(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】端子台
(51)【国際特許分類】
H01R 9/22 20060101AFI20230630BHJP
H01R 12/55 20110101ALI20230630BHJP
H01R 4/48 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
H01R9/22
H01R12/55
H01R4/48 A
(21)【出願番号】P 2019042806
(22)【出願日】2019-03-08
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390014546
【氏名又は名称】三菱電機照明株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大森 章裕
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】実開平06-029014(JP,U)
【文献】特開2013-115006(JP,A)
【文献】特開2007-258028(JP,A)
【文献】特開2011-082104(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 9/00,9/15-28
H01R 12/00,12/50-12/91
H01R 24/00-24/86
H01R 4/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線の被覆を剥いだ導体部と結線し、電気的に接続する電線接続部と、
基板に実装されたタブ端子を嵌合し、電気的に接続するタブ保持部と、
を備え、
前記タブ保持部及び前記タブ端子は、前記電線を前記電線接続部に挿入して結線する方向と平行に延伸するものであり、
前記タブ保持部の延伸方向と
、前記タブ端子
が上方に突出する突出方向とは交差して
おり、
前記電線接続部と前記タブ保持部とは、一体化された接続金具に形成されており、
前記接続金具を内部に配置した筐体を備え、
前記電線接続部は、挿入された前記電線の前記導体部に食い込んで接続される鎖錠部を有し、
前記筐体に配置され、前記鎖錠部に係合し、前記鎖錠部に解錠力を付与することによって前記電線の前記導体部と前記電線接続部との結線を開放する解除ボタンを備える
端子台。
【請求項2】
前記タブ保持部を前記基板に対して有限範囲の移動を許容しつつ固定した固定部を備える請求項1に記載の端子台。
【請求項3】
前記タブ端子は、前記基板から平板状に突出し、
前記タブ保持部は、対向間距離を平板状の前記タブ端子の厚みより狭く形成された1対の接触片を有し、1対の前記接触片によって挟んだ平板状の前記タブ端子を反発力で挟持して嵌合する請求項1又は請求項2に記載の端子台。
【請求項4】
前記筐体を前記基板に固定した筐体固定部を備え、
前記固定部は、前記筐体固定部によって前記筐体を前記基板に固定し、前記筐体に配置された前記解除ボタンを前記鎖錠部に係合し、前記接続金具の移動を前記有限範囲に制限することによって構成される請求項
2に記載の端子台。
【請求項5】
前記電線を前記電線接続部に挿入する方向とは直交方向にて前記筐体固定部に並んで設けられた回り止め部を備える請求項
4に記載の端子台。
【請求項6】
前記鎖錠部は、前記電線の前記導体部に撓みながら食い込む鎖錠片と、前記鎖錠片に対向した平面を有し、前記電線の前記導体部と電気的に接続される導通片と、を有する請求項
1~請求項
5のいずれか1項に記載の端子台。
【請求項7】
前記鎖錠片の端部は、前記電線の前記導体部に撓みながら食い込む第1領域と、前記解除ボタンに係合された第2領域と、を有する請求項
6に記載の端子台。
【請求項8】
前記電線接続部は、前記鎖錠片よりも前記電線を前記電線接続部に挿入する方向の奥側に配置され、前記導通片に対して前記電線の前記導体部を押し付ける押圧片を有する請求項
6又は請求項
7に記載の端子台。
【請求項9】
電線の被覆を剥いだ導体部と結線し、電気的に接続する電線接続部と、
基板に実装されたタブ端子を嵌合し、電気的に接続するタブ保持部と、
を備え、
前記タブ保持部及び前記タブ端子は、前記電線を前記電線接続部に挿入して結線する方向と平行に延伸するものであり、
前記タブ保持部を前記基板に対して有限範囲の移動を許容しつつ固定した固定部を備え、
前記タブ端子は、前記基板から平板状に突出し、
前記タブ保持部は、対向間距離を平板状の前記タブ端子の厚みより狭く形成された1対の接触片を有し、1対の前記接触片によって挟んだ平板状の前記タブ端子を反発力で挟持して嵌合するものであり、
1対の前記接触片は、平板状の前記タブ端子を挟んだ接点を有し、
