(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】電力変換装置、及び電力変換装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20230630BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20230630BHJP
H01L 25/00 20060101ALI20230630BHJP
H01L 23/36 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L25/00 B
H01L23/36 Z
H01L23/36 D
(21)【出願番号】P 2019224459
(22)【出願日】2019-12-12
【審査請求日】2022-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山島 篤志
【審査官】正山 旭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/208250(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/080317(WO,A1)
【文献】特開2012-161177(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0252587(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
H01L 25/00
H01L 23/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放熱性を有し、所定空間を取り囲むように形成された収容部を有するケースと、
前記所定空間内に充填された熱伝導性を有する樹脂材と、
前記所定空間内に配設されたコイルと、
前記収容部と篏合する形状を呈し、前記コイルを収納するコイルケースと、
前記コイルケースの側壁に沿うように配設されたパワー半導体素子と、
を備え、
前記パワー半導体素子は、放熱面が前記収容部の側壁に当接した状態で、前記収容部の側壁と前記コイルケースの側壁との間に押圧固定されている、
電力変換装置。
【請求項2】
前記ケースは、ベースプレートと、前記ベースプレート上の所定空間を取り囲むように形成された前記収容部と、を有するヒートシンクである、
請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記収容部の上方に配設された回路基板をさらに備え、
前記コイルは前記回路基板の下面側に実装され、
前記パワー半導体素子は前記回路基板の下面側に実装される、
請求項1又は2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記収容部の側壁は、前記ベースプレートの上面の法線方向に対して傾斜する形状を呈し、
前記コイルケースの側壁は、前記収容部の側壁の傾斜方向と同一方向に傾斜する形状を呈する、
請求項
2に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記パワー半導体素子は、当該パワー半導体素子と嵌合する前記コイルケースの前記側壁に形成された凹部内に配設されている、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記パワー半導体素子は、前記所定空間内にて、自身の前記放熱面が前記収容部の側壁に当接した状態で、前記収容部の側壁と前記コイルケースの側壁との間に押圧固定されている、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記パワー半導体素子は、前記所定空間外にて、自身の前記放熱面が前記収容部の側壁に当接した状態で、前記収容部の側壁と前記コイルケースの側壁との間に押圧固定されて
いる、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記ケースは、前記収容部に隣接する位置に、前記所定空間と隣接する第2所定空間を取り囲むように形成された第2収容部を有し、
前記パワー半導体素子は、熱伝導性を有する樹脂材が充填された前記第2所定空間内に配設されている、
請求項7に記載の電力変換装置。
【請求項9】
前記ヒートシンクの前記ベースプレートは、当該電力変換装置の筐体の壁部を構成する、
請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項10】
請求項2に記載の電力変換装置の製造方法であって、
前記
