(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】後眼部異常の予防及び/又はリスク軽減用食品組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20230630BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20230630BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230630BHJP
A61K 31/20 20060101ALI20230630BHJP
A61K 31/201 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K36/185
A61P27/02
A61K31/20
A61K31/201
(21)【出願番号】P 2020503663
(86)(22)【出願日】2019-03-01
(86)【国際出願番号】 JP2019008236
(87)【国際公開番号】W WO2019168185
(87)【国際公開日】2019-09-06
【審査請求日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】P 2018038001
(32)【優先日】2018-03-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】392036094
【氏名又は名称】株式会社岐阜セラツク製造所
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒瀬 孝弘
(72)【発明者】
【氏名】高井 良宏
(72)【発明者】
【氏名】森 大輔
(72)【発明者】
【氏名】長野 稜太
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101081256(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1843398(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103977157(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101890116(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103083370(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106072584(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第1742736(CN,A)
【文献】BOURAS, K. et al.,Effects of dietary supplementation with sea buckthorn (Hippophae rhamnoides L.) seed oil on an experimental model of hypertensive retinopathy in Wistar Rats,Biomedicine Hub,2017年03月01日,Vol.2,p.1-12,DOI:10.1159/000456704
【文献】WANG,Y. et al.,Protective effect of total flavones from Hippophae rhamnoides L. against visible light-induced retinal degeneration in pigmented rabbits.,Journal of Agricultural and Food Chemistry,2016年,Vol.64, No.1,pp.161-170,DOI:10.1021/acs.jafc.5b04874
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
A61K
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーベリー(Hippophae rhamnoides Leikora)搾汁の油溶性画分を含有し、該シーベリーが、果皮、果肉及び種子を含む果実由来である、後眼部異常の予防及び/又はリスク軽減用食品組成物。
【請求項2】
前記シーベリー(Hippophae rhamnoides Leikora)搾汁の油溶性画分が、少なくともパルミトレイン酸、パルミチン酸、及び、オレイン酸を含有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記パルミトレイン酸、パルミチン酸、及び、オレイン酸の含有比率が、質量比で、1:0.5~2:0.2~2である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記後眼部異常が、網膜、黄斑、強膜、脈絡膜、硝子体、及び視神経からなる群より選択される少なくとも1種に生じる異常又は所見である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
シーベリー搾汁の油溶性画分を、成人1日あたりの摂取量として、0.01~2000mg/kg体重/日となる量で含有する、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、後眼部異常の予防及び/又はリスク軽減用食品組成物、又は後眼部疾患の予防及び/又は治療剤に関する。
【背景技術】
【0002】
眼は構造上、水晶体の裏面を境界として、外側を前眼部、内側を後眼部と呼び、区別されている。前眼部には、角膜、虹彩、水晶体、毛様体、チン小帯などがあり、後眼部には、硝子体、網膜、強膜、脈絡膜、視神経などが存在する。
【0003】
後眼部の異常から生じ得る疾患には、失明にも繋がる重篤な疾患が多く、緑内障、加齢黄斑変性、糖尿病性網膜症等が含まれる。
【0004】
2010年のWHOの統計によると、緑内障は、世界の失明原因の約8%を占めている。また、加齢黄斑変性は世界の失明原因の約5%を占め、糖尿病性網膜症は世界の失明原因の約1%を占めている。
【0005】
様々な眼疾患や眼の異常に対して、植物由来成分の効果が検証されている。例えば、特許文献1では、キサントフィル又はその塩及びヒシ属植物の加工物を含有する組成物が、眼疾患の予防及び/又は治療に対して有効であることが示されている。また、特許文献2では、茶葉抽出物に含まれるデルフィニジン系アントシアニンが、眼精疲労の改善又は予防に対して有効であることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2017-165766号公報
【文献】特開2017-222618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、植物由来成分の後眼部への直接的な影響を検証した情報は少なく、いかなる植物由来成分が、後眼部の異常に有効であるのかは未だ十分に明らかではない。
【0008】
よって、本発明は、後眼部の異常に有効である植物由来成分を含む組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、シーベリー(Hippophae rhamnoides)の油溶性画分を含有する組成物が後眼部異常を効果的に予防及び/又はリスク軽減できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下のものを提供する。
項1.
シーベリー(Hippophae rhamnoides)の油溶性画分を含有する、後眼部異常の予防及び/又はリスク軽減用食品組成物。
項2.
前記シーベリーが、果皮、果肉及び種子を含む果実由来である、項1に記載の組成物。
項3.
前記シーベリーが、Hippophae rhamnoides Leikora、及び、Hippophae rhamnoides Habegoからなる群より選択される少なくとも1種である、項1又は2に記載の組成物。
項4.
前記後眼部異常が、網膜、黄斑、強膜、脈絡膜、硝子体、及び視神経からなる群より選択される少なくとも1種に生じる異常又は所見である、項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
項5.
シーベリーの油溶性画分を、成人1日あたりの摂取量として、0.01~2000mg/kg体重/日となる量で含有する、項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
項6.
シーベリー(Hippophae rhamnoides)の油溶性画分を有効成分として含有する、後眼部疾患の予防及び/又は治療剤。
項7.
