(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】元素添加剤を含む繊維および製造方法
(51)【国際特許分類】
D01F 9/08 20060101AFI20230630BHJP
C04B 35/80 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
D01F9/08 Z
C04B35/80
(21)【出願番号】P 2019528682
(86)(22)【出願日】2017-11-29
(86)【国際出願番号】 US2017063607
(87)【国際公開番号】W WO2018102352
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2020-11-20
(32)【優先日】2016-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514185688
【氏名又は名称】フリー フォーム ファイバーズ リミテッド ライアビリティ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】シェイ エル.ハリソン
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ ペーニャ
(72)【発明者】
【氏名】エリック ジー.バーラー
(72)【発明者】
【氏名】ラム ケー.ゴッドゥーグチンタ
(72)【発明者】
【氏名】カーク エル.ウィリアムズ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン エル.シュナイター
【審査官】鈴木 祐里絵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/112935(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/200257(WO,A1)
【文献】特開2016-188439(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0237595(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F9/08-9/32
C04B35/05
35/56-35/599
35/107
35/622-35/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多組成繊維が、一次繊維材料と元素添加材料とを含み、
前記一次繊維材料が、炭化ケイ素、炭化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ジルコニウム、二ホウ化ハフニウム、炭化ハフニウム、炭化タンタル、炭化ニオブ、二ホウ化タンタル、二ホウ化ジルコニウム、二ホウ化タングステン、窒化ハフニウム、窒化タンタル、窒化ジルコニウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、
前記元素添加材料が、ハフニウム、タンタル、ニオブ、イットリウム、ランタン、セリウム、ジルコニウム、モリブデン、タングステン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され、
前記元素添加材料の元素原子が、前記一次繊維材料の粒子の結晶構造内に収まるには大きすぎるため、前記粒子の境界に存在し、かつ、前記一次繊維材料の隣接する結晶ドメイン間の粒界に堆積されて、前記粒界を通る原子拡散に対するエネルギー障壁を示し、前記一次繊維材料内での800℃超での粒子成長を遅らせることにより耐クリープ性を高める、多組成繊維。
【請求項2】
前記一次繊維材料が、耐火グレードの無機一次繊維材料である、請求項1に記載の多組成繊維。
【請求項3】
前記多組成繊維が、実質的に不均一な直径を有する、請求項1に記載の多組成繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、「元素添加剤を有する繊維および製造方法」という名称の、2016年11月29日に出願された米国仮特許出願第62/427,362号の利益を主張し、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