収容部の上方に配設された回路基板に、前記コイルと前記パワー半導体素子とを実装する工程と、
前記回路基板を前記ヒートシンクの前記収容部に向かって相対的に移動させ、前記コイルを前記収容部内に収容すると共に、前記パワー半導体素子を前記収容部の側壁と前記コイルケースの側壁との間に押圧固定する工程と、
を備える製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力変換装置、及び電力変換装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、充電器やインバータ等の電力変換装置が知られている。
【0003】
一般に、この種の電力変換装置においては、回路基板に実装される電気部品(例えば、パワー半導体素子やコイル)の放熱対策が求められており、従来技術に係る電力変換装置においては、アルミ部材で形成された筐体内に、電気部品が実装された回路基板を収納し、電気部品から発生する熱を、筐体の壁部を介して放熱する構造が採用されている。かかる従来技術に係る電力変換装置においては、筐体の壁部が、ヒートシンクのベースプレートとして構成され、筐体の壁部に伝達された熱は、当該壁部の外側に設けられたヒートシンクのフィンを介して排出される構造となっている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願の発明者らは、特許文献1にて、この種の電力変換装置において、ヒートシンクのベースプレート(即ち、筐体の壁部)上に、アルミブロックを形成し、当該アルミブロックを介して、回路基板に実装された電気部品(例えば、パワー半導体素子やコイル)の放熱を行う放熱構造を提案した。かかる放熱構造によれば、当該電気部品から効果的に放熱し得るうえ、容易に、当該電気部品を、筐体内に装着することができる。
【0006】
但し、特許文献1の従来技術に係る電力変換装置においては、螺子を用いて、パワー半導体素子をアルミブロックに固定する構成を採用している。かかる構成によると、パワー半導体素子をアルミブロックに固定した後に、当該パワー半導体素子を回路基板にハンダ接続する等の工程が必要となり、製造プロセスの煩雑化の要因となっている。換言すると、特許文献1の従来技術に係る電力変換装置は、製造プロセスの観点で、改善の余地がある。
【0007】
本開示は、上記の問題点に鑑みてなされたもので、より簡易な製造プロセスで、回路基板に実装されたパワー半導体素子及びコイルの放熱を行うための放熱構造を構成可能な電力変換装置、及び電力変換装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した課題を解決する主たる本開示は、
放熱性を有し、所定空間を取り囲むように形成された収容部を有するケースと、
前記所定空間内に充填された熱伝導性を有する樹脂材と、
前記所定空間内に配設されたコイルと、
前記収容部と嵌合する形状を呈し、前記コイルを収納するコイルケースと、
前記コイルケースの側壁に沿うように配設されたパワー半導体素子と、
を備え、
前記パワー半導体素子は、放熱面が前記収容部の側壁に当接した状態で、前記収容部の側壁と前記コイルケースの側壁との間に押圧固定されている、
電力変換装置である。
【0009】
又、他の局面では、
上記の電力変換装置において、前記収容部の上方に配設された回路基板をさらに備える電力変換装置の製造方法であって、
前記回路基板に、前記コイルと前記パワー半導体素子とを実装する工程と、
前記回路基板を前記ヒートシンクの前記収容部に向かって相対的に移動させ、前記コイルを前記収容部内に収容すると共に、前記パワー半導体素子を前記収容部の側壁と前記コイルケースの側壁との間に押圧固定する工程と、
を備える製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る電力変換装置によれば、より簡易な製造プロセスで、回路基板に実装されたパワー半導体素子及びコイルの放熱を行うための放熱構造を構成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1の実施形態に係る電力変換装置の放熱構造を示す図
【
図2】第1の実施形態に係る電力変換装置の放熱構造の側面断面図
【
図3】第1の実施形態に係る電力変換装置の放熱構造の分解斜視図
【
図4A】第1の実施形態に係る電力変換装置の製造プロセスを示す図
【
図4B】第1の実施形態に係る電力変換装置の製造プロセスを示す図
【
図4C】第1の実施形態に係る電力変換装置の製造プロセスを示す図
【
図4D】第1の実施形態に係る電力変換装置の製造プロセスを示す図
【
図5】第2の実施形態に係る電力変換装置の放熱構造を示す側面断面図
【
図6】第3の実施形態に係る電力変換装置の放熱構造を示す側面断面図
