(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】コア実装部のための形状適合型リテーナおよびこれを用いて製造された誘導性構成要素
(51)【国際特許分類】
H01F 17/06 20060101AFI20230629BHJP
H01F 27/30 20060101ALI20230629BHJP
H01F 27/26 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
H01F17/06 K
H01F17/06 F
H01F17/06 A
H01F27/30 101C
H01F27/26 160
(21)【出願番号】P 2022522677
(86)(22)【出願日】2020-10-13
(86)【国際出願番号】 EP2020078709
(87)【国際公開番号】W WO2021074114
(87)【国際公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-06-06
(31)【優先権主張番号】102019215802.1
(32)【優先日】2019-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507125295
【氏名又は名称】スミダ・コンポーネンツ・アンド・モジュールズ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケインベルガー,ラインホルト
(72)【発明者】
【氏名】ピルスル,ライナー
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-50534(JP,A)
【文献】国際公開第2014/10749(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102009046570(DE,A1)
【文献】欧州特許出願公開第2835805(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第110060846(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00-27/06
H01F 27/08
H01F 27/23-27/26
H01F 27/28-27/29
H01F 27/30-27/32
H01F 27/36
H01F 27/42
H01F 30/00-38/12
H01F 38/16
H01F 38/42
H01F 41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁場を誘導するために用いられるコア実装部
(190,290)を収容するためのリテーナ
(100,100A,200,200A)であって、前記リテーナは、少なくともいくつかの領域において、寸法公差を補償するために前記コア実装部
(190,290)の輪郭に適合させることができるように変形可能となるように構成され、
前記コア実装部
(190,290)は閉じた形状を有するコアであり、
電気巻線
(270,271,272)は前記リテーナ
(100,100A,200,200A)上に装着
することができ、
前記リテーナ(100,100A,200,200A)は、少なくともいくつかの区域において、内周端縁領域と、その反対側に配置された外周端縁領域とを備え、前記内周端縁領域および前記外周端縁領域は、ばね要素として非直線的に延在する網状組織(113)によって互いに接続されている、リテーナ
(100,100A,200,200A)。
【請求項2】
前記リテーナ
(100,100A,200,200A)は少なくとも1つの弾性領域
(120,220)を含む、請求項1に記載のリテーナ
(100,100A,200,200A)。
【請求項3】
前記リテーナ
(100,100A,200,200A)は、
さらに別のばね要素として前記少なくとも1つの弾性領域
(120,220)に
形成される、請求
項2に記載のリテーナ
(100,100A,200,200A)。
【請求項4】
前記弾性領域
(120,220)は、前記弾性領域
(120,220)において用いられる材料構成要素の弾性から少なくとも部分的にその弾性特性を得る、請求項2または3に記載のリテーナ
(100,100A,200,200A)。
【請求項5】
前記リテーナ
(100,100A,200,200A)は、前記コア実装部を収容するように構成され、前記コア実装部は
、環状コア形状または環状コア形状の一部を有する
、請求項
1から4のいずれか1項に記載のリテーナ
(100,100A,200,200A)。
【請求項6】
少なくともいくつかの領域において前記コア実装部
(190,290)の前記輪郭への適合により、前記リテーナが、
前記リテーナ(100,100A,200,200A)と
前記コア実装部との間に締め付け効果をもたらす保持力を及ぼすように構成される
、請求項
1から5のいずれか1項に記載のリテーナ
(100,100A,200,200A)。
【請求項7】
前記網状組織
(113)は、直角をなさない態様で前記
内周端縁領域および前記
外周端縁領域につながっている、請求項
1に記載のリテーナ
(100,100A,200,200A)。
【請求項8】
第1の区域
(110,130,140)および第2の区域
(110,130,140)を備え、前記第1の区域
(110,130,140)および前記第2の区域
(110,130,140)は、
