(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】計測装置
(51)【国際特許分類】
G01K 1/143 20210101AFI20230630BHJP
H05K 5/06 20060101ALI20230630BHJP
G01K 1/14 20210101ALI20230630BHJP
G01H 17/00 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
G01K1/143
H05K5/06 D
G01K1/14 E
G01H17/00 D
(21)【出願番号】P 2021015827
(22)【出願日】2021-02-03
【審査請求日】2022-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000137889
【氏名又は名称】株式会社ミヤワキ
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100176304
【氏名又は名称】福成 勉
(72)【発明者】
【氏名】吉川 成雄
【審査官】平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-219036(JP,A)
【文献】特開平10-335849(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/00-19/00
G01H 17/00
G01D 11/00-13/28
H05K 5/00-5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有底筒形状を有するケースと、前記ケースの開口を塞ぐように前記ケースに組付けられる蓋部材と、前記ケースの側壁端面と前記蓋部材との間に介挿されるシールパッキンとを有し、前記ケースと前記蓋部材とにより形成される内方の空間に電子機器が収容されてなる筐体部と、
前記筐体部の一端面から突出形成され、先端が計測対象物に押し当てられることにより当該計測対象物の状態を検出するプローブと、
を備え、
前記ケースにおける前記側壁端面および前記蓋部材における前記側壁端面に対向する対向領域の内の一方
を一方部位とし、前記ケースにおける前記側壁端面および前記蓋部材における前記対向領域の内の他方を他方部位とする場合に、
前記一方部位は、当該一方部位への
前記他方部位の組付け方向に向けて凹入され、
前記ケースに前記蓋部材が組付けられた状態で前記開口の周囲を囲むように形成された溝部を有し、
前記
他方部位は、前記ケースに前記蓋部材が組付けられた状態において、前記溝部に対して当該溝部の壁面に対して隙間をあけて挿入され、前記ケースの開口を囲むように形成されたリブ部を有し、
前記シールパッキンは、
弾性材料で形成されたチューブであって、長尺状のチューブで構成されたパッキン本体と、前記パッキン本体における長手方向の端部同士を接合する接合チューブとを有して、前記溝部に挿入されるリング形状を有するように構成され、前記ケースに前記蓋部材が組付けられた状態において、前記リブ部の挿入による押圧力を受けて断面方向に圧縮変形した状態で前記溝部の内部に挿入されており、
前記接合チューブは、前記パッキン本体と同じ材料から形成されているとともに、前記パッキン本体よりも薄肉に形成されており、
前記パッキン本体における長手方向の一方の端部は、前記接合チューブの一方の開口から挿入され、前記パッキン本体における長手方向の他方の端部は、前記接合チューブの他方の開口から挿入されている、
計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の計測装置において、
前記ケースおよび前記蓋部材と前記プローブとの間に介挿され、前記ケースおよび前記蓋部材と前記プローブとの間を液密状態とする第2のシールパッキンをさらに備え、
前記第2のシールパッキンは、ポリイミド樹脂から形成されている、
計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測装置に関し、特にコントローラ等が収容される筐体部のシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気が流通する配管設備から復水(ドレン)のみを排出する用途に用いられるスチームトラップが知られている。また、当該スチームトラップの振動および表面温度を計測し、それらの相互関係から蒸気漏れの有無を診断することが行われている。このような蒸気漏れの有無を診断するために計測装置が用いられている。
