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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】軸受装置
(51)【国際特許分類】
   F16C 41/00 20060101AFI20230630BHJP
   F16C 33/78 20060101ALI20230630BHJP
   F16C 19/06 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
F16C41/00
F16C33/78 Z
F16C19/06
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2019125426
(22)【出願日】2019-07-04
(65)【公開番号】P2021011898
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小池 孝誌
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 勇介
【審査官】糟谷 瑛
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-274431(JP,A)
【文献】実開平3-123113(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/00-19/56
F16C 33/30-33/66
F16C 41/00-41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪との間に配置される転動体とを有する転がり軸受と、
第1端と、前記第1端の反対側の端である第2端とを有するワイヤとを備え、
前記内輪及び前記外輪の一方は、回転輪になっており、
前記内輪及び前記外輪の他方は、固定輪になっており、
前記ワイヤは、前記第1端及び前記第2端において前記固定輪に対する位置が固定されているとともに、前記第1端及び前記第2端を支点として前記固定輪に対して相対的に揺動可能になっており、
前記ワイヤは、変形に伴って起電力を発生させるように構成されている、軸受装置。
【請求項2】
前記固定輪に取り付けられ、前記内輪と前記外輪との間にある第1空間を閉塞する環状のシール部材と、前記シール部材に取り付けられ、前記シール部材との間で環状の第2空間を画する蓋部材とをさらに備え、
前記ワイヤは、前記第2空間内に配置され、
前記第1端及び前記第2端は、前記蓋部材に取り付けられている、請求項1に記載の軸受装置。
【請求項3】
前記第2空間は、前記第1空間内に位置している、請求項2に記載の軸受装置。
【請求項4】
前記ワイヤは、周方向に沿って前記第2空間内を実質的に1周するように配置されている、請求項2又は請求項3に記載の軸受装置。
【請求項5】
前記ワイヤは、周方向に沿って前記第2空間内を2周以上するように配置されている、請求項2又は請求項3に記載の軸受装置。
【請求項6】
前記蓋部材は、前記シール部材に対向している底壁と、前記底壁と前記シール部材とを接続する内周壁及び外周壁とを有する、請求項2~請求項5のいずれか1項に記載の軸受装置。
【請求項7】
前記底壁は、前記シール部材に向かって突出し、前記内周壁と前記外周壁との間に配置される支持部を含み、
前記ワイヤは、前記支持部と前記内周壁との間に配置されている、請求項6に記載の軸受装置。
【請求項8】
前記底壁と前記シール部材との間の距離は、前記内周壁と前記外周壁との間の距離よりも小さい、請求項6に記載の軸受装置。
【請求項9】
前記底壁と前記シール部材との間の距離は、前記内周壁と前記外周壁との間の距離よりも大きい、請求項6に記載の軸受装置。
【請求項10】
処理部と、
前記処理部に給電する電源部と、
前記処理部に接続されたアンテナとをさらに備え、
前記処理部、前記電源部及び前記アンテナは、前記シール部材に取り付けられ、
前記処理部は、前記ワイヤから前記起電力が入力され、前記アンテナを介して前記起電力に関するデータを送信可能に構成されている、請求項2~請求項9のいずれか1項に記載の軸受装置。
【請求項11】
前記電源部は、前記起電力により充電される二次電池又はコンデンサを含む、請求項10に記載の軸受装置。
【請求項12】
前記処理部は、前記起電力に基づいて前記転がり軸受の振動に関する異常判定を行い、前記アンテナを介して前記異常判定の結果を送信可能に構成されている、請求項10又は請求項11に記載の軸受装置。
【請求項13】
前記固定輪は、前記外輪であり、
前記外輪は、軸方向において端面を含み、
前記端面には、環状に溝が形成されており、
前記溝内には、前記ワイヤが配置されており、
