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特許7304492フレキシブルプリント配線板及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】フレキシブルプリント配線板及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/18 20060101AFI20230629BHJP
   C25D 7/00 20060101ALI20230629BHJP
   C25D 5/10 20060101ALI20230629BHJP
   C25D 5/02 20060101ALI20230629BHJP
   C25D 21/12 20060101ALI20230629BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
H05K3/18 G
C25D7/00 J
C25D5/10
C25D5/02 B
C25D21/12 J
H05K1/02 B
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022535005
(86)(22)【出願日】2021-06-23
(86)【国際出願番号】 JP2021023701
(87)【国際公開番号】W WO2022009675
(87)【国際公開日】2022-01-13
【審査請求日】2022-08-05
(31)【優先権主張番号】P 2020117888
(32)【優先日】2020-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500400216
【氏名又は名称】住友電工プリントサーキット株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 義典
(72)【発明者】
【氏名】池邉 茉紀
(72)【発明者】
【氏名】新田 耕司
(72)【発明者】
【氏名】酒井 将一郎
(72)【発明者】
【氏名】永田 真悟
(72)【発明者】
【氏名】本村 隼一
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅広
【審査官】齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-197851(JP,A)
【文献】特開2016-219559(JP,A)
【文献】特開2014-192523(JP,A)
【文献】特開2019-186518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25D 3/00―7/12
C25D 21/00―21/22
H05K 1/00―3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフィルムと、上記ベースフィルムの表面に配置される複数の配線とを備えるフレキシブルプリント配線板であって、
上記配線は、上記配線の長手方向に沿った先端面及び上記長手方向に沿った2つの側面を有し、上記側面の算術平均粗さRaが0.05μm以上2.0μm以下であり、
上記配線の平均高さが40μm以上120μm以下であり、
上記配線の平均間隔が1μm以上30μm以下であるフレキシブルプリント配線板。
【請求項2】
上記先端面の算術平均粗さRaが0.05μm以上2.0μm以下である請求項1に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項3】
上記配線の平均線幅が5μm以上30μm以下である請求項1又は請求項2に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項4】
上記配線の平均高さが40μm以上60μm以下である請求項1、請求項2又は請求項3に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項5】
上記配線の幅は、上記長手方向に垂直な断面において、上記ベースフィルムの上記表面から上記先端面に向けて大きくなる請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項6】
上記配線は、上記ベースフィルムの上記表面に積層される第1導電性下地層と、上記第1導電性下地層における上記ベースフィルムとは反対の表面に積層される第1めっき層と、上記第1導電性下地層の両側面及び上記第1めっき層の第1導電性下地層とは反対の側の表面及び両側面を覆うように積層される第2めっき層を含み、
上記第2めっき層の先端面と側面がそれぞれ上記配線の上記先端面と上記側面に相当する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項7】
上記第1めっき層の側面に垂直方向の上記第2めっき層の厚みが、上記ベースフィルムの上記表面と上記第2めっき層との接触面から先端面に向けて大きくなる請求項6に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項8】
上記配線は、上記ベースフィルムの上記表面に積層される第導電性下地層と、上記第導電性下地層における上記ベースフィルムとは反対の表面に積層される第3めっき層を含み、上記第3めっき層の先端面が上記配線の上記先端面に相当し、上記第2導電性下地層の側面及び上記第3めっき層の側面が上記配線の上記側面に相当する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のフレキシブルプリント配線板。
【請求項9】
ベースフィルムと、上記ベースフィルムの表面に配置される複数の配線とを備えるフレキシブルプリント配線板の製造方法であって、
上記配線は、その長手方向に沿った先端面及び上記長手方向に沿った2つの側面を有し、
上記側面の算術平均粗さRaが0.05μm以上2.0μm以下であり、
上記配線の平均高さが40μm以上120μm以下であり、
上記配線の平均間隔が1μm以上30μm以下であり、
表面に導電性下地層が積層されたベースフィルムを準備し、レジストパターンを用いて第1めっき液中にて上記導電性下地層上に電気めっきすることにより第1めっき層を形成する第1めっき工程と、
上記レジストパターン及び上記導電性下地層における上記第1めっき層の非積層領域を除去する工程と、
上記除去する工程の後、第2めっき液中にて上記第1めっき層に電気めっきすることにより、第2めっき層を形成する第2めっき工程と
を備え、
上記第2めっき液が、2500以上8000以下の数平均分子量を有するポリエチレングリコールを含有し、
上記第2めっき工程では、上記側面の算術平均粗さRaが0.05μm以上2.0μm以下となるように上記電気めっきの電流密度を調整するフレキシブルプリント配線板の製造方法。
【請求項10】
上記第2めっき工程では、上記電流密度を2段階で調整する請求項9に記載のフレキシブルプリント配線板の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フレキシブルプリント配線板及びその製造方法に関する。本出願は、2020年7月8日出願の日本出願第2020-117888号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0002】
フレキシブルプリント配線板は、様々な電子機器の回路を構成するために広く利用されている。近年、電子機器の小型化に伴い、フレキシブルプリント配線板の小型化及びその配線密度の増大が著しい。
【0003】
