(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】人工膝関節全体の再置換のための患者固有のガイド
(51)【国際特許分類】
A61B 17/15 20060101AFI20230629BHJP
A61F 2/38 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
A61B17/15
A61F2/38
(21)【出願番号】P 2021559906
(86)(22)【出願日】2020-03-16
(86)【国際出願番号】 IB2020052371
(87)【国際公開番号】W WO2020208441
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2021-12-01
(31)【優先権主張番号】102019000005430
(32)【優先日】2019-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】512073792
【氏名又は名称】メダクタ・インターナショナル・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100159905
【氏名又は名称】宮垣 丈晴
(74)【代理人】
【識別番号】100142882
【氏名又は名称】合路 裕介
(74)【代理人】
【識別番号】100158610
【氏名又は名称】吉田 新吾
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】シッカルディ,フランチェスコ
(72)【発明者】
【氏名】ベルナルドーニ,マッシミリアーノ
(72)【発明者】
【氏名】パッリネッロ,アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】ガルガンティーニ,ジャンルーカ
【審査官】宮崎 敏長
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-528795(JP,A)
【文献】国際公開第2018/202271(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0236305(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/15
A61B 17/17
A61F 2/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工膝関節全体の再置換を適用するための患者固有の外科用ガイドであって、
大腿骨部分に取り付けられた大腿骨プロテーゼ(12)を有する大腿骨(11)の遠位端と排他的に結合するように構成された大腿骨部品(10)を備え、
前記大腿骨部品(10)は、
前記大腿骨(11)の前記遠位端に面するように構成された遠位部分(16)であって、前記大腿骨部品(10)が前記大腿骨(11)の前記遠位端に結合されるときに前記大腿骨プロテーゼ(12)の遠位領域(14)に面するように構成された少なくとも2つの遠位位置決め穴(28、29)を有する遠位部分(16)と、
前記遠位部分(16)に連続して延在する正面部分(15)であって、前記大腿骨(11)の皮質正面領域(18)において前記大腿骨部分に対して当接して作用するように構成された第1の当接領域(17)と、前記大腿骨部品(10)が前記大腿骨(11)の前記遠位端と結合されるときに前記大腿骨プロテーゼ(12)の正面領域(13)に面するように構成された第2の領域(19)とを有する正面部分(15)と、を備え、
前記正面部分(15)は、
前記第1の当接領域(17)で前記正面部分(15)を通って互いに平行に延びる少なくとも2つのガイド穴(20)と、
前記第2の領域(19)で前記正面部分(15)を通って延びる少なくとも2つの正面位置決め穴(21)と、を備える、外科用ガイド。
【請求項2】
前記大腿骨部品(10)はまた、前記大腿骨(11)のそれぞれ内側および外側上顆領域において前記大腿骨部分に対して当接して作用するように構成された第3の当接領域(24)を有する2つの側部当接部(23)を有する、請求項1に記載の外科用ガイド。
【請求項3】
前記第2の領域(19)は、前記大腿骨プロテーゼ(12)の前記正面領域(13)に対して当接して作用するように構成される、請求項1または2に記載の外科用ガイド。
【請求項4】
前記遠位部分(16)は、前記大腿骨プロテーゼ(12)の前記遠位領域(14)に対して当接して作用するように構成された少なくとも第4の当接領域(27)を有する、請求項1から3の
いずれか一項に記載の外科用ガイド。
【請求項5】
前記少なくとも2つのガイド穴(20)は、前記大腿骨(11)の前記皮質正面領域(18)を通して挿入することができるそれぞれの位置合わせピンにスムーズに係合するように構成される、請求項1から4の
いずれか一項に記載の外科用ガイド。
【請求項6】
前記少なくとも2つの正面位置決め穴(21)は、前記少なくとも2つのガイド穴(20)に平行なそれぞれの軸に従って方向付けられている、請求項1から5の
いずれか一項に記載の外科用ガイド。
【請求項7】
前記少なくとも2つの正面位置決め穴(21)は、前記大腿骨プロテーゼ(12)の取り外し後に前記大腿骨部品(10)が前記大腿骨(11)の前記遠位部分に結合されたときに前記大腿骨部分を通して挿入することができる穿孔ツールとスムーズに係合するように構成される、請求項1から6の
いずれか一項に記載の外科用ガイド。
【請求項8】
前記大腿骨
部品(10)が前記大腿骨(11)の前記遠位部分に結合されるとき、前記少なくとも2つの遠位位置決め穴(28、29)が前記大腿骨(11)の長手方向の展開方向に平行なそれぞれの軸に従って方向付けられる、請求項1から7の
いずれか一項に記載の外科用ガイド。
【請求項9】
前記少なくとも2つの遠位位置決め穴(28、29)が、前記大腿骨プロテーゼ(12)の取り外し後に前記大腿骨
部品(10)が前記大腿骨(11)の前記遠位端に結合されたときに前記大腿骨部分を通して挿入することができる穿孔ツールとスムーズに係合するように構成される、請求項1から8の
いずれか一項に記載の外科用ガイド。
【請求項10】
前記遠位部分(16)が、前記大腿骨(11)の長手方向軸に沿ってボアカッターの挿入を案内するように構成された大腿骨センタリング枠(31)を有する、請求項1から9の
いずれか一項に記載の外科用ガイド。
【請求項11】
前記大腿骨センタリング枠(31)が前記遠位部分(16)に直接形成されている、請求項10に記載の外科用ガイド。
