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特許7304565細菌メタゲノム解析を通した脳腫瘍診断方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】細菌メタゲノム解析を通した脳腫瘍診断方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6886 20180101AFI20230630BHJP
   C12Q 1/689 20180101ALI20230630BHJP
   C12Q 1/686 20180101ALI20230630BHJP
   C12Q 1/6869 20180101ALI20230630BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20230630BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20230630BHJP
【FI】
C12Q1/6886 Z
C12Q1/689 Z ZNA
C12Q1/686 Z
C12Q1/6869 Z
G01N33/53 M
C12N15/11 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022500794
(86)(22)【出願日】2020-06-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-13
(86)【国際出願番号】 KR2020008508
(87)【国際公開番号】W WO2021006523
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-01-19
(31)【優先権主張番号】10-2019-0082317
(32)【優先日】2019-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0057634
(32)【優先日】2020-05-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】516348577
【氏名又は名称】エムディー ヘルスケア インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MD HEALTHCARE INC.
(73)【特許権者】
【識別番号】509329800
【氏名又は名称】ソウル大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】SEOUL NATIONAL UNIVERSITY R&DB FOUNDATION
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ユン-クン
(72)【発明者】
【氏名】ペク、ソン ハ
(72)【発明者】
【氏名】ムン、ヒョ ウン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ヒョン ウ
【審査官】千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】Cell Mol Neurobiol., 2016, Vol. 36, No. 3, pp. 353-360
【文献】TRANSFUSION, 2016, Vol. 56, pp. 1138-1147
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
CAPLUS/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)正常ヒトサンプルから分離した細胞外小胞からDNAを抽出し、被検者サンプルから分離した細胞外小胞からDNAを抽出する、段階;
(b)前記抽出した正常ヒトサンプル由来DNAおよび被検者サンプル由来DNAそれぞれに対して配列番号1および配列番号2のプライマーペアを用いてPCR(polymerase chain reaction)を行う段階;および
(c)前記PCR産物の配列分析を通して正常ヒト由来サンプルの細菌由来細胞外小胞の含有量と、被検者由来サンプルの細菌由来細胞外小胞の含有量を比較する段階
を含み、
前記正常ヒトサンプル及び前記被検者サンプルは、血液または血清であり、
前記正常ヒトサンプル及び前記被検者サンプルが血液である場合、前記段階(c)において、正常ヒト由来サンプルと被検者由来サンプルのラクトバシラス(Lactobacillus)、ロドコッカス(Rhodococcus)、スフィンゴモナス(Sphingomonas)、およびステノトロホモナス(Stenotrophomonas)属(genus)細菌由来細胞外小胞の含有量をそれぞれ比較する段階を含む;または
前記正常ヒトおよび被検者サンプルが血清である場合、前記段階(c)において、正常ヒト由来サンプルと被検者由来サンプルのノエリア(Knoellia)、ステノトロホモナス(Stenotrophomonas)、ラクトコッカス(Lactococcus)、およびツリシバクター(Turicibacter)属(genus)細菌由来細胞外小胞の含有量をそれぞれ比較する段階を含むことを特徴とする、脳腫瘍診断のための情報提供方法
【請求項2】
前記正常ヒトサンプルおよび前記被検者サンプル血液る場合、
前記段階(c)で、正常ヒト由来サンプルと被検者由来サンプルのラクトバシラス(Lactobacillus)、ロドコッカス(Rhodococcus)、スフィンゴモナス(Sphingomonas)、およびステノトロホモナス(Stenotrophomonas)属(genus)細菌由来細胞外小胞の含有量をそれぞれ比較し;
正常ヒト由来サンプルと被検者由来サンプルの
線菌門(Actinobacteria)よびテネリクテス門(Tenericutes)からなる群から選ばれる1種以上の門(phylum)細菌由来細胞外小胞、
線菌綱(Actinobacteria)およびモリクテス綱(Mollicutes)からなる群から選ばれる1種以上の綱(class)細菌由来細胞外小胞、
リシバクテラレス目(Turicibacterales)およびキサントモナス目(Xanthomonadales)からなる群から選ばれる1種以上の目(order)細菌由来細胞外小胞、
ントラスポランギウム科(Intrasporangiaceae)、ラクトバシラス科(Lactobacillaceae)、モギバクテリア科(Mogibacteriaceae)、ツリシバクター科(Turicibacteraceae)、ノカルディア科(Nocardiaceae)、キサントモナス科(Xanthomonadaceae)、ウィクセラセエ(Weeksellaceae)、およびベイヨネラ科(Veillonellaceae)からなる群から選ばれる1種以上の科(family)細菌由来細胞外小胞、または、
ツリシバクター(Turicibacter)、テピディモナス(Tepidimonas)およびクロアシバクテリウム(Cloacibacterium)からなる群から選ばれる1種以上の属(genus)細菌由来細胞外小胞の含有量をそれぞれ比較して、脳腫瘍を判定することを特徴とする、請求項1に記載の脳腫瘍診断のための情報提供方法。
【請求項3】
前記正常ヒトおよび被検者サンプルが血清である場合、
前記段階(c)で、正常ヒト由来サンプルと被検者由来サンプルのノエリア(Knoellia)、ステノトロホモナス(Stenotrophomonas)、ラクトコッカス(Lactococcus)、およびツリシバクター(Turicibacter)属(genus)細菌由来細胞外小胞の含有量をそれぞれ比較し;
正常ヒト由来サンプルと被検者由来サンプルの
フィルミクテス門(Firmicutes)、放線菌門(Actinobacteria)、およびプロテオバクテリア門(Proteobacteria)からなる群から選ばれる1種以上の門(phylum)細菌由来細胞外小胞、
クロストリジウム綱(Clostridia)、バシラス綱(Bacill)、エリュシペロトリクス綱(Erysipelotrichia)、ガンマプロテオバクテリア綱(Gammaproteobacteria)、放線菌綱(Actinobacteria)、アルファプロテオバクテリア綱(Alphaproteobacteria)、およびネガティウィクテス綱(Negativicutes)からなる群から選ばれる1種以上の綱(class)細菌由来細胞外小胞、
クロストリジウム目(Clostridiales)、ビフィドバクテリウム目(Bifidobacteriales)、エリュシペロトリクス目(Erysipelotrichales)、ラクトバシラス目(Lactobacillales)、ミクロコッカス目(Micrococcales)、スフィンゴモナス目(Sphingomonadales)、およびセレノモナス目(Selenomonadales)からなる群から選ばれる1種以上の目(order)細菌由来細胞外小胞、
ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)、ラクトバシラス科(Lactobacillaceae)、ペプトストレプトコッカス科(Peptostreptococcaceae)、エリュシペロトリクス科(Erysipelotrichaceae)、ラクノスピラ科(Lachnospiraceae)、レンサ球菌科(Streptococcaceae)、スフィンゴモナス科(Sphingomonadaceae)、およびポルフィロモナス科(Porphyromonadaceae)からなる群から選ばれる1種以上の科(family)細菌由来細胞外小胞、または
ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)UCG-014、ラクノスピラ科(Lachnospiraceae)NK4A136、ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)UCG-013、ラクトバシラス(Lactobacillus)、ルミニクロストリジウム(Ruminiclostridium)6、ペプトクロストリジウム(Peptoclostridium)、ユウバクテリウム・コプロスタノリゲネス([Eubacterium] coprostanoligenes)、大腸菌-赤痢菌属(Escherichia-Shigella)、ブラウティア(Blautia)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、スフィンゴモナス(Sphingomonas)、ソラナム・メロンゲーナ(Solanum melongena)、パラバクテロイデス(Parabacteroides)、アクチノマイセス(Actinomyces)、ルミニクロストリジウム(Ruminiclostridium)、フィーカリバクテリウム(Faecalibacterium)、ラクノスピラセエ(Lachnospiraceae)(f)、アシネトバクター(Acinetobacter)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、シュードモナス(Pseudomonas)、クレブシエラ(Klebsiella)、ルミノコッカス(Ruminococcus)1、サルモネラ(Salmonella)、クロストリジアレスバディンBB60(Clostridiales vadinBB60)(f)、ルミノコッカセエ(Ruminococcaceae)(f)、ルミノコッカス(Ruminococcus)2、ペプトコッカセエ(Peptococcaceae)(f)、ジアフォロバクター(Diaphorobacter)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)1、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)、およびベイヨネラ(Veillonella)からなる群から選ばれる1種以上の属(genus)細菌由来細胞外小胞の含有量をそれぞれ比較して、脳腫瘍を判定することを特徴とする、請求項1に記載の脳腫瘍診断のための情報提供方法。
【請求項4】
前記血液が、全血、血清、血漿、または血液単核球であることを特徴とする、請求項に記載の脳腫瘍診断のための情報提供方法。
【請求項5】
下記の段階を含む、脳腫瘍発病を予測するための情報提供方法:
(a)正常ヒトサンプルから分離した細胞外小胞からDNAを抽出し、被検者サンプルから分離した細胞外小胞からDNAを抽出する段階;
(b)前記抽出した正常ヒトサンプル由来DNAおよび被検者サンプル由来DNAそれぞれに対して配列番号1および配列番号2のプライマーペアを用いてPCR(polymerase chain reaction)を行う段階;および
(c)前記PCR産物の配列分析を通して正常ヒト由来サンプルの細菌由来細胞外小胞の含有量被検者由来サンプルの細菌由来細胞外小胞の含有量比較する段階を含み、
前記正常ヒトおよび被検者サンプルは、血液または血清であり、
前記正常ヒトおよび被検者サンプルが血液である場合、前記段階(c)で、正常ヒト由来サンプルと被検者由来サンプルのラクトバシラス(Lactobacillus)、ロドコッカス(Rhodococcus)、スフィンゴモナス(Sphingomonas)、およびステノトロホモナス(Stenotrophomonas)属(genus)細菌由来細胞外小胞の含有量をそれぞれ比較する段階を含む;または
前記正常ヒトおよび被検者サンプルが血清である場合、前記段階(c)で、正常ヒト由来サンプルと被検者由来サンプルのノエリア(Knoellia)、ステノトロホモナス(Stenotrophomonas)、ラクトコッカス(Lactococcus)、およびツリシバクター(Turicibacter)属(genus)細菌由来細胞外小胞の含有量をそれぞれ比較する段階を含むことを特徴とする、脳腫瘍の発病を予測するための情報提供方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌メタゲノム解析を通して脳腫瘍を診断する方法に関し、より具体的には、正常ヒトおよび被検者由来サンプルを用いて細菌メタゲノム解析を行って特定細菌由来細胞外小胞の含有量の増減を分析することによって、脳腫瘍を診断する方法などに関する。
【0002】
本出願は、2019年07月08日に出願された韓国特許出願第10-2019-0082317号および2020年05月14日に出願された韓国特許出願第10-2020-0057634号に基づく優先権を主張し、当該出願の明細書および図面に開示されたすべての内容は本出願に援用される。
【背景技術】
【0003】
脳腫瘍(brain tumor)は、脳および中枢神経系で発生する腫瘍であり、「脳癌(brain cancer)」と混用して使用されることがあり、全体的に見るとき、全身で発生する腫瘍のうち4または5番目に多く発生し、特に小児では、全体悪性腫瘍のうち2番目に好発する腫瘍である。脳腫瘍の発生率は、人口10万人当たり約10人であり、原発性脳腫瘍のうちで最も多く発生する神経膠腫は、全体の約35%を占め、悪性が多い。脳腫瘍の原因の一つとして今まで知られた突然変異誘発物質には、放射線、化学物質、ウイルスなどがあり、エイズのように免疫機能が低下する場合にも、脳腫瘍の発生頻度が増加することが知られている。最近、環境汚染などによって化学物質と癌発生間の関連性に対する関心が高まっているが、脳腫瘍の発生間には明確な因果関係が解明されていない。
【0004】
脳腫瘍が臨床症状を起こす機序としては、脳圧の上昇による症状、脳腫瘍が周囲の脳を圧迫することによって発生する症状、脳腫瘍が周囲脳神経を電気的に刺激することによって発生する症状(てんかん発作)、ホルモン異常による症状が含まれる。積極的な治療を受けない場合は、悪性、陽性脳腫瘍の両方とも致命的な結果を招くことになる。
【0005】
従来の脳腫瘍患者の予後を判別する方法としては、臨床治療の経過、放射線療法および化学療法の経過を総合し、脳腫瘍の悪性度と位置、年齢などを考慮して再発の可能性をはじめとする生存予後を決定することが一般的な方法であったが、これは、患者の類型ごとに多様な差異が存在し、臨床的治療に対する結果も変わるので、正確な予後予測方法といえない。したがって、脳腫瘍を診断し、予後を予測できる新しい診断および治療標的としてのバイオマーカー開発の必要性が台頭している。
【0006】
なお、微生物叢(microbiotaあるいはmicrobiome)は、与えられた生息域に存在する細菌(bacteria)、古細菌(archaea)、真核生物(eukarya)を含む微生物群集(microbial community)を言い、腸内微生物叢は、ヒトの生理現象に重要な役割をし、人体細胞と相互作用を通じてヒトの健康と病気に大きい影響を及ぼすことが知られている。人体に共生する細菌は、他の細胞への遺伝子、タンパク質などの情報を交換するために、ナノメートルサイズの小胞(vesicle)を分泌する。粘膜は、200ナノメートル(nm)サイズ以上の粒子は通過できない物理的な防御膜を形成し、粘膜に共生する細菌である場合には粘膜を通過しないが、細菌由来小胞は、サイズがたいてい100ナノメートルサイズ以下であるから、比較的自由に粘膜を通過して人体に吸収される。
【0007】
環境ゲノミクスとも呼ばれるメタゲノミクスは、環境で採取したサンプルから得られたメタゲノム資料に対する分析学と言える。最近、16sリボソームRNA(16s rRNA)塩基配列を基盤とする方法によりヒトの微生物叢の細菌構成をリスト化することが可能になり、16sリボソームRNAの遺伝子である16s rDNA塩基配列を次世代シーケンシング(next generation sequencing,NGS)プラットホームを用いて分析する。しかしながら、脳腫瘍の発病において、血液などの人体由来物から細菌由来小胞に存在するメタゲノム解析を通して脳腫瘍の原因因子を同定し、脳腫瘍を予測する方法については報告されたことがない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、脳腫瘍の原因因子および発病危険度をあらかじめ診断するために、正常ヒトおよび被検者由来サンプルである血液に存在する細菌由来細胞外小胞から遺伝子を抽出し、これに対してメタゲノム解析を行い、その結果、脳腫瘍の原因因子として作用できる細菌由来細胞外小胞を同定したところ、これに基づいて本発明を完成した。
【0009】
これより、本発明は、細菌由来細胞外小胞に対するメタゲノム解析を通して脳腫瘍を診断するための情報提供方法、脳腫瘍診断方法、および脳腫瘍発病危険度の予測方法などを提供することを目的とする。
【0010】
しかしながら、本発明が達成しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及されていない他の課題は、下記の記載から当業者が明確に理解できる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記のような本発明の目的を達成するために、本発明は、下記の段階を含む、脳腫瘍診断のための情報提供方法を提供する:
(a)正常ヒトおよび被検者サンプルから分離した細胞外小胞からDNAを抽出する段階;
(b)前記抽出したDNAに対して配列番号1および配列番号2のプライマーペアを用いてPCR(polymerase chain reaction)を行う段階;および
(c)前記PCR産物の配列分析を通して正常ヒト由来サンプルと細菌由来細胞外小胞の含有量の増減を比較する段階。
【0012】
また、本発明は、下記の段階を含む、脳腫瘍診断方法を提供する:
(a)正常ヒトおよび被検者サンプルから分離した細胞外小胞からDNAを抽出する段階;
(b)前記抽出したDNAに対して配列番号1および配列番号2のプライマーペアを用いてPCRを行う段階;および
(c)前記PCR産物の配列分析を通して正常ヒト由来サンプルと細菌由来細胞外小胞の含有量の増減を比較する段階。
【0013】
また、本発明は、下記の段階を含む、脳腫瘍の発病危険度の予測方法を提供する:
