(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】流路切替電磁弁
(51)【国際特許分類】
F16K 27/02 20060101AFI20230629BHJP
F16K 31/06 20060101ALI20230629BHJP
B60S 1/48 20060101ALN20230629BHJP
【FI】
F16K27/02
F16K31/06 305K
B60S1/48 Z
(21)【出願番号】P 2022547576
(86)(22)【出願日】2021-09-06
(86)【国際出願番号】 JP2021032602
(87)【国際公開番号】W WO2022054746
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2022-08-30
(31)【優先権主張番号】P 2020153812
(32)【優先日】2020-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】592056908
【氏名又は名称】浜名湖電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096998
【氏名又は名称】碓氷 裕彦
(74)【代理人】
【識別番号】100170689
【氏名又は名称】金 順姫
(72)【発明者】
【氏名】兼子 史聖
(72)【発明者】
【氏名】菅野 正
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕
(72)【発明者】
【氏名】久田 昌弘
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-148171(JP,U)
【文献】特開2020-94624(JP,A)
【文献】特開2012-77785(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 27/00-27/12
F16K 31/06-31/11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁材製のボビンと、
前記ボビンに巻装され、通電時に励磁するコイルと、
前記コイルの通電時磁気回路内に配置される磁性材製のコアと、
前記コイルの通電時磁気回路内に前記コアと磁気間隙を介して対向配置されるプランジャと、
を備える複数の電磁弁ユニットと、
単一の流入通路と、
前記流入通路と連通するチャンバと、
前記電磁弁ユニットの数と同数形成され、前記チャンバと連通する流出通路と、
前記チャンバと前記流出通路との間に、前記電磁弁ユニットの数と同数形成される弁座と、
を備える単一のバルブボディと、
複数の前記電磁弁ユニットのそれぞれの前記プランジャとともに移動して、前記電磁弁ユニットの数と同数形成された前記弁座のそれぞれを開閉する弁体と、
を有し、複数の前記電磁弁ユニットは、同一形状であ
り、
前記流入通路は流体ポンプと接続し、
前記流出通路は内部圧力が第1所定圧以下の時閉じるストップ弁を備える噴射ノズルと接続し、
前記弁体は、前記コイルの非励磁時に、前記第1所定圧より高い圧力で前記弁座に押圧されるノーマルクローズ弁である流路切替電磁弁。
【請求項2】
絶縁材製のボビンと、
前記ボビンに巻装され、通電時に励磁するコイルと、
前記コイルの通電時磁気回路内に配置される磁性材製のコアと、
前記コイルの通電時磁気回路内に前記コアと磁気間隙を介して対向配置されるプランジャと、
を備える複数の電磁弁ユニットと、
単一の流入通路と、
前記流入通路と連通するチャンバと、
前記電磁弁ユニットの数と同数形成され、前記チャンバと連通する流出通路と、
前記チャンバと前記流出通路との間に、前記電磁弁ユニットの数と同数形成される弁座と、
を備える単一のバルブボディと、
複数の前記電磁弁ユニットのそれぞれの前記プランジャとともに移動して、前記電磁弁ユニットの数と同数形成された前記弁座のそれぞれを開閉する弁体と、
を有し、複数の前記電磁弁ユニットは、同一形状であり、
前記バルブボディは、樹脂製のアッパボディと、前記アッパボディに溶着する樹脂製のロアボディとを含み、
前記流入通路、前記チャンバ、および前記弁体は、前記アッパボディに配置され、
前記流出通路および前記弁座は、前記ロアボディに配置されている流路切替電磁弁。
【請求項3】
絶縁材製のボビンと、
前記ボビンに巻装され、通電時に励磁するコイルと、
前記コイルの通電時磁気回路内に配置される磁性材製のコアと、
前記コイルの通電時磁気回路内に前記コアと磁気間隙を介して対向配置されるプランジャと、
を備える複数の電磁弁ユニットと、
単一の流入通路と、
前記流入通路と連通するチャンバと、
前記電磁弁ユニットの数と同数形成され、前記チャンバと連通する流出通路と、
前記チャンバと前記流出通路との間に、前記電磁弁ユニットの数と同数形成される弁座と、
を備える単一のバルブボディと、
複数の前記電磁弁ユニットのそれぞれの前記プランジャとともに移動して、前記電磁弁ユニットの数と同数形成された前記弁座のそれぞれを開閉する弁体と、
を有し、複数の前記電磁弁ユニットは、同一形状であり、
前記弁体の内少なくとも一つの弁体は、前記コイルの非励磁時に、前記弁座より離脱するノーマルオープン弁である流路切替電磁弁。
【請求項4】
絶縁材製のボビンと、
前記ボビンに巻装され、通電時に励磁するコイルと、
前記コイルの通電時磁気回路内に配置される磁性材製のコアと、
前記コイルの通電時磁気回路内に前記コアと磁気間隙を介して対向配置されるプランジャと、
を備える複数の電磁弁ユニットと、
単一の流入通路と、
前記流入通路と連通するチャンバと、
前記電磁弁ユニットの数と同数形成され、前記チャンバと連通する流出通路と、
前記チャンバと前記流出通路との間に、前記電磁弁ユニットの数と同数形成される弁座と、
を備える単一のバルブボディと、
複数の前記電磁弁ユニットのそれぞれの前記プランジャとともに移動して、前記電磁弁ユニットの数と同数形成された前記弁座のそれぞれを開閉する弁体と、
を有し、複数の前記電磁弁ユニットは、同一形状であり、
前記弁体の内少なくとも一つの弁体は、一方側流出通路と他方側流出通路との切替を行う三方弁である流路切替電磁弁。
【請求項5】
前記電磁弁ユニットのそれぞれは、前記コイルに通電するプラス端子およびマイナス端子を有し、
複数の前記電磁弁ユニットは、前記プラス端子および前記マイナス端子を含めて同一形状である請求項1ないし4のいずれかに記載の流路切替電磁弁。
【請求項6】
前記流路切替電磁弁は、それぞれの前記電磁弁ユニットの前記プラス端子および前記マイナス端子と電気接続する単一のコネクタを有し、
前記コネクタは、それぞれの前記電磁弁ユニットの前記マイナス端子と接続する単一のコネクタマイナス端子と、それぞれの前記電磁弁ユニットの前記プラス端子と個別に接続する前記電磁弁ユニットの数と同数のコネクタプラス端子を有する請求項5に記載の流路切替電磁弁。
【請求項7】
前記バルブボディは、前記流出通路と前記チャンバとの間に圧力逃がし通路を備え、前記流出通路内の圧力が前記第1所定圧より一定圧力小さい第2所定圧力で、前記圧力逃がし通路を開く圧力逃がし弁を備える請求項1に記載の流路切替電磁弁。
