(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】エアゾール容器用の噴射部材およびそれを備えた噴射装置
(51)【国際特許分類】
B65D 83/16 20060101AFI20230630BHJP
B65D 83/30 20060101ALI20230630BHJP
B05B 9/04 20060101ALI20230630BHJP
A61H 7/00 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
B65D83/16
B65D83/30
B05B9/04
A61H7/00 300K
(21)【出願番号】P 2019141069
(22)【出願日】2019-07-31
【審査請求日】2022-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】391021031
【氏名又は名称】株式会社ダイゾー
(74)【代理人】
【識別番号】100100044
【氏名又は名称】秋山 重夫
(74)【代理人】
【識別番号】100205888
【氏名又は名称】北川 孝之助
(72)【発明者】
【氏名】高橋 知之
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-104412(JP,A)
【文献】特開2012-076767(JP,A)
【文献】特開2016-077323(JP,A)
【文献】特開2016-013838(JP,A)
【文献】特開2003-184451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/00-83/76
B05B 9/04
A61H 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器の容器本体に取り付けられる本体部材と、
一端が本体部材に回動可能に取り付けられた第1梃子部材と、
一端が本体部材に回動可能に取り付けられた第2梃子部材と、
本体部材から突出し、被噴射面に押し当てられ、押し当て力を第1梃子部材に伝達する押圧操作部材と
、
押圧操作部材の押し当て方向に開口している、ステムに取り付けるための噴射ノズルと、を備え、
第1梃子部材が、第2梃子部材と回動方向で当接し、押し当て力を第2梃子部材に伝達する当接部を備え、
第2梃子部材が、押圧操作部材の被噴射面への押し当てに連動してエアゾール容器のステムを押し下げる押し下げ部を備え
、
押圧操作部材が、噴射ノズルの周りを囲むようにして環状に配置されたマッサージ用の突出部を備えている、エアゾール容器用の噴射部材。
【請求項2】
本体部材の内周面に、第1梃子部材の回動をガイドするガイド部を備えている、請求項1記載のエアゾール容器用の噴射部材。
【請求項3】
上記請求項1
又は2記載のエアゾール容器用の噴射部材と、
エアゾール容器とを備えている、噴射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール容器に取り付けられる噴射部材およびそれを備えた噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、エアゾール容器用の噴射部材が記載されている。この噴射部材は被噴射面をマッサージするための突出体を備えており、突出体を被噴射面に押し当てる力を利用してステムを押し下げ、エアゾール容器から内容物を噴射する仕組みになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ステムを付勢するバネ等の付勢部材は、意図しない噴射を防止するために一般的に反発力の強いものが使用されており、その付勢力に抗してステムを押し下げるには、突出体をそれなりの力で被噴射面に押し当てる必要がある。そのため、被噴射面が体の柔らかい部分である場合、痛みや不快感を覚えることがある。
【0005】
