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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】中空のトリプルパスの光学素子
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20230630BHJP
   G02C 7/02 20060101ALN20230630BHJP
【FI】
G02B5/30
G02C7/02
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020541475
(86)(22)【出願日】2019-01-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-13
(86)【国際出願番号】 US2019015616
(87)【国際公開番号】W WO2019148176
(87)【国際公開日】2019-08-01
【審査請求日】2021-12-08
(31)【優先権主張番号】62/623,493
(32)【優先日】2018-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515046968
【氏名又は名称】メタ プラットフォームズ テクノロジーズ, リミテッド ライアビリティ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】META PLATFORMS TECHNOLOGIES, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110002974
【氏名又は名称】弁理士法人World IP
(72)【発明者】
【氏名】シャープ、ゲイリー ディー
(72)【発明者】
【氏名】マクゲッティガン、アンソニー ディー
【審査官】堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-500584(JP,A)
【文献】特表2010-526321(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0358136(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0273970(US,A1)
【文献】特表2015-516592(JP,A)
【文献】特開2012-098718(JP,A)
【文献】特表2010-506236(JP,A)
【文献】特開平08-327940(JP,A)
【文献】特開2000-275566(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0159150(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02C 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学システムであって、
光が前記光学システムに入る際に通る第1の光学素子と、
前記第1の光学素子に対して保持される第2の光学素子と
を備え、
前記第1の光学素子および前記第2の光学素子の各々は、非平面状であり、かつ凸状であり、
前記第1の光学素子と前記第2の光学素子は、それらの周縁に沿って結合され、前記第1の光学素子と前記第2の光学素子との間に中空のキャビティが形成されており
前記第1の光学素子および前記第2の光学素子により作製される前記光学システムは、両凸状であり、
前記第1の光学素子および前記第2の光学素子の各々は、光が、前記第2の光学素子を介して前記光学システムを出る前に、前記中空のキャビティを少なくとも3回通過するように、光を反射する、光学システム。
【請求項2】
前記第1の光学素子は、1/4波長リターダおよび部分反射器を含み、
前記第2の光学素子は、1/4波長リターダおよび反射偏光子を含む、請求項1記載の光学システム。
【請求項3】
前記第1の光学素子は、偏光子をも含む、請求項2記載の光学システム。
【請求項4】
第1の光学素子および前記第2の光学素子の少なくとも1つに取り付けられる支持基板をさらに含む、請求項1記載の光学システム。
【請求項5】
前記支持基板は、等方性基板である、請求項記載の光学システム。
【請求項6】
前記支持基板は、樹脂である、請求項記載の光学システム。
【請求項7】
前記中空のキャビティは、等方性光学流体で少なくとも部分的に充填される、請求項1記載の光学システム。
【請求項8】
前記第2の光学素子に隣接する出口偏光子をさらに含む、請求項1記載の光学システム。
