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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】マット備蓄構造物及びマット備蓄ベンチ
(51)【国際特許分類】
   A47C 7/62 20060101AFI20230630BHJP
   A47C 11/00 20060101ALI20230630BHJP
   A47C 27/15 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
A47C7/62 A
A47C11/00
A47C7/62 Z
A47C27/15 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019036502
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020137858
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-06-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000222495
【氏名又は名称】東リ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】鳥丸 幹雄
(72)【発明者】
【氏名】辻 由美
(72)【発明者】
【氏名】松本 龍樹
【審査官】井出 和水
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-033486(JP,A)
【文献】登録実用新案第3199411(JP,U)
【文献】特開2019-017446(JP,A)
【文献】特開平11-225853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47C 1/00 - A47C 31/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クッション性を有する板状のマットを上下方向に複数枚積み重ねて、人が乗ることができるように構成されたクッション本体と、
前記積み重ねた複数枚のマットが前記クッション本体に人が乗ったときに該人の体重がかかる方向とマットの積み重ね方向とが一致するように、前記マットを固定して積み重ねた状態を維持する固定手段と、を備え、
前記固定手段は、前記クッション本体に対して、積み重ねた状態を維持するように取り付け可能で、かつ、積み重ねたマットを個別に取り出すことができるように取り外し可能に構成される固定部と、前記クッション本体に対して肘掛けとして機能する肘掛け部とを有する、マット備蓄ベンチ。
【請求項2】
前記固定手段は、前記クッション本体に対して水平方向で対向するように一対設けられ
る、請求項1に記載のマット備蓄ベンチ。
【請求項3】
前記固定手段は、前記クッション本体を被覆する固定カバーを含む、請求項1又は請求
項2に記載のマット備蓄ベンチ。
【請求項4】
前記クッション本体は、マットを上下方向に複数枚積み重ねて構成され、
前記肘掛け部は、前記クッション本体の上面から上方に向けて立設される請求項1~請
求項3のいずれか1項に記載のマット備蓄ベンチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マットを備蓄可能な構造物であるマット備蓄構造物及びマット備蓄ベンチに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、災害時に必要な防災関連用品を収納可能なベンチが公知である(特許文献1)。例えば、このベンチは、ボックス状の脚と、脚にわたされた板状体と、を備える。脚は、上面に設けられた洋式便座と下面に設けられた排出口とを有し、トイレとして利用可能である。板状体は、タンカとして利用可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-125231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、備蓄が望まれる防災関連用品として、トイレやタンカに加えて、医薬品、飲料水、非常食等が挙げられる。しかしながら、災害時には、多くの人が避難場所の床に直接座ったり寝たりする事態が想定され、硬い床による体の痛み、底冷え等によって、睡眠不足や体調不良が引き起こされ、災害ストレスや緊張が増幅されることとなる。このような事情により、人が寝たり座ったりして休息できるクッション性を有するマットの備蓄が要望されているが、人命救助の観点では、非常食等よりも優先度が低い上に、マットが嵩張ることから収容空間の確保が困難であった。
【0005】
本発明は、複数枚のマットを備蓄可能なマット備蓄構造物及びマット備蓄ベンチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のマット備蓄構造物は、クッション性を有するマットを複数枚積層して構成されたクッション性を有するクッション本体と、前記マットを固定して積層状態を維持する固定手段と、を備えている。
【0007】
かかる構成によれば、通常時にベンチ等として使用される構造物のクッション本体が、例えば、災害時等にそれぞれ使用可能な複数のマットで構成されているため、この構造物は、複数のマットを備蓄可能である。クッション本体を構成する複数枚のマットは、例えば、通常時には積層された状態とされてベンチ等の人が乗る部分である座面として使用されるので嵩張ることがなく、災害時等には順次取り出されると共に床等に敷かれた状態とされて人が寝そべる等して使用できる。
【0008】
しかも、通常時に人が構造物に乗ることでクッション本体に体重がかかっても、固定手段がマットを固定してマットの積層状態を維持しているため、この積層状態が崩れにくい。
【0009】
また、前記固定手段は、前記クッション本体の上面から上方へ立設される立設部を有してもよい。
【0010】
かかる構成によれば、例えば、固定手段の立設部を椅子の肘掛けや背もたれやベッドの手すり等として用いることができる。
【0011】
さらに、前記構造物は、前記クッション本体を被覆するカバーを備えてもよい。
【0012】
かかる構成によれば、カバーにより積層されたマットが被覆されることにより、通常時の構造物の外観には積層されたマットが現れないため、構造物の外観が良好となる。
【0013】
前記マット備蓄構造物は、マット備蓄ベンチであって、前記クッション本体の上面は座面である、マット備蓄ベンチであってもよい。
【0014】
かかる構成によれば、マット備蓄構造物をベンチとして用いることができる。
【発明の効果】
【0015】
