(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】断熱パネルで構成された壁の耐火被覆構造
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20230630BHJP
E04B 2/56 20060101ALI20230630BHJP
E04C 2/26 20060101ALI20230630BHJP
E04F 13/12 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
E04B1/94 H
E04B2/56 645F
E04C2/26 W
E04F13/12 E
(21)【出願番号】P 2019121574
(22)【出願日】2019-06-28
【審査請求日】2022-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089875
【氏名又は名称】野田 茂
(72)【発明者】
【氏名】高橋 一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤沼 智洋
(72)【発明者】
【氏名】森田 隆司
(72)【発明者】
【氏名】岩谷 一
(72)【発明者】
【氏名】奥野 智
(72)【発明者】
【氏名】田中 義男
【審査官】沖原 有里奈
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-159905(JP,U)
【文献】特開平11-350706(JP,A)
【文献】特開2018-087424(JP,A)
【文献】特開平09-235854(JP,A)
【文献】特開2018-080529(JP,A)
【文献】実開平03-075237(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62-1/99
E04B 2/56-2/70
E04C 2/26
E04F 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機系断熱材を含む断熱材本体と、前記断熱材本体の両面を覆う一対の化粧鋼板とを備え、厚さと、厚さよりも大きい寸法の幅および高さを有する断熱パネルが幅方向に複数並べられた壁の耐火被覆構造であって、
前記断熱パネルの厚さ方向の一方の面に、隣接する前記断熱パネルの接合部を幅方向に跨いで設けられる断熱パネル耐火用被覆体を備え、
前記断熱パネル耐火用被覆体は、厚さと、厚さよりも大きい寸法の幅および高さを有し無機系材料から形成された不燃ボードと、前記不燃ボードの厚さ方向の一方の側面と幅方向の両端面を覆う被覆板部、および前記不燃ボードの幅方向の両端から離れる方向に延在する一対のフランジからなる断面視略ハット形状の被覆用鋼板と含んで構成され、
隣接する前記被覆用鋼板の前記フランジどうしが前記化粧鋼板に重ね合わされ、重ね合わされた前記フランジと前記化粧鋼板を挿通し前記断熱材本体に接合する固定部材により、前記断熱パネル耐火用被覆体が前記断熱パネルに取付けられ、
前記フランジが重ね合わされる前記化粧鋼板の内側には、無機繊維系不燃材料が設けられている、
ことを特徴とする断熱パネルで構成された壁の耐火被覆構造。
【請求項2】
前記無機繊維系不燃材料は、前記断熱材本体の幅方向の一方の端部まで設けられている、
ことを特徴とする請求項1に記載の断熱パネルで構成された壁の耐火被覆構造。
【請求項3】
隣接する前記被覆用鋼板の前記フランジどうしは、前記接合部から離れた位置で重ね合わされ、
前記固定部材の先端は、前記無機繊維系不燃材料の内部に位置している、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の断熱パネルで構成された壁の耐火被覆構造。
【請求項4】
前記接合部は嵌合部を含んで構成され、
前記嵌合部は、隣接する前記断熱パネルの幅方向の端面に設けられ幅方向の中央に向かって窪む嵌合凹部と、隣接する前記断熱パネルの前記嵌合凹部にわたって嵌め込まれ無機系材料から形成された嵌合用ボードとで構成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の断熱パネルで構成された壁の耐火被覆構造。
【請求項5】
