(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】変圧器の絶対ブッシングパラメータのモニタリングにおける温度の影響を回避した相対ブッシングパラメータ方法
(51)【国際特許分類】
G01R 31/62 20200101AFI20230629BHJP
G01R 31/00 20060101ALI20230629BHJP
G01R 31/12 20200101ALI20230629BHJP
H01F 27/04 20060101ALI20230629BHJP
H02H 7/00 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
G01R31/62
G01R31/00
G01R31/12 C
H01F27/04 Z
H02H7/00 H
(21)【出願番号】P 2021524960
(86)(22)【出願日】2019-10-02
(86)【国際出願番号】 EP2019076746
(87)【国際公開番号】W WO2020094303
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2021-07-30
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-02
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519431812
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・スウィツァーランド・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY SWITZERLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アベイウィクラマ,ニランガ
【合議体】
【審判長】中塚 直樹
【審判官】田邉 英治
【審判官】濱本 禎広
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/158122(WO,A1)
【文献】特表2020-509380(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0113164(US,A1)
【文献】特表2020-509377(JP,A)
【文献】特表2017-502455(JP,A)
【文献】特開2001-228198(JP,A)
【文献】米国特許第4757263(US,A)
【文献】国際公開第2018/158135(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/12-31/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも温度に関して実質的に同一の環境内で動作するN個の変圧器ブッシングをモニタリングする方法であって、Nは2以上の任意の数であり、前記方法は、
C
Xで示される、前記ブッシングのうちの各ブッシングの静電容量の絶対値を推定するステップ(S2)と、
F
Xで示される、前記ブッシングのうちの各ブッシングの損失率または力率の絶対値を推定するステップ(S3)とを含み、
Xは、どのブッシングに前記
C
X
またはF
X
の値が関連するかを表す数字であり、Xは
1以上であり、前記方法はさらに、
すべてのC値のΔ値およびすべてのF値のΔ値を、
ΔC
N-1までのすべての値(ΔC
N-1を含む)についてはΔC
X=C
X-C
X+1、
ΔC
NについてはΔC
N=C
N-C
1、
ΔF
N-1までのすべての値(ΔF
N-1を含む)についてはΔF
X=F
X-F
X+1、
ΔF
NについてはΔF
N=F
N-F
1、
に従って、計算するステップ(S4)と、
前記Δ値が予め定められた範囲内であるか否かを判断するステップ(S5)とを含む、方法。
【請求項2】
変圧器ブッシングの数は、3相構成において3つであり
、
前記静電容量の絶対値を推定するステップは、C
1、C
2、およびC
3で示される、前記3相のブッシングのそれぞれの静電容量の絶対値を推定するステップ(S2
)であり、
前記損失率または力率の絶対値を推定するステップは、F
1、F
2、およびF
3で示される、前記3相のブッシングのそれぞれの損失率または力率の絶対値を推定するステップ(S3
)であり、
前記計算するステップは、
C
1、C
2、およびC
3の3つのΔ値とF
1、F
2、およびF
3の3つのΔ値とを、
ΔC
1=C
1-C
2、
ΔC
2=C
2-C
3、
ΔC
3=C
3-C
1、
ΔF
1=F
1-F
2、
ΔF
2=F
2-F
3、
ΔF
3=F
3-F
1、
に従って、計算するステップ(S4
)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記予め定められた範囲は、C
Xの前記Δ値の第1の予め定められた範囲と、F
Xの前記Δ値の第2の予め定められた範囲とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の予め定められた範囲は、公称C
