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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】金属アゾ顔料
(51)【国際特許分類】
   C09B 67/48 20060101AFI20230630BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20230630BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20230630BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20230630BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20230630BHJP
   C09D 11/02 20140101ALI20230630BHJP
   C09D 11/322 20140101ALI20230630BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20230630BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
C09B67/48
C09B67/48 A
C09B67/20 A
C09B67/20 K
C09D5/00 Z
C09D5/02
C09D7/40
C09D11/02
C09D11/322
C09D201/00
G02B5/20 101
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017182339
(22)【出願日】2017-09-22
(62)【分割の表示】P 2016056636の分割
【原出願日】2016-03-22
(65)【公開番号】P2018021204
(43)【公開日】2018-02-08
【審査請求日】2019-03-20
【審判番号】
【審判請求日】2021-03-24
(31)【優先権主張番号】15160251.3
(32)【優先日】2015-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505422707
【氏名又は名称】ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン・ミヒャエリス
(72)【発明者】
【氏名】フランク・リンケ
(72)【発明者】
【氏名】ハインツ-ヨーゼフ・フュールマン
(72)【発明者】
【氏名】ハンス-ウルリッヒ・ボルスト
(72)【発明者】
【氏名】サビーネ・エンデルト
(72)【発明者】
【氏名】ディルク・プフツェンロイター
【合議体】
【審判長】井上 典之
【審判官】冨永 保
【審判官】野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-325350(JP,A)
【文献】特開2007-224176(JP,A)
【文献】特開2021-119216(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B,C09D,G02B
CAplus(STN)
REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属アゾ顔料において、
a)少なくとも金属イオンMeにおいて異なる、式(I)の少なくとも2種の金属アゾ化合物、またはそれらの互変異性体
【化1】
[式中、
およびRはそれぞれ独立して、OH、NHまたはNHRであり、
およびRはそれぞれ独立して、=Oまたは=NRであり、
は、水素またはアルキルであり、かつ
Meは、Ni2+、Zn2+、Cu2+、Al3+ 2/3、Fe2+、Fe3+ 2/3、Co2+、およびCo3+ 2/3の群から選択される二価もしくは三価の金属イオンであるが、
ただし、それぞれの場合において前記式(I)のすべての化合物1モルを基準にして、Cu2+およびNi2+の群からの金属イオンの量が95~100モル%であり、Zn2+、Al3+ 2/3、Fe2+、Fe3+ 2/3、Co2+、およびCo3+ 2/3の群から選択される金属イオンの量が0~5モル%であり、
かつ、前記式(I)の化合物の総計におけるCu2+対Ni2+の金属イオンのモル比は、(19:1)から(1:5)までである]
および
b)式(II)の少なくとも1種の化合物
【化2】
[式中、
は、水素である]
のアダクトを含むことを特徴とし、
50~200m/gの比表面積を有することを特徴とする、金属アゾ顔料。
【請求項2】
前記式(I)の化合物の総計におけるCu2+対Ni2+の金属イオンのモル比が、(1:5)から(4:1)までであることを特徴とする、請求項1に記載の金属アゾ顔料。
【請求項3】
式(I)において、
およびRが、OHであり、
かつ
およびRが、=Oであり、
かつ、式(II)において
が、水素である
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の金属アゾ顔料。
【請求項4】
式(I)において、
Meが、Cu2+およびNi2+の群からの金属イオンであり、
かつ、Cu2+およびNi2+の群からの金属イオンの量が、前記式(I)のすべての化合物の1モルを基準にして、100モル%である
ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の金属アゾ顔料。
【請求項5】
化合物(I)の1モルあたり、0.05~4モルの、前記式(II)の化合物が存在することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の金属アゾ顔料。
【請求項6】
80~160m/gの比表面積を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の金属アゾ顔料。
【請求項7】
顔料調製物であって、請求項1~6のいずれか1項に記載の少なくとも1種の金属アゾ顔料、および、表面活性剤、表面被覆剤、塩基、および溶媒の群からの少なくとも1種の助剤および/または添加剤を含む、顔料調製物。
【請求項8】
C.I.ピグメント・グリーン36および/またはC.I.ピグメント・グリーン58を含むことを特徴とする、請求項に記載の顔料調製物。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか1項に記載の少なくとも1種の金属アゾ顔料を、表面活性剤の群からの少なくとも1種の助剤および/または添加剤、および任意選択で少なくとも1種のさらなる顔料と、および任意選択で、テルペン、テルペノイド、脂肪酸エステルの群、およびホモポリマーもしくはコポリマーの群から選択される少なくとも1種の有機化合物と、混合または摩砕することを特徴とする、請求項またはに記載の顔料調製物を製造するためのプロセス。
【請求項10】
顔料調製物を製造するための、請求項1~6のいずれか1項に記載の金属アゾ顔料の使用。
【請求項11】
インクジェットインキ、液晶ディスプレイのためのカラーフィルター、印刷インキ、水性塗料またはエマルションペイントを着色するため、合成、半合成または天然の高分子物質をバルク着色するため、および天然、再生または合成繊維を原液染色するため、ならびに織物および紙を捺染するための、請求項1~6のいずれか1項に記載の金属アゾ顔料の使用、または請求項もしくはに記載の顔料調製物の使用。
【請求項12】
カラーフィルターであって、請求項1~6のいずれか1項に記載の少なくとも1種の金属アゾ顔料、または請求項もしくはに記載の顔料調製物、を含むカラーフィルター。
【請求項13】
フォトレジストであって、少なくとも1種の光硬化性モノマー、少なくとも1種の光重合開始剤、および請求項1~6のいずれか1項に記載の少なくとも1種の金属アゾ顔料、または請求項もしくはに記載の顔料調製物を含む、フォトレジスト。
【請求項14】
液晶ディスプレイのためのカラーフィルターを製造するためのプロセスにおいて、請求項1~6のいずれか1項に記載の少なくとも1種の金属アゾ顔料、または請求項もしくはに記載の顔料調製物を、有機溶媒中で、任意選択でバインダー樹脂および/または分散剤を添加して摩砕し、次いで光硬化性モノマー、光反応開始剤、および任意選択でさらなるバインダーおよび/または溶媒を添加して加工して、フォトレジストを作成し、次いでそれを、適切な基材に塗布し、フォトマスクの手段により露光し、次いで硬化および現像させることによって仕上げたカラーフィルターを得ることを特徴とする、プロセス。
【請求項15】
液晶ディスプレイであって、請求項1~6のいずれか1項に記載の少なくとも1種の金属アゾ顔料、または請求項12に記載のカラーフィルターを含む、液晶ディスプレイ。
【請求項16】
光リソグラフィ法またはオフセット印刷法によるか、または機械式およびピエゾメカニカルまたは加熱式インクジェット捺染法によるカラーフィルターを製造するための印刷インキにおける、請求項またはに記載の顔料調製物の使用。
【請求項17】
