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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】配策材の結束構造及び係合部材
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/32 20060101AFI20230630BHJP
   F16B 2/08 20060101ALI20230630BHJP
   F16B 19/00 20060101ALI20230630BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
H02G3/32
F16B2/08 Z
F16B19/00 Q
B60R16/02 623B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019046113
(22)【出願日】2019-03-13
(65)【公開番号】P2020150675
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】308011351
【氏名又は名称】大和化成工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【弁理士】
【氏名又は名称】張川 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100174377
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100215038
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 友子
(72)【発明者】
【氏名】岩原 利夫
(72)【発明者】
【氏名】平川 勝也
(72)【発明者】
【氏名】若林 五男
(72)【発明者】
【氏名】高田 和昇
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-89329(JP,A)
【文献】特開平9-159059(JP,A)
【文献】実開平5-79162(JP,U)
【文献】実開昭60-34717(JP,U)
【文献】米国特許第5106040(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/32
H02G 3/30
F16B 2/08
F16B 19/00
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に組み付けるための係合部を有した可動本体部と、
結束部材によって長手状の配策材と共に結束保持状態とされる被結束部と、
を備え、
前記被結束部は、前記結束保持状態において、前記結束部材によって前記配策材側に押し付けられる主部と、前記主部から延び出して前記配策材と当接し、前記主部と該主部と対面する前記配策材との間に空隙を確保する脚部と、を一体に有し、
前記可動本体部は、前記係合部と、前記空隙内で前記配策材上を摺動可能に配置される摺動部と、を一体に有し、前記摺動部が前記空隙内で前記配策材上を摺動することによって前記配策材と共に結束保持された前記被結束部に対し前記係合部の位置が移動可能とされていることを特徴とする係合部材。
【請求項2】
長手状の配策材と、
前記配策材を結束する結束部材と、
車体に組み付けるための係合部を有した可動本体部と、前記結束部材によって前記配策材と共に結束保持状態とされる被結束部と、を有する係合部材と、
を備え、
前記被結束部は、前記結束保持状態において、前記結束部材によって前記配策材側に押し付けられる主部と、前記主部から延び出して前記配策材と当接し、前記主部と該主部と対面する前記配策材との間に空隙を確保する脚部と、を一体に有し、
前記可動本体部は、前記係合部と、前記空隙内で前記配策材上を摺動可能に配置される摺動部と、を一体に有し、前記摺動部が前記空隙内で前記配策材上を摺動することによって前記配策材と共に結束保持された前記被結束部に対し前記係合部の位置が移動可能とされていることを特徴とする配策材の結束構造。
【請求項3】
前記係合部材は、前記被結束部と前記可動本体部とを相対移動可能に連結する連結部を有する請求項2に記載の配策材の結束構造。
【請求項4】
前記連結部は、前記相対移動に伴い変形する変形部である請求項3に記載の配策材の結束構造。
【請求項5】
前記係合部材は、前記係合部を所定の初期位置に保持するとともにその初期位置からの前記係合部の移動に伴いその保持が解除される初期位置保持手段を備える請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の配策材の結束構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は配策材の結束構造及びそれに用いられる係合部材に関する。