本発明は、一般に強化材料用の繊維の分野に関し、より具体的には元素添加剤を有する繊維の分野に関する。
【0003】
多種多様な用途において、繊維を周囲の材料マトリックスに組み込んでいる繊維複合材料は、伝統的なバルク(すなわち、非繊維強化)材料よりも高い構造性能を提供する。しかしながら、残念なことに、従来の方法で製造された単一組成繊維は、拡散主導の粒子成長によって平均粒子サイズが場合によっては2桁を超えて増大するため、高温での耐クリープ性が劣ることが多い。
【0004】
概要
ここに記載されているように、上述の粒子成長プロセスは、粒界経路を通る原子拡散によって進行することが多く、したがって粒界における特大原子の添加(すなわち1つ以上の元素添加剤)は、原子拡散に対するエネルギー障壁を示し、形成された繊維内での高温での粒子成長を遅らせることにより耐クリープ性を高める。したがって、多成分繊維に元素添加剤を加えることによって繊維の耐クリープ性を向上させる機会が存在する。
【0005】
上記の機会は、本発明の一態様では、一次繊維材料と、一次繊維材料の隣接する結晶質ドメイン間の粒界に堆積した元素添加材料とを含む多組成繊維によって対処される。本発明の別の態様では、多組成繊維の製造方法が提供され、これは前駆体含有環境を提供することと、レーザー加熱を使用して繊維成長を促進することとを含み、前駆体含有環境が一次前駆体材料と元素前駆体材料とを含む。
【0006】
追加の特徴および利点が本発明の技術によって実現される。本発明の他の実施形態および態様はここに詳細に記載されており、請求された発明の一部と考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2015/200257A1号
【文献】米国特許出願公開第2016/0347672A1号明細書
【文献】米国特許出願公開第2017/0213604A1号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0004393A1号明細書
【文献】米国特許第5,786,023号明細書
【文献】国際公開第2013/180764A1号
【発明の概要】
【0008】
詳細な説明
本発明の態様ならびにその特定の特徴、利点および詳細は、添付の図面に示された非限定的な例を参照して以下により十分に説明される。周知のシステム、装置、製造および処理技術などの説明は、本発明を不必要に詳細に曖昧にしないように省略される。しかしながら、詳細な説明および特定の実施例は、本発明の態様を示す一方で、例示としてのみ与えられており、限定としてではないことを理解されたい。根底にある発明の概念の精神および/または範囲内での様々な置換、修正、追加、および/または配置が、この開示から当業者には明らかであろう。さらに、本発明の多数の態様および特徴がここに開示されており、矛盾しない限り、開示された各態様または特徴は、例えばここに記載されているような、元素添加剤を含む多組成繊維を提供することを容易にし、および製造する方法のために、特定の用途に望まれるような任意の他の開示の態様または特徴と組み合わせることができる。
【0009】
上述の態様をさらに説明する前に、本発明は、以下のものの主題と組み合わせて、単独でまたは任意の組み合わせで、組み込むまたは利用することに留意されたい:同一譲受人の2015年12月30日に国際公開第2015/200257A1号(特許文献1)として公開された国際特許出願第PCT/US2015/037080号、同一譲受人の2016年7月27日に題名「連続ブレンドナノスケール多相繊維」で出願され2012年12月1日に米国特許出願公開第2016/0347672A1号明細書(特許文献2)として公開された米国特許出願第15/114,504号、同一譲受人の2016年12月21日に題名「原子炉燃料の製造と特性化のための積層造形技術」で出願され2017年7月27日に米国特許出願公開第2017/0213604A1号明細書(特許文献3)として公開された米国特許出願第15/320,800号、同一譲受人の2017年5月11日に題名「繊維デリバリーアセンブリおよび製造方法」で出願された米国特許出願第15/592,408号、同一譲受人の2017年5月11日に題名「多層機能性繊維および製造方法」で出願された米国特許出願第15/592,726号、同一譲受人の2017年6月23日に題名「ナノ繊維-被覆繊維および製造方法」で出願された米国特許出願第15/631,243号、同一譲受人の