(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】樹脂製継手、流路ブロック及び流体制御装置
(51)【国際特許分類】
F16L 43/00 20060101AFI20230629BHJP
F16L 47/06 20060101ALI20230629BHJP
F16L 19/04 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
F16L43/00
F16L47/06
F16L19/04
(21)【出願番号】P 2021574455
(86)(22)【出願日】2020-10-13
(86)【国際出願番号】 JP2020038657
(87)【国際公開番号】W WO2021152927
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2022-04-19
(31)【優先権主張番号】P 2020011463
(32)【優先日】2020-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小池 智幸
(72)【発明者】
【氏名】阪本 浩樹
(72)【発明者】
【氏名】樋口 慎悟
(72)【発明者】
【氏名】大前 清敬
(72)【発明者】
【氏名】足立 智大
【審査官】伊藤 紀史
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-010857(JP,A)
【文献】特開2015-068500(JP,A)
【文献】国際公開第2009/025136(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/025519(WO,A1)
【文献】特開平04-248095(JP,A)
【文献】中国実用新案第203286088(CN,U)
【文献】特表2009-500584(JP,A)
【文献】中国実用新案第202418699(CN,U)
【文献】特開2019-178726(JP,A)
【文献】特開2018-123882(JP,A)
【文献】米国特許第03752438(US,A)
【文献】中国特許出願公開第101408268(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L
B29C45/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を有する樹脂製の継手本体と、
前記継手本体に圧入可能な圧入部と、チューブに圧入可能な連結部とを有するスリーブと、
前記連結部が圧入された前記チューブを、前記継手本体に固定するために、前記継手本体の外周に装着されるユニオンナットと
を備えた樹脂製継手であって、
前記継手本体は、内周面が湾曲状の本体部と、該本体部の端部から突出するストレート部とを有し、
前記ストレート部は、互いに軸心が共通な外筒部と、該外筒部の径方向内側に配置された内筒部とを有し、
前記内筒部の軸心方向端部は、前記外筒部の軸心方向端部よりも、前記本体部側に位置しており、
前記内筒部の内周面は、前記本体部の内周面と、同じ曲率で湾曲しており、
前記外筒部の内周面と、前記内筒部の外周面との間には、前記外筒部及び前記内筒部の軸心方向に平行に延びる溝部が形成されており、
前記外筒部の軸心方向端部のうち、前記本体部の曲率中心側の端部は、前記本体部の曲率中心を中心とし、前記本体部の曲率中心側の内周面の曲率半径を半径とする円の内側に位置しており、
前記チューブは、前記スリーブの圧入部が前記溝部に圧入された状態で、前記継手本体に固定される、樹脂製継手。
【請求項2】
前記本体部の内周面及び前記内筒部の内周面で流路が形成されており、
前記流路の曲率中心側の内周面の長さは、該内周面の曲率半径を半径とする円の円周の1/4の長さである、請求項1に記載の樹脂製継手。
【請求項3】
前記継手本体は、射出成形により形成されている、請求項1
または2に記載の樹脂製継手。
【請求項4】
流路を有する樹脂製のブロック本体と、
前記ブロック本体に圧入可能な圧入部と、チューブに圧入可能な連結部とを有するスリーブと、
前記連結部が圧入された前記チューブを、前記ブロック本体に固定するために、前記ブロック本体の外周に装着されるユニオンナットと
を備えた流路ブロックであって、
前記ブロック本体は、内周面が湾曲状の本体部と、該本体部の一方の端部から突出するストレート部とを有し、
前記ストレート部は、互いに軸心が共通な外筒部と、該外筒部の径方向内側に配置された内筒部とを有し、
前記内筒部の軸心方向端部は、前記外筒部の軸心方向端部よりも、前記本体部側に位置しており、
前記外筒部の内周面と、前記内筒部の外周面との間には、前記外筒部及び前記内筒部の軸心方向に平行に延びる溝部が形成されており、