本発明は、小さな押し当て力で噴射させることができるエアゾール容器用の噴射部材およびこの噴射部材を備えた噴射装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のエアゾール容器用の噴射部材は、エアゾール容器20、20Aの容器本体30、30Aに取り付けられる本体部材51、71、81と、一端53a、73a、83aが本体部材51、71、81に回動可能に取り付けられた第1梃子部材53、73、83と、一端54a、84aが本体部材51、71、81に回動可能に取り付けられた第2梃子部材54、84と、本体部材51、71、81から突出し、被噴射面Sに押し当てられ、押し当て力を第1梃子部材53、73、83に伝達する押圧操作部材55、75、85とを備え、第1梃子部材53、73、83が、第2梃子部材54、84と回動方向で当接し、押し当て力を第2梃子部材54、84に伝達する当接部53d、73d、83dを備え、第2梃子部材54、84が、押圧操作部材55、75、85の被噴射面Sへの押し当てに連動してエアゾール容器20、20Aのステム41aを押し下げる押し下げ部54d、82cを備えていることを特徴としている。
【0007】
また、押圧操作部材55の本体部材51からの突出状態を維持するストッパ(51f)を備えていることが好ましい。また、押し当て力の方向を変えてステム41aの押し下げ力とする転向機構Tを備えていることが好ましい。特に、押圧操作部材75が、本体部材71の側方から突出しており、転向機構Tが、押圧操作部材75を本体部材71に回動可能に取り付けることで構成されていることが好ましい。また、押圧操作部材85が、マッサージ用の突出部85bを複数備えていてもよい。また、ステム41aに取り付けるための噴射ノズル52、72、82を備え、噴射ノズル52、72が押圧操作部材55、75、85の押し当て方向に開口していることが好ましい。
【0008】
本発明の噴射装置は、上記いずれかに記載のエアゾール容器用の噴射部材50、70、80と、エアゾール容器20、20Aとを備えていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明のエアゾール容器用の噴射部材は、第1梃子部材と第2梃子部材とを備えている、すなわち2段梃子を構成しているため、エアゾール容器からの内容物の噴射(ステムの押し下げ)に際して、押圧操作部材の被噴射面への押し当て力を小さくすることができる。
【0010】
押圧操作部材の本体部材からの突出状態を維持するストッパを備えている場合、本体部材と被噴射面との間に一定の距離を確保することができ、内容物を安定した用法でまんべんなく塗布することができる。押し当て力の方向を変えてステムの押し下げ力とする転向機構を備えている場合、ステムの押し下げ方向に関係なく、押圧操作部材の押し当て方向を決めることができる。押圧操作部材が、本体部材の側方から突出しており、転向機構が、押圧操作部材を本体部材に回動可能に取り付けることで構成されている場合、簡単な構成で押し当て力をステムの押し下げ力とすることができる。押圧操作部材が、マッサージ用の突出部を複数備えている場合、被噴射面に内容物を塗布しながら、被噴射面をマッサージすることができる。ステムに取り付けるための噴射ノズルを備え、噴射ノズルが押圧操作部材の押し当て方向に開口している場合、押圧操作部材を押し当てた部分に向かって内容物を噴射させ易い。
【0011】
本発明の噴射装置は、2段梃子を備えた噴射部材を備えているため、噴射に際して、押圧操作部材の被噴射面への押し当て力を小さくすることができる。また、エアゾール容器を把持して押圧操作部材を被噴射面に押し当てるだけで内容物を塗布することができるため、指先で噴射操作しなくてもよく高齢者にも使いやすい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の噴射装置の一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】
図1の噴射装置の側面断面図であって、
図2Aが押圧操作部材の押し当て前、
図2Bが押圧操作部材の押し当て時を示す。
【
図3】
図1の噴射装置の一部切欠斜視図であって、
図3Aが押圧操作部材の押し当て前、
図3Bが押圧操作部材の押し当て時を示す。
【
図4】本発明の噴射装置の他の実施形態を示す斜視図である。
【
図5】
図4の噴射装置の側面断面図であって、
図5Aが押圧操作部材の押し当て前、
図5Bが押圧操作部材の押し当て時を示す。
【
図6】
図4の噴射装置の一部切欠斜視図であって、
図6Aが押圧操作部材の押し当て前、
図6Bが押圧操作部材の押し当て時を示す。
