(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-28
(45)【発行日】2023-07-06
(54)【発明の名称】作業機械の保守管理システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20230629BHJP
【FI】
G06Q10/20
(21)【出願番号】P 2022557031
(86)(22)【出願日】2021-10-13
(86)【国際出願番号】 JP2021037846
(87)【国際公開番号】W WO2022080400
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2022-08-22
(31)【優先権主張番号】P 2020172283
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 誉
(72)【発明者】
【氏名】安部 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幸仁
【審査官】福田 正悟
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-174308(JP,A)
【文献】特開2014-174684(JP,A)
【文献】特開2009-68259(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の作業機械の保守管理情報を蓄積する保守管理データベースサーバと、前記保守管理情報に基づいて各々の前記作業機械の部品ごとに交換時期を予測する保守管理制御装置と、を備えた作業機械の保守管理システムであって、
前記保守管理情報は、各々の前記作業機械の前記部品ごとの使用開始から交換までの実耐用期間を含み、
前記保守管理制御装置は、複数の前記作業機械の前記部品ごとの前記実耐用期間に基づいて前記部品ごとの交換要因を寿命要因または故障要因と判定する交換要因判定部と、前記交換要因判定部により前記交換要因が前記寿命要因と判定された部品の寿命モデルを作成する寿命モデル作成部と、前記交換要因判定部により前記交換要因が前記故障要因と判定された部品の故障モデルを作成する故障モデル作成部と、前記寿命モデルと前記故障モデルに基づいて各々の前記作業機械の前記部品ごとの交換時期を予測する交換時期予測部と、を有することを特徴とする作業機械の保守管理システム。
【請求項2】
前記保守管理情報は、前記部品ごとの発注から納品までのリードタイムを含み、
前記保守管理制御装置は、前記部品ごとの前記交換時期に基づいて前記部品ごとの交換数を集計する交換数集計部と、前記部品ごとの前記交換数と前記部品ごとの前記リードタイムとに基づいて前記部品の発注時期を予測する発注時期予測部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の作業機械の保守管理システム。
【請求項3】
前記保守管理情報は、前記部品ごとの製造期間における供給可能数を含み、
前記保守管理制御装置は、前記部品ごとの前記交換数、および前記供給可能数に基づいて前記部品ごとに前記製造期間における前記供給可能数を超えない平準化発注数および平準化発注時期を算出する平準化発注部を有することを特徴とする請求項2に記載の作業機械の保守管理システム。
【請求項4】
前記保守管理情報は、各々の前記作業機械の稼働情報を含み、
前記寿命モデル作成部は、前記交換要因が前記寿命要因である前記部品を備えた前記作業機械の前記稼働情報を説明変数とし、前記交換要因が前記寿命要因である前記部品の前記実耐用期間を目的変数とする重回帰分析により、前記寿命モデルを作成することを特徴とする請求項1に記載の作業機械の保守管理システム。
【請求項5】
前記保守管理情報は、各々の前記作業機械の属性情報および稼働情報を含み、
前記故障モデル作成部は、前記属性情報に基づいて前記交換要因が前記故障要因である前記部品を備える前記作業機械の一以上のグループを作成し、各々の前記グループに含まれる複数の前記作業機械の前記稼働情報に基づいて前記グループごとに前記故障モデルを作成することを特徴とする請求項1に記載の作業機械の保守管理システム。
【請求項6】
前記保守管理情報は、各々の前記作業機械に関連する市況情報を含み、
前記保守管理制御装置は、前記作業機械ごとの前記稼働情報と前記市況情報に基づいて稼働モデルを作成する稼働モデル作成部と、前記稼働情報が欠損した場合に前記稼働モデルに基づいて補完情報を作成する稼働情報補完部と、を有することを特徴とする請求項5に記載の作業機械の保守管理システム。
【請求項7】
前記稼働モデル作成部は、前記グループごとに前記稼働モデルを作成し、
前記稼働情報補完部は、前記稼働情報が欠損した場合に前記グループごとの前記稼働モデルに基づいて前記補完情報を作成することを特徴とする請求項6に記載の作業機械の保守管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業機械の保守管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から転動体を有する機械部品の監視・診断システムが知られている(下記特許文献1)。特許文献1に記載された機械部品の監視・診断システムは、センサと、センサ情報送信手段と、センサ情報受信手段と、診断手段と、診断結果情報送信手段と、診断結果情報受信手段とを備えている(同請求項1、第0005段落、
図3)。
【0003】
上記センサは、顧客企業の事業所の機械に組み込まれた機械部品の寿命関係要因を検出する。上記センサ情報送信手段は、上記センサで検出した情報またはこの情報を加工した情報であるセンサ情報を回線に送信する。上記センサ情報受信手段は、上記機械部品を生産販売する企業の事業所に設けられ上記回線で送信されたセンサ情報を受信する。
【0004】
上記診断手段は、上記センサ情報受信手段で受信したセンサ情報から上記機械部品の寿命状況を診断する。上記診断結果情報送信手段は、上記診断手段の診断結果情報を回線に送信する。上記診断結果情報受信手段は、上記顧客企業の事業所に設けられ上記回線に送信された診断結果情報を受信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
