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特許7304858アブレイダブル材料で作られた吸音チャネルの規則正しい網状組織を製造する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】アブレイダブル材料で作られた吸音チャネルの規則正しい網状組織を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/165 20170101AFI20230630BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20230630BHJP
   B29C 64/295 20170101ALI20230630BHJP
   B29C 64/314 20170101ALI20230630BHJP
   B29C 64/336 20170101ALI20230630BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20230630BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230630BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20230630BHJP
   B33Y 70/10 20200101ALI20230630BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20230630BHJP
   F02C 7/24 20060101ALI20230630BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
B29C64/165
B29C64/209
B29C64/295
B29C64/314
B29C64/336
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y50/02
B33Y70/10
B33Y80/00
F02C7/24 C
G10K11/16 120
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020531084
(86)(22)【出願日】2018-12-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 FR2018053134
(87)【国際公開番号】W WO2019110939
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】1761716
(32)【優先日】2017-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】2,988,223
(32)【優先日】2017-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CA
(73)【特許権者】
【識別番号】516227272
【氏名又は名称】サフラン・エアクラフト・エンジンズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルジョノ,ジャッキー・ノビ
(72)【発明者】
【氏名】デュブール,アルノー
(72)【発明者】
【氏名】フォーシン,エディス-ロラン
(72)【発明者】
【氏名】ロス,アニー
【審査官】小山 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0346997(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0228051(US,A1)
【文献】特表2017-535459(JP,A)
【文献】特表2021-524397(JP,A)
【文献】特開平11-173153(JP,A)
【文献】特開平02-196109(JP,A)
【文献】特開2009-143230(JP,A)
【文献】特表2016-525471(JP,A)
【文献】国際公開第2012/046021(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/135973(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
F01N 1/00- 1/24
5/00- 5/04
13/00-99/00
F02C 1/00- 9/58
F23R 3/00- 7/00
