(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】滅菌器
(51)【国際特許分類】
A61L 2/07 20060101AFI20230630BHJP
【FI】
A61L2/07
(21)【出願番号】P 2018211653
(22)【出願日】2018-11-09
【審査請求日】2021-09-13
(73)【特許権者】
【識別番号】593129342
【氏名又は名称】株式会社タカゾノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 大佑
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-083470(JP,A)
【文献】国際公開第2015/145816(WO,A1)
【文献】韓国登録実用新案第20-0337912(KR,Y1)
【文献】特開平11-239605(JP,A)
【文献】特開2014-210185(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0312196(US,A1)
【文献】国際公開第2015/199108(WO,A1)
【文献】特開2008-054732(JP,A)
【文献】特開2020-022642(JP,A)
【文献】特開2015-083037(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0236114(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/07
A61L 2/00
A61L 2/24
A61L 2/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉可能な扉を有し、被滅菌物を収納可能なチャンバを備え、前記チャンバに収納された前記被滅菌物を滅菌する、滅菌器において、
作業者に注意を喚起する警報を出力する警報器と、
前記滅菌器の動作を制御する制御部とをさらに備え、
前記制御部は、前記滅菌器が滅菌処理を終えた後、前記扉が開放されて、その後、前記扉が開放されたまま所定時間が経過したとき、前記被滅菌物の滅菌処理が未だされていない未滅菌状態と判定し、
前記制御部は、前記未滅菌状態で前記扉が開放されているとき、前記チャンバ内の前記被滅菌物が未滅菌であることを報知する第1の警報を出力するよう、前記警報器に制御信号を出力する、滅菌器。
【請求項2】
開閉可能な扉を有し、被滅菌物を収納可能なチャンバを備え、前記チャンバに収納された前記被滅菌物を滅菌する、滅菌器において、
作業者に注意を喚起する警報を出力する警報器と、
前記滅菌器の動作を制御する制御部とをさらに備え、
前記制御部は、前記滅菌器が滅菌処理を終えた後、前記扉が開放されて、その後、新たな前記被滅菌物が前記チャンバ内に搬入されたとき、前記被滅菌物の滅菌処理が未だされていない未滅菌状態と判定し、
前記制御部は、前記未滅菌状態で前記扉が開放されているとき、前記チャンバ内の前記被滅菌物が未滅菌であることを報知する第1の警報を出力するよう、前記警報器に制御信号を出力する、滅菌器。
【請求項3】
前記警報器は、前記被滅菌物の滅菌処理を終えた後、前記扉が開放されたときに、前記被滅菌物の前記チャンバからの取り出しを促す第2の警報を出力する、請求項1
または2に記載の滅菌器。
【請求項4】
前記警報器は、前記被滅菌物の滅菌処理を開始した後、滅菌処理を終える前に、前記扉が開放されたとき、未滅菌状態で滅菌処理が中断されたことを示す第3の警報を出力する、請求項1~
3のいずれか1項に記載の滅菌器。
【請求項5】
前記警報器は、前記被滅菌物が前記チャンバ内にない場合は、警報を出力しない、請求項1~
4のいずれか1項に記載の滅菌器。
【請求項6】
前記滅菌器の動作状態を記憶する不揮発性メモリをさらに備え、
前記滅菌器に電源断が発生した後の電源復帰時に、前記警報器は、前記不揮発性メモリに記憶されている電源断発生前の動作状態に基づいて、警報を出力する、請求項1~
5のいずれか1項に記載の滅菌器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、滅菌器に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気滅菌器は、医療用機材などの被滅菌物を収納するチャンバ内を密閉状態に保持し、チャンバ内に高温高圧の蒸気を充満させることによって細菌類などの微生物を死滅させ、被滅菌物の滅菌処理を行なう。従来の蒸気滅菌器に関し、特開平10-137325号公報(特許文献1)には、滅菌が完了すると警告音を発して停止することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の滅菌器では、作業者がチャンバに被滅菌物を収納した後、滅菌動作を開始せずに被滅菌物をチャンバ内に放置した場合に、別の作業者はチャンバ内の被滅菌物が滅菌処理済か否かを確認することができない。
