(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】粘着シートおよび積層体
(51)【国際特許分類】
C09J 7/38 20180101AFI20230630BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20230630BHJP
C09J 133/04 20060101ALI20230630BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20230630BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
C09J7/38
C09J11/04
C09J133/04
B32B27/00 M
C09J11/06
(21)【出願番号】P 2018138816
(22)【出願日】2018-07-24
【審査請求日】2021-04-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 旭平
(72)【発明者】
【氏名】荒井 隆行
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-105830(JP,A)
【文献】特開2016-050288(JP,A)
【文献】国際公開第2010/050527(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2枚の硬質板を互いに貼合するための粘着剤層を有する粘着シートであって、
前記粘着剤層を構成する粘着剤が、
(メタ)アクリル酸エステル重合体またはその架橋物を含有するアクリル系粘着剤であって、帯電防止剤を含有しており、
前記(メタ)アクリル酸エステル重合体が、水酸基含有モノマー由来の構成単位またはカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含有し、
前記(メタ)アクリル酸エステル重合体における水酸基含有モノマー由来の構成単位の含有量が、10質量%以上、30質量%以下であるか、または、前記(メタ)アクリル酸エステル重合体におけるカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位の含有量が、3質量%以上、20質量%以下であり、
前記粘着剤のゲル分率が、64%以上、85%以下であり、
前記粘着剤層の厚さが、30μm以上、500μm以下であり、
前記粘着シートのソーダライムガラスに対する粘着力が、18N/25mm以上である
ことを特徴とする粘着シート。
【請求項2】
前記粘着剤中における前記帯電防止剤の含有量が、0.1質量%以上、10質量%以下であることを特徴とする請求項1に記載の粘着シート。
【請求項3】
前記帯電防止剤が、イオン性化合物であることを特徴とする請求項1または2に記載の粘着シート。
【請求項4】
前記イオン性化合物が、含窒素オニウム塩またはアルカリ金属塩であることを特徴とする請求項3に記載の粘着シート。
【請求項5】
前記含窒素オニウム塩または前記アルカリ金属塩を構成するアニオンが、スルホニルイミド系アニオンまたはハロゲン化リン酸アニオンであることを特徴とする請求項4に記載の粘着シート。
【請求項6】
前記粘着シートが、2枚の剥離シートを備えており、
前記粘着剤層が、前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持されている
ことを特徴とする請求項1~
5のいずれか一項に記載の粘着シート。
【請求項7】
2枚の硬質板と、
前記2枚の硬質板に挟持される粘着剤層と
を備えた積層体であって、
前記粘着剤層が、請求項1~
6のいずれか一項に記載の粘着シートの粘着剤層から形成されたものである
ことを特徴とする積層体。
【請求項8】
前記硬質板の少なくとも1つが、プラスチック板を含むことを特徴とする請求項
7に記載の積層体。
【請求項9】
前記硬質板の少なくとも1つが、前記粘着剤層側の面に段差を有することを特徴とする請求項
7または
8に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2枚の硬質板を貼合するための粘着シート、および当該粘着シートの粘着剤層を使用して得られる積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器のディスプレイパネルとして、表示装置と入力手段とを兼ねたタッチパネルが多く使用されている。タッチパネルの種類には、主として、抵抗膜式、静電容量式、光学式および超音波式があり、抵抗膜式にはアナログ抵抗膜式およびマトリックス抵抗膜式があり、静電容量式には表面型および投影型がある。
【0003】
最近注目されているスマートフォンやタブレット端末等のモバイル電子機器におけるタッチパネルでは、投影型静電容量式のものが多く使用されている。かかるモバイル電子機器における投影型静電容量式のタッチパネルとして、液晶表示装置(LCD)に、各種光学部材を積層したものが使用されることが多い。
【0004】
上記液晶表示装置を構成する主部品としては、一般的に液晶セルが用いられる。液晶セルは、一般に配向層を形成した2枚の透明電極基板の配向層を内側にして、スペーサにより所定の間隔になるように配置し、その周辺をシールして、2枚の透明電極基板の間に液晶材料を挟持したものである。通常、液晶セルにおける2枚の透明電極基板の外側には、それぞれ粘着剤層を介して、フィルム状の偏光板が接着される。
【0005】
ところで、上記偏光板は、電気絶縁性が高いため、静電気が発生し易い。このように静電気が発生した状態で偏光板を液晶セルに貼合すると、液晶分子の配向に乱れが生じるおそれがある。
【0006】
そこで、効果的な帯電防止性能を得るべく、粘着剤組成物に帯電防止剤を添加することが提案されている(例えば特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2007-316377号公報
【文献】特開2009-155585号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、粘着剤組成物に上記のような帯電防止剤を添加した場合、得られる粘着剤の耐久性が通常よりも低下するという問題がある。
【0009】
一方、ディスプレイパネルにおいては、通常、表面側に硬質の保護パネルが設けられており、当該保護パネルは、前述した液晶表示装置や、ガラス基板等の硬質の部材(硬質板)に、粘着剤層を介して接着される。
【0010】
上記保護パネルとしては、軽量化または安全性の観点から、プラスチック板が用いられることがある。しかしながら、プラスチック板は、ガラス板と異なり、高温高湿(湿熱)条件下でアウトガスを発生したり、水蒸気を透過したりする。これにより、プラスチック板と粘着剤層との間に気泡、浮き、剥がれ等のブリスターが発生することが多い。そのため、当該粘着剤層には耐ブリスター性が要求される。
【0011】
従来、上記のように2枚の硬質板を貼合するための粘着剤層においては、耐ブリスター性が悪化することを防ぐために、耐久性低下の原因となる帯電防止剤を添加することは考えられてこなかった。
【0012】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、2枚の硬質板を貼合するにあたり、帯電防止性に優れるとともに、良好な耐ブリスター性を発揮する粘着シートおよび積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、2枚の硬質板を互いに貼合するための粘着剤層を有する粘着シートであって、前記粘着剤層を構成する粘着剤が、帯電防止剤を含有しており、前記粘着剤のゲル分率が、64%以上であり、前記粘着剤層の厚さが、30μm以上、500μm以下であり、前記粘着シートのソーダライムガラスに対する粘着力が、18N/25mm以上であることを特徴とする粘着シートを提供する(発明1)。
【0014】
上記発明(発明1)によれば、2枚の硬質板を貼合するにあたり、帯電防止性に優れるとともに、良好な耐ブリスター性を発揮し、さらには段差追従性にも優れる。
【0015】
上記発明(発明1)においては、前記粘着剤中における前記帯電防止剤の含有量が、0.1質量%以上、10質量%以下であることが好ましい(発明2)。
【0016】
上記発明(発明1,2)においては、前記帯電防止剤が、イオン性化合物であることが好ましい(発明3)。
【0017】
上記発明(発明3)においては、前記イオン性化合物が、含窒素オニウム塩またはアルカリ金属塩であることが好ましい(発明4)。
【0018】
上記発明(発明4)においては、前記含窒素オニウム塩または前記アルカリ金属塩を構成するアニオンが、スルホニルイミド系アニオンまたはハロゲン化リン酸アニオンであることが好ましい(発明5)。
【0019】
上記発明(発明1~5)においては、前記粘着剤が、(メタ)アクリル酸エステル重合体またはその架橋物を含有し、前記(メタ)アクリル酸エステル重合体が、水酸基含有モノマー由来の構成単位またはカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含有することが好ましい(発明6)。
【0020】
上記発明(発明6)においては、前記(メタ)アクリル酸エステル重合体における水酸基含有モノマー由来の構成単位の含有量が、10質量%以上、30質量%以下であることが好ましい(発明7)。
【0021】
上記発明(発明6)においては、前記(メタ)アクリル酸エステル重合体におけるカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位の含有量が、3質量%以上、20質量%以下であることが好ましい(発明8)。
【0022】
上記発明(発明1~8)においては、前記粘着シートが、2枚の剥離シートを備えており、前記粘着剤層が、前記2枚の剥離シートの剥離面と接するように前記剥離シートに挟持されていることが好ましい(発明9)。
【0023】
第2に本発明は、2枚の硬質板と、前記2枚の硬質板に挟持される粘着剤層とを備えた積層体であって、前記粘着剤層が、前記粘着シート(発明1~9)の粘着剤層から形成されたものであることを特徴とする積層体を提供する(発明10)。
【0024】
上記発明(発明10)においては、前記硬質板の少なくとも1つが、プラスチック板を含むことが好ましい(発明11)。
【0025】
上記発明(発明10,11)においては、前記硬質板の少なくとも1つが、前記粘着剤層側の面に段差を有することが好ましい(発明12)。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る粘着シートおよび積層体は、2枚の硬質板を貼合するにあたり、帯電防止性に優れるとともに、良好な耐ブリスター性を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の一実施形態に係る粘着シートの断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る積層体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔粘着シート〕
本実施形態に係る粘着シートは、2枚の硬質板を互いに貼合するための粘着剤層を有する。粘着シートの具体的な構成および硬質板については、後述する。
【0029】
本実施形態における粘着剤層を構成する粘着剤は、帯電防止剤を含有しておりゲル分率が64%以上である。また、2枚の硬質板を互いに貼合する粘着剤層の厚さ(JIS K7130に準じて測定した値)は、30μm以上、500μm以下であり、さらに、上記粘着シートのソーダライムガラスに対する粘着力は、18N/25mm以上である。かかる要件を満たすことにより、当該粘着シートは、2枚の硬質板を貼合するにあたり、帯電防止性に優れるとともに、良好な耐ブリスター性を発揮する。すなわち、上記の粘着剤層が帯電防止剤を含有することで、優れた帯電防止性が発揮されるのみならず、意外にも良好な耐ブリスター性が発揮される。具体的には、上記粘着剤層によってガラス板とプラスチック板とを貼合してなる積層体を、高温高湿条件(例えば、85℃、85%RH、72時間)に投入した場合でも、気泡、浮き、剥がれ等のブリスターの発生が抑制される。特に、後述する所定の帯電防止剤を含有することで、帯電防止剤を含有しない場合よりも、耐ブリスター性が優れたものとなる。
【0030】
ここで、2枚の硬質板を互いに貼合する場合、それら硬質板は硬くてしならないため、粘着剤層を一方の硬質板に貼付した状態で、2枚の硬質板を垂直方向に押圧することにより、各硬質板と粘着剤層とを密着させ、これにより2枚の硬質板を互いに貼合する。本実施形態に係る粘着シートでは、粘着剤層の厚さが上記範囲にあることにより、上記の貼合方法において2枚の硬質板を良好に貼合することができる。さらに、粘着剤層の厚さが上記範囲にあることにより、硬質板が粘着剤層側の面に段差を有するものであっても、粘着剤層がその段差を良好に吸収することが可能となる。
