(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】PSMAを標的としたイメージング及び放射線治療のための金属/放射性金属標識PSMA阻害剤
(51)【国際特許分類】
C07D 257/02 20060101AFI20230630BHJP
C07D 403/06 20060101ALI20230630BHJP
A61K 51/04 20060101ALI20230630BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230630BHJP
A61K 31/395 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
C07D257/02 CSP
C07D403/06
A61K51/04 200
A61P35/00
A61K31/395
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021177335
(22)【出願日】2021-10-29
(62)【分割の表示】P 2020135868の分割
【原出願日】2015-05-06
【審査請求日】2021-11-26
(32)【優先日】2014-05-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2015-02-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】399005046
【氏名又は名称】ザ ジョンズ ホプキンズ ユニヴァーシティー
(73)【特許権者】
【識別番号】500041019
【氏名又は名称】ノースウェスタン ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100093300
【氏名又は名称】浅井 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】レイ サンギータ
(72)【発明者】
【氏名】ポンパー マーティン ジー
(72)【発明者】
【氏名】ミード トーマス ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】ミーズ ロニー シー
(72)【発明者】
【氏名】チェン イン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン シン
(72)【発明者】
【氏名】ロッツ マシュー
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/110372(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/082338(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/022797(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/108125(WO,A1)
【文献】特表2010-532754(JP,A)
【文献】特表2017-518971(JP,A)
【文献】特開2020-203893(JP,A)
【文献】J. Label. Compd. Radiopharm.,2011年,54,S65
【文献】J. Med. Chem.,2014年02月17日,57,2657-2669
【文献】Bioconjugate Chem.,2014年01月11日,25,393-405
【文献】Bioconjugate Chem.,2012年,23,688-697
【文献】Angew. Chem. Int. Ed.,2011年,50,9167-9170
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D,C07F,A61K
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
(式中、
Zは、テトラゾール又はCO
2Qであり、
Qは、H、又は
ベンジル、p-メトキシベンジル(PMB)、第三級ブチル(
t
Bu)、メトキシメチル(MOM)、メトキシエトキシメチル(MEM)、メチルチオメチル(MTM)、テトラヒドロピラニル(THP)、テトラヒドロフラニル(THF)、ベンジルオキシメチル(BOM)、トリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、t-ブチルジメチルシリル(TBDMS)及びトリフェニルメチル(トリチル、Tr)からなる群から選択される保護基であり、
X
1及びX
2は、それぞれ独立してNH又はOであり、
aは、1、2、3及び4から成る群から選択される整数であり、
cは、0、1、2、3及び4から成る群から選択される整数であり、
R
1
は、ハロゲン置換されたアリール基で置換されたC
1
-C
4
アルキルであり、
R
2
及びR
4
は、それぞれ、独立してH又はC
1-C
4アルキルであり、
各R
3は、独立してH、C
1-C
6アルキル又は
C
6
-C
12アリールであり、
Wは、独立してO又はSであり、
Yは、-NH-であり且つ存在又は不在となり得て、
そして
Lは、
から成る群から選択されるリンカーであり、
式中、
mは、1、2、3、4、5、6、7及び8から成る群から選択される整数であり、
各R
5は、独立してH又は各R
6が独立してH若しくはC
1-C
6アルキルである-COOR
6であり、
nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11及び12から成る群から選択される整数であり、
pは、1、2、3、4、5、6、7及び8から成る群から選択される整数であり、
そして
Chは、1つ以上の
非放射性金属又は放射性金属を含み得るキレート化部分で
あり、かつDOTA誘導体である。)
の化合物又はその医薬的に許容可能な塩。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2014年5月6日に出願の米国仮特許出願第61/989428号及び2015年2月18日に出願の第62/117603号の利益を請求するものであり、各文献は参照により全て本願に援用される。
【0002】
連邦政府の助成による研究又は開発
本発明は、米国国立衛生研究所(NIH)がK25CA148901-01A1及びU54CA1346751のもとで拠出した政府からの支援でなされた。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
前立腺特異的膜抗原(PSMA)は、前立腺及び他の型のがんのイメージング及び治療のための実現性が高い標的として認識されつつある(Ghosh and Heston,2004;Milowsky et al.,2007;Olson et al.,2007)。PSMAは、特にはホルモン抵抗型に関して、前立腺がん及び転移において顕著に過剰発現する(Ghosh and Heston,2004;Milowsky et al.,2007)。PSMAは殆どの固形腫瘍及び腫瘍新血管系で発現することも知られている(Haffner et al.,2012;Haffner et al.,2009)。PSMAをイメージングすることで、アンドロゲンシグナル伝達(Evans et al.,2011)及びタキサン療法に対する応答(Hillier et al.,2011)についての洞察を得ることができる。これまでの研究では、前立腺がんの実験モデル(Schulke et al.,2003;Mease et al.,2013;Banerjee et al.,2010)及び診療所(Cho et al.,2012;Kulkarni et al.,2014;Zechmann et al.,2014)における官能化システイン-グルタメート又はリジン-グルタメート尿素を使用した、PSMAを標的とした放射性核種イメージングを行っている。大きい分子フラグメント、例えば放射性金属(99mTc、68Ga、111In、86Y、203Pb、64Cu)錯体(Banerjee,Pullambhatla,Shallal,et al.,2011;Banerjee,Pullambhatla,Byun,et al.,2011;Banerjee et al.,2008)及びナノ粒子(Chandran et al.,2008;Kam et al.,2012)を取り付けるために、長いリンカーを大きな分子と標的尿素との間に置くことでPSMA標的結合を保持した。特定の理論に縛ろうとするものではないが、リガンド結合部位が細胞外にあること、また細胞1つあたりの受容体濃度が高い(約3.2μM/細胞体積)と推定されることから、PSMAはMR分子イメージング用のバイオマーカーに適していると考えられた。
【0004】
MRイメージングは、高分解能の解剖学的及び機能的イメージングを行うための臨床的に関連性がある非侵襲的診断ツールである。分子MRイメージングは、in vivoでの生物学的マーカーの可視化を可能にする(Artemov,Mori,Okollie et al.,2003;Artemov,Mori,Ravi,Bhujwalla,et al.,2003;Konda et al.,2001;Lanza et al.,2004;Huang,et al.,2013)。Gd(III)系のコントラスト剤は臨床家に広く受け入れられているが、これは投与が容易であり、またT1強調ポジティブコントラストができるからである。高い緩和度のコントラスト剤の設計は進歩したものの、分子MRイメージングにとって感度は制限要因のままである。分子イメージング用途(具体的には、受容体又はタンパク質発現のイメージング)での使用に関して、Gd(III)系のコントラスト剤が検出限界を超えることはめったにない(Artemov,Mori,Okollie et al.,2003;Artemov,Mori,Ravi,Bhujwalla,et al.,2003;Konda et al.,2001;Lanza et al.,2004;Huang,et al.,2013)。シグナル増幅法を用いれば、MRは、放射性核種をベースにした技法を補う、分子イメージングのための感度の高いモダリティとなるかもしれない(Aime et al.,2004;Major et al.,2009;Song et al.,2008;Artemov,2003)。増幅法で標的物質の感度を改善できたとしても、単純な低分子量の化合物からより大きな複合体へのシフトにより物質の薬物動態プロファイルが大きく変化してしまう可能性がある(Artemov,Mori,Okollie et al.,2003;Artemov,Mori,Ravi,Bhujwalla,et al.,2003;Konda et al.,2001;Lanza et al.,2004;Huang,et al.,2013)。Sherryらは、極めて高い結合親和性(Kd)を有するためMRでの検出に必要な物質の量を最小限に抑えることができるコントラスト剤を作り出すことで感度の問題に取り組んだ(Hanaoka et al.,2008;De Leon-Rodriguez et al.,2010)。MRをベースにした受容体イメージングを可能にするための1つの解決策として、受容体特異的高親和性リガンドを検出用の多量体Gd(III)と組み合わせることが考案された(Wu et al.2012)。
【0005】
そのアプローチの例には、高い縦緩和度(r1)値を有する多量体Gd-デンドロンを調製することによるVEGFR2の分子イメージングが含まれる(De Leon-Rodriguez et al.,2010)。他の多量体物質では、より高い磁場強度での改善されたr1値が報告されているが、これは実験及び臨床の両方の場においてMRイメージングの磁場が強くなっているからである(Mastarone 2011)。高磁場での緩和度を最適化することで、より大きなシグナル対ノイズ及びコントラスト対ノイズ比(SNR/CNR)という利点が得られ、またより高い空間分解能及びより短いスキャン時間というメリットも付随する(Rooney 2007)。これらのコンセプトの組み合わせ、すなわち高親和性標的部分を感度の高い多量体コントラスト剤と共に使用することは、前立腺特異的膜抗原(PSMA)を発現している細胞及び組織の標的MRイメージングを調査する論理的根拠となる。
【0006】
さらに、尿素系物質も放射線核種を使用したPSMAを含む病変部の放射線治療に使用できるのではないかと考えられている。実際、[131I]MIP1095((S)-2-(3-((S)-1-カルボキシ-5-(3-(4-[131I]ヨードフェニル)ウレイド)フェニル)ウレイド)ペンタン二酸)(Zechmann et al.,2014)及び177Lu標識PSMA標的物質(Kulkarni et al.,2014)でのそのアプローチを用いた臨床研究が、去勢抵抗性前立腺がんの治療のために進行中である。このアプローチは、臨床診療にルーチンで取り入れられている2種の市販の製品でのリンパ腫の治療において極めて有効であると証明されている放射免疫療法(RIT)に類似したものとなる。しかしながら、イメージングに放射標識した抗体を使用するため、RITには、長い循環時間、予測できない生物学的作用及び場合によってはプレターゲティング法が必要であることを含めた困難が伴う。さらに、抗体は、薬理学的に操作できる低分子量物質より腫瘍にアクセスしにくい可能性がる。したがって、腫瘍のイメージング及び放射線治療用にPSMAに対する高い結合親和性を有する低分子量の化合物が依然として必要とされている。
【0007】
ポジトロン放出放射線核種86Y(半減期[t1/2]=14.74時間、β+=33%、Eβ+=664keV)は、分子イメージングにとって魅力的な同位体である(Nayak and Brechbiel,2011)。イットリウム-86は、86Sr(p,n)86Y核反応を用いて簡単に小型医用サイクロトロンで調製することができる(Yoo et al.,2005)。高エネルギーβ-放射体90Y(t1/2=64.06時間、β-=72%、Eβ-=2.288MeV)は内部放射線治療で広く用いられているため(Witzig et al.,2003;Bodei et al.,2004)、86Yは90Y標識放射線治療法の線量測定推定にとって理想的である(Helisch et al.,2004)。86Yで放射標識した抗体及びペプチドは90Yで標識したものと同じ特性を有するため、放射線治療法の場合に90Yについて精確に吸収線量を推定することができる(Nayak and Brechbiel,2011;Palm et al.,2003)。177Luは90Yより短いβ粒子範囲(t1/2=6.7日、Eβ-=0.5MeV)を有するが、同様のキレート化特性を有するため、90Yで放射標識するものだけでなく、潜在的な177Luベースの放射線治療法を調査するための適切なイメージング代替物としては86Yが提案される。同様の理論的根拠が、神経内分泌標的ペプチド受容体放射線核種治療用の物質にもあてはめられている(Chen et al.,2012)。同様のアプローチを用いて、SPECTイメージングに適した潜在的なマッチドペアイメージング放射性同位体203Pb(半減期、51.9時間、Eβ-=279-keV γ線、81%)は、α粒子療法用の治療用放射線核種212Pbに使用することができる(Chappell,et al.2000;Yong,et al.2011;Yong,et al.2012;Yong,et al.2013)。212Pbの崩壊スキームには212Biが含まれ、崩壊時にα粒子、2つのβ粒子及び若干のγ線を放出する。α粒子放射体は、局所的な密度の高いイオン化等の高い線エネルギー付与特性により(修復できないほどのDNA二本鎖の破壊及び組織の酸素含量又は線量率に依存しない細胞毒性をもたらす)、標的放射線治療にとって特に魅力的である(McDevitt,et al,1998)。212Pb及び212Biは共に、抗体結合に関して十分に論じられている放射化学的性質を有する将来有望なα粒子放出源であり、また224Raジェネレータで簡単に得られる。
【0008】
同じくin vitroでPSMAに対して高い結合親和性を示した放射性ハロゲン化カルバメート系PSMA阻害剤も開発されており、ポジトロン放射体F-18で放射標識した場合に、PSMAポジティブマウス腫瘍異種移植片における高い取り込み及び正常な組織からの速いクリアランスを示した。このクラスの化合物の薬物動態プロファイルは好ましいことから(すなわち、非特異的結合が少なく、in vivoでは代謝されず、また腫瘍滞留時間が妥当)、イメージング研究は分子放射線治療にまで及んでいる。さらに、カルバメート系阻害剤を、尿素系金属/放射性金属系物質と同様にリンカー官能性を利用して金属キレート化物質にカップリングさせることでPSMAに対する高い結合親和性を維持することができる。そのため、金属又は放射性金属コンジュゲートカルバメートスキャフォールドも、PSMA発現細胞及び組織のイメージング及び治療に利用できる。
【発明の概要】
【0009】
幾つかの態様において、本開示の主題は、式(I):
【0010】
【0011】
の化合物又はその医薬的に許容可能な塩を提供し、式中、Zはテトラゾール又はCO2Qであり、QはH又は保護基であり、X1及びX2はそれぞれ独立してNH又はOであり、aは1、2、3及び4から成る群から選択される整数であり、cは0、1、2、3及び4から成る群から選択される整数であり、各R1、R2及びR4は独立してH又はC1-C4アルキルであり、各R3は独立してH、C1-C6アルキル又はC2-C12アリールであり、Wは独立してO又はSであり、Yは-NH-であり且つ存在又は不在となり得て、Lはリンカーであり、リンカーは、
【0012】
【0013】
から成る群から選択され、式中、mは1、2、3、4、5、6、7及び8から成る群から選択される整数であり、各R5は独立してH又は各R6が独立してH若しくはC1-C6アルキルである-COOR6であり、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11及び12から成る群から選択される整数であり、pは1、2、3、4、5、6、7及び8から成る群から選択される整数であり、Chは1つ以上の金属又は放射性金属を含み得るキレート化部分である。
【0014】
他の態様において、本開示の主題は、1つ以上の前立腺特異的膜抗原(PSMA)腫瘍又は細胞のイメージング又は治療のための方法を提供し、この方法は、1つ以上の腫瘍又は細胞を有効量の式(I)の化合物に接触させ、イメージを形成することを含む。
【0015】
本開示の主題により全面的に又は部分的に取り組んだ本開示の主題の特定の態様についてこれまで述べてきたが、後に詳しく説明する付随する実施例及び図面と併せて説明がすすむにつれて他の態様も明らかとなる。
したがって、本開示の主題について概括的に説明してきたが、ここで添付の図面を参照する。図面は必ずしも縮尺通りではない。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】(A)Gdl、Gd2及びGd3の構造及び(B)IC
50曲線である。
【
図1B】(A)Gdl、Gd2及びGd3の構造及び(B)IC
50曲線である。
【
図2】PC3 PSMA-flu(青)及びPC3 PSMA+PIP(赤)細胞ペレットにおけるGdl~Gd3の濃度を示す。データはICP-MS分析から得た。
【
図3】Gd1及びGd2に関する内部移行した及び細胞表面に結合したインキュベート量(incubated dose)の百分率(%ID)を示す。データはICP-MS分析から得た。
【
図4A】同質遺伝子ヒトPC3前立腺がん細胞対、PSMA+PIP及びPSMA-flu細胞においてGd3により生じたT
1コントラストエンハンスを示す。(A)PIP及びflu細胞のカラーコードT
1マップ。緩和率を25℃、9.4Tで求めた。(B)Gd3での処理に続くPIP及びflu細胞におけるT
1変化(ΔΤ
1)(n=4、P<0.05)の定量化。(C)RIP及びflu細胞におけるGd3の細胞取り込み。PIP細胞ペレットに会合したGd(III)の量はflu細胞ペレットの場合より有意に多かった。PIP細胞におけるGd3の蓄積は、ZJ43との事前のインキュベーションによりブロックされた(n=4、P<0.05)。
【
図4B】同質遺伝子ヒトPC3前立腺がん細胞対、PSMA+PIP及びPSMA-flu細胞においてGd3により生じたT
1コントラストエンハンスを示す。(A)PIP及びflu細胞のカラーコードT
1マップ。緩和率を25℃、9.4Tで求めた。(B)Gd3での処理に続くPIP及びflu細胞におけるT
1変化(ΔΤ
1)(n=4、P<0.05)の定量化。(C)RIP及びflu細胞におけるGd3の細胞取り込み。PIP細胞ペレットに会合したGd(III)の量はflu細胞ペレットの場合より有意に多かった。PIP細胞におけるGd3の蓄積は、ZJ43との事前のインキュベーションによりブロックされた(n=4、P<0.05)。
【
図4C】同質遺伝子ヒトPC3前立腺がん細胞対、PSMA+PIP及びPSMA-flu細胞においてGd3により生じたT
1コントラストエンハンスを示す。(A)PIP及びflu細胞のカラーコードT
1マップ。緩和率を25℃、9.4Tで求めた。(B)Gd3での処理に続くPIP及びflu細胞におけるT
1変化(ΔΤ
1)(n=4、P<0.05)の定量化。(C)RIP及びflu細胞におけるGd3の細胞取り込み。PIP細胞ペレットに会合したGd(III)の量はflu細胞ペレットの場合より有意に多かった。PIP細胞におけるGd3の蓄積は、ZJ43との事前のインキュベーションによりブロックされた(n=4、P<0.05)。
【
図5A】(A)蛍光イメージングによるGd1-Rhの細胞取り込み及び内部移行を示す。PSMA+PC3 PIP及びPSMA-PC3 flu細胞を系列希釈したGdl-Rh(4μΜ~4nM)の溶液と30分間にわたって37℃でインキュベートし、続いて低温のPBSで過剰なコントラスト剤を除去した。コントラスト剤濃度4nMでのPC3 PIP(B)及びPC3 flu(C)の拡大図。ローダミン蛍光を赤で示し、DAPIで対比染色した核を青で示す。(D)Gd1-Rhの構造。
【
図5B】(A)蛍光イメージングによるGd1-Rhの細胞取り込み及び内部移行を示す。PSMA+PC3 PIP及びPSMA-PC3 flu細胞を系列希釈したGdl-Rh(4μΜ~4nM)の溶液と30分間にわたって37℃でインキュベートし、続いて低温のPBSで過剰なコントラスト剤を除去した。コントラスト剤濃度4nMでのPC3 PIP(B)及びPC3 flu(C)の拡大図。ローダミン蛍光を赤で示し、DAPIで対比染色した核を青で示す。(D)Gd1-Rhの構造。
【
図5C】(A)蛍光イメージングによるGd1-Rhの細胞取り込み及び内部移行を示す。PSMA+PC3 PIP及びPSMA-PC3 flu細胞を系列希釈したGdl-Rh(4μΜ~4nM)の溶液と30分間にわたって37℃でインキュベートし、続いて低温のPBSで過剰なコントラスト剤を除去した。コントラスト剤濃度4nMでのPC3 PIP(B)及びPC3 flu(C)の拡大図。ローダミン蛍光を赤で示し、DAPIで対比染色した核を青で示す。(D)Gd1-Rhの構造。
【
図5D】(A)蛍光イメージングによるGd1-Rhの細胞取り込み及び内部移行を示す。PSMA+PC3 PIP及びPSMA-PC3 flu細胞を系列希釈したGdl-Rh(4μΜ~4nM)の溶液と30分間にわたって37℃でインキュベートし、続いて低温のPBSで過剰なコントラスト剤を除去した。コントラスト剤濃度4nMでのPC3 PIP(B)及びPC3 flu(C)の拡大図。ローダミン蛍光を赤で示し、DAPIで対比染色した核を青で示す。(D)Gd1-Rhの構造。