【請求項8】
前記圧力逃がし弁は複数で、前記電磁弁ユニットの数と同数形成される前記流出通路のそれぞれに配置されている請求項7に記載の流路切替電磁弁。
【請求項9】
前記電磁弁ユニットの数と同数形成される前記流出通路は、それぞれが連通する連通部を備え、
前記圧力逃がし通路は、前記連通部と前記チャンバとを連通し、前記圧力逃がし弁は単一である請求項7に記載の流路切替電磁弁。
【請求項10】
前記圧力逃がし通路は、前記バルブボディ内で、前記弁体の内部に形成され、
前記圧力逃がし弁は、前記弁体内で前記圧力逃がし通路に配置されている請求項7または請求項8に記載の流路切替電磁弁。
【請求項11】
前記弁体は、内部に前記圧力逃がし通路を形成すると共に外部が前記弁座に着座する弁本体と、内部に前記圧力逃がし通路を形成する筒状の弁ガイドとを備え、
前記圧力逃がし弁は、前記弁ガイドの内部に摺動可能に配置されている請求項10に記載の流路切替電磁弁。
【請求項12】
前記弁本体の前記圧力逃がし通路の周囲に、前記圧力逃がし弁が着座する圧力逃がし弁座が形成されている請求項11に記載の流路切替電磁弁。
【請求項13】
前記圧力逃がし弁を前記圧力逃がし弁座に付勢する圧力逃がしバネを備える請求項12に記載の流路切替電磁弁。
【請求項14】
前記コイルの励磁時に前記ノーマルクローズ弁を前記弁座より離脱する方向に付勢するノーマルオープン圧縮バネを更に有し、
前記ノーマルオープン圧縮バネは、前記弁ガイドの外周に配置され、
前記ノーマルオープン圧縮バネの一端が前記バルブボディに係止され、前記ノーマルオープン圧縮バネの他端が前記弁ガイドに係止されている請求項11ないし13のいずれかに記載の流路切替電磁弁。
【請求項15】
前記弁本体と前記弁ガイドとは、前記弁本体に形成された係止爪部が前記弁ガイドに形成された係止窓部に係合することで結合されている請求項11ないし14のいずれかに記載の流路切替電磁弁。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この出願は、2020年9月14日に日本に出願された特許出願第2020-153812号を基礎としており、基礎の出願の内容を、全体的に、参照により援用している。
【技術分野】
【0002】
本開示は、液体や気体の流路を切り替える電磁弁に関する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1には、一か所の流入口と複数の流出口を備える流路切替ボックスに複数の電磁弁を配置して、流路の切り替えを行う旨記載されている。
【0004】
しかしながら、流路切替ボックスは、内部に複数の電磁弁を配置する構造であるため、必然的に複数の電磁弁より体格が大きくなり、流路切替ボックス自体の部品点数も多くなる。かつ、流路切替ボックスと電磁弁との間からの液漏れの恐れがあり、シールを保つためのパッキン等の部品も必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
本開示は、上記点に鑑み、特別な流路切替ボックスを必要とせず、電磁弁のみで複数の流出通路のそれぞれへの流体の流出を制御できる流路切替電磁弁を提供することを課題とする。特に本開示は、流路切替弁をノーマルクローズ弁や、ノーマルオープン弁、三方弁として使用できるようにすることを課題としている。
【0007】
本開示の第1は、複数の電磁弁ユニットと単一のバルブボディとからなる流路切替電磁弁であり、複数の電磁弁ユニットは、それぞれが同一形状となっている。
【0008】
複数の電磁弁ユニットのそれぞれは、絶縁材製ボビンと、このボビンに巻装され通電時に励磁するコイルと、コイルの通電時磁気回路内に配置される磁性材製のコアと、コイルの通電時磁気回路内にこのコアと磁気間隙を介して対向配置されるプランジャとを備えている。
【0009】
また、単一のバルブボディは、単一の流入通路と、この流入通路と連通するチャンバと、電磁弁ユニットの数と同数形成されこのチャンバと連通する流出通路と、チャンバとこの流出通路との間に電磁弁ユニットの数と同数形成される弁座と、それぞれのプランジャとともに移動し弁座のそれぞれを開閉する弁体とを備えている。
【0010】
ここで、流入流体は単一の流入通路から流入するので、チャンバ内の流体圧力は同じである。そのため、弁座を開閉するのに必要なコイルの励磁力も同じとなる。第1の開示では、複数の電磁弁ユニットをそれぞれ同じ形状としているので、コイルの励磁力も同じにすることが出来ている。また、同一形状の電磁弁ユニットを採用することで、型費等を軽減でき、生産コストの低減にもつながっている。
【0011】
本開示の第1は、流入通路は流体ポンプと接続し、流出通路は内部圧力が第1所定圧以下の時閉じるストップ弁を備える噴射ノズルと接続している。そして、弁体は、コイルの非励磁時に、第1所定圧より高い圧力で弁座に押圧されるノーマルクローズ弁としている。即ち、本開示の第1では、流出通路の流体がストップ弁と弁座との間で閉じ込められるものである。
【0012】
本開示の第2は、樹脂製のアッパボディと、このアッパボディに溶着する樹脂製のロアボディとで、バルブボディを形成している。そして、流入通路、チャンバ、および弁体は、アッパボディに配置し、流出通路および弁座をロアボディに配置している。バルブボディをアッパボディとロアボディとで形成することで、チャンバの形成や、弁体の配置が容易となっている。
【0013】
本開示の第3および第4は、弁体の構成に関する。本開示の第3では、弁体の内少なくとも一つの弁体を、コイルの非励磁時に弁座より離脱するノーマルオープン弁としている。そして、本開示の第4は、弁体の内少なくとも一つの弁体を、一方側流出通路と他方側流出通路との切り替えを行う三方弁としている。本開示は、ノーマルクローズ弁に限らず、種々の電磁弁を用いることが可能である。
【0014】
本開示の第5は、電磁弁ユニットのそれぞれは、コイルに通電するプラス端子およびマイナス端子を有し、このプラス端子およびマイナス端子を含めて複数の電磁弁ユニットは同一形状としている。
【0015】
プラス端子およびマイナス端子まで共通とすることで、一層の生産コスト低減が得られる。
【0016】
本開示の第6は、それぞれの電磁弁ユニットのプラス端子およびマイナス端子と電気接続する単一のコネクタを有している。そして、このコネクタは、それぞれのマイナス端子と接続する単一のコネクタマイナス端子と、それぞれのプラス端子と個別に接続する電磁弁ユニットの数と同数のコネクタプラス端子を有している。
【0017】
複数の電磁弁ユニットがそれぞれコネクタを備え、それぞれのコネクタに電気接続するのに比べると、単一のコネクタであるので、電気接続が容易となる。特に、コネクタマイナス端子を共通として、各電磁弁ユニットのマイナス端子と接続するので、端子の数を少なくすることができる。これにより、コネクタの電気接続作業が一層容易となる。
【0018】
本開示の第7は、流出通路に閉じ込められた流体の圧力逃がし通路および圧力逃がし弁をバルブボディに設けている。即ち、バルブボディは、流出通路とチャンバとの間に、流出通路内の圧力が第1所定圧より一定圧力小さい第2所定圧力で、流出通路とチャンバとを連通する圧力逃がし弁を備えている。
【0019】