G01K 11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラメントの三次元足場構造を製造するように、フィラメントの所定の堆積経路に沿って、アブレイダブルターボ機械壁と前記フィラメントとの間の相対移動と前記フィラメントの凝固との両方を提供しながら、熱硬化性材料のフィラメント(100,200,300)を前記アブレイダブルターボ機械壁(12)に堆積させることを含む、アブレイダブルコーティングの製造方法であって、音吸収特性を三次元足場構造に付与するように、隣接する層のフィラメント同士が異なる方向に配向されており、且つ、所与の層のフィラメントがそれらフィラメント間で接触していない、重ね合わされた層を含む、当該アブレイダブルコーティングの製造方法であって、前記熱硬化性材料が、溶媒を含まず且つポリマーベースおよび架橋剤からなるチキソトロピー混合物であり、前記ポリマーベースと前記架橋剤との重量比が1:1~2:1であり、流動成分の重量比は、前記チキソトロピー混合物の総重量の5~15重量%の間にあることを特徴とする、アブレイダブルコーティングの製造方法。
【請求項2】
前記チキソトロピー混合物が、円錐押出スクリュー(26)により前記流動成分、前記架橋剤および前記前記ポリマーベースを混合することによって得られ、その出口断面が250ミクロン未満の主幅を有する較正された形状および寸法(22)を有する吐出ノズルによって前記アブレイダブルターボ機械壁(12)に堆積されることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記アブレイダブルターボ機械壁と前記フィラメントとの間の相対移動が、少なくとも3つの軸を有する機械、またはコンピュータ(24)から制御されるロボット(20)によって提供されることを特徴とする、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記フィラメントの凝固が、前記較正された吐出ノズルの出口に取り付けられた加熱要素(28)によって提供されることを特徴とする、請求項2に記載の製造方法。
【請求項5】
フィラメントの前記三次元足場構造が、重ね合わされた層(複数)から構成され、その重ね合わされた層(複数)の所与の層のフィラメント(複数)は、0°または90°で交互に配向され、フィラメントの重ね合わせにおいて同じ方向への重ね位置ズレがないことを特徴とする、請求項1~4いずれか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
フィラメントの前記三次元足場構造が、重ね合わされた層(複数)から構成され、その重ね合わされた層(複数)の所与の層(100、200)のフィラメント(複数)は、0°または90°で交互に配向され、フィラメントの重ね合わせにおいて同じ方向への重ね位置ズレを有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
フィラメントの前記三次元足場構造が、フィラメント(100、200、300、400、500、600)の重ね合わされた層(複数)から構成され、重ね合わされた層(複数)が、隣接する層i毎に、20°と40°との間の同一の角度偏差による重ね位置ズレしたフィラメントの配向方向Diを有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項8】
フィラメントの前記三次元足場構造が、フィラメント(複数)の重ね合わされた層(複数)から構成され、フィラメント(100,200)の重ね合わされた層(複数)が、フィラメント間に正方形断面を有する垂直穿孔(700)を形成するように、各層について、0°のフィラメント(複数)の配向および90°のフィラメント(複数)の配向の両方を有することを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーの部品、特に熱硬化性材料の部品、金属、金属合金またはセラミック部品の、付加製造による製造の一般的な分野に関し、より詳細には、航空機ターボジェットのようなアブレイダブルターボ機械壁コーティングの製造に関するが、これに限定されるものではない。
【背景技術】
【0002】
空港周辺の飛行機による騒音妨害の抑制は、公衆衛生上の課題となっている。航空機メーカーや空港の管理者には、さらに厳しい基準や規制が課せられている。その結果、静かな飛行機を製造することは、長年にわたり強力なセールスポイントとなってきた。現在、航空機エンジンによって発生する騒音は、ヘルムホルツ共振器の原理に基づいて、1または2オクターブにわたってエンジンの騒音強度を低減することを可能にする局所反応吸音コーティングによって減衰される。これらのコーティングは、剛性プレートを含む複合パネルの形態の外観を有する。この剛性プレートは、慣習的に、穿孔されたスキンで覆われたハニカムコアに結合しており、ナセル内または上流および下流の伝搬チャネル内に位置する。しかしながら、新しいエンジン世代(例えばターボファン)では、UHBR(超高バイパス比)技術のように、吸音コーティングに利用可能なゾーンは実質的に減少させられる。
【0003】