2017年9月28日に題名「耐火性添加剤を含む多組成繊維およびその製造方法」で出願された米国特許出願第15/718,199号、同一譲受人の2017年9月28日に題名「耐火性酸化物被覆繊維およびその製造方法」で出願された米国特許出願第15/718,206号がその全体を参照によりここに組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本発明のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、添付の図面を参照しながら以下の詳細な説明を読むとより良く理解され、そこでは図面全体を通して類似の文字は類似の部分を表している。ここで、
【0011】
【
図1】
図1は、本発明の1つまたは複数の態様による、シード繊維基板、前駆体ガスが供給される反応器キューブ、シード繊維に衝突する集束レーザービーム、および入射レーザービーム波長に対して透明であり、例えばプロセスのビデオ監視を可能にする、反応器窓を示す単一繊維反応器の概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の1つまたは複数の態様による、LCVDがどのようにしてレーザービームの増倍によって大規模に並列化され得るかを示す概略図である。
【
図3】
図3は、本発明の1つまたは複数の態様による、炭素繊維の並列LCVD成長の一例を示す。
【
図4A】
図4Aは、本発明の1つまたは複数の態様による、元素添加剤を含む多組成繊維の製造を容易にするLCVDシステムの構成要素の簡略図である。
【
図4B】
図4Bは、本発明の1つまたは複数の態様による、元素添加剤を含む多組成繊維を製造するためのプロセスの一実施形態を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の1つまたは複数の態様による、元素添加剤を含む多組成繊維の部分実施形態を示す。
【
図6A】
図6Aは、本発明の1つまたは複数の態様による、結晶粒界に元素添加剤を含む多組成繊維の部分断面図である。
【
図6B】
図6Bは、本発明の1つまたは複数の態様による、多組成繊維の結晶粒界構造における第2元素材料の添加による耐クリープ性への影響をグラフで示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
繊維強化複合材料は、同時に強度を最大にして重量を最小にするように設計されている。これは、高強度低密度繊維を低密度充填剤マトリックス中に埋め込んで、繊維が複合構造中で構造応力を導き担持するようにして達成される。マトリックスは、繊維を一緒に保持して繊維から繊維へ剪断荷重を伝達するのを助ける接着剤として働くが、実際には、マトリックス材料は構造要素ではなく、複合材料から見た全体の構造負荷の一部を担っている。
【0013】
従って、複合材料は、マトリックスによって保持され、時には織られ、編まれ又は編まれた、強化繊維のネットワークで作られた技術材料である。繊維は通常「トウ」と呼ばれる撚られたマルチフィラメント糸として包装されている。マトリックスは、説明を要しない3つのクラスの複合材料:(1)ポリマーマトリックス複合材料(PMCs)、時々有機マトリックス複合材料(OMCs)とも呼ばれる;(2)金属マトリックス複合材料(MMC);および(3)セラミックマトリックス複合材料(CMCs)、を生じる。
【0014】
トウが単なる絡み合ったフィラメントの無秩序な束である複合材料へのこのようなアプローチは、繊維を純粋に構造的な役割に強制させる。1 1/2-D印刷と呼ばれる多層繊維の製造への新しいアプローチは、等間隔の平行なフィラメントの形成を可能にする。一緒に、この構造は、連続フィラメントの任意の長いリボンを構成し、これは繊維がそれらの純粋に構造的な機能から抜け出すことを可能にし、埋め込まれたマイクロシステムを繊維が含む全体的な新しい設計を可能にする。これは、上で参照した、同一譲受人による米国特許出願第15/592,408号にさらに記載されている。
【0015】
繊維製造へのこのアプローチは、例えば、先に引用した同一譲受人による国際公開第2015/200257A1号(特許文献1)に説明されているように、繊維中に埋め込まれたTRISO触発核燃料を製造し、その後に耐火性マトリックス中に後で埋め込んで、耐故障性CMC核燃料を形成する手段として提案された。ただし、これはこの技術によって可能になる新しい設計のほんの一例である。
