(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】適合性のある辺縁を有する固定ドレッシング材
(51)【国際特許分類】
A61F 13/02 20060101AFI20230630BHJP
【FI】
A61F13/02 A
A61F13/02 310J
(21)【出願番号】P 2020540856
(86)(22)【出願日】2018-09-21
(86)【国際出願番号】 IB2018057338
(87)【国際公開番号】W WO2019073326
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-09-17
(32)【優先日】2017-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100110803
【氏名又は名称】赤澤 太朗
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ハイネック,スティーブン ビー.
(72)【発明者】
【氏名】ジェイコブソン,リチャード エル.
(72)【発明者】
【氏名】シャイベル,クリスタル ジョー
(72)【発明者】
【氏名】チャン,イン
(72)【発明者】
【氏名】ピーターソン, ドナルド ジー.
(72)【発明者】
【氏名】ハ,フォン ブイ.
【審査官】山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0220505(US,A1)
【文献】特表2000-517202(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用ドレッシング材であって、
第1主面と、前記第1主面の反対側の第2主面とを含むバッキング層であって、前記バッキング層がバッキング外辺部を含む、バッキング層と、
前記バッキング層の前記第2主面上の接着剤と、
前記接着剤に取り外し可能に取り付けられた剥離層と、
前記バッキング層に固定された支持材であって、前記支持材が、前記バッキング層よりも低弾性であり、前記支持材が、前記バッキング外辺部から内部方向に間隔があいている支持外辺部を備え、これにより、前記バッキング層が、前記支持外辺部と前記バッキング外辺部との間に辺縁を形成する、支持材と、
前記バッキング層の前記第1及び第2主面を通して形成されたチューブスロットであって、前記チューブスロットが、前記バッキング層の前記バッキング外辺部を分断する受容端から前記バッキング層内に位置する終端まで延び、前記チューブスロットが、前記チューブスロットの前記受容端から前記終端まで延びる一対の対向する縁部を備え、前記チューブスロットの前記一対の対向する縁部が前記支持材の前記支持外辺部を分断し、更に、前記一対の対向する縁部の各対向する縁部の少なくとも一部分が前記支持材のチューブスロット縁部と一致する、チューブスロットと、
を含む、医療用ドレッシング材。
【請求項2】
前記支持材が、前記チューブスロットの前記対向する縁部の全てと一致する、請求項
1に記載の医療用ドレッシング材
。
【請求項3】
前記チューブスロットが第1のチューブスロットを備え、更に、前記医療用ドレッシング材が第2のチューブスロットを備え、前記第2のチューブスロットが、前記バッキング層の前記第1及び第2主面を通して形成されており、前記第2のチューブスロットが、前記バッキング層の前記バッキング外辺部を分断する受容端から前記バッキング層内に配置された終端まで延び、前記第2のチューブスロットが、前記第2のチューブスロットの前記受容端から前記終端まで延びる一対の対向する縁部を備える、請求項1
又は2に記載の医療用ドレッシング材
。
【請求項4】
前記チューブスロットは、前記チューブスロット長さに対して横断して測定された最大チューブスロット幅が、前記チューブスロット長さの5
%以上である、請求項
3に記載の医療用ドレッシング材
。
【請求項5】
前記バッキング層が透明であ
り、
液体に対して概ね不透過性であり、37℃/100~10%RHにおいて少なくとも300g/m
2
/24時間の速度で水蒸気を透過できる、請求項1~
4のいずれか一項に記載の医療用ドレッシング材
。
【請求項6】
前記受容端と前記終端との間の距離が長さAであり、前記バッキング外辺部の第1部分は長さBを有し、前記長さBは前記長さAの2倍以下である、請求項5に記載の医療用ドレッシング材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、適合性のある辺縁及び1つ以上のチューブスロット(tubing slot)を有する固定ドレッシング材に関する。
【背景技術】
【0002】
透明なフィルムドレッシング材は、汚染液体及び細菌に対するバリアとしての機能を果たすと同時に、湿潤環境における治癒を促進するため、創傷を覆う保護層として広く使用されている。このフィルムは、そのバリア特性から外科用ドレープとしても使用される。上記に該当するドレッシング材及びドレープは、TEGADERM(商標)(3M Company(St.Paul,MN))、及びOP-SITE(商標)(Smith&Nephew(Hull,England))などの数々の商品名で市販されている。
【0003】
これらのドレッシング材及びドレープに使用されるポリマーフィルムは適合性(conformable)がある。すなわち、フィルムは、極めて薄く、柔軟でしなやかである。これらは、典型的には、フィルムの接着剤でコーティングされた表面を覆う剥離可能な保護ライナーと共に供給される。ライナーが取り外された時、接着剤でコーティングされたフィルムは、しわが寄ってフィルム自体に接着する傾向があり、患者の皮膚へのドレッシング材のスムーズな無菌適用を妨げる。様々な送達システムがこの問題に対処するために提案されており、例えば、米国特許第6,685,682号に開示されている。患者に貼り付けた後にフィルムを引き裂く必要のない取り外し可能なキャリアを使用することで、上記の問題を回避する。キャリアはまた、患者へのドレッシング材の正確な貼り付けを助ける。
【0004】
柔軟で弾力性のある薄いポリマーフィルムは、屈曲、伸張、及び収縮する皮膚上で使用される場合に有益である。しかしながら、一部の用途では、チューブ、ポート、及びカテーテルなどのデバイスを固定する場合のように、薄いポリマーフィルムの高い柔軟性及び弾力性により、固定された医療用デバイスの動きが大きくなりすぎる可能性がある。したがって、薄いポリマーフィルムに固定された領域に、より剛性が高く適合性が低い材料、例えば接着剤、フィルム、又は布地などを更に組み込んだ医療用ドレッシング材が開発されてきた。例えば、米国特許第5,088,483号は、適合性のあるバッキングと、接着剤複合体の周辺部を囲む永久接着補強材と、を含む接着剤複合体を開示している。補強材層を有する市販の医療用ドレッシング材の一例は、TEGADERM(商標)IV Advanced Dressing(3M Company,St.Paul Minn.)である。
【0005】
