(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】超音波洗浄装置及び超音波洗浄方法
(51)【国際特許分類】
B08B 3/12 20060101AFI20230630BHJP
B08B 3/02 20060101ALI20230630BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
B08B3/12 Z
B08B3/02 G
B08B3/02 D
H01L21/304 643D
H01L21/304 643A
H01L21/304 643B
(21)【出願番号】P 2019113265
(22)【出願日】2019-06-19
【審査請求日】2022-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【氏名又は名称】末富 孝典
(74)【代理人】
【識別番号】100168114
【氏名又は名称】山中 生太
(74)【代理人】
【識別番号】100146916
【氏名又は名称】廣石 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】五島 崇
【審査官】東 勝之
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-093984(JP,A)
【文献】特開平11-176788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B08B 3/12
B08B 3/02
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄の対象である洗浄対象物に洗浄液を接触させる接液部材と、
前記接液部材によって前記洗浄対象物に接触されている前記洗浄液に、超音波を付与する超音波付与装置と、
を備え、
前記超音波付与装置によって超音波が付与されている前記洗浄液が、該洗浄液の表面張力によって、前記洗浄対象物の表面における前記接液部材に対向する対向領域と、前記接液部材との間隙に、局所的に保持される、
超音波洗浄装置
であって、
前記間隙に前記洗浄液が局所的に保持されている状態を保ったまま、前記接液部材と前記洗浄対象物との一方を他方に対して、前記接液部材、前記間隙の前記洗浄液、及び前記洗浄対象物を通る仮想回転軸の周りに自転させる回転装置、
をさらに備える、超音波洗浄装置。
【請求項2】
前記間隙に前記洗浄液が局所的に保持されている状態を保ったまま、前記接液部材と前記洗浄対象物との一方を他方に対して移動させることにより、前記間隙に局所的に保持されている前記洗浄液を、前記洗浄対象物の前記表面上で移動させる移動装置、
をさらに備える、請求項
1に記載の超音波洗浄装置。
【請求項3】
前記洗浄液が貯留される貯留空間を画定している貯留部、
をさらに備え、
前記接液部材が、中空管状の接液ノズルによって構成されており、
前記接液ノズルが前記貯留部と連通していることにより、前記間隙に保持されている前記洗浄液が、前記貯留空間に貯留されている前記洗浄液と連続している状態を保つ、
請求項1
又は2に記載の超音波洗浄装置。
【請求項4】
前記超音波付与装置が、前記貯留部に取り付けられており、前記貯留空間の前記洗浄液を介して、前記間隙に保持されている前記洗浄液に前記超音波を付与する、
請求項
3に記載の超音波洗浄装置。
【請求項5】
洗浄の対象である洗浄対象物と対向する位置に、前記洗浄対象物に洗浄液を接触させる接液部材を配置し、前記洗浄対象物の表面における前記接液部材に対向する対向領域と、前記接液部材との間隙に、前記洗浄液の表面張力によって、前記洗浄液を局所的に保持させる洗浄液保持工程と、
前記間隙に前記洗浄液が保持されている状態を保ったまま、該洗浄液に超音波を付与
し、かつ前記接液部材と前記洗浄対象物との一方を他方に対して、前記接液部材、前記間隙の前記洗浄液、及び前記洗浄対象物を通る仮想回転軸の周りに自転させる超音波付与工程と、
