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特許7304557プラズマエッチング方法および素子チップの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】プラズマエッチング方法および素子チップの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20230630BHJP
【FI】
H01L21/302 105A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019130892
(22)【出願日】2019-07-16
(65)【公開番号】P2021015924
(43)【公開日】2021-02-12
【審査請求日】2022-05-23
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002745
【氏名又は名称】弁理士法人河崎特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田村 好司
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-027941(JP,A)
【文献】国際公開第2018/173275(WO,A1)
【文献】特開平07-027911(JP,A)
【文献】特開昭55-021595(JP,A)
【文献】特開2017-162999(JP,A)
【文献】特開2006-216590(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を、プラズマ処理装置の処理室内に設けられたステージに載置する載置工程と、
前記ステージに載置された前記基板をプラズマに晒して、前記基板の一部をエッチングするプラズマエッチング工程と、を備え、
前記プラズマエッチング工程は、前記基板を第1のプラズマに晒すエッチングステップと、前記基板を冷却する冷却ステップとを備え、
前記エッチングステップと前記冷却ステップとは、交互に複数回繰り返され、
前記基板は、一般式:LiMO(式中、MはNbまたはTa)で表される複酸化物を含み、
前記第1のプラズマは、フッ素含有ガスおよび塩素含有ガスを含むエッチングガスにより発生される、プラズマエッチング方法。
【請求項2】
前記プラズマエッチング工程において、前記ステージに内蔵された電極に高周波電力が印加される、請求項1に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項3】
前記塩素含有ガスの前記エッチングガスに占める割合は、5体積%以上、30体積%以下である、請求項1または2に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項4】
前記フッ素含有ガスの前記エッチングガスに占める割合は、5体積%以上、30体積%以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項5】
前記塩素含有ガスは、塩素ガスである、請求項1~4のいずれか一項に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項6】
前記複酸化物は、タンタル酸リチウムである、請求項1~5のいずれか一項に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項7】
前記プラズマ処理装置は、上部に開口を備える前記処理室と、前記開口を閉鎖する誘電体部材と、前記誘電体部材の上方に配置され、高周波電力が印加されることによりプラズマを発生させる第1の電極と、を備え、
前記第1のプラズマは、前記エッチングガスを前記処理室に供給した後、前記第1の電極へ第1の高周波電力を印加することにより発生され、
前記冷却ステップは、前記第1の電極への前記第1の高周波電力の印加および前記エッチングガスの供給を停止して、前記処理室内にプラズマを発生させない条件で行われる、請求項1に記載のプラズマエッチング方法。
【請求項8】
前記プラズマ処理装置は、上部に開口を備える前記処理室と、前記開口を閉鎖する誘電体部材と、前記誘電体部材の上方に配置され、高周波電力が印加されることによりプラズマを発生させる第1の電極と、を備え、
前記ステージは静電吸着機構を備え、
前記プラズマエッチング工程は、前記基板を前記静電吸着機構により前記ステージに吸着させた状態で行われ、
前記第1のプラズマは、前記エッチングガスを前記処理室に供給した後、前記第1の電極へ第1の高周波電力を印加することにより発生され、
前記冷却ステップは、第2のプラズマを発生させながら行われ、
前記第2のプラズマは、不活性ガスが前記処理室内に供給され、前記エッチングステップで前記第1の電極に印加した前記第1の高周波電力よりも低い第2の高周波電力が、前記第1の電極に印加されることにより発生される、請求項1に記載のプラズマエッチング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプラズマエッチング方法および素子チップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タンタル酸リチウムおよびニオブ酸リチウムは強誘電体として知られており、優れた圧電特性、光学特性、電気光学特性および非線形特性等を有している。そのため、これらの材料は、表面弾性波(SAW)フィルター用の素子チップや光変調器に用いられている(特許文献1、特許文献2)。スマートフォン等の通信端末の多機能化および小型化により、上記のようなデバイスの重要性は年々高まっている。
