(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】注射器
(51)【国際特許分類】
A61M 5/32 20060101AFI20230629BHJP
A61M 5/142 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
A61M5/32 510B
A61M5/142 522
(21)【出願番号】P 2022002872
(22)【出願日】2022-01-12
(62)【分割の表示】P 2019566222の分割
【原出願日】2018-05-30
【審査請求日】2022-01-12
(32)【優先日】2017-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518123372
【氏名又は名称】ウェスト ファーマ サービシーズ イスラエル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イーガル ギル
(72)【発明者】
【氏名】バルエル ヨッシ
【審査官】上石 大
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-517094(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0250946(US,A1)
【文献】特表2006-501043(JP,A)
【文献】特表2004-501721(JP,A)
【文献】特開2015-166048(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/32
A61M 5/142
A61M 5/20
A61M 5/24
A61M 5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に空所を有し、前記表面が使用者の皮膚表面と接触するように構成された注射器ハウジングと、
前記注射器ハウジングの内部に移動可能に取り付けられた注射針ハブと、
前記移動可能な注射針ハブによって支持され、先端を含み、少なくとも前記先端が前記注射器ハウジングに収められる退避位置と、少なくとも前記先端が前記注射器ハウジングから突出する注射位置との間で軸方向に直進可能である注射針と、
開口を有し、前記注射器ハウジングに対して移動可能に接続され、第1位置と第2位置との間を移動可能に設けられた針シールドと、
前記注射針に対し動作可能に接続され、前記注射針ハブおよび前記注射針を前記退避位置から前記注射位置へ軸方向に直進させる付勢部材と
を備え、
前記注射針ハブおよび前記注射針は、前記退避位置から前記注射位置に軸方向に移動
可能であり、
前記注射針は、前記注射針が前記注射位置にあり、前記針シールドが前記第1位置にある場合に、前記針シールドの開口を介して延在し、前記注射針は、前記針シールドが前記第2位置にある場合に前記針シールドの開口を通過することが
前記針シールドの一部によって妨げられ、
前記針シールドが前記第2位置にあると共に前記注射針ハブおよび前記注射針が前記注射
位置にあるとき、前記針シールドは前記注射針の前記先端を覆い、前記第1位置に向けた前記針シールドのその後の移動により
前記針シールドの一部が前記注射針ハブと係合し、前記注射針ハブおよび前記注射針が前記注射位置から前記退避位置に向け直線的に移動し、
前記注射針の剛性は、前記付勢部材の剛性よりも大きい
注射器。
【請求項2】
前記付勢部材は、前記注射針ハブおよび前記注射針を
前記退避位置から前記注射位置 に駆動するための付勢力を付与し、さらに、前記針シールドが前記第2位置にあり、前記 注射針ハブおよび前記注射針が前記注射位置にある場合に、前記付勢部材の前記付勢力に 対抗しかつこれを上回る力による前記第2位置から前記第1位置に向けた前記針シールド のその後の移動により、前記注射針ハブおよび前記注射針を前記退避位置に向けて軸方向 に移動させるようになっている 請求項1記載の注射器。
【請求項3】
前記針シールドが前記第2位置にあり、前記注射針ハブおよび前記注射針が前記注射位置にあるとき、前記針シールド
の一部は、前記第2位置から前記第1位置に向けた前記針シールドのその後の移動の際に前記注射針に直接的に接触し、前記注射針ハブおよび前記注射針を前記退避位置に向けて直線的に移動させる
請求項1記載の注射器。
【請求項4】