前記後眼部疾患が、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、網膜色素変性症、増殖性硝子体網膜症、網膜動脈閉塞症、網膜静脈閉塞症、ぶどう膜炎、レーベル病、未熟児網膜症、網膜剥離、網膜色素上皮剥離、中心性漿液性脈絡網膜症、中心性滲出性脈絡網膜症、ポリープ状脈絡膜血管症、多発性脈絡膜炎、新生血管黄斑症、網膜動脈瘤、網膜血管腫状増殖、これらの疾患に起因する視神経障害、緑内障に起因する視神経障害および虚血性視神経障害からなる群より選択される少なくとも1種である、項6に記載の後眼部疾患の予防及び/又は治療剤。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、後眼部異常を効果的に予防及び/又はリスク軽減できる食品組成物、及び後眼部疾患の効果的な予防及び/又は治療剤を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】シーベリーの水溶性画分(比較例)を摂取した網膜光障害モデル動物における網膜電図による評価結果を示すグラフである。
【
図2】シーベリーの水溶性画分(比較例)を摂取した網膜光障害モデル動物における光干渉断層計による評価結果を示すグラフである。
【
図3】シーベリーの油溶性画分(実施例)を摂取した網膜光障害モデル動物における網膜電図による評価結果を示すグラフである。
【
図4】シーベリーの油溶性画分(実施例)を摂取した網膜光障害モデル動物における光干渉断層計による評価結果を示すグラフである。
【
図5】シーベリーの油溶性画分(実施例)を摂取した網膜光障害モデル動物における網膜電図による評価結果を示すグラフである。
【
図6】シーベリーの油溶性画分(実施例)を摂取した網膜光障害モデル動物における網膜電図による評価結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[後眼部異常の予防及び/又はリスク軽減用食品組成物]
本発明の後眼部異常の予防及び/又はリスク軽減用食品組成物は、
シーベリー(Hippophae rhamnoides)の油溶性画分を含有する。
【0014】
シーベリーは、グミ科ヒッポファエ属の落葉低木の総称であり、主にユーラシア大陸の中・北部(中国、ロシア、モンゴル、フィンランド、ノルウェー、スウェーデン、フランス等)に広く野生している。シーベリーは、これらの国において、栄養源や医薬の成分として用いられてきた。シーベリーの採取地又は産地は、特に限定されないが、ヨーロッパ産(フィンランド、ノルウェー、スウェーデン又はフランス)、中国産、日本産が好ましい。シーベリーは、市販品を用いることも可能である。
【0015】
シーベリーの品種は、本発明の効果を奏する限り限定されないが、例えば、Hippophae rhamnoides Leikora、及び、Hippophae rhamnoides Habegoからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、Hippophae rhamnoides Leikoraがより好ましい。
【0016】
本発明では、シーベリーの油溶性画分(シーベリーオイルとも言う)を、機能性を有する成分(有効成分)として用いる。
【0017】
シーベリーの油溶性画分の調製に使用されるシーベリーの植物部位は、本発明の効果を奏する限り特に限定されず、果実、果皮、果肉、種子、葉、茎、根等の種々の部位が挙げられる。本発明の効果を顕著に奏する観点から、使用されるシーベリーの植物部位は、果皮、果肉又は種子を含むことが好ましく、果皮、果肉及び種子を含む果実であることがより好ましい。シーベリーの植物部位は、採取されたそのままの状態でもよく、乾燥された状態でもよく、乾燥後に破砕又は粉砕されたものでもよい。
【0018】
シーベリーの油溶性画分を得るための方法は、公知の方法を利用することが可能であり、特に限定されない。例えば、シーベリー搾汁から油溶性画分を得る方法がある。シーベリー搾汁は、シーベリー果実を果皮、果肉及び種子を含んだまま圧搾することにより得ることが可能である。また、シーベリー搾汁は、加水または非加水により、常温にて又は凍結して、シーベリー果実を果皮、果肉及び種子を含んだまま粉砕することにより、シーベリー搾汁を得ることができる。シーベリー搾汁は、市販品を用いることも可能である。
【0019】
シーベリー搾汁を得た後、静置することで、シーベリーに本来的に含まれていた油溶性成分が水溶性成分と分離する。シーベリー搾汁の分離後の油層を用いることにより、シーベリーの油溶性画分を得ることが可能である。
【0020】
静置する条件は、温度条件やpH等により変動するが、20℃前後の室温であれば、少なくとも1時間以上、好ましくは3時間以上の静置により、油溶性画分と水溶性画分とを分離することができる。
【0021】
シーベリー搾汁における油溶性画分と水溶性画分との分離は、遠心分離により簡便に行うことも可能である。
【0022】
油溶性画分と水溶性画分との分離後は、デカンテーションや吸入等の公知の方法により、油溶性画分のみを単離することができる。
【0023】
その他、シーベリーの油溶性画分を得るための方法としては、シーベリー搾汁を得たのち、ノルマルヘキサン、ノルマルペンタン又はノルマルヘプタンを用いて液液抽出を行い、油溶性画分を得ることも可能である。
【0024】
その他、乾燥されたシーベリー又は粉砕されたシーベリーに対して、ノルマルヘキサン、ノルマルペンタン又はノルマルヘプタンを用いて固液抽出を行い、油溶性画分を得ることも可能である。
【0025】
その他、シーベリー搾汁、乾燥されたシーベリー又は粉砕されたシーベリーに対して、食用油脂を用いて液液抽出又は固液抽出を行い、油溶性画分を得ることも可能である。
【0026】
このような食用油脂としては、食品分野において通常用いられる油脂であれば、特に限定されず、動植物油であってもよく、合成油であってもよい。食用可能である観点から、紅花油(サフラワー油)、ブドウ種子油、ひまわり油(サンフラワー油)、オリーブ油、コーン油、ゴマ油、大豆油、大豆胚芽油、菜種油、高オレイン酸菜種油、シソ油、亜麻仁油、落花生油、紅花油、綿実油、クルミ油、小麦胚芽油、魚油(EPA・DHA)、パーム油、ヤシ油、カカオ脂などの植物油脂、牛脂、ラード、鶏脂、乳脂、藻類油などの動物油脂のほか、ジグリセリドや中鎖脂肪酸トリグリセリド(MCT)等の合成油や分別油、エステル交換油、水素添加油等が挙げられる。
