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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】投写レンズ系及び画像投写装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 15/16 20060101AFI20230630BHJP
   G02B 13/16 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
G02B15/16
G02B13/16
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020548367
(86)(22)【出願日】2019-09-10
(86)【国際出願番号】 JP2019035494
(87)【国際公開番号】W WO2020066593
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-07-20
(31)【優先権主張番号】P 2018183756
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(72)【発明者】
【氏名】今岡 卓也
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-106391(JP,A)
【文献】特開2014-126766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 25/00 - 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1枚以上のレンズを含みズーム時に互いの間隔が変化するように移動する複数のレンズ群を有する投写レンズ系であって、
前記投写レンズ系は、拡大側から縮小側へと順に、正のパワーを有する第1レンズ群と、負のパワーを有する第2レンズ群と、正のパワーを有する第3レンズ群と、から構成され、前記第1レンズ群の最も拡大側に負レンズを有し、以下の条件(1)及び条件(2)を満足する、投写レンズ系:
0.0005<Δpgfn<0.01 ・・・(1)
32<vdn<45 ・・・(2)
ここで、
Δpgfn=(ngn-nfn)/(nfn―ncn)-(-2.20599×10-3・vdn+6.69612×10-1
vdn:負レンズのアッベ数
ngn:負レンズのg線に対する屈折率
nfn:負レンズのF線に対する屈折率
ncn:負レンズのC線に対する屈折率
である。
【請求項2】
以下の条件(3)を満足する、請求項1に記載の投写レンズ系:
0.8<|fn/f1|<1.5 ・・・(3)
ここで、
fn:負レンズの焦点距離
f1:第1レンズ群の焦点距離
である。
【請求項3】
以下の条件(4)を満足する、請求項1に記載の投写レンズ系:
ここで、
1.0<f1/ft<2.0 ・・・(4)
ここで、
ft:全系の望遠端の投写距離が無限遠における焦点距離
f1:第1レンズ群の焦点距離
である。
【請求項4】
前記第1レンズ群には少なくとも1枚の正レンズがあり、以下の条件(5)を満足する、請求項1に記載の投写レンズ系:
dn1/dt<-4.5×10-6 ・・・(5)
ここで、
dn1/dt:第1レンズ群の正レンズの材料の常温における屈折率温度係数
である。
【請求項5】
前記第1レンズ群は、拡大側から順に負のパワーを有する前記負レンズ、正のパワーを有する第1正レンズ、正のパワーを有する第2正レンズからなる、請求項1に記載の投写レンズ系。
【請求項6】
以下の条件(6)を満足する、請求項に記載の投写レンズ系:
0.2<|f2/ft|<0.7 ・・・(6)
ここで、
f2:第2レンズ群の焦点距離
である。
【請求項7】
以下の条件(7)を満足する、請求項に記載の投写レンズ系:
0.3<f3/ft<1.0 ・・・(7)
ここで、
f3:第3レンズ群の焦点距離
である。
【請求項8】
前記第2レンズ群の最も拡大側のレンズは正のパワーを有する、請求項記載の投写レンズ系。
【請求項9】
前記第2レンズ群の最も拡大側のレンズが以下の条件(8)及び条件(9)を満足する、請求項記載の投写レンズ系:
0.0005<Δpgfp<0.01 ・・・(8)
32<vdp<45 ・・・(9)
ここで、
Δpgfp=(ngp-nfp)/(nfp―ncp)-(-2.20599×10-3・vdp+6.69612×10-1
vdp:前記第2レンズ群の最も拡大側のレンズのアッベ数
ngp:前記第2レンズ群の最も拡大側のレンズのg線に対する屈折率
nfp:前記第2レンズ群の最も拡大側のレンズのF線に対する屈折率
ncp:前記第2レンズ群の最も拡大側のレンズのC線に対する屈折率
である。
【請求項10】
前記第3レンズ群の少なくとも5枚の正レンズは以下の条件(10)を満足する、請求項に記載の投写レンズ系:
dn3/dt<-4.5×10-6 ・・・(10)
ここで、
dn3/dt:第3レンズ群の正レンズの材料の常温における屈折率温度係数である。
【請求項11】
1枚以上のレンズを含みズーム時に互いの間隔が変化するように移動する複数のレンズ群を有する投写レンズ系であって、
前記投写レンズ系は、拡大側から縮小側へと順に、正のパワーを有する第1レンズ群と、負のパワーを有する第2レンズ群と、正のパワーを有する第3レンズ群と、から構成され、前記第1レンズ群に1枚の負レンズを有し、以下の条件(1)及び条件(2)を満足し、前記第2レンズ群の最も拡大側のレンズは正のパワーを有する、投写レンズ系:
0.0005<Δpgfn<0.01 ・・・(1)
32<vdn<45 ・・・(2)
ここで、
Δpgfn=(ngn-nfn)/(nfn―ncn)-(-2.20599×10 -3 ・vdn+6.69612×10 -1
vdn:負レンズのアッベ数
ngn:負レンズのg線に対する屈折率
nfn:負レンズのF線に対する屈折率
ncn:負レンズのC線に対する屈折率
である。
【請求項12】
1枚以上のレンズを含みズーム時に互いの間隔が変化するように移動する複数のレンズ群を有する投写レンズ系であって、
前記投写レンズ系は、拡大側から縮小側へと順に、正のパワーを有する第1レンズ群と、負のパワーを有する第2レンズ群と、正のパワーを有する第3レンズ群と、から構成され、前記第1レンズ群に1枚の負レンズを有し、以下の条件(1)及び条件(2)を満足し、前記第3レンズ群の少なくとも5枚の正レンズは以下の条件(10)を満足する、投写レンズ系:
0.0005<Δpgfn<0.01 ・・・(1)
32<vdn<45 ・・・(2)
dn3/dt<-4.5×10 -6 ・・・(10)
ここで、
Δpgfn=(ngn-nfn)/(nfn―ncn)-(-2.20599×10 -3 ・vdn+6.69612×10 -1
vdn:負レンズのアッベ数
ngn:負レンズのg線に対する屈折率
nfn:負レンズのF線に対する屈折率
ncn:負レンズのC線に対する屈折率
dn3/dt:第3レンズ群の正レンズの材料の常温における屈折率温度係数
である。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載の投写レンズ系と、
スクリーンに投写する画像を生成する画像形成素子と、を備えた、
画像投写装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、縮小側の画像を拡大側に投写する投写レンズ系、及びそれを有する画像投写装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、画像投影装置及び撮像装置において、色収差を良好に補正し、且つ温度変化によるフォーカス位置のずれを抑えるための光学系を開示している。特許文献1の光学系では、アッベ数、異常分散性及び温度変化に対する屈折率変化率等を適切な範囲に設定した少なくとも2つの正レンズが、絞りよりも縮小側に設けられている。これにより、軸上光束の幅を大きくして軸上色収差を良好に補正しながら、温度変化による屈折率の変化に起因するフォーカス位置のずれの抑制を図っている。特許文献1は、画像投影装置において高温になる原因として、光源に用いるランプを挙げている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-053663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、特に長焦点レンズで、画像投写装置の高輝度化における画像の画質を良くしつつ軸上色収差を低減できる投写レンズ系及び画像投写装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に係る投写レンズ系は、1枚以上のレンズを含みズーム時に互いの間隔が変化するように移動する複数のレンズ群を有する投写光学系であって、