流出通路に閉じ込められた流体の圧力がストップ弁の第1所定圧より高くなると、噴射ノズルから漏洩する恐れがあるが、本開示の第7では、圧力逃がし弁が開くことで、流体の漏洩を防止できる。
【0020】
本開示の第8は、圧力逃がし弁を複数用い、電磁弁ユニットの数と同数形成される流出通路のそれぞれに配置している。複数の流出通路での流体圧力がそれぞれ異なる場合にも、圧力逃がし弁がきめ細かく対応することができる。
【0021】
本開示の第9は、複数の流出通路のそれぞれが連通する連通部を備えて、圧力逃がし通路をこの連通部とチャンバとの間に形成している。一つの圧力逃がし弁を共有することで、部品点数の削減が図れる。
【0022】
本開示の第10では、圧力逃がし通路はバルボディ内で弁体の内部に形成されている。そして、圧力逃がし弁は弁体内で圧力逃がし通路に配置されている。弁体の内部に圧力逃がし通路を形成して、かつ、この圧力逃がし通路を開閉する圧力逃がし弁も弁体内で圧力逃がし通路に配置しているので、電磁弁の小型化を進めることができている。即ち、圧力逃がし通路をバルブボディに特別に形成する必要がなく、バルブボディに特別に圧力逃がし通路を形成した場合に比べて、電磁弁の小型化が図れる。
【0023】
本開示の第11では、弁体が、内部に圧力逃がし通路を形成すると共に外部が弁座に着座する弁本体と、内部に圧力逃がし通路を形成する筒状の弁ガイドとを備えている。そして、圧力逃がし弁は、弁ガイドの内部に摺動可能に配置されている。弁ガイドの内部に圧力逃がし弁が摺動可能にガイドされるので、圧力逃がし弁の移動が安定する。
【0024】
本開示の第12では、弁本体の圧力逃がし通路の周囲に圧力逃がし弁が着座する圧力逃がし弁座が形成されている。圧力逃がし弁は、圧力逃がし弁座に当接、離脱することで圧力逃がし通路を開閉することができる。
【0025】
本開示の第13は、圧力逃がし弁を圧力逃がし弁座に付勢する圧力逃がしバネを備えている。圧力逃がしバネを設けることで、圧力逃がし弁の挙動を安定させることができる。
【0026】
本開示の第14は、コイルの励磁時に弁体を弁座より離脱する方向に付勢するノーマルオープン圧縮バネを更に有する。このノーマルオープン圧縮バネは、弁ガイドの外周に配置されている。ノーマルオープン圧縮バネは、一端がバルブボディに係止され、他端が弁ガイドに係止されている。ノーマルオープン圧縮バネを設けることで、弁体がノーマルクローズ弁座から離れる際の挙動を安定させることができる。
【0027】
本開示の第15は、弁本体と弁ガイドとは、弁本体に形成された係止爪部が弁ガイドに形成された係止窓部に係合することで結合されるようにしている。弁本体と弁ガイドとをスナップフィットで結合することができて、弁本体と弁ガイドとの組付けが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本開示の流路切替電磁弁が用いられるシステムを示す構成図である。
【
図4】
図4は、
図3の流路切替電磁弁のIV-IV断面図である。
【
図6】
図6は、流路切替電磁弁の他の例の正面図である。
【
図7】
図7は、
図6の流路切替電磁弁のVII-VII断面図である。
【
図8】
図8は、
図6の流路切替電磁弁のVIII-VIII断面図である。
【
図9】
図9は、単一の電磁弁ユニットのボビン、プラス端子およびマイナス端子を示す斜視図である。
【
図10】
図10は、複数の電磁弁ユニットのボビン、プラス端子およびマイナス端子を示す斜視図である。
【
図11】
図11は、複数の電磁弁ユニットのボビンと単一のコネクタを示す斜視図である。
【
図12】
図12は、複数の流出通路と単一の圧力逃がし弁を備える流路切替電磁弁を用いたシステムの構成図である。
【
図13】
図13は、作動流体として空気が用いられるシステムの構成図である。
【
図21】
図21は、弁本体と弁ガイドとの他の組付け例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本開示の流路切替電磁弁100が用いられるシステムを示す構成図である。本例では、作動流体としてウォッシャー液を用い、101はウォッシャー液を貯める液タンクである。液タンク101内のウォッシャー液はポンプ配管102を介して、ポンプ103に吸入され、ポンプ103より流路切替電磁弁100に供給される。ポンプ103の作動時、流路切替電磁弁100に供給されるウォッシャー液の圧力は300キロパスカル程度である。
【0030】
流路切替電磁弁100で供給制御されたウォッシャー液は、噴射配管110を介して噴射ノズル120に供給され、噴射ノズル120より窓ガラスやカメラ等の被洗浄体に吹き付けられる。カメラは自動車の自動運転を支援するもので、自動車の前後にそれぞれ多数設けられている。従って、本例では、噴射ノズル120は、第1噴射ノズル121、第2噴射ノズル122、第3噴射ノズル123、および第3噴射ノズル124の4つを備える。同様に、噴射配管110は、第1噴射配管111、第2噴射配管112、第3噴射配管113、および第4噴射配管114の4本を備える。そして、このようなセットの噴射ノズル120が車両の前方および後方にそれぞれ配置されている。
【0031】
噴射ノズル120には、ウォッシャー液の噴射切れを良くするためのストップ弁130が配置されている。ストップ弁130は閉弁圧力が10キロパスカル程度であり、噴射配管110内のウォッシャー液の圧力が閉弁圧力以下となると噴射ノズルを閉じる。言い換えると、ストップ弁130は、内部圧力が第1所定圧以下の時閉じる弁である。後述するように、本例の流路切替電磁弁100はノーマルクローズ弁を採用しているので、ストップ弁130が閉じるとウォッシャー液は噴射配管110内に閉じ込められることとなる。そのため、温度上昇等で噴射配管110内のウォッシャー液の圧力が閉弁圧力以上に上昇した際には、噴射ノズル120からの液漏れが問題となる。ただ、本例の流路切替電磁弁100は圧力逃がし弁450を備えているので、噴射配管110内のウォッシャー液が閉弁圧力以上に上昇することはない。圧力逃がし弁450に関しては、後述する。
【0032】
本例では、ストップ弁130は、第1ストップ弁131、第2ストップ弁132、第3ストップ弁133、および第4ストップ弁134の4つを備える。4つのストップ弁131、132、133、134は、それぞれが、第1噴射ノズル121、第2噴射ノズル122、第3噴射ノズル123、および第3噴射ノズル124に設けられている。換言すれば、ストップ弁130を含め噴射ノズル120の構成は、4つのノズルに関して全て同じ構成である。
【0033】
流路切替電磁弁100は、
図2および
図3に示すように、複数の電磁弁ユニット200を備えている。複数の電磁弁ユニット200は、第1電磁弁ユニット201、第2電磁弁ユニット202、第3電磁弁ユニット203、および第4電磁弁ユニット204を含む。また、流路切替電磁弁100は、単一のコネクタ300と単一のバルブボディ400とを備えている。そして、バルブボディ400は、アッパボディ401とロアボディ402とが組み合わさって形成される。
【0034】