前記針シールドは、前記針シールドの前記開口を部分的に塞ぐフランジ付きの自由端を含む片持ちアームを有し、
前記フランジ付きの自由端は、前記針シールドが前記第1位置にある場合に、前記注射針の妨げとならず、前記フランジ付きの自由端は、前記針シールドが前記第2位置にある場合に、前記注射針が前記針シールドの開口を通過するのを阻害する、
請求項1に記載の注射器。
【請求項5】
前記針シールドが前記第2位置にあり、前記注射針ハブおよび前記注射針が前記注射位置にある場合に、前記片持アームの前記フランジ付きの自由端は、前記注射針の前記先端と接触して、前記第1位置に向けた前記針シールドのその後の移動に際し、前記注射針ハブおよび前記注射針を、前記退避位置に向けて直線的に移動させる、
請求項4に記載の注射器。
【請求項6】
前記片持アームは、弾性的に柔軟であり、
前記片持アームは、前記注射針よりも柔軟である
請求項4に記載の注射器。
【請求項7】
前記注射針が前記注射位置にある場合に、前記注射針は、前記片持アームと係合し、前記片持アームを、前記第1位置から前記第2位置への前記針シールドの移動の間に、曲げられていない休止位置から弾性的に湾曲させ、さらに、前記注射針は、前記針シールドが前記第2位置にある場合に、前記片持アームを解放し、これにより、前記片持アームが、前記曲げられていない休止位置に復帰する
請求項4に記載の注射器。
【請求項8】
前記注射針が前記注射位置にある場合に、前記注射針は、前記第1位置から前記第2位置への前記針シールドの移動の間に、前記片持アームの前記フランジ付きの自由端と係合する
請求項4に記載の注射器。
【請求項9】
前記針シールドが前記第2位置にあり、前記注射針ハブおよび前記注射針が前記注射位置にある場合に、前記第1位置に向けた前記針シールドのその後の移動により、前記注射針を、前記退避位置に向けて間接的に移動させる、
請求項1に記載の注射器。
【請求項10】
前記針シールドがアームを有し、前記針シールドが前記第2位置にあり、前記注射針ハブおよび前記注射針が前記注射位置にある場合に、前記第1位置に向けた前記針シールドのその後の移動により前記アームを前記注射針ハブと係合させ、前記注射針ハブおよび前記注射針を、前記退避位置に向けて直線的に移動させる、
請求項9に記載の注射器。
【請求項11】
前記注射針ハブはフランジ部を有し、前記針シールドが前記第2位置にあり、前記注射針ハブおよび前記注射針が前記注射位置にある場合に、前記第1位置へ向けた前記針シールドのその後の移動により前記針シールドの前記アームを前記注射針ハブの前記フランジ部と係合させ、前記注射針ハブおよび前記注射針を、前記退避位置に向けて直線的に移動させる
請求項10に記載の注射器。
【請求項12】
前記アームは片持アームであり、前記アームのフランジ付き自由端が前記注射針ハブと係合するようになっている
請求項10に記載の注射器。
【請求項13】
前記針シールドは、前記第1位置において前記注射器ハウジングの表面とおよそ同一平面にあり、
前記針シールドは、前記第2位置において前記注射器ハウジングの前記表面から離れるように回転させられるようになっている
請求項1に記載の注射器。
【請求項14】
前記針シールドは、力により前記第2位置に付勢されている、
請求項1に記載の注射器。
【請求項15】
前記付勢部材は、収縮状態から伸張状態へ伸張可能なコイルばねであり、前記注射針ハブおよび前記注射針を、前記退避位置から前記注射位置へ直線的に移動させる、
請求項1に記載の注射器。
【請求項16】
前記針シールドが前記第2位置にあり、前記注射針ハブおよび前記注射針が前記注射位置にある場合に、前記注射針ハブおよび前記注射針を前記退避位置に向けて直線的に移動させる、前記第1位置に向けた前記針シールドのその後の移動により、前記コイルばねを圧縮して、前記収縮状態に戻す、
請求項15に記載の注射器。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、2017年5月30日付けで提出された米国仮特許出願第62/512474号(発明の名称「注射針ハブに対する針シールド安全ラッチロック」)に基づく優先権を主張し、その全体的な内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
本開示は、概して、針シールドに関し、より具体的には、注射後の注射針を覆いおよび退避させるために注射器に採用される針シールドに関する。
【0003】
