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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】レーダ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 21/08 20060101AFI20230630BHJP
   G01S 7/03 20060101ALI20230630BHJP
   H01Q 1/32 20060101ALI20230630BHJP
   H01Q 15/14 20060101ALI20230630BHJP
   H01Q 1/38 20060101ALI20230630BHJP
   H01Q 1/40 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
H01Q21/08
G01S7/03 246
G01S7/03 220
H01Q1/32 Z
H01Q15/14 Z
H01Q1/38
H01Q1/40
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020012307
(22)【出願日】2020-01-29
(65)【公開番号】P2021118497
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2022-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塩崎 亮佑
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 優人
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0165484(US,A1)
【文献】特開2008-258772(JP,A)
【文献】国際公開第2007/097282(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 21/08
G01S 7/03
H01Q 1/32
H01Q 15/14
H01Q 1/38
H01Q 1/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンドファイアアレイアンテナによって構成される複数のアンテナ素子を有するアンテナ部と、
前記複数のアンテナ素子が第1方向に並んで配置される回路基板と、
を備え、
前記複数のアンテナ素子の少なくとも一部は、前記回路基板の基板面に平行で、かつ、前記第1方向と直交する方向である第2方向と、前記第1方向とに対して傾斜する方向である第3方向に電磁波を放射するように配置され
前記複数のアンテナ素子の少なくとも一部は、前記第3方向に沿って配置される第1部分と、前記第1部分における前記第3方向の端部から、前記第3方向に直交し、かつ、前記第1方向に対して傾斜する第4方向に沿って配置される第2部分とを有し、
前記アンテナ素子の前記第2部分に対して前記第3方向とは反対側に配置され、前記第3方向に向けて電磁波を反射する第1反射部を備え、
前記第1反射部の反射面は、前記第2部分に対して平行な形状を有する段差形状である、
レーダ装置。
【請求項2】
前記複数のアンテナ素子における前記第2部分のそれぞれの端部は、前記第2方向の所定位置における前記第1方向に平行な直線上に配置されている、
請求項に記載のレーダ装置。
【請求項3】
前記回路基板の内部に配置され、前記回路基板の内部側に放射された電磁波を反射する第2反射部を備え、
前記第2反射部は、前記第2方向において前記アンテナ素子よりも延出した範囲に配置されている、
請求項1または請求項2に記載のレーダ装置。
【請求項4】
エンドファイアアレイアンテナによって構成される複数のアンテナ素子を有するアンテナ部と、
前記複数のアンテナ素子が第1方向に並んで配置される回路基板と、
を備え、
前記複数のアンテナ素子の少なくとも一部は、前記回路基板の基板面に平行で、かつ、前記第1方向と直交する方向である第2方向と、前記第1方向とに対して傾斜する方向である第3方向に電磁波を放射するように配置され、
前記回路基板の内部に配置され、前記回路基板の内部側に放射された電磁波を反射する第2反射部を備え、
前記第2反射部は、前記第2方向において前記アンテナ素子よりも延出した範囲に配置され、