【背景技術】
【0002】
車両には、信号線や電源線を有した配線群からなるワイヤーハーネスを結束状態で車体に保持するために、特許文献1等のようなクランプが使用されている。
【0003】
こうした係合部材は、ベルトやテープ等によってワイヤーハーネスと共に結束保持されることにより、ワイヤーハーネスに対し一体となる形で取り付けられる。そして、ワイヤーハーネスと一体となった係合部材は、係合部が車体側の固定孔に挿入されて車体側に組み付けられる。こうした係合部材は、ワイヤーハーネスに対しその長手方向の各所定位置に取り付けられ、それぞれが車体側に設けられた対応する位置の固定孔に挿入されて組み付く。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-282352号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年では、信号線をなすワイヤーハーネスと、電源線をなす平型配策材とをそれぞれ別に用意して車体に配策されることがある。しかしながら、平型配策材が用いられる場合、従来の係合部材には次のような問題がある。
【0006】
即ち、従来の係合部材は、可撓性を有するワイヤーハーネスに対して取り付けられるため、係合部と車体側の固定孔との間に多少の位置ずれがあったとしても、ワイヤーハーネスを撓ませることによってそのずれを吸収できるから、係合部を車体側の固定孔に確実に挿入させることが可能であった。ところが、剛性の高い平型配策材が採用されると、撓ませることによる位置ずれの吸収はできない。その結果、平型配策材を含む配策材に対し係合部材を取り付ける際に、係合部を車体側の固定孔に確実に挿入できるよう、その取り付け位置をシビアに管理する必要が生じ、平型配策材を含む配策材に対し係合部材を取り付ける作業の効率が大きく落ちる可能性がある。
【0007】
また、可撓性を有するワイヤーハーネスを用いる場合であっても、これまでよりも、より確実に係合部を車体側の固定孔に挿入できることが望まれている。
【0008】
本発明の課題は、配策材を係合部材に取り付けて車体側に配策するにあたって、係合部材の係合部を車体側の固定孔に確実に挿入でき、かつ配策材に対し係合部材を取り付ける際の作業性の低下が生じにくくなるような、配策材の結束構造及びそれに用いられる係合部材を実現することにある。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0009】
上記課題を解決するための係合部材は、
車体に組み付けるための係合部を有した可動本体部と、
結束部材によって長手状の配策材と共に結束保持状態とされる被結束部と、
を備え、
前記被結束部は、前記結束保持状態において、前記結束部材によって前記配策材側に押し付けられる主部と、前記主部から延び出して前記配策材と当接し、前記主部と該主部と対面する前記配策材との間に空隙を確保する脚部と、を一体に有し、
前記可動本体部は、前記係合部と、前記空隙内で前記配策材上を摺動可能に配置される摺動部と、を一体に有し、前記摺動部が前記空隙内で前記配策材上を摺動することによって前記配策材と共に結束保持された前記被結束部に対し前記係合部の位置が移動可能とされていることを特徴とする。
【0010】
上記課題を解決するための配策材の結束構造は、
長手状の配策材と、
前記配策材を結束する結束部材と、
車体に組み付けるための係合部を有した可動本体部と、前記結束部材によって前記配策材と共に結束保持状態とされる被結束部と、を有する係合部材と、
を備え、
前記被結束部は、前記結束保持状態において、前記結束部材によって前記配策材側に押し付けられる主部と、前記主部から延び出して前記配策材と当接し、前記主部と該主部と対面する前記配策材との間に空隙を確保する脚部と、を一体に有し、
前記可動本体部は、前記係合部と、前記空隙内で前記配策材上を摺動可能に配置される摺動部と、を一体に有し、前記摺動部が前記空隙内で前記配策材上を摺動することによって前記配策材と共に結束保持された前記被結束部に対し前記係合部の位置が移動可能とされていることを特徴とする。
【0011】
これらの発明の構成によれば、結束部材によって配策材を係合部材の被結束部と共に強く結束保持したとしても、被結束部が形成する配策材との間の空隙を、係合部を有する可動本体部が移動できるから、その移動によって係合部を車体側の固定孔に確実に挿入できる。また、係合部材を配策材に安定して取り付けた上で、係合部を有する可動本体部を移動できる構造となっているから、組み付けも容易である。さらにいえば、被結束部の脚部が当接し、主部と対面する配策材が平型配策材であれば、脚部を平型配策材の平坦面上に安定して当接させることができ、さらにその平坦面上を可動本体部が容易に摺動することができる。
