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特許7304824メディア保持機構およびインクジェットプリンタ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】メディア保持機構およびインクジェットプリンタ
(51)【国際特許分類】
   B41J 13/10 20060101AFI20230630BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
B41J13/10
B41J2/01 105
B41J2/01 305
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020002897
(22)【出願日】2020-01-10
(65)【公開番号】P2021109383
(43)【公開日】2021-08-02
【審査請求日】2022-08-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000137823
【氏名又は名称】株式会社ミマキエンジニアリング
(74)【代理人】
【識別番号】100125690
【弁理士】
【氏名又は名称】小平 晋
(72)【発明者】
【氏名】木村 俊広
【審査官】前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-193136(JP,A)
【文献】特開2003-266839(JP,A)
【文献】特開2005-205650(JP,A)
【文献】特開2010-137399(JP,A)
【文献】特開2012-200975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
2/165 - 2/20
2/21 - 2/215
B41J 13/00 - 13/32
B41J 11/00 - 11/70
B65H 9/00 - 9/20
13/00 - 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縁無し印刷される枚葉のメディアを保持するためのメディア保持機構であって、
前記メディアが載置される載置部材と、前記載置部材を上下方向に昇降させる昇降機構と、縁無し印刷される前記メディアを水平方向で位置決めするための複数の位置決め部材と、複数の前記位置決め部材のそれぞれを水平方向に移動させる移動機構とを備え、
縁無し印刷が行われるときの前記メディアの上下方向の位置を印刷位置とすると、
前記移動機構は、前記印刷位置に配置される前記メディアの端面に複数の前記位置決め部材が接触することにより複数の前記位置決め部材が互いに協働して水平方向で前記メディアを位置決めする接触位置と、前記印刷位置に配置される前記メディアの端面に接触しないように前記位置決め部材が水平方向に退避する退避位置との間で前記位置決め部材を移動させ、
前記昇降機構は、複数の前記位置決め部材が前記退避位置に配置されている状態で前記載置部材を昇降させて、前記載置部材に載置される前記メディアを前記印刷位置に移動させることを特徴とするメディア保持機構。
【請求項2】
前記メディアに縁無し印刷を行う前に、前記昇降機構は、前記載置部材に載置される前記メディアを前記印刷位置に移動させ、その後、前記移動機構は、前記退避位置にある全ての前記位置決め部材を前記接触位置に移動させた後、前記退避位置に移動させ、
前記メディアへの縁無し印刷時に、全ての前記位置決め部材は、前記退避位置に配置されていることを特徴とする請求項1記載のメディア保持機構。
【請求項3】
前記メディアは、長方形状に形成され、
前記位置決め部材は、L形状に形成され、
上下方向から見たときに、前記印刷位置に配置される前記メディアの2本の対角線のうちの一方の対角線の端部となる前記メディアの2個の角部のうちの一方の前記角部を第1角部とし、他方の前記角部を第2角部とし、前記第1角部を介して隣り合う前記メディアの2個の端面を第1端面とし、前記第2角部を介して隣り合う前記メディアの残りの2個の端面を第2端面とすると、
前記印刷位置に配置される前記メディアは、前記第1角部側から前記第1端面に接触する前記位置決め部材と、前記第2角部側から前記第2端面に接触する前記位置決め部材との2個の前記位置決め部材によって水平方向で位置決めされ、
2個の前記位置決め部材は、前記接触位置と前記退避位置との間で互いに逆方向に直線的に移動することを特徴とする請求項1または2記載のメディア保持機構。
【請求項4】
前記印刷位置に配置される前記メディアおよび前記位置決め部材よりも下側に配置されるインク受け部材を備え、
前記メディアには、インクジェット方式で縁無し印刷が行われ、
前記メディアへの縁無し印刷時に、前記インク受け部材は、前記印刷位置に配置される前記メディアの端面よりも前記メディアの外周側でインクを受けることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のメディア保持機構。
【請求項5】
複数の前記インク受け部材と、複数の前記インク受け部材のそれぞれを水平方向に移動させる第2移動機構とを備え、
前記昇降機構は、前記印刷位置よりも下側の位置である待機位置と前記印刷位置との間で、前記載置部材に載置される前記メディアを昇降させ、
前記第2移動機構は、前記印刷位置に配置される前記メディアの下側に前記インク受け部材の一部が配置されるとともに上下方向から見たときに前記印刷位置に配置される前記メディアの端面よりも前記メディアの外周側に前記インク受け部材の残りの部分が配置されるインク受け位置と、上下方向から見たときに前記インク受け部材の全体が前記印刷位置に配置される前記メディアの端面よりも前記メディアの外周側に配置される第2退避位置との間で前記インク受け部材を移動させ、