このような小型の配線板として、基板と、この基板の表面に配置される第1めっき層及び第2めっき層を含む配線とを備え、第2めっき層の表面粗さが1nm~600nmである配線板が提案されている。この配線板によれば、第2めっき層と、この第2めっき層を覆う絶縁膜との密着力を増大することができる(特開2019-186518号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-186518号公報
【発明の概要】
【0005】
本開示の一態様に係るフレキシブルプリント配線板は、ベースフィルムと、上記ベースフィルムの表面に配置される複数の配線とを備えるフレキシブルプリント配線板であって、上記配線は、その長手方向に沿った先端面及び上記長手方向に沿った2つの側面を有し、上記側面の算術平均粗さRaが0.05μm以上2.0μm以下であり、上記配線の平均高さが40μm以上120μm以下であり、上記配線の平均間隔が1μm以上30μm以下である。
【0006】
本開示の別の態様に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法は、ベースフィルムと、上記ベースフィルムの表面に配置される複数の配線とを備えるフレキシブルプリント配線板の製造方法であって、上記配線は、その長手方向に沿った先端面及び上記長手方向に沿った2つの側面を有し、上記側面の算術平均粗さRaが0.05μm以上2.0μm以下であり、上記配線の平均高さが40μm以上120μm以下であり、上記配線の平均間隔が1μm以上30μm以下であり、表面に導電性下地層が積層されたベースフィルムを準備し、レジストパターンを用いて第1めっき液中にて上記導電性下地層上に電気めっきすることにより第1めっき層を形成する第1めっき工程と、上記レジストパターン及び上記導電性下地層における上記第1めっき層の非積層領域を除去する工程と、上記除去する工程の後、第2めっき液中にて上記第1めっき層に電気めっきすることにより、第2めっき層を形成する第2めっき工程とを備え、上記第2めっき液が、2500以上8000以下の数平均分子量を有するポリエチレングリコールを含有し、上記第2めっき工程では、上記側面の算術平均粗さRaが0.05μm以上2.0μm以下となるように上記電気めっきの電流密度を調整する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、第一実施形態のフレキシブルプリント配線板の上面図である。
図2図2は、図1のAA線の模式的端面図である。
図3図3は、図2のフレキシブルプリント配線板の製造方法を説明するための模式的端面図である。
図4図4は、図2のフレキシブルプリント配線板の製造方法を説明するための模式的端面図である。
図5図5は、図2のフレキシブルプリント配線板の製造方法を説明するための模式的端面図である。
図6図6は、第三実施形態のフレキシブルプリント配線板を示す模式的端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[本開示が解決しようとする課題]
上記特許文献の配線板では、配線の間隔が比較的小さくかつ配線の高さが比較的大きくなると、隣接する配線が接触し、短絡が発生するおそれがある。
【0009】
本開示は、配線を覆う絶縁膜との接着性に優れ、短絡が抑制されたフレキシブルプリント配線板及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
[本開示の効果]
本開示の一態様に係るフレキシブルプリント配線板は、絶縁膜との接着性に優れ、しかも短絡が抑制されている。本開示の別の態様に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法は、絶縁膜との接着性に優れ、しかも短絡が抑制されたフレキシブルプリント配線板を製造することができる。
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
本開示の一態様に係るフレキシブルプリント配線板は、ベースフィルムと、上記ベースフィルムの表面に配置される複数の配線とを備えるフレキシブルプリント配線板であって、上記配線は、その長手方向に沿った先端面及び上記長手方向に沿った2つの側面を有し、上記側面の算術平均粗さRaが0.05μm以上2.0μm以下であり、上記配線の平均高さが40μm以上120μm以下であり、上記配線の平均間隔が1μm以上30μm以下である。
【0012】
当該フレキシブルプリント配線板では、側面の算術平均粗さRaが上記範囲内であり、かつ配線の平均高さ及び平均間隔が上記範囲であるので短絡を抑制することができる。加えて、配線を覆うように絶縁膜が積層される場合、この絶縁膜と配線との接着性を大きくすることができる。よって、当該フレキシブルプリント配線板は、絶縁膜との接着性に優れ、しかも短絡が抑制されている。
【0013】
上記先端面の算術平均粗さRaが0.05μm以上2.0μm以下であってもよい。
【0014】
上記先端面の算術平均粗さRaが上記範囲内であることで、絶縁膜と配線との接着性をより大きくすることができる。よって、当該フレキシブルプリント配線板が、より絶縁膜との接着性に優れる。
【0015】
上記配線の平均線幅が5μm以上30μm以下であってもよい。
【0016】
平均線幅が上記範囲内である配線においても絶縁膜と配線との接着性をより大きくすることができる。よって、当該フレキシブルプリント配線板の優位性が高まる。
【0017】
上記配線の平均高さが40μm以上60μm以下であってもよい。
【0018】
平均高さが上記範囲内であるので、絶縁膜と配線との接着性をより大きくし、かつ短絡を抑制することができる。よって、フレキシブルプリント配線板の優位性が高まる。
【0019】
上記配線の幅は、上記長手方向に垂直な断面において、上記ベースフィルムの上記表面から上記先端面に向けて大きくなる。この特徴によると、配線を覆う絶縁膜との接着性に優れる。
【0020】
上記配線は、上記ベースフィルムの上記表面に積層される第1導電性下地層と、上記第1導電性下地層における上記ベースフィルムとは反対の表面に積層される第1めっき層と、上記第1導電性下地層の両側面及び上記第1めっき層の第1導電性下地層とは反対の側の表面及び両側面を覆うように積層される第2めっき層を含み、上記第2めっき層の先端面と側面がそれぞれ上記配線の上記先端面と上記側面に相当する。
【0021】
上記第1めっき層の側面に垂直方向の上記第2めっき層の厚みが、上記ベースフィルムの上記表面と上記第2めっき層との接触面から先端面に向けて大きくなる。この特徴によると、配線を覆う絶縁膜との接着性に優れる。
【0022】
上記配線は、上記ベースフィルムの上記表面に積層される第2導電性下地層と、上記第2導電性下地層における上記ベースフィルムとは反対の表面に積層される第3めっき層を含み、上記第3めっき層の先端面が上記配線の上記先端面に相当し、上記第2導電性下地層の側面及び上記第3めっき層の側面が上記配線の上記側面に相当する。
【0023】