前記コア実装部(190,290)の磁場誘導方向に直列に配置されるとともに、前記磁場誘導方向に沿って弾性的に作用する領域
(120,220)によって接続される
、請求項
1から7のいずれか1項に記載のリテーナ
(100,100A,200,200A)。
【請求項9】
前記コア実装部
(190,290)が非直線形状である場合、前記磁場誘導方向に弾性的に作用する前記領域
(120,220)は、前記リテーナ
(100,100A,200,200A)の
外周側にのみ設けられている、請求項
8に記載のリテーナ
(100,100A,200,200A)。
【請求項10】
前記第1の区域および/または前記第2の区域
(110,130,140)は、少なくとも1つの仕切り壁
(150,250)によって前記磁場誘導方向に規定される、および/または仕切られる、請求項
8または
9に記載のリテーナ
(100,100A,200,200A)。
【請求項11】
誘導性構成要素(280)であって、磁場を誘導するためのコア実装部
(290)と
、請求項
1から10のいずれか1項に記載の前記コア実装部
(290)を収容するためのリテーナ
(200,200A)と、巻線
(270,271,272)とを備え、前記巻線
(270,271,272)は、前記コア実装部
(290)の少なくとも一部に沿って前記磁場誘導方向に延在し、前記リテーナ
(200,200A)および前記コア実装部
(290)を取り囲む、誘導性構成要素(280)。
【請求項12】
前記コア実装部
(290)は、閉じた形状、特に、環状コア形状もしくは楕円コア形状、または、環状コア形状もしくは楕円コア形状の一部を有する、請求項
11に記載の誘導性構成要素。
【請求項13】
前記リテーナ
(200,200A)と相互に作用して前記コア実装部
(290)を保持する、請求項1から12のいずれか1項に記載のさらに別のリテーナが設けられ、前記巻線が前記リテーナ
(200,200A)および前記さらに別のリテーナを取り囲む、請求項
11または
12に記載の誘導性構成要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、1つ以上の巻線を適切に装着するために、コア実装部がコイル本体またはリテーナによって収容されている誘導性構成要素に関する。
【背景技術】
【0002】
原則的に磁場を伝導させるコア材料と1つ以上の巻線とから構成される誘導性構成要素を製造する場合、可能な限りコンパクトな全体構造と、誘導性構成要素への巻付けを可能にする効率的な方法とを得るために、しばしば、コア実装部のためのそれぞれのコイル本体またはリテーナもしくは受け部を設けなければならない。コア材料が非線形の形状を有しており特に環状コアの形状している誘導性構成要素を製造する場合、巻線が絶縁コア材料に直接適用される変形例がある。この場合、コア絶縁部は、たとえばエポキシ樹脂をベースとしている。しかしながら、このタイプの構成要素は、電気的特性および機械的特性が限られているため、採用できないか、または、多くの適用分野において限られた範囲までしか採用できない。巻線とコア実装部との間の絶縁に関して要求のより厳しい要件に特に注意を払わなければならないような他の変形例では、環状コアを保持して収容するために、コイル本体とも称され得る対応するリテーナが用いられる。
【0003】
コア実装部の工業生産高に関わらず、コア実装部の焼結などの関連する工程は、コア実装部の寸法に関して有意な製造公差をもたらし、これらの公差は、環状コアなどのコア形状がより複雑になるのにつれて著しく高まる傾向がある。したがって、製造公差の高いコア実装部が同時に絶縁を向上させた状態で設けられる場合、それぞれのリテーナは、典型的には、製造中の最大許容公差(たとえば、環状コアの内径および/または外径の差)が考慮されるように製造される。別の可能性として、たとえばテープなどの形態の追加の絶縁部を適用することが挙げられる。
【0004】
したがって、非線形の形状を有するとともに特に環状コアを備えたこのタイプの誘導性構成要素を製造する場合、結果として、大量の作業を伴う。なぜなら、特に、コア実装部とリテーナと巻線との間に遊びがないコンパクトな構造を最終的に得るために、絶縁を追加する必要があることに加えて寸法公差が考慮されなければならないので、追加の後処理ステップが必要となるような構成要素が得られるからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、上記で概説した従来技術の技術的問題を回避するかまたは少なくとも低減させつつコア実装部および当該コア実装部から製造される誘導性構成要素を作成することができる装置を規定することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の局面に従うと、上述の目的は、磁場を誘導するためのコア実装部を収容するためのリテーナによって満たされる。リテーナは、寸法公差を補償するために少なくともいくつかの領域においてコア実装部の輪郭に適合させることができるように変形可能となるように構成される。コア実装部は、閉じた形状を有するコアであって、巻線はリテーナに取付けられている。コアは、円形、楕円形、または角度の付いた形状を有する円環体として閉じた形状を有するように形成することができる。コアは、同様に、円形、楕円形、または角度の付いた形状の断面を有し得る。断面積のサイズは、特に角度の付いた断面形状の場合、円環体に沿って変化し得る。
【0007】