【0016】
その核心において、1 1/2-D印刷は、連続フィラメントを印刷しそして繊維上に被覆されたパターンを堆積させるレーザー誘起化学気相堆積の物理的原理に基づいている。同一譲受人による、2014年7月14日に題名「高強度セラミック繊維および製造方法」として出願され2015年1月1日に米国特許出願公開第2015/0004393A1号明細書(特許文献4)として公開された米国特許出願第14/372,085号は、どのようにしてフィラメントのアレイが、その長さに沿って直径が潜在的に変化しながら、レーザー印刷され得るかを教示している。上記の国際公開第2015/200257A1号(特許文献1)は、リボンに入射するレーザーが使用されて、リボンが進行するにつれてレーザーをオンまたはオフにすることにより、基材繊維上にコーティングのパターンを書き込む方法を教示している。それはまた、コーティングの厚さが調整され得ることを教示している。最後に、上記の同一譲受人による米国特許出願第15/592,408号は、このような平行フィラメントのリボンがどのようにしてテープ上にリボンとして集められて複合材料中の繊維体積分率を高めるかを教示している。
【0017】
1 1/2-D印刷を実行するために、レーザー誘起化学気相成長(LCVD)が基本的なアディティブマニュファクチャリング(AM)ツールとして、そのほぼ材料に依存しない性質ゆえに選択され、これはAMプロセスにとって極めて稀な特性である。そのようなプロセスは「材料に依存しない(Material Agnostic)」と言われる。LCVDは、CVDから派生した技術であり、マイクロエレクトロニクス製造業界(別名「チップファブ」)で集中的に使用されている。CVDは、ガス前駆体から電子グレードの高純度の固体堆積物を形成する。75年以上の歴史の中で、チップファブは、数万もの幅広い材料のための化学前駆体の印象的なライブラリを蓄積してきた。CVDとLCVDの主な違いは、寸法と質量のスループットにある。CVDは二次元膜成長を意図しているが、LCVDは一次元フィラメント構造に理想的に適している。次元の違いが意味するのは、堆積メカニズムがLCVD対CVDで大幅に強化されていて、3から9桁大きい堆積された質量流束(kg/m2s)をもたらすことである。例えば、ダイヤモンドライクカーボンフィラメントは13cm/s以上の線形成長速度で測定されており、これは同じ材料の薄膜CVDと比較して質量フラックスの9桁の増加を表す。最後に、LCVDは本質的に容器なしであり、これは容器または道具による材料汚染の機会を事実上排除する。
【0018】
以下の基本的性質は、「1 1/2-D印刷」AMを正式に定義する。
・フィラメントを成長させるための材料に依存しない能力。
・Pegnaら(国際公開第2015/200257A1号(特許文献1))の
図10に示すような、フィラメントの長さに沿って直径を変化させる能力。
・Maxwellらによって実証されたような、長さに沿って組成を変化させる物質にとらわれない能力。
・上記で参照したPegnaらのPCT公報で示されたナノポーラスおよび他のスポットコーティングによって示されるような、フィラメントの特定の部分を所望の材料、形態および厚さによってコーティングする、材料にとらわれない能力。
【0019】
ここで開示されるのは、部分的に、MaxwellおよびPegnaにより「加圧前駆体流および成長速度制御を用いた三次元構造の自由形状成長のための方法および装置」と題して米国特許第5,786,023号明細書(特許文献5)に記載されているような、レーザー支援化学気相堆積(LCVD)を用いることによってポリマー前駆体の使用を避けるという概念であり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。このプロセスでは、純粋な前駆体ガス(SiC繊維製造の場合にはシランおよびエチレンなど)が反応器に導入され、その中にガラス状炭素などの適切な基板が配置され、レーザー光が基板上に集束される。集束レーザービームによって発生した熱は前駆体ガスを局所的に分解し、原子種は基板表面上に堆積し局所的に蓄積して繊維を形成する。レーザーまたは基板のいずれかが成長速度でこの成長ゾーンから引き離されると、連続的な繊維フィラメントが非常に高純度の出発ガスを用いて製造される。この技術では、望ましくない不純物、特に性能を害する酸素がほとんどない。
【0020】
