(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】カテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20230629BHJP
【FI】
A61M25/00 624
A61M25/00 552
A61M25/00 630
(21)【出願番号】P 2021554944
(86)(22)【出願日】2020-11-04
(86)【国際出願番号】 JP2020041146
(87)【国際公開番号】W WO2021090821
(87)【国際公開日】2021-05-14
【審査請求日】2022-04-11
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2019/043835
(32)【優先日】2019-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390030731
【氏名又は名称】朝日インテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】弁理士法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】久保木 哲平
(72)【発明者】
【氏名】藤野 慧一
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-088833(JP,A)
【文献】特開2004-081883(JP,A)
【文献】特表2015-510835(JP,A)
【文献】特開2019-037572(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0072165(US,A1)
【文献】特開2016-152907(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルであって、
コイル体と、
複数の素線を編組して筒状に形成された編組体であって、前記コイル体の内周側に配置されたコイル内編組部と前記コイル体より先端方向に延長するように配置されたコイル外編組部とを有する編組体と、
前記編組体の内周面を被覆する内側樹脂層と、
前記編組体の前記コイル外編組部における前記コイル体側の部分に接触するとともに前記コイル体の先端に接触している緩衝材であって、前記編組体の剛性と前記コイル体の剛性との間の剛性を有する緩衝材と、
前記編組体の前記コイル外編組部と前記緩衝材と前記コイル体との外周面を被覆する外側樹脂層と、
を備える、カテーテル。
【請求項2】
請求項1に記載のカテーテルであって、
前記編組体の前記コイル外編組部は、前記カテーテルの先端に近づくに連れて外径が小さくなっている縮径部と、前記縮径部の先端に隣接し、かつ、外径が前記カテーテルの軸方向の全長にわたって同一である同径部と、を有する、
カテーテル。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のカテーテルであって、
前記カテーテルのうち、前記コイル外編組部の少なくとも一部における前記内側樹脂層の内径は、前記コイル内編組部における前記内側樹脂層の内径より小さい、
カテーテル。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載のカテーテルであって、
前記緩衝材の先端側の前記カテーテルの径方向の長さは、前記緩衝材の基端側の前記径方向の長さより短い、
カテーテル。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のカテーテルであって、
前記緩衝材は、前記コイル体を構成するとともに互いに隣り合う複数の素線を跨がるように延出している延出部分を有する、
カテーテル。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のカテーテルであって、
前記編組体の隙間に充填され且つ前記外側樹脂層と前記内側樹脂層との間に設けられる中樹脂層を有する、
カテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
血管等における狭窄部、閉塞部や異常血管等(以下、「病変部」という。)を治療または検査する方法として、カテーテルを用いた方法が広く行われている。従来、筒状の樹脂層内に、第1のブレードと第2のブレードとが埋設されたカテーテルが知られている(例えば、特許文献1参照)。この第1のブレードと第2のブレードとは、いずれも、複数の素線を編組して筒状に形成された編組体である。第1のブレードは、カテーテルの先端から基端にわたって連続的に配置されている。第2のブレードは、カテーテルに中間位置から基端にわたって連続的に配置されるとともにカテーテルの先端側には配置されていない。このため、カテーテルの先端側は相対的に柔軟性が高く、カテーテルの基端側は相対的に剛性が高くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のカテーテルでは、第2のブレードが配置されていない先端側と第2のブレードが配置された基端側との剛性差が大きいため、該剛性差に起因してカテーテルの先端側と基端側との境界部位が折れ曲がって元に戻らないキンクが発生しやすいという問題がある。
【0005】
このような課題は、ガイドワイヤを用いて血管等における病変部に案内されるカテーテルに限らず、本発明者が提案するガイドワイヤを用いずに血管等における病変部に挿入されるカテーテルにおいて特に解決すべきものである。
【0006】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0008】
(1)本明細書に開示されるカテーテルは、カテーテルであって、コイル体と、複数の素線を編組して筒状に形成された編組体であって、前記コイル体の内周側に配置されたコイル内編組部と前記コイル体より先端方向へ延長するように配置されたコイル外編組部とを有する編組体と、前記編組体の内周面を被覆する内側樹脂層と、前記編組体の前記コイル外編組部における前記コイル体側の部分に接触するとともに前記コイル体の先端に接触している緩衝材であって、前記編組体の剛性と前記コイル体の剛性との間の剛性を有する緩衝材と、前記編組体の前記コイル外編組部と前記緩衝材と前記コイル体との外周面を被覆する外側樹脂層と、を備える。
【0009】
本カテーテルでは、カテーテルの先端側(編組体のコイル外編組部が位置する部分)にコイル体が配置されておらず、カテーテルの基端側(編組体のコイル内編組部が位置する部分)にコイル体が配置されている。このため、カテーテルの先端側は相対的に柔軟性が高く、カテーテルの基端側は相対的に剛性が高い。これにより、カテーテルの先端側の細径血管の選択性能の向上と、カテーテルの基端側から先端側へのトルク伝達性(回転性能)の向上を図ることができる。さらに、本カテーテルには、緩衝材が備えられている。緩衝材は、編組体のコイル外編組部におけるコイル体側の部分を被覆するとともにコイル体の先端に接触している。また、緩衝材は、編組体の剛性とコイル体の剛性との間の剛性を有する。これにより、コイル体が配置されていない先端側とコイル体が配置された基端側との剛性差が抑制され、その結果、例えば、カテーテルのトルク伝達性を確保しつつ、該剛性差に起因してカテーテルの先端側と基端側との境界部位が折れ曲がって元に戻らないキンクの発生を抑制することができる。
【0010】
(2)上記カテーテルにおいて、前記編組体の前記コイル外編組部は、前記カテーテルの先端に近づくに連れて外径が小さくなっている縮径部と、前記縮径部の先端に隣接し、かつ、外径が前記カテーテルの軸方向の全長にわたって同一である同径部と、を有する構成としてもよい。本カテーテルによれば、コイル外編組部の外径が全長にわたって先端に近づくに連れて小さくなっている構成に比べて、コイル外編組部を血管に挿入した後、該血管から容易に抜けることを抑制することができる。
【0011】
(3)上記カテーテルにおいて、前記カテーテルのうち、前記コイル外編組部の少なくとも一部における前記内側樹脂層の内径は、前記コイル内編組部における前記内側樹脂層の内径より小さい構成としてもよい。本カテーテルによれば、カテーテルの基端側に相対的に内径が大きい部分が存在するため、カテーテル内に広い収容空間を確保でき、例えばカテーテルの先端から流体(例えば造影剤)を噴射する場合に、カテーテルの基端側における多量の流体を収容できる。また、カテーテルの先端側に相対的に内径が小さい部分が存在するため、カテーテルの基端側から送られた流体の流速を先端側で上昇させて、カテーテルからの流体の噴射力を向上させることができる。
【0012】
(4)上記カテーテルにおいて、前記緩衝材の先端側の前記カテーテルの径方向の長さは、前記緩衝材の基端側の前記径方向の長さより短い構成としてもよい。本カテーテルによれば、緩衝材の径方向の長さが均一である構成に比べて、カテーテルの先端側と基端側との剛性差がさらに抑制され、キンクの発生をより効果的に抑制することができる。
【0013】
(5)上記カテーテルにおいて、前記緩衝材は、前記コイル体を構成するとともに互いに隣り合う複数の素線を跨がるように延出している延出部分を有する構成としてもよい。本カテーテルによれば、緩衝材が延出部分を有することにより、緩衝材とコイル体との密着性が高いため、カテーテルの先端側と基端側との剛性差がさらに抑制され、キンクの発生をより効果的に抑制することができる。