【
図7】第3の実施形態に係る電力変換装置の放熱構造の収容部及び第2収容部の構成を示す平面図
【
図8】第4の実施形態に係る電力変換装置の放熱構造を示す側面断面図
【
図9】第5の実施形態に係る電力変換装置の放熱構造を示す側面断面図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。尚、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
尚、以下では、各構成の位置関係を明確にするため、図面の上方向を「上方向」と称し、図面の下方向を「下方向」と称して説明する。但し、これらの方向は、本発明の電力変換装置の使用時の姿勢を限定するものではない。
【0014】
(第1の実施形態)
[電力変換装置の放熱構造]
以下、本実施形態に係る電力変換装置の構成の一例について説明する。本実施形態に係る電力変換装置は、例えば、車両に搭載され、車載バッテリに充電を行うための充電器に適用されている。
【0015】
図1は、本実施形態に係る電力変換装置1の放熱構造を示す図である。
図2は、本実施形態に係る電力変換装置1の放熱構造の側面断面図である。
図3は、本実施形態に係る電力変換装置1の放熱構造の分解斜視図である。
【0016】
図1、
図2は、電力変換装置1のコイル40及びパワー半導体素子50が、ヒートシンク10の収容部11内に固定された状態を示している。尚、
図1、
図3では、電力変換装置1の筐体の描画を省略している。
【0017】
電力変換装置1は、ヒートシンク10、樹脂材20、回路基板30、コイル40、コイルケース41、及びパワー半導体素子50を備えている。
【0018】
ヒートシンク10は、コイル40やパワー半導体素子50が発生する熱を、電力変換装置1の外部に排出する。ヒートシンク10は、例えば、回路基板30を支持するためのベースプレート12と、ベースプレート12から下方に突出するフィン13と、ベースプレート12の上方に突出するように形成された収容部11と、を含む。尚、本実施の形態において、ヒートシンク10は本発明の「ケース」の一例である。
【0019】
尚、ヒートシンク10は、例えば、電力変換装置1の筐体と一体的に形成されており、ベースプレート12が当該筐体の壁部を構成している(
図2を参照)。そして、電力変換装置1は、ヒートシンク10のフィン13が冷媒(例えば、空気冷媒)の通路内に位置するように配設されている。尚、冷媒は空気冷媒に限られず不凍液などの液体冷媒を用いても良い。
【0020】
収容部11は、ベースプレート12上に、当該ベースプレート12上の所定空間(以下、「収容部11の収納空間」と称する)を取り囲むように配設されている。収容部11は、例えば、上側が開放された中空の略四角柱形状を呈している。収容部11は、例えば、ベースプレート12と同一の金属部材(例えば、アルミニウム材)で、ベースプレート12と一体的に形成されている。
【0021】
尚、収容部11は、ベースプレート12とは別部材により形成されたものであってもよい。例えば、収容部11は、ベースプレート12にハンダ接続されることにより、ベースプレート12に接合されたものであってもよい。
【0022】
収容部11の収納空間内には、樹脂材20、コイル40、コイルケース41、及びパワー半導体素子50が配設されている。ここで、コイルケース41は、収容部11内に嵌め込まれるように配設されている。そして、パワー半導体素子50は、収容部11の側壁11aとコイルケース41の側壁41aとの間に挟まれ、収容部11の側壁11aとコイルケース41の側壁41aとの間に押圧固定されるように配設されている。即ち、収容部11の側壁のうちの一部(
図2中の側壁11a)は、パワー半導体素子50(即ち、パワー半導体素子50の放熱面50a)と当接する。
【0023】
収容部11のパワー半導体素子50と当接する側壁11aは、ベースプレート12の上面の法線方向に対して傾斜する形状を呈している。より具体的には、側壁11aは、上方に向かうにつれて、収容部11の収納空間の断面サイズが大きくなるように、傾斜する形状を呈している。これにより、収容部11内に、コイルケース41を嵌め込む際の両者の位置合わせが容易となり、加えて、パワー半導体素子50の固定状態が安定化することになる。
【0024】
樹脂材20は、収容部11の収納空間内に充填された、熱伝導性を有する樹脂材である。樹脂材20としては、例えば、ポッティング材が用いられる。尚、樹脂材20としては、熱伝導性だけではなく、絶縁性を有する樹脂材が用いられるのが望ましい。
【0025】
