(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】飛行体および導通検査方法
(51)【国際特許分類】
B64U 40/20 20230101AFI20230630BHJP
B64C 39/02 20060101ALI20230630BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20230630BHJP
G01R 31/54 20200101ALI20230630BHJP
B64U 101/26 20230101ALN20230630BHJP
【FI】
B64U40/20
B64C39/02
G01M99/00 Z
G01R31/54
B64U101:26
(21)【出願番号】P 2021025960
(22)【出願日】2021-02-22
(62)【分割の表示】P 2020120089の分割
【原出願日】2020-07-13
【審査請求日】2023-02-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520258301
【氏名又は名称】株式会社福島三技協
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】福島 雄一
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特許第6683357(JP,B1)
【文献】特開2020-029256(JP,A)
【文献】特表2017-538611(JP,A)
【文献】特開2017-151018(JP,A)
【文献】特開2017-136914(JP,A)
【文献】特開2016-211878(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0047696(US,A1)
【文献】米国特許第09753461(US,B1)
【文献】中国特許出願公開第110899186(CN,A)
【文献】国際公開第2020/157355(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 39/02
B64U 10/14
B64U 40/20
B64U 101/26
G01M 99/00
G01R 31/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飛行体本体と、
構造物の導体に接触させるための導電性部材と、
前記導電性部材を前記飛行体本体の略鉛直方向上方向における遠位位置と近位位置との間で直線移動可能な移動機構と、
前記導電性部材と前記移動機構とを連結する連結部材と
を備え、
前記連結部材は、
複数の可撓性部材を備え、
前記複数の可撓性部材は、前記略鉛直方向の軸周りに所定の角度の間隔を持って配置され、前記導電性部材の姿勢が任意に変更可能なように前記導電性部材と前記移動機構との間を連結している、飛行体。
【請求項2】
前記連結部材は、2~4個の前記可撓性部材を備える、請求項1に記載の飛行体。
【請求項3】
前記可撓性部材は、バネ部材または弾性を有するワイヤーを含む、請求項1または2に記載の飛行体。
【請求項4】
前記飛行体は、前記導電性部材を回転させる回転機構をさらに備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の飛行体。
【請求項5】
前記導電性部材は、金網、縞鋼板、金たわし、金属ブラシ、導電性ゴム、導電性スポンジ、導電性ワイヤー、導電性グリス又は導電性オイル、およびパンチングボードのうちの少なくとも1つを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の飛行体。
【請求項6】
前記導電性部材は、前記導体に固定するための固定手段を備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の飛行体。
【請求項7】
飛行体を用いて構造物に対する導通検査を実行する方法であって、
前記飛行体は、
飛行体本体と、
前記構造物の導体に接触させるための導電性部材と、
前記導電性部材を前記飛行体本体の略鉛直方向上方向における遠位位置と近位位置との間で移動可能な移動機構と、
前記導電性部材と前記移動機構とを連結する連結部材と
を備え、
前記連結部材は複数の可撓性部材を備え、
前記複数の可撓性部材は、前記略鉛直方向の軸周りに所定の角度の間隔を持って配置され、前記導電性部材の姿勢が任意に変更可能なように前記導電性部材と前記移動機構との間を連結されており、
前記移動機構は、前記導電性部材を前記略鉛直方向上方向に直線移動可能に構成されており、
前記方法は、
前記導電性部材を前記近位位置の状態で、前記飛行体を前記構造物の導体の下方位置に移動させることと、
前記移動機構によって前記導電性部材を略鉛直方向上方向前記遠位位置に直線移動させることにより前記導電性部材を前記構造物の導体に接触させて導通検査を実行することと
を含む方法。
【請求項8】
前記導通検査の実行の後、前記導電性部材を前記飛行体本体に対する前記近位位置に戻すことを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記構造物の導体は、風車翼の先端に設けられたレセプタである、請求項7
または8に記載の方法。
【請求項10】
請求項7~
9のいずれか一項に記載の方法において使用するための飛行体であって、
飛行体本体と、
構造物の導体に接触させるための導電性部材と、
前記導電性部材を前記飛行体本体の略鉛直方向上方向における遠位位置と近位位置との間で移動可能な移動機構と、
前記導電性部材と前記移動機構とを連結する連結部材と
を備え、
前記移動機構は、
前記導電性部材を前記略鉛直方向上方向に直線移動可能に構成されている、飛行体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行体および導通検査方法に関し、特に、構造物の導体に接触させるための導電性部材を備えた飛行体、およびこの飛行体を用いた導通検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、送電線の鉄柱、高層ビル、風車などの翼といった高い構造物には落雷対策が施されている。例えば、風車の翼には、雷撃を受け止めるレセプタ(金属製受雷部)および避雷導線(ダウンコンダクタ)が設けられている。ところで、このような落雷対策が施された建造物では、レセプタおよびダウンコンダクタの導通検査を行う必要がある。
【0003】
