(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】気液分離器および気液分離器を備えた冷媒循環システム
(51)【国際特許分類】
F25B 43/00 20060101AFI20230630BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20230630BHJP
F25B 13/00 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
F25B43/00 R
F25B1/00 311B
F25B13/00 Q
(21)【出願番号】P 2019136312
(22)【出願日】2019-07-24
【審査請求日】2022-02-18
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(72)【発明者】
【氏名】大西 優生
(72)【発明者】
【氏名】小林 秀行
(72)【発明者】
【氏名】野間 富之
(72)【発明者】
【氏名】青野 正弘
【審査官】五十嵐 公輔
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-084959(JP,A)
【文献】特開2001-263859(JP,A)
【文献】特開2016-114308(JP,A)
【文献】特開2012-241963(JP,A)
【文献】実開昭60-033180(JP,U)
【文献】実開昭62-127471(JP,U)
【文献】特開2003-227486(JP,A)
【文献】特開2017-172873(JP,A)
【文献】特開2019-060545(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 43/00
F25B 1/00
F25B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
気液二相冷媒が吐出されて液相冷媒と気相冷媒とに分離し、分離された液相冷媒と気相冷媒とを排出するための容器と、
前記容器の下側に導入された第1冷媒配管であって、気液二相冷媒を前記容器の内部に吐出する、又は前記容器の内部で分離された液相冷媒を排出するための第1冷媒配管と、
前記容器の下側に導入された第2冷媒配管であって、前記容器の内部で分離された液相冷媒を排出する、又は気液二相冷媒を前記容器の内部に吐出する第2冷媒配管と、
前記容器の上側に導入された第3冷媒配管であって、前記容器の内部で分離された気相冷媒を排出するための第3冷媒配管と、を備え
、
前記第1冷媒配管は、前記第1冷媒配管の側面に複数の第1開口を有しており、冷房運転と暖房運転との切替えにより、当該第1開口から気液二相冷媒を前記容器の内部に吐出する、又は当該第1開口から前記容器の内部で分離された液相冷媒を排出するよう構成されるとともに、前記第1冷媒配管の導入端部が閉塞されており、
前記第2冷媒配管は、前記第2冷媒配管の側面に複数の第2開口を有しており、冷房運転と暖房運転との切替えにより、当該第2開口から分離された液相冷媒を排出する、又は当該第2開口から気液二相冷媒を前記容器の内部に吐出するよう構成されるとともに、前記第2冷媒配管の導入端部が閉塞されており、
前記第1冷媒配管における前記複数の第1開口の開口面積の合計が前記第1冷媒配管の流路断面積より大きく形成され、および/または前記第2冷媒配管における前記複数の第2開口の開口面積の合計が前記第2冷媒配管の流路断面積より大きく形成された、気液分離器。
【請求項2】
前記第1開口および前記第2開口が前記容器の内面壁に対向するように配設され、
前記第1開口が前記第2開口と対向しないように構成された、請求項
1に記載の気液分離器。
【請求項3】
前記第1冷媒配管に形成された
前記複数の第1開口は、複数形成され気液二相冷媒を前記容器の内部に吐出するための上方開口部と、分離された液相冷媒を排出し前記容器における液相貯留レベルを規定するための下方開口部とを含み、
前記第2冷媒配管に形成された
前記複数の第2開口は、複数形成され気液二相冷媒を前記容器の内部に吐出するための上方開口部と、分離された液相冷媒を排出し前記容器における液相貯留レベルを規定するための下方開口部とを含む、請求項
1または2に記載の気液分離器。
【請求項4】
前記第1冷媒配管に形成された前記下方開口部の高さと前記第2冷媒配管に形成された前記下方開口部の高さが異なるよう構成された、請求項
3に記載の気液分離器。
【請求項5】
前記第1冷媒配管に形成された前記上方開口部の各開口は、当該第1冷媒配管の側面に縦一列に配置され、
前記第2冷媒配管に形成された前記上方開口部の各開口は、当該第2冷媒配管の側面に縦一列に配置された、請求項
3に記載の気液分離器。
【請求項6】
前記第1冷媒配管に形成された前記上方開口部の各開口は、当該第1冷媒配管の側面に螺旋状に配置され、
前記第2冷媒配管に形成された前記上方開口部の各開口は、当該第2冷媒配管の側面に螺旋状に配置された、請求項
3に記載の気液分離器。
【請求項7】
前記容器の内部における前記第1冷媒配管および前記第2冷媒配管のそれぞれの導入部分の中心軸の成す角度は、鉛直線を間にして5°から30°の範囲内に設定された、請求項1から
6のいずれか一項に記載の気液分離器。
【請求項8】
前記第1冷媒配管の前記第1開口の外側に向く方向と、前記第2冷媒配管の前記第2開口の外側に向く方向との成す角度が水平面において90°から270°の範囲内に設定された、請求項
1から5のいずれか一項に記載の気液分離器。
【請求項9】
前記容器の内部において、前記第1冷媒配管および前記第2冷媒配管のそれぞれの導入端部より上部に液相吸着部が設けられた、請求項1から
8のいずれか一項に記載の気液分離器。
【請求項10】
請求項1から
9のいずれか一項に記載の気液分離器を備え、
前記気液分離器の第1冷媒配管と第2冷媒配管は、冷媒が逆転可能に循環する冷凍サイクルに接続され、前記気液分離器の第3冷媒配管が圧縮機へのバイパス配管に接続された、冷媒循環システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、気液分離器および気液分離器を備えた冷媒循環システムに関する。
【背景技術】
【0002】
気液二相冷媒を気相と液相とに分離する気液分離器は、冷媒を循環させて冷暖房運転を行う、例えば空気調和機における冷媒循環システムに用いられている。気液分離器においては、旋回流による遠心力を利用した気液分離や、表面張力を利用した気液分離が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2012/108149号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
冷媒循環システムに用いられる気液分離器においては、気液二相の冷媒からできるだけ多くの気相冷媒を分離することが冷暖房能力を向上させる上では重要な要素である。また、気液分離器を備えた冷媒循環システムを用いる装置においては、小型化および低価格化が求められており、これらの点を考慮すると、気液分離器の構造のシンプル化および小型化は重要な課題である。
【0005】
本開示は、気液分離器の構造のシンプル化および小型化を達成すると共に、効率のよい気液分離を行うことができる気液分離器、およびその気液分離器を備えた冷媒循環システムの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係る一態様の気液分離器は、
気液二相冷媒が吐出されて液相冷媒と気相冷媒とに分離し、分離された液相冷媒と気相冷媒とを排出するための容器と、