以上より、本発明によれば、複数枚のマットを備蓄可能なマット備蓄構造物及びマット備蓄ベンチを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本実施形態に係る構造物の斜視図である。
図2図2は、図1の構造物の分解斜視図である。
図3図3は、図1の構造物を説明するための図であり、図3(a)は図1から前記構造物のカバーを取り外した状態の斜視図であり、図3(b)は前記構造物の前記クッション本体を構成するマットの斜視図である。
図4図4は、変形例に係る構造物を説明するための図であり、図4(a)は図4から前記構造物のカバーを取り外した状態の斜視図であり、図4(b)は前記構造物の前記クッション本体を構成するマットの斜視図である。
図5図5は、図4の構造物を説明するための斜視図である。
図6図6は、変形例に係る構造物を説明するための模式図であって、図6(a)は前記構造物の斜視図であり、図6(b)は図6(a)から前記構造物のカバーを取り外した状態の斜視図である。
図7図7は、図6(b)の分解斜視図である。
図8図8は、図6の構造物を説明するための図であり、図8(a)は前記構造物のクッション本体のマットの斜視図であり、図8(b)は前記構造物の板部材の斜視図である。
図9図9は、変形例に係る構造物を説明するための模式図であって、図9(a)は前記構造物のカバーを取り外した状態の斜視図であり、図9(b)は前記構造物の前記固定手段の斜視図である。
図10図10は、図9の構造物を説明するための模式図であって、図10(a)は前記構造物の平面図であり、図10(b)は図10(a)の断面図である。
図11図11は、変形例に係る構造物を説明するための模式図であって、図11(a)は前記構造物の断面図であり、図11(b)は前記構造物の一部拡大図である。
図12図12は、変形例に係る構造物を説明するための側面図である。
図13図13は、変形例に係るカバーを説明するための模式図であって、図13(a)は前記カバーにおける座面被覆部を上方に向けた状態のカバーの斜視図であり、図13(b)は前記カバーにおける座面被覆部を下方に向けた状態のカバーの斜視図である。
図14図14は、変形例に係る構造物の斜視図である。
図15図15は、図14の構造物からロック手段を除いた分解斜視図である。
図16図16は、変形例に係る構造物におけるクッション本体の斜視図である。
図17図17は、変形例に係る構造物におけるクッション本体の斜視図である。
図18図18は、変形例に係る構造物におけるマットを説明するための模式図であって、図18(a)は全体を広げた状態のマットの斜視図であり、図18(b)は一部を折りたたんだ状態のマットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図1図3(b)を参照しつつ説明する。マット備蓄構造物である構造物1は、図1に示すように、クッション性を有するクッション本体2と、マット3を固定して積層状態を維持する固定手段4と、を備える。クッション本体2は、図2及び図3(a)に示すように、マット3を複数枚積層して構成される。また、本実施形態の構造物1は、マット備蓄ベンチである。本明細書において、ベンチとは、イス、カウチ、ソファーなどを含む概念である。
【0018】
マット3は、積層された状態でクッション本体2を構成し、且つ、クッション性を有するマットであり、積層してもその形状が維持される。また、マット3は、単体で床面等に敷設して、使用することもできる。本実施形態のクッション本体2に含まれるマット3の材質や形状はそれぞれ異なっていてもよいが、同じであることが望ましい。マット3は、例えば、発泡シートである。マット3の材質は、軟質樹脂であることが好ましく、例えば、ポリ塩化ビニル、ウレタン、オレフィン、アクリル、スチレン、ポリエチレン、ポリ酢酸ビニル、ゴムなどであるが、加工性や耐久性に優れることから、ポリ塩化ビニルが好ましい。
【0019】
マット3の形状は、図3(b)に示すように、例えば、長尺板状である。具体的に、マット3を厚み方向から視たときの形状は、四隅が欠けた長方形状、即ち、固定手段4との固定のため四隅に凹部30が設けられた長方形状である。マット3の厚み方向とは、マット3を床面に敷設して使用するときの垂直方向、すなわち、図3(b)の紙面の上下方向である。四つの凹部30の形状は、いずれも同じである。凹部30は、マット3の面方向における内側に凹んでいる、即ち、マット3の面方向における中央に近づくように凹んでいる。凹部30の角度は、例えば、直角である。凹部30は、マット3の長手方向に延びる凹部第一外縁31と、マット3の短手方向に延びる凹部第二外縁32とで区画されている。
【0020】
本実施形態のマット3では、いずれの部位の厚みも均一である。マット3の厚みは、たとえば2.0mm以上100mm以下であり、3.0mm以上50mm以下が好ましく、4.0mm以上10mm以下がより好ましい。マット3は、その厚みが下限値以上であれば、クッション性や強度を確保することができ、上限値以下であれば、マット3が厚くなりすぎないので、持ち運び性に優れ、また、多くのマット3を備蓄することができる。
【0021】
このような厚みのマット3であれば、クッション本体2におけるマット3の積層枚数は、4枚以上200枚以下であることが好ましく、50枚以上90枚以下であることが望ましい。このような厚みのマット3の積層枚数が50枚以上90枚以下であることにより、クッション本体2の座面21の高さが、例えば、床から300mm以上400mm以下といった適切な高さになる。
【0022】
マット3の短手方向における寸法は、500mm以上1500mm以下が好ましく、600mm以上1200mm以下であることが望ましい。マット3の長手方向における寸法は、1600mm以上2400mm以下が好ましく、1800mm以上2000mm以下であることが望ましい。マット3の短手方向における寸法が下限値以上であれば、ベンチとして使用する際にクッション本体2の奥行きの寸法を確保できる。また、マット3の長手方向における寸法は、この下限値以上であれば、人が座ったり寝たりする面積を確保でき、上限値以下であれば、大きくなりすぎずマット3の収容空間の確保が容易となる。
【0023】
例えば、マット3は、東リ株式会社製の製品名「アンダーレイシート」を6mm厚で製造したものを使用している。アンダーレイシートは、ビニル床シート等の下に施工して転倒時の衝撃を緩和するために使用される製品であり、塩化ビニル樹脂等からなる発泡層を備えていることから、優れた衝撃吸収性を有する。
【0024】
クッション本体2は、人が乗ることのできるクッション性を有するブロックである(図2図3(a)参照)。本実施形態のクッション本体2は、床に直接設置される。また、本実施形態のクッション本体2では、マット3の積層方向が、一方向である。具体的には、マット3の積層方向は、垂直方向、即ち、上下方向であり、例えば、ベンチの高さ方向である。なお、本実施形態のクッション本体2では、マット3が、広げられた状態、即ち、折りたたまれていない状態で積層されている。