【0031】
帯電防止剤としては、上記の優れた帯電防止性および良好な耐ブリスター性を発揮することができるものであればよく、例えば、イオン性化合物、ノニオン性化合物等が挙げられるが、中でもイオン性化合物が好ましい。イオン性化合物は、室温で液体(イオン性液体)であってもよいし、固体(イオン性固体)であってもよい。ここで、本明細書におけるイオン性化合物とは、カチオンとアニオンとが主として静電気引力によって結び付いてなる化合物をいう。なお、帯電防止剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合せて使用してもよい。
【0032】
イオン性化合物としては、含窒素オニウム塩、含硫黄オニウム塩、含リンオニウム塩、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩が好ましく、耐ブリスター性の観点から、特に含窒素オニウム塩またはアルカリ金属塩が好ましい。含窒素オニウム塩は、含窒素複素環カチオンとその対アニオンとから構成されるイオン性化合物であることが好ましい。
【0033】
含窒素複素環カチオンの含窒素複素環骨格としては、ピリジン環、ピリミジン環、イミダゾール環、トリアゾール環、インドール環等が好ましく、中でもピリジン環またはイミダゾール環が好ましい。また、アルカリ金属塩を構成するカチオンとしては、リチウムイオン、カリウムイオンまたはナトリウムイオンが好ましく、リチウムイオンまたはカリウムイオンが特に好ましい。
【0034】
一方、上記イオン性化合物を構成するアニオンとしては、ハロゲン化リン酸アニオンまたはスルホニルイミド系アニオンが好ましく挙げられる。ハロゲン化リン酸アニオンとしては、ヘキサフルオロホスフェートなどが好ましく挙げられる。また、スルホニルイミド系アニオンとしては、ビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドまたはビス(フルオロスルホニル)イミドなどが好ましく挙げられる。ビス(フルオロアルキルスルホニル)イミドは、ビス(パーフルオロアルキルスルホニル)イミドであってもよく、中でもビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドなどが好ましく挙げられる。
【0035】
ピリジン環およびハロゲン化リン酸アニオンを有する含窒素オニウム塩の具体例としては、1-ブチル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1-ヘキシル-3-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1-ヘキシル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1-オクチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1-オクチル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1-ドデシルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1-テトラデシルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1-ヘキサデシルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1-ドデシル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1-テトラデシル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1-ヘキサデシル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート等が挙げられる。耐ブリスター性の観点から、ピリジン環およびハロゲン化リン酸アニオンを有する含窒素オニウム塩としては、ジアルキルピリジニウムヘキサフルオロホスフェートが好ましく、特に1-ヘキシル-3-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェートまたは1-オクチル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェートが好ましい。
【0036】
ピリジン環およびスルホニルイミド系アニオンを有する含窒素オニウム塩の具体例としては、1-デシルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-エチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-ブチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-へキシルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-ブチル-3-メチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-ブチル-4-メチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-へキシル-3-メチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-ブチル-3,4-ジメチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド、4-メチル-1-オクチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド等が挙げられる。耐ブリスター性の観点から、ピリジン環およびスルホニルイミド系アニオンを有する含窒素オニウム塩としては、ジアルキルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミドが好ましく、特に4-メチル-1-オクチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミドが好ましい。特に、上記帯電防止剤は、耐ブリスター性を向上させるため好ましい。
【0037】
イミダゾール環を有する含窒素オニウム塩の具体例としては、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-プロピル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-プロピル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-ブチル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、1-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。耐ブリスター性の観点から、イミダゾール環を有する含窒素オニウム塩としては、ジアルキルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミドが好ましく、特に1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミドが好ましい。
【0038】
アルカリ金属塩の具体例としては、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、カリウムビス(フルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(フルオロメタンスルホニル)イミド、カリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド等が挙げられる。これらの中でも、耐ブリスター性の観点から、カリウムビス(フルオロスルホニル)イミドまたはリチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドが好ましい。
【0039】
本実施形態における粘着剤中における帯電防止剤の含有量は、下限値として、0.1質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、特に0.5質量%以上であることが好ましく、耐久試験後の抵抗値上昇を抑制する観点を加味すると、1.5質量%以上であることがさらに好ましい。帯電防止剤の含有量の下限値が上記であることにより、帯電防止性がより優れたものとなり、また、耐ブリスター性がより良好なものとなる。一方、帯電防止剤の含有量は、上限値として、10質量%以下であることが好ましく、特に9質量%以下であることが好ましく、さらには8質量%以下であることが好ましい。帯電防止剤の含有量の上限値が上記であることにより、耐ブリスター性がより良好なものとなる。
【0040】
本実施形態における粘着剤は、アクリル系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤等のいずれであってもよい。また、当該粘着剤は、エマルション型、溶剤型または無溶剤型のいずれでもよく、架橋タイプまたは非架橋タイプのいずれであってもよい。それらの中でも、粘着物性、光学特性等に優れるアクリル系粘着剤が好ましい。
【0041】
また、アクリル系粘着剤としては、活性エネルギー線硬化性のものであってもよいし、活性エネルギー線非硬化性のものであってもよいし、架橋性のものであってもよいし、非架橋性のものであってもよいし、これらを組み合わせたものであってもよい。活性エネルギー線非硬化性のアクリル系粘着剤としては、特に架橋タイプのものが好ましく、さらには熱架橋タイプのものが好ましい。
【0042】
本実施形態における粘着剤は、(メタ)アクリル酸エステル重合体またはその架橋物を含有することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体は、水酸基含有モノマー由来の構成単位またはカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を有することが好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語も同様である。また、「重合体」には「共重合体」の概念も含まれるものとする。
【0043】
上記(メタ)アクリル酸エステル重合体が、水酸基含有モノマー由来の構成単位を有する場合、その含有量は、10質量%以上であることが好ましく、特に12質量%以上であることが好ましく、さらには15質量%以上であることが好ましい。また、上記(メタ)アクリル酸エステル重合体が、カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含有する場合、その含有量は、3質量%以上であることが好ましく、特に5質量%以上であることが好ましく、さらには8質量%以上であることが好ましい。これにより、粘着剤層は耐湿熱白化性に優れたものとなる。なお、湿熱白化とは、粘着剤層を含む表示体等が高温高湿条件に置かれた後、常温常湿に戻されたときに粘着剤層が白化する現象をいう。具体的には、上記粘着剤層によってガラス板とプラスチック板とを貼合してなる積層体を、高温高湿条件(例えば、85℃、85%RH、72時間)に投入した後、常温常湿条件に戻したときに、白化によるヘイズ値の上昇が抑制される。
【0044】
一方、上記(メタ)アクリル酸エステル重合体が、水酸基含有モノマー由来の構成単位を有する場合、その含有量は、30質量%以下であることが好ましく、特に25質量%以下であることが好ましく、さらには20質量%以下であることが好ましい。また、上記(メタ)アクリル酸エステル重合体が、カルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を含有する場合、その含有量は、20質量%以下であることが好ましく、特に15質量%以下であることが好ましく、さらには12質量%以下であることが好ましい。これにより、耐ブリスター性がより良好なものとなる。
【0045】
なお、水酸基含有モノマーおよびカルボキシ基含有モノマーの詳細については、後述する。
【0046】
本実施形態における粘着剤のゲル分率は、耐ブリスター性の観点から、64%以上であり、67%以上であることが好ましく、耐久試験後の抵抗値上昇を抑制する観点を加味すると、70%以上であることが特に好ましい。なお、被着体貼付後に活性エネルギー線照射することによりゲル分率を上昇させる粘着剤においては、ゲル分率上昇後の値が上記の下限値を満たせばよい。また、本実施形態における粘着剤のゲル分率は、段差追従性の観点から、90%以下であることが好ましく、特に85%以下であることが好ましく、さらには80%以下であることが好ましい。なお、被着体貼付後に活性エネルギー線照射することによりゲル分率を上昇させる粘着剤においては、ゲル分率上昇後の値が上記の上限値を満たせばよい。なお、ゲル分率の測定方法は後述する試験例に示す通りである。