前記容器の下側に導入された第1冷媒配管であって、気液二相冷媒を前記容器の内部に吐出する、又は前記容器の内部で分離された液相冷媒を排出するための第1冷媒配管と、
前記容器の下側に導入された第2冷媒配管であって、前記容器の内部で分離された液相冷媒を排出する、又は気液二相冷媒を前記容器の内部に吐出する第2冷媒配管と、
前記容器の上側に導入された第3冷媒配管であって、前記容器の内部で分離された気相冷媒を排出するための第3冷媒配管と、を備えている。
【0007】
本開示に係る一態様の冷媒循環システムにおいては、
少なくとも気液分離器が、
気液二相冷媒が吐出されて液相冷媒と気相冷媒とに分離し、分離された液相冷媒と気相冷媒とを排出するための容器と、
前記容器の下側に導入された第1冷媒配管であって、気液二相冷媒を前記容器の内部に吐出する、又は前記容器の内部で分離された液相冷媒を排出するための第1冷媒配管と、
前記容器の下側に導入された第2冷媒配管であって、前記容器の内部で分離された液相冷媒を排出する、又は気液二相冷媒を前記容器の内部に吐出する第2冷媒配管と、
前記容器の上側に導入された第3冷媒配管であって、前記容器の内部で分離された気相冷媒を排出するための第3冷媒配管と、を備えており、
前記第1冷媒配管と前記第2冷媒配管は、冷媒が逆転可能に循環する冷凍サイクルに接続され、前記第3冷媒配管が圧縮機へのバイパス配管に接続されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、気液分離器の構造のシンプル化および小型化を達成して、効率のよい気液分離を行うことができる気液分離器、およびその気液分離器を備えた冷媒循環システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示に係る実施の形態1の気液分離器の内部構成を示す縦断面図
【
図2】実施の形態1の気液分離器を用いた冷媒循環システムを示す冷媒回路図
【
図3】実施の形態1の気液分離器における第1冷媒配管の第1開口と第2冷媒配管の第2開口との位置関係を示す横断面図
【
図4】本開示に係る実施の形態1の気液分離器の変形例を示す縦断面図((a)冷房運転時、(b)暖房運転時)
【
図5】本開示に係る実施の形態2の気液分離器の内部構成を示す縦断面図
【
図6】実施の形態2の気液分離器において、第1冷媒配管(第2冷媒配管)を示す側面図
【
図7】実施の形態2の気液分離器の変形例を示す縦断面図
【
図8】本開示に係る実施の形態3の気液分離器の内部構成を示す縦断面図
【
図9】実施の形態3の気液分離器において、第1冷媒配管(第2冷媒配管)を示す側面図
【
図10】本開示に係る実施の形態4の気液分離器の内部構成を示す縦断面図
【
図11】
図10におけるXI-XI線により切断した気液分離器の断面図
【
図12】本開示に係る実施の形態5の気液分離器の内部構成を示す縦断面図
【
図13】本開示に係る実施の形態6の気液分離器の内部構成を示す縦断面図
【
図14】実施の形態6の気液分離器の変形例を示す縦断面図
【
図15】実施の形態6の気液分離器の更なる変形例を示す縦断面図
【
図16】実施の形態6の気液分離器の更なる変形例を示す縦断面図
【
図17】本開示に係る実施の形態7の気液分離器を示す図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の気液分離器の具体的な実施の形態として空気調和機に設けられた冷媒循環システムに用いられる気液分離器について添付の図面を参照しながら説明する。なお、本開示の気液分離器および冷媒循環システムは、以下の実施の形態に記載した気液分離器および冷媒循環システムの構成に限定されるものではなく、以下の実施の形態において説明する技術的特徴を有する技術的思想と同等の技術に基づく気液分離器の構成を含むものである。なお、本開示における冷媒循環システムには、冷媒の循環方向を逆転させて冷暖房を行うことができる空気調和機における冷凍サイクルの構成が含まれる。
【0011】
先ず始めに、本開示の気液分離器における各種態様を例示する。
本開示に係る第1の態様の気液分離器は、
気液二相冷媒が吐出されて液相冷媒と気相冷媒とに分離し、分離された液相冷媒と気相冷媒とを排出するための容器と、
前記容器の下側に導入された第1冷媒配管であって、気液二相冷媒を前記容器の内部に吐出する、又は前記容器の内部で分離された液相冷媒を排出するための第1冷媒配管と、
前記容器の下側に導入された第2冷媒配管であって、前記容器の内部で分離された液相冷媒を排出する、又は気液二相冷媒を前記容器の内部に吐出する第2冷媒配管と、
前記容器の上側に導入された第3冷媒配管であって、前記容器の内部で分離された気相冷媒を排出するための第3冷媒配管と、を備えている。
【0012】
本開示に係る第2の態様の気液分離器は、前記の第1の態様において、前記第1冷媒配管が、第1開口を有しており、冷房運転と暖房運転との切替えにより、当該第1開口から気液二相冷媒を前記容器の内部に吐出する、又は当該第1開口から前記容器の内部で分離された液相冷媒を排出するよう構成され、
前記第2冷媒配管が、第2開口を有しており、冷房運転と暖房運転との切替えにより、当該第2開口から分離された液相冷媒を排出する、又は当該第2開口から気液二相冷媒を前記容器の内部に吐出するよう構成されてもよい。
【0013】
本開示に係る第3の態様の気液分離器は、前記の第2の態様において、前記第1開口および前記第2開口が前記容器の内面壁に対向するように配設され、
前記第1開口が前記第2開口と対向しないように構成されてもよい。
【0014】
本開示に係る第4の態様の気液分離器は、前記の第2又は第3の態様における前記容器の内部において、前記第1冷媒配管が鉛直方向に導入され、当該第1冷媒配管の側面に前記第1開口が形成されて、前記第1冷媒配管の導入端部が閉塞されており、
前記容器の内部において、前記第2冷媒配管が鉛直方向に導入され、当該第2冷媒配管の側面に前記第2開口が形成されて、前記第2冷媒配管の導入端部が閉塞されてもよい。
【0015】
本開示に係る第5の態様の気液分離器は、前記の第4の態様において、前記第1冷媒配管に形成された複数の前記第1開口が、複数形成されて気液二相冷媒を前記容器の内部に吐出するための上方開口部と、分離された液相冷媒を排出し前記容器における液相貯留レベルを規定するための下方開口部とを含み、
前記第2冷媒配管に形成された複数の前記第2開口が、複数形成されて気液二相冷媒を前記容器の内部に吐出するための上方開口部と、分離された液相冷媒を排出し前記容器における液相貯留レベルを規定するための下方開口部とを含んでもよい。
【0016】
本開示に係る第6の態様の気液分離器は、前記の第5の態様において、前記第1冷媒配管に形成された前記下方開口部の高さと前記第2冷媒配管に形成された前記下方開口部の高さが異なるよう構成されてもよい。
【0017】
本開示に係る第7の態様の気液分離器は、前記の第5の態様において、前記第1冷媒配管に形成された前記上方開口部の各開口が、当該第1冷媒配管の側面に縦一列に配置され、
前記第2冷媒配管に形成された前記上方開口部の各開口が、当該第2冷媒配管の側面に縦一列に配置されてもよい。
【0018】
本開示に係る第8の態様の気液分離器は、前記の第5の態様において、前記第1冷媒配管に形成された前記上方開口部の各開口が、当該第1冷媒配管の側面に螺旋状に配置され、
前記第2冷媒配管に形成された前記上方開口部の各開口が、当該第2冷媒配管の側面に螺旋状に配置されてもよい。
【0019】
本開示に係る第9の態様の気液分離器は、前記の第1から第8の態様のいずれかの態様において、前記容器の内部における前記第1冷媒配管および前記第2冷媒配管のそれぞれの導入部分の中心軸の成す角度が、鉛直線を間にして5°から30°の範囲内に設定されてもよい。