【0003】
タンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウムを含む基板の加工は、プラズマエッチングにより行われる場合がある(特許文献2、3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-243463号公報
【文献】特開2006-165228号公報
【文献】特開2006-284964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のような複酸化物を含む基板をプラズマを用いてエッチングすると、歩留まりが低下する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面は、基板を、プラズマ処理装置の反応室内に設けられたステージに載置する載置工程と、前記ステージに載置された前記基板をプラズマに晒して、前記基板の一部をエッチングするプラズマエッチング工程と、を備え、前記基板は、一般式:LiMO(式中、MはNbまたはTa)で表される複酸化物を含み、前記プラズマは、フッ素含有ガスおよび塩素含有ガスを含むエッチングガスにより発生される、プラズマエッチング方法に関する。
【0007】
本発明の他の一局面は、複数の素子領域および前記素子領域を画定する分割領域を備えるとともに、第1の面および前記第1の面とは反対側の第2の面を有する基板を準備する準備工程と、前記第1の面を被覆する保護膜を形成する保護膜形成工程と、前記保護膜に開口を形成して、前記第1の面における前記分割領域を露出させる開口形成工程と、前記基板をプラズマに晒して、前記開口から露出する前記基板を前記第1の面から前記第2の面までエッチングする工程と、を含み、前記基板は、一般式:LiMO(式中、MはNbまたはTa)で表される複酸化物を含み、前記プラズマは、フッ素含有ガスおよび塩素含有ガスを含むエッチングガスにより発生される、素子チップの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高い生産性で素子チップを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態に係るプラズマエッチング方法を示すフローチャートである。
図2】本発明の一実施形態で使用されるプラズマ処理装置の構造を概略的に示す断面図である。
図3】本発明の一実施形態で使用されるプラズマ処理装置のブロック図である。
図4】本発明の一実施形態に係る素子チップの製造方法を示すフローチャートである。
図5】本発明の一実施形態に係る準備工程により準備された基板の一部を模式的に示す断面図である。
図6】本発明の実施形態に係る保護膜形成工程後の基板の一部を模式的に示す断面図である。
図7】本発明の一実施形態に係る開口形成工程後の基板の一部を模式的に示す断面図である。
図8】本発明の一実施形態に係るプラズマエッチング工程で得られた支持基板上で分断された圧電基板を模式的に示す断面図である。
図9】本発明の一実施形態に係る保護膜除去工程後の支持基板上で分断された圧電基板を模式的に示す断面図である。
図10】本発明の一実施形態に係る支持基板分断工程により得られた複数の素子チップを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
タンタル酸リチウムまたはニオブ酸リチウム等の複酸化物を含む基板(以下、圧電基板と称する。)をプラズマエッチングすると、プラズマ処理装置の内部、特に処理室の天板に多量の反応生成物が付着することが判明した。天板に付着した反応生成物(以下、堆積物と称す。)の厚みは、数μmになることもある。堆積物がプラズマエッチング処理中に落下すると、所望のエッチング処理を行うことが困難になって、歩留まりが低下する。堆積物を除去するためには、頻繁に処理室を大気開放する必要がある。そのため、生産性が低下し易い。一般的なシリコン基板のプラズマエッチング加工では、このような堆積物の付着はあまり生じない。
【0011】
圧電基板をプラズマエッチングした場合に堆積物が生じる理由については、以下のように考えられる。
金属酸化物は、一般的に化学的に安定である。そのため、金属酸化物のプラズマエッチング加工では、エッチングガスに含まれる元素との化学反応によるエッチングよりも、発生したイオンの衝突による物理的なエッチング(スパッタエッチング)が支配的である。プラズマエッチングには、エッチングガスとして通常、フッ化炭素が用いられる。フッ化炭素により圧電基板がスパッタエッチングされると、タンタル(Ta)またはニオブ(Nb)のフッ化物が生成する。これらフッ化物は結合エネルギーが大きく、分解あるいは気化され難い。そのため、生成したフッ化物は天板に向かって飛散し、堆積する。
【0012】
さらに、フッ化炭素が重合した重合膜も生成される。このような重合膜は分解あるいは気化され難いため、反応生成物は天板に堆積する。この重合膜には、スパッタされて飛散したタンタル(Ta)またはニオブ(Nb)が取り込まれ得る。
【0013】
本実施形態では、フッ素含有ガスとともに塩素含有ガスを含むエッチングガスにより発生されるプラズマを用いて、圧電基板をエッチングする。これにより、天板に付着する反応生成物が減少し、高い生産性で素子チップを得ることができる。
【0014】