前記投写レンズ系は、最も拡大側の第1レンズ群が正のパワーを有し、第1レンズ群に1枚の負レンズを有し、以下の条件(1)及び条件(2)を満足する、投写レンズ系:
0.0005<Δpgfn<0.01 ・・・(1)
32<vdn<45 ・・・(2)
ここで
Δpgfn=(ngn-nfn)/(nfn―ncn)-(-2.20599×10-3・vdn+6.69612×10-1
vdn:負レンズのアッベ数
ngn:負レンズのg線に対する屈折率
nfn:負レンズのF線に対する屈折率
ncn:負レンズのC線に対する屈折率
である。
【発明の効果】
【0006】
本開示に係る投写レンズ系及び画像投写装置によると、画像投写装置の高輝度化における画像の画質を良くしつつ、軸上色収差を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施例1の投写レンズ系の無限遠合焦状態を示すレンズ配置図である。
図2図2は、実施例1の投写レンズ系の物体距離が無限遠における縦収差図である。
図3図3は、実施例2の投写レンズ系の無限遠合焦状態を示すレンズ配置図である。
図4図4は、実施例2の投写レンズ系の物体距離が無限遠における縦収差図である。
図5図5は、実施例3の投写レンズ系の無限遠合焦状態を示すレンズ配置図である。
図6図6は、実施例3の投写レンズ系の物体距離が無限遠における縦収差図である。
図7図7は、本開示の実施の形態に係る画像投写装置の構成を例示するブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0009】
なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために、提供されるのであって、これらにより請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されていない。
【0010】
図1、3及び5は、実施の形態1~3に係る投写レンズ系のレンズ配置図であり、いずれも無限遠合焦状態にあるズームレンズ系を表している。各図において、(a)は広角端、(b)は中間位置、(c)は望遠端のレンズ構成をそれぞれ表している。広角端とは最短焦点距離状態を指す。最短焦点距離状態における焦点距離はfWである。望遠端とは最長焦点距離状態を指す。最長焦点距離状態における焦点距離はfTである。中間位置とは中間焦点距離状態を指す。中間焦点距離状態における焦点距離fmは以下の数式[数1]で規定される。
【0011】
【数1】
【0012】
また図1、3及び5において、(a)と(b)との間に設けられた折れ線の矢印は、上から順に、広角端、中間位置、望遠端の各状態におけるレンズ群の位置を結んで得られる直線である。広角端と中間位置との間、中間位置と望遠端との間は、単純に直線で接続されているだけであり、実際の各レンズ群の動きとは異なる。また各図において、左側を拡大側、右側が縮小側である。また各図において、各レンズ群の符号に付された記号(+)及び記号(-)は、各レンズ群のパワーの符号に対応する。また各図において、最も右側に原画像Sの位置を表す。原画像Sの左側に、色分解、色合成用のプリズム、光学フィルタ、平行平板ガラス、水晶ローパスフィルタ、赤外カットフィルタ等の光学素子Pを表している。
【0013】
図2,4及び6は、実施例1~3に係る投写レンズ系の物体距離が無限遠における縦収差図である。各図における(a)、(b)、(c)は、それぞれ本開示の結像光学系の焦点距離が、広角端、中間位置、望遠端のときの収差図である。
【0014】
各縦収差図には、左側から順に、球面収差図、非点収差図、歪曲収差図が示されている。球面収差図において、横軸は球面収差(SA(mm))を表し、縦軸はFナンバー(図中、Fで示す)を表す。球面収差図において、実線はd線(d-line)、短破線はF線(F-line)、長破線はC線(C-line)の特性を示す。非点収差図において、横軸は非点収差(AST(mm))を表し、縦軸は像高(図中、Hで示す)を表す。非点収差図において、実線はサジタル平面(図中、sで示す)、破線はメリディオナル平面(図中、mで示す)の特性を示す。歪曲収差図において、横軸は歪曲収差(DIS(%))を表し、縦軸は像高(図中、Hで示す)を表す。
