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  • 特許-パーティションおよび空間仕切り方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】パーティションおよび空間仕切り方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 2/74 20060101AFI20230630BHJP
   E04B 1/82 20060101ALI20230630BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20230630BHJP
   G10K 11/168 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
E04B2/74 551E
E04B2/74 501V
E04B1/82 M
E04B1/82 H
E04B1/82 X
E04B2/74 561H
G10K11/16 120
G10K11/168
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019133635
(22)【出願日】2019-07-19
(65)【公開番号】P2021017728
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】中島 友則
(72)【発明者】
【氏名】宮武 宏行
(72)【発明者】
【氏名】木村 輝鷹
(72)【発明者】
【氏名】小助川 陽太
(72)【発明者】
【氏名】竹内 文人
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-049405(JP,U)
【文献】特開2002-161601(JP,A)
【文献】特開2001-134272(JP,A)
【文献】特開2004-332328(JP,A)
【文献】実開昭59-119500(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 2/72- 2/82
E04B 1/62- 1/99
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発音源が存在する空間を仕切るためのパーティションであって、
隔壁部と、前記隔壁部の上方に位置して前記隔壁部に連結されている屋根部と、を有し、
前記隔壁部と前記屋根部はいずれも、互いに重なり合うように配置された吸音部と遮音部とを有し、前記吸音部は、周波数1kHzの音に対する吸音率が0.4以上であり、
前記隔壁部は、前記吸音部が前記発音源と対向するように配置され、
前記屋根部は、前記発音源よりも上方に位置し、前記吸音部が前記発音源の方を向くように、前記隔壁部に対して斜めに配置されており、
前記屋根部の、前記隔壁部の延長線に対する傾き角度は、0度より大きく90度より小さく、
前記屋根部は連結部を介して前記隔壁部に連結されており、前記連結部は任意の方向および任意の角度に湾曲可能であることを特徴とするパーティション。
【請求項2】
前記吸音部は、ポリウレタンフォーム、メラミンフォーム、フェルト、または不織布を有する、請求項1に記載のパーティション。
【請求項3】
前記吸音部は、ポリウレタンフォームと不織布の積層構造を有する、請求項に記載のパーティション。
【請求項4】
前記吸音部の厚さは4~100mmであって、前記吸音部の密度は20~150kg/m3である、請求項1からのいずれか1項に記載のパーティション。
【請求項5】
前記遮音部は、非通気性の樹脂材料またはゴム材料またはそれらの発泡体を有する、請求項1からのいずれか1項に記載のパーティション。
【請求項6】
前記遮音部はポリプロピレンの3倍発泡体を有する、請求項に記載のパーティション。
【請求項7】
前記遮音部の厚さは0.5~50mmである、請求項1からのいずれか1項に記載のパーティション。
【請求項8】
前記遮音部は、フレームと、前記フレームに貼り付けられたクロス生地と、前記フレームおよび前記クロス生地に囲まれた空間に封入された遮音材とからなる、請求項1からのいずれか1項に記載のパーティション。
【請求項9】
発音源が存在する空間を仕切る空間仕切り方法であって、
隔壁部と、前記隔壁部の上方に位置して前記隔壁部に連結されている屋根部とを有し、前記隔壁部と前記屋根部はいずれも、互いに重なり合うように配置された吸音部と遮音部とを有し、前記吸音部は、周波数1kHzの音に対する吸音率が0.4以上であり、前記屋根部は連結部を介して前記隔壁部に連結されており、前記連結部は任意の方向および任意の角度に湾曲可能である、パーティションを用い、
前記パーティションを、前記吸音部が前記発音源と対向するように配置するステップと、前記屋根部を、前記発音源よりも上方において、前記吸音部が前記発音源の方を向くように、前記隔壁部に対して斜めに配置するステップと、を含み、
