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特許7304496フィラーパイプおよびフィラーパイプの製造方法
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  • 特許-フィラーパイプおよびフィラーパイプの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】フィラーパイプおよびフィラーパイプの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/04 20060101AFI20230629BHJP
   B29C 53/30 20060101ALI20230629BHJP
   B29C 48/335 20190101ALI20230629BHJP
   B29C 48/21 20190101ALI20230629BHJP
   B29C 48/90 20190101ALI20230629BHJP
   B29C 48/13 20190101ALI20230629BHJP
   F16L 11/11 20060101ALI20230629BHJP
【FI】
B60K15/04 C
B29C53/30
B29C48/335
B29C48/21
B29C48/90
B29C48/13
F16L11/11
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022547483
(86)(22)【出願日】2021-08-25
(86)【国際出願番号】 JP2021031117
(87)【国際公開番号】W WO2022054575
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2023-02-01
(31)【優先権主張番号】P 2020152959
(32)【優先日】2020-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390023917
【氏名又は名称】八千代工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】花原 裕志
(72)【発明者】
【氏名】廣原 健
(72)【発明者】
【氏名】小山 忠士
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-46772(JP,A)
【文献】特開2017-65663(JP,A)
【文献】国際公開第2012/115224(WO,A1)
【文献】特開2018-118498(JP,A)
【文献】特開2007-292299(JP,A)
【文献】特開平3-117794(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/04
B29C 53/30
B29C 48/335
B29C 48/21
B29C 48/90
B29C 48/13
F16L 11/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
山部および谷部を備える蛇腹部と、前記蛇腹部を備えていない一般部とを有し、少なくとも内層、バリア層および、外層を備える樹脂製のフィラーパイプであって、
前記一般部は外層よりも内層が薄くなっており、
前記蛇腹部の内層は、前記一般部の内層よりも薄くなっており、さらに、
前記一般部の内層比率に対する前記蛇腹部の山部の内層比率の増加率が、前記一般部の外層比率に対する前記蛇腹部の山部の外層比率の増加率以下になっていることを特徴とするフィラーパイプ。
【請求項2】
少なくとも内層、バリア層および外層を備える筒状素材を押し出す押出工程と、
複数の分割成形型をそれぞれ移動させながら、前記複数の分割成形型の成形面に前記筒状素材の一部を転写させて、山部および谷部を備えた蛇腹部と、前記蛇腹部を備えていない一般部を成形する成形工程と、を含み、
押出工程では、前記筒状素材の外層よりも内層が薄くなるように設定し、
前記成形工程では、前記蛇腹部の外層を吸引して前記筒状素材を前記分割成形型に転写させるとともに、前記蛇腹部の内層を、前記一般部の内層よりも薄くしつつ、さらに、成形後の前記一般部の内層比率に対する前記山部の内層比率の増加率が、前記一般部の外層比率に対する前記山部の外層比率の増加率以下となるように設定することを特徴とするフィラーパイプの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィラーパイプおよびフィラーパイプの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等に用いられるフィラーパイプは、車体の軽量化を図るために樹脂で形成されている。樹脂製のフィラーパイプは、車両から放出される燃料蒸発ガス(エバポ)規制により、ガスバリア性に優れたバリア層を含んで構成されている。代表的なガスバリア性に優れた材料として、例えばエチレン-ビニルアルコール共重合体(EVOH)が挙げられる。EVOHは、ガスバリア性に優れる一方で、燃料に含まれるエタノール等に対する耐性が低いため、EVOHのバリア層を樹脂製の内層および外層で挟んで複数層構造としている。
【0003】