リテーナのうち少なくとも1つの領域に変形性があるので、本発明に従ったリテーナは、コイル本体またはコイル本体部材として見なすこともでき、以下の特性を有する。当該リテーナの特性とは、当該少なくとも1つの領域の形状を変化させることによって外形(すなわちコア実装部の輪郭)に適合させることが可能となるという理由から、最大許容寸法公差に対応する大型の製造物でも使用することができるという特性である。したがって、コア材料の輪郭に対するこの適合性は、少なくとも輪郭を適合させるための特定のいくつかの領域において、リテーナとコア実装部との間を密接させることで達成され、これにより、コア実装部の材料とリテーナとの間の遊びの量が増えることが概ね回避される。上述の従来の方法では、リテーナとコア実装部との間に比較的大きな隙間が生じることが多い。なぜなら、当該構成はリテーナについての最大許容寸法公差に従って作成されなければならないからである。但し、通常、大きな製造公差が生じることは極めてまれである。従来より、これらの差は、後で、複雑な手法で補償される必要がある。リテーナに変形性があり、これにより、リテーナにコア実装部の輪郭への適合性があるので、典型的には本発明に従ってコア材料の追加の絶縁を得ることができる。これは、従来より、費用を掛けてテープで包むことによって行なわれることが多い。なぜなら、リテーナ自体が効率的な絶縁部として機能し得るからである。
【0008】
有利な変形例においては、本発明に従ったリテーナは少なくとも1つの弾性領域を有する。これは、本実施形態では、少なくとも1つの領域が弾性特性を有しており、したがって、リテーナに変形が加えられた場合に当該領域を元の形状に戻そうとする復元力を与えることを意味する。このようにして、少なくとも1つの領域の弾性によりリテーナの変形性をもたらすことができるとともに、コア材料の輪郭への効率的かつ機械的に安定した適合を同時に達成することができる。
【0009】
本願では、「弾力性」または「弾性」という語は、安定した平衡形状(すなわち、いかなる外力も及ぼさない形状)からその形状が変化する場合、変形の程度に応じて復元力が常に生成されるが、これは、このような復元力およびそれによる弾性が、材料特性、または、たとえば螺旋ばねなどの形状の特別な幾何学的構造と組合わされた材料特性、または、プラスチック材料の特性などの材料特性と幾何学的形状との組合わせ、のいずれによってもたらされるかに関係するものではないということを意味するものと理解されるべきである。
【0010】
有利な実施形態では、リテーナは、少なくとも1つの弾性領域にばね要素を備える。これは、この実施形態における少なくとも1つの領域の弾性特性が、ばね要素を設けることによってもたらされるものであって、当該ばね要素の弾性特性が、特に、ばね要素を作製する材料であるプラスチック材料の基本的な材料特性と相まって、対応する幾何学的形状によって決定されることを意味している。ばね要素は、リテーナの基本的材料から作成することができ、弾性効果が得られるように適切な形状で設けることができる。他の変形例では、ばね要素は、リテーナの他の領域の基本的材料とは異なる好適な材料で作製される。
【0011】
さらに有利な実施形態では、弾性領域は、当該弾性領域において用いられる材料構成要素の弾性から少なくとも部分的にその弾性特性を得る。これは、これらの実施形態では、基本的に弾性特性を有する材料が少なくとも1つの領域に存在することにより、この領域に弾性特性を与えることを意味する。少なくとも1つの弾性領域のために特別な幾何学的形状を設ける必要はないかもしれないが、他の変形例では、上述のように、所望の全体的な弾性度を設定できるようにするために、弾性材料の特性に加えて適切な幾何学的構造を用いることもできる。
【0012】
概して、たとえば、材料特性および/または幾何学的形状を選択する場合、製造中に受ける公差が比較的小さいので、リテーナが容易に制御可能な態様でコア実装部の輪郭に適合されることに留意されたい。たとえば、多くの種類のプラスチック材料の材料特性は、予め周知であるか、または、適切な態様で設定することができるとともに、大量生産される場合でも非常に狭い範囲内で維持することができる。同じことが、ばね要素等のために特定の幾何学的形状を設ける場合にも当てはまり、したがって、これらばね要素等は設計手段に起因して低い公差で規定される。
【0013】
本発明に従うと、コア実装部を収容するためのリテーナは、非線形形状を有するように構成される。これは、コア実装部と、これにより、当該コア実装部に対応するリテーナとが非線形の形状を有し、これにより、上述のように形状を効率的に適合させることができることを意味する。特に、閉じた形状またはその一部、たとえば、環状もしくは楕円形のコア形状、または環状もしくは楕円形のコア形状の一部、を有するコアの場合、コア実装部の輪郭に対するリテーナの適合性により、コンパクトな寸法、比較的小さい遊び、および高い機械的堅牢性を可能にするコア実装部の対応する領域とともに、リテーナの相対的に「嵌まり合った」領域がもたらされる。
【0014】
さらに有利な実施形態では、リテーナは、少なくともいくつかの領域においてコア実装部の輪郭に適合した状態で、保持力を及ぼして、結果として、受け部とコア実装部との間に締め付け効果をもたらすように構成される。これは、コア実装部がリテーナの少なくともいくつかの領域の間で締め付けられるようなリテーナの全体的な幾何学的形状などのリテーナの1つ以上の特性が設定されていることにより、コア材料およびリテーナのコンパクトで機械的に安定した実体要素を作り出し、結果として、リテーナをコア実装部に取付けるためにさらに別の機械的装置が不要になるので後続の巻線にとって利点になるということを意味している。