本開示の別の態様に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法は、ベースフィルムと、上記ベースフィルムの表面に配置される複数の配線とを備えるフレキシブルプリント配線板の製造方法であって、上記配線は、その長手方向に沿った先端面及び上記長手方向に沿った2つの側面を有し、上記側面の算術平均粗さRaが0.05μm以上2.0μm以下であり、上記配線の平均高さが40μm以上120μm以下であり、上記配線の平均間隔が1μm以上30μm以下であり、表面に導電性下地層が積層されたベースフィルムを準備し、レジストパターンを用いて第1めっき液中にて上記導電性下地層上に電気めっきすることにより第1めっき層を形成する第1めっき工程と、上記レジストパターン及び上記導電性下地層における上記第1めっき層の非積層領域を除去する工程と、上記除去する工程の後、第2めっき液中にて上記第1めっき層に電気めっきすることにより、第2めっき層を形成する第2めっき工程とを備え、上記第2めっき液が、2500以上8000以下の数平均分子量を有するポリエチレングリコールを含有し、上記第2めっき工程では、上記側面の算術平均粗さRaが0.05μm以上2.0μm以下となるように上記電気めっきの電流密度を調整する。
【0024】
当該フレキシブルプリント配線板の製造方法によれば、上述した当該フレキシブルプリント配線板を製造することができる。すなわち、配線と配線を覆う絶縁膜との接着性に優れ、しかも短絡が抑制されたフレキシブルプリント配線板を製造することができる。
【0025】
上記第2めっき工程では、上記電流密度を2段階で調整するとよい。
【0026】
第2めっき工程において電流密度を2段階で調整することで、算術平均粗さRaを上記範囲内に調整することが容易になる。
【0027】
本明細書でいう「高さ方向」とは、配線が形成されるベースフィルムの面に垂直な方向を意味する。「配線の平均高さ」とは、1本の配線の任意の十点において測定した高さの平均値を意味する。「高さ」とは、ベースフィルムの面に垂直な方向におけるベースフィルムから配線の上端縁までの間の距離を意味する。「高さ」は「厚み」に相当する。
【0028】
配線の「間隔」とは、対向する2本の配線の隣接面間の距離を意味する。「平均間隔」とは、長手方向に垂直な配線断面をミクロトーム等の断面加工装置で露出させ任意の十点の断面観察による隣接面間の距離を平均した値を意味する。配線の「線幅」とは、配線における長手方向と垂直な方向の幅の寸法を意味する。「平均線幅」とは、配線断面をミクロトーム等の断面加工装置で露出させ任意の十点の断面観察による各最大幅を平均した値を意味する。
ただし、各配線間を接続するためのビア(スルーホール、ブラインドビア、フィルドビア)を有するランド部分、実装部品との接続するランド部分、他のプリント基板やコネクターとの接続するためのランド部分等のランド部分については、上記にて規定する「高さ」、「線幅」「間隔」から除外するものとする。
【0029】
「側面の算術平均粗さRa」とは、各配線における各側面全体の算術平均粗さRaを意味する。「先端面の算術平均粗さRa」とは、各配線における先端面全体の算術平均粗さRaを意味する。ここでいう「算術平均粗さRa」とは、配線の側面又は先端面における任意の5箇所の算術平均粗さRaを測定し、これの平均値をいう。任意の5箇所の各算術平均粗さRaとは、各箇所において、粗さ曲線からその平均線の方向に位置0から位置Lまで基準長さ(L)だけを抜き取り、この抜取り部分の平均線の方向にX軸を、縦倍率の方向にY軸を取り、粗さ曲線をy=f(x)で表したときに、下記式(1)によって求められる値をマイクロメートル(μm)で表したものを意味する。具体的な測定方法は実施例で説明する。
【0030】
【数1】
【0031】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示に係るフレキシブルプリント配線板及びその製造方法の実施形態について図面を参照しつつ詳説する。なお、本実施形態において「表面」とは、ベースフィルムの高さ方向のうち、配線が積層される側の面を指すものであり、本実施形態の表裏がフレキシブルプリント配線板の使用状態における表裏を決定するものではない。
【0032】
[第一実施形態]
〔フレキシブルプリント配線板〕
図1は、本実施形態のフレキシブルプリント配線板10の上面図である。図2は、AA線の模式的断面図である。図1図2に示すように、本実施形態のフレキシブルプリント配線板10は、絶縁性を有するベースフィルム3と、ベースフィルム3の一方の表面に配置(積層)される複数本の配線13を有する配線層11とを主に備える。フレキシブルプリント配線板10は、ベースフィルム3又は配線層11の表面に絶縁膜(カバーフィルム)をさらに備えてもよい。この絶縁膜としては、例えば従来公知の樹脂フィルム等が挙げられ、この絶縁膜は、例えば接着剤によってベースフィルム3又は配線層11に接着される。
【0033】
<ベースフィルム>
ベースフィルム3は、絶縁性を有する合成樹脂製の層である。ベースフィルム3は、可撓性を有する。このベースフィルム3は、配線層11を形成するための基材でもある。ベースフィルム3の形成材料としては、絶縁性及び可撓性を有するものであれば特に限定されないが、シート状に形成された低誘電率の合成樹脂フィルムを採用し得る。この合成樹脂フィルムの主成分としては、例えばポリイミド、ポリエチレンテレフタレート、液晶ポリマー、フッ素樹脂等が挙げられる。「主成分」とは、最も含有量の多い成分であり、例えば形成材料中50質量%以上を占める成分を意味する。ベースフィルム3は、ポリイミド等の例示した樹脂以外の他の樹脂、帯電防止剤等を含有してもよい。
【0034】
ベースフィルム3の平均厚みの下限としては、特に限定されないが、3μmであってもよく、5μmであってもよく、10μmであってもよい。ベースフィルム3の平均厚みの上限としては、特に限定されないが、200μmであってもよく、150μmであってもよく、100μmであってもよい。ベースフィルム3の平均厚みが3μm未満である場合、ベースフィルム3の絶縁強度及び機械的強度が不十分となるおそれがある。一方、ベースフィルム3の平均厚みが200μmを超える場合、フレキシブルプリント配線板10が不要に厚くなるおそれがある。ここで、「平均厚み」とは、任意の十点において測定した厚みの平均値を意味する。なお、以下において他の部材等の「平均厚み」も、これと同様に測定される。
【0035】
<配線層>
配線層11は、ベースフィルム3の表面に直接又は他の層を介して配置(積層)される。配線層11が有する配線13としては、例えば信号を送るための信号線、電力供給用の電流を送るための電流線、磁界発生用の電流を送るための電流線等が挙げられる。
【0036】
配線13は、ベースフィルム3の表面に配置(積層)される第1導電性下地層23と、第1導電性下地層23におけるベースフィルム3とは反対の表面に配置(積層)される第1めっき層25と、第1導電性下地層23の両側面及び第1めっき層25の第1導電性下地層23とは反対の側の表面及び両側面を覆うように配置(積層)される第2めっき層27とによって形成される。
【0037】
例えば配線13の横断面は、図2に示すように、配線13におけるベースフィルム3との接続部分からこの配線13の先端に向かう程、幅が大きくなるような形状である。換言すれば、横断面は、ベースフィルム3に向かう程先細りになっている形状である。すなわち、横断面は、逆台形状である。横断面が上記のように逆台形状であることで、配線13の両側面と絶縁膜との接着性をより大きくすることができる。よって、フレキシブルプリント配線板10が、より絶縁膜との接着性に優れる。図2のフレキシブルプリント配線板10において、第1めっき層25の側面に垂直方向の第2めっき層27の厚みが、ベースフィルムの表面と第2めっき層27との接触面から配線13の先端面に向けて大きくなる。
【0038】
配線13の平均線幅L1の下限としては、5μmであってもよく、7.5μmであってもよく、10μmであってもよい。配線13の平均線幅L1の上限としては、30μmであってもよく、25μmであってもよく、20μmであってもよい。配線13の平均線幅L1が5μmに満たない場合、配線13の製造が困難になるおそれがある。一方、配線13の平均線幅L1が30μmを超える場合、十分な配線密度を得られないおそれがある。「平均線幅」は、フレキシブルプリント配線板10の断面をミクロトーム等の断面加工装置で露出させ、各配線13における最も幅の大きい部分の長さを測定可能な顕微鏡等によって測定し、任意の十点の平均値として算出される値である。