フィラーパイプは、山部および谷部で構成された蛇腹部と、蛇腹部を備えていない一般部とを有している。蛇腹部は、燃料タンクと給油口とを接続する際に屈曲させる部位である。フィラーパイプを製造する際には、コルゲート機構を備えたパイプ製造装置を用いることで、蛇腹部と一般部を備えたフィラーパイプを連続的に製造することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-116094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パイプ製造装置で蛇腹部を成形する際、蛇腹部の山部に対応する位置を吸引して、成形面に筒状素材を転写させている。このとき、谷部では成形型に筒状素材が先当たりするため延ばされて薄肉になる傾向があり、山部では素材が集まって厚肉になる傾向がある。特に、山部の内層においては山部の中央に向けて素材が集まりやすくなり、山部の外層に比べて内層が肉厚になる傾向がある。山部の内層が相対的に肉厚になると、燃料と接触して膨潤変形が発生しやすくなるという問題がある。
【0006】
そこで本発明は、燃料による膨潤変形を抑制することができるフィラーパイプおよびフィラーパイプの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、山部および谷部を備える蛇腹部と、前記蛇腹部を備えていない一般部とを有し、少なくとも内層、バリア層および、外層を備える樹脂製のフィラーパイプであって、前記一般部は外層よりも内層が薄くなっており、前記蛇腹部の内層は、前記一般部の内層よりも薄くなっており、さらに、前記一般部の内層比率に対する前記蛇腹部の山部の内層比率の増加率が、前記一般部の外層比率に対する前記蛇腹部の山部の外層比率の増加率以下になっていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、少なくとも内層、バリア層および外層を備える筒状素材を押し出す押出工程と、複数の分割成形型をそれぞれ移動させながら、前記複数の分割成形型の成形面に前記筒状素材の一部を転写させて、山部および谷部を備えた蛇腹部と、前記蛇腹部を備えていない一般部を成形する成形工程と、を含み、押出工程では、前記筒状素材の外層よりも内層が薄くなるように設定し、前記成形工程では、前記蛇腹部の外層を吸引して前記筒状素材を前記分割成形型に転写させるとともに、前記蛇腹部の内層を、前記一般部の内層よりも薄くしつつ、さらに、成形後の前記一般部の内層比率に対する前記山部の内層比率の増加率が、前記一般部の外層比率に対する前記山部の外層比率の増加率以下となるように設定することを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、蛇腹部の山部の内層を薄くすることで燃料による膨潤変形を抑制することができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、燃料による膨潤変形を抑制することができるフィラーパイプおよびフィラーパイプの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るフィラーパイプの概略図である。
図2】本実施形態に係るフィラーパイプの拡大図である。
図3】本実施形態に係るフィラーパイプを製造するパイプ製造装置の概略図である。
図4】本実施形態および比較例に係るフィラーパイプにおいて、一般部および蛇腹部の厚さの増加率を示した表である。
図5】複数のフィラーパイプにおいて、一般部内層比率と山部内層比率との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら説明する。図1に本発明の実施形態に係るフィラーパイプ1の概略図を示す。フィラーパイプ1は中央部10を備え、中央部10の両端に給油口端部13と溶着端部14とをそれぞれ備える。給油口端部13は車両の給油口(非図示)に装着され、溶着端部14は、燃料タンク(非図示)の開口部周縁に溶着される。給油口に挿入された給油ノズルから液体燃料が供給されることにより、液体燃料がフィラーパイプ1を介して燃料タンクに貯留される。
【0013】
中央部10は、3箇所の蛇腹部12と、蛇腹部12を有さない一般部11とを備え、ほぼ円筒状に形成されている。図2にも示すように、蛇腹部12は、山部121および谷部122を備えた蛇腹状の部位であり、屈曲可能である。なお、中央部10の形状は、燃料タンクと給油口の相対位置、距離、周辺装置のレイアウトなどに応じて適宜設計される。よって、中央部10の蛇腹部12の数は3つより多くても少なくてもよいし、中央部10の全体が蛇腹状に形成されていてもよい。
【0014】
図2に示すように、中央部10は樹脂を積層して構成されており、本実施形態では例えば、3種5層構造になっている。フィラーパイプ1の層構成は、少なくとも内層、バリア層及び外層を含んで構成されていればよく、各層の材料、厚さについては適宜設定すればよい。
【0015】
一般部11は、外層21、外層接着層31、バリア層41、内層接着層51及び内層61で構成されている。内層61は、外層21に対して十分に薄くなっている。一般部11において、内層61と外層21の厚さの合計を10としたとき、内層61の比率は1程度、外層21の比率は9程度になっている。
【0016】