平板状の前記タブ端子における前記電線を前記電線接続部に挿入する方向と平行に延伸した長さは、前記接点の前記基板に対するずれが前記固定部によって許容された前記有限範囲よりも長い端子台。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線接続部とタブ保持部とを備える端子台に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、端子台は、外部配線用端子と内部配線用端子とを備える。外部配線用端子と内部配線用端子とは、端子台の内部にて電気的に接続されている。外部配線用端子は、電源線に接続される。内部配線用端子は、照明器具内の点灯装置に電線を介して接続される。そのため、端子台の内部配線の電線費用又は組み立て費用が発生する。
【0003】
特許文献1には、上記内部配線を削除するため、端子台が電線接続部とタブ保持部とを備え、タブ保持部が基板上のタブ端子に差し込まれて接続される技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術では、電線挿入方向とタブ保持部及びタブ端子の延伸する方向とが直交する。このため、電線挿入時などにタブ保持部が動いたことによる応力がタブ端子に加わり易く、タブ端子のはんだ部が破損する課題がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためのものであり、タブ保持部が動いたときのタブ端子のはんだ部の破損が抑制できる端子台を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の端子台は、電線の被覆を剥いだ導体部と結線し、電気的に接続する電線接続部と、基板に実装されたタブ端子を嵌合し、電気的に接続するタブ保持部と、を備え、タブ保持部及びタブ端子は、電線を電線接続部に挿入して結線する方向と平行に延伸するものであり、タブ保持部の延伸方向と、タブ端子が上方に突出する突出方向とは交差しており、電線接続部とタブ保持部とは、一体化された接続金具に形成されており、接続金具を内部に配置した筐体を備え、電線接続部は、挿入された電線の導体部に食い込んで接続される鎖錠部を有し、筐体に配置され、鎖錠部に係合し、鎖錠部に解錠力を付与することによって電線の導体部と電線接続部との結線を開放する解除ボタンを備えるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る端子台によれば、タブ保持部及びタブ端子は、電線を電線接続部に挿入して結線する方向と平行に延伸している。これにより、電線挿入時あるいは電線に張力が加わってタブ保持部が動いても、電線を電線接続部に挿入して結線する方向に対して平行に延伸したタブ保持部とタブ端子との相対位置がずれるだけで接続し続ける。これにより、タブ保持部が動いたことによる応力がタブ端子に加わらない。したがって、タブ保持部が動いたときのタブ端子のはんだ部の破損が抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態1に係る電源及び端子台を示す配線図である。
【
図2】本発明の実施の形態1に係る基板に設置された端子台を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態1に係る基板に設置された端子台を示す分解斜視図である。
【
図4】本発明の実施の形態1に係る端子台を上から見て示す斜視図である。
【
図5】本発明の実施の形態1に係る端子台を下から見て示す斜視図である。
【
図6】本発明の実施の形態1に係る端子台を示す分解斜視図である。
【
図7】本発明の実施の形態1に係る接続金具を示す斜視図である。
【
図8】本発明の実施の形態1に係る接続金具を示す側面図である。
【
図9】本発明の実施の形態1に係る接続金具を示す下面図である。
【
図10】本発明の実施の形態1に係る1対の接触片の対向間距離とタブ端子の厚みとの関係を
図8のA-A線の縦断面にて示す説明図である。
【
図11】本発明の実施の形態1に係る1対の接触片がタブ端子に嵌合した状態の端子台を縦断面にて示す説明図である。
【
図12】本発明の実施の形態1に係る1対の接触片がタブ端子に嵌合した状態を拡大した縦断面にて示す説明図である。
【
図13】本発明の実施の形態1に係る解除ボタンが鎖錠片に係合した状態を拡大した縦断面にて示す説明図である。
【
図14】本発明の実施の形態1に係る電線の導体部が鎖錠片に挿入される状態を拡大した縦断面にて示す説明図である。
【
図15】本発明の実施の形態1に係る電線の導体部が鎖錠片に挿入された状態を拡大した縦断面にて示す説明図である。
【
図16】本発明の実施の形態1に係る挿入される電線の導体部と解除ボタンに係合された鎖錠片との関係を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態が説明されている。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一の又はこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。また、断面図の図面においては、視認性に鑑みて適宜ハッチングが省略されている。さらに、明細書全文に示す構成要素の形態は、あくまで例示であってこれらの記載に限定されるものではない。
【0011】
実施の形態1.