【0012】
前記係合部材は、前記被結束部と前記可動本体部とを相対移動可能に連結する連結部を有することができる。この構成によれば、係合部材は、被結束部と可動本体部とが一体につながった1部品となるため、2部品を組み付けて使用するものよりも配策材への組み付けが容易になる。例えば、前記連結部は、前記相対移動に伴い変形する変形部とすることができる。この構成によれば、簡易に形成できる屈曲構造によって、被結束部と可動本体部との相対移動が容易に可能になる。
【0013】
前記係合部材は、前記係合部を所定の初期位置に保持するとともにその初期位置からの前記係合部の移動に伴いその保持が解除されるようにできる。この構成によれば、係合部材における係合部の基本位置を固定して定めることができる。車体側の固定孔への挿入組み付けは、配策材に対し係合部材を所定の位置に組み付けることで、基本的には位置ずれが生じないようにしているため、係合部材の被結束部に対し可動本体部がフリーに動く構造では、かえって挿入し難くなる可能性がある。係合部の基本位置が固定されてずれない構造であれば、車体側の固定孔との間に位置ずれが無い時に、組み付けが容易になる。また、位置ずれがあっても可動本体部の移動でつなぎ部は容易に切断されるから、ずれを生じている固定孔に対し容易に挿入して組み付けられる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第一実施例をなす配策材の結束構造を示した斜視図。
図2図1の係合部材を示した斜視図。
図3図2の正面図。
図4図2の底面図。
図5図3のV部拡大図。
図6図3のVI―VI断面位置で図1を切断した断面図。
図7図1の係合部材を車体側に組み付ける前後の状態を示した正面図。
図8】本発明の第二実施例をなす配策材の結束構造を示した斜視図。
図9】本発明の第三実施例をなす配策材の結束構造を示した斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の第一実施例を、図面を参照して説明する。
【0016】
本実施例では、図1及び図6に示すように、第一の配策材をなす可撓性配策材2と、第二の配策材をなし、可撓性配策材2よりも高剛性で平板状の平型配策材3と、配策材2、3を結束する結束部材5と、車体100側に組み付けるための係合部40と配策材2、3と共に結束部材5に結束保持される被結束部41とを一体に有した係合部材4と、を備えた配策材の結束構造1が形成される。
【0017】
可撓性配策材2は、長手状に延出する複数の配線が束をなした可撓性を有する部材である。ここでの可撓性配策材2は、信号線を形成するワイヤーハーネスである。なお、本発明の可撓性配策材2は、ワイヤーハーネスに限るものではない。
【0018】
平型配策材3は、平板状をなして長手状に延出し、可撓性配策材2よりも高剛性かつ低撓性を有する部材である。ここでの平型配策材3は、電源線を形成する金属製のバスバーである。平型配策材3は、外周面を形成する四面がそれぞれ平型配策材3自身の長手方向に延びる平面として形成されている。なお、本発明の平型配策材3は、フラット電線をなすFFC(Flexible Flat Cable)やFPC(Flexible Printed Circuit)でもよく、バスバーに限るものではない。
【0019】
係合部材4は、図2図4に示すように、可動本体部400と、被結束部41と、を備える。
【0020】
可動本体部400は、図7に示すように、車体100側に組み付けるための係合部40を有する。
【0021】
係合部40は、車体100側に設けられた固定部101の所定の固定孔101Hに挿入されることにより、その固定孔101Hに対し、抜け止め状態となるよう係合して組み付くアンカー部である。ここでの係合部40は、固定孔101Hに挿入される柱部40Bと、柱部40Bと共に固定孔101Hに挿入され、挿入した先で固定孔101Hの周辺部101Rに対し抜け止め状態となるよう係合する弾性係止片40Aと、その抜け止め状態において固定孔101Hの周辺部101Rを弾性係止片40Aとの間で挟み込む当接部40Cと、を有する。
【0022】
弾性係止片40Aは、柱部40Bの先端側(図7の柱部40Bの上側)からその基端側(図7の柱部40Bの下側)に向かうほど柱部40Bから離れる側に拡がる形状をなし、その基端側が柱部40Bに接近する弾性変形が可能とされている。弾性係止片40Aは、固定孔101Hに対し所定の挿入方向Zに向けて挿入されると、固定孔101Hの周辺部101Rによって孔内向きに押し込まれ、柱部40Bに接近する弾性変形が生じるが、所定位置まで挿入されると、固定孔101Hの周辺部101Rに対し挿入方向Zの奥側(図7上側)から係止し、挿入方向Zの逆向きへの抜けが阻止された抜け止め状態となる。