前記チューブは、前記スリーブの圧入部が前記溝部に圧入された状態で、前記ブロック本体に固定される、流路ブロック。
【請求項5】
バルブ本体と、
前記バルブ本体に流体を供給するための流路が形成された継手と
を備えた流体制御装置であって、
前記継手は、請求項1~
3の何れかに記載の樹脂製継手で構成されている、流体制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製継手、流路ブロック、及び流体制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置や医薬品製造装置等の流路として使用されるチューブ間を接続する部品の一例として、樹脂製継手がある。
【0003】
半導体製造装置等の小型化が進むと、装置内部に装備される部品の集積度が上昇する。そこで、チューブ間をコンパクトに接続するために、エルボ型の樹脂製継手が利用されている。
【0004】
特許文献1には、
図15に示すように、内部に形成された流路110が、角部120で略直角に交わった構造のエルボ型の樹脂製継手100が開示されている。しかしながら、このような構造の流路110を流れる流体は、角部120の内壁に衝突して乱流となるため、圧力損失が生じる。そこで、
図16に示すように、角部120における流路を、曲率半径の大きな湾曲状にすれば、流路110内における流体の流れを滑らかにすることができ、これにより、圧力損失を低減することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
内部に流路が形成された樹脂製継手100を射出成形で形成する場合、通常、以下の方法で行われる。まず、流路形状に対応した形状を有するコアピンを金型のキャビティ内に配置し、この状態で、キャビティ内に溶融した樹脂を注入する。注入した樹脂が固化した後、コアピンを引き抜くことにより、樹脂製継手100が形成される。
【0007】
しかしながら、
図16に示したような構造の樹脂製継手100では、流路を形成する内周面が、角部120で湾曲した部位130と、端部側でストレートになった部位140とが混在する。従って、金型のキャビティ内に配置されるコアピンも、外周面が、継手100の角部120における形状に対応した湾曲した部位と、端部側における形状に対応したストレートな部位とが混在する。
【0008】
そのため、コアピンの湾曲した部位における曲率半径が大きいと、コアピンを引き抜く際、コアピンの湾曲した部位が、継手100の端部側でストレートになった部位140の内周面にひっかかってしまうため、コアピンを引き抜くことができない。また、仮に曲率半径が小さくても、コアピンを無理に抜こうとすると、樹脂製継手100の端部側でストレートになった部位140の内周面に、傷を付けてしまうという問題がある。
【0009】
本開示は、かかる点に鑑みてなされたもので、その主な目的は、湾曲状の流路を有し、圧力損失の小さい樹脂製継手を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示に係る樹脂製継手は、流路を有する樹脂製の継手本体と、継手本体に圧入可能な圧入部と、チューブに圧入可能な連結部とを有するスリーブと、連結部が圧入されたチューブを、継手本体に固定するために、継手本体の外周に装着されるユニオンナットとを備える。
【0011】
継手本体は、内周面が湾曲状の本体部と、本体部の端部から突出するストレート部とを有し、ストレート部は、互いに軸心が共通な外筒部と、外筒部の径方向内側に配置された内筒部とを有し、内筒部の軸心方向端部は、外筒部の軸心方向端部よりも、本体部側に位置しており、外筒部の内周面と、内筒部の外周面との間には、外筒部及び内筒部の軸心方向に平行に延びる溝部が形成されており、チューブは、スリーブの圧入部が溝部に圧入された状態で、継手本体に固定される。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、湾曲状の流路を有し、圧力損失の小さい樹脂製継手を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の第1の実施形態における樹脂製継手の構成を模式的に示した断面図である。
【
図2】継手本体の構成を模式的に示した断面図である。
【
図3】スリーブの構成を模式的に示した断面図である。
【
図4】ユニオンナットの構成を模式的に示した断面図である。
【
図5】
図1の矢印Aで示した部分を拡大した断面図である。
【
図6】継手本体を射出成形により形成する方法を説明した図である。
【
図7】継手本体の溝部付近を拡大した拡大図である。
【
図8】シール性能のバラツキを低減する他の構成を示した断面図である。
【