蛇腹部12は、山部121と谷部122とを交互に複数備えている。山部121と谷部122はそれぞれ、外層22,外層接着層32,バリア層42,内層接着層52,内層62とを備えている。内層62は、外層22に対して十分に薄くなっている。山部121において、内層62と外層22の厚さの合計を10としたとき、内層62の比率は0.5程度、外層22の比率は9.5程度になっている。なお、一般部11と蛇腹部12の各層は、説明の便宜上符号を変えているが、同じ材料で一体形成されている。
【0017】
外層21,22は、フィラーパイプ1の最外に位置し、フィラーパイプ1の外壁面を形成する。外層21,22の材料は、フィラーパイプ1を変形から保護するための剛性、外層接着層31,32より内側の層を保護するための耐衝撃性、耐候性、耐薬品性等を備える材料であれば特に限定されないが、例えば熱可塑性樹脂であるポリエチレンを含むことが好ましく、高密度ポリエチレンを含むことがより好ましい。
【0018】
外層接着層31,32は外層21,22とバリア層41,42とを接着する層である。内層接着層51,52はバリア層41,42と内層61,62とを接着する層である。外層接着層31,32および内層接着層51,52の材料は、層間で接着性を発揮する材料であれば特に限定されないが、外層21,22および内層61,62がポリエチレンであり、バリア層41,42がEVOHである場合は、例えば変性ポリエチレンを含むことが好ましい。なお、外層21,22および内層61,62またはバリア層41,42ないしその両方に接着性を備える材料を採用した場合は、外層接着層31,32および内層接着層51,52を省略することができる。
【0019】
バリア層41,42は、フィラーパイプ1を通過する液体燃料から発生する燃料ガスがフィラーパイプ1の壁面を透過し外部に漏れることを抑制する層である。バリア層41,42の材料は、燃料ガスに対するガスバリア性を有する材料であれば特に限定されないが、例えばEVOHを含むことが好ましい。
【0020】
内層61,62は、フィラーパイプ1の最内に位置し、フィラーパイプ1の内壁面を形成する。内層61,62の材料は、バリア層41,42を液体燃料に含まれるエタノール等の薬品から保護できる耐薬品性を備える材料であれば特に限定されないが、例えば熱可塑性樹脂であるポリエチレンを含むことが好ましく、高密度ポリエチレンを含むことがより好ましい。
【0021】
次に、本実施形態に係るフィラーパイプの製造方法について説明する。本実施形態に係るフィラーパイプの製造方法では、図3に示すパイプ製造装置9を用いる。パイプ製造装置9は、連続的にフィラーパイプ1を形成することができるものであり、一般部11と蛇腹部12とで異なる断面形状に成形する、いわゆるコルゲート機構を備えている。
【0022】
パイプ製造装置9は、筒状素材を押し出す押出ユニット91と、押出ユニット91から押し出された筒状素材の外周部を賦形する複数の分割成形型94と、分割成形型94をループ状に搬送する搬送装置93と、を備えている。押出ユニット91は、複数層の樹脂で構成された筒状素材を同心状に押し出すための押出装置(非図示)を備えており、押出装置はスクリュ、シリンダおよびダイなどから構成されている。
【0023】
個々の分割成形型94は、フィラーパイプ1の一般部11、蛇腹部12の形状に倣った成形面をそれぞれ有し、筒状素材が搬送される搬送経路92を通るように配置されている。分割成形型94は、搬送される筒状素材の中心軸Lに沿って分割された割型で構成されている。これらの割型はそれぞれループ状であり、型締めされるように配置されている。分割成形型94の成形面において蛇腹部12の山部121に対応する位置には、吸引ポンプ(非図示)に接続される吸引通路が開口している。
【0024】
本実施形態に係るフィラーパイプの製造では、押出工程と、成形工程とを行う。押出工程は、少なくとも内層、バリア層および外層を備える筒状素材を押し出す工程である。本実施形態では、外層21(22)、外層接着層31(32)、バリア層41(42)、内層接着層51(52)及び内層61(62)で構成された筒状素材を押出ユニット91から搬送経路92に押し出す。押出工程では、筒状素材の内層の厚さを、外層の厚さより
も小さくなるように設定する。なお、一般部11の各層の厚さは、押出工程時における筒状素材の各層の厚さとほぼ同じになる。
【0025】
成形工程は、複数の分割成形型94をそれぞれ移動させながら、複数の分割成形型94の成形面に筒状素材の一部を転写させて、一般部11および蛇腹部12を成形する工程である。また、成形工程では、蛇腹部12の山部121に対応する部分の外層22を吸引して筒状素材を分割成形型94に転写させる。さらに、成形工程では、成形後の一般部11の内層比率に対する山部121の内層比率の増加率が、一般部11の外層比率に対する山部121の外層比率の増加率以下となるように設定する。この各層の比率の設定は、例えば、筒状素材の粘度、押出速度、筒状素材を真空引きする際の吸引力等に基づいて適宜設定することができる。なお、ここでは、増加率が1未満である場合、内層比率または外層
比率が減少していることを意味する。
【0026】
以上の工程を行った後に、筒状素材を所定の位置で切断する。その後、蛇腹部12を賦形した部位を熱可塑性樹脂の軟化点(80~90℃)に予熱して、曲げ加工を施すことにより、蛇腹部12を屈曲部としたフィラーパイプ1が得られる。
【0027】