【0023】
当接部40Cは、柱部40Bの基端側から挿入方向Zに向けて皿状に広がる形状をなしており、固定孔101Hの周辺部101Rに対し環状をなして当接する。当接部40Cは、上述の抜け止め状態において、固定孔101Hの周辺部101Rに対し挿入方向Zの手前側(図7下側)から当接し、弾性係止片40Aとの間で当該周辺部101Rを挟み込む。これにより、係合部40は、固定孔101Hに対し抜け止め状態となって組み付き、係合部材4の車体100側への組付け構造10(図7下図参照)が形成される。なお、当接部40Cは、固定孔101Hの挿入方向Zの奥側(図7上側)から手前側(図7下側)へと固定孔101Hを通って進入する異物(埃等)を防ぐ役割も果たしている。
【0024】
被結束部41は、図1及び図6に示すように、平型配策材3を取り付けるための取付部である。
【0025】
被結束部41は、結束部材5によって配策材2、3が結束される際に、それら配策材2、3と共に取り巻かれて結束保持される配策材2、3のための取付部である。また、ここでの被結束部41は、結束部材5によって配策材2、3と共に結束保持された結束保持状態において、可動本体部400の係合部に対し、長手方向Xの第一側(図1のXR側)と、その逆の第二側(図1のXL側)とに位置する。
【0026】
また、被結束部41は、図2及び図3に示すように、上記の結束保持状態において結束部材5によって配策材2、3側に押し付けられる主部410と、同じく上記の結束保持状態において主部410から配策材2、3側に延び出して平型配策材3と当接し、主部410と、該主部410と対面する平型配策材3との間に空隙4S(図6参照)を確保する複数の脚部411と、を一体に有する。
【0027】
ここでの被結束部41は、配策材2、3の長手方向Xにおいて係合部40を挟んだ両側に主部410を有し、さらにそれら主部410の幅方向Yの両端側から下方に突出する脚部411を有する。なお、幅方向Yは、係合部40の車体100の固定孔101Hへの挿入方向Zと、配策材2、3の長手方向Xとの双方と直交する方向である。
【0028】
各主部410は、それぞれ板状をなし、図6に示すように、各上面41aにおいてテープ部材をなす結束部材5が密着・接着する。各主部410は、図1図3に示すように、それぞれの上面41aを挟んだ長手方向の両側に、上面41aと密着した結束部材5の長手方向Xへのずれを防ぐよう上方に突出するずれ防止部41Sを有する。
【0029】
脚部411は、図4に示すように、各主部410の幅方向Yの両側のうち一方側(図4の上側)においては、各主部410の長手方向Xの中央から、他方側(図4の下側)においては、各主部410の長手方向Xの両端側から、それぞれ下方に突出する。ここでの脚部411は、各主部410に対し3つ設けられ、それぞれが配策材3に対し3点で当接した3点支持状態を形成している。これにより、配策材3上での係合部材4の安定した載置状態を確保している。
【0030】
また、被結束部41は、図3に示すように、長手方向Xの両側の主部410を連結する中央連結部45を有する。これにより、両主部410の長手方向Xにおける対向間隔が固定されている。脚部411は、両主部410を連結する中央連結部45の下端部をなす中央脚部411Cを含む。中央脚部411Cは、他の脚部411よりも長手方向Xに長い幅広に形成される。この中央脚部411Cは、両主部410の脚部411として共有されている。また、この中央連結部45は、係合部40の当接部40Cの下側を通過する形で両主部410を直線状に連結しており、その上側(挿入方向Z側)に位置する当接部40Cによって、それら主部410を含む被結束部41の上方への抜けが阻止される。
【0031】
結束部材5は、図1に示すように、係合部材4の係合部40に対し上記長手方向Xの第一側(図1のXR側)とその逆の第二側(図1のXL側)とで、平型配策材3と可撓性配策材2と共に被結束部41を結束する。この結束保持によって、被結束部41の脚部411が平型配策材3を押し付けて常時密着した状態に保持される。
【0032】
ここでの結束部材5は、可撓性を有した長手状の部材であり、図6に示すように、結束対象と対面する側の面(結束対象を取り巻いたときの内周面)が接着面5bをなすテープ部材である。結束部材5は、取り巻いた結束対象との接触部分に対し接着するとともに、自身の両端部が重なる形で互いに接着することにより結束状態となる。
【0033】
結束部材5の結束対象には、平型配策材3と可撓性配策材2と共に、係合部材4の対応する被結束部41が含まれている。このため、結束部材5は、平型配策材3と可撓性配策材2と共に被結束部41を結束した上記の結束状態となることにより、平型配策材3と可撓性配策材2とが係合部材4に取り付けられて保持された結束保持状態となる。