【0014】
(6)上記カテーテルにおいて、前記編組体の隙間に充填され且つ前記外側樹脂層と前記内側樹脂層との間に設けられる中樹脂層を有する構成としてもよい。本カテーテルでは、中樹脂層によって、編組体の乱れを防止するとともに外側樹脂層と内側樹脂層との接着性を高めることが可能となる。
【0015】
(7)本明細書に開示されるカテーテルは、コイル体と、複数の素線を編組して筒状に形成された編組体であって、前記コイル体の内周側に配置されたコイル内編組部と前記コイル体より先端方向に延長するように配置されたコイル外編組部とを有する編組体と、前記編組体の内周面を被覆する内側樹脂層と、前記編組体の前記コイル外編組部と前記コイル体との外周面を被覆する外側樹脂層と、を備える。前記カテーテルは、前記コイル外編組部を含むカテーテル先端部分と、前記コイル体と前記コイル内編組部とを含むカテーテル基端部分と、前記カテーテルの軸方向において前記カテーテル先端部分と前記カテーテル基端部分とをつなぐカテーテル連結部分と、を有している。前記カテーテル先端部分の曲げ剛性は、0.005gf・cm2/cm以上、0.05gf・cm2/cm未満であり、前記カテーテル連結部分の曲げ剛性は、0.05gf・cm2/cm以上、1.4gf・cm2/cm未満であり、前記カテーテル基端部分の曲げ剛性は、1.4gf・cm2/cm以上、3.0gf・cm2/cm以下である。
【0016】
本カテーテルでは、カテーテルの先端側(編組体のコイル外編組部が位置するカテーテル先端部分)にコイル体が配置されておらず、カテーテルの基端側(編組体のコイル内編組部が位置するカテーテル基端部分)にコイル体が配置されている。このため、カテーテル先端部分は相対的に柔軟性が高く、カテーテル基端部分は相対的に剛性が高い。これにより、カテーテル先端部分の細径血管の選択性能の向上と、カテーテル基端部分からカテーテル先端部分へのトルク伝達性(回転性能)の向上を図ることができる。さらに、本カテーテルは、カテーテルの軸方向においてカテーテル先端部分とカテーテル基端部分とをつないでいるカテーテル連結部分を有している。カテーテル連結部分は、カテーテル先端部分の剛性とカテーテル基端部分の剛性との間の剛性を有する。これにより、コイル体が配置されていないカテーテル先端部分とコイル体が配置されたカテーテル基端部分との剛性差が抑制され、その結果、例えば、カテーテルのトルク伝達性を確保しつつ、該剛性差に起因してカテーテルの先端側と基端側との境界部位が折れ曲がって元に戻らないキンクの発生を抑制することができる。また、従来から、ガイディングカテーテルを血管に挿入し、該ガイディングカテーテルの内部にガイドワイヤとマイクロカテーテルとを挿入して、それらを交互に進める手技がある。これに対して、カテーテルを挿入する部位から治療対称部位までが比較的に直線的な血管であれば、本カテーテルとガイドワイヤとを使用することで、ガイディングカテーテルを必要とすることなく、上記の手技を実現することが可能である。
【0017】
(8)上記カテーテルにおいて、前記カテーテル連結部分には、前記コイル体の一部が配置されており、前記コイル体の前記一部を構成する素線は、前記カテーテル連結部分の先端に近づくほど細くなっている構成としてもよい。本カテーテルによれば、カテーテル基端部分とカテーテル連結部分との剛性差を抑制しつつ、カテーテルのトルク伝達性を確保するとともに、カテーテル先端部分とカテーテル基端部分との剛性差に起因するカテーテルのキンクの発生を抑制することができる。
【0018】
(9)上記カテーテルにおいて、前記カテーテル連結部分には、前記コイル外編組部の一部が配置されており、前記コイル外編組部の前記一部を構成する前記素線の径は、前記コイル体の先端に近づくほど太くなっている構成としてもよい。本カテーテルによれば、カテーテル先端部分とカテーテル連結部分との剛性差を抑制しつつ、カテーテルのトルク伝達性を確保するとともに、カテーテル先端部分とカテーテル基端部分との剛性差に起因するカテーテルのキンクの発生を抑制することができる。
【0019】
(10)上記カテーテルにおいて、前記カテーテルの外径は、全長にわたって同一である構成としてもよい。本カテーテルによれば、カテーテルの外径が全長にわたって同一である構成において、カテーテルのトルク伝達性を確保するとともに、カテーテル先端部分とカテーテル基端部分との剛性差に起因するカテーテルのキンクの発生を抑制することができる。
【0020】
本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、カテーテル、カテーテルの製造方法等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態におけるカテーテルの縦断面構成を概略的に示す説明図
【
図2】カテーテルのカテーテル本体の一部の縦断面構成の拡大図
【
図3】カテーテルに備えられた編組体の一部の拡大図
【
図4】
図2のIV-IVの位置におけるカテーテル本体の横断面図
【
図5】
図2のV-Vの位置におけるカテーテル本体の横断面図
【
図6】
図2のVI-VIの位置におけるカテーテル本体の横断面図
【
図7】第2実施形態におけるカテーテルの一部の縦断面構成を示す説明図
【
図8】第3実施形態におけるカテーテルの一部の縦断面構成を示す説明図
【
図9】第4実施形態におけるカテーテルの一部の縦断面構成を示す説明図
【
図10】
図9のX-Xの位置におけるカテーテル本体の横断面図
【
図11】第5実施形態におけるカテーテルの縦断面構成を概略的に示す説明図
【
図12】カテーテルの一部の縦断面構成を示す説明図
【
図14】カテーテルにおけるカテーテル先端部分およびカテーテル連結部分の曲げ剛性を示すグラフ
【
図15】第6実施形態におけるカテーテルの一部の縦断面構成を示す説明図
【
図16】第7実施形態におけるカテーテルの一部の縦断面構成を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0022】
A.第1実施形態:
A-1.カテーテル100の全体構成:
図1は、第1実施形態におけるカテーテル100の縦断面構成を概略的に示す説明図である。なお、
図1では、後述のカテーテル本体10の詳細構成は省略されている。
図2は、カテーテル100のカテーテル本体10の一部の縦断面構成を拡大して示す説明図である。
図2には、さらに、カテーテル100におけるX1の部分の構成(後述の緩衝材60)が拡大して示されている。ここで、カテーテル100の縦断面とは、カテーテル100の軸方向(長手方向
図1および
図2のZ軸方向)に平行な断面(
図1のYZ断面)をいい、カテーテル100の横断面とは、カテーテル100の軸方向に垂直な断面(
図1のXY断面)をいう。
図1において、Z軸負方向側(後述のコネクタ18の側)が、医師等の手技者によって操作される基端側(近位側)であり、Z軸正方向側(コネクタ18とは反対側)が、体内に挿入される先端側(遠位側)である。なお、
図1および
図2では、カテーテル100が全体としてZ軸方向に平行な直線状となった状態を示しているが、カテーテル100は湾曲させることができる程度の柔軟性を有している。
【0023】
カテーテル100は、血管等における病変部を治療または検査するために、血管等に挿入される医療用デバイスである。
図1に示すように、カテーテル100は、カテーテル本体10と、カテーテル本体10の基端に取り付けられたコネクタ18と、を備えている。
【0024】
カテーテル本体10は、先端部分12と基端部分14とを有する。先端部分12は、カテーテル本体10の先端を含む部分であり、後述のコイル体20を備えないことによって相対的に柔軟性が高くなっている部分である。基端部分14は、カテーテル本体10の基端を含む部分であり、コイル体20を備えることによって相対的に剛性が高くなっている部分である。以下、具体的に説明する。
【0025】
図1および
図2に示すように、カテーテル本体10は、先端と基端とが開口した筒状(例えば円筒状)の部材である。なお、本明細書において「筒状(円筒状)」とは、完全な筒形状(円筒形状)に限らず、全体として略筒状(略円筒形状、例えば、若干、円錐形状や、一部に凹凸がある形状など)であってもよい。カテーテル本体10の内部には、カテーテル本体10の先端から基端まで延びるルーメンSが形成されている。ルーメンSには、例えば、異常血管に注入する塞栓物質等の流体が供給されたり、図示しないガイドワイヤが挿通されたりする。
【0026】
図2に示すように、カテーテル本体10は、先端側同径部11Aと基端側同径部11Bと連結部11Cとを有する。先端側同径部11Aは、カテーテル本体10の先端を含む部分であり、先端側同径部11Aの第1の外径D1は、カテーテル100の軸方向の全長にわたって略同一である。基端側同径部11Bは、カテーテル本体10の基端を含む部分であり、基端側同径部11Bの第2の外径D2は、先端側同径部11Aの第1の外径D1よりも大きく、かつ、カテーテル100の軸方向の全長にわたって略同一である。連結部11Cは、先端側同径部11Aと基端側同径部11Bとの間に位置し、先端側同径部11Aと基端側同径部11Bとを連結する部分であり、連結部11Cの第3の外径D3は、先端側から基端側に近づくに連れて連続的に大きくなっている。本実施形態では、先端側同径部11Aと連結部11Cの先端側とが上述の先端部分12を構成し、連結部11Cの基端側と基端側同径部11Bとが上述の基端部分14を構成している。