印刷インキであって、請求項1~6のいずれか1項に記載の少なくとも1種の金属アゾ顔料、または請求項もしくはに記載の顔料調製物を含む、印刷インキ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2種の金属アゾ化合物のアダクトをベースとする新規な黄色の金属アゾ顔料、それらを製造するためのプロセス、および顔料調製物における黄色顔料としてのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アゾバルビツル酸のニッケル塩を含む金属錯体の調製物および黄色顔料としてのそれらの使用についてはかなり昔から公知であり、文献に幾度となく記載されてきた(たとえば、(非特許文献1)を参照されたい)。さらには、それらの反応生成物をさらにたとえばメラミンまたはメラミン誘導体と反応させて、たとえばプラスチックス、ラッカーの着色、およびLCDのためのカラーフィルターにおける顔料の実用性能を改良することが可能となるということも公知である。
【0003】
さらに、文献には、ニッケル塩とは別に、各種の金属の1種または複数の塩を使用して、着色性能を調節することが可能であるとの記載もある。(特許文献1)には、金属としてアルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタノイド、ならびにアルミニウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、コバルト、銅、ニッケルおよび亜鉛、さらには任意選択で鉄の群からのものを含む、アゾ化合物の金属錯体が記載されている。そのようにして得られた顔料は、純粋なニッケル-アゾバルビツル酸錯体に比較して、各種の色座標を有している。
【0004】
金属アゾ顔料の表面被覆を調節することによって同様に、実用ベースの性能、特に、顔料の分散性の尺度としての分散硬度の低下をもたらすことができる。しかしながら、分散性を改良するためのこの方法には、顔料の色強度の低下が伴い、それは、被覆剤の濃度に直接依存する。
【0005】
実用ベースの性能を調節するためのさらなる手段は、ニッケル-アゾバルビツル酸錯体から製造された顔料を、たとえば、メラミンとの熱処理にかける方法である。このプロセス工程には、顔料の粒子サイズおよびそれらの比表面積における規制された変化がともなう。このプロセスは、たとえば、(特許文献2)に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】欧州特許出願公開第A1 591 489号明細書
【文献】欧州特許出願公開第A0 994 162号明細書
【非特許文献】
【0007】
【文献】W.Herbst,K.Hunger:Industrial Organic Pigments,3rd edition,2004,p.390/397
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来技術から公知の金属アゾ顔料、その実用性能特性に関連して、依然として改良の必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
アゾバルビツル酸、ニッケル塩、ならびにメラミンおよび/またはメラミン誘導体、ならびにニッケル塩以外の少なくとも1種のさらなる金属塩をベースとする金属アゾ顔料が、驚くべきことには、色強度における増大と同時に、改良された分散性も有しているということが見いだされた。それらの性質が改良されることで、とりわけ、プラスチックスおよびラッカーの着色のため、およびインクジェットにおける使用のため、およびLCDのためのカラーフィルターの成分としての、それらの製品の改良された使用が可能となる。
【0010】
したがって、本発明は、以下のアダクトを含むことを特徴とする金属アゾ顔料に関する。
a)少なくとも金属イオンMeにおいて異なるか、またはそれらの互変異性の形態にある、式(I)の少なくとも2種の金属アゾ化合物
【化1】
[式中、
およびRはそれぞれ独立して、OH、NHまたはNHRであり、
およびRはそれぞれ独立して、=Oまたは=NRであり、
は、水素またはアルキル、好ましくはC~C-アルキルであり、かつ
Meは、Ni2+、Zn2+、Cu2+、Al3+ 2/3、Fe2+、Fe3+ 2/3、Co2+、およびCo3+ 2/3の群から選択される二価もしくは三価の金属イオンであるが、
ただし、それぞれの場合において式(I)のすべての化合物1モルを基準にして、Cu2+およびNi2+の群からの金属イオンの量が95~100モル%であり、Zn2+、Al3+ 2/3、Fe2+、Fe3+ 2/3、Co2+、およびCo3+ 2/3の群から選択される金属イオンの量が0~5モル%であり、
かつ
式(I)の化合物の総計におけるCu2+対Ni2+の金属イオンのモル比が、(19:1)から(1:19)まで、好ましくは(1:9)から(4:1)まで、より好ましくは(1:3)から(2:1)までである]
および
b)式(II)の少なくとも1種の化合物
【化2】
[式中、
は、水素またはアルキル、好ましくは、任意選択でOHによって一置換または多置換されたC~C-アルキルである]
【0011】
好ましくは、式(I)において、RおよびRがそれぞれ独立して、OH、NH、またはNHR基(ここでRは、水素またはC~C-アルキルである)である。
【0012】
好ましくは、式(I)において、RおよびRがそれぞれ独立して、=Oまたは=NR(ここでRは、水素またはC~C-アルキルである)である。
【0013】
より好ましくは、式(I)において、RおよびRがOHであり、かつRおよびRが=Oである。
【0014】
好ましくは、式(II)において、Rが、水素または、任意選択でOHによって一置換または多置換されたC~C-アルキルである。
【0015】
より好ましくは、式(II)において、Rが水素である。
【0016】
式(I)の化合物の総計におけるCu2+対Ni2+の金属イオンのモル比は、(19:1)から(1:19)まで、好ましくは(4:1)から(1:9)まで、より好ましくは(2:1)から(1:3)までである。
【0017】
また別の実施形態においては、式(I)の化合物の総計におけるCu2+対Ni2+の金属イオンのモル比は、(19:1)から(1:5)まで、より好ましくは(4:1)から(1:5)まで、特には(2:1)から(1:3)までである。
【0018】
式(I)において、Meが三価の金属イオンであるような場合においては、その電荷を、式(Ia)のアニオン性構造単位の等価の量によって釣り合わせる。
【化3】
[式中、R、R、R、およびRは、式(I)において特定された定義を有している]
【0019】
好ましいのは、以下のアダクトを含む金属アゾ顔料である。
a)先に特定された式(I)の少なくとも2種の金属アゾ化合物
[式中、RおよびRは、OHであり、
かつ
およびRは、=Oであり、
かつ
Meは、Ni2+、Zn2+、Cu2+、Al3+ 2/3、Fe2+、Fe3+ 2/3、Co2+、およびCo3+ 2/3の群から選択される二価もしくは三価の金属イオンであるが、
ただし、それぞれの場合において式(I)のすべての化合物1モルを基準にして、Cu2+およびNi2+の群からの金属イオンの量が95~100モル%であり、Zn2+、Al3+ 2/3、Fe2+、Fe3+ 2/3、Co2+、およびCo3+ 2/3の群から選択される金属イオンの量が0~5モル%であり、
かつ
式(I)の化合物の総計におけるCu2+対Ni2+の金属イオンのモル比が、(19:1)から(1:19)まで、好ましくは(1:9)から(4:1)まで、より好ましくは(1:3)から(2:1)までである]
および
b)先に特定された式(II)の少なくとも1種の化合物
[式中、
は水素である]
【0020】
特に好ましいのは、以下のアダクトを含む金属アゾ顔料である。
a)先に特定された式(I)の少なくとも2種の金属アゾ化合物
[式中、
、R、R、R、およびRは、先に特定された一般的および好ましい定義を有し、
かつ
Meは、Cu2+およびNi2+の群からの金属イオンであるが、
ただし、Cu2+およびNi2+の群からの金属イオンの量は、式(I)のすべての化合物の1モルを基準にして、100モル%であり、
かつ、式(I)の化合物の総計におけるCu2+対Ni2+の金属イオンのモル比が、(19:1)から(1:19)まで、好ましくは(1:9)から(4:1)まで、より好ましくは(1:3)から(2:1)までである]
および
b)先に特定された式(II)の少なくとも1種の化合物
[式中、Rは、先に特定された一般的および好ましい定義を有している]
【0021】
また別の実施形態においては、本発明は、以下のアダクトを含むことを特徴とする金属アゾ顔料に関する。
a)少なくとも金属イオンMeにおいて異なるか、またはそれらの互変異性の形態にある、式(I)の少なくとも2種の金属アゾ化合物
【化4】
[式中、
およびRはそれぞれ独立して、OH、NHまたはNHRであり、
およびRはそれぞれ独立して、=Oまたは=NRであり、
は、水素またはアルキル、好ましくはC~C-アルキルであり、かつ
Meは、Ni2+、Zn2+、Cu2+、Al3+ 2/3、Fe2+、Fe3+ 2/3、Co2+、およびCo3+ 2/3の群から選択される二価もしくは三価の金属イオンであるが、
ただし、それぞれの場合において式(I)のすべての化合物1モルを基準にして、Cu2+およびNi2+の群からの金属イオンの量が95~100モル%であり、Zn2+、Al3+ 2/3、Fe2+、Fe3+ 2/3、Co2+、およびCo3+ 2/3の群から選択される金属イオンの量が0~5モル%であり、
かつ