前記インク受け部材は、前記載置部材に載置される前記メディアが前記待機位置と前記印刷位置との間を移動するときに、前記第2退避位置に配置され、
前記第2移動機構は、前記載置部材に載置される前記メディアが前記印刷位置に配置されると、前記第2退避位置から前記インク受け位置に前記インク受け部材を移動させることを特徴とする請求項4記載のメディア保持機構。
【請求項6】
上側から見たときに、前記インク受け位置に配置される前記インク受け部材は、前記接触位置に配置される前記位置決め部材に覆われており、前記接触位置から前記退避位置に前記位置決め部材が移動すると、前記インク受け位置に配置される前記インク受け部材が現れることを特徴とする請求項5記載のメディア保持機構。
【請求項7】
前記載置部材は、前記載置部材に載置される前記メディアを吸着して保持するとともに、前記退避位置から前記接触位置に前記位置決め部材が移動するときに、前記メディアの吸着力を弱めることを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のメディア保持機構。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載のメディア保持機構と、前記印刷位置に配置される前記メディアにインクを吐出するインクジェットヘッドとを備えることを特徴とするインクジェットプリンタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縁無し印刷される枚葉のメディアを保持するためのメディア保持機構に関する。また、本発明は、かかるメディア保持機構を備えるインクジェットプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチック製のカードに対して印刷を行う印刷装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の印刷装置は、インクジェット方式でカードに対する印刷を行うインクジェットプリンタであり、インクを吐出するインクジェットヘッドを備えている。また、この印刷装置は、カードの印刷時にカードを保持するカード保持部を備えている。
【0003】
特許文献1に記載の印刷装置では、カード保持部は、板状に形成される抜き型部を備えている。抜き型部には、カード保持部で保持されるカードと略同形状の貫通穴が形成されている。また、抜き型部には、貫通穴の中でカードを付勢するための板バネが取り付けられている。板バネは、抜き型部の内壁(貫通穴の側面)にカードの端面を押し付けている。特許文献1に記載の印刷装置では、板バネによって抜き型部の内壁にカードの端面を押し付けることで、印刷されるカードが水平方向で位置決めされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2016-132234号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、印刷媒体の縁に余白がなくなるように印刷媒体の端まで印刷を行う縁無し印刷がインクジェットプリンタを用いて広く行われており、特許文献1に記載の印刷装置を用いてカードに縁無し印刷を行うことも可能である。しかしながら、特許文献1に記載の印刷装置では、板バネによって抜き型部の内壁にカードの端面を押し付けることで、印刷されるカードが水平方向で位置決めされているため、特定の大きさのカードしか水平方向で位置決めすることができない。したがって、この印刷装置では、様々な大きさのカードに精度良く縁無し印刷をすることは困難である。
【0006】
そこで、本発明の課題は、縁無し印刷される枚葉のメディアを保持するためのメディア保持機構において、様々な大きさのメディアを水平方向で位置決めすることが可能なメディア保持機構を提供することにある。また、本発明の課題は、かかるメディア保持機構を備えるインクジェットプリンタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明のメディア保持機構は、縁無し印刷される枚葉のメディアを保持するためのメディア保持機構であって、メディアが載置される載置部材と、載置部材を上下方向に昇降させる昇降機構と、縁無し印刷されるメディアを水平方向で位置決めするための複数の位置決め部材と、複数の位置決め部材のそれぞれを水平方向に移動させる移動機構とを備え、縁無し印刷が行われるときのメディアの上下方向の位置を印刷位置とすると、移動機構は、印刷位置に配置されるメディアの端面に複数の位置決め部材が接触することにより複数の位置決め部材が互いに協働して水平方向でメディアを位置決めする接触位置と、印刷位置に配置されるメディアの端面に接触しないように位置決め部材が水平方向に退避する退避位置との間で位置決め部材を移動させ、昇降機構は、複数の位置決め部材が退避位置に配置されている状態で載置部材を昇降させて、載置部材に載置されるメディアを印刷位置に移動させることを特徴とする。
【0008】
本発明のメディア保持機構は、複数の位置決め部材のそれぞれを水平方向に移動させる移動機構を備えており、移動機構は、印刷位置に配置されるメディアの端面に複数の位置決め部材が接触することにより複数の位置決め部材が互いに協働して水平方向でメディアを位置決めする接触位置と、印刷位置に配置されるメディアの端面に接触しないように位置決め部材が水平方向に退避する退避位置との間で位置決め部材を移動させている。そのため、本発明では、接触位置と退避位置との間を移動する複数の位置決め部材によって、様々な大きさのメディアを水平方向で位置決めすることが可能になる。したがって、本発明のメディア保持機構を用いれば、様々な大きさのメディアに精度良く縁無し印刷をすることが可能になる。