場合によっては、医療用ドレッシング材は患者に適用され、数日間定位置に留まる。ドレッシング材が長期間着用されると、ドレッシング材の縁部が患者から剥がれ始める可能性があり、その結果、その部位の汚染又は接着不良が完全に生じ得る。弾力性の低い材料を使用して、ドレッシング材の領域における剛性を高め、柔軟性を低下させることは、皮膚上のドレッシング材の接着不良に寄与し得る。皮膚は屈曲及び伸張するが、弾力性の低い材料は屈曲及び/又は伸張することができない場合、接着剤が皮膚から引き離される可能性がより高くなり得る。
【発明の概要】
【0006】
柔軟で適合性のある辺縁を有し、皮膚及びカテーテルなどのデバイスに取り付けられたときに、医療用ドレッシング材が長期間にわたって皮膚に強力に接着固定することを促進する医療用ドレッシング材が、本明細書に開示される。
【0007】
医療用ドレッシング材は、比較的高い弾性率の支持材とバッキング層とが対になった比較的低い弾性率のバッキング層と、例えば、カテーテルなどのチューブを患者の皮膚上で安定させるように構成されたチューブスロットと、を含む。1つ以上の実施形態では、バッキング層は、医療用ドレッシング材の外辺部の実質的に大部分にわたって支持材から外向きに延びて、患者の皮膚からの剥がれに耐える弾性を有する接着剤の辺縁を形成してもよい。
【0008】
第1の態様では、本明細書に記載される医療用ドレッシング材の1つ以上の実施形態は、第1主面と、第1主面の反対側の第2主面とを含むバッキング層であって、当該バッキング層がバッキング外辺部を含む、バッキング層と;バッキング層の第2主面上の接着剤と;バッキング層に固定された支持材であって、支持材が、バッキング層よりも低弾性である、支持材と;バッキング層の第1及び第2主面を通して形成されたチューブスロットであって、上記チューブスロットは、バッキング外辺部内に位置する受容端から終端までのチューブスロット長さに沿って延び、チューブスロットの受容端が、バッキング層のバッキング外辺部の第1部分を分断し、バッキング外辺部の第1部分が、チューブスロット長さの2倍以下、1.5倍以下又は1倍以下の長さを有する、チューブスロットと、を含み;上記支持材が、チューブスロットの受容端の一方の側面上にあるバッキング外辺部の第1部分の1区画と一致する第1の支持材縁部と、チューブスロットの受容端の対向する側面上にあるバッキング外辺部の第1部分の別の区画と一致する第2の支持材縁部と、を含み、これにより、第1及び第2の支持材縁部がチューブスロットの受容端の向かい合う側面上に配置され;バッキング外辺部が第1部分を除く第2部分を備え、支持材はバッキング外辺部の第2部分の内部方向に間隔があいており、これにより、バッキング層が、支持材とバッキング外辺部の第1部分の外側のバッキング外辺部の第2部分との間に辺縁を形成する。
【0009】
第2の態様では、本明細書に記載される医療用ドレッシング材の1つ以上の実施形態は、第1主面と、第1主面の反対側の第2主面とを含むバッキング層であって、当該バッキング層がバッキング外辺部を含む、バッキング層と;バッキング層の第2主面上の接着剤と;バッキング層に固定された支持材であって、支持材が、バッキング層よりも低弾性である、支持材と;バッキング外辺部における受容端と、当該受容端と対向する終端とを備えるチューブスロットであって、受容端と終端との間の距離が長さAである、チューブスロットと、を含み;支持材が、チューブスロットの向かい合う側面上にあるバッキング外辺部の第1部分まで延びることを除いて、バッキング外辺部から内部方向に間隔があいている支持外辺部を含み;バッキング外辺部の第1部分は長さBを備え、長さBは、長さAの2倍以下、1.5倍以下、又は1倍以下である。
【0010】
第3の態様では、本明細書に記載される医療用ドレッシング材の1つ以上の実施形態は、第1主面と、第1主面の反対側の第2主面とを含むバッキング層であって、当該バッキング層がバッキング外辺部を含む、バッキング層と;バッキング層の第2主面上の接着剤と;バッキング層に固定された支持材であって、支持材が、バッキング層よりも低弾性であり、支持材が、バッキング外辺部から内部方向に間隔があいている支持外辺部を備え、これにより、バッキング層が、支持外辺部とバッキング外辺部との間に辺縁を形成する、支持材と;バッキング層の第1及び第2主面を通して形成されたチューブスロットであって、チューブスロットが、バッキング層のバッキング外辺部を分断する受容端からバッキング層内に位置する終端まで延び、チューブスロットが、チューブスロットの受容端から終端まで延びる一対の対向する縁部を備え、チューブスロットの一対の対向する縁部が支持材の支持外辺を分断し、更に、一対の対向する縁部の各対向する縁部の少なくとも一部分が支持材のチューブスロット縁部と一致する、チューブスロットと、を含む。
【0011】
「好ましい」及び「好ましくは」という単語は、ある特定の状況においてある特定の利益を供し得る実施形態を指す。ただし、他の実施形態もまた、同じ又は他の状況において好ましい場合がある。更には、1つ以上の好ましい実施形態の記載は、他の実施形態が有用ではないことを示唆するものではなく、他の実施形態を排除することを意図するものではない。
【0012】
本明細書で用いる場合、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つの(at least one)」、及び「1つ以上の(one or more)」は、互換的に用いられる。用語「及び/又は」は(使用される場合)、識別された要素のうちの1つ若しくは全て、又は識別された要素のうちの任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0013】
用語「含む」及びその変化形は、これらの用語が本明細書及び特許請求の範囲において現れるところでは、限定的な意味を有するものではない。
【0014】
また、本明細書において、端点による数値範囲の記載は、その範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本明細書に記載される医療用ドレッシング材の例示的な一実施形態を示す。
【
図2】使用前のキャリアと剥離ライナーとの間に位置する
図1の医療用ドレッシング材を示す。
【
図4】本明細書に記載される医療用ドレッシング材の別の例示的実施形態を示す。
【
図5】本明細書に記載される医療用ドレッシング材のチューブスロットの別の例示的実施形態の拡大図を示す。
【
図6】本明細書に記載される医療用ドレッシング材のチューブスロットの別の例示的実施形態の拡大図を示す。
【
図7】支持材が、その中に形成された窓を含まない、本明細書に記載される医療用ドレッシング材の別の例示的実施形態を示す。
【
図8】単独で、又は本明細書に記載される1つ以上の医療用ドレッシング材と組み合わせて使用され得る、チューブスロットの複数のバリエーションを含む、本明細書に記載される医療用ドレッシング材の別の例示的実施形態を示す。
【
図9】
図8に示される異なる選択されたチューブスロットの拡大図である。
【
図10】
図8に示される異なる選択されたチューブスロットの拡大図である。
【
図11】
図8に示される異なる選択されたチューブスロットの拡大図である。
【0016】