<端子台の配線状態>
図1は、本発明の実施の形態1に係る電源200及び端子台100を示す配線図である。
図1に示す端子台100は、電源200に電線1を介して接続されている。端子台100は、照明器具などに電気を供給するために使用される。端子台100は、複数用いられて電源200からの電力を中継しながら照明器具などに電気を供給する。端子台100には、同極の端子が複数設けられている。これにより、ある端子台100が電源200からの電力を中継し、別の端子台100が先の端子台100と電線1を介して接続されて中継された電力を得る。
【0012】
<基板10に設置された端子台100の構成>
図2は、本発明の実施の形態1に係る基板10に設置された端子台100を示す斜視図である。
図3は、本発明の実施の形態1に係る基板10に設置された端子台100を示す分解斜視図である。
【0013】
図2及び
図3に示すように、端子台100は、基板10に設置されている。基板10には、照明器具などに電気的に接続されるタブ端子11が設けられている。タブ端子11は、基板10から上方に平板状に突出している。タブ端子11は、電線の導体部が挿入されて結線する方向と平行に延伸している。ここでは、3つのタブ端子11が1つの基板10から上方に突出している。3つのタブ端子11は、左右方向に並列して配置されている。3つのタブ端子11は、平面を並列方向に向けている。
【0014】
基板10は、平板状である。基板10には、端子台100を固定するボルト2を挿通する挿通孔12が形成されている。基板10には、端子台100の不要な回転動作を規制するための回り止め突起26が差し込まれる回り止め穴13が形成されている。回り止め穴13は、電線1を端子台100に挿入する方向とは直交方向にてボルト2の挿通孔12に並んで設けられている。
【0015】
端子台100は、筐体20に覆われている。端子台100は、基板10にボルト2とナット3とによって固定されている。このため、端子台100及び基板10のそれぞれには、ボルト2を挿通する挿通孔22、挿通孔25又は挿通孔12が形成されている。ボルト2は、端子台100の上面側に頭部を係止されるように挿通孔22に差し込まれている。ナット3は、基板10の下面側からボルト2のネジ部の先端に螺合する。ボルト2及びナット3は、筐体20を基板10に固定した筐体固定部である。なお、筐体固定部による端子台100の基板10への固定方法は、ボルト2及びナット3を用いる手法に限定されない。
【0016】
端子台100には、電源200又は中継した他の端子台100からの電線1が差し込まれる。端子台100は、1つのタブ端子11に接続される電線1として、電力を供給される入力側の電線1と、自身を中継機として電力を別の端子台100に送る送り側の電線1と、がある。
【0017】
<端子台100の構成>
図4は、本発明の実施の形態1に係る端子台100を上から見て示す斜視図である。
図5は、本発明の実施の形態1に係る端子台100を下から見て示す斜視図である。
図6は、本発明の実施の形態1に係る端子台100を示す分解斜視図である。
【0018】
図4、
図5及び
図6に示すように、端子台100は、筐体20を備える。筐体20は、上面部及び側面部を構成した上カバー20aと、下面部を構成した下カバー20bと、を有する。筐体20は、上カバー20aを下カバー20bの周縁部に嵌め込み、箱状に形成されている。上カバー20a及び下カバー20bは、樹脂製である。
【0019】
上カバー20aの正面方向の側面部には、電線1が挿入される電線孔21が形成されている。ここでは、端子台100が3つのタブ端子11に電気的に接続されるため、3つの入力側の電線1が挿入される電線孔21と3つの送り側の電線1が挿入される電線孔21とを合わせて6つの電線孔21が形成されている。
【0020】
上カバー20aの上面部には、ボルト2の頭部を係止する段部を有する挿通孔22が形成されている。ボルト2は、基板10まで挿通され、頭部を挿通孔22の段部に係止している。
【0021】