【0020】
本開示に係る第10の態様の気液分離器は、前記の第2から第7の態様のいずれかの態様において、前記第1冷媒配管の前記第1開口の外側に向く方向と、前記第2冷媒配管の前記第2開口の外側に向く方向との成す角度が水平面において90°から270°の範囲内に設定されてもよい。
【0021】
本開示に係る第11の態様の気液分離器は、前記の第2から第7の態様のいずれかの態様において、前記第1冷媒配管に形成された前記第1開口の開口面積の合計が前記第1冷媒配管の流路断面積より大きく形成され、および/または前記第2冷媒配管に形成された前記第2開口の開口面積の合計が前記第2冷媒配管の流路断面積より大きく形成されてもよい。
【0022】
本開示に係る第12の態様の気液分離器は、前記の第1から第11の態様のいずれかの態様における前記容器の内部において、前記第1冷媒配管および前記第2冷媒配管のそれぞれの導入端部より上部に液相吸着部が設けられてもよい。
【0023】
本開示に係る第13の態様の気液分離器は、前記の第2の態様において、前記第1冷媒配管の前記第1開口が、前記容器の内部への導入端部において前記容器の上方を向くように配設され、
前記第2冷媒配管の前記第2開口が、前記容器の内部への導入端部において前記容器の上方を向くように配設されてもよい。
【0024】
本開示に係る第14の態様の気液分離器は、前記の第13の態様において、前記第1冷媒配管の前記第1開口の位置と、前記第2冷媒配管の前記第2開口の位置が異なるように構成されてもよい。
【0025】
本開示に係る第15の態様の気液分離器は、前記の第13の態様において、前記第1冷媒配管又は前記第2冷媒配管の少なくとも一方の側面に第3開口が形成されてもよい。
【0026】
本開示に係る第16の態様の冷媒循環システムは、前記の第1から第15の態様のいずれかの態様の気液分離器を備え、
前記気液分離器の第1冷媒配管と第2冷媒配管は、冷媒が逆転可能に循環する冷凍サイクルに接続され、前記気液分離器の第3冷媒配管が圧縮機へのバイパス配管に接続されている。
【0027】
以下、本開示に係る各実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、同じ要素には同じ符号を付しており、説明を省略する場合もある。また、図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示している。
【0028】
なお、以下で説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。以下の実施の形態において示される数値、形状、構成、ステップ、およびステップの順序などは、一例を示すものであり、本発明を限定するものではない。以下の実施の形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。一実施の形態における変形例の構成は、他の実施の形態においても同様に適用可能であると共に、それぞれの変形例において記載した構成はそれぞれ組み合わせて適用することも可能である。
【0029】
(実施の形態1)
以下、本開示に係る実施の形態1の気液分離器および気液分離器を用いた冷媒循環システムについて、図面を参照しながら説明する。
図1は、実施の形態1の気液分離器の内部構成を示す縦断面図である。
図2は、実施の形態1の気液分離器を用いた冷媒循環システムを示す冷媒回路図である。実施の形態1においては、冷媒循環システムを空気調和機における冷凍サイクルとして用いた例で示している。
【0030】
図2に示すように、冷凍サイクルには圧縮機1、四方弁2、第1熱交換器3、第1絞り装置4、気液分離器5、第2絞り装置6、および第2熱交換器7が配管により接続されている。また、気液分離器5と圧縮機1とがバイパス配管(10)により接続されている。実施の形態1の冷凍サイクルは空気調和機に用いられているため、例えば、第1熱交換器3が室内熱交換器に設けられ、第2熱交換器7が室外熱交換器に設けられる。
図2に示す冷媒回路図において、実線の矢印が冷房運転時の冷媒の流れ方向を示し、破線の矢印が暖房運転時の冷媒の流れ方向を示す。
【0031】
実施の形態1の冷凍サイクルの主回路においては、気液分離器5が第1絞り装置4と第2絞り装置6との間に設けられている。実施の形態1の説明において、気液分離器5から導出する第1冷媒配管8は第2絞り装置6に繋がる配管に接続されており、気液分離器5から導出する第2冷媒配管9は第1絞り装置4に繋がる配管にされている。また、気液分離器5から導出する第3冷媒配管10は、圧縮機1に繋がるバイパス配管に接続されている。なお、第3冷媒配管10が接続されるバイパス配管には冷媒の流量を制御する装置(例えば、開閉弁または流量調整弁など)(図示略)が設けられている。
【0032】
上記のように、実施の形態1における気液分離器5から導出する第1冷媒配管8と第2冷媒配管9が冷凍サイクルの主回路に接続されており、第3冷媒配管10が圧縮機1へのバイパス配管に接続されている。実施の形態1における気液分離器5は、縦長の略円筒形状の容器11と、容器11の下側に導入された第1冷媒配管8と、第1冷媒配管8と同様に容器11の下側に導入された第2冷媒配管9と、容器11の上側に導入された第3冷媒配管10と、を含んでいる。容器11は、長手方向が鉛直方向となるように配設されており、下方から導入された第1冷媒配管8および第2冷媒配管9と、上方から導入された第3冷媒配管10とが接合された密閉容器である。
【0033】
図1に示すように、容器11の内部における第1冷媒配管8および第2冷媒配管9のそれぞれの導入端部は、略半球面に形成されて閉塞されている。第1冷媒配管8および第2冷媒配管9の容器11の内部への導入部分の長さ(高さ)は実質的に同じであり、導入部分は鉛直方向に延設されて並設されている。第1冷媒配管8において、容器11の内面壁と対向する側面には開口(第1開口80)が形成されている。また、第2冷媒配管9において、容器11の内面と対向する側面には開口(第2開口90)が形成されている。
【0034】
図3は、容器11の内部に配設された第1冷媒配管8の第1開口80と第2冷媒配管9の第2開口90との水平面における位置関係を示す図であり、互いに対向しない位置に形成されていることを模式的に示す横断面図である。即ち、
図3に示すように、第1冷媒配管8の第1開口80が第2冷媒配管9に対向しない位置であり、第2冷媒配管9の第2開口90が第1冷媒配管8に対向しない位置である。また、第1冷媒配管8における中心軸P8に対する第1開口80の中心からの垂線と、第2冷媒配管9における中心軸P9に対する第2開口90の中心からの垂線との成す角度θが、水平面において90°から270°までの範囲内である。即ち、第1冷媒配管8の第1開口80の外側に向く方向と、第2冷媒配管9の第2開口90の外側に向く方向との成す角度θが水平面において90°から270°の範囲内に設定されている。上記の条件を満たすように、それぞれの開口(80、90)が配設されている。なお、第1冷媒配管8の第1開口80と第2冷媒配管9の第2開口90との上下方向(鉛直方向)の位置は、略同じ位置(高さ)に形成されている。
【0035】
実施の形態1における第1冷媒配管8および第2冷媒配管9のそれぞれの開口(80、90)は、上下に一つずつ形成されている。第1冷媒配管8および第2冷媒配管9においては、冷房運転および暖房運転で冷媒の流れが逆となるが、一方が気液二相冷媒を容器11の内部に吐出し、他方が分離された液相冷媒を排出する。第1冷媒配管8および第2冷媒配管9において、実質的には、上方の開口80、90が気液二相冷媒を吐出し、下方の開口80、90が分離された液相冷媒を排出して容器11の内部に溜まる液相冷媒の液面レベル(液相貯留レベル)の位置を規定する。
