3の製造方法について説明する。誘電体100を用意する。その後、以下の(1)~(5)の何れかの通り、誘電体100の第1面101上に信号導体S’’を形成し、以下の(6)~(8)の何れかの通り、誘電体100の第2面102上にグランド導体G’’を形成する。
(1)信号導体S’’が多結晶体のみで構成されている場合、上記の通り、導体ナノ粒子を主成分とする導電ペーストを用意し、誘電体100の第1面101上に、周知の印刷法(例えば、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法又はスプレー印刷法)を用いて導電ペーストを印刷する。
(2)信号導体S’’が第1導体部S1’’及び第2導体部S2’’を有する場合、上記の通り、導体ナノ粒子を主成分とする導電ペーストを用意し、誘電体100の第1面101上に、上記周知の印刷法を用いて、第1導体部S1’’となる導体及びそのX方向側に第2導体部S2’’となる導電ペーストをそれぞれ印刷する。
(3)信号導体S’’が第1導体部S1’’及び第3導体部S3’’を有する場合、上記の通り、導体ナノ粒子を主成分とする導電ペーストを用意し、誘電体100の第1面101上に、上記周知の印刷法を用いて、第1導体部S1’’となる導体及びそのX’方向側に第3導体部S3’’となる導電ペーストをそれぞれ印刷する。
(4)信号導体S’’が第1導体部S1’’、第2導体部S2’’及び第3導体部S3’’を有する場合、上記の通り、導体ナノ粒子を主成分とする導電ペーストを用意し、誘電体100の第1面101上に、上記周知の印刷法を用いて、第1導体部S1’’となる導体、当該導体のX方向側に第2導体部S2’’となる導電ペースト及び当該導体のX’方向側に第3導体部S3’’となる導電ペーストをそれぞれ印刷する。
(5)信号導体S’’が多結晶体を含まない構成である場合、誘電体100の第1面101上に、上記周知の印刷法を用いて多結晶体を含まない導体を印刷する。
(6)第1グランド導体G’’及び/又は第2グランド導体G’’が多結晶体のみで構成されている場合、上記の通り、導体ナノ粒子を主成分とする導電ペーストを用意し、誘電体100の第1面101上に、上記周知の印刷法を用いて導電ペーストを印刷する。
(7)第1グランド導体G’’及び/又は第2グランド導体G’’が第1導体部G1’’及び第2導体部G2’’を有する場合、上記の通り、導体ナノ粒子を主成分とする導電ペーストを用意し、誘電体100の第1面101上に、上記周知の印刷法を用いて、第1導体部G1’’となる導体及びそのX’方向側及び/又はX方向側に第2導体部G2’’となる導電ペーストをそれぞれ印刷する。
(8)第1グランド導体G’’及び/又は第2グランド導体G’’が多結晶体を含まない構成である場合、誘電体100の第2面102上に、上記周知の印刷法を用いて多結晶体を含まない導体を印刷する。
【0067】
その後、信号導体S’’及びグランド導体G’’付きの誘電体100を、上記電気式加熱調理器具や上記電気炉内に入れ、上記の通り導電ペーストを焼成する。上記(1)の場合、焼成された導電ペーストが上記多結晶体(信号導体S’’)となる。上記(2)の場合、焼成された導電ペーストが上記多結晶体(第2導体部S2’’)となる。上記(3)の場合、焼成された導電ペーストが上記多結晶体(第3導体部S3’’)となる。上記(4)の場合、焼成されたX方向側、X’方向側の導電ペーストが上記多結晶体(第2導体部S2’’、第3導体部S3’’)となる。上記(6)の場合、焼成された導電ペーストが上記多結晶体(第1グランド導体G’’及び/又は第2グランド導体G’’)となる。上記(7)の場合、焼成された導電ペーストが上記多結晶体(第1グランド導体G’’及び/又は第2グランド導体G’’の第2導体部G2’’)となる。以上のように、誘電体100に上記した何れかの態様の信号導体S’’及び一対のグランド導体G’’が形成される。伝送用基板D3が送信部300を備えている場合、送信部300を誘電体100の第1面101上に実装し、信号導体S’’に電気的且つ機械的に接続する。以上のようにして伝送用基板D3が製造される。
【0068】
以上のような伝送用基板D3は、伝送路200’’に伝送される高周波信号の周波数が一又は複数の特定周波数帯域にある場合、当該高周波信号の伝送損失(減衰)が軽減される。その理由は以下の通りである。
伝送路200’’の信号導体S’’、 第1グランド導体G’’及び第2グランド導体G’’のうちの少なくとも一つの導体の少なくとも一部を構成する多結晶体の交流抵抗値が、伝送される高周波信号の周波数が一又は複数の特定周波数帯域にある場合、急激に低下するため、高周波信号の伝送損失が軽減される。
また、信号導体S’’が多結晶体で構成された第2導体部S2’’及び/又は第3導体部S3’’を有する場合、高周波信号の伝送時に、信号導体S’’において、高周波信号の電流密度が高くなる部分(第1グランド導体G’’側の部分及び/又は第2グランド導体G’’側の部分)が第2導体部S2’’及び/又は第3導体部S3’’で構成されている。第2導体部S2’’及び/又は第3導体部S3’’の交流抵抗値は、伝送される高周波信号の周波数が一又は複数の特定周波数帯域にある場合、急激に低下するため、信号導体S’’側で高周波信号の伝送損失が軽減される。
第1グランド導体G’’及び/又は第2グランド導体G’’が多結晶体で構成された第2導体部G2’’を有する場合、高周波信号の伝送時に、第1グランド導体G’’及び/又は第2グランド導体G’’において、高周波信号の電流密度が高くなる部分(信号導体S’’側の部分)が第2導体部G2’’で構成されている。第2導体部G2’’の交流抵抗値は、伝送される高周波信号の周波数が一又は複数の特定周波数帯域にある場合、急激に低下するため、第1グランド導体G’’及び/又は第2グランド導体G’’側で高周波信号の伝送損失が軽減される。
なお、伝送用基板D3は、伝送用基板D1の上記(B)と同様の技術的特徴及び効果も奏する。
【実施例4】
【0069】
以下、本発明の実施例4を含む複数の実施例に係る高周波伝送装置D4について、
図4A及び
図4Bを参照しつつ説明する。高周波伝送装置D4は、高周波伝送用の基板である。以下、高周波伝送装置D4を伝送用基板D4とも称する。
図4A及び
図4Bには、実施例4の伝送用基板D4が示されている。伝送用基板D4は、伝送路200’’’が、一対の信号導体S’’’を備えている点で相違する以外、伝送用基板D1と同様の構成である。その相違点について詳しく説明し、伝送用基板D1と重複する説明は省略する。なお、