前記第2反射部の前記第2方向の端部は、前記アンテナ素子側に凹むように切り欠かれている部分を含む、
ーダ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、レーダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ミリ波やマイクロ波の周波数帯域を利用した、非接触で物体の位置を検知するレーダ装置が知られている。この種のレーダ装置は、例えば、車体の四隅に配設され、前方監視、前側方監視、又は、後側方監視等の多方向の監視用途として用いられている。
【0003】
近年、この種のレーダ装置においては、搭載される装置(例えば、車両)におけるアプリケーションが多様化しているため、その検出範囲が広範囲になるもの、つまり、装置の側方の指向性を高めたものが求められている。
【0004】
通常は、複数のアンテナ素子で構成されたアレイアンテナにより指向性を高めるが、アレイアンテナによる広角性能はアンテナ素子の指向性に制限されるので、装置の側方の指向性を高めるには限界がある。
【0005】
例えば特許文献1には、多層基板において平坦な領域に配置された複数のパッチアンテナと、傾斜領域に配置された複数のパッチアンテナとで構成されたアダプティブアレイアンテナが開示されている。この構成では、傾斜領域に配置されたパッチアンテナにより、側方の指向性を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2017/047396号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、多層基板において傾斜領域を形成するために、多層基板の研磨を行う必要が生じるので、装置を製造しにくいという問題が生じる。また、アンテナの正面に配置するレンズの形状を多層基板の形状に合わせる必要が生じるので、さらに製造しにくいという問題が生じる。
【0008】
本開示の目的は、製造しやすく、かつ、側方の指向性を高めることが可能なレーダ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示に係るレーダ装置は、
エンドファイアアレイアンテナによって構成される複数のアンテナ素子を有するアンテナ部と、
前記複数のアンテナ素子が第1方向に並んで配置される回路基板と、
を備え、
前記複数のアンテナ素子の少なくとも一部は、前記回路基板の基板面に平行で、かつ、前記第1方向と直交する方向である第2方向と、前記第1方向とに対して傾斜する方向である第3方向に電磁波を放射するように配置され
前記複数のアンテナ素子の少なくとも一部は、前記第3方向に沿って配置される第1部分と、前記第1部分における前記第3方向の端部から、前記第3方向に直交し、かつ、前記第1方向に対して傾斜する第4方向に沿って配置される第2部分とを有し、
前記アンテナ素子の前記第2部分に対して前記第3方向とは反対側に配置され、前記第3方向に向けて電磁波を反射する第1反射部を備え、
前記第1反射部の反射面は、前記第2部分に対して平行な形状を有する段差形状である
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、製造しやすく、かつ、側方の指向性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の実施の形態に係るレーダ装置を搭載した車両を示す図である。
図2】本実施の形態に係るレーダ装置の平面図である。
図3A】レーダ装置におけるアンテナ素子部分の拡大平面図である。
図3B】レーダ装置における側断面図である。
図4】レーダ装置における検知角度と利得の関係を示す図である。
図5】レーダ装置におけるアンテナ素子部分の拡大平面図である。
図6】レーダ装置の作用効果の一例を説明するための図である。
図7】レーダ装置の作用効果の一例を説明するための図である。
図8】レーダ装置の作用効果の一例を説明するための図である。
図9】変形例に係るレーダ装置におけるアンテナ素子部分の拡大平面図である。
図10】変形例に係るレーダ装置におけるアンテナ素子部分の拡大平面図である。
図11】変形例に係るレーダ装置におけるアンテナ素子部分の拡大平面図である。
図12】変形例に係るレーダ装置におけるアンテナ素子部分の拡大平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本開示の実施の形態に係るレーダ装置100を搭載した車両Cを示す図である。図2は、本実施の形態に係るレーダ装置100の平面図である。
