(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】熱処理装置および熱処理装置の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/26 20060101AFI20230630BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20230630BHJP
H01L 21/205 20060101ALN20230630BHJP
【FI】
H01L21/26 G
H01L21/265 602B
H01L21/205
(21)【出願番号】P 2019149433
(22)【出願日】2019-08-16
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】布施 和彦
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-084756(JP,A)
【文献】特表2012-506622(JP,A)
【文献】特開2019-057566(JP,A)
【文献】特表2011-526077(JP,A)
【文献】特開2014-011256(JP,A)
【文献】特開2017-017277(JP,A)
【文献】特開2011-187786(JP,A)
【文献】特表2005-527972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/26
H01L 21/265
H01L 21/205
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置であって、
基板を収容するチャンバーと、
前記チャンバー内にて前記基板を保持するサセプタと、
前記チャンバー内に光を照射して前記サセプタに保持された前記基板を加熱する連続点灯ランプと、
前記チャンバー内に紫外光を含む光を照射する紫外光ランプと、
前記チャンバー内にオゾンを含む気体を供給する気体供給部と、
を備え、
前記基板の処理が終了した前記チャンバー内をオゾンを含む雰囲気としつつ
、前記サセプタにダミー基板を保持した状態にて前記紫外光ランプから紫外光を含む光を照射
して前記ダミー基板の表面で紫外光を反射させて前記チャンバーの内壁面に到達させ、
前記連続点灯ランプによって前記オゾンを含む雰囲気を加熱した状態で前記紫外光ランプから紫外光を含む光を照射することを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
請求項1記載の熱処理装置において、
前記気体供給部は、前記チャンバー内にオゾンと酸素との混合気体を供給し、
前記チャンバー内をオゾンと酸素とを含む雰囲気としつつ前記紫外光ランプから紫外光を含む光を照射することを特徴とする熱処理装置。
【請求項3】
請求項
1記載の熱処理装置において、
前記基板の処理を行うときに使用する熱処理レシピと前記ダミー基板を用いた紫外光照射処理に使用する処理レシピとは同じであることを特徴とする熱処理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項
3のいずれかに記載の熱処理装置において、
前記チャンバー内の雰囲気を排気する排気部をさらに備え、
前記紫外光ランプから紫外光を含む光を照射した後に前記排気部が前記チャンバー内から雰囲気を排気することを特徴とする熱処理装置。
【請求項5】
請求項
4記載の熱処理装置において、
前記気体供給部は、前記サセプタよりも上方の給気位置から前記チャンバー内にオゾンを含む気体を供給し、
前記排気部は、前記サセプタと前記給気位置との間の高さ位置から雰囲気を排気することを特徴とする熱処理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項
5のいずれかに記載の熱処理装置において、
前記紫外光ランプはフラッシュ光を照射するフラッシュランプであることを特徴とする熱処理装置。
【請求項7】
基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置の洗浄方法であって、
チャンバー内にてサセプタに保持した基板に光を照射して前記基板を加熱する処理工程と、
前記基板の処理が終了した前記チャンバー内にオゾンを含む気体を供給する気体供給工程と、
前記チャンバー内をオゾンを含む雰囲気としつつ前記チャンバー内に紫外光ランプから紫外光を含む光を照射する紫外光照射工程と、
を備え
、
連続点灯ランプから前記チャンバー内に光照射を行って前記オゾンを含む雰囲気を加熱した状態で前記紫外光ランプから紫外光を含む光を照射し、
前記紫外光照射工程では、前記チャンバー内にて前記サセプタにダミー基板を保持した状態にて前記紫外光ランプから紫外光を含む光を照射して前記ダミー基板の表面で紫外光を反射させて前記チャンバーの内壁面に到達させることを特徴とする熱処理装置の洗浄方法。
【請求項8】
請求項
7記載の熱処理装置の洗浄方法において、
前記気体供給工程では、前記チャンバー内にオゾンと酸素との混合気体を供給し、
前記紫外光照射工程では、前記チャンバー内をオゾンと酸素とを含む雰囲気としつつ前記紫外光ランプから紫外光を含む光を照射することを特徴とする熱処理装置の洗浄方法。
【請求項9】
請求項
7記載の熱処理装置の洗浄方法において、
前記処理工程にて前記基板の処理を行うときに使用する熱処理レシピと前記紫外光照射工程にて前記ダミー基板の処理を行うときに使用する処理レシピとは同じであることを特徴とする熱処理装置の洗浄方法。
【請求項10】
請求項
7から請求項
9のいずれかに記載の熱処理装置の洗浄方法において、
前記紫外光ランプから紫外光を含む光を照射した後に前記チャンバー内から雰囲気を排気する排気工程をさらに備えることを特徴とする熱処理装置の洗浄方法。
【請求項11】
請求項
10記載の熱処理装置の洗浄方法において、
前記気体供給工程では、前記サセプタよりも上方の給気位置から前記チャンバー内にオゾンを含む気体を供給し、
前記排気工程では、前記サセプタと前記給気位置との間の高さ位置から雰囲気を排気することを特徴とする熱処理装置の洗浄方法。
【請求項12】
請求項
7から請求項
11のいずれかに記載の熱処理装置の洗浄方法において、
前記紫外光ランプはフラッシュ光を照射するフラッシュランプであることを特徴とする熱処理装置の洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウェハー等の薄板状精密電子基板(以下、単に「基板」と称する)に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置およびその熱処理装置の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいて、極めて短時間で半導体ウェハーを加熱するフラッシュランプアニール(FLA)が注目されている。フラッシュランプアニールは、キセノンフラッシュランプ(以下、単に「フラッシュランプ」とするときにはキセノンフラッシュランプを意味する)を使用して半導体ウェハーの表面にフラッシュ光を照射することにより、半導体ウェハーの表面のみを極めて短時間(数ミリ秒以下)に昇温させる熱処理技術である。
【0003】
キセノンフラッシュランプの放射分光分布は紫外域から近赤外域であり、従来のハロゲンランプよりも波長が短く、シリコンの半導体ウェハーの基礎吸収帯とほぼ一致している。よって、キセノンフラッシュランプから半導体ウェハーにフラッシュ光を照射したときには、透過光が少なく半導体ウェハーを急速に昇温することが可能である。また、数ミリ秒以下の極めて短時間のフラッシュ光照射であれば、半導体ウェハーの表面近傍のみを選択的に昇温できることも判明している。
【0004】