従って、航空機エンジンによって、特に離陸および着陸の段階において、およびエンジンの性能を依然として維持しながら、低周波数を含む現在よりも広い周波数範囲にわたって生成される騒音のレベルを排除するか、または大幅に低減することを可能にする、新しい方法および/または新しい材料(特に多孔質材料)を提案することが重要である。これが、今日、新しい吸音処理表面が求められている理由であり、これが、エンジンの他の機能性、例えば、燃費に伴う燃料消費率に及ぼす影響を最小限に抑えると共に、重要な商業的利点を構成しているからである。
【0004】
さらに、今日では、従来の鋳造法または機械加工法の代わりに、付加製造法に頼って、容易かつ迅速に、コストを下げて、複雑な3次元部品を大量生産することが慣例的かつ有利である。航空分野は、これらの方法の使用に特に適している。中でも特にワイヤビーム堆積法(wire beam deposition method)が挙げられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、飛行機のターボジェットによって発生する騒音を大幅に低減できる新材料の成形方法を提案することをその目的としている。材料のパラメーターをコントロールすることで、低域から高域まで広がる範囲で騒音を軽減することができる。この方法から生じる製品は、流体の流れに接触するターボジェットの壁に、より詳細には、ファンケーシングアブレイダブルカートリッジの代わりに取り付けられることが意図される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的のために、フィラメントの三次元足場構造を製造するように、フィラメントの所定の堆積経路に沿って、基体と前記フィラメントとの間の相対移動と前記フィラメントの凝固との両方を提供しながら、熱硬化性材料のフィラメントを前記基体の表面に堆積させることを含む、アブレイダブルコーティングの製造方法が提案される。このフィラメントの三次元足場構造は、重ね合わされた層から構成されている。三次元足場構造の所定の層のフィラメント(複数)は、音吸収特性を三次元足場構造に付与するように、隣接する層のフィラメントとは連続しておらず、且つ隣接する層のフィラメントとは異なる方向に配向されており、前記熱硬化性材料が、溶媒を含まず且つポリマーベースおよび架橋剤からなるチキソトロピー混合物であり、前記ポリマーベースと前記架橋剤との重量比が1:1~2:1であり、流動成分、典型的には、ペトローリアム・ジェリーの重量比は、前記チキソトロピー混合物の総重量の5~15重量%の間にあることを特徴とする。
【0007】
かくして、規則的で規則的に正しい気孔率を有する多孔質微細構造を得る。この多孔質微細構造は、多孔質微細構造を構成する材料によるその摩耗性質を保持しながら、チャネル内の粘性‐熱の消散による音波のかなりの吸収を保証する。
【0008】
好ましくは、前記チキソトロープ混合物は、円錐押出スクリュー中で前記成分を共押出成形することによって得られ、その出口断面が250ミクロン未満の主幅を有する、較正された形状および寸法を有する吐出ノズルによって前記基体表面に堆積される。
【0009】
有利には、前記基体と前記円筒形フィラメントとの間の相対移動は、少なくとも3つの軸を有する機械またはコンピュータから制御されるロボットによって提供され、前記円筒形フィラメントの凝固は、前記較正された吐出ノズルの出口に取り付けられた加熱要素によって提供される。
【0010】
考慮される実施形態に応じて、前記三次元足場構造は、以下のものを含む。すなわち、
・ 所与の層のフィラメントが0°または90°で交互に配向され、同じ方向のフィラメントの重ね合わせにおいてオフセットがない、重ね合わされた層;
・ 所与の層のフィラメントが0°または90°で交互に配向され、同じ方向のフィラメントの重ね合わせにおいて、オフセットを有する、重ね合わされた層;
・ 各層iにおいて20°~40°の間に含まれる角度偏差、典型的には30°の角度偏差と同等である角度偏差だけオフセットされたフィラメントの配向方向Diを有する、重ね合わされた層;あるいは、
・ 各層について、フィラメント間に正方形断面を有する垂直穿孔を形成するように、0°でのフィラメントの配向および90°でのフィラメントの配向の両方を有する、フィラメントの均等に重ね合わされた層。
【0011】
本発明はまた、該製造方法から得られる摩耗性ターボ機械壁コーティングに関する。
【0012】
本発明の他の特徴および利点は、如何なる場合にも限定しない以下の図面を参照しながら、以下の詳細な説明によって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明によるアブレイダブル材料のフィラメントの三次元足場構造のアセンブリを分解斜視図で示す図である。
図2図1の三次元足場構造の製造のためのフィラメント堆積システムを示す図である。
図3A】音響特性を有する三次元足場構造の1例を示す図である。
図3B】音響特性を有する三次元足場構造の1例を示す図である。
図3C】音響特性を有する三次元足場構造の1例を示す図である。