前記第1端及び前記第2端は、前記外輪に取り付けられている、請求項1に記載の軸受装置。
【請求項14】
前記固定輪は、前記外輪であり、
前記外輪の外周面には、環状に溝が形成されており、
前記溝内には、前記ワイヤが配置されており、
前記第1端及び前記第2端は、前記外輪に取り付けられている、請求項1に記載の軸受装置。
【請求項15】
前記ワイヤは、芯線と、前記芯線の外周面を覆う圧電層と、前記圧電層の外周面を覆うシールド層と、前記シールド層の外周面を覆う絶縁層とを有する、請求項1~請求項14のいずれか1項に記載の軸受装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受装置に関する。より特定的には、本発明は、転がり軸受に加わる振動を検知可能な軸受装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(実開平3-123113号公報)には、異常検出センサ付き転がり軸受が記載されている。特許文献1に記載の異常検出センサ付き転がり軸受は、転がり軸受と、振動センサとを有している。
【0003】
転がり軸受は、玉軸受である。転がり軸受は、外輪と、内輪と、玉と、保持器とを有している。外輪は、第1内周面と、第1外周面とを有している。内輪は、第2内周面と、第2外周面とを有している。内輪は、第2外周面が第1内周面に対向するように配置されている。玉は、内輪と外輪との間に配置されている。保持器は、玉を保持している。
【0004】
第1外周面には、内周面側に向かって窪む溝が周方向に沿って環状に形成されている。溝には、振動センサが埋設されている。振動センサは、圧電性を有するピエゾゴム部材である。外輪が振動により歪みを受けると、ピエゾゴム部材も変形し、ピエゾゴム部材に起電力が発生する。ピエゾゴム部材に発生した起電力は、アンプにより増幅され、信号処理装置に入力される。信号処理装置は、アンプにより増幅された起電力に対する所定の演算を行うことにより、外輪に異常な振動が加わっていないかを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開平3-123113号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の異常検出センサ付き転がり軸受においては、振動による外輪の歪みが微少であるため、ピエゾゴム部材に加わる歪みも微少であり、振動の検知感度に改善の余地がある。
【0007】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。より具体的には、本発明は、振動の検知感度を向上させることが可能な軸受装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る軸受装置は、転がり軸受と、ワイヤとを備える。転がり軸受は、内輪と、外輪と、内輪と外輪との間に配置される転動体と有する。ワイヤは、第1端と、第1端の反対側の端である第2端とを有する。内輪及び外輪の一方は、回転輪になっており、内輪及び外輪の他方は、固定輪になっている。ワイヤは、第1端及び第2端において固定輪に対する位置が固定されているとともに、第1端及び第2端を支点として固定輪に対して相対的に揺動可能になっている。ワイヤは、変形に伴って起電力を発生させるように構成されている。
【0009】
上記の軸受装置は、固定輪に取り付けられ、内輪と外輪との間にある第1空間を閉塞する環状のシール部材と、シール部材に取り付けられ、シール部材との間で環状の第2空間を画する蓋部材とをさらに備えていてもよい。ワイヤは、第2空間内に配置されていてもよい。第1端及び第2端は、蓋部材に取り付けられていてもよい。上記の軸受装置において、第2空間は、第1空間内に位置していてもよい。
【0010】
上記の軸受装置において、ワイヤは、周方向に沿って第2空間内を実質的に1周するように配置されていてもよい。上記の軸受装置において、ワイヤは、周方向に沿って第2空間内を2周以上するように配置されていてもよい。
【0011】
上記の軸受装置において、蓋部材は、シール部材に対向している底壁と、底壁とシール部材とを接続する内周壁及び外周壁とを有していてもよい。
【0012】
上記の軸受装置において、底壁は、シール部材に向かって突出し、内周壁と外周壁との間に配置される支持部を含んでいてもよい。ワイヤは、支持部と内周壁との間に配置されていてもよい。
【0013】
上記の軸受装置において、底壁とシール部材との間の距離は、内周壁と外周壁との間の距離より小さくてもよい。
【0014】
上記の軸受装置において、底壁とシール部材との間の距離は、内周壁と外周壁との間の距離より大きくてもよい。
【0015】