薬剤注射器等の注射器は、注射を行う際に使用者の皮膚に係合させられるのが一般的である。その後、注射器は、使用者の皮膚から引き離され、その注射針が露出したままに置かれる。個人(使用者であるか、他の個人であるかを問わない)に、露出させられた、使用済みの針が刺さることで、物理的に刺さることによるか、副作用を起こし得る薬剤に個人が曝されることによるか、血液を媒介とする病気によるかを問わず、怪我をしたり、危害が及んだりすることがあるとして、使用済みの針の露出が危険であることは、充分に説明されている。
【0004】
ある先行するウェアラブル注射装置では、注射針は、退避不能であるが、注射後の注射針を被覆するのに、針シールドが採用されている。針シールドは、注射針により支えられて開いた状態に維持することが可能である。針シールドのその後の収納により、注射針が針シールドの内部の安全な領域に曲げられる。それにも関わらず、稀にではあるが、針が曲がることが潜在的にスティックハザードを生じさせ得ることが分かっている。
【0005】
よって、針シールドを備え、針シールドの収納により、主に注射針をその退避(注射前)位置に向けて退避させるように構成された注射器を製造することに利点がある。
【発明の概要】
【0006】
簡潔にいえば、本開示の一態様は、表面に空所を有し、この表面が使用者の皮膚表面と接触するように構成された注射器ハウジングを備える注射器に関する。注射針ハブは、注射器ハウジングの内部に移動可能に取り付けられ、注射針は、この可動な注射針ハブにより支持される。注射針ハブおよび注射針は、注射針の少なくとも先端が注射器ハウジングに収められる退避位置と、注射針の少なくとも先端が注射器ハウジングから突出する注射位置と、の間を、軸方向に移動可能である。付勢部材は、注射針ハブおよび注射針を退避位置から注射位置へ軸方向に移動可能に動作接続される。注射器は、さらに、開口を有する針シールドを備え、針シールドは、注射器ハウジングに対して移動可能に接続され、第1位置と第2位置との間を移動可能である。注射針は、注射針が注射位置にあり、針シールドが第1位置にある場合に、針シールドの開口を介して延在し、注射針は、針シールドが第2位置にある場合に、針シールドの開口を通過することが妨げられる。針シールドが第2位置にあり、注射針ハブおよび注射針が注射位置にある場合に、針シールドは、注射針の先端を覆い、第1位置に向けた針シールドのその後の移動により、注射針ハブおよび注射針を退避位置に向けて軸方向に移動させる。
【0007】
本開示の他の形態は、表面に空所を有し、この表面が使用者の皮膚表面と接触するように構成された注射器ハウジングを備える注射器に関する。注射針は、注射器ハウジングの内部に移動可能に取り付けられ、注射針の少なくとも先端が注射器ハウジングに収められる退避位置と、注射針の少なくとも先端が注射器ハウジングから突出する注射位置と、の間を、軸方向に移動可能である。針シールドは、注射器ハウジングに対して移動可能に接続され、第1位置と第2位置との間を移動可能である。針シールドは、開口および片持アームを備え、片持アームは、針シールドの開口を部分的に塞ぐフランジ付きの自由端を有する。フランジ付きの自由端は、針シールドが第1位置にある場合に、注射針の妨げとならず、針シールドの第1位置において、注射針が針シールドの開口を通過することを許容する。針シールドが第2位置にあり、注射針が注射位置にある場合に、針シールドは、注射針の先端を覆い、片持アームのフランジ付きの自由端は、注射針が針シールドの開口を通過することを阻害する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示の幾つかの態様に係る以下の詳細な説明は、添付の図面を参照しながら読むことで、より充分に理解される。しかし、本開示について、これが図示の正確な構成および手段に限定されるものではないことが理解されるべきである。
【0009】
【
図1】
図1は、ウェアラブル注射器の立面図であり、本開示の第1実施形態に係る針シールドが移動可能に取り付けられている。
【
図2】
図2は、
図1の注射器および針シールドの、
図1に示す断面線2-2に沿った断面図であり、注射器の注射針が退避位置にあり、針シールドが退避位置にある。
【
図3】
図3は、
図1の針シールドの、側面上方からの斜視図である。
【
図4】
図4は、
図1の注射器および針シールドの、
図1に示す断面線2-2に沿った拡大部分断面図であり、注射針が注射位置にあり、針シールドが第1位置にある。