【請求項9】
前記第2の光学素子は、平面状の1/4波長リターダおよび非平面状の反射偏光子を含む、請求項記載の光学システム。
【請求項10】
光学システムであって、
光が前記光学システムに入る際に通る第1の光学素子であって、前記第1の光学素子が、1/4波長リターダおよび部分反射器を含む、第1の光学素子と、
前記第1の光学素子に対して固定された位置で保持される第2の光学素子であって、前記第1の光学素子と前記第2の光学素子との間に中空のキャビティが形成され、前記第2の光学素子が、1/4波長リターダおよび反射偏光子を含む、第2の光学素子と
を備え、
前記第1の光学素子および前記第2の光学素子の各々は、非平面状であり、かつ凸状であり、
前記第1の光学素子と前記第2の光学素子は、それらの周縁に沿って結合され、
前記第1の光学素子および前記第2の光学素子により作製される前記光学システムは、両凸状であり、
前記第1の光学素子および前記第2の光学素子の各々は、光が、前記第2の光学素子を介して前記光学システムを出る前に、前記中空のキャビティを少なくとも3回通過するように、光を反射する、光学システム。
【請求項11】
前記第1の光学素子は、偏光子をも含む、請求項10記載の光学システム。
【請求項12】
光学システムであって、
光が前記光学システムに入る際に通る第1の光学素子であって、前記第1の光学素子が、1/4波長リターダおよび部分反射器を含む、第1の光学素子と、
光が前記光学システムを出る際に通る第2の光学素子であって、前記第2の光学素子が、前記第1の光学素子に対して固定された位置で保持され、前記第1の光学素子と前記第2の光学素子との間に中空のキャビティが形成され、前記第2の光学素子が、1/4波長リターダおよび反射偏光子を含む、第2の光学素子と
を備え、
前記第1の光学素子および前記第2の光学素子の各々は、非平面状であり、かつ凸状であり、
前記第1の光学素子と前記第2の光学素子は、それらの周縁に沿って結合され、
前記第1の光学素子および前記第2の光学素子により作製される前記光学システムは、両凸状であり、
前記第1の光学素子および前記第2の光学素子の各々が、少なくとも1回、前記中空のキャビティに戻すように、光を反射する、光学システム。
【請求項13】
前記第1の光学素子は、偏光子をも含む、請求項12記載の光学システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願への相互参照]
本出願は、2018年1月29日に出願された米国仮特許出願第62/623,493号の優先権を主張し、その内容はその全体が引用により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
かなりの屈折力を有する眼鏡レンズは、典型的に、長期間にわたって装着するには重く、不快である。高屈折率ポリマーは、これを軽減し得るが、高出力が必要な場合の問題を完全には解決しない。さらに、コンパクトな配置で高い光出力が要求され、重量が問題となる、複数の用途が存在する。これは、任意のウェアラブルを含み得るが、搭載量の質量が特に重要な、ドローンなどの用途も含まれ得る。
【0003】
先行技術は、トリプルパスのコンパクトな拡大鏡を形成するために、偏光を利用する構成、すなわち広角コリメータ(WAC)を開示している。トリプルパスは、入力部分反射器と出力反射偏光子との間に形成されるキャビティにおいて発生する。キャビティの第1のパスでは、出力反射偏光子は反射鏡として機能する。出力反射偏光子によって返された光は、その後、入力部分反射器からの反射後に直交偏光状態(SOP)に変換される。たとえば、キャビティ内の1/4波長(QW)リターダのダブルパスは、線形SOPを直交SOPに変換する。その後、変換された光は、出力反射偏光子によって透過される。線形の固有偏光を有する出力反射偏光子を使用する構成では、入力円偏光子をキャビティの外側に使用することができる。光出力は、入力部分反射器からの反射、出力反射偏光子からの反射、またはその両方を介して得られ得る。
【0004】
この背景技術に対して、本明細書に記載される技術が開発された。
【発明の概要】
【0005】
本明細書において、光が光学システムに入る第1の光学素子と、第1の光学素子に対して保持される第2の光学素子とを備える光学システムが開示される。第1の光学素子および第2の光学素子のうちの少なくとも1つは、非平面状である。第1の光学素子と第2の光学素子との間に中空のキャビティが形成される。第1の光学素子および第2の光学素子の各々は、光が、第2の光学素子を介して光学システムを出る前に、中空のキャビティを少なくとも3回通過するように、光を反射する。