上記の軸受装置は、処理部と、処理部に給電する電源部と、処理部に接続されたアンテナとをさらに備えていてもよい。処理部、電源部及びアンテナは、シール部材に取り付けられていてもよい。処理部は、ワイヤから起電力が入力され、アンテナを介して起電力に関するデータを送信可能に構成されていてもよい。
【0016】
上記の軸受装置において、電源部は、起電力により充電される二次電池又はコンデンサを含んでいてもよい。上記の軸受装置において、処理部は、起電力に基づいて転がり軸受の振動に関する異常判定を行い、アンテナを介して異常判定の結果を送信可能に構成されていてもよい。
【0017】
上記の軸受装置において、固定輪は、外輪であってもよい。外輪は、軸方向において端面を含んでいてもよい。端面には、環状に溝が形成されていてもよい。溝内には、ワイヤが配置されていてもよい。第1端及び第2端は、外輪に取り付けられていてもよい。
【0018】
上記の軸受装置において、固定輪は、外輪であってもよい。外輪の外周面には、環状に溝が形成されていてもよい。溝内には、ワイヤが配置されていてもよい。第1端及び第2端は、外輪に取り付けられていてもよい。
【0019】
上記の軸受装置において、ワイヤは、芯線と、芯線の外周面を覆う圧電層と、圧電層の外周面を覆うシールド層と、シールド層の外周面を覆う絶縁層とを有していてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一態様に係る軸受装置によると、振動の検知感度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】軸受装置100の軸方向に平行な断面図である。
図2図1のII-IIにおける断面図である。
図3】ワイヤ50の斜視図である。
図4】軸受装置200の軸方向に平行な断面図である。
図5図4のV-Vにおける断面図である。
図6】軸受装置300の軸方向に平行な断面図である。
図7図6のVII-VIIにおける断面図である。
図8】軸受装置400の軸方向に平行な断面図である。
図9図8のIX-IXにおける断面図である。
図10】軸受装置500の軸方向に平行な断面図である。
図11図10のXI-XIにおける断面図である。
図12】軸受装置600の軸方向に平行な断面図である。
図13図12のXIII-XIIIにおける断面図である。
図14】軸受装置700の軸方向に平行な断面図である。
図15図14のXV-XVにおける断面図である。
図16】軸受装置800の軸方向に平行な断面図である。
図17】軸受装置800のブロック図である。
図18】軸受装置800Aのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面においては、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さない。
【0023】
(第1実施形態)
以下に、第1実施形態に係る軸受装置(以下「軸受装置100」とする)の構成を説明する。
【0024】
図1は、軸受装置100の軸方向に平行な断面図である。図2は、図1のII-IIにおける断面図である。図1及び2に示されるように、軸受装置100は、転がり軸受10と、シール部材20と、シール部材30と、蓋部材40と、ワイヤ50と、ケーブル60とを有している。
【0025】
転がり軸受10は、例えば、深溝玉軸受である。但し、転がり軸受10はこれに限られるものではない。転がり軸受10は、内輪1と、外輪2と、転動体3と、保持器4とを有している。内輪1は、転がり軸受10の回転輪であり、外輪2は、転がり軸受10の静止輪である。
【0026】
内輪1は、環状の形状を有している。内輪1は、上面1aと、底面1bと、内周面1cと、外周面1dとを有している。上面1a及び底面1bは、内輪1の軸方向における端面を構成している。なお、以下において、「軸方向」とは内輪1の回転中心軸Aに沿う方向をいう。底面1bは、上面1aの反対面である。内周面1cは、上面1a及び底面1bに連なっており、外周面1dは、上面1a及び底面1bに連なっている。
【0027】
外輪2は、環状の形状を有している。外輪2は、上面2aと、底面2bと、内周面2cと、外周面2dとを有している。上面2a及び底面2bは、軸方向における端面を構成している。底面2bは、上面2aの反対面である。内周面2cは、上面2a及び底面2bに連なっており、外周面2dは、上面2a及び底面2bに連なっている。外輪2は、内周面2cが外周面1dに対向するように、内輪1の外側に配置されている。
【0028】
転動体3は、球形状を有している。転動体3は、内輪1と外輪2との間に配置されている。より具体的には、転動体3は、外周面1d及び内周面2cに接している。転動体3の数は、複数である。保持器4は、環状の形状を有している。保持器4は、内輪1と外輪2との間に配置されている。保持器4は、周方向における転動体3の間隔が一定範囲内になるように、転動体3を保持している。なお、以下において、「周方向」とは、内輪1の回転中心軸Aを通る円周に沿う方向をいう。