X値の-2%と2%との間である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の予め定められた範囲は、公称F
X値の-0.2%と0.2%との間である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記ブッシングのうちの各ブッシングの端子電圧およびブッシングタップ電流の測定値を受けるステップ(S1)を含み、
前記静電容量の絶対値C
Xおよび前記損失率または力率の絶対値F
Xは、それぞれの端子電圧およびブッシングタップ電流に基づいて推定される、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記静電容量の絶対値C
Xおよび前記損失率または力率の絶対値F
Xの推定、ならびに前記Δ値の計算が、各推定/計算の間隔を予め定められた時間間隔として繰り返し実行される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
Nが3以上の任意の数であり、2つのΔ値が前記予め定められた範囲から逸脱している場合に、前記予め定められた範囲から逸脱している前記2つのΔ値の双方の計算に存在するのがどのC
XまたはF
X値であるかを判断することにより、逸脱した値に関連するのはどのブッシングかを特定するステップ(S6)
または、
Nが2であり、前記2つのΔ値が前記予め定められた範囲から逸脱している場合に、前記2つのΔ値のうちのどちらが大きいかに基づいて、逸脱した値に関連するのはどのブッシングかを特定するステップを含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記特定したブッシングの状態を
、逸脱した状態として設定するステップ(S7)を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
少なくとも2度の連続する推定/計算において同一のブッシングを特定したと判断された場合(S6)、前記特定したブッシングの状態を
、逸脱した状態として設定する(S7)、請求項8または請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記Δ値が予め定められた範囲内であるか否かを判断するステップ(S5)は、前記Δ値の移動平均を計算し前記移動平均が前記予め定められた範囲内であるか否かを判断することを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも温度に関して実質的に同一の環境内で動作するN個の変圧器ブッシング(1)をモニタリングするためのモニタリング装置(100)であって、Nは2以上の任意の数であり、前記モニタリング装置は、
処理回路(101)と、
コンピュータで実行可能なコンポーネントを含む非一時的なコンピュータ読取可能媒体(102)とを備え、前記コンポーネントは、前記処理回路(101)によって実行されると、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法のステップを前記モニタリング装置(100)に実行させる、モニタリング装置。
【請求項13】
モニタリング装置(100)の処理回路(101)で実行されると請求項1~11のいずれか1項に記載の方法のステップを前記モニタリング装置(100)に実行させるコンピュータで実行可能なコンポーネントを含むコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも温度に関して実質的に同一の環境で動作するN個の変圧器ブッシングをモニタリングする方法と、このモニタリングを実行するためのモニタリング装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
背景
変圧器のブッシングは、入力高電圧を変圧器の巻線に伝える一方で絶縁性を提供する。最新の世界規模の変圧器故障統計によると、ブッシングの故障は変圧器の故障のうちの約10~20%を占めている。そのため、変圧器が故障する前に問題に対処できるようブッシングをモニタリングする必要がある。現在、ブッシングの状態を評価するためにブッシングパラメータを求めるための異なる方法がいくつか存在する。
【0003】
よくあるタイプの変圧器ブッシングは、中心導体を有し、この導体に絶縁油含浸紙の層が巻かれている、または、その他の絶縁材料が磁器もしくはその他の本体の中に配置されている。テストおよびモニタリングのために、変圧器ブッシングはブッシングテスト(測定)タップを含んでいることが多い。ブッシングテストタップは、紙の層のうちの1つに接続されて、中心導体に供給される高電圧の一部にブッシングテストタップを通してアクセスできるようにする。測定のためには、ブッシングセンサが組み込まれたまたは組み込まれていないブッシングタップアダプタを、ブッシングテストタップに接続する必要がある。
【0004】
3相構成のブッシングの状態を評価するための1つの技術は、一般的に合計電流または電流合計方法と呼ばれており、この方法では変圧器の3相構成のブッシングのすべてからのブッシングタップ電流を測定して合計する。典型的には、ベクトル合計がゼロである限り、ブッシングは適切に機能していると結論付けることができる。典型的には、ベクトル合計がゼロでない場合、ブッシングに障害があると結論付けられる可能性がある。一般的に、この方法は温度に依存しない方法であり、その理由は、すべてのブッシング(静電容量および損失)が温度変化の影響を等しく受けることにある。しかしながら、合計電流方法は、非対称のシステム電圧の変動の影響を受け易く、そのために間違った警告を発することになる。