前記無機繊維系不燃材料と前記嵌合用ボードとは、前記断熱パネルの厚さ方向において接触しつつ前記断熱パネルの幅方向に延在するオーバーラップ部分を有している、
ことを特徴とする請求項4に記載の断熱パネルで構成された壁の耐火被覆構造。
【請求項6】
前記不燃ボードは、前記不燃ボードの厚さ方向の両端に位置する一対の側面と、前記不燃ボードの幅方向の両端に位置する一対の端面とを含んで構成され、
前記被覆板部は、前記不燃ボードの一方の前記側面に接合された本体板部と、前記本体板部の幅方向の両端に接続され前記一対の端面に接合されそれらの先端から前記フランジが突設された一対の端面板部を備え、
前記断熱パネルの幅方向に隣接する前記被覆用鋼板の前記フランジが前記固定部材により前記断熱パネルに取り付けられた箇所において、隣接する前記被覆用鋼板の前記端面板部と前記フランジとにより前記断熱パネルの厚さ方向に窪む凹部が形成され、
前記凹部にシール材が充填され前記固定部材の頭部は前記シール材に埋設されている、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一つに記載の断熱パネルで構成された壁の耐火被覆構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、断熱パネルで構成された壁の耐火被覆構造に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍冷蔵倉庫等の建物やコンテナにおいて、断熱性に優れるウレタン系断熱材などの有機系断熱材を化粧鋼板で挟んだサンドイッチパネルが、断熱パネルとして外壁や建物の内部を区画する壁材として広く用いられている。
従来、このような有機系断熱材を用いた断熱パネルを複数並べ、断熱パネルの端部どうしを嵌合させる嵌合部を介して接合させて壁として提供されている。
しかしながら、このような断熱パネルを用いた建物において、ヨーロッパやアジア、中東などを含む世界各国で火災事故が頻繁に起こっている。
そこで、各国では有機系断熱材を化粧鋼板で挟んだ断熱パネルについていろいろな評価方法が作られ、法的な改正がなされているのが現状である。
日本においても、従来の建築基準法の発熱性試験で建築材料としての不燃の評価を得た断熱パネルでも火災事故が絶えないのが現状であり、日本では、JISにおいて、中規模の部屋を作り火災試験を行なう評価方法が新たに作られた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭61-57736号公報
【文献】実公昭61-15122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、有機系断熱材を化粧鋼板で挟んだ断熱パネルを用いた建物の火災事故の原因を検討し、鋭意研究している。その結果、化粧鋼板は厚さが0.4~1mm程度であるため、火災時の熱が化粧鋼板を通って内部に伝わったり、火災時の熱により化粧鋼板が大きく変形し、断熱パネルどうしの接合部に隙間が生じることに起因していることを判明した。
そして、熱が化粧鋼板から断熱パネルの内部に伝わって有機系断熱材が燃焼し延焼してしまうと、断熱パネルが落下してしまうことを判明した。
また、断熱パネルどうしの接合部に隙間が生じると、その隙間から有機系断熱材に熱や火炎が直接伝わり有機系断熱材が燃焼し延焼していく、あるいは、その隙間から酸素が供給され、延焼拡大していくことを判明した。
【0005】
本発明は前記事情に鑑み案出されたものであって、本発明の目的は、化粧鋼板から断熱パネルの内部に熱が伝わることを抑制できるとともに、接合部に熱変形による隙間が生じることを防止でき、建物の火災事故を防止する上で有利な断熱パネルで構成された壁の耐火被覆構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するため本発明は、有機系断熱材を含む断熱材本体と、前記断熱材本体の両面を覆う一対の化粧鋼板とを備え、厚さと、厚さよりも大きい寸法の幅および高さを有する断熱パネルが幅方向に複数並べられた壁の耐火被覆構造であって、前記断熱パネルの厚さ方向の一方の面に、隣接する前記断熱パネルの接合部を幅方向に跨いで設けられる断熱パネル耐火用被覆体を備え、前記断熱パネル耐火用被覆体は、厚さと、厚さよりも大きい寸法の幅および高さを有し無機系材料から形成された不燃ボードと、前記不燃ボードの厚さ方向の一方の側面と幅方向の両端面を覆う被覆板部、および前記不燃ボードの幅方向の両端から離れる方向に延在する一対のフランジからなる断面視略ハット形状の被覆用鋼板と含んで構成され、隣接する前記被覆用鋼板の前記フランジどうしが前記化粧鋼板に重ね合わされ、重ね合わされた前記フランジと前記化粧鋼板を挿通し前記断熱材本体に接合する固定部材により、前記断熱パネル耐火用被覆体が前記断熱パネルに取付けられ、前記フランジが重ね合わされる前記化粧鋼板の内側には、無機繊維系不燃材料が設けられていることを特徴とする。