作業機械は、通常の汎用機械と比較して生産数が少なく、受注生産の部品も多いため、部品の発注から納品までのリードタイムが通常の汎用機械よりも長い傾向がある。このような傾向は、たとえば鉱山などで稼働する超大型の作業機械において顕著である。そのため、部品の交換時期が予測できたとしても、交換時期までに部品を納品できず、作業機械の稼働が停止するおそれがある。したがって、作業機械の部品の交換時期をより早期に予測することが求められている。
【0007】
本開示は、作業機械の部品の交換時期をより早期に予測することが可能な作業機械の保守管理システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様は、複数の作業機械の保守管理情報を蓄積する保守管理データベースサーバと、前記保守管理情報に基づいて各々の前記作業機械の部品ごとに交換時期を予測する保守管理制御装置と、を備えた作業機械の保守管理システムであって、前記保守管理情報は、各々の前記作業機械の前記部品ごとの使用開始から交換までの実耐用期間を含み、前記保守管理制御装置は、複数の前記作業機械の前記部品ごとの前記実耐用期間に基づいて前記部品ごとの交換要因を寿命要因または故障要因と判定する交換要因判定部と、前記交換要因判定部により前記交換要因が前記寿命要因と判定された部品の寿命モデルを作成する寿命モデル作成部と、前記交換要因判定部により前記交換要因が前記故障要因と判定された部品の故障モデルを作成する故障モデル作成部と、前記寿命モデルと前記故障モデルに基づいて各々の前記作業機械の前記部品ごとの交換時期を予測する交換時期予測部と、を有することを特徴とする作業機械の保守管理システムである。
【発明の効果】
【0009】
本開示の上記一態様によれば、作業機械の部品の交換時期をより早期に予測することが可能な作業機械の保守管理システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示に係る作業機械の保守管理システムの実施形態を示す概略図。
【
図2】
図1の保守管理システムの保守管理データベースサーバと保守管理制御装置の機能ブロック図。
【
図3】
図2の保守管理制御装置の交換要因判定部の処理の流れを示すフロー図。
【
図4】
図2の保守管理制御装置の寿命モデル作成部の処理の流れを示すフロー図。
【
図5】
図2の保守管理制御装置の故障モデル作成部の処理の流れを示すフロー図。
【
図6】
図2の保守管理制御装置の稼働モデル作成部の処理の流れを示すフロー図。
【
図7】
図2の保守管理制御装置の交換時期予測部の処理の流れを示すフロー図。
【
図8】
図2の保守管理制御装置の交換数集計部の処理の流れを示すフロー図。
【
図9】
図2の保守管理制御装置の交換数集計部の集計結果の一例を示す表。
【
図10】
図2の保守管理制御装置の発注時期予測部の処理の流れを示すフロー図。
【
図12】
図2の保守管理制御装置の平準化発注部による処理を説明する表とグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本開示に係る作業機械の保守管理システムの実施形態を説明する。
【0012】
図1は、本開示に係る作業機械の保守管理システムの実施形態の全体構成を示す概略図である。本実施形態の保守管理システム100は、たとえば油圧ショベルなどの作業機械10の保守管理を行うためのシステムである。保守管理システム100による保守管理の対象である作業機械10は、油圧ショベルに限定されず、たとえば、ホイールローダ、道路機械、ダンプトラック、双腕仕様機などであってもよい。
【0013】
保守管理システム100は、主に、複数の作業機械10の保守管理情報を蓄積する保守管理データベースサーバ110(以下、保守管理DBサーバ110)と、保守管理情報に基づいて各々の作業機械10の部品ごとに交換時期を予測する保守管理制御装置120と、を備えている。なお、
図1では、複数の作業機械10のうち、1台の作業機械10のみを図示している。保守管理DBサーバ110および保守管理制御装置120は、たとえば、保守管理センター20に設置される。なお、保守管理DBサーバ110および保守管理制御装置120の設置場所は特に限定されず、たとえば、作業機械10の製造元30、販売元40、または部品供給元50であってもよい。
【0014】
作業機械10は、交換を必要とする複数の部品を有している。
図1に示す例において、作業機械10は、油圧ショベルであり、多関節型のフロント作業機11と、油圧モータによって駆動される走行体12と、その走行体12の上で旋回する上部旋回体13と、を備える。フロント作業機11は、上部旋回体13に連結されてブームシリンダ14によって駆動されるブーム11aと、ブーム11aに連結されてアームシリンダ15によって駆動されるアーム11bと、アーム11bに連結されてバケットシリンダ16によって駆動されるバケット11cと、を備える。
【0015】
また、作業機械10は、たとえば、コントローラ17と、図示を省略する通信機とを備えている。コントローラ17は、たとえば、入出力部、中央演算装置(CPU)、メモリ、タイマなどを含むマイクロコントローラによって構成され、作業機械10の各部を制御するとともに、作業機械10に関する各種の情報を取得する。通信機は、たとえば、無線通信回線および有線通信回線を介して保守管理DBサーバ110に接続されている。無線通信回線は、たとえば、通信衛星60および地上局70を介した衛星通信回線であってもよく、地上の無線基地局を経由した通常の無線通信回線であってもよい。
【0016】
コントローラ17は、たとえば、作業機械10の各部に設けられたセンサから、作業機械10の稼働情報を取得する。また、コントローラ17は、たとえば、通信機、無線通信回線および有線通信回線を介して、作業機械10の稼働情報を、作業機械10の属性情報とともに保守管理DBサーバ110へ送信する。ここで、コントローラ17が取得する作業機械10の稼働情報は、たとえば、アワメータによって計測される作業機械10の積算使用時間を含む。また、作業機械10の稼働情報は、たとえば、積算走行時間、積算旋回時間、積算掘削時間、燃料使用量、吸気量、エンジンオイル量、冷却水量、油圧ポンプの吐出流量および吐出圧、作動油の温度、ならびに、油圧シリンダ内の作動油の圧力の少なくとも一つを含む。また、作業機械10の属性情報は、たとえば、機種、型式、識別番号、ユーザ情報、位置情報の少なくとも一つを含む。