【
図5】
図5は、
図1の注射器および針シールドの、
図1に示す断面線2-2に沿った拡大部分断面図であり、注射針が注射位置にあり、針シールドが第1位置から第2位置へ復帰する途中である。
【
図6】
図6は、
図1の注射器および針シールドの、
図1に示す断面線2-2に沿った拡大部分断面図であり、注射針が注射位置にあり、針シールドが第1位置から第2位置へ
図5よりもさらに移動した状態にある。
【
図7】
図7は、
図1の注射器および針シールドの、
図1に示す断面線2-2に沿った拡大部分断面図であり、注射針が注射位置にあり、針シールドが第2位置にある。
【
図8】
図8は、
図1の注射器および針シールドの、
図1に示す断面線2-2に沿った拡大部分断面図であり、針シールドが第2位置から第1位置へ実質的に戻り、これにより、注射針を軸方向に移動させ、実質的にその退避位置へ復帰させている。
【
図9】
図9は、本開示の第2実施形態に係る注射器および針シールドの、
図1に示す断面線2-2に沿った拡大部分断面図であり、注射針ハブが針シールドにより退避させられ(点線で示す)、注射針ハブの、針シールドとの接触が回避されている(実線で示す)。
【
図10】
図10は、
図9の注射器および針シールドの、
図1に示す断面線2-2に沿った拡大部分断面図であり、針シールドが第2位置から第1位置に復帰させられ、注射針ハブを退避位置へ軸方向に移動させている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明では、便宜上の理由のみにより、限定を目的とせずに幾つかの用語法が用いられる。「より低い」、「底部」、「より高い」および「上部」といった単語は、参照されるべき図面での方向を示す。「内方に」、「外方に」、「上方に」および「下方に」といった単語は、本開示に従い、注射器およびその指示された部分の幾何学的な中心に向けたおよび当該幾何学的な中心から離れる方向を夫々示す。特に言及されない限り、「a」、「an」および「the」といった用語は、単一の要素に限定されず、むしろ、「少なくとも1つ」を意味するものとして理解されるべきである。用語法は、以上で示した単語以外に、その派生語および類義の言葉を含む。
【0011】
本開示に係る要素の寸法または特徴について述べる際に本明細書で使用される「約」、「およそ」、「概して」、「実質的に」等の用語は、開示される寸法/特徴が厳格な境界またはパラメータではなく、機能的な近似性を損なわない僅かな差異を排斥するものではないことを示すものと理解されるべきである。最低限でも、数値的なパラメータを含む記載は、本技術分野で受け入れられている数学的または工業的な原理(例えば、四捨五入、計測または他のシステム上の誤差、製作公差等)を用いて少なくとも有効数字の変化を伴わない差異を包含する。
【0012】
図面を詳細に参照すると、全体を通じて同一の符号により同一の要素を示し、
図1から
図8は、本開示の第1実施形態に係る注射針シールドを、全体として符号10により示す。概して、注射針シールド10は、限定のない単なる例示として、ウェアラブル薬剤注射器等のウェアラブル注射器(パッチ注射器)50とともに使用されるが、本開示は、そのように限定されるものではない。少なくとも、注射針シールド10は、他の注射器コンフィグレーションにおいて、代替的に採用することが可能である。
【0013】
本技術分野の当業者により理解されるように、そして、
図2に最もよく示されるように、注射器50は、概して、空所54aを有する表面54が使用者、例えば、患者の皮膚表面(図示せず)と接触するように構成されたハウジング52を備える。図示されるように、注射針ハブ56、例えば、ポリマ製の注射針ハブ56は、注射器ハウジング52の内部に移動可能に取り付けられ、注射針58が、この可動の注射針ハブ56により支持されている。1つの非限定的な例では、注射針58は、少なくとも27ゲージ針である。注射針ハブ56および注射針58は、表面54に対して実質的に垂直に延びる軸Aに沿って、注射針58の少なくとも先端58aが注射器ハウジング52に収められる退避位置(
図2)と、注射針58の少なくとも先端58aが空所54aを介しおよび針シールド10の開口14を介して(以下でより詳細に述べられるように)注射器ハウジング52から突出する注射位置(
図4から
図6)と、の間を、軸方向に移動可能である。
【0014】
