(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】部品実装システムおよび部品実装装置ならびに実装基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 13/02 20060101AFI20230630BHJP
【FI】
H05K13/02 D
(21)【出願番号】P 2019026597
(22)【出願日】2019-02-18
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】馬渡 道明
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-012526(JP,A)
【文献】国際公開第2015/087440(WO,A1)
【文献】特開2008-010594(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともトレイの上に等間隔で配置された複数の第1の部品の位置を
前記トレイの中心を原点とする座標で示す第1のトレイデータと、前記トレイの上に等間隔で配置された複数の第2の部品の位置を
前記トレイの中心を原点とする座標で示す第2のトレイデータと、を合成して、前記トレイの上に配置された前記複数の第1の部品と前記複数の第2の部品の位置を示す第3のトレイデータを作成するトレイデータ作成手段と、
前記トレイデータ作成手段によって作成された前記第3のトレイデータが示す前記複数の第1の部品と前記複数の第2の部品の位置に基づいて、前記トレイから前記複数の第1の部品と前記複数の第2の部品のうちの少なくとも1つの部品を取り出して基板に実装する実装手段と、を備え
、
前記複数の第1の部品と前記複数の第2の部品は、少なくとも外縁の形状が同一の部品であり、
前記第2のトレイデータは、前記第1のトレイデータを前記トレイの中心を回転中心として180度回転させた際の前記第1の部品の位置を示す、部品実装システム。
【請求項2】
少なくともトレイの上に等間隔で配置された複数の第1の部品の位置を
前記トレイの中心を原点とする座標で示す第1のトレイデータと、前記トレイの上に等間隔で配置された複数の第2の部品の位置を
前記トレイの中心を原点とする座標で示す第2のトレイデータと、を合成して作成された、前記トレイの上に配置された前記複数の第1の部品と前記複数の第2の部品の位置を示す第3のトレイデータが示す前記複数の第1の部品と前記複数の第2の部品の位置に基づいて、前記トレイから前記複数の第1の部品と前記複数の第2の部品のうちの少なくとも1つの部品を取り出して基板に実装
し、
前記複数の第1の部品と前記複数の第2の部品は、少なくとも外縁の形状が同一の部品であり、
前記第2のトレイデータは、前記第1のトレイデータを前記トレイの中心を回転中心として180度回転させた際の前記複数の第1の部品の位置を示す、部品実装装置。
【請求項3】
トレイの上に等間隔で配置された複数の第1の部品の位置を
前記トレイの中心を原点とする座標で示す第1のトレイデータを作成する第1のトレイデータ作成工程と、
前記トレイの上に等間隔で配置された複数の第2の部品の位置を
前記トレイの中心を原点とする座標で示す第2のトレイデータを作成する第2のトレイデータ作成工程と、
少なくとも前記第1のトレイデータと前記第2のトレイデータとを合成して、前記トレイの上に配置された前記複数の第1の部品と前記複数の第2の部品の位置を示す第3のトレイデータを作成する第3のトレイデータ作成工程と、
前記第3のトレイデータが示す前記複数の第1の部品と前記複数の第2の部品の位置に基づいて、前記トレイから前記複数の第1の部品と前記複数の第2の部品のうちの少なくとも1つの部品を取り出して基板に実装する実装工程と、を含
み、
前記複数の第1の部品と前記複数の第2の部品は、少なくとも外縁の形状が同一の部品であり、