【0047】
本実施形態に係る粘着シートのソーダライムガラスに対する粘着力は、下限値として18N/25mm以上であることを要し、19N/25mm以上であることが好ましく、特に20N/25mm以上であることが好ましい。粘着シートの粘着力の下限値が上記であると、耐ブリスター性がより良好なものとなる。
【0048】
一方、上記粘着力の上限値は、リワーク性の観点から、40N/25mm以下であることが好ましく、35N/25mm以下であることがより好ましく、30N/25mm以下であることが特に好ましい。
【0049】
ここで、上記粘着力は、基本的にはJIS Z0237:2009に準じた180度引き剥がし法により測定した粘着力をいい、具体的な試験方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0050】
本実施形態における粘着剤層の厚さは、帯電防止性および耐ブリスター性の観点から、30μm以上であることを要し、40μm以上であることが好ましい。また、さらに段差追従性の観点を加味すると、50μm以上であることがより好ましい。一方、上記厚さは、500μm以下であることを要し、300μm以下であることが好ましく、特に200μm以下であることが好ましく、さらには150μm以下であることが好ましい。
【0051】
本実施形態における粘着剤層を構成する粘着剤は、具体的には、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)と、帯電防止剤(C)とを含有する粘着性組成物(以下「粘着性組成物P」という場合がある。)を架橋してなるものであることが好ましい。
【0052】
(1)各成分
(1-1)(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、水酸基含有モノマー由来の構成単位またはカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位を有することが好ましい。これにより、水酸基含有モノマー由来の水酸基またはカルボキシ基含有モノマー由来のカルボキシ基が架橋剤(B)と反応して、架橋構造(三次元網目構造)が形成され、所望の凝集力を有する粘着剤が得られる。
【0053】
水酸基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルなどの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等が挙げられる。中でも、架橋剤(B)との反応性および他の単量体との共重合性の点から(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチルまたは(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチルが好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0054】
カルボキシ基含有モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸が挙げられる。中でも、架橋剤(B)との反応性および他の単量体との共重合性の点からアクリル酸が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)における水酸基含有モノマー由来の構成単位の含有量、およびカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位の含有量の好ましい範囲は、前述した通りである。水酸基含有モノマー由来の構成単位の含有量、またはカルボキシ基含有モノマー由来の構成単位の含有量が上記範囲内にあることにより、得られる粘着剤層は耐湿熱白化性に優れたものとなり、また、耐ブリスター性がより良好なものとなる。
【0056】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を含有することが好ましい。これにより、得られる粘着剤は、好ましい粘着性を発現することができる。なお、当該(メタ)アクリル酸アルキルエステルから後述のハードモノマーは除かれる。
【0057】
アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ペンチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸ミリスチル、(メタ)アクリル酸パルミチル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記の中でも、粘着性をより向上させる観点から、アルキル基の炭素数が1~14の(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、さらに段差追従性の観点を加味すると、アルキル基の炭素数が4~10の(メタ)アクリル酸エステルがより好ましく、アルキル基の炭素数が5~8の(メタ)アクリル酸エステルが特に好ましい。具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソオクチルが好ましく、アクリル酸2-エチルヘキシルが特に好ましい。
【0058】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、粘着性付与の観点から、アルキル基の炭素数が1~20の(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を30質量%以上含有することが好ましく、40質量%以上含有することがより好ましく、50質量%以上含有することが特に好ましい。一方、上限は特に制約されないが、他のモノマーに由来する構成単位(モノマー単位)を受け入れる観点から、92質量%以下含有することが好ましく、特に80質量%以下含有することが好ましく、さらには70質量%以下含有することが好ましい。
【0059】
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、ホモポリマーとしてのガラス転移温度(Tg)が70℃以上のハードモノマーに由来する構成単位を含有することが好ましい。なお、前述の水酸基含有モノマーおよびカルボキシ基含有モノマーはハードモノマーからは除かれる。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が、上記ハードモノマー由来の構成単位を含有することにより、得られる粘着剤は、凝集力が向上し、耐久性に優れたものとなる。特に、アルキル基の炭素数が5~8の(メタ)アクリル酸エステル由来の構成単位を含有する場合には、凝集力が低くなる傾向があるため、上記ハードモノマー由来の構成単位を含有することが好ましい。上記ハードモノマーのホモポリマーとしてのガラス転移温度(Tg)は、75~200℃であることが好ましく、特に80~180℃であることが好ましい。
【0060】
上記ハードモノマーとしては、例えば、メタクリル酸メチル(Tg105℃)、アクリル酸イソボルニル(Tg94℃)、メタクリル酸イソボルニル(Tg180℃)、アクリロイルモルホリン(Tg145℃)、アクリル酸アダマンチル(Tg115℃)、メタクリル酸アダマンチル(Tg141℃)、ジメチルアクリルアミド(Tg89℃)、アクリルアミド(Tg165℃)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
上記ハードモノマーの中でも、粘着性や透明性等の他の特性への悪影響を防止しつつハードモノマーの性能をより発揮させる観点から、メタクリル酸メチル、アクリル酸イソボルニルおよびアクリロイルモルホリンがより好ましく、メタクリル酸メチルが特に好ましい。一方、被着体に貼付後に硬化させることによりゲル分率を増加させる系では、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、アクリル酸イソボルニル由来の構成単位およびアクリロイルモルホリン由来の構成単位の両方を含有することが特に好ましい。
【0062】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、上記ハードモノマー由来の構成単位を10~45質量%含有することが好ましく、15~30質量%含有することが特に好ましい。上記ハードモノマー由来の構成単位を10質量%以上含有することにより、当該モノマー単位による耐久性の改善効果を見込むことができる。一方、上記ハードモノマー由来の構成単位を45質量%以下の含有量とすることにより、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)中におけるそれ以外のモノマー単位の相対的な不足を防止し、得られる粘着剤の粘着性および耐湿熱白化性を優れたものとすることができる。
【0063】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、所望により、他のモノマーに由来する構成単位を含有してもよい。他のモノマーとしては、水酸基含有モノマーの作用を妨げないためにも、反応性を有する官能基を含まないモノマーが好ましい。かかる他のモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル等の(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等の脂肪族環を有する(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸N,N-ジメチルアミノプロピル等の非架橋性の3級アミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル、酢酸ビニル、スチレンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、溶液重合したものであってもよいし、無溶剤で重合したものであってもよいし、エマルション重合したものであってもよい。中でも、溶液重合法によって得られた溶液重合物であることが好ましい。溶液重合物であることにより高分子量のポリマーが得やすく、耐ブリスター性により優れた粘着剤が得られる。
【0065】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合態様は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
【0066】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量は、下限値として20万以上であることが好ましく、特に30万以上であることが好ましく、さらには40万以上であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量の下限値が上記であると、得られる粘着剤の耐ブリスター性がより優れたものとなる。
【0067】
また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量は、上限値として100万以下であることが好ましく、特に90万以下であることが好ましく、さらには80万以下であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重量平均分子量の上限値が上記であると、得られる粘着剤の段差追従性がより優れたものとなる。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
【0068】
なお、粘着性組成物Pにおいて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0069】
本実施形態に係る粘着性組成物P中における(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の含有量は、75質量%以上であることが好ましく、特に85質量%以上であることが好ましく、さらには95質量%以上であることが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の含有量は、99質量%以下であることが好ましく、特に98質量%以下であることが好ましく、さらには97質量%以下であることが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の含有量が上記範囲にあることにより、耐ブリスター性がより優れたものとなる。
【0070】