天板に付着する反応生成物が減少するメカニズムの詳細は明らかではないが、TaまたはNbと塩素イオンとが反応して生成する塩化物は、そのフッ化物よりも結合エネルギーが若干小さいことが影響しているものと考えられる。つまり、塩化物はフッ化物に比べて処理室の内部で分解あるいは気化し易いため、残存するエッチングガスとともに外部に排気され易い。
【0015】
加えて、上記の結合エネルギーを考慮すると、TaまたはNbとフッ素イオンとの反応より、TaまたはNbと塩素イオンとの反応が優先的に起こっていることも考えられる。さらに、スパッタエッチングに加えて、TaまたはNbと塩素イオンあるいは塩素ラジカルとの化学反応も起こっていると考えられる。そのため、気化および分解し難い重合膜の生成自体が抑制される。さらに、TaまたはNbと塩素イオンあるいは塩素ラジカルとの反応生成物の分子量は小さく、分解され易い。
【0016】
上記の理由により、反応生成物の天板への付着が抑制されるものと考えらえる。その結果、メンテナンスの頻度(周期)を下げることができる。さらに、反応生成物の基板上への付着も抑制されるため、エッチング加工の精度も向上する。なお、フッ素イオンによるスパッタエッチングが抑制される一方で、塩素イオンあるいは塩素ラジカルとの化学反応によるエッチングが行われるため、エッチング特性は低下しない。
【0017】
なお、一般的なシリコン酸化物基板のプラズマエッチング加工においても、エッチングガスとしてフッ化炭素等のフッ素含有ガスが使用される。シリコン酸化物のエッチングにおいて、フッ素とシリコンとの反応性は非常に高く、シリコン酸化物は、化学反応およびイオンアシスト反応によりエッチングされていると考えられている。そして、生成するシリコンフッ化物は気化し易く、処理室の内部に反応生成物が付着するという課題は生じ難い。一方、塩素ガスまたは臭素ガスとシリコン酸化物との反応性は低い。
【0018】
本実施形態に係るプラズマエッチング方法は、圧電基板をエッチングして、SAWフィルター用の素子チップを製造する方法として特に適している。本実施形態は、プラズマエッチングを利用した素子チップの製造方法を包含する。
【0019】
A.プラズマエッチング方法
本実施形態に係るプラズマエッチング方法は、プラズマ処理装置の反応室内に設けられたステージに載置する載置工程と、ステージに載置された基板をプラズマに晒して、基板の一部をエッチングするプラズマエッチング工程と、を備える。基板は、一般式:LiMO(式中、MはNbまたはTa)で表される複酸化物を含む。プラズマは、フッ素含有ガスおよび塩素含有ガスを含むエッチングガスにより発生される。
図1は、本実施形態に係るプラズマエッチング方法を示すフローチャートである。
【0020】
(i)載置工程(S1)
圧電基板を、プラズマ処理装置の反応室内に設けられたステージに載置する。
圧電基板は、一般式:LiMO(式中、MはNbまたはTa)で表される複酸化物を含む。具体的な複酸化物としては、ニオブ酸リチウム(LiNbO)、タンタル酸リチウム(LiTaO)が挙げられる。
【0021】
ニオブ酸リチウムを含む基板(LN基板)は、例えばニオブ酸リチウムの単結晶により形成されている。タンタル酸リチウムを含む基板(LT基板)は、例えばタンタル酸リチウムの単結晶により形成されている。各単結晶には、鉄、モリブデン、コバルト、ニッケル、亜鉛、マグネシウム、チタン、タングステン等の遷移元素がドープされていてもよい。
【0022】
圧電基板の厚みは特に限定されず、用途等に応じて適宜設定される。圧電基板の厚みは、例えば、0.1μm以上200μm以下である。
【0023】
圧電基板の大きさは特に限定されず、例えば、直径3インチ以上10インチ以下程度である。圧電基板の形状も特に限定されず、例えば、円形、角型である。また、圧電基板には、オリエンテーションフラット(オリフラ)、ノッチ等の切欠きが設けられていてもよい。
【0024】
圧電基板は、他の支持基板に積層されていてもよい。支持基板は、圧電基板と同等の熱膨張率を有することが好ましく、例えば、シリコン基板、サファイア基板、セラミックス基板、ガラス基板等が挙げられる。支持基板の厚みは、例えば、10μm以上500μm以下である。圧電基板と支持基板との積層基板は、圧電基板が上方に向くように、支持基板をステージに対向させた状態で載置される。
【0025】
ハンドリング性の観点から、圧電基板あるいは積層基板(以下、対象基板と称する場合がある。)はトレイに固定された状態でステージに載置されてもよい。トレイには、2以上の対象基板が固定されてもよい。トレイの材料は、耐プラズマ性を有していることが望ましく、例えば、炭化ケイ素(SiC)、石英、アルミナ、窒化アルミニウム、表面をアルマイト加工したアルミニウム等が挙げられる。トレイの外形は、例えば、円形、矩形等である。積層基板は、圧電基板が上方に向くように、支持基板をトレイに対向させた状態で固定される。
【0026】
(ii)プラズマエッチング工程(S2)
ステージに載置された対象基板をプラズマに晒して、基板の一部をエッチングする。
【0027】
以下、図面を参照しながら、プラズマ処理装置の一例を具体的に説明する。ただし、プラズマ処理装置は、これに限定されるものではない。図2は、プラズマ処理装置100の構造を概略的に示す断面図である。図2において、対象基板はトレイに保持されている。
【0028】
(プラズマ処理装置)