非常に純粋な繊維は、炭化ケイ素、炭化ホウ素、窒化ケイ素などのLCVDを用いて製造され得る。本発明者らは、CVDを用いて材料が堆積されている場合、LCVDを用いて繊維が製造され得る良い機会であることを発見した。しかしながら、液体ポリマー前駆体とは異なり、上記のような比較的「単純な」材料でさえ化学が非常に複雑で複雑になる可能性がある場合、LCVDはまた直接使用されて、ポリマー前駆体および紡糸口金技術を使用して作ることができないかまたは試みられなかった異なる材料の固相の新規混合物を、製造することもできる。例としては、シラン、エチレンおよびアンモニアのような前駆体ガスによってそれぞれもたらされる、ケイ素、炭素および窒素からなる繊維が挙げられるが、得られた「複合」繊維は、反応器内での前駆体ガスの相対濃度に応じて、炭化ケイ素、窒化ケイ素および炭窒化ケイ素の密接に統合された相を含む。そのような新しい独特の繊維は、低い相対コストで、耐高温性、高強度および良好な耐クリープ性などの非常に有用な特性を示し得る。
【0021】
図1は、基板シード繊維が導入されたLCVD反応器を示し、その先端にレーザービームが集束されている。(基板は、レーザービームによって加熱され得る任意の固体表面であり得ることが理解されるであろう。その全体が参照によりここに組み込まれる国際公開第2013/180764A1号(特許文献6)として2013年12月5日に公開された国際特許出願番号PCT/US2013/022053に、および米国特許出願公開第2015/0004393号明細書(特許文献4)に教示されているように、複数のレーザーを同時に使用して複数の同時繊維を製造することができる。この出願において、
図1は、反応器10、反応器チャンバ20の拡大切欠図、成長領域30の拡大図をより詳細に示す。自己シード繊維50は対向する同軸レーザー60に向かって成長し、押出しマイクロチューブ40を通して引き出される。
【0022】
前駆体ガスの混合物は、所望の相対分圧比および全圧で導入され得る。レーザーがオンにされ、基板上にホットスポットを生成し、温度勾配の方向に、典型的にはレーザービームの軸に沿って、局所的な前駆体の破壊および局所的なCVD成長を引き起こす。材料が堆積して繊維が成長し、そして繊維がその成長速度で引き出される場合、ホットスポットはほぼ静止したままであり、プロセスは無期限に継続することができ、結果として任意に長いCVD生成繊維を与える。
【0023】
また、この出願によれば、独立して制御される大きなアレイのレーザーを提供することができ、
図2に示されるように、同等に大きなアレイの繊維70を並行して成長させることができ、これは各繊維70の先端の周りにプラズマ90を誘導するレーザービーム80の増倍によって、いかにして繊維LCVDがフィラメント格子100から大規模に平行化され得るかを示している。LCVD用のコンピュータ・トゥ・プレート(CtP)(例えば、量子井戸相互混合(QWI))レーザーアレイを用いることは、科学的な最初であり、それゆえ浅い焦点深度の使用であった。それは非常に有益な結果を与える。
図2に示すようなサンプルの炭素繊維を平行に成長させた。
図3は、炭素繊維の平行LCVD成長を示し、左は成長中の繊維であり、右は得られた直径10~12μmで長さ約5mmの自立繊維である。
【0024】
ここで論じられるように、レーザー駆動化学気相堆積(LCVD)技術は、複合材料系用の高性能セラミック繊維および無機繊維を形成することができる。上で議論された
図1は、モノフィラメントLCVD製造プロセスの概略図である。
図4Aは、本発明の1つまたは複数の態様による、1つまたは複数の元素添加剤を有する多組成繊維を製造するためのLCVD製造システムの概略図であり、
図4Bは、本発明の1つまたは複数の態様による、1つまたは複数の元素添加剤を有する多組成繊維を製造するための例示的なプロセスを示す。
【0025】
図4Aを参照すると、示されたLCVDシステム400は、1つまたは複数のレーザー402が1つ以上の窓403を通って導かれるチャンバ401を含む。チャンバ401は、ここに開示されるような繊維405の製造を容易にするための前駆体ガス404を含む。繊維抽出装置406は、繊維がチャンバ内で生成されるときにそれを引き出すことを容易にする。
【0026】
堆積プロセスは、
