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特許7304648呼吸マスクのライナー、呼吸マスク及び換気療法デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】呼吸マスクのライナー、呼吸マスク及び換気療法デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/06 20060101AFI20230630BHJP
【FI】
A61M16/06 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021538478
(86)(22)【出願日】2019-12-27
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-24
(86)【国際出願番号】 CN2019129344
(87)【国際公開番号】W WO2020135762
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-06-29
(31)【優先権主張番号】201811641531.3
(32)【優先日】2018-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521286466
【氏名又は名称】北京怡和嘉▲業▼医▲療▼科技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BMC MEDICAL CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】周 明▲チャオ▼
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲亞▼杰
(72)【発明者】
【氏名】庄 志
【審査官】佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】特表2008-526393(JP,A)
【文献】特表2008-526392(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0139526(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼吸マスクのライナー(10)であって、
鼻又は口鼻を収納する収納キャビティ(11)と、前記収納キャビティ(11)を画定する接触部分(12)、接続部分(13)及び中間部分(14)とを含み、前記接触部分(12)は患者の顔部にシールして接触し、前記接続部分(13)は呼吸マスクのフレーム(20)に接続され、前記中間部分(14)は前記接触部分(12)と前記接続部分(13)との間に接続され、前記中間部分(14)に前記収納キャビティ(11)へ窪んだ窪み部(140)が形成され、前記ライナー(10)は、周方向に沿って鼻ばしら領域(101)、頬領域(102)及び人中又は顎領域(103)に分けられ、前記窪み部(140)は前記鼻ばしら領域(101)に延在している円弧状に形成され、前記窪み部(140)の横断面がV字形であり、前記窪み部(140)は接続された第1の接続壁(141)と第2の接続壁(142)を含み、前記第1の接続壁(141)は前記接触部分(12)に接近して設けられ、患者が立って水平に見たときに患者の顔部が位置する平面(a面)である垂直平面上の前記第1の接続壁(141)の投影面積Sが、前記垂直平面上の前記第2の接続壁(142)の投影面積S未満であり、
前記第2の接続壁(142)は前記第1の接続壁(141)から離れた一端が前記接続部分(13)に接続され、前記中間部分(14)は、前記第2の接続壁(142)から離れた前記第1の接続壁(141)の一端と前記接触部分(12)とを接続する第1の部分(143)と、前記接触部分(12)と前記接続部分(13)とを接続する第2の部分(144)とを含み、
前記第1の部分(143)の厚さは、前記鼻ばしら領域(101)の頂部から前記鼻ばしら領域(101)の底部に向かうにしたがって減小するように設定され、前記第1の接続壁(141)と前記第2の接続壁(142)の厚さは、前記鼻ばしら領域(101)の頂部から前記鼻ばしら領域(101)の底部に向かうにしたがって増大するように設定され、