付勢部材60は、注射針58と動作接続され、注射針ハブ56および注射針58を退避位置から注射位置へ駆動する。図示の実施形態では、付勢部材60は、収縮状態(
図2)から伸張状態(
図4)へ伸張可能なコイルばねの形態である。図示の実施形態では、コイルばね60は、注射針ハブ56と、押下可能な、注射器50の起動ボタン組立体62と、の間に取り付けられており、つまり、ばね60は、一端で起動ボタン組立体62に突き当たるとともに、他端で注射針ハブ56に突き当たっている。収縮(つまり、エネルギ蓄積)状態では、コイルばね60は、注射針ハブ56および注射針58を注射位置へ駆動することが妨げられる。伸張(つまり、エネルギ解放)状態への解放(概して、起動ボタン組立体62を押すことによる)に伴い、コイルばね60が、注射針ハブ56および注射針58を注射位置へ駆動する。本技術分野の当業者により理解されるように、付勢部材60は、付勢する力を蓄積しおよび解放することが可能な他の部材の形態に代えることも可能である。非限定的な例には、他のばね(例えば、トーションばねまたはリーフばね)、弾性バンド等が含まれる。これに代え、付勢部材60は、注射針ハブ56および注射針58に直線運動の力を印可可能に構成されたアクチュエータの形態であってもよい。
【0015】
針シールド10に戻り、針シールド10、例えば、ポリマ製の針シールド10は、注射器ハウジング52に対し、本技術分野の当業者により充分に理解されるように、移動可能に接続されている。図示の実施形態では、針シールド10は、注射器ハウジング52に対し、皮膚接触面54の空所54a近傍で、例えば、針シールド10の端部近傍のピン接続子53を介して枢動可能に取り付けられている。針シールド10は、第1位置と、第2位置と、の間で移動可能である。第1位置(
図4)では、針シールド10は、注射器50の皮膚接触面とおよそ同一平面内に延在するが、本開示は、そのように限定されるものではない。第2位置(
図1、2、7)では、針シールド10は、軸Aに関して皮膚接触面54から離れるように、つまり、下方に回転させられる。第2位置では、針シールド10の開口14は、軸Aに関して注射針58がいかなる位置にあってもその先端58aよりも上下方向で下方にある。以下でより詳細に述べられるように、針シールド10が第2位置にありかつ注射針58が注射位置にある場合に、針シールド10は、注射針58の先端58aを覆う(
図7)。図示の実施形態では、針シールド10は、コイルばね64により第2位置へ付勢されるが、本開示は、そのように限定されるものではない。これに代え、針シールド10は、他の形態の付勢部材(限定のない単なる例示として、代替的な付勢部材60として先に掲げられたもの等)または単に重力により、第2位置に付勢することも可能である。
【0016】
図3に最もよく示されるように、針シールド10は、開口14を画定するベース表面12を備える。針シールド10は、ベース表面12から上方に延びる少なくとも1つのポスト16(図示の実施形態では、一対のポスト16)をさらに備える。片持アーム18は、ポスト16からベース表面12に向けて下方に延在する。片持アーム18は、フランジ付きの自由端18aを備え、換言すれば、アーム18の自由端に、アーム18に対しておよそ横方向に延びるフランジ部18aが設けられている。片持アーム18は、フランジ付きの自由端18aが、針シールドの開口14に配置され、横方向に延びるフランジ部18aが、ベース表面12が延びる平面と実質的に同一の平面に沿って延び、これにより、針シールドの開口14を部分的に塞ぐように傾けられるように寸法付けられている。
【0017】
使用者の皮膚表面に注射器50を置く前に、注射針58は、針シールドの開口14を通過することが妨げられている(
図2)。つまり、針シールド10が第2位置にある場合に、注射針58は、開口14と軸方向に整列しておらず、片持アーム18のフランジ付きの自由端18aは、開口14を介する注射針58の進路を遮蔽する。反対に、注射器50が(注射前に)使用者の皮膚表面に置かれると、針シールド10を(針シールド10を第2位置に付勢する力に抗って)第1位置に移動させ、針シールドの開口14が注射針58と軸方向に整列する。つまり、針シールド10が第1位置に動かされかつ注射針58が退避位置にある場合に、針シールドの開口14のうち、片持アーム18のフランジ付きの自由端18aにより塞がれていない一部が、注射針58と軸方向に整列する。このような構成では、フランジ端18aは、注射針58から外れた位置にある。よって、注射器50が使用者の皮膚表面に置かれると、注射針58が注射位置に動かされるなかで、針シールドの開口14を介して注射器50の空所54aを通過し、使用者に達するように、注射針58を注射位置へ移動させることが可能である(