(1-2)架橋剤(B)
架橋剤(B)は、粘着性組成物Pの加熱により(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を架橋し、三次元網目構造の架橋構造を良好に形成することが可能となる。これにより、所定の凝集力を有する粘着剤が得られ、耐ブリスター性がより優れたものとなる。
【0071】
上記架橋剤(B)としては、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が有する反応性官能基(水酸基またはカルボキシ基)と反応するものであればよく、例えば、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、アンモニウム塩系架橋剤等が挙げられる。ここで、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が構成モノマー単位として水酸基含有モノマーを含有する場合には、架橋剤(B)としては、水酸基との反応性に優れたイソシアネート系架橋剤を使用することが好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が構成モノマー単位としてカルボキシ基含有モノマーを含有する場合には、架橋剤(B)としては、カルボキシ基との反応性に優れたエポキシ系架橋剤を使用することが好ましい。なお、架橋剤(B)は、1種を単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0072】
イソシアネート系架橋剤は、少なくともポリイソシアネート化合物を含むものである。ポリイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネートなど、及びそれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体などが挙げられる。中でも水酸基との反応性の観点から、トリメチロールプロパン変性の芳香族ポリイソシアネート、特にトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネートまたはトリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネートが好ましい。
【0073】
エポキシ系架橋剤としては、例えば、1,3-ビス(N,N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミン等が挙げられる。中でもカルボキシ基との反応性の観点から、1,3-ビス(N,N’-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、またはN,N,N’,N’-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミンが好ましい。
【0074】
粘着性組成物P中における架橋剤(B)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、下限値として、0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.05質量部以上であることが好ましく、さらには0.1質量部以上であることが好ましい。架橋剤(B)の含有量の下限値が上記であると、所定の架橋構造が形成され、得られる粘着剤の耐ブリスター性がより優れたものとなる。また、当該含有量は、上限値として、1.0質量部以下であることが好ましく、特に0.8質量部以下であることが好ましく、さらには0.5質量部以下であることが好ましい。架橋剤(B)の含有量の上限値が上記であると、得られる粘着剤の架橋密度を適度なものとし、もって段差追従性をより優れたものにすることができる。
【0075】
(1-3)帯電防止剤(C)
帯電防止剤(C)の種類および粘着剤中における帯電防止剤の含有量(質量%)は、前述した通りである。粘着性組成物P中における帯電防止剤(C)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、下限値として、0.5質量部以上であることが好ましく、特に1.0質量部以上であることが好ましく、さらには2.0質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、上限値として、10質量部以下であることが好ましく、特に8質量部以下であることが好ましく、さらには5質量部以下であることが好ましい。
【0076】
(1-4)シランカップリング剤(D)
粘着性組成物Pは、さらにシランカップリング剤(D)を含有することが好ましい。これにより、被着体にガラス部材があると、得られる粘着剤は、当該ガラス部材との密着性が向上する。また、被着体がプラスチック板であっても、得られる粘着剤は、プラスチック板との密着性が向上する。これにより、得られる粘着剤は、耐ブリスター性により優れたものとなる。
【0077】
シランカップリング剤(D)としては、分子内にアルコキシシリル基を少なくとも1個有する有機ケイ素化合物であって、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)との相溶性がよく、光透過性を有するものが好ましい。
【0078】
かかるシランカップリング剤(D)としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性不飽和基含有ケイ素化合物、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ構造を有するケイ素化合物、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン等のメルカプト基含有ケイ素化合物、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基含有ケイ素化合物、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、あるいはこれらの少なくとも1つと、メチルトリエトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン等のアルキル基含有ケイ素化合物との縮合物などが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0079】
粘着性組成物P中におけるシランカップリング剤(D)の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、特に0.05質量部以上であることが好ましく、さらには0.1質量部以上であることが好ましい。また、当該含有量は、1質量部以下であることが好ましく、特に0.5質量部以下であることが好ましく、さらには0.3質量部以下であることが好ましい。
【0080】
(1-5)活性エネルギー線硬化性成分(E)
粘着性組成物Pは、さらに活性エネルギー線硬化性成分(E)を含有してもよい。活性エネルギー線硬化性成分(E)を含有する粘着剤は、硬化前には段差追従性により優れたものとなり、硬化後の粘着剤は、耐ブリスター性により優れたものとなる。
【0081】
活性エネルギー線硬化性成分(E)は、活性エネルギー線の照射によって硬化し、上記の効果が得られる成分であれば特に制限されず、モノマー、オリゴマーまたはポリマーのいずれであってもよいし、それらの混合物であってもよい。中でも、耐ブリスター性により優れる多官能アクリレート系モノマーを好ましく挙げることができる。
【0082】
多官能アクリレート系モノマーとしては、例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールアジペートジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性リン酸ジ(メタ)アクリレート、ジ(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、9,9-ビス[4-(2-アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン等の2官能型;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の3官能型;ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の4官能型;プロピオン酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の5官能型;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能型などが挙げられる。上記の中でも、得られる粘着剤の耐ブリスター性の観点から、ジ(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレート等の分子内にイソシアヌレート構造を含有する多官能アクリレート系モノマーが好ましく、3官能以上、かつ、分子内にイソシアヌレート構造を含有する多官能アクリレート系モノマーがより好ましく、ε-カプロラクトン変性トリス-(2-(メタ)アクリロキシエチル)イソシアヌレートが特に好ましい。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)との相溶性の観点から、多官能アクリレート系モノマーは、分子量1000未満のものが好ましい。
【0083】
粘着性組成物P中における活性エネルギー線硬化性成分(E)の含有量は、得られる粘着剤の凝集力を向上させ耐ブリスター性を優れたものとする観点から、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部に対して、下限値として1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、4質量部以上であることが特に好ましい。一方、上記含有量は、反り抑制効果を得る観点から、上限値として20質量部以下であることが好ましく、15質量部以下であることがより好ましく、10質量部以下であることが特に好ましく、6質量部以下であることがさらに好ましい。
【0084】
(1-6)各種添加剤
粘着性組成物Pは、所望により、アクリル系粘着剤に通常使用されている各種添加剤、例えば粘着付与剤、酸化防止剤、光安定剤、軟化剤、充填剤、屈折率調整剤等を含有してもよい。特に、粘着性組成物Pが活性エネルギー線硬化性成分(E)を含有し、活性エネルギー線として紫外線を用いる場合には、光重合開始剤を含有することが好ましい。光重合開始剤を含有することにより、活性エネルギー線硬化性成分(E)を効率良く硬化させることができ、また重合硬化時間および紫外線の照射量を少なくすることができる。
【0085】
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4’-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリ-ブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p-ジメチルアミノ安息香酸エステル、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン]、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0086】
上記の中でも、紫外線吸収剤を含有するプラスチック板越しに紫外線照射した場合でも、開裂し易く、粘着剤を確実に硬化させ易い、フォスフィンオキサイド系の光重合開始剤が好ましい。具体的には、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等が好ましい。
【0087】
粘着性組成物P中における光重合開始剤の含有量は、活性エネルギー線硬化性成分(E)100質量部に対して、下限値として、2質量部以上であることが好ましく、特に4質量部以上であることが好ましく、さらには6質量部以上であることが好ましい。また、光重合開始剤の含有量は、上限値として、20質量部以下であることが好ましく、特に18質量部以下であることが好ましく、さらには15質量部以下であることが好ましい。
【0088】
(2)粘着性組成物の製造
粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を製造し、得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)と、架橋剤(B)と、帯電防止剤(C)とを混合するとともに、所望によりシランカップリング剤(D)、活性エネルギー線硬化性成分(E)、添加剤等を加えることで製造することができる。