【0006】
第1の光学素子は、1/4波長リターダおよび部分反射器を含み得る。第2の光学素子は、1/4波長リターダおよび反射偏光子を含み得る。第1の光学素子は、偏光子をも含み得る。第1の光学素子および第2の光学素子の少なくとも1つは、凸状であり得る。第1の光学素子および第2の光学素子の少なくとも1つは、凹状であり得る。
【0007】
光学システムは、複数の光学素子の少なくとも1つに取り付けられる支持基板をさらに含み得る。支持基板は、等方性基板であり得る。支持基板は、樹脂であり得る。中空のキャビティは、等方性光学流体で少なくとも部分的に充填され得る。光学システムは、第2の光学素子に隣接する出口偏光子をさらに含み得る。第2の光学素子は、平面状の1/4波長リターダおよび非平面状の反射偏光子を含み得る。第1の光学素子および第2の光学素子は、それらの周縁に沿って結合され得る。
【0008】
また、本明細書において、光が光学システムに入る第1の光学素子であって、第1の光学素子が、1/4波長リターダおよび部分反射器を含む、第1の光学素子と、第1の光学素子に対して固定された位置で保持される第2の光学素子であって、第1の光学素子と第2の光学素子との間に中空のキャビティが形成され、第2の光学素子が、1/4波長リターダおよび反射偏光子を含む、第2の光学素子とを備える光学システムが開示される。第1の光学素子および第2の光学素子のうちの少なくとも1つは、非平面状である。第1の光学素子および第2の光学素子の各々は、光が、第2の光学素子を介して光学システムを出る前に、中空のキャビティを少なくとも3回通過するように、光を反射する。
【0009】
第1の光学素子は、偏光子をも含み得る。
【0010】
さらに、本明細書において、光が光学システムに入る第1の光学素子であって、第1の光学素子が、1/4波長リターダおよび部分反射器を含む、第1の光学素子と、光が光学システムを出る第2の光学素子であって、第2の光学素子が、第1の光学素子に対して固定された位置で保持され、第1の光学素子と第2の光学素子との間に中空のキャビティが形成され、第2の光学素子が、1/4波長リターダおよび反射偏光子を含む、第2の光学素子とを備える光学システムが開示される。第1の光学素子および第2の光学素子のうちの少なくとも1つは、非平面状である。第1の光学素子および第2の光学素子の各々が、少なくとも1回、中空のキャビティに戻すように、光を反射する。
【0011】
第1の光学素子は、偏光子をも含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】先行技術の広角コリメータを示す。
図2】本明細書に記載されるトリプルパスの光学システムを示す。
図3】トリプルパスの光学システムが製造され得る一連の製造ステップを示す。
図4a】トリプルパスの光学システムの2つの層について、可能性がある異なる曲面を示す。
図4b】トリプルパスの光学システムの2つの層について、可能性がある異なる曲面を示す。
図4c】トリプルパスの光学システムの2つの層について、可能性がある異なる曲面を示す。
図4d】トリプルパスの光学システムの2つの層について、可能性がある異なる曲面を示す。
図5】層1および層2が周縁で密閉された両凸HTPレンズを示し、ここで平面状QW2が層間に配置される。
図6】空気、光学流体、またはグリースのうちの1つが充填された両凸HTPレンズを示す。
図7】本発明の中空のトリプルパスのレンズを組み込んだ一対のアイウェアを示す。
図8】光を集束するための、またはアレイ状の光源をコリメートするための中空のトリプルパスのアレイ状のレンズを示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書に開示される実施形態は、様々な修正および代替形態が可能であるが、その特定の実施形態が、例として図面に示され、本明細書で詳細に説明されている。しかし、開示される特定の形態に本発明を限定することを意図するものではなく、むしろ本発明は、特許請求の範囲によって定義される本発明の実施形態のすべての修正、同等物、および代替物を網羅することを理解されたい。本開示は、図面を参照して説明され、同様の参照符号は、実質的に同様の要素を示している。
【0014】