【
図6A】1、4及び24時間後の(A)細胞表面に結合した及び(B)内部移行したGd3の%IDを示す。
【
図6B】1、4及び24時間後の(A)細胞表面に結合した及び(B)内部移行したGd3の%IDを示す。
【
図7】Gd1、Gd2、Gd3及びプロハンスとインキュベートしたPSMA-PC3 flu細胞の生存能を示す。コントラスト剤を細胞と様々なGd濃度で24時間にわたって37℃でインキュベートし、生存能をMTSアッセイを用いて測定した。生存能の測定値を、コントラスト剤不在下で成長させた細胞に合わせて正規化した。
【
図8】Gd1、Gd2、Gd3及びプロハンス(Gd-DOTA)とインキュベートしたPSMA+PC3 PIP細胞の生存能を示す。コントラスト剤を細胞と様々なGd濃度で24時間にわたって37℃でインキュベートし、生存能をMTSアッセイを用いて測定した。生存能の測定値を、コントラスト剤不在下で成長させた細胞に合わせて正規化した。
【
図9A-B】オスのNOD/SCIDマウスにおけるヒトPC3前立腺がんPSMA+PIP及びPSMA-flu腫瘍異種移植片のGd3 MRイメージングを示す。(A)PSMA+PC3 PIP及びPSMA-PC3 flu腫瘍におけるエンハンス(ΔR1%)マップをT2強調イメージ上に、尾静脈へのGd3の単回ボーラス注射から40分、80分、120分及び160分後に重ねた。(B)尾静脈へのGd3の単回ボーラス注射から40分、80分、120分及び160分後の、PSMA標的部分を有さない三量体Gdコントラスト剤のPSMA+及びPSMA-腫瘍におけるΔR1%マップ。
【
図10A】(A)注射から1~1600分の間の各腫瘍の全体積について計算したT
1時間経過、(B)0~200分での時間経過の拡大領域を示す。PSMA+PC3 PIP腫瘍における高く特異的で持続的なエンハンスが注目された。
【
図10B】(A)注射から1~1600分の間の各腫瘍の全体積について計算したT
1時間経過、(B)0~200分での時間経過の拡大領域を示す。PSMA+PC3 PIP腫瘍における高く特異的で持続的なエンハンスが注目された。
【
図11】0.05mmol/Kg用量(n=3)のGd3を注射後のマウスについての緩和度におけるパーセント変化(%ΔR
1)を示す(p<0.03、PIP:flu)。
【
図12】1xPBS(リン酸緩衝生理食塩水)の注射前及び注射後の腫瘍(n=1)のT
1値におけるin vivoでの時間依存的変化を示す。
【
図13A-B】(A)
図11に示した選択されたMRイメージ、(B)Gd3の構造を示す。
【
図14】PSMAの86Y標識阻害剤の構造を示す。
【
図15A】[
86Y]4についての分取HPLCクロマトグラムを示す。(A)放射性HPLCピーク。(B)18.6分でのUVピークはλ=254nmでの非キレート化4についてのものである。
【
図15B】[
86Y]4についての分取HPLCクロマトグラムを示す。(A)放射性HPLCピーク。(B)18.6分でのUVピークはλ=254nmでの非キレート化4についてのものである。
【
図16A】[
86Y]5についての分取HPLCクロマトグラムを示す。(A)放射性HPLCピーク。(B)34分でのUVピークはλ=254nmでの非キレート化5についてのものである。
【
図16B】[
86Y]5についての分取HPLCクロマトグラムを示す。(A)放射性HPLCピーク。(B)34分でのUVピークはλ=254nmでの非キレート化5についてのものである。
【
図17A】[
86Y]6についての分取HPLCクロマトグラムを示す。(A)放射性HPLCピーク、(B)15.8分でのUVピークはλ=220nmでの非キレート化6についてのものである。(C)純粋な[
86Y]6の場合のHPLCクロマトグラム。
【
図17B】[
86Y]6についての分取HPLCクロマトグラムを示す。(A)放射性HPLCピーク、(B)15.8分でのUVピークはλ=220nmでの非キレート化6についてのものである。(C)純粋な[
86Y]6の場合のHPLCクロマトグラム。
【
図17C】[
86Y]6についての分取HPLCクロマトグラムを示す。(A)放射性HPLCピーク、(B)15.8分でのUVピークはλ=220nmでの非キレート化6についてのものである。(C)純粋な[
86Y]6の場合のHPLCクロマトグラム。
【
図18A-C】注射から2時間後のPSMA+PC3 PIP及びPSMA-PC3 flu腫瘍を有するマウスにおける(A)
86Y-4、(B)
86Y-5及び(C)
86Y-6の全身PET-CTイメージングを示す。マウスに約3.3mBq(90μCi)の放射性トレーサを静脈内(IV)注射した。PSMA+PC3 PIP(実線の矢印)、PSMA-PC3 flu(白抜きの矢印)、K=腎臓、GB=胆嚢、GI=消化管、L=左、R=右。イメージは崩壊補正し、同じ最大値に調整している。
【
図19A-C】PSMA+PC3 PIP及びPSMA-PC3 flu腫瘍を有するマウスにおける[
86Y]-4のPET-CTイメージングを示す。強力で選択的なPSMA阻害剤であるZJ43を遮断剤(50mg/kg)として使用したPSMAの遮断が(A)ない場合と(B)ある場合で得たイメージ。ZJ43で同時処置した場合の腫瘍及び腎臓(別のPSMA+部位)の両方における放射性トレーサの取り込みの減少により、PSMA特異的な結合についてさらにチェックした。マウスに約6.2MBq(168μCi)の放射性トレーサを静脈内注射した。PSMA+PC3 PIP(実線の矢印)、PSMA-PC3 flu(白抜きの矢印)。K=腎臓、B=膀胱、L=左、R=右。イメージは崩壊補正し、同じ最大値に調整している。
図19Cは、強力で選択的なPSMA阻害剤ZJ43の構造を示す。
【
図20A-C】(A)注射から0.5時間後、(B)注射から2時間後及び(C)注射から12時間後のPSMA+PC3 PIP及びPSMA-PC3 flu腫瘍を有するマウスにおける
86Y-6のPET-CTイメージングを示す。マウスに約6.2MBq(160μCi)の放射性トレーサを静脈内注射した。PSMA+PC3 PIP(実線の矢印)、PSMA-PC3 flu(白抜きの矢印)、K=腎臓、L=左、R=右。イメージは減衰補正し、同じ最大値に調整している。
【
図21A-B】(A)注射から1~2時間後及び(B)注射から2~3.5時間後のヒヒにおける
86Y-6PETの3DタイムコースMIP(最大値投影法)の画面を示す。可視化を強化するために、膀胱の放射能を半自動で閾値法を用いて分割し、続いて除去した。MIP 3Dレンダリングを用いて、全身の放射性トレーサの分布を概観した。殆どの正常な組織において放射性トレーサは、膀胱(図示せず)及び腎臓(K)を除いて観察されなかった。この研究のためにラットにカテーテルを挿入した。涙腺、耳下腺及び唾液腺における軽度の取り込みが注目された(それぞれ短い矢印、長い矢印及び白抜きの矢印)。
【
図22】in vivoでの薬物動態をさらに改善するための
177Lu-SRV171及び関連提案物質の構造を示す。
【
図23】2時間後、37℃でのPSMA+PIP及びPSMA-flu細胞の
177Lu-SRV171(0.01~10μCi/100万細胞)のインキュベート量(ID)の割合を示す。取り込み特異性を10μMのZJ43の共インキュベーションでさらにチェックした。
【
図24】最高24時間までの
177Lu-SRV171(1μCi)の内部移行研究を示す。
【
図25A-C】(A)注射から2時間、(B)注射から24時間及び(C)注射から96時間の
177Lu-SRV171(500μCi)を使用したPIP及びflu腫瘍を有するオスのマウスのSPECTイメージを示す。腎臓(K)、膀胱(B)及びflu腫瘍において低い取り込みが見られた。
【
図26】注射から3時間、24時間、48時間、72時間及び96時間後の異なる臓器における
177Lu-SRV171の組織体内分布を示す。
【
図27】
203Pb-SR-IX-ll及び
203Pb-SRV171の構造を示す。
【
図28A】(A)注射から60分後、(B)注射から120分後及び(C)注射から240分後の
203Pb-SRV171(左)及び
203Pb-SR-IX-ll(右)を使用したPIP及びflu腫瘍を有するオスのマウスのSPECT-CTイメージを示す。
【
図28B】(A)注射から60分後、(B)注射から120分後及び(C)注射から240分後の
203Pb-SRV171(左)及び
203Pb-SR-IX-ll(右)を使用したPIP及びflu腫瘍を有するオスのマウスのSPECT-CTイメージを示す。
【
図28C】(A)注射から60分後、(B)注射から120分後及び(C)注射から240分後の
203Pb-SRV171(左)及び
203Pb-SR-IX-ll(右)を使用したPIP及びflu腫瘍を有するオスのマウスのSPECT-CTイメージを示す。
【
図29】本開示の主題の化合物の設計に使用した2種のリジン-カルバメートスキャフォールド:カルバメートスキャフォールドに対応するオキシペンタン二酸(OPA)及び「逆」カルバメートスキャフォールドに対応するアミノ-ペンタン二酸(NPA)を示す。
【
図30】ZCP-01のHPLCクロマトグラムを示す。
【
図31】低温[In]ZPC-01のエレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI-MS)を示す。
【
図32】低温[In]ZCP-01のHPLCクロマトグラムを示す。
【
図33A】[In]ZCP-01の分取HPLCクロマトグラムを示す。(A)放射性HPLCピーク。(B)32分後のUVピークはλ=200nmでの非キレート化ZCP-01についてのものである。
【
図33B】[In]ZCP-01の分取HPLCクロマトグラムを示す。(A)放射性HPLCピーク。(B)32分後のUVピークはλ=200nmでの非キレート化ZCP-01についてのものである。
【
図34A-C】注射から(A)2時間後、(B)4時間後及び(C)24時間後のPSMA+PC3 Pip及びPSMA-PC flu腫瘍異種移植片を有するマウスにおける[
111In]ZCP-01の取り込みを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
これより本開示の主題について、付随する実施例及び図面を参照しながらより詳細に説明する。これらは本開示の主題の実施形態の全てではなく一部を例示したものである。本開示の主題は数多くの異なる形態で具体化し得て、本明細書に記載の実施形態に限定されると解釈すべきではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が適用可能な法的要件を満たすように提示される。事実、本開示の主題が関わる技術分野の当業者ならば、これまでの説明並びに関連する実施例及び図面で提示する教示のメリットを有する、本明細書に記載の本開示の主題の数多くの改変及び他の実施形態を考えつく。したがって、本開示の主題は開示の特定の実施形態に限定されないということ、また改変及び他の実施形態も添付の請求項の範囲内に含まれることを理解されたい。
【0018】
I.PSMA標的イメージング及び放射線治療のための金属/放射性金属標識PSMA阻害剤
解剖学的、機能的及び分子的な情報を同時に得られることから、磁気共鳴(MR)イメージングは有利である。MR分子イメージングは、この確立された広く普及している臨床モダリティ及びその高い空間分解能を分子プロファイリングとin vivoで組み合わせることができる。しかしながら、MRの感度は本質的に低いため、認識可能なMRコントラストを生成するには高い局所濃度の生物学的標的が必要とされる。
【0019】
特定の理論に縛ることを望むものではないが、MR分子イメージング剤にとってPSMAは良い標的になると考えられた。細胞1つあたりの標的濃度が高く(約3μM/細胞体積)、またリガンド結合部位が細胞外にあるからである。本開示のアプローチは、MR検出に必要な剤の量がより少なくなるように、特定の分子又は細胞標的に対するコントラスト剤の結合親和性(最低Kd)を改善することを目的とする。したがって、本開示のアプローチでは、MRベースの分子イメージングの1つの考えられ得る解決策として高結合親和性受容体特異的リガンドを多量体Gd(III)物質と組み合わせる。
【0020】
これまでに、放射性金属をベースとしたPET(64Cu)及びSPECT(111In及び99mTc)イメージングが、マウスにおいて、放射標識した尿素系PSMA阻害剤を使用して成功裡に行われている。(i)PSMA標的部分、(ii)薬理学的な調整のためのリンカー及び(iii)放射性核種の取り付けを可能にするキレート剤を含む3分子ストラテジーが開発された。このストラテジーは、PETイメージング用であり且つ対応する90Y標識物質を使用した放射線治療のモデルとしての役割を担う86Y標識DOTAコンジュゲート物質を含んだ。DOTAは多くの金属にとっての強力なキレート剤であるため、同じDOTAコンジュゲートを他の放射線治療用放射線核種、例えばLu-177、Ac-225、Bi-213、Bi-212、Pb-212、Cu-67及びSc-47と使用することができる。本開示の主題においては、同じ尿素リンカーコンストラクトを使用し、Gdキレートの数を増加させて(単量体、二量体及び三量体Gd)高磁場コントラスト剤としての緩和時間測定挙動又はMR感度、またその結合親和性を最適化することでPCaのPSMAベースのMRイメージングの可能性を体系的に調査した。
【0021】
A.式(I)の化合物
幾つかの実施形態において、本開示の主題は式(I):
【0022】
【0023】
の化合物又はその医薬的に許容可能な塩を提供し、式中、Zはテトラゾール又はCO2Qであり、QはH又は保護基であり、X1及びX2はそれぞれ独立してNH又はOであり、aは1、2、3及び4から成る群から選択される整数であり、cは0、1、2、3及び4から成る群から選択される整数であり、各R1、R2及びR4は独立してH又はC1-C4アルキルであり、各R3は独立してH、C1-C6アルキル又はC2-C12アリールであり、Wは独立してO又はSであり、Yは-NH-であり且つ存在又は不在になり得て、Lは、
【0024】
【0025】
から成る群から選択されるリンカーであり、式中、mは1、2、3、4、5、6、7及び8から成る群から選択される整数であり、各R5は独立してH又は各R6が独立してH若しくはC1-C6アルキルである-COOR6であり、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11及び12から成る群から選択される整数であり、pは1、2、3、4、5、6、7及び8から成る群から選択される整数であり、Chは1つ以上の金属又は放射性金属を含み得るキレート化部分である。
【0026】
式(I)は、国際公開第2009/002529号、国際公開第2010/108125号及び国際公開第2013/082338号のパンフレットで開示の化合物を含まず、特に、以下の化合物は、本願における組成物請求項から明確に排除される。
【0027】
【0028】
さらに特定の実施形態において、キレート化部分は、
【0029】
【0030】
から成る群から選択され、式中、qは1、2、3、4、5、6、7及び8から成る群から選択される整数である。
【0031】
さらに特定の実施形態において、式(I)の化合物は、
【0032】
【0033】
(式中、xは2及び3から成る群から選択され、Mは金属又は放射性金属である)から成る群から選択される、あるいはその医薬的に許容可能な塩である。
【0034】
幾つかの実施形態において、金属は、Gd、Lu、Ac、Bi、Pb、Cu、In、Sc及びYから成る群から選択される。特定の実施形態において、金属又は放射性金属は、Gd-157、Lu-177、Ac-225、Bi-212、Bi-213、Pb-203/Pb-212、Cu-67、In-111、Sc-44/Sc-47及びY-90から成る群から選択される。さらに特定の実施形態において、MRI用途の場合、非放射性金属はGd-157(安定した同位体)である。放射線治療用途の場合、放射性金属はLu-177、Ac-225、Bi-203、Pb-210、Cu-67、In-111、Sc-47及びY-90から成る群から選択される。PETイメージングの場合、放射性金属は、Y-86及びSc-44から成る群から選択される。また、SPECT用途の場合、放射性金属はLu-177及びIn-111から成る群から選択される。
【0035】
B.PSMA発現腫瘍又は細胞のMRイメージング及び/又は治療のための式(I)の化合物の使用方法
幾つかの実施形態において、本開示の主題は、1つ以上の前立腺特異的膜抗原(PSMA)腫瘍又は細胞のイメージング又は治療のための方法を提供し、この方法は、1つ以上の腫瘍又は細胞を有効量の式(I)の化合物と接触させ、イメージを形成することを含み、式(I)の化合物は、
【0036】
【0037】
(式中、Zはテトラゾール又はCO2Qであり、QはH又は保護基であり、X1及びX2はそれぞれ独立してNH又はOであり、aは1、2、3及び4から成る群から選択される整数であり、cは0、1、2、3及び4から成る群から選択される整数であり、各R1、R2、R3及びR4は独立してH又はC1-C4アルキルであり、Wは独立してO又はSであり、Yは-NH-であり且つ存在又は不在になり得て、Lは、
【0038】
【0039】
から成る群から選択されるリンカーであり、式中、mは1、2、3、4、5、6、7及び8から成る群から選択される整数であり、各R5は独立してH又は各R6が独立してH若しくはC1-C6アルキルである-COOR6であり、nは1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11及び12から成る群から選択される整数であり、pは1、2、3、4、5、6、7及び8から成る群から選択される整数であり、Chは1つ以上の金属又は放射性金属を含み得るキレート化部分である)又はその医薬的に許容可能な塩を含む。
【0040】
「接触」とは、本開示の主題のイメージング剤を含む少なくとも1種の化合物が少なくとも1つのPSMA発現腫瘍又は細胞と物理的に接触するに至る任意の動作を意味する。接触には、細胞又は腫瘍を化合物に、少なくとも1種の化合物と少なくとも1つの細胞又は腫瘍との接触が生じるに十分な量で曝露することを含み得る。この方法は、化合物及び細胞又は腫瘍を制御された環境下(例えば、培養皿又は試験管)で導入、好ましくは混合することでin vitro又はex vivoで実行し得る。この方法はin vivoで実行し得て、この場合、接触とは被験体における少なくとも1つの細胞又は腫瘍を本開示の主題の少なくとも1種の化合物に曝露することを意味し、例えば化合物の被験体への任意の適切な経路での投与である。本開示の主題において、接触は、化合物を、接触させる細胞から遠い位置で導入、曝露等し、被験体の身体機能又は体液の自然な(例えば、拡散)若しくは人為的な(例えば、かき混ぜ)動きにより化合物と細胞又は腫瘍とを接触させることを含み得る。幾つかの実施形態において、腫瘍又は細胞は、in vitro、in vivo又はex vivoで見られる。
【0041】
「イメージを形成」とは、磁場共鳴(MR)ベースを用いて(組織中の水分子において水素原子核を分極及び励起させることで検出可能な信号を生成する磁石)細胞、組織、腫瘍、身体の一部等のイメージを生成することを意味する。
【0042】
式(I)は、国際公開第2009/002529号、国際公開第2010/108125号及び国際公開第2013/082338号パンフレットで開示の化合物を含まず、特に、以下の化合物は、本願におけるイメージング請求項から明確に排除される。
【0043】
【0044】
さらに特定の実施形態において、キレート化部分は、
【0045】
【0046】
から成る群から選択され、式中、qは、1、2、3、4、5、6、7及び8から成る群から選択される整数である。
【0047】
さらに特定の実施形態において、化合物は、
【0048】
【0049】
(式中、xは2及び3から成る群から選択され、Mは金属又は放射性金属である)から成る群から選択され、あるいはその医薬的に許容可能な塩である。
【0050】
幾つかの実施形態において、金属は、Gd、Lu、Ac、Bi、Pb、Cu、In、Sc及びYから成る群から選択される。特定の実施形態において、金属又は放射性金属は、Gd-157、Lu-177、Ac-225、Bi-203、Pb-210、Cu-67、In-111、44Sc-/47Sc及びY-90から成る群から選択される。さらに特定の実施形態において、MRI用途の場合、非放射性金属はGd-157(安定した同位体)である。放射線治療用途の場合、放射性金属はLu-177、Ac-225、Bi-203、Pb-210、Cu-67、In-111、Sc-47及びY-90から成る群から選択される。PETイメージングの場合、放射性金属は、Y-86及びSc-44から成る群から選択される。また、SPECT用途の場合、放射性金属はLu-177及びIn-111から成る群から選択される。
【0051】
特定の実施形態において、1つ以上のPSMA発現腫瘍又は細胞は、前立腺腫瘍又は細胞、転移前立腺腫瘍又は細胞、肺腫瘍又は細胞、腎腫瘍又は細胞、グリオブラストーマ、膵腫瘍又は細胞、膀胱腫瘍又は細胞、肉腫、メラノーマ、乳腺腫瘍又は細胞、結腸腫瘍又は細胞、生殖細胞、褐色細胞腫、食道腫瘍又は細胞、胃腫瘍又は細胞及びこれらの組み合わせから成る群から選択される。さらに特定の実施形態において、1つ以上のPSMA発現腫瘍又は細胞は前立腺腫瘍又は細胞である。
【0052】
幾つかの実施形態において、1つ以上のPSMA発現腫瘍又は細胞はin vitro、in vivo又はex vivoである。特定の実施形態において、1つ以上のPSMA発現腫瘍又は細胞は被験体内に存在する。
【0053】
幾つかの実施形態において、腫瘍又は細胞は被験体において認められる。その数多くの実施形態における本開示の方法で治療する被験体は望ましくはヒト被験体である。ただし、本明細書に記載の方法は「被験体」という用語に含める全ての脊椎動物種に対して有効であると理解されたい。したがって、「被験体」は、医療目的、例えば既存の状態若しくは疾患の治療又はある状態若しくは疾患の発症を予防するための予防的治療をするヒト被験体あるいは医療、獣医学的目的若しくは開発目的の動物(ヒト以外)被験体を含み得る。適切な動物被験体は哺乳動物を含み、以下に限定するものではないが、霊長類、例えばヒト、サル、類人猿等、ウシ類、例えば畜牛、雄牛等、ヒツジ類、例えばヒツジ等、ヤギ類、例えばヤギ等、ブタ類、例えば子豚、成長したブタ等、ウマ類、例えばウマ、ロバ、シマウマ等、ネコ類(ヤマネコ及びイエネコを含む)、イヌ類(イヌを含む)、ウサギ類(ウサギ、野ウサギ等を含む)、齧歯類(マウス、ラット等を含む)である。動物はトランスジェニック動物になり得る。幾つかの実施形態において、被験体はヒトであり、以下に限定するものではないが、胎児、新生児、幼児、若年者及び成人の被験体が含まれる。
さらに、「被験体」は、ある状態又は疾患に悩まされている又は悩まされていると疑われる患者(患畜)を含み得る。したがって、ここでは用語「被験体」及び「患者(患畜)」を入れ替え可能に使用する。幾つかの実施形態において、被験体はヒトである。他の実施形態において、被験体は非ヒトである。
【0054】