【0089】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)は、重合体を構成するモノマーの混合物を通常のラジカル重合法で重合することにより製造することができる。(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合は、所望により重合開始剤を使用して、溶液重合法により行うことが好ましい。ただし、本発明はこれに限定されるものではなく、無溶剤にて重合してもよい。重合溶媒としては、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。
【0090】
重合開始剤としては、アゾ系化合物、有機過酸化物等が挙げられ、2種類以上を併用してもよい。アゾ系化合物としては、例えば、2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2,2'-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1'-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2'-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4'-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2'-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等が挙げられる。
【0091】
有機過酸化物としては、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
【0092】
なお、上記重合工程において、2-メルカプトエタノール等の連鎖移動剤を配合することにより、得られる重合体の重量平均分子量を調節することができる。
【0093】
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が得られたら、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の溶液に、架橋剤(B)、帯電防止剤(C)、ならびに所望によりシランカップリング剤(D)、活性エネルギー線硬化性成分(E)、添加剤、希釈溶剤等を添加し、十分に混合することにより、溶剤で希釈された粘着性組成物P(塗布溶液)を得る。なお、上記各成分のいずれかにおいて、固体状のものを用いる場合、あるいは、希釈されていない状態で他の成分と混合した際に析出を生じる場合には、その成分を単独で予め希釈溶媒に溶解もしくは希釈してから、その他の成分と混合してもよい。
【0094】
上記希釈溶剤としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン等の脂肪族炭化水素、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、塩化メチレン、塩化エチレン等のハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、1-メトキシ-2-プロパノール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、2-ペンタノン、イソホロン、シクロヘキサノン等のケトン、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル、エチルセロソルブ等のセロソルブ系溶剤などが用いられる。
【0095】
このようにして調製された塗布溶液の濃度・粘度としては、コーティング可能な範囲であればよく、特に制限されず、状況に応じて適宜選定することができる。例えば、粘着性組成物Pの濃度が10~60質量%となるように希釈する。なお、塗布溶液を得るに際して、希釈溶剤等の添加は必要条件ではなく、粘着性組成物Pがコーティング可能な粘度等であれば、希釈溶剤を添加しなくてもよい。この場合、粘着性組成物Pは、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の重合溶媒をそのまま希釈溶剤とする塗布溶液となる。
【0096】
(3)粘着剤の製造
以上の粘着性組成物Pを、所望の対象物に塗布した後、架橋することにより、粘着剤(粘着剤層)が得られる。
【0097】
粘着性組成物Pの架橋は、加熱処理によって行うことができる。この加熱処理は、粘着性組成物Pの塗布後の乾燥処理で兼ねることもできる。加熱処理の加熱温度は、50~150℃であることが好ましく、特に70~120℃であることが好ましい。また、加熱時間は、10秒~10分であることが好ましく、特に50秒~2分であることが好ましい。
【0098】
加熱処理後、必要に応じて、常温(例えば、23℃、50%RH)で1~2週間程度の養生期間を設けてもよい。この養生期間が必要な場合は、養生期間経過後、養生期間が不要な場合には、加熱処理終了後、粘着剤が形成される。
【0099】
上記の加熱処理(及び養生)により、架橋剤(B)を介して(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)が十分に架橋される。このようにして得られる粘着剤層は、耐ブリスター性に優れる。
【0100】
なお、粘着性組成物Pが活性エネルギー線硬化性成分(E)を含有する場合、上記のように粘着性組成物Pを所望の対象物に塗布し加熱処理を行った後、活性エネルギー線の照射により粘着性組成物Pを硬化させて粘着剤(粘着剤層)を形成してもよいが、活性エネルギー線照射前の状態で被着体に貼付し、その後、活性エネルギー線を照射することが好ましい。これにより、初期段階の段差追従性がより優れたものとなる。
【0101】
(4)粘着剤(粘着剤層)の物性
(4-1)ゲル分率
本実施形態に係る粘着シートの粘着剤層を構成する粘着剤のゲル分率は、前述した通りである。なお、粘着性組成物Pが活性エネルギー線硬化性成分(E)を含有する場合、活性エネルギー線照射前における粘着剤のゲル分率は、20%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることが特に好ましい。上記の下限値を満たすことにより、粘着剤層の塗膜強度を十分なものとすることができる。一方、上記ゲル分率は、63%以下であることが好ましく、58%以下であることがより好ましく、55%以下であることが特に好ましい。上記の上限値を満たすことにより、優れた段差追従性を発揮することができる。
【0102】
(4-2)粘着力
本実施形態に係る粘着シートのソーダライムガラスに対する粘着力は、前述した通りである。なお、粘着性組成物Pが活性エネルギー線硬化成分(E)を含有する粘着剤の場合、活性エネルギー線照射後の粘着力が上記値を満たせばよい。活性エネルギー線照射前の粘着力は、特に制約されない。
【0103】
(4-3)ヘイズ値
本実施形態に係る粘着シートの粘着剤層のヘイズ値は、3%以下であることが好ましく、特に1.5%以下であることが好ましく、さらには0.8%以下であることが好ましい。粘着剤層のヘイズ値が3%以下であると、透明性が非常に高く、光学用途(表示体用)として好適である。一方、粘着剤層のヘイズ値の下限値は特に制約されない。当該下限値は、0%であっても構わないが、測定精度等の関係から、通常は0.1%程度である。なお、粘着性組成物Pが活性エネルギー線硬化性成分(E)を含有する場合、粘着剤層は、活性エネルギー線照射の前後において上記ヘイズ値を満たすことが好ましい。ここで、本明細書におけるヘイズ値は、JIS K7136:2000に準じて測定した値とする。
【0104】
(4-4)表面抵抗率
23℃、50%RHの環境下において、本実施形態に係る粘着シート(粘着剤層/剥離シート)に対して100Vの電圧を10秒間印加したときの、粘着剤層の露出面の表面抵抗率は、上限値として、1.0×1013Ω/sq以下であることが好ましく、5.0×1012Ω/sq以下であることがより好ましく、特に1.0×1012Ω/sq以下であることが好ましく、さらには5.0×1011Ω/sq以下であることが好ましい。上記表面抵抗率の上限値が上記であることにより、優れた帯電防止性が発揮され、粘着シートから剥離シートを剥離した時に、静電気が発生することを良好に抑制することができる。したがって、当該粘着シートを被着体(硬質板)に貼着するときに、空気中のゴミや塵が被着体に付着することを効果的に抑制することができる。上記表面抵抗率の下限値は特に限定されないが、通常は、1.0×109Ω/sq以上であることが好ましく、特に5.0×109Ω/sq以上であることが好ましく、さらには1.0×1010Ω/sq以上であることが好ましい。なお、粘着剤層の表面抵抗率の測定は、JIS K6911に準じて行うものとし、具体的には後述する試験例に示す通りである。
【0105】
(4-5)抵抗値変化
一般に、導電層と粘着剤層とを互いに接する状態で積層して、耐久条件に投入した場合、導電層の抵抗値が増加する現象が見られる。しかしながら、本実施形態における粘着剤層であれば、理由は明確ではないが、そのような抵抗値増加を最小限に抑えることができる。
【0106】
具体的には、ガラス板上に、本実施形態における粘着剤層を貼付し、当該粘着剤層におけるガラス板と接する面と反対側の面に導電層(例えば、スズドープ酸化インジウム(ITO)からなる透明導電膜)を積層する。導電層における粘着剤層と接する面と反対側の面には、導電層を保持するための基材(例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム)を配置する。このようなガラス板/粘着剤層/導電層/基材の構成体を、85℃、85%RHの湿熱条件下に500時間投入し(耐久試験)、その耐久前後の導電層の抵抗値を測定する。この場合において、耐久前の抵抗値に対する耐久後の抵抗値(抵抗値変化:耐久後の抵抗値/耐久前の抵抗値)は、3.5倍以下であることが好ましく、3倍以下であることがより好ましく、2.5倍以下であることが特に好ましく、1.6倍以下であることがさらに好ましい。一方、上記抵抗値変化の下限値は特に制約されないが、0.5倍程度である。なお、上記の試験では、導電層を保持する部材として基材を用いているが、これがガラス板であっても、樹脂板であっても、得られる結果は同様であると推測される。抵抗値変化の詳細な試験方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0107】
(4-6)剥離帯電圧
23℃、50%RHの環境下において、本実施形態に係る粘着シートにおける粘着剤層から剥離シートを手作業により2.0m/minの剥離速度で剥離したときの、剥離5秒後に測定した粘着剤層の露出面から2.0cmの位置の静電電位(剥離帯電圧)は、1.0kV以下であることが好ましく、特に0.5kV以下であることが好ましく、さらには0.3kV以下であることが好ましい。剥離帯電圧が上記であることにより、粘着剤層から剥離シートを剥離した時に静電気が発生し難く、静電気に起因して空気中のゴミや塵が被着体(硬質板)に付着することを効果的に抑制することができる。上記剥離帯電圧の下限値は特に限定されないが、0kVであることが好ましい。なお、剥離帯電圧の測定方法の詳細は、後述する試験例に示す通りである。
【0108】
(4-7)耐湿熱白化性
本実施形態における粘着剤層の耐湿熱白化性は、ヘイズ値により定量的に評価することができる。具体的には、本実施形態における粘着剤層によってガラス板(ソーダライムガラス)とプラスチック板(アクリル樹脂板,厚さ1mm)とを貼合してなる積層体について、85℃、85%RHの湿熱条件下にて72時間保管する耐久試験を行った後、23℃、50%RHの常温常湿に24時間保管したときのヘイズ値(%)から、耐久試験前のヘイズ値(%)を差し引いたヘイズ値上昇が、3ポイント未満であることが好ましく、2ポイント未満であることがより好ましく、特に1ポイント未満であることが好ましく、さらには0.5ポイント未満であることが好ましい。ヘイズ値上昇が上記であると、湿熱条件下に置かれた後でもヘイズ値の上昇が小さく、粘着剤の白化が抑制されているということができる。
【0109】
上記のように、粘着剤層によってガラス板とプラスチック板とを貼合してなる積層体では、粘着剤層によって2枚のガラス板を貼合してなる積層体と比較して、湿熱条件下でプラスチック板を透過した水分が積層体内で凝結し易いため、粘着剤層に白化が生じやすい。しかしながら、水酸基含有モノマーまたはカルボキシ基含有モノマーの含有量を前述したように制御した粘着剤によれば、上記の積層体においても、優れた耐湿熱白化性を発揮する。
【0110】
(4-8)段差追従率
本実施形態における粘着剤層は、下記の式で示される段差追従率(%)が、下限値として5%以上であることが好ましく、特に10%以上であることが好ましく、さらには15%以上であることが好ましい。また、段差追従率の上限値としては、特に限定されないが、通常、80%以下であることが好ましく、特に70%以下であることが好ましい。