【0003】
ここで、蒸気漏れの有無を診断するために用いられる計測装置は、箱形状の筐体部と、当該筐体部から突出するように設けられたプローブとを有する。筐体部の内方には、計測した振動および表面温度に基づいて蒸気漏れの有無を診断するための演算処理を行う回路基板や、電源となるバッテリなどが収容されている。
【0004】
従来技術に係る計測装置においては、筐体部の内方への水分の侵入を防ぐための防水構造は特に採用されていない。ただし、回路基板やバッテリが収容される筐体部に対して、防水構造を採用することが、装置の故障を防ぐという観点から望ましい。このため、例えば特許文献1に開示された防水構造を計測装置の筐体部に適用することが考えられる。
【0005】
特許文献1には、筐体部を構成するケースおよび当該ケースの開口を覆う蓋部材の内に一方に周方向に溝部が形成され、他方に溝部に挿入されるリブ部が形成され、溝部とリブ部との間にゴム製等のシールパッキンが介挿された防水構造が開示されている。特許文献1に開示の防水構造では、溝部の内周面とリブ部の外周面との間でシールパッキンが圧縮され、これによって外部から筐体部内方への水分の侵入が防がれるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、スチームトラップの蒸気漏れの有無を計測するための計測装置では、特許文献1に開示の防水構造を採用しただけでは防水性が十分ではない。即ち、スチームトラップが配設される箇所は、屋内に限らず屋外の場合もあり、また、計測は晴天時に限らず雨天時にも行う必要が生じる場合もある。このため、計測機器に対しては、直接水がかかる場合もあり、より高い防水性を確保する必要がある。
【0008】
本発明は、上記のような問題の解決を図ろうとなされたものであって、内方に電子機器が収容された筐体部の高い防水性を実現可能な構成の計測装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る計測装置は、筐体部と、プローブとを備える。前記筐体部は、ケースと、蓋部材と、シールパッキンとを有する。前記ケースは、有底筒形状を有する。前記蓋部材は、前記ケースの開口を塞ぐように前記ケースに組付けられる。前記シールパッキンは、前記ケースの側壁端面と前記蓋部材との間に介挿される。そして、前記筐体部では、前記ケースと前記蓋部材とにより形成される内方の空間に電子機器が収容されている。
【0010】
前記プローブは、前記筐体部の一端面から突出形成され、先端が計測対象物に押し当てられることにより当該計測対象物の状態を検出する。
【0011】
前記ケースにおける前記側壁端面および前記蓋部材における前記側壁端面に対向する対向領域の内の一方を一方部位とし、前記ケースにおける前記側壁端面および前記蓋部材における前記対向領域の内の他方を他方部位とする場合に、前記一方部位は、当該一方部位への前記他方部位の組付け方向に向けて凹入され、前記ケースに前記蓋部材が組付けられた状態で前記開口の周囲を囲むように形成された溝部を有する。前記他方部位は、前記ケースに前記蓋部材が組付けられた状態において、前記溝部に対して当該溝部の壁面に対して隙間をあけて挿入され、前記ケースの開口を囲むように形成されたリブ部を有する。
【0012】
前記シールパッキンは、弾性材料で形成されたチューブであって、長尺状のチューブで構成されたパッキン本体と、前記パッキン本体における長手方向の端部同士を接合する接合チューブとを有して、前記溝部に挿入されるリング形状を有するように構成され、前記ケースに前記蓋部材が組付けられた状態において、前記リブ部の挿入による押圧力を受けて断面方向に圧縮変形した状態で前記溝部の内部に挿入されている。
前記接合チューブは、前記パッキン本体と同じ材料から形成されているとともに、前記パッキン本体よりも薄肉に形成されており、前記パッキン本体における長手方向の一方の端部は、前記接合チューブの一方の開口から挿入され、前記パッキン本体における長手方向の他方の端部は、前記接合チューブの他方の開口から挿入されている。
【0013】
上記態様に係る計測装置では、シールパッキンとして弾性材料からなるチューブを採用している。そして、上記態様に係る計測装置では、ケースおよび蓋部材の一方に形成された溝部にシールパッキンが挿入されている。そして、溝部の内部に挿入されたシールパッキンは、ケースと蓋部材との組付けにより溝部にリブ部が侵入することで、押圧力を受けて断面方向に圧縮変形している。よって、上記態様に係る計測装置では、シールパッキンが溝部およびリブ部の各側壁面および各底面に対する密着面積が、中実のシールパッキンを採用する上記特許文献1の構造よりも広くなる。これより、上記態様に係る計測装置では、電子機器が収容された筐体部の防水性をより高くすることができる。