コネクタ300は、コネクタ部301と、接続部302とを有する。コネクタ部301は、複数の電磁弁ユニット200に共通である。コネクタ部301は、他の電気接続部と嵌め合い結合されることにより電気的な接続を提供する。接続部302は、コネクタ部301におけるコネクタプラス端子およびコネクタマイナス端子310を、複数の電磁弁ユニット200のプラス端子321およびマイナス端子320に接続する。
図9は、ひとつの電磁弁ユニットのプラス端子321とマイナス端子310とを示している。
図10は、複数の電磁弁ユニット200に共通のコネクタマイナス端子310と、複数のコネクタプラス端子311、312、313、314を示している。コネクタプラス端子は、第1電磁弁ユニット201、第2電磁弁ユニット202、第3電磁弁ユニット203、および第4電磁弁ユニット204に対応する第1コネクタプラス端子311、第2コネクタプラス端子312、第3コネクタプラス端子313、および第4コネクタプラス端子314を含む。さらに、
図10は、複数の電磁弁ユニット200に共通のマイナス接続と、複数の電磁弁ユニット200ごとに独立した複数のプラス接続とを示している。コネクタ部301および接続部302は、共に樹脂材料製であり、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)が用いられる。
【0035】
アッパボディ401には、その中央位置に単一の流入通路410が突出形成されている。流入通路410には、ポンプ配管102が取り付けられるので、ポンプ配管102の抜け防止となる係合部410aが先端に形成されている。ロアボディ402には、第1電磁弁ユニット201、第2電磁弁ユニット202、第3電磁弁ユニット203、および第4電磁弁ユニット204と対応する位置に、第1流出通路411、第2流出通路412、第3流出通路413、および第4流出通路414が形成されている。これら第1流出通路411、第2流出通路412、第3流出通路413、および第4流出通路414には、それぞれ第1噴射配管111、第2噴射配管112、第3噴射配管113、第4噴射配管114が流体的に連通するように取り付けられる。複数の流出通路411、412、413、414のそれぞれの先端には、流入通路410と同様の係合部が形成されている。なお、アッパボディ401およびロアボディ402も、共に樹脂材料製であり、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド樹脂)が用いられる。
【0036】
図4に示すように、アッパボディ401には単一のチャンバ420が形成されている。この単一のチャンバ420は、第1電磁弁ユニット201、第2電磁弁ユニット202、第3電磁弁ユニット203、および第4電磁弁ユニット204に対応している共通のチャンバである。なお、
図4におけるアッパボディ401の左右方向の長さは60~70ミリメートル程度であり、上下方向の長さは20~30ミリメートル程度である。また、チャンバ420の容量は6000立方ミリメートル程度である。
【0037】
電磁弁ユニット200の内部構造を、
図5を用いて説明する。なお、
図5は第2電磁弁ユニット202の断面である。電磁弁ユニット200の内部構造は第1電磁弁ユニット201、第2電磁弁ユニット202、第3電磁弁ユニット203、および第4電磁弁ユニット204の全てで同一である。
【0038】
210は、PPS等の樹脂材料からなるボビンで、略円筒形状をしており、その外周にエナメル被覆された銅線からなるコイル211が多数回巻装されている。コイル211を巻装した状態で、その外表面をPPS等の樹脂で覆って外郭213を形成している。
【0039】
ボビン210の内周には磁性ステンレス製のコア214と、同じく磁性ステンレス製のステータ215が配置される。一方、外郭213の外周にはヨーク216が配置される。ヨーク216は鉄材料製で、表面を錫亜鉛メッキして防錆効果を高めている。
【0040】
ステータ215の内周には、磁性ステンレス製のプランジャ217が配置される。そして、
図5におけるプランジャ217の上端とコア214の下端との間には、磁気ギャップ218が形成されている。なお、コアは有底円筒形状をしており、内部にノーマルクローズバネ219を保持している。ノーマルクローズバネ219はバネ鋼製であり、プランジャ217の上端と接し、プランジャ217を
図5の下方に押圧している。
【0041】
次に、
図5を用いてバルブボディ400の内部構造を説明する。
図5では、第2連通筒部422における断面が示されている。アッパボディ401には、上述のチャンバ420が形成されている。アッパボディ401には、第1電磁弁ユニット201、第2電磁弁ユニット202、第3電磁弁ユニット203、および第4電磁弁ユニット204に対応する第1連通筒部421、第2連通筒部422、第3連通筒部423、および第4連通筒部424が形成されている(
図3図示)。
【0042】
第2連通筒部422の内部には、プランジャ217の下端から一体的に形成されたロッド220が配置され、ロッド220の先端(下端)に弁体430が配置される。弁体430は、その上下両面にゴム材料製の上シート431と下シート432が配置される。
【0043】
ロアボディ402には、第1連通筒部421、第2連通筒部422、第3連通筒部423、および第4連通筒部424と対応する位置に、円筒状部440が形成されている。この円筒状部440の先端(上端)は、弁座441を提供する。弁体430、より具体的には下シート432が弁座441に当接したり、離脱したりすることで弁体430の開閉がなされる。上述のノーマルクローズバネ219は下シート432を弁座441に押し付ける方向に作用する。
【0044】
ロアボディ402には、第1連通筒部421、第2連通筒部422、第3連通筒部423、および第4連通筒部424と対応する位置に第1流出通路411、第2流出通路412、第3流出通路413、および第4流出通路414がそれぞれ形成されている。円筒状部440および弁座441は、第1流出通路411、第2流出通路412、第3流出通路413、および第4流出通路414のそれぞれに形成されている。
【0045】
円筒状部440には流出通路412とチャンバ420とを連通する圧力逃がし通路460が形成され、圧力逃がし通路460には通路を開閉する圧力逃がし弁450が配置されている。圧力逃がし弁450は圧力逃がしバネ465により圧力逃がし弁座466に押圧されている。従って、流出通路412内のウォッシャー液の圧力が圧力逃がしバネ465の設定圧より高くならなければ、圧力逃がし通路460は閉じている。なお、この圧力逃がしバネ465の設定圧は、ストップ弁130の設定圧の半分程度の5キロパスカル程度である。
【0046】
図5では、第2連通筒部422に対応する圧力逃がし弁450と圧力逃がし通路460を説明した。
図1に図示されるように、複数の連通筒部のそれぞれに対応して、ひとつの圧力逃し弁と、ひとつの圧力逃し通路とが配置されている。第1連通筒部421に対応して、第1圧力逃がし弁451と第1圧力逃がし通路461とが配置されている。第3連通筒部423に対応して、第3圧力逃がし弁453と第3圧力逃がし通路463とが配置されている。第4連通筒部424に対応して、第4圧力逃がし弁454と第4圧力逃がし通路464とが配置されている。
【0047】
なお、チャンバ420や圧力逃がし通路460等の形状は、種々に変更可能である。