【請求項12】
前記大腿骨センタリング枠(31)が、前記大腿骨
部品(10)に取り外し可能に係合することができる大腿骨インサート(32)に形成されている、請求項10に記載の外科用ガイド。
【請求項13】
前記遠位部分(16)が、少なくとも1つの大腿骨ガイドノッチ(30)によって前記正面部分(15)に対して少なくとも部分的に区切られて
いる、請求項1から12の
いずれか一項に記載の外科用ガイド。
【請求項14】
脛骨部分に取り付けられた補綴皿(102)を有する脛骨(101)の近位端と排他的に結合するように構成された脛骨部品(100)をさらに備え、
前記脛骨部品(100)は、
前記脛骨部分の皮質正面領域(108)に対して当接して作用するように構成された第1の接触領域(107)を有する正面部分(105)と、
前記正面部分(105)の延長上に片持ち梁方式で突出する近位部分(106)であって、前記補綴皿(102)の周縁(104)に囲まれている前記補綴皿(102)の作業面(103)に対して当接して作用するように構成された少なくとも1つの第2の接触領域(114)を有する近位部分(106)を備え、
前記正面部分(105)は、前記脛骨部品(100)が前記脛骨(101)の前記近位端と結合されるときに、前記脛骨(101)の前記皮質正面領域(108)に面するように構成された第1の少なくとも一対の脛骨位置決め穴(111)を有する、請求項1から13の
いずれか一項に記載の外科用ガイド。
【請求項15】
前記第1の接触領域(107)が、前記補綴皿(102)の前記周縁(104)に沿ってアーチ型の展開に従って延びる上部(107a)を有する、請求項14に記載の外科用ガイド。
【請求項16】
前記第1の接触領域(107)が、前記補綴皿(102)の前記周縁(104)から離れた下部(107b)を有する、請求項14または15に記載の外科用ガイド。
【請求項17】
前記第1の
少なくとも一対
の脛骨位置決め穴(111)に属する前記脛骨位置決め穴(111)が、前記第1の接触領域(107)の前記上部(107a)から離れた位置に配置されている、請求項15に記載の外科用ガイド。
【請求項18】
前記正面部分(105)が、アーチ型の展開に従って延び且つ前記補綴皿(102)の前記周縁(104)に沿って前記補綴皿(102)に対して当接して作用するように構成された追加の接触領域(110)を有する、請求項14から17の
いずれか一項に記載の外科用ガイド。
【請求項19】
前記正面部分(105)が、前記第1の
少なくとも一対
の脛骨位置決め穴(111)に属する前記脛骨位置決め穴(111)の相互アラインメントの第1の方向(D1)に平行な方向(D2)に沿ってそれぞれ位置合わせされた第2の少なくとも一対の脛骨位置決め穴(112a、112b)を有する、請求項14から18の
いずれか一項に記載の外科用ガイド。
【請求項20】
前記正面部分(105)はまた、前記脛骨位置決め穴に対して斜めに方向付けられ且つ前記第1の接触領域(107)の前記上部(107a)から離れた位置において、前記脛骨(101)の前記皮質正面領域(108)に面するように構成された少なくとも一対の固定穴(113)を有する、請求項15に記載の外科用ガイド。
【請求項21】
前記第1の接触領域(107)または前記第2の接触領域(114)の少なくとも1つが、前記補綴皿(102)の前記周縁(104)に沿って前記脛骨(101)の長手方向軸(X101)の周りに90°を超える弧を描く、請求項14から20の
いずれか一項に記載の外科用ガイド。
【請求項22】
前記近位部分(106)が、前記補綴皿(102)の前記作業面(103)に突出し且つ前記補綴皿
(102)の前記周縁(104)に平行に延びる端縁(116)を有する、請求項14から21の
いずれか一項に記載の外科用ガイド。
【請求項23】
前記第2の接触領域(114)は、前記補綴皿(102)の前記周縁(104)に沿って延びる、請求項14から22の
いずれか一項に記載の外科用ガイド。
【請求項24】
前記正面部分(105)が、前記補綴皿(102)の前記作業面(103)に突出し且つ前記第2の接触領域(114)で前記作業面
(103)に対して作用するように構成されたそれぞれの末端部分を支持する2つのアーム(117)を有する、請求項14から23の
いずれか一項に記載の外科用ガイド。
【請求項25】
前記第2の接触領域(114)は、前記第1の接触領域(107)と連続して、前記2つのアーム(117)の少なくとも1つの展開全体に沿って延びる、請求項
24に記載の外科用ガイド。
【請求項26】
前記脛骨部品(100)の前記近位部分(106)が、前記脛骨(101)の長手方向軸に沿ってボアカッターの挿入を案内するように構成された脛骨センタリング枠(118)を有する、請求項14から25の
いずれか一項に記載の外科用ガイド。
【請求項27】
前記脛骨センタリング枠(118)が前記近位部分(106)に直接形成されている、請求項26に記載の外科用ガイド。
【請求項28】
前記脛骨センタリング枠(118)が、前記脛骨部品(100)と取り外し可能に係合することができる脛骨インサート(119)に形成されている、請求項26に記載の外科用ガイド。
【請求項29】
前記第1の接触領域(107)が、前記補綴皿(102)の前記周縁(104)から離れた下部(107b)を有し、
前記第1の接触領域(107)の前記上部(107a)および前記下部(107b)が、前記正面部分(105)に形成された少なくとも1つの脛骨ガイドノッチ(109)によって、互いに少なくとも部分的に分離されている、請求項
15に記載の外科用ガイド。
【請求項30】
前記少なくとも1つの大腿骨ガイドノッチ(30)は、前記大腿骨(11)の長手方向の展開に実質的に直交する平面上に形成されている、請求項13に記載の外科用ガイド。
【請求項31】
前記追加の接触領域(110)は、前記第1の接触領域(107)と連続して延びる、請求項18に記載の外科用ガイド。
【請求項32】
前記第1の接触領域(107)が、前記補綴皿(102)の前記周縁(104)から離れた下部(107b)を有し、前記少なくとも一対の固定穴(113)は、前記第1の接触領域(107)の前記上部(107a)から離れた位置において、前記第1の接触領域(107)の前記下部(107b)で、前記脛骨(101)の前記皮質正面領域(108)に面するように構成されている、請求項20に記載の外科用ガイド。
【請求項33】