【0005】
ブッシングの障害を判断するためのもう1つの技術は、2つのブッシングを同一相で比較することに基づく。この方法は「参照ブッシング方法」と名付けられている。たとえ参照ブッシング方法はシステム電圧の変動に影響されないとみなされる方法であっても、モニタリングされるブッシングパラメータは、負荷、冷却条件、製造時期などの違いが原因で、それぞれの変圧器の一部を形成する2つのブッシング間の温度の違いの影響を受けることが、明らかにされている。参照ブッシング方法は、米国公開公報US2018/0113164A1において見出すことができる。
【0006】
米国特許第4,757,263号に記載されているように、絶縁体の状態を評価するためのもう1つの方法は、ブッシングタップアダプタにおいて測定した電圧を、同一の高電圧源から得た参照電圧と比較することによって損失係数および静電容量を推定することを含む。この方法は、たとえば計器用変成器を通して高電圧源に別途接続することを必要とする。この方法は、システム電圧の変動の影響は受けにくいものの、ブッシングの内部の温度に大きく影響される。先行技術は、タップアダプタを通して間接的にブッシングの温度を測定することを利用し、ブッシング材料の特性と温度との関係を知ることで、温度の効果を補償している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
概要
本発明の目的は、上記問題のを少なくとも一部を克服し、不具合を検出するために変圧器ブッシングをモニタリングする改善された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、変圧器ブッシングをモニタリングするための方法および装置を提供することを目的とする。
【0009】
この目的は、請求項1に明記された方法および請求項13に明記された装置によって達成される。この目的は、請求項14に明記されたコンピュータプログラムによっても達成される。
【0010】
本開示のある実施形態に従うと、本実施形態は、少なくとも温度に関して実質的に同一の環境内で動作するN個の変圧器ブッシングをモニタリングする方法を含む。Nは2以上の任意の数である。この方法は、CXで示される、上記ブッシングのうちの各ブッシングの静電容量の絶対値を推定するステップと、FXで示される、上記ブッシングのうちの各ブッシングの損失率または力率の絶対値を推定するステップとを含む。Xは、どのブッシングに上記値が関連するかを表す数字であり、Xは1以上である。この方法はさらに、すべてのC値のΔ値およびすべてのF値のΔ値を、
ΔCN-1までのすべての値(ΔCN-1を含む)についてはΔCX=CX-CX+1、
ΔCNについてはΔCN=CN-C1、
ΔFN-1までのすべての値(ΔFN-1を含む)についてはΔFX=FX-FX+1、
ΔFNについてはΔFN=FN-F1、
に従って、計算するステップを含む。
【0011】
この方法はさらに、上記Δ値が予め定められた範囲内であるか否かを判断するステップを含む。
【0012】
損失率または力率の絶対値は誘電損失の絶対値である。
これらのステップを実行することにより、ブッシングが通常の挙動から逸脱しているか否かを判断することが可能である。このことは、不具合が生じているブッシングを、これらのブッシングが変圧器の故障を引き起こす前に交換できるという利点をもたらす。したがって、変圧器全体を交換するのではなく不具合が生じているブッシングを交換するだけでよいので、コストを下げることができる。動作に不可欠な変圧器のために、故障の発生時期が予測不能な変圧器ではなくブッシングをいつ交換すべきかを計画することが可能になるので、時間を節約できる。なお、この方法は、任意の数の変圧器ブッシングのモニタリングに、これらの変圧器ブッシングが、温度を考慮したときに実質的に同一環境で動作している限り、適用することができる。
【0013】
先行技術と比較して大きな利点は、温度変化に起因する値の変動がΔ値の計算時に取り除かれることである。すべてのブッシングは、温度に関して同一の環境で動作しているので、同一の温度変化の影響下にある。Δ値を計算するときに、これらのブッシングについて同一の値変動はすべて取り除かれる。残るのは、値と値との相違であり、この相違が大きくなると、これらの値のうちの1つが通常値から逸脱していることを示すことになる。
【0014】
いくつかの局面に従うと、変圧器ブッシングの数は、3相構成において3つであり、上記ステップは、C1、C2、およびC3で示される、上記3相のブッシングのそれぞれの静電容量の絶対値を推定するステップと、F1、F2、およびF3で示される、上記3相のブッシングのそれぞれの損失率または力率の絶対値を推定するステップとを含む。C1、C2、およびC3の3つのΔ値とF1、F2、およびF3の3つのΔ値とを、
ΔC1=C1-C2、
ΔC2=C2-C3、
ΔC3=C3-C1、
ΔF1=F1-F2、
ΔF2=F2-F3、
ΔF3=F3-F1、
に従って、計算する。
【0015】
