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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】割卵機
(51)【国際特許分類】
   A23J 1/08 20060101AFI20230630BHJP
【FI】
A23J1/08 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021133244
(22)【出願日】2021-08-18
(65)【公開番号】P2023027893
(43)【公開日】2023-03-03
【審査請求日】2023-04-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000162238
【氏名又は名称】共和機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀 達也
【審査官】川崎 良平
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-220647(JP,A)
【文献】特開昭52-099275(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23J 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
卵を一つずつ供給可能な給卵部と、前記給卵部から供給される卵の殻を割る割卵部と、割卵後の卵殻を前記割卵部から除去する卵殻除去部と、前記給卵部、前記割卵部、および前記卵殻除去部をそれぞれ作動させる複数のカムを有する一本のカム駆動シャフトと、を備え、
前記カム駆動シャフトが回転することで、前記複数のカムの作用により給卵工程、割卵工程、および卵殻除去工程が順に実行される、割卵機。
【請求項2】
前記カム駆動シャフトは、上下方向に沿って配置される、請求項1に記載の割卵機。
【請求項3】
前記給卵部は、複数の卵を前記割卵部へ向かってガイドする給卵ガイドと、前記複数の卵を前記割卵部に供給された卵と前記給卵ガイドに載置されたそれ以外の卵とに分離する給卵ストッパーと、を備え、
前記給卵ストッパーは、前記カムの作用により前記給卵ガイドの底面よりも突出する突出位置と前記給卵ガイドの底面よりも突出しない退避位置との間を移動する、請求項1又は2に記載の割卵機。
【請求項4】
前記割卵部は、前記給卵部から供給される卵を受け取る卵受け部と、前記卵受け部に供給された卵を下方に回動して押さえる卵押さえ部と、前記卵受け部と前記卵押さえ部で挟持された卵の殻を上方へ回動して割るナイフと、を備え、
前記卵押さえ部および前記ナイフは、前記カムの作用により上下方向に回動する、請求項1~3の何れか一項に記載の割卵機。
【請求項5】
前記卵殻除去部は、前記割卵部に載置された卵殻を横方向に押し出す卵殻除去板を備え、
前記卵殻除去板は、前記カムの作用により左右方向に回動する、請求項1~4の何れか一項に記載の割卵機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、割卵機、特に小型の割卵機に関する。
【背景技術】
【0002】
卵を原材料とした食品等の製品を加工・販売する事業所や個人の中で、1日で使用する卵の数が数十個から数千個の小規模な業者、例えばスーパーマーケット・ベーカリー・ケーキ屋・惣菜屋といったところは少なくない。同時にこれらの卵のほぼすべてが割卵され、中身の液卵のみが使用される。
【0003】
これらの業者が使用する液卵の調達方法には大きく分けて以下の2つがある。(1)殻付き卵を購入し、業者自らが割卵する方法、(2)割卵業者から液卵を購入する方法である。
【0004】
特に(1)の殻付き卵を自身で割卵する場合、手で割る場合と割卵用の機械を使用する場合がある。例えば、下記特許文献1には割卵システムが開示されているが、この割卵システムは、連続的に大量の卵を割卵するための大型のものである。また、小型の割卵機も知られているが、小型といっても、市販されている機械はどれもがこれらの業者の規模にとっては能力が過剰(例えば5000卵/時以上)かつ高価なものが大半である。したがって、多くの業者が、必要な量だけをその都度手で割っているのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-220647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、数十個程度の卵を手で割るのも毎日のこととなれば大変であり、ましてや千個近くの卵を毎日手で割るともなれば作業者には大きな負担であり、また精神的なストレスも大きいため、改善することが求められている。