【0005】
本開示では、滅菌されていない被滅菌物がチャンバから取り出されることを抑制できる、滅菌器が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従うと、開閉可能な扉を有し、被滅菌物を収納可能なチャンバを備え、チャンバに収納された被滅菌物を滅菌する、滅菌器が提供される。滅菌器は、作業者に注意を喚起する警報を出力する警報器をさらに備えている。警報器は、被滅菌物の滅菌処理が未だされていない未滅菌状態で扉が開放されているとき、チャンバ内の被滅菌物が未滅菌であることを報知する第1の警報を出力する。
【0007】
上記の滅菌器において、滅菌器が滅菌処理を終えた後、扉が開放されて、その後、扉が閉鎖され、その後、滅菌処理が開始されることなく扉が再び開放されたとき、未滅菌状態と判定してもよい。
【0008】
上記の滅菌器において、滅菌器が滅菌処理を終えた後、扉が開放されて、その後、扉が開放されたまま所定時間が経過したとき、未滅菌状態と判定してもよい。
【0009】
上記の滅菌器において、滅菌器が滅菌処理を終えた後、扉が開放されて、その後、新たな被滅菌物がチャンバ内に搬入されたとき、未滅菌状態と判定してもよい。
【0010】
上記の滅菌器において、警報器は、被滅菌物の滅菌処理を終えた後、扉が開放されたときに、被滅菌物のチャンバからの取り出しを促す第2の警報を出力してもよい。
【0011】
上記の滅菌器において、警報器は、被滅菌物の滅菌処理を開始した後、滅菌処理を終える前に、扉が開放されたとき、未滅菌状態で滅菌処理が中断されたことを示す第3の警報を出力してもよい。
【0012】
上記の滅菌器において、警報器は、被滅菌物がチャンバ内にない場合は、警報を出力しなくてもよい。
【0013】
上記の滅菌器は、滅菌器の動作状態を記憶する不揮発性メモリをさらに備えていてもよく、滅菌器に電源断が発生した後の電源復帰時に、警報器は、不揮発性メモリに記憶されている電源断発生前の動作状態に基づいて、警報を出力してもよい。
【発明の効果】
【0014】
本開示に従った滅菌器は、滅菌されていない被滅菌物がチャンバから取り出されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態の蒸気滅菌器の概略構成を示す系統図である。
【
図2】蒸気滅菌器の電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】蒸気滅菌器の動作の第一例を示すフローチャートである。
【
図4】蒸気滅菌器の動作の第二例を示すフローチャートである。
【
図5】蒸気滅菌器の動作の第三例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態について図面に基づいて説明する。以下の説明では、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0017】
以下、滅菌器の一例である蒸気滅菌器について説明するが、本開示の技術思想は、乾熱滅菌器などの他の種類の加熱法を採用する滅菌器に適用されてもよく、また、照射法やガス法を採用する滅菌器などの、任意の種類の滅菌器にも適用可能である。
【0018】
図1は、実施形態の蒸気滅菌器1の概略構成を示す系統図である。
図1に示されるように、実施形態の蒸気滅菌器1は、ガーゼ、メスなどの医療器具に代表される被滅菌物100を収納可能なチャンバ10を備えている。被滅菌物100は、容器101に収容されて、チャンバ10内に収納されている。容器101は、金属などの導電材料製である。容器101は、積重式トレーまたは金網バスケットなどの、天面が開放された形状を有してもよい。または容器101は、丸カストまたは角カストなどの、天面に開閉可能な蓋を有する箱形状を有してもよい。
【0019】
チャンバ10は、開閉可能な開閉蓋11を含んでいる。開閉蓋11は、チャンバ10の側部に装着されている。開閉蓋11を開放することにより、チャンバ10内への被滅菌物100および容器101の搬出入が可能となる。開閉蓋11を閉じることにより、チャンバ10の内部は密閉状態に保持される。開閉蓋11は、実施形態における扉に相当する。
【0020】