【0027】
その他、乾燥されたシーベリーを圧搾して油溶性画分を得ることも可能であり、必要に応じて、更にノルマルヘキサン等による抽出を組み合わせて用いることも可能である。
【0028】
上記のシーベリーの油溶性画分を得るための方法のなかでも、本発明の効果を顕著に奏する観点から、シーベリー搾汁を用いる方法が好ましい。
【0029】
シーベリーの油溶性画分は、液状で用いてもよく、スプレードライ法等の公知の方法により微細化することにより、粉末状で用いてもよい。
【0030】
シーベリーの油溶性画分には、多種の脂肪酸が豊富に含まれている。このような脂肪酸としては、パルミトレイン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸、及びステアリン酸が挙げられる。
【0031】
シーベリーの油溶性画分において、パルミトレイン酸の含有量は、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましく、25質量%以上が特に好ましく、30質量%以上が最も好ましい。また、シーベリーの油溶性画分において、パルミトレイン酸の含有量は、60質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましく、45質量%以下が特に好ましく、40質量%以下が最も好ましい。また、シーベリーの油溶性画分において、パルミトレイン酸の含有量は、10~60質量%が好ましく、15~55質量%がより好ましく、20~50質量%が更に好ましく、25~45質量%が特に好ましく、30~40質量%が最も好ましい。
【0032】
シーベリーの油溶性画分において、パルミチン酸の含有量は、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上が更に好ましく、25質量%以上が特に好ましく、30質量%以上が最も好ましい。また、シーベリーの油溶性画分において、パルミチン酸の含有量は、60質量%以下が好ましく、55質量%以下がより好ましく、50質量%以下が更に好ましく、45質量%以下が特に好ましく、40質量%以下が最も好ましい。また、シーベリーの油溶性画分において、パルミチン酸の含有量は、10~60質量%が好ましく、15~55質量%がより好ましく、20~50質量%が更に好ましく、25~45質量%が特に好ましく、30~40質量%が最も好ましい。
【0033】
シーベリーの油溶性画分において、オレイン酸の含有量は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、15質量%以上が更に好ましく、20質量%以上が特に好ましく、25質量%以上が最も好ましい。また、シーベリーの油溶性画分において、オレイン酸の含有量は、55質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましく、45質量%以下が更に好ましく、40質量%以下が特に好ましく、35質量%以下が最も好ましい。また、シーベリーの油溶性画分において、オレイン酸の含有量は、5~55質量%が好ましく、10~50質量%がより好ましく、15~45質量%が更に好ましく、20~40質量%が特に好ましく、25~35質量%が最も好ましい。
【0034】
シーベリーの油溶性画分において、パルミトレイン酸とパルミチン酸とオレイン酸との含有比率は、本発明の効果を奏する限り特に限定されないが、質量比で、例えば、1:0.5~2:0.2~2であることが好ましく、1:0.8~1.5:0.5~1.5であることがより好ましく、1:0.8~1.2:0.5~1.2であることが更に好ましい。
【0035】
シーベリーの油溶性画分には、上記の脂肪酸の他、ビタミンA、ビタミンE、ルテイン、リコピン等が含まれる。
【0036】
本発明の後眼部異常の予防及び/又はリスク軽減用食品組成物には、製剤安定性や後眼部異常の予防及び/又はリスク軽減の観点から、さらに脂溶性抗酸化剤を配合してもよい。脂溶性抗酸化剤としては、特に限定されないが、フラボノイド類、ポリフェノール類などが挙げられる。具体的には、アスタキサンチン、ユビキノン(特にCoQ10)、リグナン(特にセサミン、セサモリンなど)、クルクミン、カプサイシン、ジンゲロール、レスベラトロール、アントシアニン、シアニジン、ビルベリーエキスおよびこれらの類縁体もしくは誘導体が挙げられる。好ましい脂溶性抗酸化剤としては、例えば、ジンゲロール、レスベラトロール、アノントシアニンおよびこれらの類縁体もしくは誘導体が挙げられる。脂溶性抗酸化剤は、単独で使用しても、組み合わせて使用してもよく、さらに、脂溶性酸化作用を有する物質を含有する植物エキスおよびその植物体抽出物であってもよい。
【0037】
脂溶性抗酸化剤の成人1日あたりの摂取量は、例えば、0.01mg~200mgが好ましく、0.1mg~10mgがより好ましく、0.5mg~2mgが更に好ましい。
【0038】
本発明の後眼部異常の予防及び/又はリスク軽減用食品組成物には、製剤安定化の観点から、任意の非イオン性界面活性剤を用いてもよく、例えば、ポリオキシエチレン(以下、POEともいう。)-ポリオキシプロピレン(以下、POPともいう。)ブロックコポリマー(例えば、ポロクサマー407、ポロクサマー235、ポロクサマー188等のポロクサマー);ポロキサミンなどのエチレンジアミンのPOE-POPブロックコポリマー付加物;モノラウリル酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノオレイン酸POE(20)ソルビタン(ポリソルベート80)、POEソルビタンモノステアレート(ポリソルベート60)、POEソルビタントリステアレート(ポリソルベート65)等のPOEソルビタン脂肪酸エステル;モノステアリン酸プロピレングリコールのようなプロピレングリコール脂肪酸エステル類;POE(5)硬化ヒマシ油、POE(10)硬化ヒマシ油、POE(20)硬化ヒマシ油、POE(40)硬化ヒマシ油、POE(50)硬化ヒマシ油、POE(60)硬化ヒマシ油、POE(100)硬化ヒマシ油、POE(3)ヒマシ油、POE(10)ヒマシ油、POE(35)ヒマシ油などのPOEヒマシ油;POE(9)ラウリルエーテルなどのPOEアルキルエーテル;POE(20)POP(4)セチルエーテルなどのPOE・POPアルキルエーテル;POE(10)ノニルフェニルエーテルなどのPOEアルキルフェニルエーテル;ステアリン酸ポリオキシル40などのモノステアリン酸ポリエチレングリコール;モノステアリン酸プロピレングリコールなどのプロピレングリコール脂肪酸エステル;ショ糖脂肪酸エステル;モノステアリン酸グリセリルなどのグリセリン脂肪酸エステル;セスキオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。