また、本発明は、前記無機繊維系不燃材料は、前記断熱材本体の幅方向の一方の端部まで設けられていることを特徴とする。
また、本発明は、隣接する前記被覆用鋼板の前記フランジどうしは、前記接合部から離れた位置で重ね合わされ、前記固定部材の先端は、前記無機繊維系不燃材料の内部に位置していることを特徴とする。
また、本発明は、前記接合部は嵌合部を含んで構成され、前記嵌合部は、隣接する前記断熱パネルの幅方向の端面に設けられ幅方向の中央に向かって窪む嵌合凹部と、隣接する前記断熱パネルの前記嵌合凹部にわたって嵌め込まれ無機系材料から形成された嵌合用ボードとで構成されていることを特徴とする。
また、本発明は、前記無機繊維系不燃材料と前記嵌合用ボードとは、前記断熱パネルの厚さ方向において接触しつつ前記断熱パネルの幅方向に延在するオーバーラップ部分を有していることを特徴とする。
また、本発明は、前記不燃ボードは、前記不燃ボードの厚さ方向の両端に位置する一対の側面と、前記不燃ボードの幅方向の両端に位置する一対の端面とを含んで構成され、前記被覆板部は、前記不燃ボードの一方の前記側面に接合された本体板部と、前記本体板部の幅方向の両端に接続され前記一対の端面に接合されそれらの先端から前記フランジが突設された一対の端面板部を備え、前記断熱パネルの幅方向に隣接する前記被覆用鋼板の前記フランジが前記固定部材により前記断熱パネルに取り付けられた箇所において、隣接する前記被覆用鋼板の前記端面板部と前記フランジとにより前記断熱パネルの厚さ方向に窪む凹部が形成され、前記凹部にシール材が充填され前記固定部材の頭部は前記シール材に埋設されていることを特徴とする。
また、本発明は、有機系断熱材を含む断熱材本体と、前記断熱材本体の両面を覆う一対の化粧鋼板とを備える断熱パネルが複数並べられて構成された壁を覆う断熱パネル耐火用被覆体であって、厚さと、厚さよりも大きい寸法の幅および高さを有し無機系材料から形成された不燃ボードと、前記不燃ボードの厚さ方向の一方の側面に接合され前記一方の側面を覆う本体板部と、前記本体板部の両端に接続され前記不燃ボードの幅方向の両端の端面を覆う一対の端面板部と、前記一対の端面板部から屈曲され前記厚さ方向の他方の側面と同一面上で前記端面から離れる方向に延在する一対のフランジとからなる断面視略ハット形状の被覆用鋼板とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、断熱パネルを幅方向に複数並べて接合した壁に、不燃ボードおよび被覆用鋼板から構成される断熱パネル耐火用被覆体を断熱パネルの接合部を幅方向に跨いで断熱パネルの幅方向に並べて断熱パネルの一方の面を覆うため、化粧鋼板から断熱パネルの一般部および接合部の内部に熱が伝わることを抑制でき、建物の火災事故を防止する上で有利となる。
また、断熱パネルの幅方向で隣接する被覆用鋼板のフランジどうしが化粧鋼板に重ね合わされ、重ね合わされたフランジと化粧鋼板を挿通し断熱材本体に接合する固定部材により、断熱パネル耐火被覆体が断熱パネルに取り付けられるため、断熱パネルどうしの接合部に熱変形による隙間が生じることを防止でき、建物の火災事故を防止する上で有利となる。
また、フランジが重ね合わされる化粧鋼板の内側には、無機繊維系不燃材料が設けられているため、フランジを挿通する固定部材から有機系断熱材に熱が直接伝わることを抑制し、建物の火災事故を防止する上で有利となる。
また、本発明によれば、無機繊維系不燃材料は、断熱材本体の幅方向の一方の端部まで設けられているため、断熱パネルどうしの接合部に熱変形による隙間が生じることを防止する上で有利となる。
また、本発明によれば、隣接する被覆用鋼板のフランジどうしが接合部から離れた位置で重ね合わされ、固定部材の先端が無機繊維系不燃材料の内部に位置しているため、固定部材を挿通した側で火災が生じている場合に、火災が生じていない側に固定部材を通して熱が伝わることを抑制する上で有利となる。