チャンバ10の内底部には、滅菌ヒータ12が設置されている。滅菌ヒータ12は、チャンバ10の底面に沿って延びるように配置されている。滅菌ヒータ12は、チャンバ10内に供給された水を加熱して、蒸気を発生させる。蒸気滅菌器1は、滅菌ヒータ12の加熱により発生した水蒸気で、被滅菌物100を滅菌処理する。
【0021】
水は、滅菌処理のためにチャンバ10内に供給される液体の一例である。水は、浄水(水道水)、井戸水、蒸留水または精製水であってもよい。チャンバ10内に供給される液体は、水に限られず、生理食塩水などの水溶液であってもよい。
【0022】
滅菌ヒータ12の上方には、被滅菌物100を載値可能な載置台13が、チャンバ10の底面に対して略平行に設けられている。チャンバ10の、開閉蓋11によって開閉される開口の周縁部に、開閉センサ14が取り付けられている。開閉センサ14は、開閉蓋11の開閉状態を検知する。開閉センサ14は、磁気センサ、近接センサまたはリミットスイッチなどで構成されていてもよい。
【0023】
チャンバ10の、開閉蓋11と対向する内側面には、チャンバ10内の温度を検出する温度センサ16が取り付けられている。温度センサ16は、チャンバ10内の気体の温度を計測する。
【0024】
蒸気滅菌器1は、通電センサ18を備えている。通電センサ18は、一対の電極を有し、この一対の電極は、開閉蓋11と対向するチャンバ10の内側面の近傍に配置されている。一対の電極は、載置台13と、開閉蓋11と対向するチャンバ10の内側面との間に配置されている。チャンバ10内に収納されている容器101は、この一対の電極の両方に接触するように配置される。導電材料製の容器101が一対の電極の両方に接触しているときに、電極間に通電が発生する。通電センサ18は、この通電を検出することにより、チャンバ10内に容器101があることを検出する。
【0025】
通電センサ18は、チャンバ10内の被滅菌物100の有無を検出するセンサの一例である。一対の電極は、通電センサ18の検出部の一例である。通電センサ18は、検出部である一対の電極に容器101が接触することで、チャンバ10内に容器101があることを検出する接触センサの一例である。被滅菌物100は、容器101に収容される。したがって通電センサ18は、容器101に収容された被滅菌物100がチャンバ10内にあることを検出できる。
【0026】
通電センサ18の電極は、チャンバ10の内部と外部とに亘って配置されている。電極の、チャンバ10外に突出する部分に、配線19が接続されている。この配線19は、
図1には図示しない制御部70に、電気的に接続されている。
【0027】
一対の電極への容器101の接触を検出する通電センサ18に替えて、容器101が接触したときに検出部が物理的に変位するスイッチを用いてもよい。スイッチもまた、検出部に容器101が接触することでチャンバ10内に容器101があることを検出でき、したがって被滅菌物100がチャンバ10内にあることを検出できる接触センサの一例である。
【0028】
または、非接触式のセンサを用いて、チャンバ10内の被滅菌物100の有無を検出してもよい。非接触式のセンサは、たとえば、静電容量センサ、重量センサなどであってもよい。容器101が突部を有する構造とし、この突部を受ける窪み部をチャンバ10が有し、窪み部内に突部があるか否かを検出する静電容量センサを窪み部に設けて、チャンバ10内の容器101の有無を検出する構成としてもよい。チャンバ10の重量を検出する重量センサを設ける構成としてもよい。
【0029】
蒸気滅菌器1は、貯水槽20を備えている。貯水槽20は、チャンバ10内に供給される水を貯留する。チャンバ10から排出される水は、貯水槽20へと戻る。貯水槽20は、チャンバ10から排出される水を貯留する。
【0030】
チャンバ10と貯水槽20とは、給水経路30と、排水経路40と、排気経路50とによって連通されている。給水経路30は、貯水槽20からチャンバ10へ水を供給するための経路である。排水経路40は、チャンバ10から貯水槽20へ水を排出するための経路である。排気経路50は、チャンバ10から貯水槽へ、水蒸気、空気などの気体を排出するための経路である。
【0031】
給水経路30は、給水管31と、給水ポンプ32と、給水電磁弁33とを含んでいる。給水管31の一端は貯水槽20の底部の取水口に連結され、他端はチャンバ10の底部の連結部17に連結されている。給水ポンプ32は、給水管31の経路上の上流側(貯水槽20に近い側)に設けられている。給水電磁弁33は、給水管31の経路上の下流側(チャンバ10に近い側)に設けられている。
【0032】