式(I)の化合物の総計におけるCu2+対Ni2+の金属イオンのモル比は、(19:1)から(1:5)まで、好ましくは(4:1)から(1:5)まで、より好ましくは(2:1)から(1:3)までである]
および
b)式(II)の少なくとも1種の化合物
【化5】
[式中、
は、水素またはアルキル、好ましくは、任意選択でOHによって一置換または多置換されたC~C-アルキルである]
【0022】
また別の好ましいものは、以下のアダクトを含む金属アゾ顔料である。
a)先に特定された式(I)の少なくとも2種の金属アゾ化合物
[式中、RおよびRは、OHであり、
かつ
およびRは、=Oであり、
かつ
Meは、Ni2+、Zn2+、Cu2+、Al3+ 2/3、Fe2+、Fe3+ 2/3、Co2+、およびCo3+ 2/3の群から選択される二価もしくは三価の金属イオンであるが、
ただし、それぞれの場合において式(I)のすべての化合物1モルを基準にして、Cu2+およびNi2+の群からの金属イオンの量が95~100モル%であり、Zn2+、Al3+ 2/3、Fe2+、Fe3+ 2/3、Co2+、およびCo3+ 2/3の群から選択される金属イオンの量が0~5モル%であり、
かつ
式(I)の化合物の総計におけるCu2+対Ni2+の金属イオンのモル比は、(19:1)から(1:5)まで、好ましくは(4:1)から(1:5)まで、より好ましくは(2:1)から(1:3)までである]
および
b)先に特定された式(II)の少なくとも1種の化合物
[式中、
は水素である]
【0023】
また別の、より好ましいものは、以下のアダクトを含む金属アゾ顔料である。
a)先に特定された式(I)の少なくとも2種の金属アゾ化合物
[式中、
、R、R、R、およびRは、先に特定された一般的および好ましい定義を有し、
かつ
Meは、Cu2+およびNi2+の群からの金属イオンであるが、
ただし、Cu2+およびNi2+の群からの金属イオンの量は、式(I)のすべての化合物の1モルを基準にして、100モル%であり、
かつ、式(I)の化合物の総計におけるCu2+対Ni2+の金属イオンのモル比は、(19:1)から(1:5)まで、好ましくは(4:1)から(1:5)まで、より好ましくは(2:1)から(1:3)までである]
および
b)先に特定された式(II)の少なくとも1種の化合物
[式中、Rは、先に特定された一般的および好ましい定義を有している]
【発明を実施するための形態】
【0024】
アルキルの定義における置換基は、たとえば、直鎖状もしくは分岐状のC~C-アルキル、好ましくはC~C-アルキルを表すが、それらは任意選択で、たとえばハロゲンたとえば塩素、臭素またはフッ素;-OH、-CN、-NH、またはC~C-アルコキシによって、一置換、または同一もしくは別々の多置換をされていてもよい。
【0025】
本発明の金属アゾ顔料は、a)式(I)の金属アゾ化合物とb)式(II)の化合物とのアダクトである。「アダクト」とは、一般的には、分子集合体を意味していると理解されたい。この場合における分子間の結合は、たとえば分子間相互作用、またはルイス酸-塩基相互作用、または配位結合の結果であってよい。
【0026】
本発明の文脈においては、「アダクト」という用語には一般的に、すべてのタイプの層間化合物および付加化合物が包含されているものとする。
【0027】
本発明の文脈における「層間化合物」または「付加化合物」という用語は、たとえば、分子間相互作用たとえばファンデルワールス相互作用、またはルイス酸-塩基相互作用に基づいて形成されている化合物を意味しているものと理解されたい。ここでその挿入の進行は、挿入される成分の化学的性質と、ホストの格子の化学的性質の両方に依存する。このタイプの化合物は多くの場合、層間化合物とも呼ばれる。化学的な感覚においては、このことは、化合物の中への、分子およびイオン(同様に、滅多にないが原子)の挿入を意味していると理解されたい。
【0028】
このことはさらに、クラスレートとも呼ばれる包接化合物も意味しているとも理解されたい。それらは二つの物質からなる化合物であって、それらの一方が、ホスト分子からなる格子またはケージの中に挿入されたゲスト分子である。
【0029】
本発明の文脈における「層間化合物」または「付加化合物」という用語は、(侵入型化合物も含めた)混合された挿入結晶を意味していると理解されるべきである。これらは、少なくとも二つの要素からなる、化学的に非化学量論的な結晶化合物である。
【0030】
さらに、本発明の文脈における「層間化合物」または「付加化合物」という用語は、配位結合または錯結合に基づいて形成された化合物を意味しているとも理解されるべきである。このタイプの化合物は、たとえば混合置換結晶とも呼ばれ、その中では少なくとも2種の物質が協同して結晶を形成し、その第二の成分の原子が、第一の成分の本来の格子座に位置している。
【0031】
上述の定義の意味に従って、式(I)の化合物とアダクトを形成するのに適した化合物は、有機または無機いずれの化合物であってもよい。以後においてはそれらの化合物を、アダクト形成剤と呼ぶこととする。
【0032】
原理上好適なアダクト形成剤は、極端に広く各種のタイプの化合物から得られる。純粋に実務的な理由から、標準条件下(25℃、1bar)で固体または液体であるような化合物が好ましい。
【0033】
液体物質の中では、1barで100℃以上、好ましくは150℃以上の沸点を有するものが好ましい。好適なアダクト形成剤は一般的には、非環状および環状の有機化合物、たとえば脂肪族および芳香族炭化水素であって、それらは、たとえば、OH、COOH、NH、置換されたNH、CONH、置換されたCONH、SONH、置換されたSONH、SOH、ハロゲン、NO、CN、-SO-アルキル、-SO-アリール、-O-アルキル、-O-アリール、-O-アシルによって置換されていてもよい。
【0034】
カルボキサミドおよびスルホンアミドも好ましいアダクト形成剤の群であるし、さらには特に好適なのは、以下のものである:尿素および置換尿素たとえば、フェニル尿素、ドデシル尿素など、およびそれらとアルデヒド、特にはホルムアルデヒドとの重縮合物;複素環たとえば、バルビツール酸、ベンズイミダゾロン、ベンズイミダゾロン-5-スルホン酸、2,3-ジヒドロキシキノキサリン、2,3-ジヒドロキシキノキサリン-6-スルホン酸、カルバゾール、カルバゾール-3,6-ジスルホン酸、2-ヒドロキシキノリン、2,4-ジヒドロキシキノリン、カプロラクタム、メラミン、6-フェニル-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン、6-メチル-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン、シアヌル酸。
【0035】
アダクト形成剤として、原理的に同様に好適なのはポリマー、好ましくは水溶性ポリマー、たとえば、好ましくは1000以上、特には1000~10000g/モルのMを有するエチレン-プロピレンオキシドブロックポリマー、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)アクリル酸、変性セルロースたとえばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルおよび-プロピルセルロース、メチルおよびエチルヒドロキシエチルセルロースである。
【0036】
本発明においては、使用されるアダクト形成剤は、式(II)のものである。ここで特に好ましいのはメラミンである。
【0037】
本発明の金属アゾ顔料は、化合物(I)の1モルあたり、一般的には0.05~4モル、好ましくは0.5~2.5モル、最も好ましくは1.0~2.0モルの式(II)の化合物を含む。
【0038】
本発明の金属アゾ顔料は、好ましくは50~200m/g、特には80~160m/g、最も好ましくは100~150m/gの比表面積(m/g)を有している。表面積は、DIN 66131に従って測定し、固体の比表面積は、Brunauer,Emmett and Teller(B.E.T.)によるガス吸着法によって測定する。
【0039】
本発明の金属アゾ顔料は、a)式(I)の少なくとも2種の金属アゾ化合物とb)式(II)の少なくとも1種の化合物とからなるアダクトの物理的混合物であってもよい。たとえばおよび好ましくは、純粋なNi-アゾ化合物とメラミンおよび純粋なCu-アゾ化合物とメラミンとからなるアダクトの物理的混合物である。別の方法として、本発明の金属アゾ顔料が、a)式(I)の少なくとも2種の金属アゾ化合物とb)式(II)の少なくとも1種の化合物とからなるアダクトの化学的混合化合物であってもよい。それらの化学的混合化合物は、たとえばおよび好ましくは、その中で、ニッケルおよび銅原子、および任意選択で亜鉛、コバルト、アルミニウムおよび鉄の群からのさらなる金属イオンが、共通の結晶格子の中に組み込まれているような金属アゾ化合物のアダクトである。
【0040】
本発明の場合においては、物理的混合物と化学的混合化合物のX線回折図には、まったく差が無い。
【0041】
本発明の金属アゾ顔料では、X線回折図における特徴的なシグナルが顕著である。特に、X線回折図におけるd=12.2(±0.2)Åの面間隔のところに、その金属アゾ顔料は、バックグラウンド値が、この値の平方根の3倍を超えている、強度Iを有するシグナルSを有している。
【0042】