上記の図面は本発明の実施形態を表しているが、詳解において述べるように、他の実施形態も想到される。全ての場合において、本開示は、限定ではなく代表例の提示によって、本発明を提示する。本発明の範囲及び趣旨に含まれる多数の他の改変形態及び実施形態が当業者によって考案され得ることは理解されよう。
【0017】
図面は、縮尺どおりに描かれていない場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0018】
いずれかの例示的実施形態の詳細な説明に先立ち、本発明はその適用において、以下の説明に記載された又は以下の図面に例示された構成の詳細及び構成要素の配置に限定されるものではないことを理解されたい。本発明は、他の実施形態も可能であり、様々な方法で実践又は実行することが可能である。
【0019】
図1は、本明細書に記載される医療用ドレッシング材100の例示的な一実施形態の1つの主面を示し、
図2~
図3は、医療用ドレッシング材に関連して概ね知られているように、キャリア110と剥離ライナー112との間に位置する医療用デバイス100を示す。1つ以上の実施形態において、医療用ドレッシング材100は、挿入された静脈内カテーテル又は他のデバイスの部位を覆うために使用されてもよい。
【0020】
1つ以上の実施形態において、医療用ドレッシング材100は、第1主面121と、第1主面121の反対側の第2主面122と、を有するバッキング層120を含むものとして説明できる。医療用ドレッシング材100はまた、バッキング層120の第2主面上に位置する接着剤124と、バッキング層120の第2主面122に固定された支持材130とを含む。1つ以上の実施形態では、支持材130は、バッキング層120の反対方向に面する支持材130の表面上に接着剤134を含んでもよく、これにより、バッキング層120及び支持材130の両方が患者の皮膚に接着され得る。
【0021】
支持材130は、図示の例示的実施形態では、バッキング層120の第2主面122に取り付けられたものとして示されているが、1つ以上の代替実施形態では、支持材は、バッキング層の第1主面に取り付けられてもよい。更に他の実施形態では、支持材は、バッキング層の第1主面及び第2主面の両方に取り付けられてもよい。
【0022】
1つ以上の実施形態では、接着剤124及び134は、医療用ドレッシング材を患者の皮膚に固定するのに有用な、皮膚に優しい接着剤であってもよい。1つ以上の実施形態では、医療用ドレッシング材100上の接着剤124と接着剤134とは同じ接着剤であってもよく、一方、1つ以上の代替実施形態では、接着剤124と134は異なっていてもよい。接着剤124及び134は固体連続層として図示されているが、本明細書に記載の医療用ドレッシング材に関連して使用される接着剤は、全般的に知られているように不連続(例えば、パターンコーティング)でもよいことは理解される(任意の不連続コーティングは、バッキング層及び支持材上の接着剤と同じであるか又は異なっている)。本明細書に記載される医療用ドレッシング材の1つ以上の実施形態において使用され得る接着剤に関する更なる詳細について、以下で論じる。
【0023】
1つ以上の実施形態において、バッキング層120は比較的高い弾性率を有するものとして説明でき、その結果バッキング層120は弾性を呈する。潜在的に好適なバッキング層材料は、本明細書で以下に記載される。バッキング層120とは対照的に、支持材130は比較的低い弾性率を有するものとして説明でき、その結果支持材130はバッキング層120よりも低い弾性を示す。潜在的に好適な支持層材料は、本明細書で以下に記載される。
【0024】
1つ以上の実施形態において、本明細書に記載される医療用ドレッシング材に使用されるバッキング層は、両方とも弾性であってもよく、液体及び少なくとも一部の気体の通過に対して十分に不透過性のバリアを提供し、覆われた部位を外部汚染物質から保護し得る。弾性であることにより、バッキング層は、例えば皮膚などの下部基材が動いたときに、膨張、収縮、伸張、及び回復することが可能になる。
【0025】
弾性は、材料の伸張及び回復を評価するための任意の数の全般的に使用される技術によって測定できる。一実施形態では、バッキング層は(支持材とは独立して)、少なくとも200%の破断伸びを有する。一実施形態では、バッキング層は(支持材とは独立して)、800%未満の破断伸びを有する。一実施形態では、支持材は(バッキング層とは独立して)、少なくとも20%の破断伸びを有する。一実施形態では、支持材は(バッキング層とは独立して)、少なくとも100%の破断伸びを有する。一実施形態では、支持材は(バッキング層とは独立して)、200%未満の破断伸びを有する。他の実施形態では、支持材は(バッキング層とは独立して)、100%以下、50%以下、20%以下、又は更には10%以下の破断伸びを有する。
【0026】
弾性は、初期弾性率によって測定することができ、これは、指定された伸張量を適用するために必要とされる力である。一実施形態では、バッキング層は、10%伸び時に2ニュートン未満の弾性率を有する。一実施形態では、バッキング層は、10%伸び時に1.5ニュートン未満の弾性率を有する。一実施形態では、支持材が本明細書に記載のようにバッキング層に取り付けられたとき、10%伸び時弾性率は、1ニュートンを超え6ニュートン未満である。一実施形態では、支持材がバッキング層に取り付けられたとき、10%伸び時弾性率は、2ニュートンを超え5ニュートン未満である。
【0027】
支持材は、接着剤、熱結合、積層、又は他の全般的に使用される固定技術のうちの1つ以上を使用して、バッキング層に取り付けられてもよい。支持材は、本明細書に記載の医療用ドレッシング材に構造的強度をもたらし、したがって、独立して、バッキング層よりも弾性が低い。一実施形態では、支持材は、独立して、本質的に弾性を有さず、したがって、伸張することができない場合及び/又は伸張から回復することができない場合がある。一実施形態では、支持材は、横断方向(cross direction)(例えば、横断方向(transverse direction))よりも一方向(例えば、機械方向)における弾性が高くてもよいが、全体的にバッキング層よりも低い弾性を有する。
【0028】
本明細書に記載の医療用ドレッシング材のバッキング層を支持材を越えて延ばすことにより、本明細書に記載の医療用ドレッシング材上の辺縁が、医療用ドレッシング材の支持材が位置する部分よりも高い弾性を有することが可能になる。結果として、本明細書に記載の医療用ドレッシング材の外辺部のかなりの部分は患者の皮膚への適合性の改善を示し、一方で、医療用ドレッシング材の選択された領域内でバッキング層に取り付けられた支持材によって医療用ドレッシングがその上に配置されている、例えばカテーテル又は他のデバイスに対して、十分な制御及び/又は支持を提供する能力をなおも保持し得る。
【0029】
バッキング層120は、バッキング層120の外側境界を形成するバッキング外辺部123を有するものとして説明することができる。支持材130は、バッキング外辺部123から内部方向に間隔があいている支持外辺部133を有するものとして説明することができ、これにより、バッキング層120は、支持外辺部133とバッキング外辺部123との間に辺縁101(例えば、
図1を参照)を形成する。
【0030】