【0009】
また、本発明では、昇降機構は、複数の位置決め部材が退避位置に配置されている状態で載置部材を昇降させて、載置部材に載置されるメディアを印刷位置に移動させているため、メディアの輪郭(外形)よりも若干、外側に複数の位置決め部材が配置される位置を退避位置としても、載置部材に載置されるメディアを印刷位置に移動させるときに、退避位置に配置される複数の位置決め部材と載置部材に載置されるメディアとが干渉するのを防止することが可能になる。したがって、本発明では、退避位置から接触位置まで移動する位置決め部材の移動距離を短くすることが可能になり、その結果、水平方向でメディアを位置決めするときの時間を短縮することが可能になる。
【0010】
本発明において、メディアに縁無し印刷を行う前に、昇降機構は、載置部材に載置されるメディアを印刷位置に移動させ、その後、移動機構は、退避位置にある全ての位置決め部材を接触位置に移動させた後、退避位置に移動させ、メディアへの縁無し印刷時に、全ての位置決め部材は、退避位置に配置されていることが好ましい。このように構成すると、メディアへの縁無し印刷時に、全ての位置決め部材が、印刷位置に配置されるメディアの端面に接触しないように水平方向に退避する退避位置に配置されているため、メディアへの縁無し印刷時に、位置決め部材へのインクの付着を抑制することが可能になる。したがって、位置決め部材からのインクの除去作業の頻度を低減することが可能になる。
【0011】
本発明において、メディアは、長方形状に形成され、位置決め部材は、L形状に形成され、上下方向から見たときに、印刷位置に配置されるメディアの2本の対角線のうちの一方の対角線の端部となるメディアの2個の角部のうちの一方の角部を第1角部とし、他方の角部を第2角部とし、第1角部を介して隣り合うメディアの2個の端面を第1端面とし、第2角部を介して隣り合うメディアの残りの2個の端面を第2端面とすると、印刷位置に配置されるメディアは、第1角部側から第1端面に接触する位置決め部材と、第2角部側から第2端面に接触する位置決め部材との2個の位置決め部材によって水平方向で位置決めされ、2個の位置決め部材は、接触位置と退避位置との間で互いに逆方向に直線的に移動することが好ましい。このように構成すると、2個の位置決め部材を直線的に移動させることで縁無し印刷されるメディアを水平方向で位置決めすることが可能になるため、移動機構の構成を簡素化しつつ、2個の位置決め部材によって、縁無し印刷されるメディアを水平方向で位置決めすることが可能になる。
【0012】
本発明において、メディア保持機構は、印刷位置に配置されるメディアおよび位置決め部材よりも下側に配置されるインク受け部材を備え、メディアには、インクジェット方式で縁無し印刷が行われ、メディアへの縁無し印刷時に、インク受け部材は、印刷位置に配置されるメディアの端面よりもメディアの外周側でインクを受けることが好ましい。このように構成すると、メディアの外周側でインクがミスト状になって広がり、メディア保持機構の構成部品にインクが付着するのを抑制することが可能になる。
【0013】
本発明において、メディア保持機構は、複数のインク受け部材と、複数のインク受け部材のそれぞれを水平方向に移動させる第2移動機構とを備え、昇降機構は、印刷位置よりも下側の位置である待機位置と印刷位置との間で、載置部材に載置されるメディアを昇降させ、第2移動機構は、印刷位置に配置されるメディアの下側にインク受け部材の一部が配置されるとともに上下方向から見たときに印刷位置に配置されるメディアの端面よりもメディアの外周側にインク受け部材の残りの部分が配置されるインク受け位置と、上下方向から見たときにインク受け部材の全体が印刷位置に配置されるメディアの端面よりもメディアの外周側に配置される第2退避位置との間でインク受け部材を移動させ、インク受け部材は、載置部材に載置されるメディアが待機位置と印刷位置との間を移動するときに、第2退避位置に配置され、第2移動機構は、載置部材に載置されるメディアが印刷位置に配置されると、第2退避位置からインク受け位置にインク受け部材を移動させることが好ましい。このように構成すると、印刷位置よりも下側の位置である待機位置と印刷位置との間で、載置部材に載置されるメディアを昇降させる場合であっても、待機位置と印刷位置との間で昇降するメディアとインク受け部材との干渉を防止することが可能になる。
【0014】
本発明において、たとえば、上側から見たときに、インク受け位置に配置されるインク受け部材は、接触位置に配置される位置決め部材に覆われており、接触位置から退避位置に位置決め部材が移動すると、インク受け位置に配置されるインク受け部材が現れる。
【0015】
本発明において、載置部材は、載置部材に載置されるメディアを吸着して保持するとともに、退避位置から接触位置に位置決め部材が移動するときに、メディアの吸着力を弱めることが好ましい。このように構成すると、退避位置から接触位置に位置決め部材が移動するときに、メディアの吸着力が弱まるため、位置決め部材によって水平方向でメディアを確実に位置決めすることが可能になる。また、このように構成すると、載置部材に載置されるメディアが載置部材に吸着されて保持されるため、位置決め部材によって位置決めされたメディアの、縁無し印刷時のずれを確実に防止することが可能になる。
【0016】