上カバー20aの上面部には、作業者が触れるように突出した解除ボタン23が設けられている。解除ボタン23は、作業者によって押下されることにより、端子台100に接続された電線1を開放できる。ここでは、端子台100が3つのタブ端子11に電気的に接続されるため、各タブ端子11に接続された2つの電線1を開放できるように3つの解除ボタン23が設けられている。解除ボタン23は、樹脂製である。
【0022】
下カバー20bには、タブ端子11が差し込まれる端子孔24が形成されている。ここでは、端子台100が3つのタブ端子11に電気的に接続されるため、3つの端子孔24が形成されている。
【0023】
下カバー20bには、ボルト2のネジ部を挿通する挿通孔25が形成されている。上カバー20aの上面部の挿通孔22と下カバー20bの挿通孔25とは、ボルト2が真っ直ぐ基板10を突き抜けるように中心をボルト2の挿通方向に一致させている。
【0024】
下カバー20bの表面には、基板10側に突出し、基板10の回り止め穴13に差し込まれて端子台100の不要な回転動作を規制する回り止め突起26が形成されている。回り止め突起26は、電線1を端子台100に挿入する方向とは直交方向にてボルト2の挿通孔25に並んで設けられている。回り止め穴13及び回り止め突起26は、回り止め部である。
【0025】
図6に示すように、端子台100は、筐体20の内部に接続金具30を備える。接続金具30は、タブ端子11に電気的に接続されるとともに、端子台100内に差し込まれた電線1の先端の剥いた導体部1aに電気的に接続される。ここでは、端子台100が3つのタブ端子11に電気的に接続されるため、各タブ端子11に接続される3つの接続金具30が配置されている。接続金具30は、導通する金属の板金製である。
【0026】
解除ボタン23は、筐体20の上カバー20aに配置され、上カバー20aの開口から下方に突き出て接続金具30に係合する脚部23aを有する。脚部23aは、接続金具30に解錠力を付与することによって電線1の導体部1aと接続金具30との結線を開放する。
【0027】
下カバー20bの内部には、接続金具30の中心の隙間40に入り込んで接続金具30の動き方向を矯正する中心ガイド27が設けられている。中心ガイド27は、接続金具30の中心の隙間40が前後方向に縦長であるため、隙間40よりも厚みを薄くして前後方向に延伸した板状体である。中心ガイド27は、端子台100の内部に差し込まれたタブ端子11よりも正面方向に設けられている。ここでは、3つの接続金具30が端子台100の内部に配置されるため、3つの中心ガイド27が設けられている。
【0028】
下カバー20bの内部には、隣り合う接続金具30を仕切って接続金具30同士の接触を防止する接触防止ガイド28が設けられている。接触防止ガイド28は、端子台100の内部の前後方向の全てにわたって延伸した板状体である。ここでは、3つの接続金具30が端子台100の内部に配置されるため、2つの接触防止ガイド28が設けられている。
【0029】
<接続金具30の構成>
図7は、本発明の実施の形態1に係る接続金具30を示す斜視図である。
図8は、本発明の実施の形態1に係る接続金具30を示す側面図である。
図9は、本発明の実施の形態1に係る接続金具30を示す下面図である。
【0030】
図7、
図8及び
図9に示すように、接続金具30は、電線接続部31とタブ保持部32とを一体化して備える。つまり、接続金具30は、電線接続部31とタブ保持部32とを導通可能な金属製の板金を加工して一体化して形成されている。電線接続部31は、挿入された電線1の被覆を剥いだ導体部1aと結線し、電気的に接続する。電線接続部31は、接続金具30の本体33から左右の2方向に分岐して2つ設けられている。タブ保持部32は、基板10に実装されたタブ端子11を嵌合し、電気的に接続する。タブ保持部32は、接続金具30の本体33を用い、電線1を端子台100に挿入する方向にて電線接続部31よりも奥側に構成されている。接続金具30の本体33は、元の板金の平面を上下方向に立て、元の板金を、電線1を端子台100に挿入する方向にてタブ保持部32の奥端部でU字に屈曲させて形成されている。このため、接続金具30の本体33は、中心に縦に貫通した隙間40を有して元の板金の2部分で構成されている。