(a)正常ヒトおよび被検者サンプルから分離した細胞外小胞からDNAを抽出する段階;
(b)前記抽出したDNAに対して配列番号1および配列番号2のプライマーペアを用いてPCRを行う段階;および
(c)前記PCR産物の配列分析を通して正常ヒト由来サンプルと細菌由来細胞外小胞の含有量の増減を比較する段階。
【0014】
また、本発明は、下記の段階を含む、脳腫瘍発病を予測するための情報提供方法を提供する:
(a)正常ヒトおよび被検者サンプルから分離した細胞外小胞からDNAを抽出する段階;
(b)前記抽出したDNAに対して配列番号1および配列番号2のプライマーペアを用いてPCR(polymerase chain reaction)を行う段階;および
(c)前記PCR産物の配列分析を通して正常ヒト由来サンプルと細菌由来細胞外小胞の含有量の増減を比較する段階。
【0015】
本発明の一具現例において、前記段階(c)で、放線菌門(Actinobacteria)、プロテオバクテリア門(Proteobacteria)、フィルミクテス門(Firmicutes)、バクテロイデス門(Bacteroidetes)、藍色細菌門(Cyanobacteria)、サッカリバクテリア(Saccharibacteria)、およびテネリクテス門(Tenericutes)からなる群から選ばれる1種以上の門(phylum)細菌由来細胞外小胞の含有量の増減を比較できる。
【0016】
本発明の他の具現例において、前記段階(c)で、クロストリジウム綱(Clostridia)、バシラス綱(Bacilli)、エリュシペロトリクス綱(Erysipelotrichia)、ガンマプロテオバクテリア綱(Gammaproteobacteria)、アルファプロテオバクテリア綱(Alphaproteobacteria)、ネガティウィクテス綱(Negativicutes)、サッカリバクテリア綱(Saccharibacteria(p))、クロロプラスト綱(Chloroplast)、放線菌綱(Actinobacteria)およびモリクテス綱(Mollicutes)からなる群から選ばれる1種以上の綱(class)細菌由来細胞外小胞の含有量の増減を比較できる。
【0017】
本発明のさらに他の具現例において、前記段階(c)で、クロストリジウム目(Clostridiales)、ビフィドバクテリウム目(Bifidobacteriales)、エリュシペロトリクス目(Erysipelotrichales)、ラクトバシラス目(Lactobacillales)、ミクロコッカス目(Micrococcales)、スフィンゴモナス目(Sphingomonadales)、セレノモナス目(Selenomonadales)、クロロプラスト目(Chloroplast(c))、サッカリバクテリア目(Saccharibacteria(p))、ツリシバクテラレス目(Turicibacterales)およびキサントモナス目(Xanthomonadales)からなる群から選ばれる1種以上の目(order)細菌由来細胞外小胞の含有量の増減を比較できる。
【0018】
本発明のさらに他の具現例において、前記段階(c)で、ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)、ペプトストレプトコッカス科(Peptostreptococcaceae)、エリュシペロトリクス科(Erysipelotrichaceae)、ラクノスピラ科(Lachnospiraceae)、レンサ球菌科(Streptococcaceae)、ビフィドバクテリウム科(Bifidobacteriaceae)、スフィンゴモナス科(Sphingomonadaceae)、ポルフィロモナス科(Porphyromonadaceae)、バクテロイデス科(Bacteroidaceae)、バクテロイダレスS24-7(Bacteroidales S24-7)、クロロプラスト科(Chloroplast(c))、プレボテラ科(Prevotellaceae)、サッカリバクテリア科(Saccharibacteria(p))、イントラスポランギウム科(Intrasporangiaceae)、ラクトバシラス科(Lactobacillaceae)、モギバクテリア科(Mogibacteriaceae)、ツリシバクター科(Turicibacteraceae)、ノカルディア科(Nocardiaceae)、キサントモナス科(Xanthomonadaceae)、ウィクセラセエ(Weeksellaceae)、およびベイヨネラ科(Veillonellaceae)からなる群から選ばれる1種以上の科(family)細菌由来細胞外小胞の含有量の増減を比較できる。
【0019】
本発明のさらに他の具現例において、前記段階(c)で、ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)UCG-014、ラクノスピラ科(Lachnospiraceae)NK4A136、ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)UCG-013、ルミニクロストリジウム(Ruminiclostridium)6、ペプトクロストリジウム(Peptoclostridium)、ユウバクテリウム・コプロスタノリゲネス([Eubacterium] coprostanoligenes)、大腸菌-赤痢菌属(Escherichia-Shigella)、ブラウティア(Blautia)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、バクテロイデス(Bacteroides)、エリシペラトクロストリジウム(Erysipelatoclostridium)、バクテロイダレス(Bacteroidales)S24-7、クロロプラスト属(Chloroplast(c))、プレボテラ(Prevotella)9、カンジタダスサカリモナス(Candidatus Saccharimonas)、ステノトロホモナス(Stenotrophomonas)、ラクトバシラス(Lactobacillus)、ツリシバクター(Turicibacter)、テピディモナス(Tepidimonas)、スフィンゴモナス(Sphingomonas)、ロドコッカス(Rhodococcus)、およびクロアシバクテリウム(Cloacibacterium)からなる群から選ばれる1種以上の属(genus)細菌由来細胞外小胞の含有量の増減を比較できる。
【0020】
本発明のさらに他の具現例において、前記段階(c)で、放線菌門(Actinobacteria)、プロテオバクテリア門(Proteobacteria)、フィルミクテス門(Firmicutes)、バクテロイデス門(Bacteroidetes)、藍色細菌門(Cyanobacteria)、サッカリバクテリア(Saccharibacteria)、およびテネリクテス門(Tenericutes)からなる群から選ばれる1種以上の門(phylum)細菌由来細胞外小胞、
クロストリジウム綱(Clostridia)、バシラス綱(Bacilli)、エリュシペロトリクス綱(Erysipelotrichia)、ガンマプロテオバクテリア綱(Gammaproteobacteria)、アルファプロテオバクテリア綱(Alphaproteobacteria)、ネガティウィクテス綱(Negativicutes)、サッカリバクテリア綱(Saccharibacteria(p))、クロロプラスト綱(Chloroplast)、放線菌綱(Actinobacteria)およびモリクテス綱(Mollicutes)からなる群から選ばれる1種以上の綱(class)細菌由来細胞外小胞、
クロストリジウム目(Clostridiales)、ビフィドバクテリウム目(Bifidobacteriales)、エリュシペロトリクス目(Erysipelotrichales)、ラクトバシラス目(Lactobacillales)、ミクロコッカス目(Micrococcales)、スフィンゴモナス目(Sphingomonadales)、セレノモナス目(Selenomonadales)、クロロプラスト目(Chloroplast(c))、サッカリバクテリア目(Saccharibacteria(p))、ツリシバクテラレス目(Turicibacterales)およびキサントモナス目(Xanthomonadales)からなる群から選ばれる1種以上の目(order)細菌由来細胞外小胞、
ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)、ペプトストレプトコッカス科(Peptostreptococcaceae)、エリュシペロトリクス科(Erysipelotrichaceae)、ラクノスピラ科(Lachnospiraceae)、レンサ球菌科(Streptococcaceae)、ビフィドバクテリウム科(Bifidobacteriaceae)、スフィンゴモナス科(Sphingomonadaceae)、ポルフィロモナス科(Porphyromonadaceae)、バクテロイデス科(Bacteroidaceae)、バクテロイダレスS24-7(Bacteroidales S24-7)、クロロプラスト科(Chloroplast(c))、プレボテラ科(Prevotellaceae)、サッカリバクテリア科(Saccharibacteria(p))、イントラスポランギウム科(Intrasporangiaceae)、ラクトバシラス科(Lactobacillaceae)、モギバクテリア科(Mogibacteriaceae)、ツリシバクター科(Turicibacteraceae)、ノカルディア科(Nocardiaceae)、キサントモナス科(Xanthomonadaceae)、ウィクセラセエ(Weeksellaceae)、およびベイヨネラ科(Veillonellaceae)からなる群から選ばれる1種以上の科(family)細菌由来細胞外小胞、または、
ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)UCG-014、ラクノスピラ科(Lachnospiraceae)NK4A136、ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)UCG-013、ルミニクロストリジウム(Ruminiclostridium)6、ペプトクロストリジウム(Peptoclostridium)、ユウバクテリウム・コプロスタノリゲネス([Eubacterium] coprostanoligenes)、大腸菌-赤痢菌属(Escherichia-Shigella)、ブラウティア(Blautia)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、バクテロイデス(Bacteroides)、エリシペラトクロストリジウム(Erysipelatoclostridium)、バクテロイダレス(Bacteroidales)S24-7、クロロプラスト属(Chloroplast(c))、プレボテラ(Prevotella)9、カンジタダスサカリモナス(Candidatus Saccharimonas)、ステノトロホモナス(Stenotrophomonas)、ラクトバシラス(Lactobacillus)、ツリシバクター(Turicibacter)、テピディモナス(Tepidimonas)、スフィンゴモナス(Sphingomonas)、ロドコッカス(Rhodococcus)、およびクロアシバクテリウム(Cloacibacterium)からなる群から選ばれる1種以上の属(genus)細菌由来細胞外小胞の含有量の増減を比較できる。
【0021】
本発明のさらに他の具現例において、前記段階(c)で、正常ヒト由来サンプルと比較して、
テネリクテス門(Tenericutes)の門(phylum)細菌由来細胞外小胞、
モリクテス綱(Mollicutes)の綱(class)細菌由来細胞外小胞、
ツリシバクテラレス目(Turicibacterales)の目(order)細菌由来細胞外小胞、
ラクトバシラス科(Lactobacillaceae)、モギバクテリア科(Mogibacteriaceae)、ツリシバクター科(Turicibacteraceae)、ノカルディア科(Nocardiaceae)、およびウィクセラセエ(Weeksellaceae)からなる群から選ばれる1種以上の科(family)細菌由来細胞外小胞、または、
ラクトバシラス(Lactobacillus)、ツリシバクター(Turicibacter)、テピディモナス(Tepidimonas)、ロドコッカス(Rhodococcus)、およびクロアシバクテリウム(Cloacibacterium)からなる群から選ばれる1種以上の属(genus)細菌由来細胞外小胞の含有量が増加している場合、脳腫瘍と診断できる。
【0022】
本発明のさらに他の具現例において、前記段階(c)で、正常ヒト由来サンプルと比較して、
放線菌門(Actinobacteria)の門(phylum)細菌由来細胞外小胞、
放線菌綱(Actinobacteria)の綱(class)細菌由来細胞外小胞、
キサントモナス目(Xanthomonadales)の目(order)細菌由来細胞外小胞、
イントラスポランギウム科(Intrasporangiaceae)、キサントモナス科(Xanthomonadaceae)、およびベイヨネラ科(Veillonellaceae)からなる群から選ばれる1種以上の科(family)細菌由来細胞外小胞、または、
ステノトロホモナス(Stenotrophomonas)およびスフィンゴモナス(Sphingomonas)からなる群から選ばれる1種以上の属(genus)細菌由来細胞外小胞の含有量が減少している場合、脳腫瘍と診断できる。
【0023】
本発明のさらに他の具現例において、前記段階(c)で、正常ヒト由来サンプルと比較して、
フィルミクテス門(Firmicutes)由来細胞外小胞、
クロストリジウム綱(Clostridia)、バシラス綱(Bacilli)、およびエリュシペロトリクス綱(Erysipelotrichia)からなる群から選ばれる1種以上の綱(class)細菌由来細胞外小胞、
クロストリジウム目(Clostridiales)、ビフィドバクテリウム目(Bifidobacteriales)、およびエリュシペロトリクス目(Erysipelotrichales)からなる群から選ばれる1種以上の目(order)細菌由来細胞外小胞、
ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)、ラクトバシラス科(Lactobacillaceae)、ペプトストレプトコッカス科(Peptostreptococcaceae)、およびエリュシペロトリクス科(Erysipelotrichaceae)からなる群から選ばれる1種以上の科(family)細菌由来細胞外小胞、または、
ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)UCG-014、ラクノスピラ科(Lachnospiraceae)NK4A136、ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)UCG-013、ラクトバシラス(Lactobacillus)、ルミニクロストリジウム(Ruminiclostridium)6、ペプトクロストリジウム(Peptoclostridium)からなる群から選ばれる1種以上の属(genus)細菌由来細胞外小胞の含有量が増加している場合、脳腫瘍と診断できる。
【0024】
本発明のさらに他の具現例において、前記段階(c)で、正常ヒト由来サンプルと比較して、
放線菌門(Actinobacteria)およびプロテオバクテリア門(Proteobacteria)からなる群から選ばれる1種以上の門(phylum)細菌由来細胞外小胞、
ガンマプロテオバクテリア綱(Gammaproteobacteria)、放線菌綱(Actinobacteria)、アルファプロテオバクテリア綱(Alphaproteobacteria)、およびネガティウィクテス綱(Negativicutes)からなる群から選ばれる1種以上の綱(class)細菌由来細胞外小胞、
ラクトバシラス目(Lactobacillales)、ミクロコッカス目(Micrococcales)、スフィンゴモナス目(Sphingomonadales)、およびセレノモナス目(Selenomonadales)からなる群から選ばれる1種以上の目(order)細菌由来細胞外小胞、
ラクノスピラ科(Lachnospiraceae)、レンサ球菌科(Streptococcaceae)、ビフィドバクテリウム科(Bifidobacteriaceae)、スフィンゴモナス科(Sphingomonadaceae)、およびポルフィロモナス科(Porphyromonadaceae)からなる群から選ばれる1種以上の科(family)細菌由来細胞外小胞、または、
ユウバクテリウム・コプロスタノリゲネス([Eubacterium] coprostanoligenes)、大腸菌-赤痢菌属(Escherichia-Shigella)、ブラウティア(Blautia)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、およびスフィンゴモナス(Sphingomonas)からなる群から選ばれる1種以上の属(genus)細菌由来細胞外小胞の含有量が減少している場合、脳腫瘍と診断できる。
【0025】
本発明のさらに他の具現例において、前記段階(c)で、正常ヒト由来サンプルと比較して、
放線菌門(Actinobacteria)、プロテオバクテリア門(Proteobacteria)、フィルミクテス門(Firmicutes)、およびバクテロイデス門(Bacteroidetes)からなる群から選ばれる1種以上の門(phylum)細菌由来細胞外小胞、
エリュシペロトリクス綱(Erysipelotrichia)細菌由来細胞外小胞、
エリュシペロトリクス目(Erysipelotrichales)細菌由来細胞外小胞、
エリュシペロトリクス科(Erysipelotrichaceae)およびバクテロイデス科(Bacteroidaceae)からなる群から選ばれる1種以上の科(family)細菌由来細胞外小胞、または、
バクテロイデス(Bacteroides)およびエリシペラトクロストリジウム(Erysipelatoclostridium)からなる群から選ばれる1種以上の属(genus)細菌由来細胞外小胞の含有量が増加している場合、脳腫瘍と診断できる。
【0026】
本発明のさらに他の具現例において、前記段階(c)で、正常ヒト由来サンプルと比較して、
藍色細菌門(Cyanobacteria)およびサッカリバクテリア(Saccharibacteria)からなる群から選ばれる1種以上の門(phylum)細菌由来細胞外小胞、
クロストリジウム綱(Clostridia)、サッカリバクテリア綱(Saccharibacteria(p))、およびクロロプラスト綱(Chloroplast)からなる群から選ばれる1種以上の綱(class)細菌由来細胞外小胞、
クロストリジウム目(Clostridiales)、クロロプラスト目(Chloroplast(c))、およびサッカリバクテリア目(Saccharibacteria(p))からなる群から選ばれる1種以上の目(order)細菌由来細胞外小胞、
ルミノコッカス科(Ruminococcaceae)、バクテロイダレスS24-7(Bacteroidales S24-7)、クロロプラスト科(Chloroplast(c))、プレボテラ科(Prevotellaceae)、およびサッカリバクテリア科(Saccharibacteria(p))からなる群から選ばれる1種以上の科(family)細菌由来細胞外小胞、または、
バクテロイダレス(Bacteroidales)S24-7、クロロプラスト属(Chloroplast(c))、ラクノスピラ科(Lachnospiraceae)NK4A136、プレボテラ(Prevotella)9、およびカンジタダスサカリモナス(Candidatus Saccharimonas)からなる群から選ばれる1種以上の属(genus)細菌由来細胞外小胞の含有量が減少している場合、脳腫瘍と診断できる。