【
図7】本発明の噴射装置に用いる他の噴射部材を示す、
図7Aが斜視図、
図7Bが平面図である。
【
図8】
図7の噴射部材を用いた噴射装置の側面断面図であって、
図8Aが押圧操作部材の押し当て前、
図8Bが押圧操作部材の押し当て時を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1および
図2に示す噴射装置10は、エアゾール容器20と、エアゾール容器20のバルブアッセンブリ40を開閉操作するための噴射部材50とを備えている。
【0014】
エアゾール容器20は、内容物を収容する容器本体30と、容器本体30の開口を塞ぐバルブアッセンブリ40とを備えている。このエアゾール容器20には、内容物として、原液と、原液を噴射するための噴射剤(ガス)とが充填されている。
【0015】
容器本体30は、
図1に示すように有底筒状であって、底部30aと、胴部30bと、肩部30cとを有している。上端は開口している。この容器本体30は金属製であって、
図2に示すように、上端にビード部30dを有している。ビード部30dと肩部30cとの間には溝部30eが形成されている。なお、容器本体30の材質は合成樹脂製であってもよい。
【0016】
バルブアッセンブリ40は、バルブ機構41と、バルブ機構41を収容するハウジング42と、ハウジング42を容器本体30に固定するマウンティングカップ43とを備えている。
【0017】
バルブ機構41は、ステム孔を備えたステム41aと、ステム孔を塞ぐステムラバー(図示しない)と、常時ステム41aを付勢し、ステムラバーによるステム孔の閉塞状態を維持する付勢部材(図示しない)とを備えている。このバルブ機構41は、ステム41aを押し下げる(ハウジング42側に押し込む)ことで、ステムラバーによるステム孔の閉塞状態が解かれ、エアゾール容器20に収容された内容物を噴射できるようになっている。
【0018】
ハウジング42は有底筒状であって、内部空間にバルブ機構41を収容している。
【0019】
マウンティングカップ43は、容器本体30のビード部30dにクリンプ固定され、エアゾール容器内を気密状態に維持する金属製の蓋であって、中央部でハウジング42やバルブ機構41を抱持している。外周部は容器本体30のビード部30dにクリンプされ、容器本体30に固定されている。なお、容器本体30とマウンティングカップ43とにネジを設け、螺合により固定するようにしてもよい。
【0020】
噴射部材50は、エアゾール容器20の容器本体30の上部(ステム41a側の端部)に取り付けられる本体部材51と、ステム41aに取り付けられる噴射ノズル52と、一端53aが本体部材51に回動可能に取り付けられた第1梃子部材53と、一端54aが本体部材51に回動可能に取り付けられた第2梃子部材54と、本体部材51から突出し、被噴射面Sに押し当てられ、押し当て力を第1梃子部材53に伝達する押圧操作部材55とを備えている。噴射ノズル52、第1梃子部材53および第2梃子部材54は、本体部材51の内部に収容されている。押圧操作部材55については、本体部材51に対して出入り可能とされている。
【0021】
本体部材51は、略円筒状であって上底51aを有している。本体部材51の下部51bの内周面には、容器本体30の溝部30eに係合する係合部51cが設けられている。下部51bの外径は容器本体30の胴部30bの外径と略同じである。一方、本体部材51の上部51dは下部51bよりも大径とされている。上底51aには、第1梃子部材53の一部と押圧操作部材55とを外部に突出させるため、また内容物を噴射するための開口部51eが設けられている。
【0022】
噴射ノズル52は、内部に内容物を通すための通路が形成されたノズル部52aと、ノズル部52aの外面から側方に延出された突起部52bとを備えている。通路の下端側(ステム41a側)は、ステム41aに外嵌固定するために拡径されている。この噴射ノズル52は、ステム41aに対してまっすぐに取り付けられている。また、本体部材51内に収まっており、開口部51eから外部に突出することはない。
【0023】