前記鼻ばしら領域(101)の頂部では、前記接続部分(13)と前記第1の部分(143)の厚さは前記第2の部分(144)の厚さよりも大きく、前記第2の部分(144)の厚さは前記第1の接続壁(141)と前記第2の接続壁(142)の厚さよりも大きく、
前記鼻ばしら領域(101)の底部では、前記第1の部分(143)の厚さは前記第1の接続壁(141)、前記第2の接続壁(142)及び前記第2の部分(144)の厚さに等しい、
ことを特徴とする呼吸マスクのライナー。
【請求項2】
前記接触部分(12)は、接続された唇縁部(121)と支持縁部(122)を含み、前記支持縁部(122)は前記中間部分(14)に接近して設けられ、前記支持縁部(122)の厚さが前記唇縁部(121)の厚さよりも大きく、及び/又は
患者の顔部に接触する前記接触部分(12)の表面は患者の顔部輪郭に合わせた円弧面として形成される、ことを特徴とする請求項に記載の呼吸マスクのライナー。
【請求項3】
前記唇縁部(121)の厚さは0.2~0.5mm、好ましくは0.3~0.4mmである、ことを特徴とする請求項に記載の呼吸マスクのライナー。
【請求項4】
フレーム(20)と、前記フレーム(20)に接続されたライナー及び湾曲管(30)とを含む呼吸マスクであって、
前記ライナーは請求項1~のいずれか1項に記載の呼吸マスクのライナー(10)である、ことを特徴とする呼吸マスク。
【請求項5】
前記フレーム(20)はカップ(21)を含み、前記ライナー(10)は前記接続部分(13)を介して前記カップ(21)に接続され、ことを特徴とする請求項に記載の呼吸マスク。
【請求項6】
換気療法デバイスであって、
治療ガスを発生させる本体と、前記本体の吹き出し口に連通している呼吸マスクとを含み、該呼吸マスクは請求項4又は5に記載の呼吸マスクである、ことを特徴とする換気療法デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は換気療法デバイスの分野に関し、具体的には、呼吸マスクのライナー、該ライナーを備えた呼吸マスク、及び該呼吸マスクを備えた換気療法デバイスに関する。
<関連出願の相互参照>
【0002】
本出願は2018年12月29日に提出された、発明の名称が「呼吸マスクのライナー、呼吸マスク及び換気療法デバイス」である中国特許出願CN201811641531.3の優先権を主張しており、同出願の全内容は引用によりここに組み込まれている。
【背景技術】
【0003】
非侵襲的陽圧換気法は閉塞性睡眠時無呼吸症(OSA)、慢性閉塞性肺気腫(COPD)などの疾患の治療に広く利用されている。外科手術によってチューブを患者の気道に挿入する代わりに、送風機を用いてホース及び患者側インターフェース装置を介して患者の気道へ持続的な加圧換気(CPAP)又は可変の加圧換気を印加する。
【0004】
非侵襲的換気療法では、患者側インターフェース装置には、通常、鼻マスク、口鼻マスク、鼻枕マスク、及びフルフェイスマスクなどのタイプの呼吸マスクがある。呼吸マスクの代表的な構成には、フレーム、ライナー、湾曲管、接続部材やストラップなどの部品があり、ライナーはフレームに固定され、ライナーとフレームの両方によりガス室が形成され、湾曲管が接続部材を介してフレームに接続されて治療ガスをガス室に送り、ストラップは患者の頭部に接続されて呼吸マスクを患者の頭部の適切な位置に固定する。ライナーは、使用する際には、患者の顔部に接触して且つ顔部とシールし、患者の口及び/又は鼻がガス室内にあり、ライナーに対する顔部の支持力の大きさが通常、ストラップの張力に応じて変化する。
【0005】
OSA又はCOPD患者の場合、通常、呼吸マスクを長期間着用する必要があり、このため、ライナーの構造は呼吸マスクの着用時のシール性及び快適性に直接影響し、ライナーに対する顔部の支持力が小さすぎると、シールを達成しにくく、ライナーに対する顔部の支持力が大きすぎると、特に鼻ばしらなどの敏感な部位で不快さをもたらし、その結果、患者は治療を拒否したり抵抗したりしてしまい、深刻な場合、患者の顔部への過度の圧迫によりアレルギーや肌の赤みが生じることはある。
【0006】