図4Bには、Z-Z’方向に加えて、信号導体S’’’の短手方向であるX-X’方向が示されている。
【0070】
伝送路200’’’は、以下の通り、誘電体100上に位置している。伝送路200’’’の一対の信号導体S’’’は、誘電体100の第1面101上に設けられ、誘電体100の第1面101の第1位置から第2位置にかけて延びており且つX-X’方向に間隔をあけて配置されている。一対の信号導体S’’’は、高周波信号を伝送可能な差動対をなした第1信号導体S’’’及び第2信号導体S’’’を含む。第1信号導体S’’’は、その一部又は全部が多結晶体で構成とすることが可能である。この場合、第2信号導体S’’’は、その一部又は全部が多結晶体で構成、又は、その全部が多結晶体を含まない導体で構成されていると良い。又は、第1信号導体S’’’は、その全部が多結晶体を含まない導体で構成することが可能である。この場合、第2信号導体S’’’は、その一部又は全部が多結晶体で構成されていると良い。以下、第1信号導体S’’’及び第2信号導体S’’’に一又は複数の特定周波数帯域の高周波信号を伝送させるときを、「高周波信号の伝送時」と称する。
【0071】
ところで、高周波信号の伝送時において、表皮効果により、高周波信号の電流密度は、第1信号導体S’’’のうちの第2信号導体S’’’側の部分(第1信号導体S’’’のうちの第2信号導体S’’’との電気的な結合が強い部分)及び第2信号導体S’’’のうちの第1信号導体S’’’側の部分(第2信号導体S’’’のうちの第1信号導体S’’’との電気的な結合が強い部分)が高くなる。
【0072】
第1信号導体S’’’及び/又は第2信号導体S’’’の一部が多結晶体で構成されている場合、第1導体部S1’’’及び第4導体部S4’’’を有する構成とすることが可能である。
第1信号導体S’’’及び/又は第2信号導体S’’’の第1導体部S1’’’は、誘電体100の第1面101上に設けられており且つ第1位置から第2位置へ延びている以外、伝送用基板D1の第1導体部S1と同様の構成である。
第1信号導体S’’’及び/又は第2信号導体S’’’の第4導体部S4’’’は多結晶体で構成されている。
第1信号導体S’’’の第4導体部S4’’’は、誘電体100の第1面101上に設けられ、第1信号導体S’’’の第1導体部S1’’’のX’方向側の面の少なくとも一部上に固定されており且つ当該第1導体部S1’’’に対して第2信号導体S’’’側に配置されている。このように第1信号導体S’’’の第4導体部S4’’’が、高周波信号の伝送時に、第1信号導体S’’’のうちの第2信号導体S’’’との電気的な結合が強い部分(高周波信号の電流密度が高い部分)を構成している。第1信号導体S’’’の第4導体部S4’’’は、第1信号導体S’’’の第1導体部S1’’’のX’方向側の面に沿って第1位置から第2位置へ延びていると良いが、一又は複数箇所で破断していても良い。
第2信号導体S’’’の第4導体部S4’’’は、誘電体100の第1面101上に設けられ、第2信号導体S’’’の第1導体部S1’’’のX方向側の面の少なくとも一部上に固定されており且つ当該第1導体部S1’’’に対して第1信号導体S’’’側に配置されている。このように第2信号導体S’’’の第4導体部S4’’’が、高周波信号の伝送時に、第2信号導体S’’’のうちの第1信号導体S’’’との電気的な結合が強い部分(高周波信号の電流密度が高い部分)を構成している。第2信号導体S’’’の第4導体部S4’’’は、第2信号導体S’’’の第1導体部S1’’’のX方向側の面に沿って第1位置から第2位置へ延びていると良いが、一又は複数箇所で破断していても良い。
なお、第1導体部S1’’’の第1接続部及び第2接続部は、Z方向において第4導体部S4’’’に覆われていない。よって、第1導体部S1’’’の第1接続部及び第2接続部の少なくとも一方の接続部は、特許請求の範囲の信号導体の第1導体部の接続部に相当する。この少なくとも一方の接続部のZ方向側の面が、コネクタの端子(接続対象)によって弾性接触又は摺動接触される場合、少なくとも一方の接続部のZ方向側の面上には第4導体部S4’’’が設けられていないので、コネクタの端子の弾性接触又は摺動接触による第4導体部S4’’’の摩耗や破損が防止される。
【0073】
以下、上記した伝送用基板D4の製造方法について説明する。誘電体100を用意する。その後、以下の(1)又は(2)の通り、誘電体100の第1面101上に第1信号導体S’’’を形成し、以下の(3)又は(4)の通り、誘電体100の第1面101上に第2信号導体S’’’を形成する。
(1)第1信号導体S’’’が多結晶体のみで構成されている場合、上記の通り、導体ナノ粒子を主成分とする導電ペーストを用意し、誘電体100の第1面101上に、周知の印刷法(例えば、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法又はスプレー印刷法)を用いて導電ペーストを印刷する。
(2)第1信号導体S’’’が第1導体部S1’’’及び第4導体部S4’’’を有する場合、上記の通り、導体ナノ粒子を主成分とする導電ペーストを用意し、誘電体100の第1面101上に、上記周知の印刷法を用いて、第1導体部S1’’’となる導体及びそのX’方向側に第4導体部S4’’’となる導電ペーストをそれぞれ印刷する。
(3)第2信号導体S’’’が多結晶体のみで構成されている場合、上記の通り、導体ナノ粒子を主成分とする導電ペーストを用意し、誘電体100の第1面101上に、周知の印刷法(例えば、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法又はスプレー印刷法)を用いて導電ペーストを印刷する。
(4)第2信号導体S’’’が第1導体部S1’’’及び第4導体部S4’’’を有する場合、上記の通り、導体ナノ粒子を主成分とする導電ペーストを用意し、誘電体100の第1面101上に、上記周知の印刷法を用いて、第1導体部S1’’’となる導体及びそのX方向側に第4導体部S4’’’となる導電ペーストをそれぞれ印刷する。
【0074】