このようなフラッシュランプアニールは、極短時間の加熱が必要とされる処理、例えば典型的には半導体ウェハーに注入された不純物の活性化に利用される。イオン注入法によって不純物が注入された半導体ウェハーの表面にフラッシュランプからフラッシュ光を照射すれば、当該半導体ウェハーの表面を極短時間だけ活性化温度にまで昇温することができ、不純物を深く拡散させることなく、不純物活性化のみを実行することができるのである。
【0005】
フラッシュランプアニール装置は、上記のような打ち込まれた不純物の活性化のみならず、他の用途への応用も試みられている。例えば、特許文献1には、リン(P)やボロン(B)等のドーパントを含んだ二酸化ケイ素の膜を半導体ウェハーの表面に成膜し、ハロゲンランプからの光照射によって半導体ウェハーの表面にドーパントを拡散させた後、フラッシュ光照射によってドーパントを活性化させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示されるような技術において、ドーパントを含んだ膜を加熱したときに、外方拡散によって当該膜からドーパントが放出されてチャンバーの内壁面を汚染することがある。また、半導体ウェハーに成膜された膜の種類によっては、加熱時に昇華物が発生してチャンバーの内壁面を汚染することもある。このため、半導体デバイスを量産するフラッシュランプアニール装置においては、少なくとも1ヶ月に1回以上、チャンバーを開放してのクリーニングが実施されている。取り扱う半導体ウェハーの種類によっては、1週に1回以上チャンバーのクリーニングが必要になる場合もある。
【0008】
チャンバーを開放してクリーニングを行うときには、当然に装置を停止しなければならない。よってチャンバーを開放してのクリーニング処理は、装置の稼働率を低下させるとともに、生産コスト増大の要因ともなるのである。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、チャンバー内の汚染を容易に清掃することができる熱処理装置および熱処理装置の洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は、基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置において、基板を収容するチャンバーと、前記チャンバー内にて前記基板を保持するサセプタと、前記チャンバー内に光を照射して前記サセプタに保持された前記基板を加熱する連続点灯ランプと、前記チャンバー内に紫外光を含む光を照射する紫外光ランプと、前記チャンバー内にオゾンを含む気体を供給する気体供給部と、を備え、前記基板の処理が終了した前記チャンバー内をオゾンを含む雰囲気としつつ、前記サセプタにダミー基板を保持した状態にて前記紫外光ランプから紫外光を含む光を照射して前記ダミー基板の表面で紫外光を反射させて前記チャンバーの内壁面に到達させ、前記連続点灯ランプによって前記オゾンを含む雰囲気を加熱した状態で前記紫外光ランプから紫外光を含む光を照射することを特徴とする。
【0011】
また、請求項2の発明は、請求項1の発明に係る熱処理装置において、前記気体供給部は、前記チャンバー内にオゾンと酸素との混合気体を供給し、前記チャンバー内をオゾンと酸素とを含む雰囲気としつつ前記紫外光ランプから紫外光を含む光を照射することを特徴とする。
【0014】
また、請求項3の発明は、請求項1の発明に係る熱処理装置において、前記基板の処理を行うときに使用する熱処理レシピと前記ダミー基板を用いた紫外光照射処理に使用する処理レシピとは同じであることを特徴とする。
【0016】
また、請求項4の発明は、請求項1から請求項3のいずれかの発明に係る熱処理装置において、前記チャンバー内の雰囲気を排気する排気部をさらに備え、前記紫外光ランプから紫外光を含む光を照射した後に前記排気部が前記チャンバー内から雰囲気を排気することを特徴とする。
【0017】
また、請求項5の発明は、請求項4の発明に係る熱処理装置において、前記気体供給部は、前記サセプタよりも上方の給気位置から前記チャンバー内にオゾンを含む気体を供給し、前記排気部は、前記サセプタと前記給気位置との間の高さ位置から雰囲気を排気することを特徴とする。
【0018】
また、請求項6の発明は、請求項1から請求項5のいずれかの発明に係る熱処理装置において、前記紫外光ランプはフラッシュ光を照射するフラッシュランプであることを特徴とする。
【0019】
また、請求項7の発明は、基板に光を照射することによって該基板を加熱する熱処理装置の洗浄方法において、チャンバー内にてサセプタに保持した基板に光を照射して前記基板を加熱する処理工程と、前記基板の処理が終了した前記チャンバー内にオゾンを含む気体を供給する気体供給工程と、前記チャンバー内をオゾンを含む雰囲気としつつ前記チャンバー内に紫外光ランプから紫外光を含む光を照射する紫外光照射工程と、を備え、連続点灯ランプから前記チャンバー内に光照射を行って前記オゾンを含む雰囲気を加熱した状態で前記紫外光ランプから紫外光を含む光を照射し、前記紫外光照射工程では、前記チャンバー内にて前記サセプタにダミー基板を保持した状態にて前記紫外光ランプから紫外光を含む光を照射して前記ダミー基板の表面で紫外光を反射させて前記チャンバーの内壁面に到達させることを特徴とする。
【0020】
また、請求項8の発明は、請求項7の発明に係る熱処理装置の洗浄方法において、前記気体供給工程では、前記チャンバー内にオゾンと酸素との混合気体を供給し、前記紫外光照射工程では、前記チャンバー内をオゾンと酸素とを含む雰囲気としつつ前記紫外光ランプから紫外光を含む光を照射することを特徴とする。
【0023】
また、請求項9の発明は、請求項7の発明に係る熱処理装置の洗浄方法において、前記処理工程にて前記基板の処理を行うときに使用する熱処理レシピと前記紫外光照射工程にて前記ダミー基板の処理を行うときに使用する処理レシピとは同じであることを特徴とする。
【0025】
また、請求項10の発明は、請求項7から請求項9のいずれかの発明に係る熱処理装置の洗浄方法において、前記紫外光ランプから紫外光を含む光を照射した後に前記チャンバー内から雰囲気を排気する排気工程をさらに備えることを特徴とする。
【0026】
また、請求項11の発明は、請求項10の発明に係る熱処理装置の洗浄方法において、前記気体供給工程では、前記サセプタよりも上方の給気位置から前記チャンバー内にオゾンを含む気体を供給し、前記排気工程では、前記サセプタと前記給気位置との間の高さ位置から雰囲気を排気することを特徴とする。
【0027】
また、請求項12の発明は、請求項7から請求項11のいずれかの発明に係る熱処理装置の洗浄方法において、前記紫外光ランプはフラッシュ光を照射するフラッシュランプであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0028】
請求項1から請求項6の発明によれば、基板の処理が終了したチャンバー内をオゾンを含む雰囲気としつつ紫外光ランプから紫外光を含む光を照射するため、オゾンおよび紫外光の作用によりチャンバー内の汚染物質を分解除去することができ、チャンバー内の汚染を容易に清掃することができる。また、連続点灯ランプによってオゾンを含む雰囲気を加熱した状態で紫外光ランプから紫外光を含む光を照射するため、汚染物質の分解除去をより促進することができる。
【0030】
特に、請求項3の発明によれば、基板の処理を行うときに使用する熱処理レシピと前記ダミー基板を用いた紫外光照射処理に使用する処理レシピとは同じであるため、ダミー基板を用いた処理を行っているときに直ぐに基板の処理を開始することができる。
【0031】
特に、請求項4の発明によれば、紫外光ランプから紫外光を含む光を照射した後に排気部がチャンバー内から雰囲気を排気するため、汚染物質が分解して生成された物質をチャンバー外に排出することができる。
【0032】