前記第2のトレイデータは、前記第1のトレイデータを前記トレイの中心を回転中心として180度回転させた際の前記複数の第1の部品の位置を示す、実装基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレイに配置された部品を基板に実装する部品実装システムおよび部品実装装置ならびに実装基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に部品を実装した実装基板を製造する部品実装装置では、サイズの大きな大型部品やコネクタなど複雑な形状をした異形部品は、トレイに配置した状態で供給される(例えば、特許文献1を参照)。特許文献1に記載の部品実装装置は、異形部品を収納する凹状の格納部が方向を揃えて等間隔に形成されたトレイの格納部に異形部品を格納して部品実装装置に異形部品を供給している。トレイに配置する異形部品の向きを揃えることで、部品実装装置における実装作業を単純化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1を含む従来技術では、トレイに向きを揃えて等間隔に部品を配置しているため、単純な矩形でない異形部品の場合は部品間の隙間が大きくなってトレイに配置可能な部品数が少なくなり、トレイの交換作業が増加して実装基板の生産効率が低下するという問題点があった。
【0005】
そこで本発明は、複雑な形状の部品を実装した実装基板を効率良く生産することができる部品実装システムおよび部品実装装置ならびに実装基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の部品実装システムは、少なくともトレイの上に等間隔で配置された複数の第1の部品の位置を前記トレイの中心を原点とする座標で示す第1のトレイデータと、前記トレイの上に等間隔で配置された複数の第2の部品の位置を前記トレイの中心を原点とする座標で示す第2のトレイデータと、を合成して、前記トレイの上に配置された前記複数の第1の部品と前記複数の第2の部品の位置を示す第3のトレイデータを作成するトレイデータ作成手段と、前記トレイデータ作成手段によって作成された前記第3のトレイデータが示す前記複数の第1の部品と前記複数の第2の部品の位置に基づいて、前記トレイから前記複数の第1の部品と前記複数の第2の部品のうちの少なくとも1つの部品を取り出して基板に実装する実装手段と、を備え、前記複数の第1の部品と前記複数の第2の部品は、少なくとも外縁の形状が同一の部品であり、前記第2のトレイデータは、前記第1のトレイデータを前記トレイの中心を回転中心として180度回転させた際の前記第1の部品の位置を示す。
【0007】
本発明の部品実装装置は、少なくともトレイの上に等間隔で配置された複数の第1の部品の位置を前記トレイの中心を原点とする座標で示す第1のトレイデータと、前記トレイの上に等間隔で配置された複数の第2の部品の位置を前記トレイの中心を原点とする座標で示す第2のトレイデータと、を合成して作成された、前記トレイの上に配置された前記複数の第1の部品と前記複数の第2の部品の位置を示す第3のトレイデータが示す前記複数の第1の部品と前記複数の第2の部品の位置に基づいて、前記トレイから前記複数の第1の部品と前記複数の第2の部品のうちの少なくとも1つの部品を取り出して基板に実装し、前記複数の第1の部品と前記複数の第2の部品は、少なくとも外縁の形状が同一の部品であり、前記第2のトレイデータは、前記第1のトレイデータを前記トレイの中心を回転中心として180度回転させた際の前記複数の第1の部品の位置を示す。
【0008】