給水ポンプ32は、貯水槽20からチャンバ10へ向かって流れる方向に水を移送して、チャンバ10内へ水を供給する。給水電磁弁33は、給水ポンプ32に対して給水経路30の下流側に配置されており、給水経路30を開閉する。給水電磁弁33は、貯水槽20からチャンバ10へ水が流れ得る開状態と、貯水槽20からチャンバ10への水の流れおよびチャンバ10から貯水槽20への流体の流れを禁止する閉状態と、を切り換え可能に設けられている。
【0033】
排水経路40は、排水管41と、排水電磁弁43とを含んでいる。排水管41は、チャンバ10から排出される水および水蒸気が流れるための経路である。排水管41の一端は、チャンバ10の底部の連結部17に連結されている。排水管41の他端は、貯水槽20に連結されている。
【0034】
排水管41には、排水電磁弁43が配置されている。排水電磁弁43は、排水経路40を開閉する。排水電磁弁43は、排水管41を経由してチャンバ10から貯水槽20へ向かって流体が流れ得る開状態と、チャンバ10から貯水槽20への流体の流れを禁止する閉状態と、を切り換え可能に設けられている。
【0035】
排気経路50は、排気管51と、排気電磁弁52とを含んでいる。排気管51の一端は、チャンバ10の天井部に連結されている。排気管51の他端は、貯水槽20に連結されている。排気管51には、排気電磁弁52が設けられている。排気電磁弁52は、排気経路50を開閉する。排気電磁弁52は、チャンバ10から貯水槽20へ気体が流れ得る開状態と、チャンバ10から貯水槽20への気体の流れを禁止する閉状態と、を切り換え可能に設けられている。
【0036】
排気経路50は、滅菌処理のためにチャンバ10内を蒸気で満たそうとするとき、空気と蒸気との混合気のチャンバ10からの出口となる経路を形成する。排気経路50の他端が貯水槽20に連結されていることにより、当該混合気は、貯水槽20内に排出される。
【0037】
蒸気滅菌器1はまた、チャンバ10内に空気を送り込む給気経路60を備えている。給気経路60は、一端がチャンバ10に連結された給気管61と、給気管61の他端に取り付けられたエアフィルタ62と、給気管61の途中に設けられたエアポンプ63および給気電磁弁64とを含んでいる。エアフィルタ62は、給気管61への空気の取り込み口として機能する。エアフィルタ62を経由して取り込まれた空気は、給気管61の内部を流通する。エアポンプ63は、エアフィルタ62からチャンバ10へ向かう空気の流れを発生して、チャンバ10内に空気を供給する。
【0038】
給気電磁弁64は、エアポンプ63に対し下流側(チャンバ10に近い側)の、給気管61の途中に設けられている。給気電磁弁64は、給気経路60を開閉する。給気電磁弁64は、給気経路60を経由してチャンバ10内へ空気が流れ得る開状態と、エアポンプ63からチャンバ10への空気の流れおよびチャンバ10からエアポンプ63への気体の流れを禁止する閉状態と、を切り換え可能に設けられている。
【0039】
チャンバ10内で被滅菌物100が滅菌処理された後に、チャンバ10内に残留する水蒸気は、排気経路50を経由してチャンバ10外へ排出される。次に、チャンバ10の内部を乾燥させる乾燥処理が行なわれる。乾燥処理では、給気経路60は、チャンバ10の内部に空気を送り込む。この後、蒸気滅菌器1を使用する作業者は、開閉蓋11を開けて、滅菌処理後の被滅菌物100をチャンバ10から取り出すことができる。
【0040】
蒸気滅菌器1は、警報器80をさらに備えている。警報器80は、蒸気滅菌器1の動作状態に基づいて、警報を出力する。すなわち警報器80は、蒸気滅菌器1が予め定められた特定の動作状態にあるときに、蒸気滅菌器1を使用する作業者に注意を喚起する警報を出力する。警報器80は、LED(Light Emitting Diode)もしくは液晶などのディスプレイ、またはランプなどの、視覚警報を発する仕様であってもよい。警報器80は、ブザーなどの、音声警報を発する仕様であってもよい。警報器80は、視覚警報と音声警報とを併用する仕様であってもよい。
【0041】
図2は、蒸気滅菌器1の電気的構成を示すブロック図である。
図2に示されるように、蒸気滅菌器1は、蒸気滅菌器1の動作を制御する制御部70を備えている。制御部70は、開閉センサ14、温度センサ16および通電センサ18に電気的に接続されている。制御部70は、開閉センサ14から、開閉蓋11が開状態であるか閉状態であるかの検出結果の入力を受ける。制御部70は、温度センサ16から、チャンバ10の内部の温度に係る検出値の入力を受ける。制御部70は、通電センサ18から、チャンバ10内の容器101の有無、すなわちチャンバ10内の被滅菌物100の有無に係る検出結果の入力を受ける。