図1は、円偏光出力を有するディスプレイ、1つの表面に部分反射コーティングを有する、一対の接合された単レンズ(singlets)、QWリターダ、および平面状の反射(たとえば、3M DBEF)偏光子からなる、先行技術のWACを示している。この場合、光出力は、部分反射器の凹面で生じる反射から全て得られる。単レンズは、ガラス素子である。典型的なディスプレイは、固有の円偏光出力を有さない。LCDは、通常、直線偏光出力を有し、円偏光状態に変換するために、QWリターダが追加され得る。有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイは、出力面に入射する(周囲光などの)光を遮るために、円偏光子(ディスプレイに面するQW)を有することが多い。この場合、QWが、円SOPに変換するために、出力側に再度必要となる。より一般的な入力に対しては、WACを自然光の拡大鏡として使用するなどして、入力が、不偏光にされ得る。本発明は、任意の入力偏光、すなわち偏光度を想定している。これは、ユニットの機能がWACの第1の層および第2の層に組み込まれることを意味している。
【0015】
ガラス素子は、好適には、正確な偏光管理および光学品質の必要性のために、WAC設計とすることができる。しかし、これは、顔に着用するには重く、たとえば、不快である構造を形成することがある。ポリマーは、より軽量であるが、ポリマーの複屈折は、偏光管理に支障をきたすことがあり、迷光やゴースト像を導入することがある。概して、固体光学素子は、従来の表面へのフィルムの積層を容易にし、機能層を支持し、堅牢な性能を保証する。しかし、これらの要素は、キャリア基板として機能することを除いて、目的を果たさず、重量と複屈折を増加させる。
【0016】
本明細書では、特定の実施形態において、独立型ユニットとして機能する中空のトリプルパス(HTP)のシステムが教示され、偏光の入力度合いを問わず、望ましい光学機能を果たす。HTPは、エアスペース型光学キャビティを形成するように結合される、2つの機能層(第1および第2の光学素子)を含む。層1は、部分反射層を含み、層2は、反射偏光子を含む。層1および層2は、所定の光出力がトリプルパスで達成されるように、異なる曲率半径が有し得る。理解され得るように、入射光は、最初に層1を通過し、キャビティを通過して層2に入射する。これは、キャビティを通過する光の第1のパスである。光は、層2の反射偏光子から反射されて戻り、キャビティを通過して層1に入射する。これは、キャビティを通過する光の第2のパスである。光は、層1の部分反射層(部分反射器)から反射されて戻り、キャビティを通過して層2に入射する。これは、キャビティを通過する光の第3のパスである。この時点で、光は、層2を通過し、HTPシステムを出射する。
【0017】
図2は、層1および層2の両方が複合曲面(compound curvature)を有する一実施形態の例を示している。層1は、平板状積層体として作製することができ、入力直線偏光子、吸収軸に対して45°に方向付けされるQWリターダ(QW1)、部分反射器、および場合によっては機械的支持のための追加の基板を含む。層2はまた、平板状積層体として作製することができ、-45°に方向付けされるQWリターダ(QW2)、反射軸が入力偏光子の吸収軸と交差するように方向付けされる反射偏光子(たとえば、旭化成のワイヤグリッド偏光子(WGP))、および場合によっては機械的支持のための追加の基板を含む。光が、光学システムを通過し、QW1を通過する前に、入力偏光子によって偏光され、その後に、部分反射器を通ってキャビティに入ることを理解することができる。これは、QW1を通過する光の唯一のパスである。円偏光光は、キャビティを通過し、QW2に入射して直線偏光光に変換され、ワイヤグリッド偏光子によって反射されて戻り、QW2を通って、再び円偏光光に変換される。これは、QW2を通過する光の第2のパスである。円偏光光は、キャビティを通過し、部分反射器に入射して反射されて戻り、キャビティを3回目として通過する。円偏光光は、QW2に入射して適切な方向の直線偏光に変換されて、ワイヤグリッド偏光子を通過して光学システムから出射する。これは、QW3を通る第3のパスを表している。また、光が部分反射器によって1回、および反射(ワイヤグリッド)偏光子によって1回、反射されることを見ることができる。
【0018】
円形部分は、各ラミネートのマザーシートからダイカットされ、望ましい曲率半径に熱成形され得る。熱成形された層1が必要とされる場合、部分反射器は、成形プロセスを受けたときに、望ましい光学性能の大部分を維持する必要がある。たとえば、物理気相成長(PVD)された部分反射器が使用される場合、それは(たとえば)熱成形されたときにひび割れ(亀裂または粉砕)を生じ得ない。これが実用的でない場合は、部分反射器を平板状積層体から省くことができ、形成後に、部分反射器のコーティングが、内面に適用される。
【0019】