前記少なくとも1つの脛骨ガイドノッチ(109)は、前記補綴皿(102)の前記作業面(103)に平行な平面に従って、前記正面部分(105)に形成されている、請求項29に記載の外科用ガイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工膝関節全体の再置換(a total prosthetic knee revision)を適用するための患者固有の外科用ガイドを作り出すための手順に関する。本発明はまた、上記の手順を介して得ることができる外科用ガイドに関し、これは、人工膝関節全体の再置換を実施するための方法において都合よく使用することができる。
【背景技術】
【0002】
EP2739216 B1は、大腿骨端の遠位端に排他的に結合される第1の部品および脛骨端の近位端に結合される第2の部品を備える人工膝関節(a knee prosthesis)を移植するための外科用ガイドを記載している。プロテーゼの取り付けには術前計画が含まれ、術前計画中に、典型的にはコンピュータ断層撮影法(CT)または磁気共鳴画像法(MRI)によって、患者の大腿骨の遠位端と脛骨の近位端の解剖学的構造が検出される。移植されるプロテーゼが作り出され、外科用ガイドおよび/または患者へのそれらの取り付けに特に使用される他の器具が、検出された解剖学的構造に基づいて作り出される。
【0003】
外科用ガイドは、膝の遠位端の内部構造に適合する内部構造に従って作り出されており、その結果、一意の且つ所定の位置に従って、骨端に結合されるのに適している。骨端への外科用ガイドの配置の後、外科用ガイドに配置された対応するガイド穴を通して挿入できる一連のピンにより、ガイドを骨端に固定することができる。したがって、大腿骨端の構造を取り付けられるプロテーゼの構造に適合させるために、必要な切除を正しく実行することができる。
【0004】
従来技術では、従来型の金属器具を使用して人工膝関節全置換術のためにプロテーゼを交換する場合、すでに本来の位置にあるプロテーゼを取り外し、特別な穿孔ビットを使用して大腿骨管および脛骨管が開かれる。次に、大腿骨と脛骨の髄内管の仕上げは、前のプロテーゼと置き換えるために移植する必要がある新しいプロテーゼに結合される大腿骨/脛骨ステムのサイズに応じて特別に選択された長さおよび直径のカッターを使用して実行される。新しい大腿骨プロテーゼおよび/または脛骨プロテーゼを収容することを目的とした骨部分を再形成するために、大腿骨の遠位端および/または脛骨の近位端に追加の作業が実行される。
【0005】
術前計画段階での患者のプロテーゼの存在は、新しい交換用プロテーゼを提供するべく骨部分の準備をするために、骨部分の処理のために第1の移植の実行に使用された同じ手術手順をとる可能性を除外する。実際、骨部分を処理するためにプロテーゼを取り外す必要があると、コンピュータ断層撮影法または磁気共鳴画像法を介して検出できる幾何学的基準が失われる。
【0006】
その結果、インプラントの最終的な位置決めと展開ステムの髄内管の仕上げ方向とをガイドする、遠位大腿骨の切断および近位脛骨の切断の冠状面と矢状面の傾斜を計画することはできない。骨切除の傾きと管の仕上げの方向は、外科医の経験とスキルに基づいて、手術中に外科医が手動で規定する必要がある。
【0007】
髄内管を仕上げる正しい方向がすぐに特定されない場合、髄内管内にステムを誤って配置するリスクがある。これは、ステムと皮質骨との間に干渉を引き起こし、患者にとっての痛み、大腿骨の結合のリスク、および/または大腿骨部品および/または脛骨部品の配置の困難をもたらす可能性がある。
【0008】
WO2018/202271およびUS2017/0007331 A1は、人工膝関節全置換術を適用するための患者固有の方法および関連するツールを提案している。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、以前に取り付けられたものに取って代わる新しいプロテーゼを収容することを意図した骨部分をより正確且つ信頼できる方法で再構築することを可能にするツールによって、従来技術の限界を克服することである。
【0010】
特に、以前に移植された一次プロテーゼが存在するにもかかわらず、切断ガイドを一意且つ正確に再配置して骨端の切除を再調整できるツールが提供される。
【0011】
第1の態様では、本発明は、請求項1および/または後続する1つまたは複数の請求項による、人工膝関節全体の再置換を適用するための患者固有の外科用ガイドに関する。
【0012】
追加の発明の態様では、外科用ガイドを作り出すための優先的な方法は、患者の大腿骨の遠位端であって、大腿骨プロテーゼを有する遠位端の解剖学的構造を検出することと、検出された解剖学的構造に基づいて、請求項1および/または後続する1つまたは複数の請求項による外科用ガイドを作り出すことと、を含む。
【0013】
本発明の追加の態様によれば、本発明による外科用ガイドは、人工膝関節全体の再置換を適用する方法において便利に使用することができ、
請求項1および/または後続する1つまたは複数の請求項に記載の外科用ガイドの大腿骨部品を、患者の大腿骨の遠位端に対して排他的に結合することと、
少なくとも2つの位置合わせピンを大腿骨部品のガイド穴に挿入して大腿骨の皮質正面領域(front cortical region)に通すことと、
大腿骨の遠位端から大腿骨部品を取り外すことと、
大腿骨の遠位端から大腿骨プロテーゼを取り外すことと、
大腿骨部品を大腿骨の遠位端に排他的に再結合するために、位置合わせピンに沿って前記ガイド穴をはめ込むことと、
大腿骨部品の遠位位置決め穴および正面位置決め穴を通して案内される穿孔ツールを使用して、大腿骨部分を通る取り付け穴を準備することと、
大腿骨の遠位端から大腿骨部品を取り外すことと、
正面および遠位の位置決め穴にそれぞれ正面および遠位の位置決めピンをはめ込むことと、
正面位置決めピンに遠位切断ブロックを係合することと、
遠位切断ブロックが正面位置決めピンに係合している間に遠位大腿骨切除を行うことと、
遠位位置決めピンに正面切断ブロックを係合することと、
正面切断ブロックが遠位位置決めピンに係合している間に大腿骨部分の正面切除を行うことと、
正面および遠位の位置決めピンを取り外すことと、
再置換大腿骨プロテーゼを大腿骨の遠位端に配置することと、を含む。
【0014】
再置換大腿骨プロテーゼの移植の前または後に、以下の動作は、便利なことに、大腿骨部品によって完了することができる。すなわち、
請求項14および/または後続する1つまたは複数の請求項に記載の外科用ガイドの脛骨部品を患者の脛骨の近位端に対して排他的に結合することと、
少なくとも2つの脛骨位置合わせピンを脛骨部品の脛骨位置決め穴に挿入して脛骨の皮質正面領域に通すことと、