このため、良好なシール性及び快適性を有する呼吸マスクのライナーを提案することが求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記問題に対して、良好なシール性及び快適性を有する呼吸マスクのライナー、該ライナーを備えた呼吸マスク、及び該呼吸マスクを備えた換気療法デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は呼吸マスクのライナーを提供し、前記ライナーは、鼻又は口鼻を収納する収納キャビティと、前記収納キャビティを画定する接触部分、接続部分及び中間部分とを含み、前記接触部分は患者の顔部にシールして接触し、前記接続部分は呼吸マスクのフレームに接続され、前記中間部分は前記接触部分と前記接続部分との間に接続され、前記中間部分に前記収納キャビティへ窪んだ窪み部が形成され、前記窪み部は前記ライナーの周方向に延在している円弧状又は環状に形成され、前記窪み部の横断面がV字形を呈し、前記窪み部は、接続された第1の接続壁と第2の接続壁を含み、前記第1の接続壁は前記接触部分に接近して設けられ、垂直平面上の前記第1の接続壁の投影面積Sが、前記垂直平面上の前記第2の接続壁の投影面積S未満である。理解すべきものとして、患者が立って水平に見たときに患者の顔部が位置する平面は略垂直平面である。このように設計すると、同じ気圧下(使用する際に呼吸マスクが湾曲管を介して収納キャビティ内に呼吸ガスを導入し、ライナーが患者の顔部にシールしているため、収納キャビティ内に一定の気圧が生じる)では、気圧は、第2の接続壁に対する左向きの推力が、第1の接続壁に対する右向きの推力よりも大きく、a面に垂直な方向においてライナーは外部へ拡張した状態になり、このように、患者の顔部と接触部分との支持力を大きくし、シールの効果を高め、快適さを向上させる。
【0009】
好ましくは、前記窪み部は前記ライナーの周方向に延在している環状に形成され、前記第2の接続壁は前記第1の接続壁から離れた一端が前記接続部分に接続され、前記中間部分は、前記第2の接続壁から離れた前記第1の接続壁の一端と前記接触部分とを接続する第1の部分を含む。つまり、前記ライナーでは、接触部分、第1の部分、第1の接続壁、第2の接続壁及び接続部分はライナーの軸方向に沿って順次接続され、そして、すべて環状に形成される。
【0010】
好ましくは、前記接続部分と前記第1の部分の厚さが前記接触部分の厚さよりも大きく、このように厚さの大きな第1の部分により接触部分が確実に支えられ、厚さの大きな接続部分によりフレームとの確実な接続が確保され、前記接続部分と前記第1の部分の厚さが、前記第1の接続壁と前記第2の接続壁の厚さよりも大きく、それにより、第1の接続壁と第2の接続壁が収納キャビティ内の気圧の作用で変形することに有利であり、つまり、窪み部が、第1の接続壁と第2の接続壁が接続されるヒンジ連結点bと第2の接続壁と接続部分が接続されるヒンジ連結点cを中心に、ライナーの軸方向において展開したり折り畳まれたりすることに有利であり、及び/又は
前記第1の接続壁の厚さは、前記第1の部分に近い一端から前記第2の接続壁に近い一端に向かうにしたがって減小するように設定され、前記第1の接続壁は前記第2の接続壁に近い一端の厚さが前記第2の接続壁の厚さに等しい。理解すべきものとして、第2の接続壁の厚さは均一であり、第1の接続壁の厚さは第1の部分と第2の接続壁との間で遷移している。
【0011】
好ましくは、前記ライナーは、周方向に沿って鼻ばしら領域、頬領域及び人中又は顎領域に分けられ、前記窪み部は、前記鼻ばしら領域に延在している円弧状に形成され、前記第2の接続壁は前記第1の接続壁から離れた一端が前記接続部分に接続され、前記中間部分は前記第2の接続壁から離れた前記第1の接続壁の一端と前記接触部分とを接続する第1の部分と、前記接触部分と前記接続部分とを接続する第2の部分とを含む。
【0012】
好ましくは、前記第1の部分の厚さは、前記鼻ばしら領域の頂部から前記鼻ばしら領域の底部に向かうにしたがって減小するように設定され、前記第1の接続壁と前記第2の接続壁の厚さは、前記鼻ばしら領域の頂部から前記鼻ばしら領域の底部に向かうにしたがって増大するように設定される。
【0013】
前記鼻ばしら領域の頂部では、前記接続部分と前記第1の部分の厚さは前記第2の部分の厚さよりも大きく、このように厚さの大きな第1の部分により接触部分が確実に支えられ、厚さの大きな接続部分によりフレームとの確実な接続が確保され、前記第2の部分の厚さは前記第1の接続壁と前記第2の接続壁の厚さよりも大きく、このように厚さの小さな第2の接続壁と第1の接続壁により、窪み部が気圧作用でヒンジ連結点bとヒンジ連結点cを中心に順調に展開したり折り畳まれたりすることを確保できる。
【0014】