プラズマ処理装置100は、ステージ111を備えている。ステージ111には、対象基板10を保持したトレイ20が載置されている。ステージ111は処理室(真空チャンバ103)内に配置されている。真空チャンバ103は、上部が開口した概ね円筒状であり、上部開口は天板である誘電体部材108により閉鎖されている。真空チャンバ103を構成する材料としては、アルミニウム、ステンレス鋼(SUS)、表面をアルマイト加工したアルミニウム等が例示できる。誘電体部材108を構成する材料としては、酸化イットリウム(Y23)、窒化アルミニウム(AlN)、アルミナ(Al23)、石英(SiO2)等の誘電体材料が例示できる。誘電体部材108の上方には、上部電極としての第1の電極109が配置されている。第1の電極109は、第1の高周波電源110Aと電気的に接続されている。ステージ111は、真空チャンバ103内の底部側に配置される。
【0029】
真空チャンバ103には、ガス導入口103aが接続されている。ガス導入口103aには、プラズマ発生用ガス(エッチングガス)の供給源であるエッチングガス源112およびアッシングガス源113が、それぞれ配管によって接続されている。また、真空チャンバ103には、排気口103bが設けられており、排気口103bには、真空チャンバ103内のガスを排気して減圧するための真空ポンプを含む減圧機構114が接続されている。真空チャンバ103内にエッチングガスが供給された状態で、第1の電極109に第1の高周波電源110Aから高周波電力が供給されることにより、真空チャンバ103内にプラズマが発生する。
【0030】
ステージ111は、それぞれ略円形の電極層115と、金属層116と、電極層115および金属層116を支持する基台117と、電極層115、金属層116および基台117を取り囲む外周部118とを備える。外周部118は導電性および耐エッチング性を有する金属により構成されており、電極層115、金属層116および基台117をプラズマから保護する。外周部118の上面には、円環状の外周リング129が配置されている。外周リング129は、外周部118の上面をプラズマから保護する役割をもつ。電極層115および外周リング129は、例えば、上記の誘電体材料により構成される。
【0031】
電極層115の内部には、静電吸着(Electrostatic Chuck)用電極(以下、ESC電極119と称す。)と、第2の高周波電源110Bに電気的に接続された第2の電極120とが配置されている。ESC電極119には、直流電源126が電気的に接続されている。静電吸着機構は、ESC電極119および直流電源126により構成されている。静電吸着機構によって、トレイ20はステージ111に押し付けられて固定される。以下、トレイ20をステージ111に固定する固定機構として、静電吸着機構を備える場合を例に挙げて説明するが、これに限定されない。トレイ20のステージ111への固定は、図示しないクランプによって行われてもよい。
【0032】
金属層116は、例えば、表面にアルマイト被覆を形成したアルミニウム等により構成される。金属層116内には、冷媒流路127が形成されている。冷媒流路127は、ステージ111を冷却する。ステージ111が冷却されることにより、ステージ111に搭載されたトレイ20が冷却される。これにより、対象基板10やトレイ20が、プラズマ処理中に加熱されることによって損傷されることが抑制される。冷媒流路127内の冷媒は、冷媒循環装置125により循環される。
【0033】
ステージ111の外周付近には、ステージ111を貫通する複数の支持部122が配置されている。支持部122は、トレイ20を支持する。支持部122は、昇降機構123により昇降駆動される。トレイ20が真空チャンバ103内に搬送されると、所定の位置まで上昇した支持部122に受け渡される。支持部122の上端面がステージ111と同じレベル以下にまで降下することにより、トレイ20は、ステージ111の所定の位置に載置される。
【0034】
制御装置128は、第1の高周波電源110A、第2の高周波電源110B、エッチングガス源112、アッシングガス源113、減圧機構114、冷媒循環装置125、昇降機構123、および静電吸着機構を含むプラズマ処理装置100を構成する要素の動作を制御する。図3は、本実施形態で使用されるプラズマ処理装置のブロック図である。
【0035】
対象基板10へのプラズマ処理は、対象基板10が保持されたトレイ20を真空チャンバ内に搬入し、対象基板10がステージ111に載置された状態で行われる。
【0036】
トレイ20は、図示しないゲートバルブから搬入される。複数の支持部122は、上昇した状態で待機している。トレイ20がステージ111上方の所定の位置に到達すると、支持部122にトレイ20が受け渡される。トレイ20が支持部122に受け渡されると、真空チャンバ103は密閉状態に置かれる。次に、支持部122が降下を開始する。支持部122の上端面が、ステージ111と同じレベル以下にまで降下することにより、トレイ20は、ステージ111に載置される。
【0037】
トレイ20が支持部122に受け渡された後、直流電源126からESC電極119に電圧を印加する。これにより、トレイ20がステージ111に接触すると同時にステージ111に静電吸着される。なお、ESC電極119への電圧の印加は、トレイ20がステージ111に載置された後(接触した後)に、開始されてもよい。
【0038】
プラズマ処理が終了すると、真空チャンバ103内のガスが排出され、ゲートバルブが開く。複数の素子チップ200を保持するトレイ20は、ゲートバルブから進入した搬送機構によって、プラズマ処理装置100から搬出される。トレイ20が搬出されると、ゲートバルブは速やかに閉じられる。トレイ20の搬出プロセスは、上記のようなトレイ20をステージ111に搭載する手順とは逆の手順で行われてもよい。すなわち、ESC電極119への印加電圧をゼロにして、トレイ20のステージ111への吸着を解除し、支持部122を上昇させる。支持部122が所定の位置まで上昇した後、トレイ20は搬出される。