脛骨の近位端から脛骨部品を取り外すことと、
脛骨の近位端から脛骨プロテーゼを取り外すことと、
脛骨位置決めピンに脛骨切断ブロックを係合することと、
脛骨部品が脛骨位置決めピンに係合している間に脛骨部分の近位切除を行うことと、
脛骨位置合わせピンを取り外すことと、
再置換脛骨プロテーゼを脛骨の近位端に配置することと、を含む。
【0015】
上記の本発明のステップのうちの少なくとも1つにおいて、本発明の1つの好ましい実施形態はまた、以下の特徴のうちの1つまたは複数を含み得る。
【0016】
好ましくは、大腿骨部品はまた、大腿骨の内側および外側上顆領域のそれぞれにおいて大腿骨部分に当接して作用するように構成された第3の当接領域を持つ2つの側部当接部を有する。
【0017】
好ましくは、これらの側部当接部は、第3の当接領域を通って延びる対応する補助位置決め穴を有する。
【0018】
好ましくは、これらの側部当接部は、遠位部分から突き出ている対応するブラケットによって端部で支えられている。
【0019】
好ましくは、第2の当接領域としても特定され得る第2の領域は、大腿骨プロテーゼの正面領域に対して当接して作用するように構成される。
【0020】
好ましくは、遠位部分は、大腿骨プロテーゼの遠位領域に対して当接して作用するように構成された少なくとも第4の当接領域を有する。
【0021】
好ましくは、第4の当接領域は、第1の当接領域に対して実質的に直交している。
【0022】
好ましくは、第1の当接領域および第2の領域は、それぞれ途切れなく延びる。
【0023】
好ましくは、近位部分は、遠位部分に対して横断する向きを有する。
【0024】
好ましくは、ガイド穴は、大腿骨の皮質正面領域を通して挿入することができる対応する位置合わせピンとスムーズに係合するように構成される。
【0025】
好ましくは、ガイド穴はそれぞれ、大腿骨プロテーゼの周縁から離れた位置で大腿骨部分を通して対応する位置合わせピンをガイドするように構成される。
【0026】
好ましくは、ガイド穴は互いに平行である。
【0027】
好ましくは、正面位置決め穴はそれぞれ、少なくとも1つのガイド穴と遠位部分との間に配置される。
【0028】
好ましくは、正面位置決め穴は、ガイド穴に実質的に平行なそれぞれの軸に方向付けられる。
【0029】
好ましくは、大腿骨部品が大腿骨の遠位端に結合される場合に、正面位置決め穴は、大腿骨の長手方向の展開方向に実質的に垂直なそれぞれの軸に従って方向付けられる。
【0030】
好ましくは、正面位置決め穴は、穿孔ツールとスムーズに係合するように構成されており、穿孔ツールは、大腿骨部品が大腿骨の遠位端に結合されるときに大腿骨部分を通して挿入されて、大腿骨プロテーゼの取り外し後、対応する正面位置決めピンを収容するように配置される穴を大腿骨に開けることができる。
【0031】
好ましくは、正面位置決めピンは、大腿骨部品の取り外し後に、正面位置決めピンに係合される取り外し可能な遠位切断ブロックに配置された2つの第1のセンタリング穴にスムーズに係合するように構成される。
【0032】
好ましくは、遠位位置決め穴は、大腿骨部品が大腿骨の遠位端に結合される場合に、大腿骨の長手方向の展開方向に実質的に平行なそれぞれの軸に従って方向付けられる。
【0033】
好ましくは、遠位位置決め穴は、穿孔ツールとスムーズに係合するように構成されており、穿孔ツールは、大腿骨部品が大腿骨の遠位端に結合されるときに大腿骨部分を通して挿入されて、大腿骨プロテーゼの取り外し後、対応する正面位置決めピンを収容するように配置される穴を大腿骨に開けることができる。
【0034】
好ましくは、遠位位置決めピンは、大腿骨部品の取り外し後に、遠位位置決めピンに係合される取り外し可能な正面切断ブロックに配置された2つの第2のセンタリング穴にスムーズに係合するように構成される。
【0035】
好ましくは、遠位部分は、大腿骨の長手方向軸に沿ってボアカッターの挿入を案内するように構成された大腿骨センタリング枠を有する。
【0036】
好ましくは、大腿骨センタリング枠は、遠位部分に直接形成されている。
【0037】
好ましくは、大腿骨センタリング枠は、大腿骨部品に取り外し可能に係合することができる大腿骨インサートに形成される。
【0038】
好ましくは、大腿骨部品は、大腿骨の長手方向の展開に対する大腿骨部品の向きを示すように構成された大腿骨基準ロッドと係合するための少なくとも1つの取り付けシートを有する。
【0039】
好ましくは、遠位部分は、好ましくは大腿骨の長手方向の展開に対して実質的に直交する平面上に形成される少なくとも1つの大腿骨ガイドノッチによって、正面部分に対して少なくとも部分的に範囲を定められる。
【0040】
好ましくは、外科用ガイドはまた、脛骨部分に取り付けられた補綴皿を有する脛骨の近位端と排他的に結合するように構成された脛骨部品を備え、脛骨部品は、
脛骨部分の皮質正面領域に対して当接して作用するように構成された第1の接触領域を有する正面部分と、
正面部分の延長(continuation)上に片持ち梁方式で突出し且つ補綴皿自体の周縁に囲まれた補綴皿の作業面に対して当接して作用するように構成された少なくとも1つの第2の接触領域を有する近位部分と、を備え、
正面部分は、脛骨部品が脛骨の近位端と結合される場合に、脛骨の皮質正面領域に面するように構成された第1の少なくとも一対の脛骨位置決め穴を有する。
【0041】
好ましくは、前記第1の接触領域は、補綴皿の周縁に沿ってアーチ型の展開に従って延びる上部を有する。
【0042】
好ましくは、前記第1の接触領域は、補綴皿の周縁から離れた下部を有する。
【0043】
好ましくは、第1の対に属する脛骨位置決め穴は、第1の接触領域の上部から離れて配置される。
【0044】
好ましくは、第1の対に属する脛骨位置決め穴は、第1の接触領域から離れた位置に配置される。
【0045】
好ましくは、正面部分は、アーチ型の展開で延在し且つ補綴皿に対してその周縁に沿って当接して作用するように構成された追加の接触領域を有する。
【0046】
好ましくは、追加の接触領域および第1の接触領域は、それぞれ連続して延びる。
【0047】
好ましくは、正面部分は、第1の対に属する脛骨位置決め穴の相互アラインメントの第1の方向に平行な方向に沿ってそれぞれ位置合わせされた、第2の少なくとも一対の脛骨位置決め穴を有する。
【0048】
好ましくは、正面部分は、第1の対に属する脛骨位置決め穴の相互アラインメントの方向に平行な方向に沿ってそれぞれ位置合わせされた、第2の少なくとも二対の脛骨位置決め穴を有する。
【0049】