また、本発明によれば、嵌合部は、断熱パネルの幅方向の端面に設けられ幅方向の中央に向かって窪む嵌合凹部と、隣接する断熱パネルの嵌合凹部にわたって嵌め込まれた嵌合用ボードとで構成されているため、火災時に嵌合用ボードの水分が蒸発して断熱パネルの温度上昇を遅らせる上で有利となり、建物の火災事故を防止する上で有利となる。
無機繊維系不燃材料と嵌合用ボードとは、断熱パネルの厚さ方向において接触しつつ断熱パネルの幅方向に延在するオーバーラップ部分を有しているため、接合部に熱変形による隙間が生じることを防止する上で有利となり、建物の火災事故を防止する上で有利となる。
また、本発明によれば、断熱パネルの幅方向で隣接する被覆用鋼板のフランジが固定部材により断熱パネルに取り付けられた箇所において、隣接する被覆用鋼板の端面板部とフランジとにより断熱パネルの厚さ方向に窪む凹部が形成され、その凹部にシール材が充填され固定部材の頭部はシール材に埋設されているため、美観を損なうことなく、固定部材に熱が伝わることを抑制する上で有利となる。
また、本発明の断熱パネル耐火用被覆体を用いれば、本発明の壁の耐火被覆構造を簡単に確実に構築する上で有利となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施の形態の断熱パネルで構成された壁の耐火被覆構造を示す要部断面平面図である。
【
図2】第1の実施の形態の断熱パネル耐火用被覆体の断面図である。
【
図3】第1の実施の形態の断熱パネルに断熱パネル耐火用被覆体を接合する場合の説明図である。
【
図4】第2の実施の形態の断熱パネルで構成された壁の耐火被覆構造を示す要部断面平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1~3を参照して第1の実施の形態の断熱パネルで構成された壁の耐火被覆構造10Aについて説明する。
図1に示すように、本実施の形態の耐火被覆構造10Aは、断熱パネル12を並べて接合して構成された壁を、断熱パネル耐火用被覆体30(以下、単に「被覆体30」と称する場合もある)により被覆する構造である。
本実施の形態では、耐火被覆構造10Aにおいて、断熱パネル12の両面のうち被覆体30が位置している側が室内側あるいは屋内側であり、その反対側が室外側あるいは屋外側であって、室内側あるいは屋内側で火災が発生した場合を想定している。
【0010】
まず、
図1を参照して第1の実施の形態の壁に用いる断熱パネル12について説明する。
断熱パネル12は、断熱材本体14と、断熱材本体14の厚さ方向の両面を覆う一対の化粧鋼板16とを含んで構成され、厚さTと、厚さTよりも大きい寸法の幅Wおよび高さ(
図1の紙面と直交する方向)を有する矩形板状を呈している。
断熱パネル12は、厚さTが30mm~300mm、幅Wが600mm~1200mm、高さが3m~10mが好ましく、本実施の形態では厚さTは50mmである。
なお、断熱パネル12の幅W方向の両端は接合部であり、断熱パネル12の接合部を除いた箇所は一般部である。
断熱パネル12は幅W方向に複数並べられ、隣接する(隣り合う)断熱パネル12の接合部12Aどうしが連結して接合されることで壁を構成している。
【0011】
断熱材本体14は、有機系断熱材14Aと、有機系断熱材に比べて不燃性に優れた無機繊維系不燃材料14Bとを含んで構成されている。
有機系断熱材には、ウレタン系断熱材などの従来公知の様々な断熱材が使用可能である。
無機繊維系不燃材料には、ロックウールなど有機系断熱材に比べて不燃性に優れる従来公知の様々な無機繊維が使用可能である。
断熱材本体14は、断熱パネル12の厚さT方向と同方向の厚さと、断熱パネル12の幅W方向と同方向の幅と、断熱パネル12の高さ方向と同方向の高さとを有する矩形板状を呈し、断熱材本体14の幅と高さは、断熱材本体14の厚さよりも大きい。
【0012】
断熱材本体14の幅方向の両端のうちの一方の端部に嵌合凹部1202Aが設けられ、他方の端部に嵌合凸部1202Bが設けられている。それら嵌合凹部1202Aと嵌合凸部1202Bは、断熱材本体14の高さ方向の全長にわたって設けられている。
具体的には、嵌合凹部1202Aは、一方の端部の断熱材本体14の厚さ方向の中央に設けられ、断熱材本体14の幅方向の中央に向かって窪み、断熱材本体14の幅方向の外側に開放されて設けられている。