その後、一対の信号導体S’’’付きの誘電体100を、上記電気式加熱調理器具や上記電気炉内に入れ、上記の通り導電ペーストを焼成する。上記(1)の場合、焼成された導電ペーストが上記多結晶体(第1信号導体S’’’)となる。上記(2)の場合、焼成された導電ペーストが上記多結晶体(第1信号導体S’’’の第4導体部S4’’’)となる。上記(3)の場合、焼成された導電ペーストが上記多結晶体(第2信号導体S’’’)となる。上記(4)の場合、焼成された導電ペーストが上記多結晶体(第2信号導体S’’’の第4導体部S4’’’)となる。以上のように、誘電体100に上記した何れかの態様の一対の信号導体S’’’が形成される。伝送用基板D4が送信部300を備えている場合、送信部300を誘電体100の第1面101上に実装し、一対の信号導体S’’’に電気的且つ機械的に接続する。以上のようにして伝送用基板D4が製造される。
【0075】
以上のような伝送用基板D4は、伝送路200’’’に伝送される高周波信号の周波数が一又は複数の特定周波数帯域にある場合、当該高周波信号の伝送損失(減衰)が軽減される。その理由は以下の通りである。
伝送路200’’’の一対の信号導体S’’’のうちの少なくとも一方の導体の少なくとも一部を構成する多結晶体の交流抵抗値が、伝送される高周波信号の周波数が一又は複数の特定周波数帯域にある場合、急激に低下するため、高周波信号の伝送損失が軽減される。
また、第1信号導体S’’’及び/又は第2信号導体S’’’が多結晶体で構成された第4導体部S4’’’を有する場合、高周波信号の伝送時に、第1信号導体S’’’及び/又は第2信号導体S’’’において、高周波信号の電流密度が高くなる部分(第2信号導体S’’’及び/又は第1信号導体S’’’側の部分)が第4導体部S4’’’で構成されている。第1信号導体S’’’及び/又は第2信号導体S’’’の第4導体部S4’’’の交流抵抗値は、伝送される高周波信号の周波数が一又は複数の特定周波数帯域にある場合、急激に低下するため、第1信号導体S’’’及び/又は第2信号導体S’’’側で高周波信号の伝送損失が軽減される。
なお、伝送用基板D4は、伝送用基板D1の上記(B)と同様の技術的特徴及び効果も奏する。
【実施例5】
【0076】
以下、本発明の実施例5を含む複数の実施例に係る高周波伝送装置D5について、
図5、
図6A及び
図6Bを参照しつつ説明する。高周波伝送装置D5は、高周波伝送用のコネクタである。以下、高周波伝送装置D5をコネクタD5とも称する。
図5には、実施例5のコネクタD5の概略図が示されており、
図6A及び
図6Bには、実施例5のコネクタD5が同軸コネクタである場合の別の実施例が示されている。なお、
図5及び
図6Aには、Z-Z’方向及びY-Y’方向が示されており、
図6Bには、Z-Z’方向及びX-X’方向が示されている。Z-Z’方向は、コネクタD5の高さ方向に相当し、Y-Y’方向はZ-Z’方向に略直交し、X-X’方向は、Z-Z’方向及びY-Y’方向に略直交している。
【0077】
コネクタD5は、絶縁樹脂製のボディである誘電体400と、高周波信号を伝送可能な伝送路500とを備えている。以下、伝送路500に一又は複数の特定周波数帯域の高周波信号を伝送させるときを、「高周波信号の伝送時」と称する。伝送路500は、高周波信号を伝送可能な信号導体500S及びグランド導体500G(第1グランド導体)を備えている。伝送路500の信号導体500Sは、その少なくとも一部が誘電体400に保持されたコネクタD5の端子である。すなわち、信号導体500Sの少なくとも一部が誘電体400内に位置している。伝送路500のグランド導体500Gは、信号導体500Sを保持した誘電体400を収容保持するコネクタD5のシェルである。グランド導体500Gは、収容した信号導体500Sの少なくとも一部に沿って延びている。
【0078】
信号導体500Sは、その一部又は全部が上記多結晶体で構成することが可能である。この場合、グランド導体500Gは、その一部又は全部が上記多結晶体で構成、又は、その全部が上記多結晶体を含まない導体で構成されていると良い。又は、信号導体500Sは、その全部が上記多結晶体を含まない導体で構成することが可能である。この場合、グランド導体500Gは、その一部又は全部が上記多結晶体で構成されていると良い。
【0079】
信号導体500Sの一部が多結晶体で構成されている場合、信号導体500Sは、第1導体部510S及び第2導体部520Sを有する構成とすることが可能である。第1導体部510Sは、端子本体であって、上記多結晶体の直流抵抗値よりも小さい直流抵抗値を有する素材及び抗酸化性などの耐腐食性を有する素材の少なくとも一方の素材で構成されている。第1導体部510Sは、例えば、金属板などで構成されている。
【0080】
第1導体部510Sは、先端部511Sと、中間部512Sと、テール部513Sとを有している。中間部512Sは、Y-Y’方向に延びており且つその少なくとも一部が誘電体400に保持されていると良い。先端部511Sは、中間部512SからY方向に延びており且つ誘電体400から突出又は露出していれば良い。先端部511Sは、第1導体部510Sの第1接続部であって、図示しない相手方コネクタの端子に接触可能になっている。テール部513Sは、中間部512SからY’方向及びZ’方向の少なくとも一方の方向の成分を含む方向に延びており且つ誘電体400から突出又は露出していれば良い。テール部513Sは、第1導体部510Sの第2接続部であって、図示しない基板又はケーブルの信号導体に電気的且つ機械的に接続可能になっている。
第2導体部520Sは、上記多結晶体で構成されており且つ第1導体部510Sの少なくとも一部の外周面の上に設けられており且つ第1導体部510Sに対してグランド導体500G側に位置している。例えば、第2導体部520Sは、
図5に示されるように、第1導体部510Sの中間部512Sの外周面に設けられており且つZ-Z’方向において断面視略環状体をなしていても良い。
【0081】
グランド導体500Gの一部が多結晶体で構成されている場合、グランド導体500Gは、第1導体部510G及び第2導体部520Gを有する構成とすることが可能である。
第1導体部510Gは、シェル本体であって、上記多結晶体の直流抵抗値よりも小さい直流抵抗値を有する素材及び抗酸化性などの耐腐食性を有する素材の少なくとも一方の素材で構成されている。第1導体部510Gは、例えば、金属板などで構成されている。