好ましくは、第2の対に属する脛骨位置決め穴の相互アラインメントの方向と第1の接触領域との間で検出できる第2の距離は、同じ第1の接触領域と第1の対に属する脛骨位置決め穴の相互アラインメントの方向との間で検出できる第1の距離よりも大きい。
【0050】
好ましくは、正面部分はまた、脛骨位置決め穴に対して斜めに方向付けられ且つ第1の接触領域の上部から離れた位置で脛骨の皮質正面領域に面するように構成された少なくとも一対の固定穴を有する。
【0051】
好ましくは、固定穴は、第1の接触領域の下部に配置される。
【0052】
好ましくは、第1および第2の接触領域の少なくとも1つは、補綴皿の周縁に沿って脛骨の長手方向の展開軸の周りに90°を超える弧を描く。
【0053】
好ましくは、近位部分は、補綴皿の作業面上に突出し且つ補綴皿の周縁に平行に延びる端縁を有する。
【0054】
好ましくは、第2の接触領域は、補綴皿の周縁に沿って延びる。
【0055】
好ましくは、正面部分は、補綴皿の作業面に突出し且つ第2の接触領域で作業面自体に対して作用するように構成されたそれぞれの末端部分を支える2つのアームを有する。
【0056】
好ましくは、第2の接触領域は、第1の接触領域と連続して、前記2つのアームの少なくとも1つの展開全体に沿って延びる。
【0057】
好ましくは、脛骨部品の近位部分は、脛骨の長手方向軸に沿ってボアカッターの挿入を案内するように構成された脛骨センタリング枠を有する。
【0058】
好ましくは、脛骨センタリング枠は、近位部分に直接形成されている。
【0059】
好ましくは、脛骨センタリング枠は、脛骨部品に取り外し可能に係合することができる脛骨インサートに形成されている。
【0060】
好ましくは、脛骨部品は、脛骨の長手方向の展開に対する脛骨部品の向きを示すように構成された脛骨基準ロッドを取り付けるための少なくとも1つの取り付けシートを支持する。
【0061】
好ましくは、第1の接触領域の上部および下部は、正面部分に、好ましくは、脛骨皿(tibial dish)の作業面に実質的に平行な平面上に形成された少なくとも1つの脛骨ガイドノッチによって、少なくとも部分的に互いに分離されている。
【0062】
追加の特徴および利点は、本発明による人工膝関節全体の再置換を適用するための患者固有の外科用ガイドの好ましいが排他的ではない実施形態の詳細な説明からより明確に現れるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0063】
この明細書は、本発明の目的を限定するのではなく説明するために提供される添付の図面を参照して以下に説明される。
【
図1】一次プロテーゼを有する大腿骨の遠位端に適用された、本発明による外科用ガイドの大腿骨部品を正面斜視図で示す。
【
図3】大腿骨と一次プロテーゼがない場合の大腿骨部品を強調した、
図1とは反対側からの斜視図を示す。
【
図4】
図3と同様の斜視図であり、大腿骨部分がない場合の、一次プロテーゼに対する大腿骨部品の位置も示されている。
【
図5】大腿骨の遠位端に適用された大腿骨部品の正面図である。
【
図7】一次脛骨プロテーゼを有する脛骨の近位端に適用された、本発明による外科用ガイドの脛骨部品の第1の実施形態を正面斜視図で示す。
【
図10】
図7とは反対側からの脛骨部品の斜視図を示す。
【
図11】脛骨と一次脛骨プロテーゼがない場合の脛骨部品を強調した、
図10とは異なる角度からの斜視図である。
【
図12】
図11と同様の斜視図であり、脛骨部分がない場合の、一次脛骨プロテーゼに対する脛骨部品の位置も示されている。
【
図13】一次脛骨プロテーゼを有する脛骨の近位端に適用された、本発明による外科用ガイドの脛骨部品の第2の実施形態を正面斜視図で示す。
【
図15】脛骨と一次脛骨プロテーゼがない場合の脛骨部品を強調した、
図14とは異なる角度からの斜視図である。
【
図16】
図14と同様の斜視図であり、脛骨部分がない場合の、一次脛骨プロテーゼに対する脛骨部品の位置も示されている。
【発明を実施するための形態】
【0064】
本発明によれば、人工膝関節全体の再置換を適用するために切除ガイドを配置するための患者固有の外科用ガイドは、本質的に、大腿骨部品(全体として、
図1から6に参照番号10で示される)および/または脛骨部品(全体として、
図7-16に参照番号100で示される)を備える。
【0065】
この明細書の目的に関して、「患者固有」という用語は、患者の骨の解剖学的構造の事前の調査に基づいて、特定の患者に使用するために特別に製造された部品または機器を指す。骨の解剖学的構造は患者ごとに異なるので、特定の患者向けに製造された患者固有の外科用ガイドを使用して別の患者に対して手術を行うことはできない。
【0066】
大腿骨部品10は、大腿骨11の遠位端と排他的に結合するように構成され、大腿骨11は、大腿骨部分に取り付けられた、一次大腿骨プロテーゼとも呼ばれる大腿骨プロテーゼ12を有する。脛骨部品100は、脛骨101の近位端に結合されるように排他的に構成され、脛骨101は、脛骨部分に取り付けられた、一次脛骨プロテーゼとも呼ばれる脛骨プロテーゼ112を有する。
【0067】
この明細書の目的に関して、「排他的に」という表現は、大腿骨部品10または脛骨部品100と患者の骨および/またはプロテーゼ構造との間に唯一の相互の幾何学的配置(mutual orientation)が存在する機械的結合を指し、これらの要素が所定の方向に接合されるときに相互結合を可能にする。結合が行われると、相互形状結合による機械的結合により、大腿骨部品10または脛骨部品100および対応する骨構造が、相互結合方向の周りにまたは横方向に向けられた応力に関して互いに対して恒久的に固定されたままであることが保証される。
【0068】
一次大腿骨プロテーゼ12および一次脛骨プロテーゼ112は、以前の手術で患者に移植されており、ここで説明する例では、例えば、長期間の使用による摩耗または発生し得るその他の問題によって交換される必要がある。
【0069】
一次大腿骨プロテーゼ12では、大腿骨11に対して正面を向いている正面領域13、および大腿骨11の長手方向の展開軸X11に沿って大腿骨11から見て外方に向く遠位領域14を特定することができる。正面領域13および遠位領域14は、互いに実質的に垂直に方向付けられており、
図2により良く示されるようにアーチ型のプロファイルに従って相互に接続されている。一次脛骨プロテーゼ112は、脛骨101の骨部分に取り付けられた補綴皿(prosthetic dish)102であって、動作状態下で大腿骨11に面して、脛骨インサート(図示せず)の挿入後、大腿骨プロテーゼ12のためのスライド式当接シートを提供する作業面103を有する補綴皿102によって実質的に形成される。作業面103の外周は、補綴皿102の外形を描く周縁104によって範囲を定められている。