【0015】
また、以下の実施の形態では、図7に例示するように、結像光学系11としての投写レンズ系を、液晶やDMD(Digital Micromirror Device)等の画像形成素子12によって形成された原画をスクリーンに投写するプロジェクター1(画像投写装置)に用いた場合について説明する。本開示の実施の形態においては、例えばスクリーン2が拡大側の延長線上に配置されている。結像光学系11は、縮小側に配置される液晶パネル等の原画像Sを拡大してスクリーン2に投写する。
【0016】
本開示の投写レンズ系は、拡大側から縮小側へと順に正のパワーの第1レンズ群G1と、負のパワーの第2レンズ群G2と、正のパワーの第3レンズ群G3とを備える。
【0017】
第1レンズ群G1は、拡大側から縮小側へと順に、拡大側に凸面を向けた負のメニスカスの第1レンズL1と、拡大側に凸を向けた正のメニスカスの第2レンズL2と、両凸レンズの第3レンズL3を備える。
【0018】
第2レンズ群G2は、拡大側から縮小側へと順に、拡大側に凸を向けた正メニスカスの第4レンズL4と、拡大側に凸を向けた負メニスカスの第5レンズL5と、両凹レンズの第6レンズL6と、両凹レンズの第7レンズL7と、拡大側に凸を向けた正のメニスカスの第8レンズL8を備える。
【0019】
第3レンズ群G3は、開口絞りAと第9レンズL9から第16レンズL16までのレンズで構成される。第3レンズ群G3は、拡大側から縮小側へと順に、両凸レンズの第9レンズL9と、縮小側に凸を向けた負メニスカスの第10レンズL10と、両凸レンズの第11レンズL11と、両凹レンズの第12レンズL12と、両凸レンズの第13レンズL13と、両凹の第14レンズL14と、両凸の第15レンズL15と、両凸の第16レンズL16とを備える。
【0020】
第3レンズ群G3と原画像Sとの間に光学素子Pが配置される。
【0021】
広角端から望遠端までのズーミングするとき、第1レンズ群G1は、原画像Sの像面に対して相対的に固定されている。第2レンズ群G2は、原画像Sの像面に対して縮小側に単調に移動する。第3レンズ群G3は原画像Sの像面に対して拡大側に移動する。
【0022】
無限遠合焦状態から近接物体合焦状態へのフォーカシングの際に全てのレンズ群が光軸に沿って拡大側へ移動する。
【0023】
本実施の形態に係る投写レンズ系は、1枚以上のレンズを含みズーム時に互いの間隔が変化するように移動する複数のレンズ群を有する投写レンズ系である。投写レンズ系は、最も拡大側に、正のパワーを有する第1レンズ群G1を備え、第1レンズ群G1に1枚の負レンズを有する、さらに投写レンズ系が満足する条件を以下に示す。
【0024】
本開示の投写レンズ系の負レンズは、以下の条件(1)を満足する。
0.0005<Δpgfn<0.01 ・・・(1)
ここで、
Δpgfn=(ngn-nfn)/(nfn―ncn)-(-2.20599×10-3・vdn+6.69612×10-1
vdn:負レンズのアッベ数
ngn:負レンズのg線に対する屈折率
nfn:負レンズのF線に対する屈折率
ncn:負レンズのC線に対する屈折率
である。
【0025】
条件(1)は、第1レンズ群G1の負レンズのg線とF線の部分分散比を規定する条件式である。高輝度でレンズの形状変化の影響により性能劣化が発生する。その性能劣化を抑えるために、形状変化の影響と逆の作用がある負の温度係数のガラス材料の正レンズが用いられる。しかしながら、負の温度係数のガラス材料は、いわゆる異常分散ガラスである。特に長焦点レンズでは、有効径に対する光線の幅が広く、レンズ形状変化による性能劣化に影響するレンズが多くなる。そのため、より多くの正の異常分散ガラスを用いることになる。そのため、各波長の軸上色収差の補正が難しくなる。そのため、条件(1)を満足することで、各波長の軸上色収差を良好に抑えることができる。条件(1)の下限値を下回ると、広角端の軸上色収差が大きくなる。また、条件(1)の上限値を上回ると、望遠端の軸上色収差が大きくなる。
【0026】