【0013】
図1に示すように、レーダ装置100は、例えば車両Cのカバー部材B等を介してミリ波、または、ミリ波より高い周波数帯域の電磁波の送受信を行う。レーダ装置100は、例えば車体の四隅に設けられる。
【0014】
図2に示すように、レーダ装置100は、筐体(図示省略)と、回路基板110と、アンテナ部120と、レンズ130とを有する。図2等では、レーダ装置100をZ方向の+側から見た図が示されている。
【0015】
なお、本実施の形態のレーダ装置100の構造を説明するにあたり、直交座標系(X,Y,Z)を使用する。後述する図においても共通の直交座標系(X,Y,Z)で示している。
【0016】
図2の実線矢印Fは、送信アンテナが送信した電磁波を表している。また、点線矢印Frは、ターゲットからの反射波を表している。なお、図2では、車両C内におけるレーダ装置100を支持する構造の図示は省略している。
【0017】
本実施の形態に係るレーダ装置100は、回路基板110のX方向の+側の端部領域に配設したアンテナ部120を用いて、当該回路基板110の基板面と略平行なX方向に対して傾斜した方向(後述する第1傾斜方向)を指向方向として、レンズ130を介して装置外部との電磁波の送受信を行う。つまり、本実施の形態に係るレーダ装置100においては、基板面の延在方向がカバー部材Bの延在方向に対して交差(例えば、直交)するように回路基板110を配設する構成となる。
【0018】
本実施の形態に係るレーダ装置100は、かかる構成によって、カバー部材Bで反射した反射波が、回路基板110等との間で多重反射し、ターゲットからの反射波との干渉を引き起こすこと、および、当該反射波が、回り込み波となってアンテナ部120に入射することを抑制する。
【0019】
回路基板110は、アンテナ部120、信号処理IC、およびコネクタ等が実装される基板である。回路基板110内には、アンテナ部120、信号処理IC、およびコネクタ等が実装されると共に、当該各実装部品(アンテナ部120、信号処理ICおよびコネクタ等)を互いに電気的に接続する配線(図示せず)がパターン形成されている。
【0020】
回路基板110は、基板面がXY平面と平行になるように配設されている。
【0021】
回路基板110の材料は、本開示では特に限定されないが、例えば、PCB(Printed Circuit Board)基板を用いることができる。なお、回路基板110は、典型的には、平板形状を呈している。
【0022】
図3Aおよび図3Bに示すように、回路基板110は、表層部材111と、内層部材112と、反射部材113とを有する。表層部材111は、回路基板110の表面に配置される導体である。表層部材111は、後述する複数の第1素子121Aのストリップ導体122を挟むように、Y方向に複数並んで配置されている。
【0023】
また、1つの表層部材111のX方向の端部は、段差形状を有する第1端部111Aおよび第2端部111Bを有する。
【0024】
第1端部111Aは、後述する第1素子121Aの延出素子123と平行に配置されている。第2端部111Bは、第1端部111AよりもX方向の突出した位置に配置され、後述する第2素子121Bの延出素子123と平行に配置されている。
【0025】
内層部材112は、回路基板110の内部に設けられる導体であり、表層部材111のZ方向の-側に配置されている。内層部材112は、グランドに接続されている。
【0026】
また、内層部材112のX方向の端部は、表層部材111のX方向の端部と略同じ形状を有する。
【0027】
表層部材111と内層部材112とは、ビア114によって電気的に接続されている。これにより、表層部材111のX方向の第1端部111Aは、アンテナ部120から放射される電磁波を反射する反射面として機能する。第1端部111Aは、本開示の「第1反射部」に対応する。
【0028】
反射部材113は、回路基板110の内部における内層部材112よりもZ方向の-側に配置されている。反射部材113は、表層部材111および内層部材112の端部よりもX方向の+側に延出した範囲に配置されている。
【0029】
反射部材113は、アンテナ部120が送信する電磁波がZ方向の-側に進行した場合(図3Bの矢印F1参照)、当該電磁波を反射する機能を有する。反射部材113は、本開示の「第2反射部」に対応する。
【0030】