【0007】
そこで、本発明は、小型で小ロットに対応できる安価な割卵機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の割卵機は、卵を一つずつ供給可能な給卵部と、前記給卵部から供給される卵の殻を割る割卵部と、割卵後の卵殻を前記割卵部から除去する卵殻除去部と、前記給卵部、前記割卵部、および前記卵殻除去部をそれぞれ作動させる複数のカムを有する一本のカム駆動シャフトと、を備え、
前記カム駆動シャフトが回転することで、前記複数のカムの作用により給卵工程、割卵工程、および卵殻除去工程が順に実行される。
【0009】
この構成によれば、複数のカムを有するカム駆動シャフトが回転することで、一つの卵に対して給卵工程、割卵工程、および卵殻除去工程が順に実行されるため、小ロットに対応することができる。また、複数のカムを有する一本のカム駆動シャフトを用いて一連の工程を実行するというシンプルな機構のため、装置を小型化して価格も抑えることができる。
【0010】
また、本発明に係る割卵機において、前記カム駆動シャフトは、上下方向に沿って配置されるという構成でもよい。
【0011】
この構成によれば、カム駆動シャフトが上下方向に沿って配置されるため、割卵機の設置スペースを小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】本実施形態に係る割卵機の正面図
図1B】本実施形態に係る割卵機の平面図
図1C】本実施形態に係る割卵機の右側面図
図1D】本実施形態に係る割卵機の左側面図
図1E】本実施形態に係る割卵機の分解図
図2】給卵部の動作を説明するための正面図および底面図
図3】卵受け部の動作を説明するための平面図および正面図
図4A】左右の卵受けが閉じた状態と開いた状態を示す左側面図
図4B】左右の卵受けが閉じた状態と開いた状態を示す右側面図
図5A】左右の卵受けが開いた状態を示す左側面図および正面図
図5B】左右の卵受けが閉じた状態を示す左側面図および正面図
図6】卵押さえ部の動作を説明するための正面図および底面図
図7】ナイフの動作を説明するための平面図および正面図
図8】卵殻除去部の動作を説明するための正面図および平面図
図9】各カムの動作タイミングを示すタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、割卵機における一実施形態について、図1A図9を参照しながら説明する。なお、各図において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。
【0014】
<割卵機の全体構成>
図1A図1Dは割卵機の全体構成を示す図であり、図1Aは正面図、図1Bは平面図、図1Cは右側面図、図1Dは左側面図である。図1Eは割卵機の分解図である。割卵機1は、給卵部1aと、割卵部1bと、卵殻除去部1cと、給卵部1a、割卵部1b、および卵殻除去部1cをそれぞれ作動させるカム駆動シャフト7とを備える。
【0015】
以下の説明においては、図1A図1Dに示すように、カム駆動シャフト7が延びる方向を上下方向、給卵ガイド21が延びる方向を前後方向、上下方向および前後方向に直交する方向を左右方向とする。なお、前後方向および左右方向は説明の便宜上定めたものであり、図示された方向に限定する意図はない。
【0016】
カム駆動シャフト7は、下から順に給卵カム71、ナイフカム72、開閉カム73、押さえカム74、リムーバカム75を備えている。給卵カム71、ナイフカム72、開閉カム73、および押さえカム74は、いわゆる端面カムの形態をしており、リムーバカム75は、いわゆる板カムの形態をしている。
【0017】
割卵機1は、給卵部1a、割卵部1b、卵殻除去部1c、およびカム駆動シャフト7が取り付けられる基台部9を備える。基台部9は、設置面に載置される設置プレート91と、設置プレート91に固定されるフレーム92とを備える。フレーム92は、設置プレート91の上面から上方へ延びる第一フレーム92aと、第一フレーム92aの上端から後方へ延びる第二フレーム92bとで構成されている。
【0018】
<給卵部の構成>
図2は、給卵部1aの動作を説明するための正面図および底面図である。給卵部1aは、卵を一つずつ割卵部1bに供給する。給卵部1aは、複数の卵を割卵部1bへ向かってガイドする給卵ガイド21と、複数の卵を割卵部1bに供給された卵e1と給卵ガイド21に載置されたそれ以外の卵e2とに分離する給卵ストッパー22と、を備える。