本開示の結像光学系は、以下の条件(2)を満足する。
32<vdn<45 ・・・(2)
【0027】
条件(2)は、第1レンズ群G1における負レンズのアッベ数を規定する条件式である。条件(2)を満足することで、軸上色収差を抑えることができる。条件(2)の下限値を下回ると、短波長側の軸上色収差がオーバに発生し軸上色収差が大きくなる。反対に、上限値を上回ると、短波長側の軸上色収差がアンダーに発生し軸上色収差が大きくなる。
【0028】
本開示の投写レンズ系は、以下の条件(3)を満足する。
0.8<|fn/f1|<1.5 ・・・(3)
ここで、
fn:第1レンズ群G1における負レンズの焦点距離
f1:第1レンズ群G1の焦点距離
である。
【0029】
条件(3)は、第1レンズ群G1における負レンズの焦点距離を規定する条件式である。条件(3)を満足することで、球面収差を良好に補正できる。条件(3)の下限値を下回ると、球面収差がアンダーに発生して球面収差を十分に補正することができなくなる。一方、上限値を上回ると、球面収差がオーバに発生して球面収差を十分に補正することができなる。
【0030】
以下の条件(3a)を満足することで上記効果を更に奏功させることができる。
1.0<|fn/f1|<1.3 ・・・(3a)
【0031】
本開示の投写レンズ系は、以下の条件(4)を満足する。
1.0<f1/ft<2.0 ・・・(4)
ここで、
ft:投写距離が無限遠における望遠端の焦点距離
である。
【0032】
条件(4)は、第1レンズ群G1の焦点距離を規定する条件式である。条件(4)を満足することで、全長の短縮と球面収差を抑制できる。条件(4)の上限値を上回ると、全長が長くなる。一方、下限値を下回ると球面収差が発生する。
【0033】
以下の条件(4a)を満足することで上記効果を更に奏功させることができる。
1.2<f1/ft<1.6 ・・・(4a)
【0034】
本開示の投写レンズ系は、第1レンズ群G1には少なくとも1枚の正レンズがあり、以下の条件(5)を満足する。
dn1/dt<-4.5×10-6 ・・・(5)
ここで、
dn1/dt:第1レンズ群G1の正レンズの材料の常温における屈折率温度係数である。常温は、例えば20℃~30℃である。
【0035】
条件(5)は、屈折率の温度係数を規定している。条件(5)の上限を上回ると、高輝度で発生する局所的な温度変化によるピント位置のシフト等において、形状の変化による影響と屈折率の変化による影響を相殺できず、高輝度時にピントがシフトすることになる。
【0036】
本開示の投写レンズ系は、第1レンズ群G1の縮小側に、第2レンズ群G2があり、第2レンズ群G2は、正のパワーを有し、以下の条件(6)を満足する。
0.2<|f2/ft|<0.7 ・・・(6)
ここで、
f2:第2レンズ群G2の焦点距離
である。
【0037】
条件(6)は、第2レンズ群G2の焦点距離を規定する条件式である。条件(6)を満足することで、全長の短縮と偏心に対する敏感度を低減することができる。条件(6)の上限値を上回ると、全長が長くなる。逆に、条件(6)の下限値を下回ると、第2レンズ群G2の偏心に対する敏感度が高くなる。
【0038】
以下の条件(6a)を満足することで上記効果を更に奏功させることができる。
0.3<|f2/ft|<0.6 ・・・(6a)
【0039】
本開示の投写レンズ系は、第2レンズ群G2の縮小側に第3レンズ群G3があり、第3レンズ群G3が正のパワーを有し、以下の条件(7)を満足する。
0.3<f3/ft<1.0 ・・・(7)
ここで、
f3:第3レンズ群G3の焦点距離
である。
【0040】
条件(7)は、第3レンズ群G3の焦点距離を規定する条件式である。条件(7)を満足することで、偏心に対する敏感度を低減しつつ全長短縮することができる。条件(7)の下限値を下回ると、偏心に対する敏感度が高くなる。また、上限値を上回ると、全長が長くなる。
【0041】
以下の条件(7a)を満足することで上記効果を更に奏功させることができる。
0.5<f3/ft<0.8 ・・・(7a)
【0042】
本開示の投写レンズ系は、第2レンズ群G2の最も拡大側に正レンズが配置され、以下の条件(8)を満足する。
0.0005<Δpgfp<0.01 ・・・(8)
ここで、