本発明のメディア保持機構は、印刷位置に配置されるメディアにインクを吐出するインクジェットヘッドを備えるインクジェットプリンタに用いることができる。このインクジェットプリンタでは、様々な大きさのメディアを水平方向で位置決めすることが可能になる。また、このインクジェットプリンタでは、水平方向でメディアを位置決めするときの時間を短縮することが可能になる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明では、縁無し印刷される枚葉のメディアを保持するためのメディア保持機構において、様々な大きさのメディアを水平方向で位置決めすることが可能になる。したがって、本発明のメディア保持機構を用いれば、様々な大きさのメディアに精度良く縁無し印刷をすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態にかかるインクジェットプリンタの構成を説明するための概略図である。
図2図1に示すカード保持部の構成を説明するための断面図である。
図3図2に示すカード保持部の構成を説明するための斜視図である。
図4図2に示すカード保持部の構成を説明するための分解斜視図である。
図5図2に示す位置決め部材の動作を説明するための平面図である。
図6図2に示すインク受け部材の動作を説明するための平面図である。
図7図2に示すカード保持部の動作を説明するための図である。
図8図2に示すカード保持部の動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態を説明する。
【0020】
(インクジェットプリンタの概略構成)
図1は、本発明の実施の形態にかかるインクジェットプリンタ1の構成を説明するための概略図である。
【0021】
本形態のインクジェットプリンタ1(以下、「プリンタ1」とする。)は、たとえば、業務用のインクジェットプリンタであり、枚葉のメディア(印刷媒体)であるカード2(図2等参照)に印刷を行う。また、本形態のプリンタ1は、カード2に対して縁無し印刷を行う。すなわち、カード2には、インクジェット方式で縁無し印刷が行われる。カード2は、長方形状に形成されている。カード2は、塩化ビニールやPET(ポリエチレンテレフタレート)等のプラスチックで形成されたプラスチックカードである。ただし、カード2は、紙で形成された紙カードであっても良い。
【0022】
プリンタ1は、後述の印刷位置2Aに配置されるカード2にインクを吐出するインクジェットヘッド3(以下、「ヘッド3」とする。)と、ヘッド3が搭載されるキャリッジ4と、キャリッジ4を主走査方向(図1のY方向)に移動させるキャリッジ駆動機構5と、キャリッジ4を主走査方向に案内するためのガイドレール6と、ガイドレール6が固定されるYバー(図示省略)と、上下方向(図1のZ方向)と主走査方向とに直交する副走査方向(図1のX方向)にYバーをスライドさせるスライド機構(図示省略)とを備えている。
【0023】
ヘッド3は、紫外線硬化型のインク(UVインク)を吐出する。また、ヘッド3は、下側に向かってインクを吐出する。キャリッジ4には、ヘッド3から吐出されたインクに紫外線を照射してインクを硬化させる紫外線照射器(図示省略)が搭載されている。キャリッジ駆動機構5は、たとえば、2個のプーリと、2個のプーリに架け渡されるとともに一部がキャリッジ4に固定されるベルトと、プーリを回転させるモータとを備えている。スライド機構は、たとえば、モータおよびボールねじ等を備えている。
【0024】
また、プリンタ1は、縁無し印刷されるカード2を保持するためのカード保持機構9を備えている。カード保持機構9は、キャリッジ4よりも下側に配置されている。カード保持機構9は、1枚のカード2を保持するカード保持部10を複数備えている。複数のカード保持部10は、主走査方向に配列されている。本形態のカード保持機構9は、枚葉のメディアであるカード2を保持するためのメディア保持機構である。以下、カード保持部10の構成を説明する。
【0025】
(カード保持部の構成)
図2は、図1に示すカード保持部10の構成を説明するための断面図である。図3は、図2に示すカード保持部10の構成を説明するための斜視図である。図4は、図2に示すカード保持部10の構成を説明するための分解斜視図である。図5は、図2に示す位置決め部材17の動作を説明するための平面図である。図6は、図2に示すインク受け部材19の動作を説明するための平面図である。なお、以下の説明では、主走査方向を「左右方向」とし、副走査方向を「前後方向」とする。
【0026】
カード保持部10は、カード2が載置される載置部材14と、載置部材14を上下方向に昇降させる昇降機構15と、載置部材14に載置された状態で上昇するカード2を案内するためのガイド部材16と、縁無し印刷されるカード2を水平方向で位置決めするための複数の位置決め部材17と、複数の位置決め部材17のそれぞれを水平方向に移動させる移動機構18とを備えている。本形態のカード保持部10は、2個の位置決め部材17を備えており、移動機構18は、2個の位置決め部材17のそれぞれを水平方向に移動させる。
【0027】
また、カード保持部10は、ヘッド3から吐出されたインクを受けるためのインク受け部材19を備えている。具体的には、カード保持部10は、複数のインク受け部材19を備えている。さらに、カード保持部10は、複数のインク受け部材19のそれぞれを水平方向に移動させる第2移動機構としての移動機構20を備えている。本形態のカード保持部10は、2個のインク受け部材19を備えており、移動機構20は、2個のインク受け部材19のそれぞれを水平方向に移動させる。
【0028】
載置部材14は、長方形の平板状に形成されている。載置部材14は、載置部材14の厚さ方向と上下方向とが一致するように配置されている。載置部材14の外形は、カード2の外形よりも小さくなっている。載置部材14に載置されるカード2の厚さ方向は、上下方向と一致している。また、載置部材14には、カード2の長手方向(長辺方向)が前後方向または左右方向と一致するようにカード2が載置される。本形態では、カード2の長手方向と前後方向とが一致するように、載置部材14にカード2が載置される。カード2が載置部材14に載置されると、載置部材14は、上側から見えなくなる。