【0019】
給卵ガイド21は、断面が略U字状となるように板金加工された板状部材である。給卵ガイド21は、図1Aに示すように後方に向かって下り傾斜しており、卵は重力によって割卵部1bへ向かって転がる。給卵ガイド21は、給卵部ベース26を介して基台部9に取り付けられる。給卵部ベース26は、設置プレート91に対して工具を使用することなく着脱可能となっている。これにより、図1Eに示すように給卵部1aを設置プレート91から容易に取り外して洗浄や整備を行うことができる。
【0020】
給卵ストッパー22は、給卵ガイド21の底面よりも突出する突出位置P1(図2に二点鎖線で示す)と給卵ガイド21の底面よりも突出しない退避位置P2(図2に実線で示す)との間を移動することができる。給卵ストッパー22は、側面視でL字状の部材であり、基端22aを中心として上下に回動することで、突出位置P1と退避位置P2との間を移動する。給卵ストッパー22の基端22aは、給卵ガイド21の底面に回転可能に支持されている。給卵ストッパー22は、退避位置P2から突出位置P1に移動する際に、割卵部1bに供給された卵e1と、給卵ガイド21に載置されたそれ以外の卵e2との間に侵入することで、卵e1とそれ以外の卵e2とを分離する。
【0021】
給卵部1aは、リンク機構を備える。具体的には、給卵部1aは、従動リンクとして機能する給卵ストッパー22と、駆動リンクとして機能する第一給卵リンク23と、給卵ストッパー22と第一給卵リンク23を連結する第二給卵リンク24と、を有する。
【0022】
第一給卵リンク23の前端23aは、スプリング25によって下方に付勢されている。スプリング25の一端が第一給卵リンク23の前端23aに連結され、スプリング25の他端が給卵部ベース26に連結されている(図1E参照)。また、第一給卵リンク23の中間部23bは、給卵部ベース26の後端に回転可能に支持されており(図1E参照)、第一給卵リンク23は、中間部23bを中心に上下に回動することができる。第一給卵リンク23の後端23cは、給卵カム71に達しており、第一給卵リンク23は、給卵カム71の作用により上下に回動する。給卵カム71には、下方を向いたカム面が回転方向に沿って形成されている。
【0023】
給卵カム71により第一給卵リンク23を上下に回動させることにより、第二給卵リンク24を介して給卵ストッパー22が上下に回動する。これにより、給卵ストッパー22が上昇して突出位置P1に移動することで次に割卵部1bに給卵される卵を停め、下降して退避位置P2に移動することで給卵ガイド21上の卵を割卵部1bに転がして供給することができる。
【0024】
<割卵部の構成>
割卵部1bは、給卵部1aから供給される卵を受け取る卵受け部3と、卵受け部3に供給された卵を下方に回動して押さえる卵押さえ部4と、卵受け部3と卵押さえ部4で挟持された卵の殻を上方へ回動して割るナイフ5と、を備える。
【0025】
図3は、卵受け部3の動作を説明するための平面図および正面図である。
【0026】
卵受け部3は、左右一対の卵受け3L,3Rを有する。左卵受け3Lと右卵受け3Rは、略左右対称に形成されているため、右卵受け3Rを中心に説明する。右卵受け3Rは、前後方向に延びる本体部31と、本体部31の前端に設けられ、給卵部1から供給された卵e1を載せるスプーン状の卵座32とを有する。本体部31の後端には、後方へ延びる開閉バー33が突設されている。
【0027】
卵受け部3は、割卵機ベース36に固定される開閉軸34を有する。割卵機ベース36は、第一フレーム92aに対して工具を使用することなく着脱可能となっている。これにより、図1Eに示すように卵受け部3およびナイフ5を第一フレーム92aから容易に取り外して洗浄や整備を行うことができる。開閉軸34は、前後方向に延びている。本体部31は、開閉軸34に左右に回動可能に支持されている。開閉バー33を上下左右に移動させることで、右卵受け3Rは左右に回動する。
【0028】
図4Aは、左右の卵受け3L,3Rが閉じた状態と開いた状態を示す左側面図であり、図4Bは、左右の卵受け3L,3Rが閉じた状態と開いた状態を示す右側面図である。また、図5Aは、左右の卵受け3L,3Rが開いた状態を示す左側面図および正面図であり、図5Bは、左右の卵受け3L,3Rが閉じた状態を示す左側面図および正面図である。
【0029】