【0029】
シール部材20は、環状の形状を有している。シール部材20は、第1面20aと、第2面20bとを有している。第2面20bは、第1面20aの反対面である。シール部材20は、第1面20aが転がり軸受10の内部を向くように(すなわち、第1面20aが転動体3及び保持器4と対向するように)外輪2に取り付けられている。シール部材20には、孔20cが形成されている。孔20cは、シール部材20を厚さ方向に(第1面20aから第2面20bに向かう方向に)貫通している。
【0030】
シール部材20は、例えば、芯金21と、ゴム22とにより形成されている。より具体的には、シール部材20は、芯金21の周囲にゴム22を加硫成形することにより形成されている。
【0031】
シール部材30は、環状の形状を有している。シール部材30は、第1面30aと、第2面30bとを有している。第2面30bは、第1面30aの反対面である。シール部材30は、第1面30aが転がり軸受10の内部を向くように(すなわち、第1面30aが転動体3及び保持器4と対向するように)外輪2に取り付けられている。シール部材30は、例えば、芯金31と、ゴム32とにより形成されている。より具体的には、シール部材30は、芯金31の周囲にゴム32を加硫成形することにより形成されている。
【0032】
内輪1と外輪2との間にある空間を、第1空間SP1とする。第1空間SP1は、シール部材20及びシール部材30により、閉塞されている。図示されていないが、第1空間SP1には、グリース等の潤滑剤が封入される。
【0033】
蓋部材40は、シール部材20との間で環状の第2空間SP2を画するように、シール部材20に取り付けられている。より具体的には、蓋部材40は、底壁41と、内周壁42と、外周壁43とを有している。第2空間SP2は、第1空間SP1の内部に位置している。
【0034】
底壁41は、軸方向において、シール部材20と間隔を空けて対向している。内周壁42及び外周壁43は、底壁41とシール部材20とを接続するように軸方向に沿って延在している。内周壁42及び外周壁43は、径方向において互いに対向している。なお、以下において、「径方向」とは、内輪1の回転中心軸Aを通り、かつ軸方向に直交する方向をいう。内周壁42は、径方向において、外周壁43よりも内輪1の回転中心軸Aに近い位置に配置されている。
【0035】
底壁41とシール部材20との間の距離を、第1距離DIS1とする。内周壁42と外周壁43との間の距離を、第2距離DIS2とする。第1距離DIS1は、第2距離DIS2よりも小さくなっている。第1距離DIS1は、ワイヤ50の直径よりも大きい。
【0036】
図3は、ワイヤ50の斜視図である。図3に示されるように、ワイヤ50は、例えばピエゾ電線である。すなわち、ワイヤ50は、芯線51と、圧電層52と、シールド層53と、絶縁層54とを有している。
【0037】
芯線51は、導電性の材料(例えば、金属材料)により形成されている。芯線51は、ワイヤ50の長手方向に直交する断面視において、例えば円形形状を有している。圧電層52は、圧電性(応力が加わることにより電荷が発生する性質)の材料により形成されている。圧電層52は、芯線51の外周面を覆っている。シールド層53は、導電性の材料により形成されている。シールド層53は、圧電層52の外周面を覆っている。絶縁層54は、絶縁性の材料(例えば、フッ素樹脂)により形成されている。絶縁層54は、シールド層53の外周面を覆っている。
【0038】
ワイヤ50は、圧電層52の圧電性に起因して、変形を受けた際に、芯線51とシールド層53との間に起電力が発生する。但し、ワイヤ50は、ピエゾ電線に限られない。ワイヤ50は、ワイヤ状の形状を有しており、変形を受けることにより起電力を発生させるものであればよい。
【0039】
図1及び2に示されるように、ワイヤ50は、第2空間SP2内に配置されている。ワイヤ50は、転がり軸受10に振動が加わっていない状態において、外周壁43に接触している。図2に示されるように、ワイヤ50は、長手方向において、第1端50aと、第2端50bとを有している。第2端50bは、第1端50aの反対側の端である。第1端50a及び第2端50bは、蓋部材40に接着等により固定される。より具体的には、第1端50a及び第2端50bは、底壁41に取り付けられている。これにより、第1端50a及び第2端50bにおいて、ワイヤ50は、外輪2に対する位置が固定されている。
【0040】
ワイヤ50は、第1端50a及び第2端50b以外の部分において、蓋部材40に取り付けられていない。そのため、ワイヤ50は、第1端50a及び第2端50bを支点として、外輪2に対して揺動可能になっている。但し、ワイヤ50の軸方向における変位は、ワイヤ50が転動体3及び保持器4に接触しないように底壁41により規制されている。