例えば、風車の翼では、レセプタとアースとの間がダウンコンダクタを介して電気的接続が確保されていない場合、レセプタへの着雷時にスパークが発生し、風車翼などが損傷を受けるおそれがあることから、レセプタ等(ダウンコンダクタを含む)の導通検査を行う必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来、風車のハブに取り付けられた状態の風車翼に対してレセプタ等の導通検査を行うには、人による高所での作業が必要となり、レセプタ等の導通検査は危険性が高く容易に行うことができなかった。
【0005】
本発明は、構造物の導通検査を安全にかつ簡易に行うことを可能とする飛行体およびこのような飛行体を用いた導通検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の項目を提供する。
【0007】
(項目1)
飛行体本体と、
構造物の導体に接触させるための導電性部材と、
前記導電性部材を前記飛行体本体の遠位位置と近位位置との間で移動可能な移動機構と
を備える、飛行体。
【0008】
(項目2)
前記移動機構は、
前記導電性部材を支持する支持ロッドと、
前記支持ロッドを遠位方向に移動可能なロッド移動手段と
を備える、項目1に記載の飛行体。
【0009】
(項目3)
前記移動機構は、
前記導電性部材を支持する伸縮可能な支持ロッドと、
前記支持ロッドを伸縮させるロッド伸縮手段と
を備える、項目1に記載の飛行体。
【0010】
(項目4)
前記伸縮可能な支持ロッドは、
前記導電性部材に連結された第1ロッドと、
前記第1ロッドを突出および没入可能に収容する第2ロッドと
を少なくとも含む、項目3に記載の飛行体。
【0011】
(項目5)
前記導電性部材と前記支持ロッドとは、前記導電性部材の姿勢が任意に変更可能なように連結部材により連結されている、項目2~4のいずれか一項に記載の飛行体。
【0012】
(項目6)
前記連結部材は、複数の可撓性部材を備え、
前記複数の可撓性部材は、前記支持ロッドの軸周りに所定の角度の間隔を持って配置されている、項目5に記載の飛行体。
【0013】
(項目7)
前記連結部材は、自在継手である、項目5に記載の飛行体。
【0014】
(項目8)
前記飛行体は、前記導電性部材を回転させる回転機構をさらに備える、項目1~7のいずれか一項に記載の飛行体。
【0015】
(項目9)
前記導電性部材は、金網、研磨部材、縞鋼板、金たわし、およびパンチングボードのうちの少なくとも1つを含む、項目1~8のいずれか一項に記載の飛行体。
【0016】
(項目10)
前記支持ロッドまたは前記導電性部材は、さらに前記導電性部材を前記導体に固定するための固定手段を備える、項目2~7のいずれか一項に記載の飛行体。
【0017】
(項目11)
前記移動機構は、前記飛行体本体の略鉛直方向に導電性部材を移動させ、前記遠位位置は、前記近位位置に対して前記略鉛直方向上方向の位置である、項目1~10のいずれか一項に記載の飛行体。
【0018】
(項目12)
項目1~11のいずれか一項に記載の飛行体を用いて前記構造物に対する導通検査を実行する方法であって、
前記導電性部材を前記近位位置の状態で、前記飛行体を前記構造物の導体の下方位置に移動させることと、
前記導電性部材を前記遠位位置に移動させることにより前記導電性部材を前記構造物の導体に接触させて導通検査を実行することと
を含む、方法。
【0019】
(項目13)
さらに、前記導電性部材を前記導体に固定させることと、
前記導電性部材を前記導体に固定した状態で、前記導電性部材と前記支持ロッドとを前記飛行体から切り離して、前記飛行体を前記構造物から離脱させることと、
前記導通検査が終了した時点で前記導電性部材の前記導体への固定を解除し、前記導電性部材と前記支持ロッドとを前記構造物から離脱させることと
を含む、項目12に記載の方法。
【0020】
(項目14)
前記構造物の導体は、風車翼の先端に設けられたレセプタである、項目12または13に記載の方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、構造物の導通検査を安全にかつ簡易に行うことを可能とする飛行体およびこのような飛行体を用いた導通検査方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態1による飛行体100を説明するための斜視図であり、
図1(a)は飛行体100の外観を示し、
図1(b)は飛行体100から導電性部材120を分離した状態を示す。
【
図2】
図2は、
図1に示す飛行体100の移動機構130の具体的な構成を説明するための図であり、
図2(a)は、
図1の飛行体100をA方向から見た側面図であり、
図2(b)は、
図2(a)に示す筐体110bの縦断面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す飛行体100を用いてレセプタ等の通電検査を行う方法を説明するための図であり、
図3(a)は
図1の飛行体100の昇降動作を示し、
図3(b)は
図1の飛行体100の導電性部材120の上方移動の動作を示す。
【
図4】
図4は、実施形態1の変形例1による飛行体101の移動機構131を説明するための図であり、
図4(a)は飛行体101の側面図、
図4(b)は、
図4(a)に示す筐体110bの縦断面図である。
【
図5】
図5は、実施形態1の変形例2による飛行体102の導電性部材120を回転させる回転機構132dを説明するための図であり、
図5(a)は飛行体102の側面図、
図5(b)は、
図5(a)に示す筐体110bの縦断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態2による飛行体200を説明するための斜視図であり、
図6(a)は飛行体200の外観を示し、
図6(b)は飛行体200から導電性部材120を分離して連結部材230cの構造を示す。
【
図7】
図7は、
図6に示す飛行体200の移動機構230の具体的な構成を説明するための図であり、
図7(a)は、
図6の飛行体200をA方向から見た側面図であり、
図7(b)は、
図7(a)に示す筐体110bの縦断面図である。
【
図8A】
図8Aは、本発明の実施形態3による飛行体300を用いてレセプタ等の導通方法を説明するための図であり、
図8A(a)は飛行体300の昇降動作を示し、
図8A(b)は飛行体300の導電性部材120をレセプタに固定する動作を示す。
【
図8B】
図8Bは、本発明の実施形態3による飛行体300を用いてレセプタ等の導通方法を説明するための図であり、
図8B(c)は導電性部材をレセプタに固定したまま、飛行体300を風車翼から離脱させる動作を示し、
図8B(d)は導通検査の後に導電性部材とレセプタとの固定を解除し、導電性部材と支持ロッドとを風車翼から離脱させる動作を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を説明する。本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0024】