【0042】
制御部70はまた、入力部71を有している。蒸気滅菌器1を操作する作業者は、滅菌温度、滅菌時間および乾燥時間などの設定値を、入力部71から制御部70に入力する。制御部70はまた、所定時間を計測するタイマ72を有している。タイマ72は、被滅菌物100の滅菌時間および乾燥時間を制御するために使用され、また、チャンバ10内への給水のタイミングの制御のために使用される。
【0043】
制御部70はさらに、メモリ73を有している。メモリ73は、被滅菌物100の滅菌処理における蒸気滅菌器1の各種の動作を実行するためのプログラムを格納する。制御部70は、メモリ73に格納されているプログラムに基づいて、蒸気滅菌器1の動作を制御するための各種処理を実行する。メモリ73は、不揮発性のメモリであり、必要なデータを記憶する領域として設けられている。メモリ73は、蒸気滅菌器1の動作状態を記憶することが可能とされている。
【0044】
制御部70は、蒸気滅菌器1の各制御ステップに対応して、滅菌ヒータ12、排気電磁弁52、排水電磁弁43、給水電磁弁33、給水ポンプ32、給気電磁弁64、エアポンプ63および警報器80などの、蒸気滅菌器1に含まれる各機器に制御信号を出力する。制御部70からの制御信号を受けて各機器が適切に動作することにより、蒸気滅菌器1による被滅菌物100の滅菌処理が確実に行なわれる。
【0045】
以上の構成を備えている実施形態の蒸気滅菌器1の、特徴的な動作について、以下に説明する。
図3は、蒸気滅菌器1の動作の第一例を示すフローチャートである。
図3に示されるフローチャートに従って、実施形態の蒸気滅菌器1の動作について説明する。
【0046】
まずステップS1において、滅菌動作を開始する。本明細書における滅菌動作とは、チャンバ10へ給水し、チャンバ10内に蒸気を発生させてチャンバ10内の空気を蒸気で置換し、所定の温度および圧力に達するまでチャンバ10内を加熱し、その温度および圧力を所定時間保持し、所定時間経過後に水および蒸気をチャンバ10から排出し、最後にチャンバ10内を乾燥する、一連の動作をいう。被滅菌物100がチャンバ10内にある状態で滅菌動作が行なわれることで、被滅菌物100が滅菌処理される。
【0047】
滅菌動作が開始された後、ステップS2において、滅菌動作が中断したか否かの判断が行なわれる。ステップS1で滅菌動作を開始した後、ステップS5で滅菌動作を終了する前の、蒸気滅菌器1の滅菌動作中、すなわち、被滅菌物100の滅菌処理を開始した後、滅菌処理を終える前の、滅菌処理の最中に、たとえばチャンバ10の開閉蓋11が開放された場合に、滅菌動作(被滅菌物100の滅菌処理)が中断したと判断される。
【0048】
滅菌動作が中断したと判断された場合(ステップS2においてYES)、ステップS3に進み、警報が出力される。制御部70は、滅菌動作が中断されたことを作業者に通知する警報を出力するよう、警報器80に制御信号を出力する。制御信号を受けた警報器80は、警報を出力する。ステップS3で出力される警報は、実施形態における第3の警報に相当する。
【0049】
本明細書においては、被滅菌物100の滅菌処理が未だされていない蒸気滅菌器1の状態を、未滅菌状態と規定する。ステップS3において警報器80は、被滅菌物100の滅菌処理が中断され、未滅菌状態で動作が終了したことを示す警報を出力することになる。
【0050】
その後、ステップS4において、蒸気滅菌器1は待機状態とされる。作業者が滅菌動作を再度開始するなどの操作をするまで、蒸気滅菌器1は待機状態のままとされる。
【0051】
ステップS2の判断において滅菌動作が中断していないと判断された場合(ステップS2においてNO)、ステップS5に進み、滅菌動作が終了する。通常通りの滅菌動作を経ることにより、チャンバ10内の被滅菌物100の滅菌処理が完了する。続いてステップS6において、作業者はチャンバ10の開閉蓋11を開放する。開閉センサ14によって、開閉蓋11が開放されたことが検出される。制御部70は、開閉センサ14から、開閉蓋11が開状態であることを示す検出結果の入力を受ける。
【0052】
開閉蓋11が開放されると、ステップS7に進み、警報が出力される。制御部70は、滅菌処理の完了した被滅菌物100がチャンバ10内にあることを作業者に通知して、滅菌処理済の被滅菌物100のチャンバ10からの取り出しを促す警報を出力するよう、警報器80に制御信号を出力する。制御信号を受けた警報器80は、警報を出力する。ステップS7で出力される警報は、実施形態における第2の警報に相当する。
【0053】