【0070】
大腿骨部品10は、本質的に、正面部分15および遠位部分16を有し、好ましくは、これらは互いに横方向に方向付けられている。
図2により良く示されるように、正面部分15および遠位部分16は、好ましくは大腿骨11の長手方向軸を含む平面上に全体的なアーチ型構造を大腿骨部品10に与えるように、実質的に互いに連続して広がる。
【0071】
正面部分15は、大腿骨11の皮質正面領域18において大腿骨部分に対して当接して作用するように構成された第1の当接領域17と、大腿骨部品10が大腿骨11の遠位端と結合される場合に、大腿骨プロテーゼ12の正面領域13に、好ましくは当接して、面するように構成された第2の領域19とを有する。
図3に良く見られるように、第1の当接領域17および第2の領域19は、それぞれ途切れなく延びることができる。
【0072】
正面部分15には、2つ以上のガイド穴20(図示の例では3つ)が提供され、平行軸に従ってそれぞれ方向付けられている。これらは、第1の当接領域17につながるように、正面部分自体を貫通する。
【0073】
さらに、少なくとも2つの正面位置決め穴21が、第2の領域19につながるように、正面部分15を通じて延びる。少なくとも2つの正面位置決め穴21は、それぞれ、少なくとも1つのガイド穴20と遠位部分16との間に配置され、好ましくは、ガイド穴20に実質的に平行なそれぞれの軸に従って方向付けられる。好ましくは、正面位置決め穴21は、大腿骨部品10が大腿骨11の遠位端に結合される場合、大腿骨11の長手方向の展開方向に、すなわち長手方向軸X11に、実質的に垂直なそれぞれの軸に従って方向付けられる。
【0074】
好ましくは、大腿骨11の長手方向の展開に対する大腿骨部品10の向きを示すように構成された大腿骨基準ロッド(図示せず)を係合するための1つまたは複数の取り付けシート22が、好ましくは正面部分15に提供される。
【0075】
好ましくは、大腿骨部品10はまた、大腿骨11の内側および外側上顆領域のそれぞれにおいて大腿骨部分に対して当接して作用するように構成された第3の当接領域24を有する2つの側部当接部23を有する。より具体的には、2つの側部当接部23は、遠位部分16の両側からそれぞれ突出する対応するブラケット25によって端部で支えられ、好ましくはそれぞれ収束軸に従って、第3の当接領域24を通って延びる対応する補助位置決め穴26を有する。
【0076】
遠位部分16は、大腿骨11の遠位端に面するように構成され、好ましくは、少なくとも第4の当接領域27を有し、第4の当接領域27は、好ましくは、第1の当接領域17に対して実質的に直交する方向に配置され、大腿骨プロテーゼ12の遠位領域14に対して当接して作用するように構成される。好ましくは、第4の当接領域27は、対応する顆帯に配置される2つの部分に分割されている。
【0077】
遠位部分16は、少なくとも2つの遠位位置決め穴28、29を有し、少なくとも2つの遠位位置決め穴28、29は、好ましくは大腿骨11の長手方向の展開方向に実質的に平行なそれぞれの軸に沿って方向付けられている。図示の例では、正面部分15から異なる距離に配置された、第1の一対の遠位位置決め穴28および第2の一対の遠位位置決め穴28が提供されている。大腿骨部品10が大腿骨11の遠位端に結合されるとき、遠位位置決め穴28、29は、大腿骨プロテーゼ12の遠位領域14に面する。
【0078】
大腿骨11の長手方向の展開に対して直交する実質的に平行な平面上に形成された1つまたは複数の大腿骨ガイドノッチ30は、遠位部分16を正面部分15から少なくとも部分的に区切る。大腿骨ガイドノッチ30は、有利には、切断ツールをガイドするために、および/または既知のため図示されていない1つまたは複数の基準プレートを係合するために使用できる。1つまたは複数の基準プレートは、平面の位置と向きであって、それに従って大腿骨に対して遠位切除カット(distal resection cut)を実行する必要がある平面の位置と向きを外科医が強調できるようにする。
【0079】
遠位部分16は、大腿骨11の長手方向軸に沿ってボアカッターの挿入を案内するように構成された例えば穴または円形プロファイルのスリーブの形態の大腿骨センタリング枠(femoral centring housing)31を有し得る。
【0080】
図6において破線で概略的に示されているように、大腿骨センタリング枠31は、遠位部分16に直接形成することができ、または大腿骨部品10に取り外し可能に係合することができる大腿骨インサート32によって備えることができる。
【0081】
脛骨部品100において、正面部分105および正面部分105の延長上に片持ち梁方式で突出している近位部分106を特定することができる。
【0082】
正面部分105は、脛骨部品100が脛骨の近位端と結合されるときに、脛骨部分101の皮質正面領域108に対して当接して作用するように構成された第1の接触領域107を有する。好ましくは、
図12および16に良く示されるように、第1の接触領域107において、補綴皿102の隣接する周縁104の展開に平行にアーチ型の展開で延びる上部107a、および補綴皿102の周縁104から離れた下部107bを特定することができる。
【0083】
少なくとも上部107aにおいて、第1の接触領域107は、補綴皿102の周縁104に沿って脛骨の長手方向の展開軸の周りに90°を超える弧を描くのに十分な展開を有する。添付の図では、脛骨101の長手方向の展開は、長手方向軸X101によって表されている。
【0084】
脛骨皿(tibial dish)102の作業面103に実質的に平行な平面上に、正面部分105に形成された1つまたは複数の脛骨ガイドノッチ109は、少なくとも部分的に、第1の接触領域107の下部107bから上部107aを分離する。脛骨ガイドノッチ190は、有利には、切断ツールを案内するために、および/または既知のために図示されていない1つまたは複数の基準プレートを係合するために使用することができる。1つまたは複数の基準プレートは、平面の位置と向きであって、それに従って大腿骨部分に対して正面切除カットを実行する必要がある平面の位置と向きを外科医が強調できるようにする。
【0085】
好ましくは、正面部分105はまた、アーチ型の展開に従って、第1の接触領域107と相互に連続して延びる追加の接触領域110(