【0034】
また、可動本体部400は、上述した係合部40と共に、摺動部42を一体に有する。
【0035】
摺動部42は、主部410と配策材3との間に形成された空隙4S(図6参照)内で、配策材2、3上を摺動可能に配置される。係合部材4は、この摺動によって、配策材2、3と共に結束保持された被結束部41に対する係合部40の位置を移動することができる。具体的にいえば、係合部材4は、主部410と配策材3との間の空隙4S内を、幅方向Yの両側の脚部411にガイドされる形で長手方向Xに移動することができる。さらにいえば、係合部材4は、その空隙4S内を、幅方向Yにもわずかに移動することができる。
【0036】
ここでの摺動部42は、図3及び図4に示すように、係合部40の下端部40Dを含み、その下端部40Dから長手方向Xの延び出す板状の袖部42D、42Dを有する。摺動面をなす摺動部42の下面42bは、平坦面として形成される。係合部40の下端部40Dは、柱部40B及び皿状の当接部40Cの基端と接続する四角柱状の台座部をなしており、肉抜き部として下方に開口する凹部41d(図4参照)が形成されている。
【0037】
係合部材4は、被結束部41と可動本体部400とを相対移動可能に連結する連結部43を有する。
【0038】
ここでの連結部43は、被結束部41と可動本体部400との相対移動に伴い変形する変形部をなす。連結部43は、図5に示すように、各被結束部41の係合部40とは逆側の端部をなす外側端部41Tと、摺動部42の長手方向Xの外側の外側端部42Tとを連結している。ここでの連結部43は、被結束部41の外側端部41Tから長手方向Xの外向きに延出し、屈曲しやすいよう内面側に外向きに凹む溝が形成された複数の屈曲部43Bを経て摺動部42の外側端部42Tへと接続する屈曲構造を形成している。具体的にいえば、連結部43は、被結束部41の外側端部41Tから、長手方向Xの外側(図5の左側)で挿入方向Z側(図5の上側)へと斜め外向きに延び出した先に第一の屈曲部43Bを有し、その第一屈曲部43Bから、長手方向Xのさらに外側(図5の左側)で挿入方向Zとは逆側(図5の下側)へと斜め外向きに延び出した先に第二の屈曲部43Bを有し、その第二屈曲部43Bから長手方向Xの内側(図5の右側)へと折り返して挿入方向Zとは逆側(図5の下側)へと斜めに延び出した先に第三の屈曲部43Bを有し、その第三の屈曲部43Bから長手方向Xの内側(図5の右側)で挿入方向Z側(図5の上側)へと斜めに延び出した先で摺動部42の外側端部42Tとを連結している。ここでの連結部43は、屈曲部43Bを3つ有したひし形状をなしており、被結束部41及び可動本体部400と接続する接続部も撓む形で屈曲する部位として機能する。
【0039】
係合部材4は、係合部40を所定の初期位置に保持するとともにその初期位置からの係合部40(可動本体部400)の移動に伴いその保持が解除される初期位置保持手段を有する。
【0040】
ここでの初期位置保持手段は、図5に示すように、被結束部41の主部410と可動本体部400の摺動部42とを連結する形でつなぐつなぎ部44であり、その連結区間の少なくとも一部に脆弱部44Wを有する。ここでのつなぎ部44は、長手方向Xの両側に位置する主部410のうちの一方と、同じ側に延出している摺動部42との長手方向Xの外側の端部を連結するように設けられている。つなぎ部44は、略球状をなして形成されており、主部410及び摺動部42と接続する上端及び下端が残部に対し断面積の小さい脆弱部44Wとされている。被結束部41に対する可動本体部400の移動の際には、それら脆弱部44Wのいずれか(又は双方)が切断され、この切断が生じることによって当該移動が可能になる。
【0041】
係合部材4は、被結束部41に対する可動本体部400の移動の際に、その移動を所定範囲内に規制する移動規制手段を有する。
【0042】
第一の移動規制手段は、図1に示すように、被結束部41に対する可動本体部400の長手方向Xへの移動の際に、その移動を所定範囲X1内に規制する。ここではその第一の移動規制手段として、係合部40の下端部40Dと、被結束部41の係合部40側の端部をなす内側端部41Uと、を有している。可動本体部400の長手方向Xの移動は、係合部40の下端部40Dが被結束部41の内側端部41Uに当接することにより阻止される。つまり、両被結束部41のそれぞれの内側端部41Uの間の区間が、被結束部41に対する可動本体部400の可動範囲X1とされている。
【0043】