幾つかの実施形態において、本開示の方法の検出可能なほどに有効な量のイメージング剤を被験体に投与する。本開示の主題において、「検出可能なほどに有効な量」のイメージング剤とは、臨床用途で利用可能な機器を用いて許容可能なイメージを得るのに十分な量と定義される。検出可能なほどに有効な量のイメージング剤は2回以上の注射により投与し得る。イメージング剤のこの検出可能なほどに有効な量は、個体の感受性の度合い、個体の年齢、性別及び体重、個体のイディオシンクラティックな応答、線量測定等の要素、また機器及びフィルムに関する要素に応じて変化し得る。そのような要素の最適化は、十分に当業者の技量レベルの範囲内である。
【0055】
本開示の主題の化合物が身体の組織から迅速に排出されることが好ましい。典型的には、本開示の主題の化合物は、身体から約24時間未満で排除される。より好ましくは、本開示の主題の化合物は身体から約16時間、12時間、8時間、6時間、4時間、2時間、90分又は60分未満で排除される。
【0056】
幾つかの実施形態において、本開示の方法は、イメージング剤を含む化合物の被験体の腫瘍又は細胞からのクリアランスを含む。本開示の方法の少なくとも1つの利点は、幾つかの実施形態において、イメージング剤を含む化合物の腎臓からのクリアランスが被験体の腫瘍からのクリアランスより迅速に起きることである。
【0057】
幾つかの実施形態において、本開示の方法ではin vivoで安定な化合物を使用するため、実質的に全て、例えば注射した化合物の約50%、60%、70%、80%又はより好ましくは90%を超える量が排出前に身体で代謝されない。他の実施形態において、イメージング剤を含む化合物はin vivoで安定である。
【0058】
C.定義
i.化学的な定義
当業者ならば式(I)の化合物に関する以下の用語を十分に理解できるであろうが、本開示の主題を説明し易くするために以下の定義を記す。これらの定義は、本開示を検討すれば当業者には明白である定義を補足、例示するためのものであり、それらの定義を除外するものではない。
【0059】
「任意で」という用語が先行するか否かに関わらず、本明細書における用語「置換」及び「置換基」は、当業者ならばわかるように、全ての原子の原子価が維持される限り、ある官能基を別の官能基に変更できる能力を指す。所与の構造における2箇所以上で指定の群から選択した2つ以上の置換基で置換し得る場合、置換基は各位置で同一又は異なり得る。置換基はさらに置換し得る(例えば、アリール基置換基はその近くに別の置換基、例えば別のアリール基を有し得て、このアリール基を1箇所以上でさらに、例えばフッ素で置換する)。
【0060】
置換基又は連結基を左から右に向かって書かれるその慣用の化学式で指定する場合、これらの基は等しく、構造を右から左に向かって書くことで生じる化学的に同じ置換基を包含し、例えばCH2O-は-OCH2-と同等であり、-C(=O)O-は-OC(=O)-と同等であり、-OC(=O)NR-は-NRC(=O)O-と同等である等である。
【0061】
本明細書において、内部置換基の横に結合がくる場合(例えば、-NRC(O)-)、原子の順序は固定され、基の方向は逆転せず、提示された方向で構造に挿入される。言い換えると、-NRC(O)-は-C(O)NR-とは異なる。本明細書において、用語C(O)(例えば、-NRC(O)-)はカルボニル(C=O)基を示すために用いられ、酸素は炭素に二重結合で結合している。
【0062】
「独立して選択される」という表現を用いる場合、言及されている置換基(例えば、基R1、R2等のR基、あるいは「m」及び「n」等の変数)は同一又は異なり得る。例えば、R1及びR2の両方が置換アルキルになり得て、あるいはR1は水素に成り得て、R2は置換アルキルになり得る等である。
【0063】
本明細書において置換基群に言及する際に使用する単数(a、an、a(n))を示す語は少なくとも1つを意味する。例えば、ある化合物を「ある(an)」アルキル又はアリールで置換する場合、この化合物は任意で少なくとも1つのアルキル及び/又は少なくとも1つのアリールで置換される。さらに、ある部分がR置換基で置換される場合、この基は「R置換された(る)」と言い得る。ある部分がR置換される場合、この部分は少なくとも1つのR置換基で置換され、各R置換基は任意で異なる。
【0064】
別段の定めがない限り、名前がついた「R」又は基は概してその名前を有する基に対応すると当該分野で認識される構造を有する。説明のために、上記の特定の代表的な「R」基を以下で定義する。
【0065】
本開示の化合物の説明は、当業者に公知の化学結合の原則により限定される。したがって、ある基を多数の置換基の1つ以上で置換し得る場合、そのような置換は、化学結合の原則に従い且つ本質的に不安定ではない及び/又は周囲条件下(例えば、水性、中和及び幾つかの公知の生理学的条件)では不安定になりやすいと当業者にはわかるであろう化合物が得られるように選択される。例えば、ヘテロシクロアルキル又はヘテロアリールを、当業者に公知の化学結合の原則に従って環ヘテロ原子を介して分子の残りに結合させることで本質的に不安定な化合物を回避する。
【0066】
本明細書における用語「炭化水素」は、水素及び炭素を含む全ての化学基を指す。炭化水素は置換又は非置換になり得る。当業者ならばわかるように、置換を行う際は全ての原子価を満たさなくてはならない。炭化水素は不飽和、飽和、分岐、非分岐、環状、多環式又は複素環式になり得る。実例となる炭化水素については後に詳しく定義するが、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、シクロプロピル、アリル、ビニル、n-ブチル、tert-ブチル、エチニル、シクロヘキシル、メトキシ、ジエチルアミノ等が含まれる。
【0067】
それ自身又は別の置換基の一部としての用語「アルキル」は、別段の定めがない限り、直鎖(すなわち、非分岐)若しくは分岐鎖、非環状若しくは環状炭化水素基又はこれらの組み合わせを意味し、完全に飽和、一価若しくは多価不飽和になり得て、二価及び多価の基を含み得て、指定の数の炭素原子を有する(すなわち、C1-C10は1~10個の炭素を意味する)。特定の実施形態において、用語「アルキル」は、1つの水素原子の除去により1~20個の炭素原子を含有する炭化水素部分から誘導されたC1-20包括的線状(すなわち、「直鎖」)、分岐又は環状の飽和又は少なくとも部分的に、場合によっては完全に不飽和の(すなわち、アルケニル及びアルキニル)炭化水素ラジカルを指す。
【0068】
代表的な飽和炭化水素基には、以下に限定するものではないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、sec-ペンチル、イソ-ペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、sec-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-デシル、n-ウンデシル、ドデシル、シクロヘキシル、(シクロヘキシル)メチル、シクロプロピルメチル並びにこれらの同族体及び異性体が含まれる。
【0069】
「分岐」とは、メチル、エチル又はプロピル等の低級アルキル基が線状アルキル鎖に結合しているアルキル基のことである。「低級アルキル」とは、1~約8個の炭素原子、例えば1、2、3、4、5、6、7又は8個の炭素原子を有するアルキル基のことである(すなわち、C1-8アルキル)。「高級アルキル」とは、約10~約20個の炭素原子、例えば10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個の炭素原子を有するアルキル基のことである。特定の実施形態において、「アルキル」とは特にはC1-8直鎖アルキルのことである。他の実施形態において、「アルキル」とは特にはC1-8分岐鎖アルキルのことである。
【0070】
特定の実施形態において、アルキル基はC1-C6アルキル基又はC1-C4アルキル基である。本明細書における用語「C1-C6アルキル」は、完全に飽和した直鎖、分岐又は環状C1-C6炭化水素及びそれらのハイブリッド、例えば(シクロアルキル)アルキルを意味する。C1-C6アルキル置換基の例には、メチル(Me)、エチル(Et)、プロピル(n-プロピル(n-Pr、nPr)、イソ-プロピル(i-Pr、1Pr)及びシクロプロピル(c-Pr、0Pr)を含む)、ブチル(n-ブチル(n-Bu、nBu)、イソ-ブチル(i-Bu、1Bu)、sec-ブチル(s-Bu、sBu)、tert-ブチル(t-Bu、1Bu)又はシクロブチル(c-Bu、0Bu)を含む)等が含まれる。
【0071】
アルキル基は任意で、同一又は異なり得る1つ以上のアルキル基置換基で置換し得る(「置換アルキル」)。用語「アルキル基置換基」には、以下に限定するものではないが、アルキル、置換アルキル、ハロ、アリールアミノ、アシル、ヒドロキシル、アリールオキシル、アルコキシル、アルキルチオ、アリールチオ、アラルキルオキシル、アラルキルチオ、カルボキシル、アルコキシカルボニル、オキソ及びシクロアルキルが含まれる。アルキル鎖に沿って任意で1つ以上の酸素、硫黄又は置換若しくは非置換窒素原子を挿入し得て、この窒素置換基は水素、低級アルキル(本明細書においては「アルキルアミノアルキル」とも称する)又はアリールである。
【0072】
したがって、本明細書において、用語「置換アルキル」には本明細書で定義したようなアルキル基が含まれ、アルキル基の1つ以上の原子又は官能基は、例えばアルキル、置換アルキル、ハロゲン、アリール、置換アリール、アルコキシル、ヒドロキシル、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、サルフェート及びメルカプトを含む、別の原子又は官能基で置換される。
【0073】
用語「ヘテロアルキル」は、それ自身で又は別の用語と組み合わされて、別段の定めがない限り、少なくとも1つの炭素原子並びにO、N、P、Si及びSから成る群から選択される少なくとも1つのヘテロ原子から成る安定した直鎖若しくは分岐鎖又は環状の炭化水素基あるいはこれらの組み合わせを意味し、窒素、リン及び硫黄原子は任意で酸化され得て、窒素ヘテロ原子は任意で四級化され得る。ヘテロ原子O、N、P、S及びSiはヘテロアルキル基の任意の内部位置又はアルキル基が分子の残りに結合している位置で置換され得る。例には、以下に限定するものではないが、-CH2-CH2-O-CH3、-CH2-CH2-NH-CH3、-CH2-CH2-N(CH3)-CH3、-CH2-S-CH2-CH3、-CH2-CH25-S(O)-CH3、-CH2-CH2-S(O)2-CH3、-CH=CH-O-CH3、-Si(CH3)3、-CH2-CH=N-OCH3、-CH=CH-N(CH3)- CH3、O-CH3、-O-CH2-CH3及び-CNが含まれる。最高2又は3個のヘテロ原子が連続し得て、例えば-CH2-NH-OCH3及び-CH2-O-Si(CH3)3である。
【0074】
上述したように、本明細書におけるヘテロアルキル基には、ヘテロ原子を介して分子の残りに結合する基、例えば-C(O)R’、-C(O)NR’、-NR’R”、-OR’、-SR及び/又は-SO2R’が含まれる。「ヘテロアルキル」と記載され、特定のヘテロアルキル基、例えば-NR’R等が続く場合、用語ヘテロアルキル及び-NR’R”は冗長でもなければ相互排他的でもないことがわかる。むしろ、具体的なヘテロアルキル基を記載することで明瞭になる。したがって、本明細書においては、用語「ヘテロアルキル」を特定のヘテロアルキル基、例えば-NR’R”等を排除するものと解釈すべきではない。
【0075】
用語「(シクロアルキル)アルキル」において、シクロアルキル及びアルキルは上で定義した通りであり、結合点はアルキル基上にある。この用語は、以下に限定するものではないが、シクロプロピルメチル、シクロペンチルメチル及びシクロヘキシルメチルを包含する。アルキル基は置換又は非置換となり得る。
【0076】
「環状」及び「シクロアルキル」とは、約3~約10個の炭素原子、例えば3、4、5、6、7、8、9又は10個の炭素原子の非芳香族単環又は多環系のことである。シクロアルキル基は任意で部分的に不飽和になり得る。また、シクロアルキル基は任意で、本明細書で定義したようなアルキル基置換基、オキソ及び/又はアルキレンで置換し得る。環状アルキル鎖に沿って任意で1つ以上の酸素、硫黄又は置換若しくは非置換窒素原子を挿入し得て、窒素置換基は水素、アルキル、置換アルキル、アリール又は置換アリールであるため、複素環基が得られる。代表的な単環式シクロアルキル環にはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル及びシクロヘプチルが含まれる。
【0077】
多環式シクロアルキル環には、アダマンチル、オクタヒドロナフチル、デカリン、カンファー、カンファン及びノルアダマンチル並びに縮合環系、例えばジヒドロ-及びテトラヒドロナフタレン等が含まれる。
【0078】
用語「シクロヘテロアルキル」又は「ヘテロシクロアルキル」は、同一又は異なり得て窒素(N)、酸素(O)、硫黄(S)、リン(P)及びケイ素(Si)から成る群から選択される1つ以上のヘテロ原子を含む、非芳香環系、不飽和又は部分不飽和環系、例えば3~10員置換又は非置換シクロアルキル環系を指し、また任意で1つ以上の二重結合を含み得る。
【0079】
シクロヘテロアルキル環は任意で他のシクロヘテロアルキル環及び/又は非芳香族炭化水素環に縮合又は別の形で結合し得る。複素環には、酸素、硫黄及び窒素から独立して選択される1~3個のヘテロ原子を有するものが含まれ、窒素及び硫黄ヘテロ原子は任意で酸化され得て、窒素ヘテロ原子は任意で四級化され得る。特定の実施形態において、用語「複素環」は、少なくとも1つの環原子がO、S及びNから選択されるヘテロ原子である非芳香族5、6若しくは7員環又は多環基を指し(窒素及び硫黄ヘテロ原子は任意で酸化され得る)、以下に限定するものではないが、二環又は三環式の基が含まれ、酸素、硫黄及び窒素から独立して選択される1~3個のヘテロ原子を有する縮合6員環を含み、(i)各5員環は0~2個の二重結合を有し、各6員環は0~2個の二重結合を有し、各7員環は0~3個の二重結合を有し、(ii)窒素及び硫黄ヘテロ原子は任意で酸化され得て、(iii)窒素ヘテロ原子は任意で四級化され得て、(iv)上記の複素環のいずれもがアリール又はヘテロアリール環に縮合し得る。代表的なシクロヘテロアルキル環系には、以下に限定するものではないが、ピロリジニル、ピロリニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、ピラゾリニル、ピペリジル、ピペラジニル、インドリニル、キヌクリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、チアジアジナニル、テトラヒドロフラニル等が含まれる。
【0080】
用語「シクロアルキル」及び「ヘテロシクロアルキル」は、それ自身で又は別の用語と組み合わされて、別段の定めがない限り、それぞれ「アルキル」及び「ヘテロアルキル」の環状版を表す。加えて、ヘテロシクロアルキルの場合、ヘテロ原子は複素環が分子の残りに結合する位置を占め得る。シクロアルキルの例には、以下に限定するものではないが、シクロペンチル、シクロヘキシル、1-シクロヘキセニル、3-シクロヘキセニル、シクロヘプチル等が含まれる。ヘテロシクロアルキルの例には、以下に限定するものではないが、1-(1,2,5,6-テトラヒドロピリジル)、1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4-モルホリニル、3-モルホリニル、テトラヒドロフラン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、テトラヒドロチエン-2-イル、テトラヒドロチエン-3-イル、1-ピペラジニル、2-ピペラジニル等が含まれる。用語「シクロアルキレン」及び「ヘテロシクロアルキレン」は、それぞれシクロアルキル及びヘテロシクロアルキルの二価誘導体を指す。
【0081】
本明細書における用語「シクロアルキルアルキル」は、上で定義したようなシクロアルキル基を指し、同じく上で定義したようなアルキル基を介して親分子部分に結合している。シクロアルキルアルキル基の例には、シクロプロピルメチル及びシクロペンチルエチルが含まれる。
【0082】
不飽和アルキル基は、1つ以上の二重結合又は三重結合を有するものである。不飽和アルキル基の例には、以下に限定するものではないが、ビニル、2-プロぺニル、クロチル、2-イソペンテニル、2-(ブタジエニル)、2,4-ペンタジエニル、3-(1,4-ペンタジエニル)、エチニル、1-及び3-プロピニル、3-ブチニル並びに高級同族体及び異性体が含まれる。炭化水素基に限定されるアルキル基は「ホモアルキル」と称される。
【0083】
とりわけ、本明細書における用語「アルケニル」は、1つの水素原子の除去により少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有するC1-20包括的直鎖又は分岐炭化水素部分から誘導される一価の基を指す。アルケニル基には、例えばエテニル(すなわち、ビニル)、プロぺニル、ブテニル、1-メチル-2-ブテン-1-イル、ペンテニル、ヘキセニル、オクテニル及びブタジエニルが含まれる。
【0084】
本明細書における用語「シクロアルケニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を有する環状炭化水素を指す。シクロアルケニル基の例には、シクロプロぺニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロペンタジエン、シクロヘキセニル、1,3-シクロヘキサジエン、シクロヘプテニル、シクロヘプタトリエニル及びシクロオクテニルが含まれる。
【0085】
本明細書における用語「アルキニル」は、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を有する指定の数の炭素原子の直鎖又は分岐C1-20炭化水素から誘導される一価の基を指す。「アルキニル」の例には、エチニル、2-プロピニル(プロパルギル)、1-プロピニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル及びアレニル基等が含まれる。
【0086】
用語「アルキレン」は、それ自身で又は別の置換基の一部として、1~約20個の炭素原子、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個の炭素原子を有するアルキル基から誘導される直鎖又は分岐二価脂肪族炭化水素基を指す。アルキレン基は直鎖、分岐又は環状になり得る。また、アルキレン基は任意で不飽和になり得る及び/又は1つ以上の「アルキル基置換基」で置換し得る。アルキレン基に沿って1つ以上の酸素、硫黄又は置換若しくは非置換窒素原子を任意で挿入し得て(本明細書では「アルキルアミノアルキル」とも称する)、窒素置換基は前述したようにアルキルである。例示的なアルキレン基には、メチレン(-CH2-);エチレン(-CH2-CH2-);プロピレン(-(CH2)3-);シクロヘキシレン(-C6H10-);-CH=CH-CH=CH-;-CH=CH-CH2-;-CH2CH2CH2CH2-、-CH2CH=CHCH2-、-CH2CsCCH2-、-CH2CH2CH(CH2CH2CH3)CH2-、-(CH2)q-N(R)-(CH2)r-(q及びrのそれぞれは独立して0~約20の整数、例えば0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20であり、Rは水素又は低級アルキルである);メチレンジオキシル(-O-CH2-O-)及びエチレンジオキシル(-O-(CH2)2-O-)が含まれる。アルキレン基は約2~約3個の炭素原子を有し得て且つ6~20個の炭素をさらに有し得る。典型的には、アルキル(又はアルキレン)基は1~24個の炭素原子を有し、10個以下の炭素原子を有する基は本開示の幾つかの実施形態である。「低級アルキル」又は「低級アルキレン」はより短い鎖のアルキル又はアルキレン基であり、概して8個以下の炭素原子を有する。
【0087】
用語「ヘテロアルキレン」は、それ自身又は別の置換基の一部として、ヘテロアルキルから誘導される二価の基を意味し、例えば-CH2-CH2-S-CH2-CH2-及び-CH2-S-CH2-CH2-NH-CH2-であるが、これらに限定されない。ヘテロアルキレン基に関して、ヘテロ原子は鎖末端の一方又は両方も占め得る(例えば、アルキレンオキソ、アルキレンジオキソ、アルキレンアミノ、アルキレンジアミノ等)。さらに、アルキレン及びヘテロアルキレン連結基の場合、連結基の向きは、連結基の式を書く方向で示されない。例えば、式:-C(O)OR’-は-C(O)OR’-及び-R’OC(O)-の両方を表す。
【0088】
用語「アリール」は、別段の定めがない限り、単環又は縮合若しくは共有結合される多環(例えば、1~3環)になり得る芳香族炭化水素置換基を意味する。
【0089】
用語「ヘテロアリール」は、N、O及びSから選択される1~4個のヘテロ原子(多環の場合はそれぞれ別の環における)を有するアリール基(又は環)を指し、窒素及び硫黄原子は任意で酸化され、窒素原子は任意で四級化される。ヘテロアリール基は炭素又はヘテロ原子を介して分子の残りに結合させ得る。アリール及びヘテロアリール基の非限定的な例には、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、4-ビフェニル、1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル、3-ピラゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル、ピラジニル、2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、2-フェニル-4-オキサゾリル、5-オキサゾリル、3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル、2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル、2-フリル、3-フリル、2-チエニル、3-チエニル、2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル、2-ピリミジル、4-ピリミジル、5-ベンゾチアゾリル、プリニル、2-ベンズイミダゾリル、5-インドリル、インダゾリル、1-イソキノリル、5-イソキノリル、2-キノキサリニル、5-キノキサリニル、3-キノリル及び6-キノリルが含まれる。上で挙げたアリール及びヘテロアリール環系のそれぞれについての置換基は、後述する許容可能な置換基の群から選択される。用語「アリーレン」及び「ヘテロアリーレン」は、それぞれアリール及びヘテロアリールの二価の形態を指す。
【0090】
簡潔にするために、他の用語と組み合わせて使用する場合の用語「アリール」(例えば、アリールオキソ、アリールチオキソ、アリールアルキル)には、上で定義したようなアリール及びヘテロアリール環の両方が含まれる。したがって、用語「アリールアルキル」及び「ヘテロアリールアルキル」は、アリール又はヘテロアリール基が、炭素原子(例えば、メチレン基)が例えば酸素原子で置換されたアルキル基(例えば、フェノキシメチル、2-ピリジルオキシメチル、3-(1-ナフチルオキシ)プロピル等)を含むアルキル基(例えば、ベンジル、フェネチル、ピリジルメチル、フリルメチル等)に結合した基を含むものとする。しかしながら、本明細書における用語「ハロアリール」は、1つ以上のハロゲンで置換されたアリールだけをその範囲に含むものとする。