【0039】
互いに隣接して配置される複数の配線13の平均間隔S1の下限としては、1μmであり、さらに2μmであってもよい。配線13の平均間隔S1の上限としては、30μmであり、さらに20μmであってもよく、10μmであってもよい。配線13の平均間隔S1が1μmに満たない場合、短絡が発生するおそれがある。一方、配線13の平均間隔S1が30μmを超える場合、十分な配線密度を得られないおそれがある。「平均間隔」は、フレキシブルプリント配線板10の断面をミクロトーム等の断面加工装置で露出させ、各配線13間の隙間における最も間隔の小さい部分の長さを測定可能な顕微鏡等によって測定し、それらの平均値として算出される値である。
【0040】
配線13の平均高さ(厚み)H1の下限としては、40μmであり、さらに50μmであってもよい。配線13の平均高さH1の上限としては、120μmであり、さらに100μmであってもよく、70μmであってもよく、60μmであってもよい。平均高さH1が40μmに満たない場合、機械的強度が不足するおそれがある。一方、平均高さH1が120μmを超える場合、後述するフレキシブルプリント配線板10の製造方法での配線13の形成が困難になるおそれがある。「平均高さ」は、フレキシブルプリント配線板10の断面をミクロトーム等の断面加工装置で露出させ、配線13において、任意の十点の断面観察による高さ(厚みに相当する。)を測定し、測定結果の平均値を算出することによって得られる。なお、以下において他の部材等の「平均高さ」も、これと同様に測定される。
【0041】
第1導電性下地層23は、後述する導電性下地層M(例えば図3参照)の一部によって形成される。第1導電性下地層23の形成材料としては、例えば銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、これらの合金等が挙げられる。これら形成材料については、ベースフィルム3に対する配線層11の密着力の熱劣化を抑制する点で、第1導電性下地層23が、ベースフィルム3(例えばポリイミド)と接する側に、ニッケル、クロム、チタン及び銀よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する層(第1層)を含んでもよい。さらに、第1導電性下地層23が、除去が容易で絶縁性を保つことが容易なニッケル及びクロムから選択される少なくとも1種を含有する層(第1層)を含んでもよい。また、第1導電性下地層23が、この第1層の上側(ベースフィルム3とは反対の側)に、銅を主成分とする層(第2層)を含んでもよい。この銅を主成分とする層が配置されることにより、電気めっきにより配線層11を形成する際に作業の短時間化が可能となる。
【0042】
例えば、第1層の平均厚みの下限としては、1nmであってもよく、2nmであってもよい。第1層の平均厚みの上限としては、15nmであってもよく、8nmであってもよい。平均厚みが1nmに満たない場合、ベースフィルム3に対する配線層11の密着力の熱劣化を抑制することが困難になるおそれがある。一方、平均厚みが15nmを超える場合、第1層が容易に除去され難くなり、配線層11の絶縁性を十分に保つことができないおそれがある。なお、この第1層は、スパッタ法、電気めっき法、無電解めっき法等によって形成され得る。
【0043】
例えば、第2層の平均厚みの下限としては、0.1μmであってもよく、0.2μmであってもよい。第2層の平均厚みの上限としては、2μmであってもよく、1μmであってもよい。平均厚みが0.1μmに満たない場合、電気めっきによって配線層11を形成する時間が過度に長くなるおそれがある。一方、平均厚みが2μmを超える場合、第2層が容易に除去され難くなり、配線層11の絶縁性を十分に保つことができないおそれがある。なお、この第2層は、スパッタ法、電気めっき法、無電解めっき法等によって形成されることであってもよく、これらを組み合わせて形成されてもよい。特に、第1導電性下地層23の最上面側に無電解銅めっき層が配置されることであってもよく、これにより、それよりも内層がスパッタ法で形成された場合に、このスパッタ法によって生じ得る欠陥等をカバーすることができる。
【0044】
第1めっき層25を形成するための第1金属材料としては、例えば銅、ニッケル、金、銀、白金等を用いることができ、中でも比較的安価で導電性に優れる銅や比較的安価で耐食性に優れるニッケルが好適に用いられる。
【0045】
第1めっき層25は、後述するように、レジストパターンを用いて形成される。すなわち、第1めっき層25は、その長手方向に沿った2つの側面がレジストパターンに接触しつつ形成される。
【0046】
第2めっき層27を形成するための第2金属材料としては、第1金属材料と同様、例えば銅、ニッケル、金、銀、白金等を用いることができ、中でも比較的安価で導電性に優れる銅や比較的安価で耐食性に優れるニッケルが好適に用いられる。
【0047】
第2めっき層27は、後述するように、レジストパターンを用いることなく形成される。
【0048】
本実施形態では、第2めっき層27における長手方向に沿った先端面27aが、配線13における長手方向に沿った先端面に相当し、第2めっき層27における長手方向に沿った2つの側面27b及び27c(図2の左右の側面)が、配線13における長手方向に沿った2つの側面に相当する。本実施形態では、これら2つの側面27b、27cの算術平均粗さRaが0.05以上2.0以下である。
【0049】
各側面27b、27cの算術平均粗さRaの下限としては、上記の通り、それぞれ0.05であり、さらに0.1であってもよい。各側面27b、27cの算術平均粗さRaの上限としては、上記の通り、それぞれ2.0であり、さらに1.0であってもよく、0.7であってもよい。Raが0.05に満たない場合、絶縁膜との接着性が劣るおそれがある。一方、Raが2.0を超える場合、高周波特性が悪化するおそれがある。加えて、Raが2.0を超える場合、隣接する配線13間に短絡が生じるおそれがある。Raは、後述する実施例に記載の方法によって測定される。
【0050】
配線13の先端面27aの算術平均粗さRaは特に限定されない。例えば先端面27aの算術平均粗さRaの下限としては0.05であってもよく、0.1であってもよい。先端面27aのRaの上限としては、2.0であってもよく、1.0であってもよく、0.7であってもよい。Raが0.05に満たない場合、絶縁膜との接着性を十分に高められないおそれがある。一方、Raが2.0を超える場合、高周波特性が悪化するおそれがある。先端面27aの算術平均粗さRaは、測定対象を側面から先端面に変更し、特にベースフィルムを切断することなく、後述する実施例に記載の側面のRaの測定方法と同様にして測定される。
【0051】
2つの側面27b、27c、及び先端面27aの算術平均粗さRaは、後述するように、第2めっき液中の添加剤、及び電流密度を調整することによって、調整することができる。
【0052】
<利点>
フレキシブルプリント配線板10は、配線13の平均高さH1及び平均間隔S1が上記範囲であり、側面27b、27cの算術平均粗さRaが上記範囲内であることで、短絡を抑制することができる。加えて、配線13を覆うように絶縁膜が積層される場合、この絶縁膜と配線13との接着性を大きくすることができる。従って、フレキシブルプリント配線板10は、絶縁膜との接着性に優れ、しかも短絡が抑制されている。