【0027】
本発明のさらに他の具現例において、前記正常ヒトおよび被検者サンプルは、血液または組織でありうる。
【0028】
本発明のさらに他の具現例において、前記血液は、全血、血清、血漿、または血液単核球でありうる。
【0029】
本発明のさらに他の具現例において、前記組織は、脳組織でありうる。
【発明の効果】
【0030】
環境に存在する細菌から分泌される細胞外小胞は、体内に吸収されて炎症の発生に直接的な影響を及ぼすことができ、脳腫瘍は、症状が現れる前に早期診断が難しいため、効率的な治療が難しいというのが実情である。これより、本発明による人体由来サンプルを用いた細菌由来細胞外小胞のメタゲノム解析を通して脳腫瘍発病の危険度をあらかじめ診断することによって、脳腫瘍の危険群を早期に診断および予測可能であり、また、適切な管理により発病時期を遅らせたり発病を予防することができる。これに加えて、発病後にも早期診断できるので、脳腫瘍の発病率を低減し、治療効果を高めることができるだけでなく、脳腫瘍と診断を受けた患者においてメタゲノム解析を通して原因因子の露出を避けることによって、病気の経過を良くしたり、再発を防ぐことができるという長所がある。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1aおよび図1bは、属(genus)レベルでBray-Curtis類似度を基礎としてPCoAを使って健康な対照群グループ(HC)および脳腫瘍患者(BT)において血清EVマイクロバイオームの(a)アルファ多様性(Chao1、ShannonおよびSimpson指数)および(b)ベータ多様性を示す図である。
図2図2a~図2dは、門(phylum)および属(genus)レベルで血清において健康な対照群グループ(HC)および脳腫瘍患者(BT)間のマイクロバイオームの豊富度の差異を示す図である。(a)は、血清微生物EVの門レベルにおける豊富度ヒートマップ、(b)は、血清微生物EVの属レベルにおける豊富度ヒートマップを示す図であり、(c)は、t-検定による主な微生物EVを門レベルで示し、(d)は、属レベルで示す図である。
図3図3aおよび図3bは、LEFSe解析を通して決定された有意に異なる微生物EVを門レベル(a)および属レベル(b)で示す図である。
図4図4a~図4cは、血清において(a)綱(class)、(b)目(order)、(c)科(family)レベルにおけるマイクロバイオームの豊富度を示す図である。
図5図5aおよび図5bは、属レベルで血清EVマイクロバイオームに基づく脳腫瘍診断モデルを示す図である。(a)は、M1(赤色)、M2(青色)、M3(緑色)、M4(黄色)に対するROC曲線を示す図であり、(b)は、M5に対するROC曲線を示す図である。
図6図6a~図6eは、門および属レベルで脳組織における健康な対照群グループ(HC)と脳腫瘍患者(BT)間のマイクロバイオームの豊富度の差異を示す図であり、(a)および(b)は、それぞれ門および属レベルで脳組織の核心微生物EV分類群のヒートマップ、(c)および(d)は、それぞれ門および属レベルでt-検定による主な微生物EV、(e)は、LEfSe解析を通して決定された有意に異なる微生物EVバイオマーカーを属レベルで示す図である。
図7図7a~図7cは、脳組織で(a)綱(class)、(b)目(order)、(c)科(family)レベルでのマイクロバイオームの豊富度を示す図である。
図8図8a~図8dは、(a)門、(b)綱、(c)目、(d)科レベルで血清および組織の健康な対照群グループ(HC)と脳腫瘍患者(BT)間のFold-changeを示す図である。赤色は、血清内臨床グループ間に有意に異なる微生物EVの属を示す図であり、緑色は、脳組織内臨床グループ間に有意に異なる微生物EVの属を示す図であり、青色は、血清および組織サンプル皆で有意差を有する微生物EVの属を示す図である。
図9図9は、属レベルで血清および組織の健康な対照群グループ(HC)と脳腫瘍患者(BT)間のFold-changeを示す図である。赤色は、血清内臨床グループ間に有意に異なる微生物EVの属を示す図であり、緑色は、脳組織内臨床グループ間に有意に異なる微生物EVの属を示す図であり、青色は、血清および組織サンプルの両方で有意差を有する微生物EVの属を示す図である。
図10図10は、脳腫瘍患者および正常ヒト血液から細菌由来小胞を分離した後、メタゲノム解析を行って門(phylum)レベルで診断的性能が有意な細菌由来小胞(EVs)の分布を示す結果である。
図11図11は、脳腫瘍患者および正常ヒト血液から細菌由来小胞を分離した後、メタゲノム解析を行って綱(class)レベルで診断的性能が有意な細菌由来小胞(EVs)の分布を示す結果である。
図12図12は、脳腫瘍患者および正常ヒト血液から細菌由来小胞を分離した後、メタゲノム解析を行って目(order)レベルで診断的性能が有意な細菌由来小胞(EVs)の分布を示す結果である。
図13図13は、脳腫瘍患者および正常ヒト血液から細菌由来小胞を分離した後、メタゲノム解析を行って科(family)レベルで診断的性能が有意な細菌由来小胞(EVs)の分布を示す結果である。
図14図14は、脳腫瘍患者および正常ヒト血液から細菌由来小胞を分離した後、メタゲノム解析を行って属(genus)レベルで診断的性能が有意な細菌由来小胞(EVs)の分布を示す結果である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
[発明を実施するための最良の形態]
本発明は、細菌メタゲノム解析を通して脳腫瘍を診断する方法に関し、本発明者らは、正常ヒトおよび被検者由来サンプルを用いて細菌由来細胞外小胞から遺伝子を抽出し、これに対してメタゲノム解析を行い、脳腫瘍の原因因子として作用できる細菌由来細胞外小胞を同定した。
【0033】
これより、本発明は、(a)正常ヒトおよび被検者サンプルから分離した細胞外小胞からDNAを抽出する段階;
(b)前記抽出したDNAに対して配列番号1および配列番号2のプライマーペアを用いてPCRを行う段階;および
(c)前記PCR産物の配列分析を通して正常ヒト由来サンプルと細菌由来細胞外小胞の含有量の増減を比較する段階を含む脳腫瘍を診断するための情報提供方法を提供する。
【0034】
本発明において使用される用語「脳腫瘍診断」とは、患者に対して脳腫瘍が発病する可能性があるか、脳腫瘍が発病する可能性が相対的に高いか、または脳腫瘍がすでに発病したか否かを判別することを意味する。本発明の方法は、任意の特定患者に対する脳腫瘍の発病危険度が高い患者にとって特別かつ適切な管理を通じて発病時期を遅らせたり発病しないようにするのに使用できる。また、本発明の方法は、脳腫瘍を早期に診断して、最も適切な治療方式を選択することによって、治療を決定するために臨床的に使用できる。
【0035】
本発明において使用される用語「メタゲノム(metagenome)」とは、「群集遺伝体」とも言い、土、動物の腸など孤立した地域内のすべてのウイルス、細菌、カビなどを含む遺伝体の総和を意味するものであって、主に培養にならない微生物を分析するために、シーケンサーを使用して一度に多くの微生物を同定することを説明する遺伝体の概念に使用される。特に、メタゲノムは、一種のゲノムまたは遺伝体をいうものではなく、一つの環境単位のすべての種の遺伝体であって、一種の混合遺伝体をいう。これは、オミックス的に生物学が発展する過程で一種を定義するとき、機能的に既存の一種だけでなく、多様な種が互いに相互作用して完全な種を作るという観点から出た用語である。技術的には高速シーケンシング法を用いて、種に関係なく、すべてのDNA、RNAを分析して、一つの環境内でのすべての種を同定し、相互作用、代謝作用を解明する技法の対象である。本発明では、好ましくは血清から分離した細菌由来細胞外小胞を用いてメタゲノム解析を実施した。
【0036】
本発明において、前記正常ヒトおよび被検者サンプルは、血液であってもよく、前記血液は、全血、血清、血漿、または血液単核球であってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0037】
本発明において、前記正常ヒトおよび被検者サンプルは、組織であってもよく、前記組織は、脳組織であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0038】
本発明の実施例では、前記細菌由来細胞外小胞に対するメタゲノム解析を実施し、門(phylum)、綱(class)、目(order)、科(family)、および属(genus)レベルでそれぞれ分析して、実際に脳腫瘍発生の原因として作用できる細菌由来小胞を同定した(本発明の表8参照)。
【0039】
より具体的に、本発明の一実施例では、被検者由来血清サンプルに存在する小胞に対して細菌メタゲノムを解析した結果、
門(phylum)レベルで、Firmicutes、Actinobacteria、Proteobacteria、
綱(class)レベルで、Clostridia、Bacilli、Erysipelotrichia、Gammaproteobacteria、Actinobacteria、Alphaproteobacteria、Negativicutes、
目(order)レベルで、Clostridiales、Bifidobacteriales、Erysipelotrichales、Lactobacillales、Micrococcales、Sphingomonadales、Selenomonadales、
科(family)レベルで、Ruminococcaceae、Lactobacillaceae、Peptostreptococcaceae、Erysipelotrichaceae、Lachnospiraceae、Streptococcaceae、Bifidobacteriaceae、Sphingomonadaceae、Porphyromonadaceae、