一方、嵌合凸部1202Bは、他方の端部の断熱材本体14の厚さ方向の中央に設けられ、断熱材本体14の幅方向の外側に向かって突出している。
【0013】
無機繊維系不燃材料14Bは、断熱材本体14の厚さ方向の一方の面で、断熱材本体14の一方の端部から幅方向に所定の長さを有して設けられている。また無機繊維系不燃材料14Bは、断熱材本体14の高さ方向の全長にわたって設けられている。
火災時に断熱パネル12の接合部12Aに熱変形による隙間が生じることを阻止するという観点から、無機繊維系不燃材料14Bの断熱材本体14の厚さは、20mm~80mmが好ましく、無機繊維系不燃材料14Bの断熱材本体14の幅は、3mm~1200mmが好ましい。
【0014】
一対の化粧鋼板16は、鋼材を板状に圧延した鋼板に表面処理を施したものであって、断熱材本体14の厚さ方向の両端の側面および幅方向の端面を覆っている。
化粧鋼板16は、ガルバニウム鋼板など、従来公知の様々な材料が使用可能であり、厚さは、0.2mmから1mm程度であり、本実施の形態では0.4mmの鋼板を使用している。
化粧鋼板16は、本体板部1602と、本体板部1602に接続された端面板部1604とを備えている。
本体板部1602は、断熱材本体14の厚さ方向の両端の側面を覆っている。
端面板部1604は、本体板部1602の幅方向の両端に屈曲部を介して接続され、断熱材本体14の幅方向の両端面の一部を覆っている。
【0015】
詳細に説明すると、本体板部1602の幅方向の両端のうち、嵌合凹部1202Aが設けられた側の一方の端部に位置する端面板部1604は、板部材1604A~1604Cで構成されている。
板部材1604Aは、断熱材本体14の厚さ方向の両端に設けられた本体板部1602の幅方向の端部それぞれに接続され、互いに近づくように断熱材本体14の厚さ方向に延在し、断熱材本体14の幅方向の端面を覆うように設けられている。
板部材1604Bは、板部材1604Aの本体板部1602に接続された端部と反対の端部にそれぞれ接続され、断熱材本体14の内部に向けて幅方向に延在し、嵌合凹部1202Aを構成する凹部における幅方向に沿った向かい合う断熱材本体14の側面を覆うように設けられている。
板部材1604Cは、板部材1604Bの板部材1604Aに接続された端部と反対の端部にそれぞれ接続され、互いに近づくように断熱材本体14の厚さ方向に屈曲し、その向かい合う端部どうしは接続されていない。
また、本体板部1602の幅方向の両端のうち、嵌合凸部1202Bが設けられた側の他方の端部に位置する端面板部1604は、板部材1604D、1604Eで構成されている。
板部材1604Dは、断熱材本体14の厚さ方向の両端に設けられた本体板部1602の幅方向の端部それぞれに接続され、互いに近づくように断熱材本体14の厚さ方向に延在し、断熱材本体14の幅方向の端面を覆うように設けられている。
板部材1604Eは、板部材1604Dの本体板部1602に接続された端部と反対の端部にそれぞれ接続され、嵌合凸部1202Bを構成する突出部における幅方向に沿った断熱材本体14の側面を覆うように設けられている。板部材1604Eは、板部材1604Dに接続された端部と反対の端部どうしは接続されていないため、嵌合凸部1202Bを構成する突出部における厚さ方向に沿った断熱材本体14の端面は覆われていない。
【0016】
したがって、一対の化粧鋼板16により断熱材本体14の厚さ方向の両端に位置する側面と、幅方向の両端に位置する端面の一部が覆われている。
そして、幅方向に並べられた隣接する断熱パネル12の端部の嵌合凹部1202Aと嵌合凸部1202Bとが嵌合することにより、隣接する断熱パネル12はその厚さ方向に変位不能に接合され、本実施の形態では、断熱パネル12の接合部12Aは、嵌合凹部1202Aと嵌合凸部1202Bとからなる嵌合部1202を含んで構成されている。
【0017】
次に、
図2を参照して、断熱パネル耐火用被覆体30について説明する。
断熱パネル耐火用被覆体30は、不燃ボード32と、被覆用鋼板34とを含んで構成されている。
不燃ボード32は、厚さと、厚さよりも大きい寸法の幅と高さとを有する矩形板状を呈している。
不燃ボード32は、不燃ボード32の厚さ方向の両端に位置する一対の側面3202、3206と、不燃ボード32の幅方向の両端に位置する一対の端面3204とを含んで構成されている。