ここで、例えば、前記した特許文献1の図5に示すように、従来技術によると蛇腹部の山部の内層は、一般部の内層よりも大きく(厚く)なっている。換言すると、成形後の一般部の内層比率に対する蛇腹部の山部の内層比率の増加率が、一般部の外層比率に対する蛇腹部の山部の外層比率の増加率よりも大きくなっている。特に、蛇腹部の山部の内層は、吸引によって素材が集まりやすくなり、相対的に厚くなる傾向にある。蛇腹部の山部の内層が厚くなると、燃料に触れて膨潤変形が起こりやすくなるという問題がある。
【0028】
これに対し、本実施形態に係るフィラーパイプ1は、一般部11の内層比率に対する蛇腹部12の山部121の内層比率の増加率が、一般部11の外層比率に対する蛇腹部12の山部121の外層比率の増加率以下になっている。具体的には、内層側の増加率は0.5(一般部1.0→蛇腹部の山部0.5)であるのに対し、外層側の増加率は1.05(一般部9.0→蛇腹部の山部9.5)となっている。これにより、蛇腹部12の山部121の内層62が、一般部11の内層61よりも薄くなっているため、膨潤変形を抑制することができる。
【0029】
また、本実施形態の成形工程において、成形後の一般部11の内層比率に対する蛇腹部12の山部121の内層比率の増加率が、一般部11の外層比率に対する蛇腹部12の山部121の外層比率の増加率以下となるように、各種条件を設定することで、蛇腹部12の山部121の内層62を、一般部11の内層61よりも薄くすることができる。これにより、膨潤変形を抑制することができる。
【0030】
図4は、本実施形態および比較例に係るフィラーパイプにおいて、一般部および蛇腹部の厚さの増加率を示した表である。図4では、前記した実施形態以外のパターンについて検討する。ここでは、サンプルA~Iを例示して説明する。図4の左上の図はサンプルAの、左中の図はサンプルEの、左下の図はサンプルIの拡大図を示している。
【0031】
サンプルA,B,Cは、一般部の内層と外層の厚さの合計を10としたとき、内層比率が0.5、外層比率が9.5となっているフィラーパイプである。サンプルAでは、前記した実施形態と同じように、内層の増加率が外層の増加率よりも小さくなっている。つまり、サンプルAの内層では、一般部の内層比率が0.5であるのに対し、蛇腹部の山部の外層比率が0.25となり、増加率は0.5となる。サンプルAの外層では、一般部の外層比率が9.5であるのに対し、蛇腹部の山部の外層比率が9.75となり、増加率は1.0(1.02)となる。よって、サンプルAは良判定となる。サンプルBでは、内層の
増加率と外層の増加率は同一である。よって、サンプルBも良判定である。
【0032】
一方、サンプルCでは、内層の増加率が2.0なのに対し、外層の増加率が0,9となり、内層の増加率の方が大きくなっている。サンプルCであると、蛇腹部の山部の内層で膨潤変形が起こりやすくなるため不可判定となる。
【0033】
サンプルD,E,Fは、一般部の内層と外層の厚さの合計を10としたとき、内層比率が4、外層比率が6となっているフィラーパイプである。サンプルD,Eは、サンプルA,Bと同じような層構成になっており、良判定となる。一方、サンプルFは、サンプルCと同じように外層の増加率よりも内層の増加率の方が大きくなっているため不可判定となる。
【0034】
サンプルG,H,Iは、一般部の内層と外層の厚さの合計を10としたとき、内層比率が6、外層比率が4となっているフィラーパイプである。サンプルGによれば、内層の増加率よりも外層の増加率の方が小さくなっている。しかし、一般部においてそもそも内層の厚さが、外層の厚さよりも大きくなっており一般部が膨潤変形を受けやすくなっている。したがって、サンプルGは不可判定となる。同様の理由により、サンプルH,Iも不可判定となる。つまり、一般部(押出工程)において内層は、外層よりも薄く設定する。
【0035】
図5は、複数のフィラーパイプにおいて、一般部内層比率と山部内層比率(山部の蛇腹部の内層比率)との関係を示したグラフである。実線は一般部の内層と蛇腹部の山部の内層の比率が同じとなる基準線を示し、破線は、実験データの近似曲線を示す。
【0036】
図5に示すように、同じ成形条件下であれば、一般部、つまり筒状素材における内層比率が大きいほど、蛇腹部の山部における内層比率が増加し易くなる傾向にある。例えば、一般部内層比率が40%である場合、蛇腹部の山部内層比率は約52%となっている。つまり、図5からも分かるように蛇腹部の山部内層比率は、一般部内層比率と比べて厚さが大きくなる傾向にある。本発明では、一般部内層比率と蛇腹部の山部内層比率との関係が図5の実線以下となるように設定する。図5の傾向より、一般部内層比率(押出工程時における内層の比率)は小さくすることが好ましい。つまり、一般部における内層比率は、外層比率よりも小さく設定し、35.0%以下に設定することが好ましく、20.0%以下に設定することがより好ましく、10.0%以下に設定することがさらに好ましい。このように設定すれば、成形工程において蛇腹部の山部における内層の増加率を、外層の増加率以下に設定することが容易となる。
【0037】
なお、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で変更することができる。
【符号の説明】
【0038】
フィラーパイプ 1
中央部 10
一般部 11
蛇腹部 12
山部 121
谷部 122
外層 21,22
外層接着層 31,32
バリア層 41,42
内層接着層 51,52
内層 61,62
図1
図2
図3
図4
図5