属(genus)レベルで、Ruminococcaceae UCG-014、Lachnospiraceae NK4A136、Ruminococcaceae UCG-013、Lactobacillus、Ruminiclostridium 6、Peptoclostridium、[Eubacterium] coprostanoligenes、Escherichia-Shigella、Blautia、Bifidobacterium、Streptococcus、Sphingomonas
の細菌由来細胞外小胞の含有量が脳腫瘍患者と正常ヒトとの間に有意差があった(実施例3参照)。
【0040】
より具体的に、本発明の一実施例では、被検者由来脳組織サンプルに存在する小胞に対して細菌メタゲノムを解析した結果、
門(phylum)レベルで、Firmicutes、Bacteroidetes、Actinobacteria、Proteobacteria、Cyanobacteria、Saccharibacteria、
綱(class)レベルで、Erysipelotrichia、Clostridia、Saccharibacteria(p)、Chloroplast、
目(order)レベルで、Erysipelotrichales、Clostridiales、Chloroplast(c)、Saccharibacteria(p)、
科(family)レベルで、Bacteroidaceae、Erysipelotrichaceae、Ruminococcaceae、Bacteroidales S24-7群、Chloroplast(c)、Prevotellaceae、Saccharibacteria(p)、
属(genus)レベルで、Bacteroides、Erysipelatoclostridium、Bacteroidales S24-7群、Chloroplast(c)、Lachnospiraceae NK4A136群、Prevotella 9、Candidatus Saccharimonas
の細菌由来細胞外小胞の含有量が脳腫瘍患者と正常ヒトとの間に有意差があった(実施例5参照)。
【0041】
より具体的に、本発明の一実施例では、被検者由来血液サンプルに存在する小胞に対して細菌メタゲノムを門(phylum)レベルで解析した結果、ActinobacteriaおよびTenericutes門(phylum)細菌由来細胞外小胞の含有量が脳腫瘍患者と正常ヒトとの間に有意差があった(実施例6参照)。
【0042】
より具体的に、本発明の一実施例では、血液サンプルに存在する小胞に対して細菌メタゲノムを綱(class)レベルで解析した結果、ActinobacteriaおよびMollicutes綱(class)細菌由来細胞外小胞の含有量が脳腫瘍患者と正常ヒトとの間に有意差があった(実施例6参照)。
【0043】
より具体的に、本発明の一実施例では、被検者由来血液サンプルに存在する小胞に対して細菌メタゲノムを目(order)レベルで解析した結果、Turicibacterales、Xanthomonadales、およびRF39目(order)細菌由来細胞外小胞の含有量が脳腫瘍患者と正常ヒトとの間に有意差があった(実施例6参照)。
【0044】
より具体的に、本発明の一実施例では、被検者由来血液サンプルに存在する小胞に対して細菌メタゲノムを科(family)レベルで解析した結果、Intrasporangiaceae、Lactobacillaceae、Mogibacteriaceae、Turicibacteraceae、Nocardiaceae、Xanthomonadaceae、Weeksellaceae、およびVeillonellaceae科(family)細菌由来細胞外小胞の含有量が脳腫瘍患者と正常ヒトとの間に有意差があった(実施例6参照)。
【0045】
より具体的に、本発明の一実施例では、被検者由来血液サンプルに存在する小胞に対して細菌メタゲノムを属(genus)レベルで解析した結果、Stenotrophomonas、Lactobacillus、Turicibacter、Tepidimonas、Sphingomonas、Rhodococcus、およびCloacibacterium属(genus)細菌由来細胞外小胞の含有量が脳腫瘍患者と正常ヒトとの間に有意差があった(実施例6参照)。
【0046】
前記実施例の結果を通じて、前記同定された細菌由来細胞外小胞の分布変数が脳腫瘍発生の予測に有用に用いられることを確認した。
【0047】
[発明を実施するための形態]
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示する。しかしながら、下記の実施例は、本発明をより容易に理解するために提供されるものに過ぎず、下記実施例によって本発明の内容が限定されるものではない。
【実施例
【0048】
[実験例1.被験者およびサンプル収集]
ソウル大学校病院と仁済大学校海雲台白病院から合計182人の脳腫瘍(BT,Brain Tumor)患者と125人の健康な対照群(HC,Healthy control)被験者の血清サンプルをそれぞれ収集した。また、ソウル大学校病院から収集した5人のBT患者と5人のHC被験者から組織サンプルを評価した。各BT臨床対象は、治療のために病院を訪問するようにする症状を示した。健康管理対象は、一般的な健康診断を通じて選別された。本発明の実験例は、ソウル大学校病院の臨床試験審査委員会(IRB番号H-1009-025-331)と仁済大学校海雲台白病院(IRB番号1297992-2015-064)により承認された。本発明のすべての方法は、承認された指針に従い行われ、すべての臨床対象から事前同意を得た。
【0049】
収集されたすべてのヒト血清サンプルを血清分離用チューブ(SST)に移した後、4℃で15分間3,000rpmで遠心分離した。すべての脳組織サンプルは、液体窒素で凍結させ、分析のために-80℃に保管した。
【0050】
[実験例2.in vivoマウス研究モデル]
使用されたすべてのマウスは、6週齢の雌C57BL/6マウスであった(Orient Bio Inc、城南、韓国)。マウスは、in vivo研究過程の全般にわたって12時間の昼夜周期で22±2℃および50±5%湿度の標準実験室の条件で収容し、維持した。
【0051】
[実験例3.EV DNA抽出およびシーケンシング]
血清および組織サンプルからEVを抽出するために、10mlチューブに血液を入れ、遠心分離(3,500xg、10min、4℃)を実施して浮遊物を沈めて上澄み液のみを回収した後、新しい10mlチューブに移した。0.22μmフィルターを使って前記回収した上澄み液から細菌および異物を除去した後、セントリプレップチューブ(centrifugal filters 50kD)に移し、1500xg、4℃で15分間遠心分離して、50kDより小さい物質は捨て、10mlまで濃縮させた。再び0.22μmフィルターを使ってバクテリアおよび異物を除去した後、Type 90tiローターで150,000xg、4℃で3時間超高速遠心分離方法を使って上澄み液を捨て、固まったペレット(pellet)を生理食塩水(PBS)で溶かして小胞を得た。
【0052】
前記方法により血液から分離した小胞100μlを100℃でボイルして、内部のDNAを脂質外に出るようにした後、氷に5分間冷ました。次に、残った浮遊物を除去するために、10,000xg、4℃で30分間遠心分離し、上澄み液のみを集めた後、Nanodropを用いてDNA量を定量した。以後、前記抽出されたDNAに細菌由来DNAが存在するかを確認するために、下記表1に示した16s rDNAプライマーでPCRを行うことによって、前記抽出された遺伝子に細菌由来遺伝子が存在することを確認した。
【0053】
【表1】
【0054】
[実験例4.微生物EV組成物のメタゲノム解析]
前記実験例3の方法で遺伝子を抽出した後、前記表1に示した16S rDNAプライマーを使ってPCRを実施して遺伝子を増幅させ、シーケンシング(Illumina MiSeq sequencer)を行った。分類(Taxonomic assignment)は、プロファイリングプログラムMDx-Pro ver.2(MD Healthcare,Korea)で行った。paired-endリードをバーコードによってフィルタリングし、プライマー配列をCutadapt(バージョン1.1.6)を使ってトリミングした後、CASPERと併合した。高品質シーケンシングリードを収得するために、350bp未満または550bp超過のリード、および20未満のPhred品質スコアを有する配列を除外した。VSEARCH de novoクラスタリング方法を使って97%類似度臨界値を基準として、OTU(Operational Taxonomic Unit)を属レベルに分類した。一つのサンプルにのみ1個の配列を含むOTUは、追加分析から除外された。引き続いて、基本パラメーターの下でSilva 132 databaseに対してUCLUSTおよびQIIME 1.9.1を使って分類レベル指定を種レベルで行った。データベースの分類学的情報が十分でないため、属レベルで群集を割り当てることができない場合、分類群が次に高いレベルに指定した。分類名の周囲の括弧は、主にゲノムデータベース内の全体ゲノム系統の発生に基づいて確認されなかった、提案された分類(taxonomic assignment)を示す。
【0055】
[実験例5.予測診断モデルの確立]
脳腫瘍(BT,Brain Tumor)予測診断モデルの開発のために、属レベルでOTUの相対存在量をモデル変数と見なした。
【0056】
まず、p値が0.01未満であり、倍数変化が2倍より大きく、平均相対存在量が0.1%より大きい候補菌株を選定した。モデル変数として選定された菌株をAUC(Area Under the Curve)、感度(sensitivity)、特異度(specificity)および正確度(accuracy)が最も高いモデルを決定するために比較した。
【0057】