樹脂材20は、コイル40と接触し、且つ、ヒートシンク10の収容部11及びベースプレート12と接触した状態で配設されている。これによって、樹脂材20は、コイル40からの放熱を行う。即ち、樹脂材20は、コイル40が通電され、発熱した際、当該コイル40の熱を、ヒートシンク10の収容部11及びベースプレート12に伝達し、これにより、コイル40からの放熱を行う。
【0026】
又、樹脂材20は、パワー半導体素子50とも接触しており、パワー半導体素子50からの放熱も補助する。但し、パワー半導体素子50からの放熱は、主に、パワー半導体素子50の放熱面50aが接触する収容部11を介して行われる。
【0027】
回路基板30は、例えば、PCB基板であり、電力変換装置1の回路部を構成する電気部品が実装される。回路基板30の下面側には、コイル40及びパワー半導体素子50が実装されている。より詳細には、回路基板30には、スルーホールが形成されており、コイル40及びパワー半導体素子50は、回路基板30にスルーホール実装されている。又、回路基板30には、自身に実装された電気部品同士を電気接続する配線パターン(図示せず)が形成されている。
【0028】
回路基板30は、収容部11の上方に、収容部11から離間して配設され、支持台(図示せず)によって、支持固定されている。尚、回路基板30は、自身の基板面が、ヒートシンク10のベースプレート12と略平行に延在するように配設されている。
【0029】
コイル40は、例えば、充電器の内部回路に用いられるインダクタンス素子である。コイル40は、回路基板30の下面側に実装され、回路基板30から下方に延在し、収容部11の収納空間内に配設されている。本実施形態では、コイル40の一例として、トロイダルコイルが用いられている。
【0030】
コイル40は、リード部品であり、コイル40の一端及び他端には、リード線40aが設けられている。コイル40のリード線40aは、コイル40の本体部から上方に向かって延在し、回路基板30にハンダ接続されている。
【0031】
コイルケース41は、コイル40を収納し、コイル40を整形する絶縁性のケースである。コイルケース41は、収容部11と嵌合する形状(より詳細には、凹部41aaにパワー半導体素子50を嵌め込んだ状態で、収容部11と嵌合する形状)を呈し、収容部11内に嵌め込まれている。尚、コイルケース41は、例えば、下側が開放された中空の略四角柱形状を呈している。
【0032】
コイルケース41の側壁41aは、パワー半導体素子50と嵌合する凹部41aaを有する(
図3を参照)。そして、パワー半導体素子50は、コイルケース41の凹部41aa内に嵌め込まれた状態で、収容部11の側壁11aとコイルケース41の側壁41aとの間に押圧固定されている。
【0033】
ここで、凹部41aaは、収容部11の側壁11aの傾斜方向と同一方向に傾斜する形状を呈している。尚、凹部41aaが回路基板30の基板面の法線方向に対して傾斜する角度θ2は、例えば、収容部11の側壁11aが回路基板30の基板面の法線方向に対して傾斜する角度θ1と略同一となっている(
図2を参照)。
【0034】
パワー半導体素子50は、電力変換装置1の回路部内にて、スイッチング素子として機能する電力変換用の半導体部品である。本実施形態では、パワー半導体素子50の一例として、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)又はダイオード等のディスクリートデバイスが用いられている。
【0035】
パワー半導体素子50は、回路基板30の下面側に実装され、当該回路基板30から下方に延在し、収容部11の収納空間内にて、コイルケース41の側壁41a(ここでは、凹部41aa)に沿うように配設されている。パワー半導体素子50は、例えば、リード線50bを有するDIP部品であり、平型の形状を呈している。パワー半導体素子50のリード線50bは、ハンダ付けにより、回路基板30に接続されている。尚、パワー半導体素子50は、少なくとも一方側の側面に、自身が発生した熱を放熱するための放熱面50aを有している。
【0036】
パワー半導体素子50は、放熱面50aが露出するようにコイルケース41の凹部41aaに嵌め込まれている。そして、パワー半導体素子50は、放熱面50a(
図2中の右側面)が収容部11の側壁11aに当接した状態となり、放熱面50aとは反対側の面(
図2中の左側面)がコイルケース41の側壁41aに当接した状態となっている。そして、パワー半導体素子50は、収容部11の収納空間内にて、収容部11の側壁11aとコイルケース41の側壁41a(凹部41aaが形成された側壁41a)との間に押圧固定されている。
【0037】
これにより、パワー半導体素子50の放熱面50aは、収容部11の側壁11aと密着した状態となり、パワー半導体素子50が発生した熱は、収容部11を介してヒートシンク10に排出されることになる。