【0031】
<電線接続部31の構成>
電線接続部31は、端子台100の電線孔21の直近に、電線1の導体部1aと接続される鎖錠部31aを有する。鎖錠部31aは、鎖錠片31bと導通片31cとを有する。鎖錠片31bと導通片31cとの間の間隔は、電線1の導体部1aの外径よりも狭い。
【0032】
鎖錠片31bは、矩形形状であり、下部以外を切り離され、下部にて基部31dに繋がっている。鎖錠片31bは、基部31dから電線1の差し込み方向の奥に端部34を向けて傾斜している。鎖錠片31bは、挿入された電線1の導体部1aに撓みながら食い込む。このため、鎖錠片31bの端部34は、角部のある元の板金の縁部を用いている。鎖錠片31bの端部34は、電線1の導体部1aに撓みながら食い込む第1領域34aと、解除ボタン23の脚部23aに係合された第2領域34bと、を有する。第1領域34aと第2領域34bとを有する鎖錠片31bの端部34は、一直線状に形成されている。第1領域34aが第2領域34bよりも接続金具30の本体33に近い側に設けられている。
【0033】
導通片31cは、鎖錠片31bに対向して下を向く平面を有し、電線1の導体部1aと電気的に接続される。導通片31cは、鎖錠片31bの上方向に配置されている。導通片31cの前側端部は、鎖錠片31bの端部34よりも正面方向の前側に突出している。導通片31cの第2領域34bに対する上方向投影領域は、切り欠かれて切欠き部35に形成されている。これにより、解除ボタン23の脚部23aは、導通片31cの切欠き部35を通過して鎖錠片31bの端部34の第2領域34bに係合されている。
【0034】
電線接続部31は、押圧片31eを有する。押圧片31eは、鎖錠片31bよりも電線1を電線接続部31に挿入する方向の奥側に配置され、導通片31cに対して電線1の導体部1aを押し付ける。押圧片31eは、矩形形状であり、下部以外を切り離され、下部にて基部31dに繋がっている。押圧片31eは、基部31dから電線1の差し込み方向の奥に端部を向けて傾斜している。押圧片31eと導通片31cとの間の間隔は、電線1の導体部1aの外径よりも狭い。押圧片31eの導体部1aが押し付けられる端部は、電線1の導体部1aの挿入及び引き抜きを考慮し、元の板金の縁部までの途中にて、電線1の導体部1aに滑らかに接触するように上方向に凸曲面を形成している。
【0035】
電線接続部31は、鎖錠片31bと押圧片31eとを接続金具30の本体33に接続した基部31dを有する。基部31dは、鎖錠片31bを端子台100の前方に接続するとともに、押圧片31eを端子台100の後方に接続している。基部31dは、板金の平面を立てた本体33の下端から下カバー20bの底面に接触する平面を有し、接続金具30が倒れないように維持している。
【0036】
<タブ保持部32の構成>
タブ保持部32は、接続金具30の本体33を用い、電線1を電線接続部31に挿入して結線する方向と平行に延伸して形成されている。タブ保持部32は、1対の接触片32aを有する。1対の接触片32aは、対向間距離L2を平板状のタブ端子11の厚みLaより狭く形成されている。1対の接触片32aは、平板状のタブ端子11を反発力で挟持して嵌合する。これにより、1対の接触片32aは、平板状のタブ端子11を挟んだ水平方向に延伸した接点32bを有する。1対の接触片32aは、前後方向両端部を切り込まれ、接続金具30の本体33の中心の上下方向に貫通した隙間40に向けて切り起こして山折りに形成されている。1対の接触片32aの山折り部分がバネ性を有する接点32bである。
【0037】
なお、タブ保持部32は、反発力による挟持によって十分な保持力を備える。しかし、更なる信頼性を求める場合あるいは外的要因でタブ保持部32が応力を受けるおそれがある場合に備え、固定ネジを用いて接続金具30を端子台100に固定しても良い。この場合には、固定ネジは、端子台100の上カバー20aの上面部側から挿入され、基板10の裏面側にて固定ナットを用いて固定されても良い。
【0038】
<1対の接触片32aの対向間距離L2とタブ端子11の厚みLaとの関係>
図10は、本発明の実施の形態1に係る1対の接触片32aの対向間距離L2とタブ端子11の厚みLaとの関係を