前記鼻ばしら領域の底部では、前記第1の部分の厚さは前記第1の接続壁、前記第2の接続壁、及び前記第2の部分の厚さに等しい。鼻ばしら領域の底部では、ヒンジ連結点bとヒンジ連結点cが徐々に結合されて1つのヒンジ連結点となるので、応力が集中し、上記の構成によれば、ライナーの割れを防止し、ライナーの使用耐久性を効果的に向上させる。
【0015】
好ましくは、前記接触部分は、接続された唇縁部と支持縁部を含み、前記支持縁部は前記中間部分に接近して設けられ、前記支持縁部の厚さが前記唇縁部の厚さよりも大きく、厚い支持縁部は唇縁部をある程度支えながら、中間部分と安定的に接続することを確保し、一方、薄い唇縁部は、呼吸マスクの患者の顔部への圧迫を低減させ、及び/又は
患者の顔部に接触する前記接触部分の表面は患者の顔部輪郭に合わせた円弧面として形成され、使用する際に、接触部分は患者の顔部と接触し、患者の顔部への呼吸マスクの第1の接触力を分散させるとともに、患者の顔部と呼吸マスクとの間をシールする。
【0016】
好ましくは、前記唇縁部の厚さは0.2~0.5mm、好ましくは0.3~0.4mmである。
【0017】
本発明の第2の態様は、フレームと、前記フレームに接続されたライナー及び湾曲管とを含む呼吸マスクであって、前記ライナーは前記の呼吸マスクのライナーである呼吸マスクを提供する。
【0018】
好ましくは、前記フレームはカップを含み、前記ライナーは前記接続部分を介して前記カップに接続される。
【0019】
本発明の第3の態様は、治療ガスを発生させる本体と、前記本体の吹き出し口に連通している呼吸マスクとを含み、該呼吸マスクは前記の呼吸マスクである換気療法デバイスを提供する。
【発明の効果】
【0020】
上記技術案によれば、本発明のライナーは、中間部分にライナーの周方向に延在して収納キャビティへ窪んだ窪み部を設け、患者の顔部が位置する平面上の窪み部の第1の接続壁の投影面積Sが、患者の顔部が位置する平面上の第2の接続壁の投影面積S未満であるようにすることによって、使用する際に、窪み部が、収納キャビティ内の気圧の作用下で接触部分を介して患者の顔部へ付加の支持力を印加し、それにより、ライナーはストラップの引張力が小さい場合にも大きなシール力を取得し、良好なシール性及び快適性を達成する。
【0021】
本発明の他の特徴及び利点は後の発明を実施するための形態の部分において詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図面は本発明をさらに理解するために提供され、明細書の一部を構成し、以下の発明を実施するための形態とともに本発明を解釈するため、本発明を制限するものではない。図面には、
図1】本発明のライナーの一実施形態の背面図である。
図2図1の正面図である。
図3図1のA-A断面図である。
図4図3のFの拡大図である。
図5図3のGの拡大図である。
図6図2のB-B断面図である。
図7図2のC-C断面図である。
図8図2のD-D断面図である。
図9図2のライナーとカップが取り付けられたときの模式図である。
図10図9のE-E断面図である。
図11図2のライナーとカップが取り付けられたときの模式図であり、鼻ばしら領域、頬領域、及び人中又は顎領域が分割されている。
図12】本発明の呼吸マスクの一実施形態の斜視図である。
図13図12の右面図である。
図14】本発明のライナー及びカップの別の実施形態の斜視図である。
図15】通気して膨張させる前後のライナーの比較模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら本発明の具体的な実施形態を詳しく説明する。なお、ここで記載される具体的な実施形態は本発明を説明して解釈するために過ぎず、本発明を制限するものではない。
【0024】
本発明では、反対の説明がない限り、使用される方位用語、例えば「頂、底」とは図1を参照して示す方位である。「内、外」とは、各部品自体の輪郭に対する内、外である。
【0025】
本発明の第1の態様は、呼吸マスクのライナーを提供し、前記ライナー10は、鼻又は口鼻を収納する収納キャビティ11と、前記収納キャビティ11を画定する接触部分12、接続部分13及び中間部分14とを含み、前記接触部分12は患者の顔部にシールして接触し、前記接続部分13は呼吸マスクのフレーム20に接続され、前記中間部分14は前記接触部分12と前記接続部分13との間に接続され、前記中間部分14に前記収納キャビティ11へ窪んだ窪み部140が形成され、前記窪み部140は前記ライナー10の周方向に延在している円弧状又は環状に形成される。好ましくは、前記接続部分13は前記中間部分14の端部に設けられ、即ち、前記中間部分14はカップ21側へ延びておらず、このようにすると、より剛性のカップ21が患者の顔部に当接し、ライナーのシール性が向上する。