第一の方法(M1)は、AIC(Akaike information criterion)が変数の異なる予測診断モデルを比較するのに使用される段階的選択(stepwise selection)を使用した。第二の方法(M2)は、段階的選択方法論の他に共変量で年齢と性別を統合した。第三の選択方法(M3)は、菌株マーカーの発見のために線形判別分析(LDA)およびLDA Effect Size(LEfSe)アルゴリズムを使用した。第四の方法(M4)は、LEfSeを使って選択した菌株マーカーを統合すること以外にも、共変量で年齢と性別を含む。また、第五の方法(M5)は、勾配ブースティングマシン(GBM,Gradient Boosting machine)アンサンブル方法に基づくマシンランニングアルゴリズムにより計算された。
【0058】
GBMは、Python(バージョン3.6.9)でscikit-learnのGradient Boosting Regressor(バージョン0.21.3)を使ってモデリングに統合した。変数の選択後、予測診断モデルは、モデル検証のために80:20の割合で設定されたトレーニングおよびテストセットとともにロジスティック回帰を使って計算された。
【0059】
[実験例6.統計分析]
BTと対照群間の有意な年齢の差異は、それぞれ、スチューデントt-検定およびWilcoxonの順位和検定を通じて決定された。コホートの性別に基づくグループ間の統計的差異を決定するために、カイ二乗検定(Chi-square test)を行った。主座標分析(Principal Coordinate Analysis;PCoA)は、Bray-Curtisの非類似度距離によるグループの個別分類レベル群集を決定するために行われた。HCグループとBTグループ間のマイクロバイオーム組成の差異を分析するために、スチューデントt-検定を行った。LEfSeは、統計的および生物学的重要性を有するバイオマーカーの選択のために、臨床グループの間に有意であり、かつ差別化された豊富な属を決定するのに使用された。LEfSeアルゴリズムは、Wilcoxonの順位和検定およびLDA(Linear Discriminate Analysis)を使ってカットオフLDAスコア(log10)を2に設定した。p値が0.05未満(p<0.05)であるとき、有意なものと見なし、すべての分析は、Rバージョン3.6.1を使って行った。
【0060】
[実施例1.臨床的特性]
HC(Healthy control)およびBT(Brain tumor)対象体グループの臨床的特性の評価によって、2つのグループ間に有意差があるものと決定された(p<0.001)。HC被験者は、40歳から78歳の間であり、平均年齢は、59.7(SD 10.5)であり、BT被験者は、16歳から81歳の間であり、平均年齢が51.5(SD 14.2)であった(表2)。
【0061】
【表2】
【0062】
[実施例2.多様性]
BT群では、種の豊富度のChao1指数と細菌群集多様性のシャノン指数が有意に高かったが、BT群と対照群間のシンプソン指数の差異は有意でなかった(図1a)。
【0063】
PCoAを行い、すべてのサンプルをHCとBTグループ間の類似度を評価するために、サンプル間において最も類似していない2つの主要座標(PCo,principal coordinates)に沿ってプロットした。すべての分類群レベルで、2つの群間において有意な群集が観察された(p<0.001)(図1b)。
【0064】
[実施例3.血清内微生物EV豊富およびバイオマーカーの確認]
門(phylum)レベルでFirmicutes豊富度は、患者群より対照群において顕著に低かった反面、ActinobacteriaとProteobacteriaはさらに高かった(図2aおよび図2c)。門レベルのバイオマーカーのLEfSe解析は、Actinobacteria、ProteobacteriaおよびFirmicutesをlog(LDA score)値が4より大きい唯一の門として導き出した(図3a)。
【0065】
綱(class)レベルでClostridia、Bacilli、Erysipelotrichia、Gammaproteobacteria、Actinobacteria、AlphaproteobacteriaおよびNegativicutesが大きく変化した。8個の綱レベルのバイオマーカーは、4.0のlog(LDAスコア)を算出するActinobacteriaを用いて決定され、これらは、対照群において生物学的に有意に高い豊富度を示した(図4a)。
【0066】
目(order)レベルでClostridiales、Bifidobacteriales、Erysipelotrichales、Lactobacillales、Micrococcales、SphingomonadalesおよびSelenomonadalesは、対照群と患者グループの間において大きく変化した。目レベルでLEfSe評価結果、対照群と患者グループの間に13個の分類群が有意に異なることが示され、Clostridialesがlog(LDAスコア)値3.9であって、最も大きく違いが生じることが示された(図4b)。
【0067】
科(family)レベルでRuminococcaceae、Lactobacillaceae、Peptostreptococcaceae、Erysipelotrichaceae、Lachnospiraceae、Streptococcaceae、SphingomonadaceaeおよびPorphyromonadaceaeが大きく変化した。科レベルでLEfSe評価結果、合計21個の分類群が有意に異なることが示され、Ruminococcaceaeがlog(LDAスコア)値が4.0より大きく示された(図4c)。
【0068】
最後に、属(genus)レベルでの解析結果、対照群とBTグループの間において多数の有意差を示す分類群が決定された(図2b)。Ruminococcaceae UCG-014、Lachnospiraceae NK4A136、Ruminococcaceae UCG-013、Lactobacillus、Ruminiclostridium 6およびPeptoclostridiumは、BTグループにおいて対照群と比較して有意に高い反面、[Eubacterium] coprostanoligenes、Escherichia-Shigella、Blautia、Bifidobacterium、Streptococcus、およびSphingomonasは、有意にさらに低いレベルで示された(図2d)。
【0069】
属レベルの血清EVマイクロバイオーム組成物のLEfSe解析は、合計30個の属を算出し、特にRuminococcaceae UCG-014は、4.0を超過することが示された(図3b)。合計4、9、12、18および29 taxaは、すべてのグループにおいて0.5%より高い比率を示し、門、綱、目、科、属でt-検定を使って対照群と患者群の間に有意差を示した(p<0.05)。
【0070】
[実施例4.血清微生物EVメタゲノム基盤脳腫瘍(BT)診断モデルの開発]
対照群およびBTグループの血清微生物EVメタゲノムプロファイルを使って、健康な対象体において脳腫瘍の危険を決定するための診断モデルを開発した。
【0071】
段階的選択およびロジスティック回帰分析に引き続いて、M1およびM2モデルは、12個の重要な微生物EV属として、Stenotrophomonas、Knoellia、Sphingomonas、Solanum melongena、Parabacteroides、Actinomyces、Ruminiclostridium、Lactococcus、Turicibacter、Faecalibacterium、Streptococcus、およびBifidobacteriumを算出した。
【0072】
一方、M3およびM4に対するLEfSe解析により決定されたバイオマーカーを用いたロジスティック回帰分析は、29個の異なる重要な微生物EV属として、Ruminococcaceae UCG-014、Lachnospiraceae NK4A136、Lactobacillus、Lachnospiraceae(f)、Acinetobacter、Staphylococcus、Pseudomonas、Ruminococcaceae UCG-013、Klebsiella、Bifidobacterium、Ruminococcus 1、Streptococcus、Ruminiclostridium 6、Peptoclostridium、Sphingomonas、Clostridiales vadinBB60(f)、Turicibacter、Ruminococcaceae(f)、Ruminococcus 2、Peptococcaceae(f)、Diaphorobacter、Corynebacterium 1、Lactococcus、Propionibacterium、Solanum melongena、Actinomyces、Knoellia、Stenotrophomonas、およびVeillonellaを算出した。
【0073】
M5の場合、分析された総微生物EVメタゲノム情報の相対豊富度を特定バイオマーカーよりは分析のための特徴として入力された。
【0074】
テストセットを使用したモデル性能は、最適なBT診断モデルを決定するために、各方法のAUC、感度、特異度および正確度をベースに評価した。その結果、BT診断モデルは、いずれも、0.93より高いAUCを示した(図5a)。
【0075】
GBM方法に基づくモデルは、それぞれ、1.000、0.936および0.993の値であって、最も高い感度、特異度およびAUCを示した(図5b)。
【0076】
[実施例5.脳組織微生物EVメタゲノム基盤脳腫瘍(BT)診断モデルの開発]
門レベルでFirmicutes、Bacteroidetes、ActinobacteriaおよびProteobacteriaは、すべてのグループにおいて最も豊富な門であり、患者および対照群において組織EV分類群の80%以上を占めた。CyanobacteriaおよびSaccharibacteriaは、対照群が患者群より有意に高かった(図6a、図6c)。
【0077】
綱(class)レベルでErysipelotrichiaは、対照群が患者群より有意に低かった。反面、Clostridia、Saccharibacteria(p)およびChloroplastは、対照群が有意に高かった(図7a)。