不燃ボード32として、化粧鋼板16を構成する鋼材に比べて熱伝導率が低く硬質で水分を含んだ不燃性の石膏ボードや珪酸カルシウム板など従来公知の様々な無機系材料が使用可能である。
不燃ボード32の厚さは、断熱パネル12の厚さTに応じて適宜決定されるが、火災時に断熱パネル12の接合部12Aに熱変形による隙間が生じることを阻止するという観点から、断熱パネル12の厚さTの1/3~1/6程度が好ましい。本実施の形態では、断熱パネル12の厚さTを50mmとし、不燃ボード32の厚さを9.5mmとしており、不燃ボード24の厚さは断熱パネル12のほぼ1/5としている。
【0018】
被覆用鋼板34は、本体板部3402、本体板部3402に接続された一対の端面板部3404と、一対の端面板部3404に接続された一対のフランジ3406とを備えている。
被覆用鋼板34として、ガルバニウム鋼板など、従来公知の様々な材料が使用可能であり、厚さは、火災時に断熱パネル12の接合部12Aに熱変形による隙間が生じることを阻止するという観点から、化粧鋼板16と同程度の厚さか、化粧鋼板16の厚さ以上が好ましい。
本体板部3402は、不燃ボード32の厚さ方向の一方の側面3202に接着剤やコーキング剤により接合され、不燃ボード32の一方の側面3202を覆っている。
一対の端面板部3404は、本体板部3402の幅方向の両端に接続され、不燃ボード32の一対の端面3204に接合され、不燃ボード32の一対の端面3204を覆っている。
一対のフランジ3406は、一対の端面板部3404の先端から屈曲され不燃ボード32の厚さ方向の他方の側面3206と同一面上で不燃ボード32の幅方向の両端面から離れる方向に延在して設けられている。言い換えると、一対のフランジ3406は、一対の端面板部3404の先端から不燃ボード32の幅方向の両端の側方に位置するように突設されている。
すなわち、被覆用鋼板34は、本体板部3402および一対の端面板部3404を有する被覆板部と、一対のフランジ3406とからなる断面視略ハット形状をなしている。
【0019】
次に、
図1、3を参照して上述のような断熱パネル12で構成された壁の耐火被覆構造10Aについて、被覆方法と共に説明する。
複数枚の断熱パネル12は、厚さT方向および幅W方向を水平方向に向けて、高さ方向を鉛直方向に向けて幅方向に並べられている。
そして、隣接する断熱パネル12の幅W方向の端部の嵌合凹部1202Aと嵌合凸部1202Bとが嵌合され、断熱パネル12の厚さ方向に変位不能な状態で複数の断熱パネル12が接合されて壁が構成される。
そして、断熱パネル12の向かい合う幅方向の端部間で、断熱パネル12の厚さ方向における嵌合凸部1202Bの両側で、板部1604A、1604D、1604Eとで囲まれた空間にシール材Sが充填されている。
シール材30には、シリコーン系のシール材など、不燃性を有する従来公知の様々な不燃性を有するシール材が使用可能である。
本実施の形態では、壁は室内外または屋内外を仕切る仕切り壁であり、無機繊維系不燃材料14Bが設けられた側の断熱パネル12の側面を室内または屋内に向けて壁が構成されている。
【0020】
矩形板状の断熱パネル耐火用被覆体30は、断熱パネル12で構成された壁の室内または屋内に向けられた側面の幅W方向および高さ方向の全長にわたり壁を覆うように設けられる。
断熱パネル耐火用被覆体30は、幅W方向に隣接する断熱パネル12の接合部12Aを断熱パネル12の幅W方向に跨いで断熱パネル12の幅W方向に並べて設けられている。
断熱パネル耐火用被覆体30の幅方向(不燃ボード32の幅方向)は、断熱パネル12の幅W方向と同じ方向であり、幅方向に並べられた隣接する断熱パネル耐火用被覆体30のフランジ3406が断熱パネル12の厚さT方向に重ね合わされて配置される。
このとき、隣接する断熱パネル耐火用被覆体30(被覆用鋼板34)のフランジ3406が、無機繊維系不燃材料14Bが配置された部分で本体板部1602と重なるように複数の断熱パネル耐火用被覆体30が配置される。
【0021】
そして、
図1および
図3に示すように、断熱パネル12の厚さT方向に重ね合わされた隣接する被覆用鋼板34のフランジ3406と化粧鋼板16の本体板部1602に固定部材としてのビス18がワッシャ20を介して挿通され、断熱材本体14に接合することにより、複数の被覆用鋼板3406は断熱パネル12に取り付けられる。本実施の形態では、ビス18としてタッピングスクリューを用いているが、フランジを断熱材本体14に接合できれば、ねじなどいずれの固定部材を用いて構成してもよい。