【0029】
載置部材14は、載置部材14に載置されるカード2を吸着して保持する。載置部材14の上面には、カード2の下面を吸引するための複数の吸引穴が形成されている。載置部材14の内部は、中空状に形成されており、載置部材14の内部空間は、複数の吸引穴に繋がっている。載置部材14には、載置部材14の内部空間の空気を吸引する真空ポンプが所定の配管を介して繋がっている。なお、プリンタ1は、載置部材14との間でカード2の受渡しを行う受渡し機構(図示省略)を備えている。
【0030】
昇降機構15は、載置部材14を上下方向に直線的に移動させる。昇降機構15は、たとえば、エアシリンダを備えている。また、昇降機構15は、モータと、モータの動力を載置部材14に伝達する動力伝達機構とを備えていても良い。動力伝達機構は、たとえば、ボールねじ、または、ラックピニオンである。プリンタ1によって縁無し印刷が行われるときのカード2の上下方向の位置を印刷位置2Aとすると、昇降機構15は、印刷位置2Aよりも下側の位置である待機位置2Bと印刷位置2Aとの間で、載置部材14に載置されるカード2を昇降させる(図2参照)。
【0031】
ガイド部材16は、長方形の厚板状に形成されている。ガイド部材16は、ガイド部材16の厚さ方向と上下方向とが一致するように配置されている。本形態では、図1に示すように、左右方向に配列される複数のガイド部材16が互いに繋がっており、左右方向に細長い長方形の1枚の厚板22に複数のガイド部材16が形成されている。ただし、図2図4図7図8では、ガイド部材16を1枚の厚板として図示している。
【0032】
ガイド部材16には、上下方向でガイド部材16を貫通する長方形状のガイド穴16aが形成されている。ガイド穴16aの上端部の形状は、カード2の外形よりも若干大きくなっている。ガイド穴16aの前後の側面の、上端部を除いた部分は、下側に向かうにしたがって前後方向の外側に広がる傾斜面となっており、ガイド穴16aの左右の側面の、上端部を除いた部分は、下側に向かうにしたがって左右方向の外側に広がる傾斜面となっている。印刷位置2Aは、ガイド部材16の上面よりも上側の位置であり、待機位置2Bは、ガイド部材16の下面よりも下側の位置である。載置部材14に載置された状態で待機位置2Bから印刷位置2Aまで上昇するカード2は、ガイド穴16aの前後左右の側面によって所定位置に案内される。
【0033】
位置決め部材17は、厚さが薄い平板状に形成されている。位置決め部材17は、位置決め部材17の厚さ方向と上下方向とが一致するように配置されている。また、位置決め部材17は、L形状に形成されている。すなわち、位置決め部材17は、直角に繋がる2個の直線部分によって構成されており、2個の直線部分の長手方向が前後方向または左右方向と一致するように位置決め部材17が配置されている。なお、本形態では、位置決め部材17を構成する2個の直線部分の長さが比較的長くなっているが、2個の直線部分の長さは短くても良い。
【0034】
位置決め部材17は、印刷位置2Aに配置されるカード2と同じ高さに配置されている。すなわち、位置決め部材17は、ガイド部材16の上面よりも上側に配置されている。図5に示すように、2個の位置決め部材17のうちの一方の位置決め部材17は、印刷位置2Aに配置されるカード2の右端面2bおよび前端面2cに右手前側から接触可能な位置に配置され、他方の位置決め部材17は、印刷位置2Aに配置されるカード2の左端面2dおよび後端面2eに左後ろ側から接触可能な位置に配置されている。
【0035】
移動機構18は、2個の位置決め部材17のそれぞれを個別に水平方向へ直線的に移動させる。移動機構18は、たとえば、2個の位置決め部材17のうちの一方の位置決め部材17を移動させるエアシリンダと、他方の位置決め部材17を移動させるエアシリンダとを備えている。また、移動機構18は、一方の位置決め部材17を移動させるための駆動源となるモータと、このモータの動力を一方の位置決め部材17に伝達する動力伝達機構と、他方の位置決め部材17を移動させるための駆動源となるモータと、このモータの動力を他方の位置決め部材17に伝達する動力伝達機構とを備えていても良い。動力伝達機構は、たとえば、ボールねじ、または、ラックピニオンである。なお、移動機構18は、1台のモータによって2個の位置決め部材17を移動させても良い。
【0036】
移動機構18は、印刷位置2Aに配置されるカード2の端面2b~2eに位置決め部材17が接触して水平方向でカード2を位置決めする接触位置17A(図5(A)等参照)と、印刷位置2Aに配置されるカード2の端面2b~2eに位置決め部材17が接触しないように位置決め部材17が水平方向に退避する退避位置17B(図5(B)等参照)との間で位置決め部材17を移動させる。接触位置17Aに配置される2個の位置決め部材17は、印刷位置2Aに配置されるカード2の端面2b~2eに接触することにより互いに協働してカード2を位置決めしている。
【0037】
印刷位置2Aに配置されるカード2の右端面2bおよび前端面2cに右手前側から接触可能な位置に配置される位置決め部材17は、退避位置17Bから接触位置17Aに向かって左後ろ側に直線的に移動し、接触位置17Aから退避位置17Bに向かって右手前側に直線的に移動する。印刷位置2Aに配置されるカード2の左端面2dおよび後端面2eに左後ろ側から接触可能な位置に配置される位置決め部材17は、退避位置17Bから接触位置17Aに向かって右手前側に直線的に移動し、接触位置17Aから退避位置17Bに向かって左後ろ側に直線的に移動する。2個の位置決め部材17は、接触位置17Aと退避位置17Bとの間で互いに逆方向に移動する。また、2個の位置決め部材17は、たとえば、同時に、かつ、同じ速度で移動する。