図4Bに示すように、前駆体ガスをチャンバ410内に入れることを含むことができる。所与の製造プロセスに対して、前駆体ガスの比率が選択されてチャンバに導入される。ガスは、繊維フォーマットで堆積されるべき原子種を含む。例えば、炭化ケイ素繊維(SiC)は、ケイ素含有ガスおよび炭素含有ガス、あるいは両方の原子を含有する単一のガスから形成することができる。さらに、小さいレーザービームが、レーザー波長を透過する窓412を通ってガス含有チャンバに向けられる。このレーザービームは、開始部位に集束され、これは繊維シード、薄い基板、またはビームと交差すると加熱されてそのエネルギーを吸収する他の任意の固体成分であり得る。このホットスポット414において、前駆体ガスは解離し、特定の化学反応工程を通して、所望の固体生成物を堆積する。例えば、上記の例では、一緒に付着する固体SiC堆積物が繊維416を形成する。繊維それ自体はレーザー源に向かって成長し、こうして繊維は同等の繊維成長速度418で引き離されて反応器から引き出される。このようにして、堆積ゾーンは一定の物理的位置(レーザービームの焦点)に留まり、レーザービームがオンで前駆体ガスの供給が補充される限り、堆積は無期限に継続することができる。
【0027】
上記のように、
図2は、単一のビームから多数の個々に制御されたレーザービームへと増加され、高品質の体積アレイの並列繊維を生成する、レーザービーム入力の大規模な並列化の表現を提供する。
【0028】
LCVDで製造された繊維中に形成された局在化学を制御することによって、複数の材料が繊維微細構造全体にわたって同時にかつ均一に堆積されてよい。このアプローチにより、LCVDプロセスによって無機の複数材料複合繊維を製造することができ、これはいくつかの所望の化学物質からなる。局所化学は、制御された組成のガス前駆体供給原料によって促進される。形成された微結晶間の粒界への元素原子の添加は、その所望の元素のためのガス前駆体が全入力ガス組成の約5%原子未満であることを必要としてよい。
【0029】
本発明の一実施形態によれば、
図5は、一次繊維材料540と、一次繊維材料540の隣接する結晶質ドメイン間の粒界上に堆積された元素添加材料550とを含む、多組成繊維500の概略図を示す。
【0030】
より詳細な実施形態では、一次繊維材料540は、耐火グレードの無機一次繊維材料であり、これは、炭化ケイ素、炭化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ジルコニウム、ハフニウム二ホウ化物、炭化ハフニウム、炭化タンタル、炭化ニオブ、二ホウ化タンタル、二ホウ化ジルコニウム、二ホウ化タングステン、窒化ハフニウム、窒化タンタル、窒化ジルコニウム、およびそれらの組み合わせなどの組成物を含むが、これらに限定されない。
【0031】
他のより詳細な実施形態では、元素添加材料550は、ハフニウム、タンタル、ニオブ、イットリウム、ランタン、セリウム、ジルコニウム、モリブデン、タングステン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0032】
別のより詳細な実施形態では、多組成繊維500は実質的に不均一な直径を有する。例えば、入力レーザーパワーや前駆体ガス特性などのLCVDプロセス成長パラメータに対するユーザ指定の入力は、最終的に形成された繊維の化学的および物理的特性に対する精巧な制御を提供する。例えば、これらの成長パラメータは、繊維直径寸法に変動を与えるように変更され得る。実際には、繊維の直径は、細い-太い-細い部分(またはその逆)のように変更することができ、それは所望の周期で繰り返すことができ、または全体的な組成物の性能の中で繊維の所望の物理的性質を付与するように設計することができる。
【0033】
本発明の別の態様では、多組成繊維500を製造する方法は、前駆体含有環境(precursor laden environment)510を提供することと、レーザー加熱を使用して繊維成長を促進することとを含む。前駆体含有環境510は、一次前駆体材料520と元素前駆体材料530とを含む。
【0034】
より詳細な実施形態では、一次前駆体材料520は、炭化ケイ素、炭化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ジルコニウム、二ホウ化ハフニウム、炭化ハフニウム、炭化タンタル、炭化ニオブ、二ホウ化タンタル、二ホウ化ジルコニウム、二ホウ化タングステン、窒化ハフニウム、窒化タンタル、窒化ジルコニウム、およびそれらの組み合わせなどの組成物を含み得るがこれらに限定されない群から選択される材料の前駆体を含む。