第2導体部520Gは、上記多結晶体で構成され、第1導体部510Gの少なくとも一部の内周面の上に設けられており且つ第1導体部510Gに対して信号導体500S側に位置している。例えば、
図5に示されるように、第1導体部510GがY-Y’方向に延びた筒部を有している場合、第2導体部520Gは、第1導体部510Gの筒部の内周面に設けられており且つZ-Z’方向において断面視略環状体をなしていても良い。
第1導体部510Gは、第2導体部520Gに覆われていない接続部を更に有していても良い。この第1導体部510G接続部は、例えば、シェル本体の脚部やシェル本体のY’方向の端部などであって、上記基板又はケーブルのグランド導体に接続可能となっていると良い。
【0082】
コネクタD5は、
図6A及び
図6Bに示されるように、同軸コネクタであっても良い。この場合、信号導体500S及びグランド導体500Gは高周波信号を伝送可能な同軸ラインを構成している。
【0083】
信号導体500Sは、誘電体400に保持されたコネクタD5の端子であって、誘電体400と共にグランド導体500G内に収容されて同軸ラインの中心導体をなしている。この信号導体500Sの第1導体部510Sは、以下の(a)~(d)の何れかの構成とすることが可能である。
(a)
図6A及び
図6Bに示すように、中間部512Sは、Y-Y’方向に延びる筒状である。先端部511Sは、中間部512SからY方向に延びた一対のアーム(図示一つ)を有する。テール部513Sは、中間部512SからY’方向に延びた略L字状の板である。この場合、先端部511Sのアームの内面が第1導体部510Sの第1接続部であり、テール部513Sの後端部が第1導体部510Sの第2接続部となっている。第1導体部510Sの第1接続部は、アーム間に挿入される図示しない相手方コネクタの端子の先端部に弾性接触可能な部分であり、第1導体部510Sの第2接続部は、図示しない基板に電気的且つ機械的に接続可能な部分である。
(b)第1導体部510Sの先端部511S及び中間部512Sは、Y-Y’方向に延びた直線状の棒又は平板であり、第1導体部510Sのテール部513Sは、中間部512SからY’方向に延びた略L字状の棒又は板である。この場合、先端部511Sの外周面が第1導体部510Sの第1接続部であり、テール部513Sの後端部が第1導体部510Sの第2接続部となっている。
(c)テール部513Sが、略L字状の板ではなく、Y’方向に延びた直線状である以外、第1導体部510Sは、上記(a)の構成と同様の構成である。
(d)テール部513Sは、略L字状の板ではなく、Y’方向に延びた直線状である以外、第1導体部510Sは、上記(b)の構成と同様の構成である。
なお、(c)及び(d)の場合、第1導体部510Sの第2接続部は、基板ではなく、ケーブルなどに接続可能な部分となる。
【0084】
第1導体部510Sが上記(a)又は(c)の構成である場合、第2導体部520Sは、先端部511Sのアームの外面、中間部512Sの外周面及びテール部513Sの第2接続部以外の部分の外周面上、又は、中間部512Sの外周面及びテール部513Sの第2接続部以外の部分の外周面上に設けられている。前者の場合、先端部511Sのアームの内面及び中間部512Sの内周面は、第2導体部520Sに覆われていない。後者の場合、先端部511Sのアームの内面、先端部511Sのアームの外面及び中間部512Sの内周面は、第2導体部520Sに覆われていない。
何れの態様による場合であっても、信号導体500Sの先端部511Sのアームの第1接続部は、第2導体部520Sに覆われていない。この信号導体500Sの先端部511Sの第1接続部が、特許請求の範囲の信号導体の第1導体部の接続部に相当する。信号導体500Sの先端部511Sのアームが、その間に相手方コネクタの端子の先端部が挿入されることによって、当該端子の先端部に弾性接触するが、信号導体500Sの先端部511Sのアームの第1接続部上には第2導体部520Sが設けられていないので、相手方コネクタの端子の先端部による第2導体部520Sの摩耗や破損が防止される。信号導体500Sの先端部511Sのアームの外面も第2導体部520Sに覆われていない場合、信号導体500Sの先端部511Sのアームが弾性変形することによって、第2導体部520Sが破損しない。
【0085】
第1導体部510Sが上記(b)又は(d)の構成である場合、第2導体部520Sは、先端部511Sの第1接続部を除く部分の外周面、中間部512Sの外周面及びテール部513Sの第2接続部を除く部分の外周面上に設けられている。
この場合、信号導体500Sの先端部511Sの第1接続部は、第2導体部520Sに覆われていない。すなわち、この信号導体500Sの先端部511Sの第1接続部は、特許請求の範囲の信号導体の第1導体部の接続部に相当する。信号導体500Sの先端部511Sの第1接続部が、相手方コネクタの端子によって弾性接触又は摺動接触されることになるが、信号導体500Sの先端部511Sの第1接続部上には第2導体部520Sが設けられていないので、相手方コネクタの端子の弾性接触又は摺動接触による第2導体部520Sの摩耗や破損が防止される。
【0086】
グランド導体500Gは、誘電体400を収容保持するコネクタD5の筒状のシェルであって、同軸ラインの中心導体の少なくとも一部に沿って延び、当該同軸ラインの外側導体をなしている。グランド導体500Gの第1導体部510Sが上記(a)又は(c)の構成である場合、第1導体部510Gは、側面視略L字状の筒とすると良い(
図6A及び
図6B参照)。第1導体部510Sが上記(b)又は(d)の構成である場合、第1導体部510Gは、Y-Y’方向に延びる直線状の筒とすると良い。何れの場合も、第1導体部510Gは、少なくともZ-Z’方向において略環状であると良い。Z-Z’方向は、特許請求の範囲の直交方向に相当している。
【0087】
グランド導体500Gの第2導体部520Gは、上記した何れかの態様の第1導体部510Gの一部の内周面に設けられた筒、又は、上記した何れかの態様の第1導体部510Gの内周面の略全領域に設けられた筒である。何れの態様の場合も、第2導体部520Gは、少なくともZ-Z’方向において略環状であって、第1導体部510Gに対して信号導体500S側に位置している。
【0088】
以下、上記したコネクタD5の製造方法について説明する。まず、信号導体500Sを、以下の(1)~(3)の何れかの通り得る。