【0027】
カテーテル本体10における先端側の第1の内周面13Aの第1の内径E1は、第1の内周面13Aにおけるカテーテル100の軸方向(Z軸方向)の全長にわたって略同一である。カテーテル本体10における基端側の第2の内周面13Bの第2の内径E2は、第1の内周面13Aの第1の内径E1よりも大きく、かつ、第2の内周面13Bにおけるカテーテル100の軸方向の全長にわたって略同一である。第1の内周面13Aと第2の内周面13Bとの間に位置する第3の内周面13Cは、先端側から基端側に近づくに連れて連続的に大きくなっている。
【0028】
本実施形態では、
図2に示すように、先端側同径部11Aと連結部11Cとの境界の位置P1と、第1の内周面13Aと第3の内周面13Cとの境界の位置P2とは、カテーテル100の軸方向(Z軸方向)において略同一である。一方、基端側同径部11Bと連結部11Cとの境界の位置P3は、第2の内周面13Bと第3の内周面13Cとの境界の位置P4よりも基端側に位置する。
【0029】
A-2.カテーテル本体10の詳細構成:
図2に示すように、カテーテル本体10は、コイル体20と、編組体30と、内側樹脂層40と、外側樹脂層50と、緩衝材60と、を備えている。
図3は、編組体30の一部の拡大図である。
【0030】
コイル体20は、複数本の素線22を螺旋状に巻回することにより中空円筒状に形成したコイル状の部材である。コイル体20は、カテーテル本体10における先端部分12には配置されておらず、基端部分14に配置されている。具体的には、コイル体20は、カテーテル本体10における基端から途中の部位(上述の連結部11C付近)にわたって連続的に配置されているとともにカテーテル本体10の先端側には配置されていない。
【0031】
コイル体20の先端は、カテーテル100の軸方向(Z軸方向)において、基端側同径部11Bと連結部11Cとの境界の位置P3よりもカテーテル100の先端側に位置している。このため、カテーテル100の基端部分14から先端部分12へのトルク伝達性が、より効果的に向上している。また、コイル体20の先端は、第2の内周面13Bと第3の内周面13Cとの境界の位置P4よりも基端側に位置する。これにより、コイル体20の存在に起因して先端側同径部11Aや連結部11Cの外径が大きくなることが抑制されている。
【0032】
素線22には金属材料を用いてもよい。金属材料としては、例えば、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)、Ni-Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、ニッケル-クロム系合金、またはコバルト合金といった放射線透過性合金や、金、白金、タングステン、またはこれらの元素を含む合金(例えば、白金-ニッケル合金)といった放射線不透過性合金を用いることができる。素線22の外径は、次述の編組体30を構成する素線32の外径よりも大きいことが好ましい。また、素線22の剛性は、素線32の剛性よりも大きいことが好ましい。
【0033】
編組体30は、複数本の素線32が編組された筒状の部材である。具体的には、
図3に示すように、編組体30は、複数本の素線32が互いに交差するように編み込まれたメッシュ状の構造を有している。
図2に示すように、編組体30は、カテーテル本体10における基端から先端にわたって連続的に配置されている。編組体30は、厚さが、カテーテル100の軸方向の全長にわたって略同一である。なお、本明細書において、各部材の厚さは、カテーテル100の径方向の長さをいう。
【0034】
編組体30は、コイル外編組部30Aとコイル内編組部30Bとを有する。コイル内編組部30Bは、コイル体20の内周側に配置されている。コイル外編組部30Aは、コイル内編組部30Bからコイル体20より先端方向に延長するように配置されている。換言すれば、コイル体20は、編組体30のうち、コイル外編組部30Aの外周には配置されておらず、コイル内編組部30Bの外周を取り囲むように配置されている。
【0035】
編組体30は、カテーテル本体10の内周面(第1の内周面13A、第2の内周面13B、第3の内周面13C)に応じた形状になっている。具体的には、編組体30のうち、第1の内周面13Aの外周に位置する部分は、外径がカテーテル100の軸方向の全長にわたって略同一である第1の同径部31Aになっている。編組体30のうち、第2の内周面13Bの外周に位置する部分は、外径が、第1の同径部31Aの外径よりも大きく、かつ、カテーテル100の軸方向の全長にわたって略同一である第2の同径部31Bになっている。編組体30のうち、第3の内周面13Cの外周に位置する部分は、外径が先端側に近づくに連れて連続的に小さくなっている縮径部31Cになっている。本実施形態では、第1の同径部31Aと縮径部31Cと第2の同径部31Bの先端側とがコイル外編組部30Aを構成するとともに先端部分12に含まれており、第2の同径部31Bの基端側がコイル内編組部30Bを構成するとともに基端部分14に含まれている。
【0036】
素線32には金属材料を用いることができる。金属材料としては、例えば、タングステン、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)を用いることができる。
【0037】
内側樹脂層40は、編組体30の内周面を被覆している。具体的には、内側樹脂層40は、カテーテル本体10の基端から先端にわたって連続的に配置されており、編組体30の内周面側を全長にわたって被覆している。すなわち、内側樹脂層40は、カテーテル本体10の内周面(上述の内周面13A,13B,13C)を構成している。内側樹脂層40の厚さは、カテーテル100の軸方向の全長にわたって略同一である。
【0038】
カテーテル本体10のうち、コイル外編組部30Aの少なくとも一部における内側樹脂層40の内径(先端側の第1の内周面13Aの第1の内径E1)は、コイル内編組部30Bにおける内側樹脂層40の内径(基端側の第2の内周面13Bの第2の内径E2)より小さい。また、内側樹脂層40は、編組体30の内周面に密着するとともに、該編組体30を構成する素線32同士の各隙間に入り込んでいる。内側樹脂層40は、例えば、ポリテトラフルオロチレン(PTFE)の樹脂により構成されている。
【0039】
緩衝材60は、編組体30のコイル外編組部30Aにおけるコイル体20側の部分に接触するとともにコイル体20の先端に接触している。本実施形態では、緩衝材60のカテーテル100の軸方向(Z軸方向)視の形状は、環状であり、コイル外編組部30Aにおけるコイル体20側の部分の外周を取り囲むように配置されている。具体的には、緩衝材60は、コイル外編組部30Aにおける第2の同径部31Bの外周を取り囲むように配置され、かつ、緩衝材60の内周面が、第2の同径部31Bの外周面に接触するように配置されている。このため、緩衝材60と編組体30との密着性が高いため、緩衝材60による先端部分12と基端部分14との剛性差の抑制効果の向上を図ることができる。
【0040】
緩衝材60の先端側の厚さは、緩衝材60の基端側の厚さよりも薄い。具体的には、緩衝材60は、第1の厚さL1を有する肉薄部62と、肉薄部62の基端に隣接し、かつ、第1の厚さL1より厚い第2の厚さL2を有する肉厚部64とを有する。また、緩衝材60の内周面は、緩衝材60の全長にわたって内径が略同一であり、緩衝材60の外周面は、先端側(肉薄部62)の外径が基端側(肉厚部64)の外径より小さくなっている。これにより、緩衝材60の外周面には、カテーテル100の先端側を向く段差面63が形成されている。また、緩衝材60の先端面65は、カテーテル100の先端側を向いている。緩衝材60が段差面63と先端面65との少なくとも一方を有することにより、緩衝材60とコイル体20との離隔を抑制することができる。すなわち、例えば、カテーテル本体10を体内に挿入する過程において、緩衝材60の段差面63や先端面65が外側樹脂層50から押圧力を受けることにより、緩衝材60がコイル体20の先端に押し付けられるため、緩衝材60とコイル体20との離隔を抑制することができる。
【0041】
緩衝材60の剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)は、編組体30の剛性とコイル体20の剛性との間の剛性を有する。本実施形態では、緩衝材60の剛性は、編組体30の剛性より高く、コイル体20の剛性よりも低い。なお、緩衝材60と編組体30とコイル体20との剛性の大小関係は、例えば、各部材の組成成分と加工程度とによって特定することができる。緩衝材60としては、ポリアミド樹脂、ポリアミドエラストマ、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンープロピレン共重合体等のポリオレフィン樹脂、テフロン(登録商標)等のフッ素樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体等の各種合成樹脂材料等の樹脂及びそれらの組み合わせを用いることができる。本実施形態では、例えば、ポリアミドエラストマを用いている。