本発明の金属アゾ顔料は、式(III)のアルカリ金属塩、またはそれらの互変異性体、好ましくはそれらのナトリウム塩またはカリウム塩を、式(II)の少なくとも1種の化合物の存在下に、ニッケル塩および銅塩、ならびに任意選択で、亜鉛塩、アルミニウム塩、鉄塩、およびコバルト塩の群からの1種または複数の金属塩と反応させることによって調製することができる。
【0043】
本発明の金属アゾ顔料はさらに、その中のMeがNi2+である式(I)の金属アゾ化合物のアダクトと、その中のMeがCu2+である式(I)の金属アゾ化合物のアダクトと、かつ任意選択で、その中のMeがZn2+、Al3+ 2/3、Fe2+、Fe3+ 2/3、Co2+、およびCo3+ 2/3の群からの金属イオンである式(I)の金属アゾ化合物のアダクトとを混合することによって調製することもまた可能である。
【0044】
本発明はさらに、本発明の金属アゾ顔料を製造するためのプロセスも提供するが、それが特徴としているのは、式(III)、またはその互変異性体の少なくとも1種の化合物を、
【化6】
[式中、
Xは、アルカリ金属イオン、好ましくはナトリウムイオンまたはカリウムイオンであり、
およびRはそれぞれ独立して、OH、NHまたはNHRであり、
およびRはそれぞれ独立して、=Oまたは=NRであり、
かつ
は、水素またはアルキル、好ましくはC~C-アルキルである]
式(II)の少なくとも1種の化合物の存在下に、少なくとも1種のニッケル塩および少なくとも1種の銅塩および任意選択で、銅塩、アルミニウム塩、鉄塩、およびコバルト塩の群からの少なくとも1種のさらなる金属塩と、同時または逐次に反応させるが、ここで、式(III)の化合物1モルあたり、0.05~0.95モルの少なくとも1種のニッケル塩、0.05~0.95モルの少なくとも1種の銅塩、および0.05~0モルの、亜鉛塩、アルミニウム塩、鉄塩、およびコバルト塩の群からの少なくとも1種の金属塩を使用し、かつ、亜鉛塩、アルミニウム塩、鉄塩、およびコバルト塩の群からの金属塩を使用する場合においては、銅塩およびニッケル塩の量は、使用される銅塩、ニッケル塩、亜鉛塩、アルミニウム塩、鉄塩、およびコバルト塩を合計したモル量が100モル%になるようにする。
【0045】
好ましくは、式(III)の化合物1モルあたり0.2~0.9モルの少なくとも1種のニッケル塩および0.1~0.8モルの少なくとも1種の銅塩が使用される。
【0046】
最も好ましくは、式(III)の化合物1モルあたり0.35~0.75モルの少なくとも1種のニッケル塩および0.25~0.65モルの少なくとも1種の銅塩が使用される。
【0047】
一般的には、本発明のプロセスは、式(III)の化合物1モルあたり、0.05~4モル、好ましくは0.5~2.5モル、最も好ましくは1.0~2.0モルの式(II)の化合物を使用して実施される。
【0048】
別の方法として、調製の際に、式(III)のジ-アルカリ金属化合物に代えて、式(IIIa)のモノ-アルカリ金属化合物もしくはその互変異性体、
【化7】
[式中、X、R、R、R、およびRは、式(III)で与えられた定義を有する]
または、式(III)および(IIIa)の化合物の混合物を使用することもまた可能である。それらの場合においては、記述されたニッケル塩および銅塩の量および式(II)の化合物のモル量が、使用された化合物(III)および(IIIa)を合計したモル量に関連する。
【0049】
特に好ましいのは、二元のニッケル/銅アゾバルビツル酸-メラミンアダクトの調製である。本発明のプロセスは、一般的には、7未満のpHの水溶液中、60~95℃の温度で実施される。本発明において使用されるニッケル塩および銅塩、ならびに、亜鉛塩、アルミニウム塩、鉄塩、およびコバルト塩の群から使用されるさらなる金属塩は、好ましくは水溶液の形態において、個別に使用することも、あるいは相互の混合物として使用することもできる。式(II)の化合物も同様に、好ましくは固体の形態において、個別に添加することも、あるいは相互の混合物として添加することもできる。
【0050】
一般的には、本発明のプロセスは、好ましくはナトリウム塩またはカリウム塩としての、式(III)のアゾ化合物を最初に仕込み、インターカーレートされるか添加される式(II)の1種または複数の化合物、好ましくはメラミンを添加し、次いで、少なくとも1種のニッケル塩および少なくとも1種の銅塩および任意選択で、1種または複数の亜鉛塩、アルミニウム塩、鉄塩、およびコバルト塩の群からの金属塩を用い、好ましくはそれらの塩の水溶液の形態で、好ましくは7未満のpH値で、反応を連続的または同時的に起こさせる。pHを調節するのに適した物質は、水酸化ナトリウム溶液、水酸化カリウム溶液、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、および炭酸水素カリウムである。
【0051】
有用なニッケル塩および銅塩としては、好ましくはそれらの水溶性の塩、特には塩化物、臭化物、酢酸塩、ギ酸塩、硝酸塩、硫酸塩などが挙げられる。好適に使用されるニッケル塩および銅塩は、20℃で、20g/Lを超える、特には50g/Lを超える水溶解度を有している。
【0052】
有用な、亜鉛塩、アルミニウム塩、鉄塩、およびコバルト塩の群からのさらなる金属塩としては、好ましくはそれらの水溶性の塩、特にはそれらの塩化物、臭化物、酢酸塩、硝酸塩、および硫酸塩、好ましくはそれらの塩化物が挙げられる。
【0053】
このようにして得られた本発明の金属アゾ顔料は、次いで、それらの水性懸濁液を濾過することにより、水性フィルターケーキとして単離することができる。このフィルターケーキは、たとえば熱水を用いて洗浄してから、標準的な乾燥方法によって乾燥させることができる。
【0054】
有用な乾燥方法としてはたとえば、相当する水性スラリーのパドル乾燥または噴霧乾燥が挙げられる。
【0055】
その後で、その顔料を再粉砕することも可能である。
【0056】
本発明の金属アゾ顔料が、極端に硬い粒子を有していたり、硬すぎて所望の用途で分散させるのが困難であったりした場合には、たとえば独国特許出願公開第A19 847 586号明細書に記載されている方法によって、それらを軟質粒子の顔料に転換させることもできる。
【0057】
本発明はさらに、本発明の金属アゾ顔料を製造するためのプロセスも提供するが、それは以下の方法を特徴としている:
(i)以下の少なくとも1種のアダクトを、
a1)先に特定された式(I)の金属アゾ化合物
[式中、
、R、R、R、およびRは、先に特定された一般的および好ましい定義を有し、
かつ
Meは、Cu2+である]
および
b1)先に特定された式(II)の少なくとも1種の化合物(式中、Rは、先に与えられた一般的および好ましい定義を有する)
を、以下のものと混合するが、
(ii)以下の少なくとも1種のアダクト、
a2)先に特定された式(I)の金属アゾ化合物
[式中、
、R、R、R、およびRは、先に特定された一般的および好ましい定義を有し、
かつ
Meは、Ni2+である]
および
b2)先に特定された式(II)の少なくとも1種の化合物(式中、Rは、先に与えられた一般的および好ましい定義を有する)
および任意選択で
(iii)以下の少なくとも1種のアダクト、
a3)先に特定された式(I)の金属アゾ化合物
[式中、
、R、R、R、およびRは、先に特定された一般的および好ましい定義を有し、
および
Meは、Zn2+、Al3+ 2/3、Fe2+、Fe3+ 2/3、Co2+、およびCo3+ 2/3の群からの金属イオンである]
および
b3)先に特定された式(II)の少なくとも1種の化合物(式中、Rは、先に与えられた一般的および好ましい定義を有する)
ここで、アダクトa1)/b1)の1モルあたり、0.05~19モルのアダクトa2)/b2)を使用し、アダクトa1)/b1)およびa2)/b2)のモル量を総計したものを基準にして、0~0.05モルのアダクトa3)/b3)を使用する。
【0058】
また別の実施形態においては、式(I)の化合物の総計におけるCu2+対Ni2+の金属イオンのモル比が、(19:1)から(1:5)まで、より好ましくは(4:1)から(1:5)まで、特には(2:1)から(1:3)までであるが、この代替え実施形態は、上述の調製方法に従い、アダクトa1)/b1)の1モル当たり0.05~5モルのアダクトa2)/b2)を使用し、アダクトa1)/b1)およびa2)/b2)のモル量の総計を基準にして0~0.05モルのアダクトa3)/b3)を使用して実施される。
【0059】
二元アダクト混合物を調製するのが好ましく、その場合、アダクトa1)/b1)の1モルあたり0.25~9モルのアダクトa2)/b2)、好ましくはアダクトa1)/b1)の1モルあたり0.5~3モルのアダクトa2)/b2)を使用する。
【0060】
さらなる代替え実施形態の場合においては、二元アダクト混合物を調製するのが好ましく、その場合、アダクトa1)/b1)の1モルあたり0.25~5モルのアダクトa2)/b2)、好ましくはアダクトa1)/b1)の1モルあたり0.5~3モルのアダクトa2)/b2)を使用する。
【0061】
本発明の金属アゾ顔料は、特に良好な分散性および高い色強度を特徴としている。彩度および透明度は、すぐれた適合性を有している。
【0062】
本発明の金属アゾ顔料は、すべての顔料用途において、特にはそれらの顔料調製物の形態において、優れた適性を有している。
【0063】
本発明はさらに、少なくとも1種の本発明の金属アゾ顔料ならびに少なくとも1種の助剤および/または添加剤を含む顔料調製物を提供する。
【0064】