図6ないし
図8に基づいて、流路切替電磁弁100の他の形状を説明する。チャンバ420が全ての電磁弁ユニット200に繋がる点は、
図3図示例と同じであるが、
図7は流入通路410部分での断面であるので、
図4の例より上下方向の長さが短くなっている。また、
図6および
図7に示すように、チャンバ420は、第1流出通路411、第2流出通路412、第3流出通路413、第4流出通路414が形成される部位で、体積が増すよう膨出形成されている。
【0048】
また、
図8に示すように、圧力逃がし通路460を円筒状部440ではなく、ロアボディ402に特別に形成している。圧力逃がし通路460の開口端である圧力逃がし弁座466を圧力逃がし弁450が開閉する点は、
図8も同様である。なお、
図8の断面では圧力逃がし弁450をガイドする部材が現れていないが、圧力逃がし弁450はガイドに沿って上下方向に移動する。
【0049】
次に、上記構成の流路切替電磁弁100の組み立て手順について説明する。まず、電磁弁ユニット200の組付けを説明する。第1ないし第4電磁弁ユニット201~204のボビン210にそれぞれコイル211を巻装し、その外周を覆って外郭213を形成する。
図9は外郭213が形成された状態を示すが、ボビン210にマイナス端子320とプラス端子321が挿入されている。マイナス端子320およびプラス端子321にはそれぞれマイナス結線部320aとプラス結線部321aが設けられている。コイル211を形成する銅線は、マイナス結線部320aとプラス結線部321aに電気的に接続されている。
図9では銅線が図示されていないが、外郭213が形成された状態では、銅線は結線されている。
図9は、ボビンユニット330を示している。
【0050】
次に、
図10に示すように、4つのボビンユニット330を並べる。同一形状のボビンユニット330であるため、マイナス端子320の先端部320bの位置は、4つのボビンユニット330の並び方向と平行な線上に揃っている。この先端部320bにコネクタマイナス端子310を溶接する。また、プラス端子321の先端部321bにも、第1コネクタプラス端子311ないし第4コネクタプラス端子314をそれぞれ溶接する。なお、
図10では、コネクタマイナス端子310および第1ないし第4コネクタプラス端子311~314を示すために、コネクタ部301は図示されていない。しかし、この溶接を行う状態では、コネクタマイナス端子310および第1ないし第4コネクタプラス端子311~314はコネクタ部301にモールド成形されており、位置が固定されている。
【0051】
本例の流路切替電磁弁100では、一つのコネクタマイナス端子310が4つのボビンユニット330のマイナス端子320に共通して使用される。この結果、個々のボビンユニット330にそれぞれコネクタを設ける場合に比べて、コネクタマイナス端子310の数を4分の1に低減することができる。
【0052】
その後、プラス端子321、マイナス端子320、コネクタマイナス端子310、および第1ないし第4コネクタプラス端子311~314を覆うように接続部をモールド成形する。成形後の状態を
図11に示す。この状態に次いで、ボビンユニット330の内周側にスリーブ222を介してコア214とステータ215とを配設する。コア214とステータ215外径は、それぞれスリーブ222内径と全周で結合しており、液を内封する構造としている。その後、外郭213の外周にヨーク216を配置する。
【0053】
本例の流路切替電磁弁100では、4つの電磁弁ユニット200を、マイナス端子320やプラス端子321を含めて、全て同じ構成としている。そのため、部品を全て共通使用することができ、体格や形状が別々の電磁弁ユニット200を採用した場合に比べて、部品点数を低減することができている。
【0054】
電磁弁ユニット200とバルブボディ400との組付けは、2つの段階を含む。第1段階では、アッパボディ401の端面401aとステータ215の端面との間にOリング221を介在させる。第2段階では、その状態で、
図5および
図8におけるヨーク216の下端をアッパボディ401の係止首部401bにカシメ固定する。
【0055】
バルブボディ400の組立て工程は、コア214内にノーマルクローズバネ219を配置する段階と、アッパボディ401に弁体430(プランジャ217およびロッド220)を組み込む段階とを含む。バルブボディ400の組立て工程は、ノーマルクローズバネ219の付勢力がプランジャ217に加わるようにアッパボディ401を組み立てる段階を含む。バルブボディ400の組立て工程は、圧力逃がし通路460に圧力逃がしバネ465および圧力逃がし弁450を組み込む工程を含む。バルブボディ400の組立て工程は、アッパボディ401とロアボディ402とを固定的に連結する工程を含む。この工程では、ロアボディ402の弁座441に弁体430の下シート432が当接可能となるようにして、ロアボディ402とアッパボディ401とを当接させ、当接面を溶着する。以上の組付け工程は、第1電磁弁ユニット201ないし第4電磁弁ユニット204の全てで共通である。
【0056】
次に、上記構成の流路切替電磁弁100の作動を説明する。窓ガラスや自動車の自動運転を支援するカメラ等が汚れた場合には、各種センサからの信号やドライバーからの指示で洗浄が行われる。洗浄時には、ポンプ103が運転を開始して、ウォッシャー液を300キロパスカル程度の圧力で吐出する。本例の流路切替電磁弁100では4つの噴射ノズル120へのウォッシャー液の供給を制御するので、電磁弁ユニット200のうち、必要とされる噴射ノズル120に対応する電磁弁ユニット200に給電する。例えば、第2噴射ノズル122からウォッシャー液をカメラに向けて噴出することが求められていれば、第2電磁弁ユニット202のコイル211に通電する。より具体的にはコネクタ300の中の第2コネクタプラス端子312に給電する。
【0057】
これにより、第2電磁弁ユニット202のコイルが励磁し、プランジャ217とコア214との磁気ギャップ218に磁力による吸引力が発生する。この吸引力がノーマルクローズバネ219の押圧力に打ち勝って、プランジャ217を移動させる。吸引力は、プランジャ217を、
図5および
図8における上方に引き上げる。このプランジャ217の移動はロッド220を介して弁体430に伝わり、下シート432は弁座441から離脱する。
【0058】
弁体430の開弁がなされた状態で、ポンプ103が運転を開始する。従って、ポンプ103から吐出されたウォッシャー液の圧力で、弁体430の開弁が阻害されることは無い。ポンプ103からポンプ配管102および流入通路410を介して流入したウォッシャー液は、まずチャンバ420に溜まり、次いで、第2流出通路412から、第2噴射配管112を介して、第2噴射ノズル122に供給される。
【0059】
以上の例では一つの噴射ノズル120(第2噴射ノズル122)からのウォッシャー液噴出を説明したが、複数の噴射ノズル120から同時にウォッシャー液を噴出することも可能であり、全ての噴射ノズル120からのウォッシャー液噴出も可能である。本例の流路切替電磁弁100は、第1ないし第4流出通路411~414の通路面積に比して容量が格段に大きいチャンバ420を備えているので、弁体430の開閉に伴う圧力変動を抑えることができている。