請求項7から請求項12の発明によれば、基板の処理が終了したチャンバー内をオゾンを含む雰囲気としつつチャンバー内に紫外光ランプから紫外光を含む光を照射するため、オゾンおよび紫外光の作用によりチャンバー内の汚染物質を分解除去することができ、チャンバー内の汚染を容易に清掃することができる。また、連続点灯ランプからチャンバー内に光照射を行ってオゾンを含む雰囲気を加熱した状態で紫外光ランプから紫外光を含む光を照射するため、汚染物質の分解除去をより促進することができる。
【0034】
特に、請求項9の発明によれば、処理工程にて基板の処理を行うときに使用する熱処理レシピと紫外光照射工程にてダミー基板の処理を行うときに使用する処理レシピとは同じであるため、ダミー基板を用いた処理を行っているときに直ぐに基板の処理を開始することができる。
【0035】
特に、請求項10の発明によれば、紫外光ランプから紫外光を含む光を照射した後にチャンバー内から雰囲気を排気するため、汚染物質が分解して生成された物質をチャンバー外に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明に係る熱処理装置の構成を示す縦断面図である。
【
図7】複数のハロゲンランプの配置を示す平面図である。
【
図8】チャンバーの洗浄処理の手順を示すフローチャートである。
【
図10】紫外光ランプの配置の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0038】
図1は、本発明に係る熱処理装置1の構成を示す縦断面図である。
図1の熱処理装置1は、基板として円板形状の半導体ウェハーWに対してフラッシュ光照射を行うことによってその半導体ウェハーWを加熱するフラッシュランプアニール装置である。処理対象となる半導体ウェハーWのサイズは特に限定されるものではないが、例えばφ300mmやφ450mmである。なお、
図1および以降の各図においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。
【0039】
熱処理装置1は、半導体ウェハーWを収容するチャンバー6と、複数のフラッシュランプFLを内蔵するフラッシュ加熱部5と、複数のハロゲンランプHLを内蔵するハロゲン加熱部4と、を備える。チャンバー6の上側にフラッシュ加熱部5が設けられるとともに、下側にハロゲン加熱部4が設けられている。また、熱処理装置1は、チャンバー6の内部に、半導体ウェハーWを水平姿勢に保持する保持部7と、保持部7と装置外部との間で半導体ウェハーWの受け渡しを行う移載機構10と、を備える。さらに、熱処理装置1は、ハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6に設けられた各動作機構を制御して半導体ウェハーWの熱処理を実行させる制御部3を備える。
【0040】
チャンバー6は、筒状のチャンバー側部61の上下に石英製のチャンバー窓を装着して構成されている。チャンバー側部61は上下が開口された概略筒形状を有しており、上側開口には上側チャンバー窓63が装着されて閉塞され、下側開口には下側チャンバー窓64が装着されて閉塞されている。チャンバー6の天井部を構成する上側チャンバー窓63は、石英により形成された円板形状部材であり、フラッシュ加熱部5から出射されたフラッシュ光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。また、チャンバー6の床部を構成する下側チャンバー窓64も、石英により形成された円板形状部材であり、ハロゲン加熱部4からの光をチャンバー6内に透過する石英窓として機能する。
【0041】
また、チャンバー側部61の内側の壁面の上部には反射リング68が装着され、下部には反射リング69が装着されている。反射リング68,69は、ともに円環状に形成されている。上側の反射リング68は、チャンバー側部61の上側から嵌め込むことによって装着される。一方、下側の反射リング69は、チャンバー側部61の下側から嵌め込んで図示省略のビスで留めることによって装着される。すなわち、反射リング68,69は、ともに着脱自在にチャンバー側部61に装着されるものである。チャンバー6の内側空間、すなわち上側チャンバー窓63、下側チャンバー窓64、チャンバー側部61および反射リング68,69によって囲まれる空間が熱処理空間65として規定される。
【0042】
チャンバー側部61に反射リング68,69が装着されることによって、チャンバー6の内壁面に凹部62が形成される。すなわち、チャンバー側部61の内壁面のうち反射リング68,69が装着されていない中央部分と、反射リング68の下端面と、反射リング69の上端面とで囲まれた凹部62が形成される。凹部62は、チャンバー6の内壁面に水平方向に沿って円環状に形成され、半導体ウェハーWを保持する保持部7を囲繞する。チャンバー側部61および反射リング68,69は、強度と耐熱性に優れた金属材料(例えば、ステンレススチール)にて形成されている。
【0043】
また、チャンバー側部61には、チャンバー6に対して半導体ウェハーWの搬入および搬出を行うための搬送開口部(炉口)66が形設されている。搬送開口部66は、ゲートバルブ185によって開閉可能とされている。搬送開口部66は凹部62の外周面に連通接続されている。このため、ゲートバルブ185が搬送開口部66を開放しているときには、搬送開口部66から凹部62を通過して熱処理空間65への半導体ウェハーWの搬入および熱処理空間65からの半導体ウェハーWの搬出を行うことができる。また、ゲートバルブ185が搬送開口部66を閉鎖するとチャンバー6内の熱処理空間65が密閉空間とされる。
【0044】
さらに、チャンバー側部61には、貫通孔61aが穿設されている。チャンバー側部61の外壁面の貫通孔61aが設けられている部位には放射温度計20が取り付けられている。貫通孔61aは、後述するサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの下面から放射された赤外光を放射温度計20に導くための円筒状の孔である。貫通孔61aは、その貫通方向の軸がサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの主面と交わるように、水平方向に対して傾斜して設けられている。貫通孔61aの熱処理空間65に臨む側の端部には、放射温度計20が測定可能な波長領域の赤外光を透過させるフッ化バリウム材料からなる透明窓21が装着されている。
【0045】
また、チャンバー6の内壁上部には熱処理空間65に処理ガスを供給するガス供給孔81が形設されている。ガス供給孔81は、凹部62よりも上側位置に形設されており、反射リング68に設けられていても良い。ガス供給孔81はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間82を介してガス供給管83に連通接続されている。ガス供給管83は処理ガス供給源85に接続されている。また、ガス供給管83の経路途中にはバルブ84が介挿されている。バルブ84が開放されると、処理ガス供給源85から緩衝空間82に処理ガスが送給される。緩衝空間82に流入した処理ガスは、ガス供給孔81よりも流体抵抗の小さい緩衝空間82内を拡がるように流れてガス供給孔81から熱処理空間65内へと供給される。処理ガスとしては、例えば窒素(N2)等の不活性ガス、または、水素(H2)、アンモニア(NH3)等の反応性ガス、或いはそれらを混合した混合ガスを用いることができる(本実施形態では窒素ガス)。また、処理ガス供給源85からクリーニングガスとして、オゾン(O3)、酸素(O2)、三フッ化窒素(NF3)、三フッ化塩素(ClF3)、塩素(CL2)等を送給してガス供給孔81からチャンバー6内に供給することもできる。
【0046】