警報によって滅菌処理済の被滅菌物100がチャンバ10内にあることを認識した作業者は、次のステップS8において、被滅菌物100をチャンバ10から取り出す。
【0054】
次に、ステップS9において、ステップS6で開放された開閉蓋11が、閉鎖される。
次にステップS10において、開閉蓋11が開放される。
図3に示される実施形態では、ステップS5において被滅菌物100の滅菌処理を終えた後、ステップS6において開閉蓋11が開放され、その後、ステップS9において開閉蓋11が閉鎖され、その後、滅菌処理が開始されることなく開閉蓋11が再び開放されたとき、未滅菌状態に移行したものと判定される。つまり、ステップS10においては、未滅菌状態で開閉蓋11が開放されていることになる。
【0055】
開閉蓋11が開放されると、ステップS11に進み、警報が出力される。滅菌処理が未だされていない被滅菌物100がチャンバ10内にある可能性があり、このとき制御部70は、チャンバ10内の被滅菌物100をチャンバ10から取り出すべきでないことを報知する警報を出力するよう、警報器80に制御信号を出力する。制御信号を受けた警報器80は、警報を出力する。ステップS11で出力される警報は、実施形態における第1の警報に相当する。
【0056】
続くステップS12において、開閉蓋11を閉鎖する。開閉センサ14によって、開閉蓋11が閉鎖されたことが検出される。制御部70は、開閉センサ14から、開閉蓋11が閉状態であることを示す検出結果の入力を受ける。
【0057】
開閉蓋11が閉鎖されると、ステップS13に進み、蒸気滅菌器1は待機状態とされる。開閉センサ14より検出結果の入力を受けた制御部70は、警報の出力を停止するよう、警報器80に制御信号を出力する。制御信号を受けた警報器80は、警報の出力を停止する。この状態で制御部70は、作業者に滅菌動作開始を促す指示を出力するように、警報器80に制御信号を出力してもよい。作業者が、次の被滅菌物100の滅菌処理をするための操作をするまで、蒸気滅菌器1は待機状態とされる。
【0058】
図4は、蒸気滅菌器1の動作の第二例を示すフローチャートである。
図4に示されるステップS1~S8の処理は、既に説明した
図3のステップS1~S8の処理と同じであるので、説明を省略する。
【0059】
図4に示されるステップS6において、開閉蓋11が開放されたことを検出した後に、ステップS29において、所定時間が経過する。
図4に示される実施形態では、ステップS6で開閉蓋11が開放されてから、開閉蓋11が開放されたまま、ステップS29において所定時間、たとえば10秒間が経過したとき、未滅菌状態に移行したものと判定される。したがって、ステップS29においては、未滅菌状態で開閉蓋11が開放されていることになる。
【0060】
続いてステップS11に進み、警報が出力される。ステップS11で出力される警報は、
図3に示されるステップS11と同様であり、実施形態における第1の警報に相当する。
【0061】
続くステップS12の開閉蓋11を閉鎖する処理、およびステップS13の蒸気滅菌器1が待機状態とされる処理は、既に説明した
図3のステップS12,S13の処理と同じであるので、説明を省略する。
【0062】
図5は、蒸気滅菌器1の動作の第三例を示すフローチャートである。
図5に示されるフローチャートに従って、実施形態の蒸気滅菌器1の動作の第三例について説明する。
【0063】
まずステップS31において、滅菌動作を開始する。
図3のステップS1の処理で説明した通り、被滅菌物100がチャンバ10内にある状態で滅菌動作が行なわれることで、被滅菌物100が滅菌処理される。
【0064】
滅菌動作が開始された後、ステップS32において、チャンバ10内に被滅菌物100があるか否かの判断が行なわれる。実施形態の蒸気滅菌器1の場合、通電センサ18の一対の電極に導電材料製の容器101が接触して通電が発生していることを検出することにより、チャンバ10内に容器101があり、したがってチャンバ10内に容器101に収容された被滅菌物100があることが検出される。
【0065】
チャンバ10内に被滅菌物100がないと判断された場合(ステップS32においてNO)、ステップS33aに進み、警報が出力される。制御部70は、チャンバ10内に被滅菌物100がない状態で滅菌動作が開始されたことを作業者に通知する警報を出力するよう、警報器80に制御信号を出力する。制御信号を受けた警報器80は、警報を出力する。ステップS33aで出力される警報は、実施形態における第4の警報に相当する。その後、ステップS33bにおいて、蒸気滅菌器1は待機状態とされる。作業者が未処理の被滅菌物100をチャンバ10内に搬入し、滅菌動作を再度開始するなどの操作をするまで、蒸気滅菌器1は待機状態のままとされる。