【0078】
目(order)レベルでClostridiales、Chloroplast(c)およびSaccharibacteria(p)は、対照群が顕著に豊富な反面、Erysipelotrichalesは、有意に低いことが分かった(図7b)。
【0079】
科(family)レベルでBacteroidaceae、Ruminococcaceae、Bacteroidales S24-7群、Erysipelotrichaceae、Chloroplast(c)、PrevotellaceaeおよびSaccharibacteria(p)が臨床グループ間に大きく変化し、LEfSeを通じて発見されたバイオマーカーには、Bacteroidales S24-7グループ、Ruminococcaceae、Prevotellaceae、BacteroidaceaeおよびErysipelotrichaceaeが含まれた(図7c)。
【0080】
属(genus)レベルでBacteroidesとErysipelatoclostridiumは、BT群に比べて対照群が有意に低い反面、Bacteroidales S24-7群、Chloroplast(c)、Lachnospiraceae NK4A136群、Prevotella 9、Candidatus Saccharimonasは、有意に高かった(図6b、図6d)。属レベルでのLEfSe評価は、重要な脳腫瘍バイオマーカーとしてBacteroidales S24-7群、Lachnospiraceae NK4A136、BacteroidesおよびErysipelatoclostridiumを示した(図6e)。
【0081】
また、対照群と患者間の血清および組織のマイクロバイオーム組成の変更を比較するために、同じ個体から得られた血清および組織の微生物EV組成物の倍数変化を分析した。
【0082】
門(phylum)レベルで、患者のSaccaribacteriaは、血清と組織の両方で有意に減少した(図8a)。
【0083】
綱(class)レベルで、患者のErysipelotrichiaは、血清および組織サンプルの両方で有意に増加した(図8b)。
【0084】
目(order)レベルで、Erysipelotrichialesは、患者血清と組織サンプルの両方で有意に増加した(図8c)。
【0085】
科(family)レベルで、患者の血清と組織においてErysipelotrichialesが有意に高く、Prevotellaceaeが有意に減少した(図8d)。
【0086】
最後に、属レベルで患者の[Eubacterium]rectale(E.rectale)およびDialisterは、血清および組織サンプルの両方で有意に減少した。また、Lachnospiraceae NK4A136は、脳腫瘍患者の組織において有意に低かったが、対照群の組織および血清サンプルと比較して患者の血清においてそれぞれ大きく増加することを確認した(図9)。
【0087】
[実施例6.血液サンプルを用いた脳腫瘍診断モデルの開発]
(実施例6-1.血液から抽出したDNAのメタゲノム解析)
血液に存在する小胞を分離し、DNAを抽出するために、まず、10mlチューブに血液を入れ、遠心分離(3,500xg、10min、4℃)を実施して、浮遊物を沈めて上澄み液のみを回収した後、新しい10mlチューブに移した。0.22μmフィルターを使って前記回収した上澄み液から細菌および異物を除去した後、セントリプレップチューブ(centrifugal filters 50kD)に移し、1500xg、4℃で15分間遠心分離して、50kDより小さい物質は捨て、10mlまで濃縮させた。再び0.22μmフィルターを使ってバクテリアおよび異物を除去した後、Type 90tiローターで150,000xg、4℃で3時間超高速遠心分離方法を使って上澄み液を捨て、固まったペレット(pellet)を生理食塩水(PBS)で溶かして小胞を収得した。
【0088】
前記方法により血液から分離した小胞100μlを100℃で沸かして、内部のDNAを脂質外に出るようにした後、氷に5分間冷ました。次に、残った浮遊物を除去するために、10,000xg、4℃で30分間遠心分離し、上澄み液のみを集めた後、Nanodropを用いてDNA量を定量した。以後、前記抽出されたDNAに細菌由来DNAが存在するかを確認するために、前記表1に示した16s rDNA primerでPCRを行うことによって、前記抽出された遺伝子に細菌由来遺伝子が存在することを確認した。結果をStandard Flowgram Format(SFF)ファイルで出力し、GS FLX software(v2.9)を用いてSFFファイルをsequenceファイル(.fasta)とnucleotide quality scoreファイルに変換した後、リードの信用度評価を確認し、window(20bps)平均base call accuracyが99%未満(Phred score<20)の部分を除去した。質が低い部分を除去した後、リードの長さが300bps以上のものだけを利用し(Sickle version 1.33)、結果分析のために、Operational Taxonomy Unit(OTU)は、UCLUSTとUSEARCHを用いてシーケンス類似度によってクラスタリングを行った。具体的に、属(genus)は94%、科(family)は90%、目(order)は85%、綱(class)は80%、門(phylum)は75%シーケンス類似度を基準としてクラスタリングを行い、各OTUの門、綱、目、科、属レベルの分類を行い、BLASTNとGreenGenesの16S DNAシーケンスデータベース(108,453シーケンス)を用いて97%以上のシーケンス類似度を有するバクテリアを分析した(QIIME)。
【0089】
(実施例6-2.血液から分離した細菌由来小胞メタゲノム解析基盤脳腫瘍の診断モデル)
前記実施例6-1の方法で、脳腫瘍患者170人と年齢と性別をマッチングした正常ヒト200人の血液から小胞を分離した後、メタゲノムシーケンシングを行った。診断モデルの開発は、まず、t検定で2つの群間のp値が0.05以下であり、グループ平均が0.1%以上である菌株を選定した後、ロジスティック回帰分析(logistic regression analysis)方法で診断的性能指標であるAUC(area under curve)、感度、および特異度を算出した。
【0090】
血液内細菌由来小胞を門(phylum)レベルで解析した結果、Actinobacteria、およびTenericutes門細菌バイオマーカーにて診断モデルを開発したとき、脳腫瘍に対する診断的性能が有意に示された(表3および図10参照)。
【0091】
【表3】
【0092】
血液内細菌由来小胞を綱(class)レベルで解析した結果、Actinobacteria、およびMollicutes綱細菌バイオマーカーにて診断モデルを開発したとき、脳腫瘍に対する診断的性能が有意に示された(表4および図11参照)。
【0093】
【表4】
【0094】
血液内細菌由来小胞を目(order)レベルで解析した結果、Turicibacterales、Xanthomonadales、およびRF39目細菌バイオマーカーにて診断モデルを開発したとき、脳腫瘍に対する診断的性能が有意に示された(表5および図12参照)。
【0095】
【表5】
【0096】
血液内細菌由来小胞を科(family)レベルで解析した結果、Intrasporangiaceae、Lactobacillaceae、Mogibacteriaceae、Turicibacteraceae、Nocardiaceae、Xanthomonadaceae、Weeksellaceae、およびVeillonellaceae科細菌バイオマーカーにて診断モデルを開発したとき、脳腫瘍に対する診断的性能が有意に示された(表6および図13参照)。
【0097】
【表6】
【0098】
血液内細菌由来小胞を属(genus)レベルで解析した結果、Stenotrophomonas、Lactobacillus、Turicibacter、Tepidimonas、Sphingomonas、Rhodococcus、およびCloacibacterium属細菌バイオマーカーにて診断モデルを開発したとき、脳腫瘍に対する診断的性能が有意に示された(表7および図14参照)。
【0099】
【表7】
【0100】
下記表8に血清、血液および脳組織サンプルにおける細菌由来小胞の分析結果を簡略に示した。
【0101】
【表8】
【0102】
前述した本発明の説明は、例示のためのものであり、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態に容易に変形が可能であることを理解することができる。したがって、以上で記述した実施例は、すべての面において例示的なものであり、限定的でないものと理解しなければならない。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明による人体由来サンプルを用いた細菌由来細胞外小胞のメタゲノム解析を通して脳腫瘍発病の危険度をあらかじめ診断することによって、脳腫瘍の危険群を早期に診断および予測可能であり、また、適切な管理により発病時期を遅らせたり発病を予防することができる。これに加えて、発病後にも早期診断することができるので、脳腫瘍の発病率を低減し、治療効果を高めることができるだけでなく、脳腫瘍と診断を受けた患者においてメタゲノム解析を通して原因因子の露出を避けることによって、病気の経過を良くしたり、再発を防ぐことができるという長所があるので、産業上の利用可能性がある。
図1a
図1b
図2a
図2b
図2c
図2d
図3a
図3b
図4a
図4b
図4c
図5a
図5b
図6a
図6b
図6c
図6d
図6e
図7a
図7b
図7c
図8a
図8b
図8c
図8d
図9
【図 】
図10
図11
図12
図13
図14
【配列表】
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