【0025】
さらに、本実施形態のクッション本体2の形状は、例えば、略直方体状である。具体的に、クッション本体2の形状は、四隅が欠けた直方体状、例えば、四隅に凹部20が設けられた直方体状である(図2参照)。四つの凹部20の形状は、いずれも同じである。凹部20は、クッション本体2の座面21や下面22の面方向における内側に凹んでいる、例えば、座面21や下面22の面方向における中央に近づくように凹んでいる。凹部20の凹みの角度は、例えば、直角である。
【0026】
また、本実施形態のクッション本体2は、人が乗ることができる上面であり、積層されたマット3のうち最も上方に位置するマット3の上面である座面21と、座面21と対向し且つ床に設置され、積層されたマット3のうち最も下方に位置するマット3の下面である下面22と、を有する。また、クッション本体2は、積層されたマット3の側面、即ち、外周面、例えば、一対の長壁面23と、一対の短壁面24と、隣り合う長壁面23及び短壁面24とを接続し且つ凹部20を区画する凹部第一面25及び凹部第二面26と、を有する。凹部第一面25は、マット3の長手方向に沿って延びており、例えば、マット3の長手方向、即ち、クッション本体2の座面21や下面22の長手方向に延びている。凹部第二面26は、マット3の短手方向に沿って延びており、マット3の短手方向、即ち、クッション本体2の座面21や下面22の短手方向に延びている。
【0027】
本実施形態のクッション本体2には、着脱可能に固定手段4が取り付けられている。このクッション本体2は、例えば、固定手段4と対応する形状であり、少なくとも一部がマット3の長手方向及び短手方向において固定手段4と接触することにより、マット3の面方向の移動を規制する被規制部200を有する。なお、被規制部200は、マット3の面方向において固定手段4と接触することによりマット3の面方向の移動を規制していればよく、この場合、被規制部200の形状と固定手段4の被規制部200と対向する部位のする形状は、一致している部分が多いほどマットの面方向の移動を規制する効果が高いが、必ずしも全て一致している必要はない。
【0028】
クッション本体2の被規制部200には、例えば、マット3の長手方向の両端においてそれぞれ並び且つマット3の長手方向に沿った方向において固定手段4に当たる一対の長手方向被規制部24、26や、マット3の短手方向の両端において並び且つマット3の短手方向に沿った方向において固定手段4に当たる一対の短手方向被規制部25が設けられている。例えば、長手方向被規制部24、26の形状が固定手段4の長手方向被規制部24、26と対向する部位と対応する形状を有し、短手方向被規制部25の形状が固定手段4の短手方向被規制部25と対向する部位と対応する形状を有している。短手方向被規制部25の形状が固定手段4の短手方向被規制部25と対向する部位と対応する形状は、一致している部分が多いほどマット3の面方向の移動が規制をする効果が高いが、必ずしも全て一致している必要はなく対応する部分が一部であっても規制することができる。長手方向被規制部24、26についても同様である。
【0029】
長手方向被規制部24、26は、後述する長手方向規制部432、440が側方から当接することによって、マット3の位置を規制して長手方向への位置ずれを抑制する部分を指す。本実施形態のクッション本体2では、クッション本体2の長手方向にそれぞれ並ぶ一対の短壁面24や一対の凹部第二面26が一対の長手方向被規制部26である。
【0030】
短手方向被規制部25は、後述する短手方向規制部431が側方から当接することによって、マット3の位置を規制して短手方向への位置ずれを抑制する部分を指す。本実施形態のクッション本体2では、クッション本体2の短手方向に並ぶ一対の凹部第一面25が一対の短手方向被規制部25である。
【0031】
固定手段4は、着脱可能にクッション本体2に取り付けられる。また、固定手段4は、クッション本体2に取り付けられた状態において、マット3の積層状態が崩れないように固定し、例えば、マット3の面方向における位置ずれを規制する。本実施形態の固定手段4は、マット3を固定してマット3の積層状態を維持しているが、必ずしも全てのマット3を完全に固定する必要はない。固定手段4は、例えば、通常状態では固定部材40とマット3とが非接触だが、マット3にずれが生じてマット3の積層状態が崩れそうになった場合だけ固定部材40とマット3が接触して積層状態を維持する構成など、マット3の位置をマット3の積層状態が崩れない程度に規制している構成も含む。なお、マット3の面方向は、例えば、マット3の長手方向及びマット3の短手方向の少なくとも一方を含む。本実施形態の固定手段4は、一対設けられ、例えば、水平方向においてクッション本体2を挟むように一対設けられた固定部材40と、少なくともクッション本体2を被覆する固定カバー5と、を含む。
【0032】
本実施形態の固定部材40は、固定カバー5を介してクッション本体2に取り付けられる。具体的に、固定部材40は、固定カバー5に着脱可能な固定部材着脱部49として、ファスナーを有する。ファスナーには、点ファスナー、線ファスナー、面ファスナーが含まれるが、本実施形態では、線ファスナーを用いた例で説明する。固定部材着脱部49は、例えば、固定部材40のうちクッション本体2の短壁面24と対向する面の外縁の少なくとも一部に配置され、具体的には、この外縁のうち上端縁及び側端縁に配置されている。面ファスナーは、特に固定部材40と固定部材着脱部49とを簡単な操作で、外れにくく、かつ平面状態で隙間なく結合することができるという特性があるので本発明に好適である。
【0033】
一対の固定部材40は、マット3の長手方向においてクッション本体2を挟むように設けられている。一対の固定部材40の形状は、いずれも同一である。なお、一対の固定部材40の形状は、異なる形状、例えば、左右非対称の形状であってもよい。また、本実施形態の固定部材40は、マット3の積層状態をまとめて固定する固定部41、及び、クッション本体2の上面である座面21を含む面から上方に延びる、即ち、立設される立設部42の少なくとも一方を有する。具体的に、固定手段4は、このような固定部41と、立設部42としてベンチにおける肘掛けとして機能する肘掛け部42と、を有する。
【0034】
固定部41の形状は、クッション本体2の形状と対応する形状であり、例えば、略矩形板状である。本実施形態の固定部41の高さは、クッション本体2の高さと略同じである。また、本実施形態の固定部41は、矩形板状の本体部位44と、本体部位44の主面440の両端部からそれぞれ本体部位44の厚み方向に延び、互いに間隔をあけて配置された一対の凸部43と、を有する。
【0035】