第二の移動規制手段は、被結束部41に対する可動本体部400の幅方向Yの移動の際に、その移動を所定範囲Y1(図4参照)内に規制する。ここではその第二の移動規制手段として、係合部40の下端部40Dを含む摺動部42と、被結束部41の脚部411と、を有している。可動本体部400の幅方向Yの移動は、摺動部42が幅方向Yの両側の脚部411に当接することにより阻止される。つまり、幅方向Yの両側の脚部411の間の区間が、被結束部41に対する可動本体部400の可動範囲Y1とされている。
【0044】
なお、第三の移動規制手段は、被結束部41に対する可動本体部400の挿入方向Z(上下方向)の移動に対し、その移動を所定範囲Z1(図3参照)内に規制する。ここでの第三移動規制手段は、配策材3と、被結束部41と、それらに上下に挟まれる摺動部42であり、配策材3と被結束部41との間の区間が、被結束部41に対する可動本体部400の可動範囲Z1とされている。
【0045】
また、係合部40は、可撓性配策材2と平型配策材3とが結束部材5によって被結束部41と共に結束保持された結束保持状態において、係合部材4の可撓性配策材2側ではなく平型配策材3側(図6の破線Qよりも下側の領域)から突出して形成されている。
【0046】
また、図7に示すように、係合部40は、固定孔101Hに挿入されるときの先頭面40Ba(挿入方向Zの前方側の先端面)が、外周側ほどその挿入方向Zの後方側に位置するように傾斜した傾斜面をなす。この傾斜面をなす先頭面40Baは、係合部40の先端に対し長手方向Xの両側だけでなく、幅方向Yの両側にも形成されている。これにより、係合部40を車体100側の固定孔101Hに挿入する際に、係合部40の挿入方向Zの先端が固定孔101Hの内側にさえ位置していれば、係合部材4を挿入方向Zに押し込んでいくだけで、固定孔101Hの内縁が傾斜面をなす先頭面40Ba上を滑って、例えば矢印Z0のような方向に沿って挿入が進む。このとき、係合部40は、固定孔101Hの内縁によって押し付けられるが、上述したように2方向X、Yへの位置移動が可能となっているので、押し付けに伴い自らの位置を変えながら係合部40を挿入可能な位置まで到達させることができる。そして、最終的に係合部40は、固定孔101H内に挿入係止される形で車体100側に組み付けられる。なお、このときの係合部40の位置移動の際に、つなぎ部44(脆弱部44W)がその時に加わる力によって切断される。
【0047】
以上、本発明の第一実施例を説明したが、これはあくまでも例示にすぎず、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を逸脱しない限りにおいて、当業者の知識に基づいて、追加及び省略等の種々の変更が可能である。
【0048】
以下、上記した実施例とは別の実施例やそれら実施例の変形例について説明する。なお、上記実施例と共通の機能を有する部位には同一符号を付して詳細な説明を省略する。また、上記実施例と、下記変形例及び別実施例とは、技術的な矛盾を生じない範囲において適宜組み合わせて実施できる。
【0049】
例えば、本発明において可撓性配策材2を省略し、平型配策材3のみとすることが可能である。逆に平型配策材3を省略し、可撓性配策材2のみとすることも可能である。
【0050】
上記実施例の結束部材5は、テープ部材であったが、他の結束部材であってもよい。例えば結束部材5は、配策材を取り巻くベルト部と、取り巻いたベルト部の両端を固定するバックル部と、を有した、いわゆるタイバンドのようなベルト部材であってもよいし、配策材の長手方向の第一側とその逆の第二側とで異なるものを用いてもよい。
【0051】
上記実施例における連結部43は、それぞれ屈曲部43Bを有したひし形状をなすが、例えば、図8の第二実施例に示すように、内側に凹状の溝が形成された屈曲部43Bを2つ有した四角形状とすることができる。また、連結部43は、弾性変形可能な弾性変形部としてもよい。例えば、図9の第三実施例に示すように、連結部43を半円状の弾性変形部(43)とすることができる。なお、連結部43は、被結束部41と可動本体部400とを相対移動可能に連結するものであればよく、上記の屈曲部や弾性変形部、あるいはそれらを併用した変形部とすることもできるし、その他の手法を用いたものでもよい。
【0052】
上記実施例において初期位置保持手段として設けられたつなぎ部44は別の形態であってもよい。上記実施例のようなつなぎ部44の形態であっても、脆弱部44Wを2つ有して形成されているが、少なくとも1以上存在すればよい。
【符号の説明】
【0053】
1 配策材の結束構造
2 可撓性配策材
3 平型配策材
4 係合部材
4S 空隙
40 係合部
41 被結束部
42 摺動部
400 可動本体部
410 主部
411 脚部
5 結束部材
10 係合部材の組み付け構造
X 長手方向
Y 幅方向
Z 挿入方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9