第1梃子部材53は、平面視、ステム41aに被さるようにして配置され、その一端53aがステム41aの押し下げ方向と直交する軸60によって、本体部材51の上部51dの内周面に軸支されている。ステム41aと重なる位置には、噴射ノズル52を挿通するための挿通孔53bが設けられている。第1梃子部材53の他端53c側には、略球状の押圧操作部材55が一体化されている。第1梃子部材53は、第2梃子部材54と回動方向で当接し、押し当て力を第2梃子部材54に伝達する当接部53dを備えている。当接部53dは、軸支された一端53aと挿通孔53bとの間の下面に位置している。
【0024】
第2梃子部材54は、第1梃子部材53の下(エアゾール容器20側)に位置している。また、平面視、第2梃子部材54の一端54aは、第1梃子部材53の他端53c側(押圧操作部材55側)に位置しており、第2梃子部材54の他端54cは、第1梃子部材53の一端53a側に位置している。この第2梃子部材54は、押圧操作部材55の被噴射面Sへの押し当てに連動してエアゾール容器20のステム41aを押し下げる押し下げ部54dを備えている。第2梃子部材54の一端54aは、ステム41aの押し下げ方向と直交し且つ第1梃子部材53を軸支する軸60と平行な軸61によって、本体部材51の下部51bに軸支されている。より具体的には、本体部材51の下部51bから延出されたブラケット部51fに軸支されている。このブラケット部51fは、第1梃子部材53の過度な回動を規制し、押圧操作部材55の本体部材51からの突出状態を維持するストッパとしても機能する(
図2b参照)。第2梃子部材54の他端54cは、第1梃子部材53の当接部53dと当接しており、第1梃子部材53の回動(
図2における時計回りの回動)に連動して第2梃子部材54が回動するようになっている。第2梃子部材54においても、平面視、ステム41aに被さるようにして配置されており、ステム41aと重なる位置には、噴射ノズル52のノズル部52aを挿通するための切欠54bが設けられている。この切欠54bの幅は、噴射ノズル52の突起部52bよりも小さく、突起部52bは挿通することができない。そのため、切欠54b周辺の縁部が、第2梃子部材54の回動時にステム41aを押し下げるための押し下げ部54dとなる。
【0025】
次に、上記噴射部材50を用いた内容物の噴射方法について説明する。
図2Aおよび
図3Aに示すように、押圧操作部材55を被噴射面Sに押し付けていない非操作状態においては、押圧操作部材55は本体部材51の上端(天面)から突出している。この突出した押圧操作部材55を被噴射面Sに押し当てると、第1梃子部材53が軸60周りに回動する。すると、これに連動して第2梃子部材54の他端54cが第1梃子部材53に押し下げられ、第2梃子部材54も軸61周りに回動する。第2梃子部材54の回動によって、押し下げ部54dが噴射ノズル52の突起部52bを押し下げ、その結果、ステム41aが押し下げられて内容物が噴射される(
図2Bおよび
図3B参照)。噴射ノズル52は、押圧操作部材55の押し当て方向に開口しており、内容物は被噴射面Sに噴射される。
【0026】
この一連の動作において、押圧操作部材55が第1力点として、第1梃子部材53の一端53a(軸60)が第1支点として、当接部53dが第1作用点として働き、第2梃子部材54の他端54cが第2力点として、第2梃子部材54の一端54a(軸61)が第2支点として、押し下げ部54dが第2作用点として働く。すなわち、第1梃子部材53と第2梃子部材54がそれぞれ第2種梃子(力点と支点との間に作用点がある梃子)を構成し、いわゆる2段梃子になっている。そのため、単にステム41aを押し下げるときと比べて小さな力で内容物を噴射させることができる。
【0027】
また、
図2Bに示すように、ストッパ(ブラケット部51f)に押圧操作部材55が当接することによって、押圧操作部材55の本体部材51からの突出状態が維持されることから、噴射ノズル52と被噴射面Sとの間に一定の距離を確保することができ、内容物をまんべんなく塗布することができる。さらに、付勢部材による付勢力と、第1梃子部材53や第2梃子部材54の弾発力(しなりによる反発力)により、押圧操作部材55には回動前の元の位置に戻ろうとする適度な反発力が生じる。そのため、エアゾール容器20を軽く持って、押圧操作部材55を被噴射面Sに押し当てれば、弾むような感覚が得られ、トントンとリズミカルな塗布が可能となる。これらにより、使用者が噴射装置をリズミカルに使用しても、噴射ノズル52と被噴射面Sとの間に一定の距離が確保されるため、安定した用法で内容物を塗布することができる。