を含む、超音波洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波洗浄装置及び超音波洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、洗浄の対象である洗浄対象物としての基板に対向して配置される超音波振動子と、その超音波振動子と基板との間隙に洗浄液を流し込む洗浄液供給機構とを備える基板洗浄装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に係る基板洗浄装置では、基板の表面上で洗浄液が広範囲に流動し、かつ基板から洗浄液が流れ落ちたり、基板以外の部材へと洗浄液が付着したりする。このため、基板の洗浄後に、洗浄液を取り除く作業に手間を要する場合がある。
【0005】
本発明の目的は、洗浄対象物の表面における洗浄したい領域以外の箇所へと洗浄液が流動しにくい超音波洗浄装置及び超音波洗浄方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る超音波洗浄装置は、
洗浄の対象である洗浄対象物に洗浄液を接触させる接液部材と、
前記接液部材によって前記洗浄対象物に接触されている前記洗浄液に、超音波を付与する超音波付与装置と、
を備え、
前記超音波付与装置によって超音波が付与されている前記洗浄液が、該洗浄液の表面張力によって、前記洗浄対象物の表面における前記接液部材に対向する対向領域と、前記接液部材との間隙に、局所的に保持される、
超音波洗浄装置であって、
前記間隙に前記洗浄液が局所的に保持されている状態を保ったまま、前記接液部材と前記洗浄対象物との一方を他方に対して、前記接液部材、前記間隙の前記洗浄液、及び前記洗浄対象物を通る仮想回転軸の周りに自転させる回転装置、
をさらに備える。
【0008】
前記間隙に前記洗浄液が局所的に保持されている状態を保ったまま、前記接液部材と前記洗浄対象物との一方を他方に対して移動させることにより、前記間隙に局所的に保持されている前記洗浄液を、前記洗浄対象物の前記表面上で移動させる移動装置、
をさらに備えてもよい。
【0009】
前記洗浄液が貯留される貯留空間を画定している貯留部、
をさらに備え、
前記接液部材が、中空管状の接液ノズルによって構成されており、
前記接液ノズルが前記貯留部と連通していることにより、前記間隙に保持されている前記洗浄液が、前記貯留空間に貯留されている前記洗浄液と連続している状態を保ってもよい。
【0010】
前記超音波付与装置が、前記貯留部に取り付けられており、前記貯留空間の前記洗浄液を介して、前記間隙に保持されている前記洗浄液に前記超音波を付与してもよい。
【0011】
本発明に係る超音波洗浄方法は、
洗浄の対象である洗浄対象物と対向する位置に、前記洗浄対象物に洗浄液を接触させる接液部材を配置し、前記洗浄対象物の表面における前記接液部材に対向する対向領域と、前記接液部材との間隙に、前記洗浄液の表面張力によって、前記洗浄液を局所的に保持させる洗浄液保持工程と、
前記間隙に前記洗浄液が保持されている状態を保ったまま、該洗浄液に超音波を付与し、かつ前記接液部材と前記洗浄対象物との一方を他方に対して、前記接液部材、前記間隙の前記洗浄液、及び前記洗浄対象物を通る仮想回転軸の周りに自転させる超音波付与工程と、
を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る超音波洗浄装置及び超音波洗浄方法によれば、超音波が付与されている洗浄液が、その洗浄液の表面張力によって、洗浄対象物の表面における接液部材に対向する対向領域と、接液部材との間隙に局所的に保持される。このため、洗浄対象物の表面における洗浄したい領域以外の箇所へと洗浄液が流動しにくい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態1に係る超音波洗浄装置の構成を示す概念図。
【
図2】実施形態2に係る超音波洗浄装置の構成を示す概念図。
【
図3】実施形態2に係る基板の表面の洗浄領域を示す概念図。
【
図4】実施形態3に係る超音波洗浄装置の構成を示す概念図。
【
図5】実施例及び比較例に係る超音波洗浄装置による洗浄度を示すグラフ。
【