凸部43の本体部位44の主面440からの突出量は、クッション本体2の凹部20の凹みと略同一の寸法である。また、凸部43は、クッション本体2の高さ方向における全域に延びている。本体部位44の厚み方向に直交し且つ高さ方向に直交する方向における寸法、具体的に、本体部位44の一対の凸部43の並び方向における間隔の寸法は、クッション本体2の短壁面24の短手方向における寸法と略同一である。凸部43の凹部20と対向する部位の角度は、例えば、直角である。凸部43の外周面は、マット3の長手方向に延びる凸部第一面431と、マット3の短手方向に延びる凸部第二面432と、を含む。
【0036】
本実施形態の各固定部41は、マット3の短手方向に並ぶ一対の凸部43を有するため、凸部第一面431はマット3の短手方向においてクッション本体2を挟むように一対存在する(図2参照)。また、この固定部41は、マット3の長手方向においてクッション本体2を挟むように一対配置されているため、凸部第二面432は、クッション本体2を挟んで一対存在する。
【0037】
なお、固定部41は、クッション本体2の被規制部200に当接することでマット3の面方向における移動を規制する規制部400を有する。本実施形態の固定部41の規制部400は、クッション本体2を構成する複数のマット3の面方向における移動を規制することにより、クッション本体2の位置ずれを抑制することができる。規制部400は、マット3の長手方向への位置ずれを抑制する長手方向規制部432と、マット3の短手方向への位置ずれを抑制する短手方向規制部431と有する。
【0038】
本実施形態では、長手方向規制部432は、マット3の長手方向においてクッション本体2を挟むように配置された一対の凸部第二面432である。短手方向規制部431は、マット3の短手方向においてクッション本体2を挟むように配置された一対の凸部第一面431である。
【0039】
肘掛け部42は、固定部41から上方に延びる延出部位45と、延出部位45上に配置される肘掛け部位46と、を含む。本実施形態の肘掛け部42では、延出部位45は一対設けられ、一対の延出部位45は、それぞれ、本体部位44の主面440と連続する上面441から上方に延びる。主面440は、マット3の両端部に長手方向から当接することで長手方向規制部440としても機能する。なお、本実施形態の上面441は、クッション本体2の座面21を含む面に位置している。延出部位45の形状は、いずれも丸棒状である。なお、延出部位45の形状は、丸棒状以外の形状、例えば、角棒状等であってもよい。肘掛け部位46の形状は、角が丸まった矩形板状である。肘掛け部位46の長手方向における両端部は、一対の延出部位45により支持されている。なお、本実施形態の固定部41及び肘掛け部42の材質は、例えば、硬質樹脂、木、金属等であるが、耐久性があり、水にも強く、形状の自由度が高いことから、硬質樹脂が望ましい。固定部41と、肘掛け部42とは、同じ材料でもよいし、異なっていてもよい。
【0040】
固定カバー5は、クッション本体2を被覆することでマット3の積層状態を隠して意匠性を向上させ、また、マット3を保護して汚損を防ぐものである。本実施形態の固定カバー5の材質は、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン等の軟質樹脂、布、革等である。このような柔軟な材質を用いることによって、マット3のクッション性を阻害せず、複数のマット3を一体化させてクッション本体2として機能させることができ、また触感にも優れるものとなる。また、本実施形態の固定カバー5は、固定部41に着脱可能なカバー着脱部50として、ファスナーを有する。カバー着脱部50は、例えば、固定カバー5の外縁の少なくとも一部に配置され、具体的に、この外縁のうち上端縁及び側端縁に配置されている。
【0041】
また、固定カバー5は、クッション本体2の外周面の少なくとも一部、例えば、直方体状のクッション本体2の少なくとも三面を被覆し、具体的に、クッション本体2の座面21、及び、クッション本体2の側面のうち固定部41に囲まれていない面を被覆する。また、固定カバー5は、クッション本体2の座面21、及び、長壁面23を被覆する。本実施形態の固定カバー5は、クッション本体2の座面21を覆う座面被覆部51と、クッション本体2の側面、例えば、長壁面23を被覆する側面被覆部52と、を有する。さらに、固定カバー5は、上述の機能に加えて、マット3を固定して積層状態を維持する機能を有する。本実施形態の固定カバー5の形状は、クッション本体2の形状と対応している。
【0042】
このような構成により、通常時、即ち、固定部材40が固定カバー5を介してクッション本体2に取り付けられた状態において、固定部材40の凸部43がクッション本体2の凹部20に嵌合することで、固定部材40がマット3の積層状態を維持する。なお、このとき、本体部位44の厚み方向は、マット3の長手方向と一致している。固定部材40の長手方向規制部432は、クッション本体2の長手方向被規制部26の高さ方向全域における全域に当接することにより、マット3の積層体全体の長手方向への位置ずれを規制する。短手方向規制部431は、クッション本体2の短手方向被規制部25の高さ方向における全域に当接することにより、マット3の積層体全体の短手方向への位置ずれを規制する。
【0043】
本実施形態の構造物1は、例えば、マット3を積層することでクッション本体2を構成し、クッション本体2を固定カバー5で覆った後、固定カバー5で覆われたクッション本体2に固定部材40を取り付けることで組み立てられる。このように積層された状態のマット3は、通常時にベンチにおける人が座る部位として機能する。なお、本実施形態のクッション本体2への固定部材40の取り付けの際には、一対の固定部材40により、固定カバー5で被覆したクッション本体2をクッション本体2の長手方向における両側から挟み込み、さらに、カバー着脱部50を固定部材着脱部49に取り付ける。これにより、クッション本体2は、一対の固定部材40及び固定カバー5と一体化する。
【0044】
一方、本実施形態の構造物1では、例えば、クッション本体2から固定部材40及び固定カバー5を取り外すことで、クッション本体2を構成する各マット3を順次取り出して使用することができる。このように取り出された各々のマット3は、災害時等に人が座ったり寝そべったりするマットとして機能する。なお、本実施形態のクッション本体2からの固定部材40の取り外しの際には、カバー着脱部50と固定部材着脱部49とを取り外し、さらに、一対の固定部材40をクッション本体2の長手方向における両側から外側に取り外す引き抜くことで、固定カバー5で被覆されたクッション本体2から取り外した後に、クッション本体2から固定カバー5を取り外す。
【0045】
なお、構造物1は、空港・駅・ショッピングセンター等の施設や住居等の屋内施設、公園などの屋外施設、車両や船舶といった輸送手段等に設置されて使用される。災害時のみならず、大勢の人が集まるイベントの開催時等においても、固定カバー5内からマット3を取り出して床面等に敷設することで、マット3の上で休息することができる。