前記パーティションを前記隔壁部に対して斜めに配置するステップにおいて、前記屋根部の、前記隔壁部の延長線に対する傾き角度が、0度より大きく90度より小さくなるようにすることを特徴とする空間仕切り方法。
【請求項10】
複数の前記パーティションを、前記発音源を囲むように配置する、請求項に記載の空間仕切り方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はパーティションおよび空間仕切り方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空間を仕切って外部から隔絶し、空間の内部における会話等の音声を外部に漏らさないようにするパーティションが用いられている。特許文献1には、マスキング音を放音するマスキングシステムが提案されている。しかし、単純なパーティション構造に加えて、マスキング音を発するための音源や発音装置(例えばスピーカー)が必要であり、構成が非常に複雑で高コストである。
【0003】
マスキング音を用いないパーティションとして、特許文献2には、集音形状(凹状)の集音部に多孔質層からなる吸音手段が設けられた間仕切りが開示されている。また、特許文献3には、騒音の発生源に近い方から順に、拡散・反射層、吸音層、遮音層の各層を積層して構成された簡易遮音間仕切りが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-82585号公報
【文献】特開2018-197768号公報
【文献】特開2004-285695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2,3に開示されている間仕切りは空間を仕切るものの、仕切られた空間の上方は開放されている。従って、空間の上方を伝わって会話等の音声が空間の外部に漏れるおそれがある。特許文献3に記載されている間仕切りでは、空間の上方からの音漏れに対する対策は取られていない。特許文献2の間仕切りは凹状の集音部を有しているが、この集音部によって空間の上方からの音漏れが十分に防げるわけではない。このように音漏れが防止できない場合、外部からの騒音の侵入を防ぐこともできない。
【0006】
空間の上方からの音漏れや騒音の侵入を低減するために間仕切りの高さを高くすると、それに応じて間仕切りの厚さも厚くする必要がある。特に、特許文献2の間仕切りは凹状の集音部を有しているため、間仕切りの高さが高くなるほど、間仕切りの厚い部分と薄い部分との差が大きくなる。その結果、間仕切り全体の厚さが非常に厚くなる。このように高さおよび厚さが大きい間仕切りは重く、取り扱いが煩雑である。
【0007】
そこで本発明の目的は、取り扱いが容易で、空間を外部から隔絶できるとともに、空間の上方からの音漏れと外部からの騒音の侵入とを抑制できるパーティションおよび空間仕切り方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発音源が存在する空間を仕切るためのパーティションは、隔壁部と、隔壁部の上方に位置して隔壁部に連結されている屋根部と、を有し、隔壁部と屋根部はいずれも、互いに重なり合うように配置された吸音部と遮音部とを有し、吸音部は、周波数1kHzの音に対する吸音率が0.4以上であり、隔壁部は、吸音部が発音源と対向するように配置され、屋根部は、発音源よりも上方に位置し、吸音部が発音源の方を向くように、隔壁部に対して斜めに配置されており、屋根部の、隔壁部の延長線に対する傾き角度は、0度より大きく90度より小さく、前記屋根部は連結部を介して前記隔壁部に連結されており、前記連結部は任意の方向および任意の角度に湾曲可能であることを特徴とする。
【0010】
吸音部は、ポリウレタンフォーム、メラミンフォーム、フェルト、または不織布を有するものであってよい。さらに、吸音部は、ポリウレタンフォームと不織布の積層構造を有するものであってよい。
【0011】
吸音部の厚さは4~100mmであってよく、特に好ましくは、10~50mmであってよい。吸音部の密度は20~150kg/m3であってよく、特に好ましくは、25~75kg/m3であってよい。
【0012】
遮音部は、非通気性の樹脂材料またはゴム材料またはそれらの発泡体を有するものであってよい。さらに、遮音部はポリプロピレンの3倍発泡体を有するものであってよい。
【0013】
遮音部の厚さは0.5~50mmであってよい。
【0014】
遮音部は、フレームと、フレームに貼り付けられたクロス生地と、フレームおよびクロス生地に囲まれた空間に封入された遮音材とからなるものであってよい。
【0015】
本発明の発音源が存在する空間を仕切る空間仕切り方法は、隔壁部と、隔壁部の上方に位置して隔壁部に連結されている屋根部とを有し、隔壁部と屋根部はいずれも、互いに重なり合うように配置された吸音部と遮音部とを有し、吸音部は、周波数1kHzの音に対する吸音率が0.4以上であり、前記屋根部は連結部を介して前記隔壁部に連結されており、前記連結部は任意の方向および任意の角度に湾曲可能である、パーティションを用い、パーティションを、吸音部が発音源と対向するように配置するステップと、屋根部を、発音源よりも上方において、吸音部が発音源の方を向くように、隔壁部に対して斜めに配置するステップと、を含み、パーティションを隔壁部に対して斜めに配置するステップにおいて、屋根部の、隔壁部の延長線に対する傾き角度が、0度より大きく90度より小さくなるようにすることを特徴とする。