【0015】
また、上記態様に係る計測装置では、接合チューブをパッキン本体と同じ材料から形成するとともに、接合チューブの肉厚をパッキン本体よりも薄肉としている。このため、シールパッキンを溝部の内部に挿入しリブ部からの押圧力で圧縮変形させた場合においても、接合チューブが配された部分での圧縮変形の度合いが他の部分と大きく変わることを抑制することができる。よって、上記態様に係る計測装置では、ケースの開口を囲む全周で高い防水性を確保するのに優れる。
【0016】
上記態様に係る計測装置において、第2のシールパッキンを備えてもよい。前記第2のシールパッキンは、前記ケースおよび前記蓋部材と前記プローブとの間に介挿され、前記ケースおよび前記蓋部材と前記プローブとの間を液密状態とするパッキンである。そして、前記第2のシールパッキンは、ポリイミド樹脂から形成されてもよい。
【0017】
上記態様に係る計測装置では、第2のシールパッキンがポリイミド樹脂から形成されている。ポリイミド樹脂から形成された第2のシールパッキンは、約500℃の耐熱性を有し、プローブの先端を計測対象物に押し当てることで当該プローブが高温になった場合にも第2のシールパッキンによる防水性が損なわれない。
【0018】
また、上記態様に係る計測装置では、プローブとケースおよび蓋部材との間に上記のように高い耐熱性を有する第2のシールパッキンを介挿することにより、計測対象物からの熱によりプローブが高温になった場合にもケースや蓋部材が変形したり損傷したりするのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0019】
上記の各態様に係る計測装置では、内方に電子機器が収容された筐体部の高い防水性を実現可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る計測装置の構成を示す正面図である。
【
図2】
図1のII-II線断面を示す断面図である。
【
図4】蓋部材を取り外した状態で、プローブの根元部分周辺の構成を示す正面図である。
【
図5】筐体部の側面に設けられたイヤホンジャックと、当該イヤホンジャックを覆うキャップとを示す部分斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、本発明の実施形態について、図面を参酌しながら説明する。なお、以下で説明の形態は、本発明の一例であって、本発明は、その本質的な構成を除き何ら以下の形態に限定を受けるものではない。
【0022】
1.計測装置1の構成
本実施形態に係る計測装置1の構成について、
図1を用いて説明する。
【0023】
図1に示すように、計測装置1は、扁平直方体形状を有する筐体部10と、筐体部10の上面10aからY方向外向きに突出形成されたプローブ11とを備える。なお、本実施形態に係る計測装置1は、蒸気や復水(ドレン)が流れるスチームトラップや配管等の計測対象物の状態を検出し、その結果を診断装置(図示を省略。)に無線送信するものである。そして、計測装置1は、計測対象物であるスチームトラップ等の振動の強度および表面温度を計測するための装置である。
【0024】
筐体部10は、計測時に作業者が把持する部位である。作業者は、計測時において、例えば側面10b,10cなどを把持する。筐体部10の前面(
図1の紙面手前側の面)には、上面10aに近い部分に表示部12が設けられ、表示部12が設けられた部分よりも底面10dに近い部分に各種スイッチ13~17および電源インジケータ18が設けられている。
【0025】
表示部12は、例えば、液晶ディスプレイパネル(LCDパネル)で構成されており、計測結果(振動の強度、表面温度)や、当該計測結果に基づく診断装置の診断結果などの各種情報が表示される。
【0026】
各種スイッチ13~17は、計測装置1の電源をON/OFFするための電源スイッチ、各種コマンドを選択・実行するためのコマンドスイッチ、データ表示などの送り/戻しを行うためのスクロールスイッチなどである。
【0027】
2.筐体部10の構成
筐体部10の構成について、
図2を用いて説明する。
【0028】
図2に示すように、筐体部10は、ケース20と蓋部材19との組み合わせにより構成されている。ケース20は、有底角筒形状を有し、Z方向上向きに開口している。蓋部材19も、有底角筒形状を有し、Z方向下向きに開口している。蓋部材19とケース20とは、互いの開口を塞ぐように、Z方向に組付けられている。そして、蓋部材19とケース20との組付けにより構成される内方の空間には、表示部12を構成する液晶ディスプレイや、コントローラを構成する回路基板21などの電子機器が収容されている。
