(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】顆粒の被覆を有する粗い粒子の粉末の製造
(51)【国際特許分類】
G21C 3/62 20060101AFI20230630BHJP
【FI】
G21C3/62 120
G21C3/62 220
G21C3/62 300
(21)【出願番号】P 2020555014
(86)(22)【出願日】2019-04-08
(86)【国際出願番号】 US2019026268
(87)【国際公開番号】W WO2019226240
(87)【国際公開日】2019-11-28
【審査請求日】2022-03-25
(32)【優先日】2018-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】ラホーダ、エドワード、ジェイ
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-033504(JP,A)
【文献】特開平10-026684(JP,A)
【文献】特開平01-193691(JP,A)
【文献】特開2004-333435(JP,A)
【文献】特開平07-027886(JP,A)
【文献】米国特許第04869866(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 3/62
G21C 3/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末状の燃料バルク材と、
金属、金属合金、金属酸化物、半金属酸化物、金属炭化物、半金属炭化物、金属窒化物、半金属窒化物、金属ホウ化物、半金属ホウ化物、およびそれらの混合物または合金から成る群より選択される粉末状の燃料添加材とを含む原子燃料であって、
当該燃料バルク材の粒子サイズは当該燃料添加材の粒子サイズよりも大き
く、
当該燃料添加材の細かい粒子の半径をRsとし、当該燃料バルク材の粗い粒子の半径をRlとした場合、当該燃料バルク材の粒子サイズに対する当該燃料添加材の粒子サイズの体積比は4×Rs/Rlを上回ることを特徴とする原子燃料。
【請求項2】
前記燃料バルク材
の粒子サイズに対する前記燃料添加材の
粒子サイズの体積比をVrと
した場合、前記燃料添加材の粒子サイズはVr×Rl/4を下回ることを特徴とする、請求項1の原子燃料。
【請求項3】
前記燃料添加材が、Cr、Zr、Al、AlCr合金、UO
2、BeO、ZrO
2、Cr
2O
3、TiO
2、Y
2O
3、それらの混合物およびそれらを組み合わせたものから成る群より選択される、請求項1の原子燃料。
【請求項4】
前記燃料添加材が、Al、B、Si、Na、Li、それらの化合物およびそれらを組み合わせたものから成る群より選択される配合物により構成されるガラスの形態である、請求項1の原子燃料。
【請求項5】
前記燃料バルク材が、UN、U
3Si
2、UO
2、それらの混合物およびそれらを組み合わせたものから成る群より選択される、請求項1の原子燃料。
【請求項6】
燃料添加材を原子燃料に組み入れる方法であって、
粉末状の燃料バルク材を得るステップと、
粉末状の燃料添加材を、金属、金属合金、金属酸化物、半金属酸化物、金属炭化物、半金属炭化物、金属窒化物、半金属窒化物、金属ホウ化物、半金属ホウ化物、およびそれらの混合物または合金から成る群より選択するステップとを含み、
当該燃料バルク材の粒子サイズは当該燃料添加材の粒子サイズよりも大きく、さらに
当該燃料バルク材と当該燃料添加材とを
、当該燃料添加材の細かい粒子の半径をRsとし、当該燃料バルク材の粗い粒子の半径をRlとした場合、当該燃料バルク材の粒子サイズに対する当該燃料添加材の粒子サイズ体積比が4×Rs/Rlを上回るように選択した量で組み合わせるステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
前記燃料バルク材
の粒子サイズに対する前記燃料添加材の
粒子サイズの体積比をVrと
した場合、前記燃料添加材の粒子サイズがVr×Rl/4を下回るように前記燃料添加材を選択する、請求項
6の方法。
【請求項8】
前記燃料添加材の細かい粒子が前記燃料バルク材の粗い粒子を被覆する、請求項