図4)。
【0018】
例えば、薬剤の注射が完了した後、使用者(または他の個人)は、使用者の皮膚表面から注射器50を取り去る。よって、(注射針58が注射位置に残されたままで)皮膚表面から注射器50が取り去られると、付勢する力(重力またはバネ64の付勢力のいずれであってもよい)針シールド10を第2位置へ復帰させる。(注射針58が針シールドの開口14の塞がれていない部分と整列する)第1位置から(注射針58が針シールドの開口14と軸方向に整列せず、片持アーム18のフランジ付きの自由端18aが開口14を介する注射針58の進路を遮蔽する)第2位置への付勢力のもとでの針シールド10の漸進的な運動により、針シールドの開口14のうち、少なくとも塞がれていない部分が、注射針58との軸方向の並びから外れるように徐々に移動させられる。
【0019】
図5と
図6との間に示されるように、片持アーム18のフランジ端18aは、第1位置(
図4)から第2位置(
図7)に向けた針シールド10の移動の間に、注射位置にある注射針58と接触する。片持アーム18は、弾性的に柔軟な構成を有し、注射針58よりも柔軟である。つまり、注射針58は、片持アーム18よりも大きな曲げ剛性、つまり、曲げ変形に対する抵抗を、本技術分野の当業者により充分に理解される態様で定めるように構成されている。例えば、片持アーム18は、ポリマ材料からなるものであってもよく、注射針58は、片持アーム18を構成するポリマ材料の曲げ剛性よりも大きな曲げ剛性を示す金属材料からなるものであってもよい。よって、片持アーム18は、注射針58よりも顕著な可撓性を有する。
【0020】
よって、針シールド10が第1位置から第2位置へ復帰する際に、注射針58が注射位置にあり、片持アーム18のフランジ端18aと接触すると(
図5)、注射針58は、片持アーム18を曲げられていない休止位置から撓ませ(
図6)、つまり、弾性的に湾曲させる。片持アーム18の撓みは、フランジ端18aを一時的に脇へ退かせ、針シールドの開口14の塞がれていない部分を拡大させて、針シールド10が注射針58を越えて回転し、第2位置に到達することを可能とする。針シールド10が注射針58の先端58aを越え、注射針58が片持アーム18を解放すると、片持アーム18は、曲げられていない休止位置に復帰する(
図7)。
図7に示されるように、針シールド10が第2位置へ復帰する際の、片持アーム18の、曲げられていない休止位置への復帰により、片持アーム18のフランジ付きの自由端18aが、針シールドの開口14を介する注射針58の進路を再び妨げるようになる。
【0021】
先に述べられたように、針シールド10が第2位置にあり、注射針58が注射位置にあるときに、針シールド10は、注射針58の先端58aを覆うことで、使用者または他の個人を、さもなければその個人にけがをさせるかまたは感染させかねない使用後の注射針58の先端58aとの誤った接触から保護する。しかし、使用者の皮膚表面から注射器50が取り去られ、針シールド10が第2位置に復帰して、注射針の先端58aを覆うと、バネ64の付勢力に対向しかつこれを上回る力による、針シールド10とのその後の誤った接触により、針シールド10が第1位置に向けて移動させられ、つまり、針シールド10が収納される。
【0022】
図8に示されるように、第2位置から第1位置に向けた針シールド10のその後の収納により、注射針ハブ56および注射針58が退避位置に向けて軸方向に移動させられ、注射針58が針シールド10から潜在的に突き出ることが妨げられるという利点が得られる。
図8に示されるように、片持アーム18のフランジ付きの自由端18aは、そのような動作に際して注射針58と直に接触し、例えば、針先58aと接触する。幾つかの実施形態では、注射針58は、本技術分野の当業者により充分に理解される態様において、コイルばね60の剛性よりも大きな剛性を発揮する。例えば、注射針58は、コイルばね60よりも大きな剛性を発揮する材料からなるものであってもよく、コイルばね60は、注射針58の剛性よりも小さな剛性を発揮するように選択することが可能である。。
【0023】
よって、