(1)信号導体500Sが多結晶体のみで構成されている場合、上記の通り、導体ナノ粒子を主成分とする導電ペーストを用意し、図示しない金型に導電ペーストを充填し、当該金型を上記電気式加熱調理器具や上記電気炉で上記の通り加熱し、導電ペーストを焼成する。その後、金型から焼成された導電ペーストを取り外す。この焼成された導電ペーストが上記多結晶体(信号導体500S)となる。
(2)信号導体500Sが第1導体部510S及び第2導体部520Sを有する場合、第1導体部510Sを用意する。そして、上記の通り、導体ナノ粒子を主成分とする導電ペーストを用意し、第1導体部510Sの少なくとも一部の外周面上に導電ペーストを塗布、吹きつけ又は印刷する。その後、導電ペースト付きの第1導体部510Sを上記電気式加熱調理器具や上記電気炉で上記の通り加熱し、導電ペーストを焼成する。焼成された導電ペーストが上記多結晶体(第2導体部520S)となる。
(3)信号導体500Sが多結晶体を含まない構成である場合、信号導体500Sを周知の端子の製造方法を用いて得る。
【0089】
次に、グランド導体500Gを、以下の(4)~(6)の何れかの通り得る。
(4)グランド導体500Gが多結晶体のみで構成されている場合、上記の通り、導体ナノ粒子を主成分とする導電ペーストを用意し、図示しない金型に導電ペーストを充填し、当該金型を上記電気式加熱調理器具や上記電気炉で上記の通り加熱し、導電ペーストを焼成する。その後、金型から焼成された導電ペーストを取り外す。この焼成された導電ペーストが上記多結晶体(グランド導体500G)となる。
(5)グランド導体500Gが第1導体部510G及び第2導体部520Gを有する場合、第1導体部510Gを用意する。そして、上記の通り、導体ナノ粒子を主成分とする導電ペーストを用意し、第1導体部510Gの少なくとも一部の内周面上に導電ペーストを塗布、吹きつけ又は印刷する。その後、導電ペースト付きの第1導体部510Gを上記電気式加熱調理器具や上記電気炉で上記の通り加熱し、導電ペーストを焼成する。焼成された導電ペーストが上記多結晶体(第2導体部520G)となる。
(6)グランド導体500Gが多結晶体を含まない構成である場合、グランド導体500Gを周知のシェルの製造方法を用いて得る。
【0090】
その後、信号導体500Sを誘電体400の孔に挿入し、信号導体500Sを誘電体400に保持させる。又は、信号導体500Sを樹脂にインサート成形し、信号導体500Sを誘電体400に保持させる。その後、誘電体400をグランド導体500G内に収容させ、保持させる。このようにしてコネクタD5が製造される。
【0091】
以上のようなコネクタD5は、以下の技術的特徴及び効果を奏する。
(A)伝送路500に伝送される高周波信号の周波数が一又は複数の特定周波数帯域にある場合、当該高周波信号の伝送損失(減衰)が軽減される。その理由は以下の通りである。
伝送路500の信号導体500S及びグランド導体500Gの少なくとも一方の導体の少なくとも一部を構成する多結晶体の交流抵抗値が、伝送される高周波信号の周波数が一又は複数の特定周波数帯域にある場合、急激に低下するため、高周波信号の伝送損失が軽減される。
また、信号導体500Sが多結晶体で構成された第2導体部520Sを有する場合、高周波信号の伝送時に、信号導体500Sにおいて、高周波信号の電流密度が高くなる部分(グランド導体500G側の部分)が第2導体部520Sで構成されている。第2導体部520Sの交流抵抗値は、伝送される高周波信号の周波数が一又は複数の特定周波数帯域にある場合、急激に低下するため、信号導体500S側で高周波信号の伝送損失が軽減される。
グランド導体500Gが多結晶体で構成された第2導体部520Gを有する場合、高周波信号の伝送時に、グランド導体500Gにおいて、高周波信号の電流密度が高くなる部分(信号導体500S側の部分)が第2導体部520Gで構成されている。第2導体部520Gの交流抵抗値は、伝送される高周波信号の周波数が一又は複数の特定周波数帯域にある場合、急激に低下するため、グランド導体500G側で高周波信号の伝送損失が軽減される。
【0092】
(B)信号導体500Sが第1導体部510S及び第2導体部520Sを有する場合、コネクタD5の相手方コネクタとの接続信頼性が向上する。その理由は以下の通りである。第1導体部510Sが、上記多結晶体の直流抵抗値よりも小さい直流抵抗値を有する素材及び抗酸化性などの耐腐食性を有する素材の少なくとも一方の素材で構成されている。第1導体部510Sの第1接続部を、相手方コネクタの端子に接触させて電気的に接続させることができ、且つ、第1導体部510Sの第2接続部を、基板又はケーブルに電気的且つ機械的に接続させることができる。
グランド導体500Gが第1導体部510G及び第2導体部520Gを有する場合、コネクタD5のグランド接続に対する接続信頼性が向上する。その理由は以下の通りである。
第1導体部510Gが、上記多結晶体の直流抵抗値よりも小さい直流抵抗値を有する素材及び抗酸化性などの耐腐食性を有する素材の少なくとも一方の素材で構成されている。第1導体部510Gをグランド接続させることができる。
【0093】
なお、上記した高周波伝送装置は、上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載範囲において任意に設計変更することが可能である。以下、詳しく述べる。
【0094】
上記した何れかの態様の伝送用基板D1において、誘電体100の第1面101上に伝送用基板D3の上記何れかの態様の一対のグランド導体G’’が設けられており且つグランド導体G’’の間に信号導体Sが配置された構成とすることが可能である。この場合、信号導体Sは、第1導体部S1及び第2導体部S2に加えて、第2導体部S2’’及び/又は第3導体部S3’’を有していても良い。
【0095】
上記した何れかの態様の伝送用基板D2において、誘電体100’の内部に伝送用基板D3の上記何れかの態様の一対のグランド導体G’’が設けられており且つグランド導体G’’の間に信号導体S’が配置された構成とすることが可能である。この場合、信号導体S’は、第1導体部S1’、第2導体部S2’及び第3導体部S3’に加えて、第2導体部S2’’及び/又は第3導体部S3’’を有していても良い。
【0096】
上記した何れかの態様の伝送用基板D1~D2において、上記した何れかの態様の信号導体が、誘電体に複数設けられていても良い。この信号導体は、その短手方向に互いに間隔を開けて配置された第1信号導体及び第2信号導体を含んでいても良い。例えば、伝送用基板D1は、