【0036】
一方、第3冷媒配管10の導入端部(下端)は開口しており、容器11の内部で分離された気相冷媒を第3冷媒配管10が吸入して、吸入された気相冷媒がバイパス配管を介して圧縮機1に供給される。即ち、第3冷媒配管10は容器11に対するガス抜き管である。なお、第3冷媒配管10の導入端部の開口は、容器11の上端部分に形成されていればよく、
図1に示した構成に限定されるものではない。例えば、第3冷媒配管10の導入端部の開口が容器11と一体的に形成されて、容器11の内部で分離された気相冷媒を効率高くスムーズに排出できる構成であればよい。
【0037】
なお、実施の形態1の気液分離器5において、容器11には3つの細管である第1冷媒配管8、第2冷媒配管9および第3冷媒配管10が予め接合されており、これらの細管が冷媒回路における対応する接続配管に接続される構成である。第1冷媒配管8および第2冷媒配管9の直径は、接続される接続配管の直径以上となっている。これは、第1冷媒配管8または第2冷媒配管9の配管内部において、気液二相冷媒が通過するときの流速を抑制し、上向きに働く液相冷媒の慣性力を小さくすることで、複数の開口(80、90)から流出する気液二相冷媒の流速を均等化し、効率の良い気液分離が可能な構成となるためである。
【0038】
[気液分離動作]
上記のように構成された実施の形態1における気液分離器5は、例えば、冷房運転時において、第1冷媒配管8における上方の第1開口80から気液二相冷媒が吐出される。第1開口80から吐出された気液二相冷媒は、第1開口80に対向する容器11の内面壁に衝突して液相冷媒と気相冷媒とに分離(衝突分離)される。分離された液相冷媒は内面壁を伝って重力により落下していき、気相冷媒は容器11の内部を上昇する。実施の形態1における気液分離器5は、第1冷媒配管8の第1開口80と第2冷媒配管9の第2開口90のそれぞれが、容器11の内面壁に対向するように配設されており、これらの開口(80/90)から吐出された気液二相冷媒が容器11の内面壁に確実に衝突するように構成されている。
【0039】
上記のように、実施の形態1における気液分離器5の構成は、気液分離器5の構造のシンプル化および小型化を達成しており、効率のよい気液分離を行うことができる。また、実施の形態1の気液分離器5を用いた冷凍サイクルの冷媒循環システムにおいても、効率の高い熱変換を小型でシンプルな構造で構築することができる。
【0040】
[実施の形態1の気液分離器の変形例]
図4は、実施の形態1の気液分離器5の変形例を模式的に示す縦断面図であり、
図4の(a)が冷房運転時の冷媒の流れを矢印で示しており、
図4の(b)が暖房運転時の冷媒の流れを矢印で示している。
【0041】
図4に示す気液分離器5の変形例は、容器11の内部における第1冷媒配管8の上方に2個の第1開口(上方開口部)80Aが形成されており、下方に1個の第1開口(下方開口部)80Bが形成された構成である。また、この変形例は、容器11の内部における第2冷媒配管9の上方に2個の第2開口(上方開口部)90Aが形成されており、下方に1個の第2開口(下方開口部)90Bが形成された構成である。この変形例においては、上方開口部が2個であり、下方開口部が1個の例で説明するが、本発明はこれらの個数に限定されるものではなく、当該気液分離器が用いられる空気調和機などの仕様に応じて適宜個数は変更される。
【0042】
図4に示すように、第1冷媒配管80と第2冷媒配管90とにおいて、それぞれの上方開口部(80A、90A)の容器11内部の位置は同じ高さに形成されている。一方、それぞれの下方開口部(80B、90B)の容器11内部の位置は高さが異なっている。
【0043】
図2に示した冷凍サイクルにおいて、冷媒は冷房運転時に室外熱交換器(凝縮器)側に溜まり、暖房運転時に室内熱交換器(凝縮器)側に溜まる。室外熱交換器(凝縮器)は室内熱交換器(凝縮器)より容量が大きいため、暖房運転時の最適冷媒量は冷房運転時の最適冷媒量より少なくなる。この冷媒の差分量を貯留するためのレシーバとしても、本開示の気液分離器が用いられる。
【0044】
図4の(a)に示すように、冷房運転時においては、容器11内部には第2冷媒配管90の下方開口部90Bから液相冷媒が排出される構成となり、下方開口部90Bの形成位置が容器11の内部に溜まる液相冷媒の液面レベル(液相貯留レベル)の位置を規定している。
【0045】
一方、
図4の(b)に示すように、暖房運転時においては、容器11内部には第1冷媒配管80の下方開口部80Bから液相冷媒が排出される構成となり、下方開口部80Bの形成位置が容器11の内部に溜まる液相冷媒の液面レベル(液相貯留レベル)の位置を規定している。下方開口部80Bの形成位置は、下方開口部90Bの形成位置に比べて上方に形成されているため、容器11の内部に溜まる液相冷媒の液面レベル(液相貯留レベル)の位置が高くなり、暖房運転時においては容器11内部に冷房運転時に比べて多くの冷媒が溜まる構成となる。上記のように、
図4に示した気液分離器5の変形例においては、気液分離機能と共に、冷媒のレシーバとしての機能を有するものであり、冷房運転時と暖房運転時において冷媒の貯留量が異なる構成を有している。
【0046】
(実施の形態2)
以下、本開示に係る実施の形態2の気液分離器および気液分離器を用いた冷媒循環システムについて、図面を参照しながら説明する。実施の形態2の気液分離器に関しては、実施の形態1の気液分離器との相違点を中心に説明する。なお、実施の形態2の説明において、実施の形態1における構成と同様の作用、構成、および機能を有する要素には同じ参照符号を付し、重複する記載を避けるため説明を省略する場合がある。
【0047】
図5は、実施の形態2の気液分離器5Aの内部構成を示す縦断面図である。
図5に示すように、容器11の内部における第1冷媒配管8Aおよび第2冷媒配管9Aのそれぞれの導入端部は、略半球面に形成されて閉塞されている。第1冷媒配管8Aおよび第2冷媒配管9Aの容器11の内部への導入部分の長さ(高さ)は実質的に同じであり、導入部分は鉛直方向に延設されて並設されている。第1冷媒配管8Aにおいては、容器11の内面壁と対向する側面に複数の第1開口80が形成されている。また、第2冷媒配管9Aにおいても、容器11の内面と対向する側面に複数の第2開口90が形成されている。
【0048】
図6は、実施の形態2の気液分離器5Aにおいて、容器11の内部に設けられた第1冷媒配管8A(第2冷媒配管9A)を示す側面図である。
図6においては、第1冷媒配管8Aおよび第2冷媒配管9Aが同じ構成を有しているため、両方の参照符号を併記している。
図6に示すように、第1冷媒配管8Aの側面に形成された第1開口80は、導入端部の近傍に複数(
図6においては4個)の開口で構成された上方開口部81と、容器11の底部近傍に複数(
図6においては2個)の開口で構成された下方開口部82と、により構成されている。同様に、第2冷媒配管9Aの側面に形成された第2開口90は、導入端部の近傍に複数(
図6においては4個)の開口で構成された上方開口部91と、容器11の底部近傍に複数(
図6においては2個)の開口で構成された下方開口部92と、により構成されている。
【0049】
図6に示すように、上方開口部81(91)および下方開口部82(92)は、それぞれの側面において縦一列に配置されており、それぞれの開口80(90)が容器11の内面壁に対向する位置である。なお、第1冷媒配管8Aにおける上方開口部81と下方開口部82の開口位置と、第2冷媒配管9Aにおける上方開口部91と下方開口部92の開口位置との関係は、前述の実施の形態1において