一方、チャンバー6の内壁下部には熱処理空間65内の気体を排気するガス排気孔86が形設されている。ガス排気孔86は、凹部62よりも下側位置に形設されており、反射リング69に設けられていても良い。ガス排気孔86はチャンバー6の側壁内部に円環状に形成された緩衝空間87を介してガス排気管88に連通接続されている。ガス排気管88は排気部190に接続されている。また、ガス排気管88の経路途中にはバルブ89が介挿されている。バルブ89が開放されると、熱処理空間65の気体がガス排気孔86から緩衝空間87を経てガス排気管88へと排出される。なお、ガス供給孔81およびガス排気孔86は、チャンバー6の周方向に沿って複数設けられていても良いし、スリット状のものであっても良い。
【0047】
排気部190は真空ポンプを含む。ガス供給孔81からガス供給を行うことなく、排気部190を作動させて熱処理空間65の気体を排気することにより、チャンバー6内を大気圧未満に減圧することができる。また、排気部190の真空ポンプとガス排気管88とは、例えば管径の異なる3本のバイパスラインによって接続されており、それらのいずれを開放するかによってチャンバー6からの排気流量および排気速度を変化させることができる。
【0048】
図2は、保持部7の全体外観を示す斜視図である。保持部7は、基台リング71、連結部72およびサセプタ74を備えて構成される。基台リング71、連結部72およびサセプタ74はいずれも石英にて形成されている。すなわち、保持部7の全体が石英にて形成されている。
【0049】
基台リング71は円環形状から一部が欠落した円弧形状の石英部材である。この欠落部分は、後述する移載機構10の移載アーム11と基台リング71との干渉を防ぐために設けられている。基台リング71は凹部62の底面に載置されることによって、チャンバー6の壁面に支持されることとなる(
図1参照)。基台リング71の上面に、その円環形状の周方向に沿って複数の連結部72(本実施形態では4個)が立設される。連結部72も石英の部材であり、溶接によって基台リング71に固着される。
【0050】
サセプタ74は基台リング71に設けられた4個の連結部72によって支持される。
図3は、サセプタ74の平面図である。また、
図4は、サセプタ74の断面図である。サセプタ74は、保持プレート75、ガイドリング76および複数の基板支持ピン77を備える。保持プレート75は、石英にて形成された略円形の平板状部材である。保持プレート75の直径は半導体ウェハーWの直径よりも大きい。すなわち、保持プレート75は、半導体ウェハーWよりも大きな平面サイズを有する。
【0051】
保持プレート75の上面周縁部にガイドリング76が設置されている。ガイドリング76は、半導体ウェハーWの直径よりも大きな内径を有する円環形状の部材である。例えば、半導体ウェハーWの直径がφ300mmの場合、ガイドリング76の内径はφ320mmである。ガイドリング76の内周は、保持プレート75から上方に向けて広くなるようなテーパ面とされている。ガイドリング76は、保持プレート75と同様の石英にて形成される。ガイドリング76は、保持プレート75の上面に溶着するようにしても良いし、別途加工したピンなどによって保持プレート75に固定するようにしても良い。或いは、保持プレート75とガイドリング76とを一体の部材として加工するようにしても良い。
【0052】
保持プレート75の上面のうちガイドリング76よりも内側の領域が半導体ウェハーWを保持する平面状の保持面75aとされる。保持プレート75の保持面75aには、複数の基板支持ピン77が立設されている。本実施形態においては、保持面75aの外周円(ガイドリング76の内周円)と同心円の周上に沿って30°毎に計12個の基板支持ピン77が立設されている。12個の基板支持ピン77を配置した円の径(対向する基板支持ピン77間の距離)は半導体ウェハーWの径よりも小さく、半導体ウェハーWの径がφ300mmであればφ270mm~φ280mm(本実施形態ではφ270mm)である。それぞれの基板支持ピン77は石英にて形成されている。複数の基板支持ピン77は、保持プレート75の上面に溶接によって設けるようにしても良いし、保持プレート75と一体に加工するようにしても良い。
【0053】
図2に戻り、基台リング71に立設された4個の連結部72とサセプタ74の保持プレート75の周縁部とが溶接によって固着される。すなわち、サセプタ74と基台リング71とは連結部72によって固定的に連結されている。このような保持部7の基台リング71がチャンバー6の壁面に支持されることによって、保持部7がチャンバー6に装着される。保持部7がチャンバー6に装着された状態においては、サセプタ74の保持プレート75は水平姿勢(法線が鉛直方向と一致する姿勢)となる。すなわち、保持プレート75の保持面75aは水平面となる。
【0054】
チャンバー6に搬入された半導体ウェハーWは、チャンバー6に装着された保持部7のサセプタ74の上に水平姿勢にて載置されて保持される。このとき、半導体ウェハーWは保持プレート75上に立設された12個の基板支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。より厳密には、12個の基板支持ピン77の上端部が半導体ウェハーWの下面に接触して当該半導体ウェハーWを支持する。12個の基板支持ピン77の高さ(基板支持ピン77の上端から保持プレート75の保持面75aまでの距離)は均一であるため、12個の基板支持ピン77によって半導体ウェハーWを水平姿勢に支持することができる。
【0055】
また、半導体ウェハーWは複数の基板支持ピン77によって保持プレート75の保持面75aから所定の間隔を隔てて支持されることとなる。基板支持ピン77の高さよりもガイドリング76の厚さの方が大きい。従って、複数の基板支持ピン77によって支持された半導体ウェハーWの水平方向の位置ずれはガイドリング76によって防止される。
【0056】
また、
図2および
図3に示すように、サセプタ74の保持プレート75には、上下に貫通して開口部78が形成されている。開口部78は、放射温度計20が半導体ウェハーWの下面から放射される放射光(赤外光)を受光するために設けられている。すなわち、放射温度計20が開口部78およびチャンバー側部61の貫通孔61aに装着された透明窓21を介して半導体ウェハーWの下面から放射された光を受光して当該半導体ウェハーWの温度を測定する。さらに、サセプタ74の保持プレート75には、後述する移載機構10のリフトピン12が半導体ウェハーWの受け渡しのために貫通する4個の貫通孔79が穿設されている。
【0057】
図5は、移載機構10の平面図である。また、
図6は、移載機構10の側面図である。移載機構10は、2本の移載アーム11を備える。移載アーム11は、概ね円環状の凹部62に沿うような円弧形状とされている。それぞれの移載アーム11には2本のリフトピン12が立設されている。移載アーム11およびリフトピン12は石英にて形成されている。各移載アーム11は水平移動機構13によって回動可能とされている。水平移動機構13は、一対の移載アーム11を保持部7に対して半導体ウェハーWの移載を行う移載動作位置(
図5の実線位置)と保持部7に保持された半導体ウェハーWと平面視で重ならない退避位置(
図5の二点鎖線位置)との間で水平移動させる。水平移動機構13としては、個別のモータによって各移載アーム11をそれぞれ回動させるものであっても良いし、リンク機構を用いて1個のモータによって一対の移載アーム11を連動させて回動させるものであっても良い。
【0058】
また、一対の移載アーム11は、昇降機構14によって水平移動機構13とともに昇降移動される。昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて上昇させると、計4本のリフトピン12がサセプタ74に穿設された貫通孔79(