【0017】
コントローラ17は、たとえば、メンテナンス用端末80に無線通信回線または有線通信回線を介して接続され、メンテナンス用端末80へ作業機械10の稼働情報を送信する。メンテナンス用端末80は、たとえば、スマートフォン、タブレットPC、ノートPCなどの携帯端末を含み、作業機械10から取得した稼働情報を、無線通信回線または有線通信回線を介して保守管理DBサーバ110へ送信する。メンテナンス用端末80は、たとえば、作業機械10の販売元40やサービス工場のメンテナンス要員によって使用される。作業機械10のコントローラ17と保守管理DBサーバ110との間の無線通信回線を介した情報通信が困難な場合、メンテナンス用端末80を介して作業機械10の稼働情報を保守管理DBサーバ110へ送信することができる。
【0018】
保守管理DBサーバ110は、たとえば、複数の端末31,41,51にインターネット回線などの通信回線を介して情報通信可能に接続される。これら複数の端末31,41,51は、たとえば、作業機械10の製造元30の端末31、作業機械10の販売元40の端末41、作業機械のユーザまたは部品供給元50の端末51、などを含み、互いに情報通信可能に接続されていてもよい。保守管理システム100は、たとえば、作業機械10のコントローラ17に搭載されるコンピュータプログラム、メンテナンス用端末80、および複数の端末31,41,51を含んでもよい。
【0019】
図2は、
図1に示す保守管理DBサーバ110と保守管理制御装置120の機能ブロック図である。保守管理DBサーバ110および保守管理制御装置120は、たとえば、入出力部、CPUなどの処理装置、メモリやハードディスクなどの記憶装置、および、その記憶装置に記憶されたデータやコンピュータプログラムなどを備えたコンピュータである。保守管理DBサーバ110と保守管理制御装置120は、互いに情報通信可能に接続されるとともに、それぞれ通信回線を介して複数の端末31,41,51やメンテナンス用端末80に情報通信可能に接続される。
【0020】
保守管理DBサーバ110は、複数の作業機械10の保守管理情報を蓄積する。保守管理情報は、たとえば、各々の作業機械10の部品ごとの使用開始から交換までの実耐用期間を含む。また、保守管理情報は、たとえば、作業機械10の部品ごとの発注から納品までのリードタイムを含む。また、保守管理情報は、たとえば、作業機械10の部品ごとの在庫数と、作業機械10の部品ごとの製造期間における供給可能数とを含む。また、保守管理情報は、たとえば、各々の作業機械10の稼働情報を含む。また、保守管理情報は、たとえば、各々の作業機械10の属性情報を含む。また、保守管理情報は、各々の作業機械10に関連する市況情報を含む。これらの保守管理情報は、たとえば、保守管理DBサーバ110にデータベースとして記録されている。
【0021】
図2に示す例において、保守管理DBサーバ110は、たとえば、部品データベース111と、機械データベース112と、稼働情報データベース113と、補完情報データベース114と、を備えている。また、保守管理DBサーバ110は、たとえば、ユーザ情報データベース115と、交換情報データベース116と、市況情報データベース117と、を備えている。
【0022】
部品データベース111には、たとえば、前述の保守管理情報のうち、作業機械10の部品ごとのリードタイムと、作業機械10の部品ごとの在庫数と、作業機械10の部品ごとの製造期間における供給可能数と、が格納されている。ここで、リードタイムは、たとえば、地域ごとに設定された作業機械10の部品ごとの発注から納品までに必要な期間である。また、各部品の製造期間における供給可能数は、各部品の製造期間における部品供給元50による部品の供給能力を表す。また、部品データベース111は、たとえば、後述する保守管理制御装置120の交換数集計部127、発注時期予測部128、および平準化発注部129による演算結果を格納する。
【0023】
機械データベース112には、たとえば、前述の保守管理情報のうち、複数の作業機械10の属性情報が格納されている。ここで機械データベース112に格納される作業機械10の属性情報は、たとえば、作業機械10の識別番号、機種、型式、位置情報、ユーザへの納入日などを含む。
【0024】
稼働情報データベース113には、たとえば、前述の保守管理情報のうち、各々の作業機械10の稼働情報が格納されている。稼働情報は、前述のように、たとえば、各々の作業機械10の積算使用時間、積算走行時間、積算旋回時間、積算掘削時間、燃料使用量、吸気量、エンジンオイル量、および冷却水量などを含む。また、作業機械10の稼働情報は、たとえば、油圧ポンプの吐出流量および吐出圧、作動油の温度、ならびに、油圧シリンダ内の作動油の圧力などを含む。
【0025】
各々の作業機械10の稼働情報は、たとえば、各々の作業機械10の属性情報とともに、各々の作業機械10のコントローラ17またはメンテナンス用端末80から、1時間ごと、半日ごと、または1日ごとなど、定期的に保守管理DBサーバ110へ送信される。保守管理DBサーバ110は、受信した各々の作業機械10の稼働情報を、稼働情報データベース113に格納して蓄積する。
【0026】
補完情報データベース114には、たとえば、後述する保守管理制御装置120の稼働情報補完部の演算結果である補完稼働情報が格納される。補完稼働情報は、たとえば、ある作業機械10において、センサの故障などの不具合により、その作業機械10の稼働情報が欠落した場合に、その稼働情報の欠落部分を補完するために使用される。
【0027】
ユーザ情報データベース115には、たとえば、前述の保守管理情報である作業機械10の属性情報のうち、作業機械10ごとのユーザの識別情報、業種、所在地域、掘削対象物、および担当の販売元40などの情報が格納されている。
【0028】