図8のA-A線の縦断面にて示す説明図である。
図10に示すように、2つの板金による接続金具30の本体33の対向間距離L1は、タブ端子11の厚みLaより広い空間に形成されている。1対の接触片32aの対向間距離L2は、タブ端子11の厚みLaより狭い空間に形成されている。
【0039】
<1対の接触片32aがタブ端子11に嵌合した状態>
図11は、本発明の実施の形態1に係る1対の接触片32aがタブ端子11に嵌合した状態の端子台100を縦断面にて示す説明図である。
図12は、本発明の実施の形態1に係る1対の接触片32aがタブ端子11に嵌合した状態を拡大した縦断面にて示す説明図である。
【0040】
図11及び
図12に示すように、タブ保持部32は、1対の接触片32aによって挟んだ平板状のタブ端子11を反発力で挟持して嵌合している。タブ端子11がタブ保持部32に挿入された状態では、1対の接触片32aがタブ端子11の厚みLaに応じて広がった分の反発力によってタブ端子11の表裏の平面との接触を維持している。このため、タブ端子11が平面に対して直交した水平方向である延伸方向に動いても、反発力によって1対の接触片32aに接触し続けている。
【0041】
<電線1の挿入時の動作>
図13は、本発明の実施の形態1に係る解除ボタン23が鎖錠片31bに係合した状態を拡大した縦断面にて示す説明図である。
図13に示すように、解除ボタン23の脚部23aは、切欠き部35を介して鎖錠片31bの端部34における第2領域34bに係合している。解除ボタン23は、作業者の押下により鎖錠部31aに解錠力を付与することによって電線1の導体部1aと電線接続部31との結線を開放する。
【0042】
図14は、本発明の実施の形態1に係る電線1の導体部1aが鎖錠片31bに挿入される状態を拡大した縦断面にて示す説明図である。
図14に示すように、電線1が電線孔21に差し込まれる。電線1の差し込み方向の鎖錠片31bの端部34は、第1領域34aであり、解除ボタン23の脚部23aに係合された第2領域34b以外の部分である。このため、第1領域34aは、電線1の差し込みに応じて後方に撓む。
【0043】
図15は、本発明の実施の形態1に係る電線1の導体部1aが鎖錠片31bに挿入された状態を拡大した縦断面にて示す説明図である。
図15に示すように、電線1が完全に差し込まれると、鎖錠片31bは、特に第1領域34a側を大きく撓ませながら電線1の導体部1aに食い込む。かつ、押圧片31eは、導通片31cに対して電線1の導体部1aを押し付ける。
【0044】
<電線1の挿入範囲>
図16は、本発明の実施の形態1に係る挿入される電線1の導体部1aと解除ボタン23に係合された鎖錠片31bとの関係を示す斜視図である。
図16に示すように、電線1は、鎖錠片31bの端部34の第1領域34aに向かう。第1領域34aは、解除ボタン23の脚部23aに係合された第2領域34bに隣接した領域である。第1領域34aでは、挿入された電線1の導体部1aが鎖錠片31bと導通片31cとの間に食い込んで電気的に接続される。
【0045】
<第1領域34aと第2領域34bとの電線1の挿入時の関係>
鎖錠片31bの端部34は、電線1の導体部1aに撓みながら食い込む第1領域34aと、解除ボタン23に係合された第2領域34bと、を有する。第1領域34aは、電線1が差し込まれると、後方に撓んでいる。一方、第2領域34bは、解除ボタン23の脚部23aが第2領域34bの撓みを防止して第1領域34aの撓み量を規制している。
【0046】
<ずれ許容範囲>
タブ保持部32は、基板10に対して有限範囲の移動を許容しつつ固定される固定構造を備える。固定構造は、ボルト2及びナット3によって筐体20を基板10に固定し、筐体20に配置された解除ボタン23を鎖錠部31aの端部34の第2領域34bに係合し、接続金具30の移動を移動前状態から移動後状態までの有限範囲のずれ許容範囲に制限することによって構成されている。ずれ許容範囲は、第1領域34aの撓み量に起因する。固定構造が固定部である。
【0047】