図9】シール性能のバラツキを低減する他の構成を示した断面図である。
【
図10】本発明の第2の実施形態における樹脂製継手の構成を模式的に示した断面図である。
【
図11】本発明の第3の実施形態における流路ブロックの構成を模式的に示した図で、
図11(A)は斜視図、
図11(B)は
図11(A)のXIB-XIB線に沿った断面図である。
【
図12】
図12(A)、(B)は、流路ブロックとU字ブロックとを組み合わせて、継手を構成した例を示した図である。
【
図13】本発明の第3の実施形態における流路ブロックの他の構成を模式的に示した図で、
図13(A)は斜視図、
図13(B)は
図13(A)のXIIIB-XIIIB線に沿った断面図である。
【
図14】本発明の第4の実施形態における流体制御装置の構成を模式的に示した断面図である。
【
図15】従来のエルボ型の樹脂製継手の構造を示した断面図である。
【
図16】従来のエルボ型の樹脂製継手の構造を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態における樹脂製継手(以下、単に「継手」ともいう)の構成を模式的に示した断面図である。なお、
図1は、継手にチューブを接続した状態を示す。
【0016】
図1に示すように、本実施形態における継手1は、湾曲状の流路50を有する継手本体10と、継手本体10に圧入可能なスリーブ20と、チューブ40を継手本体10に固定するために、継手本体10の外周に装着されるユニオンナット30とを備えている。
【0017】
継手本体10は、射出成形により形成された樹脂からなる。本実施形態において樹脂は、例えば、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキビニルエーテル共重合体)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド)、ETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)等のフッ素樹脂を用いることができる。また、スリーブ20及びユニオンナット30も、例えば、PFA、PVDF、ETFE、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂を用いて形成することができる。なお、樹脂は、フッ素樹脂に限定されず、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエーテルエテルケトン、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド等を用いることができ、使用分野や用途、チューブ40の材質等に応じて適宜変更可能である。
【0018】
図2は、継手本体10の構成を模式的に示した断面図である。
【0019】
図2に示すように、継手本体10は、内周面が湾曲状の本体部11と、本体部11の端部B-B、C-Cから突出するストレート部12とを有している。本体部11の内側には、流路50が形成されている。なお、本実施形態では、継手本体10において、チューブ40を接続する側の両端部の構成は同じなので、一方の端部における構成のみを説明する。
【0020】
ストレート部12は、互いに軸心Jaが共通な外筒部13と内筒部14とを有している。内筒部14は、外筒部13の径方向内側に配置されている。内筒部14の軸心Ja方向端部14cは、外筒部13の軸心Ja方向端部13cよりも、本体部11側に位置(換言すれば、軸心Ja方向端部14cよりも軸心Ja方向端部13cの方が端部B-B、C-Cから突出)している。外筒部13の内周面13aと、内筒部14の外周面14bとの間には、外筒部13及び内筒部14の軸心Ja方向に平行に延びる溝部15が形成されている。溝部15は、環状になっており、本体部11と、外筒部13と、内筒部14とで囲まれている。外筒部13の外周面13bには、雄ネジ13dが形成されている。
【0021】
図3は、スリーブ20の構成を模式的に示した断面図である。
【0022】
図3に示すように、スリーブ20は、その軸心が、外筒部13及び内筒部14の軸心Jaと共通な筒状をなしている。スリーブ20は、継手本体10に圧入可能な圧入部21と、チューブ40に圧入可能な連結部22とを有している。圧入部21は、環状に形成されており、図中の矢印Pの方向から、継手本体10の溝部15に圧入される。連結部22の外周面には、突起部22aが形成されている。連結部22を図中の矢印Qの方向からチューブ40に圧入したとき、チューブ40の内径が、突起部22aによって拡張される。
【0023】
図4は、ユニオンナット30の構成を模式的に示した断面図である。
【0024】