段差追従率(%)={(所定耐久試験後、気泡、浮き、剥がれ等が無く埋められた状態が維持された段差の高さ(μm))/(粘着剤層の厚み)}×100
なお、段差追従率の試験方法は、後述する試験例に示す通りである。
【0111】
(5)粘着シートの具体的構成
本実施形態に係る粘着シートの一例としての具体的構成を
図1に示す。
図1に示すように、一実施形態に係る粘着シート1は、2枚の剥離シート12a,12bと、それら2枚の剥離シート12a,12bの剥離面と接するように当該2枚の剥離シート12a,12bに挟持された粘着剤層11とから構成される。なお、本明細書における剥離シートの剥離面とは、剥離シートにおいて剥離性を有する面をいい、剥離処理を施した面および剥離処理を施さなくても剥離性を示す面のいずれをも含むものである。
【0112】
上記剥離シート12a,12bは、粘着シートの使用時まで粘着剤層を保護するものであり、粘着シート(粘着剤層)を使用するときに剥離される。本実施形態に係る粘着シート1において、剥離シート12a,12bの一方または両方は必ずしも必要なものではない。
【0113】
剥離シート12a,12bとしては、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリブテンフィルム、ポリブタジエンフィルム、ポリメチルペンテンフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、塩化ビニル共重合体フィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリウレタンフィルム、エチレン酢酸ビニルフィルム、アイオノマー樹脂フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸共重合体フィルム、エチレン・(メタ)アクリル酸エステル重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム等が用いられる。また、これらの架橋フィルムも用いられる。さらに、これらの積層フィルムであってもよい。
【0114】
上記剥離シート12a,12bの剥離面(特に粘着剤層11と接する面)には、剥離処理が施されていることが好ましい。剥離処理に使用される剥離剤としては、例えば、アルキッド系、シリコーン系、フッ素系、不飽和ポリエステル系、ポリオレフィン系、ワックス系の剥離剤が挙げられる。なお、剥離シート12a,12bのうち、一方の剥離シートを剥離力の大きい重剥離型剥離シートとし、他方の剥離シートを剥離力の小さい軽剥離型剥離シートとすることが好ましい。
【0115】
剥離シート12a,12bの厚さについては特に制限はないが、通常20~150μm程度である。
【0116】
(6)粘着シートの製造
粘着シート1の一製造例としては、一方の剥離シート12a(または12b)の剥離面に、上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを熱架橋し、塗布層を形成した後、その塗布層に他方の剥離シート12b(または12a)の剥離面を重ね合わせる。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記塗布層が粘着剤層11となる。以上の工程により、粘着シート1が得られる。加熱処理および養生の条件については、前述した通りである。
【0117】
粘着シート1の他の製造例としては、一方の剥離シート12aの剥離面に、上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを熱架橋し、塗布層を形成して、塗布層付きの剥離シート12aを得る。また、他方の剥離シート12bの剥離面に、上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布し、加熱処理を行って粘着性組成物Pを熱架橋し、塗布層を形成して、塗布層付きの剥離シート12bを得る。そして、塗布層付きの剥離シート12aと塗布層付きの剥離シート12bとを、両塗布層が互いに接触するように貼り合わせる。養生期間が必要な場合は養生期間をおくことにより、養生期間が不要な場合はそのまま、上記の積層された塗布層が粘着剤層11となる。以上の工程により、上記粘着シート1が得られる。この製造例によれば、粘着剤層11が厚い場合であっても、安定して製造することが可能となる。
【0118】
上記粘着性組成物Pの塗布液を塗布する方法としては、例えばバーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法等を利用することができる。
【0119】
〔積層体〕
本発明の一実施形態に係る積層体は、2枚の硬質板と、それら2枚の硬質板に挟持される粘着剤層とを備えており、当該粘着剤層が、前述した粘着シートの粘着剤層から形成されたものである。この積層体は、光学部材であることが好ましく、特に表示体(ディスプレイパネル)またはその一部材であることが好ましい。
【0120】
ここで、本実施形態における硬質板とは、ロール状に巻回できない、いわゆる、しならない部材をいう。
【0121】
上記硬質板の少なくとも1つは、プラスチック板を含むことが好ましい。プラスチック板は、ガラス板と異なり、高温高湿条件下でアウトガスを発生したり、水蒸気を透過したりする。これにより、一般的には、プラスチック板と粘着剤層との間に気泡、浮き、剥がれ等のブリスターが発生し易くなる。しかしながら、本実施形態に係る積層体では、前述した粘着シートの粘着剤層を使用することにより、高温高湿条件(例えば、85℃、85%RH、72時間)に投入した場合でも、気泡、浮き、剥がれ等のブリスターの発生が抑制される。
【0122】
また、上記硬質板の少なくとも1つは、粘着剤層側の面に段差を有していてもよい。本実施形態に係る積層体では、前述した粘着剤層であって、ゲル分率が制御された粘着剤からなる粘着剤層を使用することにより、初期の段差追従性および高温高湿条件(例えば、85℃、85%RH、72時間)後の段差追従性に優れたものとなる。
【0123】
本実施形態に係る積層体の一例としての具体的構成を
図2に示す。
図2に示すように、本実施形態に係る積層体2は、第1の硬質板21と、第2の硬質板22と、それらの間に位置し、第1の硬質板21および第2の硬質板22に挟持される粘着剤層11とから構成される。また、本実施形態に係る積層体2では、第1の硬質板21は、粘着剤層11側の面に段差を有しており、具体的には、印刷層3の有無による段差を有している。
【0124】
積層体2としては、例えば、液晶(LCD)ディスプレイ、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)ディスプレイ、電子ペーパー等の表示体の一部を構成する部材であってもよいし、当該表示体そのものであってもよい。なお、当該表示体は、タッチパネルであってもよい。
【0125】
上記積層体2における粘着剤層11は、前述した粘着シート1の粘着剤層11そのものであるか、前述した粘着シート1の粘着剤層11を活性エネルギー線照射により硬化させたものである。
【0126】
第1の硬質板21および第2の硬質板22は、粘着剤層11が接着できるものであれば、特に限定されるものではない。また、第1の硬質板21および第2の硬質板22は、同じ材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。
【0127】
第1の硬質板21および第2の硬質板22としては、例えば、ガラス板、プラスチック板、金属板、半導体板等の他、それらの積層体、あるいは表示体モジュール、太陽電池モジュール等の板状の硬質製品などが挙げられる。前述した通り、第1の硬質板21および第2の硬質板22の少なくとも1つは、プラスチック板を含むことが好ましい。
【0128】
プラスチック板としては、特に限定されることなく、例えば、ポリカーボネート樹脂(PC)板、ポリメタクリル酸メチル樹脂(PMMA)板等のアクリル樹脂板、ポリカーボネート樹脂板にポリメタクリル酸メチル樹脂層等のアクリル樹脂層を積層したプラスチック板などが挙げられる。なお、上記のポリカーボネート樹脂板は、それを構成する材料として、ポリカーボネート樹脂以外の樹脂を含有してもよく、また、上記のアクリル樹脂板は、それを構成する材料として、アクリル樹脂以外の樹脂を含有してもよい。
【0129】
また、プラスチック板は、紫外線吸収剤を含有するものであることも好ましい。紫外線吸収剤を含有するプラスチック板であれば、透明導電層や液晶層等の各種光学部材を紫外線から保護することができる。そのため、紫外線吸収剤を含有するプラスチック板は、屋外で使用する可能性が高い、車載用やモバイル電子機器用の表示体に好ましく用いることができる。
【0130】
プラスチック板の厚さは、特に限定されないが、通常は0.2~5mmであり、好ましくは0.4~3mmであり、特に好ましくは0.6~2.5mmであり、さらに好ましくは1~2.1mmである。
【0131】
上記ガラス板としては、特に限定されることなく、例えば、化学強化ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、ソーダライムガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、アルミノケイ酸ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス等が挙げられる。
【0132】
また、ガラス板を、表示体の視認者側に位置する保護板として使用する場合には、紫外線吸収剤を含有するプラスチック板と同様の観点から、ガラス板に紫外線吸収層が設けられていることも好ましく、または紫外線吸収剤含有のガラス板であることも好ましい。
【0133】
ガラス板の厚さは、特に限定されないが、通常は0.1~10mmであり、好ましくは0.2~5mmであり、より好ましくは0.8~2mmである。
【0134】
なお、上記ガラス板やプラスチック板の片面または両面には、各種の機能層(透明導電膜、金属層、シリカ層、ハードコート層、防眩層、紫外線吸収層等)が設けられていてもよいし、金属配線が形成されていてもよいし、光学部材が積層されていてもよい。また、透明導電膜および金属層は、パターニングされていてもよい。
【0135】
上記光学部材としては、例えば、飛散防止フィルム、偏光板(偏光フィルム)、偏光子、位相差板(位相差フィルム)、視野角補償フィルム、輝度向上フィルム、コントラスト向上フィルム、液晶ポリマーフィルム、拡散フィルム、半透過反射フィルム、透明導電性フィルム等が挙げられる。飛散防止フィルムとしては、基材フィルムの片面にハードコート層が形成されてなるハードコートフィルム等が例示される。
【0136】
また、上記表示体モジュールとしては、例えば、液晶(LCD)モジュール、発光ダイオード(LED)モジュール、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)モジュール、電子ペーパー等が挙げられる。なお、これらの表示体モジュールには、通常、上述したガラス板、プラスチック板、光学部材等が積層されている。例えば、LCDモジュールには偏光板が積層されており、その偏光板がLCDモジュールの一方の表面を形成する。
【0137】
印刷層3を構成する材料は特に限定されることなく、印刷用の公知の材料が使用される。印刷層3の厚さ、すなわち段差の高さの下限値は、3μm以上であることが好ましく、7.5μm以上であることがより好ましく、10μm以上であることが特に好ましく、20μm以上であることが最も好ましい。下限値が上記以上であることにより、電気配線を視認者側から見えなくする等の隠蔽性を十分に確保することができる。また、上限値は、100μm以下であることが好ましく、80μm以下であることがより好ましく、50μm以下であることが特に好ましい。上限値が上記以下であることにより、当該印刷層3に対する粘着剤層11の段差追従性の悪化を防止することができる。なお、印刷層3は、硬質板における粘着剤層11側に、額縁状に形成されることが一般的である。
【0138】
上記積層体2を製造するには、一例として、粘着シート1の一方の剥離シート12aを剥離して、粘着シート1の露出した粘着剤層11を、第1の硬質板21の印刷層3が存在する側の面に貼合する。このとき、ゲル分率が制御された粘着剤からなる粘着剤層11は、初期の段差追従性に優れるため、印刷層3による段差の近傍に隙間や浮きが生じることが抑制される。
【0139】
次いで、粘着シート1の粘着剤層11から他方の剥離シート12bを剥離して、粘着シート1の露出した粘着剤層11と第2の硬質板22とを貼合して積層体を得る。また、他の例として、第1の硬質板21および第2の硬質板22の貼合順序を入れ替えてもよい。
【0140】