図11および15)を有する。追加の接触領域110は、おおよそ、作業面103の横たわっている平面と補綴皿の下端を含む平面との間の境界領域において、皿の周縁104に沿って補綴皿102に対して直接当接して作用するように構成される。
【0086】
脛骨部品100が脛骨の近位端と結合されるときに脛骨101の皮質正面領域108に面するように構成された、第1の少なくとも一対の脛骨位置決め穴111が、正面部分105に提供される。
【0087】
脛骨位置決め穴111は、好ましくは、第1の接触領域107から、または少なくとも第1の接触領域107の上部107aから離れた位置に配置される。より具体的には、第1の対に属する脛骨位置決め穴111の幾何学的軸は、脛骨皿102の作業面103の横たわっている平面に実質的に平行な第1の位置合わせ方向D1に沿って、第1の接触領域107から第1の距離L1にそれぞれ位置合わせされる。
【0088】
また、第2の少なくとも一対の脛骨位置決め穴112a、112bであって、第1の位置合わせ方向D1に平行な第2の位置合わせ方向D2に沿って、それらの幾何学的軸とそれぞれ位置合わせされた少なくとも第2の一対の脛骨位置決め穴112a、112bがあってもよい。好ましい実施形態では、互いに平行であり且つ第2の位置合わせ方向D2に沿って位置合わせされた、それぞれ112aおよび112bで示される第2の二対の脛骨位置決め穴が存在する。第2の位置合わせ方向D2は、第1の接触領域107に対して、第1の距離L1よりも大きい第2の距離L2に配置されている。
【0089】
脛骨部品100の正面部分105はまた、脛骨位置決め穴111、112a、112bに対して斜めに方向付けられ且つ第1の接触領域107の上部107aから間隔を置いた位置において脛骨101の皮質正面領域108に面するように構成された少なくとも一対の固定穴113を有する。
【0090】
好ましくは、
図11、12、15、および16に見られるように、少なくとも一対の固定穴113は、第1の接触領域107の下部107bに配置される。
【0091】
脛骨部品100はまた、好ましくは正面部分105に、脛骨の長手方向の展開に対して脛骨部品100の向きを示すように構成された脛骨基準ロッド(図示せず)を取り付けるための少なくとも1つの係合シート114を有する。
【0092】
図7から12および13から16にそれぞれ表される実施形態において、近位部分106は、それぞれ異なる構造を有するが、両方の場合において、補綴皿102の周縁104が外接する作業面103に対して当接して作用するように構成された少なくとも1つの第2の接触領域115を備える。
【0093】
より具体的には、
図7から12の実施形態では、近位部分106は、補綴皿102の作業面103上に突出し且つ補綴皿102自体の周縁104と平行に延びる末端縁116を有する。この場合、第2の接触領域115は、好ましくは脛骨の長手方向の展開軸の周りに90°を超える弧を描くのに十分な広さであり、補綴皿102の周辺の展開に沿って、補綴皿102の周縁104に対して実質的に延在する。この構造は、「固定インサート」タイプの脛骨プロテーゼへの使用に特に適している。このタイプのプロテーゼでは、固定インサート(図示せず)を提供することができ、これは、作業面103上で滑る可能性なしに、脛骨皿102と動作状態の大腿骨プロテーゼ12との間に配置されることになる。
【0094】
図13から16に示される実施形態では、第2の接触領域115は、補綴皿102の作業面103上に突出する2つのアーム117に形成されている。2つのアーム117は、第2の接触領域115で作業面103自体に対して当接して作用するように構成された対応する末端部分を有する。好ましくは、
図15に示されるように、2つのアーム117の少なくとも1つにおいて、第2の接触領域115は、アーム自体の展開全体を占め、第1の接触領域107と連続的に接続している。
【0095】
この構造は、「可動インサート」タイプの脛骨プロテーゼへの使用に特に適している。このタイプのプロテーゼでは、可動インサート(図示せず)が提供され、これは、脛骨皿102と動作状態の大腿骨プロテーゼ12との間に配置されることになり、作業面103上でいくらか自由にスライドする。
【0096】
近位部分106は、脛骨101の長手方向軸X101に沿ってボアカッターの挿入を案内するように構成された例えば穴または円形プロファイルのスリーブの形態の脛骨センタリング枠118を有してもよい。
【0097】
図10に破線で示されるように、脛骨センタリング枠118は、近位部分106に直接形成することができ、または脛骨部品100に取り外し可能に係合することができる脛骨インサート119によって備えることができる。
【0098】
本発明に従ってプロテーゼ再置換手術を実施するには、上記のように構成された患者固有の外科用ガイドが、術前計画段階で製造される必要がある。より具体的には、外科用ガイド10、100の製造は、大腿骨11の遠位端および脛骨101の近位端の解剖学的構造を検出するために、患者がX線撮影法、コンピュータ断層撮影法、磁気共鳴画像法、または別の適切な検出方法を受けることを必要とする。この検査の結果、以前に患者に移植された一次大腿骨プロテーゼ12および一次脛骨プロテーゼ102を含む、大腿骨11の遠位端および脛骨101の近位端の解剖学的構造を表す数学的モデルが、電子画像処理および/または他の取得データによって得られることになる。次に、数学的モデルを使用して、機械的プロセスおよび/または3D印刷プロセスによって、大腿骨部品10の当接領域17、19、24、27および脛骨部品100の接触領域107、110、115をモデル化して、これらの領域が接触しなければならない骨および/またはプロテーゼ部分の形状を反対形状で(in negative)再現するようにこれらの領域が適合されている患者固有の外科用ガイドを得る。
【0099】
大腿骨部品10および脛骨部品100が生成されると、外科医は、手術される患者の膝が露出するまで、患者の表皮および軟組織を切断する。
【0100】
大腿骨部品10は、大腿骨プロテーゼ12を有する大腿骨11の遠位端に配置される。この状況において、大腿骨プロテーゼ12と骨部分の両方の表面に作用する第1の当接領域17、第2の当接領域19、第3の当接領域24、および/または第4の当接領域の複合作用により、大腿骨部品10と大腿骨11の遠位端との間の排他的且つ安定した結合が決定される。
【0101】