交換情報データベース116には、たとえば、前述の保守管理情報のうち、各々の作業機械10の部品ごとの使用開始から交換までの実耐用期間が格納されている。より詳細には、たとえば、各々の作業機械10のコントローラ17またはメンテナンス用端末80から、保守管理DBサーバ110へ、各々の作業機械10の部品ごとの交換日が送信される。保守管理DBサーバ110は、受信した各々の作業機械10の部品ごとの交換日を、交換情報データベース116に格納する。交換情報データベース116は、たとえば、各々の作業機械10の部品ごとの交換日と交換日との間の期間、すなわち、前回の交換日からその次の交換日までの期間を、各部品の実耐用期間として算出して保持する。また、交換情報データベース116は、たとえば、メンテナンス用端末80を介してメンテナンス要員によって入力された各々の作業機械10の部品ごとのフラグ情報を格納する。フラグ情報は、たとえば、寿命交換または故障交換など、部品の交換要因を表す情報である。
【0029】
市況情報データベース117には、たとえば、前述の保守管理情報のうち、各々の作業機械10に関連する市況情報が格納されている。市況情報は、たとえば、鉄鉱石や石炭など、作業機械10の掘削対象物の価格および需給、作業機械10の燃料価格、ならびに景気動向指数のうち、少なくとも一つを含む。
【0030】
保守管理制御装置120は、たとえば、交換要因判定部121と、寿命モデル作成部122と、故障モデル作成部123と、交換時期予測部126と、を有している。保守管理制御装置120は、さらに、稼働モデル作成部124と、稼働情報補完部125とを有してもよい。保守管理制御装置120は、さらに、交換数集計部127と、発注時期予測部128と、を有してもよい。保守管理制御装置120は、さらに、平準化発注部129を有してもよい。これら保守管理制御装置120の各部は、たとえば、記憶装置に記憶されたプログラムを処理装置によって実行することによって実現される保守管理制御装置120の機能を表している。
【0031】
以下、
図3から
図20を参照して、本実施形態の保守管理システム100の動作を説明する。
図3は、
図2の保守管理制御装置120の交換要因判定部121の処理の流れを示すフロー図である。交換要因判定部121は、複数の作業機械10の部品ごとの実耐用期間に基づいて部品ごとの交換要因を寿命要因または故障要因と判定する。より詳細には、交換要因判定部121は、まず、交換情報データベース116に、各々の作業機械10の部品ごとの故障要因を示すフラグ情報が格納されているか否かを判定する処理P101を実行する。なお、故障要因は、実耐用期間が規定より短い突発的な故障を意味する。
【0032】
この処理P101において、交換要因判定部121は、交換情報データベース116にフラグ情報が格納されている(YES)と判定すると、フラグ情報に基づいて故障要因が、寿命交換と故障交換のいずれかであることを判定する処理P102を実行して、
図3に示す処理を終了する。一方、この処理P101において、交換要因判定部121は、交換情報データベース116にフラグ情報が格納されていない(NO)と判定すると、部品の実耐用期間が所定のしきい値Tth以上であるか否かを判定する処理P103を実行する。なお、フラグ情報は、前述のように、たとえば、寿命交換または故障交換など、部品の交換要因を表す情報であり、交換情報データベース116に格納されている。しかし、たとえば、作業機械10の出荷直後など、未だ部品の交換が行われていない場合は、交換情報データベース116にフラグ情報は格納されていない。
【0033】
この処理P103において、交換要因判定部121は、交換情報データベース116に格納された各々の作業機械10の部品ごとの実耐用期間が、その部品ごとのしきい値Tth以上である(YES)と判定すると、その部品の交換要因を寿命要因と判定する処理P104を実行して、
図3に示す処理を終了する。この処理P104において、交換要因判定部121は、交換要因を寿命要因と判定し、判定した交換要因を、たとえば交換情報データベース116に記録する。一方、処理P103において、交換要因判定部121は、その部品ごとの実耐用期間が、その部品ごとのしきい値Tth未満である(NO)と判定すると、その部品の交換要因を故障要因と判定する処理P105を実行して、
図3に示す処理を終了する。この処理P105において、交換要因判定部121は、交換要因を寿命要因と判定し、判定した交換要因を、たとえば交換情報データベース116に記録する。
【0034】
このように、処理P104または処理P105において交換情報データベース116に記録された交換要因が、フラグ情報になる。なお、処理P104または処理P105において交換情報データベース116に記録されたフラグ情報と、メンテナンス用端末80を介してメンテナンス要員によって入力されたフラグ情報とを区別して交換情報データベース116に記録してもよい。この場合、前述の故障要因を判定する処理P102において、メンテナンス要員によって入力されたフラグ情報を優先して使用することができる。
【0035】
図4は、
図2の保守管理制御装置120の寿命モデル作成部122の処理の流れを示すフロー図である。寿命モデル作成部122は、たとえば、交換要因判定部121によって交換要因が寿命要因であると判定された部品の実耐用期間に基づいて、部品ごとの寿命モデルを作成する。より詳細には、寿命モデル作成部122は、まず、対象となる作業機械10の稼働情報の欠落の有無を判定する処理P201を実行する。
【0036】
この処理P201において、寿命モデル作成部122は、対象となる作業機械10の稼働情報の欠落はない(NO)と判定すると、稼働モデルを作成する処理P202を実行する。この処理P202において、寿命モデル作成部122は、たとえば、交換要因が寿命要因である部品を備えた作業機械10の稼働情報を説明変数とし、交換要因が寿命要因である部品の実耐用期間を目的変数とする重回帰分析により寿命モデルを作成して、
図4に示す処理を終了する。
【0037】
一方、処理P201において、寿命モデル作成部122は、対象となる作業機械10の稼働情報の欠落がある(YES)と判定すると、その作業機械10の稼働情報を補完する処理P203を実行する。ここで、