図4に示すように、ユニオンナット30は、その軸心が、外筒部13及び内筒部14の軸心Jaと共通な筒状をなしている。ユニオンナット30の内周面には、外筒部13の外周面13bに形成された雄ネジ13dに係合する雌ネジ30aが形成されている。
【0025】
図1に示したように、チューブ40を継手1に接続する手順は、以下のように行われる。
【0026】
まず、
図3に示すように、スリーブ20をチューブ40に圧入する。このとき、チューブ40の内径が突起部22aにより拡張される。次に、チューブ40に圧入されたスリーブ20の圧入部21を、継手本体10の溝部15に圧入する。この状態で、ユニオンナット30の雌ネジ30aを、外筒部13の雄ネジ13dに係合させることで、チューブ40が継手1に接続される。
【0027】
図5は、
図1の矢印Aで示した部分を拡大した断面図である。
【0028】
図5に示すように、スリーブ20の圧入部21が、継手本体10の溝部15に圧入されることによって、圧入部21の外周面及び内周面が、それぞれ、外筒部13の内周面及び内筒部14の外周面に圧接される。これにより、圧入部21の径方向外方及び径方向内方の押圧力を利用することによって、流路50を流れる流体のシール性能が向上する。そのため、ユニオンナット30を軸心Ja方向に強く締め付ける必要がない。従って、ユニオンナット30を手締めするだけで、十分なシール性能を確保することができる。
【0029】
次に、
図6を参照しながら、本実施形態における継手本体10を射出成形により形成する方法を説明する。
【0030】
内部に流路50が形成された継手本体10を射出成形で形成する場合、流路50の形状に対応した形状を有するコアピンを金型のキャビティ内に配置した状態で、キャビティ内に溶融した樹脂を注入する。そして、注入した樹脂が固化した後、コアピンを引き抜くことにより、継手本体10が形成される。
【0031】
図6に示したように、継手本体10の流路50は、継手本体10における本体部11の内周面11a、及びストレート部12における内筒部14の内周面14aによって形成されている。また、本体部11の内周面11aと、内筒部14の内周面14aとは、同じ曲率に設定され、湾曲状に形成されている。従って、金型(不図示)のキャビティ内に配置されるコアピン60の外周面も、流路50の形状に合わせて、同じ曲率で湾曲状に形成されている。すなわち、コアピン60の外周面は、ストレートな領域を有さない。
【0032】
このことから、
図6に示すように、キャビティ内に配置されたコアピン60は、キャビティ内に注入した溶融樹脂が固化した後、図中の矢印の方向に回転させながら引き抜くことができる。
【0033】
なお、外筒部13の軸心Ja方向端部13cは、内筒部14の軸心Ja方向端部14cよりも、本体部11から外方に突出している。そのため、コアピン60を引く抜く際、コアピン60が外筒部13と干渉しないよう、外筒部13の内径D、及びコアピン60の曲率中心側の外周面の曲率半径Rの大きさを設定することが好ましい。
【0034】
上述したように、本実施形態における継手1は、スリーブ20の圧入部21を、継手本体10の溝部15に圧入することによって、流体のシール性能の向上を図っている。このようなシール性能を確保するためには、圧入部21と溝部15とは、軸心Ja、軸心Jb方向と平行になっていることが好ましい。従って、溝部15を区画する外筒部13の内周面13a、及び内筒部14の外周面14bは、軸心Ja、Jb方向に平行なストレート状になっていることが好ましい。
【0035】
一方、本実施形態では、内筒部14の内周面14aは、湾曲状になっている。しかしながら、内筒部14の軸心Ja、Jb方向の長さは、シール性能を確保できる範囲で短くすることができる。そのため、内周面14aが湾曲状であっても、外周面14bがストレート状の内筒部14を形成することが可能となる。
【0036】
以上、説明したように、本実施形態における継手1は、流体のシール性能を確保しつつ、湾曲状の流路を備えた継手を、射出成形により容易に形成することができる。これにより、流体のシール性能に優れ、かつ、流体の圧力損失の小さい継手1を実現することができる。
【0037】
ところで、内筒部14の内周面14aは湾曲状になっているため、
図7の拡大図に示すように、曲率中心側に位置する内筒部14Aの径方向厚みt
1は、軸心Ja方向に沿って、徐々に薄くなっている。一方、曲率中心側と反対側に位置する内筒部14Bの径方向厚みt
2は、軸心Ja方向に沿って、徐々に厚くなっている。すなわち、内筒部14の径方向厚みは、周方向において不均一になっている。そのため、スリーブ20の圧入部21を溝部15に圧入することによって発揮するシール性能は、周方向においてバラツキが生じるおそれがある。しかしながら、このようなバラツキは、内筒部14の径方向厚みを厚くすることによって低減することが可能である。