【0041】
ワイヤ50は、周方向に沿って第2空間SP2内を実質的に一周するように配置されている。ここで、「ワイヤ50が周方向に沿って第2空間SP2内を実質的に1周する」とは、内輪1の回転中心軸Aと第1端50aとを結んだ仮想直線(仮想直線L1)と内輪1の回転中心軸Aと第2端50bとを結んだ仮想直線(仮想直線L2)とがなす角度θが、鋭角になっていることをいう。角度θは、10°以下であることが好ましい。
【0042】
ケーブル60は、孔20cに挿通されている。ケーブル60は、ワイヤ50に電気的に接続されている。これにより、ワイヤ50は、転がり軸受10の外部に電気的に接続されていることになる。
【0043】
以下に、軸受装置100の効果を説明する。
軸受装置100において、ワイヤ50は、第1端50a及び第2端50bにおいて外輪2に対する位置が固定されているとともに、第1端50a及び第2端50bを支点として外輪2に対して相対的に揺動可能になっている。その結果、軸受装置100においては、ワイヤ50が外輪2に対して埋設又は貼付されている場合と比較して、転がり軸受10に振動が加わった際のワイヤ50の変形量が大きくなる。ワイヤ50において発生する起電力は、ワイヤ50の変形量が大きくなるにしたがって大きくなるため、軸受装置100によると、振動の検知感度が向上する。
【0044】
軸受装置100においては、ワイヤ50が第2空間SP2内に配置されているため、第2空間SP2内へのグリース等の潤滑剤の侵入が蓋部材40により抑制されている。その結果、ワイヤ50の変形がグリース等の潤滑剤により妨げられにくく、ワイヤ50から安定して起電力を発生させやすい。
【0045】
軸受装置100においては、第1距離DIS1が第2距離DIS2よりも小さいため、ワイヤ50の軸方向における変位が、ワイヤ50の径方向における変位よりも制限されている。したがって、軸受装置100においては、主として径方向における振動を検知することができる。
【0046】
(第2実施形態)
以下に、第2実施形態に係る軸受装置(以下「軸受装置200」とする)の構成を説明する。ここでは、軸受装置100の構成と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さない。
【0047】
図4は、軸受装置200の軸方向に平行な断面図である。図5は、図4のV-Vにおける断面図である。図4及び5に示されるように、軸受装置200は、転がり軸受10と、シール部材20と、シール部材30と、蓋部材40と、ワイヤ50と、ケーブル60とを有している。この点に関して、軸受装置200の構成は、軸受装置100の構成と共通している。しかしながら、軸受装置200の構成は、蓋部材40の構造及びワイヤ50の配置に関し、軸受装置100の構成と異なっている。
【0048】
軸受装置200において、蓋部材40は、支持部44を有している。支持部44は、底壁41からシール部材20に向かって突出している。支持部44は、径方向において、内周壁42と外周壁43との間に配置されている。蓋部材40は、周方向に沿って、支持部44を複数有していてもよい。
【0049】
軸受装置200において、ワイヤ50は、径方向において、内周壁42と支持部44との間に配置されている。ワイヤ50は、支持部44に取り付けられていてもよく、支持部44に取り付けられていなくてもよい。
【0050】
以下に、軸受装置200の効果を説明する。ここでは、軸受装置100の効果と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さない。
【0051】
軸受装置200においては、ワイヤ50が内周壁42に接触していないため、軸受装置100と比較して、より自由に揺動・変形することができる(ワイヤ50の変形量が大きくなる)。ワイヤ50の変形量が大きくなるほど、ワイヤ50において発生する起電力が大きくなる。そのため、軸受装置200によると、振動の検知感度がさらに向上する。
【0052】
(第3実施形態)
以下に、第3実施形態に係る軸受装置(以下「軸受装置300」とする)の構成を説明する。ここでは、軸受装置100の構成と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さない。
【0053】
図6は、軸受装置300の軸方向に平行な断面図である。図7は、図6のVII-VIIにおける断面図である。図6及び7に示されるように、軸受装置300は、転がり軸受10と、シール部材20と、シール部材30と、蓋部材40と、ワイヤ50と、ケーブル60とを有している。この点に関して、軸受装置300の構成は、軸受装置100の構成と共通している。しかしながら、軸受装置300の構成は、ワイヤ50の構造に関し、軸受装置100の構成と異なっている。