図2に示す稼働情報補完部125は、作業機械10の稼働情報が欠落した場合に、作業機械10の稼働モデルに基づいて、欠落した稼働情報を補完するための補完情報を作成する。なお、稼働情報補完部125は、後述する故障モデル作成部123と同様に、作業機械10の属性情報に基づいて、一以上の作業機械10のグループを作成し、作成したグループごとの作業機械10の稼働モデルに基づいて補完情報を作成してもよい。
【0038】
上記処理P203において、寿命モデル作成部122は、稼働情報補完部125によって作成した補完情報を用いて欠落した稼働情報を補完した後に、寿命モデルを作成する処理P202を実行し、
図4に示す処理を終了する。寿命モデルは、たとえば、故障要因が寿命要因である部品が、その部品の実耐用期間における作業機械10のどのような稼働によって消耗して交換に至ったかを示すモデルである。
【0039】
上記処理P203において、寿命モデル作成部122は、補完した稼働情報を保守管理DBサーバ110の稼働情報データベース113に格納してもよく、稼働情報データベース113に格納された稼働情報と別に、補完情報データベース114に格納してもよい。これにより、補完情報データベース114に格納された補完された稼働情報と、稼働情報データベース113に格納された欠落のない稼働情報とを区別することが可能になる。
【0040】
なお、交換情報データベース116に格納された作業機械10の稼働情報の数が、重回帰分析を行うために十分である場合、寿命モデル作成部122は、処理P202において補完された稼働情報を使用せず、欠落のない稼働情報のみを用いて寿命モデルを作成してもよい。また、寿命モデル作成部122は、欠落率が所定の値を超える作業機械10の稼働情報を、寿命モデルの作成に使用しないようにしてもよい。
【0041】
図5は、
図2の保守管理制御装置120の故障モデル作成部123の処理の流れを示すフロー図である。故障モデル作成部123は、交換要因判定部121によって交換要因が故障要因であると判定された各々の作業機械10の部品ごとの実耐用期間に基づいて部品ごとの故障モデルを作成する。作業機械10の各部品の故障は、たとえば、作業機械10の用途や操作方法によって一定の確率で発生することが考えられる。
【0042】
故障モデル作成部123は、たとえば、作業機械10の属性情報に基づいて交換要因が故障要因である部品を備える作業機械10の一以上のグループを作成し、各々のグループに含まれる複数の作業機械10の稼働情報に基づいて、グループごとに故障モデルを作成する。
【0043】
より詳細には、故障モデル作成部123は、まず、グルーピング処理P301を実行する。このグルーピング処理P301において、故障モデル作成部123は、まず、機械データベース112、稼働情報データベース113およびユーザ情報データベース115を参照する。そして、故障モデル作成部123は、たとえば、交換要因が故障要因である部品を使用していた作業機械10の属性情報と、その部品の実耐用期間におけるその作業機械10の稼働情報と、その作業機械10のユーザ情報とを取得する。
【0044】
さらに、グルーピング処理P301において、故障モデル作成部123は、取得した属性情報に基づいて、一以上の作業機械10のグループを作成する。より具体的には、故障モデル作成部123は、たとえば、交換要因が故障要因である部品を使用していた作業機械10の機種、型式、位置情報、ユーザの識別情報、業種、所在地域、掘削対象物などの属性情報に基づいて、作業機械10を一以上のグループにグルーピングする。
【0045】
次に、故障モデル作成部123は、故障モデルの作成処理P302を実行する。この処理P302において、故障モデル作成部123は、たとえば、各グループで交換要因が故障要因である部品の個数を集計して部品ごとの総故障数を算出するとともに、各グループの作業機械10の稼働時間の合計である総稼働時間を算出する。さらに、故障モデル作成部123は、総故障数を総稼働時間で除すことで、各グループの部品ごとの単位時間当たりの故障発生数を故障モデルとして算出し、
図5に示す処理を終了する。なお、故障モデル作成部123は、総故障数を各グループの作業機械10の稼働日数の合計である総稼働日数で除すことで、各グループの部品ごとの1日当たりの故障発生数を故障モデルとして算出してもよい。
【0046】
図6は、
図2の保守管理制御装置120の稼働モデル作成部124の処理の流れを示すフロー図である。稼働モデル作成部124は、たとえば、保守管理DBサーバ110の稼働情報データベース113に格納された作業機械10ごとの稼働情報と、保守管理DBサーバ110の市況情報データベース117に格納された市況情報に基づいて稼働モデルを作成する。
【0047】
より詳細には、稼働モデル作成部124は、まず、保守管理DBサーバ110の稼働情報データベース113に格納された作業機械10ごとの稼働情報を取得する処理P401を実行する。ここで、稼働情報は、前述のように積算使用時間を含む。次に、稼働モデル作成部124は、市況情報データベース117から、作業機械10の稼働情報に対応する期間の市況情報を取得する処理P402を実行する。ここで、市況情報は、前述のように、作業機械10の掘削対象物の価格および需給、作業機械10の燃料価格、ならびに景気動向指数のうち、少なくとも一つを含む。
【0048】
次に、稼働モデル作成部124は、取得した稼働情報に含まれる積算使用時間の推移と市況情報を用いた重回帰分析を行って、作業機械10ごとの稼働モデルを作成して、
図6に示す処理を終了する。なお、稼働モデル作成部124は、故障モデル作成部123による前述のグルーピング処理P301によって作成したグループごとに作業機械10の稼働モデルを作成してもよい。また、稼働モデル作成部124は、市況情報を用いることなく、過去の稼働情報に基づいて将来の稼働時間を予測することにより、稼働モデルを作成してもよい。
【0049】
図7は、