【0029】
回路基板21により構成されるコントローラは、MPU/CPU、ASIC、ROM、RAM等を含むマイクロプロセッサと、メモリとを有して構成されている。コントローラは、メモリに予め格納されたファームウェア等を実行することにより、プローブ11で検出された振動の強度および表面温度の各情報を演算処理する。演算処理された信号は、診断装置に送信される。また、コントローラは、診断装置からの診断結果を受信するとともに、当該診断結果を表示部12に表示させる機能も有する。
【0030】
図2の拡大部分に示すように、ケース20の側壁端面には、Z方向下向きに凹入し、ケース20の開口を囲むように溝部20aが形成されている。溝部20aは、蓋部材19が組付けられるZ方向上向きに開口している。
【0031】
一方、蓋部材19の側壁端面(ケース20の側壁端面に対向する面)には、ケース20に蓋部材19が組付けられた状態において、溝部20aに挿入されるリブ部19aが突出形成されている。リブ部19aは、溝部20aに対して全周に亘って挿入されるよう、蓋部材19の開口を囲むように形成されている。
【0032】
なお、
図2の拡大部分に示すように、ケース20に蓋部材19を組付けた状態において、溝部20aのX方向の両側壁面およびZ方向下方の底壁面に対して、蓋部材19のリブ部19aの外壁面は隙間をあけた状態となっている。当該溝部20aとリブ部19aとの隙間には、シリコーンゴム(弾性材料)からなるシールパッキン22が介挿されている。シールパッキン22は、溝部20aへのリブ部19aの挿入による押圧力により断面方向(
図2の拡大部分に示す断面の方向)に圧縮変形を受けた状態となっている。これより、シールパッキン22は、溝部20aおよびリブ部19aの各壁面に対して広い面積をもって液密に当接している。
【0033】
3.シールパッキン22の構成
シールパッキン22の構成について、
図3を用いて説明する。なお、
図3で示す断面図では、シールパッキン22が外部から押圧力を受けていない状態を示している。
【0034】
図3に示すように、本実施形態に係るシールパッキン22は、長尺状のチューブで構成されたパッキン本体221と、パッキン本体221の端部同士を接合するために設けられた接合チューブ222とから構成されている。パッキン本体221も接合チューブ222も、同じ材料(シリコーンゴム)から形成されている。
【0035】
A部断面図に示すように、パッキン本体221は、断面方向内側に中空部221aを有し、肉厚がT221である。一方、B部断面図に示すように、接合チューブ222も、断面方向内側に中空部を有し、当該中空部にパッキン本体221の端部が挿入されて固定されている。そして、接合チューブ222の肉厚は、パッキン本体221の肉厚T221よりも薄肉のT222である。
【0036】
なお、パッキン本体221の外周面と接合チューブ222の内周面との接合には、例えば、接着剤を用いた接合方法を採用することができる。
【0037】
4.プローブ11と当該プローブ11の根元部分周辺の構成
計測装置におけるプローブ11と当該プローブ11の根元部分周辺の構成について、
図4を用いて説明する。
【0038】
プローブ11は、計測対象物であるスチームトラップの表面に押し当てる先端11aを有する。プローブ11は、円筒形状の探触筒(例えば、ステンレス鋼などの金属製パイプ)を有する振動プローブと、探触筒の内側に配された温度プローブとを有する。振動プローブにおける先端11aとは反対側の部分(プローブ11の根元部分)には、当該振動プローブの台座部11bが接合されている。プローブ11の先端11aをスチームトラップに押し当てて探触筒に伝達される振動は、振動センサ(図示を省略。)により振動の強度に応じた信号を回路基板19に出力する。振動センサは、台座部11bに接合されている。本実施形態では、振動センサの一例として、圧電型加速度センサを採用する。
【0039】
詳細な図示を省略しているが、温度プローブは、温度計測部分が探触筒の先端(プローブ11の先端11a)からわずかにY方向右側に突出している。また、温度プローブは、円筒形状を有するハウジングと、熱電対素線(クロメル線、アルメル線)とを有する。温度プローブで計測されたスチームトラップの表面温度は、適時に回路基板19へと出力される。
【0040】