【0046】
以上の構造物1によれば、通常時にベンチ等として使用される構造物1のクッション本体2が、例えば、災害時等にそれぞれ使用可能な複数枚のマット3で構成されているため、この構造物1は、複数枚のマット3を備蓄可能である。具体的に、構造物1は、ベンチ等の通常時に人が乗ることで使用される家具と、マット3の備蓄する装置とを兼ねるため、構造物1を置くスペースに加えて、マット3を複数枚備蓄するためのスペースを別途設ける必要が無い。なお、クッション本体2を構成する複数枚のマット3は、例えば、通常時には積層された状態とされてベンチ等の人が乗る部分である座面として使用され、災害時等には順次取り出されると共に床に敷かれた状態とされて人が寝そべる等して使用できる。
【0047】
本実施形態の構造物1によれば、固定手段4がマット3を固定して積層状態を維持しているため、通常時に人が構造物1に乗ることでクッション本体2に体重がかかっても、マット3の積層状態が崩れることがない。しかも、固定手段4が、マット3の面方向における位置ずれを規制するため、マット3の積層状態が崩れることを確実に抑えることができる。具体的に、本実施形態の固定部41は、短手方向規制部431を有するため、クッション本体2の短手方向における位置ずれを規制できる。また、本実施形態の固定部41は、長手方向規制部432を有するため、クッション本体2の長手方向における位置ずれを規制できる。尚、固定手段4がマットを固定して積層状態を維持するためには、必ずしも固定手段4に常時接触している必要はなく、マット3の位置が一定以上ずれた際に接触して規制するようになっていてもよい。
【0048】
さらに、固定部41がマット3の積層状態をまとめて固定するため、マット3に対する一対の固定部41の取り付けの作業が一度の作業で完了できるため、一度の作業により効率的にマット3の位置ずれを規制することができる。
【0049】
しかも、固定部41は、クッション本体2に取り付けられた状態では、水平方向においてクッション本体2を挟むように一対設けられている。そのため、固定部41のクッション本体2への取り付けの際に、一対の固定部41により、床に設置したクッション本体2を両側、例えば、クッション本体2の長手方向における両側から挟み込むことにより、固定部41とクッション本体2との位置決めが可能であり、取り付けが容易である。
【0050】
また、本実施形態の構造物1によれば、固定手段4がクッション本体2の座面21を含む面から立設された立設部42を含むため、固定手段4の立設部42をベンチの肘掛け等として用いることができる。このように、立設部42が既存の家具、例えば、ベンチの一部を構成する部材を兼ねることで、構造物1に肘掛けとして用いることができることにより、別途、マット3の積層状態を維持するような部材を設ける必要が無いため、部品点数を抑えることができる。また、立設部42を備えていたとしても、構造物1の外観が、既存のベンチに近くなり、通常時に違和感無く使用することができる。
【0051】
さらに、本実施形態の構造物1によれば、積層されたマット3が固定カバー5により被覆されることにより、通常時の構造物1の外観には積層されたマット3が現れない。そのため、構造物1の外観が、既存のベンチと類似した良好なものとなる。
【0052】
しかも、本実施形態の構造物1によれば、マット3の積層方向が垂直方向であるため、人が乗っていない状態において、マット3の積層方向と、マット3の自重がかかる方向とが一致することから、マット3の積層状態が維持されたままとなりやすい。また、同様に、人が構造物1に乗ったときでも、マット3に体重がかかる垂直方向と、マット3の積層方向とが一致することから、マット3の積層状態が維持されたままとなりやすい。
【0053】
なお、本発明の構造物は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0054】
例えば、構造物1は、ベンチであったが、ベンチ以外に、スツールのような一人用の椅子、ベッド等の人が乗るクッション性を有する部位を含む家具であってもよい。また、構造物1は、子供が遊ぶようなクッション性を有するキッズコーナーの床や、この床と比べて一段高くなった仕切り等であってもよい。例えば、構造物1が床や仕切り等を含むキッズコーナーである場合、キッズコーナーの床に対応する領域や仕切りに対応する領域においてクッション本体2を構成するマット3が積層される枚数を異ならせることで、この各領域におけるクッション本体2の高さを異ならせることができる。これにより、通常時に、クッション本体2の高さが低い領域をキッズコーナーの床として使用し、クッション本体2の高さが高い領域をキッズコーナーの仕切りとして使用することができる。ただし、応用例の中ではベンチが通常使用時の利便性が高く、マットにした場合の大きさも利用し易いので最も好ましい。
【0055】
上記実施形態では構造物1がベンチであり、固定手段4の立設部42が肘掛けを兼ねていたが、例えば、構造物1が椅子である場合に、立設部42は肘掛け及び背もたれの少なくとも一方を兼ねてもよい。例えば、構造物1がベッドである場合に、立設部42は手すり及びヘッドボードの少なくとも一方を兼ねてもよい。立設部42を手すりやヘッドボードとして活用すると、少ない部材で利便性を高めることができるという効果がある。
【0056】
上記実施形態では、固定手段4の凸部第一面431、凸部第二面432、及び、主面440、即ち、固定手段4のクッション本体2と対向する面の全体が、クッション本体2と当接していたが、これらの少なくとも一部がクッション本体2と離間していてもよい。この場合も、固定手段4のクッション本体2と対向する面がクッション本体2の短手方向や長手方向に延びていれば、クッション本体2の動きを規制することができるので規制部400として機能する。また、固定手段4の長手方向規制部432は、クッション本体2の短手方向において長手方向被規制部26と略平行に延びていたが、短手方向に沿って延びていればよく、例えば、短手方向に沿った斜め方向に延びていたり、短手方向に沿って湾曲して延びていたりしてもよい。短手方向規制部431は、クッション本体2の長手方向において短手方向被規制部25と略平行に延びていたが、長手方向に沿って延びていればよく、例えば、長手方向に沿った斜め方向に延びていたり、長手方向に沿って湾曲して延びていたりしてもクッション本体2の動きを規制することができるので規制部400として機能する。
【0057】
さらに、固定部材40は、固定部41と立設部42とを含んでいたが、これらのうち一方を含んでいなくてもよい。例えば、固定部材40が、図4(a)に示すように、積層されたマット3のうち複数枚のマット3の積層状態を縛ることにより固定する束縛部47を有してもよい。同図では、束縛部47は、マット3の積層状態を一括で縛ることにより固定しており、具体的には、ゴムバンドであってもよい。束縛部47は、マット3の面方向における移動を規制すると共に、マット3の厚み方向における移動を規制することが考えられ、同図では、束縛部47は、積層されたマット3の長手方向における両端部27及び中央部28をそれぞれ固縛するよう三つ配置されている。