上記有限範囲のずれ許容範囲が存在するので、タブ端子11は、有限の延伸長さを有する。すなわち、平板状のタブ端子11における電線1を電線接続部31に挿入する方向と平行に延伸した長さは、接点32bの基板10に対するずれが固定構造によって許容された有限範囲であるずれ許容範囲よりも長い。これにより、タブ保持部32が動いても、タブ保持部32とタブ端子11との電気的な接続が維持される。
【0048】
ここで、タブ保持部32を有する接続金具30が動く場合に、接続金具30の本体33の隙間40が中心ガイド27に差し込まれ、接続金具30の移動が前後方向のみに矯正されている。これにより、電線1の挿入時あるいは電線1に張力が加わってタブ保持部32を有する接続金具30が動いても、他の方向へのずれが無く、接続金具30の移動が許容されても端子台100が故障し難い。
【0049】
<作用>
以上により、電線1の挿入時の接続の信頼性と経時劣化に強い信頼性とを有する安価な端子台100が提供できる。
【0050】
<実施の形態1の効果>
実施の形態1によれば、端子台100は、電線1の被覆を剥いだ導体部1aと結線し、電気的に接続する電線接続部31を備える。端子台100は、基板10に実装されたタブ端子11を嵌合し、電気的に接続するタブ保持部32を備える。タブ保持部32及びタブ端子11は、電線1を電線接続部31に挿入して結線する方向と平行に延伸している。
【0051】
この構成によれば、電線1の挿入時あるいは電線1に張力が加わってタブ保持部32を有する接続金具30が動いても、電線1を電線接続部31に挿入する方向に対して平行に延伸したタブ保持部32とタブ端子11との相対位置がずれるだけで接続し続ける。これにより、タブ保持部32が動いたことによる応力がタブ端子11に加わらない。したがって、タブ保持部32が動いたときのタブ端子11のはんだ部の破損が抑制できる。
【0052】
実施の形態1によれば、端子台100は、タブ保持部32を基板10に対して有限範囲であるずれ許容範囲の移動を許容しつつ固定した固定部としての固定構造を備える。
【0053】
この構成によれば、電線1の挿入時あるいは電線1に張力が加わってタブ保持部32が基板10上にて動く範囲が固定構造によって移動を許容された有限範囲のずれ許容範囲に限定される。これにより、端子台100に搭載されたタブ保持部32と基板10に実装されたタブ端子11との相対位置が接続状態を維持しながら固定構造のずれ許容範囲内でずらせられる。
【0054】
実施の形態1によれば、タブ端子11は、基板10から平板状に突出する。タブ保持部32は、対向間距離L2を平板状のタブ端子11の厚みLaより狭く形成された1対の接触片32aを有する。タブ保持部32は、1対の接触片32aによって挟んだ平板状のタブ端子11を反発力で挟持して嵌合している。
【0055】
この構成によれば、電線1の挿入時あるいは電線1に張力が加わってタブ保持部32を有する接続金具30が動いても、電線1を電線接続部31に挿入する方向に対して平行に延伸したタブ保持部32とタブ端子11との相対位置が接続状態を維持しながらずらせられる。
【0056】
実施の形態1によれば、1対の接触片32aは、平板状のタブ端子11を挟んだ接点32bを有する。平板状のタブ端子11における電線1を電線接続部31に挿入する方向と平行に延伸した長さは、接点32bの基板10に対するずれが固定部としての固定構造によって許容された有限範囲であるずれ許容範囲よりも長い。
【0057】
この構成によれば、電線1の挿入時あるいは電線1に張力が加わってタブ保持部32が基板10上にて動いても、タブ保持部32の動き方向のタブ端子11の長さが接点32bの有限範囲に制限されたずれ許容範囲よりも長くなる。これにより、端子台100に搭載されたタブ保持部32と基板10に実装されたタブ端子11との相対位置が接続状態を維持しながら固定構造のずれ許容範囲内にてずらせられる。
【0058】
実施の形態1によれば、電線接続部31とタブ保持部32とは、一体化された接続金具30に形成されている。
【0059】
この構成によれば、部品点数が削減でき、安価に端子台100が製造できる。また、電線1の挿入時あるいは電線1に張力が加わって電線接続部31が動くと、タブ保持部32も同時に動ける。