有用な助剤または添加剤としては、一般的には、顔料調製物で慣用される添加物すべてが含まれるが、たとえば分散剤、界面活性剤、湿潤剤、乳化剤のような表面活性剤の群からのもの、ならびに表面被覆剤、塩基、および溶媒の群からのものが挙げられる。原理的には、助剤または添加剤は、目的とする系の性質に合わせる。その目的の系が、たとえばラッカーまたは印刷インキであるならば、その助剤または添加剤は、その目標の系との相溶性が最大になるように選択される。
【0065】
本発明の顔料調製物が少なくとも1種の表面活性剤を含んでいるのが好ましい。
【0066】
本発明の文脈において「表面活性剤」とは、特には、水性媒体中で顔料粒子を、それらの微細な微粒子形態で安定化させる分散剤を意味していると理解されたい。「微細な微粒子」とは、好ましくは0.001~5μm、特には0.005~1μm、より好ましくは0.005~0.5μmの微細な分布を意味していると理解されたい。本発明の顔料調製物は、微細な微粒子の形態にあるのが好ましい。
【0067】
好適な表面活性剤は、たとえば、アニオン性、カチオン性、両性、またはノニオン性の性質を有している。
【0068】
好適なアニオン性表面活性剤(c)は、特には、芳香族スルホン酸とホルムアルデヒドとの縮合反応生成物、たとえばホルムアルデヒドとアルキルナフタレンスルホン酸との縮合反応生成物、またはホルムアルデヒド、ナフタレンスルホン酸および/またはベンゼンスルホン酸の縮合反応生成物、任意選択で置換されたフェノールとホルムアルデヒドおよび重亜硫酸ナトリウムとの縮合反応生成物である。スルホコハク酸エステルおよびアルキルベンゼンスルホネートの群からの表面活性剤もまた好適である。さらには、イオン的に変性された、特にはスルホン化またはカルボキシレート化された、アルコキシル化脂肪酸アルコールまたはそれらの塩が挙げられる。「アルコキシル化脂肪酸アルコール」とは、特には、5~120、好ましくは5~60、特には5~30モルのエチレンオキシドを付加させた、飽和または不飽和のC~C22脂肪酸アルコールを意味していると理解されたい。それらに加えて有用なのは、特にリグノスルホネートであるが、それらはたとえば、亜硫酸法またはクラフト法プロセスで得られる。
【0069】
それらは、部分加水分解化、酸化、プロポキシル化、スルホン化、スルホメチル化、または脱スルホン化された製品、および公知の方法によって、たとえば分子量またはスルホン化度で分別された製品であるのが好ましい。亜硫酸法およびクラフト法のリグノスルホネートを混合したものもまた、極めて有効である。特に好ましいのは、1000~100000g/モルの間の平均分子量を有し、活性リグノスルホネート含量が少なくとも80重量%で、好ましくは、多価カチオンの含量の低いリグノスルホネートである。スルホン化度は、広い範囲で変化させることが可能である。
【0070】
有用なノニオン性表面活性剤の例としては以下のものが挙げられる:アルキレンオキシドと、アルキル化が可能な化合物、たとえば、脂肪族アルコール、脂肪アミン、脂肪酸、フェノール、アルキルフェノール、アリールアルキルフェノール、たとえばスチレン-フェノール縮合物、カルボキサミド、および樹脂酸との反応生成物。それらは、たとえば、エチレンオキシドと以下のものとの反応生成物のクラスからのエチレンオキシドアダクトである:
1)6~22個の炭素原子を有する飽和および/または不飽和の脂肪族アルコール、または
2)そのアルキル基中に4~12個の炭素原子を有するアルキルフェノール、または
3)14~20個の炭素原子を有する飽和および/または不飽和の脂肪アミン、または
4)14~20個の炭素原子を有する飽和および/または不飽和の脂肪酸、または
5)水素化および/または非水素化樹脂酸。
【0071】
有用なエチレンオキシドアダクトとしては、特には、5~120モル、特には5~100モル、特には5~60、より好ましくは5~30モルのエチレンオキシドを有する、1)~5)に述べたアルキル化可能な化合物が挙げられる。
【0072】
同様に好適な表面活性剤は、独国特許出願公開第A19 712 486号明細書または独国特許出願公開第A19 535 246号明細書から公知の、式(X)のアルコキシル化反応生成物のエステルであるが、そのものは、式(XI)に相当し、後者は、任意選択で、親化合物の式(X)との混合物である。式(X)のスチレン-フェノール縮合物のアルコキシル化反応生成物は、次式で定義される:
【化8】
[式中、
15は、水素またはC~C-アルキルであり、
16は、水素またはCHであり、
17は、水素、C~C-アルキル、C~C-アルコキシ、C~C-アルコキシカルボニル、またはフェニルであり、
mは、1~4の数であり、
nは、6~120の数であり、
18は、nで示されたそれぞれの単位で同一であっても異なっていてもよく、水素、CH、またはフェニルであるが、ここで、異なった-(-CH-CH(R18)-O-)基のいくつかの中にCHが存在している場合には、nの全部の数値の0%~60%の中では、R18がCHであり、nの全部の数値の100%~40%の中では、R18が水素であり、また異なった-(-CH-CH(R18)-O-)基のいくつかの中にフェニルが存在している場合には、nの全部の数値の0%~40%の中ではR18がフェニルであり、nの全部の数値の100%~60%の中ではR18が水素である。
【0073】
アルコキシル化反応生成物(X)のエステルは、式(XI)に相当する。
【化9】
[式中、
15’、R16’、R17’、R18’、m’、およびn’は、R15、R16、R17、R18、mおよびnの定義の範囲とみなされるが、ただし、それらからは独立しており、
Xは、-SO、-SO、-PO、または-CO-(R19)-COO基であり、
Katは、H、Li、Na、K、NHまたはHO-CHCH-NHの群からのカチオンであるが、X=-POの場合においては二つのKatが存在し、かつ
19は、二価の脂肪族または芳香族の基、好ましくはC~C-アルキレン、特にはエチレン、C~Cモノ不飽和基、特にはアセチレン、または任意選択で置換されたフェニレン、特にはオルト-フェニレンであるが、ここで可能な置換基としては、好ましくは、C~C-アルキル、C~C-アルコキシ、C~C-アルコキシカルボニルまたはフェニルが挙げられる。
【0074】
使用するのに好ましい表面活性剤は、式(XI)の化合物である。Xが式-CO-(R19)-COOの基であり、R19が先に定義されたものである、式(XI)の化合物が好ましい。
【0075】
表面活性剤として、式(XI)の化合物を式(X)の化合物と共に使用するのも同様に好ましい。この場合、その表面活性剤に、5%~99重量%の化合物(XI)と1%~95重量%の化合物(X)とが含まれているのが好ましい。
【0076】
成分(c)の表面活性剤は、顔料調製物の中で、使用される本発明の金属アゾ顔料を基準にして0.1%~100重量%、特には0.5%~60重量%の量で使用するのが好ましい。
【0077】
本発明の顔料調製物にさらに、さらなる添加剤が含まれていてもよいということも考えられるであろう。たとえば、水性懸濁液の粘度を低下させるか、および/または固形分含量を増大させるような添加物、たとえばカルボキサミドおよびスルホンアミドを、顔料調製物を基準にして、10重量%までの量で添加してもよい。
【0078】
さらなる添加物は、たとえば、無機および有機の塩基、および顔料調製物で慣用される添加物である。
【0079】
塩基としては以下のものが挙げられる:アルカリ金属水酸化物、たとえばNaOH、KOH、または有機アミン、たとえばアルキルアミン、特にはアルカノールアミンまたはアルキルアルカノールアミン。
【0080】
特に好ましい例としては以下のものが挙げられる:メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エタノールアミン、n-プロパノールアミン、n-ブタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルエタノールアミン、またはジメチルエタノールアミン。
【0081】
好適なカルボキサミドおよびスルホンアミドの例としては以下のものが挙げられる:尿素および置換された尿素たとえば、フェニル尿素、ドデシル尿素など;複素環化合物たとえば、バルビツール酸、ベンズイミダゾロン、ベンズイミダゾロン-5-スルホン酸、2,3-ジヒドロキシキノキサリン、2,3-ジヒドロキシキノキサリン-6-スルホン酸、カルバゾール、カルバゾール-3,6-ジスルホン酸、2-ヒドロキシキノリン、2,4-ジヒドロキシキノリン、カプロラクタム、メラミン、6-フェニル-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン、6-メチル-1,3,5-トリアジン-2,4-ジアミン、シアヌル酸。
【0082】
塩基は、任意選択で、顔料を基準にして20重量%まで、好ましくは10重量%までの量で存在させる。
【0083】
それらに加えて、本発明の顔料調製物にはさらに、その調製法の結果としての無機塩および/または有機塩が含まれていてもよい。
【0084】
本発明の顔料調製物は、室温で固体であるのが好ましい。本発明の顔料調製物が、粉末または粒子の形状であれば、さらに好ましい。
【0085】
本発明の顔料調製物は、すべての顔料用途において優れた適合性を有している。
【0086】