【0015】
さらに別の変形例では、リテーナは、少なくともいくつかの区域において、網状組織によって互いに接続される第1の端縁領域と、その反対側に配置される第2の端縁領域とを備える。一方では、網状組織によって互いに接続される端縁領域を設けることによって、材料が高い割合で節約されることとなる。他方で、2つの端縁領域間の網状組織は、リテーナの2つの端縁領域間に収容されるべきコア実装部の輪郭に対する適合性を高めることに寄与する。特に、2つの端縁領域の間に網状組織を設けることにより、このサイズの固体材料を用いる場合には当てはまらないであろう多くの種類の材料でも一定程度の弾性が得られる。
【0016】
有利な変形例では、網状組織は、直角をなさずに第1の端縁領域および第2の端縁領域につながっている。これは、網状組織が直角以外の角度でそれぞれの端縁領域に接続されており、このため、網状組織の相応により高い変形性と、これにより、2つの端縁領域の互いに対するずれとが可能となるような特定の好ましい方向が既に規定されていることを意味する。この文脈において、直角以外の角度は、90°±10°の角度を除外するものと理解されるべきである。これは、80°以下の角度と100°以上の角度とが直角をなしていないとみなされることを意味する。
【0017】
さらに別の有利な変形例では、網状組織は非直線形である。これは、網状組織自体が、非直線形状であるために或る程度の弾性をもたらすことができ、このため、さらに別の追加の手段なしでも当該形状の適合性が全体的に高まることを意味する。非直線形状は、単純な凸形または凹形の曲線形状であり得るか、またはS字形構造などのより複雑な構造を含み得る。
【0018】
また、特に網状組織のために非直線形状が用いられている場合、当該網状組織がそれぞれの端縁領域に約90°の角度でつながっていることにより、十分な弾性を獲得できることにも留意されたい。結果として得られる弾性が十分であると評価され、結果として達成される材料節約がより重要な基準と見なされるという条件であれば、2つの端縁領域にほぼ直角に接続されている直線状の網状組織を用いることもできる。
【0019】
さらに別の有利な実施形態では、リテーナは、コア実装部の磁場誘導方向に直列に配置されるとともに磁場誘導方向に沿って弾性的に作用する領域によって接続される、第1の区域および第2の区域を備える。したがって、本実施形態では、「長手方向」に前後に配置された少なくとも2つの区域が設けられており、これら2つの区域は、弾性的に、したがって変形可能に互いに接続されている。したがって、長手方向(すなわち、コア実装部の磁場誘導方向)は、コア実装部およびリテーナに基づいて誘導性構成要素を生成するために設けられる巻線の面に対してほぼ垂直な方向であると理解されるべきである。したがって、直列に配置された2つの区域間において弾性的に作用する領域によって接続されていることにより、特に非線形形状を有するコア材料の場合、コア実装部の輪郭に効率的に適合させることができる。他の変形例では、それぞれのコア材料のために、たとえば、環状コア形状などの閉じたコア形状のために、3つ以上の区域が設けられており、このため、コア実装部の輪郭に対して当該形状がさらにより効率的に適合されることとなる。
【0020】
有利な変形例では、非線形形状のコア実装部の場合、磁場誘導方向に弾性的に作用する領域が、リテーナの径方向外側のみに設けられる。この手段では、特に、対応する間隙を径方向内側に設けることができるので、コア実装部の輪郭に対する顕著な適合が確実にされる。このようにして、径方向内側において起こり得る機械的障害が回避される。
【0021】
さらに別の有利な実施形態では、第1の区域および/または第2の区域は、少なくとも1つの仕切り壁によって磁場誘導方向に規定される、および/または仕切られる。したがって、当該仕切り壁は、対応する機能的な部分領域が第1の区域および/または第2の区域上に存在するように適切な態様で当該第1の区域および/または当該第2の区域を分割する。機能的に仕切ることにより、1つ以上の巻線を効率的に装着するとともに、関連する機械の終了または停止を行なうことが可能となる。さらに、仕切り壁はまた、適用されるべき1つ以上のそれぞれの巻線の絶縁強度をより高めることに寄与し得る。なぜなら、たとえば、それぞれが比較的小さい電圧降下のみを伴うだけであるが仕切り壁によって互いから確実に隔離されているいくつかの電圧範囲が規定されるからである。たとえば、第1の区域および/または第2の区域ならびにさらに別の区域は、このようなさらに別の区域が設けられている場合、それら区域のそれぞれの前端および後端においてそれぞれの仕切り壁によって規定され得る。前端および後端における仕切り壁に加えて、または当該仕切り壁の代わりに、対応する仕切りが適切であると見なされる場合、他の変形例では、前端と後端との間に仕切りが設けられる。
【0022】
本発明のさらに別の局面に従うと、冒頭で述べた目的は、誘導性構成要素によって満たされる。誘導性構成要素は、磁場を誘導するためのコア材料を有するとともに、コア実装部を収容するためのリテーナを含む。この場合、リテーナは、上述されているとともに以下の詳細な説明で特定される特性を有する。さらに、誘導性構成要素は、コア実装部の少なくとも一部に沿って磁場誘導方向に延在するとともにリテーナおよびコア実装部を取り囲む巻線を含む。
【0023】