本発明の実装基板の製造方法は、トレイの上に等間隔で配置された複数の第1の部品の位置を前記トレイの中心を原点とする座標で示す第1のトレイデータを作成する第1のトレイデータ作成工程と、前記トレイの上に等間隔で配置された複数の第2の部品の位置を前記トレイの中心を原点とする座標で示す第2のトレイデータを作成する第2のトレイデータ作成工程と、少なくとも前記第1のトレイデータと前記第2のトレイデータとを合成して、前記トレイの上に配置された前記複数の第1の部品と前記複数の第2の部品の位置を示す第3のトレイデータを作成する第3のトレイデータ作成工程と、前記第3のトレイデータが示す前記複数の第1の部品と前記複数の第2の部品の位置に基づいて、前記トレイから前記複数の第1の部品と前記複数の第2の部品のうちの少なくとも1つの部品を取り出して基板に実装する実装工程と、を含み、前記複数の第1の部品と前記複数の第2の部品は、少なくとも外縁の形状が同一の部品であり、前記第2のトレイデータは、前記第1のトレイデータを前記トレイの中心を回転中心として180度回転させた際の前記複数の第1の部品の位置を示す。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複雑な形状の部品を実装した実装基板を効率良く生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施の形態の部品実装システムの構成説明図
【
図2】本発明の一実施の形態の部品実装装置の構成説明図
【
図3】本発明の一実施の形態の部品実装装置の構成を示すブロック図
【
図4】本発明の一実施の形態の部品実装装置に部品を供給するトレイの一例の説明図
【
図5】本発明の一実施の形態の部品実装装置で使用される第1のトレイデータの導出の説明図
【
図6】本発明の一実施の形態の部品実装装置で使用される第1のトレイデータの一例の説明図
【
図7】本発明の一実施の形態の部品実装装置で使用される第2のトレイデータの導出の説明図
【
図8】本発明の一実施の形態の部品実装装置で使用される第2のトレイデータの一例の説明図
【
図9】本発明の一実施の形態の部品実装装置で使用される第3のトレイデータの一例の説明図
【
図10】本発明の一実施の形態の部品実装装置に部品を供給する他のトレイの一例の説明図
【
図11】本発明の一実施の形態の部品実装装置で使用される他のトレイの第3のトレイデータの一例の説明図
【
図12】本発明の一実施の形態の実装基板の製造方法のフロー図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に図面を用いて、本発明の一実施の形態を詳細に説明する。以下で述べる構成、形状等は説明のための例示であって、部品実装システム、部品実装装置、トレイの仕様に応じ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において対応する要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
図2、及び後述する一部では、水平面内で互いに直交する2軸方向として、基板搬送方向のX方向(
図2における左右方向)、基板搬送方向に直交するY方向(
図2における上下方向)が示される。
【0012】
まず
図1を参照して、部品実装システム1の構成を説明する。部品実装システム1は、基板に部品を実装して実装基板を製造する機能を有している。部品実装システム1は、複数の部品実装装置M1,M2を連結して構成されている。部品実装装置M1,M2は、通信ネットワーク2を介して管理コンピュータ3に接続されている。管理コンピュータ3は、部品実装システム1による実装基板の製造を統合管理する他、部品実装装置M1,M2で使用される各種パラメータなどを作成する。なお、部品実装システム1が備える部品実装装置M1,M2は2台に限定されることなく、1台でも、3台以上であってもよい。
【0013】
次に
図2を参照して、部品実装装置M1の構成を説明する。部品実装装置M1,M2の構成を説明する。部品実装装置M1、部品実装装置M2は同様の構成であり、ここでは部品実装装置M1について説明する。部品実装装置M1において、基台4の中央には、基板搬送機構5がX方向に設置されている。基板搬送機構5は、上流側から搬入された基板6をX方向へ搬送し、以下に説明する実装ヘッドによる実装作業位置に位置決めして保持する。また、基板搬送機構5は、部品搭載作業が完了した基板6を下流側に搬出する。基板搬送機構5の両側方には、それぞれ部品供給部7が設置されている。
【0014】