図2,3参照)を通過し、リフトピン12の上端がサセプタ74の上面から突き出る。一方、昇降機構14が一対の移載アーム11を移載動作位置にて下降させてリフトピン12を貫通孔79から抜き取り、水平移動機構13が一対の移載アーム11を開くように移動させると各移載アーム11が退避位置に移動する。一対の移載アーム11の退避位置は、保持部7の基台リング71の直上である。基台リング71は凹部62の底面に載置されているため、移載アーム11の退避位置は凹部62の内側となる。なお、移載機構10の駆動部(水平移動機構13および昇降機構14)が設けられている部位の近傍にも図示省略の排気機構が設けられており、移載機構10の駆動部周辺の雰囲気がチャンバー6の外部に排出されるように構成されている。
【0059】
図1に戻り、チャンバー6の上方に設けられたフラッシュ加熱部5は、筐体51の内側に、複数本(本実施形態では30本)のキセノンフラッシュランプFLからなる光源と、その光源の上方を覆うように設けられたリフレクタ52と、を備えて構成される。また、フラッシュ加熱部5の筐体51の底部にはランプ光放射窓53が装着されている。フラッシュ加熱部5の床部を構成するランプ光放射窓53は、石英により形成された板状の石英窓である。フラッシュ加熱部5がチャンバー6の上方に設置されることにより、ランプ光放射窓53が上側チャンバー窓63と相対向することとなる。フラッシュランプFLはチャンバー6の上方からランプ光放射窓53および上側チャンバー窓63を介して熱処理空間65にフラッシュ光を照射する。
【0060】
複数のフラッシュランプFLは、それぞれが長尺の円筒形状を有する棒状ランプであり、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように平面状に配列されている。よって、フラッシュランプFLの配列によって形成される平面も水平面である。複数のフラッシュランプFLが配列される領域は半導体ウェハーWの平面サイズよりも大きい。
【0061】
キセノンフラッシュランプFLは、その内部にキセノンガスが封入されその両端部にコンデンサーに接続された陽極および陰極が配設された円筒形状のガラス管(放電管)と、該ガラス管の外周面上に付設されたトリガー電極とを備える。キセノンガスは電気的には絶縁体であることから、コンデンサーに電荷が蓄積されていたとしても通常の状態ではガラス管内に電気は流れない。しかしながら、トリガー電極に高電圧を印加して絶縁を破壊した場合には、コンデンサーに蓄えられた電気がガラス管内に瞬時に流れ、そのときのキセノンの原子あるいは分子の励起によって光が放出される。このようなキセノンフラッシュランプFLにおいては、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが0.1ミリセカンドないし100ミリセカンドという極めて短い光パルスに変換されることから、ハロゲンランプHLの如き連続点灯の光源に比べて極めて強い光を照射し得るという特徴を有する。すなわち、フラッシュランプFLは、1秒未満の極めて短い時間で瞬間的に発光するパルス発光ランプである。なお、フラッシュランプFLの発光時間は、フラッシュランプFLに電力供給を行うランプ電源のコイル定数によって調整することができる。
【0062】
また、リフレクタ52は、複数のフラッシュランプFLの上方にそれら全体を覆うように設けられている。リフレクタ52の基本的な機能は、複数のフラッシュランプFLから出射されたフラッシュ光を熱処理空間65の側に反射するというものである。リフレクタ52はアルミニウム合金板にて形成されており、その表面(フラッシュランプFLに臨む側の面)はブラスト処理により粗面化加工が施されている。
【0063】
チャンバー6の下方に設けられたハロゲン加熱部4は、筐体41の内側に複数本(本実施形態では40本)のハロゲンランプHLを内蔵している。ハロゲン加熱部4は、複数のハロゲンランプHLによってチャンバー6の下方から下側チャンバー窓64を介して熱処理空間65への光照射を行って半導体ウェハーWを加熱する。
【0064】
図7は、複数のハロゲンランプHLの配置を示す平面図である。40本のハロゲンランプHLは上下2段に分けて配置されている。保持部7に近い上段に20本のハロゲンランプHLが配設されるとともに、上段よりも保持部7から遠い下段にも20本のハロゲンランプHLが配設されている。各ハロゲンランプHLは、長尺の円筒形状を有する棒状ランプである。上段、下段ともに20本のハロゲンランプHLは、それぞれの長手方向が保持部7に保持される半導体ウェハーWの主面に沿って(つまり水平方向に沿って)互いに平行となるように配列されている。よって、上段、下段ともにハロゲンランプHLの配列によって形成される平面は水平面である。
【0065】
また、
図7に示すように、上段、下段ともに保持部7に保持される半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域におけるハロゲンランプHLの配設密度が高くなっている。すなわち、上下段ともに、ランプ配列の中央部よりも周縁部の方がハロゲンランプHLの配設ピッチが短い。このため、ハロゲン加熱部4からの光照射による加熱時に温度低下が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部により多い光量の照射を行うことができる。
【0066】
また、上段のハロゲンランプHLからなるランプ群と下段のハロゲンランプHLからなるランプ群とが格子状に交差するように配列されている。すなわち、上段に配置された20本のハロゲンランプHLの長手方向と下段に配置された20本のハロゲンランプHLの長手方向とが互いに直交するように計40本のハロゲンランプHLが配設されている。
【0067】
ハロゲンランプHLは、ガラス管内部に配設されたフィラメントに通電することでフィラメントを白熱化させて発光させるフィラメント方式の光源である。ガラス管の内部には、窒素やアルゴン等の不活性ガスにハロゲン元素(ヨウ素、臭素等)を微量導入した気体が封入されている。ハロゲン元素を導入することによって、フィラメントの折損を抑制しつつフィラメントの温度を高温に設定することが可能となる。したがって、ハロゲンランプHLは、通常の白熱電球に比べて寿命が長くかつ強い光を連続的に照射できるという特性を有する。すなわち、ハロゲンランプHLは少なくとも1秒以上連続して発光する連続点灯ランプである。また、ハロゲンランプHLは棒状ランプであるため長寿命であり、ハロゲンランプHLを水平方向に沿わせて配置することにより上方の半導体ウェハーWへの放射効率が優れたものとなる。
【0068】
また、ハロゲン加熱部4の筐体41内にも、2段のハロゲンランプHLの下側にリフレクタ43が設けられている(
図1)。リフレクタ43は、複数のハロゲンランプHLから出射された光を熱処理空間65の側に反射する。
【0069】
制御部3は、熱処理装置1に設けられた上記の種々の動作機構を制御する。制御部3のハードウェアとしての構成は一般的なコンピュータと同様である。すなわち、制御部3は、各種演算処理を行う回路であるCPU、基本プログラムを記憶する読み出し専用のメモリであるROM、各種情報を記憶する読み書き自在のメモリであるRAMおよび制御用ソフトウェアやデータなどを記憶しておく磁気ディスクを備えている。制御部3のCPUが所定の処理プログラムを実行することによって熱処理装置1における処理が進行する。
【0070】
上記の構成以外にも熱処理装置1は、半導体ウェハーWの熱処理時にハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLから発生する熱エネルギーによるハロゲン加熱部4、フラッシュ加熱部5およびチャンバー6の過剰な温度上昇を防止するため、様々な冷却用の構造を備えている。例えば、チャンバー6の壁体には水冷管(図示省略)が設けられている。また、ハロゲン加熱部4およびフラッシュ加熱部5は、内部に気体流を形成して排熱する空冷構造とされている。また、上側チャンバー窓63とランプ光放射窓53との間隙にも空気が供給され、フラッシュ加熱部5および上側チャンバー窓63を冷却する。