【0053】
[第二実施形態]
〔フレキシブルプリント配線板の製造方法〕
次に、第一実施形態に係るフレキシブルプリント配線板の製造方法について説明する。
【0054】
フレキシブルプリント配線板10の製造方法は、表面に導電性下地層Mが積層されたベースフィルム3を準備し、レジストパターンR1を用い、第1めっき液中にてベースフィルム3上の導電性下地層M上に電気めっきすることにより、第1めっき層25を形成する第1めっき工程と、レジストパターンR1及び導電性下地層Mにおける第1めっき層25の非積層領域を除去する第1除去工程(除去する工程)と、第1除去する工程の後、第2めっき液中にて第1めっき層25に電気めっきすることにより、第2めっき層27を形成する第2めっき工程とを備える。本実施形態では、第2めっき液が、2500以上8000以下の数平均分子量を有するポリエチレングリコールを含有する。第2めっき工程では、配線13の側面(ここでは第2めっき層27の2つの側面27b、27c)の算術平均粗さRaが0.05以上2.0以下となるように電気めっきの電流密度を調整する。
【0055】
<導電性下地層>
導電性下地層Mは、ベースフィルム3の表面に積層される。この導電性下地層Mは、予めベースフィルム3の表面の全面に積層されたものを用いる。導電性下地層Mの一部が、第1導電性下地層23となる。
【0056】
導電性下地層Mの形成材料としては、例えば銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、これらの合金等が挙げられる。これら形成材料については、ベースフィルム3に対する配線層11の密着力の熱劣化を抑制する点で、導電性下地層Mが、ベースフィルム3(例えばポリイミド)と接する側に、ニッケル、クロム、チタン及び銀よりなる群から選択される少なくとも1種を含有する層(第1層)を含んでもよい。さらに、導電性下地層Mが、除去が容易で絶縁性を保つことが容易なニッケル及びクロムから選択される少なくとも1種を含有する層(第1層)を含んでもよい。また、導電性下地層Mが、この第1層の上側(ベースフィルム3とは反対の側)に、銅を主成分とする層(第2層)を含んでもよい。この銅を主成分とする層が配置されることにより、電気めっきにより配線層11を形成する際に作業の短時間化が可能となる。
【0057】
例えば、第1層の平均厚みの下限としては、1nmであってもよく、2nmであってもよい。第1層の平均厚みの上限としては、15nmであってもよく、8nmであってもよい。平均厚みが1nmに満たない場合、ベースフィルム3に対する配線層11の密着力の熱劣化を抑制することが困難になるおそれがある。一方、平均厚みが15nmを超える場合、第1層が容易に除去され難くなり、配線層11の絶縁性を十分に保つことができないおそれがある。なお、この第1層は、スパッタ法、電気めっき法、無電解めっき法等によって形成され得る。
【0058】
例えば、第2層の平均厚みの下限としては、0.1μmであってもよく、0.2μmであってもよい。第2層の平均厚みの上限としては、2μmであってもよく、1μmであってもよい。平均厚みが0.1μmに満たない場合、電気めっきによって配線層11を形成する時間が過度に長くなるおそれがある。一方、平均厚みが2μmを超える場合、第2層が容易に除去され難くなり、配線層11の絶縁性を十分に保つことができないおそれがある。なお、この第2層は、スパッタ法、電気めっき法、無電解めっき法等によって形成されてもよく、これらを組み合わせて形成されてもよい。特に、導電性下地層Mの最上面側に無電解銅めっき層が配置されてもよく、これにより、それよりも内層がスパッタ法で形成された場合に、このスパッタ法によって生じ得る欠陥等をカバーすることができる。
【0059】
<第1めっき工程>
本工程は、導電性下地層Mの表面にフォトレジスト膜を積層する工程と、このフォトレジスト膜への露光及び現像により第1めっき層25の反転形状のレジストパターンを形成する工程と、このレジストパターンの開口部の導電性下地層M上への電気めっきにより第1めっき層25を形成する工程とを備える。
【0060】
(フォトレジスト膜を積層する工程)
フォトレジスト膜を積層する工程では、導電性下地層Mの表面にフォトレジスト膜(不図示)を積層する。
【0061】
フォトレジスト膜は、感光することにより高分子の結合が強化されて現像液に対する溶解性が低下するネガ型レジスト組成物、又は感光することにより高分子の結合が弱化されて現像液に対する溶解性が増大するポジ型レジスト組成物によって形成される。
【0062】
フォトレジスト膜は、液状のレジスト組成物の塗工及び乾燥によって導電性下地層M上に形成してもよいが、室温で流動性を有しないドライフィルムフォトレジストを熱圧着により積層してもよい。フォトレジスト膜としてドライフィルムフォトレジストを用いることによって、フォトレジスト膜の厚みを均一かつ小さくすることができるので、レジストパターンの細密化が容易となる。
【0063】
フォトレジスト膜の平均高さ(厚さ)の下限としては、45μmであってもよく、50μmであってもよい。一方、フォトレジスト膜の平均高さの上限としては、170μmであってもよく、150μmであってもよい。フォトレジスト膜の平均高さが45μmに満たない場合、ドライフィルムレジストの取り扱いが容易でなくなるおそれがある。一方、フォトレジスト膜の平均高さが170μmを超える場合、レジストパターンの形状の精度が低下するおそれがある。
【0064】
(レジストパターンを形成する工程)
レジストパターンを形成する工程では、先ず例えばフォトマスク等を用いてフォトレジスト膜を選択的に露光することにより、フォトレジスト膜に現像液に溶解する部分と溶解しない部分とを形成する。
【0065】
続いて、現像液を用いてフォトレジスト膜の溶解性の高い部分を洗い流すことで、図3に示すように形成すべき第1めっき層25に対応する部分が開口部とされたレジストパターンR1を得る。
【0066】
レジストパターンR1は、第1めっき層25を画定する複数の開口部を有する。この開口部の平均幅の下限としては、5μmであってもよく、10μmであってもよく、15μmであってもよい。一方、開口部の平均幅の上限としては、50μmであってもよく、40μmであってもよく、30μmであってもよい。開口部の平均幅が5μmより小さいと、開口部の幅のバラツキが大きくなるおそれがあるほか、第2めっき層27の高さ(2次めっき量)が大きくなり過ぎて、寸法のバラツキ及びフレキシブルプリント配線板の製造コストが増大するおそれがある。逆に、開口部の平均幅が50μmを超えると、レジストパターンR1が剥離し易くなるおそれがあるほか、配線密度が要求を満たせないおそれがある。なお、レジストパターンR1の第1めっき層25に対応する開口部の平均幅は、後述する第1除去工程でのエッチング前の第1めっき層25の平均幅と同等である。
【0067】
(第1めっき層を形成する工程)
第1めっき層を形成する工程では、第1めっき液を用い、レジストパターンR1の開口部内に露出する導電性下地層Mに電気めっきによって金属を積層することで、図4に示すように、第1めっき層25を形成する。
【0068】
具体的には、この第1めっき層を形成する工程では、ベースフィルム3、導電性下地層M及びレジストパターンR1の積層体とこの積層体に対向する電極とを第1めっき液中に配置し、直流電源の負極を導電性下地層Mに接続し、正極を対向電極に接続することで、第1めっき液中の金属を導電性下地層M表面に析出させる。
【0069】