本発明に従ったリテーナにより、本発明に従った誘導性構成要素は、コア実装部とリテーナとが少なくとも特定のいくつかの領域において嵌まり合い、これによりコンパクトな機械ユニットを形成するような構造を有する。これは、特に、コア材料のより複雑な幾何学的形状、たとえば、環状コアまたは楕円形コアなどの形状をした閉じたコア形状などに該当し、この場合、リテーナの設計に応じて外径および内径および高さに効率的に適合させることができる。
【0024】
たとえば、いくつかの変形例におけるリテーナは、ばね要素または弾性領域がそれぞれ、コア実装部の外径に効率的に適合させることができるように、上述したように、外側領域上に設けられるように構成される。一方で、湾曲コア形状または環状コア形状の場合、特定の実施形態の変形例における内径は、上述した網状組織を適切に選択することによって効率的に適合され得る。
【0025】
さらに別の有利な変形例では、リテーナは、概して、その幾何学形状または他の特性の観点から、巻線よりも前にリテーナとコア実装部との間に付加的な機械的接続が不要となるように構成される。いくつかの変形例において上述したように、これは、リテーナの全体的な幾何学的形状、弾性などの特性を適切に選択することによって機械的な締め付け効果が生じることを意味する。コア実装部とリテーナとの間を密接させることにより、それぞれの間隙を防止するためのさらに別の手段は不要となる。これにより、特に、リテーナ自体の材料が、大きな領域においてコア材料を径方向に囲む場合に絶縁部として機能し得るので、さらに別の追加の絶縁対策は不要となる。これは、コア材料と巻線との間に必要とされる可能性のある高い絶縁耐力が、リテーナ自体およびその材料厚さによってもたらされることを意味する。
【0026】
また、典型的な巻線技術は、高張力下で実施されるものもあるが、採用された場合、特に大径のワイヤを用いる際に被覆部および絶縁部への損傷をリテーナにより防止することもできる。上述のようなさらに別の手段、たとえば仕切り壁を用いることで、絶縁強度をさらに向上させることができる。
【0027】
本発明に従うと、コア実装部は非線形形状の形態で存在するものであり、特に、閉じたコア形状または閉じたコア形状の一部が採用可能であり、この場合、上記で提示した利点が特に明確に発揮されることとなる。
【0028】
さらに別の有利な実施形態では、さらに別のリテーナが誘導性構成要素に設けられるとともに前述の特性を有し、リテーナと相互に作用してコア実装部を収容および保持する。この場合、巻線は、リテーナおよびさらに別のリテーナを囲んでいる。言い換えれば、この変形例では、リテーナ全体が、同じ構成を持つ2つのリテーナの形態で設けられており、これら2つのリテーナは、それらの間にコア実装部が確実に収容されるように、対応して相補的に配置されている。このようにして、コア材料をブラケットに装着する工程を簡略化することができる。さらに、対応する同一のリテーナは、複雑な金型を必要とすることなく、射出成形などの適切な方法によって製造することができる。
【0029】
ここで、さらに別の例示的な実施形態およびこれまでに提示されてきた実施形態を、添付の図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】コア材料を収容するためのリテーナを示す概略斜視図であって、環状コアのコア形状を有する図示される実施形態におけるコア実装部の輪郭に対して部分的に適合されるコア材料を構造的に実質的に同様に収容するさらに別のリテーナと相互に作用するリテーナを示す図である。
【
図2A】少なくとも1つの巻線が
図1に示すリテーナの少なくともいくつかの特性を有するリテーナ上にわたって設けられており、コア実装部がその中に収容されている誘導性構成要素を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
ここで、添付の図面を参照して、さらに別の実施形態をより詳細に説明するとともに、これまで説明してきた実施形態のさらに別の特徴も適宜示すこととする。
【0032】
図1は、磁場を誘導するように構成されたコア金型またはコア実装部190を収容するために用いられるリテーナ100を示す斜視図である。本願では、コア材料は、
図1には示されていないが、特に巻線を誘導するために製造される磁化可能材料と見なされるべきである。これは、コア材料が磁化材料を含む場合も含む。
【0033】
図示される実施形態では、コア材料190は非直線形状を有するものであり、すなわち、磁場の方向と実質的に一致するコア実装部190の「長手方向」は、交番磁界または一方向磁界のいずれが考慮されるかにかかわらず、非直線的な伝搬方向に対応している。図示される実施形態では、コア実装部190は閉じた形状を有しており、すなわち、図示される実施形態におけるコア実装部190は、磁場伝搬または磁場誘導方向に沿って開始点および終了点を有していない。本明細書では環状コア形状とも称される略円形の形状が
図1に示されているが、上述のように、閉じたコア形状の他の形状を用いることもできる。たとえば、コア実装部190は、意図される用途に応じて、かつコア実装部190の製造が複雑であることを考慮して、楕円形、長方形、正方形などの形状であり得る。さらに、非線形の形状はまた、コア実装部190のうち少なくともいくつかの部分が、たとえば、所望の形状等を形成するように後に組み立てられ得る環状コア形状の部品の形状で、直線とは異なる磁場誘導方向を規定しているような任意の形状を意味するものと理解されるべきである。さらに、実際の空隙として意図される1つ以上の「空隙」を設けることができるとともに、たとえばリテーナ100によって適切に規定されるか、または必要に応じて、磁場誘導材料の隣接する区域間にある適切な磁化不可能な材料によって形成されるものであることに留意されたい。