【0042】
緩衝材60は、カテーテル100の軸方向(Z軸方向)において、基端側同径部11Bと連結部11Cとの境界の位置P3と第2の内周面13Bと第3の内周面13Cとの境界の位置P4との間に位置している。このため、緩衝材60が、カテーテル本体10における比較的に厚い部分に配置されるため、緩衝材60の周囲における外側樹脂層50が薄くなることが抑制される。
【0043】
図2のX1部分に示すように、緩衝材60は、コイル体20を構成するとともに互いに隣り合う複数の素線22を跨がるように延出している延出部分66を有する。本実施形態では、緩衝材60は、互いに隣り合う複数の素線22を跨がるとともに複数の素線22同士の間に形成される凹部に入り込んでいる。このため、緩衝材60とコイル体20との密着性がより高くなっている。また、延出部分66は、コイル体20の全周にわたって形成されている。なお、このような延出部分66を有する緩衝材60は、例えば、環状の樹脂材料を、編組体30の外周に嵌めて熱処理を施すことにより形成することができる。
【0044】
外側樹脂層50は、編組体30におけるコイル外編組部30Aと緩衝材60とコイル体20との外周面を被覆している。具体的には、外側樹脂層50は、カテーテル本体10の基端から先端にわたって連続的に配置されており、コイル外編組部30Aと緩衝材60とコイル体20との外周面側を全長にわたって被覆している。すなわち、外側樹脂層50は、カテーテル本体10の外周面を構成している。外側樹脂層50は、厚さが、カテーテル100の軸方向の全長にわたって略同一である。外側樹脂層50は、例えば、ポリテトラフルオロチレン(PTFE)の樹脂により構成されている。なお、内側樹脂層40と外側樹脂層50とは、互いに同じ種類の樹脂で構成されていてもよいし、互いに異なる種類の樹脂により構成されていてもよい。なお、外側樹脂層50における先端部には、環状のチップ19が埋設されている。
【0045】
図4は、
図2のIV-IVの位置におけるカテーテル本体10の横断面図であり、
図5は、
図2のV-Vの位置におけるカテーテル本体10の横断面図であり、
図6は、
図2のVI-VIの位置におけるカテーテル本体10の横断面図である、前述した構成により、
図4に示すように、カテーテル本体10における先端側同径部11Aは、編組体30(コイル外編組部30A)と内側樹脂層40と外側樹脂層50とを備え、かつ、コイル体20を備えていない。
図5に示すように、カテーテル本体10における基端側同径部11Bは、編組体30(コイル内編組部30B)と内側樹脂層40と外側樹脂層50とに加えて、コイル体20を備えている。
図6に示すように、カテーテル本体10における連結部11Cの一部は、編組体30(コイル外編組部30A)と内側樹脂層40と外側樹脂層50とを備え、かつ、コイル体20を備えていないが、緩衝材60を備えている。
【0046】
A-3.本実施形態の効果:
図2に示すように、本実施形態に係るカテーテル100では、カテーテル100の先端側(編組体30のコイル外編組部30Aが位置する先端部分12)にコイル体20が配置されておらず、カテーテルの基端側(編組体30のコイル内編組部30Bが位置する基端部分14)にコイル体20が配置されている。このため、カテーテル100の先端部分12は相対的に柔軟性が高く、カテーテル100の基端部分14は相対的に剛性が高い。これにより、カテーテル100の先端部分12の細径血管の選択性能の向上(太い本管から枝葉のように伸びる複数の細径血管のそれぞれを精度よく選択できる性能)と、カテーテル100の基端部分14から先端部分12へのトルク伝達性(回転性能、手元剛性)の向上を図ることができる。
【0047】
さらに、
図2および
図6に示すように、本実施形態に係るカテーテル100には、緩衝材60が備えられている。緩衝材60は、編組体30のコイル外編組部30Aにおけるコイル体20側の部分に接触するとともにコイル体20の先端に接触している。また、緩衝材60は、編組体30の剛性とコイル体20の剛性との間の剛性を有する。これにより、コイル体20が配置されていない先端部分12とコイル体20が配置された基端部分14との剛性差が抑制され、その結果、例えば、カテーテル100のトルク伝達性を確保しつつ、該剛性差に起因してカテーテル100の先端側と基端側との境界部位が折れ曲がって元に戻らないキンクの発生を抑制することができる。
【0048】
ところで、手術現場では手技時間の短縮が要求される。この要求に対して、本発明者は、鋭意検討を重ねることにより、ガイドワイヤを用いることなく、病変部に到達可能なカテーテルを提案することにより、手技時間の短縮を図ることが可能であることに気づいた。すなわち、本実施形態に係るカテーテル100は、先端が、ガイドワイヤを用いることなく病変部に到達可能であり、先端部分12の細径血管の選択性能と、基端部分14から先端部分12へのトルク伝達性とが高く、かつ、キンクが発生し難い。このため、ガイドワイヤを用いることはなく、例えば、運動器カテーテル治療(TAME:Transcatheter arterial micro embolization)等のカテーテル塞栓術に使用することができる。例えば、五十肩等の疼痛が遷延する疾患には、異常血管が増幅し、残存しており、この異常血管が疼痛の原因となっている。カテーテル100は、ガイドワイヤを用いずに、異常血管が残存する病変部に到達させることができる。次いで、カテーテル100のルーメンSを介して塞栓物質を異常血管に注入することにより、異常血管を減少させて疼痛を改善させることができる。
【0049】
本実施形態では、編組体30のコイル外編組部30Aは、カテーテル100の先端に近づくに連れて外径が小さくなっている縮径部31Cと、縮径部31Cの先端に隣接し、かつ、外径がカテーテル100の軸方向の全長にわたって同一(縮径部31Cの先端の外径と同じ)である第1の同径部31Aと、を有する。これにより、本実施形態によれば、コイル外編組部30Aの全長にわたって、コイル外編組部30Aの外径が先端に近づくに連れて小さくなっている構成に比べて、コイル外編組部30Aを血管に挿入した後、該血管から容易に抜けることを抑制することができる。
【0050】
本実施形態では、カテーテル本体10のうち、コイル外編組部30Aの少なくとも一部における内側樹脂層40の内径(先端側の第1の内周面13Aの第1の内径E1)は、コイル内編組部30Bにおける内側樹脂層40の内径(基端側の第2の内周面13Bの第2の内径E2)より小さい。これにより、本実施形態によれば、カテーテル100の基端部分14に相対的に内径が大きい部分が存在するため、カテーテル100内に広い収容空間を確保でき、例えばカテーテル100の先端から流体(液体や気体、例えば造影剤)を噴射する場合に、カテーテル100の基端部分14における多量の流体を収容できる。また、カテーテル100の先端部分12に相対的に内径が小さい部分が存在するため、カテーテル100の基端部分14から送られた流体の流速を先端部分12で上昇させて、カテーテル100の先端からの流体の噴射力を向上させることができる。
【0051】
本実施形態では、緩衝材60の先端側の厚さは、緩衝材60の基端側の厚さよりも薄い。これにより、本実施形態によれば、緩衝材60の厚さが均一である構成に比べて、カテーテル100の先端部分12と基端部分14との剛性差がさらに抑制され、キンクの発生をより効果的に抑制することができる。
【0052】
本実施形態では、緩衝材60は、コイル体20を構成するとともに互いに隣り合う複数の素線22を跨がるように延出している延出部分66を有する。これにより、本実施形態によれば、緩衝材60が延出部分66を有することにより、緩衝材60とコイル体20との密着性が高いため、カテーテル100の先端部分12と基端部分14との剛性差がさらに抑制され、キンクの発生をより効果的に抑制することができる。
【0053】
B.第2実施形態:
図7は、本第2実施形態におけるカテーテル100aの一部の縦断面構成を示す説明図である。本第2実施形態のカテーテル100aの構成の内、上述した第1実施形態のカテーテル100と同一の構成については、同一符号を付すことによって、その説明を省略する。
【0054】
本第2実施形態では、基端側同径部11Bと連結部11Cとの境界の位置P3と、第2の内周面13Bと第3の内周面13Cとの境界の位置P4とが、カテーテル100の軸方向(Z軸方向)において略同一である点で、上記第1実施形態とは異なる。また、コイル体20の先端は、第2の内周面13Bと第3の内周面13Cとの境界の位置P4まで延びているため、コイル体20の先端が同位置P4まで延びていない構成に比べて、カテーテル100の基端部分14から先端部分12へのトルク伝達性を、より効果的に向上させることができる。
【0055】
本実施形態では、緩衝材60aは、コイル外編組部30Aにおける縮径部31Cの外周を取り囲むように配置され、かつ、緩衝材60の内周面が、縮径部31Cの外周面に接触するように配置されている。このような構成であれば、緩衝材60aがコイル体20および編組体30から離隔することを抑制することができる。すなわち、例えば、カテーテル本体10を体内に挿入する過程において、緩衝材60aが外側樹脂層50から押圧力を受けることにより、緩衝材60がコイル体20の先端と編組体30とに押し付けられるため、緩衝材60aがコイル体20および編組体30から離隔することを抑制することができる。