図3D】音響特性を有する三次元足場構造の1例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明による方法は、音響特性を有するチャネルの規則正しい配列をフィラメントの間に形成するフィラメントの三次元足場構造を作製する目的で、基体にアブレイダブル材料をプリントすることを可能にする。
【0015】
アブレイダブル材料とは、対向部品に接触した状態で動作中に材料が破壊(または侵食)する能力(低い剪断に対する抵抗)と、動作中に吸い込まれる粒子または異物の衝突後の耐摩耗性(摩耗性との妥協)とを意味する。また、このタイプの材料は、一様な良好な空力特性(粗さ基準:表面形態のRa)を保持しなければならず、酸化および腐食に対する十分な耐性と、それが堆積される層または基体と同じオーダーの熱膨張係数とを有していなければならない。
【0016】
図1は、有利には円筒状のアブレイダブル材料のフィラメント100、200、300の3次元足場構造10の一部を分解斜視図で示す。これらのアブレイダブル材料のフィラメントは、本発明によれば、このコーティングを受けるように意図された壁(基体)12に、音響特性を付与する性質の規則正しい配列の形態でコーティングの製造を可能にする。考慮される配列構成に応じて、チャネル間の相互接続は、これらの異なるチャネルを生成するように意図されたアブレイダブル材料の異なる層の重ね合わせ中に、規則的正しく存在することができる。この壁は、これに限定されることなく、航空機ターボジェットのようなターボ機械の壁であり、より詳細には、ファン翼の周縁部に配置され且つ摩耗性カートリッジを受け取ることを通常意図された3D織複合ケーシングであることが好ましい。
【0017】
このタイプの規則正しい配列のプリントは、図2を参照して以下に説明される方法による付加製造によって実行される。アブレイダブル材料の堆積を制御することを可能にして、従って最終的な寸法公差を保証する正確な装置を、このプリントは必要とする。この目的のために、Aerotech IncorporationからのABG10000タイプの少なくとも1つの3軸機械、または組み込まれたプログラムを介して、ユーザによって定義された堆積経路に従ってプリントの制御を可能にする正確な「デジタル軸」(5ミクロンのオーダーの位置決め)を有するロボットを、その正確な装置は有していなければならない。従って、この装置のおかげで、材料の流速、プリントの位置および移動速度などのプリントパラメータを制御することによって、所定の三次元空間におけるフィラメントの正確な堆積を保証することができる。
【0018】
図2に示すように、フィラメント堆積システム、少なくとも3軸を有する機械、またはロボット20は、好ましくはシステム内部の圧力および温度制御回路に接続されて、較正された形状および寸法を有する吐出ノズル22を介した押出しによってアブレイダブル材料を堆積させる。フィラメント堆積システムは、最初に基体12に、次いで、所望の厚さが得られるまで後に作られた異なる重ね合わせ層に連続的に堆積させる。フィラメント堆積システムは、それが接続されているコンピュータ(コンピュータまたはマイクロコントローラ24)によって制御される堆積経路をたどり、フィラメント堆積システムの制御を提供し、所望の摩耗性を保証するように必要なフィラメント配置および媒体の気孔率の両方を処理された表面のあらゆる点で監視する。
【0019】
アブレイダブル材料の供給は、いくつかの成分を混合してペーストの外観を有するチキソトロピー混合物を形成することを可能にする円錐押出スクリュー26から提供される。少なくとも2つの成分を同時に導入するための少なくとも2つの別個の入口26A、26Bを含む円錐押出スクリューは、最終的に、吐出ノズル22によって堆積される高粘度の流体材料を得るように、堆積操作全体を通して成分の適切かつ均質な混合を確実にすることを可能にする。このノズルの出口断面は、その主幅において250ミクロン未満である。この動作の間、プリント中にフィラメント内に多くの欠陥を形成する気泡の発生が避けられなければならない。従って、均一な断面と仕様に適合した位置とを有するフィラメントを得るように、吐出ノズル内の圧力とその移動速度を制御しながら材料を非常に漸進的に押し出すことが必要である。円錐押出スクリューに導入される成分の制御によって堆積される材料の構成を変更することが可能であることに留意されたい。
【0020】
堆積材料を安定化させて堆積中のクリープを避けるように、吐出ノズル22の出口にヒートランプ28または任意の類似の装置が取り付けられることができる。アブレイダブル材料の堆積は、特定の厚みまで実施される。材料の堆積を加速するように、フィラメント堆積システム20は、いくつか独立して調整可能なノズルを含むことができ、あるいは、米国特許出願公開第2017/203566号明細書に記載されているように較正された直径を有するマルチノズルを含むことができる。
【0021】
堆積物の厚み内でまたは堆積物の表面でアブレイダブル材料の堆積物を制御することにより、特にその堆積物に音響特性を与えることを目的として、そのアブレイダブル堆積物の機能化を可能にする。