【0038】
図8は、シール性能のバラツキを低減する他の構成を示した断面図である。
【0039】
図8に示すように、内筒部14の内周面14aは、内筒部14の軸心Ja方向に平行に延びている。すなわち、内筒部14の内周面14aは、本体部11の端部C-Cまで、ストレートになっている。従って、内筒部14の径方向厚みは、周方向において均一になっている。その結果、スリーブ20の圧入部21を溝部15に圧入することによって発揮するシール性能のバラツキを低減することができる。
【0040】
なお、上述したように、内筒部14の内周面14aの長さL1は短いため、コアピン60を回転させながら引き抜くことは可能である。また、仮にコアピン60を無理に引き抜いても、内筒部14の内周面14aに発生する傷は極めて小さいことから、流路50内の流体の流れには、ほとんど影響しない。
【0041】
図9は、シール性能のバラツキを低減する他の構成を示した断面図である。
【0042】
図9に示すように、継手本体10の本体部11は、本体部11の端部C-C側において、本体部11の内周面11bが、内筒部14の内周面14aに連続して、内筒部14の軸心Ja方向に平行に延びる伸長部11cを有している。すなわち、
図2や
図8等で示した構成と比べて、内筒部14の内周面14aにおけるストレート領域が、さらに、本体部11の内周面11bの一部まで延びている。これにより、内筒部14の径方向厚みを、周方向においてより均一にすることができる。その結果、スリーブ20の圧入部21を溝部15に圧入することによって発揮するシール性能のバラツキをより低減することができる。
【0043】
なお、伸長部11cの長さが必要以上に長くなると、コアピン60を回転させながら引き抜くことが難しくなる。従って、内筒部14の内周面14a、及び伸長部11cの内周面11bからなるストレート領域の長さL
2は、本体部11の曲率半径Rの1/3以下が好ましく、1/5以下がより好ましい。なお、本体部11の曲率半径Rは、
図6に示したように、本体部11の内周面11aのうち、曲率中心側の内周面11aにおける曲率半径をいう。
【0044】
(第2の実施形態)
図10は、本発明の第2の実施形態における樹脂製継手の構成を模式的に示した断面図である。なお、ここでは、継手本体10のみを示し、スリーブ20及びユニオンナット30は省略している。
【0045】
第1の実施形態では、
図1に示したように、継手本体10が湾曲状の流路を有する、いわゆるエルボ型の継手を示したが、本実施形態では、いわゆるT字型の継手からなる点で
図1の形態と異なる。
【0046】
図10に示すように、継手本体10は、3つの開口する開口端80、81、82を有し、各開口端80、81、82に対して、それぞれチューブが接続される。開口端80、81間に形成される流路50は湾曲状をなし、開口端80、82間に形成される流路51はストレート状をなす。本実施形態では、湾曲状の流路50が形成される部位において、
図1に示した継手本体10と同一の構造が採用されている。
【0047】
すなわち、継手本体10は、湾曲状の流路50が形成される部位の開口端80、81において、外筒部13及び内筒部14からなるストレート部12を有し、外筒部13の内周面と、内筒部14の外周面との間に溝部15が形成されている。
【0048】
(第3の実施形態)
図11(A)、(B)は、本発明の第3の実施形態における流路ブロック70の構成を模式的に示した図で、
図11(A)は斜視図、
図11(B)は
図11(A)のXIB-XIB線に沿った断面図である。
【0049】
図11(B)に示すように、本実施形態における流路ブロック70は、樹脂製のブロック本体で構成され、内周面が湾曲状の流路50が形成された本体部71を有する。
【0050】
流路ブロック70は、開口端80、81を有し、一方の開口端80において、
図1に示した継手本体10と同一の構造が採用されている。すなわち、流路ブロック70は、一方の開口端80において、本体部71の一方の端部から突出するストレート部12を有する。ストレート部12は、互いに軸心Jaが共通な外筒部13と、外筒部13の径方向内側に配置された内筒部14とを有し、内筒部14の軸心方向端部は、外筒部13の軸心方向端部よりも、本体部71側に位置している。また、外筒部13の内周面と、内筒部14の外周面との間には、外筒部13及び内筒部14の軸心方向に平行に延びる溝部15が形成されている。
【0051】
一方、本体部71の他方の端部(開口端81)には、ガスケットが圧入される環状のシール溝16が形成されている。シール溝16の形状は特に限定されず、圧入されるガスケットの形状に応じて、適宜決めればよい。
【0052】
一方の開口端80において、チューブを流路ブロック70に接続する場合、