【0056】
緩衝材60aの先端側の厚さは、緩衝材60aの基端側の厚さよりも薄い。具体的には、緩衝材60aは、第1の緩衝材62aと第2の緩衝材64aと第3の緩衝材66aとを有する。第2の緩衝材64aは、第1の緩衝材62aの基端側に位置し、第2の緩衝材64aの厚さは、第1の緩衝材62aの厚さより厚い。第3の緩衝材66aは、第2の緩衝材64aの基端側に位置し、第3の緩衝材66aの厚さは、第2の緩衝材64aの厚さより厚い。これにより、本実施形態によれば、緩衝材60aの厚さが均一である構成に比べて、カテーテル100aの先端部分12と基端部分14との剛性差がさらに抑制され、キンクの発生をより効果的に抑制することができる。なお、第1の緩衝材62aと第2の緩衝材64aと第3の緩衝材66aとは、互いに接触していることが好ましく、また、互いに別体であってもよいし、一体的に接合されていてもよい。
【0057】
緩衝材60aは、コイル体20を構成するとともに互いに隣り合う複数の素線22を跨がるように延出している延出部分68aを有する。このため、緩衝材60aとコイル体20との密着性がより高くなっている。また、延出部分68aは、コイル体20の全周にわたって形成されている。
【0058】
C.第3実施形態:
図8は、本第3実施形態におけるカテーテル100bの一部の縦断面構成を示す説明図である。第3実施形態のカテーテル100bの構成の内、上述した第1実施形態のカテーテル100と同一の構成については、同一符号を付すことによって、その説明を省略する。
【0059】
本第3実施形態では、カテーテル100bのカテーテル本体10bは、軸方向(Z軸方向)の全長にわたって内径と外径とが略同一である点で、上記第1実施形態とは異なる。また、緩衝材60bは、先端に近づくに連れて厚さが連続的に薄くなっている。これにより、本実施形態によれば、厚さが段階的に薄くなっている構成に比べて、カテーテル100bの先端部分12bと基端部分14bとの剛性差がさらに抑制され、キンクの発生をより効果的に抑制することができる。
【0060】
D.第4実施形態:
図9は、本第4実施形態におけるカテーテル100cの一部の縦断面構成を示す説明図であり、
図10は、そのX-Xの位置における横断面図である。第4実施形態のカテーテル100cの構成の内、上述した第1実施形態のカテーテル100と同一の構成については、同一符号を付すことによって、その説明を省略する。
【0061】
本第4実施形態では、カテーテル100cのカテーテル本体10cは、軸方向(Z軸方向)の全長にわたって、編組体30の隙間に樹脂が充填されて形成される中樹脂層70が設けられている点で上記第1実施形態とは異なる。すなわち、本第4実施形態では、内側樹脂層40cは、編組体30の内周面を被覆するように形成されているが、編組体30の隙間には入り込んでいない。その代わりに、中樹脂層70が編組体30の隙間に充填されて形成されている。中樹脂層70は、内側樹脂層40cと外側樹脂層50との両方に接触している。内側樹脂層40cと外側樹脂層50とを異なる樹脂を採用する場合であって、それらの接着性が高くない場合には、中樹脂層70の樹脂として、内側樹脂層40cと外側樹脂層50との両方に高い接着性を有する樹脂を採用すれば、中樹脂層70によって樹脂層間の接着性を高めることが可能となる。
【0062】
E.第5実施形態:
E-1.カテーテル200の全体構成:
図11は、第5実施形態におけるカテーテル200の縦断面構成を概略的に示す説明図である。
図11では、カテーテル本体110の詳細構成を省略してあるが、
図12は、カテーテル本体110の一部の縦断面を拡大して示してある。
図11および
図12では、カテーテル200が全体としてZ軸方向に平行な直線状となった状態を示しているが、カテーテル200は湾曲させることができる程度の柔軟性を有している。
【0063】
カテーテル200は、カテーテル本体110と、その基端に取り付けられたコネクタ118と、を備えている。カテーテル本体110は、カテーテル先端部分112とカテーテル基端部分114とカテーテル連結部分116とを有している。
【0064】
カテーテル先端部分112は、カテーテル本体110の先端を含む部分であり、コイル体120を備えないことによって相対的に柔軟性が高くなっている部分である。カテーテル基端部分114は、カテーテル本体110の基端を含む部分であり、コイル体120における基端側コイル124を備えることによって相対的に剛性が高くなっている部分である。カテーテル連結部分116は、カテーテル200の軸方向においてカテーテル先端部分112とカテーテル基端部分114とをつないでいる部分であり、コイル体120における後述の連結側コイル126を備えることによってカテーテル先端部分112とカテーテル基端部分114との剛性差を抑制するための部分である。
【0065】
図11および
図12に示すように、カテーテル本体110は、先端と基端とが開口した筒状(例えば円筒状)の部材である。カテーテル本体110の内部には、カテーテル本体110の先端から基端まで延びるルーメンSが形成されている。
【0066】
図12に示すように、カテーテル本体110は、先端側同径部111Aと基端側同径部111Bと連結部111Cとを有している。先端側同径部111Aは、カテーテル本体110の先端を含む部分であり、先端側同径部111Aの第1の外径D1は、カテーテル200の軸方向の全長にわたって略同一である。基端側同径部111Bは、カテーテル本体110の基端を含む部分であり、基端側同径部111Bの第2の外径D2は、先端側同径部111Aの第1の外径D1よりも大きく、かつ、カテーテル200の軸方向の全長にわたって略同一である。連結部111Cは、先端側同径部111Aと基端側同径部111Bとの間に位置し、先端側同径部111Aと基端側同径部111Bとを連結する部分であり、連結部111Cの第3の外径D3は、先端側から基端側に近づくに連れて連続的に大きくなっている。本実施形態では、先端側同径部111Aがカテーテル先端部分112を構成し、基端側同径部111Bがカテーテル基端部分114を構成し、連結部111Cがカテーテル連結部分116を構成している。
【0067】
カテーテル本体110の先端側の第1の内周面113Aの第1の内径E1は、第1の内周面113Aにおけるカテーテル200の軸方向(Z軸方向)の全長にわたって略同一である。カテーテル本体110の基端側の第2の内周面113Bの第2の内径E2は、第1の内周面113Aの第1の内径E1よりも大きく、かつ、第2の内周面113Bにおけるカテーテル200の軸方向の全長にわたって略同一である。第1の内周面113Aと第2の内周面113Bとの間に位置する第3の内周面113Cは、先端側から基端側に近づくに連れて連続的に大きくなっている。
【0068】
本実施形態では、先端側同径部111Aと連結部111Cとの境界の位置P1と、第1の内周面113Aと第3の内周面113Cとの境界の位置P2とは、カテーテル200の軸方向(Z軸方向)において略同一である。基端側同径部111Bと連結部111Cとの境界の位置P3と、第2の内周面113Bと第3の内周面113Cとの境界の位置P4とは、軸方向において略同一である。
【0069】
E-2.カテーテル本体110の詳細構成:
図12に示すように、カテーテル本体110は、コイル体120と、編組体130と、内側樹脂層140と、外側樹脂層150と、を備えている。なお、カテーテル200は、緩衝材を備えない点で、上記第1~第4実施形態とは異なる。
【0070】
コイル体120は、複数本の素線122を螺旋状に巻回することにより中空円筒状に形成したコイル状の部材である。コイル体120は、カテーテル本体110におけるカテーテル先端部分112には配置されておらず、カテーテル基端部分114及びカテーテル連結部分116に配置されている。
【0071】
素線122には金属材料を用いてもよい。金属材料としては、例えば、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)、Ni-Ti合金等の超弾性合金、ピアノ線、ニッケル-クロム系合金、またはコバルト合金といった放射線透過性合金や、金、白金、タングステン、またはこれらの元素を含む合金(例えば、白金-ニッケル合金)といった放射線不透過性合金を用いることができる。素線122の外径は、次述の編組体130を構成する素線132の外径よりも大きいことが好ましい。また、素線122の剛性は、素線132の剛性よりも大きいことが好ましい。
【0072】
編組体130は、複数本の素線132が編組された筒状の部材である。編組体130は、複数本の素線132が互いに交差するように編み込まれたメッシュ状の構造を有している(例えば、
図3参照)。
図12に示すように、編組体130は、カテーテル本体110における基端から先端にわたって連続的に配置されている。編組体130は、厚さが、カテーテル200の軸方向の全長にわたって略同一である。
【0073】
編組体130は、コイル外編組部130Aとコイル内編組部130Bとを有する。コイル内編組部130Bは、コイル体120の内周側に配置されている。コイル外編組部130Aは、コイル内編組部130Bからコイル体120より先端方向に延長するように配置されている。換言すれば、コイル体120は、編組体130のうち、コイル外編組部130Aの外周には配置されておらず、コイル内編組部130Bの外周を取り囲むように配置されている。