図2の保守管理制御装置120の交換時期予測部126の処理の流れを示すフロー図である。交換時期予測部126は、前述の寿命モデルと故障モデルに基づいて各々の作業機械10の部品ごとの交換時期を予測する。より詳細には、交換時期予測部126は、たとえば、保守管理DBサーバ110の交換情報データベース116を参照して、各々の作業機械10の部品ごとに、交換日が記録されているか否かを判定する処理P501を実行する。この処理P501において、交換時期予測部126は、交換日が記録されていない(NO)と判定した場合は、たとえば機械データベース112を参照して、その作業機械10のその部品について、その作業機械10のユーザへの納入日を最新交換日に設定する処理P502を実行する。
【0050】
一方、上記の処理P501において、交換時期予測部126は、交換日が記録されている(YES)と判定した場合は、さらに交換情報データベース116を参照して、その作業機械10のその部品について、複数の交換日が記録されているか否かを判定する処理P503を実行する。この処理P503において、交換時期予測部126は、記録されている交換日が一つ(NO)と判定すると、その交換日を最新交換日に設定する処理P504を実行し、記録されている交換日が複数(YES)と判定すると、直近の交換日を最新交換日に設定する処理P505を実行する。
【0051】
なお、作業機械10は、たとえば、複数の同一部品を備える場合もある。この場合、複数の同一部品を一部品として取り扱うことも可能である。なお、複数の同一部品であっても同時に交換しないものについては、個々の部品として取り扱うことができる。また、各々の作業機械10は、たとえばコントローラ17に部品ごとの交換日を保持していてもよい。交換時期予測部126は、上記の処理P502、P504、またはP505が終了すると、寿命交換日を予測する処理P506を実行する。
【0052】
この処理P506において、交換時期予測部126は、たとえば、機械データベース112を参照して、前述の故障モデル作成部123によって作成した作業機械10のグループごとに、稼働モデル作成部124によって作成した稼働モデルを参照する。そして、稼働モデルに基づく稼働時間推移を、寿命モデル作成部122によって作成した寿命モデルに入力して、各々の作業機械10の部品ごとの最新交換日を基点とする寿命交換日を算出する。
【0053】
ここで、各々の作業機械10の部品ごとの最新交換日から現在までの作業機械10の実稼働時間が取得できている期間は、その実稼働時間を寿命モデル作成部122によって作成した寿命モデルの入力としてもよい。また、交換時期予測部126は、現在使用中の部品の寿命交換日を最新交換日として、上記の処理P506を実行することで、現在使用中の部品を交換した後の新しい部品の寿命交換日を予測して、より長期の部品の需要予測を行うこともできる。
【0054】
次に、交換時期予測部126は、故障交換日を予測する処理P507を実行する。この処理P507において、交換時期予測部126は、たとえば、機械データベース112を参照して、前述の故障モデル作成部123によって作成した作業機械10のグループごとに、稼働モデル作成部124によって作成した稼働モデルを参照する。そして、稼働モデルに基づく将来の稼働時間推移を、故障モデル作成部123によって作成した故障モデルに入力して、各々の作業機械10の部品ごとの最新交換日を基点とする故障交換日を算出する。
【0055】
ここで、交換時期予測部126は、たとえば、グループごとの稼働モデルに基づく将来の稼働時間の総和を故障モデルに入力して、各々の作業機械10の部品ごとの最新交換日を基点とする故障交換日を算出してもよい。また、故障モデルは、統計的な確立モデルであることから、故障モデルの適用日を基点として故障交換日を算出してもよい。また、交換時期予測部126は、現在使用中の部品の故障交換日を最新交換日として、上記の処理P507を実行することで、現在使用中の部品を交換した後の新しい部品の故障交換日を予測して、より長期の部品の需要予測を行うこともできる。
【0056】
図8は、
図2の保守管理制御装置120の交換数集計部127の処理の流れを示すフロー図である。交換数集計部127は、部品ごとの交換時期である寿命交換日と故障交換日に基づいて、部品ごとの交換数を集計する。より詳細には、交換数集計部127は、交換時期予測部126によって算出された各々の作業機械10の部品ごとの寿命交換日を取得する処理P601と、各々の作業機械10の部品ごとの故障交換日を取得する処理P602を実行する。さらに、交換数集計部127は、たとえば、ユーザ情報データベース115を参照して、各々の作業機械10を担当する販売元40ごとに、各々の部品の交換数を集計する処理P603を実行する。各々の部品の交換数の集計は、たとえば、日単位、週単位、月単位など、各々の部品の寿命交換日および故障交換日に対応する様々な単位集計期間で行うことができる。
【0057】
図9は、交換数集計部127の集計結果の一例を示す表である。交換数集計部127は、たとえば、
図9の上の表に示すように、作業機械10の機種、号機番号、販売元40の代理店名、部品名、部品番号ごとに、各月の部品の交換数を集計する。また、交換数集計部127は、たとえば、
図9の下の表に示すように、販売元40の代理店名、部品名、部品番号ごとに、各月の部品の交換数を集計する。
【0058】
作業機械10の製造元30、各販売元40、および部品供給元50は、たとえば、
図1に示すように、端末31,41,51により保守管理センター20の保守管理DBサーバ110または保守管理制御装置120にアクセスして、
図9に示す表を参照することができる。これにより、製造元30、販売元40、および部品供給元50は、将来の部品の発注数を事前に把握することが可能になる。
【0059】
図10は、
図2の保守管理制御装置120の発注時期予測部128の処理の流れを示すフロー図である。発注時期予測部128は、部品ごとの交換数と部品ごとのリードタイムとに基づいて部品の発注時期を予測する。発注時期予測部128は、まず、機械データベース112、ユーザ情報データベース115を参照して、製造元30からそれぞれの販売元40への各々の部品の供給ルートに基づいて、製造元30から各販売元40への各々の部品の発送数を期限ごとに算出する処理P701を実行する。
【0060】
図11は、
図10の発注時期予測部128による処理701を説明する表である。