左右の卵受け3L,3Rの開閉バー33,33は、図5Aおよび図5Bに示すように、開閉ブロック35により一体として上下左右に移動される。開閉ブロック35は、上下方向に沿ってスライドする。開閉ブロック35は、前後方向に貫通する一対の貫通孔351,351を有する。貫通孔351,351は、背面視でハの字状に形成されている。一対の貫通孔351,351には、それぞれ左右の開閉バー33,33が挿入される。
【0030】
開閉ブロック35には、L字状の開閉リンクバー352が設けられている。開閉リンクバー352は、上下方向に沿ってスライドする。開閉ブロック35は、開閉リンクバー352とともに上下に移動する。開閉リンクバー352の後端は、開閉カム73に達しており、開閉リンクバー352は、開閉カム73の作用により上下に移動する。
【0031】
開閉カム73は、開カム731と閉カム732で構成されている。開カム731には、上方を向いたカム面が回転方向に沿って形成されている。これにより、図5Aに示すように、開カム731によって開閉リンクバー352を押し上げて、開閉ブロック35を上昇させることができる。開閉ブロック35の上昇に伴い、左右の開閉バー33,33が一対の貫通孔351,351に沿って互いに離れる向きに移動することで、左右の卵受け3L,3Rは、左右に回動して開状態となる。
【0032】
一方、閉カム732には、下方を向いたカム面が回転方向に沿って形成されている。これにより、図5Bに示すように、閉カム732によって開閉リンクバー352を押し下げて、開閉ブロック35を下降させることができる。開閉ブロック35の下降に伴い、左右の開閉バー33,33が一対の貫通孔351,351に沿って互いに近付く向きに移動することで、左右の卵受け3L,3Rは、左右に回動して閉状態となる。
【0033】
図6は、卵押さえ部4の動作を説明するための正面図および底面図である。
【0034】
卵押さえ部4は、押さえ棒41と、押さえ棒41の先端に固定される卵押さえ42とを備える。卵e1は、卵押さえ42と卵座32との間に保持される。押さえ棒41は、L字状の棒部材であり、第一フレーム92aに回動可能に支持されている。押さえ棒41は、不図示のスプリングにより卵押さえ42が押さえ方向(下方)に向かうように付勢されている。また、押さえ棒41の後端は、押さえカム74に達しており、押さえ棒41の後端は、押さえカム74により下方に移動される。これにより、押さえ棒41は、押さえカム74の作用により上下に回動する。
【0035】
押さえカム74には、下方を向いたカム面が回転方向に沿って形成されている。これにより、卵押さえ42は、押さえカム74の作用によって、給卵されるときには上部の待機位置R1にて待機する。その後、卵押さえ42は、給卵された卵e1が卵座32に載った直後から割卵が完了するまでの間、スプリングの作用により下降して押さえ位置R2にて卵e1を押さえ付ける。割卵後、卵押さえ42は、卵殻除去部1cが卵殻を除去するまでに押さえカム74の作用により上昇して待機位置R1にて待機する。
【0036】
図7は、ナイフ5の動作を説明するための平面図および正面図である。
【0037】
ナイフ5は、左右一対のナイフ5L,5Rを有する。左ナイフ5Lは、左卵受け3Lの本体部31の下部に上下に回転可能に支持されている。同様に、右ナイフ5Rは、右卵受け3Rの本体部31の下部に上下に回転可能に支持されている。左右のナイフ5L,5Rは、左右の卵受け3L,3Rと一体として左右に開く。左ナイフ5Lは、後方へ延びるナイフバー51を備える。一方、右ナイフ5Rは、ナイフバー51を備えていない。
【0038】
左ナイフ5Lは、ナイフスプリング52により上方に付勢されている。言い換えると、ナイフバー51は、ナイフスプリング52により下方に付勢されている。また、ナイフバー51の後端は、ナイフカム72に達しており、ナイフバー51の後端は、ナイフカム72により上方に移動される。これにより、左ナイフ5Lは、ナイフカム72の作用により上下に回動される。なお、右ナイフ5Rは、左右の卵受け3L,3Rが閉じた状態において、左ナイフ5Lに連結されており、左ナイフ5Lとともに上下に回動される。左右のナイフ5L,5Rを互いに連結する方法としては、例えばナイフ5L,5Rの互いに対向する面に、ピンとそのピンが嵌るためのピン用穴をそれぞれ設ける方法が考えられる。
【0039】