機械的支持を提供するために、追加の基板が必要とされる場合、それらは、各層の平板状積層体に統合され得るか、または形成後に適用され得る。いずれの場合も、支持基板は、偏光管理構造の外側に配置されることが好ましく、それによって、複屈折の問題が軽減される。たとえば、機械的支持基板は、層1の直線偏光子の前(外側)に配置することができ、それによって、部分反射器が光学キャビティの内面を形成する。同様に、機械的支持基板は、層2の反射偏光子の後(外側)に配置することができ、それによって、QW2が光学キャビティの内面を形成する。入力偏光子と反射偏光子との間に機械的支持基板が必要とされる場合、それらは、実質的に等方性であるべきである。たとえば、トリアセチルセルロース(TAC)は、熱成形時に比較的わずかな面内複屈折を示すが、成形されたままの状態では(as-cast)、負のCプレートリタデーションを示す。Cプレートは、機械的支持基板に垂直な光軸を有する一軸リターダである。しかし、実質的にゼロの面内および厚さ方向のリタデーションを有する、Z-TAC(Fujiによる)などの等方性基板がある。代替例は、隣接する偏光子の軸に沿って数千ナノメートルのリタデーションを生成するために延伸されている高分子量の(たとえば)ポリカーボネート樹脂である。延伸によって、明確に規定される光軸が提供されるので、形成プロセスはそれを回転させることがほとんどなく、機能的に等方性である。機械的支持基板は、射出成形を使用して適用される場合、低い複屈折を有する傾向にある材料であり得る。たとえば、好適には、本質的に等方性であり得るか、または複屈折を緩和するようにアニール処理され得る樹脂であり得る。また、室温近傍で架橋可能なポリウレタンなどの材料は、最小限のリタデーションを示し得る。この場合も、機械的支持基板は、偏光管理が重要であるパスの外側に配置されることが好ましい。フレネル反射の影響をさらに軽減するために、反射防止コーティングは、通常の方法で、すべての露出面に適用され得る。これらのコーティングは、熱成形の前でも後でも適用され得る。
【0020】
代替として、第1の1/4波長(QW1)および第2の1/4波長(QW2)のリターダが、対向する機械的支持基板上(光学キャビティの反対面上)に配置される必要はない。たとえば、QW1およびQW2はどちらも、部分反射器の反対側で、部分反射器を含む機械的支持基板に積層され得る。
【0021】
例示的な偏光管理設計では、純粋な円偏光は、QW1によって出力され、純粋な直線偏光は、順方向パスでQW2によって出力される。これは、単層または多層の無彩色リターダの積層体を使用して、使用するスペクトル範囲(たとえば、400-700nm)に亘って、直線から円に、および円から直線に変換され得る。これらの偏光変換は、(たとえば)引用により組み込まれる、「Retarder Stack Pairs for Polarization Basis Vector Transformations」と題された、同時係属中の米国仮特許出願第62/637,832号に記載される、無彩色偏光系のベクトル変換によって達成することができる。例示的な偏光変換の組み合わせは、さらに、入射角の全範囲に亘って、これを達成することができる。
【0022】
機械的支持基板はまた、層を接合する前でも後でも、形成後に適用され得る。それらは、形成後に、単一ステップで適用することができ、周縁接合の役割を果たすこともできる。つまり、外部の(射出成形された)材料は、層1および層2を封止し得る。この種の機械的支持の例は、図3に示されるように、インサート成形を使用する。熱成形された層が、曲面が合致する成型キャビティに配置され、(たとえば)真空チャックを使用して固定され得る。第2の型表面は、成型キャビティを形成する。この表面は、射出成形後に、所定の屈折力を導入してもよく、または屈折力を導入しなくてもよい。機械的支持基板を作製するために、成形部分と金型表面との間に樹脂が注入される。樹脂は、好適には、等方性であるが、偏光管理構造の外側に堆積されるため、複屈折の仕様は、典型的に、はるかにより緩和されている。樹脂は、樹脂のガラス転移温度を超えて導入されてもよく、または比較的低い温度で架橋するモノマーであってもよい。樹脂は、形成された層の表面に結合する。硬化後に、その部分は、金型キャビティから取り出され、内面の幾何学的形状が実質的に保持される。射出成形された樹脂は、第1および第2の熱成形部分の締結を容易にするために使用される周縁特徴部をさらに含み得る。締結は、(たとえば)機械的、接着剤系、化学溶接、熱溶接、またはRF溶接であり得る。第1および第2の部分を締結することで、湿気、残留物、微粒子、および取り扱いによる損傷から光学部品を保護する密閉ユニットを形成することができる。さらに、機械的負荷の下で光学特性を維持する、機械的に堅牢なパッケージを作製することができる。
【0023】