したがって、この方法は、3相バンクすなわち3つの単相変圧器、および3相ユニットすなわち3相をすべて有する1つの3相ユニットのような、3相構成に適用可能である。利点は、先に述べたより一般的な方法の利点と同じである。3つのブッシングが同一環境にあるので、この方法は3相構成に使用するのに非常に適している。
【0016】
いくつかの局面に従うと、予め定められた範囲は、CXのΔ値の第1の予め定められた範囲と、FXのΔ値の第2の予め定められた範囲とを含む。これらの範囲は、たとえば、ブッシングの実際のΔ値およびノイズレベルに応じて妥当な範囲を設定できるよう、最初にΔ値を計算した後で設定される。
【0017】
いくつかの局面に従うと、第1の予め定められた範囲は、公称CX値の-2%と2%との間である。
【0018】
いくつかの局面に従うと、第2の予め定められた範囲は、公称FX値の-0.2%と0.2%との間である。
【0019】
この範囲は、間違った警告を避けるために、また、測定の変動の一部を許容するために、十分大きくなければならず、同時に、不具合が生じているブッシングを早期に検出するためには、十分狭くなければならない。
【0020】
いくつかの局面に従うと、この方法は、上記ブッシングのうちの各ブッシングの端子電圧およびブッシングタップ電流の測定値を受けるステップを含む。静電容量の絶対値CXおよび損失率または力率の絶対値FXは、それぞれの端子電圧およびブッシングタップ電流に基づいて推定される。これは、ブッシングの静電容量および損失率または力率を得るための正確で簡単な方法である。
【0021】
いくつかの局面に従うと、静電容量の絶対値CXおよび損失率または力率の絶対値FXの推定、ならびにΔ値の計算が、各推定/計算の間隔を予め定められた時間間隔として繰り返し実行される。言い換えると、この推定および計算は、Δ値を時間に対するグラフで表すことができるように、定期的に行われる。言い換えると、CX値、FX値、およびΔ値は定期的に得られ、したがってブッシングは継続的にモニタリングされる。
【0022】
いくつかの局面に従うと、この方法は、2つのΔ値が予め定められた範囲から逸脱している場合、予め定められた範囲から逸脱している2つのΔ値の双方の計算に存在するのがどのCXまたはFX値であるかを判断することにより、逸脱した値に関連するのはどのブッシングかを特定するステップを含む。Δ値の2つの計算に各値が存在しているので、逸脱している値を有するブッシングがある場合、2つのΔ値は設定された基準から逸脱していることになる。
【0023】
いくつかの局面に従うと、この方法は、特定したブッシングの状態を逸脱に設定するステップを含む。状態は、変更され、たとえばモニタリングディスプレイに表示することができる。そうすると、担当者が、ブッシングが逸脱しているのを見て、その交換計画を立てることができる。
【0024】
いくつかの局面に従うと、少なくとも2度の連続する推定/計算において同一のブッシングを特定したと判断された場合、特定したブッシングの状態を逸脱に設定する。これには、予め定められた範囲外の値をもたらした計算誤りまたは測定誤りから間違った警告が発せられることがない、という利点がある。
【0025】
本開示のある実施形態に従うと、Δ値が予め定められた範囲内であるか否かを判断するステップは、Δ値の移動平均を計算し移動平均が予め定められた範囲内であるか否かを判断することを含む。こうして結果を平滑化することにより、外れ値のデータに起因する間違った警告を回避する。
【0026】
本開示のある実施形態に従うと、この実施形態は、少なくとも温度に関して実質的に同一の環境内で動作するN個の変圧器ブッシングをモニタリングするためのモニタリング装置を含み、Nは2以上の任意の数である。モニタリング装置は、処理回路と、コンピュータで実行可能なコンポーネントを含む非一時的なコンピュータ読取可能媒体とを備え、コンポーネントは、処理回路によって実行されると、上記方法のステップをモニタリング装置に実行させる。
【0027】
本開示のある実施形態に従うと、この実施形態は、モニタリング装置の処理回路で実行されると上記方法のステップをモニタリング装置に実行させるコンピュータで実行可能なコンポーネントを含むコンピュータプログラムを含む。
【0028】
以下、本発明を、本発明の各種実施形態を記述することにより、添付の図面を参照しながらより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】テストタップを有するブッシングの一例を示す図である。
【
図2】ブッシングの静電容量の値および損失率の値を得るためのブッシングモデルを示す図である。
【
図3】ブッシングをモニタリングするための方法のブロック図を示す。
【
図4】温度変化を伴う180日にわたる、損失率の値、静電容量の値、およびΔ値をグラフで表した図を示す。
【
図5】
図4の180日にわたる温度変化と、損失率がどのように温度に依存しているかを示す図である。
【
図6】10日目と170日目との間で湿度が線形的に増加している、同じ180日にわたる、損失率の値、静電容量の値、およびΔ値をグラフで表した図を示し、これらの値はシミュレートされた値である。
【
図7】同じ44日間にわたる、損失率の値、静電容量の値、およびΔ値をグラフで表した図を示し、これらの値は実際の値であり、静電容量および損失率は、40MVA、130/11kVの変圧器での実際の測定値に基づいて推定されたものである。