医療用ドレッシング材100の図示された例示的実施形態では、支持材130は、バッキング層120の第2主面122が露出される窓を画定する内辺部131を含む。
【0031】
例示的な医療用ドレッシング材100などの本明細書に記載の医療用ドレッシング材の1つ以上の実施形態では、チューブスロット140が、バッキング層120の第1主面121及び第2主面122を貫通して形成されてもよい。チューブスロット140は、カテーテル又は他のデバイスのチューブを受容して、例えば、カテーテルを適所に固定するのを補助するように構成されてもよく、一方、1つ以上の実施形態では、医療用ドレッシング材100の他の部分が静脈内挿入部位の保護を提供する。
【0032】
チューブスロット140は、1つ以上の実施形態において、受容端142からバッキング層120のバッキング外辺部123内に位置する終端144まで延びるものとして説明できる。チューブスロット140は、1つ以上の実施形態において、バッキング外辺部123をその受容端142で分断するものとして説明でき、その結果バッキング外辺部123は医療用ドレッシング材100の外辺に関して連続しない。
【0033】
1つ以上の実施形態では、チューブスロット140は、チューブスロット140の受容端142からチューブスロット140の終端144まで延びる一対の対向する縁部146及び148を有するものとして説明され得る。図示された医療用ドレッシング材100の例示的実施形態では、一対の対向する縁部146及び148は、支持外辺133を分断し、図示された実施形態では、支持材130の内辺部131、及び更には、各々対向する縁部146及び148の少なくとも一部分は、支持材130のチューブスロット縁部136及び138と一致する。結果として、支持材130は、対向する縁部146及び148の複数の部分に沿って延び、キャリア110及び剥離ライナー112から医療用ドレッシング材を取り外した後に対向する縁部146及び148を支持する。
【0034】
本明細書に記載の医療用ドレッシング材の別の例示的実施形態が、医療用ドレッシング材200の形態で
図4に示されている。図示されるように、医療用ドレッシング材200は、医療用ドレッシング材100に関して上述したものと同様に、バッキング外辺部223を有するバッキング層220と、支持外辺部233及び内辺部231を有する支持材230と、を含む。
【0035】
更に、医療用ドレッシング材200の例示的実施形態はまた、受容端242、終端244を、一対の対向する縁部246及び248と共に有するチューブスロット240を含む。医療用ドレッシング材100と異なり、医療用ドレッシング材200の支持材230は、チューブスロット240の向かい合う側面上で、バッキング層220のバッキング外辺部223まで外向きに伸び、患者に医療用ドレッシング材200を送達及び貼り付ける間にバッキング層220への支持を提供する。
【0036】
1つ以上の実施形態では、チューブスロット240の受容端242は、バッキング層220のバッキング外辺部223の第1部分224を分断するものとして説明され得る。支持材230は、バッキング外辺部223に向かって外向きに、第1の支持材縁部237まで延び、当該縁部はチューブスロット240の受容端242の1つの側面上にあるバッキング外辺部223の第1部分224の1区画と一致する。支持材230はまた、バッキング外辺部223に向かって外向きに、第2の支持材縁部239まで延び、当該縁部はチューブスロット240の受容端242の対向する側面上にあるバッキング外辺部223の第1部分224の1区画と一致する。その結果、支持材230の第1及び第2の支持材縁部237及び239は、チューブスロット240の受容端242の向かい合う側面上に位置する。
【0037】
医療用ドレッシング材200の例示的実施形態では、バッキング外辺部223は、第1部分224を除く第2部分を有するものとして説明され得る。更に、支持材230は、バッキング外辺部223の第2部分の内部方向に間隔をあけて配置されており、これにより、バッキング層220は、支持材230の支持外辺部233と、バッキング外辺部223の第1部分224の外側のバッキング外辺部223の第2部分との間に辺縁を形成する。
【0038】
支持材が外向きに延びて、例えば、医療用ドレッシング材200に見られるように、バッキング層のバッキング外辺部と一致する、本明細書に記載の医療用ドレッシング材の1つ以上の実施形態では、バッキング外辺部の第1部分(すなわち、支持材がバッキング層と一致するバッキング外辺部の部分)は限定された長さを有してもよく、これにより、バッキング層が医療用ドレッシング材の外辺部の大部分を囲む辺縁を形成する。1つ以上の実施形態では、バッキング外辺部の第1部分は、チューブスロット長さの2倍以下、1.5倍以下又は1倍以下の長さを有するものとして説明することができ、チューブスロット長さとして、チューブスロットの受容端からその終端までが測定される。
【0039】
例えば、医療用ドレッシング材200などの本明細書に記載される医療用ドレッシング材の1つ以上の実施形態では、チューブスロット240の受容端242は、バッキング外辺部223の第1部分224の中間点の近傍に配置されていてもよい。
【0040】
例えば、医療用ドレッシング材200などの本明細書に記載される医療用ドレッシング材の1つ以上の実施形態では、バッキング外辺部223の第1部分224及びバッキング外辺部223の第2部分(ここで、バッキング外辺部223の第2部分は、バッキング外辺部223のうち第1部分224の中にない部分である)は、チューブスロット240の受容端242の外側のバッキング外辺部223全体を占める。
【0041】
医療用ドレッシング材200の実施形態では、支持材は、チューブスロット240の対向する縁部246及び248まで延びない。医療用ドレッシング材300のチューブスロットの別の代替構造が
図5に示されており、ここで、チューブスロット340は、受容端342からチューブスロット340の終端まで延びる一対の対向する縁部346及び348を含む。
【0042】
医療用ドレッシング材300は、バッキング層320及び支持材330を含み、支持材330は、チューブスロット340の一対の対向する縁部346及び348の少なくとも一部分と一致する一対の対向する支持材スロット縁部336及び338を含む。
【0043】
更に、支持材330はまた、チューブスロット340の向かい合う側面上にあるバッキング層320のバッキング外辺部323まで外向きに延び、これにより、支持材330は、医療用ドレッシング材300のバッキング層320のバッキング外辺部323の第1部分324の部分と一致する支持材縁部337及び339を含む。
【0044】
結果として、医療用ドレッシング材300の図示された例示的実施形態における支持材330は、バッキング外辺部323の第1部分324並びにチューブスロット対向する縁部346及び348に沿って支持を提供する。
【0045】
医療用ドレッシング材300は、支持材330の内辺部331を含み、これにより、チューブスロット340の終端344は支持材330によって支持されず、代わりにバッキング層320内にのみ形成される。
【0046】
しかしながら、