【0038】
印刷位置2Aに配置されるカード2は、カード2の右前端の角部2f側からカード2の右端面2bおよび前端面2cに接触する位置決め部材17と、カード2の左後端の角部2g側からカード2の左端面2dおよび後端面2eに接触する位置決め部材17との2個の位置決め部材17によって水平方向で位置決めされる。すなわち、印刷位置2Aに配置されるカード2は、L形状に形成される2個の位置決め部材17によって水平方向で位置決めされる。
【0039】
本形態の角部2fは、上下方向から見たときに、印刷位置2Aに配置されるカード2の2本の対角線のうちの一方の対角線の端部となるカード2の2個の角部2f、2gのうちの一方の角部である第1角部となっており、角部2gは、他方の角部である第2角部となっている。また、右端面2bおよび前端面2cは、第1角部である角部2fを介して隣り合うカード2の2個の端面である第1端面となっており、左端面2dおよび後端面2eは、第2角部である角部2gを介して隣り合うカード2の残りの2個の端面である第2端面となっている。
【0040】
インク受け部材19は、平板状に形成されている。インク受け部材19は、インク受け部材19の厚さ方向と上下方向とが一致するように配置されている。また、インク受け部材19は、L形状に形成されている。インク受け部材19の外形は、位置決め部材17の外形とほぼ等しくなっている。インク受け部材19は、直角に繋がる2個の直線部分の長手方向が前後方向または左右方向と一致するように配置されている。インク受け部材19の上面には、インクが溜まる凹部19aが形成されている。インク受け部材19は、印刷位置2Aに配置されるカード2および位置決め部材17よりも下側に配置されている。また、インク受け部材19は、ガイド部材16の上面よりも上側に配置されている。
【0041】
移動機構20は、2個のインク受け部材19のそれぞれを個別に水平方向へ直線的に移動させる。移動機構20は、移動機構18と同様に、たとえば、2個のインク受け部材19のうちの一方のインク受け部材19を移動させるエアシリンダと、他方のインク受け部材19を移動させるエアシリンダとを備えている。また、移動機構20は、一方のインク受け部材19を移動させるための駆動源となるモータと、このモータの動力を一方のインク受け部材19に伝達する動力伝達機構と、他方のインク受け部材19を移動させるための駆動源となるモータと、このモータの動力を他方のインク受け部材19に伝達する動力伝達機構とを備えていても良い。動力伝達機構は、たとえば、ボールねじ、または、ラックピニオンである。なお、移動機構20は、1台のモータによって2個のインク受け決め部材19を移動させても良い。
【0042】
移動機構20は、印刷位置2Aに配置されるカード2の下側にインク受け部材19の一部が配置されるとともに上下方向から見たときに印刷位置2Aに配置されるカード2の端面2b~2eよりもカード2の外周側にインク受け部材19の残りの部分が配置されるインク受け位置19A(図6(A)参照)と、上下方向から見たときにインク受け部材19の全体が印刷位置2Aに配置されるカード2の端面2b~2eよりもカード2の外周側に配置される第2退避位置としての退避位置19B(図6(B)参照)との間でインク受け部材19を移動させる。
【0043】
本形態では、退避位置19Bに配置される2個のインク受け部材19のうちの一方のインク受け部材19は、退避位置17Bに配置される2個の位置決め部材17のうちの一方の位置決め部材17と上下方向で重なっており、他方のインク受け部材19は、他方の位置決め部材17と上下方向で重なっている。退避位置19Bに配置されるインク受け部材19は、退避位置17Bに配置される位置決め部材17のすぐ下側に配置されている。
【0044】
インク受け部材19は、位置決め部材17と同じように直線的に移動する。すなわち、一方のインク受け部材19は、退避位置19Bからインク受け位置19Aに向かって左後ろ側に直線的に移動し、インク受け位置19Aから退避位置19Bに向かって右手前側に直線的に移動する。また、他方のインク受け部材19は、退避位置19Bからインク受け位置19Aに向かって右手前側に直線的に移動し、インク受け位置19Aから退避位置19Bに向かって左後ろ側に直線的に移動する。2個のインク受け部材19は、インク受け位置19Aと退避位置19Bとの間で互いに逆方向に移動する。また、2個のインク受け部材19は、たとえば、同時に、かつ、同じ速度で移動する。
【0045】
図6(A)に示すように、インク受け位置19Aに配置される2個のインク受け部材19の端部(カード2の周方向における端部)は互いに接触しており、インク受け位置19Aに配置される2個のインク受け部材19によって長方形の枠が形成されている。すなわち、2個のインク受け部材19がインク受け位置19Aに配置されているときには、カード2の下側に、上下方向から見ると、カード2の全周に亘ってカード2を囲むインクの受け部が形成されている。インク受け位置19Aに配置されるインク受け部材19は、カード2への縁無し印刷時に、印刷位置2Aに配置されるカード2の端面2b~2eよりもカード2の外周側でインクを受ける。
【0046】
上側から見たときに、インク受け位置19Aに配置されるインク受け部材19は、接触位置17Aに配置される位置決め部材17に覆われており、インク受け部材19がインク受け位置19Aに配置され、かつ、位置決め部材17が接触位置17Aに配置されている状態では、上側からインク受け部材19は見えない。この状態において、接触位置17Aから退避位置17Bに位置決め部材17が移動すると、インク受け位置19Aに配置されるインク受け部材19が現れる。すなわち、上側からインク受け部材19の一部が見えるようになる。
【0047】
(プリンタの動作)