【0091】
ヘテロアルキル、ヘテロシクロアルキル又はヘテロアリールが特定の数の員(例えば、「3~7員」)を含む場合、用語「員」は炭素又はヘテロ原子のことである。
【0092】
本明細書において、用語「アルキルアリール」は、上で定義したようなアリール基で置換された上で定義したようなアルキル基を含む。アリール基はアルキル基上の任意の位置で結合され得る。用語C4-C16アルキルアリールは、アルキル基及びアリール基上の炭素原子をまとめて数えて全部で4~16個の炭素原子を有するアルキルアリール基を含む。アルキルアリール基の例には、以下に限定するものではないが、ベンジル(フェニルメチル)、フェニルエチル及びナフチルメチルが含まれる。アルキルアリール基は置換又は非置換になり得る。置換基中の全原子がアルキルアリール基より大きくない限り、置換基はアルキルアリール基中の原子の総数にカウントされない。
【0093】
さらに、本明細書における式:
【0094】
【0095】
で概して表される構造は環構造、例えば、以下に限定するものではないが、3-炭素、4-炭素、5-炭素、6-炭素、7-炭素等の脂肪族及び/又は芳香族環状化合物(飽和環構造、部分飽和環構造、不飽和環構造を含む)のことであり、置換基であるR基を含み、R基は存在又は不在になり得て、存在する場合、1つ以上のR基はそれぞれ、環構造の1つ以上の利用可能な炭素原子上で置換され得る。R基の存在又は不在及びR基の数は変数「n」の値により決定され、nは概して0~環上の置換可能な炭素原子の数の値を有する整数である。2つ以上ある場合、各R基は、別のR基上ではなく環構造上の利用可能な炭素上で置換される。例えば、nが0~2である上の構造は、
【0096】
【0097】
を含むがこれらに限定されない化合物基等を含む。
【0098】
環構造中の結合を表す破線は、結合が環において存在又は不在となり得ることを示す。すなわち、環構造中の結合を表す破線は、環構造が、飽和環構造、部分飽和環構造及び不飽和環構造から成る群から選択されることを示す。
【0099】
下に示す例のような切れた結合を有する置換基は、置換基が示された位置で分子に直接結合することを意味する。追加のメチレン(CH2)基は含意されない。記号
【0100】
【0101】
は、分子の残りへの部分の結合点を示す。
【0102】
【0103】
下に示す例のような2つの切れた結合を有する置換基は、原子の向きが左から右へと記載の通りであることを意味し、図に示す方向で分子に挿入すべきである。別段の定めがない限り、追加のメチレン(CH2)基は含意されない。
【0104】
【0105】
芳香環又は複素芳香環の名をあげられた原子が「不在」であると定義される場合、この名をあげられた原子は直接結合で置き換えられる。
【0106】
上記の用語のそれぞれ(例えば、「アルキル」、「ヘテロアルキル」、「シクロアルキル」、「ヘテロシクロアルキル」、「アリール」、「ヘテロアリール」、「ホスホネート」及び「スルホネート」並びにこれらの二価誘導体」)は、指示された基の置換及び非置換の両方の形態を含むものとする。各タイプの基についての任意の置換基を下に挙げる。
【0107】
アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル一価及び二価誘導体基(アルキレン、アルケニル、ヘテロアルキレン、ヘテロアルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、シクロアルケニル及びヘテロシクロアルケニルと称されることが多い基を含む)のための置換基は、以下に限定されるものではないが、-OR’、=O、=NR’、=N-OR’、-NR’R”、-SR’、-ハロゲン、-SiR’R”R’”、-OC(O)R’、-C(O)R’、-CO2R’、-C(O)NR’R”、-OC(O)NR’R”、-NR”C(O)R’、-NR’-C(O)NR”R’”、-NR”C(O)OR’、-NR-C(NR’R”)=NR’”、-S(O)R’、-S(O)2R’、-S(O)2NR’R”、-NRSO2R’、-CN及び-NO2から選択される0~(2m’+l)の数の多種多様な基の1つ以上になり得て、m’はそのような基の炭素原子の総数である。R’、R”、R’”及びR””はそれぞれ独立して水素、置換又は非置換ヘテロアルキル、置換又は非置換シクロアルキル、置換又は非置換ヘテロシクロアルキル、置換又は非置換アリール(例えば、1~3個のハロゲンで置換したアリール)、置換又は非置換のアルキル、アルコキシ又はチオアルコキシ基、あるいはアリールアルキル基を指し得る。本明細書において、「アルコキシ」基は二価酸素を介して分子の残りに結合したアルキルである。本開示の化合物が例えば2つ以上のR基を含む場合、各R基は独立して選択され、2つ以上が存在する場合の各R’、R”、R’”及びR””基と同様である。R’及びR”が同じ窒素原子に結合する場合、これらは窒素原子を組み合わされて4-、5-、6-又は7員環を形成し得る。例えば、-NR’R”は、以下に限定するものではないが、1-ピロリジニル及び4-モルホリニルを含むものとする。置換基に関する上の論考から、当業者ならば、用語「アルキル」は水素基以外の基に結合した炭素原子を含む基、例えばハロアルキル(例えば、-CF3及び-CH2CF3)及びアシル(例えば、-C(O)CH3、-C(O)CF3、-C(O)CH2OCH3等)を含むものとすることがわかる。
【0108】
上でアルキル基に関して説明した置換基と同様に、アリール及びヘテロアリール基(及びこれらの二価誘導体)のための置換基例は様々であり、ゼロ~芳香環系の空の原子価(open valence)の総数である数で例えばハロゲン、-OR’、-NR’R”、-SR’、-ハロゲン、-SiR’R”R’”、-OC(O)R’、-C(O)R’、-CO2R’、-C(O)NR’R”、-OC(O)NR’R”、-NR”C(O)R’、-NR’-C(O)NR”R’”、-NR”C(O)OR’、-NR-C(NR’R”R’”)=NR””、-NR-C(NR’R”)=NR’”-S(O)R’、-S(O)2R’、-S(O)2NR’R”、-NRSO2R’、-CN及び-NO2、-R’、-N3、-CH(Ph)2、フルオロ(C1-C4)アルコキソ並びにフルオロ(C1-C4)アルキルから選択され、R’、R”、R’”及びR””は独立して水素、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換ヘテロアルキル、置換又は非置換シクロアルキル、置換又は非置換ヘテロシクロアルキル、置換又は非置換アリール及び置換又は非置換ヘテロアリールから選択され得る。本開示の化合物が例えば2つ以上のR基を含む場合、各R基は独立して選択され、2つ以上が存在する場合の各R’、R”、R’”及びR””基と同様である。
【0109】
アリール又はヘテロアリール環の隣接する原子上にある置換基のうち2つは任意で式-T-C(O)-(CRR’)q-U-の環を形成し得て、T及びUは独立して-NR-、-O-、-CRR’-又は一重結合であり、qは0~3の整数である。あるいは、アリール又はヘテロアリール環の隣接する原子上の置換基のうち2つは任意で式-A-(CH2)r-B-の置換基で置換し得て、A及びBは独立して-CRR’-、-O-、-NR-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-、-S(O)2NR’-又は一重結合であり、rは1~4の整数である。
【0110】
このようにして新たに形成された環の一重結合の1つは任意で二重結合で置き換えられ得る。あるいは、アリール又はヘテロアリール環の隣接する原子上の置換基のうち2つは任意で式-(CRR’)s-X’-(C”R’”)d-の置換基で置換し得て、s及びdは独立して0~3の整数であり、X’は-O-、-NR’-、-S-、-S(O)-、-S(O)2-又は-S(O)2NR’-である。置換基R、R’、R”及びR’”は独立して水素、置換又は非置換アルキル、置換又は非置換シクロアルキル、置換又は非置換ヘテロシクロアルキル、置換又は非置換アリール及び置換又は非置換ヘテロアリールから選択し得る。
【0111】
本明細書において、用語「アシル」は、カルボキシル基の-OHが別の置換基で置換され且つ一般式RC(=O)-を有する有機酸基を指し、Rは本明細書で定義したようなアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、炭素環、複素環又は芳香族複素環基である。そのため、用語「アシル」には具体的にはアリールアシル基、例えばアセチルフラン及びフェナシル基が含まれる。アシル基の具体例にはアセチル及びベンゾイルが含まれる。
【0112】
用語「アルコキシル」又は「アルコキシ」は本明細書において入れ替え可能に使用され、また酸素原子を介して親分子部分に結合した飽和(すなわち、アルキル-O-)又は不飽和(すなわち、アルケニル-O-及びアルキニル-O-)基を指し、用語「アルキル」、「アルケニル」及び「アルキニル」は上述した通りであり、C1-20包括的線状、分岐又は環状の飽和又は不飽和オキソ-炭化水素鎖を含み得て、例えばメトキシル、エトキシル、プロポキシル、イソプロポキシル、n-ブトキシル、sec-ブトキシル、t-ブトキシル及びn-ペントキシル、ネオペントキシル、n-ヘキソキシル等が含まれる。
【0113】
本明細書における用語「アルコキシアルキル」は、アルキル-O-アルキルエーテルを指し、例えばメトキシエチル又はエトキシメチル基である。
【0114】
「アリールオキシル」とは、アリール基が置換アリールを含めた上述したようなものであるアリール-O-基のことである。本明細書における用語「アリールオキシル」は、フェニルオキシル又はヘキシルオキシル及びアルキル、置換アルキル、ハロ又はアルコキシル置換フェニルオキシル又はヘキシルオキシを指し得る。
【0115】
「アラルキル」とは、アリール及びアルキルが上述したようなものであり且つ置換アリール及び置換アルキルを含むアリール-アルキル基のことである。例示的なアラルキル基にはベンジル、フェニルエチル及びナフチルメチルが含まれる。
【0116】
「アラルキルオキシル」とは、アラルキル基が上述したようなものであるアラルキル-O-基のことである。例示的なアラルキルオキシル基はベンジルオキシルである。
【0117】
「アルコキシカルボニル」とは、アルキル-O-CO-基のことである。例示的なアルコキシカルボニル基には、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、ブチルオキシカルボニル及びt-ブチルオキシカルボニルが含まれる。
【0118】
「アリールオキシカルボニル」とは、アリール-O-CO-基のことである。例示的なアリールオキシカルボニル基には、フェノキシ-及びナフトキシ-カルボニルが含まれる。
【0119】
「アラルコキシカルボニル」とは、アラルキル-O-CO-基のことである。例示的なアラルコキシカルボニル基は、ベンジルオキシカルボニルである。
【0120】
「カルバモイル」とは、式-CONH2のアミド基のことである。「アルキルカルバモイル」とはR’RN-CO-基のことであり、R及びR’の一方は水素であり、R及びR’のもう一方は上述したようなアルキル及び/又は置換アルキルである。「ジアルキルカルバモイル」とはR’RN-CO-基であり、R及びR’のそれぞれは独立して上述したようなアルキル及び/又は置換アルキルである。
【0121】
本明細書における用語「カルボニルジオキシル」は、式:-O-CO-ORのカルボネート基を指す。
【0122】
「アシルオキシル」とはアシル-O-基のことであり、アシルは上述した通りである。
【0123】
用語「アミノ」は-NH2基を指し、有機ラジカルによる1つ以上の水素ラジカルの置換によりアンモニアから誘導される当該分野で公知の窒素含有基も指す。例えば、用語「アシルアミノ」及び「アルキルアミノ」は、それぞれアシル及びアルキル置換基を有する特定のN置換有機ラジカルを指す。
【0124】
本明細書における「アミノアルキル」とは、アルキレンリンカーに共有結合したアミノ基のことである。特には、本明細書における用語アルキルアミノ、ジアルキルアミノ及びトリアルキルアミノは、上で定義したような、窒素原子を介して親分子部分に結合したそれぞれ1、2又は3個のアルキル基を指す。用語アルキルアミノは構造-NHR’を有する基を指し、R’は上で定義したようなアルキル基である。用語ジアルキルアミノは-NR’R”の構造を有する基を指し、R’及びR”はそれぞれ独立してアルキル基から成る群から選択される。用語トリアルキルアミノは-NR’R”R”’の構造を有する基を指し、R’、R”及びR’”はそれぞれ独立してアルキル基から成る群から選択される。加えて、R’、R”及び/又はR’”はまとめて任意で-(CH2)k-になり得て、kは2~6の整数である。例には、以下に限定するものではないが、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノ、ジエチルアミノカルボニル、メチルエチルアミノ、イソ-プロピルアミノ、ピペリジノ、トリメチルアミノ及びプロピルアミノが含まれる。
【0125】
アミノ基は-NR’R”であり、R’及びR”は典型的には水素、置換若しくは非置換アルキル、置換若しくは非置換ヘテロアルキル、置換若しくは非置換シクロアルキル、置換若しくは非置換ヘテロシクロアルキル、置換若しくは非置換アリール又は置換若しくは非置換ヘテロアリールから選択される。
【0126】
用語アルキルチオエーテル及びチオアルコキシルは、硫黄原子を介して親分子部分に結合した飽和(すなわち、アルキル-S-)又は不飽和(すなわち、アルケニル-S-及びアルキニル-S-)基を指す。チオアルコキシル部分の例には、以下に限定するものではないが、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、n-ブチルチオ等が含まれる。
【0127】
「アシルアミノ」とはアシル-NH-基のことであり、アシルは上述した通りのものである。「アロイルアミノ」とはアロイル-NH-基のことであり、アロイルは上述した通りのものである。
【0128】
用語「カルボニル」は-(C=O)-基を指す。
【0129】
用語「カルボキシル」は-COOH基を指す。そのような基は本明細書において「カルボン酸」部分とも称される。
【0130】
本明細書における用語「ハロ」、「ハロゲン化物」又は「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨード基を指す。加えて、「ハロアルキル」等の用語は、モノハロアルキル及びポリハロアルキルを含むものとする。例えば、用語「ハロ(C1-C4)アルキル」は、以下に限定するものではないが、トリフルオロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、4-クロロブチル、3-ブロモプロピル等を含むものとする。
【0131】
用語「ヒドロキシル」は-OH基を指す。
【0132】
用語「ヒドロキシアルキル」は、-OH基で置換されたアルキル基を指す。
【0133】
用語「メルカプト」は-SH基を指す。
【0134】
本明細書における用語「オキソ」は、炭素原子又は別の元素に二重結合している酸素原子を意味する。
【0135】
用語「ニトロ」は-NO2基を指す。
【0136】
用語「チオ」は、炭素又は酸素原子が硫黄原子で置換された前述の化合物を指す。
【0137】
用語「サルフェート」は-SO4基を指す。
【0138】
本明細書における用語チオヒドロキシル又はチオールは、式:-SHの基を指す。
【0139】
用語ウレイドは、式:-NH-CO-NH2の尿素基を指す。
【0140】
明確に別の定義がなされない限り、本明細書における「置換基」には、以下の部分の1つ以上から選択される官能基が含まれ、これらは本明細書において以下のように定義される。
(A)-OH、-NH2、-SH、-CN、-CF3、-NO2、オキソ、ハロゲン、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、非置換アリール、非置換ヘテロアリール並びに
(B)アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール及びヘテロアリール。Bの基は、
(i)オキソ、-OH、-NH2、-SH、-CN、-CF3、-NO2、ハロゲン、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、非置換アリール、非置換ヘテロアリール及び
(ii)アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール及びヘテロアリール
から選択される少なくとも1つの置換基で置換され、(ii)の基は、
(a)オキソ、-OH、-NH2、-SH、-CN、-CF3、-NO2、ハロゲン、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、非置換アリール、非置換ヘテロアリール及び
(b)アルキル、ヘテロアルキル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール又はヘテロアリール
から選択される少なくとも1つの置換基で置換され、(b)の基は、オキソ、-OH、-NH2、-SH、-CN、-CF3、-NO2、ハロゲン、非置換アルキル、非置換ヘテロアルキル、非置換シクロアルキル、非置換ヘテロシクロアルキル、非置換アリール及び非置換ヘテロアリールから選択される少なくとも1つの置換基で置換される。
【0141】
本明細書における「低級置換」又は「低級置換基」は、「置換基」について上述した置換基の全てから選択される基を意味し、各置換又は非置換アルキルは置換又は非置換C1-C8アルキルであり、各置換又は非置換ヘテロアルキルは置換又は非置換2~8員ヘテロアルキルであり、各置換又は非置換シクロアルキルは置換又は非置換C5-C7シクロアルキルであり、各置換又は非置換ヘテロシクロアルキルは置換又は非置換5~7員ヘテロシクロアルキルである。
【0142】
本明細書における「サイズ限定置換」又は「サイズ限定置換基」は、「置換基」について上述した置換基の全てから選択される基を意味し、各置換又は非置換アルキルは置換又は非置換C1-C20アルキルであり、各置換又は非置換ヘテロアルキルは置換又は非置換2~20員ヘテロアルキルであり、各置換又は非置換シクロアルキルは置換又は非置換C4-C8シクロアルキルであり、各置換又は非置換ヘテロシクロアルキルは置換又は非置換4~8員ヘテロシクロアルキルである。
【0143】
明細書及び請求項全体を通して、任意の化学式又は名称は、全ての互変異性体、同族体並びに光学及び立体異性体、またそのような異性体及び混合物が存在するラセミ混合物を包含する。
【0144】
本開示の特定の化合物が互変異性体形態で存在し得ることは当業者に明白であり、化合物の全てのそのような互変異性体形態は本開示の範囲内にある。本明細書における用語「互変異性体」は、平衡で存在し且つ一方の異性体形態からもう一方へと速やかに変換される2つ以上の構造異性体の1つを指す。
【0145】
別段の定めがない限り、本明細書で述べる構造体は、その構造体の全ての立体化学的形態、すなわち各不斉中心に対するR及びS立体配置も含むものとする。したがって、本発明の化合物の単一の立体化学異性体並びにエナンチオマー及びジアステレオマー混合物は本開示の範囲にある。
【0146】
本開示の特定の化合物は不斉炭素原子(光学又はキラル中心)又は二重結合を有する。エナンチオマー、ラセミ化合物、ジアステレオマー、互変異性体、幾何異性体、絶対立体化学の観点から(R)-若しくは(S)-又はアミノ酸の場合は(D)-若しくは(L)-と定義され得る立体異性体及び個々の異性体は本開示の範囲に包含される。本開示の化合物は、不安定過ぎて合成及び/又は単離できないと当該分野で公知であるものは含まない。本開示は、ラセミ及び光学的に純粋な形態の化合物を含むものとする。光学的に活性な(R)-及び(S)-又は(D)-及び(L)-異性体は、キラルシントン又はキラル試薬を使用して調製し得て、あるいは慣用の技法を用いて分割し得る。本明細書に記載の化合物がオレフィン結合又は他の幾何学的不斉中心を含む場合、別段の定めがない限り、化合物はE及びZの両方の幾何異性体を含むものとする。
【0147】
光学的に活性な形態をいかにして調製するかは当該分野で周知であり、例えばラセミ体(ラセミ化合物)の分割、不斉合成又は光学的に活性な出発原料からの合成である。ラセミ化合物の分割は、例えば、分割剤の存在下での結晶化又は例えばキラルHPLCカラムを使用したクロマトグラフィ等の慣用の方法で達成できる。オレフィン、C=N二重結合等の数多くの幾何異性体も本明細書に記載の化合物中に存在し得て、そのような安定した異性体は全て本開示の主題において想定される。本開示の主題の化合物のシス及びトランス幾何異性体について説明がなされ、異性体の混合物として又は分離した異性体形態として単離し得る。特定の立体化学又は異性体形態を具体的に示さない限り、全てのキラル(エナンチオマー的及びジアステレオマー的)及びラセミ形態、またある構造の全ての幾何異性体形態が意図されている。
【0148】
本明細書に記載の化合物は1つ以上の荷電原子を有し得る。例えば、化合物は双性イオン的に成り得るが、全体として中性になり得る。他の実施形態は、pH及び他の要素に応じて1つ以上の電荷基を有し得る。これらの実施形態において、化合物は、適切な対イオンと会合し得る。いかにして塩を調製する又は対イオンを交換するかは当該分野で周知である。概して、そのような塩は、遊離酸形態のこれらの化合物を化学量論量の適切な塩基(例えば、Na、Ca、Mg又はK水酸化物、カーボネート、重炭酸塩等)と反応させる、あるいは遊離塩基形態のこれらの化合物を化学量論量の適切な酸と反応させることで調製し得る。そのような反応は典型的には水又は有機溶媒又はこれら2つの混合物中で行われる。対イオンは、例えば、イオン交換クロマトグラフィ等のイオン交換技法により変更し得る。対イオン又は塩を具体的に示さない限り、全ての双性イオン、塩及び対イオンが意図される。特定の実施形態において、塩又は対イオンは、被験体に投与するために、医薬的に許容可能なものになり得る。医薬的に許容可能な塩について後述する。
【0149】
本明細書において、「保護基」は、分子中の再生された官能基又は他の官能基を攻撃しない入手が容易な試薬により選択的に除去可能な化学置換基である。適切な保護基は当該分野で公知であり且つ開発され続けている。適切な保護基は、例えばWutz et al.(”Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis,Fourth Edition,”Wiley-Interscience,2007)で見つけられる。Wutz et al.(pp.533-643)に記載されるような、カルボキシル基を保護するための保護基を特定の実施形態において使用する。幾つかの実施形態において、保護基は酸処理により除去可能である。保護基の具体例には、以下に限定するものではないが、ベンジル、p-メトキシベンジル(PMB)、第三級ブチル(tBu)、メトキシメチル(MOM)、メトキシエトキシメチル(MEM)、メチルチオメチル(MTM)、テトラヒドロピラニル(THP)、テトラヒドロフラニル(THF)、ベンジルオキシメチル(BOM)、トリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、t-ブチルジメチルシリル(TBDMS)及びトリフェニルメチル(トリチル、Tr)が含まれる。当業者ならば、保護基が必要な適切な状況を認識し、また特定の環境での使用に適した保護基を選択できる。