電気めっきにより積層する金属、すなわち第1めっき層25を形成するための第1金属材料としては、上述したように、例えば銅、ニッケル、金、銀、白金等を用いることができ、中でも比較的安価で導電性に優れる銅や比較的安価で耐食性に優れるニッケルが好適に用いられる。
【0070】
第1めっき液としては、第1金属材料と、第1添加剤とを含有するものが挙げられる。第1添加剤としては、後述するポリエチレングリコールの他、硫酸銅五水和物、硫酸、塩素イオン(塩化物イオン)、3,3’-ジチオビス(1-プロパンスルホン酸)2ナトリウム(SPS)等が挙げられる。第1めっき液として、後述する第2めっき液と同じものを用いることができる。
【0071】
第1めっき層を形成する工程で形成されるエッチング前の第1めっき層25の平均高さの下限としては、20μmであってもよく、25μmであってもよく、30μmであってもよい。
一方、エッチング前の第1めっき層25の平均高さの上限としては、125μmであってもよく、120μmであってもよく、118μmであってもよい。エッチング前の第1めっき層25の平均高さが20μmより小さいと、第2めっき層27の高さ(2次めっき量)が大きくなり過ぎて、寸法のバラツキ及びフレキシブルプリント配線板の製造コストが増大するおそれがある。逆に、エッチング前の第1めっき層25の平均高さが125μmを超えると、レジストパターンR1が剥離しにくくなるおそれや、フレキシブルプリント配線板10が不要に厚くなるおそれがある。
【0072】
<第1除去工程>
第1除去工程では、図5に示すように第1めっき層25形成後にレジストパターンR1及びその底部の導電性下地層Mを除去する。
【0073】
レジストパターンR1の除去は、レジストパターンR1を導電性下地層Mから剥離することで行われる。具体的には、レジストパターンR1、第1めっき層25、導電性下地層M及びベースフィルム3を有する積層体を剥離液に浸漬させることで、レジストパターンR1を剥離液により膨張させる。これにより、レジストパターンR1と導電性下地層Mとの間に反発力が生じ、レジストパターンR1が導電性下地層Mから剥離する。この剥離液としては公知のものを用いることができる。
【0074】
レジストパターンR1底部の導電性下地層Mの除去は、レジストパターンR1剥離後に露出する導電性下地層Mを、第1めっき層25がマスクの役目を果たしエッチングにより除去する。これにより、複数の第1めっき層25が電気的に分離される。このエッチングには導電性下地層Mを形成する金属を浸食するエッチング液が使用される。
【0075】
エッチング量は、導電性下地層Mが完全に除去される量であればよいが、フレキシブルプリント配線板10の製造方法では、第1めっき層25の平均エッチング量を0.5μm以上3.0μm未満であってもよい。また、平均エッチング量を2.0μm以下であってもよい。なお、「第1めっき層の平均エッチング量」とは、配線の長手方向と垂直な断面におけるエッチング前の第1めっき層の面積とエッチング後の第1めっき層の面積との差をエッチング前の第1めっき層の外面(ベースフィルムとの積層面は除く)の長さで除して得られる厚みを配線の長手方向に平均した値である。
【0076】
<第2めっき工程>
第2めっき工程では、第2めっき液を用い、第1めっき層25の表面に電気めっきにより第2めっき層27を被覆し、配線13を形成する。この電気めっきは例えば公知の電気めっき法を用い、後述するように電流密度を調整することにより行うことができる。これにより、上述したような図2のフレキシブルプリント配線板10が得られる。実施形態の製造方法においては、このように、いわゆるセミアディティブ法が好適に用いられる。
【0077】
電気めっきにより積層する金属、すなわち第2めっき層27を形成するための第2金属材料としては、上述したように、例えば銅、ニッケル、金、銀、白金等を用いることができ、中でも比較的安価で導電性に優れる銅や比較的安価で耐食性に優れるニッケルが好適に用いられる。
【0078】
この電気めっきにおいて用いる第2めっき液は、2500以上8000以下の数平均分子量を有するポリエチレングリコール(PEG)を含有する。この第2めっき液としては、第2金属材料と、第2添加剤としてポリエチレングリコールとを含有するものが挙げられる。ポリエチレングリコール以外の第2添加剤としては、上述した第1添加剤と同様、硫酸銅五水和物、硫酸、塩素イオン(塩化物イオン)、3,3’-ジチオビス(1-プロパンスルホン酸)2ナトリウム(SPS)等が挙げられる。
【0079】
ポリエチレングリコールの数平均分子量Mnの下限としては、2500であり、さらに2700であってもよく、3000であってもよい。数平均分子量Mnの上限としては、8000であり、さらに7000であってもよく、5000であってもよい。数平均分子量Mnが2500に満たない場合、第2めっき層27の2つの側面27b、27c、及び先端面27aの算術平均粗さRaを上記範囲内に設定することが困難になるおそれがある。一方、数平均分子量Mnが8000を超える場合にも、第2めっき層27の2つの側面27b、27c、及び先端面27aの算術平均粗さRaを上記範囲内に設定することが困難になるおそれがある。
【0080】
例えばポリエチレングリコールの重量平均分子量Mwの下限としては、10000であってもよく、10100であってもよい。重量平均分子量Mwの上限としては、20000であってもよく、18000であってもよく、16000であってもよく、15000であってもよい。重量平均分子量Mwが10000に満たない場合、第2めっき層27の2つの側面27b、27c、及び先端面27aの算術平均粗さRaを上記範囲内に設定することが困難になるおそれがある。一方、重量平均分子量Mwが20000を超える場合にも、第2めっき層27の2つの側面27b、27c、及び先端面27aの算術平均粗さRaを上記範囲内に設定することが困難になるおそれがある。
【0081】
例えばポリエチレングリコールのz平均分子量Mzの下限としては、15000であってもよく、16000であってもよい。z平均分子量Mzの上限としては、25000であってもよく、22000であってもよく、20000であってもよい。z平均分子量Mzが15000に満たない場合、第2めっき層27の2つの側面27b、27c、及び先端面27aの算術平均粗さRaを上記範囲内に設定することが困難になるおそれがある。一方、z平均分子量Mzが25000を超える場合にも、第2めっき層27の2つの側面27b、27c、及び先端面27aの算術平均粗さRaを上記範囲内に設定することが困難になるおそれがある。
【0082】
第2めっき工程での電流密度は、特に限定されず、適宜設定され得る。例えば電流密度の下限としては、合計で0.3A/mであってもよく、0.5A/mであってもよく、1A/mであってもよい。電流密度の上限としては、合計で5A/mであってもよく、4A/mであってもよく、3A/mであってもよい。電流密度が0.3A/mに満たない場合、第2めっき層27の2つの側面27b、27c、及び先端面27aの算術平均粗さRaを上記範囲内に設定することが困難になるおそれがある。一方、電流密度が5A/mを超える場合にも、第2めっき層27の2つの側面27b、27c、及び先端面27aの算術平均粗さRaを上記範囲内に設定することが困難になるおそれがある。
【0083】
第2めっき工程では、電流密度を1段階で調整してもよく、2段階で調整してもよい。このように、第2めっき工程において電流密度を2段階で調整することで、算術平均粗さRaを上記範囲内に調整することが容易になる。電流密度を1段階で調整する場合、電流密度の下限及び上限としては、上記の範囲であってもよい。
【0084】