【0060】
本例の流路切替電磁弁100では、4つの電磁弁ユニット200を全て同一としているので、プランジャ217に加わる励磁力も、第1ないし第4電磁弁ユニット201~204で同じである。ここで、ポンプ103から吐出され、チャンバ420に蓄えられるウォッシャー液の圧力は、第1ないし第4電磁弁ユニット201~204の弁体430で同じであるため、励磁力が同じであることは、望ましい。
【0061】
洗浄の終了後には、ポンプ103を停止し、コイル211への給電も停止する。その結果、磁気ギャップ218に生じていた磁力もなくなり、弁体430はノーマルクローズバネ219の押圧力で弁座441を閉じる。上述したように、噴射ノズル120はストップ弁130を備えているので、ウォッシャー液は、ストップ弁130と弁座441との間の噴射配管110に閉じ込められる。そのため、ウォッシャー液の温度上昇による体積膨張により、ウォッシャー液がストップ弁130から漏れ出る恐れもある。
【0062】
それに対し、本例の流路切替電磁弁100では、圧力逃がし弁450を備え、圧力逃がしバネ465の設定圧をストップ弁130の設定圧の半分程度に設定している。よって、ストップ弁130より先に圧力逃がし弁450が圧力逃がし通路460を開く。このウォッシャー液が閉じ込められている状態では、ポンプ103は作動していない。この状態では、流入通路410もチャンバ420も液タンク101と同じく大気圧となっている。よって、閉じ込められたウォッシャー液は、圧力逃がし通路460からチャンバ420側に戻ることとなる。
【0063】
なお、第1ないし第4噴射配管111~114はその配置環境や長さが異なる場合がある。この結果、第1ないし第4噴射配管111~114内に閉じ込められたウォッシャー液の体積変動に伴う圧力変化もそれぞれ異なる場合がある。しかしながら、本例の流路切替電磁弁100では、第1ないし第4噴射配管111~114に対応して、それぞれ第1ないし第4圧力逃がし通路461~464と第1ないし第4圧力逃がし弁451~454を設けている。そのため、第1ないし第4噴射配管111~114それぞれの状態に応じて、ウォッシャー液の圧力逃がしをきめ細やかに行うことができる。
【0064】
以上説明した流路切替電磁弁100は、本開示の望ましい例であるが、他にも多くの変形例を有している。
【0065】
図12は、第1ないし第4圧力逃がし弁451~454の4つの圧力逃がし弁450に代えて、一つの共通圧力逃がし弁450aを用いた例である。この例では、バルブボディ400の中に第1ないし第4流出通路411~414と連通する連通部460aを設け、共通圧力逃がし弁450aをこの連通部460aと圧力逃がし通路460との間に配置している。単一の共通圧力逃がし弁450aによって、全てのストップ弁130からのウォッシャー液の液漏れが防止できる。そのため、部品点数が低減でき、組付けの生産性向上も含めて、コスト低減を図ることができる。
【0066】
図13は、作動流体として、ウォッシャー液に代えて空気を用いた例である。本例では、空気によりレンズ等に付着した埃等を吹き飛ばすものである。ポンプ103に代えてエアポンプ105を使用している。このエアポンプ105からの空気の吐出圧は、140キロパスカル程度である。上シート431や下シート432を含め、電磁弁ユニット200やバルブボディ400は、上述のウォッシャー液用のものと共通使用することができる。ただし、作動流体が空気のため、液漏れの恐れはなく、
図13に示すように、ストップ弁130や圧力逃がし弁450は採用していない。なお、窓ガラスやカメラ等の洗浄には、ウォッシャー液と空気とを併用してもよく、寧ろ併用した方がより良い洗浄を行うことができる。
【0067】
図14ないし
図17の例は、電磁弁ユニット200の形態をノーマルクローズ弁のみでなく、三方弁やノーマルオープン弁も採用した例である。この例では、第1電磁弁ユニット201を、
図16に示す三方弁としている。この例では、第2電磁弁ユニット202および第3電磁弁ユニット203を、
図8に示すノーマルクローズ弁としている。この例では、第4電磁弁ユニット204を、
図17に示すノーマルオープン弁としている。
【0068】
図16に示すように、三方弁では、第1流出流路411が一方側(下方)通路411aと他方側(上方)通路411bとの二つとなっている。コイル211に通電が無い状態では、ノーマルクローズバネ219の付勢力を受けて、下シート432が弁座441を閉じ、一方側通路411aが閉じ、他方側通路411bが開いている。コイル211に通電されると、プランジャ217と共に弁体430が上方に移動し、上シート431が上方弁座441aに当接する。この通電時には、一方側通路411aが開き、他方側通路411bは閉じる。
【0069】
ノーマルオープン弁は、
図17に示すように、第4流出通路414が上方弁座441a側に形成されている。従って、コイル211に通電されていない状態では、ノーマルクローズバネ219の付勢力を受けて弁体430は下方の弁座441側に移動し、上方弁座441aは開いている。上方弁座441aが閉じるのは、コイル211に通電され、プランジャ217が励磁力で上方に引き上げられた状態である。この状態では、上シート431が上方弁座441aに当接し、第4流出通路414はチャンバ420と連通しなくなる。ノーマルオープン弁の場合作動流体の閉じこみの恐れはないので、圧力逃がし弁450は不要である。
【0070】
図14ないし
図17の例では、第1電磁弁ユニット201を三方弁とし、第2電磁弁ユニット202および第3電磁弁ユニット203をノーマルクローズ弁とし、第4電磁弁ユニット204をノーマルオープン弁とした。これに代えて、どの電磁弁ユニット200にどの弁を採用するのかは適宜選択可能である。全ての電磁弁ユニットを三方弁とてもよい。全ての電磁弁ユニットをノーマルオープン弁としてもよい。
【0071】
また、上述の例では、4つの電磁弁ユニット200を一列上に配置したが、この配置位置も適宜選択可能である。
図18は四角形状に配置した例である。このように配置しても、コネクタマイナス端子310を各電磁弁ユニット200のマイナス端子320に共通使用することができる。
【0072】
更に、上述の例では電磁弁ユニット200を4つ用いた例を示したが、電磁弁ユニット200の数は複数であればよく、被洗浄対象との関係で適宜選択すればよい。
【0073】
また、上述の例では、弁体430をロッド220と連結していたが、弁体430はロッド220と一体に移動できればよく、必ずしも固着される必要はない。負荷バネ等を用いて弁体430をロッド220側に押し付けるようにしても良い。
【0074】
図19は、圧力逃がし通路460の他の形成例を示す。上述の例では圧力逃がし通路460をバルブボディ400に形成していた。
図19の例も圧力逃がし通路460はバルブボディ400内に配置されるのは同様であるが、バルブボディ400に配置された弁体430に形成されている。
【0075】