【0054】
軸受装置300において、ワイヤ50は、周方向に沿って第2空間SP2内を2周以上するように配置されている。すなわち、ワイヤ50は、周方向に沿って第2空間SP2内を2周以上することができる長さを有している。好ましくは、内輪1の回転中心軸Aに沿う方向から見て、ワイヤ50の面積を底壁41の面積で除した値は、例えば0.8未満である。
【0055】
以下に、軸受装置300の効果を説明する。ここでは、軸受装置100の効果と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さない。
【0056】
軸受装置300においては、ワイヤ50が周方向に沿って第2空間SP2内を2周以上するように配置されているため、ワイヤ50の長さが、軸受装置100と比較して長くなっている。ワイヤ50が長くなるほど変形に伴う起電力が大きくなるため、軸受装置300によると、振動の検知感度をさらに向上させることができる。
【0057】
(第4実施形態)
以下に、第4実施形態に係る軸受装置(以下「軸受装置400」とする)の構成を説明する。ここでは、軸受装置100の構成と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さない。
【0058】
図8は、軸受装置400の軸方向に平行な断面図である。図9は、図8のIX-IXにおける断面図である。図8及び9に示されるように、軸受装置400は、転がり軸受10と、シール部材20と、シール部材30と、蓋部材40と、ワイヤ50と、ケーブル60とを有している。この点に関して、軸受装置400の構成は、軸受装置100の構成と共通している。
【0059】
しかしながら、軸受装置400の構成は、蓋部材40の構造に関し、軸受装置100の構成と異なっている。より具体的には、軸受装置400において、第1距離DIS1は、第2距離DIS2よりも大きくなっている(第2距離DIS2は、第1距離DIS1よりも小さくなっている)。第2距離DIS2は、ワイヤ50の直径よりも大きい。
【0060】
以下に、軸受装置400の効果を説明する。ここでは、軸受装置100の効果と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さない。
【0061】
軸受装置400においては、第2距離DIS2が第1距離DIS1よりも小さいため、ワイヤ50の径方向における変位が、ワイヤ50の軸方向における変位よりも制限されている。したがって、軸受装置400においては、主として軸方向における振動を検知することができる。
【0062】
(第5実施形態)
以下に、第5実施形態に係る軸受装置(以下「軸受装置500」とする)の構成を説明する。ここでは、軸受装置100の構成と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さない。
【0063】
図10は、軸受装置500の軸方向に平行な断面図である。図11は、図10のXI-XIにおける断面図である。図10及び11に示されるように、軸受装置500は、転がり軸受10と、シール部材20と、シール部材30と、蓋部材40と、ワイヤ50と、ケーブル60とを有している。この点に関して、軸受装置500の構成は、軸受装置100の構成と共通している。
【0064】
しかしながら、軸受装置500の構成は、錘70をさらに有している点に関し、軸受装置100の構成と異なっている。
【0065】
錘70は、第2空間SP2内に配置されている。錘70は、ワイヤ50に取り付けられている。錘70は、内輪1の回転中心軸Aに関して第1端50aと点対称になる位置にあるワイヤ50に取り付けられていることが好ましい。図示されていないが、錘70と蓋部材40との接触により音が発生することを抑制するため、錘70の表面は、ゴム等の弾性部材により覆われていてもよい。
【0066】
以下に、軸受装置500の効果を説明する。ここでは、軸受装置100の効果と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さない。
【0067】
軸受装置500においては、ワイヤ50に錘70が取り付けられているため、転がり軸受10に加わる振動が小さくても、錘70の重量により、錘70が取り付けられていない場合と比較して、大きく揺動・変形する。したがって、軸受装置500においては、振動の検知感度をさらに向上させることができる。
【0068】
(第6実施形態)
以下に、第6実施形態に係る軸受装置(以下「軸受装置600」とする)の構成を説明する。ここでは、軸受装置100の構成と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さない。
【0069】