【0028】
続いて、
図4に示す噴射装置10Aについて説明する。
図4の噴射装置10Aのうち、エアゾール容器20については
図1の噴射装置10と同じものである。そこで、エアゾール容器20については同符号を付して説明を省略し、以下、噴射部材70について説明する。
【0029】
噴射部材70は、
図5に示すように、エアゾール容器20の容器本体30の上部(ステム41a側の端部)に取り付けられる本体部材71と、ステム41aに取り付けられる噴射ノズル72と、一端73aが本体部材71に回動可能に取り付けられた第1梃子部材73と、一端54aが本体部材71に回動可能に取り付けられた第2梃子部材54と、本体部材71から突出して被噴射面Sに押し当てられ、押し当て力を第1梃子部材73に伝達する押圧操作部材75とを備えている。噴射ノズル72、第1梃子部材73および第2梃子部材54は、本体部材71の内部に収容されている。押圧操作部材75については、本体部材71に対して出入り可能とされている。
【0030】
本体部材71は、
図4に示すように、斜めに傾けた長球の長手方向の一方端部下端に円筒を接続した外観をなしている。本体部材71の円筒部分71bの内周面には、容器本体30の溝部30eに係合する係合部(図示しない)が設けられている。円筒部分71bの外径は容器本体30の胴部30bの外径と略同じである。一方、長球部分71aは円筒部分71bよりも大きく、長球部分71aの他方端部は前方に張り出している。以下、この張り出した方向を前方といい、張り出した方向と反対の方向を後方という。長球部分71aの前方には、押圧操作部材75を外部に突出させるため、また内容物を噴射するための開口部71eが設けられている。円筒部分71bの前方には、第2梃子部材54の一端54aを回動可能に取り付けるためのブラケット部71fが設けられている(
図5参照)。
【0031】
噴射ノズル72は、内部に内容物を通すための通路が形成されたノズル部72aと、ノズル部72aの外面から側方に延出された突起部72bとを備えている。通路の下端側(ステム41a側)は、ステム41aに外嵌固定するために拡径されている。この噴射ノズル72は、先端側が本体部材71の開口部71eに向くよう、略L字状に折曲されている。先端は、本体部材71内に収まっており、外部へは突出していない。なお、72cはリブである。
【0032】
第1梃子部材73は、平面視、ステム41aに被さるようにして配置され、その一端73aがステム41aの押し下げ方向と直交する軸60によって、本体部材71の後方に軸支されている。ステム41aと重なる位置には、噴射ノズル72を挿通するための切欠73bが設けられており、他端73c側が二股に分かれている。上面にはそれぞれリブ73eが設けられており、しなりを抑制している。この第1梃子部材73は、第2梃子部材54と回動方向で当接し、押し当て力を第2梃子部材54に伝達する当接部73dを備えている。当接部73dは、軸支された一端73aと切欠73bとの間の下面に位置している。
【0033】
第2梃子部材54は、
図1の噴射部材50のものと同様である。そのため、同符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0034】
押圧操作部材75は、略球状の押圧部75aと、押圧部75aから後方に延出された腕部75bとを備えている。押圧部75aの下部は、開口部71eの下部に回動可能に取り付けられている。具体的には、軸60と平行な軸62によって軸支されている。また、押圧部75aには、噴射ノズル72の先端を収容する貫通孔75cが設けられている。貫通孔75cは、押圧操作部材75が回動しても噴射ノズル72と干渉しないよう、後方に向かって上下方向に広がるテーパ状とされている。腕部75bは、その下面が第1梃子部材73の他端73c(軸支された一端73aと反対側の端部)と当接している。この腕部75bは、噴射ノズル72と干渉しないよう2つに分割されている。
【0035】
次に、上記噴射部材70を用いた内容物の噴射方法について説明する。
図5Aに示すように、押圧操作部材75を被噴射面Sに押し付けていない非操作状態において、押圧部75aが本体部材71の側方(前方)から突出している。この突出した押圧部75aを被噴射面Sに押し当てると、