図20に拡大図示するように、弁体430は、内部に圧力逃がし通路460を形成する円筒状の弁本体4301と、同じく内部に圧力逃がし通路460を形成する円管状の弁ガイド4302とからなる。弁本体4301はOリングと同様の耐水性ゴムにより一体成形され、表面にコーティングがされている。コーティング材料は、フッ素やモリブデンといったゴムの表面融解防止や弁体と相手弁座の着座性を向上させる物質である。弁ガイド4302は、バルブボディ400と同じ樹脂材料製である。
【0076】
弁本体4301は、弁ガイド4302の下端に挿入されている。本例では、弁本体4301が弁ガイド4302に圧入されて固定されている。ただ、弁本体4301と弁ガイド4302とは接着剤を用いて固定しても良い。
【0077】
弁ガイド4302の圧力逃がし通路460内に、圧力逃がし弁450が配置されている。圧力逃がし弁450は、樹脂製で、円柱形状をしており、その外径は弁ガイド4302に形成された圧力逃がし通路460の内径よりやや小さくなっている。従って、圧力逃がし弁450は弁ガイド4302にガイドされて、圧力逃がし通路460内を摺動する。そして、圧力逃がし弁450の外周には、弁ガイド4302の圧力逃がし通路460内を作動流体が流れやすくするための圧力逃がし溝450bが複数か所形成されている。圧力逃がし溝450bを複数か所形成すれば、軸芯周りに対称形状としてバランスを図ることができる。ただ、流路断面積が確保されれば圧力逃がし溝450bの数は1つでよい。
【0078】
弁ガイド4302の上部には、円盤状の蓋部4303が形成されている。蓋部4303には、プランジャ217が当接するプランジャ受け部4307が形成されている。また、蓋部4303には、弁ガイド4302内部の圧力逃がし通路460とチャンバ420とを連通する圧力逃がし穴4304が形成されている。
【0079】
なお、弁本体4301の上面は、圧力逃がし弁450が当接する圧力逃がし弁座466となっている。圧力逃がし弁450は、圧力逃がし弁座466とのシール性を高めるため、シール面4501は円環状に突出形成されている。
【0080】
チャンバ420内で、弁ガイド4302の外周には、ノーマルオープン圧縮バネ231が配置される。ノーマルオープン圧縮バネ231の下端はチャンバ420でバルブボディ400内に係合し、上端は弁ガイド4302の蓋部4303の周囲に係合している。ノーマルオープン圧縮バネ231の圧縮力はノーマルクローズバネ219の圧縮力より小さく設定されている。
【0081】
弁ガイド4302内には、圧力逃がし弁450を圧力逃がし弁座466側に付勢する圧力逃がしバネ465が配置されている。圧力逃がしバネ465の上端は蓋部4303により係止され、圧力逃がしバネ465の下端は圧力逃がし弁450に係止されている。圧力逃がし弁450には、この圧力逃がしバネ465を保持するための凹部4502が形成されている。圧力逃がしバネ465の設定圧力(逃がし圧力)は、5キロパスカル程度で、ストップ弁130の設定圧力(解放圧力)の半分程度である。
【0082】
図19,
図20の例のバルブボディ400の組み立ては、まず弁体430を組付ける。弁体430の組付けは、圧力逃がしバネ465と圧力逃がし弁450とを弁ガイド4302の圧力逃がし通路460内に配置する。その際、弁ガイド4302の蓋部4303に圧力逃がしバネ465の一端が係止され、圧力逃がしバネ465の他端が圧力逃がし弁450の凹部4502に係止されるようにする。その状態で、弁本体4301を弁ガイド4302に挿入する。挿入により、圧力逃がし弁450の環状のシール面4501が弁本体4301の圧力逃がし弁座466に着座する。
【0083】
弁本体4301と弁ガイド4302とは、圧入若しくは接着剤により固定される。以上の工程で組付けられた弁体430とノーマルオープン圧縮バネ231とをチャンバ420に配置する。配置された状態で、ノーマルオープン圧縮バネ231の上端は弁ガイド4302の蓋部4303で係止され、下端はバルブボディ400に係止される。
【0084】
電磁弁ユニット200とバルブボディ400の組付けは、上述の例と同様である。組み立ては、バルブボディ400の上面400aにOリング221を配置する。また、プランジャ217の下端を弁ガイド4302の蓋部4303に形成されたプランジャ受け部4307と当接させる。その状態で、ヨーク216の下端をバルブボディ400の係止肩部400bに向けてカシメる。カシメは、コネクタ300が位置する部分を除いてヨーク216の全周で行う。
【0085】
カメラにウォッシャー液を噴射する際の挙動も、基本は上述の例と同様である。流路切替電磁弁100に通電することで、コイル211が励磁し、ヨーク216、プランジャ217、ステータコア2141に磁気回路が形成される。ステータコア2141には磁気絞り部2142が形成されているため、磁束は磁気ギャップ218を通る。この結果、プランジャ217に磁気吸引力が作用し、プランジャ217は、ノーマルクローズバネ219の圧縮力に抗してステータコア2141側に移動する。プランジャ217の移動によって、磁気ギャップ218は減少する。
【0086】
プランジャ217の移動に伴い、弁体430はノーマルオープン圧縮バネ231によって押し上げられて、弁座441を開く。流路切替電磁弁100の以上の動作は、ポンプ103の運転開始前に行われる。そのため、弁体430にはポンプ103からの高圧ウォッシャー液圧力は加わっておらず、弁体430の移動が妨げられることはない。
【0087】
そして、流路切替電磁弁100に通電して流路を開いた後に、ポンプ103の運転を開始する。ポンプ103からの高圧のウォッシャー液は流入通路410に流入し、次いで、チャンバ420、弁座441を介して第2流出通路412より流出する。流出したウォッシャー液は、第2噴射配管112からストップ弁130を介して噴射ノズル120よりカメラに噴射される。
【0088】
カメラの洗浄が終了すると、ポンプ103の運転を停止し、第2噴射配管112の圧力がストップ弁130の解放圧力以下に下がると第2ストップ弁132も閉じる。かつ、流路切替電磁弁100への通電も終了する。ストップ弁130が閉じることで、噴射終了の液切れを良くすることができる。加えて、第2噴射配管112内にウォッシャー液を貯めることができ、次回作動時の応答性を良くすることができる。
【0089】
ノーマルクローズバネ219の付勢力の方がノーマルオープン圧縮バネ231の付勢力より大きいので、弁体430は弁座441に押し付けられる。上述の通り、弁座441は弁体430(弁本体4301)の円弧形状に対応したテーパ形状であるので、確実にシールすることができる。特に、本例では、弁体430(弁本体4301および弁ガイド4302)がチャンバ420内でノーマルオープン圧縮バネ231によりガイドされるので、弁体430の移動がスムーズになされる。
【0090】
図19および
図20に図示された流路切替電磁弁100も、圧力逃がし通路460をバルブボディ400に設ける点では、上述の
図5、
図8、
図16の例と同様である。ただし、
図19および
図20に図示された流路切替電磁弁100は、圧力逃がし通路460を、バルブボディ400の中でも弁体430(弁本体4301および弁ガイド4302)の内部に形成している点が上述の例と相違する。この例は、圧力逃がし通路460が弁体430(弁本体4301および弁ガイド4302)の内部に形成されているので、全体の構造を小型化することが可能である。上述の
図5、