図12は、軸受装置600の軸方向に平行な断面図である。図13は、図12のXIII-XIIIにおける断面図である。図12及び13に示されるように、軸受装置600は、転がり軸受10と、シール部材20と、シール部材30と、ワイヤ50と、ケーブル60とを有している。この点に関して、軸受装置600の構成は、軸受装置100の構成と共通している。
【0070】
しかしながら、軸受装置600の構成は、蓋部材40を有していないこと、転がり軸受10の構造及びワイヤ50の配置に関し、軸受装置100の構成と異なっている。
【0071】
軸受装置600において、上面2aには、溝2aaが形成されている。溝2aaは、周方向に沿って環状に形成されている。第1端50a及び第2端50bは、外輪2(より具体的には、溝2aa)に取り付けられている。ワイヤ50は、溝2aa内に配置されている。ワイヤ50は、溝2aaから出てしまわないように、第1端50a及び第2端50b以外の部分において、溝2aaに取り付けられていてもよい。ワイヤ50は、第1端50a及び第2端50bを支点として、溝2aa内において、外輪2に対して揺動可能になっている。なお、ワイヤ50が第1端50a及び第2端50b以外の部分においても溝2aaに取り付けられている場合、その部分も上記の揺動の支点になる。
【0072】
以下に、軸受装置600の効果を説明する。ここでは、軸受装置100の効果と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さない。
【0073】
軸受装置600においても、第1端50a及び第2端50bを支点として外輪2に対して相対的に揺動可能になっているため、転がり軸受10に振動が加わった際のワイヤ50の変形量が大きくなり、振動の検知感度が向上する。
【0074】
(第7実施形態)
以下に、第7実施形態に係る軸受装置(以下「軸受装置700」とする)の構成を説明する。ここでは、軸受装置100の構成と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さない。
【0075】
図14は、軸受装置700の軸方向に平行な断面図である。図15は、図14のXV-XVにおける断面図である。図14及び15に示されるように、軸受装置700は、転がり軸受10と、シール部材20と、シール部材30と、ワイヤ50と、ケーブル60とを有している。この点に関して、軸受装置700の構成は、軸受装置100の構成と共通している。
【0076】
しかしながら、軸受装置700の構成は、蓋部材40を有していないこと、転がり軸受10の構造及びワイヤ50の配置に関し、軸受装置100の構成と異なっている。
【0077】
軸受装置700において、外周面2dには、溝2daが形成されている。溝2daは、周方向に沿って環状に形成されている。第1端50a及び第2端50bは、外輪2(より具体的には、溝2da)に取り付けられている。ワイヤ50は、溝2da内に配置されている。ワイヤ50は、溝2daから出てしまわないように、第1端50a及び第2端50b以外の部分において、溝2daに取り付けられていてもよい。ワイヤ50は、第1端50a及び第2端50bを支点として、溝2da内において、外輪2に対して揺動可能になっている。なお、ワイヤ50が第1端50a及び第2端50b以外の部分においても溝2daに取り付けられている場合、その部分も上記の揺動の支点になる。
【0078】
溝2daの幅を、幅Wとする。溝2daの深さを、深さDとする。幅Wは、軸方向において測定され、深さDは径方向に沿って測定される。幅W及び深さDは、ワイヤ50の直径よりも大きい。軸方向における振動を主として検知使用とする場合、ワイヤ50を外輪2にゆるめに巻き付け、ワイヤ50が径方向に大きく変形しないようにすることが好ましい。
【0079】
以下に、軸受装置700の効果を説明する。ここでは、軸受装置100の効果と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さない。
【0080】
軸受装置700においても、第1端50a及び第2端50bを支点として外輪2に対して相対的に揺動可能になっているため、転がり軸受10に振動が加わった際のワイヤ50の変形量が大きくなり、振動の検知感度が向上する。
【0081】
(第8実施形態)
以下に、第8実施形態に係る軸受装置(以下「軸受装置800」とする)を説明する。ここでは、軸受装置100と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さない。
【0082】
図16は、軸受装置800の軸方向に平行な断面図である。図16に示されるように、軸受装置800は、転がり軸受10と、シール部材20と、シール部材30と、蓋部材40と、ワイヤ50と、ケーブル60とを有している。この点に関して、軸受装置800の構成は、軸受装置100の構成と共通している。
【0083】