本発明はさらに、印刷インキ、水性塗料、またはエマルションペイントを製造するためのあらゆる種類のラッカーを顔料着色するため、紙をバルク着色するため、合成、半合成または天然の高分子物質たとえば、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエチレン、またはポリプロピレンをバルク着色するための、少なくとも1種の本発明の金属アゾ顔料の使用または本発明の顔料調製物の使用も提供する。それらは、天然繊維、再生繊維、または合成繊維、たとえばセルロース、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリルまたはポリアミド繊維を原液着色するため、ならびに、織物および紙を捺染するために使用することもできる。ノニオン性、アニオン性またはカチオン性の界面活性剤の存在下に摩砕または混練することによって、それらの顔料を使用して、エマルションペイントのための、微細に分散され、安定な水性顔料着色、ならびに、紙の着色のため、織物の顔料捺染のため、ラミネート捺染のため、またはビスコースの原液着色のために使用することが可能なその他のペイントを製造することが可能となる。
【0087】
本発明の金属アゾ顔料はさらに、インクジェット用途のため、および液晶ディスプレイのためのカラーフィルターのための、優れた適合性も有している。
【0088】
同様に好ましい実施形態においては、本発明の顔料調製物には、テルペン、テルペノイド、脂肪酸、脂肪酸エステル、ならびにホモポリマーもしくはコポリマー、たとえば、pH中性の水に20℃で1g/L未満、特には0.1g/L未満の溶解性を有する、ランダムもしくはブロックコポリマーから選択される、少なくとも1種の有機化合物(d)が含まれている。その有機化合物(d)は、室温(20℃)標準大気圧下で固体または液体であるのが好ましく、それが液体であるならば、100℃を超える、特には150℃を超える沸点を有しているのが好ましい。
【0089】
好適なポリマーは、親水性と疎水性の両方の性質を有しており、好ましくはポリマー性の、分子残基である。そのようなポリマーの例は、脂肪酸もしくは長鎖のC12~C22炭化水素およびポリアルキレングリコール、特にはポリエチレングリコールをベースとするランダムコポリマーである。さらに、(ポリ)ヒドロキシ脂肪酸およびポリアルキレングリコール、特にはポリエチレングリコールをベースとするブロックコポリマー、さらにはポリ(メタ)アクリレートおよびポリアルキレングリコール、特にはポリエチレングリコールをベースとするグラフトコポリマーも挙げられる。
【0090】
テルペン、テルペノイド、脂肪酸、および脂肪酸エステルの群からの好ましい化合物としては、以下のものが挙げられる:オシメン、ミルセン、ゲラニオール、ネロール、リナロオール、シトロネロール、ゲラニアール、シトロネラール、ネラール、リモネン、メントール、たとえば(-)-メントール、メントン、または二環式モノテルペン、6~22個の炭素原子を有する飽和および不飽和脂肪酸、たとえばオレイン酸、リノール酸、およびリノレン酸、またはそれらの混合物。
【0091】
成分(d)の有機化合物として有用なものはさらに、上述のアダクト形成剤が挙げられるが、ただし、それらは成分(d)の化合物として望ましい判定基準に従っていなければならない。
【0092】
特に好ましい顔料調製物には、以下のものが含まれている:
50%~99重量%の、少なくとも1種の本発明の金属アゾ顔料、および
1%~50重量%、好ましくは2%~50重量%の、少なくとも1種の成分(d)の化合物。
【0093】
任意選択で、本発明の顔料調製物にはさらに、表面活性剤(c)が含まれる。
【0094】
本発明の調製物が、90重量%を超える、好ましくは95重量%を超える、特には97重量%を超える量の少なくとも1種の本発明の金属アゾ顔料、少なくとも1種の成分(d)の有機化合物、および任意選択で、少なくとも1種の成分(c)の表面活性剤、さらに任意選択で少なくとも1種の塩基からなっているのが、より好ましい。
【0095】
この組成物における本発明の顔料調製物は、インクジェットインキおよび液晶ディスプレイのためのカラーフィルターの顔料着色には特に適している。
【0096】
本発明はさらに、本発明の顔料調製物を製造するためのプロセスも提供するが、それが特徴としているのは、少なくとも1種の本発明の金属アゾ顔料および少なくとも1種の助剤または添加剤、特には少なくとも1種の成分(d)の有機化合物、および任意選択で少なくとも1種の成分(c)の表面活性剤、および任意選択で少なくとも1種の塩基を、相互に混合することにある。
【0097】
同様に本発明は、本発明の金属アゾ顔料の使用、または液晶ディスプレイのためのカラーフィルターを製造するための本発明の顔料調製物の使用も提供する。この使用に関しては、フォトレジストプロセスによる顔料分散方法の例を使用して後に説明するであろう。
【0098】
カラーフィルターを製造するための本発明の顔料調製物の本発明の使用は、次の点を特徴としている:たとえば、少なくとも1種の本発明の金属アゾ顔料または本発明の顔料調製物、特には固体の顔料調製物を、任意選択でバインダー樹脂および有機溶媒を用い、任意選択で分散剤を添加して均質化させ、次いで、連続法またはバッチ法で湿式摩砕して、数による粒子サイズ(電子顕微鏡測定)で、99.5%が1000nm未満、好ましくは95%が500nm未満、特には90%が200nm未満になるようにする。
【0099】
有用な湿式摩砕方法としては、たとえば、スターラーもしくはディスソルバー分散、撹拌ボールミルまたはビーズミルの手段による摩砕、ニーダー、ロールミル、高圧均質化または超音波分散が挙げられる。
【0100】
分散処理の途中またはその後に、少なくとも1種の光硬化性モノマーおよび光重合開始剤を添加する。分散をさせた後では、カラーフィルターを製造するための所望の感光性コーティング配合物(フォトレジスト)で必要とされる、フォトレジストのために慣用される、さらなるバインダー樹脂、溶媒、または混合物を導入することが可能となる。本発明の文脈においては、「フォトレジスト」とは、少なくとも1種の光硬化性モノマーおよび光重合開始剤を含む調製物を意味していると理解されたい。
【0101】
本発明はさらに、液晶ディスプレイのためのカラーフィルターを製造するためのプロセスも提供するが、それは以下の点を特徴としている:少なくとも1種の本発明の金属アゾ顔料または本発明の顔料調製物を、任意選択でバインダー樹脂および有機溶媒を用い、任意選択で分散剤を添加して均質化し、次いで連続法またはバッチ法で湿式摩砕して、数による粒子サイズ(電子顕微鏡測定)で、99.5%が1000nm未満になるようにし、かつ、その分散処理の途中またはその後に、少なくとも1種の光硬化性モノマーおよび光重合開始剤を添加する。
【0102】
有用で可能な分散剤としては、この用途には好適であり、一般的に市場で入手可能な分散剤、たとえばポリマー性、イオン性、またはノニオン性分散剤、たとえばポリカルボン酸またはポリスルホン酸をベースとするもの、さらには、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドブロックコポリマーなどが挙げられる。さらに、分散剤または共分散剤として、有機染料の誘導体を使用することもまた可能である。
【0103】
したがって、カラーフィルターの製造は、以下の配合をベースとする「配合物」をもたらす:
- 少なくとも1種の本発明の金属アゾ顔料、
- 任意選択でバインダー樹脂、
- 少なくとも1種の有機溶媒、および
- 任意選択で分散剤。
【0104】
一つの好ましい実施形態においては、その配合には以下のものが含まれる(数字は配合物基準):
1%~50重量%の本発明の金属アゾ顔料
0%~20重量%のバインダー樹脂
0%~20重量%の分散剤
10%~94重量%の有機溶媒。
【0105】
着色画像要素パターンを製造するための、プレート上へのフォトレジストのコーティングは、直接塗布または間接塗布のいずれかで実施することができる。塗布方法の例としては以下のものが挙げられる:ローラーコーティング、スピンコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、およびエアナイフコーティング。
【0106】
本出願に関連して有用なプレートとしては、たとえば以下のものが挙げられる:透明ガラスたとえば、白色もしくは青色ガラスプレート、シリケートコーティングした青色ガラスプレート、たとえばポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂または塩化ビニル樹脂をベースとする合成樹脂プレートまたはフィルム、さらには、アルミニウム、銅、ニッケルまたは鋼をベースとする金属プレート、およびセラミックプレート、または塗布された光電伝達要素を有する半導体プレート。
【0107】
その塗布は、一般的には、得られる感光性の層の層厚が0.1~10μmになるように実施される。
【0108】
塗布の後に、その層を加熱乾燥させてもよい。
【0109】
露光は、その感光性層を、活性な光線に好ましくはフォトマスクの手段によって、画像パターンの形状に曝露させることによって実施するのが好ましい。これによって、露光された部分で層の硬化が起きる。適切な光源としては、たとえば以下のものが挙げられる:高圧および超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、蛍光ランプ、および可視領域のレーザービーム。
【0110】