【0071】
次に、熱処理装置1における処理動作について説明する。ここではまず、製品となる通常の半導体ウェハー(プロダクトウェハー)Wに対する熱処理動作について説明した後、熱処理装置1のチャンバー6の洗浄処理について説明する。以下に説明する半導体ウェハーWの処理手順は、制御部3が熱処理装置1の各動作機構を制御することにより進行する。
【0072】
まず、半導体ウェハーWの処理に先立って給気のためのバルブ84が開放されるとともに、排気用のバルブ89が開放されてチャンバー6内に対する給排気が開始される。バルブ84が開放されると、ガス供給孔81から熱処理空間65に窒素ガスが供給される。また、バルブ89が開放されると、ガス排気孔86からチャンバー6内の気体が排気される。これにより、チャンバー6内の熱処理空間65の上部から供給された窒素ガスが下方へと流れ、熱処理空間65の下部から排気される。
【0073】
続いて、ゲートバルブ185が開いて搬送開口部66が開放され、装置外部の搬送ロボットにより搬送開口部66を介して処理対象となる半導体ウェハーWがチャンバー6内の熱処理空間65に搬入される。このときには、半導体ウェハーWの搬入にともなって装置外部の雰囲気を巻き込むおそれがあるが、チャンバー6には窒素ガスが供給され続けているため、搬送開口部66から窒素ガスが流出して、そのような外部雰囲気の巻き込みを最小限に抑制することができる。
【0074】
搬送ロボットによって搬入された半導体ウェハーWは保持部7の直上位置まで進出して停止する。そして、移載機構10の一対の移載アーム11が退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12が貫通孔79を通ってサセプタ74の保持プレート75の上面から突き出て半導体ウェハーWを受け取る。このとき、リフトピン12は基板支持ピン77の上端よりも上方にまで上昇する。
【0075】
半導体ウェハーWがリフトピン12に載置された後、搬送ロボットが熱処理空間65から退出し、ゲートバルブ185によって搬送開口部66が閉鎖される。そして、一対の移載アーム11が下降することにより、半導体ウェハーWは移載機構10から保持部7のサセプタ74に受け渡されて水平姿勢にて下方より保持される。半導体ウェハーWは、保持プレート75上に立設された複数の基板支持ピン77によって支持されてサセプタ74に保持される。また、半導体ウェハーWは、成膜処理のなされた表面を上面として保持部7に保持される。複数の基板支持ピン77によって支持された半導体ウェハーWの裏面(表面とは反対側の主面)と保持プレート75の保持面75aとの間には所定の間隔が形成される。サセプタ74の下方にまで下降した一対の移載アーム11は水平移動機構13によって退避位置、すなわち凹部62の内側に退避する。
【0076】
半導体ウェハーWが石英にて形成された保持部7のサセプタ74によって水平姿勢にて下方より保持された後、ハロゲン加熱部4の40本のハロゲンランプHLが一斉に点灯して予備加熱(アシスト加熱)が開始される。ハロゲンランプHLから出射されたハロゲン光は、石英にて形成された下側チャンバー窓64およびサセプタ74を透過して半導体ウェハーWの下面に照射される。ハロゲンランプHLからの光照射を受けることによって半導体ウェハーWが予備加熱されて温度が上昇する。なお、移載機構10の移載アーム11は凹部62の内側に退避しているため、ハロゲンランプHLによる加熱の障害となることは無い。
【0077】
ハロゲンランプHLからの光照射によって昇温する半導体ウェハーWの温度は放射温度計20によって測定される。測定された半導体ウェハーWの温度は制御部3に伝達される。制御部3は、ハロゲンランプHLからの光照射によって昇温する半導体ウェハーWの温度が所定の予備加熱温度T1に到達したか否かを監視しつつ、ハロゲンランプHLの出力を制御する。すなわち、制御部3は、放射温度計20による測定値に基づいて、半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1となるようにハロゲンランプHLの出力をフィードバック制御する。
【0078】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した後、制御部3は半導体ウェハーWをその予備加熱温度T1に暫時維持する。具体的には、放射温度計20によって測定される半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達した時点にて制御部3がハロゲンランプHLの出力を調整し、半導体ウェハーWの温度をほぼ予備加熱温度T1に維持している。
【0079】
このようなハロゲンランプHLによる予備加熱を行うことによって、半導体ウェハーWの全体を予備加熱温度T1に均一に昇温している。ハロゲンランプHLによる予備加熱の段階においては、より放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部の温度が中央部よりも低下する傾向にあるが、ハロゲン加熱部4におけるハロゲンランプHLの配設密度は、半導体ウェハーWの中央部に対向する領域よりも周縁部に対向する領域の方が高くなっている。このため、放熱が生じやすい半導体ウェハーWの周縁部に照射される光量が多くなり、予備加熱段階における半導体ウェハーWの面内温度分布を均一なものとすることができる。
【0080】
半導体ウェハーWの温度が予備加熱温度T1に到達して所定時間が経過した時点でフラッシュ加熱部5のフラッシュランプFLがサセプタ74に保持された半導体ウェハーWの表面にフラッシュ光照射を行う。このとき、フラッシュランプFLから放射されるフラッシュ光の一部は直接にチャンバー6内へと向かい、他の一部は一旦リフレクタ52により反射されてからチャンバー6内へと向かい、これらのフラッシュ光の照射により半導体ウェハーWのフラッシュ加熱が行われる。
【0081】
フラッシュ加熱は、フラッシュランプFLからのフラッシュ光(閃光)照射により行われるため、半導体ウェハーWの表面温度を短時間で上昇することができる。すなわち、フラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光は、予めコンデンサーに蓄えられていた静電エネルギーが極めて短い光パルスに変換された、照射時間が0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下程度の極めて短く強い閃光である。そして、フラッシュランプFLからのフラッシュ光照射によりフラッシュ加熱される半導体ウェハーWの表面温度は、瞬間的に1000℃以上の処理温度T2まで上昇した後、急速に下降する。
【0082】
フラッシュ加熱処理が終了した後、所定時間経過後にハロゲンランプHLが消灯する。これにより、半導体ウェハーWが予備加熱温度T1から急速に降温する。降温中の半導体ウェハーWの温度は放射温度計20によって測定され、その測定結果は制御部3に伝達される。制御部3は、放射温度計20の測定結果より半導体ウェハーWの温度が所定温度まで降温したか否かを監視する。そして、半導体ウェハーWの温度が所定以下にまで降温した後、移載機構10の一対の移載アーム11が再び退避位置から移載動作位置に水平移動して上昇することにより、リフトピン12がサセプタ74の上面から突き出て熱処理後の半導体ウェハーWをサセプタ74から受け取る。続いて、ゲートバルブ185により閉鎖されていた搬送開口部66が開放され、リフトピン12上に載置された半導体ウェハーWが装置外部の搬送ロボットによりチャンバー6から搬出され、半導体ウェハーWの加熱処理が完了する。
【0083】