【0022】
この目的のために、チャネルの規則正しい配列は、有利には、図3A、3B、3C、および3Dに示される構成のうちの1つを有する足場構造を有する。すなわち、
【0023】
図3Aにおいて、フィラメント100、200の三次元足場構造は、重ね合わされた層(複数)から構成される。その重ね合わされた層(複数)の所与の層のフィラメント(複数)は、0°または90°で交互に配向され、フィラメントの重ね合わせにおいて同じ方向にオフセットはない。
【0024】
図3Bでは、フィラメント100、200の三次元足場構造は、重ね合わされた層(複数)から構成される。その重ね合わされた層(複数)の所与の層のフィラメント(複数)は、0°または90°で交互に配向され、フィラメントの重ね合わせにおいて同じ方向にオフセットを有する。このオフセットは、好ましくは、図示されるように、2つのフィラメント間の距離の半分に等しい。
【0025】
これらの2つの構成に対して、2つのフィラメント方向の間の角度偏差は異なることができ、90°未満、例えば45°未満であることに留意されたい。
【0026】
図3Cにおいて、フィラメント100、200、300、400、500、600の三次元足場構造は、重ね合わされた層(複数)から構成される。重ね合わされた層(複数)は、各層i(30°の角度偏差に対して1と6の間で構成される)において、20°と40°の間の角度偏差、典型的には30°の角度偏差を含む、同じ角度偏差だけオフセットされたフィラメントの配向方向Diを有する。
【0027】
図3Dでは、フィラメント100、200の三次元足場構造は、フィラメント(複数)の重ね合わされた層(複数)から構成される。フィラメント(複数)の重ね合わされた層(複数)は、フィラメント間に正方形断面を有する垂直穿孔700を形成するように、各層について、0°のフィラメント(複数)の配向および90°のフィラメント(複数)の配向の両方を有する。これらの4つの構成の各々において、所望の気孔率(空隙率)は、典型的には60%を超える。
【0028】
これらの異なる構造を有するケーシングセクタへのプリントは、前述の付加製造方法による、このタイプのアブレイダブル材料を自動化して堆積を行う実現可能性を示している。圧縮および曲げにおける機械的挙動の試験も実施されており、ならびに低エネルギー衝撃試験または垂直入射での音響インピーダンスの特徴を明らかにするよう意図した試料も実施されている。
【0029】
特に、足場構造を通る音響エネルギーの伝達が観察されており、および空力音源の変化または伝播する音波の吸収によるこの音エネルギーの一部の吸収が観察されている。
【0030】
較正されたノズルによって押し出されるアブレイダブル材料は、有利には、溶媒を含まない高粘度の熱硬化性材料(流体とも呼ばれる)である。その溶媒の蒸発は、知られているように、強い収縮を生じる。この材料は、好ましくは、遅い重合速度および安定なフィラメント流動を有する樹脂であり、チキソトロピー混合物の形態で現れる。従って、チキソトロピー混合物は、基体にプリント(材料の押出し直後)と最終構造(一旦加熱および重合が完了する)との間の収縮がはるかに少ないという利点を有していた。
【0031】
該方法に関連して使用されるアブレイダブル材料の一例は、ペースト形態で現れる材料であって、3つの成分、すなわち、ポリマーベース、例えば、エポキシ樹脂(青色モデリングペーストの外観を有する)、架橋剤または促進剤(白色モデリングペーストのように見える)、および半透明のペトローリアム・ジェリー(例えば、ワセリン(登録商標))を含む材料である。促進剤/ベース成分は、1:1~2:1の間に含まれる、促進剤に対するベースの重量比に従って分配され、ペトローリアム・ジェリーは、材料の総重量の5~15重量%(典型的には10重量%)を有する。ベースはまた、プリントされた足場構造の機械的性能を増大させながら、所望の気孔率を確保するように、所定の直径を有する中空ガラス微小球を含むことができる。ペトローリアム・ジェリーを導入する有用性は、樹脂の粘度の減少、ならびにそのアブレイダブル材料の反応速度にある。これは、プリント期間中にその粘度をより安定にする。(粘度は、プリントの品質を維持するための適切な押出速度を確保するのに必要な押出圧力に直接関連する)。
【0032】
一例として、このタイプの2:1の比は、0.7gの促進剤および1.4gのベースを含むアブレイダブル材料を生み出し、このアブレイダブル材料に0.2gのペトローリアム・ジェリーを添加することが適切である。
【0033】
従って、本発明は、迅速(30mm/s)かつ安定したプリントを可能にし、かつ、制御された高性能吸音構造(粗さ、形態、開口率)の効果的な複製を可能とする。この制御された高性能吸音構造は、航空学において遭遇する強い応力を考慮して、特に有用な、小さなフィラメントサイズ(直径<250ミクロン)および低重量(改善された気孔率>60%)を有する。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D