露光の後の現像で、そのコーティングの露光されなかった部分を除去し、その着色要素の所望の画像パターンフォームを得る。標準的な現像方法には、水性のアルカリ性顕色剤溶液、または無機アルカリ、たとえば水酸化ナトリウムもしくは水酸化カリウム、メタケイ酸ナトリウム、または有機塩基たとえば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミンもしくはそれらの塩を含む有機溶媒を用いてスプレーするか、またはそれらの中へ浸漬させることが含まれる。
【0111】
一般的には、現像に続けて、それらの画像パターンの、加熱による後乾燥/硬化が実施される。
【0112】
本発明の金属アゾ顔料の使用は、好ましくは、次の点を特徴としている:それらは、単独で使用されるか、またはカラーフィルターにおけるカラーフィルターの製造で慣用されるその他の顔料、またはカラーフィルターのための顔料調製物もしくは配合物との混合物で使用される。
【0113】
これらの「その他の顔料」は、式(I)のアゾ化合物の金属塩、またはそれらをベースとする顔料調製物、または他の無機もしくは有機の顔料のいずれであってもよい。
【0114】
同様に使用される各種の他の顔料の選択に関しては、本発明においては何の制限もない。無機顔料および有機顔料のいずれもが有用である。
【0115】
好ましい有機顔料は、たとえば、モノアゾ、ジスアゾ、レーキドアゾ、β-ナフトール、ナフトールAS、ベンズイミダゾロン、ジスアゾ縮合物、アゾ金属錯体、イソインドリンおよびイソインドリノン類のもの、さらにはたとえばフタロシアニン、キナクリドン、ペリレン、ペリノン、チオインジゴ、アントラキノン、ジオキサジン、キノフタロン、およびジケトピロロピロール類からの多環式の顔料である。さらには、スルホ含有またはカルボキシル含有染料のCa、Mg、およびAlレーキのようなレーキ染料である。
【0116】
任意選択でさらに使用することが可能なその他の有機顔料の例は、以下のものである:
カラー・インデックス・ピグメント・イエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、94、109、110、117、125、137、138、139、147、148、150、153,154、166、173,185、または
カラー・インデックス・ピグメント・オレンジ13,31、36、38,40,42,43、51,55、59、61,64、65、71、72、73、または
カラー・インデックス・ピグメント・レッド9、97、122、123、144、149、166、168、177、180、192、215、216、224、254、272、または
カラー・インデックス・ピグメント・グリーン7、10、36、37、45,58、または
カラー・インデックス・ピグメント・ブルー15,15:1,15:2,15:3、15:4、15:6,16、および
カラー・インデックス・ピグメント・バイオレット19、23。
【0117】
さらに、本発明の新規な顔料と組み合わせて、可用性の有機染料を使用することもまた可能である。
【0118】
「その他の顔料」を追加で使用するのならば、本発明の金属アゾ顔料の割合は、使用するすべての顔料を合計した量を基準にして、好ましくは1%~99重量%、特には20%~80重量%である。特に好ましいのは、本発明の顔料調製物ならびに、少なくとも1種の本発明の金属アゾ顔料と、C.I.ピグメント・グリーン36および/またはC.I.ピグメント・グリーン58とを、20%~80重量%の金属アゾ顔料対80%~20重量%のC.I.ピグメント・グリーン36および/またはC.I.ピグメント・グリーン58、好ましくは(40%~60重量%)対(60%~40重量%)の比率で含む配合物である。
【0119】
カラーフィルターにおいて、またはカラーフィルターをたとえば顔料分散法で製造するための配合物において、「顔料」またはそれをベースとする顔料調製物と共に使用することが可能なバインダー樹脂としては、本発明においてはなんら特定の制約はなく、有用なバインダー樹脂は、特には、カラーフィルターにおいて使用するための、自体公知の塗膜形成性の樹脂である。
【0120】
たとえば、有用なバインダー樹脂としては以下のものが挙げられる:セルロース樹脂たとえばカルボキシメチルヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロース、アクリル樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアミド、ポリアミドイミン、ポリイミド、ポリイミド前駆体たとえば、特開平11-217514号公報に開示されている式(14)のもの、ならびにそれらのエステル化反応生成物の群からのもの。
【0121】
それらの例としては、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応生成物が挙げられる。
【0122】
有用なバインダー樹脂としてはさらに、光重合性不飽和結合を含むものが挙げられる。バインダー樹脂は、たとえば、アクリル樹脂から形成させたものであってもよい。ここで特に挙げておくべきものは、重合性モノマー、たとえば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、スチレンおよびスチレン誘導体のホモポリマーおよびコポリマー、ならびにさらには、カルボキシル担持重合性モノマーたとえば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、特に1~12個の炭素原子を有するアルキルを含むマレイン酸モノアルキルと、重合性モノマーたとえば(メタ)アクリル酸、スチレン、およびスチレン誘導体、たとえばα-メチルスチレン、m-もしくはp-メトキシスチレン、p-ヒドロキシスチレンとの間のコポリマーである。例としては以下のものが挙げられる:カルボキシル含有ポリマー性化合物と、オキシラン環およびエチレン性不飽和結合をそれぞれ含む化合物、たとえば(メタ)アクリル酸グリシジル、アクリロイルグリシジルエーテル、およびイタコン酸モノアルキルグリシジルエーテルなどとの反応生成物、さらには、カルボキシル含有ポリマー性化合物と、ヒドロキシル基およびエチレン性不飽和結合(不飽和アルコール)をそれぞれ含む化合物、たとえばアリルアルコール、2-ブテン-4-オール、オレイルアルコール、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、N-メチロールアクリルアミドなどとの反応生成物。さらには、そのようなバインダー樹脂には、遊離のイソシアネート基を有する不飽和化合物が含まれていてもよい。
【0123】
十分な光重合性と膜硬度の両方を達成させるためには、上述のバインダー樹脂の不飽和当量(不飽和化合物あたりのバインダー樹脂のモル質量)を、一般的には200~3000、特には230~1000とする。膜を露光させた後で十分なアルカリ現像性能を発揮させるためには、その酸価を、一般的には20~300、特には40~200とする。
【0124】
使用するためのバインダー樹脂の平均モル質量は、1500~200000g/molの間、特には10000~50000g/molの間である。
【0125】
カラーフィルターのための本発明の顔料調製物において使用される有機溶媒は、たとえば、ケトン、アルキレングリコールエーテル、アルコール、および芳香族化合物である。例を以下に挙げる:ケトンの群からは、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなど;アルキレングリコールエーテルの群からは、メチルセロソルブ(エチレングリコールモノメチルエーテル)、ブチルセロソルブ(エチレングリコールモノブチルエーテル)メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールイソプロピルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールt-ブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールイソプロピルエーテルアセテート、トリエチレングリコールブチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールt-ブチルエーテルアセテートなど;アルコールの群からは、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n-ブチルアルコール、3-メチル-3-メトキシブタノールなど;芳香族溶媒の群からは、ベンゼン、トルエン、キシレン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシメチル-2-酢酸エチルなど。
【0126】
さらにその他の溶媒は、プロパン-1,2-ジオールジアセテート、酢酸3-メチル-3-メトキシブチル、酢酸エチル、テトラヒドロフランなどである。溶媒は単独で使用することもできるし、あるいは相互の混合物として使用することもできる。
【0127】
本発明はさらに、少なくとも1種の本発明の金属アゾ顔料または少なくとも1種の本発明の顔料調製物、ならびに少なくとも1種の光硬化性モノマーおよび少なくとも1種の光重合開始剤を含むフォトレジストにも関する。
【0128】
その光硬化性モノマーには、その分子の中に、少なくとも1個の反応性二重結合と、任意選択で他の反応性基が含まれている。