なお、括弧内の数字はPOP又はPOEの平均付加モル数を示す。限定はされないが、これらの非イオン性界面活性剤のうち、本発明の効果を顕著に奏する観点から、POEヒマシ油、プロピレングリコール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも一種が好ましく、POE硬化ヒマシ油、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノステアリン酸グリセリル、ショ糖脂肪酸エステル、POEソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルからなる群より選択される少なくとも一種がより好ましく、POE(60)硬化ヒマシ油、モノステアリン酸プロピレングリコール、モノステアリン酸グリセリル、ショ糖ステアリン酸エステル、ポリソルベート80、セスキオレイン酸ソルビタンからなる群より選択される少なくとも一種がより好ましく、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、及び/又はポリソルベート80がさらに好ましい。これらの非イオン性界面活性剤は、公知の方法により合成して使用しても、市販品を入手して使用してもよい。非イオン性界面活性剤は単独で又は二種以上組み合わせて使用することができる。
【0039】
本発明において、非イオン性界面活性剤のHLB値は、特に限定されないが、本発明の効果をより顕著に発揮させる観点から、7以上とすることができる。好ましくはHLB10~20、より好ましくはHLB12~19.5、更に好ましくはHLB13~18である。また、本発明で用いられる非イオン性界面活性剤のHLB値は、特に限定されないが、異なる観点から、7未満とすることもでき、この場合は、好ましくはHLB1.5~6.5、より好ましくは2~6.5、更に好ましくは2.5~6である。HLB値とは、非イオン性界面活性剤の性質を評価するために当該分野で一般に用いられている値であり、親水性-親油性バランス(Hydrophile-Lipophile Balance)とも呼ばれる。HLB値は一般に分子全体に占める親水性部分の割合として求められ、HLB値が小さいものは親油性が高く、HLB値が高いものは親水性が高くなる傾向がある。
【0040】
本発明の後眼部異常の予防及び/又はリスク軽減用食品組成物において、非イオン性界面活性剤の含有量は、他の成分の種類や量、及び本発明の組成物の剤形等に応じて適宜設定でき、限定はされないが、本発明の効果をより顕著に発揮させる観点から、非イオン性界面活性剤の総量として、組成物全量を基準として、0.1~80質量%、好ましくは1~60質量%、より好ましくは2~40質量%、特に好ましくは4~20質量%とすることができる。
【0041】
また、本発明の経口組成物におけるシーベリーの油溶性画分と非イオン性界面活性剤との配合比は、他の成分の種類や量、及び本発明の組成物の剤形等に応じて適宜設定できるが、本発明の効果をより顕著に発揮させる観点から、シーベリーの油溶性画分1質量部に対して、非イオン性界面活性剤の総量が、0.001~150質量部、好ましくは、0.003~100質量部、より好ましくは、0.005~60質量部、さらに好ましくは、0.008~20質量部、最も好ましくは、0.01~10質量部とすることができる。
【0042】
[後眼部疾患の予防及び/又は治療剤]
本発明の後眼部疾患の予防及び/又は治療剤は、
シーベリー(Hippophae rhamnoides)の油溶性画分を有効成分として含有する。
シーベリーの油溶性画分の製造方法や、シーベリーの油溶性画分に含まれる成分、その他の配合可能な成分等については、上述の[後眼部異常の予防及び/又はリスク軽減用食品組成物]の項目に準じる。
【0043】
[用途]
本発明の食品組成物は、後眼部異常の予防及び/又はリスク軽減用に用いられる。本明細書において、後眼部とは、眼の水晶体の裏面より内側をいい、網膜、黄斑、強膜、脈絡膜、硝子体、視神経などの部分をいう。後眼部の部位のなかでも、本発明の効果を顕著に奏する観点から網膜を対象とすることが好ましい。
【0044】
本明細書において、後眼部異常とは、後眼部における疾患には該当しないものの、網膜、黄斑、強膜、脈絡膜、硝子体、及び視神経からなる群より選択される少なくとも1種に何らかの異常又は所見が生じている状態をいう。後眼部における異常や(臨床)所見は、限定はされないが、例えば、健康診断、医師による診察、臨床検査等により発見され得る。後眼部の検査としては、例えば、眼底検査、眼圧検査、眼底三次元画像解析(OCT)検査、視野検査、屈折検査、細隙灯顕微鏡検査等が挙げられる。これらの検査のうち、例えば、眼底検査では、後眼部の異常所見を「Scheieの分類」を用いて、高血圧性変化と動脈硬化性変化の観点から評価する。また、眼底検査では、「Scheieの分類」以外に所見として、乳頭陥凹拡大、豹紋状眼底、硬性白斑、ドルーゼン、緑内障の疑い、出血、出血疑、網脈絡膜萎縮、白内障の疑い、交叉現象、白斑、網膜変性、蛇行、黄斑変性の疑い、コーヌス、乳頭部所見等が示される場合がある。
【0045】
本明細書において、後眼部異常の予防、リスク軽減とは、後眼部の異常の発生の防止若しくは遅延、又は、後眼部の異常の発生のリスクを低下させることをいう。
【0046】
別の実施態様において、本発明は、後眼部異常の改善に用いられてもよい。本明細書において、後眼部異常の改善とは、後眼部の異常がある状態の緩和若しくは好転、異常がある状態の悪化の防止若しくは遅延、又は、後眼部の異常がある状態の進行の防止、遅延、若しくは逆転をいう。
【0047】