【0016】
複数のパーティションを、発音源を囲むように配置してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明のパーティションおよび空間仕切り方法によると、取り扱いが容易で、空間を外部から隔絶できるとともに、空間の上方からの音漏れと外部からの騒音の侵入とを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態のパーティションを用いた空間仕切り状態を模式的に示す側面図である。
図2図1に示すパーティションの隔壁部の拡大側面図である。
図3図1に示すパーティションの連結部の一例の拡大斜視図である。
図4図1に示すパーティションの隔壁部の一例の断面図である。
図5図1に示す空間仕切り状態の、パーティションに囲まれた空間の内側から見た斜視図である。
図6図1に示す空間仕切り状態の、パーティションに囲まれた空間の外側から見た斜視図である。
図7】本発明の他の実施形態のパーティションを示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【0020】
本発明の一実施形態のパーティション4は、図1に示すように、隔壁部1と屋根部2とが連結部3を介して連結された構成を有している。隔壁部1と屋根部2はいずれも、互いに重ね合わせられている吸音部1a,2aと遮音部1b,2bとを有する積層体であり、吸音部1a,2aの表面が発音源5に対向するように配置されている。隔壁部1の吸音部1aと屋根部2の吸音部2aは同じ構成であってよい。隔壁部1の遮音部1bと屋根部2の遮音部2bは同じ構成であってよい。隔壁部1は、パーティション4が設置される床面に対して実質的に垂直に立っており、屋根部2は、連結部3によって隔壁部1に連結されており、隔壁部1の延長線に対して0度より大きく90度より小さい傾き角度、好ましくは10度以上で80度以下、特に好ましくは20度以上で70度以下の傾き角度αだけ傾いている。すなわち、屋根部2の吸音部2aの表面が発音源5の方を向くように、屋根部2が隔壁部1に対して斜めに配置されている。こうして、隔壁部1および屋根部2は発音源5を覆うように配置されている。なお、各図面には模式的に示しているが、発音源5とはスピーカー等の発音部材や会話する話者等である。
【0021】
吸音部1aの一例は、図2に示すように、メルトブローン法で作製した厚さ4.5mm、目付200g/m2のポリプロピレン製不織布1a1(三井化学株式会社製)とポリウレタンフォーム1a2(商品名:カームフレックスF-2、厚さ20mm、密度20kg/m3、株式会社イノアックコーポレーション製)の積層体である。この吸音部1aにおいて、ポリウレタンフォーム1a2が遮音部1bに接する側に配置され、不織布1a1が発音源5に対向するように配置される。屋根部2の吸音部2aも、図2に示す吸音部1aと同様な構成である。ただし、吸音部1a,2aはこの構成に限定されない。吸音部1a,2aは、周波数1kHzの音に対する吸音率が0.4以上であることが好ましく、発泡性の多孔体や織布や不織布、例えばポリウレタンフォーム、メラミンフォーム、不織布、フェルト等およびそれらの積層体から構成されたものであってよい。吸音部1a,2aの厚さは4~100mmであり、10~50mmであることが特に好ましく、密度は20~150kg/m3であり、25~75kg/m3であることが特に好ましい。なお、吸音部1bの吸音率は、JIS A 1405-2によって、垂直入射吸音率として測定することができる。
【0022】
なお、吸音部の最表面には、本発明を阻害しない範囲、すなわち吸音部としての吸音率を阻害しない範囲で、クロス生地、メッシュ生地、布材等を設置してもよい。
【0023】
遮音部1bの一例は、厚さ2mmのポリプロピレンの3倍発泡体(商品名:パロニア、三井化学東セロ株式会社製)である。屋根部2の遮音部2bも、遮音部1bと同様な構成である。ただし、遮音部1b,2bはこの構成に限定されない。遮音部1b,2bは、軽量性の観点から、非通気性の樹脂材料またはゴム材料またはそれらの発泡体であることが好ましい。樹脂材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリウレタン、各種熱可塑性エラストマー、各種合成ゴム(天然ゴム、エチレン-プロピレンゴム、ニトリルゴムなど)が挙げられる。遮音部1b,2bの厚さは0.5mm~50mmであることが好ましい。遮音部1b,2bは発音源5と直接対向しない側に配置されている。
【0024】