図6に示される医療用ドレッシング材400の代替的な一実施形態では、支持材430は、チューブスロット440の内部方向に延び、チューブスロット440が支持材430によって囲まれる。この例示的実施形態では、チューブスロット440の受容端442から終端444まで延びる対向する縁部446及び448は、それらの全長に沿って支持材430の縁部と一致するものとして説明できる。
【0047】
医療用ドレッシング材500の更に別の例示的実施形態が
図7に示されており、これはバッキング層520と、支持外辺部533を有する支持材530と、チューブスロット540とを含む。しかしながら、医療用ドレッシング材100、200、300、及び400とは異なり、医療用ドレッシング材500の支持材530は、医療用ドレッシング材100、200、300、及び400の実施形態の各々に記載された窓を形成する内辺部を含まない。
【0048】
本明細書に記載の医療用ドレッシング材の更に別の例示的実施形態が
図8に示されており、図には医療用ドレッシング材600が示され、本明細書に記載の他の医療用ドレッシング材に関連して論じられたようにバッキング層620及び支持材630を含む。本明細書に記載の医療用ドレッシング材に必須ではないが、医療用ドレッシング材600は、本明細書に記載の開放窓を画定する内辺部631を有する支持材630を含む。
【0049】
医療用ドレッシング材600は、様々な異なるチューブスロットを含み、本明細書に記載の医療用ドレッシング材が、単一の医療用ドレッシング材内に2つ以上のチューブスロットを含んでもよいことを例証し、更に、本明細書に記載の医療用ドレッシング材に提供され得るチューブスロットの形状及び/又は構成における更なる多様性を例証する。
【0050】
チューブスロット640a及び640bは、
図1~
図7の医療用ドレッシング材に関連して示されているチューブスロットと比較して、より短いチューブスロット長さを有するチューブスロットの2つの異なる例示的実施形態である。更に、チューブスロット640aと640bの違いとして、支持材630及びバッキング層620によって異なるチューブスロット640a及び640bに提供される支持に差異を見ることができる。チューブスロット640aは、支持材630内にある。チューブスロット640bは、バッキング層620内にある。
【0051】
本明細書で使用するとき、「チューブスロット」は、互いに分離された対向する縁部を含んでもよく、その結果チューブスロットが測定可能な幅(例えば、1ミリメートル、2ミリメートル、5ミリメートルなど)を有するか、あるいは、チューブスロットは、バッキング層(及び任意で支持材)を貫通して形成されたスリット、切れ目、ミシン目などとして提供されてもよい。更に、本明細書に記載の医療用ドレッシング材に関連して提供されるチューブスロットは、直線状、湾曲状、又は1つ以上の直線区画と1つ以上の湾曲区画との組み合わせであってもよい。加えて、チューブスロットの受容端は、チューブスロットの当該端部が医療用ドレッシング材の外辺に近接しているか又は外辺上にあり、典型的には、チューブスロットのうち、ドレッシング材が患者に位置決め及び固定される際にチューブ(例えば、カテーテルの)を受容する部分である。
【0052】
本明細書に記載される医療用ドレッシング材に提供されるチューブスロットの更なるバリエーションは、チューブスロット640c、640d、及び640eに関連して見られる。チューブスロット640c、640d、及び640eの1つの特徴は、チューブスロットの長さと比較したときの幅にある。具体的には、チューブスロット640c、640d、及び640eは、バッキング層620内及び少なくとも部分的に支持材630内に形成されたスリットの形態である。チューブスロット640c、640d、及び640eの各々は、
図9~
図11の拡大図に別個に示されている。
【0053】
本明細書に記載の医療用ドレッシング材のチューブスロットが、各々から間隔があいている対向する縁部を有する(例えば、
図1~
図7のように)実施形態では、チューブスロットは、1つ以上の実施形態において、チューブスロット長さを横断して測定された最大チューブスロット幅が、チューブスロット長さの5%、10%、15%、又は20%以上となり得る。
【0054】
図9では、チューブスロット640cは、受容端642と終端644とを含むことがわかる。本明細書に記載の医療用ドレッシング材に使用されるチューブスロットのこの図示された実施形態では、終端644は、1つ以上の実施形態において、より大きな直径を有するチューブを収容するのに有用となり得るT字形又は十字形のスリットの形態で示されている。チューブスロット640cに関連して示される別の任意の特徴は、チューブスロット640cの一部分645が、チューブスロット640cの受容端642から終端644に向かって延びる一連の穿孔(ミシン目)647を含むことである。
図9に示されるものなどの実施形態では、バッキング外辺部623と支持材外辺部633との間に位置する辺縁内でミシン目を使用することは、本明細書に記載の医療用ドレッシング材の送達及び貼り付け中に、辺縁内のバッキング層620に追加の支持をもたらし得る。
【0055】
ミシン目を含む本明細書に記載される医療用ドレッシング材内のチューブスロットの1つ以上の実施形態では、ミシン目は、例えば、0.2mm~5.0mm、0.5mm~3.0mm、又は1.0mm~2.0mmの穿孔長さ、及び0.1mm 1.0mm、0.2mm~0.8mm、0.3mm~0.6mm接続セグメント(例えば、ランド)長さを有してもよい。他の実施形態では、ミシン目は、1:1~10:1、2:1~8:1、又は3:1~6:1の穿孔:ランド比を有する。
【0056】
図10を参照すると、チューブスロット640dの実施形態はまた、バッキング層620のバッキング外辺部623における受容端642、並びに受容端642の内側に位置する終端644も含む。チューブスロット640dは、バッキング層620並びに支持材630を貫通して形成された連続スリットから全体が形成され、当該支持材は、図示された実施形態では、本明細書に記載される医療用ドレッシング材の他の実施形態に関連して説明されているように、バッキング層620のバッキング外辺部623まで外向きに延びる。チューブスロット640dに関連して示される別のバリエーションは、概ねY字形の終端644であり、これは、1つ以上の実施形態において、カテーテル又は他の類似物品のチューブの周囲に医療用ドレッシング材を適合させるのを補助することもできる。
【0057】
図11を参照すると、チューブスロット640eの実施形態が拡大図で示されており、ここでチューブスロット640eは受容端642と終端644とを含む。チューブスロット640dの場合のように、チューブスロット640は、バッキング層620と支持材630との両方に形成され、当該支持材はバッキング外辺部623まで外向きに延び、これにより、チューブスロット640eの全長が支持材によって支持される。
【0058】
チューブスロット640eのバリエーションは、チューブスロット640eの受容端642をバッキング層620のバッキング外辺部623並びに支持材630内に形成されたノッチ643の中に位置決めすることを含む。チューブスロット640eの別のバリエーションは、その弯曲形状であり、これは1つ以上の実施形態において、使用時にカテーテル又は類似物品のチューブの周囲に医療用ドレッシング材を適合させるのを補助し得る。更に別のバリエーションは、チューブスロット640eがバッキング層620及び支持材630に形成されたミシン目で構成されることである。