【0074】
編組体130は、カテーテル本体110の内周面(第1の内周面113A、第2の内周面113B、第3の内周面113C)に応じた形状になっている。具体的には、編組体130のうち、第1の内周面113Aの外周に位置する部分は、外径がカテーテル200の軸方向の全長にわたって略同一である第1の同径部131Aになっている。編組体130のうち、第2の内周面113Bの外周に位置する部分は、外径が、第1の同径部131Aの外径よりも大きく、かつ、カテーテル200の軸方向の全長にわたって略同一である第2の同径部131Bになっている。編組体130のうち、第3の内周面113Cの外周に位置する部分は、外径が先端側に近づくに連れて連続的に小さくなっている縮径部131Cになっている。本実施形態では、第1の同径部131Aと縮径部131Cの先端側とがコイル外編組部130Aを構成するとともにカテーテル先端部分112及びカテーテル連結部分116の先端側に含まれており、縮径部131Cの基端側と第2の同径部131Bとがコイル内編組部30Bを構成するとともにカテーテル連結部分116の基端側とカテーテル基端部分114とに含まれている。
【0075】
素線132には金属材料を用いることができる。金属材料としては、例えば、タングステン、ステンレス鋼(SUS302、SUS304、SUS316等)を用いることができる。
【0076】
内側樹脂層140は、編組体130の内周面を被覆している。具体的には、内側樹脂層140は、カテーテル本体110の基端から先端にわたって連続的に配置されており、編組体130の内周面側を全長にわたって被覆している。すなわち、内側樹脂層140は、カテーテル本体110の内周面(上述の内周面113A,113B,113C)を構成している。内側樹脂層140の厚さは、カテーテル200の軸方向の全長にわたって略同一である。
【0077】
カテーテル本体110のうち、コイル外編組部130Aの少なくとも一部における内側樹脂層140の内径(先端側の第1の内周面113Aの第1の内径E1)は、コイル内編組部130Bにおける内側樹脂層140の内径(基端側の第2の内周面113Bの第2の内径E2)より小さい。また、内側樹脂層140は、編組体130の内周面に密着するとともに、該編組体130を構成する素線132同士の各隙間に入り込んでいる。内側樹脂層140は、例えば、ポリテトラフルオロチレン(PTFE)の樹脂により構成されている。
【0078】
外側樹脂層150は、編組体130におけるコイル外編組部130Aとコイル体120との外周面を被覆している。具体的には、外側樹脂層150は、カテーテル本体110の基端から先端にわたって連続的に配置されており、コイル外編組部130Aとコイル体120との外周面側を全長にわたって被覆している。すなわち、外側樹脂層150は、カテーテル本体110の外周面を構成している。外側樹脂層150は、厚さが、カテーテル200の軸方向の全長にわたって略同一である。外側樹脂層150は、例えば、ポリテトラフルオロチレン(PTFE)の樹脂により構成されている。なお、内側樹脂層140と外側樹脂層150とは、互いに同じ種類の樹脂で構成されていてもよいし、互いに異なる種類の樹脂により構成されていてもよい。なお、外側樹脂層150における先端部には、環状のチップ119が埋設されている。
【0079】
コイル体120は、基端側コイル124と連結側コイル126とを有している。基端側コイル124を構成している素線122の外径は、カテーテル200の軸方向の全長にわたって略同一である。すなわち、基端側コイル124の曲げ剛性は、軸方向の全長にわたって略同一である。連結側コイル126を構成している素線122は、連結側コイル126(コイル体120)の先端に近づくほど連続的に細くなっている。すなわち、連結側コイル126の曲げ剛性は、連結側コイル126の先端に近づくほど低くなっている。なお、素線122は、連結側コイル126の先端に近づくほど段階的に細くなっていてもよい。基端側コイル124の先端と連結側コイル126の基端とは連続的かつ一体につながっている。
【0080】
カテーテル先端部分112の基端の位置は、位置P3より先端側に位置している。カテーテル基端部分114には基端側コイル124が配置されている。カテーテル連結部分116には連結側コイル126が配置されている。
【0081】
カテーテル先端部分112とカテーテル基端部分114とカテーテル連結部分116とにおける曲げ剛性の関係(以下、「規定曲げ剛性関係」という)は次の通りである。
「カテーテル先端部分の曲げ剛性」:0.005gf・cm2/cm以上、0.05gf・cm2/cm未満
「カテーテル連結部分の曲げ剛性」:0.05gf・cm2/cm以上、1.4gf・cm2/cm未満
「カテーテル基端部分の曲げ剛性」:1.4gf・cm2/cm以上、3.0gf・cm2/cm以下
【0082】
図13は、カテーテル200の全体の曲げ剛性を示すグラフであり、
図14は、カテーテル200におけるカテーテル先端部分112およびカテーテル連結部分116の曲げ剛性を示すグラフである。各図の縦軸は、カテーテルの曲げ剛性(gf・cm
2/cm)であり、横軸は、カテーテルの先端からの距離(mm)である。各図中のグラフG1は、カテーテル200の曲げ剛性を示しており、グラフG2は、公知のガイディングカテーテルの曲げ剛性を示しており、グラフG3は、公知のマイクロカテーテルの曲げ剛性を示している。
【0083】
カテーテル200の曲げ剛性は、以下の方法により求めることができる。すなわち、常温で、カテーテル200における測定対象箇所の基端側の部分を、トルクゲージを介して移動不能に固定する一方、カテーテル200における測定対象箇所の先端側の部分を移動チャックに固定する。次いで、移動チャックを、カテーテル200の軸に直交する2方向に、それぞれ湾曲線状の軌跡を描くように移動せしめる。これにより、カテーテル200を、2方向のそれぞれに90度ずつ揺動せしめて、曲げ変形せしめた。そして、このときのトルクゲージにて測定されるトルク荷重の最大値を測定し、その測定結果から曲げ剛性を求める。ガイディングカテーテルやマイクロカテーテルの曲げ剛性についても同様の方法により求めることができる。
【0084】
図13のグラフG1及びグラフG2によれば、カテーテル200のカテーテル基端部分114は、ガイディングカテーテルと略同等の剛性を有していることが分かる。
図13及び
図14のグラフG1及びグラフG3によれば、カテーテル200のカテーテル先端部分112は、マイクロカテーテルの先端部分と略同等の剛性を有していることが分かる。また、カテーテル200では、カテーテル連結部分116の存在により、カテーテル先端部分112の基端からカテーテル基端部分114の先端に向かって曲げ剛性が連続的に大きくなっていることが分かる。
【0085】
E-3.本実施形態の効果:
図12に示すように、本実施形態に係るカテーテル200では、カテーテル200の先端側(コイル外編組部130Aが位置するカテーテル先端部分112)にコイル体120が配置されておらず、カテーテル200の基端側(コイル内編組部130Bが位置するカテーテル基端部分114)にコイル体120(基端側コイル124)が配置されている。このため、カテーテル先端部分112は相対的に柔軟性が高く、カテーテル基端部分114は相対的に剛性が高い。これにより、カテーテル先端部分112の細径血管の選択性能の向上と、カテーテル基端部分114からカテーテル先端部分112へのトルク伝達性の向上を図ることができる。
【0086】
カテーテル200は、カテーテル先端部分112とカテーテル基端部分114とをつないでいるカテーテル連結部分116を有している。カテーテル連結部分116は、カテーテル先端部分112の剛性とカテーテル基端部分114の剛性との間の剛性を有する(上記規定曲げ剛性関係)。これにより、コイル体120が配置されていないカテーテル先端部分112とコイル体120が配置されたカテーテル基端部分114との剛性差が抑制され、その結果、例えば、カテーテル200のトルク伝達性を確保しつつ、該剛性差に起因してカテーテル200の先端側と基端側との境界部位が折れ曲がって元に戻らないキンクの発生を抑制することができる。
【0087】
一般的に、カテーテルとガイドワイヤとを血管内で進める手技では、ガイディングカテーテルを血管に挿入し、ガイディングカテーテルの内部にマイクロカテーテルとガイドワイヤとを挿入して、それらを交互に進める操作を行う。これに対して、本カテーテル220を用いる場合には、本カテーテル200とガイドワイヤとを使用すれば、ガイディングカテーテルを必要とすることなく、ガイドワイヤと本カテーテル200と交互に進める操作を実現することが可能である。特に、本カテーテル200を血管に穿刺部位から治療部位まで比較的にストレートな血管である場合、分岐血管を選択することが1回または2回である場合、具体的には、運動器カテーテル治療(TAME)等のカテーテル塞栓術には、ガイディングカテーテルが不要となる。
【0088】