図3を用いた説明した関係を有する。即ち、第1冷媒配管8Aの各第1開口80が第2冷媒配管9Aに対向しない位置であり、第2冷媒配管9Aの各第2開口90が第1冷媒配管8Aに対向しない位置である。また、第1冷媒配管8Aにおける中心軸に対する各第1開口80の中心からの垂線と、第2冷媒配管9Aにおける中心軸に対する各第2開口90の中心からの垂線との成す角度θが、90°から270°までの範囲内である。上記の条件を満たすように、容器11の内部においてそれぞれの開口(80、90)の位置関係が規定されている。
【0050】
第1冷媒配管8Aおよび第2冷媒配管9Aにおいて、実質的には、上方開口部81、91の各開口(80、90)が気液二相冷媒を吐出し、下方開口部82、92の各開口(80、90)が分離された液相冷媒を排出して容器11の内部に溜まる液相冷媒の液面レベル(液相貯留レベル)の位置を規定している。
【0051】
なお、実施の形態2の気液分離器5Aの構成においても、前述の
図4に示したように、第1冷媒配管8Aおよび第2冷媒配管9Aにおける下方開口部82、92の各開口(80、90)の高さを異なるように構成してもよい。このように構成することにより、冷房運転時と暖房運転時とにおける冷媒の貯留量が異なる構成となり、暖房運転時のレシーバとしての機能が更に発揮された構成となる。
【0052】
[気液分離動作]
上記のように構成された実施の形態2における気液分離器5Aは、例えば、冷房運転時において、第1冷媒配管8Aの上方開口部81から気液二相冷媒が吐出される。上方開口部81から吐出された気液二相冷媒は、対向する容器11の内面壁に衝突して液相冷媒と気相冷媒とに分離される。分離された液相冷媒は内面壁を伝って重力により落下していき、分離された気相冷媒は容器11の内部を上昇する。実施の形態2における気液分離器5Aは、第1冷媒配管8Aの上方開口部81の各第1開口80と、第2冷媒配管9Aの上方開口部91の各第2開口90が、容器11の内面壁に対向するように配設されており、それぞれの上方開口部(81/91)の各開口(80/90)から吐出された気液二相冷媒が容器11の内面壁に確実に衝突する。
【0053】
図7は、実施の形態2の気液分離器5Aの変形例を示す縦断面図である。
図7に示す変形例の気液分離器5Aaにおいては、容器11の上部にエリミネータ(液相吸着部)12が設けられている。エリミネータ12は、容器11の内面壁との衝突分離において分離しきれなかった気液二相冷媒の液相部分を第3冷媒配管(ガス抜き管)10が吸入するのを抑制するものである。即ち、エリミネータ12は容器内部の液相部分を付着する機能を有する。エリミネータ12においては、分離しきれなかった気液二相冷媒の液相部分を吸着すると共に、容器内部に飛散した液相部分を付着するために、第1冷媒配管8Aおよび第2冷媒配管9Aの導入端部より上部空間に配設されている。エリミネータ12としては容器11の上部空間における液相を吸着する機能を有するものであればよく、例えば、液吸着機能を有する素材を網状に構成して、厚みを有する層形状に形成されていてもよい。なお、変形例としての気液分離器5Aaの構成において、エリミネータ(液相吸着部)12以外の構成は、前述の実施の形態1、実施の形態2および後述する実施の形態において説明するそれぞれの構成が適用されるものであり、
図7に示した気液分離器5Aaの構成に特定されるものではない。
【0054】
実施の形態2における気液分離器5Aは、構造のシンプル化および小型化を達成しつつ、効率のよい気液分離を行うことができる。また、実施の形態2の気液分離器5Aを用いた冷凍サイクルの冷媒循環システムにおいても、効率のよい熱変換を小型でシンプルな構造で構築することが可能となる。
【0055】
(実施の形態3)
以下、本開示に係る実施の形態3の気液分離器および気液分離器を用いた冷媒循環システムについて、図面を参照しながら説明する。実施の形態3の気液分離器に関しては、実施の形態1および実施の形態2の気液分離器との相違点を中心に説明する。なお、実施の形態3の説明において、前述の実施の形態1および実施の形態2における構成と同様の作用、構成、および機能を有する要素には同じ参照符号を付し、重複する記載を避けるため説明を省略する場合がある。
【0056】
図8は、実施の形態3の気液分離器5Bの内部構成を示す縦断面図である。
図8に示すように、容器11の内部における第1冷媒配管8Bおよび第2冷媒配管9Bのそれぞれの導入端部は、略半球面に形成されて閉塞されている。第1冷媒配管8Bおよび第2冷媒配管9Bの容器11の内部への導入部分の長さ(高さ)は実質的に同じであり、導入部分が鉛直方向に延設されて並設されている。また、第1冷媒配管8Bおよび第2冷媒配管9Bは、容器11の内面壁と対向する側面に複数の開口(80、90)が形成されている。
【0057】
図9は、実施の形態3の気液分離器5Bにおいて、容器11の内部に設けられた第1冷媒配管8B(第2冷媒配管9B)を示す側面図である。
図9においては、第1冷媒配管8Bおよび第2冷媒配管9Bが同じ構成を有しているため、両方の参照符号を併記している。
図9に示すように、第1冷媒配管8B(第2冷媒配管9B)の側面に形成された開口(80、90)は、導入端部の近傍で複数(
図9においては4個)の開口で構成された上方開口部81(91)と、容器11の底部近傍で複数(
図9においては2個)の開口で構成された下方開口部82(92)と、により構成されている。
【0058】
実施の形態3の気液分離器5Bにおいては、
図9に示すように、上方開口部81(91)の各開口が第1冷媒配管8B(第2冷媒配管9B)の側面を螺旋状(渦巻き状)に一定間隔を有して配設されている。また、下方開口部82(92)の各開口は、縦一列に配設されている。上方開口部81(91)および下方開口部82(92)の各開口は、容器11の内面壁に対向する位置である。
【0059】
また、第1冷媒配管8Bにおける上方開口部81および下方開口部82の各開口80の開口位置と、第2冷媒配管9Bにおける上方開口部91および下方開口部92の各開口90の開口位置との関係は、前述の実施の形態1において
図3または
図4を用いて説明した位置関係を有する。即ち、第1冷媒配管8Bの各開口部(81、82)のそれぞれの開口80が第2冷媒配管9Bに対向しない位置であり、第2冷媒配管9Bの各開口部(91、92)のそれぞれの開口90が第1冷媒配管8Bに対向しない位置である。また、同じ高さの開口に関して、第1冷媒配管8Bにおける中心軸に対する各開口部(81、82)のそれぞれの開口80の中心からの垂線と、第2冷媒配管9Bにおける中心軸に対する各開口部(91、92)のそれぞれの開口90の中心からの垂線との成す角度θが、90°から270°までの範囲内である。上記の条件を満たすように、それぞれの開口部(81、82、91、92)における各開口(80、90)が、第1冷媒配管8Bと第2冷媒配管9Bとの側面に形成されている。なお、気液分離器5Bにおいては、冷房運転時と暖房運転時とにおける冷媒の貯留量が異なるように、それぞれの下方開口部(82、92)の形成位置が異なる構成としてもよい。
【0060】
上記のように、第1冷媒配管8Bと第2冷媒配管9Bとにおける同じ高さの開口(80、90)に関しては、それぞれの角度θが90°から270°までの範囲内となるように形成されている。また、第1冷媒配管8Bの上方開口部81および第2冷媒配管9Bの上方開口部91における各開口(80、90)が、それぞれの側面を螺旋状(渦巻き状)に一定間隔を有して配設されているため、それぞれの上方開口部(81、91)における開口の上下方向の位置が捩れている。即ち、第1冷媒配管8Bと第2冷媒配管9Bの各上方開口部(81、91)において、上下に並んでいる各開口の外側に向く方向が異なっている。
【0061】