【0034】
リテーナ100は、少なくとも特定のいくつかの領域において、たとえば、全体的に110、130、140としてここに示されている特定のいくつかの区域において、コア実装部190の輪郭に適合するように構成される。これは、程度の差はあるものの顕著な機械的接触と、これにより締め付け効果とが与えられるように、リテーナ100の材料とコア実装部190との間で少なくとも部分的に区域110、130、140において機械的接触が与えられることを意味する。言い換えれば、リテーナ100は、概して、変形可能となるように構成されており、これにより、少なくとも区域110、130、140における輪郭の適合を可能にする。この目的のために、リテーナ100の弾性挙動を当該リテーナ100のうち少なくともいくつかの部分において確実にするいくつかの領域をリテーナ100に設けることができる。たとえば、コア実装部190の輪郭に適合される形状を呈する区域110、130、140はそれ自体が弾性領域として機能することができ、および/または、リテーナ100に或る程度の弾性を付与する1つ以上のさらに別の領域を設けることができる。
【0035】
たとえば、少なくとも1つの領域120が設けられる。当該少なくとも1つの領域120は、領域120の幾何学的形状および/または材料特性に起因して、特にリテーナ100の外縁において弾性挙動が得られるように、リテーナ100の外側領域に設けられる。図示される実施形態では、弾性領域120は、ばね要素の形状で設けられており、その形状によりリテーナ100の変形を可能にするとともに、特に、円環形状を有するかまたは概して湾曲した形状を有する場合にコア実装部190の外径に適合されるように構成される。
【0036】
図示される実施形態では、ばね要素としての役割を果たす弾性領域120は、コア実装部190の輪郭に少なくとも部分的に適合される領域または区域110および区域130などの2つの区域の間にクランプ状の接続部の形状を有する。これは、ばね要素として作用するとともにリテーナ100に弾性特性を付与する領域120が、区域110のうち対応する外縁領域111を区域130のうち対応する外縁領域に接続し、これにより、概して、リテーナ100に特定の変形性および弾性を付与するだけでなく、特に、コア実装部190の外径に良好な適合性を与えることを意味する。
【0037】
図示される実施形態では、リテーナ100は3つの区域に仕切られており、すなわち、区域110、130および区域140は、収容されるべきコア実装部190の全周を模倣するように仕切られている。したがって、それぞれの区域110、130、140は、たとえば、弾性領域120と同じ構造を有し得るばね要素の形状をした対応する弾性領域によって互いに接続されている。
【0038】
図示される実施形態では、リテーナ100は、射出成形などの任意の好適な製造プロセスを用いて、エラストマ材料等の形状のプラスチック材料などの好適な材料から製造される「一体成形された」材料構成要素として提供される。形状および材料混合物は、コア実装部190の輪郭への適合に必要とされる変形性と場合によっては弾性とが適切な態様で得られるように適切に選択される。一体成形された構成要素の形状で、すなわち構成要素の全体積中の材料混合物がほぼ均一である構成要素として、リテーナ100を設ける場合、単純かつ安価に製造できるので特に有利である。他の変形例では、たとえば、絶縁強度、臨界動作条件下での材料強度などに関して厳密な要件を満たすために、リテーナ100の特定のいくつかの領域においてより複雑な材料組成が必要とされる場合、リテーナ100は2つ以上の異なる材料から構築され得るが、この場合、必要な変形性および弾性が少なくとも領域120および場合によっては区域110、130、140に存在するように、個々の材料の選択および形状が実現される。たとえば、このような材料の混合物は射出成形中に用いることができるか、または、リテーナ100の1つ以上のベース構成要素が製造されたときにさらに別の構成要素を当該ベース構成要素に機械的に取付けることができる。
【0039】
図示される実施形態では、それぞれの網状組織113はまた、それぞれの区域110、130、および140の外縁領域111と内縁領域112との間に、それぞれの外縁領域111と内縁領域112との間の接続要素として設けられる。網状組織113は、図示される実施形態では薄板とも称され得るが、外縁領域111または内縁領域112につながっているものであれば、それぞれの端部領域が「傾斜した」外形を有するように配置される。これは、端縁領域111および112につながっている網状組織113が、図示される実施形態では、直角をなさずにそれぞれの端縁領域111または112につながるように配置されることを意味する。それぞれの区域110、130、140における材料を節約することに加えて、高度の変形性および弾性挙動がこのようにして得られる。なぜなら、特に、網状組織113が、特に内側(すなわち端縁領域112)において直角をなさずに接続することによって、径方向内側および径方向外側への変形を可能にするので、コア実装部190の内側半径に対する顕著な適合性が可能となる。これは、コア実装部190の内側半径に対して所望のとおりに適合させた場合、網状組織113の基本材料に過度に顕著な弾性特性を持たせなくても、網状組織113を、それらの長手方向に対して横断する方向に或る程度まで偏らせることができることを意味する。したがって、たとえば、リテーナ100を装着する際にコア実装部190の内径がより小さいことに起因して、コア実装部190にかかる径方向内向きまたは径方向外向きの力がそれぞれの内側領域112にかかる場合、網状組織113を直角をなさずに配置することによって、過大な労力を払うことなく、網状組織113とこれにより内縁領域112とを相応に変形させるとともに偏らせる。他方では、網状組織113を直角をなさずに配置することによって有利になるこの形状関連の顕著な弾性はまた、内縁領域112とコア実装部190のそれぞれの領域との間の機械的な密接が確実になるように、高度な復元力を提供する。