両方の部品供給部7には、複数のテープフィーダ8がX方向に並列に装着されている。テープフィーダ8は、部品を格納するポケットが形成されたキャリアテープを部品供給部7の外側から基板搬送機構5に向かう方向(テープ送り方向)にピッチ送りすることにより、実装ヘッドが部品をピックアップする部品取出し位置に部品を供給する。また、一方の部品供給部7には、大型部品やコネクタなどの異形部品などの部品Dを整列して保持するトレイ9を部品取出し位置に供給するトレイフィーダ10が装着されている。トレイ9には、部品Dの形状に合わせて形成された凹状の格納部9a(
図4参照)が所定の間隔で形成されており、各格納部9aの中に部品Dが載置されている。
【0015】
図2において、基台4の上面におけるX方向の両端部には、リニア駆動機構を備えたY軸テーブル11が配置されている。Y軸テーブル11には、同様にリニア機構を備えたビーム12がY方向に移動自在に結合されている。ビーム12には、実装ヘッド13がX方向に移動自在に装着されている。実装ヘッド13は、部品Dを保持して昇降し、鉛直軸(Z軸)回りに回転可能な複数の吸着ユニット(図示省略)を備える。吸着ユニットのそれぞれの下端部には、部品Dを吸着して保持する吸着ノズル(図示省略)が装着されている。
【0016】
Y軸テーブル11およびビーム12は、実装ヘッド13を水平方向(X方向、Y方向)に移動させる実装ヘッド移動機構を構成する。実装ヘッド移動機構および実装ヘッド13は、部品供給部7から部品Dを取り出して基板6の実装位置に実装する部品実装作業を実行する部品実装機構14を構成する。部品実装作業において実装ヘッド13は、部品供給部7の上方に移動し、各吸着ノズルで所定の部品Dをそれぞれピックアップし、基板6の上方に移動し、各吸着ノズルが保持する部品Dを所定の方向に回転させ、それぞれの実装位置に実装する一連のターンを繰り返す。
【0017】
図2において、ビーム12には、ビーム12の下面側に位置して実装ヘッド13とともに一体的に移動するヘッドカメラ15が装着されている。実装ヘッド13が移動することにより、ヘッドカメラ15は基板搬送機構5の実装作業位置に位置決めされた基板6の上方に移動して、基板6に設けられた基板マーク(図示せず)を撮像して基板6の位置を認識する。
【0018】
部品供給部7と基板搬送機構5との間には、部品認識カメラ16が設置されている。部品認識カメラ16は、部品供給部7から部品Dを取り出した実装ヘッド13が部品認識カメラ16の上方に位置した際に、吸着ノズルに保持された部品Dを下方から撮像する。実装ヘッド13による部品Dの基板6への部品実装作業では、ヘッドカメラ15による基板6の認識結果と部品認識カメラ16による部品Dの認識結果とを加味して実装位置の補正が行われる。
【0019】
図2において、部品実装装置M1の前面で作業者が作業する位置には、作業者が操作するタッチパネル17が設置されている。タッチパネル17は、その表示部に各種情報を表示し、また表示部に表示される操作ボタンなどを使って作業者がデータ入力や部品実装装置M1の操作を行う。
【0020】
次に
図3を参照して、部品実装装置M1,M2の構成を説明する。部品実装装置M1、部品実装装置M2は同様の構成であり、ここでは部品実装装置M1について説明する。部品実装装置M1が備える制御装置20には、基板搬送機構5、部品供給部7、部品実装機構14、ヘッドカメラ15、部品認識カメラ16、タッチパネル17が接続されている。制御装置20は、実装データ記憶部21、トレイデータ作成部22、実装制御部23を備えている。実装データ記憶部21は記憶装置であり、生産データ21a、第1のトレイデータ21b、第2のトレイデータ21c、第3のトレイデータ21dなどを記憶している。
【0021】
生産データ21aには、実装基板の生産機種名、基板6に装着される部品Dの部品名(種類)、部品供給部7における部品Dの供給位置(テープフィーダ8、トレイフィーダ10の装着位置など)、部品Dのサイズ、実装位置(XY座標)、実装方向、実装順序などが含まれている。トレイデータ作成部22は、トレイ9に格納される部品Dの位置、部品方向などの情報を含むトレイデータを作成する。