【
図8】一例としてのモニタリング装置を概略的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
詳細な説明
以下、本開示の局面について、添付の図面を参照しながらより一層十分に説明する。しかしながら、本明細書に開示される装置および方法は、多数の異なる形態で実現することができ、本明細書に記載の局面に限定されると解釈されてはならない。図面において同様の番号は同様の要素を示す。
【0031】
本明細書で使用されている用語は、専ら本開示の特定の局面を説明することが目的であり、本発明を限定することを意図している訳ではない。本明細書で使用される、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈上特に明記されていない限り、複数形も含むことを意図している。
【0032】
特に指示がない限り、本明細書で使用されるすべての用語は、本開示が属する技術の当業者が通常理解するのと同一の意味を有する。
【0033】
「ブッシングタップ」という用語は、当該分野において、ブッシング測定タップおよびブッシングテストタップとしても知られている。背景セクションで述べたブッシングタップアダプタは、通常は測定インピーダンスを含むセンサである。これは、ブッシングタップに接続されるアダプタであって、モニタリングが行われない場合はブッシングタップを接地する、または、モニタリングを導入する場合は電流を測定するために外部インピーダンス(抵抗器/キャパシタ)に接続される、アダプタでもある。たとえば、ブッシングタップは、オン/オフラインでの測定のためにブッシングの製造業者が提供する導電ピンである。導電ピンは、ブッシングの巻かれているキャパシタの最外層または最外層から2番目の層にガルヴァーニ接続されてもよい。
【0034】
図1は、ブッシングタップ2を有するブッシング1の一例を示す。中心導体3に、磁器またはその他の材料の本体5の中に配置された、絶縁油含浸紙、または、樹脂含浸もしくは樹脂接着紙のようなその他の絶縁媒体の複数の層4が、巻き付けられている。
図2は、ブッシングモデルと、ブッシングタップに接続された測定インピーダンスとを示し、
図3は、ブッシングをモニタリングする方法のブロック図を示す。このブロック図において、実線のボックス内のステップは、本発明の最も広い局面に係る方法のステップであり、点線のボックス内のステップは、可能な追加ステップである。可能な追加ステップは、本開示の最も広い局面に係るステップと組み合わせて個々に実行してもよく、または、1つ以上のその他の可能な追加ステップと組み合わせて実行してもよい。
【0035】
開示されている方法は、少なくとも温度に関して実質的に同一の環境内で動作するN個の変圧器ブッシングをモニタリングするための方法である。Nは2以上の任意の数である。
図3からわかるように、この方法は、上記ブッシングのうちの各ブッシングの静電容量の絶対値を推定するステップS2を含み、静電容量の絶対値はC
Xで表され、さらに、上記ブッシングのうちの各ブッシングの損失率または力率の絶対値を推定するステップS3を含み、損失率または力率の絶対値はF
Xで示される。Xは、どのブッシングに上記値が関連するかを表す数字であり、Xは
1以上である。この方法はさらに、すべてのC値のΔ値およびすべてのF値のΔ値を、
ΔC
N-1までのすべての値(ΔC
N-1を含む)についてはΔC
X=C
X-C
X+1、
ΔC
NについてはΔC
N=C
N-C
1、
ΔF
N-1までのすべての値(ΔF
N-1を含む)についてはΔF
X=F
X-F
X+1、
ΔF
NについてはΔF
N=F
N-F
1、
に従って、計算するステップS4を含む。
【0036】
この方法はさらに、Δ値が予め定められた範囲内であるか否かを判断するステップS5を含む。
【0037】
いくつかの側面に従うと、変圧器ブッシングはまた、湿度、および雨のようなその他の環境効果に関しても、実質的に同一の環境で動作する。
【0038】
静電容量増加の1つの理由は、ブッシング内の容量性の層と層との間の短絡である。損失率または力率の変化の1つの理由は、ブッシング内への湿度の侵入またはブッシング内の油の分解である。これらの現象は、ブッシングの健全性を損ねて最終的にブッシングの故障をもたらし二次障害を引き起こして場合によっては変圧器を発火させる危険レベルまで大きくなる前に、できるだけ早く検出しなければならない。
【0039】
静電容量の絶対値CXおよび損失率または力率の絶対値を推定する1つの方法は、ブッシングタップの使用である。よって、いくつかの局面に従うと、この方法は、上記ブッシングのうちの各ブッシングの端子電圧およびブッシングタップ電流の測定値を受けるステップS1を含む。静電容量の絶対値C
Xおよび損失率または力率の絶対値F
Xは、
図2に示されるブッシングモデルに基づいたそれぞれの端子電圧およびブッシングタップ電流に基づいて推定される。これは、ブッシングの静電容量および損失率または力率を得るための正確で簡単な方法である。
【0040】