インサート成形の利点は、それが望ましい反射層の局所表面法線(または後に反射コーティングを受ける表面)に固定することができることである。たとえば、薄い層1または層2は、最初の熱成形後に望ましい形状を維持することができないことがある。それは、発生し得る残留応力で、型表面から「跳ね上がる(springs)」と、緩和して、型と完全には一致しない形状となることが推測され得る。反射面の歪みは、光学性能を損なわせることがある。これは、影響を予測して補正するように、型形状を修正することによって軽減することができるが、十分な制御を提供することができないことがある。成形部分が荷重の下であって金型に適合している状態で射出成形することにより、追加の基板材料の支持で、開放後の最終層の曲面の忠実度は、より良好にすることができる。第1および第2の層の締結をさらに、各反射層の局所表面法線を画定および維持するために、使用され得る。
【0024】
薄い複合湾曲した層1および層2は、不十分な機械的支持を有することがあるので、機械的負荷が、反射された波面歪みに著しく影響し、したがってHTPシステムの性能に著しく影響する。この問題は、層1および層2の周縁を機械的に拘束することで、本発明によって、大幅に克服することができる。光学素子が円形であり、その一方または両方が複合曲面を有する場合を考える。曲率半径は、本発明によれば、光学素子の接合が常にエアスペース型キャビティを形成するような曲率半径である。周縁の拘束は、2つの光学素子を接合することによって、直接達成され得るか、または周縁を拘束するリング形状のフレーム(など)に各光学素子を配置することによって、間接的に達成され得る。層1と層2の直接接合は、接着により、または溶接などを使用して化学的/機械的に達成され得る。いずれにしても、各素子の周縁を制約する作用は、はるかに堅牢な光学性能を保証する。
【0025】
いくつかの好ましい実施形態では、望ましい光出力は、層1および層2の両方を熱成形することによって達成される。これは、周縁を拘束するとともに、機械的負荷の下で、より堅牢な光学性能を有するパッケージを提供する。層へと形成された小さな基礎曲面(たとえば、1-2ジオプトリー)でも、平面状の層と比較して、機械的負荷の下で全体的な性能を維持する点において、著しい利点を提供することができる。平面状の層は、同等の機械的支持を達成するには、かなりの厚さを必要とし得る。
【0026】
図3は、凸状外面(すなわち、凹状反射素子)を有する、本発明の実施形態を作製するための一連の製造ステップを示している。プロセスステップAでは、層1のフィルムを結合することで、平板状積層体を形成する。層を積層するための接着剤は、好ましくは、接着剤厚(bondline)の厚さ、接着強さ、デュロメータ、およびガラス転移温度などの形成プロセスに適合する。層2を形成するための同様のプロセスは、示されていない。プロセスステップBでは、平板状積層体は、マザーシートから所定の部分の幾何学的形状に切断され、所定の複合曲面に熱成形される。その後、薄く成形されたユニットは、型に挿入され、そこで元の熱成形金型と曲面が一致した真空チャックが、当該部分を共形に保持する。当該部分と所定の幾何学的形状の金型表面との間に樹脂が注入される。プロセスステップCでは、薄い部分を支持する外側の基板を作製する。ステップDは、型から取り出されたインサート成形部品を単に示している。プロセスステップEは、層1の凹面に適用されたPVD部分反射コーティングを示している(層1が、プロセスステップFの前に反転されることに留意されたい)。層2の凹面(QW)表面に適用される可能性がある、ARコーティングは示されていない。プロセスステップFは、両凹面の内部反射器を有する両凸HTPシステムを作製するための2つの層の周縁接合を示している。組み立てられたHTPシステムの両方の外面となる可能性がある、ARコーティングは示されていない。
【0027】
所定のトリプルパスの光出力を達成するための様々な構成は、層1および層2の曲面の選択によって、作製され得る。複合曲面は、球面状、非球面状、ドーナツ状などであり得る。HTPシステムは、たとえば、図4に示されるように、平面状、凹面状、および凸面状の層の様々な組み合わせを使用して作製することができる。凸面状(凹面状)の層1の表面は、第2のパスでの凹面状(凸面状)の反射鏡からの反射を示している。凸面状(凹面状)の層2の表面は、第1のパスでの凹面状(凸面状)の反射鏡からの反射を示している。図4aは、層1が凸面状であり、層2が平面状である場合を示している。前述のように、複合曲面ユニットに必要な厚さと比較して、機械的安定性のために、層2の基板の厚さを増大させる必要があり得る。代替的に、層1が平面状で、層2が凸面状であり得る。図4bは、各層が任意の曲面を有する両凸HTPレンズの場合である。図4cは、層1が凸面であり、層2が凹面である場合を示している。図4dは、層1が凹面状であり、層2が凸面状である場合を示している。本発明は、内部空域を有するトリプルパスの光学システムとなる曲面のすべての組み合わせを含む。