【0150】
別段の定めがない限り、本明細書に記す構造体は、1つ以上の同位体濃縮原子の存在においてのみ異なる化合物も含むものとする。例えば、水素を重水素又はトリチウムで置換、あるいは炭素を13C-又は14C濃縮炭素で置換した以外は本構造を有する化合物は、本開示の範囲内にある。
【0151】
本開示の化合物は、そのような化合物を構成する原子の1つ以上で不自然な割合の原子同位体も含有し得る。例えば、化合物を放射性同位体、例えばトリチウム(3H)、ヨウ素-125(125I)又は炭素-14(14C)で放射標識し得る。本開示の化合物の全ての同位体的変化形が、放射性であるか否かを問わず、本開示の範囲に包含される。
【0152】
ii.医薬的な塩
本開示の化合物は、医薬的に許容可能な塩として存在し得る。用語「医薬的に許容可能な塩」は、本明細書に記載の化合物上で見られる特定の置換部分に応じて、比較的毒性がない酸又は塩基で調製する活性な化合物の塩を含むものとする。医薬的に許容可能な塩は概して当業者に周知であり、また、限定ではなく例として挙げるが、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、ベシル酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、酒石酸水素塩、臭化物、エデト酸カルシウム、カルンシレート(carnsylate)、炭酸塩、クエン酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストレート(estolate)、エシレート(esylate)、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘキシルレゾルシネート、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエート、ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、ムチン酸塩、ナプシレート(napsylate)、硝酸塩、パモ酸塩(エンボネート)、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩(例えば、(+)-酒石酸塩、(-)-酒石酸塩又はラセミ混合物を含めたこれらの混合物)又はテオクル酸塩を含み得る。これらの塩は当業者に公知の方法により調製し得る。他の医薬的に許容可能な塩は、例えばRemington:The Science and Practice of Pharmacy(20th ed.)Lippincott,Williams&Wilkins(2000)に見られる。
【0153】
塩基付加塩、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、アンモニウム、有機アミノ若しくはマグネシウム塩又は同様の塩も含まれる。本開示の化合物が相対的に塩基性の官能基を含む場合、酸付加塩は、そのような化合物の中性形態を純粋又は適切な不活性溶媒中で十分な量の所望の酸と接触させることで得られる。許容可能な酸付加塩の例には、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、一水素炭酸、リン酸、一水素リン酸、二水素リン酸、硫酸、一水素硫酸、ヨウ化水素酸又は亜リン酸等から誘導されるもの、また有機酸、例えば酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸等から誘導される塩が含まれる。
【0154】
アルギニン酸塩(arginate)等のアミノ酸の塩及びグルクロン酸又はガラクツロン酸等の有機酸の塩も含まれ、例えばBerge et al.,”Pharmaceutical Salts”,Journal of Pharmaceutical Science,1977,66,1-19)を参照のこと。本開示のある特定の化合物は、化合物の塩基付加塩又は酸付加塩への変換を可能にする塩基性及び酸性の両方の官能基を有する。化合物の中性形態は、塩を塩基又は酸と接触させ、親化合物を慣用の方法で単離することで再生し得る。化合物の親形態は、特定の物理的性質、例えば極性溶媒における溶解性において様々な塩形態とは異なる。
【0155】
本開示の特定の化合物は、非溶媒和形態及び溶媒和形態(水和物形態を含む)で存在し得る。概して、溶媒和形態は非溶媒和形態と等価であり、本開示の範囲に包含される。本開示の特定の化合物は、様々な結晶又は非晶質形態で存在し得る。概して、本発明で想定される用途にとって全ての物理的形態は等価であり、本開示の範囲内にあるものとする。
【0156】
iii.全般的な定義
本明細書では特定の用語を用いるものの、これらは一般的且つ叙述的な意味で用いられているにすぎず、限定を目的としたものではない。明確するために、特定の定義をここに記す。別段の定義がない限り、本明細書で使用の全ての技術的及び科学的な用語は、本明細書に記載の主題が属する技術分野の当業者により一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0157】
動物における「がん」とは、がんを引き起こす細胞に典型的な特徴、例えば無制御な増殖、特殊化された機能の喪失、不死性、顕著な転移能、抗アポトーシス活性の顕著な向上、速い成長及び増殖速度並びに特定の特徴的なモルホロジー及び細胞マーカーを有する細胞の存在のことである。状況によって、がん細胞は腫瘍の形態をとり、そのような細胞は動物の体内に局所的に存在し得て、あるいは独立した細胞として血流中を循環する。
【0158】
「コントロール」とは、標準又は基準条件を意味する。
【0159】
「疾患」は、細胞、組織、臓器、有機体又は被験体の正常な機能を損なう又は干渉する任意の状態又は障害を意味する。
【0160】
ある物質の「有効量」とは、コントロールと比較した場合に、所望の生物学的応答又は測定可能な差を引き出すのに十分なその物質の量のことである。当業者ならばわかるように、疾患、障害、状態又は損傷を治療するのに有効な特定の物質の絶対量は、送達する物質、投与形式、被験体の年齢、体重及び全身の健康、所望の生物学的エンドポイント、所望の治療効果等の要素に応じて変化し得る。究極的には、担当臨床家が適切な量及び投薬レジメンを決定する。例えば、ある物質の「有効量」は、その化合物をイメージングに使用した場合に測定可能なイメージを生成するのに十分な量、あるいはその化合物を治療に使用した場合に疾患の症状を改善するのに十分な量になり得る。当業者ならば、有効量のある物質を1回で投与できるか、あるいは複数回に分けた投与で達成できるかも理解できる。
【0161】
本明細書における用語「投与」は、被験体を本開示の物質と接触させることである。
【0162】
長きにわたる特許法の慣例にしたがい、請求項を含め、本願において、単数の不定冠詞及び定冠詞は「1つ以上」を示す。したがって、例えば、「ある被験体」という場合には、文脈からそうではないことが明らかな場合を除き(例えば、複数の被験体)、複数の被験体が含まれ、他も同様である。
【0163】
本明細書及び請求項全体を通して、用語「含む(備える)(comprise)」は、文脈からそうではないことが明らかな場合を除き、非排他的な意味で用いられる。同様に、用語「含む(include)」及びその文法的な変化形は非限定的であるとするため、品目を一覧にして挙げることは、その一覧にした品目と置き換え得る又はそれに加え得る他の同様の品目を排除しない。
【0164】
本明細書及び添付の請求項を目的として、別段の定めがない限り、量、サイズ、寸法、割合、形状、配合率、パラメータ、百分率、パラメータ、数量、特徴を表す全ての数並びに明細書及び請求項で用いられる他の数値は、用語「約」が値、量又は範囲に特につけられていなくとも、全ての場合において、用語「約」で修飾されているものと理解されたい。したがって、別段の定めがない限り、以下の明細書及び添付の請求項に記載の数値パラメータは厳密ではなく、また厳密である必要はなく、本開示の主題で得ようとする所望の性質に応じて、近似値及び/又は必要に応じてそれより大きく若しくは小さく成り得て、公差、慣例的な要素、四捨五入、測定エラー等、また当業者に公知の他の要素を反映する。例えば、ある値に言及する際の用語「約」は、指定した量の、幾つかの実施形態において±100%、幾つかの実施形態において±50%、幾つかの実施形態において±20%、幾つかの実施形態において±10%、幾つかの実施形態において±5%、幾つかの実施形態において±1%、幾つかの実施形態において±0.5%及び幾つかの実施形態において±0.1%の変動を含むものとなり得る。これはそのような変動が開示の方法を実行するのに、あるいは開示の組成物を用いるのに適切だからである。
【0165】
さらに、1つ以上の数又は数値範囲との関連で用語「約」を使用する場合、ある範囲内の全ての数を含めた全てのそのような数を指すと理解すべきであり、またこの用語は、記載の数値の上下に境界を広げることでその範囲を加減する。エンドポイントで数値範囲を記載することで、全ての数、例えば、その範囲に含まれる整数(その分数を含む)(例えば、1~5と記載した場合は1、2、3、4及び5、そしてその分数、例えば1.5、2.25、3.75、4.1等が含まれる)及びその範囲内の任意の範囲が含まれる。
【実施例】
【0166】
本開示の主題の代表的な実施形態を実践するにあたって当業者への手引きとなるように以下の実施例を含めた。本開示及び当該分野における一般的な技術レベルを踏まえると、当業者ならば、以下の実施例が例示を目的としたものにすぎず、多数の変更、改変及び修正を本開示の主題の範囲から逸脱することなく加え得ることがわかる。後出の合成に関する記述及び具体例は説明の便宜上のものにすぎず、他の方法により開示の化合物を生成するにあたっていかなる形でも限定的であると解釈されない。
【0167】
実施例1
ガドリニウム(Gd)系コントラスト剤の合成及び評価
概要
解剖学的、機能的及び分子的な情報を同時に得られることから、磁気共鳴(MR)イメージングは有利である。MR分子イメージングは、この確立された広く普及している臨床モダリティ及びその高い空間分解能を分子プロファイリングとin vivoで組み合わせることができる。しかしながら、MRの感度は本質的に低いため、認識可能なMRコントラストを生成するには高い局所濃度の生物学的標的が必要とされる。発明者は、その標的細胞における高い濃度、標的ではない組織での限定的な発現及び細胞表面上でのアクセス性から、前立腺がんのイメージング及び治療にとって魅力的な標的である前立腺特異的膜抗原(PSMA)が、MRベースの分子イメージングにとって適切なバイオマーカーとしての役割を果たせるとの仮説をたてた。これを目的として、1分子あたり1~3のGdキレートでそれぞれGd1、Gd2、Gd3と等級分けされた3種の高親和性低分子量ガドリニウム(Gd)(III)系PSMA標的コントラスト剤を合成した(
図1A)。この研究の目的は、合成した物質のPSMA結合親和性及び縦緩和度(r
1)を評価することであった。PSMA発現細胞(アイソジェニック)、非発現コントロール細胞における物質の細胞取り込みを、高周波誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)により評価した。最期に、その物質のPSMA発現細胞をコントロール細胞から区別する能力をin vitro及びin vivoの両方でMRイメージングにより評価した。
【0168】
材料及び方法
(21S,25S)-8,15,23-トリオキソ-1-((4-((1,4,7,10-テトラキス(カルボキシメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-2-イル)メチル)フェニル)アミノ)-1-チオキソ-2,7,16,22,24-ペンタアザヘプタコサン-21,25,27-トリカルボン酸、Gd1
化合物Gd1を最近の報告にしたがって調製した。化合物1を後述する3つのステップで調製した。市販のN-Boc-1,4ジアミノブタン(68mg、0.36mmol、0.5mlのDMSO中)を1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ酢酸、2-[(4-イソチオシアナトフェニル)メチル](p-SCN-Bn-DOTA)(192mg、0.28mmol、2.5mLのDMSO中)及びDIEA(132μl、0.75mmol)と混合し、40℃で4時間にわたって撹拌した。
溶媒を蒸発させ、固形残留物を逆相C18フラッシュクロマトグラフィ(5.5g、Agilent SF10)により水及びアセトニトリル(それぞれ0.1%TFA)を使用して精製するとBoc-保護7が凍結乾燥後に得られた。収率:146mg、約55%。ESI-MS 740[M+H]+。そのステップで得られた化合物を次に氷冷TFA/CH2Cl2(1/1)溶液で処理し、周囲温度で2時間にわたって撹拌した。溶媒を蒸発させ、残留物を真空下で乾燥させ、逆相フラッシュクロマトグラフィ(5.5g、Agilent SF10)で精製すると7が適度な収率で得られた。溶媒を蒸発させ、残留物を真空下で乾燥させ、逆相フラッシュクロマトグラフィ(5.5g、Agilent SF10)で精製すると7が得られた。収率約104mg、40%。1H NMR(DMSO-d6)δ:8.80-8.64(m、1H)、8.12-7.90(m、2H)、7.75-7.10(bm、4H)、4.65-4.63(m、1H)、4.17-2.59(m、27H)、2.40-1.11(m、6H)。ESI-MS:640[M+1]+。7の溶液(110mg、0.17mmol、3mLの蒸留水中)をGd2(CO3)3(85mg、0.17mmol)の溶液に添加し、60℃で14時間にわたって撹拌した。
ESI-MS:C48H77N10O17Sについての理論値、797.5183[M+H]+、測定値:797.5212。次に、化合物をHPLCで精製した。方法1:溶媒A(0.1%TFA、水中)及び溶媒B(0.1%TFA、アセトニトリル中)、流量8mL/分。溶出グラジエントは5分で100%A及び0%Bであり、5~25分で100%A~80%A、0%B~20%B、25~30分で80%A~20%A及び20%B~80%Bであった。
【0169】
(30S,34S)-2,9,17,24,32-ペンタオキソ-1-(4,7,10-トリス(カルボキシメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル)-8-(2-(4,7,10-トリス(カルボキシメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル)アセトアミド)-3,10,16,25,31,33-ヘキサアザヘキサトリアコンタン-11,30,34,36-テトラカルボン酸、二ガドリニウム(III)塩、Gd2
化合物をスキーム2にしたがって調製した。N-ビス-Boc-L-リジンNHS(3gm、6.7mmol、10mLのDMF中)の溶液にFmoc-Lys(Boc)-OH(2.49g、6.7mmol)を添加し、溶液を室温で1時間にわたって透明な溶液が得られるまで音波処理した。溶液を4時間にわたって室温で撹拌し、溶媒を真空下で除去すると4がほぼ定量的な収率で得られた。化合物4をさらにシリカゲルカラムで3/97 MeOH/CH2Cl2を溶出剤として使用して精製した。1H NMR(CDCl3)δ:8.01(d、2H)、7.89(m、2H)、7.78-7.44(m、4H)、6.82(m、1H)、6.15(m、1H)、5.58(m、1H)、5.01-4.03(m、5H)、3.75-3.32(m、6H)、2.22-1.31(m、30H)。ESMS m/Z:696[M+H]+。化合物4(2g、2.9mmol)を10mLの1/1 TFA/CH2Cl2溶液に溶解させ、室温で2時間にわたって撹拌した。溶媒蒸発後、固形残留物を3x3mLのジエチルエーテルで洗浄し、真空下で乾燥させると5がTFA塩として得られた。化合物5は定量的な収率で得られ、凍結乾燥後にさらに精製することなく使用された。1H NMR(D2O)δ:8.01(d、2H)、7.89(m、2H)、7.78-7.44(m、4H)、4.78-4.75(m、2H)、4.32(m、1H)、4.11-4.09(m、1H)、4.01-3.98(t、1H)、3.50-3.11(m、3H)、3.10-2.99(m、2H)、2.01-1.01(m、12H)。DOTA-NHS(100mg、0.13mmol、0.5mLのDMSO中)の溶液に5.2TFA(32mg、0.04mmol)及びDIEA(0.78mmol、136μL)を45分かけて室温で少しずつ添加した。次に、溶液をさらに2時間にわたって撹拌し、反応の完了をHPLCを用いてモニタした。反応完了後、反応物をHPLCで精製すると6が得られた。化合物6を20%のピペリジン溶液でFmoc基のために処理し、C18フラッシュクロマトグラフィにより90/10 H2O/CH3CN(それぞれ0.1%TFA)溶液を用いて精製し、凍結乾燥させた。ESIMS:1046[M+H]+。その凍結乾燥させた化合物(50mg、0.047mmol)を蒸留水(2mL)に溶解させ、Gd2(CO3)3(0.26mmol、3mLの水中)の溶液に添加し、60℃で12時間にわたって撹拌した。化合物7をC18フラッシュクロマトグラフィによりグラジエントが90/10~80/20のH2O/CH3CN(それぞれ0.1%TFA)溶液を使用して精製し、凍結乾燥させた。DMSO中の3の溶液(25mg、0.004mmol)に7(40mg、0.003mmol)をゆっくりと30分間にわたって添加し、約2時間にわたって室温で反応が完了するまで撹拌した。反応の完了をHPLCでモニタした。完了後、反応混合物を続いてHPLCで精製し、生成物を凍結乾燥させた。ESI-MS:1813.08[M+H]+、測定値:1813.08。次に、化合物をHPLCにより精製した。方法1:C64H103Gd2N15O26についての理論値、1813.5681[M]+、測定値1813.5681[M+1]。溶媒A(0.1%TFA、水中)及び溶媒B(0.1%TFA、アセトニトリル中)、流量8mL/分。溶出グラジエントは5分で100%A及び0%B、5~25分で100%A~80%A及び0%B~20%B、25~30分で80%A~20%A及び20%B~80%B。
【0170】
(3S,7S)-5,13,20,28-テトラオキソ-32-(2,4,6-トリス(1-(2-ヒドロキシ-3-(4,7,10-トリス(カルボキシメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル)プロピル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)フェノキシ)-4,6,12,21,27-ペンタアザドトリアコンタン-1,3,7,22-テトラカルボン酸、三ガドリニウム(III)塩、Gd3
Gd3をスキーム3に示す多段階合成により調製した。化合物8を先行の報告にしたがって調製した。
【0171】
2,5-ジオキソピロリジン-1-イル5-(2,4,6-トリエチニルフェノキシ)ペンタノエート、9
8の溶液(300mg、1.13mmol、5mLのDMF中)にTSTU(440mg、1.47mmol)及びTEA(541μL、3.39mmol)を添加し、得られた溶液を室温で4時間にわたって、TLCでモニタする反応が完了するまで撹拌した。溶媒を高真空下で除去し、残留物をCH2Cl2に溶解させ、シリカゲルカラムにより40/60~50/50 EtOAc/ヘキサン溶液を溶出剤として使用して精製した。生成物を含有する画分を合わせて蒸発させると、所望の生成物が無色の固形物として得られた。
収率約310mg。NMR(CDCl3):δ7.56(s、2H)、4.26(t、2H)、3.39(s、2H)、3.04(s、1H)、2.78(s、4H)2.48(t、2H)、2.01-1.80(m、4H)。
【0172】
(3S,7S)-26-アミノ-5,13,20-トリオキソ-4,6,12,21-テトラアザヘキサコサン-1,3,7,22-テトラカルボン酸2,2,2-トリフルオロ酢酸塩、10
化合物10を先行の報告にしたがって調製した。簡単に説明すると、トリス-t-Bu保護3(100mg 0.135mmol、1.35mlのDMF中)の溶液に、H-Lys(Boc)(O-t-Bu)(59.5mg、0.175mmol)、続いてDIEA(70.7μL、0.135)を添加し、透明な溶液を一晩、室温で撹拌した。次に、溶液を真空下で、透明で油状の残留物になるまで濃縮した。残留物を2:1 MeCN/水(6mL)に溶解させ、凍結乾燥させると透明で泡状の生成物が得られた。収率.生成物をさらに精製することなく使用した。収率:117mg、0.126mmol、93%。ESI-MS:928[M+H]+。化合物を2mlのTFA/CH2Cl2の氷冷溶液に溶解させ、続いてTES(278μL、1.7mmol)を滴加した。透明な溶液を5時間にわたって撹拌し、真空下で濃縮した。残留物を5mLの水に溶解させ、逆相フラッシュクロマトグラフィにより精製した。生成物を80/20 水/CH3CN(それぞれ0.1%TFA)を使用して溶出させた。ESI-MS:603[M+H]+。
【0173】
(3S,7S)-5,13,20,28-テトラオキソ-32-(2,4,6-トリエチニルフェノキシ)-4,6,12,21,27-ペンタアザドトリアコンタン-1,3,7,22-テトラカルボン酸、11
化合物9(132mg、0.362mmol)を、(3S,7S)-26-アミノ-5,13,20-トリオキソ-4,6,12,21-テトラアザヘキサコサン-1,3,7,22-テトラカルボン酸2,2,2-トリフルオロ酢酸(260mg、0.362mmol)、トリエチルアミン(0.202mL、1.44mmol)及びDMF(3.62mL)を含有する溶液に1回で添加した。混合物を室温で4時間にわたって撹拌し、黄褐色の残留物になるまで濃縮した。残留物を1/1 水/アセトニトリル(3mL)に溶解させ、C18逆相フラッシュクロマトグラフィにより、100%水、0.1%TFA、続いて80/20、60/40 水/アセトニトリル(それぞれ0.1%TFA)から成るステップグラジエントで精製した。各グラジエントステップは約144mLの溶媒体積から成った。流量は40mL/分であった。所望の生成物を含有する画分を残留物になるまで濃縮し、凍結乾燥させると、(3S,7S)-5,13,20,28-テトラオキソ-32-(2,4,6-トリエチニルフェノキシ)-4,6,12,21,27-ペンタアザドトリアコンタン-1,3,7,22-テトラカルボン酸が白色の固形物として得られた。169mg、収率54%。ESI-MS、C43H57N5O13[M+H]+についての理論値、852.4、測定値851.9。1H NMR(400MHz、DMSO-d6)12.12(bs、4H)8.01(d、1H)、7.76(m、2H)、7.57(s、2H)、6.33(m、2H)、4.47(s、2H)、4.28(s、1H)、4.09-4.15(m、4H)、3.00(m、4H)、2.21-2.27(m、2H)、2.10(m、4H)、2.02(t、2H)、1.89-1.94(m、1H)、1.22-1.69(m、24H)。13C NMR(100MHz、DMSO-d6)δ175.0、174.6、174.3、174.1、172.8、172.3、172.1、162.1、158.9、158.5、157.7、137.6、118.0、117.5、86.6、82.0、81.5、78.6、74.1、52.7、52.1、38.7、38.6、35.8、35.5、32.2、31.1、30.3、29.7、29.3、29.2、28.9、28.8、27.9、25.7、25.6、23.3、23.0、22.1。