図2に示すように、アンテナ部120は、回路基板110のX方向の+側の端部領域に配設されており、複数のアンテナ素子121を有する。複数のアンテナ素子121は、Y方向に並んで配置されている。図2に示す例では、アンテナ素子121は、計8つ設けられている。Y方向は、本開示の「第1方向」に対応する。
【0031】
回路基板110のX方向の+側の領域に配設される4つのアンテナ素子121は、送信用のアンテナ素子であり、回路基板110のX方向の+側に向けて、回路基板110の基板面と平行に電磁波を送信する。
【0032】
また、回路基板110のX方向の-側の領域に配設される4つのアンテナ素子121は、受信用のアンテナ素子であり、回路基板110のX方向の+側からの反射波を受信する。
【0033】
このように配置されることで、アンテナ部120は、回路基板110のX方向(第1傾斜方向)の+側に送受信の指向特性を有している。
【0034】
アンテナ部120としては、典型的には、回路基板110のX方向の+側に指向特性を有するエンドファイアアレイ(End-fire Array)アンテナが適用される。なお、エンドファイアアレイアンテナは、長手方向が平行になるように配列された複数のストリップ導体を含んで構成され、当該複数のストリップ導体が配列される方向に沿って電磁波を送受信する。
【0035】
送信用のアンテナ素子121が送信した電磁波は、レンズ130によって平面波に変換されて、レーダ装置100の装置外部のX方向の+側(ここでは、略水平方向)に向けて送出される。また、送信用のアンテナ素子121が送信した電磁波が装置外部のターゲットに反射されて戻ってくる反射波は、レンズ130により集波されて、受信用のアンテナ素子121に送出される。なお、各アンテナ素子121は、それぞれ、回路基板110上に形成された配線を介して信号処理ICと接続されている。
【0036】
図3Aおよび図3Bに示すように、アンテナ素子121は、第1素子121Aおよび第2素子121Bを有する。第1素子121Aおよび第2素子121Bは、ストリップ導体122と、延出素子123とで構成されたL字形状を有する。
【0037】
第1素子121Aにおけるストリップ導体122は、回路基板110に平行で、かつ、X方向、および、Y方向に対して傾斜する第1傾斜方向に沿って配置されている。X方向は、本開示の「第2方向」に対応する。第1傾斜方向は、本開示の「第3方向」に対応する。ストリップ導体122は、本開示の「第1部分」に対応する。
【0038】
また、上記した、ストリップ導体122を挟む2つの表層部材111は、ストリップ導体122に対して互いに等しい間隔をあけて配置されている。
【0039】
第2素子121Bにおけるストリップ導体122は、内層部材112のY方向の端部から第1傾斜方向に延出している。第2素子121Bのストリップ導体122は、Z方向から見て第1素子121Aのストリップ導体122と重なる位置に配置されている。
【0040】
延出素子123は、ストリップ導体122のX方向の+側の端部から、回路基板110に平行で、かつ、第1傾斜方向に直交する第2傾斜方向に沿って配置されている。第1素子121Aにおける延出素子123は、第2傾斜方向における+側に延びている。第2素子121Bにおける延出素子123は、第2傾斜方向における-側に延びている。第2傾斜方向は、本開示の「第4方向」に対応する。延出素子123は、本開示の「第2部分」に対応する。
【0041】
すなわち、複数のアンテナ素子121は、第1傾斜方向に電磁波を放射するように配置されている(図3Aの矢印F参照)。
【0042】
このように配置されることにより、アンテナ部120は、ストリップ導体がX方向に沿って配置される構成と比較して、Y方向の+側への指向性(側方の指向性)を高めることが可能となる。
【0043】
例えば、図4に示すように、ストリップ導体がX方向に沿って配置される構成の場合、アンテナ部の利得が、検知角度が90°を中心に対称となる台形状になる(破線参照)。
【0044】
これに対し、本実施の形態に係るアンテナ部120の場合、電磁波の指向性がY方向の+側(例えば、90°より大きい側)にシフトするので、90°よりも大きい側に指向性が片寄ったような利得となる。つまり、本実施の形態に係るアンテナ部120は、側方(Y方向の+側)の指向性を高めることができる。
【0045】
また、図3Aおよび図3Bに示すように、上述した表層部材111は、第1素子121Aとともに回路基板110上に配置されているので、第1素子121Aの延出素子123と、表層部材111の第1端部111Aは、対向配置されている。つまり、表層部材111の第1端部111Aは、第1素子121Aの延出素子123に対して第1傾斜方向とは反対側に配置されている。