【0028】
本発明では、形成された部分の組み立て中に、追加の(たとえば、平面状の)光学素子が層1と層2との間に挿入され得ることを考えている。たとえば、等方性基板上の(たとえば、両面ARコーティングを有する)平面状QW2は、周縁接合時に層1と層2との間に配置されてもよい。そのようにする場合には、QW2を熱成形する必要性はなくなり、偏光管理の質を向上させることができる。図5に示される構成は、機能層L1およびL2を封止する外部等方性基板(S1およびS2)を有している。層1は、直線偏光子、1/4波長リターダ、および部分反射器のうちの1つまたは複数を(この順序で)含み得る。層2は、反射偏光子および直線偏光子のうちの1つがまたは複数を(この順序で)含み得る。性能を向上させるために、示されている表面に反射防止コーティングが適用され得る。示されている構成は、2つの中空のキャビティを有し、1つは、L1とQW2との間にあり、もう1つは、QW2とL2との間にある。
【0029】
本発明では、図6に図示されるように、追加の屈折力を提供するために、層1と層2との間に形成されるエアスペース型キャビティが、等方性流体または光学グリースで充填され得ることを考えている。この材料は架橋されないため、通常の複屈折の問題を解消することができる。たとえば温度変化により圧力が変化する状態を管理するために、周縁でのリザーバがさらに必要とされ得る。図6に示される構成は、機能層L1およびL2を封止する外部等方性基板(S1およびS2)を有する。層1は、直線偏光子(POL1)、1/4波長リターダ(QW1)、および部分反射器(PR)のうちの1つまたは複数を(この順序で)含み得る。層2は、1/4波長リターダ(QW2)、反射偏光子(RP)、および直線偏光子(POL2)のうちの1つまたは複数を(図で見ると、左から右にこの順序で)含み得る。形成された層1および層2から1つまたは複数の機能層を省く場合、それらは、外部光学部品として提供されてもよい。たとえば、光学システムは、直線偏光子または直線偏光された入力を提供することができ、それにより、層1の積層体からPOL1を省くことができる。性能を向上させるために、示されている表面に反射防止コーティングが適用され得る。
【0030】
本発明では、図6の層2に示されるように、システムレベルの光学性能を向上させるために、追加の機能層が追加され得ることを考えている。たとえば、迷光を低減させるために、反射偏光子と出口媒体との間に直線偏光子または円偏光子が必要とされ得る。たとえば、出口直線または円の偏光子を使用して、環境から生じるか、または光学システムから生じる周囲光を低減することができる。このような素子は、層2の積層体に追加することができる。
【0031】
本発明の中空のトリプルパスのレンズは、従来の屈折/反射光学素子が使用される任意の光学システムで使用され得る。これは、集束、コリメート、拡散、表示、画像形成など、放射線を操作する目的のためのものである。図7は、軽量の度付きサングラスにHTPレンズが使用される例を示している。HTPレンズは、検査拡大鏡、リーダ、または拡張現実眼鏡/ヘッドセットに同様に使用され得る。小型のHTPレンズは、遠近両用レンズを作製するための別のレンズまたは透明基板に埋め込まれ得る。
【0032】
本発明の概念を利用して、より複雑な構造を作製することができる。たとえば、図8に示されるように、小型のHTPレンズの二次元アレイは、熱成形された層1の構造のアレイと熱成形された層2の構造のアレイとを登録することによって作製することができる。そのような小型レンズのアレイを使用して、コリメートされた光を点状のアレイに集束させることができる。または逆に、小型レンズのアレイを使用して、点光源のアレイをコリメートすることができる。
【0033】
本発明の実施形態を図面および前述の説明で詳細に例示および説明してきたが、そのような例示および説明は、例として見なされるべきであり、特性を限定するものではない。たとえば、上述された特定の実施形態は、他の説明された実施形態と組み合わされてもよく、および/または他の方法で配置されてもよい(たとえば、プロセスの要素は他のシーケンスで実行されてもよい)。したがって、例示的な実施形態およびその変形のみが示され、説明されていることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図4d
図5
図6
図7
図8