【0026】
呼吸マスクのライナーの一般的な形状からわかるように、上記接触部分12、接続部分13及び中間部分14はいずれも環状に形成され(図1及び図2参照)、理解すべきものとして、前記環状は、密閉させた閉環状構造であってもよく、環の一部である開口環状構造であってもよい。また、理解すべきものとして、呼吸マスクが鼻マスクである場合、収納キャビティ11は鼻部を収納するためのものであり、この場合、ライナー10は、その周方向に沿って鼻ばしら領域101(即ちライナーの上部に位置し鼻ばしらに対応する領域、図11参照)、頬領域102(即ちライナーの両側部に位置し、頬に対応する領域、図11参照)、及び人中領域103(即ちライナーの下部に位置し、人中に対応する領域、図11参照)に分けられ、呼吸マスクが口鼻マスクである場合、収納キャビティ11は口部と鼻部を収納するためのものであり、この場合、ライナー10は、その周方向に沿って鼻ばしら領域101、頬領域102及び顎領域103(即ち、ライナーの下部に位置し、顎に対応する領域、図11参照)に分けられる。以上では、窪み部140は前記ライナー10の周方向に延在している円弧状又は環状に形成されるとは、窪み部140はライナーの周辺の輪郭のいずれかの部分に形成されてもよいことを意味し、例えば、窪み部140は、鼻ばしら領域101、頬領域102及び人中又は顎領域103のうちいずれか1つの領域又はいずれか2つの領域に沿って延在している円弧状に形成されてもよく、鼻ばしら領域101、頬領域102及び人中又は顎領域103の3つの領域に延在している環状に形成されてもよい。
【0027】
本発明のライナー10は、上記技術案を採用することによって、中間部分14にライナー10の周方向に延在して収納キャビティへ窪んだ窪み部140を設け、使用する際に、窪み部140は収納キャビティ11内の気圧の作用で接触部分12を介して患者の顔部へ付加の支持力を印加し、それにより、ライナー10は、ストラップの引張力が小さい場合にも大きなシール力を達成し、良好なシール性及び快適性を有するようになる。つまり、ライナーに必要なシール力が一定である場合、従来技術によるライナー(中間部分に窪み部がない)では、シール力がすべてストラップの引張力により提供され、このため、ライナーのシール性を増大するには、ストラップの引張力を大きくしなければならず、このように、着用快適性が損なわれてしまい、一方、本発明では、上記態様を採用することによって、ライナーに必要なシール力はストラップの引張力と窪み部140の支持力の両方により提供され、このように、ストラップの引張力を小さくし、着用快適さを向上させる。
【0028】
本発明では、前記窪み部140は、ガスの圧力により接触部分12へ付加の支持力を提供できる限り、任意の適切な形状としてもよい。具体的には、本発明の一実施形態によれば、図3及び図4に示すように、前記窪み部140の横断面は略V字形であり、前記窪み部140は接続された第1の接続壁141と第2の接続壁142を含み、前記第1の接続壁141は前記接触部分12に接近して設けられ、患者の顔部が位置する平面上の前記第1の接続壁141の投影面積Sが、前記平面上の前記第2の接続壁142の投影面積S未満である。理解すべきものとして、第1の接続壁141と第2の接続壁142はV字形の2つの側壁を構成するが、第1の接続壁141と第2の接続壁142は必ずしも直線状であるわけではなく、一定の湾曲度を持ってもよく(例えば図4参照)、第1の接続壁141と第2の接続壁142は、互いに直接接続されてもよく、円弧面及び/又は平面、及び/又は凹凸面をもって接続されてもよく、また、第1の接続壁141と第2の接続壁142の長さも必ずも等しいわけではない。また、なお、ライナー10の材質が通常柔軟なものであるため、着用した後一定の変形が生じる可能性があり、このため、実際に製造するにあたり、患者が呼吸マスクを着用して安定的な状態になったときにライナー10の第1の接続壁141の、患者の顔部が位置する平面上の投影面積Sが、前記平面上の第2の接続壁142の投影面積S未満であるようにする必要があり、理解すべきものとして、患者が立って水平に見たときに患者の顔部が位置する平面は略垂直平面である。図4に示すように、患者が立って水平に見たときに患者の顔部が位置する平面は略垂直平面であるa面であり、a面上の第1の接続壁141の投影面積Sが、a面上の第2の接続壁142の投影面積S未満である。