図11の一番上の表は、製造元30の地域拠点から販売元40へ発送する部品の発送期限と発送個数の一例を示している。
図11の上から二番目の表は、製造元30から、製造元30の地域拠点と販売元40のそれぞれに発送する部品の発送期限と発送個数の一例を示している。
図11の上から三番目の表は、製造元30から、製造元30の地域拠点および販売元40に発送する部品の発送期限と発送個数の一例を示している。
図11の一番下の表は、製造元30から部品供給元50へ発注する部品の発注期限と発注個数の一例を示している。
【0061】
図11に示す例において、部品1は、一方の販売元40である代理店aに対しては、製造元30から地域拠点を経由して供給され、他方の販売元40である代理店bに対しては、製造元30から地域拠点を経由することなく直接供給される。また、製造元30から地域拠点までの部品1の輸送に要するリードタイムは、たとえば3カ月であり、その地域拠点から代理店aまでの部品1の輸送に要するリードタイムは、たとえば1カ月であるとする。また、製造元30から代理店bまでの輸送に要するリードタイムは、たとえば2カ月であるとする。また、部品供給元50における部品1の製造と、部品供給元50から製造元30への部品1の輸送に要するリードタイムは、たとえば4カ月であるとする。
【0062】
このような場合、発注時期予測部128は、上記の処理P701において、まず、
図9の下の表に示すように、交換数集計部127によって集計された、販売元40の代理店名、部品名、部品番号ごとの各月の部品の交換数を参照する。そして、発注時期予測部128は、製造元30の地域拠点を経由して販売元40である代理店aへ供給される部品1の個数を、その地域拠点から代理店aまでの部品1の輸送に要するリードタイムの1カ月分前にシフトする。これにより、
図11の一番上の表に示すように、製造元30の地域拠点から販売元40である代理店aへの発送期限と発送個数が算出される。
【0063】
さらに、発注時期予測部128は、
図11の一番上の表に示す製造元30の地域拠点から販売元40である代理店aへの発送期限と発送個数を、製造元30から地域拠点までの部品1の輸送に要するリードタイムの3カ月分前にシフトする。これにより、
図11の上から二番の表の上の行に示すように、製造元30から、製造元30の地域拠点への発送期限と発送個数が算出される。
【0064】
さらに、発注時期予測部128は、製造元30から部品1が直接発送される
図9の下の表に示す販売元40の代理店bの各月の部品の交換数を、製造元30から代理店bまでの部品1の輸送に要するリードタイムの2カ月分前にシフトする。これにより、
図11の上から二番の表の下の行に示すように、製造元30から販売元40である代理店bへの発送期限と発送個数が算出される。
【0065】
さらに、発注時期予測部128は、
図11の上から二番の表に示す製造元30から地域拠点への発送個数と、販売元40である代理店bへの発送個数を、発送期限ごとに合計する。これにより、
図11の上から三番目の表に示すように、製造元30から、製造元30の地域拠点および販売元40への発送期限と総発送個数を算出することができる。
【0066】
次に、発注時期予測部128は、部品供給元50に対する発注数を期限ごとに算出する処理P702を実行する。発注時期予測部128は、
図11の上から三番目の表に示す製造元30から地域拠点と販売元40への発送期限と総発送個数を、部品供給元50における部品1の製造と、部品供給元50から製造元30への部品1の輸送に要するリードタイムの4カ月分前にシフトする。これにより、
図11の一番下の表に示すように、製造元30から部品供給元50への部品1の発注期限と発注個数を算出することができる。以上により、
図10に示す処理が終了する。
【0067】
作業機械10の製造元30、各販売元40、および部品供給元50は、たとえば、
図1に示すように、端末31,41,51により保守管理センター20の保守管理DBサーバ110または保守管理制御装置120にアクセスして、
図11に示す表を参照することができる。これにより、製造元30、販売元40、および部品供給元50は、将来の部品の発注数を事前に把握することが可能になる。
【0068】
最後に、
図2の保守管理制御装置120の平準化発注部129の動作について、
図12を参照して説明する。
図12は、
図2の保守管理制御装置120の平準化発注部129による処理を説明する表とグラフである。平準化発注部129は、たとえば、部品ごとの交換数および供給可能数に基づいて、部品ごとに製造期間における供給可能数を超えない平準化発注数および平準化発注時期を算出する。
【0069】
部品供給元50に対する部品の発注数は、たとえば、部品供給元50による部品の製造期間における供給可能数を超えないように平準化して、販売元40等への部品の発送期限までに必要な個数の部品が部品供給元50から製造元30へ納入されるようにする必要がある。たとえば、部品供給元50の部品1の製造期間における供給可能数が10個であるとする。この場合、平準化発注部129は、たとえば、
図12の上の表に示すように、製造元30から部品供給元50への部品1の必要発注個数と発注期限に基づいて、発注期限ごとの必要発注個数の積算値を算出する。
【0070】
さらに、平準化発注部129は、たとえば、
図12の上の表に示すように、部品供給元50の部品1の製造期間における供給可能数を超えない10個以下の平準化発注数を算出する。このとき、平準化発注部129は、たとえば、すべての発注期限において、発注期限ごとの平準化発注部129の積算値が、必要発注個数の積算値以上になるように、平準化発注数を算出する。これにより、部品供給元50の供給能力を超える部品1の発注が防止され、部品1を安定して供給することが可能になる。また、平準化発注部129は、部品供給元50における部品1の在庫数を考慮してもよい。
【0071】