上記粘着剤層11は帯電防止性に優れるため、粘着シート1から剥離シート12a,12bを剥離した時に、静電気が発生することを良好に抑制することができる。したがって、当該粘着シート1を各硬質板21,22に貼着するときに、空気中のゴミや塵が硬質板21,22に付着することを効果的に抑制することができる。
【0141】
ここで、粘着性組成物Pが活性エネルギー線硬化性成分(E)を含有する場合、第1の硬質板21および粘着剤層11の積層体と第2の硬質板22とを貼合した後、第1の硬質板21および/または第2の硬質板22越しに粘着剤層11に対して活性エネルギー線を照射して、粘着剤層11を硬化させることが好ましい。これにより、耐ブリスター性がより優れたものとなる。
【0142】
活性エネルギー線とは、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものをいい、具体的には、紫外線や電子線などが挙げられる。活性エネルギー線の中でも、取扱いが容易な紫外線が特に好ましい。
【0143】
紫外線の照射は、高圧水銀ランプ、フュージョンHランプ、キセノンランプ等によって行うことができ、紫外線の照射量は、照度が50~1000mW/cm2程度であることが好ましい。また、光量は、50~10000mJ/cm2であることが好ましく、80~5000mJ/cm2であることがより好ましく、300~2000mJ/cm2であることが特に好ましい。一方、電子線の照射は、電子線加速器等によって行うことができ、電子線の照射量は、10~1000krad程度が好ましい。
【0144】
以上の積層体2における粘着剤層11は、耐ブリスター性に優れるため、積層体2が、例えば85℃、85%RH条件下に72時間置かれた場合でも、粘着剤層11と各硬質板21,22との界面に気泡、浮き、剥がれ等が発生することが抑制される。また、ゲル分率が制御された粘着剤からなる粘着剤層11は、高温高湿条件下でも段差追従性に優れるため、積層体2が、例えば85℃、85%RH条件下に72時間置かれた場合でも、印刷層3による段差の近傍に気泡、浮き、剥がれ等が発生することが抑制される。
【0145】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0146】
例えば、粘着シート1における剥離シート12a,12bのいずれか一方または両方は省略されてもよく、また、剥離シート12aおよび/または12bの替わりに所望の硬質板(光学部材)が積層されてもよい。また、第1の硬質板21は、印刷層3以外の段差を有するものであってもよい。さらには、第1の硬質板21のみならず、第2の硬質板22も粘着剤層11側に段差を有するものであってもよい。
【実施例】
【0147】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0148】
〔実施例1〕
1.(メタ)アクリル酸エステル重合体の調製
アクリル酸2-エチルヘキシル60質量部、メタクリル酸メチル20質量部、およびアクリル酸2-ヒドロキシエチル20質量部を溶液重合法により共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の分子量を後述する方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)60万であった。
【0149】
2.粘着性組成物の調製
上記工程1で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部(固形分換算値;以下同じ)と、架橋剤(B)としてのトリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネート(綜研化学社製,製品名「TD-75」)0.25質量部と、帯電防止剤(C)としての4-メチル-1-オクチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(C1)3.0質量部と、シランカップリング剤(D)としての3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(D1)0.3質量部とを混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、粘着性組成物の塗布溶液を得た。
【0150】
ここで、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を100質量部(固形分換算値)とした場合の粘着性組成物の各配合(固形分換算値)を表1および2に示す。なお、表1および2に記載の略号等の詳細は以下の通りである。
[(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)]
2EHA:アクリル酸2-エチルヘキシル
MMA:メタクリル酸メチル
HEA:アクリル酸2-ヒドロキシエチル
ACMO:N-アクリロイルモルホリン
IBXA:アクリル酸イソボルニル
BA:アクリル酸n-ブチル
AA:アクリル酸
[架橋剤(B)]
XDI:トリメチロールプロパン変性キシリレンジイソシアネート(綜研化学社製,製品名「TD-75」)
TDI:トリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(トーヨーケム社製,製品名「BHS8515」)
エポキシ:1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン(三菱ガス化学社製,製品名「TETRAD-C」)
[帯電防止剤(C)]
C1:4-メチル-1-オクチルピリジニウムビス(フルオロスルホニル)イミド(イオン性液体)
C2:1-エチル-3-メチルイミダゾリウムビス(フルオロスルホニル)イミド(イオン性液体)
C3:1-ヘキシル-3-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート(イオン性固体)
C4:カリウムビス(フルオロスルホニル)イミドとテトラエチレングリコールジメチルエーテルとを1:1の質量比で混合した物(イオン性固体)
C5:リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(イオン性固体)
[シランカップリング剤(D)]
D1:3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
D2:3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン
【0151】
3.粘着シートの製造
上記工程2で得られた粘着性組成物の塗布溶液を、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した重剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET752150」)の剥離処理面に、ナイフコーターで塗布した。そして、塗布層に対し、90℃で1分間加熱処理して塗布層を形成した。
【0152】
次いで、上記で得られた重剥離型剥離シート上の塗布層と、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した軽剥離型剥離シート(リンテック社製,製品名「SP-PET382120」)とを、当該軽剥離型剥離シートの剥離処理面が塗布層に接触するように貼合し、23℃、50%RHの条件下で7日間養生することにより、重剥離型剥離シート/粘着剤層(厚さ:50μm)/軽剥離型剥離シートの構成からなる粘着シートを作製した。なお、粘着剤層の厚さは、JIS K7130に準拠し、定圧厚さ測定器(テクロック社製,製品名「PG-02」)を使用して測定した値である。
【0153】
4.積層体の製造
上記工程3で得られた粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、ポリカーボネート樹脂板にポリメタクリル酸メチル樹脂層を積層したプラスチック板(三菱ガス化学社製,製品名「ユーピロン・シート MR58U」,紫外線吸収剤含有,厚さ:1mm)のポリカーボネート樹脂板側の面に貼合して、粘着剤層付きプラスチック板を得た。
【0154】
上記で得られた粘着剤層付きプラスチック板から重剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を介して、当該プラスチック板を70mm×150mmの大きさのソーダライムガラス(日本板硝子社製,厚さ:0.7mm)に貼付した。そして、50℃、0.5MPaの条件下で30分間オートクレーブ処理し、常圧、23℃、50%RHにて24時間放置した。このようにして、粘着剤層によりプラスチック板(第1の硬質板)とガラス板(第2の硬質板)とを貼合した積層体(70mm×150mm)を得た。
【0155】
〔実施例2~9,比較例1,2,5〕
架橋剤(B)の種類、帯電防止剤(C)の種類および配合量、ならびにシランカップリング剤(D)の種類を表1に示すように変更する以外、実施例1と同様にして粘着シートおよび積層体を製造した。
【0156】
〔実施例10〕
1.(メタ)アクリル酸エステル重合体の調製
アクリル酸2-エチルヘキシル60質量部、アクリル酸イソボルニル10質量部、N-アクリロイルモルホリン10質量部、およびアクリル酸2-ヒドロキシエチル20質量部を溶液重合法により共重合させて、(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を調製した。この(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)の分子量を後述する方法で測定したところ、重量平均分子量(Mw)50万であった。
【0157】
2.粘着性組成物の調製
上記工程1で得られた(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)100質量部と、架橋剤(B)としてのトリメチロールプロパン変性トリレンジイソシアネート(トーヨーケム社製,製品名「BHS8515」)0.2質量部と、帯電防止剤(C)としてのカリウムビス(フルオロスルホニル)イミドとテトラエチレングリコールジメチルエーテルとを1:1の質量比で混合した物4.0質量部と、シランカップリング剤(D)としての3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(D1)0.3質量部と、活性エネルギー線硬化性成分(E)としてのε-カプロラクトン変性トリス-(2-アクリロキシエチル)イソシアヌレート(新中村化学社製,製品名「A-9300-1CL」)5.0質量部と、光重合開始剤としての2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド0.5質量部とを混合し、十分に撹拌して、メチルエチルケトンで希釈することにより、粘着性組成物の塗布溶液を得た。
【0158】
3.粘着シートの製造
上記工程2で得られた粘着性組成物の塗布溶液を使用する以外、実施例1と同様にして粘着シートを製造した。
【0159】
4.積層体の製造
上記工程3で得られた粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した活性エネルギー線硬化性の粘着剤層を、ポリカーボネート樹脂板にポリメタクリル酸メチル樹脂層を積層したプラスチック板(三菱ガス化学社製,製品名「ユーピロン・シート MR58U」,紫外線吸収剤含有,厚さ:1mm)のポリカーボネート樹脂板側の面に貼合して、粘着剤層付きプラスチック板を得た。
【0160】
上記で得られた粘着剤層付きプラスチック板から重剥離型剥離シートを剥離し、露出した活性エネルギー線硬化性の粘着剤層を介して、当該プラスチック板を70mm×150mmの大きさのソーダライムガラス(日本板硝子社製,厚さ:0.7mm)に貼付した。そして、50℃、0.5MPaの条件下で30分間オートクレーブ処理し、常圧、23℃、50%RHにて24時間放置した。
【0161】
次に、上記活性エネルギー線硬化性の粘着剤層に対して、プラスチック板越しに、下記の条件で活性エネルギー線(紫外線)を照射し、当該粘着剤層を硬化させた。このようにして、硬化した粘着剤層によりプラスチック板(第1の硬質板)とガラス板(第2の硬質板)とを貼合した積層体(70mm×150mm)を得た。
【0162】
<活性エネルギー線照射条件>
・高圧水銀ランプ使用
・照度200mW/cm2,光量1000mJ/cm2
・UV照度・光量計はアイグラフィックス社製「UVPF-A1」を使用
【0163】
〔実施例11,比較例3,4〕
(メタ)アクリル酸エステル重合体(A)を構成する各モノマーの種類および割合、架橋剤(B)の種類および配合量、ならびに帯電防止剤(C)の種類および配合量を表2に示すように変更する以外、実施例10と同様にして粘着シートおよび積層体を製造した。
【0164】