【0022】
ここで、
図4~
図9を参照しながら、トレイデータ作成部22によるトレイ9Aのトレイデータの作成について説明する。
図4において、トレイ9Aには、L字型をした異形部品である複数の部品D1~D18を格納する複数の格納部9aが規則的に形成されている。複数の格納部9aは、格納される複数の部品D1~D18を交互に180°回転させて格納するように形成されている。すなわち、奇数番目の部品D1,D3,・・・,D17(以下、単に「奇数番部品」と称する。)と偶数番目の部品D2,D4,・・・,D18(以下、単に「偶数番部品」と称する。)は、格納部9aに格納された状態での部品方向が180°回転している。
【0023】
これにより、トレイ9Aに複数の部品D1~D18を効率的に格納することができる。なお、奇数番部品と偶数番部品は、同じ部品Dであっても、外縁の形状が同一の異なる部品Dであってもよい。すなわち、奇数番部品(複数の第1の部品)と偶数番部品(複数の第2の部品)は、少なくとも外縁の形状が同一の部品Dである。吸着ノズルが部品D1~D18を保持する際の目標となる部品保持位置P1~P18は、全ての部品D1~D18で上面の同じ位置となるように設定されている。
【0024】
図5は、トレイ9Aの上に等間隔で配置された複数の奇数番部品(第1の部品)の位置関係を示している。複数の奇数番部品は、X方向にΔX、Y方向にΔYの間隔で碁盤の目状に配置されている。便宜上、
図5での格納部9aの記載は省略されている。
図6は、トレイデータ作成部22によって作成された、複数の奇数番部品の位置を示す第1のトレイデータ21bを示している。第1のトレイデータ21bには、部品番号30毎に、部品保持位置座標31、部品方向32が記憶されている。部品保持位置座標31は、トレイ9Aの中心C(0,0)を原点とする奇数番部品の部品保持位置のXY座標(X座標31x,Y座標31y)である。奇数番部品の部品方向32は、全て0°である。
【0025】
図5において、部品D1の部品保持位置P1(X1,Y1)は、トレイ9Aの中心C(0,0)からX方向にX0、Y方向にY0だけオフセットしている。すなわち、部品D1の保持位置座標は(X0,Y0)である。部品D3の部品保持位置P3(X3,Y3)は部品保持位置P1からX方向にΔXだけシフトしており、部品D3の保持位置座標は(X0+ΔX,Y0)である。部品D5の部品保持位置P5(X5,Y5)は部品保持位置P1からX方向に2ΔXだけシフトしており、部品D5の保持位置座標は(X0+2ΔX,Y0)である。部品D7の部品保持位置P7(X7,Y7)は部品保持位置P1からY方向に-ΔYだけシフトしており、部品D3の保持位置座標は(X0,Y0-ΔY)である。
【0026】
部品D13の部品保持位置P13(X13,Y13)は部品保持位置P1からY方向に-2ΔYだけシフトしており、部品D13の保持位置座標は(X0,Y0-2ΔY)である。このように、トレイデータ作成部22は、トレイ9Aの中心C(0,0)からの部品保持位置P1のオフセット(X0,Y0)、碁盤の目状に配置されている複数の奇数番部品のX方向の間隔ΔX、Y方向の間隔ΔYに基づいて、複数の奇数番部品の位置を示す第1のトレイデータ21bを作成する。トレイデータ作成部22は、作成した第1のトレイデータ21bを実装データ記憶部21に記憶させる。なお、第1のトレイデータ21bは、作業者が作成してもよい。
【0027】
図7は、トレイ9Aの上に等間隔で配置された複数の偶数番部品(第2の部品)の位置関係を示している。複数の偶数番部品は、複数の奇数番部品と同様にX方向にΔX、Y方向にΔYの間隔で碁盤の目状に配置されている。便宜上、
図7での格納部9aの記載は省略されている。
図8は、トレイデータ作成部22によって作成された複数の偶数番部品の位置を示す第2のトレイデータ21cを示している。第2のトレイデータ21cには、部品番号33毎に、部品保持位置座標34(X座標34x,Y座標34y)、部品方向35が記憶されている。偶数番部品の部品方向35は、全て180°である。