【0058】
なお、束縛部47は、ゴムバンドの代わりに紐であってもよく、この場合、紐はクッション本体2を固縛し、固縛されたクッション本体2を板等に載置してタッカーを用いてこの紐と板とを留めることが考えられる。このような固定部材40であっても、マット3の積層状態を維持し、マット3の少なくとも面方向における位置ずれを規制することができ、例えば、マットの厚み方向における位置ずれも規制することができる。
【0059】
また、構造物1は、束縛部47で固定されたクッション本体2の少なくとも一部を囲む枠状、或いは、箱状の固定部41を備えてもよく、同図では、固定部41は、クッション本体2の略下半分を収容する箱状である。固定部41は、クッション本体2の外周の積層方向における全域を囲む枠であれば、マット3を一括で固定してマット3の積層状態を一括で維持することができる。
【0060】
さらに、固定部41は、同図では、上端に設けられた固定部材着脱部49と、短手方向規制部410としてクッション本体2の短手方向においてクッション本体2を挟む一対の長壁面410と、長手方向規制部411としてクッション本体2の長手方向においてクッション本体2を挟む一対の短壁面411と、を有する。また、クッション本体2の被規制部200は、クッション本体2の側面、例えば、長壁面23や短壁面24である。なお、マット3の厚み方向から視たときの形状は、図4(b)に示すように、長方形状とすることが考えられる。
【0061】
このとき、固定カバー5は、図5に示すように、クッション本体2のうち固定部41に収容されない部分、即ち、クッション本体2のうち略上半分を覆うことが考えられる。また、固定カバー5は、同図では、下端に設けられたカバー着脱部50を有している。
【0062】
この構造物1では、クッション本体2に固定手段4を取り付ける際には、積層されたマット3を束縛部47で固定し、クッション本体2の略下半分を固定部41に収容する一方、クッション本体2の略上半分を固定カバー5で被覆し、さらに、固定カバー5を固定部41に取り付けることが考えられる(図4(a)、図5参照)。
【0063】
また、固定手段4は、上記形態のほか、図6(a)~図7(b)に示すように、少なくとも一ヵ所において、クッション本体2をマット3の厚み方向に貫通する固定部41を有してもよい。このとき、固定部41は、積層されたマット3を貫通することで、マット3の長手方向や短手方向の位置ずれを規制する貫通規制部401として機能することになる。
【0064】
具体的に、固定手段4は、積層されたマット3のうち少なくとも複数枚、例えば、全体を貫通することでマット3の積層状態を維持する固定部41と、固定部41から上方に延びる延出部位45及び肘掛け部位46を含む立設部42とを有することが考えられる。固定部41の形状は、例えば、棒状であり、同図では、丸棒状である。固定部41の長手方向における寸法は、クッション本体2の高さと略同一となっている。
【0065】
クッション本体2の四隅には、固定部41を挿通し且つマット3の厚み方向に貫通した貫通孔29が設けられることが考えられる。貫通孔29は、固定部41と対応した形状であり、同図では、丸棒状に対応する丸孔である。このように貫通孔29は、固定部41と対応した形状であると、マット3の移動可能な範囲が少なくなるので、クッション本体2を規制する効果が高くなる。この貫通孔29を区画する面が、貫通被規制部201として機能する(図7参照)。このとき、マット3の厚み方向から視たときの形状は長方形状となっている。また、マット3の四隅には、図8(a)に示すように、固定部41を挿通し且つマット3の厚み方向に貫通する貫通孔33が設けられることになる。なお、積層されたマット3を貫通する固定部41の形状は、板状、例えば、マット3の短手方向に延びる板状も取り得る。この場合、固定部41を挿通するマット3の貫通孔は、二つの貫通孔33をマット3の短手方向において連通させた細長い矩形状の貫通孔であることが考えられる。
【0066】
固定部41が棒状、例えば、丸棒状であるとき、固定カバー5は、クッション本体2を被覆すると共に、四隅に設けられた貫通孔53から立設部42を露出してもよい(図6(a)参照)。このような固定手段4であっても、マット3の積層状態を維持し、マット3の面方向における位置ずれのうち回転方向の位置ずれ以外の位置ずれ、例えば、マット3の長手方向における位置ずれ及び短手方向における位置ずれの両方を規制することができる。
【0067】
なお、クッション本体2をマット3の厚み方向に貫通する固定部41は、一つであってもよく、この場合においても、固定部41が、例えば、マット3の長手方向における位置ずれ及び短手方向における位置ずれの両方を規制することができる。
【0068】
さらに、構造物1は、クッション本体2の座面21以外の面、例えば、一対の長壁面23や一対の短壁面24を含む側面や下面22に取り付けられた板部材6を備えてもよく、図6(b)では、クッション本体2の下面22に取り付けられる板部材として、長尺板状の板部材6を備え、クッション本体2は板部材6を介して床に設置される。板部材6は、例えば、樹脂製の板であってもよく、この場合、板部材6は、板部材6の外周縁の上端に配置され、且つ、固定カバー5のカバー着脱部50と着脱可能な板部材着脱部60を有することが考えられる(図6(a)参照)。板部材着脱部60は、例えば、ファスナーであってもよく、同図では、線ファスナーである。
【0069】
この場合、固定部41は、クッション本体2に加えて板部材6も厚み方向に貫通してもよい。また、図8(b)では、板部材6にも、固定部41を挿通し且つ板部材6の厚み方向に貫通する貫通孔61が設けられる。なお、クッション本体2の側面に板部材6を取り付け、この板部材6をクッション本体2の座面21よりも高い位置まで延出させることで、板部材6をベンチの背もたれとして利用してもよい。
【0070】
このような構成では、固定部41は、マット3の長手方向や短手方向における位置ずれに加えて、マット3と板部材6との長手方向や短手方向における位置ずれも規制することができる。また、この構造物1では、クッション本体2に固定手段4を取り付ける際には、板部材6の上にマット3を積層し、積層されたマット3を固定カバー5で被覆し、固定カバー5で被覆されたクッション本体2の貫通孔29、板部材6の貫通孔61、及び、固定カバー5の貫通孔53に固定部41を貫通させた後に、さらに、カバー着脱部50に板部材着脱部60を取り付けることが考えられる。
【0071】