即ち、本実施形態のカテーテル200は、カテーテル先端部分112の曲げ剛性がマイクロカテーテルレベルの低さで、カテーテル基端部分114の曲げ剛性がガイディングカテーテルレベルの高さである。それらをつなぐカテーテル連結部分116は、カテーテル基端部分114とカテーテル先端部分112との剛性差を埋め合わせており、カテーテル先端部分112とカテーテル基端部分114との剛性差に起因するカテーテル200のキンクの発生を抑制しつつ、特定の手技で、ガイディングカテーテルを使用せずとも、ガイドワイヤと本カテーテル200と交互に進める操作を実現することが可能となっている。
【0089】
F.第6実施形態:
図15は、本第6実施形態におけるカテーテル200aの一部の縦断面構成を示す説明図である。この図では、さらに、カテーテル200aにおけるX2の部分の構成(後述の連結側コイル126a及び連結側編組体134C)が拡大して示されている。本第6実施形態のカテーテル200aの構成の内、上述した第5実施形態のカテーテル200と同一の構成については、同一符号を付すことによって、その説明を省略する。
【0090】
本第6実施形態では、基端側同径部111Bと連結部111Cとの境界の位置P3は、第2の内周面113Bと第3の内周面113Cとの境界の位置P4よりも基端側に位置する点で、上記第5実施形態とは異なる。コイル体120aの先端は、カテーテル200aの軸方向(Z軸方向)において位置P3よりもカテーテル200aの先端側に位置している。このため、カテーテル200のカテーテル基端部分114aからカテーテル先端部分112aへのトルク伝達性が、より効果的に向上している。また、コイル体120aの先端は、位置P4よりも基端側に位置する。これにより、コイル体120aの存在に起因して先端側同径部111Aや連結部111Cの外径が大きくなることが抑制されている。
【0091】
カテーテル200aは、カテーテル先端部分112aとカテーテル基端部分114aとカテーテル連結部分116aとを有している。
【0092】
カテーテル先端部分112aは、上記第5実施形態のカテーテル先端部分112と同様、カテーテル本体110aの先端を含む部分であり、後述のコイル体120aを備えないことによって相対的に柔軟性が高くなっている部分である。カテーテル基端部分114aは、上記第5実施形態のカテーテル基端部分114と同様、カテーテル本体110aの基端を含む部分であり、コイル体120aにおける後述の基端側コイル124aを備えることによって相対的に剛性が高くなっている部分である。カテーテル連結部分116aは、カテーテル200aの軸方向においてカテーテル先端部分112aとカテーテル基端部分114aとをつないでいる部分であり、後述の連結側コイル126a及び連結側編組体134Cを備えることによってカテーテル先端部分112aとカテーテル基端部分114aとの剛性差を抑制するための部分である。以下、具体的に説明する。
【0093】
コイル体120aは、基端側コイル124aと連結側コイル126aとを有している。基端側コイル124aは、上記第5実施形態のコイル体120と略同一の構成である。基端側コイル124aを構成している素線122aの径は、カテーテル200aの軸方向の全長にわたって略同一である。すなわち、基端側コイル124aの曲げ剛性は、軸方向の全長にわたって略同一である。連結側コイル126aを構成している素線122aは、連結側コイル126a(コイル体120a)の先端に近づくほど連続的に細くなっている。すなわち、連結側コイル126aの曲げ剛性は、連結側コイル126aの先端に近づくほど低くなっている。なお、素線122aは、連結側コイル126aの先端に近づくほど段階的に細くなっていてもよい。基端側コイル124aの先端と連結側コイル126aの基端とは連続的かつ一体につながっている。
【0094】
編組体130aは、先端側編組体134Aと後端側編組体134Bと連結側編組体134Cとを有している。先端側編組体134Aは、編組体130aの先端を含むとともにコイル体120aより先端側に位置している部分であり、先端側編組体134Aを構成する素線132aの径は、先端側編組体134Aの軸方向の全長にわたって略同一である。すなわち、先端側編組体134Aの曲げ剛性は、軸方向の全長にわたって略同一である。後端側編組体134Bは、編組体130aの後端を含むとともにコイル体120aの内周側に配置されている部分であり、後端側編組体134Bを構成する素線132aの径は、後端側編組体134Bの軸方向の全長にわたって略同一である。すなわち、後端側編組体134Bの曲げ剛性は、軸方向の全長にわたって略同一である。なお、先端側編組体134Aを構成する素線132aの径と後端側編組体134Bを構成する素線132aの径とは略同一である。
【0095】
連結側編組体134Cは、軸方向において先端側編組体134Aと後端側編組体134Bとをつないでいる部分である。連結側編組体134Cの先端側がコイル体120aより先端側に突出しており、連結側編組体134Cの基端側がコイル体120aの内周側に配置されている。連結側編組体134Cを構成する素線132aは、連結側編組体134Cの先端からコイル体120aの先端に近づくほど太くなっている。すなわち、連結側編組体134Cの曲げ剛性は、連結側編組体134Cの先端からコイル体120aの先端に近づくほど連続的に高くなっている。また、連結側編組体134Cを構成する素線132aは、連結側編組体134Cの基端からコイル体120aの先端に近づくほど太くなっている。すなわち、連結側編組体134Cの曲げ剛性は、連結側編組体134Cの基端からコイル体120aの先端に近づくほど連続的に高くなっている。なお、連結側編組体134Cの曲げ剛性は、連結側編組体134Cの先端または基端からコイル体120aの先端に近づくほど段階的に高くなっていてもよい。先端側編組体134Aの基端と連結側編組体134Cの先端とは連続的かつ一体につながっており、連結側編組体134Cの基端と後端側編組体134Bの先端とは連続的かつ一体につながっている。
【0096】
カテーテル先端部分112aには、先端側編組体134Aが配置されている。カテーテル基端部分114aには、基端側コイル124a及び後端側編組体134Bが配置されている。カテーテル連結部分116aには、連結側コイル126a及び連結側編組体134Cが配置されている。
【0097】
カテーテル先端部分112aとカテーテル基端部分114aとカテーテル連結部分116aとにおける曲げ剛性は、上記第5実施形態の規定曲げ剛性関係と同じである。
【0098】
図15に示すように、カテーテル200aでは、コイル体120aの一部(連結側コイル126a)がカテーテル連結部分116aに配置されている。連結側コイル126aを構成する素線122aは、カテーテル連結部分116aの先端に近づくほど細くなっている。また、コイル外編租部130Aの一部(連結側編組体134C)がカテーテル連結部分116aに配置されており、この連結側編組体134Cの先端側を構成する素線132aの径は、連結側編組体134Cの先端からコイル体120aの先端に近づくほど太くなっている。このため、カテーテル基端部分114aとカテーテル連結部分116aとの剛性差を効果的に抑制することができる。
【0099】
本実施形態では、連結側編組体134Cの基端側を構成する素線132aの径は、連結側編組体134Cの基端からコイル体120aの先端に近づくほど太くなっている。このため、カテーテル連結部分116aにおいて、コイル体120aを構成する素線122aの径が相対的に小さい連結側コイル126aが連結側編組体134Cによって補強される。
【0100】
G.第7実施形態:
図16は、本第7実施形態におけるカテーテル200bの一部の縦断面構成を示す説明図である。本第7実施形態のカテーテル200bの構成の内、上述した第5実施形態のカテーテル200と同一の構成については、同一符号を付すことによって、その説明を省略する。
【0101】
カテーテル200bのカテーテル本体110bは、軸方向(Z軸方向)の全長にわたって内径と外径とが略同一である点で、上記第5実施形態とは異なる。カテーテル200bは、カテーテル先端部分112bとカテーテル基端部分114bとカテーテル連結部分116bとを有している。
【0102】
カテーテル先端部分112bは、カテーテル本体110bの先端を含む部分であり、後述のコイル体120bを備えないことによって相対的に柔軟性が高くなっている部分である。カテーテル基端部分114bは、カテーテル本体110bの基端を含む部分であり、コイル体120bにおける後述の基端側コイル124bを備えることによって相対的に剛性が高くなっている部分である。カテーテル連結部分116bは、カテーテル200bの軸方向においてカテーテル先端部分112bとカテーテル基端部分114bとをつないでいる部分であり、コイル体120bにおける後述の連結側コイル126bを備えることによってカテーテル先端部分112bとカテーテル基端部分114bとの剛性差を抑制するための部分である。以下、具体的に説明する。
【0103】
コイル体120bは、基端側コイル124bと連結側コイル126bとを有している。基端側コイル124bは、上記第3実施形態のコイル体20bと略同一の構成である。基端側コイル124bを構成している素線122bの径は、カテーテル200bの軸方向の全長にわたって略同一である。すなわち、基端側コイル124bの曲げ剛性は、軸方向の全長にわたって略同一である。連結側コイル126bを構成している素線122bは、連結側コイル126b(コイル体120b)の先端に近づくほど連続的に細くなっている。すなわち、連結側コイル126bの曲げ剛性は、連結側コイル126bの先端に近づくほど低くなっている。なお、素線122bは、連結側コイル126bの先端に近づくほど段階的に細くなっていてもよい。基端側コイル124bの先端と連結側コイル126bの基端とは連続的かつ一体につながっている。