【0066】
ステップS32の判断においてチャンバ10内に被滅菌物100があると判断された場合(ステップS32においてYES)、警報器80は警報を出力しない。
【0067】
続くステップS34~S38の処理は、既に説明した
図3のステップS2~S6の処理と同じであるので、説明を省略する。
【0068】
続いてステップS39において、チャンバ10内に被滅菌物100があるか否かの判断が行なわれる。ステップS39の判断は、ステップS32と同様に行なわれる。
【0069】
チャンバ10内に被滅菌物100があると判断された場合(ステップS39においてYES)、既に説明した
図3のステップS7,S8と同様に、ステップS40で警報が出力され、ステップS41で被滅菌物100がチャンバ10から取り出される。
【0070】
ステップS39の判断においてチャンバ10内に被滅菌物100がないと判断された場合(ステップS39においてNO)、ステップS40およびS41はスキップされる。警報器80は、滅菌動作終了後に開閉蓋11が開放されたとき、被滅菌物100がチャンバ10内になければ、警報を出力しない。なお、ステップS39の判断は省略されてもよく、ステップS38において、作業者がチャンバ10の開閉蓋11を開放すると、ステップS40に進み、警報が出力されるようにしてもよい。
【0071】
ステップS41の処理またはステップS39の判断の後に、ステップS42において、未処理の被滅菌物100がチャンバ10内に搬入される。
図5に示される実施形態では、ステップS39におけるNOの判断、またはステップS41における被滅菌物100の取り出しによる、チャンバ10内に被滅菌物100がない状態から、ステップS42において新たな未処理の被滅菌物100がチャンバ10内に搬入される処理をもって、チャンバ10内に被滅菌物100がある状態となり、未滅菌状態に移行したものと判定される。チャンバ10の開閉蓋11はステップS38で開放されたままであるので、ステップS42においては、未滅菌状態で開閉蓋11が開放されていることになる。
【0072】
次にステップS43において、警報が出力される。滅菌処理が未だされていない被滅菌物100がチャンバ10内にあるので、制御部70は、チャンバ10内の被滅菌物100をチャンバ10から取り出すべきでないことを報知する警報を出力するよう、警報器80に制御信号を出力する。制御信号を受けた警報器80は、警報を出力する。ステップS43で出力される警報は、
図3に示されるステップS11と同様であり、実施形態における第1の警報に相当する。
【0073】
続くステップS44の開閉蓋11を閉鎖する処理、およびステップS45の蒸気滅菌器1が待機状態とされる処理は、既に説明した
図3のステップS12,S13の処理と同じであるので、説明を省略する。
【0074】
蒸気滅菌器1が、
図3~5に示される各ステップのうち、どのステップの動作をしているのかは、都度メモリ73に記憶される。メモリ73は、蒸気滅菌器1の動作状態を記憶する。メモリ73は、蒸気滅菌器1が、滅菌動作が完了する前の状態であるか、滅菌動作が完了した後の状態であるかを、記憶する。
【0075】
メモリ73は、不揮発性のメモリであり、蒸気滅菌器1の電源がオフの間も記憶内容を保持する。停電など蒸気滅菌器1に電源断が発生し、その後の電源復帰時に、メモリ73は、電源断発生前の動作状態を記憶している。電源断発生後に開閉蓋11が開放されたとき、警報器80は、メモリ73に記憶されている電源断発生前の動作状態に基づいて、警報を出力することができる。
【0076】
上述した説明と一部重複する部分もあるが、実施形態の蒸気滅菌器1の特徴的な構成および作用効果についてまとめて説明すると、以下の通りである。なお、実施形態の構成に参照番号を付すが、これは一例である。
【0077】
図3~5に示されるように、警報器80は、被滅菌物100の滅菌処理が未だされていない未滅菌状態で、チャンバ10の開閉蓋11が開放されているとき、チャンバ10内の被滅菌物100が未滅菌であることを報知する警報を出力する。チャンバ10内にある被滅菌物100が滅菌されていないものであることを作業者に報知することにより、被滅菌物100のチャンバ10からの取り出しを妨げることができ、滅菌されていない被滅菌物100が誤ってチャンバ10から取り出されることを抑制することができる。
【0078】