図7図8は、図2に示すカード保持部10の動作を説明するための図である。
【0048】
プリンタ1では、昇降機構15は、カード2に縁無し印刷を行う前に、載置部材14を上昇させて、載置部材14に載置されるカード2を待機位置2Bから印刷位置2Aに移動させる。カード2が待機位置2Bから印刷位置2Aまで上昇するときには、図2図3に示すように、位置決め部材17は、退避位置17Bに配置され、インク受け部材19は、退避位置19Bに配置されている。すなわち、昇降機構15は、2個の位置決め部材17が退避位置17Bに配置され、2個のインク受け部材19が退避位置19Bに配置されている状態で載置部材14を上昇させて、載置部材14に載置されるカード2を印刷位置2Aに移動させる。また、このときには、載置部材14は、カード2の吸着力を弱めており、カード2は、ガイド穴16aの前後左右の側面によって所定位置に案内される。
【0049】
載置部材14に載置されるカード2が印刷位置2Aに配置されると、移動機構18は、退避位置17Bにある全ての位置決め部材17(すなわち、2個の位置決め部材17)を接触位置17Aに移動させる(図7参照)。退避位置17Bから接触位置17Aに位置決め部材17が移動するときには、載置部材14は、カード2の吸着力を弱めており、印刷位置2Aに配置されるカード2は、接触位置17Aに移動する位置決め部材17によって所定位置に位置決めされる。その後、移動機構18は、接触位置17Aから退避位置17Bに2個の位置決め部材17を移動させる(図8参照)。載置部材14は、2個の位置決め部材17が接触位置17Aから退避位置17Bに移動する前に、カード2の吸着力を高める。
【0050】
また、載置部材14に載置されるカード2が印刷位置2Aに配置されると、移動機構20は、退避位置19Bからインク受け位置19Aにインク受け部材19を移動させる(図8参照)。たとえば、位置決め部材17が退避位置17Bから接触位置17Aに移動した後再び退避位置17Bに戻るのと同時に、移動機構20は、退避位置19Bからインク受け位置19Aにインク受け部材19を移動させる。
【0051】
また、移動機構20は、位置決め部材17が退避位置17Bから接触位置17Aに移動した後再び退避位置17Bに戻った後に、退避位置19Bからインク受け位置19Aにインク受け部材19を移動させても良いし、位置決め部材17が退避位置17Bから接触位置17Aに移動した後、再び退避位置17Bに戻る前に、退避位置19Bからインク受け位置19Aにインク受け部材19を移動させても良い。また、移動機構20は、位置決め部材17が退避位置17Bから接触位置17Aに移動するのと同時に、あるいは、位置決め部材17が退避位置17Bから接触位置17Aに移動する前に、退避位置19Bからインク受け位置19Aにインク受け部材19を移動させても良い。
【0052】
その後、ヘッド3からインクが吐出されてカード2の縁無し印刷が行われる。カード2への縁無し印刷時には、2個の位置決め部材17は、退避位置17Bに配置されている。また、カード2への縁無し印刷時には、2個のインク受け部材19は、インク受け位置19Aに配置されている。縁無し印刷時のカード2は、前後左右方向におけるカード2のずれが生じないように、載置部材14に吸着保持されている。
【0053】
カード2の縁無し印刷が終わると、移動機構20は、インク受け位置19Aから退避位置19Bにインク受け部材19を移動させる。その状態で、昇降機構15は、載置部材14を下降させて、載置部材14に載置されるカード2を印刷位置2Aから待機位置2Bに移動させる。このように、インク受け部材19は、載置部材14に載置されるカード2が待機位置2Bと印刷位置2Aとの間を移動するときに、退避位置19Bに配置されている。
【0054】
(本形態の主な効果)
以上説明したように、本形態では、移動機構18は、印刷位置2Aに配置されるカード2の端面に2個の位置決め部材17が接触して水平方向でカード2を位置決めする接触位置17Aと、印刷位置2Aに配置されるカード2の端面に接触しないように位置決め部材17が水平方向に退避する退避位置17Bとの間で位置決め部材17を移動させている。そのため、本形態では、図3図5図7図8に示すカード2よりも小さなカード2が載置部材14に載置されている場合であっても、2個の位置決め部材17によって、この小さなカード2を水平方向で位置決めすることが可能になる。したがって、本形態では、様々な大きさのカード2を水平方向で位置決めすることが可能になり、その結果、本形態のカード保持機構9を用いれば、様々な大きさのカード2に精度良く縁無し印刷をすることが可能になる。
【0055】
本形態では、昇降機構15は、2個の位置決め部材17が退避位置17Bに配置されている状態で載置部材14を上昇させて、載置部材14に載置されるカード2を印刷位置2Aに移動させている。そのため、本形態では、カード2の輪郭(外形)よりも若干、外側に位置決め部材17が配置される位置を退避位置17Bとしても、載置部材14に載置されるカード2を印刷位置2Aに移動させるときに、退避位置17Bに配置される2個の位置決め部材17と載置部材14に載置されるカード2とが干渉するのを防止することが可能になる。したがって、本形態では、退避位置17Bから接触位置17Aまで移動する位置決め部材17の移動距離を短くすることが可能になり、その結果、水平方向でカード2を位置決めするときの時間を短縮することが可能になる。
【0056】
本形態では、カード2に縁無し印刷を行う前に、移動機構18は、退避位置17Bに配置される2個の位置決め部材17を接触位置17Aに移動させてカード2を水平方向で位置決めしているが、その後、2個の位置決め部材17を退避位置17Bに移動させ、カード2への縁無し印刷時には、2個の位置決め部材17は、退避位置17Bに配置されている。そのため、本形態では、位置決め部材17へのインクの付着を抑制することが可能になる。したがって、本形態では、位置決め部材17からのインクの除去作業の頻度を低減することが可能になる。