実施の形態3の構成においては、それぞれの上方開口部(81、91)における直上または直下の開口(80、90)に対する外側に向く方向の角度のずれが5°から180°の範囲内となるように、より好ましくは10°から90°の範囲内となるように複数個形成した。なお、直上または直下の開口に対する外側に向く角度とは、第1冷媒配管8Bまたは第2冷媒配管9Bの中心軸に対する各開口の中心からの垂線において、第1冷媒配管8Bまたは第2冷媒配管9Bの内面壁に向かう線を外側に向く線として、直上または直下のそれぞれの開口の外側に向く線の成す角度のことをいう。
【0062】
[気液分離動作]
上記のように構成された実施の形態3における気液分離器5Bは、例えば、冷房運転時において、第1冷媒配管8Bの上方開口部81の各開口80から気液二相冷媒が吐出される。上方開口部81の各開口80から吐出された気液二相冷媒は、対向する容器11の内面壁に衝突して液相冷媒と気相冷媒とに分離される。このとき容器11の内面壁において衝突する部分は、それぞれの開口位置が左右にずれているため、同様に左右にずれており、容器11の内面壁を伝って落ちていく液相冷媒が他の衝突により邪魔されることが抑制されている。このように、実施の形態3における気液分離器5Bの構成においては、気液二相冷媒が衝突する容器11の内面壁の位置が左右にずれているため、気液分離動作が速くなり、容器11の内面壁における液相部分の飛散が抑制されて、効率のよい気液分離を行うことができる。
【0063】
実施の形態3における気液分離器5Bの構成は、気液分離器5Bの構造のシンプル化および小型化を達成しており、効率のよい気液分離を行うことができる。また、実施の形態3の気液分離器5Bを用いた冷凍サイクルの冷媒循環システムにおいても、効率の高い熱変換を小型でシンプルな構造で構築することが可能となる。
【0064】
(実施の形態4)
以下、本開示に係る実施の形態4の気液分離器および気液分離器を用いた冷媒循環システムについて、図面を参照しながら説明する。実施の形態4の気液分離器に関しては、実施の形態1から実施の形態3の気液分離器との相違点を中心に説明する。なお、実施の形態4の説明において、前述の実施の形態1から実施の形態3における構成と同様の作用、構成、および機能を有する要素には同じ参照符号を付し、重複する記載を避けるため説明を省略する場合がある。
【0065】
図10は、実施の形態4の気液分離器5Cの内部構成を示す縦断面図である。
図11は、
図10におけるXI-XI線により切断した気液分離器5Cの断面図である。
図10および
図11に示すように、実施の形態4の気液分離器5Cは、容器11の内部の第1冷媒配管8Aと第2冷媒配管9Aとの間に仕切り板13を配設した構成である。実施の形態4の気液分離器5Cの構成において、仕切り板13以外の構成は、前述の実施の形態1から実施の形態3において説明した構成が適用されるものであり、
図10に示した気液分離器5Cの構成に特定されるものではない。
【0066】
実施の形態4の気液分離器5Cにおける仕切り板13は、第1冷媒配管8Aの下方開口部82および第2冷媒配管9Aの下方開口部92における一方の開口(80/90)から吐出した気液二相冷媒が他方の開口(90/80)に対して直接的に吸い込まれることを抑制するものである。
【0067】
気液分離器5Cにおいては、第1冷媒配管8Aまたは第2冷媒配管9Aの上方開口部81または91から気液二相冷媒の大部分が吐出されるが、一部の気液二相冷媒が下方開口部82または92から吐出される。下方開口部82または92から吐出された気液二相冷媒は、容器11の底部に吐出されるが、一部が貯留している液相冷媒内に混入され場合がある。しかしながら、第1冷媒配管8Aと第2冷媒配管9Aとの間の底部には仕切り板13が設けられているため、一方の下方開口部82または92から底部に吐出された気液二相冷媒が他方の下方開口部92または82に直接的に吸い込まれることがなく、仕切り板13を迂回する経路となる。この結果、この迂回経路において気相冷媒が分離されて、下方開口部92または82に吸い込まれる冷媒は気相冷媒が減少した冷媒となる。
【0068】
なお、気液分離器5Cの容器11の内部に設ける仕切り板13の高さとしては、第1冷媒配管8Aおよび第2冷媒配管9Aの下方開口部82、92における上端の開口の位置より高くすることが好ましい。また、仕切り板13の高さとしては、それぞれの上方開口部81、91における下端の開口の位置より低くてもよい。
【0069】
上記のように構成された実施の形態4の気液分離器5Cにおける気液分離動作は、前述の実施の形態1から実施の形態3において説明した気液分離動作と同じであるので、実施の形態4においては気液分離動作の説明を省略する。
【0070】
実施の形態4における気液分離器5Cは、構造のシンプル化および小型化を達成しており、効率のよい気液分離を行うことができる。また、実施の形態4の気液分離器5Cを用いた冷凍サイクルの冷媒循環システムにおいても、効率のよい熱変換を小型でシンプルな構造で構築することが可能となる。
【0071】
(実施の形態5)
以下、本開示に係る実施の形態5の気液分離器および気液分離器を用いた冷媒循環システムについて、図面を参照しながら説明する。実施の形態5の気液分離器に関しては、実施の形態2の気液分離器との相違点を中心に説明する。なお、実施の形態5の説明において、前述の実施の形態2における構成と同様の作用、構成、および機能を有する要素には同じ参照符号を付し、重複する記載を避けるため説明を省略する場合がある。
【0072】
図12は、実施の形態5の気液分離器5Eの内部構成を示す縦断面図である。
図12に示すように、容器11の内部における第1冷媒配管8Eおよび第2冷媒配管9Eのそれぞれの導入端部は、略半球面に形成されて閉塞されている。第1冷媒配管8Eおよび第2冷媒配管9Eの容器11の内部への導入部分の長さは実質的に同じである。
【0073】
図12に示すように、実施の形態5の気液分離器5Eの構成においては、第1冷媒配管8Eおよび第2冷媒配管9Eの容器11の内部への導入部分が斜行して配設されている。即ち、第1冷媒配管8Eおよび第2冷媒配管9Eが容器11の内部においてV字状に配設されている。V字状に配設された第1冷媒配管8Eおよび第2冷媒配管9Eの導入部分のそれぞれの側面においては、容器11の内面壁に対向する位置に複数の開口80、90が形成されている。
【0074】
なお、V字状に配設された第1冷媒配管8Eと第2冷媒配管9Eとの間の角度(導入角度)、即ちそれぞれの導入部分の中心軸が成す角度は、5°から30°の範囲内が好ましい。
【0075】
気液分離器5Eの第1冷媒配管8Eおよび第2冷媒配管9Eの側面に形成された複数の開口80、90は、前述の実施の形態2と同様の構成を有している。即ち、第1冷媒配管8Eの側面に形成された開口80は、導入端部の近傍で複数(例えば、4個)の開口で構成された上方開口部81と、容器11の底部近傍で複数(例えば、2個)の開口で構成された下方開口部82と、により構成されている。同様に、第2冷媒配管9Eの側面に形成された開口90は、導入端部の近傍で複数(例えば、4個)の開口で構成された上方開口部91と、容器11の底部近傍で複数(例えば、2個)の開口で構成された下方開口部92と、により構成されている。
【0076】
上方開口部81(91)および下方開口部82(92)は、第1冷媒配管8Eおよび第2冷媒配管9Eの中心軸に沿って側面において縦一列に配設されている。それぞれの開口80(90)は、容器11の内面壁に対して斜め下向きに配向するよう形成されている。なお、第1冷媒配管8Eの上方開口部81と下方開口部82の開口位置と、第2冷媒配管9Eの上方開口部91と下方開口部92の開口位置との関係は、前述の実施の形態1において
図3または