図6】実施例に係る超音波洗浄装置による洗浄度の、洗浄液に用いたウルトラファインバブル水の気泡密度に対する依存性を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照し、洗浄の対象である洗浄対象物が基板である場合を例に挙げて、実施形態1-3に係る超音波洗浄装置について説明する。図中、同一又は対応する部分に同一の符号を付す。
【0015】
[実施形態1]
図1に示すように、本実施形態に係る超音波洗浄装置500は、洗浄対象物としての基板BPの洗浄に用いられる。
【0016】
超音波洗浄装置500は、基板BPを保持する保持部材としての回転装置100と、回転装置100によって保持された基板BPに、洗浄液LQを接触させる接液器200と、接液器200によって基板BPに接触されている洗浄液LQに超音波を付与する超音波付与装置300とを備える。
【0017】
回転装置100は、基板BPが固定されるチャック110と、チャック110を回転させるモータ120とを有する。チャック110は、基板BPと相対変位しない態様で、基板BPを保持する。本実施形態では、回転装置100によって保持された基板BPの上方に、接液器200が配置されている。
【0018】
接液器200は、基板BPの真上に配置された接液ノズル210と、接液ノズル210の上方に配置された貯留部220とを有する。
【0019】
接液ノズル210は、先端が基板BPの表面に臨んでいる中空管状に形成されており、基板BPと交差する方向に延在する内部空洞CAを画定している。接液ノズル210は、基板BPと対向し、かつ基板BPとの間に間隙GPを構成する高さに配置されている。接液ノズル210は、基板BPに洗浄液LQを接触させる接液部材の一例である。
【0020】
貯留部220は、洗浄液LQが貯留される液密な貯留空間SPを画定している。貯留部220は、接液ノズル210と連通している。
【0021】
超音波付与装置300は、貯留部220に取り付けられている。超音波付与装置300は、貯留部220の、貯留空間SPに面する内面の一部を構成している。具体的には、超音波付与装置300は、貯留部220の内面のうちの、接液ノズル210と対向する面を構成している。
【0022】
超音波付与装置300の、貯留空間SPに面する部分は、洗浄液LQに浸っている。また、超音波付与装置300から基板BPの表面に至る、貯留空間SP及び接液ノズル210の内部空洞CAを含む空間は、洗浄液LQで満たされている。
【0023】
以下、本実施形態に係る超音波洗浄方法について説明する。
【0024】
まず、基板BPと対向する位置に接液ノズル210を配置し、基板BPの表面における接液ノズル210に対向する全領域と、接液ノズル210との間隙GPに、洗浄液LQの表面張力によって、洗浄液LQを局所的に保持させる。なお、この手順は、間隙GPに洗浄液LQを保持させる洗浄液保持工程の一例である。
【0025】
つまり、間隙GPの広さD2は、間隙GPから洗浄液LQがこぼれ落ちない程度に狭く定められる。なお、貯留空間SPは、接液ノズル210と連通している部分を除いて液密に構成されているため、貯留空間SPに貯めれている洗浄液LQの荷重は、間隙GPに保持されている洗浄液LQにはかかっていない。
【0026】
間隙GPに洗浄液LQを保持させる手順は、特に限定されない。予め基板BPの表面に洗浄液LQを滴下しておき、その滴下された洗浄液LQに、内部空洞CAが洗浄液LQで満たされた接液ノズル210を接触させることで、間隙GPに洗浄液LQが保持された状況を実現することができる。
【0027】
また、内部空洞CAが洗浄液LQで満たされ、かつ先端から洗浄液LQが膨出している状態の接液ノズル210を基板BPに近づけ、その膨出している洗浄液LQを基板BPに接触させることで、間隙GPに洗浄液LQが保持された状況を実現してもよい。
【0028】
次に、間隙GPに洗浄液LQが保持されている状態を保ったまま、超音波付与装置300を作動させる。この手順は、間隙GPに保持されている洗浄液LQに超音波を付与する超音波付与工程の一例である。
【0029】
既述のように、接液ノズル210の内部空洞CAと貯留空間SPとは連通しており、内部空洞CA及び貯留空間SPは洗浄液LQで満たされている。このため、間隙GPに保持されている洗浄液LQは、貯留空間SPに貯留されている洗浄液LQと連続している状態を保っている。従って、超音波付与装置300は、貯留空間SP及び内部空洞CAの洗浄液LQを介して、間隙GPに保持されている洗浄液LQに超音波を付与する。