【0040】
直角をなさずに接続する網状組織113によって付与される形状関連の変形性および弾性が、図示されない他の実施形態においては不要であり、かつ、たとえば、網状組織材料自体によってもたらされる弾性特性が十分である場合、網状組織113はまた、対応する端縁領域111および112に対してほぼ直角につながる網状組織113をもたらす配置で設けることもできる。
【0041】
さらに、図示されていない他の実施形態では、たとえば、変形性および弾性の程度を構造的に設定するために、および/または、たとえば、非常に細いワイヤがリテーナ100上に装着される場合に絶縁強度を高めるために、たとえば、網状組織113のうち少なくともいくつかの間にそれぞれのクロスブレースが必要とされる場合、網状組織113とともに、より複雑な構造を用いることもできる。
【0042】
概して、網状組織113間のそれぞれの距離は、典型的には、巻線とコア実装部190との間の機械的接触がほぼ不可能となるように選択される。したがって、それぞれの区域110、130、140に網状組織113が設けられていたとしても、リテーナ100は全体として巻線とコア実装部190との間において絶縁材料として作用する。
【0043】
有利な実施形態では、
図1に示すように、1つ以上の仕切り壁150がさらに設けられており、リテーナ100上で利用可能な巻線空間を適切に仕切るために用いることができる。たとえば、それぞれの区域110、130、および140は、それぞれの端部において仕切り壁150によって規定されており、それぞれの切込み151または切れ目は、それぞれ、対応する仕切り壁150に設けられており、リテーナ100の全体的な変形性が維持されることを確実にする。切込み151の径方向サイズは、切込みがあるにもかかわらず、区域間で巻線が確実に機械的に区切られるように設計されている。
【0044】
図示されていない他の実施形態では、切込み151はまた、特定の高さを上回ったときに巻線の通過を可能にする一方で巻線が領域120においてコア実装部190に沈む込む可能性のないように、形成することもできる。必要に応じて、区域110、130、140上に装着されるべきそれぞれの巻線区域は、このような態様で、コア実装部190からの十分な絶縁間隔が維持された状態で、領域120にわたって接続することができる。この目的のために、たとえば、切込み151は、巻線が所与の直径を有する場合にコア実装部190との接触が防止されるように、コア実装部190に向かって狭くなるように構成することができる。他方で、切込み151はまた、巻線が切込み151を通過するときに切込み151の上縁の下方に配置されるように選択することができ、これにより、仕切り壁150のこの上縁がリテーナ100の最上点を規定し続けるとともに、表面(たとえばプリント回路基板)上に載り、次いで、それぞれの巻線に接触することなくリテーナ100の上記点によって同様のことが達成される。特に、仕切り壁150はまた、仕切り壁150の上縁が、確実に、最高位置にある対応する巻線面の上方に配置されるように、巻線面の数を基準にして構成され得る。
【0045】
有利な実施形態では、リテーナ100は、それぞれのコア実装部(たとえば、コア実装部190)が、構造的に同一のリテーナ100Aと組合わされて好適な態様で収容され、少なくとも大きく囲まれ、機械的に保持されるように構成される。これは、本実施形態におけるリテーナ100が、当該リテーナ100に対して適切に配向される構造的に同一のリテーナ100Aと組合わせてコア実装部190を収容する、リテーナ全体またはコイルコア全体の「ハーフシェル」であると理解されるべきであることを意味する。両方のリテーナ100、100Aのためにコア実装部190の輪郭への適合が得られるように、これら両方のリテーナ100および100Aは変形、弾性などに関するそれぞれの特性を有する。幾何学的構造に起因して、上述したように、それぞれのリテーナ100、100Aのそれぞれの変形に応じて適切な復元力も生じ、このため、有利な実施形態では、コア実装部190に対するリテーナ100、100Aの追加の機械的固定を省くことが可能となる。これは、構造的に同一であるとともに互いに対して適切に配向された2つのリテーナ100、100Aを用いることにより、2つのリテーナ100、100Aをコアアセンブリ190に適切に押当てることによってコア実装部を容易に封じ込めることができ、これにより、リテーナ100、100Aの特性に起因してそれぞれのリテーナとコア実装部との間に十分な保持力が作り出され、結果として、さらに別の措置を施すことなく、自動巻き付けなどのさらに別の処理が実行可能となることを意味する。
【0046】