【0038】
尚、パワー半導体素子50の押圧固定は、パワー半導体素子50をコイルケース41の凹部41aaに嵌め込んだ状態で、コイルケース41を収容部11内に嵌め込むことにより実現される(詳細は後述)。
【0039】
尚、本実施の形態においては、ヒートシンク10を、本発明の「ケース」の一例として説明したが本開示は、これに限定されない。ヒートシンク10を、ケースとは別体に設けるようにしても良い。すなわち、電力変換装置1がヒートシンク10とは別に放熱性のあるケースを有し、ケースの収納空間内に、樹脂材20を充填することで、ケースの収容部の側壁に当接され、かつ、コイルケース41の側壁に沿うように配置されたパワー半導体素子50を放熱する構成としてもよい。
【0040】
[電力変換装置の製造プロセス]
次に、
図4A、
図4B、
図4C及び
図4Dを参照して、電力変換装置1の製造プロセスについて、説明する。尚、ここでは、電力変換装置1の放熱構造を構成するための製造プロセスについてのみ、説明する。
【0041】
図4A、
図4B、
図4C及び
図4Dは、電力変換装置1の製造プロセスを示す図である。
図4A、
図4B、
図4C及び
図4Dは、回路基板30上に、コイル40及びパワー半導体素子50を実装し、当該コイル40及びパワー半導体素子50を収容部11の収納空間内に取り付ける際の各工程を時系列順に示している。尚、これらの一連の工程は、例えば、自動組立装置(図示せず)によって実行される。
【0042】
まず、コイルケース41に収納済みのコイル40を、回路基板30に取り付ける(
図4A)。
【0043】
次に、パワー半導体素子50を、回路基板30のコイル40が取り付けられた側と同一面側に取り付ける(
図4B)。このとき、放熱面50aを外側に向けた状態で、パワー半導体素子50がコイルケース41の凹部41aaに嵌め込まれるように、パワー半導体素子50を配設する。これにより、パワー半導体素子50は、コイルケース41の凹部41aaに、位置決めされ、且つ、係止された状態となる。
【0044】
そして、この状態で、コイル40のリード線40a及びパワー半導体素子50のリード線50bを、回路基板30にハンダ接続する。尚、このハンダ接続工程は、例えば、ディップ方式で行われる。
【0045】
次に、回路基板30を、コイル40及びパワー半導体素子50が収容部11の収納空間内に入るように移送する(
図4C)。尚、この工程は、例えば、収容部11の収納空間内に、樹脂材20(例えば、ポッティング材)を充填した後、当該樹脂材20が未硬化の状態で行われる。
【0046】
次に、回路基板30を、コイルケース41が収容部11と嵌合する位置まで押し込む(
図4D)。これにより、コイルケース41は、コイルケース41の側壁41aと収容部11の側壁11aとの間に、パワー半導体素子50を挟み込んだ状態で、嵌合固定されることになる。これによって、パワー半導体素子50は、コイルケース41の側壁41aと収容部11の側壁11aとの間に、押圧固定されることになる。そして、樹脂材20は、この工程の後、時間の経過と共に硬化することになる。
【0047】
尚、収容部11の側壁11aは、上方に向かうにつれて、収容部11の収納空間の断面サイズが大きくなるように、傾斜する形状を呈し、コイルケース41の側壁41a(ここでは、凹部41aa)は、収容部11の側壁11aの傾斜方向と同一方向に傾斜する形状を呈している。従って、
図4Dの工程で、コイルケース41を収容部11内に押し込んだ際、コイルケース41の側壁41aからパワー半導体素子50には、横方向の応力が作用し、パワー半導体素子50は、自身の放熱面50aを収容部11の側壁11aに押し付けた状態で固定されることになる。
【0048】
[効果]
以上のように、本実施形態に係る電力変換装置1によれば、簡易な構成で、コイル40及びパワー半導体素子50の固定状態の安定化と、コイル40及びパワー半導体素子50の高い放熱性能とを実現することが可能である。
【0049】
特に、本実施形態に係る電力変換装置1によれば、螺子を用いた固定プロセスを行うことなく、コイル40及びパワー半導体素子50の放熱を行うための放熱構造を構成することが可能であり、製造プロセスを簡易化できる点で、有用である。又、これによって、コイル40及びパワー半導体素子50を固定するための別体の固定部品を設ける必要がないため、部品点数を削減でき、且つ、当該固定部品を設けるためのスペースを省略できる点でも有用である。
【0050】
(第2の実施形態)
次に、
図5を参照して、第2の実施形態に係る電力変換装置1について説明する。本実施形態に係る電力変換装置1の放熱構造は、パワー半導体素子50が収容部11の収納空間の外側に固定されている点で、第1の実施形態に係る電力変換装置1の放熱構造と相違する。尚、第1の実施形態と共通する構成については、説明を省略する(以下、他の実施形態についても同様)。