図2は、ブッシング端子電圧Vおよびブッシングタップ電流Iの測定を提供するブッシングモデルの一例を示す。ブッシング端子電圧Vは、たとえば計器用変圧器を用いて取得することができる。ブッシングの複素アドミタンスYは、ブッシングタップ電流Iをブッシング端子電圧で割ったものに等しい、すなわち、Y=I/Vであり、各静電容量値は、複素アドミタンスの虚部をシステムの角周波数で割ることによって推定できる、すなわち、C=Im(Y)/ωである。損失率またはtan(δ)は、複素アドミタンスの実部を複素アドミタンスの複素部で割ることによって推定できる、すなわち、Re(Y)/Im(Y)であり、これはir/icに等しい、すなわち、tan(δ)=ir/icである。損失率よりも力率を使用する方が好ましい場合、cos(90-δ)によって計算できる。
【0041】
上記方法を使用すると、温度変化に起因する、または、雨のような環境から放出されるその他何らかの一般的な影響に起因する、値の変動は、Δ値の計算時に取り除かれる。すべてのブッシングは、温度に関して同一の環境で動作しているので、同一の温度変化の影響下にある。Δ値を計算するときに、これらのブッシングについて同一の値変動はすべて取り除かれる。残るのは、値と値との相違であり、この相違が大きくなると、これらの値のうちの1つが逸脱していることを示すことになる。
【0042】
図4、
図6および
図7に、F値、C値、およびΔ値を示すグラフが示される。なお、これらのグラフでは、Fとして、tanδで示される損失率が使用されている。これらのグラフは180日にわたるグラフである。y軸の目盛りに注目すると、Δ値の変動は推定されたC値およびF値よりも遥かに小さいことは明らかである。たとえば、
図6において、tanδは、ほぼ0.25と0.5との間で変化しているのに対し、Δtanδ値は、ほぼ-0.025と0.025との間で変化している。
図6において、10日目から170日の期間にわたり0.2%から線形的に増加した水分量がブッシング1に加えられた。これらの図面については、以下でメトリック値の計算について述べるときにさらに説明する。
図5に、180日にわたる温度変化が示されている。
図5の下部分は、損失率がどのように温度に依存しているかを示している。この図は、ブッシングをモニタリングするときに温度の影響を取り除くのが好適である理由の1つを示している。グラフからわかるように、損失率は温度とともに大きく変化する。
図5に含まれていないのは、温度がさらに上昇したときに損失率には何が起こるかである。そうすると、損失率は再び上昇し始めると予想される。
【0043】
なお、この方法は、任意の数の変圧器ブッシングのモニタリングに、これらの変圧器ブッシングが、温度を考慮したときに実質的に同一環境で動作している限り、適用することができる。先行技術と比較して大きな利点は、温度変化に起因する値の変動がΔ値の計算時に取り除かれることである。すべてのブッシングは、温度に関して同一の環境で動作しているので、同一の温度変化の影響下にある。Δ値を計算するときに、これらのブッシングについて同一の値変動はすべて取り除かれる。残るのは、値と値との相違であり、この相違が大きくなると、これらの値のうちの1つが逸脱していることを示すことになる。
【0044】
一例として、ブッシングの数が4、すなわちN=4である場合、S2およびS3の後に、8つの推定値として、C1、C2、C3、C4、F1、F2、F3、およびF4がある。C1およびF1は、それぞれ、4つのブッシングのうちの第1のブッシングの静電容量および損失率または力率である。C2およびF2は、それぞれ、4つのブッシングのうちの第2のブッシングの静電容量および損失率または力率である。C3およびF3は、それぞれ、4つのブッシングのうちの第3のブッシングの静電容量および損失率または力率である。C4およびF4は、それぞれ、4つのブッシングのうちの第4のブッシングの静電容量および損失率または力率である。
【0045】
ステップS4の計算は、
ΔC1=C1-C2
ΔC2=C2-C3
ΔC3=C3-C4
ΔC4=C4-C1
ΔF1=F1-F2
ΔF2=F2-F3
ΔF3=F3-F4
ΔF4=F4-F1
である。
【0046】
この方法は、3相バンクすなわち3つの単相変圧器、および、3相ユニットすなわち3相をすべて有する1つの3相ユニットのような、3相構成に対して好都合に使用される。この方法は3相構成に使用するのに非常に適している、なぜなら、一般的に、3相構成の3つのブッシングが同一環境にあるからである。したがって、いくつかの局面に従うと、変圧器ブッシングの数は3相構成において3つであり、ステップは、3相のブッシングのそれぞれの、C1、C2、およびC3で示される、静電容量の絶対値を推定するステップS2と、F1、F2、およびF3で示される、3相のブッシングのそれぞれの、損失率または力率の絶対値を推定するステップS3とを含む。C1、C2、およびC3の3つのΔ値とF1、F2、およびF3の3つのΔ値とを、
ΔC1=C1-C2、
ΔC2=C2-C3、
ΔC3=C3-C1、
ΔF1=F1-F2、
ΔF2=F2-F3、
ΔF3=F3-F1、
に従って、計算するS4。
【0047】