【0035】
他のより詳細な実施形態では、元素前駆体材料550は、ハフニウム、タンタル、ニオブ、イットリウム、ランタン、セリウム、ジルコニウム、モリブデン、タングステン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料の前駆体を含む。
【0036】
別のより詳細な実施形態では、前駆体含有環境510は、気体、液体、臨界流体、超臨界流体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された材料を含む。
【0037】
別の代替実施形態では、レーザー加熱を使用して繊維成長を促進する行為は、多組成繊維500が実質的に不均一な直径を有するようにレーザー加熱を調節することを含む。
【0038】
更なる例として、
図6Aは、
図5の繊維500のようなLCVD成形繊維を示し、一次繊維材料の粒子600の間の粒子境界位置610に所望の元素原子620(
図6A)を優先的に堆積させる。有利には、元素材料は、粒子自体内に、例えば粒子の結晶構造内に収まるには大きすぎるので、図示のように粒子の境界に存在する。
【0039】
図6Bは、粒界に二次元素材料を添加していない無機材料と比較したときの、元素材料すなわち二次元素を無機材料の粒界構造へ添加したことによる耐クリープ性への影響の概略的関係を、高温(例えば800℃超)での露光時間に対する粒子径の変化により示す。
【0040】
当業者は、上記の説明から、ここで提供されているのは多組成繊維および製造方法であることに気付くであろう。例えば、多組成繊維は、一次繊維材料と、一次繊維材料の隣接結晶ドメイン間の粒界に配置された元素添加材料とを含み得る。1つまたは複数の実施形態において、一次繊維材料は耐火グレードの無機一次繊維材料である。例えば、一次繊維材料は、炭化ケイ素、炭化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ジルコニウム、二ホウ化ハフニウム、炭化ハフニウム、炭化タンタル、炭化ニオブ、二ホウ化タンタル、二ホウ化ジルコニウム、二ホウ化タングステン、窒化ハフニウム、窒化タンタル、窒化ジルコニウム、およびそれらの組み合わせであり得る。1つまたは複数の実施形態において、元素添加材料は、ハフニウム、タンタル、ニオブ、イットリウム、ランタン、セリウム、ジルコニウム、モリブデン、タングステン、およびそれらの組み合わせであり得る。さらに、多組成繊維は、均一または不均一な直径を有していてもよい。すなわち、1つまたは複数の実施態様では、特定の用途に望まれるように、多組成繊維の直径を変えることができる。
【0041】
一以上の実施態様において、多組成繊維は、一次繊維材料と、一次繊維材料の隣接する結晶質ドメイン間の粒界上に堆積した元素添加材料とを含み、一次繊維材料は、炭化ケイ素、炭化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ジルコニウム、二ホウ化ハフニウム、炭化ハフニウム、炭化タンタル、炭化ニオブ、二ホウ化タンタル、二ホウ化ジルコニウム、二ホウ化タングステン、窒化ハフニウム、窒化タンタル、窒化ジルコニウム、および/またはそれらの組み合わせの1または複数であるか又はそれを含み、元素添加材料は、ハフニウム、タンタル、ニオブ、イットリウム、ランタン、セリウム、ジルコニウム、モリブデン、タングステン、および/またはそれらの組み合わせのうちの1つまたは複数である。さらに、多組成繊維は、必要に応じて、均一な、または実質的に不均一な直径を有してよい。
【0042】
1つまたは複数の態様では、多組成繊維を製造する方法がここに提供される。この方法は、前駆体含有環境を提供し、レーザー加熱を用いて繊維成長を促進することを含み、前駆体含有環境は、一次前駆体材料および元素前駆体材料を含む。1つまたは複数の実施態様において、前記一次繊維材料は、耐火性の無機一次繊維材料である。例えば、一次繊維材料は、炭化ケイ素、炭化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ジルコニウム、二ホウ化ハフニウム、炭化ハフニウム、炭化タンタル、炭化ニオブ、二ホウ化タンタル、二ホウ化ジルコニウム、二ホウ化タングステン、窒化ハフニウム、窒化タンタル、窒化ジルコニウム、および/またはそれらの組み合わせからなる群から選択される材料の前駆体を含み得る。