【0174】
Gd3
(3S,7S)-5,13,20,28-テトラオキソ-32-(2,4,6-トリエチニルフェノキシ)-4,6,12,21,27ペンタアザドトリアコンタン-1,3,7,22-テトラカルボン酸(12mg、0.14mmol)、化合物002(28mg、0.046mmol)及びt-ブタノール(0.1mL)を含有する混合物に水(0.05mL)、続いてTBTA(0.15mg、0.3μmol)及びテトラキス(アセトニトリル)銅(I)ヘキサフルオロホスフェート(0.11mg、0.3μmol)を添加した。混合物を65℃で18時間にわたって撹拌した。反応混合物を2.5mLの0.1%の重炭酸ナトリウムに溶解させ、濾過した。このようにして得られた溶液をHPLCでPhenomenex、Luna、10ミクロン、10x250mmカラム及び0~95% アセトニトリル:水から成るグラジエントを用いて20分かけて精製した。所望の生成物(003)が6.1~7.1分で溶出された。003を含有する画分を合わせ、濃縮し、凍結乾燥させと白色の固形物が得られた。13mg、収率34%。ESI-MS C94H141Gd3N26O34[M-H]-についての理論値2650.7、測定値2648.9。
【0175】
スキーム1
【0176】
【0177】
スキーム2
【0178】
【0179】
スキーム3
【0180】
【0181】
結果
Lys-Glu尿素を標的部分として含む、代表的なPSMAコントラスト剤:単量体、二量体及び三量体Gd(Gd1、Gd2及びGd3)の構造を
図1Aに示す。多段階液相合成法を編み出すことで標的化合物を調製した。この方法をスキーム1~3に略述する。
【0182】
3種全ての化合物について、キレート剤DOTAを使用した。熱力学的及び動力学的安定性が高い錯体を形成できるからである。高い緩和度を得るためにGd1はDOTA-Bn-SCNを含有する。Gd1の構造は、近年報告された陽電子放射断層撮影法(PET)用の鉛86Y標識イメージング剤をベースにしており、このイメージング剤は前臨床モデルにおいて高く特異的な腫瘍蓄積を実証している(Banerjee, et al.2015)。Gd2を、リジンの∝-及びε-アミンの両方をDOTA-NHSとコンジュゲートさせ、溶液ベースのペプチド合成法を用いることで調製した。同じ条件下、反応を室温の音波浴中で行うと、カップリング反応の収率が有意に改善された。Gd3は、Mastaroneらが以前に報告しているようにクリックケミストリを用いて堅いトリアゾール結合を介して3つのGd(III)-DOTAが結合しているフェノールのコアを含む。そのコアに、フェノールの酸素を介してPSMA標的官能基をコンジュゲートさせた。Gd3は、トリアゾールリンカー部分がより堅くなった結果として、比較的高い緩和度を示した。化合物を逆相HPLCで精製し、LCMSによるキャラクタリゼーションを行った。物質のGd(III)含有部がプローブの結合親和性に対して潜在的に負の作用を有していないかを確認するために、蛍光ベースのPSMA阻害アッセイを用いてGd1、Gd2及びGd3についてPSMA阻害定数(Ki)の値を求め、表1に示した。
【0183】
【0184】
公知の高親和性PSMA阻害剤N-[[[(S)-1-カルボキシ-3-メチルブチル]アミノ]カルボニル]-L-グルタミン酸(ZJ43)(Olszewski et al.,2004)を基準リガンドとして使用した。予想通り、全ての化合物が高い結合親和性を示し、Ki値はGd1(0.45nM)で最も高く、Gd3(7.19nM)が続き、Gd2(18.18nM)が最も低かった。9.4T及び25℃でイメージングした場合、溶液ファントムは、3.0~6.2mM
-1s
-1(Gd(III))、3.0~12.5mM
-1s
-1(コントラスト剤)間で変化するPBSにおけるr1緩和度を示した(表1)。予想通り、25℃ではGd1の緩和度が最も低く、Gd2及びGd3が続いた。物質の選択性及び特異性を確認するために、多量のPSMA(PC3 PIP)を発現するように遺伝子組み換えしたヒト前立腺がん細胞及び対応する野生型であるPSMA非発現細胞(PC3 flu)をネガティブコントロールとして選択した(Banerjee,Angew.,2001)。Gd1又はGd2とのインキュベーション後、ペレット状のPSMA+PC3 PIP及びPSMA-PC3 flu細胞はT
1強調MRコントラスト又はR
1における変化を示さなかった。逆に、Gd3とインキュベートした両方の細胞株のT
1強調イメージは、標識していない細胞、またPSMA-PC3 flu細胞ペレットと比較して、
図4Aに示すように、PSMA+PC3 PIP細胞において顕著なMRコントラストエンハンスを示した。50μMのGd3の存在下及び不在下での細胞ペレットのMRIによるエンハンス及びT
1測定は、標準培地での洗浄による細胞系からのGd3の除去後、Gd3処理flu細胞及びコントロールfluコントロール細胞と比較して、高いエンハンス及びGd3処理PIP細胞とコントロールPIP細胞との間でのT
1緩和率における差、ΔR
1を示した(
図4B及び4C)。
【0185】
Gd3及びZJ43の共インキュベーションの実行による選択的遮断実験は実際に、T
1エンハンスの有意な遮断を示した。ZJ43の存在下でGd3とインキュベートした細胞は、両方のタイプの細胞において、T
1値においてわずかな変化しか示さなかった。これはZJ43がGd3の結合を特異的に遮断できたことを示す。これらの結果は、Gd3がPSMA+PC3 PIP細胞への受容体特異的細胞結合を示し、PSMA媒介コントラストエンハンスが見られることを示し、受容体媒介性エンドサイトーシスの概念を証明している。実際、ポストイメージ分析後の細胞のICP-MS分析は、PC3 flu細胞ペレットに会合したGd(III)はごくわずかであったが、PC3 PIP細胞ペレットは高いGd量を有したことを示した(
図2及び
図3)。PSMA+PC3 PIP細胞ペレットは、Gd3について約22.82μM、続いてGd2及びGd1についてそれぞれ約12.5μM及び約7.2μMの推定細胞内Gd(III)濃度を有した(
図2)。したがって、PIP細胞のΔR
1とflu細胞のそれとの差は、PIP細胞におけるPSMAへの特異的なGd3結合による変化を反映している。
【0186】
細胞内部移行アッセイにより、Gd1及びGd2についてPSMA+PC3 PIP細胞において内部移行を経たインキュベート量の割合(%ID)が、4時間のインキュベーション後、それぞれ9.06±0.31及び21.63±3.51であることが明らかとなり、その時、2.42±0.11及び3.51±1.32%IDだけが細胞表面と関連づけられた(
図3)。さらに、わずかに高い非特異的な取り込みがPSMA-PC3 flu細胞におけるGd2と関連づけられ、これはGd1より低いそのK
i値に関係していると考えられる。細胞による取り込み及び内部移行についてさらに調べるため、Rhodamine-Red
TM-Xで標識したデュアルモダリティGdモノマーコントラスト剤を用意してこのクラスのコントラスト剤のPSMA媒介内部移行を確認した(
図5D)。予期した通り、この物質はPSMA+PC3 PIP細胞(
図5A~
図5C)においてのみ特異的且つ高い蓄積を示した。これらの結果は、このレベルで発現した細胞受容体を、これらのシンプルな標的物質を使用してMRIで検出できることを示す。
【0187】
時間依存性内部移行研究を、インキュベーションから1、4及び24時間後にGd3について行った(
図6A及び6B)。1時間及び4時間後の細胞内取り込みは高く特異的であり、PSMA+PC3 PIP細胞においてそれぞれ28.30±0.47及び39.92±3.59%IDであり、インキュベーションから24時間後では、約89.69±3.90%IDが観察された。同様の量のGd(約33~37%ID)が同じタイムポイントで細胞膜と関連づけられた。これらの結果は、PSMA+PC3 PIP細胞ペレットにおけるGd3の検出可能なT
1強調エンハンスとPSMA+PIP細胞におけるGd3の高く特異的な蓄積との強い相関関係を示す。
【0188】
生きているマウスのイメージングの場合のGd3の評価に先立って、その生体適合性を細胞増殖アッセイを用いて調べた。様々な濃度のGd3をPSMA+PC3 PIP及びPSMA-PC3 flu細胞と24時間にわたってインキュベートした。Gd3は、PSMA-flu細胞の生存率にGd(III)濃度1mMまで有意な作用を及ぼさなかった(すなわち、約90%生存率)(
図7)。しかしながら、>1mMのGd(III)濃度はPSMA+PC3 PIP細胞生存率に影響した(
図8)。観察されたレベルのPSMA+PC3 PIP細胞死は、Gd3の高い細胞内部移行、また用いた長いインキュベーション時間(24時間)に起因すると考えられる。
【0189】
in vivoMRイメージングを、それぞれ右下及び左下側腹部に皮下移植したPSMA+PC3 PIP(右)及びPSMA-PC3 flu(左)腫瘍を有するオスのNOD/SCIDマウスに、9.4TでのGd3(0.05mmol/Kg用量)の静脈内注射後に行った。注射から最初の20分の間、PIP及びflu腫瘍の両方において、非特異的な取り込みは起きなかった。全ての組織においてT1値の急な低下が観察され、PSMA fluが最も高い0.63秒、そしてPIP腫瘍の0.57秒及び筋肉の0.261秒が続いた。重要なことに、筋肉及びflu腫瘍からのコントラスト剤の速いクリアランスが観察された。PIP腫瘍でのコントラストエンハンスは、注射から40分後で最も高く36%であり、注射から1.5時間後まで高い30%を維持した。3時間後、筋肉及びflu腫瘍のT1値が初期値に戻ったことが確認され、PIP腫瘍のT1値は有意な変化を示さなかった。
【0190】
Gd3のin vivoMRイメージングを、それぞれ右下及び左下側腹部に皮下移植したPSMA+PC3 PIP及びPSMA-PC3 flu腫瘍異種移植片を有するマウスにも、単回ボーラス静脈内注射(0.06mmol/kg)後に行った。
図9Aは、注射から40~160分後の両方の腫瘍についての1mm切片の定量的コントラストエンハンスマッピングを示す(ΔR
1)。コントラストエンハンスはPSMA+PC3 PIP腫瘍内で少なくとも3時間にわたって一定のままであったが、PSMA-PC3 flu 腫瘍及び筋肉組織においては速やかに低下した。PSMA+PC3 PIP腫瘍(
図10A及び
図10B)のT
1値における変化は、最初の40~60分で最低の1819±76ms(平均±SD、R
1値において平均36%のエンハンス、n=4)に達し、90分まで29%で一定のままであり、注射から190分後に24%までゆっくりと低下した。PSMA-PC3 flu腫瘍の場合、最も高いコントラストエンハンスは注射から20分後の約24%であり、続いてコントラストエンハンスは急速に減衰した(40分後、ΔR
1<20%)。これらの結果は、注射から80及び120分後のPSMA+PC3 PIP腫瘍についての特異的なコントラストエンハンス(P≦0.05)を実証している。
図9Bに示すように、これらの結果を、標的部分を有さない三量体Gdプローブを同じやり方で投与した他のマウス(腫瘍のエンハンスは見られなかった)(Mastarone,2011)と直接比較した。
【0191】
同じ実験条件下、生理食塩水(PBS)を使用したコントロール研究ではPIP及びflu腫瘍についてT
1値に変化は見られなかった(
図12)
【0192】
特定の理論に縛ろうとするものではないが、PSMAと結合すると、Gd3の回転相関時間は非結合状態と比較して増大した。結合は各物質について水和数及び水交換速度も変化させ、遊離のコントラスト剤の緩和度から期待されるものとは緩和度の値が変化したと考えられる(Caravan et al.,2007)。また、高磁場において、回転相関時間をのばすと、コントラスト剤と細胞成分との相互作用により、緩和度が若干低下し得る(Caravan,P.,et al.2009;De Leon-Rodriguez,L.M.,et al.2010;Geninatti-Crich,S.2011)。確立されたPSMA標的小分子と組み合わせて感度の高い多量体Gd(III)錯体をテコ入れすることで、in vitro及びin vivoでのPSMA標的MR分子イメージングを行った。
【0193】
要約すると、Gd系コントラスト剤Gd3を、マウス異種移植片を使用したin vivoでのPSMA特異的MRイメージングに使用することができた。前立腺がん及び他のがんにおける並進的な使用を想定したコンストラクトの最適化が進行中である。
【0194】
実施例2
PSMAの受容体濃度
細胞1つあたりの受容体の数(N.R.C.)=4.9x106、r細胞=8.75μm
【0195】
【0196】
【0197】
したがって、0.05秒-1の変化(組織t0
1=2秒と考えると約10%のエンハンス)を見るためには、緩和度が必要である(受容体:コントラストが1:1であるならば)。
【0198】
【0199】
実施例3
線量測定推定のための前立腺特異的膜抗原の
86Y標識阻害剤の前臨床的評価
概要
86Y(半減期=14.74時間、33%β
+)は、生物学的プロセスの長時間イメージングを可能にする、物理的半減期が比較的長い、新たなポジトロン放出同位体類に含まれる。齧歯類実験モデルにおける3つの低分子量
86Y標識PSMA結合尿素(
図14)の調製及び体内分布調査、また対応する
90Y-及び
177Lu標識物質での臨床試験に備えた放射線量測定のための非ヒト霊長類における最も薬物動態的に好ましい物質のイメージングが報告されている。
【0200】
[86Y]-4~6の調製には多段階合成を用いた。PSMA阻害定数を、競合的結合アッセイにより評価した。腫瘍を有するオスのマウスを用いたin vivoキャラクタリゼーションをPET/CTにより[86Y]-4~6について、また注射から24時間後までの[86Y]-4及び[86Y]-6の体内分布研究により行った。定量的全身PETスキャンを記録することで、オスのヒヒにおける14の臓器についての動態を[86Y]-6を使用して測定した。
【0201】
化合物[86Y]-4~6を高放射化学的収率及び純度で得て、比放射能は83.92GBq/μmolを超えた。PSMA1/2ポジティブPC-3 PIP及びPSMAネガティブPC-3 flu腫瘍を有するマウスを用いたPETイメージング及び体内分布研究から、[86Y]-4~6がPSMAポジティブPC-3 PIP腫瘍において、注射から20分後に始まる高い部位特異的な取り込みを示し、24時間後に高いままであったことが判明した。化合物[86Y]-6は最も高い腫瘍取り込み及びリテンションを示し、5時間及び24時間でそれぞれ32.17±7.99及び15.79±6.44%投与量/g(%ID/g)であった。低放射能濃度は、PSMA発現組織である腎臓以外の血液及び正常な臓器に関連づけられた。ヒヒにおけるPETイメージングにより、全ての臓器が2相(急速及び緩慢)のクリアランスを有することが明らかとなり、25分での腎臓における取り込みが最も高かった(8%ID/g)。個々の絶対取り込み速度論を用い、OLINDA/EXMソフトウェアを使用して放射線量を計算した。最高平均吸収線量は腎皮質で認められ、1.9mGy/MBq[86Y]-6であった。
【0202】
材料及び方法
商業的供給源から入手した溶媒及び化学物質は分析グレード以上であり、さらに精製することなく使用した。9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)保護アミノ酸(Fmoc-Lys(Boc)-Wang樹脂を含む)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾールモノハイドレート及び2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)は全てChem Impex International Inc.(ウッドデール、イリノイ州)から購入した。無担体[86Y](NO3)3はNational Cancer Institute of the National Institutes of Health(ベセスダ)から入手した。DOTA-トリス(t-ブチルエステル)-一酸及びp-SCN-Bn-DOTA(B-205)はMacrocyclics,Inc.(ダラス、テキサス州)から購入した。硝酸イットリウム(III)、トリエチルシラン(Et3SiH)、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)及びトリエチルアミン(TEA)はSigma-Aldrich(セントルイス、ミズーリ州、米国)から購入した。他の化学物質は全て、別段の定めがない限り、Thermo Fisher Scientific(ピッツバーグ、ペンシルバニア州)から購入した。分析用薄層クロマトグラフィ(TLC)を、Aldrichアルミニウム裏打ち0.2mmシリカゲルZ19、329-1プレートを使用して行い、紫外光(254nm)、EtOH中のI2及び1%ニンヒドリンで可視化した。フラッシュクロマトグラフィを、Bodman(アストン、ペンシルバニア州)から購入したシリカゲルMP SiliTech 32-63 D60Aを使用して行った。全ての実験を二重又は三重で行うことで再現性を確保した。1H NMRスペクトルをBruker UltrashieldTM400MHz分光計で記録した。
化学シフト(δ)は、NMR溶媒の不完全重水素化(incomplete deuteration)から生じる陽子共鳴を参照してppm、ダウンフィールドで報告される。
低分解能ESI質量スペクトルを、Bruker Daltonics Esquire 3000 Plus分光計(ビレリカ、マサチューセッツ州)から得た。高分解能質量スペクトルを、University of Notre Dame Mass Spectrometry&Proteomics Facility(ノートルダム、インディアナ州)からESIを用いて、Bruker micrOTOF-IIでの直接注入、あるいはBruker micrOTOF-Q IIに連結したC18カラムを備えた超高圧Dionex RSLCによるLC溶出により得た。
【0203】
高速液体クロマトグラフィ(HPLC)による4~6及び[
89Y]4~6の精製を、Waters 600E Delta LCシステムに取り付けたPhenomenex C
18 Luna 10x250mm
2カラムをWaters 486可変波長UV/Vis検出装置と共に使用して行い、両者はEmpowerソフトウェア(Waters Corporation、ミルフォード、マサチューセッツ州)で制御した(
図15A及び
図15B、
図16A及び
図16B、
図17A、
図17B及び
図17C)。HPLCを以下の方法により、溶媒A(0.1%TFA、水中)及び溶媒B(0.1%TFA、アセトニトリル中)を使用して行った。方法1:溶出グラジエントは75%A及び25%B(5分)、75%A~60%A及び25%B~40%B(5~25分)、60%A~75%A及び40%B~25%B(25~30分)であり、流量8mL/分であった。方法2:流量8mL/分。溶出グラジエントは100%A及び0%B(0~5分)、100%A~45%A及び0%B~55%B(5~45分)であった。[
86Y]4~6のHPLC精製を、モデル490UV吸光度検出器を備えたVarian Prostarシステム(パロアルト、カリフォルニア州)及びBioscan Flow-countシステム(Bioscan、ワシントンD.C.、米国)に接続されたBioscan NaIシンチレーション検出器で行った。[
86Y]4~6のHPLC精製については、Waters Novapak C
18150x3.9mm
2カラムを使用した。HPLCを以下の方法により溶媒A(0.1%TFA、水中)及び溶媒B(0.1%TFA、CH
3CN中)を使用して行い、流量は1mL/分であった。25分間の85%A及び15%Bの無勾配(isocratic)法を[
86Y]4の精製に用いた。グラジエント法(0~5分は78%A及び22%B、5~25分は78%A~58%A及び22%B~42%B)を[
86Y]5に用いた。グラジエント法(0~5分は88%A及び12%B、5~25分は88%A~68%A及び12%B~32%B)を[
86Y]6の精製に用いた。比放射能を、UV吸収の曲線下の面積に対応する質量で割った分取HPLC精製中の生成物のリテンションタイムで溶出する放射能として計算した。全ての最終化合物が、HPLCで測定したところ、>95%の放射化学的純度で得られた。化合物1を先行の報告にしたがって調製した(Banerjee,Pullambhatla,Byun,et al.,2011)。化合物4及び5を、4について以前に報告され(Banerjee et al.,2010)且つ5について簡単に後述する同じ一般的な方法により調製した。
【0204】
合成及び放射化学
(13S,27S,31S)-4,7,10-トリベンジル-2,5,8,11,18,21,29-ヘプタオキソ-1-(4,7,10-トリス(カルボキシメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル)-3,6,9,12,17,22,28,30-オクタアザトリトリアコンタン-13,27,31,33-テトラカルボン酸、5
化合物5を、スキーム4に略述した先行の報告にしたがって調製した((Banerjee et al.,2010)。化合物3及び4を固相ペプチド法にしたがって調製した。Fmoc-Lys(Boc)-Wang樹脂(100mg、0.43mM)をCH2Cl2(3mL)、続いてDMF(3mL)で膨潤させた。DMF(3x3mL)中の20%ピペリジン溶液を樹脂に添加し、次にメカニカルシェーカーで30分間にわたって周囲温度で静かに振盪させた。樹脂をDMF(3x3mL)及びCH2Cl2(3x3mL)で洗浄した。遊離アミンの生成を、カイザー試験(Kaiser et al.,1970)で評価した。樹脂をDMFで膨潤させた後、DMF中のFmoc-Phe-OH(3eq)、HBTU(3eq)、HOBt(3eq)及びDIPEA(4.0eq)の溶液を添加し、静かに2時間にわたって振盪させた。次に、樹脂をDMF(3x3mL)及びCH2Cl2(3x3mL)で洗浄した。カップリング効率をカイザー試験で評価した。上記のそのシーケンスを、Fmoc-Phe-OH及びDOTA-(t-ブチルエステル)3-CO2Hでもう2回のカップリングステップについて繰り返した。最終的な化合物を、TFA/CH2Cl2(1/1)を使用して樹脂から開裂させ、真空下で濃縮すると3が得られた。濃縮した生成物を、C18SepPak Vac 2gカラムを使用して精製した。生成物を70/30 水/アセトニトリル(それぞれ0.1%TFA)の溶液で溶出させ、凍結乾燥させた。ESI-MS:974[M+H]+。3(15mg、15.4μmol、1mLのDMSO中)の溶液に、1(15mg、26.18μmol)及びTEA(30μL)を添加し、周囲温度で2時間にわたって静置した。溶媒除去後、化合物5をHPLCで精製した(方法1)。1H NMR(DMSO-d6)δ:8.64(m、1H)、8.44(m、1H)、8.29-8.18(m、2H)、7.77-7.75(m、2H)、7.30-7.17(m、15H)、6.35-6.33(m、2H)、4.65-4.63(m、2H)、4.17-2.59(m、26)、2.40-1.11(m、30H)。13C NMR(DMSO-d6)δ:175.00、174.64、173.82、173.52、172.11、172.02、171.05、170.95、158.20、157.88、157.39、137.79、137.67、137.52、129.52、129.34、129.27、126.35、54.01、53.61、52.36、51.74、38.37、38.31、37.65、35.52、31.88、29.98、28.95、27.61、25.33、22.92、22.73。