【0039】
圧電基板のエッチングに用いられるプラズマ(以下、第1のプラズマと称す。)は、フッ素含有ガスおよび塩素含有ガスを含むエッチングガスにより発生される。塩素含有ガスを併用することにより、天板に付着しやすい反応生成物の発生が抑制される。天板に付着する反応生成物(堆積物)には、圧電基板を構成するNbまたはTa、酸素原子(O)、トレイを構成する成分(例えば、Si)、エッチングガスの成分(例えば、C)等が含まれ得る。
【0040】
塩素含有ガスとしては、例えば、塩素ガス(Cl)、BCl、HCl等が挙げられる。なかでも、エッチングレートが高くなり易い点で、塩素ガスが好ましい。
【0041】
塩素含有ガスのエッチングガスに占める割合は特に限定されない。堆積物の低減効果を考慮すると、塩素含有ガスのエッチングガスに占める割合は、5体積%以上、30体積%以下であってよく、10体積%以上、20体積%以下であってよい。
【0042】
フッ素含有ガスとしては、例えば、CF、C等のフッ化炭素ガスおよびCHF等のフッ化炭化水素、SF等が挙げられる。なかでも、エッチングレートが高くなり易い点で、フッ化炭化水素が好ましい。
【0043】
フッ素含有ガスのエッチングガスに占める割合は特に限定されない。エッチングレートを考慮すると、フッ素含有ガスのエッチングガスに占める割合は、5体積%以上、30体積%以下であってよく、10体積%以上、20体積%以下であってよい。
【0044】
塩素含有ガスとフッ素含有ガスとの割合は特に限定されない。エッチングレートと堆積物の低減効果とを考慮すると、塩素含有ガスのフッ素含有ガスに対する体積割合(塩素含有ガス/フッ素含有ガス)は、30%以上、300%以下であってよく、50%以上、150%以下であってよい。
【0045】
エッチングガスは、さらに、ArやHe等の希ガスや、その他のガスを含んでよい。ただし、酸素の割合はできる限り少ないことが望ましい。塩素含有ガス、フッ素含有ガスおよび酸素を含む系では、堆積物の量は低減するものの、堆積物が脆くなり易く、量が少なくても落下する場合があるためである。酸素のエッチングガスに占める割合は、10体積%以下であってよく、3体積%以下であってよい。
【0046】
エッチングガス全体の流量は特に限定されず、対象基板の厚み等に応じて適宜設定される。エッチングガス全体の流量は、5sccm以上500sccm以下であってよく、50sccm以上300sccm以下であってよい。
【0047】
第1のプラズマは、エッチングガスを減圧された真空チャンバに供給した後、第1の高周波電源から第1の電極へ高周波電力を印加することにより発生する。真空チャンバ内の圧力は、例えば、0.1Pa以上30Pa以下である。第1の電極に印加される高周波電力は、例えば、500W以上4800W以下である。対象基板を第1のプラズマに晒す時間は特に限定されず、例えば、10分以上、300分以下である。
【0048】
このとき、さらに、ステージに内蔵された電極(第2の電極)に高周波電力を印加して、対象基板が載置されているステージにバイアス電圧をかけてもよい。これにより、エッチングレートが大きくなり易い。第2の電極に印加される高周波電力は、例えば、20W以上3000W以下である。
【0049】
プラズマエッチング工程は、対象基板を第1のプラズマに晒すエッチングステップ(S21)と、対象基板を冷却する冷却ステップ(S22)とを備えてもよい。
【0050】
冷却ステップは、例えば、第1の電極への高周波電力の印加およびエッチングガスの供給を停止して、処理室にプラズマが発生しない条件で行われてよい。この場合、対象基板は第1のプラズマにより加熱されることなく冷却される。これにより、対象基板の損傷を抑制することができる。
【0051】
また、冷却ステップは、処理室に対象基板がエッチングされ難い微弱なプラズマを発生させながら行われてもよい。これにより、対象基板の表面の帯電状態が維持され、静電吸着による対象基板へのステージへの吸着力の低下を抑制し、ひいては、基板の冷却効率を高めることができる。この場合、冷却ステップにおいて、Ar等の不活性ガスが処理室に供給され、エッチングステップで印加した高周波電力よりも低い高周波電力が、第1の電極に印加される。
【0052】
エッチングステップと冷却ステップとは、交互に複数回繰り返されてもよい。これにより、対象基板の損傷を抑制しながら、対象基板を効率よくエッチングすることができる。この場合、複数回のエッチングステップにおいて、対象基板が第1のプラズマに晒される合計の時間を10分以上、300分以下にすればよい。例えば、エッチングステップを20分行った後、冷却ステップを10分行う。これを1サイクルとして、5サイクル行い、対象基板が第1のプラズマに晒される合計の時間を100分にしてもよい。
【0053】
B.素子チップの製造方法
本実施形態に係る素子チップの製造方法は、複数の素子領域および素子領域を画定する分割領域を備えるとともに、第1の面および第1の面とは反対側の第2の面を有する基板を準備する準備工程と、第1の面を被覆する保護膜を形成する保護膜形成工程と、保護膜に開口を形成して、第1の面における分割領域を露出させる開口形成工程と、基板をプラズマに晒して、開口から露出する基板を第1の面から第2の面までエッチングする工程と、を含む。基板は、一般式:LiMO(式中、MはNbまたはTa)で表される複酸化物を含む。プラズマは、フッ素含有ガスおよび塩素含有ガスを含むエッチングガスにより発生される。