また、この方法は、Δ値が予め定められた範囲内であるか否かを判断するステップS5を含む。Δ値の予め定められた範囲は、使用されるブッシングに応じて設定されてもよい。いくつかの局面に従うと、予め定められた範囲は、CXのΔ値の第1の予め定められた範囲と、FXのΔ値の第2の予め定められた範囲とを含む。これらの範囲は、たとえば、ブッシングの実際のΔ値に応じて妥当な範囲を設定できるよう、Δ値の最初の計算の実行後に設定される。言い換えると、最初にブッシングが動作状態にされたときに、ブッシングの実際のΔ値を初期化期間中に評価しそれに応じて予め定められた範囲を設定してもよい。この範囲はまた、ブッシングの製造業者によって示される静電容量値および損失率または力率に応じて設定されてもよい。言い換えると、製造業者は、自身のブッシングから予想されるのはどの静電容量値および損失率または力率であるかを、自身のブッシング上に表示する。上記範囲は、これらの数値に基づいて選択されてもよく、または、変圧器ブッシングのモニタリングについて許容される工業標準に基づいて選択されてもよい。
【0048】
いくつかの局面に従うと、第1の予め定められた範囲は、公称CX値の-1%と1%との間である。
【0049】
いくつかの局面に従うと、第2の予め定められた範囲は、公称FX値の-0.1%と0.1%との間である
CXおよびFXの公称値は、静電容量および損失率または力率の予想値である。公称値は、ブッシングの製造業者から、または、モニタリングシステムの設置時に行われるオフライン測定から得られる。
【0050】
第1および第2の予め定められた範囲は、規定されたサブ範囲を有していてもよい。たとえば、第1の予め定められた範囲は、ブッシングが許容できる程度に機能している部分と、ブッシングが許容できる程度に機能するがそのように機能することがほとんどない部分とを有する。そうすると、ブッシングは、この方法のステップがより頻繁に実行されるモニタリングを必要とする。定期的なモニタリングの説明については以下を参照されたい。
【0051】
この範囲は、間違った警告を避けるために、また、測定の変動の一部を許容するために、十分大きくなければならず、同時に、不具合が生じているブッシングを早期に検出するためには、十分狭くなければならない。
【0052】
静電容量の絶対値C
Xおよび損失率または力率の絶対値F
Xの推定、ならびにΔ値の計算は、各推定/計算の間隔を予め定められた時間間隔として繰り返し実行されてもよい。言い換えると、この推定および計算は、Δ値を時間に対するグラフで表すことができるように、定期的に行われる。言い換えると、C
X値、F
X値、およびΔ値は定期的に得られ、したがってブッシングは継続的にモニタリングされる。ある期間にわたるモニタリングを行ったときの値の例は、
図4、
図6および
図7において見ることができる。各推定/計算の間隔は、たとえば6時間、3時間、1時間、30分または10分である。1つの選択肢として、1つの推定値が予め定められた範囲の境界に近いと判断された場合、このような場合のブッシングをより詳しくモニタリングするために上記時間間隔を短縮することが挙げられる。各推定/計算の間隔は必ずしも定期的ではない。たとえば、ブッシングが古くなるほど時間間隔を短くしてもよい。この時間間隔は、上記モニタリング方法を用いてシステムを構築するときのシステム設計者次第である。
【0053】
一例として、CXのΔ値が公称CX値の-1%と1%との間である場合、Δ値は正常とみなされ、CXのΔ値が公称CX値の-1%と-2%との間または1%と2%との間である場合、Δ値は上記範囲から逸脱してその外部にありΔ値はクリティカルであるとみなされる。-1%~1%の範囲外であるが-2%~2%の範囲に含まれるCXのΔ値が検出された場合は、逸脱しているブッシングをより詳しくモニタリングするために、各推定/計算の時間間隔を短くしてもよい。
【0054】
いくつかの局面に従うと、この方法は、2つのΔ値が予め定められた範囲から逸脱している場合、予め定められた範囲から逸脱している2つのΔ値の双方の計算に存在するのがどのCXまたはFX値であるかを判断することにより、逸脱した値に関連するのはどのブッシングかを特定するステップS6を含む。Δ値の2つの計算に各値が存在しているので、逸脱している値を有するブッシングがある場合、2つのΔ値は設定された基準から逸脱していることになる。言い換えると、2つのΔ値は予め定められた範囲から同時に逸脱していると判断されることが予想される。
【0055】
なお、2つのブッシングをモニタリングする場合、どのブッシングが逸脱しているかを判断する方法は異なる。Δ値は、
ΔC1=C1-C2、
ΔC2=C2-C1、
ΔF1=F1-F2、
ΔF2=F2-F1
に従って計算される。
【0056】
双方のC値および双方のF値が双方のΔ値計算に存在するので、どのブッシングが逸脱しているかを判断するための上記方法は機能しない。代わりに、この場合、ブッシングが逸脱している場合、双方のΔC値または双方のΔF値が予め定められた範囲から逸脱することになる。どのブッシングが逸脱しているかを判断するために、どちらのΔC値またはどちらのΔF値が他方よりも大きいかを判断する。計算に損失率を使用する場合、推定されたFは、ブッシングが逸脱している場合、大きくなる。計算に力率を使用する場合、推定されたFは、ブッシングが逸脱している場合、同じ効果を受ける。さらに、逸脱しているブッシングについては静電容量値Cが減少すると予想される。
【0057】