ESI-MS:1431[M+H]+、HRESI+-MS:C69H96N12O21についての理論値、1431.7042[M+H]+、測定値:1431.7064。
【0205】
(21S,25S)-8,15,23-トリオキソ-1-((4-((1,4,7,10-テトラキス(カルボキシメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-2-イル)メチル)フェニル)アミノ)-1-チオキソ-2,7,16,22,24-ペンタアザヘプタコサン-21,25,27-トリカルボン酸、6
化合物6を、後述の3つのステップで調製した。市販のN-Boc-1,4ジアミノブタン(27mg、0.15mmol、0.5mLのDMSO中)を1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ酢酸,2-[(4-イソチオシアナトフェニル)メチル](p-SCN-Bn-DOTA)(100mg、0.15mmol、1.5mLのDMSO中)及びDIEA(132μL、0.75mmol)と混合し、40℃で4時間にわたって撹拌した。溶媒を蒸発させ、固形残留物を逆相C18フラッシュクロマトグラフィ(5.5g、Agilent SF10)で水及びアセトニトリル(それぞれに0.1%TFA)で精製するとBoc保護7が凍結乾燥後に得られた。収率:約55%。ESI-MS 740[M+H]+。このステップで得られた化合物を次に氷冷TFA/CH2Cl2(1/1)溶液で処理し、周囲温度で2時間にわたって撹拌した。溶媒を蒸発させ、残留物を真空下で乾燥させ、逆相フラッシュクロマトグラフィ(5.5g、Agilent SF10)で精製すると、7が適度な収率で得られた。1H NMR(DMSO-d6)δ:8.80-8.64(m、1H)、8.12-7.90(m、2H)、7.75-7.10(bm、4H)、4.65-4.63(m、1H)、4.17-2.59(m、27H)、2.40-1.11(m、6H)。ESI-MS:640[M+1]+。7(11mg、17μmol、400μLのDMSO中)の溶液に1(10mg、17.4μmol、200μLのDMSO中)及びDIEA(27μL、170μmol)を添加し、周囲温度で2時間にわたって静置した。溶媒蒸発後、残留物を水に溶解させ、HPLC(方法2)で精製すると6が得られた。Rt、22.5分。1H NMR(DMSO-d6)δ:8.88(m、1H)、8.44(m、1H)、8.21-7.98(m、2H)、7.77-7.75(m、2H)、6.35-6.33(m、2H)、4.65-4.63(m、2H)、4.17-2.59(m、29H)、2.40-1.11(m、30H)。HRESI-MS:C48H77N10O17Sについての理論値、1097.5183[M+H]+、測定値:1097.5212。
【0206】
[89Y]4
4(10mg、9.11μmol、500μLの0.5M NaOAc中、pH6.8)の溶液に50μLのYNO3(0.5M)を添加し、混合物(pH6.1)を30分間にわたって90℃でインキュベートした。EDTA(200μL、30mM、pH6.0)の溶液を添加し、反応混合物を10分間にわたって40℃でインキュベートして未反応イットリウム(III)を錯体化した。得られた化合物をHPLC(方法2、Rt、21分)で精製し、蒸発により濃縮し、凍結乾燥させた。ESI-MS:1370[M+H]+。C60H87N11O20Yについての理論値、1370.5187;測定値1370.5435。
【0207】
[89Y]5。方法2(Rt、26分)によるHPLC精製。ESI-MS:1517[M+H]+。C69H96N12O21Yについての理論値、[M+H]+1516.5793;測定値1516.5793
【0208】
[89Y]6
HPLC、方法2、Rt、23分。HRESI+-MS。C48H77N10O17SYについての理論値、1183.4007[M+H]+;測定値1183.4020。
【0209】
放射化学:[86Y]4~5及び[86Y]6の放射標識を、[86Y]6で説明したものと同じ一般的な方法により行った。
【0210】
[86Y]6
新たに調製したアスコルビン酸(50μL、220μg)の溶液を86YNO3(111~148MBq(3~4mCi)、0.1M 500μLの硝酸中)の溶液に添加することで放射線分解(radioloysis)を防止した。約50~70μgの6(0.3M NaOAc中)(N2下、2~3分間にわたってパージ)をその溶液に添加し、pH約5.5~6まで60μLの3M NaOAcを添加することで中和し、続いて混合物を短時間ボルテックスし、次に20分間にわたって95℃でインキュベートした。反応混合物を1mLの水で希釈した。錯体化を、10~15μLの溶液のアリコートをHPLCに注入することでモニタした。放射標識された生成物[86Y]6が、ITLC(Gelman ITLCストリップ、10mM EDTA)で測定したところ、約90~95%放射化学的収率、放射化学的純度>98%で得られた。広い放射性ピークがRt、約13.9~14.8分で混合異性体化合物としての所望の生成物について得られ、遊離リガンドについてのRtは15.8分であった。比放射能は>83.92GBq/μmol(n=5)であった。酸性の溶出物を20μLの1M炭酸ナトリウム溶液で中和し、溶出物の体積を真空で乾燥するまで低下させた。体内分布及びイメージング研究のために、固形残留物を生理食塩水で所望の放射能濃度まで希釈した。興味深いことに、溶出ピークの中和及び蒸発後、トレーサをHPLCに再注入すると、ピークが1つだけ14.3分前後で単離された。[86Y]6の異性化を確認するために、化合物6を担体付加86Yで放射標識し、混合物をHPLCで分析した。ピークが1つだけ14.3分で単離された。[86Y]4~5については、シングルの放射標識ピークが単離された。[86Y]4のRtは14.0分であり、非キレート化4のRtは15.5分であり、[86Y]5ではRt=16.9分、非キレート化5ではRt=19.5分であった。
【0211】
動物モデル及びアッセイ
PSMA阻害活性を、蛍光ベースのアッセイ(Banerjee,Pullambhatla,Byun,et al.,2011)を用いて測定した。酵素阻害定数(Ki値)をチェン-プルソフ変換(Cheng and Prusoff,1973)を用いて求めた。アンドロゲン非依存性PC-3ヒト前立腺がん異種移植片の亜系統を用いた(Banerjee,Pullambhatla,Byun,et al.,2011)。これらの亜系統は、高いレベルのPSMAを発現する(PC-3 PIP)又は天然で低いレベルのPSMAを産生する(PC-3 flu)ように遺伝子組み換えされている(Dr.Warren Heston、Cleveland Clinic、クリーブランド、オハイオ州)。
【0212】
PSMA発現(PC-3 PIP)及び非発現(PC-3 flu)細胞株の両方を、10%ウシ胎仔血清(FBS)(Invitrogen)及び1%Pen-Strep(Biofluids)を含有するRPMI 1640培地(Invitrogen)でこれまでに記述された通りに成長させた(Banerjee,Pullambhatla,Byun,et al.,2011)。
【0213】
6~8週齢のオスの非肥満糖尿病マウス(NOD)/重症複合免疫不全(SCID)マウス(Charles River Laboratories)にPSMA+PC-3 PIP及びPSMA-PC-3 flu細胞(2x106、100μLのマトリゲル中)をそれぞれ頭側右及び左側腹部に皮下(SC)移植した。異種移植片の直径が5~7mmに到達した時にマウスのイメージング又は体内分布アッセイを行った。
【0214】
体内分布アッセイの場合、PSMA+PC-3 PIP及びPSMA-PC-3 flu異種移植片を有するNOD/SCIDマウスに尾静脈から0.55MBq(15μCi)の86Y-4又は86Y-6を注射した。それぞれにおいて、4匹のマウスを、注射から1、2、5及び24時間後に頸椎脱臼により屠殺した。心臓、肺、肝臓、胃、膵臓、脾臓、脂肪、腎臓、筋肉、小腸、大腸、膀胱並びにPSMA+PC-3 PIP及びPSMA-PC-3 flu腫瘍を速やかに取り出した。0.1mLの血液サンプルも採取した。各臓器を計量し、組織放射能を自動ガンマカウンタ(1282 Compugamma CS、Pharmacia/LKB Nuclear Inc.)で測定した。組織1グラムあたりの注射量の百分率(%ID/g)を、注射された放射能の系列希釈サンプルを使用して計算した。全ての放射能測定値を、注射時までの放射性崩壊について補正した。
【0215】
動物イメージング
小動物PET及びCT
イメージング研究のために、PSMA+PC-3 PIP及びPSMA-PC-3 flu腫瘍を有するNOD/SCIDマウスに3%で麻酔をかけ、1.5%のイソフルラン(v/v)下で維持した。マウス(86Y-4又は86Y-6ではn=3、86Y-5ではn=2)に尾静脈から3.33~6.21MBq(90~168μCi)の、100μLの生理食塩水中、pH約7で処方した放射性トレーサを注射した。結合特異性研究のために、マウスに遮断用量の公知のPSMA阻害剤N-[[[(S)-1-カルボキシ-3-メチルブチル]アミノ]カルボニル]-L-グルタミン酸(ZJ43)(Olszewski et al.,2004)(50mg/kg)を86Y-4の注射の30分前に皮下注射し、別のマウスには86Y-4だけを注射した。異なるタイムポイントで、麻酔をかけた個々のマウスをスキャナガントリ上に腹臥位で置き、メディカルテープで固定し、麻酔薬の流量を0.8L/分に上昇させた。イメージをFORE/2D-OSEM法(2イテレーション、16サブセット)を用いて再構成し、放射性崩壊、スキャナの待ち時間及び散乱放射線について補正した。部分容積補正(PVC)は行わなかった。各PETスキャン後、解剖学的位置合わせ(co-registration)のためにCTスキャンを行った。PET及びCTイメージの位置合わせを円滑に行うために、PET及びCTスキャナの両方にフィットするマウス用の特別なベッドを用いた。マウスは麻酔下にあり、スキャナ間の移動の際、また両方のスキャン中に動けなかった。次に、再構成したPET及びCTイメージを、剛体変換を通し、天然の目印(例えば、マウスの肢及びベッドの輪郭)をAMIDEソフトウェア(sourceforge.net/amide)を利用して揃えることで手動で位置合わせした。データを表示させ、AMIDEで分析した。
【0216】
ダイナミック全身PET及びCTイメージを、それぞれeXplore VISTA小動物PET(GE Healthcare、リトルチャルフォント、バッキンガムシャー州、英国)及びX-SPECT小型SPECT/CTシステム(Gamma Medica Ideas、ノースリッジ、カリフォルニア州)で撮像した。
【0217】
86Y-6のアヌビスヒヒ(ヒヒ)PETイメージング
オスのアヌビスヒヒ(8歳、27.1kg)を用いて86Y-6の体内分布を研究した。撮像中、ヒヒは仰臥位で位置決めされた。減衰補正のために、低線量のCTイメージを、最初及び最後のPETイメージの直前に撮影した。PET及びCTイメージを、Hermesワークステーション(Hermes Medical Solutions、グリーンビル、サウスカロライナ州)を用いてタイムポイント間で位置合わせした。14のソース臓器の輪郭を、融合させたPET/CTイメージの助けを借りてCT上に描き出した。崩壊補正した平均放射能濃度(Bq/g)をPETイメージから各ソース臓器について抽出した。輪郭は、腎臓、腎皮質及び前立腺のPETイメージ上に描かれた。PETイメージ内で定量化された臓器あたりの崩壊補正済みの総放射能は、最初の6つのタイムポイント(1時間以内)に関し、投与された放射能とほぼ1対1の対応を示し、投与された放射能が全てPETイメージで利用されたことが確認され、その後、総量は排尿により投与量より少なくなった。各PETイメージで定量化された放射能の総量を用いて全身保持動態(retention kinetics)を得た。
【0218】
9枚の静止PETイメージを、ボーラスとして80.7MBq(2.2mCi)の86Y-6の静脈内投与から5、10、15、20、35分、1、2、3、5及び23時間後に撮影した。イメージを、Discovery Rx VCTスキャナ(GE Healthcare)により2Dモードで撮影した。
【0219】
放射線量測定
各タイムポイントについて、放射能濃度(Bq/cm3)を14の撮像された臓器のそれぞれにおいて測定し、それに臓器の体積を掛けることで臓器あたりのタイムポイント毎の総放射能を求めた。次に、測定値を崩壊補正し、CT密度及び描かれた輪郭の体積から求められたヒヒの臓器の質量及び注射した放射能で割ると、各タイムポイント及び各臓器についての1グラムあたりの初期の放射能に対する割合が得られる(FIA/g)。次に、ヒヒFIA/g値を、以下の等式を用いてヒトFIA(臓器あたり)に変換した(Schwartz et al.,2011;Woodard et al.,1975)。
【0220】
【0221】
式中、全身質量ヒヒ=27.1kgであり、全身質量ヒト=73.7kgであった。
【0222】
このアプローチでは、全身での全体的な濃度に対する特定の組織における放射能濃度は種を超えて保たれると想定している(すなわち、臓器濃度/全身濃度はヒヒもヒトも同じ)。得られたヒトFIA値を、各臓器について時間の関数としてプロットし(9データポイント)、双指数関数的表現にフィットさせた。
【0223】
【0224】
式中、A1、A2、λ1bio及びλ2bioはフィットパラメータである。A1とA2との合計により、各臓器における投与された放射能に対する逆外挿(back-extrapolated)されたゼロ時間での割合が得られ、λ1bio及びλ2bioは生物学的クリアランス定数である。各ソース臓器についての時間積算放射能係数(time-integrated activity coefficient)[TIAC、以前は滞留時間として知られていた(Bolch et al.,2009)についての等式を、その名称が含意するように、等式(2)を統合し、物理的崩壊項λφを導入することで得た(使用した同位体に左右される)。
【0225】
【0226】
TIACを90Y、177Lu及び86Yについて、それぞれ排尿される対応する物理的崩壊定数:90Y λφ=0.01083h-1(T1/2=64.0時間);177Lu λφ=0.00429h-1(T1/2=161.52時間)及び86Y λφ=0.04702h-1(T1/2=14.74時間)を用いて計算した。放射線吸収線量を、時間積算放射能を吸収線量へとMIRD吸収割合法(Bolch et al.,2009)にしたがって、OLINDA/EXMソフトウェア(Stabin et al.,2005)を使用して変換することで得た。膀胱についてのTIACを、OLINDA/EXMに実装させたMIRD膀胱モデルを使用して得た。そのモデルへの入力は全身TIACを必要とし、これは全身保持動態にフィットさせた
【0227】
【0228】
の等式から得られた。排尿間隔は2時間に設定した。次に、TIACをOLINDA/EXM(Stabin et al.,2005)に入力し、単位放射能あたりの吸収線量を14の臓器について得た。OLINDA/EXMにおける特定の腎臓モデルを用いることで腎皮質線量値を得た。腎臓の外側にある臓器からの吸収線量を、内部腎臓モデルから計算した腎皮質線量に加えた。特殊な前立腺モデルを前立腺自己線量に用い、また膀胱への外部線量を、全身に代わるものとして前立腺線量に加えた。唾液腺についての単位放射能あたりの吸収線量の自己線量成分を、3D-RD Monte Carlo(EGSnrc)及び唾液腺を撮像したヒトCTを用いて得た。交差線量(cross-dose)成分を、サイズが同じような臓器(膵臓)の交差線量は同じであると仮定して得た。
【0229】
臓器あたりのタイムポイント毎の測定された放射能濃度(Bq/cm3)値を崩壊補正し、CT密度及び描かれた輪郭の体積から求められたヒヒの臓器の質量及び注射した放射能で割ると、各タイムポイント及び各臓器についての1グラムあたりの初期の放射能に対する割合が得られる(FIA/g)。次に、ヒヒFIA/g値をヒトFIA(臓器あたり)に関連する等式を使用して変換した(Olszewski et al.,2004;Schwartz et al.,2011)。次に、得られたヒトFIA値を時間の関数としてプロットし、双指数関数的表現にフィットさせ、各ソース臓器についての時間積算放射能係数(TIAC、以前は滞留時間として知られていた(Woodard et al.,1975))の値を計算した。放射線吸収線量を、時間積算放射能を吸収線量へとMIRD吸収割合法(Woodard et al.,1975)にしたがって、OLINDA/EXMソフトウェア(Bolch et al.,2009)を使用して変換することで得た。
【0230】
データを、Microsoft Excel(Microsoft Corporation,2010)を使用して計算して平均±標準偏差(SD)として表した。Prismソフトウェア(GraphPAD)を使用して、95%信頼レベルでの統計的有意性を求め、P≦0.05を有意とみなした。
【0231】
結果
化合物4及び5を、スキーム4及び5に示す固相液相組み合わせペプチド合成法を用いて調製した。化合物1及び4をこれまで報告された通りに調製した(Banerjee,Pullambhatla,Byun,et al.,2011)。DOTAコンジュゲートリガンド5の合成を、標準的なフルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)固相ペプチド合成(SPPS)を用いて、Fmoc-Lys(Boc)-Wang樹脂から開始してスキーム5にしたがって行った。3つのフェニルアラニン残基を樹脂結合リジンにカップリングし、続いてDOTAのコンジュゲーションを行い、その後、化合物を樹脂からTFA/CH2Cl2の1/1混合物により開裂させると3が適度な収率(約20%)で得られた。次に、3のリジンの遊離ε-アミンを1とコンジュゲートさせると(Davis et al.,2009)5が得られた。化合物6を、市販のDOTA-ベンジル-イソシアネート及びN-Boc-1,4ジアミノブタン(DMSO中)をジイソプロピルエチルアミンの存在下、40℃で4時間にわたって反応させることで合成し、続いてBoc基を除去することで、HPLCによる精製後、7が適度な収率で得られた。次に、化合物7を1とコンジュゲートさせると6が良好な収率で得られた。安定したイットリウム(89Y)錯体を、スキーム4~5に示すように、コンジュゲート4~6をYNO3の水溶液と95℃でインキュベートすることで調製した。86/89Y(III)標識化合物4~5は金属に配位した3つのカルボン酸を含み、それによって化合物が全体として中性となっているが、[86/89Y]6は4つの配位カルボン酸を有し、それによって全体として負に帯電した化合物になっていることは言及すべきであろう。放射トレーサ[86Y]4~6を、同じ一般的な手順を[86Y]NO3とのリガンド濃度10-6Mでの沸騰水における30分間、pH5~6での反応に用いることで調製した。
【0232】
【化20】
a. (i) 20%ピペリジン/DMF; (ii) Fmoc-Phe-OH, HOBT, HBTU, ステップi-iiをX=2について2回繰り返し、X=3について3回繰り返した。(iii) 20%ピペリジン/DMF; (iv) DOTA-トリス(tert-ブチルエステル)-CO
2H, HOBT, HBTU, DIEA; (v) TFA/TES/H
2O (98/0.5/1.5);
b. DMSO/TEA, 室温; c. Y(NO
3)
3/NaOAc, pH5.5, 90℃, 20分; d. 86Y(NO3)3/アスコルビン酸/NaOAc, pH5.5, 90℃, 20分。
【0233】
スキーム4:4~5及び[86/89Y]4~5の合成
【0234】
【0235】
スキーム5:6及び[86/89Y]6の合成
【0236】
86Y標識PSMA標的化合物、
86Y-4、
86Y-5及び
86Y-6の化合構造を
図14に示す。標的化合物の放射標識は高収率(約90~97%)及び高放射化学的純度(>98%)で、高比放射能(>83.92GBq/μmol(2.27Ci/μmol))を伴って進行した。全ての化合物が高い結合親和性を示し、K
i値は0.10~4.69nM(表2)であった。
【0237】
【0238】
小動物PETイメージング
全身PET/CTイメージを
86Y-4、
86Y-5及び
86Y-6(
図18A、
図18B、
図18C、
図19A、
図20A、
図20B及び
図20C)について得た。3つの放射トレーサ全てがPSMA+PC-3 PIP腫瘍及び公知のPSMA発現臓器である腎臓の注射から2時間後の可視化を可能にした(
図18A、
図18B及び
図18C)。放射トレーサの腎臓での取り込みは、マウス近位尿細管におけるPSMAの発現による特異的な取り込みだけでなく、一部をこれらの物質の排出経路に負う(Stabin et al.,2005)。物質
86Y-5は消化管において、おそらくはリンカー部分上の3つのPhe残基に起因する疎水性の上昇により非特異的な蓄積を示した。
86Y-4のPET-CTイメージを、このクラスの低分子量化合物の短い生物学的半減期を考慮して、注射から1、4及び18時間後に撮影した。PSMA+PC-3 PIP腫瘍及び腎臓及び膀胱における放射トレーサの存在が、最高4時間まで観察された(
図19A)。膀胱及び腎臓内の放射能は18時間目までに大幅に消失した。ただし、PSMA+PC-3 PIP腫瘍では放射能が若干残った。in vivo結合特異性のさらなる試験として、
86Y-4の遮断研究を、動物に50mg/kgの強力で選択的なPSMA阻害剤ZJ43を事前に処置することで行った(Silver et al.,1997)。
図19Bは、ZJ43が腫瘍内だけでなく、別のPSMA発現組織である腎皮質においても
86Y-4の結合を遮断できることを示している(Stabin et al.,2005)。
図20A、
図20B及び
図20Cは、注射から0.5、2及び12時間後の
86Y-6についてのPET-CTイメージである。重要なことに、
86Y-6は正常な組織からのより速い放射能クリアランスを示し、注射から12時間後までには、放射能は腎臓から大方排出され、きれいな腫瘍/バックグラウンドコントラストが得られた。早くも15分後にはPSMA+PC-3 PIP腫瘍のきれいな撮像が達成された。とりわけ、
86Y-6は
86Y-4及び
86Y-5の追加のフェニルアラニン部分を含まず、p-イソチオシアナトベンジル1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ酢酸(DOTA)キレート化剤を利用し、これが追加のカルボキシレートを付加して金属を強力に保持し、また脂溶性を低下させる。
【0239】
マウスにおける体内分布