図4は、本実施形態に係る製造方法を示すフローチャートである。
【0054】
(1)準備工程(S11)
まず、ダイシングの対象となる対象基板を準備する。
【0055】
(対象基板)
対象基板は、第1の面および第2の面を備えるとともに、複数の素子領域と素子領域を画定する分割領域とを備える。素子領域は、例えば、SAWフィルターとして機能するために必要なIDT電極(Interdigital Transducer)等をすでに備えていてもよいし、IDT電極等が形成される予定の領域、すなわち、IDT電極等を備えていない領域であってもよい。
【0056】
対象基板は、上記した圧電基板であり、積層基板である。対象基板は、一般式:LiMO(式中、MはNbまたはTa)で表される複酸化物を含む。積層基板の場合、圧電基板の主面が露出している面が第1の面である。分割領域における対象基板をエッチングすることにより、複数の素子チップが得られる。
【0057】
分割領域の幅は特に限定されず、圧電基板や素子チップの大きさ等に応じて、適宜設定すればよい。分割領域の幅は、例えば、10μm以上300μm以下である。複数の分割領域の幅は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。分割領域は、通常、複数本、圧電基板に配置される。隣接する分割領域同士のピッチも特に限定されず、圧電基板や素子チップの大きさ等に応じて、適宜設定すればよい。
【0058】
図5は、本実施形態に係る準備工程により準備された基板の一部を模式的に示す断面図である。
対象基板10は、圧電基板11と、圧電基板11の第2の面10Y側に積層される支持基板12と、を備える。対象基板10は、第1の面10Xおよび第2の面10Yを備えるとともに、複数の素子領域101と素子領域101を画定する分割領域102とを備える。対象基板10の第2の面10Yはトレイ20に対向している。
【0059】
(2)保護膜形成工程(S12)
対象基板の第1の面を被覆する保護膜を形成する。
保護膜は、対象基板の素子領域をプラズマ等から保護するために設けられる。
【0060】
保護膜は、例えば、ポリイミド等の熱硬化性樹脂、フェノール樹脂等のフォトレジスト、あるいは、アクリル樹脂等の水溶性レジスト等の、いわゆるレジスト材料を含む。
【0061】
保護膜は、例えば、レジスト材料をシート状に成型した後、このシートを対象基板に貼り付けるか、あるいは、レジスト材料の原料液を、スピンコートやスプレー塗布等の方法を用いて、基板に塗布することにより形成される。
【0062】
保護膜の厚みは特に限定されないが、エッチング工程および後述するクリーニング工程におけるプラズマエッチングにより完全には除去されない程度であることが好ましい。保護膜の厚みは、例えば、エッチング工程およびクリーニング工程において保護膜がエッチングされる量(厚み)を算出し、このエッチング量以上になるように設定される。保護膜の厚みは、例えば、5μm以上60μm以下である。
【0063】
図6は、本実施形態に係る保護膜形成工程後の基板の一部を模式的に示す断面図である。対象基板10の第1の面10Xに、保護膜40が形成されている。
【0064】
(3)開口形成工程(S13)
保護膜に開口を形成して、対象基板の分割領域を露出させる。
【0065】
開口は、例えば、フォトレジストにより形成された保護膜のうち、分割領域に対応する領域をフォトリソグラフィ法によって除去することにより形成される。熱硬化性樹脂あるいは水溶性レジストにより形成された保護膜のうち、分割領域に対応する領域をレーザスクライビングによりパターニングして、開口を形成してもよい。
【0066】
開口形成工程の後、エッチング工程を行う前に、開口にレーザ光あるいはプラズマを照射してもよい。この工程は、例えば、開口形成工程に起因する残渣を低減する目的で行われる。これにより、高品質のプラズマエッチングを行うことが可能になる。
【0067】
図7は、本実施形態に係る開口形成工程後の基板の一部を模式的に示す断面図である。分割領域102における保護膜40が除去されて、開口から分割領域102において圧電基板11が露出している。
【0068】
(4)エッチング工程(S14)
対象基板をプラズマに晒して、開口から露出する分割領域を第1の面から支持基板が露出するまでエッチングし、支持基板の上に積層された圧電基板を分割領域で分断する。
【0069】
対象基板は、第1の面を上に向けてトレイに固定されてもよい。これにより、ハンドリング性が向上する。トレイには2以上の対象基板が固定されてもよい。トレイの形状、材質等は上記の通りである。対象基板は、保護膜形成工程の前にトレイに固定されてもよい。
【0070】
エッチング工程は、上記のプラズマエッチング方法により実行される。すなわち、対象基板を処理室内のステージに載置した後、フッ素含有ガスおよび塩素含有ガスを含むエッチングガスにより発生される第1のプラズマにより、対象基板をエッチングする。上記プラズマエッチング方法によれば、処理室の天板に付着する反応生成物を低減できるため、生産性が向上する。
【0071】
図8は、本実施形態に係るエッチング工程で得られた支持基板上で分断された圧電基板を、模式的に示す断面図である。圧電基板11の分割領域がエッチングされて、支持基板12が分割領域において露出している。分断された圧電基板11の第1の面10Xは、保護膜40により覆われている。
【0072】
(5)クリーニング工程(S15)