6の方法。
【請求項9】
前記燃料添加材と前記燃料バルク材とを異なるものとし、前記燃料添加材と前記燃料バルク材とを組み合わせることにより、前記燃料添加材を含まない燃料組成物に比べて耐水性が向上した燃料組成物を得る、請求項
6の方法。
【請求項10】
請求項1の原子燃料より得られる原子燃料ペレットであって、
前記燃料バルク材はバルク材としてのウランより成り、
前記燃料添加材は前記燃料バルク材の上に付着し
た被覆
とされている、原子燃料ペレット。
【請求項11】
前記体積比は10%未満である、請求項1の原子燃料。
【請求項12】
前記燃料添加材を粉砕することにより前記体積比は10%未満とされる、請求項6の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許法第119条(e)の下で、参照により本願に組み込まれる「MANUFACTURE OF LARGE GRAIN POWDERS WITH GRANULAR COATINGS」と題する2018年4月9日出願の米国仮特許出願第62/654,666号に基づく優先権を主張する。
政府支援
本発明は、エネルギー省により授与された契約第DE-NE0008222号および第DE-NE0008824号に基づく政府支援の下でなされたものである。米国政府は、本発明に対して一定の権利を有する。
本発明は、概して原子炉のウラン燃料に関し、具体的には、第1の成分の粗い粒子が第2の成分の細かい粒子で被覆されたウラン燃料ペレットに関する。粗い粒子のバルク粉体に対して細かい粒子の添加材を使用することにより、バルク粉体およびそれから得られる燃料ペレットの特性(例えば耐水性)を向上させることができる。
【0002】
原子力発電所は、原子炉に格納された放射性物質の核分裂により電力を発生させる。原子炉において、電力の発生に使用する放射性物質とは原子燃料のことである。例えば加圧水型原子炉(PWR)や沸騰水型原子炉(BWR)のような軽水炉の原子燃料集合体は、一般的に、円形断面の複数の燃料棒が規則的または不規則な間隔で互いに平行に配置されたものである。各燃料棒は、被覆管に収納された燃料ペレットの積層体から成る。燃料棒は、1つ以上のスペーサグリッドによって、互いに間隔をあけた状態で保持される。
【0003】
燃料棒はそれぞれ、例えば二酸化ウラン(UO2)、二酸化プルトニウム(PuO2)、二酸化トリウム(ThO2)、窒化ウラン(UN)、ウラン・シリサイド(U3Si2)およびそれらの混合物のうちの少なくとも1つのような原子燃料用核分裂性物質を含む。原子燃料用核分裂性物質は、原子燃料ペレットを積み重ねた形態を取る。環状または粒子状の燃料を使用することもできる。燃料棒の少なくとも一部は、ホウ素またはホウ素化合物、ガドリニウムまたはガドリニウム化合物、エルビウムまたはエルビウム化合物などの中性子吸収材を含むことがある。中性子吸収材は、ペレットの表面上または内部に存在する。
【0004】
原子燃料の特性の改善が望まれる様々な状況が存在する。例えば、UO2の熱伝導率および/またはU3Si2とUNの耐水性の改善が望まれることがある。そのような特性の改善は、所望の特性を有する低融点の成分をバルク材と混合してペレット化した後、ペレットを焼結することにより実現できる。例えば、UNの耐水性の改善(高める)が望まれる場合、U3Si2(融点1665℃)のような低融点の成分をUN(融点2800℃)に少量添加するのが効果的である。別例として、U3Si2の耐酸化性を高めるには、U3Si2のような低融点の成分に高融点の添加材(例えばUO2)を添加するのが望ましい。しかしながら、添加材に、溶融状態となったあと独りでにバルク粉体の粒界に沿って拡散するのを期待するのは現実的ではない。
【0005】
添加材とバルク材の両方が粉体である場合、有意な量または多量の低融点添加材をバルク材に加えない限り特性を改善できないことがわかっている。そのような量の添加材を加えると、バルク材のウラン濃度が低下するため、燃料として経済的に成り立たない。
【0006】