イメージングの結果に基づいて、化合物86Y-4及び86Y-6をさらに標準的な体内分布アッセイで評価した(Banerjee,Pullambhatla,Byun,et al.,2011)。表3及び4は、注射から1、2、5及び24時間後の選択された臓器における%ID/g取り込み値を示す。両方の放射トレーサがPSMA+PC-3 PIP腫瘍異種移植片においてPSMA依存性結合を示し、86Y-4は注射から早くも1時間後に高い腫瘍取り込みを示し(29.3±8.7%ID/g)、比較的緩慢なクリアランスでもって注射から5時間後には15.7±1.7%ID/g、24時間後には5.9±0.8%ID/gとなった。PSMA+PC-3 PIP腫瘍対PSMA-PC-3 flu腫瘍取り込み比は1時間での89から24時間での229の高さであった。血液及び正常な組織、例えば心臓、肝臓、胃及び膵臓は有意な取り込みを示さず(約1%ID/g)、24時間後には0.02%ID/g未満に低下した。PSMA+PC-3 PIP腫瘍対筋肉比も高く、24時間で1046の最大値を達成した。腎臓による取り込みは予想通り高く、1時間後に244.9±8.8%ID/gでピークとなり、24時間後までには1.5±0.7%ID/gまで低下した。
【0240】
表4は、86Y-6についての臓器%ID/g取り込み値を示す。化合物86Y-6はPSMA+PC-3 PIP腫瘍で注射から1時間以内に急速に蓄積され、取り込み値は26.6±1.9%ID/gであった。放射トレーサ濃度はPSMA+PC-3 PIP腫瘍内で上昇し続け、注射から5時間後に32.2±8.0%ID/gの最高の取り込みを示した。腫瘍による取り込みは注射から24時間後まで高いままであった。正常な臓器、例えば血液、心臓、肝臓、脾臓、胃及び膵臓は1時間での取り込みが少なく、5時間後までに0.4%ID/g未満にまで低下した。86Y-6についての腎臓による取り込みは(1時間及び2時間でそれぞれ86.5±13.6%ID/g、54.0±9.2%ID/g)86Y-4の場合よりはるかに少なかった。
【0241】
【0242】
【0243】
ヒヒPETイメージング及び
86Y-6の薬物動態
図21A及び
図21BはPET研究を示し、肝臓、唾液腺、腎臓及び膀胱で放射トレーサが見られる。腎臓、腎皮質及び前立腺全体について、定量化のために輪郭を各PETイメージに描いた。全ての臓器が2相(急速及び緩慢)の生物学的クリアランスを示した。腎臓が最も高い取り込みを注射から約25分後に示した(8%ID/g)。腎臓で見られた放射能の68パーセントが約1時間(0.84時間)の生物学的半減期で消失し、残りの放射能は16.6時間の生物学的半減期で消失した。腎皮質中の放射能の大部分(66%)が1.1時間の生物学的半減期で消失し、残りの放射能は約19時間の生物学的半減期で消失した。顕著な取り込み及びリテンションが肝臓及び唾液腺で見られた。ただし、
68Ga標識PSMA標的物質及び
124/131I-MIP-1095でイメージングした患者のPETスキャンと比較すると穏やかであった(Zechmann et al.,2014)。表5は全ての臓器の生物学的クリアランス動態をまとめたものである。線量計算で用いたTIACを表6に示す。
【0244】
【0245】
【0246】
臓器吸収線量
表7は、mGy/MBqの単位で表した86Y、90Y/177Luについての臓器吸収線量の詳細な一覧である。全ての同位体について、腎皮質は単位放射能あたり最も高い吸収線量を受け取った。したがって、患者特異的な吸収線量治療計画をたてる際には、腎皮質が治療用放射性金属にとっての線量制限臓器になると考えられ(Baechler et al.,2012;Hobbs et al.,2009)、膀胱が次にくる。診断用同位体86Yについて、0.099mSv/MBqの有効線量もOLINDA/EXMで計算した。
【0247】
【0248】
論考
非ヒト霊長類線量測定を行うために3つの86Y標識PSMA標的物質を合成し、評価した。これらの化合物は、これまでに発表されているものと同様の標的尿素に結合させたDOTA-又はDOTAモノ-アミドキレート化放射性金属を含む(Banerjee et al.,2010;Banerjee,Pullambhatla,Byun,et al.,2011)。DOTA及びその誘導体は、PET(86Y)又は放射性医薬品治療(90Y)の両方に使用できることから注目されていた。薬物動態は、PSMAに結合するように特別に設計された化合物のためのものを含め、使用する放射性金属キレート化剤次第であることが報告されている。特定の理論に縛ろうとするものではないが、これは主に放射性リガンドの総電荷及び金属キレート錯体の安定性に起因すると考えられている。具体的には、68Ga標識PSMA結合DOTAコンジュゲート物質についてのこれまでの報告において、68Ga-4は腎臓を含め、正常な組織から最も速いクリアランスを示した(Banerjee et al.,2010)。しかしながら、本研究においては、86Y-4の予期せぬ高い腎臓取り込みが観察された。86Y-6の評価から、放射線治療で必要とされる望ましい低い腎臓取り込み及び高い腫瘍リテンションが実証され、続いて線量測定のためのヒヒにおける定量的PETイメージングに選択された。
【0249】
結合特異性研究(
図19B)で、1時間後、
86Y-4の腎臓における結合のほぼ全てが排出に起因するものではなく特異的であると示された。エビデンスは、腫瘍より腎実質のほうが血流がより組織的且つ速いことが、これらの物質の多くについて腎臓より腫瘍でのリテンションが長い理由ではないかと示唆している。PSMA結合親和性は、腫瘍対腎臓の取り込みを決定すると考えられる1つの要素であるが、他の要素、例えば脂溶性、電荷、血漿タンパク質結合及び分子量も重要な役割を担っていると考えられる。推定腎皮質線量1.19mGy/MBq(
90Y)及び0.245mGy/MBq(
177Lu)は、ペプチド受容体放射線治療が関わる報告で計算された1.97mGy/MBq(
90Y)及び0.45mGy/MBq(
177Lu)(Baechler et al.,2012)(腎皮質が線量制限臓器であった)の値に引けをとらなかった。
【0250】
一般的に使用され且つ臨床的に利用されているキレート剤DOTAを3つ全ての放射性リガンドに使用した。DOTA及び多くのDOTA誘導体が動力学的及び熱力学的に安定な錯体を形成すると知られているからである。対応するY(III)錯体が、in vivoで安定であると(キレート化剤として望ましい特色である)多くのケースで示されている。重要なことに、DOTAは、86Y(III)とは化学的に異種であるランタニド類、例えば177Lu(III)及びアクチニド、例えば225Ac(III)を含めた数多くの三価金属イオンと安定した錯体を形成するとも報告されている。さらに、PSMA結合尿素系物質は、DOTAに用いる放射標識条件下で安定である。
【0251】
近年、90Y又は177Lu標識バージョンのPSMA標的モノクローナル抗体J591が、臨床試験の第1相及び第2相において有望な結果を出した(Bander et al.,2005;Tagawa,Akhtar,et al.,2013;Tagawa,Milowsky,et al.,2013)。それらのケースにおいては、111In標識抗体を線量測定計算に使用した(Vallabhajosula et al.,2005)。それらの放射標識モノクローナル抗体は腫瘍の検出及び治療に関して可能性を秘めてはいるものの、その限られた腫瘍標的指向性及び赤色骨髄への比較的高い吸収線量はルーチンでの臨床利用に不利に作用する。代替アプローチとしての、131I標識PSMA標的尿素系小分子を使用した初期の臨床結果は、悪性病巣への高い線量送達を示した(Zechmann et al.,2014)。発表されたこれらの研究においては、唾液腺が最も高い吸収線量を示し(4.62mGy/MBq)、肝臓(1.47mGy/MBq)及び腎臓(1.45mGy/MBq)の両者が続いた(Zechmann et al.,2014)。この唾液腺吸収線量に最も寄与しているのは遊離ヨウ素の取り込みであると考えられ、比較的高い(0.91mGy/MBq)甲状腺吸収線量でも立証されており、これは本研究では起きない。概して、正常な臓器からのクリアランス速度は、腎臓を除いて、86Y-6のほうが発表されている結果(Zechmann et al.,2014)より速い。
【0252】
要約すると、体内分布及び線量測定の結果は、86Y-6がPSMA発現腫瘍の定量的PETイメージングにとって有望な候補であること、またPSMA標的90Y-、177Lu系放射性医薬品治療の計画及びモニタリングに適したイメージング代替物になり得ることを示唆している。
【0253】
実施例4
PSMAベースの標的放射線核種治療用の
177Lu-SR-VI-71、
203Pb-SR-VI-71及び
203Pb-SR-IX-11
0.01~10μCiの
177Lu-SRVI71を使用した細胞取り込み研究である
図24は、PSMA+PIPにおける高い取り込み及びPSMA-flu腫瘍におけるごくわずかな取り込みを示す。加えて、内部移行研究により、総細胞結合放射能の約44%が内部移行すると明らかになった。さらに、PSMA特異的阻害剤である10μMのN-[[[(1S)-1-カルボキシ-3-メチルブチル]アミノ]カルボニル]-L-グルタミン酸(ZJ43)と共インキュベートすると、PSMA+細胞における約90%の遮断が観察され、物質の優れた特異性がさらに確認された(
図23)。in vivo評価を標準的なPSMA+PIP及びPSMA-fluマウス異種移植片、また
図25A、
図25B及び
図25Cに開示のVECT又は超高感度マウスコリメータを備えた機器でのSPECTイメージングにより行った。放射能の最も高い蓄積はPSMA+PIP腫瘍において全てのタイムポイントで見られた。他の目に見える臓器は腎臓及び膀胱である。2時間(59.1±12.8%ID/g)及び24時間(40.6±5.8ID/g)(n=4)での体内分布研究から、高い特異性でのPSMA+腫瘍における高い取り込み及びリテンション(2時間で約180のPIP:flu)が実際に明らかになった。初期の腎臓での取り込みは2時間で高く89.3±28.9%であり、24時間以内の急速なクリアランスが続いた(6.29±3.4%ID/g)。
【0254】
【0255】
【0256】
【0257】
これらの結果は、放射性核種治療に望ましい薬物動態を備えたそのような低分子量セラノスティック物質を調製する実現可能性に関して極めて有望である。さらに、データは、このクラスの低分子量物質が、PSMAと結合すると効果的に内部移行できることを裏付けている。
【0258】
実施例5
PSMAベースの標的放射性核種治療のためのZCP-01及び関連物質の合成及び使用概要
PSMA発現腫瘍のイメージング及び考えられ得る放射線治療のための様々な連結基を介してキレート化放射性金属にコンジュゲートされたPSMA結合尿素の調製及び使用が、本特許出願だけでなく幾つかの特許及び文献に記載されている(Banerjee,et al.,2008;Banerjee,et al.,2010;Banerjee,et al.,2011;Banerjee,et al.,Oncotarget 2011;Banerjee,et al.,2013;Banerjee,et al.,2014)。
図29に開示の、F-18標識類似体を含めた、カルバメートスキャフォールドに対応する新規なリジン-カルバメートスキャフォールドオキシペンタン二酸(OPA)及び「逆」カルバメートスキャフォールドに対応するアミノ-ペンタン二酸(NPA)を元にしたPSMA阻害剤が近年開発された。F-18標識NPA及びOPA化合物は、PSMAポジティブ腫瘍マウス異種移植片において選択的な取り込みを示した。
【0259】
PSMAポジティブ腫瘍及び組織のイメージング及び放射線治療のための放射性金属を錯体化するためのZCP-01、DOTA-PEG結合リジンOPAカルバメートが例として合成されている。尿素と使用するための国際公開第2009/002529(A2)号及び国際公開第2010/108125(A2)号パンフレットでこれまでに開示されている幅拾い金属キレート化リガンド及びリンカーをOPA及びNPAスキャフォールドに結合させることで、前立腺がんのイメージング及び/又は放射線治療用の新規な放射標識物質が得られる。
【0260】
材料及び方法
(18S,22S)-2,12,20-トリオキソ-1-(4,7,10-トリス(カルボキシメチル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル)-6,9,21-トリオキサ-3,13,19-トリアザテトラコサン-18,22,24-トリカルボン酸、ZCP-01
スキーム7を参照し、化合物4(8.5mg、0.015mmol、200μLのDMSO中)の溶液にジイソプロピルエチルアミン(27μL、0.255mmol)を添加し、続いてDOTA-NHS(15.2mg、0.023mmol、200μLのDMSO中)をゆっくりと添加し、得られた溶液を室温で2時間にわたって撹拌した。次に、溶液を水で希釈し、HPLCで精製した。HPLC法:Phenomenex C18Luna、10mm*250mm、流量:8ml/分、λ:200nm、220nm、溶媒H2O及びCH3CN(それぞれ0.1%TFA)。グラジエント法:0~20分、100/0 H2O/CH3CN~80/20 H2O/CH3CN;20~30分 80/20 H2O/CH3CN~0/100 H2O/CH3CN;31分 100/0 H2O/CH3CN。HPLCリテンションタイム(tr)=16分。ESI-MS:954(M+H)。
収率:HPLC精製後9.4mg(約65.7%)。
【0261】
113/115In-ZPC-01の調製
ZPC-01(5mg、5.24μmol、500μLの0.5M NaOAc中、pH6.8)の溶液に50μLのInNO3(0.5M)を添加し、混合物(pH6)を30分間にわたって90℃でインキュベートした。EDTA(200μL、30mM、pH6.0)の溶液を添加し、反応混合物を10分間にわたって40℃でインキュベートするとで未反応のインジウム(III)を錯体化した。得られた化合物をHPLCで精製し(ZPC-01と同じ)、蒸発により濃縮し、凍結乾燥させた。ESI-MS:1066[M+H]+。C39H64InN7O20についての理論値、1065.79。
【0262】
111In-ZPC-01の調製
0.1N HCl中の1.0μlの111InCl3(1mCi)を、20μlの0.2M NaOAc中の1mM Ourea-PEG-DOTAに添加した。混合物のpHは約4.0であった。次に、pHを約6に調節するための20μlの0.2M NaOAc。混合物を50℃で1時間にわたって維持し、移動相90%水(0.1%TFAを含有)及び10%のCH3CN(0.1%TFA)を含む無勾配法を用いて放射性HPLCにより精製した。流量:1.0mL/分;λ:200nm及びC18カラム(25x4.6mm)、Varian microsob-MV 100-5。放射標識[111In]ZPC-01が14.9分で溶出され、無標識のキレート剤は32分で溶出された
【0263】
スキーム7
【0264】
【化22】
a. DCC, N-ヒドロキシスクシンイミド, CH
2Cl
2; b. ジイソプロピルエチルアミン, DMSO; TFA/水; d. DO3A-NHS (Macrocylicsから市販)
【0265】
結果
ZCP-01及び[In]-ZCP-01は高い結合親和性を示し、Ki値はそれぞれ17.82nM~58.21nM及び0.29μM~0.92μMであった(表8)。
【0266】
【0267】
図34A、
図34B及び
図34Cに示すように、[In]-ZCP-01のin vivoSPECTイメージングを、それぞれ右及び左側腹部に皮下移植したPSMA+PC3 PIP及びPSMA-PC3 flu腫瘍異種移植片を有するマウスに[
111In]-ZCP-01の静脈内注射後に行った。しかしながら、[
111In]-ZCP-01はPSMA+PC3 PIP腫瘍及び公知のPSMA発現臓器である腎臓の可視化を注射から2時間及び4時間後に可能にするものの、flu腫瘍では非特異的な取り込みとなった。注射から24時間後までに、放射能は大部分が腫瘍及び腎臓から排出された。
【0268】
これらの結果は、腫瘍のイメージング及び放射線治療に望ましい薬物動態を備えたそのような低分子量セラノスティック物質を調製する実現可能性に関して極めて有望である。
【0269】
参考文献
本明細書で挙げた全ての出版物、特許出願、特許及び他の参考文献は、本開示の主題が関わる技術分野の当業者のレベルを示す。全ての出版物、特許出願、特許及び他の参考文献は、あたかも個々の出版物、特許出願、特許及び他の参考文献が参照により具体的且つ個別に示されて援用されたかのごとく、参照により同程度まで本明細書に援用される。本明細書においては多数の特許出願、特許及び他の参考文献に言及したが、そのような言及は、これらの文書が当該分野における一般的知識の一部を構成するとの自認ではないと理解される。
【0270】
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【0271】
明確な理解を目的として上記の主題を実例及び例を用いて多少詳しく説明してきたが、当業者ならば、添付の請求項の範囲内で一定の変更及び改変を加え得ることがわかる。
本願発明の好ましい態様として、以下の態様が挙げられる。
1.式(I):
(I)
(式中、
Zは、テトラゾール又はCO
2
Qであり、
Qは、H又は保護基であり、
X
1
及びX
2
は、それぞれ独立してNH又はOであり、
aは、1、2、3及び4から成る群から選択される整数であり、
cは、0、1、2、3及び4から成る群から選択される整数であり、
各R
1
、R
2
及びR
4
は、独立してH又はC
1
-C
4
アルキルであり、
各R
3
は、独立してH、C
1
-C
6
アルキル又はC
2
-C
12
アリールであり、
Wは、独立してO又はSであり、
Yは、-NH-であり且つ存在又は不在となり得て、
Lは、
から成る群から選択されるリンカーであり、
式中、
mは、1、2、3、4、5、6、7及び8から成る群から選択される整数であり、
各R
5
は、独立してH又は各R
6
が独立してH若しくはC
1
-C
6
アルキルである-COOR
6
であり、
nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11及び12から成る群から選択される整数であり、
pは、1、2、3、4、5、6、7及び8から成る群から選択される整数であり、
Chは、1つ以上の金属又は放射性金属を含み得るキレート化部分である)
の化合物又はその医薬的に許容可能な塩。
2.前記キレート化部分は、
から成る群から選択され、式中、qは、1、2、3、4、5、6、7及び8から成る群から選択される整数である、上記1に記載の化合物。
3.(化4)
(式中、Mは、金属又は放射性金属である)
から成る群から選択される又はその医薬的に許容可能な塩である、式(I)の化合物。
4.前記金属が、Gd、Lu、Ac、Bi、Pb、Cu、In、Sc及びYから成る群から選択される、上記1に記載の化合物。
5.前記非放射性金属が、Gd-157(安定な同位体)である、上記1に記載の化合物。
6.前記放射性金属が、Lu-177、Ac-225、Bi-213、Bi-212、Pb-212、Cu-67、In-111、Sc-47及びY-90から成る群から選択される、上記1に記載の化合物。
7.前記放射性金属が、Y-86及びSc-44から成る群から選択される、上記1に記載の方法。
8.前記放射性金属が、Lu-177及びIn-111から成る群から選択される、上記1に記載の化合物。
9.1つ以上の腫瘍又は細胞を有効量の式(I)の化合物と接触させ、
イメージを形成することを含み、
前記式(I)の化合物は、
(I)
(式中、
Zは、テトラゾール又はCO
2
Qであり、
Qは、H又は保護基であり、
X
1
及びX
2
は、それぞれ独立してNH又はOであり、
aは、1、2、3及び4から成る群から選択される整数であり、
cは、0、1、2、3及び4から成る群から選択される整数であり、
各R
1
、R
2
、及びR
4
は、独立してH又はC
1
-C
4
アルキルであり、
各R
3
は、独立してH、C
1
-C
6
アルキル又はC
2
-C
12
アリールであり、
Wは、独立してO又はSであり、
Yは、-NH-であり且つ存在又は不在になり得て、
Lは、リンカーであり、前記リンカーは
から成る群から選択され、
式中、
mは、1、2、3、4、5、6、7及び8から成る群から選択される整数であり、
各R
5
は、独立してH又は各R
6
が独立してH若しくはC
1
-C
6
アルキルである-COOR
6
であり、
nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11及び12から成る群から選択される整数であり、
pは、1、2、3、4、5、6、7及び8から成る群から選択される整数であり、
Chは、1つ以上の金属又は放射性金属を含み得るキレート化部分である)
又はその医薬的に許容可能な塩を含む、1つ以上の前立腺特異的膜抗原(PSMA)腫瘍又は細胞のイメージング又は治療のための方法。
10.前記キレート化部分は、
から成る群から選択され、式中、
qは、1、2、3、4、5、6、7及び8から成る群から選択される整数である、上記9に記載の方法。
11.前記化合物は、
(式中、
xは、2及び3から成る群から選択され、
Mは、金属又は放射性金属である)
から成る群から選択される又はその医薬的に許容可能な塩である、上記9に記載の方法。
12.前記金属が、Gd、Lu、Ac、Bi、Pb、Cu、In、Sc及びYから成る群から選択される、上記9に記載の方法。
13.前記イメージングが、磁気共鳴イメージング(MRI)を含み、非放射性金属が、Gd-157(安定な同位体)である、上記9に記載の方法。
14.1つ以上の前立腺特異的膜抗原(PSMA)腫瘍又は細胞を治療することを含み、前記放射性金属が、Lu-177、Ac-225、Bi-212、Bi-213、Pb-212、Cu-67、In-111、Sc-47及びY-90から成る群から選択される、上記9に記載の方法。
15.前記イメージングが、陽電子放射断層撮影法(PET)イメージングを含み、前記放射性金属はY-86及びSc-44から成る群から選択される、上記9に記載の方法。
16.前記イメージングが、単一光子放射断層撮影(SPECT)イメージングを含み、前記放射性金属はLu-177及びIn-111から成る群から選択される、上記9に記載の方法。
17.前記1つ以上のPSMA発現腫瘍又は細胞が、前立腺腫瘍又は細胞、転移前立腺腫瘍又は細胞、肺腫瘍又は細胞、腎腫瘍又は細胞、グリオブラストーマ、膵腫瘍又は細胞、膀胱腫瘍又は細胞、肉腫、メラノーマ、乳腺腫瘍又は細胞、結腸腫瘍又は細胞、生殖細胞、褐色細胞腫、食道腫瘍又は細胞、胃腫瘍又は細胞及びこれらの組み合わせから成る群から選択される、上記9に記載の方法。
18.前記1つ以上のPSMA発現腫瘍又は細胞が、前立腺腫瘍又は細胞である、上記9に記載の方法。
19.前記1つ以上のPSMA発現腫瘍又は細胞が、in vitro、in vivo又はex vivoである、上記9に記載の方法。
20.前記1つ以上のPSMA発現腫瘍又は細胞が、被験体内に存在する、上記9に記載の方法。
21.イメージング剤を含む前記化合物が、前記被験体の腫瘍又は細胞から排出される、上記20に記載の方法。
22.イメージング剤を含む前記化合物が、
(式中、
Mは、金属又は放射性金属である)
から成る群から選択される又はその医薬的に許容可能な塩であり、
前記被験体の腎臓から前記被験体の腫瘍より速く排出される、上記20に記載の方法。