図4を用いて説明した位置関係を有する。即ち、第1冷媒配管8Eの各開口80が第2冷媒配管9Eに対向しない位置であり、第2冷媒配管9Eの各開口90が第1冷媒配管8Eに対向しない位置である。また、第1冷媒配管8Eにおける中心軸に対する各開口80の中心からの垂線と、第2冷媒配管9Aにおける中心軸に対する各開口90の中心からの垂線との成す角度θが、90°から270°までの範囲内である。上記のような条件を満たすように、容器11の内部において同じ高さ位置にあるそれぞれの開口80、90の位置関係が規定されている。
【0077】
第1冷媒配管8Eおよび第2冷媒配管9Eにおいて、実質的には、上方開口部81、91の各開口80、90が気液二相冷媒を吐出し、下方開口部82、92の各開口80、90が分離された液相冷媒を排出して容器11の内部に溜まる液相冷媒の液面レベル(液相貯留レベル)の位置を規定している。なお、気液分離器5Eにおいては、冷房運転時と暖房運転時とにおける冷媒の貯留量が異なるように、それぞれの下方開口部(82、92)の形成位置が異なる構成としてもよい。
【0078】
[気液分離動作]
上記のように構成された実施の形態5における気液分離器5Eは、例えば、冷房運転時において、第1冷媒配管8Eの上方開口部81から気液二相冷媒が斜め下向きに吐出される。上方開口部81の開口80から吐出された気液二相冷媒は、対向する容器11の内面壁に対して斜め上から衝突して液相冷媒と気相冷媒とに分離される。分離された液相冷媒は内面壁を伝って衝撃力と重力とにより落下していき、分離された気相冷媒は容器11の内部を上昇する。実施の形態5における気液分離器5Eにおいては、それぞれの上方開口部(81/91)の各開口(80/90)から吐出された気液二相冷媒が、容器11の内面壁に対して斜め上から衝突されて、衝突分離される構成である。この結果、容器11の内面壁において分離された液相冷媒は勢いよく下方に流れて容器11の底部に貯留される。
【0079】
上記のように、実施の形態5における気液分離器5Eは、シンプル化および小型化を達成すると共に、容器内部において効率のよい気液分離を行う構成となっている。また、実施の形態5の気液分離器5Eを用いた冷凍サイクルの冷媒循環システムにおいても、効率のよい熱変換を小型でシンプルな構造で構築することが可能となる。
【0080】
なお、実施の形態5における気液分離器5Eの構成において、第1冷媒配管8Eおよび第2冷媒配管9Eの容器11の内部の導入部分をV字状に構成した構成であり、それ以外の構成は、前述の実施の形態1から実施の形態4および後述する実施の形態において説明するそれぞれの構成が適用されるものであり、
図12に示した気液分離器5Eの構成に特定されるものではない。
【0081】
(実施の形態6)
以下、本開示に係る実施の形態6の気液分離器および気液分離器を用いた冷媒循環システムについて、図面を参照しながら説明する。実施の形態6の気液分離器に関しては、実施の形態1から実施の形態5の気液分離器との相違点を中心に説明する。なお、実施の形態6の説明において、前述の実施の形態1から実施の形態5における構成と同様の作用、構成、および機能を有する要素には同じ参照符号を付し、重複する記載を避けるため説明を省略する場合がある。
【0082】
図13は、実施の形態6の気液分離器5Dの内部構成を示す縦断面図である。
図13に示すように、容器11の内部における第1冷媒配管8Dおよび第2冷媒配管9Dのそれぞれの導入端部は、容器11の底部近傍に位置しており、上方に向かって開放された開口(第1開口83および第2開口93)が形成されている。即ち、第1冷媒配管8Dの第1開口83および第2冷媒配管9Dの第2開口93は、容器11の内部へのそれぞれの導入端部において容器11の上方を向くように配設されている。第1冷媒配管8Dおよび第2冷媒配管9Dの容器11の内部への導入部分の長さは実質的に同じであり、導入部分は鉛直方向に延設されて並設されている。なお、第1冷媒配管8Dおよび第2冷媒配管9Dのそれぞれの導入端部に形成された第1開口83、93の形状は、気液分離器5Dが用いられる冷媒循環システムの仕様に応じて設定される。
【0083】
[気液分離動作]
上記のように構成された実施の形態6の気液分離器5Dにおいては、例えば、冷房運転時において、第1冷媒配管8Dの導入端部の第1開口83から気液二相冷媒が吐出される。第1開口83から吐出された気液二相冷媒は、上方に吹き上げられて質量が重い液相冷媒と質量が軽い気相冷媒とに分離(重力分離)される。分離された液相冷媒は落下していき容器11の底部に貯留される。一方、分離された気相冷媒は容器11の内部を上昇して、第3冷媒配管10から排出される。
【0084】
上記のように、実施の形態6の気液分離器5Dは、効率のよい気液分離をシンプル化および小型化を達成した構成で達成することができる。従って、実施の形態6の気液分離器5Dを用いた冷凍サイクルの冷媒循環システムは、小型でシンプルな構造で効率のよいシステムを構築することができる。
【0085】
[実施の形態6の気液分離器の変形例]
図14は、実施の形態6の気液分離器5Dの変形例を示す縦断面図である。
図14に示す変形例の気液分離器5Daにおいては、第1冷媒配管8Daの導入端部の第1開口83の位置が、第2冷媒配管9Daの導入端部の第2開口93の位置より高い位置に設けられている。
【0086】
前述の
図2に示した冷凍サイクルにおいて、冷媒は冷房運転時に室外熱交換器(凝縮器)側に溜まり、暖房運転時に室内熱交換器(凝縮器)側に溜まる。室外熱交換器(凝縮器)は室内熱交換器(凝縮器)より容量が大きいため、暖房運転時の最適冷媒量は冷房運転時の最適冷媒量より少なくなる。この冷媒の差分量を貯留するためのレシーバとしても、
図14に示した気液分離器5Daが用いられる構成である。このように、
図14に示した気液分離器5Daは、気液分離機能と共に、冷媒のレシーバとしての機能を有するものであるため、冷房運転時と暖房運転時において冷媒の貯留量が異なる構成を有している。
【0087】
図14に示した気液分離器5Daは、冷房運転時において、第1冷媒配管8Daの導入端部の第1開口83が気液二相冷媒を容器11の内部に吐出し、第2冷媒配管9Daの導入端部の第2開口93が液相冷媒を吸い込んで排出するよう冷凍サイクルに組み込んだ構成の場合である。一方、暖房運転時においては、第2冷媒配管9Daの導入端部の第2開口93が気液二相冷媒を吐出し、第1冷媒配管8Daの導入端部の第1開口83が液相冷媒を吸い込んで排出する構成である。従って、暖房運転時においては、冷房運転時に比べて気液分離器5Daの容器11の内部に貯留する冷媒量が多くなる構成である。なお、容器11の内部において、冷房運転時に気液二相冷媒を吐出する第1冷媒配管8Daの導入部分の長さ(第1冷媒配管8Daの高さ)と、暖房運転時に気液二相冷媒を吐出する第2冷媒配管9Daの導入部分の長さ(第2冷媒配管9Daの高さ)との差は、冷房運転時と暖房運転時の最適冷媒量の差分量に応じて設定される。
【0088】
図14に示した気液分離器5Daにおいては、効率のよい気液分離をシンプルで小型化された装置で達成することができると共に、レシーバとしての機能を有するため、冷凍サイクルの冷媒循環システムが小型でシンプルな構造となり、冷凍サイクルにおいて冷媒の流れを逆転することが可能なリバーシブル形式で汎用性の高い冷凍サイクルとなる冷媒循環システムを構築することができる。
【0089】
図15は、実施の形態6の気液分離器5Dの更なる変形例を示す縦断面図である。
図15に示す変形例の気液分離器5Dbにおいては、第1冷媒配管8Dbの導入端部の第1開口83の位置と、第2冷媒配管9Dbの導入端部の第2開口93の位置が実質的に同じ高さである。気液分離器5Dbにおける特徴的な構成は、暖房運転時に容器内に気液二相冷媒を吐出する第2冷媒配管9Dbの導入部分の側面に第3開口94が形成されていることである。
【0090】