したがって、バルク材粉末に添加される添加材の量が当該バルク材粉末およびその結果得られる燃料のウラン濃度を著しく低下させない原子燃料の開発が当技術分野で望まれている。本発明は、粗い粒子のバルク粉末と当該粗い粒子のバルク粉末と比べて細かい粒子の添加材粉末とより成り、当該細かい粒子の添加材粉末が耐水性などを改善するうえで最適な量(例えば必要最小限の量)存在するウラン燃料を提供する。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、一局面において、粉末状の燃料バルク材と、金属、金属合金、金属酸化物、半金属酸化物、金属炭化物、半金属炭化物、金属窒化物、半金属窒化物、およびそれらの混合物または合金から成る群より選択される燃料添加材とを含み、当該燃料バルク材の粒子サイズが当該燃料添加材の粒子サイズよりも大きい原子燃料を提供する。
【0008】
当該燃料バルク材に対する当該燃料添加材の所望の体積比をVrとし、当該燃料バルク材の粗い粒子の半径をRlとした場合、当該燃料添加材の粒子サイズはVr×Rl/4を下回る。
【0009】
当該燃料添加材の細かい粒子の半径をRsとし、当該燃料バルク材の粗い粒子の半径をRlとした場合、当該燃料添加材の粒子サイズに対する当該燃料バルク材の粒子サイズの体積比は4×Rs/Rlを上回る。
【0010】
或る特定の実施態様において、燃料添加材は、金属クロム(Cr)、金属ジルコニウム(Zr),金属アルミニウム(Al)、アルミニウム・クロム(AlCr)金属合金、二酸化ウラン(UO2)、酸化ベリリウム(BeO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化クロム(Cr2O3)、酸化チタン(TiO2)、酸化イットリウム(Y2O3)、それらの混合物およびそれらを組み合わせたものから成る群より選択される。
【0011】
当該燃料添加材は、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、ケイ素(Si)、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)、それらの化合物およびそれらを組み合わせたものからなる群より選択された1つの要素を含むガラスの形態であってよい。
【0012】
当該燃料バルク材は、ケイ化ウラン(U3Si2)、二酸化ウラン(UO2)、窒化ウラン(UN)、それらの混合物およびそれらを組み合わせたものから成る群より選択することができる。
【0013】
本発明は、別の一局面において、原子燃料に燃料添加材を組み入れる方法を提供する。この方法は、粉末状の燃料バルク材を得るステップと、金属、金属合金、金属酸化物、半金属酸化物、金属炭化物、半金属炭化物、金属窒化物、半金属窒化物、金属ホウ化物、半金属ホウ化物、およびそれらの混合物または合金から成る群より選択される粉末状の当該燃料添加材を選択するステップとを含み、当該燃料バルク材の粒子サイズは当該燃料添加材の粒子サイズより大きく、さらに、当該燃料バルク材と当該燃料添加材とを組み合わせるステップを含む方法である。
【0014】
当該燃料バルク材に対する当該燃料添加材の所望の体積比をVrとし、当該燃料バルク材の粒子の半径をRlとした場合、当該燃料添加材の粒子サイズがVr×Rl/4を下回るように当該燃料添加材を選択することができる。
【0015】
当該燃料添加材の細かい粒子の半径をRsとし、当該燃料バルク材のより粗い粒子の半径をRlとした場合、当該燃料バルク材に対する当該燃料添加材の体積比が4×Rs/Rlを上回るように当該燃料添加材と当該燃料バルク材とを選択した量で組み合わせることができる。
【0016】
本発明の方法では、当該燃料バルク材と当該燃料添加材とを組み合わせる際に、当該燃料添加材の細かい粒子により当該燃料バルク材の粗い粒子を被覆することができる。
【0017】
さらに、当該燃料バルク材に当該燃料添加材を組み入れることにより、当該燃料添加材を含まない燃料組成物に比べて耐水性が向上した燃料組成物を生成することができる。
【0018】