【0059】
本明細書に記載される医療用ドレッシング材は、当業者によく知られている従来技術(例えば、押出成形、溶媒キャスティング、カレンダー加工、積層、接着剤コーティングなど)によって製造されてもよい。その開示が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,685,682号は、本明細書に記載されるようなバッキング層及び支持材を有する医療用ドレッシング材を作製するためのいくつかの潜在的に有用な構造及び方法を開示している。
【0060】
バッキング層
本明細書に記載される医療用ドレッシング材の1つ以上の実施形態のバッキング層は、液体及び少なくとも一部の気体の通過に対して不透過性のバリアを提供し得る。代表的なバッキング層としては、不織布及び織布繊維ウェブ、編み布地、フィルム、発泡体、ポリマーフィルム並びに他のよく知られているバッキング材料が挙げられる。いくつかの実施形態では、下にある皮膚又は医療用デバイスが見える透明なバッキング層が望ましい。
【0061】
一実施形態では、バッキング層は高い水蒸気透過性を有するが、概ね液状水不透過性であり、微生物及び他の汚染物質はバッキング層の下の領域に入らない。好適な材料の一例は、その開示が参照により本明細書に援用される米国特許第3,645,835号及び同第4,595,001号に記載のものなどの高水蒸気透過性フィルムである。高水蒸気透過性フィルム/接着剤複合材において、複合材料は、ヒトの皮膚と同等以上の速度、例えば、米国特許第4,595,001号に記載の逆カップ法(inverted cup method)を使用して37℃/100~10%RHにおいて少なくとも300g/m2/24時間、又は37℃/100~10%RHにおいて少なくとも700g/m2/24時間、又は37℃/100~10%RHにおいて少なくとも2000g/m2/24時間の速度で水蒸気を透過する。穿孔された基材若しくはフィルム又はパターンコーティングされた接着剤を使用して、水蒸気透過率を増加させることができる。一実施形態では、バッキング層は、エラストマーポリウレタン、ポリエステル、又はポリエーテルブロックアミドフィルムであり得る。これらのフィルムは、弾力性、弾性、高い水蒸気透過性、及び透明性という望ましい特性を併せ持つ。バッキング層のこの特徴の説明は、その開示が参照により本明細書に援用される、発行済みの米国特許第5,088,483号及び同第5,160,315号において見出すことができる。
【0062】
潜在的に好適なバッキング層の市販品の例としては、商品名TEGADERM(3M Company)、OPSITE(Smith&Nephew)などで販売されている薄いポリマーフィルムバッキングを挙げることができる。外科切開用ドレープの製造に全般的に使用されるもの(例えば、3M Companyにより商品名STERIDRAPE及びIOBANで製造されている切開用ドレープ)などの、多くの他のバッキング層も使用されてもよい。
【0063】
流体は、医療用ドレッシング材により画定されている密閉環境から自発的に出ていく可能性があるため、水蒸気透過性が比較的高いバッキング層は必要とされないこともある。結果として、いくつかの他の有用な可能性のあるバッキング材料としては、例えば、メタロセンポリオレフィンが挙げられ、SBS及びSISブロックコポリマー材料を使用できる。
【0064】
しかしながら、いずれにせよ、例えば適合性を改善するために、バッキング層を比較的薄くしておくことが望ましい場合がある。例えば、バッキング層は、200マイクロメートル以下、又は100マイクロメートル以下、潜在的には50マイクロメートル以下、又は更には25マイクロメートル以下の厚さを有するポリマーフィルムで形成されていてもよい。
【0065】
支持材
本明細書に記載される医療用ドレッシング材の1つ以上の実施形態で使用される支持材は、バッキング層に強度をもたらし得る。したがって、支持材は、バッキング層よりも剛性が高く、弾性が低い。支持材は、接着剤などのコーティングであってもよく、又は別のフィルム、織布、編物、若しくは不織布などの自己支持型基材であってもよい。例えば、米国特許第5,088,483号は、支持材として使用され得る補強材として永久接着剤を開示している。
【0066】
支持材用の不織布の一例は、E.I.Dupont de Nemours&Company(Wilmington,Del.)からSontaraの商標で入手可能な、Sontara 8010水流交絡ポリエステル布地などの高強度不織布である。他の好適な不織布ウェブとしては、International Paper(Walpole,Mass.)の一部門であるVeratecから入手可能な水流交絡ポリエステル布地が挙げられる。別の好適な不織布ウェブは、米国特許第5,230,701号に記載の不織布エラストマーウェブである。
【0067】
接着剤
本明細書に記載の医療用ドレッシング材の1つ以上の実施形態への使用に好適な接着剤としては、皮膚に対して許容される接着を提供し、皮膚上での使用が許容される任意の接着剤が挙げられる(例えば、接着剤は、好ましくは非刺激性及び非感作性であるべきである)。好適な接着剤は感圧性であり、ある特定の実施形態では、水分蒸発を可能にする比較的高い水蒸気透過率を有する。好適な感圧接着剤としては、アクリレート系、ウレタン系、ヒドロゲル系、親水コロイド系、ブロックコポリマー系、シリコーン系のもの、ゴム系接着剤(天然ゴム、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ブチルゴムなどを含む)、並びにこれらの接着剤の組み合わせが挙げられる。接着剤成分は、粘着付与剤、可塑剤、レオロジー調整剤、並びに例えば抗菌剤を含む活性成分を含有していてもよい。
【0068】
医療用ドレッシング材に使用され得る感圧接着剤は、全般的に皮膚に適用される接着剤、例えば、米国再発行特許24,906号に記載されているアクリレートコポリマー、特に97:3イソオクチルアクリレート:アクリルアミドコポリマーを含んでもよい。別の例としては、米国特許第4,737,410号(実施例31)に記載されている70:15:15イソオクチルアクリレート:エチレンオキシドアクリレート:アクリル酸ターポリマーが挙げられる。その他の潜在的に有用な接着剤は、米国特許第3,389,827号、同第4,112,213号、同第4,310,509号、及び同第4,323,557号に記載されている。米国特許第4,310,509号及び同第4,323,557号に記載のように、薬剤又は抗菌剤が接着剤に含まれることも想到される。
【0069】
シリコーン接着剤もまた使用することができる。概ね、シリコーン接着剤は、皮膚への好適な接着性と同時に、皮膚からの穏やかな除去を提供できる。好適なシリコーン接着剤は、国際出願PCT/第2010/056541号及び同第2010/056543号に開示されている。
【0070】