このように設計すると、同じ気圧(使用する際に呼吸マスクが湾曲管30を介して収納キャビティ11内に呼吸ガスを導入し、ライナーが患者の顔部にシールしているため、収納キャビティ11内に一定の気圧が生じる)では、気圧は、第2の接続壁142に対する左向きの推力Fが第1の接続壁141に対する右向きの推力Fよりも大きく、a面に垂直な方向においてライナー10は外部へ拡張した状態になり、例えば図15に示すライナー10は元の状態よりもΔXだけ膨張し、それにより、接触部分12と患者の顔部との支持力を増大し、シール効果を高め、快適さを向上させる。具体的な原理は以下のとおりである。
【0029】
通気したときの元の状態(図15の上図参照)では、ガスによる圧力がP、ライナー10と患者の顔部との接触面積がS、ストラップの締付力がF引張、ライナー10に対する患者の顔部の支持力がF支持と定義されると、以下の式を満たす。
(数1)
引張=F支持+PS (1)
【0030】
ライナー10に窪み部140を設計することにより、通気状態で、a面に垂直な方向における膨張長さΔXを提供するという役割を果たし、ストラップの弾性剛性係数をKとすると、ストラップの締付力の増加量はKΔXとなり、膨張状態で(図15の下図参照)ライナーに対する患者の顔部の支持力はF支持 とする。この場合、以下の式を満たす。
(数2)
引張+KΔX=F支持 +PS (2)
【0031】
(1)と(2)の2つの式を比較すると、F支持 >F支持が分かり、即ち、同じ条件では、窪み部140の構造は患者の顔部とライナーとの間の支持力を増大し、シール効果を高める。一方、展開長さΔXによりライナーが膨張したバルーン構造になり、より柔軟になり、それにより、着用快適性が向上する。
【0032】
実際に使用する際に、鼻ばしらの高さが個人的に異なるため、鼻ばしらの高い患者の場合、窪み部140が鼻ばしらにタッチし、呼吸マスクの着用心地に悪影響を与える恐れがある。このため、使用中窪み部140が患者の鼻ばしらにタッチしないように、窪み部140は患者の顔部から離れた側に傾斜し、つまり、窪み部140の二等分面(二等分面と第1の接続壁141との夾角が、二等分面と第2の接続壁142との夾角に等しい)は、患者の顔部が位置する平面であるa面に対して、患者の顔部から離れた側に傾斜するように設けられてもよく、このように、窪み部140と患者の鼻ばしらとの間隔を大きくする。
【0033】
ここで、窪み部140の二等分面と患者の顔部が位置する平面aとの夾角は好ましくは0~45°、さらに好ましくは0~30°であり、また、実際に着用するとき、窪み部140は通常押圧を受けて変形し、このため、窪み部140と患者の鼻ばしらとのタッチをさらに防止するために、前記第1の接続壁141の強度を、前記第2の接続壁142の強度よりも大きくしてもよく、このように、第1の接続壁141の変形防止能力が第2の接続壁142よりも高くなり、これにより、ライナーが着用されてから押圧された場合、窪み部140は鼻ばしらから離れた方向へ変形する。
【0034】
第1の接続壁141の強度を第2の接続壁142の強度よりも大きくするために、本発明の一実施形態によれば、前記第1の接続壁141の厚さを前記第2の接続壁142の厚さよりも大きくしてもよい。本発明の別の実施形態によれば、前記第1の接続壁141は前記第2の接続壁142よりも硬い材料で製造され、例えば第1の接続壁141は密度が第2の接続壁142の密度よりも大きいシリコンで製造される。
【0035】
また、窪み部140が円弧状に形成される場合、内部応力を放出し、窪み部140の変形性(即ち窪み部140の展開及び折り畳みに有利)を増加するために、前記中間部分14の内面には、窪み部140の2つの端部のそれぞれを取り囲んで設けられた2つの第2の溝145(図14参照)が形成されてもよく、つまり、中間部分14の、2つの端部をそれぞれ取り囲む領域を減薄領域とする。ここで第2の溝145は任意の形状であってもよく、第2の溝145の底壁の厚さ(即ち減薄領域の厚さ)は好ましくは0.5~1.5mm、さらに好ましくは0.8~1.2mmである。
【0036】