図7に示す伝送用基板D1’のように設計変更することが可能である。伝送用基板D1’は、誘電体100’’及び伝送路を備えている。誘電体100’’は、第1面101’’及びその反対側の第2面102’’を有している。伝送路は、高周波信号を伝送可能な第1信号導体S’’’’、第2信号導体S’’’’及びグランド導体G’’’を備えている。第1信号導体S’’’’及び第2信号導体S’’’’は、誘電体100’’の第1面101’’上に設けられており且つグランド導体G’’’に対してZ方向側に位置している。第1信号導体S’’’’及び第2信号導体S’’’’は、第1導体部S1’’’’、第2導体部S2’’’’及び第4導体部S4’’’’を各々有している。第1信号導体S’’’’及び第2信号導体S’’’’の第2導体部S2’’’’は、誘電体100’’の第1面101’’上に設けられており且つ第1導体部S1’’’’に対してグランド導体G’’’側に配置されている。第1信号導体S’’’’及び第2信号導体S’’’’の第1導体部S1’’’’は、第2導体部S2’’’’上に固定されている。第1信号導体S’’’’の第4導体部S4’’’’は、当該第1信号導体S’’’’の第1導体部S1’’’’に対して第2信号導体S’’’’側に配置され、第2信号導体S’’’’の第4導体部S4’’’’は、当該第2信号導体S’’’’の第1導体部S1’’’’に対して第1信号導体S’’’’側に配置されている。グランド導体G’’’は、誘電体100’’の内部に設けられていても良いし、誘電体100’’の第2面102上設けられていても良い。グランド導体G’’’は、第1導体部G1’’’及び第2導体部G2’’’を有している。第2導体部G2’’’は、第1導体部G1’’’に対して第1信号導体S’’’’及び第2信号導体S’’’’側に配置されている。第1導体部G1’’’は、第2導体部G2’’’上に固定されている。
【0097】
上記した何れかの態様の伝送用基板において、誘電体上の信号導体及び/又は誘電体上のグランド導体は、誘電体内に設けられていても良い(
図7を借りて参照)。信号導体及びグランド導体が誘電体内に設けられている場合、伝送路の全てが、誘電体内に位置していることになる。
【0098】
本発明の伝送用基板は、複数の層を有する多層基板である誘電体と、高周波信号を伝送可能な伝送路とを備えており、伝送路が、複数のグランド導体と、信号導体とを備えており、複数のグランド導体は、誘電体の複数の層に設けられたベタ導体であって、各々が開口を有しており、信号導体は、複数のグランド導体の開口内に位置するように、誘電体内に設けられたバイアホールである構成とすることが可能である。この信号導体が、第1導体部及び第2導体部を有する場合、第1導体部は筒状であり、第2導体部は第1導体部の少なくとも一部の外周面上に設けられた筒状であって、第1導体部に対して複数のグランド導体側に配置された構成とすることが可能である。各グランド導体が、第1導体部及び第2導体部を有する場合、第1導体部は、対応するグランド導体の開口の縁部以外の部分であり、第2導体部が開口の環状の縁部であって、第1導体部に対して信号導体側に配置された構成とすることが可能である。
【0099】
上記した何れかの態様のコネクタD5において、板状のグランド導体を備えた構成とすることが可能である。この場合、コネクタは、伝送用基板D1~D3に対応した構成とすることが可能である。以下、伝送用基板D1、D2、D3に対応するコネクタを、第1、第2、第3設計変更コネクタと称する。
【0100】
第1設計変更コネクタにおいては、
図8Aに示されるように、伝送路500’の板状のグランド導体500G’が誘電体400内に設けられ、信号導体500S’に対してZ’方向側に配置され且つ信号導体500S’の少なくとも一部に沿って延びている。グランド導体500G’と信号導体500S’がマイクロストリップラインを構成している。信号導体500S’が第1導体部510S及び第2導体部520Sを有する場合、第2導体部520Sが第1導体部510SのZ’方向側(板状のグランド導体側)に設けられていると良い。グランド導体500G’は、第1導体部510G’及び第2導体部520G’を有する構成とすることが可能である。第2導体部520G’は、第1導体部510G’のZ方向側(信号導体500S’)に設けられていると良い。
【0101】
第1設計変更コネクタにおいて、誘電体400内に第1、第2グランド導体が更に設けられており且つ第1、第2グランド導体が上記した何れかの態様の信号導体500S’のX方向側、X’方向側に配置されていても良い。この第1、第2グランド導体も、信号導体500S’の少なくとも一部に沿って延びている。信号導体500S’が、第1導体部510S及び第2導体部520Sに加えて、伝送用基板D3と同様に、第2導体部S2’’及び/又は第3導体部S3’’を有していても良い。第2導体部S2’’は、第1導体部510SのX方向側(第1グランド導体側)に設けられ、第3導体部S3’’は、第1導体部510SのX’方向側(第2グランド導体側)に設けられていると良い。第1、第2グランド導体のうちの少なくとも一方の導体は、伝送用基板D3と同様に、第1導体部G1’’及び第2導体部G2’’を有する構成とすることが可能である。
【0102】
第2設計変更コネクタにおいては、
図8Bに示されるように、伝送路500’’の板状のグランド導体500G’が一対であり、この一対のグランド導体500G’が誘電体400内に設けられている。一対のグランド導体500G’が第1、第2グランド導体500G’を含む。第1グランド導体500G’が、信号導体500S’’に対してZ’方向側に配置され且つ信号導体500S’’の少なくとも一部に沿って延びており、第2グランド導体500G’が信号導体500S’’に対してZ方向側に配置され且つ信号導体500S’’の少なくとも一部に沿って延びている。一対のグランド導体500G’と信号導体500S’’がストリップラインを構成している。信号導体500S’’は、第1導体部510S、第2導体部520S及び第3導体部530Sを有する構成とすることが可能である。第2導体部520Sが第1導体部510SのZ’方向側(第1グランド導体500G’側)に設けられ、第3導体部530Sが第1導体部510SのZ方向側(第2グランド導体500G’側)に設けられていると良い。第1グランド導体500G’及び/又は第2グランド導体500G’は、第1導体部510G’及び第2導体部520G’を有する構成とすることが可能である。第1グランド導体500G’の第2導体部520G’は、第1グランド導体500G’の第1導体部510G’のZ方向側(信号導体500S’’)に設けられていると良い。第2グランド導体500G’の第2導体部520G’は、第2グランド導体500G’の第1導体部510G’のZ’方向側(信号導体500S’’)に設けられていると良い。