【0057】
本形態では、カード2の右前端の角部2f側からカード2の右端面2bおよび前端面2cに接触する位置決め部材17と、カード2の左後端の角部2g側からカード2の左端面2dおよび後端面2eに接触する位置決め部材17との2個の位置決め部材17を直線的に移動させることで、縁無し印刷されるカード2を水平方向で位置決めしている。そのため、本形態では、移動機構18の構成を簡素化しつつ、2個の位置決め部材17によって、縁無し印刷されるカード2を水平方向で位置決めすることが可能になる。
【0058】
本形態では、インク受け位置19Aに配置されるインク受け部材19は、カード2への縁無し印刷時に、印刷位置2Aに配置されるカード2の端面2b~2eよりもカード2の外周側でインクを受けている。そのため、本形態では、カード2の外周側でインクがミスト状になって広がり、ガイド部材16等のカード保持部10の構成部品にインクが付着するのを抑制することが可能になる。
【0059】
本形態では、インク受け部材19は、載置部材14に載置されるカード2が待機位置2Bと印刷位置2Aとの間を移動するときに、退避位置19Bに配置されている。そのため、本形態では、印刷位置2Aよりも下側の位置である待機位置2Bと印刷位置2Aとの間で、載置部材14に載置されるカード2を昇降させる場合であっても、待機位置2Bと印刷位置2Aとの間で昇降するカード2とインク受け部材19との干渉を防止することが可能になる。
【0060】
本形態では、退避位置17Bから接触位置17Aに位置決め部材17が移動するときには、載置部材14は、カード2の吸着力を弱めている。そのため、本形態では、接触位置17Aに移動する位置決め部材17によって水平方向でカード2を確実に位置決めすることが可能になる。また、本形態では、載置部材14に載置されるカード2が載置部材14に吸着されて保持されているため、位置決め部材17によって位置決めされたカード2の、縁無し印刷時のずれを確実に防止することが可能になる。
【0061】
(他の実施の形態)
上述した形態は、本発明の好適な形態の一例ではあるが、これに限定されるものではなく本発明の要旨を変更しない範囲において種々変形実施が可能である。
【0062】
上述した形態において、カード保持部10は、3個の位置決め部材17を備えていても良い。たとえば、カード保持部10は、L形状に形成される1個の位置決め部材17と、直線状に形成される2個の位置決め部材17とを備えていても良い。この場合には、たとえば、L形状に形成される位置決め部材17は、カード2の右端面2bおよび前端面2cに右手前側から接触可能な位置に配置され、上述した形態と同様に斜め方向に直線的に移動する。また、この場合には、たとえば、直線状に形成される2個の位置決め部材17のうちの一方の位置決め部材17は、カード2の左端面2dに左側から接触可能な位置に配置され、左右方向に直線的に移動し、他方の位置決め部材17は、カード2の後端面2eに後ろ側から接触可能な位置に配置され、前後方向に直線的に移動する。
【0063】
また、上述した形態において、カード保持部10は、4個の位置決め部材17を備えていても良い。たとえば、カード保持部10は、直線状に形成される4個の位置決め部材17を備えていても良い。この場合には、たとえば、4個の位置決め部材17のうちの2個の位置決め部材17は、左右方向に直線的に移動し、残りの2個の位置決め部材17は、前後方向に直線的に移動する。
【0064】
上述した形態において、昇降機構15は、印刷位置2Aよりも上側の位置である待機位置2Bと印刷位置2Aとの間で、載置部材14に載置されるカード2を昇降させても良い。この場合には、インク受け部材19は、インク受け位置19Aで固定されていても良い。インク受け位置19Aでインク受け部材19が固定されている場合には、移動機構20が不要になる。また、この場合には、2個のインク受け部材19が一体となっていても良い。
【0065】
上述した形態において、カード2への縁無し印刷時に、2個の位置決め部材17が接触位置17Aに配置されていても良い。また、上述した形態において、プリンタ1で印刷が行われるメディアは、カード2以外の枚葉のメディアであっても良い。また、上述した形態において、カード保持機構9が備えるカード保持部10の数は1個であっても良い。上述した形態において、プリンタ1は、Yバーをスライドさせるスライド機構に代えて、カード保持機構9を前後方向にスライドさせるスライド機構を備えていても良い。さらに、上述した形態において、ヘッド3は、左右方向(主走査方向)の幅が広いラインヘッドであっても良い。この場合には、キャリッジ4およびキャリッジ駆動機構5等が不要になる。また、上述した形態において、ヘッド3が吐出するインクは、水系のインクであっても良いし、ソルベントインクであっても良い。
【符号の説明】
【0066】
1 プリンタ(インクジェットプリンタ)
2 カード(枚葉のメディア)
2A 印刷位置
2B 待機位置
2b 右端面(第1端面)
2c 前端面(第1端面)
2d 左端面(第2端面)
2e 後端面(第2端面)
2f 角部(第1角部)
2g 角部(第2角部)
3 ヘッド(インクジェットヘッド)
9 カード保持機構(メディア保持機構)
14 載置部材
15 昇降機構
17 位置決め部材
17A 接触位置
17B 退避位置
18 移動機構
19 インク受け部材
19A インク受け位置
19B 退避位置(第2退避位置)
20 移動機構(第2移動機構)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8