本発明の後眼部疾患の予防及び/又は治療剤が対象とする後眼部疾患は、限定はされないが、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、網膜色素変性症、増殖性硝子体網膜症、網膜動脈閉塞症、網膜静脈閉塞症、ぶどう膜炎、レーベル病、未熟児網膜症、網膜剥離、網膜色素上皮剥離、中心性漿液性脈絡網膜症、中心性滲出性脈絡網膜症、ポリープ状脈絡膜血管症、多発性脈絡膜炎、新生血管黄斑症、網膜動脈瘤、網膜血管腫状増殖、これらの疾患に起因する視神経障害、緑内障に起因する視神経障害および虚血性視神経障害からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。これらの後眼部疾患のなかでも、本発明の効果を顕著に奏する観点から加齢黄斑変性及び/又は網膜色素変性症を対象とすることが好ましい。
【0048】
本明細書において、後眼部疾患の予防とは、後眼部の疾患若しくは症状の発症の防止若しくは遅延、又は、後眼部の疾患若しくは症状の発症のリスクを低下させることをいう。
【0049】
本明細書において、後眼部疾患の治療とは、後眼部の疾患若しくは症状の緩和若しくは好転、疾患若しくは症状の悪化の防止若しくは遅延、又は、後眼部の疾患若しくは症状の進行の防止、遅延、若しくは逆転をいう。
【0050】
後眼部異常のリスク軽減又は後眼部疾患の予防には、限定はされないが、加齢黄斑変性、糖尿病網膜症、糖尿病黄斑浮腫、網膜色素変性症、増殖性硝子体網膜症、網膜動脈閉塞症、網膜静脈閉塞症、ぶどう膜炎、レーベル病、未熟児網膜症、網膜剥離、網膜色素上皮剥離、中心性漿液性脈絡網膜症、中心性滲出性脈絡網膜症、ポリープ状脈絡膜血管症、多発性脈絡膜炎、新生血管黄斑症、網膜動脈瘤、網膜血管腫状増殖、これらの疾患に起因する視神経障害、緑内障に起因する視神経障害および虚血性視神経障害からなる群より選択される少なくとも1種の発症リスクの低下が含まれる。
【0051】
本発明の後眼部異常の予防及び/又はリスク軽減用食品組成物は、食品、飲料、飼料、ペットフードに添加又はこれらと混合して使用することができる。または、そのままで飲料又は食品として使用することができる。または後眼部異常の予防及び/又はリスク軽減を機能性としてその旨を表示した飲食品、すなわち、健康食品、機能性表示食品、病者用食品及び特定保健用食品などに添加又は配合して使用することができる。
【0052】
健康食品、機能性表示食品、病者用食品及び特定保健用食品は、具体的には、固形製剤(錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、カプセル剤、チュアブル錠など)や液剤(シロップ剤、懸濁剤)、流動食等の各種製剤形態として使用することができる。製剤形態の食品は、公知の医薬製剤と同様に製造することができ、有効成分と、食品として許容できる担体、例えば適当な賦形剤等とを混合した後、慣用の手段を用いて製造することができる。
【0053】
例えば、錠剤であれば、粉末状の活性成分と製薬上許容される担体成分(賦形剤など)とを混合して圧縮成形することにより調製でき、キャンディー(飴)などの製菓錠剤は型に注入する方法で調製してもよい。錠剤には、糖衣コーティングを施し、糖衣錠としてもよい。さらに、錠剤は単層錠であってもよく、二層錠などの積層錠であってもよい。
【0054】
顆粒剤などの粉粒剤は、種々の造粒法(押出造粒法、粉砕造粒法、乾式圧密造粒法、流動層造粒法、転動造粒法、高速攪拌造粒法など)により調製してもよく、錠剤は、上記造粒法、打錠法(湿式打錠法、直接打錠法)などを適当に組み合わせて調製できる。
【0055】
カプセル剤は、慣用の方法により、カプセル(軟質又は硬質カプセル)内に粉粒剤(粉剤、顆粒剤など)を充填することにより調製できる。
【0056】
液剤は、各成分を担体成分である水性媒体(精製水、エタノール含有精製水など)に溶解又は分散させ、必要により濾過又は滅菌処理し、所定の容器に充填し、滅菌処理することにより調製できる。本発明の固形製剤の好ましい剤形は、カプセル剤又は錠剤であり、軟質カプセル(軟カプセル剤、ソフトカプセル)であることがより好ましい。
【0057】
軟カプセル剤は表面が滑らかで飲み込みやすく、使用者に好まれる。一般的な軟カプセル剤の製造方法として、平板式、ロータリー方式、シームレス方式が例示される。
【0058】
ロータリー方式(打ち抜き法)の製造は、シート状カプセル皮膜が、流動する充填内容物を挟み込み、回転する円筒型の金型の穴に沿ってカプセル形状に形成する。一方で、シームレス方式(滴下法)の製造は、同心円の多重ノズルからカプセル皮膜組成物と内容物が同時に吐出され、継ぎ目の無いカプセル形状に形成される。
【0059】
軟カプセル剤の皮膜の基剤は、特に限定はされないが、デンプン、プルラン、セルロース、ポリビニルアルコール、ゼラチン、コハク化ゼラチン等を用いることができ、デンプン、ゼラチン、コハク化ゼラチンが好ましく、ゼラチン、コハク化ゼラチンが更に好ましい。これらは単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0060】
また、スープ類、ジュース類、果汁飲料、牛乳、乳飲料、乳清飲料、乳酸菌飲料、茶飲料、アルコール飲料、コーヒー飲料、炭酸飲料、清涼飲料水、水飲料、ココア飲料、ゼリー状飲料、スポーツ飲料、ダイエット飲料等の液状飲料、プリン、ヨーグルトなどの半固形食品、麺類、菓子類、スプレッド類等として、本発明の後眼部異常の予防及び/又はリスク軽減用食品組成物を製造することができる。
【0061】
食品組成物には、種々の食品添加物を配合してもよい。食品添加物としては、例えば、酸化防止剤、色素、香料、調味料、甘味料、酸味料、pH調整剤、品質安定剤、保存剤等が挙げられる。
【0062】
本発明の後眼部疾患の予防及び/又は治療剤として医薬組成物を調製する場合は、有効成分である、シーベリーの油溶性画分と、好ましくは薬学的に許容される担体を含む製剤として調製する。薬学的に許容される担体とは、一般的に、前記有効成分とは反応しない、不活性の、無毒の、固体若しくは液体の、増量剤、希釈剤又はカプセル化材料等をいい、例えば、水、エタノール、ポリオール類、適切なそれらの混合物、植物性油等の溶媒又は分散媒体等が挙げられる。
【0063】