特に、リテーナ100、100Aは、組合わされると、コア実装部190の上で、巻線とコア実装部190との間の機械的接触とこれにより起こる可能性のある電気的接触とを確実に防止する確実な絶縁層として作用する。さらに、コア実装部190の起こり得る寸法公差とは無関係に、2つのリテーナ100、100Aはコア実装部と巻線との間に厳密な絶縁距離をもたらす。この絶縁距離は、構造的手段によってのみ、すなわち射出成形金型などを形成することによって、正確に与えられる。したがって、機械的固定に関するさらに別の処理と、起こり得る公差の補償と組合わせて絶縁強度を高めることとは、コア実装部190のためにもはや必要ではなく、結果として、公知の技術に勝る有意な利点が生じる。
【0047】
図2Aは、少なくともいくつかの領域において、コア実装部290の輪郭に適合され得るリテーナ200に基づいて構築される誘導性構成要素280の斜視図を示す。リテーナまたはコイル本体部材200はそれぞれ、たとえば、特に
図1に従ってリテーナ100の文脈において先に説明したように、すべての領域において構築される。環状コアの形状で設けられるコア実装部は、特に2つのリテーナによって、すなわち上述したようにリテーナ200およびさらに別のリテーナ200Aによって、支持されて機械的に固定される。したがって、それぞれの領域220は、リテーナ100を参照して上述したように、特に、リテーナ200、200Aの外径に弾性特性を付与する、それぞれのリテーナ200、200Aの構成要素280に設けられている。
図1に示す実施形態の場合と同様に、3つの区域とこれにより3つの弾性領域220とが
図2Aにも示されているが、他の実施形態においては3つ未満の区域または4つ以上の区域を設けることができ、このことは、コア実装部290の全体的形状により、および/または構成要素280の特定の要件により、有利であることに留意されたい。
【0048】
さらに、独立した巻線であり得るそれぞれの巻線270、271、272が、仕切り壁250によって規定されるそれぞれの領域に装着される。他の場合には、2つ以上の巻線を互いに接続することができ、この場合、仕切り壁250におけるそれぞれの切込み251は、巻線を隣接する区域に移すために用いることができるが、さらには、コア実装部290のうちそれぞれの巻線によって囲まれていない領域においても巻線ワイヤの確実な絶縁および機械的固定を確実にするために、有利には、
図1の文脈において上記において例示した構造を有している。
図2Aに示す有利な実施形態の変形例では、仕切り壁250は、それらの上縁252が構成要素280の「最高」点と、これに対応して「最低」点とを形成するように構成されており、結果として、巻線270、271、272の部品をそれぞれの軸受面に接触させることなく、プリント回路基板などの平坦面への搭載が可能となる。
【0049】
図2Bは、巻線270などのそれぞれの巻線が、コア実装部290と機械的に接触することなく装着され得るように、2つのリテーナ200、200Aがコア実装部290を確実に取り囲んでいる構成要素280の側面図を概略的に示す。側面図から明確に分かるように、構成要素280の最上点252および最下点253は、巻線端部のための実現可能な領域を除いて、仕切り壁251によって規定されており、これにより、プリント回路基板等上での組立てのための確実な機械的止め部を形成する。
【0050】
したがって、誘導性構成要素280は、リテーナ100の文脈において上記で説明した特性を有するリテーナ200、200Aを用いて、時間効率良く構築することができる。なぜなら、第1に、リテーナ200、200Aは、コア実装部290の輪郭に適合することで寸法公差を補償し、次に、弾性特性および弾力特性により十分な機械的保持力をもたらし、結果として、リテーナ200、200Aおよびコア実装部290から構成されるコンパクトな機械ユニットが設けられることとなり、これにより、巻線270、271、272を装着するためのさらに別の処理ステップが不要となるからである。特に、比較的太い巻線ワイヤを巻く際に、巻付けるのに必要な高い張力はコア実装部およびリテーナ200、200Aに破損をもたらすことがなく、このため、自動巻付けプロセス自体は、さらに別の絶縁手段を不要とすることに加えて、従来技術と比較してより堅牢な手法で実行することができる。リテーナ200、200Aをそれぞれ適切な区分に仕切ること、および仕切り壁を設けることにより、有利な実施形態は、適切な配電および高度の絶縁耐力を達成する。なぜなら、たとえば、互いに対して高い電圧差を有する巻線領域同士が仕切り壁によって確実に区切られており、さらに、ばね要素として作用するそれぞれの領域220によって分離されているからである。
【0051】
ばね要素として作用する領域220は、それぞれの内側で互いに接続されていないため、そこでは、良好な変形性とこれによりコア実装部290の輪郭への適合性とが確保され続ける。
【0052】
誘導性構成要素280は、そのサイズおよびその電気的特性を多くの用途に適合させることができる。たとえば、環状コアを備えた構成要素としての本実施形態における構成要素は、約1~10Aのアンペア数で約0.5~5mHのインダクタンスを与えるために、約30mm~70mm、たとえば、約50~55mmの直径を有する。本発明に従った形状適合型リテーナとこれを用いて製造される誘導性構成要素とは、当然ながら、たとえば、異なるサイズ、異なる形状、異なるアンペア数などが必要とされる他の電気用途にも適合され得る。特に、本発明のリテーナは、個々のコア部材を収容するとともに機械的に固定するように構成することができ、結果として、空隙の有無にかかわらず全体として所望のコア形状が形成される。