本実施形態において、前述した吸音部1aおよび遮音部1bの積層体である隔壁部1の外形寸法は、高さ160cm、幅60cmであり、吸音部2aおよび遮音部2bの積層体である屋根部2の外形寸法は、高さ35cm、幅55cmである。ただし、この寸法に限定されない。
【0025】
連結部3は、屋根部2を隔壁部1に対して所定の角度で連結する部材である。連結部3の一例としては、図3に示すような化学実験用の器具であるフレキシブルクランプが使用される。図3に示す連結部3は、例えばクロムメッキされた亜鉛ダイキャストからなる本体3aと、クロムメッキされたスチールからなるアーム3bと、アーム3bの先端に位置するクランプ部3cと、を有する。本体3aは隔壁部1に連結可能なクランプ状である。具体的には、本体3aは、直径9.5~19mmのロッド(円柱または円筒)を把持可能であり、隔壁部1の一部(例えば、後述するフレーム6(図4参照))を本体3aが把持することによって、連結部3が隔壁部1に取り付けられる。また、アーム3bの先端のクランプ部3cの締付範囲は3~50mmである。クランプ部3cが屋根部2を挟んだ状態で前記した範囲内で強く締め付けることによって、連結部3が屋根部2を把持することができる。こうして、連結部3を介して屋根部2が隔壁部1に連結される。連結部3の全長は310mmである。好ましくは、連結部3のアーム3bは任意の方向および任意の角度に湾曲可能であり、かつその湾曲状態を維持可能である。そのような構成であると、連結部3は、屋根部2を隔壁部1に対して所望の角度に傾けた状態で保持可能である。このように、連結部3は、いわゆる可変ヒンジ部として機能することが好ましい。連結部3は可変ヒンジ部に限定されるわけではなく、取り付ける隔壁部1および屋根部2の寸法や隔壁部1と屋根部2との所望の傾き角度に応じた構成および寸法の連結部3を任意に採用することができる。ただし、前述したように可変ヒンジ部として機能する連結部3は、取り付ける隔壁部1および屋根部2の寸法や隔壁部1と屋根部2との所望の傾き角度が異なる場合にも広く対応可能であり、また、音漏れや騒音の侵入を抑制するために特に好ましい姿勢になるように、試行錯誤的に傾き角度を決定することができるため好ましい。
【0026】
以上説明した本発明のパーティション4を用いると、発音源(例えば話者)5から発せられた音声は、隔壁部1の吸音部1aに吸音されるとともに、遮音部1bによって遮られ、パーティション4の外側にはあまり伝わっていかない。また、屋根部2は、発音源5よりも上方に位置し、吸音部2aが発音源5の方を向くように、隔壁部1に対して斜めに配置されている。従って、発音源5が存在する空間の一部の上方は屋根部2に覆われている。従って、発音源5から上方へ伝わった音声は、屋根部2の吸音部1aに吸音されるとともに、遮音部1bによって遮られ、やはりパーティション4の外側にはあまり伝わっていかない。その結果、本発明のパーティション4を用いると、従来に比べて、パーティション4に囲まれた空間の内部の音声が、パーティション4の外側に伝わりにくい。同様に、パーティション4の外側の騒音が、パーティション4に囲まれた空間の内部に侵入しにくい。
【0027】
本発明のパーティション4の効果を実証するために、発音源(話者)から所定の距離(例えば3m)だけ離れた位置まで音声がどの程度明瞭に伝わるかを示す会話明瞭性を、IEC-60268-16に準じSTI(Speech Transmission Index)として求めた。会話明瞭性としてのSTIは0から1までの範囲の数値で表され、数値が大きいほど、話者と、所定の距離だけ離れた位置にいる人との間で明瞭な会話が行える。そして、会話明瞭性としてのSTIの数値が小さいほど、話者と、所定の距離だけ離れた位置にいる人との間での会話が困難である。なお、以下の実験において会話明瞭性が低いということは、パーティション4によって音声の漏洩が抑えられているということであり、本発明のパーティション4の技術的意義から見ると好ましいことである。
【0028】
比較例1として、パーティションが存在せず、話者と、所定の距離だけ離れた位置にいる人とが、遮るものの無い状態で会話した際の会話明瞭性を求めたところ0.71であった。これは、音声が明瞭に伝わって良好に会話を行うことができることを表している。
【0029】
次に、比較例2として、図示しないが床面に対して直立する隔壁のみからなり、発音源が存在する空間の上方を開放したパーティション、すなわち本発明のパーティション4から屋根部2および連結部3を取り外して隔壁部1のみを残したような部材を、話者と、所定の距離だけ離れた位置にいる人との間に配置した。この場合の会話明瞭性は0.65であった。比較例1に比べると明瞭性が多少低下するが、パーティション6の内側と外側とで概ね会話可能であることが示されている。これは、隔壁のみからなるパーティションによって音声の漏洩がある程度抑制できるものの、主にパーティションの上端よりも上方の隙間を音声が伝わって外部に漏洩することが抑えられない結果であると考えられる。
【0030】