本明細書において、「約」とは、後に続く数字の±10%の範囲内をいう。
【0025】
本発明は、構造物の導通検査を安全にかつ簡易に行うことを可能とする飛行体を提供することを課題とし、
飛行体本体と、
構造物の導体に接触させるための導電性部材と、
導電性部材を飛行体本体の遠位位置と近位位置との間で移動可能な移動機構と
を備える、飛行体を提供することにより、上記の課題を解決したものである。
【0026】
すなわち、本発明の飛行体では、構造物の導体に接触させるための導電性部材が、移動機構により飛行体本体の遠位位置と近位位置との間で移動可能となっているので、導電性部材を近位位置の状態で飛行体を構造物の導体の下方位置に移動させ、その後、導電性部材を近位位置から遠位位置まで移動させることにより導電性部材を構造物の導体に接触させて導通検査を行うことが可能となる。
【0027】
このため、飛行体の導電性部材と構造物の導体とは、少なくとも、導電性部材を飛行体本体の近位位置から遠位位置に移動させる動作により接触させることができ、この際に、飛行体本体が構造物に衝突する恐れはほとんどなく、飛行体の導電性部材と構造物の導体との接触を安全かつ簡単に行うことができる。
【0028】
従って、本発明の飛行体は、構造物の導体に接触させるための導電性部材と、導電性部材を飛行体本体の遠位位置と近位位置との間で移動可能な移動機構とを有するものであれば、導電性部材および移動機構の具体的な構成、さらには、飛行体におけるその他の構成は、特に限定されるものではなく、任意であり得る。
【0029】
(飛行体本体)
飛行体本体は任意の形態であり得る。例えば、ヘリコプターであってもよいし、ドローンなどのマルチコプターであってもよい。また、飛行体本体は有人飛行体であってもよいし、無人飛行体であってもよい。好ましい実施形態において、遠隔操作が可能なドローンなどの無人飛行体である。無人飛行体とすることによって、安全に導通検査を行うことが可能となる。
【0030】
(導電性部材)
導電性部材は、構造物の導体に接触させるための導電性を有する部材であれば、その他の構成は任意であり得る。
【0031】
例えば、導電性部材の材質は、導電性のものであれば、金属に限らず、カーボンやプラスチックでもよく、さらに具体的な部材は、金網、縞鋼板、針状金属(金たわしまた金属ブラシ)、導電性ゴム、導電性スポンジ、導電性ワイヤー(電線、導電性繊維、導電性スプリング)、導電性グリス又は導電性オイル、研磨部材、およびパンチングボードのうちの少なくとも1つを含むものである。
【0032】
導電性部材の形状および大きさは、接触させる構造物の導体の大きさや形状に合わせて任意であり得る。例えば、導電性部材の構造物の導体と接触させる面の形状は、略多角形(三角形、四角形、五角形など)であってもよいし、略円形(円形、楕円形など)であってもよい。導電性部材は、構造物の導体への接触面積を増やす点で大きい方が良いが、大きくすると重くなり、また風の影響も受けて飛行が不安定になるので、両者のバランスを考えて設定さえ得る。例えば、構造物の導体が風車翼のレセプタである実施形態において、導電性部材のレセプタに接触させる面の大きさは約70cm2~約2500cm2である。1つの実施形態において、約700cm2(直径約30cm)の略円形状である。しかしながら、本発明はこれに限定されない。
【0033】
また、導電性部材には、構造物の導体に固定するための固定手段を備えていてもよい。固定手段は任意の構成であり得る。固定手段は、例えば、磁力の力で導体に固定させる磁力発生機構であってもよいし、導電性粘着テープなどであってもよいし、エアー吸引手段による吸着固定であってもよい。
【0034】
(移動機構)
移動機構は、導電性部材を飛行体本体の遠位位置と近位位置との間で移動させることが可能であれば、任意の形態であり得る。
【0035】
例えば、移動機構は、導電性部材を支持する支持ロッドと、支持ロッドを遠位方向に移動可能なロッド移動手段とを備えたものでもよいし、あるいは、移動機構は、導電性部材を支持する伸縮可能な支持ロッドと、支持ロッドを伸縮させるロッド伸縮手段とを備えたものであってもよい。ここで、伸縮可能な支持ロッドは、導電性部材に連結された第1ロッドと、第1ロッドを突出および没入可能に収容する第2ロッドとを少なくとも含むものであってもよい。すなわち、移動機構は、第2ロッドに対して第1ロッドが突出することにより支持ロッドが伸長し、第2ロッドに対して第1ロッドが没入することにより支持ロッドが縮小するように構成されていてもよい。移動機構による導電性部材の遠位位置と近位位置との間の移動距離は任意であり得る。例えば、遠位位置と近位位置との移動距離は約30cm~約150cmである。
移動機構による導電性部材の移動方向は、任意の形態であり得る。例えば、導電性部材の移動方向は、例えば、飛行体本体の略鉛直方向であってもよいし、略水平方向であってもよい。好ましくは、移動機構は飛行体本体の略鉛直方向に導電性部材を移動させる。ドローンなどの飛行体は略垂直方向への移動が略水平方向への移動に対して容易に行うことが可能であるため、移動機構が飛行体本体の略鉛直方向に導電性部材を移動可能とした方が簡単に導電性部材を構造物の導体に接触させることができる。また、移動機構が、飛行体本体の略鉛直方向に導電性部材を移動させる場合には、横風などで飛行体本体が略水平方向に揺られても飛行体本体が構造物に衝突することを避けることが可能となる。
【0036】
また、移動機構が、飛行体本体の略鉛直方向に導電性部材を移動させる場合において、遠位位置を近位位置に対して略鉛直方向上方向の位置としてもよいし、略鉛直方向下方向の位置としてもよい。飛行体本体を遠隔操作するなどの場合に、飛行体本体を構造物の導体に接近させる方法としては、飛行体本体を構造物の下方から接近させる方が、操作者が視認しやすくことが容易である。このような場合には、移動機構は、飛行体本体の略鉛直方向に導電性部材を移動させ、遠位位置は、近位位置に対して略鉛直方向上方向の位置とすることが好ましい。しかし、本発明はこれに限定されない。
【0037】
支持ロッドには、さらに、導電性部材を導体に固定するための固定手段を備えていても良い。固定手段は任意の構成であり得る。固定手段は、例えば、リンク機構を備えたクランプであってもよいし、エアー吸引手段による吸着固定であってもよい。
【0038】
また、支持ロッドは、飛行体に対して着脱可能であり得る。また、飛行体に対する着脱は無線または有線の指令信号に基づいて操作可能に構成されている。
【0039】
(その他の構成)