【0030】
間隙GPの洗浄液LQに超音波が付与されることで、基板BPの、洗浄液LQと接触している部分の洗浄が促進される。間隙GPの洗浄液LQに超音波の振動エネルギーを効率よく供給することで、強力な洗浄を実現できる。そのためには、上記洗浄液保持工程において、間隙GPの広さD2を、接液ノズル210の内径、即ち内部空洞CAの直径D1よりも小さく定めておくことが好ましい。より好ましくは、D2≦0.75×D1であり、最も好ましくは、D2≦0.5×D1である。
【0031】
なお、既述のように、洗浄の過程で、間隙GPの洗浄液LQが、貯留空間SPの洗浄液LQと連続している状態を保つ。従って、超音波によって基板BPから隔離された除去物は、間隙GPを通して貯留空間SPへと拡散する。このため、間隙GPの洗浄液LQにおける除去物の濃度が高くなり過ぎない。このことは、基板BPの洗浄を効率的に行うことに寄与している。
【0032】
また、超音波付与工程では、間隙GPに洗浄液LQが局所的に保持されている状態を保ったまま、接液ノズル210に対して基板BPを自転させる。具体的には、回転装置100が、接液ノズル210の内部空洞CA、間隙GPの洗浄液LQ、及び基板BPを通る仮想回転軸VAの周りに、基板BPを自転させる。基板BPを自転させることで、基板BPの表面と、間隙GPの洗浄液LQとの間に摩擦力が作用するので、基板BPの洗浄のさらなる促進が図られる。
【0033】
以上説明したように、本実施形態によれば、基板BPの洗浄の過程で、間隙GPの洗浄液LQに超音波を付与し、かつ基板BPを回転させるにも関わらず、洗浄液LQの表面張力によって、基板BPの表面における全域と、接液ノズル210との間隙GPに洗浄液LQが局所的に保持される。
【0034】
このため、基板BPの洗浄中に、基板BPの表面以外の箇所へと洗浄液LQが流動しにくい。従って、基板BPの洗浄後において、洗浄液LQの除去が容易である。
【0035】
[実施形態2]
上記実施形態1では、基板BPの表面における接液ノズル210に対向する対向領域が、基板BPの表面の全域と一致する場合を述べた。基板BPの表面における接液ノズル210に対向する対向領域が、基板BPの表面の一部分である場合には、接液ノズル210と基板BPとの一方を他方に対して移動させることにより、基板BPの表面における所望の領域を局所的に洗浄することができる。以下、その具体例を述べる。
【0036】
図2に示すように、本実施形態では、接液器200が回転装置100によって保持されている。接液器200の上方に、基板BPが配置されている。接液ノズル210は、基板BPの真下に配置され、接液ノズル210の下方に、貯留部220が配置されている。
【0037】
接液ノズル210が、超音波が付与されている洗浄液LQを、基板BPとの間隙GPに局所的に保持する点は、実施形態1と同じである。本実施形態では、回転装置100は、洗浄液LQが間隙GPに保持されている状態を保ったまま、接液ノズル210を基板BPに対して仮想回転軸VAの周りに自転させる。
【0038】
また、本実施形態では、基板BPの表面における接液ノズル210に対向する対向領域RAが、基板BPの表面の一部分である。そこで、本実施形態では、移動装置400によって、基板BPを接液ノズル210に対して移動させることで、間隙GPに局所的に保持される洗浄液LQを、基板BPの表面上で移動させる。
【0039】
図3に、基板BPの表面における洗浄したい領域(以下、洗浄領域という。)RBを例示する。
図2に示した移動装置400は、基板BPの表面における接液ノズル210に対向する対向領域RAが、洗浄領域RBに沿って走査されるように基板BPを移動させる。これにより、基板BPの表面における洗浄領域RBだけを局所的に洗浄することができる。
【0040】
本実施形態によれば、基板BPの洗浄の過程で、間隙GPの洗浄液LQに超音波を付与し、かつ基板BPを回転させ、かつ基板BPと接液ノズル210とを相対的に移動させるにも関わらず、洗浄液LQの表面張力によって、基板BPの表面における対向領域RAと、接液ノズル210との間隙GPに洗浄液LQが局所的に保持される。