固定手段4の固定部41は、図9(a)~図10(b)に示すように、クッション本体2の長手方向における両端部27が挿入されることで、マット3の積層状態を維持する固定凹部48を有してもよい。固定手段4がクッション本体2の長手方向においてクッション本体2を挟むように配置されることにより、固定凹部48はこの長手方向においてクッション本体2を挟むように一対配置されることが考えられる。固定凹部48は、同図では、垂直方向に広がり且つクッション本体2の長壁面23と対向する短手方向規制部481である第一垂直面481や、垂直方向に広がり且つクッション本体2の短壁面24と対向する長手方向規制部482である第二垂直面482や、厚み方向における規制部として水平方向に広がり且つクッション本体2の端部27を高さ方向において挟む水平面483により区画されている。
【0072】
この場合、固定手段4は、固定部41に加えて、一体として形成された延出部位45及び肘掛け部位46で構成された立設部42を有し、立設部42の形状は、その上面に手を乗せやすくするべく湾曲した板状とすることが考えられる。このような固定手段4であっても、マット3の積層状態を維持し、マット3の少なくとも面方向における位置ずれを規制することができ、具体的に、一つの固定凹部48を区画する一対の短手方向規制部481により、マット3の短手方向における位置ずれを規制できる。また、クッション本体2の長手方向においてクッション本体2を挟んで並ぶ一対の長手方向規制部482により、マット3の長手方向における位置ずれを規制できる。さらに、一つの固定凹部48を区画する一対の水平面483により、マット3の厚み方向における位置ずれも規制することができる。
【0073】
この場合、積層されたマット3は、図9(a)のように、板部材6に載置されるとともに、板部材6は、マット3の形状と対応した形状、例えば、長方形の板状であることが考えられる。この場合、同図では、板部材6の長手方向における両端部62は、積層されたマット3、即ち、クッション本体2の両端部27と共に、固定部41の固定凹部48に挿入されている。板部材6の材質の剛性がマット3の材質の剛性よりも高い場合、クッション本体2が自重や上に人が乗った場合の荷重により変形しにくくなる。
【0074】
この構造物1では、クッション本体2に固定手段4を取り付ける際には、板部材6の上にマット3を積層し、積層されたマット3を固定カバー5で被覆し、さらに、カバー着脱部50と固定部材着脱部49とを取り付けた後に、一対の固定手段4で、クッション本体2の長手方向の外側からクッション本体2を挟み、固定凹部48に固定カバー5に覆われたクッション本体2の両端部27及び板部材6の両端部62を挿入してもよい(図10(b)参照)。
【0075】
固定部41は、固定部材着脱部49によりカバー着脱部50を介してクッション本体2に取り付けられていたが、ボルト、紐やベルト等の取付部材を用いてクッション本体2に取り付けられてもよい。例えば、図11(a)、図11(b)に示すように、固定部41の外側から取付部材402を水平方向に挿通し、固定部41と板部材6とを固定することで、固定部41をクッション本体2に取り付けられてもよい。
【0076】
なお、取付部材402としてボルトの代わりに、またはボルトと併用して紐やベルトを用いてもよく、例えば、図12に示すように、固定部41に紐403を挿通可能な金具404を固定し、この金具404に通した紐403でクッション本体2及び固定部41を縛ることにより、固定部41をクッション本体2に取り付けることが考えられる。
【0077】
さらに、固定部41は、予め固定カバー5に取り付けられていてもよく、例えば、図13(a)、図13(b)に示すように、固定カバー5の内側に取り付けられていてもよい。具体的に、固定部41は、同図では、直方体の箱状の固定カバー5の四隅の内側に取り付けられており、ゴム製であることが考えられる。また、固定部41は、同図では、クッション本体2の高さ方向における全域を覆うように延びている。さらに、固定部41は、例えば、接着剤により固定カバー5に取り付けられることが考えられ、同図では、固定カバー5がクッション本体2を覆った状態において、クッション本体2の四隅を覆うように配置されている。
【0078】
四つの固定部41は、同じ形状、例えば、長尺状であることが考えられる。また、固定部41は、固定カバー5の短手方向に延び且つ長手方向規制部412である短手方向延出面412、及び、固定カバー5の長手方向に延び且つ短手方向規制部である長手方向延出面413の少なくとも一方を有してもよく、固定部41は短手方向延出面412及び長手方向延出面413の両方を有することが考えられ、この場合、固定部41の短手方向における断面形状がL字状とすることができる。この構造物1では、固定部41は、マット3の面方向、例えば、クッション本体2の長手方向、及び、クッション本体2の短手方向における位置ずれを一括で規制することができる。
【0079】
なお、固定カバー5には、クッション本体2に対する着脱を容易にすべく、スリット54が設けられてもよく、同図では、側面被覆部52にスリット54が設けられている。また、固定カバー5には、スリット54を開閉可能な開閉部55としてファスナー55を設けることが考えられる。
【0080】
固定部41は、マット3の積層状態を一括で維持していたが、積層されたマット3のうち少なくとも重なる二枚のマット3毎の位置を固定することで積層状態を維持してもよく、例えば、重なる二枚のマット3同士の面方向の位置ずれを規制すべく、マット3にスナップボタンや面ファスナーが設けられることが考えられる。また、固定部41は、例えば、クッション本体2を構成するマット3と一体であってもよく、例えば、固定部41は、重なる二枚のマット3同士の面方向の位置ずれを規制すべく、マット3に設けられた凹部や凸部であることが考えられる。このような固定部41は、重なったマット3の一方に設けられた嵌合凹部や、重なったマット3の他方に設けられた嵌合凸部であってもよい。
【0081】
固定手段4には、図14に示すように、マット3の積層状態の維持した状態で固定し、マット3を取り出せないようにするロック手段7が設けられてもよい。例えば、ロック手段7は、南京錠等の一般錠、或いは、カードキー等の電気錠や電子錠である。このようなロック手段7は、同図では、固定カバー5のカバー着脱部50の引手同士を固定可能である。固定手段4にロック手段7が設けられることで、通常時に、人が誤って固定手段4をクッション本体2から取り外すことによりマット3の積層状態が崩れることを防ぐことができる。よって、通常時には、マット3を取り出せないようにして構造物1をベンチ等として使用し、災害時等には、ロック手段7を解除して構造物1から各マット3を取り出して使用される。ロック手段の解除は、構造物1が設置された施設の管理者や利用客等によって行われる。
【0082】