本発明では、ライナー10の周方向における窪み部140の延在長さに関しては、具体的には、本発明の一実施形態によれば、前記窪み部140は前記ライナー10の周方向に延在している環状に形成され、前記第2の接続壁142は、前記第1の接続壁141から離れた一端が前記接続部分13に接続され、前記中間部分14は、前記第2の接続壁142から離れた前記第1の接続壁141の一端と前記接触部分12とを接続する第1の部分143を含む。つまり、前記ライナー10では、接触部分12、第1の部分143、第1の接続壁141、第2の接続壁142及び接続部分13はライナー10の軸方向に沿って順次接続され、そして、すべて環状に形成される。
【0037】
好ましくは、前記接続部分13と前記第1の部分143の厚さは前記接触部分12の厚さよりも大きく、このように厚さの大きな第1の部分143により接触部分12が確実に支えられ、厚さの大きな接続部分13によりフレーム20との確実な接続が確保される。本発明では、接続部分13と第1の部分143の厚さの大きさの関係について限定しない。また、前記接続部分13と前記第1の部分143の厚さを前記第1の接続壁141と前記第2の接続壁142の厚さよりも大きくし、このように、第1の接続壁141と第2の接続壁142が収納キャビティ11内の気圧の作用で変形することに有利であり、即ち、窪み部140が、第1の接続壁141と第2の接続壁142が接続されるヒンジ連結点bと第2の接続壁142と接続部分13が接続されるヒンジ連結点cを中心に、ライナー10の軸方向(即ち図4のa面に垂直な方向)において展開したり折り畳まれたりすることに有利である(図4参照)。
【0038】
好ましくは、前記第1の接続壁141の厚さは、前記第1の部分143に近い一端から前記第2の接続壁142に近い一端に向かうにしたがって減小するように設定され、前記第1の接続壁141は、前記第2の接続壁142に近い一端の厚さが前記第2の接続壁142の厚さに等しい。理解すべきものとして、第2の接続壁142の厚さは均一であり、第1の接続壁141の厚さは第1の部分142と第2の接続壁142との間で遷移している。
【0039】
本発明の別の実施形態によれば、図3及び図13に示すように、前記窪み部140は、前記鼻ばしら領域101に沿って延在している円弧状に形成され、前記第2の接続壁142は、前記第1の接続壁141から離れた一端が前記接続部分13に接続され、前記中間部分14は、前記第2の接続壁142から離れた前記第1の接続壁141の一端と前記接触部分12とを接続する第1の部分143と、前記接触部分12と前記接続部分13とを接続する第2の部分144とを含む。
【0040】
好ましくは、前記第1の部分143の厚さは、前記鼻ばしら領域101の頂部から前記鼻ばしら領域101の底部に向かうにしたがって減小するように設定され(図4図6、及び図7参照)、前記第1の接続壁141と前記第2の接続壁142の厚さは、前記鼻ばしら領域101の頂部から前記鼻ばしら領域101の底部に向かうにしたがって増大するように設定され(図4図6、及び図7参照)、前記鼻ばしら領域101の頂部では、前記接続部分13と前記第1の部分143の厚さは、前記第2の部分144の厚さよりも大きく(このように厚さの大きな第1の部分143により接触部分12が確実に支えられ、厚さの大きな接続部分13によりフレーム20との確実な接続が確保される)、前記第2の部分144の厚さは前記第1の接続壁141と前記第2の接続壁142の厚さよりも大きく(厚さの小さな第2の接続壁142と第1の接続壁141により、窪み部140が気圧作用でヒンジ連結点bとヒンジ連結点cを中心に順調に展開したり折り畳まれたりすることを確保できる)、前記鼻ばしら領域101の底部では、前記第1の部分143の厚さは、前記第1の接続壁141、前記第2の接続壁142、及び前記第2の部分144の厚さとほぼ等しい。鼻ばしら領域101の底部では、ヒンジ連結点bとヒンジ連結点cが徐々に結合されて1つのヒンジ連結点になるので(図7参照)、応力が集中し、上記の構成によれば、ライナーの割れを防止し、ライナーの使用耐久性を効果的に向上させることができる。
【0041】
以上では、前記鼻ばしら領域101の頂部では、前記第1の部分143の厚さは1~8mm、好ましくは3~6mmであってもよい。
【0042】