プラズマエッチング工程の後、ステージに載置された対象基板を第2のプラズマに晒して、対象基板および/または処理室の内部に付着した反応生成物の少なくとも一部を除去してもよい。ただし、一旦、処理室の内部に付着した反応生成物は、プラズマ処理しても除去され難い。
【0073】
第2のプラズマは、例えば、酸素を含むガス(以下、クリーニングガスと称す。)により発生される。酸素のクリーニングガスに占める割合は、10体積%以上100体積%未満であってよく、30体積%以上80体積%以下であってよい。
【0074】
クリーニングガスは、さらに上記のようなフッ素含有ガスを含んでもよい。一方、塩素含有ガスは含まれなくてもよい。上記の通り、すでに処理室の内部に付着した反応生成物は、その後、塩素含有ガスを用いてプラズマ処理しても除去され難いためである。
【0075】
クリーニングガスの流量は特に限定されず、対象基板の厚み等に応じて適宜設定される。クリーニングガスの流量は、例えば、100sccm以上1000sccm以下であってよく、200sccm以上800sccm以下であってよい。
【0076】
エッチング工程の後、真空チャンバ内を排気して減圧雰囲気下にし、その後、クリーニングガスを真空チャンバに供給する。続いて、第1の高周波電源から第1の電極へ高周波電力を印加することにより、第2のプラズマが発生する。真空チャンバ内の圧力は、例えば、0.1Pa以上30Pa以下である。第1の電極に印加される高周波電力は、例えば、500W以上4800W以下である。このとき、第2の電極には高周波電力を印加しなくてよい。
【0077】
第2のプラズマを発生させておく時間は特に限定されず、例えば、60分以上、300分以下である。
【0078】
(6)保護膜除去工程(S16)
エッチング工程あるいはクリーニング工程の後、プラズマ処理装置においてアッシングを行ってもよい。これにより、保護膜が除去される。クリーニング工程により保護膜が除去される場合、本工程は省略されてよい。
【0079】
アッシング用のアッシングガスは、例えば、酸素ガスや、酸素ガスとフッ素含有ガスとの混合ガス等である。アッシングガスの流量は、例えば、150sccm以上300sccm以下である。
【0080】
エッチング工程あるいはクリーニング工程の後、真空チャンバ内を排気して減圧雰囲気下にし、その後、アッシング用ガスを真空チャンバに供給する。続いて、第1の高周波電源から第1の電極へ高周波電力を印加することにより、アッシングガスが発生する。真空チャンバ内の圧力は、例えば、5Pa以上15Pa以下である。第1の電極に印加される高周波電力は、例えば、1500W以上5000W以下である。このとき、第2の電極には高周波電力を印加してもよいし、しなくてもよい。第2の電極に印加される高周波電力は、エッチング工程における第2の電極への印加電力よりも小さくなるように設定することが望ましい。第2の電極に印加される高周波電力は、例えば、300W以下である。
【0081】
保護膜が水溶性である場合、アッシングに替えて、水洗により保護膜を除去してもよい。
【0082】
図9は、本実施形態に係る保護膜除去工程後の支持基板上で分断された圧電基板を、模式的に示す断面図である。圧電基板11を覆っていた保護膜40が除去されている。
【0083】
(7)支持基板分断工程(S17)
その後、支持基板を、分割領域において、例えばメカニカルダイサー等で分断する。これにより、複数の素子チップが得られる。
【0084】
図10は、本実施形態に係る支持基板分断工程により得られた複数の素子チップを模式的に示す断面図である。分割領域において支持基板12が分断されて、複数の素子チップ200が形成されている。
【0085】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0086】
[実施例1]
a)準備工程、保護膜形成工程および開口形成工程
LT基板(厚み20μm、直径6インチ)とサファイア基板(厚み1000μm、直径6インチ)との積層基板を3枚準備した。各積層基板に対して、スピンコート法により、LT基板の露出した主面を覆う保護膜(厚み30μm、ノボラック樹脂)を形成した。フォトリソグラフィ法により、分割領域における保護膜を除去した。上記3枚の積層基板を炭化ケイ素(SiC)製のトレイに固定した。
【0087】
b)エッチング工程
続いて、上記3枚積層基板をトレイごと処理室に設けられたステージに載置し、図2に示すプラズマ処理装置を用いて、上記3枚の積層基板を第1のプラズマに晒した。
【0088】
エッチング工程では、エッチングステップと冷却ステップとを、順次繰り返した。繰り返し回数は5回とした。
エッチングステップでは、エッチングガスとしてCHF、ClおよびArを用いた。CHFの供給量は13sccm、Clの供給量は10sccm、Arの供給量は50sccmとした。真空チャンバ内の圧力は0.35Pa、第1の電極への印加電力は2000W、第2の電極への印加電力は2200Wとして、20分間処理した。
冷却ステップでは、エッチングガスの供給および第1の電極への電力の印加を停止した状態で、基板を10分間冷却した。
【0089】
c)クリーニング工程
同じプラズマ処理装置の真空チャンバ内のガスを排気した後、基板を第2のプラズマに晒した。
クリーニングガスとしてOおよびCFの混合ガスを用いた。Oの供給量は200sccm、CFの供給量は150sccmとした。真空チャンバ内の圧力は8Pa、第1の電極への投入電力は1800Wとして120分間処理した。その後、真空チャンバ内のガスを排気した。第2の電極への電力の印加は行わなかった。
【0090】