【0028】
図7において、部品D2の部品保持位置P2(X2,Y2)は、奇数番部品である部品D17の部品保持部位置(X17,Y17)をトレイ9Aの中心C(0,0)を回転中心として180°回転させた位置にある。すなわち、部品D2の保持位置座標は(-X17,-Y17)である。同様に、部品D4,D6,D8,D10,D12,D14,D16,D18の部品保持位置P4,P6,P8,P10,P12,P14,P16,P18は、奇数番部品の部品保持位置P15,P13,P11,P9,P7,P5,P3,P1をトレイ9Aの中心C(0,0)を回転中心としてそれぞれ180°回転させた位置にある。
【0029】
図8において、トレイデータ作成部22は、第1のトレイデータ21bに含まれる奇数番部品の部品保持位置PのXY座標を、トレイ9Aの中心C(0,0)を回転中心として180°回転させて偶数番部品の部品保持位置PのXY座標を決定する。すなわち、トレイデータ作成部22は、第1のトレイデータ21bを180度(180°)回転させて第2のトレイデータ21cを作成する。トレイデータ作成部22は、作成した第2のトレイデータ21cを実装データ記憶部21に記憶させる。
【0030】
図9は、トレイデータ作成部22によって作成されたトレイ9A上に配置された全ての部品D1~D18の位置を示す第3のトレイデータ21dを示している。第3のトレイデータ21dには、部品番号36毎に、部品保持位置座標37(X座標37x,Y座標37y)、部品方向38が記憶されている。トレイデータ作成部22は、
図6に示す第1のトレイデータ21bと
図8に示す第2のトレイデータ21cを一つのデータにまとめて、部品番号36順にソートしている。
図9では、第1のトレイデータ21bの部品保持位置座標は、単純に(X1,Y1)のように部品番号36を使って表示している。
【0031】
このように、トレイデータ作成部22は、第1のトレイデータ21bと第2のトレイデータ21cとを合成して、トレイ9Aの上に配置された複数の奇数番部品(第1の部品)と複数の偶数番部品(第2の部品)の位置を示す第3のトレイデータ21dを作成するトレイデータ作成手段である。トレイデータ作成部22は、作成した第3のトレイデータ21dを実装データ記憶部21に記憶させる。
【0032】
図3において、実装制御部23は、生産データ21aと第3のトレイデータ21dに基づいて部品実装機構14を制御して、吸着ノズルによってトレイ9Aの格納部9aに格納された部品D1~D18を順番に保持して取り出して、取り出した部品D1~D18を基板6の実装位置に実装させる部品実装作業を実行させる。より具体的には、実装制御部23は、第3のトレイデータ21dの部品保持位置座標37に基づいてトレイ9Aから部品D1~D18を取り出し、取り出した部品D1~D18の部品方向38に基づいて吸着ノズルを回転させて、所定の方向で基板6に実装させる。
【0033】
このように、実装制御部23と部品実装機構14は、トレイデータ作成部22(トレイデータ作成手段)によって作成された第3のトレイデータ21dが示す複数の奇数番部品(第1の部品)と複数の偶数番部品(第2の部品)の位置(部品保持位置座標37)に基づいて、トレイ9Aから複数の奇数番部品と複数の偶数番部品のうちの少なくとも1つの部品D1~D18を取り出して基板6に実装する実装手段である。そして、部品実装装置M1,M2は、第3のトレイデータ21dが示す複数の第1の部品と複数の第2の部品の位置に基づいて、トレイ9Aから複数の第1の部品と複数の第2の部品のうちの少なくとも1つの部品D1~D18を取り出して基板6に実装する。
【0034】
次に、
図10、
図11を参照しながら、トレイデータ作成部22による他のトレイ9B(以下、単に「トレイ9B」と称する。)のトレイデータの作成について説明する。便宜上、
図10での格納部9aの記載は省略されている。