これに対し、図1に示す本発明のパーティション4を用いた場合の会話明瞭性は0.44であった。比較例1に比べて会話明瞭性が低下することはもちろん、比較例2と比べても会話明瞭性が小さくなっている。これは、屋根部2によってパーティション4の上端よりも上方の隙間を介した音声の漏洩が抑えられていることが大きな要因であると考えられる。また、このように会話明瞭性が低いということは、パーティション4の外側の音声がパーティション4の内部に伝わりにくいということでもある。従って、本発明のパーティション4によって外部からの騒音の侵入を抑制することができるという効果も得られる。
【0031】
なお、図示されているように、本実施形態のパーティション4では、隔壁部1と屋根部2との間の連結部3の周囲の部分は遮られずに開放されており、この隙間を通って音声が伝わる可能性がある。従って、連結部3の大きさや形状を調整することによって、連結部3の周囲の開放された隙間をできるだけ小さくすることが好ましい。少なくとも、この隙間の高さ方向の寸法、すなわち、隔壁部1の上端部と屋根部2の下端部との間の直線距離が、屋根部2の縦方向(隔壁部1と屋根部2とが並ぶ方向)の寸法(前述した例では35cm)以下であることが好ましい。
【0032】
本実施形態のパーティション4の隔壁部1は、吸音部1aと遮音部1bとからなり、床面上に自立している。このように隔壁部1が自立するための構成の一例として、クロス生地を備えた公知のパネルに遮音材を封入することによって遮音部1bとして構成することが考えられる。例えば、図4に模式的に示すように、フレーム6にクロス生地7(例えばポリエステル布)が貼り付けられることによって構成されている、遮音性や吸音性を持たない公知のパネル状のパーティション(衝立)を転用して遮音部1bを構成している。すなわち、フレーム6とクロス生地7に囲まれた空間に遮音材8を封入することにより、フレーム6とクロス生地7と遮音材8とを含む遮音部1bを構成する。遮音材8は前述した遮音部の材料(例えばポリプロピレンの3倍発泡体)であってよい。そして、この遮音部1bに吸音部1aを重ね合わせた状態でクリップ9等を用いて互いに固定して、隔壁部1を形成している。公知のパネル状のパーティションのフレーム6は、例えば直径16mmの金属製のパイプから構成されている。このフレーム6の一部がクリップ9等に覆われずに露出して、連結部3の本体3aによって把持されることにより、隔壁部1に連結部3が取り付けられる。また、フレーム6の下部には脚部6aが設けられて自立可能な構成になっている。従って、図4に示す隔壁部1は、フレーム6の脚部6aによって自立可能である。
【0033】
本実施形態のパーティション4を用いて空間を仕切る場合、隔壁部1の吸音部1aが発音源5と対向するようにパーティション4を配置する。そして、屋根部2の吸音部2aが発音源5の方を向くように、屋根部2を隔壁部1に対して斜めに配置する。従って、屋根部2は、発音源5が存在する空間の一部を上方から覆っている。1つの発音源5に対して、1つのパーティション4を配置してもよいが、図1に示すように、発音源5を挟み込むように1対のパーティション4を配置してもよい。その場合、1対のパーティション4はいずれも、前述したように隔壁部1の吸音部1aが発音源5と対向し、屋根部2の吸音部2aが発音源5の方を向くように屋根部2が隔壁部1に対して斜めになるように配置される。
【0034】
また、より多くのパーティション4によって、発音源5を囲んでもよい。多数のパーティション4によって囲まれた空間の内側から見た図を図5に、その空間の外側から見た図を図6に示している。全てのパーティション4は、前述したように隔壁部1の吸音部1aが発音源5と対向し、屋根部2の吸音部2aが発音源5の方を向くように屋根部2が隔壁部1に対して斜めになるように配置される。このように多くのパーティション4を用いることにより、空間の内部から外部への音声の漏れをより確実に抑制することができる。また、空間の外部からの騒音の侵入も抑制できる。そして、本発明のパーティション4は薄く軽量であるため、多数のパーティション4を配置することが容易にできる。
【0035】
前述したパーティション4は、吸音部1a,2aと遮音部1b,2bとが重ね合わせられて、吸音部1a,2aが発音源(話者)5に向くように配置された構成である。このパーティション4の他の実施形態として、図7に示すように、遮音部1b,2bの外側(発音源5と反対側)にもう1つの吸音部1c,2cを配置することもできる。この構成は、特にパーティション4の外側からの騒音がパーティション4の内側の空間に伝わることを抑制する上でより効果的である。
【符号の説明】
【0036】
1 隔壁部
1a,2a 吸音部
1b,2b 遮音部
1a1 ポリプロピレン製不織布
1a2 ポリウレタンフォーム
2 屋根部
3 連結部
3a 本体
3b アーム
3c クランプ部
4 パーティション
5 発音源
6 フレーム
6a 脚部
7 クロス生地
8 遮音材
9 クリップ
α 傾き角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7