さらに、導電性部材と支持ロッドとの接続構造は任意の形態であり得る。例えば、導電性部材と支持ロッドとの接続は、支持ロッドに対する導電性部材の姿勢(支持ロッドに対する回転方向や回転角度)が固定されるように連結部材により連結されていてもよいし、導電性部材と支持ロッドとは、支持ロッドに対する導電性部材の姿勢(支持ロッドに対する回転方向や回転角度)が任意に変更可能なように連結部材により連結されていてもよい。
【0040】
また、支持ロッドに対する導電性部材の姿勢を任意に変更可能なように連結する連結部材としては、例えば、ボールジョイントやユニバーサルジョイントなどを含む自在継手であってもよいし、複数の可撓性部材を備え、複数の可撓性部材が支持ロッドの軸周りに所定の角度の間隔を持って配置されるものであってもよい。ここで、可撓性部材は、任意の形態であり得る。例えば、板バネやコイルバネなどのバネ部材であってもよいし、弾性を有するワイヤー(金属製、樹脂製など)などであってもよいし、ゴム製の支柱またはエアチューブ、電動又はエアーシリンダ、スポンジであってもよいし、パラレルリンク機構を備える支柱などであってもよい。
【0041】
また、可撓部材の個数は複数であれば任意であり得る。例えば、2個であってもよいし、3個であってもよいし、4個以上であってもよい。可撓性部材の個数を増やすことによって、姿勢の向きを様々な方向に変位可能となる。また、可撓性部材を支持ロッドの軸周りに配置する際の角度の間隔は任意であり得る。好ましい実施形態において、複数の可撓性部材を支持ロッドの軸周りに配置する際の角度は均等である。このようにすることで、支持ロッドに対する導電性部材の姿勢が、どの方向に対しても均等に変位可能となる。1つの実施形態において、可撓性部材は4個であって、支持ロッドの軸周りにそれぞれ約90°の間隔で配置される。しかしながら、本発明はこれに限定されない。隣接する可撓性部材の間の角度がそれぞれ異なる角度で配置されてもよい。好ましい実施形態において、ボールジョイントのように、どの方向への力がかかっても、その方向への回転(変位)が容易に達成させることが可能なものを採用する。
【0042】
さらに、飛行体は、導電性部材を回転させる回転機構を備えていてもよい。
【0043】
ここで、回転機構の具体的構成は任意であり得る。例えば、回転機構は、支持ロッドを内部に回転可能に回転シャフトを収容可能な構造とし、支持ロッドに収容される回転シャフトの一端に導電性部材を支持し、回転シャフトの他端にモータの回転軸を接続したものであってもよいし、支持ロッドを回転させるロッド回転手段であって、支持ロッドを昇降させるロッド移動手段を回転可能に保持し、支持ロッドをロッド移動手段ごと回転させるモータを内蔵したものであってもよいし、支持ロッドと導電性部材とを連結する連結部材に回転機構を設けたものであってもよいし、導電性部材自身に回転機構を備えたものであってもよい。回転した導電性部材を導体(レセプタ)に接触させることにより、導体(レセプタ)の表面に存在する絶縁性の被膜や付着したごみや錆等を除去することが可能となる。導電性部材の回転速度などは、導電性部材の材質や除去する物体の状況により適宜調整され得る。
【0044】
また、本発明は、構造物の導体の導通検査を安全にかつ簡易に行うことを可能とする方法を提供することを課題とし、
上述した飛行体を用いて構造物に対する導通検査を実行する方法であって、
導電性部材を近位位置の状態で、飛行体を構造物の導体の下方位置に移動させることと、
導電性部材を遠位位置に移動させることにより導電性部材を構造物の導体に接触させて導通検査を実行することと
を含む、方法を提供することにより、上記の課題を解決したものである。
【0045】
さらに、本発明では、構造物およびその導体は、特に限定されるものではなく、任意であり得る。例えば、構造物は、送電線の鉄柱、高層ビル、風車などの背の高い構造物であり、構造物の導体は、例えば、送電線の鉄柱の先端や高層ビルの屋上に設けられた避雷針、特に好ましくは、風車の風車翼の先端に設けられたレセプタである。
【0046】
ただし、以下の実施形態1および2では、移動機構として、導電性部材を支持する支持ロッドと、支持ロッドを遠位方向に移動可能なロッド移動手段とを備えたものを挙げる。なお、実施形態1では、支持ロッドに対する導電性部材の姿勢が固定であるものを挙げる。
【0047】
さらに、実施形態1の変形例1では、実施形態1の移動機構に代えて、導電性部材を支持する伸縮可能な支持ロッドと、支持ロッドを伸縮させるロッド伸縮手段とを備えた移動機構を示す。
【0048】
また、実施形態1の変形例2では、飛行体として、実施形態1の構成に加えて、導電性部材を回転させる回転機構を備えたものを挙げる。特に、実施形態1の変形例2では、回転機構として、回転シャフトの一端に導電性部材を支持し、回転シャフトの他端にモータの回転軸を接続したもの挙げる。
【0049】
実施形態2では、支持ロッドに対する導電性部材の姿勢が固定である実施形態1の構成に代えて、支持ロッドに対する導電性部材の姿勢が任意に変更可能な構成を挙げる。特に、実施形態2では、支持ロッドに対して導電性部材をその姿勢が任意に変更可能に連結する連結部材として、複数の可撓性部材を備えたものを挙げる。
【0050】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0051】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1による飛行体100を説明するための斜視図であり、
図1(a)は飛行体100の外観を示し、
図1(b)は飛行体100から導電性部材120を分離した状態を示す。
【0052】
実施形態1の飛行体100は、
図1(a)に示すように、飛行体本体110と、構造物の導体に接触させるための触手である導電性部材120と、導電性部材120を飛行体本体110の遠位位置と近位位置との間で移動可能な移動機構130とを備える。
【0053】
(飛行体本体110)
飛行体本体110は、
図1(b)に示すように、筐体110bと、4つの推力発生部110aと、筐体110bに対して4つの推力発生部110aを支持する4つの支持アーム110dと、筐体110bに取り付けられた脚部110cとを有する機体である。ここで、各推力発生部110aは、プロペラ111と駆動モータ112とを有する。各支持アーム110dの根元部分は筐体110bに固定されている。各支持アーム110dの先端部分にはそれぞれ駆動モータ112が取り付けられ、各駆動モータ112の回転軸にはそれぞれプロペラ111が取り付けられている。
【0054】
また、筐体110bには、コントローラ10aとバッテリ10bとが搭載されている。バッテリ10bは、駆動モータ112を駆動するための電源であり、さらに、移動機構130の駆動部(図示せず)の電源も兼ねている。コントローラ10aは、無線通信部を含み、無縁リモコンからの操作信号を受信して4つの駆動モータ112の回転数を制御することにより飛行体100の飛行制御を行う制御部である。また、この制御部は、移動機構130の駆動部(図示せず)を制御して導電性部材120の移動制御も行うものである。