【0103】
第2設計変更コネクタにおいて、誘電体400’内に第3、第4グランド導体が更に設けられており且つ第3、第4グランド導体が上記した何れかの態様の信号導体500S’’のX方向側、X’方向側に配置されていても良い。この第3、第4グランド導体も、信号導体500S’’の少なくとも一部に沿って延びている。信号導体500S’’が、第1導体部510S、第2導体部520S及び第3導体部530Sに加えて、伝送用基板D3と同様に、第2導体部S2’’及び/又は第3導体部S3’’を有していても良い。第2導体部S2’’は、第1導体部510SのX方向側(第3グランド導体側)に設けられ、第3導体部S3’’は、第1導体部510SのX’方向側(第4グランド導体側)に設けられていると良い。第3グランド導体及び第4グランド導体のうちの少なくとも一方の導体は、伝送用基板D3と同様に、第1導体部G1’’及び第2導体部G2’’を有する構成とすることが可能である。
【0104】
第3設計変更コネクタにおいて、
図8Cに示されるように、伝送路500’’’の板状のグランド導体500G’’が一対であり、この一対のグランド導体500G’’が誘電体400の内部に設けられている。一対のグランド導体500G’’は、第1グランド導体500G’’及び第2グランド導体500G’’を含む。第1グランド導体500G’’が、信号導体500S’’’に対してX方向側に配置され且つ信号導体500S’’’の少なくとも一部に沿って延びており、第2グランド導体500G’’が信号導体500S’’’に対してX’方向側に配置され且つ信号導体500S’’’の少なくとも一部に沿って延びている。一対のグランド導体500G’’と信号導体500S’’’がコプレーナーラインを構成している。信号導体500S’’’は、第1導体部510S、第2導体部520S及び第3導体部530Sを有する構成とすることが可能である。第2導体部520Sが第1導体部510SのX方向側(第1グランド導体500G’’側)に設けられ、第3導体部530Sが第1導体部510SのX’方向側(第2グランド導体500G’’側)に設けられていると良い。第1グランド導体500G’’及び/又は第2グランド導体500G’’は、第1導体部510G’’及び第2導体部520G’’を有する構成とすることが可能である。第1グランド導体500G’’の第2導体部520G’’は、第1グランド導体500G’’の第1導体部510G’’のX’方向側(信号導体500S’’’)に設けられていると良い。第2グランド導体500G’’の第2導体部520G’’は、第2グランド導体500G’’の第1導体部510G’’のX方向側(信号導体500S’’’)に設けられていると良い。
【0105】
上記した何れかの態様のコネクタにおいて、上記した何れかの態様の信号導体を複数としても良い。この場合、複数の信号導体は、誘電体に保持され、グランド導体500G内に収容されている。この複数の信号導体は、X-X’方向に間隔をあけて配置された第1信号導体及び第2信号導体を含んでいても良い。グランド導体500Gは、収容した複数の信号導体の少なくとも一部に沿って延びている。なお、このグランド導体500Gに代えて、少なくとも一つのグランド導体500G’を誘電体に設けることが可能である。
【0106】
本発明のコネクタは、伝送用基板D4と同様に、誘電体400及び伝送路500’’’’の差動対をなす第1、第2信号導体500S’’’’を備えた構成とすることが可能である(
図8D参照)。第1、第2信号導体500S’’’’は、少なくとも一部が誘電体400内に設けられており且つX-X’方向に間隔をあけて配置されている。第1、第2信号導体500S’’’’の少なくとも一方の導体は、第1導体部510S及び第4導体部540Sを有する構成とすることが可能である。第1信号導体500Sは、第4導体部540Sが第1導体部510Sの第2信号導体500S’’’’側に設けられた構成とすることが可能である。第2信号導体500S’’’’は、第4導体部540Sが第1導体部510Sの第1信号導体500S’’’’側に設けられた構成とすることが可能である。
この第4設計変更コネクタは、
図8Eに示すように、伝送路500’’’’’が、第1、第2信号導体500S’’’’のZ’方向側に配置される上記グランド導体500G’を更に備えており、第1、第2信号導体500S’’’’の各々が、上記第2導体部520Sを更に備えた構成とすることが可能である。
【0107】
上記した何れの態様の第1信号導体及び第2信号導体は差動対を構成しても良いが、これに限定されるものではない。上記した何れの設計変更例の信号導体の第1導体部は、上記第1接続部及び/又は上記第2接続部を更に有していても良い。
【0108】
本発明の一態様の接続構造は、
図9に示すように、上記(a)又は上記(c)に係る構成を有する信号導体500Sを備えたコネクタ(図示左側のコネクタ(以下、第1コネクタと称する。))と、上記(b)又は上記(d)に係る構成を有する信号導体500Sを備えたコネクタ(図示右側のコネクタ(以下、第2コネクタと称する。))とを備えた構成とすることが可能である。この場合、第1コネクタの信号導体500Sの先端部511Sの一対のアーム間に、第2コネクタの信号導体500Sの先端部511Sが挿入される。これにより、第1コネクタの信号導体500Sの先端部511Sの一対のアームが離間するように弾性変形する。これにより、第1コネクタの信号導体500Sの先端部511Sの一対のアームの内面(第1接続部)が第2コネクタの信号導体500Sの先端部511Sの外周面(第1接続部)に弾性接触する。
第1コネクタの信号導体500Sの先端部511Sの一対のアームは、その内面が第2導体部520Sに覆われていない。第2コネクタの信号導体500Sの先端部511Sも、その外周面が第2導体部520Sに覆われていない。そのため、第1コネクタの信号導体500Sの先端部511Sの一対のアームの内面が第2コネクタの信号導体500Sの先端部511Sの外周面に弾性接触したとしても、第2導体部520Sが摩耗したり破損したりしない。