【0046】
上述したように、表層部材111がビア114によって内層部材112と電気的に接続されていることから、第1端部111Aは、延出素子123から放射される電磁波を反射する反射面として機能する。
【0047】
そのため、アンテナ部120からX方向の-側に電磁波が放射された場合、表層部材111の第1端部111Aによって第1傾斜方向に向けて電磁波を反射させることができる。また、例えば、表層部材が第1素子の延出素子と平行ではない場合、ストリップ導体のY方向に対する傾斜角度によっては、延出素子と表層部材とが干渉する可能性がある。
【0048】
それに対し、本実施の形態では、表層部材111が第1素子121Aの延出素子123と平行であるので、延出素子123と表層部材111とが干渉することを抑制することができる。
【0049】
また、図5に示すように、複数の第1素子121Aの延出素子123におけるY方向の+側の各端部は、X方向において同じ位置に配置されている。言い換えると、複数の第1素子121Aの延出素子123におけるY方向の+側の各端部は、X方向の第1所定位置におけるY方向に平行な直線L1上に配置されている。これにより、各素子の性能を均一にすることができる。
【0050】
また、複数の第2素子121Bの延出素子123におけるY方向の-側の各端部は、X方向において同じ位置に配置されている。言い換えると、複数の第2素子121Bの延出素子123におけるY方向の-側の各端部は、X方向の第2所定位置におけるY方向に平行な直線L2上に配置されている。
【0051】
また、アンテナ部120のX方向の+側には、レンズ130が配置されている。レンズ130は、送信用のアンテナ素子121が送信した電磁波のビームを絞って、装置外部のY方向の+側の領域に送出する。そして、レンズ130は、送信した電磁波がターゲットで反射して戻ってきた反射波を集波して、受信用のアンテナ素子121に送出する。なお、レンズ130は、より好適には、送信用のアンテナ素子121が送信した電磁波を平面波に変換する程度まで、電磁波のビームを絞る構成とする。
【0052】
レンズ130は、アンテナ部120が電磁波を送受信する際の利得を向上させるとともに、レンズ130は、アンテナ部120を保護するレドームとしても機能している。
【0053】
レンズ130としては、典型的には、X方向の+側の面が凸状に形成された片側凸レンズを適用し得る。ただし、レンズ130としては、両面凸レンズ、ボールレンズ、フレネルレンズ、若しくはこれらの組み合わせ、又は、凹レンズとこれらの組み合わせ等が適用されてもよい。又、レンズ130としては、その他、X方向の-側を凸状にしてもよい。
【0054】
レンズ130を構成する素材は、レンズの機能を果たす限り任意であってよく、例えば、アクリル樹脂、四フッ化エチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シンジオタクチックポリスチレン樹脂、又は、ABS樹脂等が用いられる。
【0055】
以上のように構成された本実施の形態に係るレーダ装置100の作用効果について説明する。
【0056】
例えば、図6に示すように、レーダ装置100を搭載した車両Cが、走行中の走行レーンと右側で隣接する右側レーンに車線変更しようとしたとする。この場合、車両Cの右後に搭載されたレーダ装置100が、車線変更時の後方車両接近検知用の装置として用いられる。この場合のレーダ装置100は、車両Cの右斜め後ろ方向(B1方向)がX方向の+側となるように配置される。レーダ装置100の検知範囲R1は、例えば、車両Cの右後方の範囲内となる。この検知範囲R1内に右側レーンを走行する他車両D1が入った場合、他車両D1がレーダ装置100により検知される。
【0057】
本実施の形態では、例えば、車両CのB1方向に対して傾斜する方向(B1方向と後方向との間の方向)の利得が上昇するように、アンテナ素子121をB1方向および後方向に対して傾斜させて配置する。これにより、アンテナ素子121を傾斜させずに配置する構成の検知範囲R2(破線参照)と比較して、右後側におけるレーダ装置100の検知範囲R1を左斜め後側に傾けることができる(実線参照)。その結果、右側レーンにおける車両Cの後方の検知範囲が広がり、右側レーンを走行する他車両D1を検知しやすくすることができる。
【0058】