図5Bに示すように、押圧部75aが本体部材71内に引っ込むようにして軸62周りに回動する。すると、腕部75bが第1梃子部材73の他端73cを押し下げる。すなわち、押圧操作部材75を被噴射面Sに押し当てたときに生じる押し当て力の方向が、水平方向から鉛直方向へと変わり、第1梃子部材73を軸60周りに回動させる。そしてそれに連動して第2梃子部材54の他端54cが第1梃子部材73に押し下げられ、第2梃子部材54も軸61周りに回動する。第2梃子部材54の回動によって、押し下げ部54dが噴射ノズル72の突起部72bを押し下げ、その結果、ステム41aが押し下げられて内容物が噴射される。噴射ノズル72は、押圧操作部材75の押し当て方向に開口しており、内容物は被噴射面Sに噴射される。
【0036】
この一連の動作において、第1梃子部材73の他端73cが第1力点として、第1梃子部材73の一端73a(軸60)が第1支点として、当接部73dが第1作用点として働き、第2梃子部材54の他端54cが第2力点として、第2梃子部材54の一端54aが第2支点(軸61)として、押し下げ部54dが第2作用点として働く。すなわち、第1梃子部材73と第2梃子部材54がそれぞれ第2種梃子(力点と支点との間に作用点がある梃子)を構成し、いわゆる2段梃子になっている。そのため、単にステム41aを押し下げるときと比べて小さな力で内容物を噴射させることができる。
【0037】
また、押圧操作部材75の下部を本体部材71に回動可能に取り付けることで、押し当て力の方向を水平方向から上下方向に変える、すなわちステム41aを押し下げるには不向きな、ステム41aの軸方向と略直交する方向の力をステム41aの押し下げ力に変える転向機構Tを構成しているため、押し当て方向が水平方向であっても小さな力で内容物を噴射することができる。なお、被噴射面Sへの押圧操作部材75の押し当てを止めると、ステム41aを付勢する付勢部材の付勢力によって第1梃子部材73と、第2梃子部材54と、押圧操作部材75は回動前の位置に戻る。この噴射部材70も、付勢部材による付勢力と、第1梃子部材73や第2梃子部材54の弾発力(しなりによる反発力)により、押圧操作部材75には回動前の元の位置に戻ろうとする適度な反発力が生じる。そのため、エアゾール容器20を軽く持って、押圧操作部材75を頭皮などの被噴射面Sに押し当てれば、弾むような感覚が得られ、トントンとリズミカルな塗布とマッサージが可能となる。これらにより、使用者が噴射装置をリズミカルに使用しても、噴射ノズル52と被噴射面Sとの間に一定の距離が確保されるため、安定した用法で内容物を塗布することができる。
【0038】
続いて、
図8に示す噴射装置10Bについて説明する。
図8の噴射装置10Bは、エアゾール容器20Aと、エアゾール容器20Aのバルブアッセンブリ40を開閉操作するための噴射部材80とを備えている。
【0039】
エアゾール容器20Aは、内容物を収容する容器本体30Aと、容器本体30Aの開口を塞ぐバルブアッセンブリ40とを備えている。このエアゾール容器20Aには、内容物として、原液と、原液を噴射するための噴射剤(ガス)とが充填されている。
【0040】
容器本体30Aは有底筒状であって、底部(図示しない)と、胴部30bと、肩部30cとを有している。上端は開口している。この容器本体30Aは金属製であって、上端にビード部30dを有している。また、この容器本体30Aはいわゆる3ピース缶であって、胴部30bと肩部30cとのつなぎ目には溝部30eが形成されている。なお、容器本体30Aの材質は合成樹脂製であってもよい。
【0041】
バルブアッセンブリ40は、
図1のものと同様である。そのため、同符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0042】
噴射部材80は、
図8に示すように、エアゾール容器20Aの容器本体30Aの上部(ステム41a側の端部)に取り付けられる本体部材81と、ステム41aに取り付けられる噴射ノズル82と、一端83aが本体部材81に回動可能に取り付けられた第1梃子部材83と、一端84aが本体部材81に回動可能に取り付けられた第2梃子部材84と、本体部材81から突出して被噴射面Sに押し当てられ、押し当て力を第1梃子部材83に伝達する押圧操作部材85とを備えている。噴射ノズル82、第1梃子部材83および第2梃子部材84は、本体部材81の内部に収容されている。押圧操作部材85については、本体部材81に対して出入り可能とされている。