更に、第1コネクタの信号導体500Sの先端部511Sの一対のアームは、その外面も第2導体部520Sに覆われていない場合、当該アームが弾性変形したとしても、第2導体部520Sが破損することもない。
【0109】
本発明の別の態様の接続構造は、上記(b)又は上記(d)に係る構成を有する信号導体500Sを備えたコネクタ(以下、第3コネクタと称する。)と、上記(b)又は上記(d)に係る構成を有する信号導体500Sを備えたコネクタ(以下、第4コネクタと称する。)とを備えた構成とすることが可能である。この場合、第3コネクタの信号導体500Sの先端部511Sが、第4コネクタの信号導体500Sの先端部511Sに摺動接触又は弾性接触する。第3、第4コネクタの信号導体500Sの先端部511Sの少なくとも接触面(第1接続部)が第2導体部520Sに覆われていない。そのため、第3コネクタの信号導体500Sの先端部511Sが、第4コネクタの信号導体500Sの先端部511Sに摺動接触又は弾性接触しても、第3、第4コネクタの信号導体500Sの第2導体部520Sが摩耗したり破損したりしない。
【0110】
本発明において、上記した何れかの態様の信号導体及びグランド導体の少なくとも一方の導体は、第2導体部と誘電体との間に設けられており且つ上記多結晶体を含まない第5導体部を更に備えていても良い。本発明において、上記した何れかの態様の信号導体及びグランド導体の少なくとも一方の導体は、第1、第2導体部の間に設けられた第6導体部を更に備えていても良い。
【0111】
本発明の導体微粒子は、平均粒径が数nm~10数nmの導体ナノ粒子であるとしたが、平均粒径が数μm以下の導体微粒子であれば良い。本発明の導体ナノ粒子の平均粒径は、サブnm~100nmであっても良い。
【0112】
本発明の抵抗低下材料は、微粒子で構成されており、且つ伝送路に伝送される高周波信号の周波数が一又は複数の特定周波数帯域にある場合に、交流抵抗値が急激に低下する物性を有していれば良い。換言すると、抵抗低下材料は、当該抵抗低下材料に流される高周波信号(高周波信号)の周波数が上記一又は複数の特定周波数帯域以外の周波数帯域にある場合(前者の場合)、その高周波信号により磁場が生じ、その磁場により抵抗低下材料の中心部において高周波信号の流れを妨害する方向に誘導起電力(逆起電力)が生じる一方、当該抵抗低下材料に流される高周波信号の周波数が上記一又は複数の特定周波数帯域(抵抗低下材料に磁気共鳴が生じる周波数帯域)にある場合(後者の場合)、その高周波信号により磁場が生じ、その磁場により抵抗低下材料の中心部において生じる誘導起電力(逆起電力)の向きが逆となる物性を有する構成とすることが可能である。ここでも、前者の場合、抵抗低下材料の透磁率の実部が正である。後者の場合、抵抗低下材料の透磁率の実部が負である。高周波信号の一又は複数の特定周波数帯域は、高周波信号により生じた磁場の作用によって、抵抗低下材料が磁気共鳴を生ずる周波数帯域であれば良い。
【0113】
例えば、本発明の抵抗低下材料は、環境温度下で、前述の物性を発現し得る半導体微粒子で構成することが可能である。この半導体微粒子は、平均粒径が1nm~100nmであると良いが、これに限定されるものではない。この半導体微粒子は、真性半導体微粒子であっても良い。真性半導体微粒子は、例えば、シリコン微粒子、ゲルマニウム微粒子、ダイアモンド微粒子、シリコンゲルマニウム微粒子又は化合物半導体微粒子等であるが、これに限定されるものではない。なお、真性導体微粒子は、単結晶であっても良いし、多結晶であっても良いし、非晶質であっても良い。また、半導体微粒子は、前記真性半導体に不純物をドーピングした不純物半導体であっても良い。
【0114】
半導体微粒子で構成された抵抗低下材料は、上記した何れかの態様の多結晶体に代えて用いることが可能である。半導体微粒子で構成された抵抗低下材料は、上記した何れかの態様の多結晶体と同様の方法で作成可能である。この場合、半導体微粒子を導体ナノ粒子に置換すると良い。上記した何れかの態様の第2導体部は、半導体微粒子で構成された抵抗低下材料で構成可能である。この場合、上記した何れかの態様の第1導体部は、前記第2導体部の直流抵抗値よりも小さい直流抵抗値を有する素材及び抗酸化性などの耐腐食性を有する素材の少なくとも一方の素材で構成されていると良い。本発明の如何なる態様の抵抗低下材料の交流抵抗値は、伝送路に伝送される高周波信号の周波数が一又は複数の特定周波数帯域にある場合に、実質的に0Ω又はマイナス抵抗になるものに限定されない。本発明の第1導体部は、第1接続部及び/又は第2接続部のみに設けられていても良い。
【0115】
なお、上記実施例の各態様及び設計変形例における高周波伝送装置の各構成要素を構成する素材、形状、寸法、数、数値及び配置等はその一例を説明したものであって、同様の機能を実現し得る限り任意に設計変更することが可能である。上記した実施例の各態様及び設計変更例は、互いに矛盾しない限り、相互に組み合わせることが可能である。本発明における「略環状」とは、円環状、多角環状、円環状の一部が切り欠かれたもの、および多角環状の一部が切り欠かれたものを含む概念である。
【符号の説明】
【0116】
D1~D4:高周波伝送装置(伝送用基板)
100、100’:誘電体
101、101’:第1面
102、102’:第1面
200、200’、200’’、200’’’:伝送路
S、S’、S’’、S’’’:信号導体
S1、S1’、S1’’、S1’’’:信号導体の第1導体部
S2、S2’、S2’’:信号導体の第2導体部
S3’、S3’’:信号導体の第3導体部
S4’’’:信号導体の第4導体部
G:グランド導体(第1グランド導体)
G’:グランド導体(第2グランド導体)
G’’:グランド導体(第1、第2グランド導体)
G1、G1’、G1’’:グランド導体の第1導体部
G2、G2’、G2’’:グランド導体の第2導体部
300:送信部
D5:高周波伝送装置(コネクタ)
400:誘電体
500:伝送路
500S:信号導体
510S:信号導体の第1導体部
520S:信号導体の第2導体部
500G:グランド導体
510G:グランド導体の第1導体部
520G:グランド導体の第2導体部