【0055】
図に示す実施形態においては、推力発生部および支持アームを4つ備えるものとして説示しているが、本発明はこれに限定されない。推力発生部および支持アームの個数は任意であって、例えば、4個以下(例えば、2個など)であってもよいし、5個以上(例えば、8個など)であってもよい。
【0056】
(導電性部材120)
導電性部材120は、測定ケーブル(図示せず)により地上の測定装置に電気的に接続されており、ここでは、軽量化のため、金網で構成されている。ただし、導電性部材120は、金網で構成されたものに限らず、縞鋼板、金たわし、およびパンチングボードなどのその他の金属部材で構成されていてもよい。
【0057】
(移動機構130)
移動機構130は、
図1(b)に示すように、飛行体本体110の筐体110bに搭載されており、導電性部材120を支持する支持ロッド130aと、支持ロッド130aを遠位方向(筐体110bの上方向)に移動可能なロッド移動手段130bとを有する。この移動機構130では、導電性部材120と支持ロッド130aとは、支持ロッド130aに対する導電性部材120の姿勢が固定されるように連結部材130cにより連結されている。この連結部材130cは、支持ロッド130aの先端に嵌合された金属製の管状部材であり、管状部材の上面には導電性部材120としての金網部材が固定ネジ、ロウ付け、溶接あるいは接着材などで固定されている。連結部材130cは、金属製の管状部材である必要はなく、導電性部材120と支持ロッド130aとを連結可能なものであれば、樹脂製の部材でもよいし、あるいは管状部材ではなく中実部材でもよい。
【0058】
以下、移動機構130を詳しく説明する。
【0059】
図2は、
図1に示す飛行体100の移動機構130の具体的な構成を説明するための図であり、
図2(a)は
図1の飛行体100をA方向から見た側面図であり、
図2(b)は、
図2(a)に示す筐体110bの縦断面図であり、筐体110bの内部に収容されているロッド移動手段130bの具体的な構成を示している。なお、
図2では、図面の簡略化のため、プロペラ111、駆動モータ112、および手前側の支持アーム110dを省略している。
【0060】
移動機構130の支持ロッド130aは、飛行体本体110の略鉛直方向にスライド可能に筐体110bに取り付けられており、筐体110bを貫通している。移動機構130のロッド移動手段130bは、一対のローラ31a、31bと、それぞれのローラ軸受32a、32bとを有している。
【0061】
ここで、一対のローラ31a、31bは、支持ロッド130aを挟んで対向するように筐体110b内に配置されており、各ローラ31a、31bは、筐体110bの内部に取り付けられたローラ軸受32a、32bにより回転可能に支持されている。
【0062】
このロッド移動手段130bは、一対のローラ31a、31bが一方向およびその逆方向に回転することにより、これらのローラ31a、31bに挟持されている支持ロッド130aが略鉛直方向に沿って上下するように構成されている。ここで、ローラ31a、31bの駆動手段は、ローラ31a、31bの外部に設けられたモータでもよいが、配置スペースの観点からは、ローラ31a、31bの駆動手段は、ローラ31a、31bに内蔵されたモータであることが好ましい。ローラ31a、31bの駆動手段であるモータは、バッテリ10bから電力が供給され、コントローラ10aにより制御されるようになっている。
【0063】
なお、ロッド移動手段130bは、一対のローラ31a、31bに代えて、ピニオン(円形歯車)を用いてもよく、その場合は、支持ロッド130aには、ピニオンと係合するラック(細長の平板状部材にピニオンの歯にかみ合う歯を形成したもの)を取り付けておく必要がある。
【0064】
また、飛行体本体110を構成する筐体110b、支持アーム110d、脚部110cおよびプロペラ111、また、支持ロッド130aや連結部材130c、さらに、ロッド移動手段130bを構成するローラ31a、31bやローラ軸受32a、32bの構成材料としては、鉄、アルミニウム、ステンレス、チタンなどの金属材料を用いてもよいし、あるいは、硬質の樹脂材料、例えば、PVC(ポリ塩化ビニル)、PS(ポリスチレン)、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)、あるいは、PMMA(ポリメチルメタクリレート)などを用いてもよいし、あるいは、いくつかの部材には金属材料を用い、他のいくつかの部材には樹脂材料を用いてもよい。
【0065】
次にこのような構成の飛行体100を用いて風車翼のレセプタ等の導通検査を行う方法を説明する。
【0066】
図3は、
図1に示す飛行体100を用いてレセプタ等の通電検査を行う方法を説明するための図であり、
図3(a)は
図1の飛行体100の昇降動作を示し、
図3(b)は
図1の飛行体100の導電性部材120の上方移動の動作を示す。
【0067】
図1に示す飛行体100を用いて風車の風車翼などの構造物に対する導通検査を実行する方法は、少なくとも以下の第1ステップおよび第2ステップを含む。
【0068】
(第1ステップ)
第1ステップは、導電性部材120を飛行体本体110に対する近位位置に保持した状態で、飛行体100を構造物の導体の下方位置に移動させるステップである。
【0069】
具体的には、構造物の導体は風車翼WbのレセプタLcであり、飛行体100の操作は無線リモコンで行うものとする。飛行体100のコントローラ10aは無線リモコン(図示せず)からの操作信号に従って4つの推力発生部110aでの推力(駆動モータ112の回転数)を制御し、さらに、操作信号に従ってロッド移動手段130bの一対のローラ31a、31bによる支持ロッド130aの昇降を制御する。これにより飛行体100の飛行および導電性部材120の移動は操作者の意図の通りに行われることとなる。
【0070】
第1ステップでは、飛行体100は、操作者の操作により導電性部材120を飛行体100の筐体110bに最も近い位置(飛行体本体110に対する近位位置)に保持した安定な状態で地表面Grから離陸し、風車翼Wbの下端に位置するレセプタLcの下側近傍位置まで飛行する(
図3(a)参照)。そして、好ましくは、飛行体100は下側近傍位置において浮揚させる(ホバリング)。
【0071】
ここで、導電性部材の近位位置は、飛行体100において導電性部材120のレセプタ接触面と筐体110bの上面との距離が約0cm~約70cmとなる導電性部材120の位置である。また、レセプタLcの下側近傍位置は、近位位置における導電性部材120のレセプタ接触面とレセプタLcの下端との距離が約150cm以内となる飛行体100の位置である。