電流密度を2段階で調整する場合、2段階目の電流密度が1段階目の電流密度よりも大きくてもよい。この場合において、例えば1段階目の電流密度の下限としては、0.1A/mであってもよく、0.3A/mであってもよい。1段階目の電流密度の上限としては、1.5A/mであってもよく、1.0A/mであってもよい。2段階目の電流密度の下限としては、0.2A/mであってもよく、1.0A/mであってもよい。2段階目の電流密度の上限としては、5A/mであってもよく、3A/mであってもよい。
【0085】
<利点>
フレキシブルプリント配線板10の製造方法によれば、絶縁膜との接着性に優れ、しかも短絡が抑制されたフレキシブルプリント配線板10を製造することができる。フレキシブルプリント配線板10の製造方法によると、比較的密な配線パターン(配線の平均高さが40μm以上120μm以下、配線の平均間隔が1μm以上30μm以下)であっても、配線の側面を所定の表面粗さに調整することが可能となる。
【0086】
[第三実施形態]
〔フレキシブルプリント配線板〕
図6に示すように、本実施形態のフレキシブルプリント配線板30は、絶縁性を有するベースフィルム3と、ベースフィルム3の一方の表面に配置(積層)される複数の配線33を有する配線層31とを主に備える。上述した第一実施形態と同様、フレキシブルプリント配線板30は、ベースフィルム3又は配線層31の表面に絶縁膜(カバーフィルム)をさらに備えてもよい。
【0087】
本実施形態のフレキシブルプリント配線板30では、配線33が、第2導電性下地層43と、第2導電性下地層43上に配置された1層の第3めっき層45とを有する。
【0088】
<ベースフィルム>
本実施形態のベースフィルム3は、第一実施形態のベースフィルム3と同じであるため、その詳細な説明を省略する。
【0089】
<配線層>
配線層31は、ベースフィルム3の表面に直接又は他の層を介して配置(積層)される。配線層31が有する配線33としては、上述した第一実施形態と同様、例えば信号を送るための信号線、電力供給用の電流を送るための電流線、磁界発生用の電流を送るための電流線等が挙げられる。
【0090】
配線33は、ベースフィルム3の表面に配置(積層)される第2導電性下地層43と、第2導電性下地層43のベースフィルム3と反対の側の表面に配置(積層)される第3めっき層45とによって形成される。
【0091】
配線33の平均線幅L2、平均間隔S2及び平均高さH2は、第一実施形態の配線13と同様に設定され得る。
【0092】
第2導電性下地層43の形成材料としては、第一実施形態の第1導電性下地層23と同じものが使用され得る。
【0093】
第3めっき層45を形成するための第3金属材料としては、第一実施形態の第1めっき層25及び第2めっき層27を形成するための第1金属材料及び第2金属材料と同じものが使用され得る。
【0094】
本実施形態では、第2導電性下地層43における長手方向に沿った2つの側面(図6の左右の側面)43b、43c、及び第3めっき層45における長手方向に沿った2つの側面(図6の左右の側面)45b、45cが、配線33における長手方向に沿った2つの側面に相当する。第3めっき層45における長手方向に沿った先端面45aが、配線33における長手方向に沿った先端面に相当する。
【0095】
本実施形態では、上述した第一実施形態と同様、配線33の2つの側面の算術平均粗さRaが0.05以上2.0以下である。
【0096】
配線33の側面の算術平均粗さRaの下限としては、上述した第一実施形態と同様、0.05であり、さらに0.1であってもよい。側面のRaの上限としては、第一実施形態と同様、2.0であり、さらに1.0であってもよく、0.7であってもよい。
【0097】
配線33の先端面(ここでは第3めっき層45の先端面45a)の算術平均粗さRaの下限としては、上述した第一実施形態と同様、0.05であってもよく、1.0であってもよい。先端面のRaの上限としては、上述した第一実施形態と同様、2.0であってもよく、1.0であってもよく、0.7であってもよい。
【0098】
配線33の2つの側面の該当部分、及び先端面の算術平均粗さRaは、後述するように、エッチング条件を調整することによって、調整することができる。
【0099】
〔フレキシブルプリント配線板の製造方法〕
次に、第三実施形態に係るフレキシブルプリント配線板30の製造方法について説明する。
【0100】
フレキシブルプリント配線板30の製造方法は、レジストパターンR2(不図示)を用い、第3めっき液中にて一方の表面に導電性下地層Mが積層されたベースフィルム3の導電性下地層M上に電気めっきすることにより、第3めっき層45を形成する第3めっき工程と、レジストパターンR2及び導電性下地層Mにおける第3めっき層45の非積層領域を除去する第2除去工程と、第2除去工程の後、第3めっき層45の表面の算術平均粗さRaを調整する表面粗さ調整工程とを備える。表面粗さ調整工程では、第3めっき層45の側面のRaが0.05以上2.0以下となるように第3めっき層45の表面粗さを調整する。
【0101】
本実施形態では配線33の各側面のRaが0.05以上2.0以下となるように第3めっき層45及び第2導電性下地層43の表面粗さを調整する。
【0102】
本実施形態では配線33の先端面(すなわち、第3めっき層45の先端面45a)のRaが0.05以上2.0以下となるように第3めっき層45の表面粗さを調整する。
【0103】
<導電性下地層>
導電性下地層Mとしては、上述した第二実施形態と同じのものを用いる。この導電性下地層Mの一部が、第2導電性下地層43となる。
【0104】
<第3めっき工程>
本工程は、第二実施形態の第1めっき工程と同様の工程を行う。本工程により、導電性下地層MにおけるレジストパターンR2(不図示)の開口部に第3めっき層45が積層された積層体が得られる。
【0105】
<第2除去工程>
第2除去工程では、上述した第二実施形態の第1除去工程と同様の工程を行う。本工程により、レジストパターンR2及びその底部の導電性下地層Mを除去する。
【0106】
<表面粗さ調整工程>
本工程では、第2導電性下地層43の両側面43b、43c及び第3めっき層45の両側面45b、45c及び先端面45aをエッチングすることにより、これらの表面粗さを調整する。このエッチングには硫酸過酸化水素等のエッチング液が使用される。本工程により、配線33の長手方向に沿った両側面の算術平均粗さRaが上記範囲内に調整される。これと共に、配線33の先端面の算術平均表面粗さRaが上記範囲内に調整される。
【0107】
なお、表面粗さ調整工程を、第2除去工程での導電性下地層Mのエッチングと同時に行ってもよい。
【0108】
<利点>
フレキシブルプリント配線板30は、配線33の平均高さH2及び平均間隔S2が上記範囲であり、側面の算術平均粗さRaが上記範囲内であることで、短絡を抑制することができる。加えて、配線33を覆うように絶縁膜が積層される場合、この絶縁膜と配線33との接着性を大きくすることができる。従って、フレキシブルプリント配線板30は、絶縁膜との接着性に優れ、しかも短絡が抑制されている。
【0109】
[その他の実施形態]
実施形態では、単一のベースフィルムと、このベースフィルムの一方の表面に積層された配線層を有するフレキシブルプリント配線板について説明したが、フレキシブルプリント配線板10は、単一のベースフィルムの両方の表面に配線層が積層されたものであってもよい。また、フレキシブルプリント配線板10は、複数のベースフィルムを有し、各ベースフィルムが一方の表面又は両方の表面に複数の配線層を有する多層プリント配線板であってもよい。この場合、ランド部を介して両面の配線層が導通され得る。
【0110】
実施形態では、ベースフィルムに1の配線層が積層される場合について説明したが、ベースフィルムに複数の配線層が互いに間隔を空けて積層されてもよい。