図3に示されるように、蒸気滅菌器1が滅菌処理を終えた後、開閉蓋11が開放されて、その後開閉蓋11が閉鎖され、その後、滅菌処理が開始されることなく開閉蓋11が再び開放されたとき、未滅菌状態と判定する。滅菌処理済の被滅菌物100をチャンバ10から取り出した後、次に滅菌処理を行なう新たな被滅菌物100をチャンバ10内に収納して開閉蓋11を閉鎖し、その状態で滅菌処理を開始せずに放置したとしても、次に開閉蓋11が開放されたときに、チャンバ10内にある被滅菌物100が滅菌されていないものであることを作業者に報知することができる。
【0079】
図4に示されるように、蒸気滅菌器1が滅菌処理を終えた後、開閉蓋11が開放されて、その後、開閉蓋11が開放されたまま所定時間が経過したとき、未滅菌状態と判定する。滅菌処理済の被滅菌物100をチャンバ10から取り出した後、次に滅菌処理を行なう新たな被滅菌物100をチャンバ10内に収納して、その状態で滅菌処理を開始せずに放置したとしても、チャンバ10内にある被滅菌物100が滅菌されていないものであることを作業者に報知することができる。
【0080】
図5に示されるように、蒸気滅菌器1が滅菌処理を終えた後、開閉蓋11が開放されて、その後、新たな未処理の被滅菌物100がチャンバ10内に搬入されたとき、未滅菌状態と判定する。滅菌処理済の被滅菌物100をチャンバ10から取り出した後、次に滅菌処理を行なう新たな被滅菌物100をチャンバ10内に収納して、その状態で滅菌処理を開始せずに放置したとしても、チャンバ10内にある被滅菌物100が滅菌されていないものであることを作業者に報知することができる。
【0081】
図3~5に示されるように、警報器80は、被滅菌物100の滅菌処理を終えた後、開閉蓋11が開放されたときに、滅菌処理済の被滅菌物100のチャンバ10からの取り出しを促す警報を出力する。滅菌処理終了後に、作業者が速やかに滅菌処理済の被滅菌物100をチャンバ10から取り出すことにより、滅菌処理済の被滅菌物100が未滅菌状態であると取り違えられることを抑制でき、滅菌処理済の被滅菌物100を再び滅菌処理する無駄作業の発生を回避することができる。
【0082】
図3~5に示されるように、警報器80は、被滅菌物100の滅菌処理を開始した後、滅菌処理を終える前に、開閉蓋11が開放されたとき、未滅菌状態で滅菌処理が中断されたことを示す警報を出力する。作業者は、警報を認識することで、滅菌動作を再度開始するなどの、適切な操作を行なうことができる。
【0083】
図5に示されるように、警報器80は、被滅菌物100がチャンバ10内にない場合には、警報を出力しない。被滅菌物100がチャンバ10内に収納されている場合にのみ警報を出力することで、警報の出力が必ずしも必要でない動作状態で警報が出力されることを回避でき、警報が出力される頻度を低減することができる。
【0084】
実施形態においては、通電センサ18などのセンサがチャンバ10内の被滅菌物100の有無を検出するように構成されている。この構成に替えて、チャンバ10への被滅菌物100の搬入の際、およびチャンバ10からの被滅菌物100の取り出しの際に、作業者が入力部71(
図2)を操作することで、制御部70がチャンバ10内の被滅菌物100の有無を判別できるような構成としてもよい。つまり、蒸気滅菌器1の各動作状態においてチャンバ10内に被滅菌物100があるか否かを判断するために、センサは必ずしも必須の構成ではないことに留意すべきである。
【0085】
図2に示されるように、蒸気滅菌器1は、蒸気滅菌器1の動作状態を記憶するメモリ73をさらに備えている。メモリ73は、不揮発性のメモリである。蒸気滅菌器1に電源断が発生した後の電源復帰時に、警報器80は、メモリ73に記憶されている電源断発生前の動作状態に基づいて、警報を出力する。停電などで電源断となっても、電源断以前の動作状態をメモリ73から読み出すことができるので、開閉蓋11が開放されたときに適切な警報を出力することができる。
【0086】
以上のように本発明の実施形態について説明を行なったが、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0087】
1 蒸気滅菌器、10 チャンバ、11 開閉蓋、12 滅菌ヒータ、13 載置台、14 開閉センサ、16 温度センサ、17 連結部、18 通電センサ、19 配線、20 貯水槽、30 給水経路、31 給水管、32 給水ポンプ、33 給水電磁弁、40 排水経路、41 排水管、43 排水電磁弁、50 排気経路、51 排気管、52 排気電磁弁、60 給気経路、61 給気管、62 エアフィルタ、63 エアポンプ、64 給気電磁弁、70 制御部、71 入力部、72 タイマ、73 メモリ、80 警報器、100 被滅菌物、101 容器。