図10において、トレイ9Bには、プラス(+)型をした異形部品である複数の部品D21~D32が規則的に配置されている。トレイ9Bにおいて、2行目の部品D24~D26は、1行目の部品D21~D23からX方向に部品の間隔(ΔX1)の半分のX方向シフト量(ΔX2)、Y方向に部品の間隔(ΔY1)の半分のY方向シフト量(ΔY2)だけシフトした位置となるように配置されている。
【0035】
すなわち、偶数行目の部品D24~D26と部品D30~D32(以下、単に「偶数行部品」と称する。)は、奇数行目の部品D21~D23と部品D27~D29(以下、単に「奇数行部品」と称する。)の間にそれぞれはめ込まれるように互い違いに配置されている。これにより、トレイ9Bに複数の部品D21~D32(奇数行部品、偶数行部品)を効率的に格納することができる。複数の部品D21~D32の部品方向は、全て同じ方向でトレイ9Bに格納されている。
【0036】
トレイデータ作成部22は、奇数行部品を複数の第1の部品として第1のトレイデータ21bを作成する(図示省略)。また、トレイデータ作成部22は、偶数行部品を複数の第2の部品として第2のトレイデータ21cを作成する(図示省略)。第2のトレイデータ21cにおいて、部品D24の部品保持位置P24は、第1のトレイデータ21bに記憶されている部品D21の部品保持位置P21(X21,Y21)からX方向にX方向シフト量(ΔX2)、Y方向にY方向シフト量(-ΔY2)だけシフトした位置にある。すなわち、部品保持位置P24は(X21+ΔX2,Y21-ΔY2)である。
【0037】
同様に、偶数行部品の部品保持位置P25~P26,P30~P32は、奇数行部品の部品保持位置P22~P23,P27~P29からそれぞれX方向にX方向シフト量(ΔX2)、Y方向にY方向シフト量(-ΔY2)だけシフトした位置にある。そこで、トレイデータ作成部22は、トレイ9Bでは第1のトレイデータ21bをシフト(X方向にΔX2、Y方向に-ΔY2)させて第2のトレイデータ21cを作成する。
【0038】
図11は、トレイデータ作成部22によって作成されたトレイ9B上に配置された全ての部品D21~D32(奇数行部品、偶数行部品)の位置を示す第3のトレイデータ21dを示している。トレイデータ作成部22は、第1のトレイデータ21bと第2のトレイデータ21cを合成して、第3のトレイデータ21dを作成する。第3のトレイデータ21dには、部品番号40毎に、部品保持位置座標41(X座標41x,Y座標41y)、部品方向42が記憶されている。部品D21~D32の部品方向42は、全て0°である。
【0039】
上記のように、本実施の形態では、トレイ9A,9B上に配置された部品D1~D18,D21~D32を、等間隔の関係にある複数の第1の部品(奇数番部品、奇数行部品)と等間隔の関係にある複数の第2の部品(偶数番部品、偶数行部品)にグループ分けしている。
【0040】
そして、トレイデータ作成部22(トレイデータ作成手段)は、それぞれのグループでの部品の位置を示す第1のトレイデータ21bと第2のトレイデータ21cを合成して、トレイ9A,9B上に配置された複数の部品D1~D18,D21~D32の位置を示す第3のトレイデータ21dを作成している。これによって、複雑な形状の部品D1~D18,D21~D32を実装した実装基板を効率良く生産することができる。
【0041】
なお上記では、部品実装装置M1,M2がトレイデータ作成手段(トレイデータ作成部22)は備える形態を説明したが、トレイデータ作成手段は管理コンピュータ3が備える形態であってもよい。その場合、管理コンピュータ3のトレイデータ作成手段が第3のトレイデータ21dを作成し、部品実装装置M1,M2の実装データ記憶部21には、管理コンピュータ3から送信された第3のトレイデータ21dが記憶される。
【0042】
次に
図12のフローに沿って、
図4~
図11を参照しながら、部品実装システム1による実装基板の製造方法について説明する。以下では、管理コンピュータ3がトレイデータ作成手段を備え、部品実装装置M1がトレイ9Aの上に配置された部品D1~D18を基板6に実装する形態で説明する。
【0043】