【0111】
実施形態では、各配線層11、31が各配線13、33を有する場合について説明したが、各配線層11、31がこれら配線13、33以外の配線を有する態様も採用し得る。
【0112】
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【実施例
【0113】
<試料の作製>
(参考例1、2、比較例1、2、実験例1~4)
ベースフィルムの一面側(表面側)に導電性下地層が積層されたフィルム(ユーピレックス(登録商標)-S、宇部興産社製)を用い、上述した第二実施形態と同様の製造方法により、図2に示すような配線板、すなわちフィルムの導電性下地層に第1めっき層及び第2めっき層が積層された複数の配線を有する配線層を備える配線板を作製した。具体的には、以下のようにして配線板を作製した。
【0114】
(めっき液)
下記の組成のめっき液を用い、PEGの種類を表1に示すように変更した。表1に示すPEGの各分子量は、下記の方法で測定した。
硫酸銅五水和物:75g/L
硫酸:190g/L
塩酸(塩化物イオンの供給源):55mg/L
PEG:0.02mmol/L
3,3’-ジチオビス(1-プロパンスルホン酸)2ナトリウム(SPS):0.5mmol/L
ヤヌスグリーンB(JGB):0.05mmol
【0115】
(PEGの数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw及びz平均分子量Mzの測定)
PEGの数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw及びz平均分子量MzをGPC法(gel permeation chromatography)で測定した。試料であるPEG原液を中和した後(塩が析出)、遠心分離を行い、得られた上澄み液を回収後、フィルターを用いてろ過を行い、試料溶液を調整した。測定条件を下記に示す。下記のゲル浸透クロマトグラフGPC装置を用い、下記の検出器及びカラムを準備し、下記の硝酸ナトリウム水溶液を溶媒とし、下記の流速に設定し、下記の注入量で試料溶液を注入した。
カラム温度は下記のように設定した。
・測定条件
装置:ゲル浸透クロマトグラフGPC(機器No.GPC-28)
検出器:示差屈折率検出器RI(昭和電工社製RI-201、感度:32)
カラム:TSKgel G3000PWXL 2本(7.8mm×30cm、東ソー社製)
溶媒:0.1M硝酸ナトリウム水溶液
流速:0.7mL/min
カラム温度:23℃
注入量:0.2mL
標準試料:東ソー社、Agilent社及びSigma Aldrich社製の単分散ポリエチレンオキサイド(PEO)及びポリエチレングリコール(PEG)
【0116】
測定後の分子量分布曲線から下記の各定義式に示すように、数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw、及びz平均分子量Mzを算出した。下記各式において、Miは、分子量校正曲線を介して得られたGPC曲線の各溶出位置の分子量であり、Niは、分子数である。
Mn=Σ(Ni・Mi)/ΣNi
Mw=Σ(Ni・Mi)/Σ(Ni・Mi)
Mz=Σ(Ni・Mi)/Σ(Ni・Mi
【0117】
(めっき条件)
下記のめっき条件を用いた。
めっき浴の温度:25℃
アノード:不溶性アノード
電流密度(ASD):表1に示すように変更
【0118】
(第1めっき層の形成)
各めっき液を用い、各めっき条件で、上述した第二実施形態の第1めっき工程と同様にして、レジストパターンを用い、フィルムの導電性下地層に通電して電気めっきすることにより、導電性下地層上に第1めっき層を形成した。その後、上述した第二実施形態の第1除去工程と同様にして、レジストパターンを剥離し、第1めっき層をマスクとして導電性下地層のエッチングを行った。
【0119】
(第2めっき層の形成)
次いで、第1めっき層の形成時と同様の各条件をそれぞれ用い、上述した第二実施形態の第2めっき工程と同様にして電気めっきを行うことにより、第2めっき層を形成した。このように、それぞれの第1めっき層の形成で用いためっき液及びめっき条件を、そのままそれぞれの第2めっき層の形成に用いた。
【0120】
表1に示すようにめっき条件を変更することにより、両側面の表面を粗くした配線を有する参考例1、2、比較例1、2、及び実施例1~4の配線板を、測定試料として作製した。
【0121】
第2めっき層を形成した後の配線の平均間隔及び平均高さは、表1に示す通りである。
【0122】
<評価>
得られた各配線板について、下記に示す方法で、配線の側面の算術平均粗さRa、短絡率、絶縁膜の接着性(密着性)を評価した。
【0123】
(配線の側面の算術平均粗さRaの測定)
任意の1の配線の側面を観察することができるように、配線の近傍のベースフィルムを配線の長手方向に沿ってカッターで切断した後、配線の側面の任意の5箇所について、JIS B0601(2013年)に準拠して、レーザー顕微鏡(形状解析レーザー顕微鏡、VK-X100、キーエンス社製)を用いて算術平均粗さRaを測定し、得られた5箇所の算術平均粗さRaの平均値を、配線の側面の算術平均粗さRa(μm)として算出した。結果を表1に示す。
【0124】
(短絡率)
各配線板について、4端子法を用いて抵抗を測定することによって、短絡率(%)を測定した。結果を表1に示す。
【0125】
(絶縁膜の密着性)
各配線に厚さ30μmアクリル接着剤を塗布後、絶縁膜としての厚さ5μmのポリイミドフィルムを圧着プレスすることによって、参考例1、2、比較例1、2及び実施例1~4の配線板に、各配線を覆うように絶縁膜を接着した。接着後、下記に示すようにピール試験を行い、絶縁膜が剥れた面積が100mm以上である場合を「1」、50mm以上100mm未満である場合を「2」、20mm以上50mm未満である場合を「3」、10mm以上20mm未満である場合を「4」、10mm未満である場合(0mmである場合も含む)を「5」と評価した。評価結果の数字が大きい程、密着性に優れる。結果を表1に示す。
【0126】
【表1】
【0127】
表1に示すように、配線の平均間隔が30μmを超える参考例1、2は、短絡が抑制され、かつ密着性にも優れることが示された。このように、配線の平均間隔が30μm超という比較的大きい場合、及び平均高さが40μm未満という比較的小さい場合には、配線の側面の算術平均粗さRaが2.0を超えても、短絡が発生しないことが示された。
【0128】
しかし、配線の平均間隔が30μm以下である比較例1では、算術平均粗さRaが2.0を超えると、大きな短絡が発生することが示された。加えて、配線の平均間隔が30μm以下である比較例2では、算術平均粗さRaが0.05μm未満であると、短絡は抑制されるものの、密着性に劣ることが示された。
【0129】
これに対し、配線の平均間隔が30μm以下、かつ平均高さが40μm以上である実施例1~4では、配線の側面の算術平均粗さRaが0.05μm以上2.0μm以下であると、短絡が抑制され、かつ絶縁膜への密着性に優れることが示された。
【符号の説明】
【0130】
10、30フレキシブルプリント配線板、3ベースフィルム、11、31配線層、13、33配線、23第1導電性下地層、25第1めっき層、27第2めっき層、27a先端面、27b、27c側面、43第2導電性下地層、43b、43c 側面、45第3めっき層、45a先端面、45b、45c側面、H1、H2平均高さ、L1、L2平均線幅、S1、S2平均間隔、M導電性下地層、R1レジストパターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6