【0051】
図5は、第2の実施形態に係る電力変換装置1の放熱構造を示す側面断面図である。
【0052】
本実施形態においては、パワー半導体素子50は、自身の放熱面50aが収容部11の収納空間の外側の側壁11bと当接するように、収容部11の収納空間の外側に配設されている。そして、パワー半導体素子50は、収納空間の外側において、収容部11の側壁11bと、コイルケース41の延在部41Rの側壁41Rbとの間に押圧固定される。
【0053】
ここで、本実施形態に係るコイルケース41は、コイル40を収納する本体部40Tに加えて、当該本体部40Tから、収容部11の収納空間外の側壁11bに対向する位置まで延在する延在部41Rを有している。即ち、延在部41Rは、本体部40Tから、収容部11を跨いで、収納空間外に延在するように形成されている。
【0054】
延在部41Rは、例えば、本体部41Tが収容部11の収納空間内に嵌め込まれる際に、収容部11の一部と嵌合する形状を呈する。換言すると、延在部41Rは、本体部41Tとの間に、収容部11の一部及びパワー半導体素子50を挟み込む形状を呈している。本体部41Tが収容部11の収納空間内に嵌め込まれた際に、収容部11の一部及びパワー半導体素子50を本体部41Tと延在部41Rとの間に挟み込むように、延在部41Rの側壁41Rbが、パワー半導体素子50を、収容部11の収納空間の外側の側壁11bに押圧固定する。
【0055】
尚、収容部11のパワー半導体素子50と当接する側壁11bは、ベースプレート12の上面の法線方向に対して傾斜する形状を呈している。より具体的には、側壁11bは、上方に向かうにつれて、側壁11bを形成する収容部11の壁部の幅が小さくなるように、傾斜する形状を呈している。これにより、コイルケース41を収容部11内に押し込んだ際、コイルケース41の延在部41Rの側壁41Rbからパワー半導体素子50には、横方向の応力が作用し、パワー半導体素子50は、自身の放熱面50aを収容部11の側壁11bに押し付けた状態で固定されることになる(
図5中の矢印を参照)。
【0056】
以上のように、本実施形態に係る電力変換装置1によれば、筐体内における収容部11の占有面積を縮小することができる。但し、本実施形態に係る電力変換装置1においては、パワー半導体素子50が、樹脂材20と接触しない構造となるため、パワー半導体素子50の放熱性能の点では、第1の実施形態に係る電力変換装置1の構成の方が望ましい。
【0057】
(第3の実施形態)
次に、
図6を参照して、第3の実施形態に係る電力変換装置1について説明する。本実施形態に係る電力変換装置1は、ヒートシンク10が、収容部11に隣接して第2収容部部11Rを有する点で、第2の実施形態に係る電力変換装置1と相違する。
【0058】
図6は、第3の実施形態に係る電力変換装置1の放熱構造を示す側面断面図である。
図7は、第3の実施形態に係る電力変換装置1の放熱構造の収容部11及び第2収容部11Rの構成を示す平面図である。尚、
図7では、ヒートシンク10の構成のみを図示している。
【0059】
追加収容部11Rは、例えば、収容部11と同様に、中空の略四角柱状を呈する金属部材である。第2収容部11Rは、ベースプレート12上に、収容部11が形成する収納空間(以下、「第1収納空間」と称する)と隣接して、コイル40とは別の電気部品(図示せず)を収納する収納空間(以下、「第2収納空間」と称する)を形成する。ここで、第2収容部11Rと収容部11とは、両者の間に存在する壁部を共有している。
【0060】
第2収容部11Rが形成する第2収納空間内には、樹脂材20が配設されている。又、典型的には、当該第2収納空間内には、回路基板30に実装されたコイル40とは別の電気部品(例えば、コンデンサ)が収納される。
【0061】
本実施形態においては、パワー半導体素子50は、第2収納空間内に配設され、第2収容部11Rと収納部11の間に存在する壁部の側壁11bに、自身の放熱面50aを当接した状態で、コイルケース41の延在部41Rの側壁41Rbと、収納部11の側壁11bとの間に押圧固定されている。
【0062】
以上のように、本実施形態に係る電力変換装置1によれば、パワー半導体素子50を、樹脂材20と接触させることができるため、第2の実施形態に係る電力変換装置1と比較して、パワー半導体素子50の放熱性能を向上することが可能である。
【0063】
(第4の実施形態)
次に、
図8を参照して、第4の実施形態に係る電力変換装置1について説明する。本実施形態に係る電力変換装置1は、コイルケース41の延在部41Rにて、パワー半導体素子50を押圧固定する際、付勢バネ41Rcの付勢力を利用する点で、第3の実施形態に係る電力変換装置1と相違する。