図15に示したように、気液分離器5Dbにおいては、暖房運転時に気液二相冷媒を容器内に吐出する冷媒配管(第2冷媒配管9Db)における容器内の導入部分の側面に開口94が形成されている。暖房運転時においては、第2冷媒配管9Dbの導入端部の第1開口93および側面の第3開口94から気液二相冷媒が容器内部に吐出され、第1冷媒配管8Dbの導入端部の第1開口83から液相冷媒が排出される。一方、冷房運転時においては、第1冷媒配管8Dbの導入端部の第1開口83から気液二相冷媒が容器内部に吐出され、第2冷媒配管9Dbの側面に形成された第3開口94から液相冷媒が排出される。
【0091】
図15に示した気液分離器5Dbにおいては、効率のよい気液分離をシンプルな構造で達成することができると共に、レシーバとしての機能を有するため、冷凍サイクルの冷媒循環システムが小型でシンプルな構造となり、冷暖房運転が可能なリバーシブル形式の汎用性の高い冷媒循環システムを構築することができる。
【0092】
図16は、実施の形態6の気液分離器5Dの更なる変形例を示す縦断面図である。
図16に示す変形例の気液分離器5Dcにおいては、第1冷媒配管8Dcの導入端部の第1開口83の位置と、第2冷媒配管9Dcの導入端部の第2開口93の位置が同じ高さである。気液分離器5Dcにおける特徴的な構成は、冷房運転時および暖房運転時において、容器11の内部に貯留している液相冷媒を排出するための第3開口84、94がそれぞれの冷媒配管(8Dc、9Dc)の導入部分の側面に形成されていることである。例えば、冷房運転時においては、第1冷媒配管8Dcの導入端部の第1開口83から容器内に気液二相冷媒が吐出され、第2冷媒配管9Dcの導入部分の側面に形成された第3開口94から液相冷媒が排出される。一方、暖房運転時においては、第2冷媒配管9Dcの導入端部の第2開口93から容器内に気液二相冷媒が吐出され、第1冷媒配管8Dcの導入部分の側面に形成された第3開口84から液相冷媒が排出される。
【0093】
上記のように、
図16に示した変形例の気液分離器5Dcの構成においては、気液二相冷媒を容器内に吐出する第1開口83の位置と、容器内に貯留された冷媒の液面レベル(液相貯留レベル)の位置(導入部分の側面に形成された開口の位置)との間に所定距離を有している。このため、気液分離器5Dcにおいては容器内部に気液二相冷媒が吐出されて効率のよい気液分離が可能となる。
【0094】
なお、第1冷媒配管8Dcおよび第2冷媒配管9Dcにおけるそれぞれの導入部分の側面に形成された第3開口84、94の位置関係は、前述の実施の形態1において
図3を用いて説明した位置を有する。即ち、第1冷媒配管8Dcの側面に形成された第3開口84が第2冷媒配管9Dcに対向しない位置であり、第2冷媒配管9Dcの側面に形成された第3開口94が第1冷媒配管8Dcに対向しない位置である。また、第1冷媒配管8Dcにおける中心軸に対する開口84の中心からの垂線と、第2冷媒配管9Dcにおける中心軸に対する開口94の中心からの垂線との成す角度θが、90°から270°までの範囲内である。上記の条件を満たすように、それぞれの開口(84、94)が、第1冷媒配管8Dcと第2冷媒配管9Dcとの側面に形成されている。なお、冷房運転時と暖房運転時とにおける冷媒の貯留量が異なるように、それぞれの開口(84、94)の形成位置が異なる構成としてもよい。
【0095】
図16に示した気液分離器5Dcにおいては、効率のよい気液分離をシンプルな構造で達成することができると共に、レシーバとしての機能を有するため、冷凍サイクルの冷媒循環システムが小型でシンプルな構造となり、冷暖房運転が可能なリバーシブル形式の汎用性の高い冷媒循環システムを構築することができる。
【0096】
(実施の形態7)
以下、本開示に係る実施の形態7の気液分離器および気液分離器を用いた冷媒循環システムについて、図面を参照しながら説明する。実施の形態7の気液分離器に関しては、実施の形態1から実施の形態6の気液分離器との相違点を中心に説明する。なお、実施の形態7の説明において、前述の実施の形態1から実施の形態6における構成と同様の作用、構成、および機能を有する要素には同じ参照符号を付し、重複する記載を避けるため説明を省略する場合がある。
【0097】
図17は、実施の形態7の気液分離器5Fを模式的に示す図である。
図17において、(a)は気液分離器5Fの斜視図であり、(b)は気液分離器5Fの正面図であり、(c)は気液分離器5Fの側面図であり、(d)は(b)に示した気液分離器5FをD-D線により切断した断面図である。
【0098】
図17に示すように、実施の形態7の気液分離器5Fの外観を構成する容器11の形状が円筒形ではなく、横断面が楕円形状を有している。即ち、容器11の横断面形状が楕円形状である(
図17の(d)参照)。このように容器11の横断面が楕円形状であるため、容器11の幅を狭くすることが可能となり、冷媒循環システムにおける気液分離器5Fの配設空間が幅の狭い空間の場合であっても対応することが可能となる。また、容器11の内部において気液二相冷媒を内面壁に衝突させて気液分離する構成においては、気液二相冷媒の吐出口(開口)から内壁面までの距離を短く設定することが可能となり、効率のよい気液分離が可能な構成となる。
【0099】
なお、実施の形態1から実施の形態7においては、第1冷媒配管に形成された第1開口の開口面積の合計が第1冷媒配管の流路断面積より大きくなるように構成されている。また、第2冷媒配管に形成された第2開口の開口面積の合計が第2冷媒配管の流路断面積より大きくなるように構成されている。このように構成することにより、第1開口または第2開口から流出する気液二相冷媒の流速を抑制し、容器11の内壁に気液二相冷媒が衝突するときの慣性力を小さくできるため、効率のよい気液分離が可能な構成となる。
【0100】
実施の形態1から実施の形態6においては、容器11の横断面形状が円形状の場合について説明したが、容器11の形状としては円形状に特定されるものではなく、気液分離のために衝突分離形式および重力分離形式が効率よく発揮され、気液分離器として優れた効果を有する形状であればよい。一例として説明した実施の形態7の気液分離器5Fにおける容器形状に関しては、前述の実施の形態1から6の気液分離器のいずれの構成においても適用可能な構成であり、同様の効果を奏するものである。
【0101】
以上のように、本開示における技術の例示として、実施の形態を説明した。そのために、詳細な説明および添付の図面を開示した。よって、詳細な説明および添付の図面に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須でない構成要素が含まれることがある。したがって、それらの必須でない構成要素が、詳細な説明および添付の図面に記載されているからといって、直ちに、それらの必須ではない構成要素に対して必須であると認定されるべきではない。
【0102】
上記の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置換、付加、省略などを行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本開示の気液分離器は、例えば空気調和機の冷凍サイクルに用いることにより、システムのシンプル化および小型化を達成して製造コストを低減することが可能であり、利用価値の高い汎用性の高い装置である。
【符号の説明】
【0104】
1 圧縮機
2 四方弁
3 第1熱交換器
4 第1絞り装置
5 気液分離器
6 第2絞り装置(室内熱交換器)
7 第2熱交換器(室外熱交換器)
8 第1冷媒配管
9 第2冷媒配管
10 第3冷媒配管
11 容器
12 エリミネータ(液相吸着部)
13 仕切り板
80、90 開口