ナイフカム72には、上方を向いたカム面が回転方向に沿って形成されている。ナイフバー51は、最大降り下げ部72aを通過した瞬間にナイフカム72を外れ、これにより、ナイフ5L,5Rは、ナイフスプリング52の付勢力によって最大降り下げ位置S1からナイフ割卵位置S2まで跳ね上がって、卵座32上の卵e1の卵殻に食い込む。その後、左右の卵受け3L,3Rが左右に開くことにより、左右のナイフ5L,5Rが卵殻を開いて割卵する。割卵後の液卵は、卵座32の下方から左方向へ向かって延びる液卵シュート1d(図1B図1C等参照)に落下する。液卵シュート1dは、左方向へ向かって下り傾斜しており、液卵シュート1dに落下した液卵は、液卵シュート1dの傾斜面を下って不図示の容器等に回収される。
【0040】
また、ナイフカム72の形状は、ナイフ5L,5Rの降り下げ量を2段階で保持するようになっている。具体的には、ナイフカム72は、最大降り下げ部72aよりも低い給卵待機部(中間降り下げ部)72bを有しており、ナイフ5L,5Rは、最大降り下げ位置S1よりも上方の給卵待機位置(中間振り下げ位置)S3に保持される。卵e1が卵座32に供給される直前に、ナイフ5L,5Rは給卵待機位置(中間振り下げ位置)S3まで降り下げられる。給卵待機位置S3において、ナイフ5L,5Rの上端は、卵座32よりも下方に位置する。これにより、卵座32に供給される卵e1とナイフ5L,5Rの上端が接触するのを防止することができる。その後、ナイフ5L,5Rは最大降り下げ位置S1まで降り下げられた後、ナイフカム72から解放されて割卵に至る。
【0041】
<卵殻除去部の構成>
図8は、卵殻除去部1cの動作を説明するための正面図および平面図である。
【0042】
卵殻除去部1cは、揺動棒61と、揺動棒61の先端に固定される卵殻除去板62とを備える。割卵後の卵殻は、卵殻除去板62により卵座32から右方向に押し出される。揺動棒61の後端は、第二フレーム92bの下面に左右に回転可能に支持されている。揺動棒61は、スプリング63によって右方向に付勢されており、言い換えると、卵殻除去板62は右方向に付勢されている。スプリング63は、一端が揺動棒61に接続され、他端が第二フレーム92bに接続される。
【0043】
揺動棒61は、中途部にカム追従部61aを備えている。カム追従部61aは、揺動棒61から下方に向かって延びる棒状部材であり、リムーバカム75のカム面に接触しながら追従する。
【0044】
リムーバカム75には、径方向外側を向いたカム面が形成されている。リムーバカム75は、大半の範囲(全周の約3/4の範囲)が、卵殻除去板62が卵座32から最も離れた位置になるための最大半径の部分75aで構成され、全周の約1/4の範囲のみが、卵殻除去板62が動作するように半径が小さい部分75bで構成されている。これは、不要になった卵殻を一連の割卵動作の中の一瞬のタイミングで速やかに除去するためである。
【0045】
揺動棒61は、カム追従部61aがリムーバカム75の最大半径部分75aに接触している間は、待機位置T1に保持される。これにより、卵の供給工程、割卵工程が実行されている間、卵殻除去板62は、待機位置T1に保持される。そして、リムーバカム75の回転に伴ってカム追従部61aがリムーバカム75の半径が小さい部分75bに達すると、揺動棒61は、スプリング63の付勢力によって待機位置T1から除去位置T2に移動する。これにより、卵殻除去板62も待機位置T1から除去位置T2に移動して、卵殻を右方向に除去することができる。卵殻は、卵座32の右下方に設けられた卵殻シュート1e(図1B図1C等参照)に落下される。卵殻シュート1eは、右方向へ向かって下り傾斜しており、卵殻シュート1eに落下した卵殻は、卵殻シュート1eの傾斜面を下って不図示の容器等に回収される。
【0046】
<割卵機の動作>
カム駆動シャフト7は、軸方向に沿って複数のカム71~75を有する。カム駆動シャフト7が回転することで、カム71~75の作用により給卵工程、割卵工程、および卵殻除去工程が順に実行される。
【0047】
カム駆動シャフト7の上端には、ハンドル76が取り付けられている。作業者は、ハンドル76を用いて手動でカム駆動シャフト7を回転させることができる。ただし、カム駆動シャフト7の上端に、ハンドル76に代えて不図示のモータを取り付けることで、自動でカム駆動シャフト7が回転するようにしても構わない。さらに、カム駆動シャフト7をチェーン等を介してモータで回転するようにしてもよい。
【0048】
図9は、各カム71~75の動作タイミングを示すタイミングチャートであり、カム駆動シャフト7の回転度数に対する各カム71~75の動作を示している。図9の例では、説明の便宜上、ナイフ5がナイフカム72を外れて卵座32上の卵e1の卵殻に食い込むタイミングをカム駆動シャフト7の0°としている。
【0049】