また、例えば、図7に示すように、レーダ装置100を搭載した車両Cが、駐車場等で出庫するために駐車スペースから後進しようとしたとする。この場合、車両Cの後側の両端に搭載されたレーダ装置100が後方出庫時の後方検知用の装置として用いられる。この場合のレーダ装置100は、車両Cの左斜め後ろ方向(B2方向)がX方向の+側となるように配置されるものと、車両Cの右斜め後ろ方向(B3方向)がX方向の+側となるように配置されるものがそれぞれ設けられる。レーダ装置100の検知範囲R3,R4は、例えば車両Cの後側方における左右両側の範囲となる。この検知範囲R3,R4内に車両Cの後側方における左右両側の移動物体E(歩行者や他車両等)等が入った場合、移動物体Eがレーダ装置100により検知される。
【0059】
本実施の形態では、例えば、車両CのB2方向に対して傾斜する方向(B2方向と左方向の間の方向)の利得と、B3方向に対して傾斜する方向(B3方向と右方向の間の方向)の利得と、が上昇するように、各アンテナ素子121を傾斜させて配置する。これにより、アンテナ素子121を傾斜させずに配置する構成の検知範囲R5,R6(破線参照)と比較して、レーダ装置100の検知範囲R3,R4を後側方における左右両側で斜め前方向に傾けることができる(実線参照)。その結果、車両Cの後方の側方における検知範囲が広がり、車両Cの後側方における左右両側の移動物体Eを検知しやすくすることができる。
【0060】
また、例えば、図8に示すように、レーダ装置100を搭載した車両Cが、交差点において右折しようとしたとする。この場合、車両Cが右折待ちの際、車両Cの前側の左端に搭載されたレーダ装置100により、車両Cの前側の左側方の領域における移動物体(例えば、右折先のレーンで信号待ち中の他車両D2)が検知される。この場合のレーダ装置100は、車両Cの左側方(図8のB4方向)がX方向の+側となるように配置される。レーダ装置100の検知範囲R7は、例えば、車両Cの前側における左側の範囲となる。
【0061】
本実施の形態では、車両Cの左斜め後ろ側(B4方向と左方向の間の方向)の利得が向上するように、アンテナ素子121を傾斜させて配置する。これにより、アンテナ素子121を傾斜させずに配置する構成の検知範囲R8(破線参照)と比較して、車両Cの左後側におけるレーダ装置100の検知範囲R7を傾けることができる(実線参照)。その結果、車両Cにおける右折待ちの際、車両Cの左斜め後方における検知範囲が広がり、車両Cの左斜め後方における移動物体等を検知しやすくすることができる。
【0062】
以上のように、本実施の形態では、Y方向に対して傾斜する第1傾斜方向に電磁波を放射するようにアンテナ素子121を配置することで、レーダ装置100における側方の指向性を高めることができる。その結果、レーダ装置100の検知範囲を広げたり、側方の物体の検知率を向上させることができる。
【0063】
また、本実施の形態におけるアンテナ部120がエンドファイアアレイアンテナによって構成されるので、特殊な加工がされていない、通常の回路基板110にアンテナ素子121を配置するだけで構成することができる。
【0064】
例えば特許文献1に記載の構成のように、パッチアンテナを回路基板上に配置する構成である場合、回路基板を研磨する必要が生じる等、装置を製造しにくいという問題が生じる。
【0065】
しかし、本実施の形態では、通常の回路基板110にアンテナ素子121を配置するだけで構成できるので、回路基板110を簡易な構造のままとすることができる。その結果、レーダ装置100を製造しやすくすることができる。
【0066】
すなわち、本実施の形態では、製造しやすく、かつ、側方の指向性を高めることができる。また、回路基板110を研磨する等、複雑な構造とする必要がないので、製造コストを抑えることができる。
【0067】
また、特許文献1に記載の構成では、回路基板を研磨することにより、回路基板の形状が台形状のような特殊な形状になるので、レンズを設けると、そのレンズを回路基板の形状に合わせる必要が生じる。
【0068】
それに対し、本実施の形態では、アンテナ部120がエンドファイアアレイアンテナによって構成されるので、レンズ130を片側凸レンズのようなシンプルな形状のレンズを採用することができる。その結果、レーダ装置100を全体としてシンプルな形状にすることができ、ひいてはレーダ装置100をさらに製造しやすくすることができる。
【0069】