感圧接着剤は、一部の実施形態において、ヒトの皮膚と同等以上の速度で水蒸気を透過させ得る。このような特徴は適切な接着剤の選択により達成できるが、高い相対水蒸気透過速度を達成する他の方法、例えば米国特許第4,595,001号に記載のように、バッキング上への接着剤のパターンコーティングを使用し得ることも想到される。他の潜在的に好適な感圧接着剤としては、例えば、米国特許第6,994,904号に記載されているものなどのブローンマイクロファイバー(BMF)接着剤を挙げることができる。創傷ドレッシング材に使用される感圧接着剤はまた、接着剤自体が、例えば、米国特許第6,893,655号に記載されている高精細構造(microreplicated structure)などの構造を含む1つ以上の領域を含んでもよい。
【0071】
米国特許第3,645,835号及び同4,595,001号は、そのようなフィルムの作製方法及びそれらの透過性を試験する方法を記載している。好ましくは、フィルム/接着剤複合体は、ヒトの皮膚と同等以上の速度で水蒸気を透過するべきである。好ましくは、接着剤でコーティングされたフィルムは、米国特許第4,595,001号に記載の逆カップ法を使用して、少なくとも300g/m2/24時間/37℃/100~10%RH、より好ましくは少なくとも700g/m2/24時間/37℃/100~10%RH、最も好ましくは少なくとも2000g/m2/24時間/37℃/100~10%RHの速度で水蒸気を透過する。
【0072】
米国特許出願公開第2015/0141949号、発明の名称「Medical Dressing with Multiple Adhesives」に開示されているように、本明細書に記載される医療用ドレッシング材の異なる部分は、異なる接着剤を含んでもよい。例えば、1つの部分はアクリレート接着剤を含んでもよく、別の部分はシリコーン接着剤を含んでもよい。一実施形態では、縁部の分離を防止するために、外辺部に隣接するのはアクリレート接着剤であり、中央部分の近くにはシリコーン接着剤が存在する。一実施形態では、中央部分付近のデバイス又はチューブに強固に固定するためにアクリレート接着剤が存在するが、皮膚と接触する外辺部付近はシリコーン接着剤である。
【0073】
任意成分
吸着材はまた、本明細書に記載の医療用ドレッシング材と共に使用されてもよい。吸着材は、創傷パッキング材料(下記)と同じであってもよく、又は別個の要素であってもよい。吸着材は、織布又は不織布の綿又はレーヨンが挙げられるがこれらに限定されない様々な材料のいずれかで製造することができる。吸収パッドは、抗菌剤、経皮薬剤送達用薬剤、患者の体内のホルモン又は他の物質をモニタリングする化学指標などを任意に含むいくつかの物質を含有するのに有用である。
【0074】
吸収剤は、その開示が参照により本明細書に援用される米国特許第5,622,711号及び同第5,633,010号に記載の親水コロイド組成物などの親水コロイド組成物を含んでいてもよい。親水コロイド吸収剤は、例えば、天然親水コロイド、例えばペクチン、ゼラチン、又はカルボキシメチルセルロース(CMC)(Aqualon Corp.(Wilmington,Del.))、半合成親水コロイド、例えば架橋カルボキシメチルセルロース(X4ink CMC)(例えば、Ac-Di-Sol;FMC Corp.(Philadelphia,Pa.))、合成親水コロイド、例えば架橋ポリアクリル酸(PAA)(例えば、CARBOPOL(商標)No.974P;B.F.Goodrich(Brecksville,Ohio))、又はそれらの組み合わせを含んでいてもよい。吸着材はまた、ポリマーゲル及び発泡体を含む他の合成及び天然親水性材料から選択されてもよい。
【0075】
更に、接着剤の汚染を防止するために接着剤の全部又は一部を覆う、任意の剥離ライナーを含んでもよい。一実施形態では、接着ドレッシング材が入っているパッケージが、剥離ライナーとして機能し得る。好適な剥離ライナーは、クラフト紙、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル又はこれらの材料のうちのいずれかの複合材からできたものであり得る。一実施形態では、ライナーは、フルオロ化合物又はシリコーンなどの剥離剤で被覆われている。例えば、その開示が参照により本明細書に援用される米国特許第4,472,480号は、低表面エネルギーペルフルオロ化合物ライナーを記載している。一実施形態では、ライナーは、シリコーン剥離材で覆われた紙、ポリオレフィンフィルム、又はポリエステルフィルムである。
【0076】
ドレッシング材が薄く柔軟性が高い場合には、基材の第1主面の全部又は一部を覆って構造的支持を提供するための、任意のキャリアを含んでいてもよい。キャリアはおそらく、接着ドレッシング材が皮膚上に貼り付けた後に、第1主面から取り外し可能である。キャリアは、織布若しくは編布である布地、不織布材料、紙、又はフィルムなどの様々な材料で製造できる。一実施形態では、キャリアは、ドレッシング材の第1主面の外辺部に沿っていて、第1主面から取り外し可能であり、3M Company(St.Paul,MN)から入手可能な3M Tegaderm(商標)Transparent Film Dressingに使用されているキャリアと類似している。
【0077】
接着ドレッシング材とは別個のものであるか、又はドレッシング材と一体であってもよい、任意の抗菌成分が含まれてもよい。抗菌成分は、医療用デバイスの挿入部位の近く又は挿入部位に隣接して貼り付けて、挿入部位の中及び周囲の微生物の増殖を阻害する。抗菌成分は、3M Companyから入手可能な3M Tegaderm(商標)CHG I.V.Securement Dressingに使用されているような吸収性発泡体又はゲルであることができる。
【0078】
例示的実施形態
本明細書に記載される医療用ドレッシング材の以下の非限定的な例示的実施形態を提供することができる。
【0079】
実施形態1.医療用ドレッシング材であって、
第1主面と、第1主面の反対側の第2主面とを含むバッキング層であって、バッキング層がバッキング外辺部を含む、バッキング層と、
バッキング層の第2主面上の接着剤と、
バッキング層に固定された支持材であって、支持材が、バッキング層よりも低弾性である、支持材と、
バッキング層の第1及び第2主面を通して形成されたチューブスロットであって、チューブスロットは、バッキング外辺部内に位置する受容端から終端までのチューブスロット長さに沿って延び、チューブスロットの受容端が、バッキング層のバッキング外辺部の第1部分を分断し、バッキング外辺部の第1部分が、チューブスロット長さの2倍以下、1.5倍以下又は1倍以下の長さを有する、チューブスロットと、
を含み、
上記支持材が、チューブスロットの受容端の一方の側面上にあるバッキング外辺部の第1部分の1区画と一致する第1の支持材縁部と、チューブスロットの受容端の対向する側面上にあるバッキング外辺部の第1部分の別の区画と一致する第2の支持材縁部と、を含み、これにより、第1及び第2の支持材縁部がチューブスロットの受容端の向かい合う側面上に配置され、
上記バッキング外辺部が第1部分を除く第2部分を備え、上記支持材はバッキング外辺部の第2部分の内部方向に間隔があいており、これにより、バッキング層が、支持材とバッキング外辺部の第1部分の外側のバッキング外辺部の第2部分との間に辺縁を形成する、