【0129】
特にこれに関して「光硬化性モノマー」とは、たとえば、一官能、二官能、三官能および多官能のアクリレートおよびメタクリレート、ビニルエーテル、ならびにグリシジルエーテルの群からの、反応性溶媒または反応性希釈剤と呼ばれているものを意味していると理解されたい。追加として存在させる有用な反応性基としては以下のものが挙げられる:アリル、ヒドロキシル、ホスフェート、ウレタン、二級アミン、およびN-アルコキシメチル基。
【0130】
このタイプのモノマーは、当業者には公知であって、たとえば、Roempp Lexikon,Lacke und Druckfarben,Dr.Ulrich Zorll,Thieme Verlag Stuttgart-New York,1998,p.491/492に詳細に記載されている。
【0131】
モノマーの選択は、特には、露光に使用される照射線のタイプの性質および強度、光重合開始剤との所望の反応、ならびにその膜の性能に基づく。モノマーを組み合わせて使用することもまた可能である。
【0132】
「光反応開始剤」または「光重合開始剤」とは、たとえば上述のモノマーおよび/またはバインダー樹脂の重合反応を開始させることが可能な、可視光線または紫外線を吸収した結果として、反応性中間体を生成する化合物を意味していると理解されたい。光反応開始剤もまた同様に広く一般に知られており、同様に、Roempp Lexikon,Lacke und Druckfarben,Dr.Ulrich Zorll,Thieme Verlag Stuttgart-New York,1998,p.445/446に見いだすことができる。
【0133】
本発明においては、使用される光硬化性モノマーまたは光重合開始剤に関しては、何の制限もない。
【0134】
本発明は、好ましくは、以下のものを含むフォトレジストに関する:
A)少なくとも1種の本発明の金属アゾ顔料、特には他の顔料、好ましくはC.I.ピグメント・グリーン36および/またはピグメント・グリーン58との混合物の形態にあるもの、またはそれらをベースとする本発明の顔料調製物、
B1)少なくとも1種の光硬化性モノマー、
B2)少なくとも1種の光重合開始剤、
C1)任意選択で、有機溶媒、
D)任意選択で、分散剤、
E)任意選択で、バインダー樹脂、
ならびに、任意選択で、さらなる添加物。
【0135】
本発明においては、この場合もまた、本発明において使用するための顔料または固形の顔料調製物をベースとした着色画像要素パターンを製造するための方法に関しては、何の制限もない。上述の光リソグラフィ法と同様に、その他の方法たとえば、オフセット印刷、化学エッチング、インクジェット印刷なども同様に好適である。適切なバインダー樹脂および溶媒の選択、ならびに顔料分散媒およびさらなる添加物の選択は、具体的な方法にマッチさせるようにするべきである。インクジェット方法(これには、加熱式および機械式およびピエゾメカニカルインクジェット印刷のすべてを含むと理解されたい)においては、顔料および各種のバインダー樹脂のために有用な分散媒は、純粋な有機分散媒だけでなく、水性-有機分散媒もあり、実際のところ水性-有機分散媒が好ましい。
【0136】
以下の実施例は、本発明を説明することを目的としているが、本発明がそれらに限定される訳ではない。
【実施例
【0137】
方法1(アゾバルビツル酸前駆体の調製)
46.2gのジアゾバルビツル酸および38.4gのバルビツール酸を、1100gの蒸留水の中に85℃で導入する。次いで、水酸化カリウム水溶液を使用して、pHを約5とし、その混合物を90分間撹拌した。
【0138】
実施例1:
方法1に従って調製したアゾバルビツル酸に、82℃で、1500gの蒸留水を添加した。その後に、75.7gのメラミンを導入した。次いで、0.3モルの塩化銅(II)溶液(約30%)を滴下により添加した。82℃で3時間経過してから、KOHを使用して、pHを約5.5とした。その後に、約300gの蒸留水を用い、90℃で希釈を実施した。次いで、34gの30%塩酸を滴下により添加し、その混合物を、90℃で12時間、加熱処理した。その後に、水酸化カリウム水溶液を使用して、pHを5とした。次いで、吸引ロート上で顔料を単離し、洗浄し、真空乾燥キャビネット中80℃で乾燥させ、標準的な実験室用ミルの中で、約2分間かけて摩砕した。(=顔料A)
【0139】
実施例2:
方法1に従って調製したアゾバルビツル酸に、82℃で、1500gの蒸留水を添加した。次いで、10gの30%塩酸を滴下により添加した。その後に、79.4gのメラミンを導入した。次いで、0.3モルの塩化ニッケル溶液(約25%)を滴下により添加した。82℃で3時間経過してから、KOHを使用して、pHを5.5とした。その後に、約100gの蒸留水を用い、90℃で希釈を実施した。次いで、21gの30%塩酸を滴下により添加し、その混合物を、90℃で12時間、加熱処理した。その後に、水酸化カリウム水溶液を使用して、pHを5とした。次いで、吸引ロート上で顔料を単離し、洗浄し、真空乾燥キャビネット中80℃で乾燥させ、標準的な実験室用ミルの中で、約2分間かけて摩砕した。(=顔料B)
【0140】
以下の表1に列記した実施例3~11の本発明の顔料を、実施例2と同様にして作成したが、ただし、それぞれの場合において、塩化ニッケル溶液を、表1に記載されているような塩化ニッケルと塩化銅(II)とからなる混合溶液に置きかえた。
【0141】
【表1】
【0142】
合成例1~11に従って作成した顔料を使用して、表2に記載の試料を調製した。
【0143】
【表2】
【0144】
分散硬度の測定
分散硬度は、DIN 53 775、Part 7に従い、冷ロール温度25℃、熱ロール温度150℃を用いて測定する。本出願で報告する分散硬度はすべて、この修正DIN法によって求めたものである。
【0145】
【表3】
【0146】
表3から明らかなように、非本発明品の試料はすべて、100よりも高い分散硬度を有しており、したがって、本発明品の試料よりも大幅に高い。このことから、非本発明品の試料は、本発明品の試料よりも、分散させるのが困難であり、加工が困難であるということになる。
【0147】
X線回折分析
X線回折の測定は、結晶相を同定するのには好適な、PIXcel検出計を備えた、PANalytical EMPYREAN θ/θ反射回折計を用いて実施した。
【0148】
【表4】
【0149】
手順
合成例1~11に従って作成した顔料を使用して、試料1~20を得た。以下の試料について、X線回折法によって分析した:
試料1:10gの顔料A(100モル%の銅)、非本発明品
試料2:10gの顔料B(100モル%のニッケル)、非本発明品
試料4:10gの顔料D(2モル%の銅/98モル%のニッケル)、非本発明品
試料8:10gの顔料H(25モル%の銅/75モル%のニッケル)、本発明品
試料9:10gの顔料I(50モル%の銅/50モル%のニッケル)、本発明品
試料10:10gの顔料J(75モル%の銅/25モル%のニッケル)、本発明品
試料11:10gの顔料K(95モル%の銅/5モル%のニッケル)、本発明品
試料13:0.2gの顔料Aおよび9.8gの顔料B(2モル%の銅および98モル%のニッケルの物理的混合物)、本発明品
試料15:0.5gの顔料Aおよび9.5gの顔料B(5モル%の銅および95モル%のニッケルの物理的混合物)、非本発明品
試料16:1.5gの顔料Aおよび8.5gの顔料B(15モル%の銅および85モル%のニッケルの物理的混合物)、本発明品
試料17:2.5gの顔料Aおよび7.5gの顔料B(25モル%の銅および75モル%のニッケルの物理的混合物)、本発明品
試料18:5.0gの顔料Aおよび5.0gの顔料B(50モル%の銅および50モル%のニッケルの物理的混合物)、本発明品
試料19:7.5gの顔料Aおよび2.5gの顔料B(75モル%の銅および25モル%のニッケルの物理的混合物)、本発明品
試料20:9.5gの顔料Aおよび0.5gの顔料B(95モル%の銅および5モル%のニッケルの物理的混合物)、本発明品。
【0150】
それぞれのθ/θ測定において、試験すべき量の試料を、試料ホルダーのくぼみに導入した。ガラスプレートの手段により、試料の表面を均した。次いで、試料ホルダーを回折計の試料チェンジャーの中に入れ、測定を実施した。分析した試料のθ値を、上述の方法により求めた。この方法で、試料1、2、4、8、9、10、11、13、15、16、17、18、19、および20の分析を行った。ベースライン補正をほどこした後に得られた反射値を表4~17に示した。
【0151】
【表5】
【0152】
【表6】
【0153】
【表7】
【0154】
【表8】
【0155】
【表9】
【0156】
【表10】
【0157】
【表11】
【0158】
【表12】
【0159】
【表13】
【0160】
【表14】
【0161】
【表15】
【0162】
【表16】
【0163】
【表17】
【0164】
【表18】
【0165】
【表19】
【0166】
表4~17において、第1列には、測定された反射の順で番号がふられている。第2列には、測定された反射の位置が2θ値で表されており、第3列では、測定された2θ値が、Bragg式の手段により、面間隔のためのd値に変換されている。第4列および第5列は、測定された強度の値(ベースラインより上の反射のピーク高さ)であって、最初に、「カウント」[cts]の単位で絶対値を、次いでそれらの相対強度として、パーセントの形で示している。