なお、上記実施の形態では、回路基板110における反射部材113の形状について言及されていなかったが、図9に示すように、反射部材113に切り欠きを設けても良い。
【0070】
具体的には、反射部材113のX方向の端部は、アンテナ素子121側に凹むように切り欠かれている切り欠き部分113Aを有する。切り欠き部分113Aは、各アンテナ素子121に対応して1つずつ設けられている。反射部材113のX方向の端部における、1つのアンテナ素子121に対応する部分は、第1辺A1と、第2辺A2と、第3辺A3とで構成される。
【0071】
第1辺A1は、Y方向に平行な辺であり、第2素子121Bの延出素子123に対応する位置に設けられる。第2辺A2は、第1辺A1のY方向の+側の端部から、第1素子121Aの延出素子123に平行な方向(X方向の-側)に延びる辺である。第3辺A3は、第2辺A2のY方向の+側の端部から、第2辺A2に直交する方向(アンテナ素子121から離れる側)に延びて、Y方向の+側で隣接する領域における第1辺A1と接続される辺である。
【0072】
切り欠き部分113Aは、第2辺A2と第3辺A3で構成される部分である。このように構成されることで、例えば、第1素子121Aの延出素子123から放射される電磁波の反射領域を比較的狭い領域とすることができる。
【0073】
反射領域を広げてしまうと、反射部材113において過剰に電磁波を反射する可能性があるので、反射領域を比較的狭くすることにより、反射波を過剰に反射することを抑制することができる。
【0074】
また、上記実施の形態では、全てのアンテナ素子121が同一方向に電磁波を放射するように構成されていたが、本開示はこれに限定されず、例えば、図10に示すように、一部のアンテナ素子121が第1傾斜方向に電磁波を放射するようにしても良い。図10では、Y方向の+側のアンテナ素子121が図10における右斜め上方向に電磁波を放射するように配置されている。また、残りのアンテナ素子121がX方向に電磁波を放射するように配置されている。
【0075】
また、図11に示すように、複数のアンテナ素子121が、異なる傾斜方向に電磁波を放射するように配置されていても良い。図11では、Y方向の+側のアンテナ素子121およびY方向の真ん中のアンテナ素子121が、図11における右斜め上方向に電磁波を放射するように配置されている。また、Y方向の-側のアンテナ素子121が図11における左斜め上方向に電磁波を放射するように配置されている。
【0076】
また、図12に示すように、複数のアンテナ素子121のうち、2つのアンテナ素子121が、互いに向き合う側に電磁波を放射するように配置されていても良い。図12では、Y方向の+側のアンテナ素子121が図12における左斜め上方向に電磁波を放射するように配置されている。また、Y方向の-側のアンテナ素子121およびY方向の真ん中のアンテナ素子121が右斜め上方向に電磁波を放射するように配置されている。
【0077】
また、上記実施の形態では、受信用のアンテナ素子121も送信用のアンテナ素子121と同様に傾斜配置されていたが、本開示はこれに限定されず、傾斜配置されていなくても良い。
【0078】
また、上記実施の形態では、表層部材111の第1端部111Aが延出素子123と平行に配置されていたが、本開示はこれに限定されず、平行に配置されていなくても良い。
【0079】
また、上記実施の形態では、反射部材113が設けられていたが、本開示はこれに限定されず、反射部材が設けられていなくても良い。
【0080】
その他、上記実施の形態は、何れも本開示を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本開示の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本開示はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本開示のレーダ装置は、製造しやすく、かつ、側方の指向性を高めることがすることが可能なレーダ装置として有用である。
【符号の説明】
【0082】
100 レーダ装置
110 回路基板
111 表層部材
111A 第1端部
111B 第2端部
112 内層部材
113 反射部材
114 ビア
120 アンテナ部
121 アンテナ素子
121A 第1素子
121B 第2素子
122 ストリップ導体
123 延出素子
130 レンズ
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12