対応する位置合わせピン(図示せず)は、少なくとも2つのガイド穴20に沿って導入され、ピンはまた、大腿骨11の皮質正面領域18を通ってしっかりと挿入される。ガイド穴20のそれぞれは、大腿骨プロテーゼ12の周縁から離れた位置において、大腿骨部分を通って対応する位置合わせピンをガイドするのに適している。位置合わせピンが挿入される前に、対応するガイド穴20を通して案内される穿孔ビットまたは他の穿孔ツールによって、対応する穴が大腿骨11の皮質正面領域18に穿孔されるように、当該穴を配置することができる。
【0102】
次に、大腿骨部品10をガイドピンから取り外し、大腿骨11の遠位端から取り外して、交換する必要のある一次大腿骨プロテーゼ12を続いて取り外すことができるようにする。
【0103】
取り外し後、大腿骨部品10は、位置決めピンに沿ってガイド穴20を再装着することによって再配置され、その相互係合により、大腿骨プロテーゼ12がないにもかかわらず、大腿骨部品10および大腿骨11の遠位端は、以前にとられた排他的係合位置に正確に、排他的に且つ堅く再係合される。
【0104】
大腿骨部品10の正しい位置決めはまた、大腿骨ガイドノッチ30に挿入することができる基準プレートによって、および/または取り付けシート22に挿入することができる基準ロッドによって視覚的にチェックすることができる。
【0105】
穿孔の後に、補助位置決め穴26を介して上顆領域に挿入することができる2つの固定ピンを使用して、大腿骨部品10の位置決めをさらに安定させることができる。
【0106】
次に、二対の正面取付穴が、正面位置決め穴21および第1または第2の一対の遠位位置決め穴28、29を通って案内される穿孔ビットを使用して、骨部分の顆領域に穿孔される。大腿骨11の遠位端に配置された大腿骨部品10はまた、新しい大腿骨再置換プロテーゼを受け入れるために大腿骨11の髄管を準備するべく、大腿骨センタリング枠31を通して穿孔および/またはミリングツールを案内するために使用され得る。したがって、管の仕上げ方向は、術前段階で計画された大腿骨11の遠位切除カットの傾斜に従ってガイドすることができる。
【0107】
上記の工程が完了したら、大腿骨部品10およびガイドピンを取り外すことができる。
【0108】
一対の正面位置決めピンおよび一対の遠位位置決めピン(図示せず)は、それぞれ、正面ガイド穴20および遠位ガイド穴20を通るように形成された穴に挿入される。
【0109】
取り付けられると、正面位置決めピンは、骨部分に対して配置され且つ既知の方法で大腿骨11の遠位端の遠位切除カットの実行をガイドするために使用される遠位切断ブロックに配置された2つの第1のセンタリング穴にスムーズに係合するのに適している。遠位切除の傾きは、術前計画に基づいた位置決めピンの位置によって与えられる。
【0110】
同様に、遠位位置決めピンは、骨部分に対して配置され且つ既知の方法で大腿骨11の遠位端の前部、後部、および面取り切除の実行をガイドするために使用される正面切断ブロックに配置された2つの第2のセンタリング穴にスムーズに係合するのに適している。
【0111】
目的を達するための第1または第2の一対の遠位位置決め穴28、29を使用することの選択は、外科医がその後の切除に使用することを計画している正面切断ブロックのタイプによって決定することができる。一次プロテーゼを移植するために以前に使用されたものと同一の正面切断ブロックの使用が計画される場合、第1の対に属する遠位位置決め穴28が使用される。一方、外科医が以前に一次プロテーゼを移植するために使用したものとは異なるブロックを使用することを計画しており、その結果、一次大腿骨プロテーゼ12の取り付け中に行われた切除とは異なる位置で再置換切除が行われ得る場合には、第2の対に属する遠位位置決め穴29を使用することができる。
【0112】
切除カットが行われた後、位置決めピンを取り外した後に新しい再置換大腿骨プロテーゼを取り付けることができる。
【0113】
脛骨101の手術は、一次脛骨プロテーゼ112から脛骨インサートを取り外した後、脛骨部品100を脛骨の近位端に配置することを含む。この状況において、骨部分の表面と一次脛骨プロテーゼ112の表面との両方に作用する当接領域の複合作用が、脛骨101の近位端への脛骨部品100の排他的且つ安定した係合を決定する。
【0114】
少なくとも一対の脛骨位置決め穴111、112a、112bにおいて、対応する脛骨位置決めピンは、同じ脛骨位置決め穴を通る穿孔の後、脛骨101の皮質正面領域18を通って挿入される。
【0115】
脛骨部品100の正しい位置決めはまた、脛骨ガイドノッチ190に挿入することができる基準プレートによって、および/または対応する係合シート22に挿入することができる基準ロッドによって視覚的にチェックすることができる。
【0116】
脛骨101の近位端に配置された脛骨部品100はまた、新しい再置換脛骨プロテーゼを受け入れるために脛骨の髄管を準備するべく、脛骨センタリング枠118を通して穿孔および/またはミリングツールを案内するために使用され得る。したがって、管の仕上げ方向は、術前段階で計画された脛骨切除カットの傾きに応じてガイドすることができる。
【0117】
次に、脛骨部品100を脛骨位置決めピンから取り外し、脛骨101の近位端から取り外して、交換する必要のある一次脛骨プロテーゼ112を続いて取り外すことができるようにする。
【0118】
取り外されると、脛骨位置決めピンは、骨部分に対して配置され且つ既知の方法で脛骨の近位端の脛骨切除の実行をガイドするために使用される脛骨切断ブロックに配置された対応するセンタリング穴にスムーズに係合するのに適している。
【0119】
脛骨位置決め穴を導入するために第1または第2の一対の脛骨位置決め穴を使用する選択は、外科医がその後の脛骨切除に使用する予定の脛骨切断ブロックのタイプによって決定できる。一次脛骨プロテーゼ112を移植するために以前に使用されたものと同一の脛骨切断ブロックが使用される場合には、第1の対に属する遠位位置決め穴111が使用される。一次プロテーゼを移植するために以前に使用されたものとは異なるブロックが、再置換脛骨切除を行う目的で使用される場合、第2の対に属する脛骨位置決め穴112a、112bを使用することができる。一次プロテーゼとの干渉を回避するために、脛骨穴112a、112bの一方のまたは他方の第2の対のいずれかの選択もまた、術前段階で計画することができる。
【0120】
脛骨切除が行われた後、脛骨位置決めピンを取り外した後に新しい再置換脛骨プロテーゼを取り付けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0121】
【文献】EP2739216 B1
【文献】WO2018/202271
【文献】US2017/0007331 A1