図1に示したスリーブ20及びユニオンナット30と同一の構造を採用することができる。すなわち、スリーブ20は、ブロック本体に圧入可能な圧入部と、チューブに圧入可能な連結部とを有し、チューブに連結部を圧入した状態で、圧入部21をブロック本体の溝部15に圧入する。この状態で、ユニオンナット30を、ブロック本体の外周に装着することによって、チューブが流路ブロック70に接続される。
【0053】
次に、
図12を参照しながら、本実施形態における流路ブロック70の使用例を説明する。
【0054】
図12(A)、(B)は、本実施形態における流路ブロック70と、U字ブロック75とを組み合わせて、継手を構成した例を示した図である。
【0055】
図12(A)に示すように、U字ブロック75は、同一面76に、開口端77A、開口端77Bを有し、開口端77A、77B間に形成される流路79は、U字型の湾曲状をなす。また、開口端77A、77Bには、それぞれ、ガスケットが圧入される環状のシール溝78A、シール溝78Bが形成されている。U字ブロック75は、例えば、樹脂材料で構成されている。
【0056】
まず、
図12(A)に示すように、2つの流路ブロック70A、流路ブロック70Bを、開口端80A、開口端80Bが反対方向に位置するとともに、シール溝16A、シール溝16Bが、同じ面になるように配置する。また、U字ブロック75を、シール溝78A、シール溝78Bが、流路ブロック70A、70Bのシール溝16A、16Bと対向する位置に配置する。また、環状のガスケット90A、ガスケット90Bを、それぞれ、流路ブロック70A、流路ブロック70Bのシール溝16A、シール溝16B、及びU字ブロック75のシール溝78A、シール溝78Bの位置に合わせて配置する。
【0057】
そして、
図12(B)に示すように、ガスケット90A、90Bを、それぞれ、流路ブロック70A、70Bのシール溝16A、16B、及びU字ブロック75のシール溝78A、78Bに圧入して、流路ブロック70A、70B及びU字ブロック75を組み合わせる。これにより、流路ブロック70Aの流路50A、U字ブロック75の流路79,及び、流路ブロック70Bの流路50Bが繋がった流路を有する継手が構成される。
【0058】
図13(A)、(B)は、本実施形態における流路ブロック70の他の構成を模式的に示した図で、
図13(A)は斜視図、
図13(B)は
図13(A)のXIIIB-XIIIB線に沿った断面図である。
【0059】
図11(B)に示した流路ブロック70では、流路50をエルボ型にしたが、
図13(B)に示すように、流路50をU字型にしてもよい。
【0060】
すなわち、流路ブロック70は、開口端80、81を有し、一方の開口端80において、本体部71の一方の端部から突出するストレート部12を有する。ストレート部12は、互いに軸心Jaが共通な外筒部13と、外筒部13の径方向内側に配置された内筒部14とを有し、内筒部14の軸心方向端部は、外筒部13の軸心方向端部よりも、本体部71側に位置している。また、外筒部13の内周面と、内筒部14の外周面との間には、外筒部13及び内筒部14の軸心方向に平行に延びる溝部15が形成されている。一方、本体部71の他方の端部(開口端81)には、ガスケットが圧入される環状のシール溝16が形成されている。
【0061】
(第4の実施形態)
図14は、本発明の第4の実施形態における流体制御装置2の構成を模式的に示した断面図である。
【0062】
本実施形態における流体制御装置2は、バルブ本体95と、当該バルブ本体95に流体を供給するための流路50が形成された継手1とを備えている。なお、
図14では、継手本体10のみを示し、スリーブ20及びユニオンナット30は省略している。
【0063】
本実施形態では、湾曲状の流路50が形成される部位において、
図1に示した継手本体10の構造が採用されている。
【0064】
すなわち、継手本体10は、湾曲状の流路50が形成される部位の開口端80において、外筒部13及び内筒部14からなるストレート部12を有し、外筒部13の内周面と、内筒部14の外周面との間に溝部15が形成されている。
【0065】
以上、本発明を好適な実施形態により説明してきたが、こうした記述は限定事項ではなく、もちろん、種々の改変が可能である。
【符号の説明】
【0066】
1 樹脂製継手
10 継手本体
11 本体部
11a、11b 内周面
12 ストレート部
13 外筒部
13a 内周面
13b 外周面
14 内筒部
14a 内周面
14b 外周面
15 溝部
16 シール溝
20 スリーブ
21 圧入部
22 連結部
30 ユニオンナット
40 チューブ
50 流路
60 コアピン
70 流路ブロック
71 本体部
75 U字ブロック
78A,78B シール溝
79 流路
90A、90B ガスケット
95 バルブ本体