【0041】
このため、基板BPの洗浄後において、基板BPの表面における洗浄領域RB以外の領域には、洗浄液LQが殆ど付着していない。従って、基板BPの表面における洗浄領域RB以外の領域に対して、洗浄液LQを拭き取る作業が不要である。
【0042】
[実施形態3]
図1及び
図2には、基板BPと接液器200とを相対的に回転させる回転装置100を示したが、回転装置100は必須でない。また、
図2には、移動装置400を示したが、基板BPと接液器200との相対移動は、人手によって行ってもよい。以下、回転装置100及び移動装置400を省略した具体例を述べる。
【0043】
図4に示すように、本実施形態では、接液器200が、人が筆記具として持つことができるサイズのスティック状に形成されている。超音波付与装置300は、貯留部220に収められている。超音波付与装置300に電力を供給する手段は、電池であってもよい。
【0044】
ユーザは、筆記具を把持するのと同じ要領で、接液器200を把持した状態で、接液ノズル210を基板BPの表面に臨ませる。貯留部220は、可撓性を有する素材で形成されていて、ユーザが指で貯留部220を加圧すると、貯留部220に貯められている洗浄液LQが接液ノズル210から膨出した状態となる。
【0045】
その膨出した洗浄液LQを基板BPの表面に接触させることで、接液ノズル210と基板BPとの間隙GPに、表面張力によって洗浄液LQが保持された状況を構成することができる。また、ユーザは、文字を書く要領で、接液ノズル210を基板BPに対して走査させることで、基板BPの表面における所望の領域を局所的に洗浄することができる。
【0046】
接液ノズル210の走査に伴って間隙GPの洗浄液LQが減少する場合は、接液ノズル210を走査させつつ、貯留部220を指で押圧する。これにより、貯留部220の洗浄液LQが、接液ノズル210を通して間隙GPへと補充される。
【0047】
以上説明したように、本実施形態に係る超音波洗浄装置500によっても、基板BPの表面における所望の領域だけを局所的に洗浄することができる。また、本実施形態に係る超音波洗浄装置500は、筆記具を把持するのと同じ要領で把持することができるので、人手による、基板BPの表面における細部の局所的な洗浄、例えば、はんだ付けの後に残るフラックスの除去に特に適する。
【実施例】
【0048】
以下、
図1に示す超音波洗浄装置500による洗浄の効果を確認した実験の結果について説明する。基板BPに張り付けた色素インジケータを洗浄対象物とした。
【0049】
[実施例1A、実施例1B]
実施例1Aとして、超音波付与装置300に平板型の超音波振動子を用い、洗浄液LQに水を用いて、基板BPに貼り付けた色素インジケータを洗浄した。なお、用いた平板型の超音波振動子が洗浄液LQに付与する超音波のエネルギー密度は、1713MJ/m3である。
【0050】
実施例1Bとして、超音波付与装置300にホーン型の超音波振動子を用いたこと以外は実施例1Aと同じ条件で、基板BPに貼り付けた色素インジケータを洗浄した。なお、用いたホーン型の超音波振動子が洗浄液LQに付与する超音波のエネルギー密度は、284MJ/m3である。
【0051】
[実施例2A、実施例2B]
実施例2Aとして、超音波付与装置300に実施例1Aで用いた平板型の超音波振動子と同じものを用い、洗浄液LQに、気泡と水との混合物であるバブル水、具体的には、直径1μm未満の気泡と水との混合物であるウルトラファインバブル水を用いて、基板BPに貼り付けた色素インジケータを洗浄した。用いたウルトラファインバブル水における気泡の数密度は、3.9億個/mLである。
【0052】
また、実施例2Bとして、超音波付与装置300に実施例1Bで用いたホーン型の超音波振動子と同じものを用いたこと以外は実施例2Aと同じ条件で、基板BPに貼り付けた色素インジケータを洗浄した。
【0053】
[実施例3A、実施例3B]
実施例3Aとして、超音波付与装置300に実施例1Aで用いた平板型の超音波振動子と同じものを用い、洗浄液LQに、気泡の数密度が26億個/mLのウルトラファインバブル水を用いて、基板BPに貼り付けた色素インジケータを洗浄した。