表面に膜が形成された半導体ウェハーWが予備加熱された後にフラッシュ加熱されると、昇温した膜からの外方拡散によってドーパント等が熱処理空間65に放出されることがある。また、膜の種類によっては、昇温した膜から昇華物が発生することもある。これらの膜由来の物質(主に炭素系の物質)は冷却されているチャンバー6の内壁面に付着してチャンバー6を汚染することとなる。そこで、本実施形態では、以下のようにして熱処理装置1のチャンバー6の洗浄処理を行っている。
【0084】
図8は、チャンバー6の洗浄処理の手順を示すフローチャートである。上述したような半導体ウェハーWの処理が例えば25枚のプロダクトウェハーについて終了(ステップS1)した後、熱処理装置1は待機状態となり、チャンバー6内にダミーウェハーが搬入される(ステップS2)。ダミーウェハーは、製品となる半導体ウェハーWと同様の円板形状のシリコンウェハーであり、半導体ウェハーWと同様のサイズおよび形状を有する。但し、ダミーウェハーには、パターン形成や成膜処理はなされていない。すなわち、ダミーウェハーはいわゆるシリコンのベアウェハーである。ダミーウェハーのチャンバー6への搬入動作は、上述した半導体ウェハーWの搬入動作と同じである。
【0085】
ダミーウェハーがチャンバー6内に搬入されてサセプタ74に保持され、搬送開口部66がゲートバルブ185によって閉鎖された後、チャンバー6内にオゾンを含む雰囲気が形成される(ステップS3)。本実施形態においては、チャンバー6内にオゾンと酸素との混合雰囲気が形成される。具体的には、処理ガス供給源85からオゾンと酸素との混合ガスが送給され、ガス供給孔81から熱処理空間65に当該混合ガスがクリーニングガスとして供給される。ガス排気孔86からチャンバー6内の気体を排気しつつ、ガス供給孔81からクリーニングガスを供給することにより、チャンバー6内はオゾンと酸素との混合雰囲気に置換される。
【0086】
チャンバー6内にオゾンと酸素との混合雰囲気が形成された後、ハロゲン加熱部4のハロゲンランプHLが点灯する(ステップS4)。サセプタ74にはダミーウェハーが保持されているため、ハロゲンランプHLから出射された光は下側チャンバー窓64およびサセプタ74を透過してダミーウェハーの下面に照射される。ハロゲンランプHLからの光照射を受けることによってダミーウェハーが加熱されて昇温する。そして、昇温したダミーウェハーからの熱伝導によってチャンバー6内のオゾンと酸素との混合雰囲気も加熱される。
【0087】
ハロゲンランプHLからの光照射によってチャンバー6内の雰囲気温度が所定温度に到達した後、チャンバー6内にオゾンを含む雰囲気が形成された状態でフラッシュランプFLが発光して熱処理空間65にフラッシュ光が照射される(ステップS5)。フラッシュ光の照射時間は、0.1ミリセカンド以上100ミリセカンド以下である。フラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光の分光分布は紫外域から近赤外域にまでおよぶ。すなわち、フラッシュランプFLから照射されるフラッシュ光は紫外光を含む光である。なお、フラッシュ光に紫外光が十分含まれるように、フラッシュランプFLのランプ管の材質は紫外光を積極的に透過するものとしておくのが好ましい。
【0088】
チャンバー6内に形成されたオゾンと酸素との混合雰囲気に紫外光を含むフラッシュ光が照射されると、波長185nm程度の紫外光によって酸素分子が分解されるとともに、チャンバー6の壁面に付着した汚染物質も分解される。酸素分子が分解されることによって生成された酸素原子は他の酸素分子と結合してオゾンが生成される。また、波長254nm程度の紫外光によってオゾンが分解されて活性酸素が生成される。その活性酸素と汚染物質とが反応して一酸化炭素(CO)または二酸化炭素(CO2)となることにより、チャンバー6の内壁面から汚染物質が除去されることとなる。このようにしてチャンバー6の内壁面が洗浄される。このときに、ハロゲンランプHLからの光照射によってチャンバー6内のオゾンと酸素との混合雰囲気を加熱しておくことにより、汚染物質の分解除去がより促進されることとなる。
【0089】
フラッシュ光照射が終了した後、ハロゲンランプHLも消灯する。その後、チャンバー6内に気体供給を行うことなく、ガス排気孔86からチャンバー6内の雰囲気を排気することによってチャンバー6内を大気圧未満に減圧する(ステップS6)。これにより、オゾンを含む雰囲気と汚染物質とが反応して生成された一酸化炭素および二酸化炭素がチャンバー6内から排出される。
【0090】
チャンバー6内が所定圧にまで減圧された後、ガス供給孔81からチャンバー6内に窒素ガスが供給されてチャンバー6内が大気圧にまで復圧される(ステップS7)。このときには、チャンバー6内からの排気は継続されていても良いし、停止されていても良い。
【0091】
チャンバー6内が窒素ガスによって復圧された後、チャンバー6からダミーウェハーが搬出される(ステップS8)。ダミーウェハーのチャンバー6からの搬出動作は、上述した半導体ウェハーWの搬出動作と同じである。1枚のダミーウェハーを用いた洗浄処理が終了した後に、新たなダミーウェハーを用いて上述と同様の洗浄処理を行うようにしてもい良い。すなわち、複数枚(例えば5枚)のダミーウェハーについてステップS2~ステップS8の処理を繰り返すようにしても良い。
【0092】
本実施形態においては、半導体ウェハーWの処理が終了した後、チャンバー6内にオゾンを含む雰囲気を形成した状態にてフラッシュランプFLから紫外光を含むフラッシュ光を照射している。チャンバー6内をオゾンを含む雰囲気としつつチャンバー6内に紫外光を含むフラッシュ光を照射することにより、チャンバー6の内壁面に付着した汚染物質を分解除去することができる。すなわち、チャンバー6内にオゾンを含むクリーニングガスを供給してフラッシュランプFLからフラッシュ光を照射するだけで、チャンバー6内の汚染を容易に効率良く清掃することができるのである。その結果、チャンバー6のクリーニングを行うためのメンテナンス回数を削減することができ、熱処理装置1の停止時間を短くして熱処理装置1の稼働率低下を抑制することができる。また、メンテナンス時には、チャンバー6内の汚染に由来するパーティクルが少ないため、熱処理装置1の立ち上げ時間を短縮することができる。
【0093】
また、フラッシュ光を照射する前に、ハロゲンランプHLからの光照射によってチャンバー6内の雰囲気を加熱しているため、オゾン等が活性化されて汚染物質の分解除去をより促進することができる。
【0094】
また、本実施形態においては、ダミーウェハーを用いてチャンバー6の洗浄処理を行っている。すなわち、ハロゲンランプHLからの光照射によって昇温したダミーウェハーからの熱伝導によってチャンバー6内の雰囲気を加熱している。昇温したダミーウェハーは、サセプタ74をも予熱することとなる。従って、ダミーウェハーを用いた洗浄処理の途中であっても、任意のタイミングでプロダクトウェハーの処理を再開することも可能である。また、サセプタ74にダミーウェハーが保持されていることにより、フラッシュランプFLから照射されたフラッシュ光がダミーウェハーの表面で反射されてチャンバー6の内壁面に到達して汚染物質の分解効率を高めることができる。
【0095】
また、ダミーウェハーを用いてのチャンバー6の洗浄処理時には、ハロゲンランプHLによる加熱とフラッシュランプFLからのフラッシュ光照射とを行っており、これはプロダクトウェハーに対する熱処理内容と同じである。具体的には、プロダクトウェハーに対する熱処理を行うときに使用する熱処理レシピとダミーウェハーに対する光照射処理を行うときに使用する処理レシピとは同じである。熱処理レシピとは、熱処理のプロセスシーケンスおよび熱処理に係る各種構成部(例えば、ハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFL)の制御パラメータ(例えば、ハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLの出力値等)を記述したプログラムである。プロダクトウェハーに対する熱処理を行うときに使用する熱処理レシピと同じ処理レシピを用いてダミーウェハーに対する光照射処理を行っているため、チャンバー6の洗浄処理を行っているときにも直ぐにプロダクトウェハーの処理を開始することができる。