ここで、前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)したポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・測定装置:東ソー社製,HLC-8320
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK gel superH-H
TSK gel superHM-H
TSK gel superH2000
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0165】
〔試験例1〕(ゲル分率の測定)
実施例および比較例で製造した粘着シートを80mm×80mmのサイズに裁断して、その粘着剤層をポリエステル製メッシュ(メッシュサイズ200)に包み、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM1とする。
【0166】
次に、上記ポリエステル製メッシュに包まれた粘着剤を、室温下(23℃)で酢酸エチルに24時間浸漬させた。その後粘着剤を取り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境下で、24時間風乾させ、さらに80℃のオーブン中にて12時間乾燥させた。乾燥後、その質量を精密天秤にて秤量し、上記メッシュ単独の質量を差し引くことにより、粘着剤のみの質量を算出した。このときの質量をM2とする。ゲル分率(%)は、(M2/M1)×100で表される。結果を表3および4に示す。
【0167】
なお、実施例10,11および比較例3,4の粘着シート(積層体)については、粘着剤層に対して上記プラスチック板越しに活性エネルギー線(紫外線;UV)を照射(重剥離型剥離シート側から照射)する前後のゲル分率を測定した。活性エネルギー線の照射条件は以下の通りである。
【0168】
<活性エネルギー線照射条件>
・高圧水銀ランプ使用
・照度200mW/cm2,光量1000mJ/cm2
・UV照度・光量計はアイグラフィックス社製「UVPF-A1」を使用
【0169】
〔試験例2〕(ヘイズ値の測定)
実施例および比較例で製造した粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を、ソーダライムガラスに貼付した。この積層体における粘着剤層について、JIS K7136:2000に準じて、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「NDH-5000」)を用いてヘイズ値(%)を測定した。結果を表3および4に示す。
【0170】
なお、実施例10,11および比較例3,4の粘着シートについては、粘着剤層に対して活性エネルギー線(紫外線)を照射(重剥離型剥離シート側から照射)した後、ヘイズ値(%)を測定した。活性エネルギー線の照射条件は、試験例1と同様である。
【0171】
〔試験例3〕(粘着力の測定)
実施例および比較例で製造した粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を、易接着層を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製,製品名「PET A4300」,厚さ:100μm)の易接着層に貼合し、剥離シート/粘着剤層/PETフィルムの積層体を得た。得られた積層体を25mm幅、100mm長に裁断し、これをサンプルとした。
【0172】
23℃、50%RHの環境下にて、上記サンプルから重剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層を無アルカリガラス(コーニング社製,イーグルXG)に貼付したのち、栗原製作所社製オートクレーブにて0.5MPa、50℃で、20分加圧した。その後、23℃、50%RHの環境下で24時間放置してから、引張試験機(オリエンテック社製,テンシロン)を用い、剥離速度300mm/min、剥離角度180度の条件で粘着力(N/25mm)を測定した。ここに記載した以外の条件はJIS Z0237:2009に準拠して、測定を行った。結果を表3および4に示す。なお、表中の「AT」とは、上記PETフィルムの易接着層と粘着剤層との界面で剥がれたことを意味する。
【0173】
なお、実施例10,11および比較例3,4の粘着シートについては、上記と同様に無アルカリガラスに貼付してオートクレーブによる加圧を行った後、PETフィルムの上にプラスチック板(三菱ガス化学社製,製品名「ユーピロン・シート MR58U」,紫外線吸収剤含有,厚さ:1mm)を載置し、当該プラスチック板越しに粘着剤層に対して活性エネルギー線(紫外線;UV)を照射し、その後、上記と同様に24時間放置した後の粘着力についても測定した。活性エネルギー線の照射条件は、試験例1と同様である。
【0174】
〔試験例4〕(表面抵抗率の測定)
実施例および比較例で製造した粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥離し、露出した粘着剤層の粘着面について、JIS K6911に準拠して、表面抵抗率を測定した。具体的には、23℃、50%RHの環境下において、抵抗率測定器(三菱アナリテック社製,製品名「ハイレスタUP MCP-HT450型」)を使用して、軽剥離型剥離シートを剥離した粘着シート(100mm×100mm)に対して100Vの電圧を10秒間印加した後の、粘着剤層の粘着面の表面抵抗率(Ω/sq)を測定した。結果を表3および4に示す。なお、表面抵抗率が1.0×1014Ω/sqを越えたものは、表中に「over」と記載した。
【0175】
〔試験例5〕(抵抗値の測定)
実施例および比較例で製造した粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層をガラス板(ソーダライムガラス,厚さ1.1mm)に貼付した。そして、上記粘着剤層から重剥離型剥離シートを剥がして粘着剤層を露出させ、透明導電性フィルム(尾池工業社製,PETフィルムと透明導電層(ITO)との積層体,総厚125μm)を、その透明導電層側が上記粘着剤層と接するように積層し、サンプルを得た。当該サンプルについて、非接触抵抗測定器(ナプソン社製,製品名「EC-80」)を使用して、透明導電層の抵抗値(Ω/sq;耐久前)を測定した。結果を表3および4に示す。
【0176】
また、実施例1~9および比較例1,2,5で製造した積層体を、85℃、85%RHの湿熱条件に500時間投入し(耐久試験)、その後の透明導電層の抵抗値(Ω/sq;耐久後)を上記と同様にして測定した。そして、耐久前の抵抗値に対する耐久後の抵抗値(抵抗値変化:耐久後の抵抗値/耐久前の抵抗値)を算出した。結果を表3に示す。
【0177】
〔試験例6〕(剥離帯電圧の測定)
実施例および比較例で製造した粘着シートを25mm×100mmに裁断し、これをサンプルとした。23℃、相対湿度50%の環境下において、サンプルから剥離シートを手作業により2.0m/minの剥離速度で剥離し、剥離5秒後に、静電気測定器(シムコジャパン社製,製品名「FMX-003」)を使用して、粘着剤層の露出面から2.0cmの位置の静電電位(剥離帯電圧;kV)を測定した。結果を表3および4に示す。
【0178】
〔試験例7〕(異物付着試験)
クリーンルーム内ではない環境下にて、実施例および比較例で製造した粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥離し、粘着剤層を露出した状態で10時間放置した。その後、粘着剤層の露出面(20cm×20cm)に付着した、直径30μm以上の大きさの異物の数を数えた。その結果に基づき、以下の基準に基づいて、異物付着度合いを評価した。結果を表3および4に示す。なお、当該試験は、全ての実施例および比較例の粘着シートを並べて、同じ環境下で同時に行った。
〇:付着した異物の数が20個未満であった。
×:付着した異物の数が20個以上であった。
【0179】
〔試験例8〕(耐ブリスター性の評価)
実施例および比較例で製造した積層体を、85℃、85%RHの高温高湿条件下にて72時間保管した。その後、粘着剤層と被着体(プラスチック板,ガラス板)との界面における状態を目視により確認し、以下の基準により耐ブリスター性を評価した。結果を表3および4に示す。
◎…気泡や浮き・剥がれが全くなかった。
○…直径1mm未満の気泡が1~2個発生したが、浮き・剥がれはなかった。
△…直径1mm未満の気泡が3個以上発生したが、浮き・剥がれはなかった。
×…気泡や浮き・剥がれが発生した。
【0180】
〔試験例9〕(段差追従率の測定)
ガラス板(NSGプレシジョン社製,製品名「コーニングガラス イーグルXG」,縦90mm×横50mm×厚み0.5mm)の表面に、紫外線硬化型インク(帝国インキ社製,製品名「POS-911墨」)を額縁状(外形:縦90mm×横50mm,幅5mm)にスクリーン印刷した。次いで、紫外線を照射(80W/cm2,メタルハライドランプ2灯,ランプ高さ15cm,ベルトスピード10~15m/分)して、印刷した上記紫外線硬化型インクを硬化させ、印刷による段差(段差の高さ:7.5μm、10μm、20μmのいずれか1つ)を有する段差付ガラス板を作製した。
【0181】
実施例および比較例で製造した粘着シートから軽剥離型剥離シートを剥がし、露出した粘着剤層を、易接着層を有するポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製,製品名「PET A4300」,厚さ:100μm)の易接着層に貼合した。次いで、重剥離型剥離シートを剥がして粘着剤層を表出させ、ラミネーター(フジプラ社製,製品名「LPD3214」)を用いて、粘着剤層が額縁状の印刷全面を覆うように各段差付ガラス板にラミネートした。その後、50℃、0.5MPaの条件下で30分間オートクレーブ処理し、常圧、23℃、50%RHにて24時間放置した。
【0182】
なお、実施例10,11および比較例3,4の粘着シートについては、PETフィルムの上にプラスチック板(三菱ガス化学社製,製品名「ユーピロン・シート MR58U」,紫外線吸収剤含有,厚さ:1mm)を載置し、当該プラスチック板越しに粘着剤層に対して活性エネルギー線(紫外線)を照射し、粘着剤層を硬化させた。活性エネルギー線の照射条件は、試験例1と同様である。
【0183】
次いで、85℃、85%RHの高温高湿条件下にて72時間保管し(耐久試験)、その後、段差追従性を評価した。段差追従性は、粘着剤層により印刷段差が完全に埋められているか否かで判断し、印刷段差と粘着剤層との界面で気泡、浮き、剥がれなどが観察された場合は、印刷段差に追従できなかったと判断される。ここでは、段差追従性は、下記の式で示される段差追従率(%)として評価した。結果を表3および4に示す。
段差追従率(%)={(耐久試験後、気泡、浮き、剥がれ等が無く埋められた状態が維持された段差の高さ(μm))/(粘着剤層の厚み)}×100
【0184】
〔試験例10〕(耐湿熱白化性の評価)
実施例および比較例で製造した積層体について、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「NDH-5000」)を用いて、JIS K7136:2000に準じてヘイズ値(%)を測定した。
【0185】
次に、上記積層体を、85℃、85%RHの湿熱条件下にて72時間保管した。その後、23℃、50%RHの常温常湿に戻し、当該積層体について、ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「NDH-5000」)を用いて、JIS K7136:2000に準じてヘイズ値(%)を測定した。なお、当該ヘイズ値は、積層体を常温常湿に戻してから30分以内に測定した。
【0186】
上記の結果に基づき、湿熱条件後のヘイズ値から湿熱条件前のヘイズ値を差し引いて、湿熱条件後のヘイズ値上昇(ポイント)を算出した。湿熱条件後のヘイズ値上昇が1.0ポイント未満のものを耐湿熱白化性良好(○)、湿熱条件後のヘイズ値上昇が1.0ポイント以上のものを耐湿熱白化性不良(×)と評価した。結果を表3および4に示す。
【0187】
【0188】
【0189】
【0190】
【0191】
表3および4から分かるように、実施例で製造した粘着シートは、帯電防止性、耐ブリスター性および段差追従性に優れ、さらには、耐湿熱白化性にも優れるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0192】
本発明の粘着シートは、例えば、表示体の製造にあたり、段差を有する硬質の保護板と、所望の硬質の表示体構成部材との貼合に好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0193】
1…粘着シート
11…粘着剤層
12a,12b…剥離シート
2…積層体
21…第1の硬質板
22…第2の硬質板
3…印刷層