Δpgfp=(ngp-nfp)/(nfp―ncp)-(-2.20599×10-3・vdp+6.69612×10-1
vdp:負レンズのアッベ数
ngp:負レンズのg線に対する屈折率
nfp:負レンズのF線に対する屈折率
ncp:負レンズのC線に対する屈折率
【0043】
条件(8)は、第2レンズ群G2の最も拡大側の正レンズのg線とF線の部分分散比を規定する条件式である。条件(8)を満足することで、軸上色収差を抑えることができる。条件(8)の下限値を下回ると、望遠端の軸上色収差が大きくなる。また、条件(8)の上限値を上回ると、広角端の軸上色収差が大きくなる。
【0044】
本開示の投写レンズ系は、以下の条件(9)を満足する。
32<vdp<45 ・・・(9)
条件(9)は、第2レンズ群G2の最も拡大側の正レンズのアッベ数を規定する条件式である。条件(9)を満足することで、軸上色収差を抑えることができる。条件(9)の下限値を下回ると、短波長側の軸上色収差がアンダーに発生し軸上色収差が大きくなる。反対に、上限値を上回ると、短波長側の軸上色収差がオーバに発生し軸上色収差が大きくなる。
【0045】
本開示の投写レンズ系は、第3レンズ群G3に少なくとも5枚の正レンズがあり、少なくとも5枚の正レンズは、以下の条件(10)を満足する。
dn3/dt<-4.5×10-6 ・・・(10)
ここで、
dn3/dt:第3レンズ群G3の正レンズの材料の常温における屈折率温度係数である。常温は、例えば20℃~30℃である。
【0046】
条件(10)は、屈折率の温度係数を規定している。条件(10)の上限を上回ると、高輝度で発生する局所的な温度変化によるピント位置のシフト等において、形状の変化による影響と屈折率の変化による影響を相殺できず、高輝度時にピントがシフトしてしまう。
【0047】
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
【0048】
以下、実施例1~3の結像光学系の数値実施例を説明する。なお、各数値実施例において、表中の長さの単位はすべて「mm」であり、画角の単位はすべて「°」である。また、各数値実施例において、rは曲率半径、dは面間隔、ndはd線に対する屈折率、vdはd線に対するアッベ数である。
【0049】
(数値実施例1)
実施例1のレンズデータを表1~3に示す。表1に面データを示す。表2に各種データを示す。表3にズーム群データと単レンズデータを示す。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【0052】
【表3】
【0053】
(数値実施例2)
実施例2のレンズデータを表4~6に示す。表4に面データを示す。表5に各種データを示す。表6にズーム群データと単レンズデータを示す。
【0054】
【表4】
【0055】
【表5】
【0056】
【表6】
【0057】
(数値実施例3)
実施例3のレンズデータを表7~9に示す。表7に面データを示す。表8に各種データを示す。表9にズーム群データと単レンズデータを示す。
【0058】
【表7】
【0059】
【表8】
【0060】
【表9】
【0061】
以下の表10に、各数値実施例のレンズ系における各条件の対応値を示す。
【0062】
【表10】
【産業上の利用可能性】
【0063】
本開示は、プロジェクターなどの画像投写装置やデジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、監視システムにおける監視カメラ、Webカメラ、車載カメラ等に適用可能である。特に本開示は、プロジェクターやデジタルスチルカメラシステム、デジタルビデオカメラシステムといった高画質が要求される撮影光学系に適用可能である。
【符号の説明】
【0064】
G1 第1レンズ群
G2 第2レンズ群
G3 第3レンズ群
L1 第1レンズ
L2 第2レンズ
L3 第3レンズ
L4 第4レンズ
L5 第5レンズ
L6 第6レンズ
L7 第7レンズ
L8 第8レンズ
L9 第9レンズ
L10 第10レンズ
L11 第11レンズ
L12 第12レンズ
L13 第13レンズ
L14 第14レンズ
L15 第15レンズ
L16 第16レンズ
A 開口絞り
P プリズム
S 原画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7