【0043】
本体部材81は、
図7に示すように略円筒状であって、その外径は容器本体30Aの胴部30bの外径よりやや大きい。本体部81の上端は、押圧操作部材85を外部に突出させるため、また内容物を噴射するための開口部81eとなっている。本体部材81の下方端部近傍の内周面には、容器本体30Aの溝部30eに係合する係合部81cが設けられている(
図8参照)。また、本体部材81の内周面には、第1ブラケット部81fと、第2ブラケット部81gが設けられている。第1ブラケット部81fは、第1梃子部材83の一端83aを回動可能に取り付けるためのものである。第2ブラケット部81gは、第2梃子部材84の一端84aを回動可能に取り付けるためのものである。この第2ブラケット部81gは、平面視、第1ブラケット部81fと反対側に設けられている。本体部材81の上方端部近傍の内周面には、第1梃子部材83の他端83cの回動をガイドするためのガイド部81hが設けられている。このガイド部81hは上下方向に延びる溝によって構成されている。なお、ガイド部81hと第2ブラケット部81gは平面視、同じ位置に位置している。
【0044】
噴射ノズル82は、内部に内容物を通すための通路が形成されたノズル部82aと、ステム41aを挿入するためのステム挿入孔82bとを備えている。ステム挿入孔82bは通路と連通している。また、ステム挿入孔82bは通路に比べて大径であり、通路とステム挿入孔82bとの間には段部82cが形成されている。この噴射ノズル82は、第2梃子部材84と一体化されている。そのため、第2梃子部材84に、通路と、ステム挿入孔82bと、段部82cが設けられているともいえる。また、ステム41aに対してやや斜めに配置されている。これは、押圧操作部材85を被噴射面Sに押し付けた際、第2梃子部材84が回動することを考慮し、押し付け時に噴射ノズル82がステム41aに対してまっすぐになるようにした結果である。また、噴射ノズル82は本体部材81内に収まっており、開口部81eから外部に突出することはない。
【0045】
第1梃子部材83は、平面視、ステム41aに被さるようにして配置され、その一端83aがステム41aの押し下げ方向と直交する軸60によって、本体部材81に軸支されている。より具体的には、第1ブラケット部81fに軸支されている。ステム41aと重なる位置には、噴射ノズル82を挿通するための挿通孔83bが設けられている。第1梃子部材83の上面には、平面視円環状の押圧操作部材85が一体化されている。第1梃子部材83は、第2梃子部材84と回動方向で当接し、押し当て力を第2梃子部材84に伝達する当接部83dを備えている。当接部83dは、軸支された一端83aと挿通孔83bとの間の下面に位置している。
【0046】
第2梃子部材84は、第1梃子部材83の下(エアゾール容器20A側)に位置している。また、平面視、第2梃子部材84の一端84aは、第1梃子部材83の他端83c側に位置しており、第2梃子部材84の他端84cは、第1梃子部材83の一端83a側に位置している。第2梃子部材84においても、平面視、ステム41aに被さるようにして配置されている。また、第2梃子部材84は、押圧操作部材85の被噴射面Sへの押し当てに連動してエアゾール容器20Aのステム41aを押し下げる押し下げ部を備えている。なお、この押し下げ部として機能する部位は、段部82cである。第2梃子部材84の一端84aは、ステム41aの押し下げ方向と直交し且つ第1梃子部材83を軸支する軸60と平行な軸61によって、本体部材81に軸支されている。より具体的には、第2ブラケット部81gに軸支されている。第2梃子部材84の他端84c側は、第1梃子部材83の当接部83dと当接しており、第1梃子部材83の回動(
図8Aにおける時計回りの回動)に連動して第2梃子部材84が回動するようになっている。
【0047】
押圧操作部材85は、平面視略円環状の基部85aと、基部85aから上方に突出する突出部85bとを備えている。突出部85bは平面視、噴射ノズル82の周りを囲むようにして環状に配置されている。このように押圧操作部材85に複数の突出部85bを設けることで、被噴射面Sに内容部を塗布しながら、被噴射面Sをマッサージすることができる。