このようにして1バッチ目のプラズマ処理を終了した。その後、トレイを搬出した。処理室上方の天板を目視したところ、堆積物はほとんど付着していなかった。また、エッチング工程およびクリーニング工程中における堆積物の落下は見られなかった。
【0091】
同じ構成を有する別の6枚の積層基板を準備し、3枚ずつ2枚のトレイに固定した。その後、プラズマ処理装置を変えずに、連続して、一方のトレイに固定された3枚の基板に対して、上記の工程(b)および(c)を行って2バッチ目のプラズマ処理を終了し、さらに連続して、他方のトレイに固定された3枚の基板に対して、上記の工程(b)および(c)を行って3バッチ目のプラズマ処理を終了した。3バッチ目のプラズマ処理終了後、天板を目視したところ、やはり堆積物はほとんど付着していなかった。また、2バッチ目および3バッチ目においても、エッチング工程およびクリーニング工程中における堆積物の落下は見られなかった。
【0092】
[比較例1]
実施例1と同様にして、トレイに固定された3枚の積層基板を準備した。
【0093】
続いて、図2に示すプラズマ処理装置を用いて、上記3枚の基板をプラズマに晒した。エッチングステップにおいて、塩素ガスを供給しなかったこと、Arの供給量を55sccmとしたこと、処理時間を18.6分としたこと以外は、実施例1と同様にしてプラズマ処理を行った。
【0094】
このようにして1バッチ目のプラズマ処理を終了した。エッチング工程およびクリーニング工程中における堆積物の落下は見られなかった。
【0095】
実施例1と同様にして、連続して2バッチ目および3バッチ目のプラズマ処理を行った。3バッチ目エッチング工程中に、天板から基板上に堆積物が落下した。3バッチ目のプラズマ処理の終了後、処理室上方の天板を目視したところ、堆積物が剥がれたような痕が確認された。
【0096】
さらに、各バッチで得られた素子チップ上には、いずれもプラズマ処理による反応生成物の付着が見られた。加えて、素子チップの端面の第2の面に対する角度は、実施例1よりも小さかった。
【0097】
比較例1の1バッチ目におけるLT基板のエッチング速度(nm/分)を1としたとき、実施例1の1バッチ目におけるLT基板のエッチング速度は約0.96であり、ほとんど差は見られなかった。また、比較例1の1バッチ目における保護膜とLT基板とのエッチング速度の比(レジスト選択比):保護膜/LT基板を1としたとき、実施例1の1バッチ目におけるレジスト選択比は0.84であり、大きな差は見られなかった。すなわち、塩素含有ガスを併用したことによるエッチング特性への影響はほとんどないと言える。
【0098】
さらに、実施例1で得られた素子チップ上には、プラズマ処理による反応生成物の付着は見られなかった。加えて、素子チップの端面は、第2の面に対して垂直に近い角度で形成されており、その角度は比較例1よりも大きかった。すなわち、塩素含有ガスを供給したことにより、エッチング加工の精度が向上したと言える。
【0099】
[比較例2]
実施例1と同様にして、トレイに固定された3枚の積層基板を準備した。
【0100】
続いて、図2に示すプラズマ処理装置を用いて、上記3枚の基板をプラズマに晒した。エッチングステップにおいて、塩素ガスに替えてCFを5sccm、酸素を5sccm供給したこと、処理時間を19.5分としたこと以外は、実施例1と同様にしてプラズマ処理を行った。
【0101】
このようにして1バッチ目のプラズマ処理を終了した。エッチング工程およびクリーニング工程中に、天板から基板上に堆積物が落下した。1バッチ目のプラズマ処理の終了後、処理室上方の天板を目視したところ、堆積物が剥がれたような痕が確認された。
【0102】
比較例1の1バッチ目におけるLT基板のエッチング速度(nm/分)を1としたとき、比較例2の1バッチ目におけるLT基板のエッチング速度は約0.82であった。また、比較例1の1バッチ目におけるレジスト選択比を1としたとき、比較例2の1バッチ目におけるレジスト選択比は0.68であった。すなわち、酸素を供給しても、LT基板のエッチング特性は向上しないと言える。得られた素子チップ上には、プラズマ処理による反応生成物の付着は見られなかったものの、その端面の第2の面に対する角度は、実施例1よりも若干小さかった。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明のプラズマエッチング方法は、処理室の内部に付着する反応生成物の量を低減するとともに、高い精度でエッチング加工を行うことができるため、プラズマによりタンタル酸リチウムおよびニオブ酸リチウム等の複酸化物を含む基板をエッチングする方法として好適である。
【符号の説明】
【0104】
10:対象基板
10X:第1の面
10Y:第2の面
11:圧電基板
12:支持基板
20:トレイ
40:保護膜
100:プラズマ処理装置
103:真空チャンバ
103a:ガス導入口
103b:排気口
108:誘電体部材(天板)
109:第1の電極
110A:第1の高周波電源
110B:第2の高周波電源
111:ステージ
112:エッチングガス源
113:アッシングガス源
114:減圧機構
115:電極層
116:金属層
117:基台
118:外周部
119:ESC電極
120:第2の電極
121:昇降ロッド
122:支持部
123:昇降機構
125:冷媒循環装置
126:直流電源
127:冷媒流路
128:制御装置
129:外周リング
200:素子チップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10