230°において、給卵カム71の作用により給卵ストッパー22が下降を開始する。また、卵受け3L,3Rは、210°~240°において、閉カム732の作用により開状態から閉状態に移行する。また、ナイフ5L,5Rは、230°においてナイフカム72の作用により下降を開始する。卵押さえ42は、押さえカム74の作用により120°~285°において待機位置R1に保持される。また、卵殻除去板62は、リムーバカム75の作用により210°~90°において待機位置T1に保持される。
【0050】
240°において、卵受け3L,3Rは閉状態となり、その後20°まで閉状態が保持される。
【0051】
260°において、給卵ストッパー22は、退避位置P2に達する。これにより、給卵ガイド21上の卵が卵座32へ向かって転がる。このとき、ナイフ5L,5Rは、卵が卵座32に供給される直前に、給卵待機位置(中間振り下げ位置)S3まで降り下げられている。
【0052】
285°において、卵押さえ42は、押さえカム74の作用により下降を開始する。下降を開始した卵押さえ42は、押さえ位置R2にて卵座32上の卵e1を押さえ付ける。なお、卵押さえ42は、315°~85°において押さえ位置R2に保持される。
【0053】
315°において、給卵ストッパー22は、給卵カム71の作用により上昇を開始する。これにより、給卵ストッパー22は、卵座32上の卵e1と、給卵ガイド21に載置されたそれ以外の卵e2との間に侵入して、卵e1とそれ以外の卵e2とを分離する。給卵ストッパー22は、345°~230°において突出位置P1に保持される。
【0054】
320°において、ナイフ5L,5Rは、ナイフカム72の作用により追下降を開始する。その後、350°において、ナイフ5L,5Rは、最大降り下げ位置S1まで降り下げられる。
【0055】
0°において、ナイフ5L,5Rは、ナイフカム72から外れ、最大降り下げ位置S1からナイフ割卵位置S2まで跳ね上がって、卵座32上の卵e1の卵殻に食い込む。
【0056】
20°~50°において、卵受け3L,3Rは、開カム731の作用により閉状態から開状態に移行する。左右の卵受け3L,3Rが左右に開くことにより、左右のナイフ5L,5Rが卵殻を開いて割卵する。その後、卵受け3L,3Rは、50°~210°において開状態に保持される。
【0057】
85°において、卵押さえ42は、押さえカム74の作用により上昇を開始する。その後、卵押さえ42は、120°において待機位置R1に達する。
【0058】
90°において、卵殻除去板62は、リムーバカム75の作用により待機位置T1から除去位置T2へ向かって動作を開始する。これにより、卵殻除去板62は、卵殻を右方向に除去することができる。卵殻除去板62は、130°~170°において除去位置T2(図9では「動作限界位置」と記載)に保持される。その後、170°において、卵殻除去板62は、リムーバカム75の作用により除去位置T2から待機位置T1へ向かって戻り動作を開始する。
【0059】
以上のように、カム駆動シャフト7が回転することで、カム71~75の作用により給卵工程、割卵工程、および卵殻除去工程という一連の工程を順に実行することができる。
【0060】
なお、図9のタイミングチャートは、一例であり、各部位の動作順序が逆転しない範囲内において、各部位の動作タイミングを、前後させてもよい。また、図9では、カム駆動シャフト7が一回転することで、各部位が一回動作する事例を示しているが、カム駆動シャフト7が一回転することで、各部位が複数回動作するように各カムを構成し、カム駆動シャフト7が一回転することで複数個の卵を割卵するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0061】
1 :割卵機
1a :給卵部
1b :割卵部
1c :卵殻除去部
1d :液卵シュート
1e :卵殻シュート
3 :卵受け部
3L :左卵受け
3R :右卵受け
4 :卵押さえ部
5 :ナイフ
5L :左ナイフ
5R :右ナイフ
7 :カム駆動シャフト
9 :基台部
21 :給卵ガイド
22 :給卵ストッパー
31 :本体部
32 :卵座
33 :開閉バー
34 :開閉軸
35 :開閉ブロック
41 :押さえ棒
42 :卵押さえ
51 :ナイフバー
52 :ナイフスプリング
61 :揺動棒
62 :卵殻除去板
63 :スプリング
71 :給卵カム
72 :ナイフカム
73 :開閉カム
731 :開カム
732 :閉カム
74 :押さえカム
75 :リムーバカム
76 :ハンドル
e1 :卵
e2 :卵
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9