【0054】
また、実施例3Bとして、超音波付与装置300に実施例1Bで用いたホーン型の超音波振動子と同じものを用いたこと以外は実施例3Aと同じ条件で、基板BPに貼り付けた色素インジケータを洗浄した。
【0055】
[比較例]
超音波の効果を確認する比較例として、洗浄液LQへの超音波の付与を行わなかったこと以外は実施例1Aと同じ条件で、基板BPに貼り付けた色素インジケータを洗浄した。
【0056】
[評価結果]
上記各実施例及び比較例による洗浄後の色素インジケータの透過度を、紫外線吸光度分析装置で測定した。洗浄後に残った色素の量が少ない程、透過度が高い。そこで、以下では、透過度を、洗浄の能力の高さを表す指標である洗浄度とみなす。
【0057】
図5に、上記各実施例及び比較例に係る洗浄度を示す。比較例と、実施例1A、1B、2A、2B、3A、及び3Bとの比較により、超音波の付与が洗浄を促進して洗浄度を高める効果を奏することが確認された。
【0058】
また、実施例1A及び1Bと、実施例2A、2B、3A、及び3Bとの比較により、洗浄液LQには、水を用いてもよいが、水よりもバブル水、具体的にはウルトラファインバブル水を用いた方が、高い洗浄度が得られる傾向があることが確認された。
【0059】
図6は、洗浄液LQに用いたウルトラファインバブル水における気泡の数密度(以下、気泡密度という。)に対する洗浄度の依存性を示す。但し、実施例1A及び1Bで洗浄液LQとして用いた水の気泡密度をゼロとした。
【0060】
図6より、洗浄液LQにウルトラファインバブル水を用いる場合、ウルトラファインバブル水における気泡の数密度が高い方が、高い洗浄度が得られる傾向があることが確認された。
【0061】
以上、実施形態及び実施例について説明した。本発明はこれらに限られず、以下に述べる変形も可能である。
【0062】
図2には、基板BPを接液ノズル210に対して移動させる移動装置400を例示したが、移動装置400は、接液ノズル210を基板BPに対して移動させるものであってもよいし、接液ノズル210と基板BPとの双方を移動させるものであってよい。
【0063】
図1及び
図2に示す貯留部220に対し、貯留空間SPに貯められる洗浄液LQの温度を調整する温度調整器を設けてもよい。温度調整器は、洗浄液LQを加熱するものであってもよいし、洗浄液LQを冷却するものであってもよい。温度調整器は、ジャケットによって構成してもよい。
【0064】
図1及び
図2に示す貯留部220に対し、貯留空間SPに洗浄液LQを供給する供給管を接続してもよい。これにより、接液ノズル210と基板BPとの相対的な移動に伴って間隙GPの洗浄液LQが減少する場合であっても、間隙GPに洗浄液LQを補充できる。また、貯留部220に対し、貯留空間SPから洗浄液LQを排出する排出管をさらに接続してもよい。これにより、貯留空間SPの洗浄液LQを常時に、基板BPから除去された除去物を含まない新鮮な状態に保つことができる。
【0065】
図1に示す超音波付与装置300が洗浄液LQに付与する超音波の周波数は、特に限定されない。超音波付与装置300は、例えば、40kHz以上、2.4MHzの超音波を洗浄液LQに付与することができる。洗浄対象物としての基板BPに与える疲労を極力抑えるためには、超音波の周波数は1MHz以上であることが好ましい。
【0066】
図1から
図4には、洗浄対象物として基板BPを例示した。基板BPの材質は特に限定されない。基板BPは、シリコン基板であってもよいし、ガラス基板であってもよいし、金属基板であってもよいし、プリント基板であってもよい。また、洗浄対象物は基板BPに限られない。超音波洗浄装置500は、基板BP以外の部材の洗浄にも適用できる。洗浄対象物の素材としては、金属、ガラス、シリコン等が例示される。
【符号の説明】
【0067】
100…回転装置(保持部材)、
110…チャック、
120…モータ、
200…接液器、
210…接液ノズル(接液部材)、
220…貯留部、
300…超音波付与装置、
400…移動装置、
500…超音波洗浄装置、
BP…基板(洗浄対象物)、
CA…内部空洞、
GP…間隙、
LQ…洗浄液、
RA…対向領域、
RB…洗浄領域、
SP…貯留空間、
VA…仮想回転軸。