以上のように、本実施形態の作業機械の保守管理システム100は、複数の作業機械10の保守管理情報を蓄積する保守管理DBサーバ110と、その保守管理情報に基づいて各々の作業機械10の部品ごとに交換時期を予測する保守管理制御装置120と、を備える。保守管理DBサーバ110に蓄積される上記の保守管理情報は、各々の作業機械10の部品ごとの使用開始から交換までの実耐用期間を含む。保守管理制御装置120は、複数の作業機械10の部品ごとの実耐用期間に基づいて部品ごとの交換要因を寿命要因または故障要因と判定する交換要因判定部121と、交換要因判定部121により交換要因が寿命要因と判定された部品の寿命モデルを作成する寿命モデル作成部122と、交換要因判定部121により交換要因が故障要因と判定された部品の故障モデルを作成する故障モデル作成部123と、これら寿命モデルと故障モデルに基づいて各々の作業機械10の部品ごとの交換時期を予測する交換時期予測部126と、を有する。
【0072】
このような構成により、本実施形態の作業機械の保守管理システム100は、作業機械10の部品の交換時期をより早期に予測することが可能になる。より詳細には、保守管理DBサーバ110に各々の作業機械10の部品ごとの実耐用期間を含む保守管理情報を蓄積し、その実耐用期間に基づいて保守管理制御装置120の交換要因判定部121により、各々の作業機械10の部品ごとに、交換要因を判定することができる。さらに、その交換要因に基づいて、保守管理制御装置120は、寿命モデル作成部122により部品ごとに寿命モデルを作成し、故障モデル作成部123により部品ごとに故障モデルを作成することができる。さらに、保守管理制御装置120は、作成した寿命モデルと故障モデルに基づいて、交換時期予測部126により寿命と故障の双方を考慮して、各々の作業機械10の部品ごとの交換時期を予測することができる。したがって、本実施形態によれば、作業機械10の部品の交換時期をより早期に予測することが可能な作業機械の保守管理システム100を提供することができる。
【0073】
また、本実施形態の保守管理システム100において、保守管理DBサーバ110に蓄積される上記の保守管理情報は、たとえば、各々の作業機械10の部品ごとの発注から納品までのリードタイムを含む。また、保守管理制御装置120は、部品ごとの交換時期に基づいて部品ごとの交換数を集計する交換数集計部127と、部品ごとの交換数と部品ごとのリードタイムとに基づいて部品の発注時期を予測する発注時期予測部128と、を有する。このような構成により、本実施形態の保守管理システム100は、部品ごとのリードタイムを加味した発注時期を予測して、より早期に部品を発注して納品することが可能になる。したがって、作業機械10を使用する現場において、作業機械10の部品を交換する前に、その部品を納入することが可能になり、作業機械10の稼働停止期間を最小限にすることができる。
【0074】
また、本実施形態の保守管理システム100において、保守管理DBサーバ110に蓄積される上記の保守管理情報は、部品ごとの製造期間における供給可能数を含む。保守管理制御装置120は、その部品ごとの交換数および供給可能数に基づいて、部品ごとに製造期間における供給可能数を超えない平準化発注数および平準化発注時期を算出する平準化発注部129を有する。このような構成により、本実施形態の保守管理システム100は、部品供給元50の供給能力を超える部品の発注を防止することができ、部品を安定して供給することが可能になる。
【0075】
また、本実施形態の保守管理システム100において、保守管理DBサーバ110に蓄積される上記の保守管理情報は、各々の作業機械10の稼働情報を含む。また寿命モデル作成部122は、交換要因が寿命要因である部品を備えた作業機械10の稼働情報を説明変数とし、交換要因が寿命要因である部品の実耐用期間を目的変数とする重回帰分析により、寿命モデルを作成する。このような構成より、本実施形態の保守管理システム100は、各々の作業機械10の稼働情報に基づいて、各々の作業機械10の部品ごとの寿命を、より正確に予測することが可能になる。
【0076】
また、本実施形態の保守管理システム100において、保守管理DBサーバ110に蓄積される上記の保守管理情報は、各々の作業機械10の属性情報および稼働情報を含む。また、故障モデル作成部123は、作業機械10の属性情報に基づいて交換要因が故障要因である部品を備える作業機械10の一以上のグループを作成し、各々のグループに含まれる複数の作業機械10の稼働情報に基づいてグループごとに故障モデルを作成する。このような構成により、たとえば、作業機械10の稼働情報が類似したグループごとに故障モデルを作成することができ、各々の作業機械10の部品ごとの故障を、より正確に予測することが可能になる。
【0077】
また、本実施形態の保守管理システム100において、保守管理DBサーバ110に蓄積される上記の保守管理情報は、各々の作業機械10に関連する市況情報を含む。また、保守管理制御装置120は、作業機械10ごとの稼働情報と市況情報に基づいて稼働モデルを作成する稼働モデル作成部124と、稼働情報が欠損した場合に稼働モデルに基づいて補完情報を作成する稼働情報補完部125と、を有する。このような構成により、稼働モデルに基づく作業機械10の将来の稼働時間推移を故障モデルに入力して、部品の故障をより正確に予測することができる。
【0078】
また、本実施形態の保守管理システム100において、稼働モデル作成部124は、グループごとに稼働モデルを作成する。また、稼働情報補完部125は、稼働情報が欠損した場合にグループごとの稼働モデルに基づいて補完情報を作成する。このような構成により、グループごとの稼働モデルに基づく将来の稼働時間の総和を故障モデルに入力して、部品の故障をより正確に予測することができる。
【0079】
以上、図面を用いて本開示に係る作業機械の保守管理システムの実施形態を詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲における設計変更等があっても、それらは本開示に含まれるものである。
【符号の説明】
【0080】
1 部品、10 作業機械、100 作業機械の保守管理システム、110 保守管理データベースサーバ、120 保守管理制御装置、121 交換要因判定部、122 寿命モデル作成部、123 故障モデル作成部、124 稼働モデル作成部、125 稼働情報補完部、126 交換時期予測部、127 交換数集計部、128 発注時期予測部、129 平準化発注部。