固定部41が枠状である場合、固定部41の厚みや高さは均一でなくてもよい。例えば、固定部41は、図15に示すように、クッション本体2の一対の長壁面23のうちそれぞれの下半分、及び、クッション本体2の一対の短壁面24の全体を囲む枠状であることが考えられる。このとき、同図では、固定部41のうち一対の長壁面23を囲む部位の高さが小さく、一対の短壁面24を囲む部位の高さが大きく、固定カバー5は、クッション本体2のうち固定部41から露出する部位、例えば、クッション本体2のうち上半分を被覆している。
【0083】
固定カバー5は、クッション本体2の外周面の少なくとも一部を覆っていたが、クッション本体の座面21に加えて、側面の全体や下面22を覆ってもよい。また、固定カバー5は、クッション本体2の外周面に加えて、固定部材40の少なくとも一部を覆ってもよい。例えば、固定カバー5は、図3(a)におけるクッション本体2に加えて、一対設けられた固定部41をまとめて被覆することが考えられる。なお、この場合、固定カバー5に厚み方向に貫通した貫通孔を設け、固定カバー5の貫通孔から肘掛け部42を露出してもよい。このように、固定カバー5が固定部41を覆うことにより、利用者からクッション本体2への固定部41の取り付け位置が把握しにくくなるため、通常時に、利用者が誤ってクッション本体2への固定部41の取り付けを外すことにより、マット3の積層状態が崩れることを防ぐことができる。
【0084】
固定カバー5は、スリット54を開閉するファスナー55を備えていたが、ファスナー55の代わりに、スリット54を開閉可能なスナップボタンやホックが設けられていてもよい。
【0085】
また、固定カバー5の少なくとも一部において固定カバー5の材質を、伸縮性を有する素材、例えば、ゴム素材としてもよい。具体的に、固定カバー5の全体をゴム素材で形成してもよい。また、固定カバー5が、マット3を挿入可能な口、即ち、マット3を挿入可能な開口部を狭くした袋状とし、開口部にゴムを入れることで開口部に伸縮性を持たせてもよい。このような場合においても、固定カバー5のクッション本体2に対する着脱が容易である。
【0086】
構造物1は、固定カバー5を備えていたが、固定カバー5を備えていなくてもよく、この場合、マット3の積層状態を維持する機能を有しない化粧カバーでクッション本体2を覆ってもよい。例えば、このような化粧カバーで被覆されたクッション本体2を枠状の固定部41に収納することが考えられる。なお、クッション本体2が化粧カバーや固定カバー5に被覆されない状態で、固定部41に取り付けられる場合には、クッション本体2の外観を良好とすべく、マット3に着色や意匠が施すことが考えられる。
【0087】
例えば、マット3は、発泡シート以外に、カーペット、空気を入れることで膨らむエアマット、毛布、畳等であってもよい。マット3の形状は、略長尺板状であったが、正方形の板状や円板状等であってもよい。マット3の形状が正方形の板状である場合、非常時等に、取り出されたマット3は、複数並べた状態で人が寝そべって使用することができ、さらに、取り出された各々の状態で人が座るために使用することもできる。
【0088】
マット3の積層方向は、垂直方向であったが、垂直方向以外の一方向、例えば、図16図17に示すように、水平方向であることが考えられる。例えば、マット3が正方形の板状である場合であっても、図17では、クッション本体2のマット3の積層方向における寸法が、マット3の一辺の長さよりも大きくなるようにマット3を積層することで、直方体状のクッション本体2が構成されている。
【0089】
また、マット3の積層方向は、一方向以外に、複数の方向であってもよく、例えば、水平方向に積層されたマット3の上に、さらに、垂直方向にマット3を積層してもよい。マット3は、広げられた状態で垂直方向及び水平方向の少なくとも一方に積層される以外に、折りたたんだ状態で積層される、例えば、折りたたんだマット3が、垂直方向及び水平方向の少なくとも一方に積層されることが考えられる。また、クッション本体2は、折りたたんだ状態のマット3及び広げられた状態のマット3の両方で構成されることも考えられる。このように、クッション本体2は、積層方向や、マット3の折りたたみの有無を問わず、積層されたマット3で構成されればよい。
【0090】
マット3は、例えば、図18(a)に示すように長手方向における一方側の端部に少なくとも一つ、具体的には3本の折れ線αを有し、折れ線αに沿って折り返すことにより、図18(b)に示すように枕部34が形成されることが考えられる。この場合、人が取り出された各々のマット3に寝そべる際に、枕部34に頭を乗せることができるため、マット3上で人が眠る際等の快適性を向上できる。なお、マット3の厚みは、均一である以外に、一部が厚くなっていてもよく、この厚い部分が取り出された各々のマットを使う際の枕や、積層されたマット3で構成されるクッション本体2の肘掛け等を兼ねることも考えられる。
【0091】
クッション本体2は、一種類のマット3により構成される以外に、異なる種類のマット3を含んでもよい。例えば、クッション本体2は、発泡シートを積層した上にカーペットや毛布を積層して構成されたり、発泡シートとカーペットとを交互に積層して構成されたりすることが考えられる。クッション本体2が、発泡シートと毛布との組を複数組積層して構成される場合、災害時やイベント開催時に、発泡シートと毛布との組を一人に一組ずつ提供することができ、この場合、利用者は、発泡シートを敷物として使用すると共に、毛布を掛けて使用することができる。
【符号の説明】
【0092】
1…構造物、2…クッション本体、3…マット、4…固定手段、5…固定カバー、6…板部材、7…ロック手段、20…凹部、21…座面、22…下面、23…長壁面、24…短壁面(長手方向被規制部)、25…凹部第一面(短手方向被規制部)、26…凹部第二面(長手方向被規制部)、27…両端部(端部)、28…中央部、29…貫通孔、30…凹部、31…凹部第一外縁、32…凹部第二外縁、33…貫通孔、34…枕部、40…固定部材、41…固定部、42…肘掛け部(立設部)、43…凸部、44…本体部位、45…延出部位、46…肘掛け部位、47…束縛部、48…固定凹部、49…固定部材着脱部、50…カバー着脱部、51…座面被覆部、52…側面被覆部、53…貫通孔、54…スリット、55…開閉部(ファスナー)、60…板部材着脱部、61…貫通孔、62…両端部、200…被規制部、201…貫通被規制部、400…規制部、401…貫通規制部、402…取付部材、403…紐、404…金具、410…長壁面(短手方向規制部)、411…短壁面(長手方向規制部)、412…短手方向延出面(長手方向規制部)、413…長手方向延出面(短手方向規制部)、431…凸部第一面(短手方向規制部)、432…凸部第二面(長手方向規制部)、440…主面(長手方向規制部)、441…上面、481…第一垂直面(短手方向規制部)、482…第二垂直面(長手方向規制部)、483…水平面、α…折れ線
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