【0072】
(第2ステップ)
第2ステップは、導電性部材120を飛行体本体110に対する遠位位置に移動させることにより導電性部材120を構造物の導体に接触させて導通検査を実行するステップである。
【0073】
具体的には、第2ステップでは、飛行体100をレセプタLcの下側近傍位置に浮揚させた状態で、導電性部材120を飛行体本体110に対する近位位置から飛行体本体110に対する遠位位置に移動させる(
図3(b)参照)。
【0074】
ここで、遠位位置は、導電性部材120の下面と筐体110bの上面との距離が約30cm~約150cmとなる導電性部材120の位置である。
【0075】
従って、レセプタLcの下側近傍位置に浮揚している飛行体100では、導電性部材120が近位位置から遠位位置まで移動する途中で風車翼WbのレセプタLcに当接することとなり、飛行体100の導電性部材120と風車翼WbのレセプタLcとの電気的な接続が行われる。これにより、風車翼WbのレセプタLcが飛行体100の導電性部材120および測定ケーブル(図示せず)を介して地上の測定装置に接続され、地上の測定装置では、レセプタとアースとの間のダウンコンダクタを介しての電気的接続の良否判定が行われる。
【0076】
なお、第2ステップでは、導電性部材120を飛行体本体110に対する近位位置から飛行体本体110に対する遠位位置に移動させるときに、飛行体100をレセプタLcの下側近傍位置に浮揚させた状態にしておくのではなく、飛行体100をレセプタLcに向けて上昇させるようにしてもよい。導電性部材120をレセプタLcに接触させて導通検査を行った後、導電性部材120を飛行体本体110に対する近位位置に戻して飛行体100を安定させた状態で、飛行体100を下降させて地表面Grに着陸させる(
図3(a)参照)。
【0077】
このように、本実施形態1の飛行体100では、飛行体本体110と、構造物の導体に接触させるための導電性部材120と、導電性部材120を飛行体本体100の遠位位置と近位位置との間で移動可能な移動機構130とを備えているので、高所で人が作業する必要がないため、安全に導通検査を行うことが可能となる。また、導電性部材120を移動機構によって飛行体本体から離れた遠位位置に配置した状態で、レセプタLcに導電性部材120を接触させるようにしたことにより、横風などの影響で飛行体本体110が揺れ動いたとしても、飛行体本体110が構造物(風車翼)Wbに衝突する恐れを回避することが可能となる。そのため、本発明の飛行体100は、風車翼Wbの導体Lcの導通検査を安全にかつ簡易に行うことを可能とする。
【0078】
図3に示す実施形態において、飛行体100は、レセプタLcの下方から上昇させて導電性部材120をレセプタLcに接触させる場合について説示したが、本発明はこれに限定されない。飛行体100をレセプタLcの上方向から下降させて導電性部材120をレセプタLcに接触させてもよいし、飛行体100をレセプタLcの横方向から略水平移動させて導電性部材120をレセプタLcに接触させてもよい。好ましい実施形態において、飛行体100は、レセプタLcの下方から上昇させて導電性部材120をレセプタLcに接触させる。このようにすることにより、横風などを受けて飛行体100が揺れ動いても風車翼Wbに衝突する怖れを低減することが可能となる。また、ドローンやヘリコプターなどの飛行体は、その機構上、飛行体100を略水平移動させるよりも、上下方向に移動させる方が飛行体の状態を安定した状態に保つことができるため、飛行体100を略水平移動させるよりも安定してレセプタLcに接触させることが可能となる。
【0079】
なお、実施形態1の飛行体100では、移動機構130は、導電性部材120を支持する支持ロッド130aと、支持ロッド130aを遠位方向に移動可能なロッド移動手段130bとを備えたものであるが、移動機構130の具体的な構成は実施形態1のものに限定されるものではなく、支持ロッド自体が伸縮可能な構造を有するものでもよく、以下このような構成の移動機構131を備えた飛行体101を実施形態1の変形例1として説明する。
【0080】
(実施形態1の変形例1)
図4は、実施形態1の変形例1による飛行体101の移動機構131を説明するための図であり、
図4(a)は飛行体101の側面図、
図4(b)は、
図4(a)に示す筐体110bの縦断面図であり、支持ロッド131aおよびこれに取り付けられているロッド伸縮手段131bの具体的な構成を示している。なお、
図4では、
図2と同様、図面の簡略化のため、プロペラ111、駆動モータ112、および手前側の支持アーム110dを省略している。
【0081】
実施形態1の変形例1の飛行体101は、実施形態1の移動機構130とは構成が異なる移動機構131を備えたものである。この移動機構131は、移動機構130における支持ロッド130aに代えて伸縮可能な支持ロッド131aを備え、さらに、支持ロッド130aを移動させるロッド移動手段130bに代えて、支持ロッド131aを伸縮させるロッド伸縮手段131bを備えたものである。
【0082】
従って、実施形態1の飛行体101におけるその他の構成、すなわち、支持ロッド131aおよびロッド伸縮手段131b以外の構成は、実施形態1の飛行体100におけるものと同一である。
【0083】
ここで、伸縮可能な支持ロッド131aは、導電性部材120に連結された第1ロッド31a1と、第1ロッド31a1を突出および没入可能に収容する第2ロッド31a2と、第2ロッド31a2を突出および没入可能に収容する第3ロッド31a3とを含んでいる。第1ロッド31a1は棒状部材で構成され、第2ロッド31a2および第3ロッド31a3は、筒状部材で構成されている。棒状部材および筒状部材の材質として、実施形態1の飛行体100の構成材料として示した金属材料、あるいは、硬質の樹脂材料が用いられる。
【0084】
ロッド伸縮手段131bは、筐体3a、ワイヤー部材3d、駆動ローラ3b、およびガイドローラ3cを有している。これらの部材の材質は上述した金属材料でもあるいは上述した樹脂材料でもよい。ただし、ワイヤー部材3dは、主ローラ3bに巻き取り可能な程度の可撓性を有し、さらに、導電性部材120を第1ロッド31a1および第2ロッド31a2とともに押し上げ可能な程度の剛性を有している。また、駆動ローラ3bにはモータが内蔵されている。ただし、駆動ローラ3bを回転させるモータは、駆動ローラ3bに内蔵のものではなく、その外部に設けられたものでもよい。このモータはバッテリ10bで動作し、コントローラ10aにより制御される。
【0085】