図17は、軸受装置800のブロック図である。図16及び17に示されるように、軸受装置800は、処理部81と、電源部82と、アンテナ83とを有している。この点に関して、軸受装置800の構成は、軸受装置100の構成と異なっている。
【0084】
処理部81、電源部82及びアンテナ83は、シール部材20に取り付けられている。より具体的には、処理部81、電源部82及びアンテナ83は、第2面20bに取り付けられている。処理部81は、ケーブル60を介してワイヤ50に接続されている。電源部82は、処理部81に給電を行う。アンテナ83は、処理部81に接続されている。
【0085】
処理部81は、ケーブル60を介してワイヤ50から入力された起電力が入力されるように構成されている(以下においては、ワイヤ50から入力される起電力を、振動信号という)。また、処理部81は、アンテナ83を介して振動信号を送信することができるように構成されている。
【0086】
より具体的には、処理部81は、入力部81aと、通信部81bとを有している。入力部81aは、振動信号をデジタル信号に変換する。通信部81bは、デジタル化された振動信号に対して、ベースバンド信号処理、変調処理等を行うとともに、アンテナ83から送信する。
【0087】
入力部81aは、デジタル化された振動信号に対して適宜の信号処理を行ってもよい。この信号処理は、例えば、所定の閾値と振動信号とを比較することにより、転がり軸受10の振動に関する異常判定を行う処理である。通信部81bは、振動信号ではなく、入力部81aにおける異常判定結果のみをアンテナ83を介して送信してもよい。この場合、送信されるデータ量が減少することにより、消費電力が削減される。
【0088】
処理部81は、例えばマイクロコントローラにより構成されている。入力部81aは、例えばADC(Analog to Digital Converter)回路、CPU(Central Processing Unit)回路等により構成されており、通信部81bはトランスミッタ回路、アンプ回路等により構成されている。
【0089】
電源部82は、例えば電池、光発電装置により構成されている。電源部82は、ワイヤ50において発生した起電力により充電可能に構成されている二次電池又はコンデンサであってもよい。この場合には、外部電源なしに転がり軸受10の振動検知が可能になる。処理部81は、電源部82に送信可能な電力が蓄積された段階で振動信号(又は異常判定結果)を送信するように構成されていてもよい。
【0090】
<変形例>
以下に、軸受装置800(以下「軸受装置800A」とする)の変形例を説明する。ここでは、軸受装置800と異なる点を主に説明し、重複する説明は繰り返さない。
【0091】
図18は、軸受装置800Aのブロック図である。図18に示されるように、軸受装置800Aにおいては、電源部82に代えて、処理部81が蓄電部81cを有している。蓄電部81cは、ワイヤ50において発生した起電力により充電されるように構成されている。処理部81は、蓄電部81cに送信可能な電力が蓄積された段階で振動信号(又は異常判定結果)を送信するように構成されていてもよい。
【0092】
以上のように本発明の実施形態について説明を行ったが、上述の実施形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は、上述の実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むことが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0093】
上記の実施形態は、転がり軸受の振動検知が可能な軸受装置に特に有利に適用される。
【符号の説明】
【0094】
100,200,300,400,500,600,700,800,800A 軸受装置、1 内輪、1a 上面、1b 底面、1c 内周面、1d 外周面、2 外輪、2a 上面、2aa 溝、2b 底面、2c 内周面、2d 外周面、2da 溝、3 転動体、4 保持器、20 シール部材、20a 第1面、20b 第2面、20c 孔、21 芯金、22 ゴム、30 シール部材、30a 第1面、30b 第2面、31 芯金、32 ゴム、40 蓋部材、41 底壁、42 内周壁、43 外周壁、44 支持部、50 ワイヤ、50a 第1端、50b 第2端、51 芯線、52 圧電層、53 シールド層、54 絶縁層、60 ケーブル、70 錘、81 処理部、81a 入力部、81b 通信部、81c 蓄電部、82 電源部、83 アンテナ、A 中心軸、D 深さ、DIS1 第1距離、DIS2 第2距離、L1,L2 仮想直線、SP1 第1空間、SP2 第2空間、W 幅。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18