医薬組成物は、経口により、非経口により、例えば、口腔内に、消化管内に、又は鼻腔内に投与される。経口投与製剤としては、固形製剤(錠剤、顆粒剤、細粒剤、散剤、カプセル剤、チュアブル錠など)や、液剤(シロップ剤、懸濁剤、吸入剤)等が挙げられる。非経口投与製剤としては、点滴剤、点鼻剤及び注射剤等が挙げられる。
【0064】
医薬組成物は、さらに医薬分野において慣用されている添加剤を含んでいてもよい。そのような添加剤には、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、抗酸化剤、着色剤、矯味剤等があり、必要に応じて適宜使用できる。長時間作用できるように徐放化するため、既知の遅延剤等でコーティングすることもできる。医薬組成物は、さらに必要に応じてその他の添加剤や薬剤、例えば制酸剤、胃粘膜保護剤を加えてもよい。
【0065】
医薬組成物は、口腔用組成物、内服組成物などの形態で適用することができる。また医薬組成物を治療的に使用してもよいし、非治療的に使用してもよい。
【0066】
本発明の後眼部異常の予防及び/又はリスク軽減用食品組成物、又は後眼部疾患の予防及び/又は治療剤を含有する組成物におけるシーベリーの油溶性画分の含有量は、適宜決定できる。シーベリーの油溶性画分の含有量は、例えば、組成物全量を基準として、0.01質量%以上が好ましく、0.1質量%以上がより好ましく、1質量%以上が更に好ましく、5質量%以上が特に好ましく、10質量%以上が最も好ましい。シーベリーの油溶性画分の含有量は、例えば、組成物全量を基準として、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下が更に好ましく、50質量%以下が特に好ましく、30質量%以下が最も好ましい。シーベリーの油溶性画分の含有量は、例えば、組成物全量を基準として、0.01~90質量%が好ましく、0.1~80質量%がより好ましく、1~70質量%が更に好ましく、5~50質量%が特に好ましく、10~30質量%が最も好ましい。
【0067】
シーベリーの油溶性画分の成人1日あたりの経口による摂取量又は投与量は、個体の状態、体重、性別、年齢、素材の活性、摂取又は投与経路、摂取又は投与スケジュール、製剤形態又はその他の要因により適宜決定することができる。シーベリーの油溶性画分の成人1日あたりの経口による摂取量又は投与量は、例えば、0.01mg/kg体重/日以上が好ましく、0.1mg/kg体重/日以上がより好ましく、0.5mg/kg体重/日以上が更に好ましく、1mg/kg体重/日以上が特に好ましく、10mg/kg体重/日以上が最も好ましい。シーベリーの油溶性画分の成人1日あたりの経口による摂取量又は投与量は、例えば、2000mg/kg体重/日以下が好ましく、1500mg/kg体重/日以下がより好ましく、1000mg/kg体重/日以下が更に好ましく、800mg/kg体重/日以下が特に好ましく、500mg/kg体重/日以下が最も好ましい。シーベリーの油溶性画分の成人1日あたりの経口による摂取量又は投与量は、例えば、0.01~2000mg/kg体重/日が好ましく、0.1~1500mg/kg体重/日がより好ましく、0.5~1000mg/kg体重/日が更に好ましく、1~800mg/kg体重/日が特に好ましく、10~500mg/kg体重/日が最も好ましい。シーベリーの油溶性画分の含有量は、上記の摂取量又は投与量となる量とすることができる。なお、成人1日あたりの経口による摂取量又は投与量は、剤形に合わせて、例えばカプセル剤であれば、1~6カプセル、1~4カプセル、1~3カプセル、又は1~2カプセルに分けて服用してもよい。
【0068】
シーベリーの油溶性画分の1回あたりの経口による摂取量又は投与量は、個体の状態、体重、性別、年齢、素材の活性、摂取又は投与経路、摂取又は投与スケジュール、製剤形態又はその他の要因により適宜決定することができる。シーベリーの油溶性画分の1回あたりの経口による摂取量又は投与量は、例えば、0.01mg以上が好ましく、0.1mg以上がより好ましく、0.5mg以上が更に好ましく、1mg以上が特に好ましく、10mg以上が最も好ましい。シーベリーの油溶性画分の1回あたりの経口による摂取量又は投与量は、例えば、500mg以下が好ましく、400mg以下がより好ましく、300mg以下が更に好ましく、200mg以下が特に好ましく、100mg以下が最も好ましい。シーベリーの油溶性画分の1回あたりの経口による摂取量又は投与量は、例えば、0.01~500mgが好ましく、0.1~400mgがより好ましく、0.5~300mgが更に好ましく、1~200mgが特に好ましく、10~100mgが最も好ましい。
【0069】
本発明の後眼部異常の予防及び/又はリスク軽減用食品組成物、又は後眼部疾患の予防及び/又は治療剤を含有する組成物におけるパルミトレイン酸の含有量は、適宜決定できる。パルミトレイン酸の含有量は、例えば、組成物全量を基準として、0.001~40質量%が好ましく、0.01~35質量%がより好ましく、0.1~30質量%が更に好ましく、0.5~25質量%が特に好ましく、1~20質量%が最も好ましい。
【0070】
パルミトレイン酸の成人1日あたりの経口による摂取量又は投与量は、個体の状態、体重、性別、年齢、素材の活性、摂取又は投与経路、摂取又は投与スケジュール、製剤形態又はその他の要因により適宜決定することができる。パルミトレイン酸の成人1日あたりの経口による摂取量又は投与量は、例えば、0.001~600mg/kg体重/日が好ましく、0.01~500mg/kg体重/日がより好ましく、0.05~400mg/kg体重/日が更に好ましく、0.1~300mg/kg体重/日が特に好ましく、1~200mg/kg体重/日が最も好ましい。パルミトレイン酸の含有量は、上記の摂取量又は投与量となる量とすることができる。なお、成人1日あたりの経口による摂取量又は投与量は、剤形に合わせて、例えばカプセル剤であれば、1~6カプセル、1~4カプセル、1~3カプセル、又は1~2カプセルに分けて服用してもよい。
【0071】
パルミトレイン酸の1回あたりの経口による摂取量又は投与量は、個体の状態、体重、性別、年齢、素材の活性、摂取又は投与経路、摂取又は投与スケジュール、製剤形態又はその他の要因により適宜決定することができる。パルミトレイン酸の1回あたりの経口による摂取量又は投与量は、例えば、0.01~250mgが好ましく、0.1~200mgがより好ましく、0.5~150mgが更に好ましく、1~100mgが特に好ましく、10~50mgが最も好ましい。