【0060】
実施の形態1によれば、端子台100は、接続金具30を内部に配置した筐体20を備える。
【0061】
この構成によれば、接続金具30に構成されたタブ保持部32が外部に露出せず、継時劣化によって錆などによるタブ保持部32とタブ端子11との導通不良が生じず、端子台100の耐久性が向上できる。
【0062】
実施の形態1によれば、電線接続部31は、挿入された電線1の導体部1aに食い込んで接続される鎖錠部31aを有する。
【0063】
この構成によれば、電線接続部31が電線1の導体部1aと電気的に接続される。
【0064】
実施の形態1によれば、端子台100は、筐体20に配置され、鎖錠部31aに係合し、鎖錠部31aに解錠力を付与することによって電線1の導体部1aと電線接続部31との結線を開放する解除ボタン23を備える。
【0065】
この構成によれば、解除ボタン23が鎖錠部31aの鎖錠片31bを押し下げて解錠力を付与することによって電線1の導体部1aと電線接続部31との結線を開放できる。
【0066】
実施の形態1によれば、端子台100は、筐体20を基板10に固定した筐体固定部としてのボルト2及びナット3を備える。固定構造は、ボルト2及びナット3によって筐体20を基板10に固定し、筐体20に配置された解除ボタン23を鎖錠部31aの端部34の第2領域34bに係合し、接続金具30の移動を有限範囲であるずれ許容範囲に制限することによって構成されている。
【0067】
この構成によれば、固定構造によるタブ保持部32の有限範囲のずれ許容範囲が構成できる。
【0068】
実施の形態1によれば、端子台100は、電線1を電線接続部31に挿入する方向とは直交方向にて筐体固定部としてのボルト2及びナット3に並んで設けられた回り止め部としての回り止め突起26及び回り止め穴13を備える。
【0069】
この構成によれば、電線1の挿入時あるいは電線1に張力が加わってタブ保持部32が基板10上にて動くときに、回り止め突起26及び回り止め穴13が端子台100における電線1を電線接続部31に挿入する方向以外への回転などの動きを制限できる。
【0070】
実施の形態1によれば、鎖錠部31aは、電線1の導体部1aに撓みながら食い込む鎖錠片31bを有する。鎖錠部31aは、鎖錠片31bに対向した平面を有し、電線1の導体部1aと電気的に接続される導通片31cを有する。
【0071】
この構成によれば、電線接続部31における電線1の導体部1aと接続される鎖錠部31aが簡素に構成できる。
【0072】
実施の形態1によれば、鎖錠片31bの端部34は、電線1の導体部1aに撓みながら食い込む第1領域34aと、解除ボタン23の脚部23aに係合された第2領域34bと、を有する。
【0073】
この構成によれば、鎖錠片31bの端部34における電線1の導体部1aに撓みながら食い込む第1領域34aの移動が解除ボタン23の脚部23aに係合された第2領域34bによって有限範囲に制限できる。これにより、固定構造による電線接続部31と伴に接続金具30に構成されたタブ保持部32の有限範囲のずれ許容範囲が構成できる。
【0074】
実施の形態1によれば、電線接続部31は、鎖錠片31bよりも電線1を電線接続部31に挿入する方向の奥側に配置され、導通片31cに対して電線1の導体部1aを押し付ける押圧片31eを有する。
【0075】
この構成によれば、電線接続部31が電線1の導体部1aに対してより確実に電気的に接続できる。
【符号の説明】
【0076】
1 電線、1a 導体部、2 ボルト、3 ナット、10 基板、11 タブ端子、12 挿通孔、13 回り止め穴、20 筐体、20a 上カバー、20b 下カバー、21 電線孔、22 挿通孔、23 解除ボタン、23a 脚部、24 端子孔、25 挿通孔、26 回り止め突起、27 中心ガイド、28 接触防止ガイド、30 接続金具、31 電線接続部、31a 鎖錠部、31b 鎖錠片、31c 導通片、31d 基部、31e 押圧片、32 タブ保持部、32a 接触片、32b 接点、33 本体、34 端部、34a 第1領域、34b 第2領域、35 切欠き部、40 隙間、100 端子台、200 電源。