図8、
図16の例のように、圧力逃がし通路460をバルブボディ400内で弁体430以外の部位に形成する場合には、バルブボディ400に圧力逃がし通路460を設けるためのスペースが必要となる。また、圧力逃がし通路460を形成することでバルブボディ400の形状が複雑となる。
【0091】
特に、圧力逃がし通路460をバルブボディ400内で弁体430以外の部位に形成する場合には、第1流出通路~第4流出通路411~414に圧力逃がし通路460との分岐点を設ける必要が生じる。そのため、第1流出通路~第4流出通路411~414の向きを自由に設定することができなくなる。
【0092】
それに対し、本例では弁体430に圧力逃がし通路460を設けている。圧力逃がし通路460は、弁体430の内部に設置されている。弁体430はチャンバ420に配置されており、チャンバ420は弁座441より流入通路410側である。即ち、弁体430が配置される圧力環境は流入通路410の圧力と同様である。そのため、圧力逃がし通路460を圧力逃がし弁450によって開放すれば、第1流出通路~第4流出通路411~414の圧力を流入通路内の圧力まで下げることが可能である。
【0093】
また、第1流出通路~第4流出通路411~414は弁本体4301の圧力逃がし通路460を介して弁ガイド4302の圧力逃がし通路460と連通している。そのため、第1流出通路~第4流出通路411~414と圧力逃がし通路460とを結ぶ特別な分岐点を設ける必要もない。その結果、第1流出通路~第4流出通路411~414の位置も自由に設定できる。
図19の例では、第1流出通路~第4流出通路411~414を流入通路410と180度対向する位置に配置している。これに代えて、第1流出通路~第4流出通路411~414は、流入通路410と同じ向きに配置することも可能である。また、
図19の例では、ノーマルクローズ流出通路228を水平に配置しているが、第1流出通路~第4流出通路411~414は垂直方向に配置することも可能である。
【0094】
加えて、第1流出通路~第4流出通路411~414と圧力逃がし通路460とを結ぶ分岐点を設けるためには、アッパボディ401とロアボディ402とに分ける必要がある。それに対し、第1流出通路~第4流出通路411~414と圧力逃がし通路460とを結ぶ特別な分岐点を設ける必要がなくなる結果、バルブボディ400を単一の部材で構成することも容易となる。バルブボディ400を単一の部材で構成する結果、部品点数を削減することができると共に、アッパボディ401とロアボディ402との組付け工数も短縮できる。
【0095】
尤も、バルブボディ400を単体で構成することは
図19の例において必須ではない。アッパボディ401とロアボディ402とに分けても良い。その場合2部材は、溶着、ボルト固定や、クリップ止め等の固定方法を用いて固定する。また、バルブボディ400を3部材以上で構成してもよい。
【0096】
上記の通り、第1流出通路~第4流出通路411~414は、上下方向の角度、および/または、周方向の角度を自由に設定することができる。本例では電磁弁ユニット200とバルブボディ400とを別々に成形し、組み立て、その後に連結している。よって、第1流出通路~第4流出通路411~414のレイアウトに制約がないことは、電磁弁ユニット200と配管との取り回しの自由度を高めることとなる。
【0097】
特に、
図19および
図20の例では弁体430を弁本体4301と弁ガイド4302に分割して、内部の圧力逃がし通路460に圧力逃がし弁450を配置する構成としている。よって、圧力逃がし弁450および圧力逃がしバネ465の配置が容易となる。併せて、弁本体4301の上端を圧力逃がし弁座466として利用することも可能となる。かつ、弁ガイド4302の圧力逃がし通路460を圧力逃がし弁450の摺動ガイドとして利用することも可能である。
【0098】
図19の例では、電磁弁ユニット200の磁気回路も
図8とは異なっている。
図8の例では、コア214とステータ215とを別部材として、第2電磁弁ユニット202のコイルが励磁した際にプランジャ217とコア214との磁気ギャップ218に磁力による吸引力を発生させていた。
【0099】
一方、この
図19の例ではコアとステータを一体としたステータコア2141として、このステータコア2141に磁気絞り部2142を形成している。磁気絞り部2142によって、磁気回路が絞られる結果、磁気ギャップ218に吸引力が発生する。この吸引力がノーマルクローズバネ219の押圧力に打ち勝って、プランジャ217を上方に引き上げるのは
図8の例と同様である。また、
図8の例ではスリーブ222を設けていたが、この
図19の例ではスリーブ222を廃止している。スリーブ222を廃止しても同様の磁気回路を構成することはできる。
【0100】
図8の例では、プランジャ217の移動はロッド220を介して弁体430に伝わり、弁体430は弁座441から離脱させていた。一方、
図19および
図20の例では、ロッド220は設けていない。プランジャ217の下面が直接に弁体430(弁ガイド4302の蓋部4303に形成されたプランジャ受け部4307)に当接している。そして、弁体430を上方に引き上げる力は、ノーマルオープン圧縮バネ231の付勢力を利用している。
【0101】
なお、
図19および
図20の例では、弁本体4301と弁ガイド4302とを圧入固定若しくは接着剤固定とした。これに代えて、
図21に示すように、スナップフィットで固定しても良い。この場合には、弁ガイド4302の円筒状部に係止窓部4305を複数か所形成する。また、弁本体4301にも、係止窓部4305と対応する位置に係止爪部4306を形成する。弁本体4301を弁ガイド4302に挿入する際に、係止爪部4306が弾性変形して、係止爪部4306が係止窓部4305に入り込むようにする。
【0102】
また、
図19ないし
図21の例では、弁座441(ノーマルクローズ弁座)をテーパ形状とし、弁本体4301を円弧形状としたが、この形状は必ずしも図示形状に限定されない。弁座441を円弧形状としたり、弁本体4301を平面形状としてもよい。同様に、圧力逃がし弁450もシール面4501を円環状とすることは、シール性能上望ましいが、平面形状としてもよい。
【0103】
また、
図19ないし
図21の例では圧力逃がし弁450に凹部4502を形成して圧力逃がしバネ465を保持していたが、保持の形状は凹部4502に限らない。圧力逃がし弁450に凸部を形成して、この凸部を圧力逃がしバネ465内に配置するようにしても良い。
【0104】
更に、上述の例では、全ての電磁弁ユニット200を共通のコネクタ300に連結して、コネクタ部301を1か所とした。これに代えて、製品に求められる配線等の制約条件の関係から、個別の電磁弁ユニット200にコネクタを設けることが求められる場合には、別々のコネクタを採用してもよい。
【0105】
また、本開示の流路切替電磁弁100はカメラ等の被洗浄物の洗浄を行う作動流体の切替に限らず、幅広く流体の流路切替を行う電磁弁として利用可能である。使用態様に応じては、噴射ノズル120を用いない場合もあり、噴射ノズル120を使用するとしても、電磁弁ユニット200毎に噴射ノズル120の形状を異ならせることも可能である。