ビス18は、断熱パネル耐火用被覆体30のフランジ3406において断熱パネル12の高さ方向に所定の間隔をおいて複数設けられている。
これにより、断熱パネル12の厚さ方向において重ねられたフランジ3406と化粧鋼板16と断熱材本体14とが接合され、断熱パネル耐火用被覆体30が断熱パネル12に固定される。
【0022】
従って、隣接するフランジ3406どうしが断熱パネル12の接合部12Aから幅W方向に離れた位置で化粧鋼板16に重ね合わされ、重ね合わされたフランジ3406と化粧鋼板16を挿通し断熱材本体12に接合するビス18により、断熱パネル耐火用被覆体30が断熱パネル12に取付けられ、フランジ3406が重ね合わされる化粧鋼板16の内側には、有機系断熱材14Aに比べて不燃性に優れた無機繊維系不燃材料14Bが配置されている。
そして、断熱パネル耐火用被覆体30を断熱パネル12に取り付けたビス18の先端は、無機繊維系不燃材料14Bの内部に位置するようになっている。
本実施の形態の無機繊維系不燃材料14Bは、断熱材本体14におけるフランジ3406が重ね合わされる化粧鋼板16の内側を含み、フランジ3406から最も近い断熱材本体12の幅方向の一方の端部(嵌合凹部1202Aが設けられた側の端部)まで設けられている。
【0023】
また、断熱パネル12の幅方向で隣接する被覆用鋼板34のフランジ3406がビス18により断熱パネル12に取り付けられた箇所において、隣接する被覆用鋼板34の端面板部3404とフランジ3406とにより断熱パネル12の厚さ方向に窪む凹部36が形成される。
そして、この凹部36にシール材Sが充填されビス18の頭部はシール材Sに埋設される。
【0024】
このような第1の実施の形態の断熱パネル12で構成された壁の耐火被覆構造10Aによれば、断熱パネル12を幅方向に複数並べて接合した壁に、不燃ボード32および被覆用鋼板34から構成される断熱パネル耐火用被覆体30を、断熱パネル12の接合部12Aを幅方向に跨いで断熱パネル12の幅方向に並べて断熱パネル12の一方の面を覆うため、化粧鋼板16から断熱パネル12の一般部および接合部の内部に熱が伝わることを抑制できる。
詳細には、火災時の熱が、断熱パネル耐火用被覆体30を構成する不燃ボード32に伝達されると、不燃ボード32の水分が周辺に放出され、断熱パネル12の一般部の温度上昇が所定の時間抑えられ、有機系断熱材14Aからなる断熱材本体14の延焼を抑制し、有機系断熱材14Aを用いた断熱パネル12からなる壁の火災事故を抑制する上で有利となる。
【0025】
また、断熱パネル12の接合部12Aを幅方向に跨いで断熱パネル耐火用被覆体30が並べられ、接合部12Aから幅方向に離れた位置で、隣接する被覆用鋼板34のフランジ3406が重ね合わされてビス18により断熱材本体14に接合されるので、断熱パネル12の厚さ方向において接合部12Aの側方に断熱パネル耐火用被覆体30を構成する不燃ボード32が位置する。
そのため、火災時にその熱が不燃ボード32に伝達されると、不燃ボード32の水分が接合部12Aの周辺に放出され、接合部12Aを含む接合部12Aの周辺の断熱パネル12の温度上昇が所定の時間抑えられ、接合部12Aに熱変形による隙間が生じることを防止できる。
したがって、断熱パネル12の一般部の延焼を抑制すると共に、化粧鋼板16が接合部12Aから隙間が生じ、その隙間から有機系断熱材14Aに熱や火炎が直接伝わり有機系断熱材14Aが燃焼し延焼していく、あるいは、接合部12Aの隙間から内部の有機系断熱材14Aに酸素が供給され、有機系断熱材14Aが燃焼し延焼していくことを抑制でき、建物の火災事故を抑制する上で有利となる。
【0026】
また、フランジ3406が重ね合わされる化粧鋼板16の内側には、無機繊維系不燃材料14Bが設けられているため、フランジ3406を挿通するビス18から有機系断熱材14Aに熱が直接伝わることによる有機系断熱材14Aの延焼を抑制する上で有利となり、建物の火災事故を防止する上で有利となる。
また、無機繊維系不燃材料14Bは、断熱パネル12の幅方向の一方の端部まで設けられているため、火災時の熱の嵌合部1202への伝達を抑制し、断熱パネル12どうしの接合部12Aに熱変形による隙間が生じることを防止する上で有利となる。
【0027】