【0064】
図8は、第4の実施形態に係る電力変換装置1の放熱構造を示す側面断面図である。
【0065】
本実施形態に係るコイルケース41の延在部41Rは、パワー半導体素子50を押圧固定する側壁41Rbの第1面とは反対側の第2面に、付勢バネ41Rcを有している。付勢バネ41Rcは、コイルケース41の本体部41Tが収納部11の第1収納空間内に嵌め込まれた際に、第2収納部11Rの側壁11Rcと対向する位置に配設されている。そして、付勢バネ41Rcは、コイルケース41の本体部41Tが収納部11の収納空間内に嵌め込まれた際に、第2収納部11Rの側壁11Rcと接触し、自身の付勢力により、コイルケース41の延在部41Rを、収納部11の側壁11bが存在する方向、即ち、パワー半導体素子50を押圧固定する方向に付勢する。
【0066】
尚、本実施形態においては、コイルケース41の延在部41Rは、収納部11と嵌合しない形状であってもよい。かかる形状であっても、付勢バネ41Rcの付勢力によって、パワー半導体素子50を押圧固定することができるためである。
【0067】
以上のように、本実施形態に係る電力変換装置1によれば、パワー半導体素子50の固定状態を安定化することが可能である。
【0068】
(第5の実施形態)
次に、
図9を参照して、第5の実施形態に係る電力変換装置1について説明する。本実施形態に係る電力変換装置1は、コイルケース41の延在部41Rの反対側に、更なる延在部41Lが設けられている点で、第2の実施形態に係る電力変換装置1と相違する。
【0069】
更なる延在部41Lは、延在部41Rと同様に、収納部11の収納空間の外側の側壁まで延在する。本実施形態に係るコイルケース41は、延在部41Rと更なる延在部Lとによって、収納部11の外側の側壁を挟み込むように、収納部11と嵌め合う構造となっている。
【0070】
尚、本実施形態に係る電力変換装置1においては、延在部41Rと更なる延在部Lとによって、収納部11と嵌め合う構造となるため、コイルケース41の本体部41Tは、収容部11内で嵌め合う形状でなくともよい。
【0071】
(その他の実施形態)
本発明は、上記実施形態に限らず、種々に変形態様が考えられる。
【0072】
上記実施形態では、コイル40の一例として、トロイダルコイル40を示したが、本発明において、コイル40の種類は、任意である。例えば、コイル40は、トランスを構成するコイル40であってもよい。
【0073】
又、上記実施形態では、パワー半導体素子50の一例として、ディスクリートデバイスを示したが、パワー半導体素子50としては、複数個のIGBT等が一個のパッケージ内に収納されたモジュール部品が用いられてもよい。
【0074】
又、上記実施形態では、回路基板30の支持構造の一例として、回路基板30が電力変換装置1の筐体内に設けられた支持台に支持固定された態様を示した。しかしながら、回路基板30の支持構造は、任意であり、ヒートシンク10の収納部11に支持固定される構造とされてもよい。
【0075】
又、上記実施形態では、コイルケース41の一例として、凹部41aaを有する形状を示した。しかしながら、コイルケース41は、ヒートシンク10の収納部11と嵌合する形状であればよく、凹部41aaを有しない形状であってもよい。その場合、パワー半導体素子50は、コイルケース41の側壁41aに接着材等で仮止めされた状態とすればよい。
【0076】
又、上記実施形態では、電力変換装置1の適用例として、充電器を示した。しかしながら、本発明の電力変換装置1の適用対象は、任意であり、インバータやDCDCコンバータ等にも適用可能である。
【0077】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、請求の範囲を限定するものではない。請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明に係る電力変換装置によれば、より簡易な製造プロセスで、回路基板に実装されたパワー半導体素子及びコイルの放熱を行うための放熱構造を構成することが可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 電力変換装置
10 ヒートシンク
11 収容部
11a、11b 側壁
11R 第2収容部
11Rc 側壁
12 ベースプレート
13 フィン
20 樹脂材
30 回路基板
40 コイル
40a リード線
41 コイルケース
41a 側壁
41aa 凹部
41T 本体部
41R 延在部
41Rb 側壁
41Rc 付勢バネ
41L 更なる延在部
50 パワー半導体素子
50a 放熱面
50b リード線