【0048】
次に、上記噴射部材80を用いた内容物の噴射方法について説明する。
図8Aに示すように、押圧操作部材85を被噴射面Sに押し付けていない非操作状態においては、押圧操作部材85の突出部85bは、本体部材81の上端(天面)から突出している。この突出した突出部85bを被噴射面Sに押し当てると、第1梃子部材83が軸60周りに回動する。すると、これに連動して第2梃子部材84の他端84c側が第1梃子部材83に押し下げられ、第2梃子部材84も軸61周りに回動する。そして第2梃子部材84の回動によって押し下げ部(段部82c)がステム41aを押し下げて内容物が噴射される(
図8B参照)。噴射ノズル82は、押圧操作部材85の押し当て方向に開口しており、内容物は被噴射面Sに噴射される。
【0049】
この一連の動作において、押圧操作部材85の突出部85bが第1力点として、第1梃子部材83の一端83a(軸60)が第1支点として、当接部83dが第1作用点として働き、第2梃子部材84の他端84cが第2力点として、第2梃子部材84の一端84a(軸61)が第2支点として、押し下げ部(段部82c)が第2作用点として働く。すなわち、第1梃子部材83と第2梃子部材84がそれぞれ第2種梃子(力点と支点との間に作用点がある梃子)を構成し、いわゆる2段梃子になっている。そのため、単にステム41aを押し下げるときと比べて小さな力で内容物を噴射させることができる。
【0050】
また、付勢部材による付勢力と、第1梃子部材83や第2梃子部材84の弾発力(しなりによる反発力)により、押圧操作部材85には回動前の元の位置に戻ろうとする適度な反発力が生じる。そのため、エアゾール容器20Aを軽く持って、押圧操作部材85を被噴射面Sに押し当てれば、弾むような感覚が得られ、トントンとリズミカルな塗布が可能となる。これらにより、使用者が噴射装置をリズミカルに使用しても、噴射ノズル82と被噴射面Sとの間に一定の距離が確保されるため、安定した用法で内容物を塗布することができる。
【0051】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、発明の範囲内で種々の変形を行うことができる。たとえば、
図4の実施形態においては、押圧操作部材75と第1梃子部材73とを連結させていなかったが、曲げモーメントを伝達しない、又は伝達し難い方法で連結してもよい。例えば、ヒンジ部を介して互いに連結すれば、曲げモーメントを伝達することなく押圧操作部材75と第1梃子部材73とを連結することができる。
【符号の説明】
【0052】
10、10A、10B 噴射装置
20、20A エアゾール容器
30、30A 容器本体
30a 底部
30b 胴部
30c 肩部
30d ビード部
30e 溝部
40 バルブアッセンブリ
41 バルブ機構
41a ステム
42 ハウジング
43 マウンティングカップ
50 噴射部材
51 本体部材
51a 上底
51b 下部
51c 係合部
51d 上部
51e 開口部
51f ブラケット部
52 噴射ノズル
52a ノズル部
52b 突起部
53 第1梃子部材
53a 一端
53b 挿通孔
53c 他端
53d 当接部
54 第2梃子部材
54a 一端
54b 切欠
54c 他端
54d 押し下げ部
55 押圧操作部材
60 第1梃子部材を軸支する軸
61 第2梃子部材を軸支する軸
62 押圧操作部材を軸支する軸
70 噴射部材
71 本体部材
71a 長球部分
71b 円筒部分
71e 開口部
71f ブラケット部
72 噴射ノズル
72a ノズル部
72b 突起部
72c リブ
73 第1梃子部材
73a 一端
73b 切欠
73c 他端
73d 当接部
73e リブ
75 押圧操作部材
75a 押圧部
75b 腕部
75c 貫通孔
T 転向機構
S 被噴射面
80 噴射部材
81 本体部材
81c 係合部
81e 開口部
81f 第1ブラケット部
81g 第2ブラケット部
81h ガイド部
82 噴射ノズル
82a ノズル部
82b ステム挿入孔
82c 段部
83 第1梃子部材
83a 一端
83b 挿通孔
83c 他端
83d 当接部
84 第2梃子部材
84a 一端
84c 他端
85 押圧操作部材
85a 基部
85b 突出部