本発明は、さらに別の局面において、バルク材としてのウランから成る第1の材料と、それを被覆する、金属、金属合金、金属酸化物、半金属酸化物、金属炭化物、半金属炭化物、金属窒化物、半金属窒化物、およびそれらの混合物または合金から成る群より選択された第2の材料とを含む原子燃料ペレットを提供する。当該第1の材料の粒子サイズは、当該第2の材料の粒子サイズよりも大きい。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、改良型原子燃料およびその製造方法に関する。一成分の粗い粒子が第2の顆粒状物質で被覆されたウラン燃料ペレットを提供する。粗い粒子を顆粒状物質で被覆することにより、当該粗い粒子の様々な特性(例えば熱伝導率や耐水性)を改善することができる。当該第2の顆粒状物質は、ペレット化の際、当該粗い粒子成分と混合または混入することによって燃料中に組み込まれる。他の既知の燃料添加材(例えば潤滑材、可燃性吸収材および/または気孔形成材)を混入してもよい。粉末/粒体をプレス成形により円筒ペレット状に圧密化した後、焼結して原子燃料ペレットを形成する。焼結済みペレットを特定の寸法に機械加工してもよい。第2の顆粒状物質の使用量は、粗い粒子の表面を適切にまたは完全に被覆するに十分な量でなければならない。バルク材の粗い粒子に対する添加材粒子のサイズを変える(例えば減少させる)ことによって、第2の顆粒状物質の量を最小限に抑えることができることがわかっている。第2の顆粒状物質の粒子のサイズ(例えば直径や半径)は、粒子を粉砕することによって小さくすることができる。第2の顆粒状物質の表面積対体積比を下げて、粗い粒子よりも小さい粒径にする。本発明は、添加材の量を最小限に抑えることにより、ペレット中の燃料(例えば窒化ウラン、ケイ化ウラン、二酸化ウランなど)の量を最大にすると共に、特性の改善を実現することができる。
【0020】
或る特定の実施態様において、本発明は、水、水蒸気または空気に対する耐性および/または熱伝導率が改善された原子燃料およびその製造方法を包含する。本発明による原子燃料は、燃料バルク材と燃料添加材とを含む。燃料バルク材は乾燥した形態(例えば顆粒状または粉末状)であり、典型的には、窒化ウラン(UN)、ケイ化ウラン(U3Si2)および二酸化ウラン(UO2)のうちの1つ以上より成る。燃料添加材は、乾燥した形態(例えば顆粒状または粉末状)であり、既知の金属、金属合金、金属酸化物、半金属酸化物、金属窒化物、半金属窒化物、金属炭化物、半金属炭化物、金属ホウ化物、半金属ホウ化物、それらの混合物およびそれらを組み合わせたもののうちの1つまたは複数から選択される。
【0021】
或る特定の実施態様において、金属の燃料添加材は、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)およびアルミニウム(Al)のうちの1つまたは複数、金属合金の燃料添加材は、それらの金属の合金(例えばアルミニウム・クロム(AlCr)合金)うちの1つまたは複数を含む。酸化物の燃料添加材は、二酸化ウラン(UO2)、酸化ベリリウム(BeO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化クロム(Cr2O3)、酸化チタン(TiO2)および酸化イットリウム(Y2O3)のうちの1つまたは複数を含む。燃料添加材は、これらの金属、合金および酸化物の混合物またはそれらを組み合わせたものを含んでもよい。
【0022】
燃料添加材は、アルミニウム(Al)、ホウ素(B)、ケイ素(Si)、ナトリウム(Na)、リチウム(Li)、それらの化合物およびそれらを組み合わせたものからなる群より選択された1つまたは複数の要素を含むガラスの形態であってよい。
【0023】
燃料添加材を燃料バルク材に組み合わせることにより、燃料添加材を伴わない燃料バルク材と比べて例えば耐水性および/または熱伝導率が優れた、1つまたは複数の特性が改善された原子燃料が製造される。所望される特性の改善は、最適な量(例えば最小量)の燃料添加材を燃料バルク材と組み合わせることによって達成される。任意特定の理論の制約を受けるものではないが、燃料バルク材の密度よりも低密度の燃料添加材が存在すると、燃料バルク材のみで構成される原子燃料と比べて、燃料組成物の密度が減少すると考えられる。燃料添加材の組み入れによる燃料組成物の密度の低下を極力抑えるには、燃料添加材の量を最適(例えば最小)にすることが好ましい。
【0024】