【0104】
カテーテル基端部分114bには、基端側コイル124bが配置されている。カテーテル連結部分116bには、連結側コイル126bが配置されている。
【0105】
カテーテル先端部分112bとカテーテル基端部分114bとカテーテル連結部分116bとにおける曲げ剛性の関係は、上記第5実施形態の規定曲げ剛性関係と同じである。
【0106】
本実施形態に係るカテーテル200bによれば、カテーテル200bの外径が全長にわたって同一である構成において、カテーテル200bのトルク伝達性を確保するとともに、カテーテル先端部分112bとカテーテル基端部分114bとの剛性差に起因するカテーテル200bのキンクの発生を抑制することができる。
【0107】
H.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0108】
上述の実施形態では、コイル体20,120,120a,120bは、複数本の素線22,122,122a,122bが巻回された筒状の部材であるが、コイル体20,120,120a,120bを、1本の素線22,122,122a,122bを螺旋状に巻回することにより中空円筒状に形成したコイル状の部材としてもよい。また、1本の素線22,122,122a,122bあるいは複数本の素線22,122,122a,122bを撚り合わせて得られる撚線を1本あるいは複数本巻回して得られる筒状の部材をコイル体20,120,120a,120bに用いてもよい。
【0109】
上記実施形態におけるカテーテル100,100a,100b,100c,200,200a,200bの構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態では、コイル体20,120,120a,120bと編組体30,130,130aと内側樹脂層40,140と外側樹脂層50,150と緩衝材60,60a,60bと中樹脂層70とは、いずれも、1ピースで形成されていたが、これに限らず、複数のピースにより構成されたものであってもよい。
【0110】
上記第4実施形態において中樹脂層70を設けてあり、上記第1~3実施形態においては、編組体30の隙間に内側樹脂層40を形成する樹脂を充填してある。これらの形態により、編組体30の隙間に充填される樹脂によって、編組体30が乱れることを防ぐことが可能となる。これらの形態に限られず、外側樹脂層50を形成する樹脂を編組体30の隙間に充填してもよい。
【0111】
上記第1~4実施形態における内側樹脂層40及び外側樹脂層50と第4実施形態における中樹脂層70との表面に他の層と接着性が高まるように表面処理を施してもよい。
【0112】
上記第1及び第6実施形態において、例えば、先端側同径部11A,111Aと連結部11C,111Cとの境界の位置P1は、第1の内周面13A,113Aと第3の内周面13C,113Cとの境界の位置P2よりもカテーテル100,200aの先端側に位置してもよいし、基端側に位置してもよい。また、基端側同径部11B,111Bと連結部11C,111Cとの境界の位置P3は、第2の内周面13B,113Bと第3の内周面13C,113Cとの境界の位置P4と同じ位置でもよいし、先端側に位置してもよい。
【0113】
上記第1~第4実施形態では、緩衝材60,60a,60bの軸方向視の形状は、環状であったが、これに限らず、編組体30の外周を部分的に被覆する構成であってもよい。また、緩衝材60,60a,60bの厚さは、全長にわたって略同一であってもよい。
【0114】
上記第1,第2および第4実施形態において、編組体30における縮径部31Cは、外径が先端側から基端側に近づくに連れて段階的に大きくなっている構成であってもよい。
【0115】
上記第6実施形態において、連結側コイル126aを備えず、コイル体120aを構成する素線122aが軸方向の全長にわたって略同一である構成でもよい。
【0116】
上記第5~第7実施形態では、連結側コイル126,126a,126bや連結側編組体134Cを備えることによって上記規定曲げ剛性関係を満たすように構成してあるが、内側樹脂層140及び外側樹脂層150を形成する樹脂材料のヤング率と、部材の断面形状と大きさとで定まる断面二次モーメント(断面形状と断面の大きさとの少なくとも一方)との少なくとも一方を異ならせることによって上記規定曲げ剛性関係を満たすようにしてもよい。
【0117】
上記実施形態のカテーテル100,100a,100b,100c,200,200a,200bにおける各部材の材料は、あくまで一例であり、種々変形可能である。
【符号の説明】
【0118】
10 :カテーテル本体(第1及び第2実施形態)
10b :カテーテル本体(第3実施形態)
10c :カテーテル本体(第4実施形態)
11A :先端側同径部(第1~第4実施形態)
11B :基端側同径部(第1~第4実施形態)
11C :連結部(第1~第4実施形態)
12 :先端部分(第1及び第2実施形態)
12b :先端部分(第3実施形態)
13A :第1の内周面(第1~第4実施形態)
13B :第2の内周面(第1~第4実施形態)
13C :第3の内周面(第1~第4実施形態)
14 :基端部分(第1及び第2実施形態)
14b :基端部分(第3実施形態)
18 :コネクタ(第1~第4実施形態)
19 :チップ(第1~第4実施形態)
20 :コイル体(第1~第4実施形態)
22 :素線(コイル体)(第1~第4実施形態)
30 :編組体(第1~第4実施形態)
30A :コイル外編組部(第1~第4実施形態)
30B :コイル内編組部(第1~第4実施形態)
31A :第1の同径部(第1~第4実施形態)
31B :第2の同径部(第1~第4実施形態)
31C :縮径部(第1~第4実施形態)
32 :素線(編組体)(第1~第4実施形態)
40 :内側樹脂層(第1~第3実施形態)
40c :内側樹脂層(第4実施形態)
50 :外側樹脂層(第1~第4実施形態)
60 :緩衝材(第1及び第4実施形態)
60a :緩衝材(第2実施形態)
60b :緩衝材(第3実施形態)
62 :肉薄部
62a :第1の緩衝材
63 :段差面
64 :肉厚部
64a :第2の緩衝材
65 :先端面
66 :延出部分
66a :第3の緩衝材
68a :延出部分
70 :中樹脂層
100 :カテーテル(第1実施形態)
100a:カテーテル(第2実施形態)
100b:カテーテル(第3実施形態)
100c:カテーテル(第4実施形態)
110 :カテーテル本体(第5実施形態)
110a:カテーテル本体(第6実施形態)
110b:カテーテル本体(第7実施形態)
111A:先端側同径部(第5及び第6実施形態)
111B:基端側同径部(第5及び第6実施形態)
111C:連結部(第5及び第6実施形態)
112 :カテーテル先端部分(第5実施形態)
112a:カテーテル先端部分(第6実施形態)
112b:カテーテル先端部分(第7実施形態)
113A:第1の内周面(第5及び第6実施形態)
113B:第2の内周面(第5及び第6実施形態)
113C:第3の内周面(第5及び第6実施形態)
114 :カテーテル基端部分(第5実施形態)
114a:カテーテル基端部分(第6実施形態)
114b:カテーテル基端部分(第7実施形態)
116 :カテーテル連結部分(第5実施形態)
116a:カテーテル連結部分(第6実施形態)
116b:カテーテル連結部分(第7実施形態)
118 :コネクタ(第5~第7実施形態)
119 :チップ(第5~第7実施形態)
120 :コイル体(第5実施形態)
120a:コイル体(第6実施形態)
120b:コイル体(第7実施形態)
122 :素線(コイル体)(第5実施形態)
122a:素線(コイル体)(第6実施形態)
122b:素線(コイル体)(第7実施形態)
124 :基端側コイル(第5実施形態)
124a:基端側コイル(第6実施形態)
124b:基端側コイル(第7実施形態)
126 :連結側コイル(第5実施形態)
126a:連結側コイル(第6実施形態)
126b:連結側コイル(第7実施形態)
130 :編組体(第5及び第7実施形態)
130a:編組体(第6実施形態)
130A:コイル外編組部(第5~第7実施形態)
130B:コイル内編組部(第5~第7実施形態)
131A:第1の同径部(第5及び第6実施形態)
131B:第2の同径部(第5及び第6実施形態)
131C:縮径部(第5及び第6実施形態)
132 :素線(編組体)(第5及び第7実施形態)
132a:素線(編組体)(第6実施形態)
134A:先端側編組体(第6実施形態)
134B:基端側編組体(第6実施形態)
134C:連結側編組体(第6実施形態)
140 :内側樹脂層(第5~第7実施形態)
150 :外側樹脂層(第5~第7実施形態)
200 :カテーテル(第5実施形態)
200a:カテーテル(第6実施形態)
200b:カテーテル(第7実施形態)
D1 :第1の外径
D2 :第2の外径
D3 :第3の外径
E1 :第1の内径
E2 :第2の内径
L1 :第1の厚さ
L2 :第2の厚さ