図4に示すように、プローブ11の台座部11bの周囲は、台座カバー24でおおわれている。台座カバー24は、ケース20および蓋部材19と同じ樹脂材料で形成されている。プローブ11の外周面と台座カバー24の内周面との間には、耐熱パッキン(第2のシールパッキン)25が介挿されている。即ち、本実施形態に係る計測装置1では、プローブ11の外周面が台座カバー24と直接接しないように構成されているとともに、プローブ11の外周面と台座カバー2の内周面4との隙間に耐熱パッキン25が介挿されて防水性が確保されている。
【0041】
第2のシールパッキンである耐熱パッキン25は、ポリイミド樹脂材料を用いて形成されている。このようにポリイミド樹脂材料を用いて形成された耐熱パッキン25は、約500℃の耐熱性を有する。
【0042】
ここで、計測対象物であるスチームトラップは、表面温度が500℃前後に達する場合もある。このため、プローブ11の先端11aをスチームトラップの表面に押し当てて計測を行う場合に、プローブ11の先端11aからスチームトラップの熱が伝達されて、プローブ11の根元部分(台座部11bが接合された部分)も高温になることが考えられる。これに対して、本実施形態に係る計測装置1では、プローブ11の外周面と台座カバー24の内周面との間に耐熱パッキン25を液密に介挿しているので、プローブ11の根元部分が高温になったとしても台座カバー24が変形したり損傷したりすることがない。
【0043】
5.イヤホンジャック26の防水構造
計測装置1に設けられているイヤホンジャック26の防水構造について、
図5を用いて説明する。
【0044】
スチームトラップにおける蒸気漏れを診断するために用いられる計測装置1は、騒音が大きな環境下で用いられることも想定される。具体的に、計測装置1は、入り組んだ配管の奥に配置されたスチームトラップの計測を行う必要が生じる場合がある。このような場合に、作業者は筐体部10に設けられた表示部12の表示を確認することが困難となり、計測が終了したことを表示部12で確認することができない。計測装置1には、このような場合に対処するために、イヤホンやヘッドホンを接続できるように、筐体部10にイヤホンジャック26が設けられている。作業者は、イヤホンジャック26にイヤホンやヘッドホンを接続して用いることで、計測終了の合図を音声信号で認識することが可能となる。
【0045】
図5に示すように、イヤホンジャック26は、一例として筐体部10の一方の側面10bに形成された凹部10eの底部に設けられている。なお、本実施形態に係る計測装置1では、蓋部材19におけるケース20との合わせ面に近い部分に凹部10eを設けているが、ケース20に凹部10eを設けることとしてもよい。
【0046】
計測装置1では、凹部26に嵌合可能なキャップ27が付属している。キャップ27は、ゴム材料で形成されており、凹部10eに填め込んだ状態でイヤホンジャック26への水分の侵入を防ぐ役割を果たす。
【0047】
なお、
図5では、キャップ27を筐体部10から分離した部材として図示しているが、筐体部10などに対して紐などでキャップ27を繋いでおいてもよい。このようにすれば、イヤホンジャック26を使用するのにキャップ27を凹部10eから外しても、当該キャップ27を紛失しないようにすることができる。
【0048】
6.効果
本実施形態に係る計測装置1では、
図3を用いて説明したように、シールパッキン22としてシリコーンゴム(弾性材料)からなるチューブを採用している。そして、計測装置1では、
図2を用いて説明したように、ケース20に形成された溝部20aにシールパッキン22が填め込まれている。そして、シールパッキン22は、溝部20aの内部に挿入された状態で、ケース20と蓋部材19との組付けにより溝部20aに蓋部材19のリブ部19aが侵入することで、押圧力を受けて断面方向に圧縮変形している。よって、計測装置1では、シールパッキン22が溝部20aの内壁面およびリブ部19aの外壁面に対する密着面積が、中実のシールパッキンを採用する上記特許文献1の構造よりも広くなる。これより、計測装置1では、表示部12や回路基板19、さらにはバッテリなどの電子機器が収容された筐体部10の防水性をより高くすることができる。
【0049】
本実施形態に係る計測装置1では、
図3を用いて説明したように、接合チューブ22をパッキン本体221と同じシリコーンゴムから形成するとともに、接合チューブ222の肉厚T222をパッキン本体221の肉厚T221よりも薄肉としている。このため、シールパッキン22を溝部20aの内部に填め込み、リブ部19aからの押圧力で圧縮変形させた場合においても、接合チューブ222が配された部分での圧縮変形の度合いが他の部分と大きく変わることを抑制することができる。よって、計測装置1では、ケース20および蓋部材19の各開口を囲む全周で高い防水性を確保するのに優れる。