図8に示されるように、針シールド10の、第2位置から第1位置への針シールド10のその後の収納の間における注射針58との接触により、単に注射針58が曲げられるだけでなく、注射針58および注射針ハブ56が退避位置に向けて押し戻され、コイルばね60が圧縮されて、収縮状態へ復帰させられる。幾つかの場合に、主にコイルばね60を収縮させて、注射針ハブ56および注射針58を退避させることに加え、注射針58を、注射器ハウジング52に向けて移動させながら少なくとも僅かに湾曲させることも可能である。これに代え、注射針58の曲げよりも、むしろ、注射針ハブ56および注射針58の退避を生じさせるように、注射針58を曲げに抗して支持することも可能である。例えば、注射針58の曲げを低減させまたは回避するように、片持アーム18を配置することが可能である。しかし、本技術分野の当業者により理解されるように、針シールド10は、そのような動作に際して針シールド10の異なる部分、例えば、ベース表面12が注射針58に接触して、注射針ハブ56および注射針58を退避位置に向けて軸方向に移動させるように構成することが可能である。
【0024】
図9から
図10は、第2実施形態に係る針シールド110を示す。第2実施形態の(注射器150および針シールド110の双方の)参照符号は、先に述べられた第1実施形態(
図1から
図8)のものから百(100)の係数により区別可能であるが、そうでなければ、特に断りがない限り、先に述べられたものと同一の要素を示す。本実施形態に係る針シールド110は、先の実施形態のものと実質的に近似する。よって、それらの実施形態の間の特定の近似点および動作モードに関する記載は、本明細書において、限定を目的とするものではなく、簡潔さおよび便宜上の理由により省略される場合がある。
【0025】
針シールド110の、
図1から
図8の実施形態に対する一つの違いは、針シールド110が第2位置にあり、注射針ハブ156および注射針158が注射位置にあるときに、第1位置に向けた針シールド110の動きにより、注射針158が退避位置に向けて軸方向に間接的に動かされる(退避させられる)ことである。
【0026】
図9および
図10に示されるように、針シールド110は、針シールド110のベース表面112から注射針ハブ156に向けて上方に延びる片持アーム118を備える。片持アーム118は、その上端部に、フランジ付きの自由端118aを画定する。つまり、フランジ部118aは、片持アーム118の上側の自由端またはその近傍において、片持アーム118から横方向に延在する。片持アーム118は、注射針158が注射位置にある場合の、針シールド110の第2位置から第1位置に向けた移動の間に、注射針158ではなく、注射針ハブ156と係合し、注射針ハブ156を注射器ハウジング152のなかへ軸方向に移動させて、注射針ハブ156および注射針158を退避させるように構成されている。
【0027】
反対に、注射前に(
図9に実線により示す片持アーム118)、注射針ハブ156は、片持アーム118から外れた状態にある。つまり、片持アーム118は、注射針ハブ156および注射針158が退避位置にある場合に、例えば、注射器150を使用者の身体に初めに置く際に、針シールド110の第2位置から第1位置への移動の間に片持アーム118が注射針ハブ156と係合せず、他の方法により干渉しないように配置されている。その後、片持アーム118はまた、注射針ハブ156および注射針158の、注射のための退避位置から注射位置への移動と干渉しない。
【0028】
注射後、注射器150が使用者の皮膚から取り去られ、針シールド110が第2位置へ復帰すると、
図10に示されるように、針シールド110が第1位置に向けて押し戻された場合に、片持アーム118は、注射針ハブ156と接触し、注射針ハブ156および注射針158を退避位置に向けて退避させる(
図9に破線により示す片持アーム118)。図示の実施形態では、注射針ハブ156は、片持アーム118のフランジ付き端部118aと係合するように構成された、注射針ハブ156から延びるフランジ付き部材156aを備えるが、本開示は、そのように限定されるものではない。
【0029】
以上で述べられた実施形態に対し、その広義の発明概念から逸脱することなく変更を加え得ることが、当業者により理解される。よって、本開示は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、本開示の精神および範囲における、添付の請求の範囲に記載される種々の変更例を含むことが意図されたものである。