ここで、ロッド伸縮手段131bの筐体3aは、第3ロッド31a3の下端に取り付けられ、筐体3a内には駆動ローラ3bおよびガイドローラ3cが配置されている。ワイヤー部材3dは駆動ローラ3bに巻き付けられており、ワイヤー部材3dの先端は第1ロッド31a1の下端に連結されている。ガイドローラ3cは駆動ローラ3bの近傍に配置されており、駆動ローラ3bから送り出されたワイヤー部材3dが鉛直方向に沿って延びるようにワイヤー部材3dをガイドする。
【0086】
このような構成の支持ロッド131aでは、駆動ローラ3bの回転によりワイヤー部材3dが送り出されると、第1ロッド31a1がワイヤー部材3dに押されて第2ロッド31a2内から突出する。ただし、第1ロッド31a1の下端が第2ロッド31a2の上端に一定距離まで近づくと、第2ロッド31a2に対する第1ロッド31a1の上昇は停止し、第1ロッド31a1は第2ロッド31a2とともに第3ロッド31a3に対して上昇することとなる。さらに、第2ロッド31a2の下端が第3ロッド31a3の上端に一定距離まで近づくと、第3ロッド31a3に対する第2ロッド31a2の上昇も停止するようになっている。これにより、支持ロッド131aは、支持ロッド131aを伸ばしたときに、第1ロッド31a1が第2ロッド31a2から抜け落ちたり、第2ロッド31a2が第3ロッド31a3から抜け落ちたりすることなく、多段式のアンテナのように伸縮するように構成されている。
図4に示す実施形態において、支持ロッドは第1~第3のロッドで構成されているが、本発明はこれに限定されない。支持ロッドは、第1、第2のロッドで構成されてもよいし、4本以上のロッドで構成されてもよい。
【0087】
このような支持ロッド131aとロッド伸縮手段131bとを含む移動機構131では、支持ロッド131a自体は飛行体本体に対して移動せず固定されるため、装置の他の構成との干渉が抑制され構造簡易とすることが可能となる。
【0088】
なお、上述した実施形態1の飛行体100およびその変形例1の飛行体101は、上述した構成に加えて、導電性部材120を回転させる回転機構を備えたものでもよく、以下の変形例2、3では、実施形態1の飛行体100において導電性部材120を回転させる回転機構を備えたもの(飛行体102、103)を説明する。
【0089】
(実施形態1の変形例2)
図5は、実施形態1の変形例2による飛行体102の導電性部材120を回転させる回転機構を説明するための図であり、
図5(a)は飛行体102の側面図、
図5(b)は、
図5(a)に示す筐体110bの縦断面図であり、導電性部材を回転させる回転機構132dの具体的な構成を示している。
【0090】
この実施形態1の変形例2による飛行体102は、実施形態1の飛行体100の支持ロッド130aに代えて、回転シャフト2a2を含む支持ロッド132aと、回転シャフト2a2を回転させる回転モータ32dとを備え、回転シャフト2a2の略先端で導電性部材120を支持することにより、支持ロッド132aと回転モータ32dとで、導電性部材120を回転させる回転機構132dを構成したものであり、その他の構成は、実施形態1の飛行体100におけるものと同一である。
【0091】
具体的には、支持ロッド132aは、筒状の支持ロッド本体2a1と、支持ロッド本体2a1内に収容された棒状の回転シャフト2a2とを有し、回転シャフト2a2は支持ロッド本体2a1内で回転可能に保持され、回転シャフト2a2の上端部は支持ロッド本体2a1から突出しており、連結部材130cにより導電性部材120に連結されている。
【0092】
また、支持ロッド本体2a1の下端には回転モータ32dが取り付けられ、この回転モータ32dの回転軸は、支持ロッド本体2a1内に収容された棒状の回転シャフト2a2の下端に連結されており、回転モータ32dは、回転シャフト2a2を回転させるシャフト回転手段となっている。
【0093】
従って、この実施形態1の変形例2では、支持ロッド132aとシャフト回転手段132dとにより、導電性部材120を回転させる回転機構132dが構成されている。
【0094】
このような構成の実施形態1の変形例2による飛行体102では、移動機構132は、支持ロッド132aを遠位方向に移動可能なロッド移動手段130bに加えて、導電性部材120を回転させる回転機構132dを備えているので、導電性部材120を回転させた状態で導電性部材120を風車翼WbのレセプタLcに接触させることができる。このように導電性部材を回転させることにより、風車翼WbのレセプタLcの表面に絶縁性の被膜やごみや錆が付着していても、これらの絶縁物を回転する導電性部材120により除去することが可能であり、導電性部材120と風車翼WbのレセプタLcとのダウンコンダクタを介しての電気的接続の検査をより確実に行うことが可能となる。
【0095】
なお、実施形態1の変形例2では、導電性部材120を回転させる回転機構132dとして、支持ロッド本体2a1の内部で回転可能に収容された回転シャフト2a2の一端に導電性部材120を連結し、回転シャフト2a2の他端に回転モータ32dの回転軸を連結したものを示したが、本発明の回転機構132dの構成はこのものに限定されない。例えば、実施形態1のロッド移動手段130bを回転させるものでもよく、導電性部材120自身に回転機構を備えたものであってもよい
さらに、実施形態1およびその変形例1、2では、飛行体100~103として、支持ロッドに対する導電性部材120の姿勢が固定であるものを挙げたが、飛行体は、支持ロッドに対する導電性部材の姿勢が固定であるものに限定されず、飛行体は、支持ロッドに対する導電性部材の姿勢(支持ロッドに対する回転方向や回転角度)が任意に変更可能なものでもよく、このような構成の飛行体を実施形態2として以下に説明する。
【0096】
(実施形態2)
図6は、本発明の実施形態2による飛行体200を説明するための斜視図であり、
図6(a)は飛行体200の外観を示し、
図6(b)は飛行体200から導電性部材120を分離して連結部材230cの構造を示す。
【0097】
この実施形態2の飛行体200は、実施形態1の飛行体100の連結部材130cが移動機構130に対して導電性部材120の姿勢が固定であるように連結するものであるのに対して、連結部材230cが移動機構230に対して導電性部材120の姿勢が任意に変更可能となるように連結するものである点でのみ相違する。
【0098】
具体的には、連結部材230cは、複数の弾性を有する金属ワイヤーからなる可撓性部材23を備え、複数の可撓性部材23は、支持ロッド130aの軸周りに所定の角度の間隔を持って配置されている。ここでは、4つの可撓性部材23が90°の角度間隔で支持ロッド130aの軸周りに配置されている。ただし、4つの可撓性部材23は、導電性部材120を所定の姿勢(例えば、水平状態)に支持可能であり、導電性部材120が風車翼のレセプタに当接したときに変形するものであれば、金属ワイヤー部材に限定されるものではなく、コイルスプリングや板バネでもよいし、あるいは弾性を有する樹脂やゴムであってもよい。