【0096】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、この発明はその趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態においては、ダミーウェハーを使用してチャンバー6の洗浄処理を行っていたが、これに限定されるものではなく、ダミーウェハーを使用することなくチャンバー6の洗浄処理を行うようにしても良い。具体的には、チャンバー6にダミーウェハーを搬入することなく、チャンバー6内にいかなる基板も存在しない状態(ダミーウェハーもプロダクトウェハーも存在しない状態)にてチャンバー6内にオゾンを含むクリーニングガスを供給し続け、フラッシュランプFLからフラッシュ光を照射する。この場合、フラッシュランプFLからは例えば1分間隔でフラッシュ光照射を繰り返す。また、併せてハロゲンランプHLからの光照射も継続して行って、チャンバー6内のオゾンを含む雰囲気を直接加熱するようにしても良い。このようにしても、上記実施形態と同様に、フラッシュ光に含まれる紫外光によってオゾンが分解されて活性酸素が生成され、その活性酸素と汚染物質とが反応することにより、チャンバー6の内壁面から汚染物質が分解除去される。また、ダミーウェハーを使用することなくチャンバー6の洗浄処理を行うようにすれば、ダミーウェハーを消費するコストを削減することができる。もっとも、上記実施形態のように、ダミーウェハーを使用してチャンバー6の洗浄処理を行うようにすれば、ダミーウェハーを介してチャンバー6内の雰囲気を効率良く加熱することができる。さらには、フラッシュランプFLから照射されたフラッシュ光がダミーウェハーの表面で反射されてチャンバー6の内壁面に到達するため、汚染物質の分解効率が高まる。
【0097】
また、フラッシュ光照射後のチャンバー6からの排気はサセプタ74よりも上方の空間から行うようにしても良い。
図9は、熱処理装置1の他の構成例を示す図である。同図において、上記実施形態と同一の要素については
図1と同様の符号を付している。ガス供給孔81は、サセプタ74よりも上方の給気位置に設けられている。従って、オゾンを含むクリーニングガスはサセプタ74よりも上方の給気位置からチャンバー6内に供給される。ガス排気孔281は、サセプタ74と当該給気位置との間の高さ位置において、チャンバー6の内壁面に形設されている。ガス排気孔281は、ガス排気管288によって排気部290と接続されている。ガス排気管288の経路途中にはバルブ289が介挿されている。排気部290を作動させつつバルブ289を開放することにより、サセプタ74と上記給気位置との間の高さ位置に設けられたガス排気孔281からチャンバー6内の雰囲気を排気することができる。
【0098】
一般的には各種膜は半導体ウェハーWの表面に形成されているため、加熱処理によって膜から放出された汚染物質は半導体ウェハーWよりも上方、つまりサセプタ74よりも上方のチャンバー6の内壁面に付着しやすい。よって、汚染物質が分解して生成された一酸化炭素または二酸化炭素は、サセプタ74よりも上方の空間に滞留しやすい。サセプタ74と上記給気位置との間の高さ位置からチャンバー6内の雰囲気を排気するようにすれば、汚染物質が分解して生成された一酸化炭素または二酸化炭素を効率良くチャンバー6外に排出できるとともに、半導体ウェハーWの加熱処理時の排気経路であるガス排気管88が汚れるのを防止することができる。
【0099】
図9の構成においては、複数のガス供給孔81からチャンバー6内にトルネード状にオゾンを含むクリーニングガスを供給するとともに、複数のガス排気孔281からチャンバー6内の雰囲気をトルネード状に排気するようにしても良い。このようにすれば、常に新たなクリーニングガスがチャンバー6の内壁面に供給されるとともに、汚染物質が分解して生成された一酸化炭素または二酸化炭素を滞留無くチャンバー6から排気することができる。
【0100】
また、上記実施形態においては、フラッシュ光に含まれる紫外光を利用して洗浄処理を行っていたが、ハロゲンランプHLおよびフラッシュランプFLとは別に専用の紫外光ランプを設けるようにしても良い。
図10は、紫外光ランプの配置の一例を示す図である。
図10の例では、フラッシュ加熱部5にて配列された隣り合うフラッシュランプFLの間に専用の紫外光ランプULが設けられている。
図8のステップS5に代えて、紫外光ランプULからチャンバー6内に紫外光を照射する。このようにしても、紫外光ランプULから照射された紫外光によってオゾンが分解されて活性酸素が生成され、その活性酸素と汚染物質とが反応することにより、チャンバー6の内壁面から汚染物質が分解除去される。
図10の例では、フラッシュランプFLの間に紫外光ランプULを配置していたが、隣り合うハロゲンランプHLの間に紫外光ランプULを配置するようにしても良い。なお、紫外光ランプULは、プロダクトウェハーの処理時には使用しない。
【0101】
また、チャンバー6の洗浄処理に際して、ハロゲンランプHLからの光照射は必ずしも必要ではない。ハロゲンランプHLからの光照射を行わなくても、チャンバー6内をオゾンを含む雰囲気としつつ紫外光を含む光を照射することによって、チャンバー6の内壁面に付着した汚染物質を分解除去することができる。
【0102】
また、上記実施形態においては、チャンバー6内にオゾンと酸素との混合雰囲気を形成していたが、これをオゾンのみの雰囲気としても良い。但し、純オゾンの雰囲気は取り扱いが困難であるため、上記実施形態のようにオゾンと酸素との混合雰囲気とした方が容易である。また、オゾンに代えて三フッ化窒素、三フッ化塩素、塩素等のフッ素系や塩素系のエッチングガスを含む雰囲気をチャンバー6内に形成するようにしても良い。
【0103】
また、制御部3のソフトウェアの設定により、プロダクトウェハーの処理を行わない適宜のタイミングで上記実施形態の洗浄処理を実行するようなシーケンスを組むようにしても良い。例えば、プロダクトウェハーを1000枚処理する毎に洗浄処理を2時間実行するようなシーケンスとしても良いし、10日おきに洗浄処理を2時間実行するようなシーケンスとしても良い。
【0104】
また、上記実施形態においては、フラッシュ加熱部5に30本のフラッシュランプFLを備えるようにしていたが、これに限定されるものではなく、フラッシュランプFLの本数は任意の数とすることができる。また、フラッシュランプFLはキセノンフラッシュランプに限定されるものではなく、クリプトンフラッシュランプであっても良い。また、ハロゲン加熱部4に備えるハロゲンランプHLの本数も40本に限定されるものではなく、任意の数とすることができる。
【0105】
また、上記実施形態においては、1秒以上連続して発光する連続点灯ランプとしてフィラメント方式のハロゲンランプHLを用いて半導体ウェハーWの予備加熱を行っていたが、これに限定されるものではなく、ハロゲンランプHLに代えて放電型のアークランプ(例えば、キセノンアークランプ)を連続点灯ランプとして用いて予備加熱を行うようにしても良い。
【符号の説明】
【0106】
1 熱処理装置
3 制御部
4 ハロゲン加熱部
5 フラッシュ加熱部
6 チャンバー
7 保持部
10 移載機構
65 熱処理空間
74 サセプタ
75 保持プレート
77 基板支持ピン
81 ガス供給孔
86,281 ガス排気孔
FL フラッシュランプ
HL ハロゲンランプ
UL 紫外光ランプ
W 半導体ウェハー