また、隣接する被覆用鋼板34のフランジ3406が接合部12Aから離れた位置で重ね合わされ、ビス18の先端が無機繊維系不燃材料14Bの内部に位置しているため、火災時の熱が、ビス18を介して直接有機系断熱材14Aに伝わることによる有機系断熱材14Aの延焼を抑制する上で有利となり、建物の火災事故を防止する上で有利となる。
また、断熱パネル12の幅方向で隣接する被覆用鋼板34のフランジ3406がビス18により断熱パネル12に取り付けられた箇所において、隣接する被覆用鋼板34の端面板部3404とフランジ3406とにより断熱パネル12の厚さ方向に窪む凹部36が形成され、その凹部36にシール材Sが充填されビス18の頭部はシール材Sに埋設されているため、美観を損なうことなく、ビス18に熱が伝わることを抑制する上で有利となる。
また、化粧鋼板16は、断熱材本体14の厚さ方向の両端の本体板部1602からそれぞれ接続された板部材1604Cおよび板部材1604Eがいずれも接続されていない。つまり、化粧鋼板16は、断熱材本体14の厚さ方向の両端の本体板部1602が接続されていないため、火災時の熱が化粧鋼板16を通じて室外側(または屋外側)に伝わることを防止する上で有利となる。また、火災が発生していない通常時においても壁としての断熱性能を高める上で有利となる。
また、本実施の形態の断熱パネル耐火用被覆体30を用いれば、本実施の形態の壁の耐火被覆構造10Aを簡単に確実に構築する上で有利となる。
【0028】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、接続部12Aの嵌合部1202が嵌合凹部1202Aと嵌合凸部1202Bとで構成されていたのに対して、第2の実施の形態では、接続部12Bに設けられた嵌合凹部1204と、断熱パネル12とは別体の嵌合用ボード22とで構成されている点が異なっている。
なお、以下の実施の形態の説明では、第1の実施の形態と同様な個所、部材に同一の符号を付してその説明を省略し、第1の実施の形態と異なった個所について重点的に説明する。
【0029】
図4を参照して第2の実施の形態の断熱パネルで構成された壁の耐火被覆構造10Bについて説明する。
本実施の形態の接続部12Bの嵌合部は、断熱パネル12の幅方向において隣接する断熱材本体14の幅方向の端面の中央に設けられ幅方向の中央に向かって窪む嵌合凹部1204と、隣接する断熱材本体14の嵌合凹部1204にわたって嵌め込まれ嵌合用ボード22とで構成されている。
嵌合用ボード22には、不燃ボード30と同様に、化粧鋼板16を構成する鋼材に比べて熱伝導率が低く硬質で不燃性を有し水分を含んだ石膏ボードや珪酸カルシウム板など従来公知の様々な無機系材料が使用可能である。
無機繊維系不燃材料14Bと嵌合用ボード22とは、断熱パネル12の厚さ方向において接触しつつ断熱パネル12の幅方向に延在するオーバーラップ部分22Aを有している。
【0030】
このような第2の実施の形態の断熱パネル12で構成された壁の耐火被覆構造10Bによれば、第1の実施の形態の耐火被覆構造の効果に加え、次の効果が発揮される。
断熱パネル12の接合部12Bは嵌合用ボード22を含んで構成されているので、火災時の熱が、嵌合用ボード22に伝達されると、嵌合用ボード22の水分が接合12Bの周辺に放出され、接合部12Bの温度上昇が所定の時間抑えられ、接合部12Bに熱変形による隙間が生じることを防止する上で有利となり、有機系断熱材14Aを用いた断熱パネル12からなる壁の火災事故を抑制する上で有利となる。
また、無機繊維系不燃材料14Bと嵌合用ボード22とは、断熱パネル12の厚さ方向において接触しつつ断熱パネル12の幅方向に延在するオーバーラップ部分22Aを有しているため、火災時の熱による接合部12Bの温度上昇を抑制する上で有利となり、有機系断熱材14Aを用いた断熱パネル12からなる壁の火災事故を抑制する上で有利となる。
【符号の説明】
【0031】
10A、10B 壁の耐火被覆構造
12 断熱パネル
12A、12B 接合部
1202 嵌合部
1202A 嵌合凹部
1202B 嵌合凸部
1204 嵌合凹部
14 断熱材本体
14A 有機系断熱材
14B 無機繊維系不燃材料
16 化粧鋼板
1602 本体板部
1604 端面板部
18 ビス
22 嵌合用ボード
30 断熱パネル耐火被覆体
32 不燃ボード
3202、3206 側面
3204 一対の端面
34 被覆用鋼板
3402 本体板部
3404 端面板部
3406 フランジ