本発明では、患者の顔部に接触する接触部分12の表面は、患者の顔部輪郭に合わせた円弧面として形成されてもよい。使用する際に、接触部分12は患者の顔部と接触し、患者の顔部への呼吸マスクの第1の接触力を分散させるとともに、患者の顔部と呼吸マスクとの間をシールする。前記接触部分12は、接続された唇縁部121と支持縁部122を含んでもよく、前記支持縁部122は、前記中間部分14に接近して設けられ、前記支持縁部122の厚さは前記唇縁部121の厚さよりも大きい(図6図8参照)。理解すべきものとして、唇縁部121と支持縁部122はいずれも環状に形成され、厚い支持縁部122は唇縁部121をある程度支えながら、中間部分14と安定的に接続することを確保することができ、一方、薄い唇縁部121は、呼吸マスクの患者の顔部への圧迫を低減させ、唇縁部121は、ライナー10の最も柔軟で薄い部位であり、その厚さが、0.2~0.5mm、好ましくは0.3~0.4mmであってもよい。また、鼻ばしら及び顎が敏感な部位であるため、呼吸マスクの快適性をさらに向上させ、鼻ばしら及び顎への圧迫を低減させるために、支持縁部122の鼻ばしら及び顎に対応する領域を唇縁部121の厚さに等しくしてもよい(図4及び図5参照)。
【0043】
さらに、図1及び図2に示すように、収納キャビティ11において、鼻ばしらの上方に接近する位置を狭くし、顎の下方に接近する位置を広くしてもよく、このように、着用するときに、上方の位置は患者の鼻ばしらと協力して、ライナーの位置の自由度をある程度制限し、ライナーの鼻ばしらへの圧迫を低減させる。
【0044】
本発明では、ライナー10は、柔軟で変形しやすい材料、例えばシリコンで製造されてもよく、既知の柔軟な生体適合性材料で製造されてもよい。ライナー10は好ましくは一体成形され、任意の適切なプロセス、例えば射出成形やブロー成形などにより成形されてもよい。
【0045】
本発明の第2の態様は、フレーム20と、前記フレーム20に接続されたライナー及び湾曲管30とを含む呼吸マスクであって、前記ライナーは前記の呼吸マスクのライナー10である呼吸マスクを提供する。
【0046】
図12及び図13に示すように、前記フレーム20はカップ21を含んでもよく、前記ライナー10は前記接続部分13を介して前記カップ21に接続される。具体的には、図9及び図10に示すように、接続部分13は、中間部分14から離れた側に第1の溝131が設けられ、ライナー10は該第1の溝131を介してカップ21のフランジに係合されてもよい(図13参照)。また、ライナー10とカップ21との接続強度をさらに高めるために、製造する際に、ライナー10をカップ21に射出成形してもよく、カップ21に接続リブが設けられているので、射出成形終了後、接続リブが接続部分13の接続孔132に包まれ、それによりライナーにしっかりと接続される。勿論、ライナー10は他の既知の任意のプロセスによってカップ21に接続されてもよい。
【0047】
好ましくは、前記接続部13は、前記第2の接続壁142の端部に設けられ、前記第2の接続壁142と前記接続部13及びカップ21とはコーン状構造とされる(図14参照)。
【0048】
本発明の第3の態様は、治療ガスを発生させる本体と、前記本体の吹き出し口に連通している呼吸マスクとを含み、該呼吸マスクは前記の呼吸マスクである換気療法デバイスを提供する。
【0049】
前記換気療法デバイスは人工呼吸器であってもよい。
【0050】
以上、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を詳しく説明したが、本発明は上記実施形態の細部に制限されず、本発明の技術的構想の範囲内で、本発明の技術案に対して簡単な変形を行うことができ、これらの簡単な変形はすべて本発明の特許範囲に属する。
【0051】
また、なお、上記の具体的な実施形態で説明された各具体的な技術的特徴は、矛盾しない場合、任意の適切な方式で組み合わせられることができる。不要な重複を避けるために、本発明では、様々な可能な組み合わせ形態について説明しない。
【0052】
さらに、本発明のさまざまな実施形態は、互いに任意に組み合わせられることも可能であり、本発明の構想に違反しない限り、これらは本発明の開示内容とみなすべきである。
【符号の説明】
【0053】
10-ライナー、101-鼻ばしら領域、102-頬領域、103-人中又は顎領域、11-収納キャビティ、12-接触部分、121-唇縁部、122-支持縁部、13-接続部分、131-第1の溝、132-接続孔、14-中間部分、140-窪み部、141-第1の接続壁、142-第2の接続壁、143-第1の部分、144-第2の部分、145-第2の溝、20-フレーム、21-カップ、30-湾曲管。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11
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