1または複数の実施形態において、元素前駆体材料は、ハフニウム、タンタル、ニオブ、イットリウム、ランタン、セリウム、ジルコニウム、モリブデン、タングステン、炭化ハフニウム、炭化タンタル、炭化ニオブ、二ホウ化タンタル、二ホウ化ジルコニウム、二ホウ化タングステン、窒化ハフニウム、窒化タンタル、窒化ジルコニウム、および/またはそれらの組み合わせからなる群から選択される材料の前駆体であり得る。1つまたは複数の実施態様では、前駆体含有環境は、気体、液体、臨界流体、超臨界流体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される材料を含み得る。さらに、レーザー加熱を用いて繊維成長を促進することは、多組成繊維が実質的に不均一な直径を有するようにレーザー加熱を調節することを含み得る。
【0043】
1つまたは複数の実施形態において、ここに開示されるのは、多組成繊維を製造する方法であって、これが前駆体含有環境を提供し、レーザー加熱を使用して繊維成長を促進することを含み、前駆体含有環境が、一次前駆体材料および元素前駆体材料を含む。一次前駆体材料は、炭化ケイ素、炭化ホウ素、窒化ケイ素、炭化ジルコニウム、二ホウ化ハフニウム、炭化ハフニウム、炭化ニオブ、二ホウ化タンタル、二ホウ化ジルコニウム、二ホウ化タングステン、窒化ハフニウム、窒化タンタル、窒化ジルコニウム、および/またはそれらの組み合わせからなる群から選択される材料の前駆体を含む。元素前駆体材料は、ハフニウム、タンタル、ニオブ、イットリウム、ランタン、セリウム、ジルコニウム、モリブデン、タングステン、および/またはそれらの組み合わせからなる群から選択される材料の前駆体を含む。1つまたは複数の実施形態では、前駆体含有環境は、気体、液体、臨界流体、超臨界流体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された材料を含む。さらに、レーザー加熱を使用して繊維成長を促進することは、多組成繊維がその長さに沿って実質的に不均一な直径を有するようにレーザー加熱を調節することを含んでよい。
【0044】
ここで使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本発明を限定することを意図するものではない。ここで使用されるとき、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数形も含むことを意図している。用語「含む」(および「含む(単数形)」および「含み」のような任意の形態の含む)、「有する」(および「有する(単数形)」および「有し」のような任意の形態の有する)がさらに理解されるであろう。「包含する」(および「包含する(単数形)」および「包含し」などの任意の形式の包含する)、および「含有する」(および「含有する(単数形)」および「含有し」などの任意の形式の含有する)は、オープンエンドの連結動詞である。結果として、1つまたは複数のステップまたは要素を「含む」、「有する」、「包含する」または「含有する」方法または装置は、それらの1つまたは複数のステップまたは要素を保持するが、それらの1つまたは複数のステップや要素のみを保持することに限定されない。同様に、1つまたは複数の特徴を「含む」、「有する」、「包含する」または「含有する」という方法のステップまたは装置の要素は、それらの1つまたは複数の特徴を有するが、それらの1つまたは複数の特徴のみを有することに限定されない。さらに、特定の方法で構成された装置または構造は、少なくともそのように構成されているが、列挙されていない方法で構成されてもよい。
【0045】
以下の特許請求の範囲における対応する構造、材料、行為、およびすべてのミーンズまたはステッププラスファンクションの均等物は、もしあれば、具体的に請求されたような他の請求項の要素と組み合わせて、機能を果たすための構造、材料または行為を含むことを意図する。本発明の説明は、例示および説明の目的で提示されているが、網羅的であることまたは開示された形の発明に限定されることを意図するものではない。多くの修正形態および変形形態が、本発明の範囲および精神から逸脱することなく当業者には明らかであろう。本実施形態は、本発明および実際の応用の1つまたは複数の態様の原理を最もよく説明し、当業者が様々な実施形態についての本発明の1つまたは複数の態様を、考えられる特定の用途に適した様々な修正で理解できるように選択して説明された。