この方法はまた、特定したブッシングの状態を逸脱に設定するステップS7を含み得る。この場合、逸脱状態は、ブッシングが壊れていることを必ずしも意味せず、不具合に至る重篤なレベルまで発展する可能性がある初期状態をモニタリングシステムが検出したことを意味する。状態は、変更され、たとえばモニタリングディスプレイに表示することができる。そうすると、担当者が、ブッシングが逸脱していると表示されるのを見て、その交換計画を立てることができる。モニタリング方法を使用するためのモニタリングシステムが如何にしてセットアップされるかに応じて、ブッシングが逸脱していることを示すいくつかの方法が存在し得る。たとえば、逸脱している値が検出されたときに点灯する、担当者がモニタリングする警告灯があってもよい。また、音を出す警告があってもよい。たとえば容量性の層の短絡型の故障により、ΔC値が突然劇的に変化した場合、検出後数時間以内にブッシングが爆発するリスクが存在し得る。このような場合、音を出す警告を、好ましくはオペレータに対するディスプレイ上の警告メッセージと組み合わせて用いることにより、オペレータにリスクを素早く知らせることができる。
【0058】
間違った警告を避けるために、少なくとも2度の連続する推定/計算において同一のブッシングを特定した場合(S6)、特定したブッシングの状態を逸脱に設定してもよい(S7)。これには、予め定められた範囲外の値をもたらした計算誤りまたは測定誤りから間違った警告が発せられることがない、という利点がある。損失率または力率の場合、湿気の問題は、ブッシングのF値をゆっくりと増加させる。言い換えると、予め定められた値について1回の計算の可能性は極めて低い。
【0059】
いくつかの局面に従うと、Δ値が予め定められた範囲内であるか否かを判断するステップS5は、Δ値の移動平均を計算し移動平均が予め定められた範囲内であるか否かを判断することを含む。これは、結果を平滑化することにより、一時的な故障に起因する間違った警告を回避する。言い換えると、以下に示されるように、指数移動平均および初期平均値に基づいて、各相対静電容量および損失率のメトリック値を定めることができる。
【0060】
【0061】
は、n番目のデータポイントにおけるYの指数移動平均であり、Yexp,n-1は、(n-1)番目のデータポイントにおける指数移動平均であり、Ynは、n番目のデータポイントにおけるパラメータである。Pは、変更に対する移動平均の応答の速さを決定するデータポイントの数である。Pが大きいほど、パラメータの指数移動平均の変動は小さく、外れ値の影響を受けにくい。
【0062】
【0063】
(10)のメトリック値は、標準偏差の数における初期平均((30)のσ)に対する指数移動平均の偏差の大きさを示す。許容限界をメトリック値に設定することができ、その限界を上回ると、警告を発することができる、またはブッシングの表示を逸脱に設定することができる。
【0064】
先に述べたように、上記ΔC値およびΔtanδ値は、温度の影響を受けないので、温度を測定または補償する必要はなく、より感度が高いトリガレベル、たとえばCの4~5の標準偏差およびtanδの6~7の標準偏差のトリガレベルを適用することにより、進行しつつある故障を一層早く検出する可能性を提供する。
【0065】
上記方法を実行するために、モニタリング装置100を使用してもよい。
図8に、一例としてのモニタリング装置100が概略的に示されている。本開示は、少なくとも温度に関して実質的に同一の環境内で動作するN個の変圧器ブッシングをモニタリングするためのモニタリング装置100を含む。Nは2以上の任意の数である。モニタリング装置は、処理回路101と、コンピュータで実行可能なコンポーネントを含む非一時的なコンピュータ読取可能媒体102とを含み、上記コンポーネントは、処理回路101によって実行されると、上記方法のステップをモニタリング装置1に実行させる。
【0066】
したがって、モニタリング装置100は、
ブッシングの各々の静電容量の絶対値を推定すること(S2)と、
ブッシングの各々の損失率または力率の絶対値を推定すること(S3)と、
Δ値を、
ΔCN-1までのすべての値(ΔCN-1を含む)についてはΔCX=CX-CX+1、
ΔCNについてはΔCN=CN-C1、
ΔFN-1までのすべての値(ΔFN-1を含む)についてはΔFX=FX-FX+1、
ΔFNについてはΔFN=FN-F1、
に従って計算すること(S4)と、
Δ値が予め定められた範囲内であるか否かを判断すること(S5)とを、実行する。
【0067】
また、モニタリング装置は、任意で、
ブッシングの各々の端子電圧およびブッシングタップ電流の測定値を受けるステップ(S1)と、
予め定められた範囲から逸脱している2つのΔ値の双方の計算に存在するのがどのCXまたはFX値であるかを判断することにより、逸脱した値に関連するのはどのブッシングかを特定するステップ(S6)と、
特定したブッシングの状態を逸脱に設定するステップ(S7)と、
この状態をオペレータに伝えるステップとのうちの、1つ以上を、任意の組み合わせで実行する。
【0068】
モニタリング装置100は、測定値を受けるための入力回路103を含む。入力回路は、測定信号を受けることが可能な任意の種類の回路であればよい。
【0069】
さらに、本開示は、モニタリング装置100の処理回路101で実行されると上記ステップをモニタリング装置100に実行させるコンピュータで実行可能なコンポーネントを含むコンピュータプログラムを含む。