医療用ドレッシング材。
【0080】
実施形態2.医療用ドレッシング材であって、
第1主面と、第1主面の反対側の第2主面とを含むバッキング層であって、バッキング層がバッキング外辺部を含む、バッキング層と、
バッキング層の第2主面上の接着剤と、
バッキング層に固定された支持材であって、支持材が、バッキング層よりも低弾性である、支持材と、
バッキング外辺部における受容端と、当該受容端と対向する終端とを備えるチューブスロットであって、受容端と終端との間の距離が長さAである、チューブスロットと、
を含み、
上記支持材が、チューブスロットの向かい合う側面上にあるバッキング外辺部の第1部分まで延びることを除いて、バッキング外辺部から内部方向に間隔があいている支持外辺部を含み、
バッキング外辺部の第1部分が長さBを備え、
長さBは、長さAの2倍以下、1.5倍以下又は1倍以下である、
医療用ドレッシング材。
【0081】
実施形態3.チューブスロットの受容端が、バッキング外辺部の第1部分の中間点の近傍に配置されている、実施形態1又は2に記載の医療用ドレッシング材。
【0082】
実施形態4.バッキング外辺部の第1部分及び第2部分が、チューブスロットの受容端の外側のバッキング外辺部全体を占める、実施形態1に記載の医療用ドレッシング材。
【0083】
実施形態5.チューブスロットが、チューブスロットの受容端から終端まで延びる一対の対向する縁部を備え、支持材が、チューブスロットの一対の対向する縁部の少なくとも一部分と一致する一対の対向する支持材スロット縁部を備える、実施形態1~4のいずれか1つに記載の医療用ドレッシング材。
【0084】
実施形態6.チューブスロットが、チューブスロットの受容端から終端まで延びる一対の対向する縁部を備え、支持材が、一対の対向する縁部の全部と一致する一対の対向する支持材スロット縁部を備える、実施形態1~4のいずれか1つに記載の医療用ドレッシング材。
【0085】
実施形態7.医療用ドレッシング材であって、
第1主面と、第1主面の反対側の第2主面とを含むバッキング層であって、バッキング層がバッキング外辺部を含む、バッキング層と、
バッキング層の第2主面上の接着剤と、
バッキング層に固定された支持材であって、支持材が、バッキング層よりも低弾性であり、支持材が、バッキング外辺部から内部方向に間隔があいている支持外辺部を備え、これにより、バッキング層が、支持外辺部とバッキング外辺部との間に辺縁を形成する、支持材と、
バッキング層の第1及び第2主面を貫通して形成されたチューブスロットであって、チューブスロットが、バッキング層のバッキング外辺部を分断する受容端からバッキング層内に位置する終端まで延び、チューブスロットが、チューブスロットの受容端から終端まで延びる一対の対向する縁部を備え、チューブスロットの一対の対向する縁部が支持材の支持外辺を分断し、更に、一対の対向する縁部の各対向する縁部の少なくとも一部分が支持材のチューブスロット縁部と一致する、チューブスロットと、
を含む、医療用ドレッシング材。
【0086】
実施形態8.支持材が、チューブスロットの対向する縁部の全てと一致する、実施形態7に記載の医療用ドレッシング材。
【0087】
実施形態9.支持材が、チューブスロットを完全に取り囲む、実施形態8に記載の医療用ドレッシング材。
【0088】
実施形態10.支持材が、バッキング層の第1主面又は第2主面に取り付けられている、実施形態1~9のいずれか1つに記載の医療用ドレッシング材。
【0089】
実施形態11.チューブスロットが第1のチューブスロットを備え、更に、医療用ドレッシング材が第2のチューブスロットを備え、第2のチューブスロットが、バッキング層の第1及び第2主面を通して形成されており、第2のチューブスロットが、バッキング層のバッキング外辺部を分断する受容端からバッキング層内に配置された終端まで延び、第2のチューブスロットが、第2のチューブスロットの受容端から終端まで延びる一対の対向する縁部を含む、実施形態1~10のいずれか1つに記載の医療用ドレッシング材。
【0090】
実施形態12.チューブスロットが、バッキング層を通して形成されたスリットを備える、実施形態1~11のいずれか1つに記載の医療用ドレッシング材。
【0091】
実施形態13.チューブスロットが、バッキング層を通して形成された複数の穿孔を備える、実施形態1~11のいずれか1つに記載の医療用ドレッシング材。
【0092】
実施形態14.チューブスロットが、チューブスロット長さに対して横断して測定された最大チューブスロット幅が、チューブスロット長さの5%、10%、15%、又は20%以上である、実施形態1~11のいずれか1つに記載の医療用ドレッシング材。
【0093】
実施形態15.支持材が、支持材内に窓を画定する内辺部を備え、バッキング層が窓の上に延びる、実施形態1~14のいずれか1つに記載の医療用ドレッシング材。
【0094】
実施形態16.接着剤が、バッキング層の第2主面の一部分のみを覆う、実施形態1~15のいずれか1つに記載の医療用ドレッシング材。
【0095】
実施形態17.医療用ドレッシング材が、バッキング層の反対方向に面する支持材の表面上に支持材接着剤を更に含む、実施形態1~16のいずれか1つに記載の医療用ドレッシング材。
【0096】
実施形態18.支持材が、バッキング層の第2主面に取り付けられ、支持材接着剤が、バッキング層の第2主面上の接着剤と同じである、実施形態17に記載の医療用ドレッシング材。
【0097】
実施形態19.バッキング層が(独立して)少なくとも200%の破断伸びを有し、支持層が(独立して)200%未満の破断伸びを有する、実施形態1~18のいずれか1つに記載の医療用ドレッシング材。
【0098】
実施形態20.バッキング層が透明である、実施形態1~19のいずれか1つに記載の医療用ドレッシング材。
【0099】
実施形態21.バッキング層が、液体に対して概ね不透過性であり、37℃/100~10%RHにおいて少なくとも300g/m2/24時間の速度で水蒸気を透過できる、実施形態1~20のいずれか1つに記載の医療用ドレッシング材。
【0100】
本明細書で言及した全ての特許、特許出願、及び公報、並びに電子的に入手可能な資料の全開示内容が、参照により組み込まれる。本出願の開示内容と参照により本明細書に組み込まれたいずれかの文書の開示内容との間に何らかの矛盾が存在する場合には、本出願の開示内容が優先するものとする。
【0101】
全ての見出しは読者の便宜のためのものであり、明記しない限り、見出しに続く文言の意味を限定するために用いられるものではない。
【0102】
本発明の具体的な実施形態を本明細書中に示し及び説明してきたが、これら実施形態は多くの考えられる具体的な構成を単に例示しているにすぎず、構成は本発明の原理を適用して考案され得ることは理解されよう。当業者であれば、これらの原理に従い、本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく、多数かつ多様な他の構成を考案することができる。したがって本発明の範囲は、本願で述べた構造に限定されるべきものではなく、特許請求の文言により述べられる構造及びそうした構造の等価物によってのみ限定されるものである。