【0099】
次にこのような構成の飛行体200を用いて風車翼のレセプタ等の導通検査を行う方法を説明する。
【0100】
図7は、
図6に示す飛行体200を用いてレセプタ等の通電検査を行う方法を説明するための図であり、
図7(a)は
図7の飛行体200の昇降動作を示し、
図7(b)は
図6の飛行体200の導電性部材120の上方移動の動作を示す。
【0101】
実施形態2の飛行体200を用いて風車の風車翼などの構造物に対する導通検査を実行する場合も、実施形態1の飛行体100を用いた導通検査と同様に行われる。
【0102】
すなわち、
図7(a)に示すように、導電性部材120を飛行体本体110に対する近位位置に保持した状態で、飛行体200を風車翼Wbの導体Lcの下方位置に移動させる(第1ステップ)。
【0103】
次に、
図7(b)に示すように、導電性部材120を飛行体本体110に対する遠位位置に移動させることにより導電性部材120を構造物Wbの導体Lcに接触させて導通検査を実行する(第2ステップ)。
【0104】
この実施形態2の飛行体200では、風などの力で導電性部材120が構造物Wbの導体Lcに接触する接触点が飛行体100の中心からずれた場合でも、
図7(b)に示すように、支持ロッド131aに対する導電性部材120の姿勢(支持ロッドに対する回転方向や回転角度)が風の力に合わせて変化することで、導電性部材が導体Lcに接触する状態を維持しつつ飛行体200のバランスが崩れることを回避することが可能となる。
【0105】
その後は、実施形態1の飛行体100を用いた導通検査と同様、導電性部材120を飛行体本体110に対する近位位置に戻して飛行体200を安定させた状態で、飛行体200を下降させて地表面Grに着陸させる(
図7(a)参照)。
【0106】
このような構成の実施形態2の飛行体200では、実施形態1の飛行体100の構成に加えて、複数の可撓性部材23を含む連結部材230cにより導電性部材120を支持ロッド130aに対して姿勢(支持ロッドに対する回転方向や回転角度)を変更可能に連結しているので、実施形態1の飛行体100の効果に加えて、風などの力で導電性部材120が飛行体200の中心からずれた位置で風車翼のレセプタに当接したときには導電性部材120の姿勢がその力に合わせて変化することで、導電性部材120とレセプタとの接触状態を維持しつつ、飛行体200がバランスを崩すのを回避することができる。
【0107】
なお、実施形態2の飛行体200では、連結部材230cとして複数の可撓性部材23を有するものを用いたが、連結部材は、このような構造のものに限定されない。例えば、連結部材として、ユニバーサルジョイントやボールジョイントなどの自在継手を用いてもよい。
【0108】
(実施形態3)
次に実施形態3の飛行体300を用いて風車翼のレセプタ等の導通検査を行う方法を説明する。
【0109】
図8Aは、本発明の実施形態3による飛行体300を用いてレセプタ等の導通方法を説明するための図であり、
図8A(a)は飛行体300の昇降動作を示し、
図8A(b)は飛行体300の導電性部材120をレセプタに固定する動作を示す。そして、
図8B(c)は導電性部材をレセプタに固定したまま、飛行体300が風車翼から離脱する動作を示し、
図8B(d)は導通検査の後に、導電性部材のレセプタへの固定を解除し、導電性部材と支持ロッドとを風車翼から離脱させる動作を示す。
【0110】
図8Aに示す飛行体300を用いて風車の風車翼などの構造物に対する導通検査を実行する方法は、少なくとも以下の第1~第4ステップを含む。
【0111】
(第1ステップ)
第1ステップは、
図3に示す実施形態1の飛行体100と同様である。
【0112】
(第2ステップ)
第2ステップは、レセプタLcの下側近傍位置に浮揚している飛行体300が、導電性部材120が近位位置から遠位位置まで移動する途中で風車翼WbのレセプタLcに当接させるところまでは、
図3に示す実施形態1の飛行体100と同様である。
【0113】
(第3ステップ)
図8A(b)に示す様に、導電性部材120が風車翼WbのレセプタLcに当接した状態で支持ロッド130aに備えたリンク機構を備えたクランプ(固定手段)150を作動させることにより、支持ロッド130aが風車翼Wbに取り付けられることで、導電性部材120をレセプタLcに固定させる。
【0114】
(第4ステップ)
図8B(c)に示す様に、固定手段150により導電性部材120をレセプタLcに固定させた後に、飛行体300に対する支持ロッド130aの接続状態を解除することによって、飛行体300を風車翼Wbから離脱させる。飛行体300を風車翼Wbから離脱させることにより強風などの影響で飛行体300が風車翼Wbや風車に衝突することを回避することが可能となる。
【0115】
(第5ステップ)
導電性部材120が風車翼Wbに固定された状態により、導電性部材120と風車翼WbのレセプタLcとの電気的な接続が行われる。これにより、風車翼WbのレセプタLcが飛行体100の導電性部材120および測定ケーブル(図示せず)を介して地上の測定装置に接続され、地上の測定装置では、レセプタとアースとの間のダウンコンダクタを介しての電気的接続の良否判定が行われる。
【0116】
(第6ステップ)
図8B(d)に示す様に、導通検査を行った後、飛行体300などからの無線信号などによる指令信号を送信することにより、固定手段150による導電性部材120とレセプタLcとの固定が解除され、それにより、導電性部材120と支持ロッド130aは風車翼Wbから離脱(自然落下)させる。
【0117】
このように、本実施形態3の飛行体300では、導電性部材120をレセプタLcに接触および固定した際に、飛行体300を風車翼Wbから離脱するようにしたので、飛行体本体110が風車翼Wbに衝突する恐れを回避することが可能となる。そのため、本発明の飛行体300は、風車翼Wbの導体Lcの導通検査を安全にかつ簡易に行うことを可能とする。
【0118】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明は、飛行体および導通検査方法の分野において、構造物の導通検査を安全にかつ簡易に行うことを可能とする飛行体およびこのような飛行体を用いた導通検査方法を得ることができるものとして有用である。
【符号の説明】
【0120】
100~103、200、201、300 飛行体
110 飛行体本体
120 導電性部材
130~133、230、231 移動機構
130a、131a、132a 支持ロッド
130b ロッド移動手段
130c、230c、231c 連結部材
131b ロッド伸縮手段
132d、133d ロッド回転手段(回転機構)
Lc 避雷導体
Wb 風車翼