燃料バルク材は、燃料添加材に比べて粗い粒子すなわち粒子のサイズが大きい。燃料添加材は、燃料バルク材と組み合わさる際、燃料バルク材を実質的に覆う、すなわち被覆する。任意特定の理論の制約を受けるものではないが、燃料添加材の細かい粒子または微粒子は、燃料バルク材の粗い粒子の表面に固着または凝着すると考えられる。本明細書で使用する用語「細かい粒子/微粒子」は、燃料添加材の粒子または微粒子が、燃料バルク材の粒子または微粒子よりも細かい(例えば半径または直径が小さい)ことを意味する。その結果、燃料添加材は、燃料バルク材を例えば水に対して効果的に保護する。燃料添加材は、燃料バルク材の粒子(粗い粒子)の表面全体を覆う、すなわち被覆するのに十分な量使用する。前述したように、燃料添加材の使用量を最適にする(例えば最小限に抑える)ことが好ましい。或る特定の実施態様における燃料添加材の量は、燃料バルク材の粒子の表面全体を覆う、すなわち被覆するのに十分であるが、それにより得られる燃料材が経済的に成り立たなくなる程燃料材の密度を有意に低下させない量である。
【0025】
本発明によると、一成分の粗い粒子が第2の顆粒状物質(例えば添加材)の被覆で覆われたウラン燃料ペレットを製造することができる。粗い粒子の上にもう一つの顆粒状物質(例えば添加材)の被覆を施すことにより、当該粗材粒子の特性が改善される。
【0026】
燃料バルク材の表面を最小量の燃料添加材によって適切に(例えば十分に)被覆するには、燃料添加材の表面積対体積比を小さくする。すなわち、燃料添加材の粒子サイズ(例えば直径または半径)を、燃料バルク材の粒子サイズ(例えば直径または半径)よりも小さくする。したがって、燃料添加材の細かい粒子によって燃料バルク材の粗い粒子を完全に被覆するには、粗い粒子に対する細かい粒子の体積比を、粗い粒子の半径に対する細かい粒子の半径の比の4倍(すなわち4×Rs/Rl)以上にする。ここに、Rsは燃料添加材の細かい粒子の半径、Rlは燃料バルク材の粗い粒子の有効半径である。
【0027】
Vr(細かい粒子対粗い粒子の体積比)>4×Rs/Rl (式1)
【0028】
バルク材に対する添加材の所望の体積比をVrで表すと、燃料添加材の粒子または微粒子を粉砕して、Vr×Rl/4を下回る直径にする。例えば、所望の体積比(10%未満)を得るには、燃料添加材を、その細かい粒子の有効半径が平均して粗い粒子の有効半径の0.025倍(4×0.025=0.10)を下回るように粉砕する。添加材の細かい粒子の密度をρs、バルク材の粗い粒子の密度をρlとすると、添加材細かい粒子の最小質量比はρs/ρl×4×Rs/Rlで与えられる。
【0029】
最小質量比(添加材の細かい粒子)=(ρs/ρl)×(4×Rs/Rl) (式2)
【0030】
RsおよびRlは、それぞれ添加材の細かい粒子およびバルク材の粗い粒子の平均有効半径であるが、有効半径は、それぞれ添加材の細かい粒子およびバルク材の粗い粒子の平均半径と同様に球体に同じ平均体積を与える半径として定義される。したがって、燃料添加材の量は、バルク材の粗い粒子の粒子サイズに対する添加材の細かい粒子の粒子サイズ(例えば粒径比)を変化させる(例えば減少させる)ことによって最小にする。
【0031】
或る特定の実施態様において、改良型ウラン燃料ペレットは、燃料添加材の細かい粒子が燃料バルク材の粗い粒子の表面を実質的に被覆するように、粗い粒子の燃料バルク材粉末と細かい粒子の燃料添加材粉末とを組み合わせることにより製造される。粒子サイズは、前記の式に従って選択/調整するが、粗い粒子と組み合わせる前に細かい粒子を粉砕してもよい。1つの燃料添加材または2つ以上の燃料添加材を、燃料バルク材と組み合わせてもよい。細かい粒子の粉体で被覆した粗い粒子の粉体をペレット化して焼結し、ウラン燃料ペレットを形成する。
【0032】
本発明は、以下の点において燃料を改良するが、これらに限定されない。
(i)二酸化ウランの粗い粒子にBeOの薄い被覆を施すことによる二酸化ウランの粗い粒子の熱伝導率の増加。
(ii)窒化ウランの粗い粒子に二酸化ウランの薄い被覆を施すことによる窒化ウランの粗い粒子の耐水性の改善。
(iii)ケイ化ウランの粗い粒子にBeO、Cr、Zr、UO2のうちの1つまたは複数の物質を含む薄い被覆を施すことによるケイ化ウランの粗い粒子の防水性の改善。
【0033】
本発明を、様々な具体的な実施態様に関して説明したが、添付の特許請求の思想および範囲内で変更を加えた上で本発明を実施できることは、当業者が理解するところである。