【0050】
本実施形態に係る計測装置1では、
図4を用いて説明したように、耐熱パッキン25がポリイミド樹脂から形成されている。ポリイミド樹脂から形成された耐熱パッキン25は、約500℃の耐熱性を有し、プローブ11の先端11aを計測対象物であるスチームトラップに押し当てることで当該プローブ11の根元部分も高温になった場合にも耐熱パッキン25による防水性が損なわれない。
【0051】
また、計測装置1では、プローブ11の外周面と台座カバー24との間に高い耐熱性を有する耐熱パッキン25を介挿することにより、スチームトラップからの熱によりプローブ11の根元部分が高温になった場合にも台座カバー24やケース20および蓋部材19が変形したり損傷したりするのを抑制することができる。
【0052】
以上のように、本実施形態に係る計測装置では、内方に電子機器が収容された筐体部10の高い防水性を実現可能である。
【0053】
[変形例]
上記実施形態に係る計測装置1では、パッキン本体221の端部同士を接合チューブ222で接合した構造のシールパッキン22を採用することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、無端状のチューブをシールパッキンとして採用することもできる。
【0054】
また、上記実施形態に係る計測装置1では、パッキン本体221の端部における外周面に対して接合チューブ222の内周面を接合する構造を採用したが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、パッキン本体の端部における内側に形成された中空部に対して、当該パッキン本体の内周面と同等の外径を有する接合チューブを差し込んで端部同士を接合することも可能である。
【0055】
上記実施形態に係る計測装置1では、ケース20に略矩形断面の溝部20aを形成し、蓋部材19にも略矩形断面のリブ部19aを形成することとしたが、溝部およびリブ部の断面形状について限定されるものではない。例えば、半円弧状の断面形状を有する溝部やリブ部を採用することや、多角形状の断面形状を有する溝部やリブ部を採用することも可能である。
【0056】
また、上記実施形態に係る計測装置1では、ケース20に溝部20aを形成し、蓋部材19にリブ部19aを形成することとしたが、逆に、ケースにリブ部を形成し、蓋部材に溝部を形成することも可能である。
【0057】
さらに、上記実施形態に係る計測装置1では、ケース20および蓋部材19の開口を囲むように1条のシールパッキン22を配することとしたが、2条以上のシールパッキンを配することとしてもよい。この場合に、ケースおよび蓋部材に形成する溝部とリブ部とにより、所謂、ラビリンスシール構造を採用することも可能である。これにより防水性をさらに高めることが可能となる。
【0058】
上記実施形態に係る計測装置1では、
図4を用いて説明したように、ケース20および蓋部材19とプローブ11の外周面との間に台座カバー24を介挿し、さらにプローブ11における台座部11bの外周面と台座カバー24との間に耐熱パッキン25を介挿することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、ケース20および蓋部材19を、プローブ11の根元部分を覆うように筒状に延長し(ケース20および蓋部材19が台座カバー24を構成し)、ケース20および蓋部材19の延長部分の内周面とプローブ11における台座部11bの外周面との間に耐熱パッキンを介挿することとしてもよい。なお、ケースおよび蓋部材における上記延長部分を、例えば2色成型により耐熱性を有する材料から構成することとすれば、必ずしも耐熱パッキンを介挿する必要はない。
【0059】
上記実施形態に係る計測装置1では、筐体部10の側面10bにイヤホンジャック26を設け、未使用時におけるイヤホンジャック26の防水のためにキャップ27を付属することとしたが、本発明は、これに限定を受けるものではない。例えば、計測装置1からの信号等の音を無線で作業者が装着するイヤホンやヘッドホンに送信することとしてもよい。この場合には、キャップを付属する必要はない。
【符号の説明】
【0060】
1 計測装置
10 筐体部
11 プローブ
19 蓋部材
19a リブ部
20 ケース
20a 溝部
22 シールパッキン
24 台座カバー
25 耐熱パッキン(第2のシールパッキン)
26 イヤホンジャック
27 キャップ
221 パッキン本体
222 接合チューブ