【0072】
本発明の後眼部異常の予防及び/又はリスク軽減用食品組成物、又は後眼部疾患の予防及び/又は治療剤を含有する組成物におけるパルミチン酸の含有量は、適宜決定できる。パルミチン酸の含有量は、例えば、組成物全量を基準として、0.001~40質量%が好ましく、0.01~35質量%がより好ましく、0.1~30質量%が更に好ましく、0.5~25質量%が特に好ましく、1~20質量%が最も好ましい。
【0073】
パルミチン酸の成人1日あたりの経口による摂取量又は投与量は、個体の状態、体重、性別、年齢、素材の活性、摂取又は投与経路、摂取又は投与スケジュール、製剤形態又はその他の要因により適宜決定することができる。パルミチン酸の成人1日あたりの経口による摂取量又は投与量は、例えば、0.001~600mg/kg体重/日が好ましく、0.01~500mg/kg体重/日がより好ましく、0.05~400mg/kg体重/日が更に好ましく、0.1~300mg/kg体重/日が特に好ましく、1~200mg/kg体重/日が最も好ましい。パルミチン酸の含有量は、上記の摂取量又は投与量となる量とすることができる。なお、成人1日あたりの経口による摂取量又は投与量は、剤形に合わせて、例えばカプセル剤であれば、1~6カプセル、1~4カプセル、1~3カプセル、又は1~2カプセルに分けて服用してもよい。
【0074】
パルミチン酸の1回あたりの経口による摂取量又は投与量は、個体の状態、体重、性別、年齢、素材の活性、摂取又は投与経路、摂取又は投与スケジュール、製剤形態又はその他の要因により適宜決定することができる。パルミチン酸の1回あたりの経口による摂取量又は投与量は、例えば、0.01~250mgが好ましく、0.1~200mgがより好ましく、0.5~150mgが更に好ましく、1~100mgが特に好ましく、10~50mgが最も好ましい。
【0075】
本発明の後眼部異常の予防及び/又はリスク軽減用食品組成物、又は後眼部疾患の予防及び/又は治療剤を含有する組成物におけるオレイン酸の含有量は、適宜決定できる。オレイン酸の含有量は、例えば、組成物全量を基準として、0.001~30質量%が好ましく、0.01~25質量%がより好ましく、0.1~20質量%が更に好ましく、0.5~15質量%が特に好ましく、1~10質量%が最も好ましい。
【0076】
オレイン酸の成人1日あたりの経口による摂取量又は投与量は、個体の状態、体重、性別、年齢、素材の活性、摂取又は投与経路、摂取又は投与スケジュール、製剤形態又はその他の要因により適宜決定することができる。オレイン酸の成人1日あたりの経口による摂取量又は投与量は、例えば、0.001~600mg/kg体重/日が好ましく、0.01~500mg/kg体重/日がより好ましく、0.05~400mg/kg体重/日が更に好ましく、0.1~300mg/kg体重/日が特に好ましく、1~200mg/kg体重/日が最も好ましい。オレイン酸の含有量は、上記の摂取量又は投与量となる量とすることができる。なお、成人1日あたりの経口による摂取量又は投与量は、剤形に合わせて、例えばカプセル剤であれば、1~6カプセル、1~4カプセル、1~3カプセル、又は1~2カプセルに分けて服用してもよい。
【0077】
オレイン酸の1回あたりの経口による摂取量又は投与量は、個体の状態、体重、性別、年齢、素材の活性、摂取又は投与経路、摂取又は投与スケジュール、製剤形態又はその他の要因により適宜決定することができる。オレイン酸の1回あたりの経口による摂取量又は投与量は、例えば、0.01~250mgが好ましく、0.1~200mgがより好ましく、0.5~150mgが更に好ましく、1~100mgが特に好ましく、10~50mgが最も好ましい。
【0078】
本発明の後眼部異常の予防及び/又はリスク軽減用食品組成物、又は後眼部疾患の予防及び/又は治療剤を含有する組成物において、パルミトレイン酸とパルミチン酸とオレイン酸との含有比率は、質量比で、特に限定されないが、例えば、1:0.5~2:0.2~2であることが好ましく、1:0.8~1.5:0.5~1.5であることがより好ましく、1:0.8~1.2:0.5~1.2であることが更に好ましい。
【0079】
本発明の後眼部異常の予防及び/又はリスク軽減用食品組成物、又は後眼部疾患の予防及び/又は治療剤は、1日1回~数回に分け、通常、1日1~6回、1日1~3回、1日1~2回又は任意の期間及び間隔で摂取若しくは投与され得る。
【0080】
上記の他、別の実施形態において、本発明は、シーベリー(Hippophae rhamnoides)の油溶性画分の、後眼部異常の予防及び/又はリスク軽減用食品組成物を製造するための使用;
シーベリー(Hippophae rhamnoides)の油溶性画分の、後眼部疾患の予防及び/又は治療剤を製造するための使用;
シーベリー(Hippophae rhamnoides)の油溶性画分を、投与又は接種することを含む、後眼部異常の予防及び/又はリスク軽減方法;
シーベリー(Hippophae rhamnoides)の油溶性画分を、投与又は接種することを含む、後眼部疾患の予防及び/又は治療方法;
後眼部異常の予防及び/又はリスク軽減のための、シーベリー(Hippophae rhamnoides)の油溶性画分;
後眼部疾患の予防及び/又は治療のための、シーベリー(Hippophae rhamnoides)の油溶性画分、を提供することも可能である。
【0081】
上記成分の種類や含有量、他の成分、製剤形態、物性等は、上記の[後眼部異常の予防及び/又はリスク軽減用食品組成物]の項目に準じる。
【実施例】
【0082】
次に、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0083】
[シーベリーの水溶性画分の調製(比較例)]
シーベリー(Sanddorn GbR Herzberg社製、Leikora種)を破砕し搾汁を回収した後、遠心分離により水溶性画分を採取した。これに水およびアラビアゴム(和光純薬工業株式会社製)を加えて懸濁し、水溶性画分が3%または10%、アラビアゴムが5%となるよう薬剤を調製した。
【0084】
[網膜光障害モデル]