まず、トレイデータ作成手段は、トレイ9Aの上に等間隔で配置された複数の奇数番部品(第1の部品)の位置(部品保持位置座標31)を示す第1のトレイデータ21bを作成する(ST1:第1のトレイデータ作成工程)(
図5、
図6参照)。次いでトレイデータ作成手段は、トレイ9Aの上に等間隔で配置された複数の偶数番部品(第2の部品)の位置(部品保持位置座標34)を示す第2のトレイデータ21cを作成する(ST2:第2のトレイデータ作成工程)(
図7、
図8参照)。
【0044】
トレイデータ作成手段は、第2のトレイデータ作成工程(ST2)において、第1のトレイデータ21bを回転させて(
図7の矢印a)第2のトレイデータ21cを作成する。なお、トレイ9Bの場合、トレイデータ作成手段は、第2のトレイデータ作成工程(ST2)において、第1のトレイデータ21bをシフトさせて第2のトレイデータ21cを作成する(
図10参照)。
【0045】
図12において、次いでトレイデータ作成手段は、少なくとも第1のトレイデータ21bと第2のトレイデータ21cとを合成して、トレイ9Aの上に配置された複数の奇数番部品(第1の部品)と複数の偶数番部品(第2の部品)の位置(部品保持位置座標37)を示す第3のトレイデータ21dを作成する(ST3:第3のトレイデータ作成工程)(
図9参照)。次いで管理コンピュータ3は、部品実装装置M1に第3のトレイデータ21dを転送する(ST4:トレイデータ転送工程)。転送された第3のトレイデータ21dは、実装データ記憶部21に記憶される。
【0046】
次いで部品実装装置M1において実装手段(実装制御部23、部品実装機構14)は、第3のトレイデータ21dが示す複数の奇数番部品(第1の部品)と複数の偶数番部品(第2の部品)の位置(部品保持位置座標37)に基づいて、トレイ9Aから複数の奇数番部品(第1の部品)と複数の偶数番部品(第2の部品)のうちの少なくとも1つの部品D1~D18を取り出して基板6に実装する(ST5:実装工程)。実装手段は、予定された全ての部品の実装が終了するまで(ST6においてYes)、実装工程(ST5)を繰り返す(ST6においてNo)。これによって、複雑な形状の部品D1~D18を実装した実装基板を効率良く生産することができる。
【0047】
上記説明したように、本実施の形態の部品実装システム1は、少なくともトレイ9Aの上に配置された複数の第1の部品(奇数番部品)の位置を示す第1のトレイデータ21bと、トレイ9Aの上に配置された複数の第2の部品(偶数番部品)の位置を示す第2のトレイデータ21cと、を合成して、複数の第1の部品と複数の第2の部品の位置を示す第3のトレイデータ21dを作成するトレイデータ作成手段(トレイデータ作成部22)と、第3のトレイデータ21dが示す複数の第1の部品と複数の第2の部品の位置(部品保持位置座標37)に基づいて、トレイ9Aから複数の第1の部品と複数の第2の部品のうちの少なくとも1つの部品D1~D18を取り出して基板6に実装する実装手段(実装制御部23、部品実装機構14)と、を備えている。
【0048】
これによって、複雑な形状の部品D1~D18を実装した実装基板を効率良く生産することができる。なお上記では、2種類の第1の部品(奇数番部品、奇数行部品)と第2の部品(偶数番部品、偶数行部品)を等間隔で配置したトレイ9A、9Bを用いて説明したが、本発明は、3種類以上の部品Dを等間隔で配置したトレイ9上にも適応可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の部品実装システムおよび部品実装装置ならびに実装基板の製造方法は、複雑な形状の部品を実装した実装基板を効率良く生産することができるという効果を有し、部品を基板に実装する分野において有用である。
【符号の説明】
【0050】
1 部品実装システム
6 基板
9,9A,9B トレイ
14 部品実装機構(実装手段)
D1,D3,D5,D7,D9,D11,D13,D15,D17,D21~D23,D27~D29 第1の部品
D2,D4,D6,D8,D10,D12,D14,D16,D18,D24~D26,D30~D32 第2の部品
M1,M2 部品実装装置