代表的な網膜変性モデルとして網膜光障害モデルを作製した。7週齢のSprague-Dawleyラット(日本エスエルシー株式会社製)に対し、7000ルクスの白色光を24時間照射することで障害誘発を行った。
【0085】
[薬剤投与]
光障害の直前および12時間後のラットに対し、上記の比較例にて調製した薬剤を用い、水溶性画分として150mg/kgまたは500mg/kgの1回当たりの投与量で、2回に分けて(1日当たりの投与量として300mg/kgまたは1000mg/kg)経口投与を行った。
【0086】
[網膜電図による評価試験]
光障害終了後、暗順応を約6時間行い、イソフルラン吸入麻酔液「ファイザー」(マイラン製薬製)を用いてラットに麻酔を吸入導入した。麻酔が十分導入されたことを確認し、ベノキシール点眼液0.4%およびミドリンP点眼液(いずれも参天製薬株式会社製)を両眼にそれぞれ1滴ずつ点眼した。赤色灯下で瞳孔が散瞳していることを確認した後、暗順応下でLED発光装置(有限会社メイヨー製)を用いて30cd・s/m^2の刺激光を発光させ、誘発反応記録装置(有限会社メイヨー製)を用いて網膜電図(ERG)を記録した。得られた波形のうち、b波振幅値を求めることで、シーベリーの網膜機能に対する評価を行った。
結果を
図1に示す。
【0087】
図1に示す通り、シーベリーの水溶性画分では、いずれの摂取量においても、後眼部異常のリスクを軽減する効果は認められなかった。
【0088】
[光干渉断層計による評価試験]
光障害終了7日後にミドリンP点眼液(参天製薬株式会社製)を両眼に1滴ずつ点眼した。散瞳したことを確認した後、光干渉断層計(Optical Coherence Tomography,OCT)としてRS-3000 Advance(株式会社ニデック製)のラインモードを用いて視神経乳頭を含む矢状面で網膜断層を撮影した。視細胞の細胞体が存在する網膜外顆粒層(outer nuclear layer,ONL)の厚さを付属のソフトウェアで測定することにより、シーベリーの網膜構造に対する評価を行った。
結果を
図2に示す。
【0089】
図2に示す通り、シーベリーの水溶性画分では、いずれの摂取量においても、後眼部異常のリスクを軽減する効果は認められなかった。
【0090】
[シーベリーの油溶性画分の調製(実施例1)]
シーベリー(Sanddorn GbR Herzberg社製、Leikora種)を破砕し搾汁を回収した後、遠心分離により油溶性画分を採取した。これに水およびアラビアゴム(和光純薬工業株式会社製)を加えて懸濁し、油溶性画分が3%または10%、アラビアゴムが5%となるよう調製した(実施例1)。
【0091】
なお、用いた網膜光障害モデルは、上記比較例における[網膜光障害モデル]の項目と同様である。
【0092】
[薬剤投与]
光障害の直前および12時間後のラットに対し、上記の実施例にて調製した薬剤を用い、油溶性画分として150mg/kgまたは500mg/kgの1回当たりの投与量で、2回に分けて(1日当たりの投与量として300mg/kgまたは1000mg/kg)経口投与を行った。
【0093】
[網膜電図による評価試験]
網膜電図による評価方法は、上記比較例での評価方法と同様である。
結果を
図3に示す。
【0094】
図3に示す通り、シーベリーの油溶性画分では、摂取量依存的に、後眼部異常のリスクを軽減する効果が認められた。
【0095】
[光干渉断層計による評価試験]
光干渉断層計による網膜構造の評価試験方法は、上記比較例での評価方法と同様である。
結果を
図4に示す。
【0096】
図4に示す通り、シーベリーの油溶性画分では、後眼部異常のリスクを軽減する効果が認められた。
【0097】
[シーベリーの油溶性画分の調製(実施例2)]
シーベリー(Sanddorn GbR Herzberg社製、Leikora種)を3ロット(製造日の異なるロットA、ロットB、ロットC)を準備し、それぞれ破砕し搾汁を回収した後、遠心分離により油溶性画分を採取した。これに水およびアラビアゴム(和光純薬工業株式会社製)を加えて懸濁し、油溶性画分が10%、アラビアゴムが5%となるよう調製した(実施例2)。
【0098】
なお、用いた網膜光障害モデルは、上記比較例における[網膜光障害モデル]の項目と同様である。
【0099】
[薬剤投与]
光障害の直前および12時間後のラットに対し、上記の実施例にて調製した薬剤を用い、油溶性画分として500mg/kgの1回当たりの投与量で、2回に分けて(1日当たりの投与量として1000mg/kg)経口投与を行った。
【0100】
[網膜電図による評価試験]
網膜電図による評価方法は、上記比較例での評価方法と同様である。
結果を
図5及び
図6に示す。
【0101】
図5及び
図6に示す通り、シーベリーの油溶性画分では、いずれのロットにおいても、後眼部異常のリスクを軽減する効果が認められた。
【0102】
[シーベリーの油溶性画分中の主要成分の分析]
水酸化トリメチルスルホニウム(TMSH、東京化成工業株式会社製)を用いてメチル化し、ガスクロマトグラフィー(GC、GC-17A、株式会社島津製作所製)を用いてメチルエステルとして分析を行った。ヘプタデカン酸(和光純薬工業株式会社製)を内部標準として用いた。
【0103】
上記シーベリーの油溶性画分(5mg)を、内部標準及び60μLのTMSH(メタノール中0.2mol/L)を含有するメチルtert-ブチルエーテル(TBME、和光純薬工業株式会社製)940μLに溶解させ、ガスクロマトグラフィー法を適用した。
【0104】
ガスクロマトグラフィー法の条件は以下のとおりである。
カラム:CP-Sil88キャピラリーカラム(100m×0.25mm内径×0.2μm膜厚、アジレント・テクノロジー株式会社製)、
ガス:窒素
注入法:スプリット 1:100
注入量:1μL
温度プログラム:80℃(1分)-4℃/分-220℃(5分)-4℃/分-230℃
(19分)
注入器:230℃
検出器:300℃
【0105】
シーベリーの油溶性画分中の主要成分の分析した結果を表1に示す。
【0106】
【0107】
[製造例]
実施例1として調製したシーベリーの油溶性画分を、それぞれ軟カプセル剤皮(ゼラチン剤皮)に常法により充填し、表2に記載の処方により、実施例1-1~1-8の軟カプセル剤を調製した。実施例1-1~1-8の軟カプセル剤を、1日あたり1カプセル乃至6カプセル摂取することができる。
【0108】