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特許7304903新品種豆SCEL-1種子、その植物体及びその一部、並びにそこから抽出された抽出物
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  • 特許-新品種豆SCEL-1種子、その植物体及びその一部、並びにそこから抽出された抽出物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】新品種豆SCEL-1種子、その植物体及びその一部、並びにそこから抽出された抽出物
(51)【国際特許分類】
   A01H 5/10 20180101AFI20230630BHJP
   A61K 31/7048 20060101ALI20230630BHJP
   A61K 31/353 20060101ALI20230630BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20230630BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230630BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20230630BHJP
   A61K 36/48 20060101ALI20230630BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20230630BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20230630BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20230630BHJP
   A61Q 19/08 20060101ALI20230630BHJP
   A01H 5/00 20180101ALI20230630BHJP
   A01H 6/54 20180101ALI20230630BHJP
【FI】
A01H5/10
A61K31/7048
A61K31/353
A61P39/06
A61P1/16
A61P3/06
A61K36/48
A61K8/9789
A61K8/49
A61K8/60
A61Q19/08
A01H5/00 A
A01H5/00 Z
A01H6/54
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020571806
(86)(22)【出願日】2018-12-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-04
(86)【国際出願番号】 KR2018015455
(87)【国際公開番号】W WO2020004739
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2020-12-23
(31)【優先権主張番号】10-2018-0075957
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【微生物の受託番号】KACC  KACC 88002BP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】304039548
【氏名又は名称】コリア・インスティテュート・オブ・サイエンス・アンド・テクノロジー
(73)【特許権者】
【識別番号】516373203
【氏名又は名称】リパブリック オブ コリア(マネージメント ルーラル デベロップメント アドミニストレーション)
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ムン,ジュン キョン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,マン ス
(72)【発明者】
【氏名】パク,ス クォン
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,ナム ヒ
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ヨンス
(72)【発明者】
【氏名】ハ,ソンド
(72)【発明者】
【氏名】パヌ,チョル-ホ
(72)【発明者】
【氏名】カン,ソン テク
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,スン チョン
【審査官】大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】J. Clin. Biochem. Nutr.,2017年03月,Vol.60, No.2,p.108-114
【文献】J. Agric. Food Chem.,2011年07月13日,Vol.59,p.8985-8993
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01H 5/00-12
A01H 6/54
CAplus/BIOSIS/CABA/FSTA/NAPRALERT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シアニジン-3-O-グルコシド、プロシアニジンB2及びエピカテキンを含み、シアニジン-3-O-グルコシドの含量よりも、プロシアニジンB2の含量がさらに多く含まれた豆(Glycine max(L.)Merrill)品種の種子であり、2018年11月8日に、受託番号KACC 88002BPで、特許手続き目的のための微生物寄託の国際的承認に係わるブダペスト条約による国際寄託機関である国立農業科学院(KACC)に寄託されている、豆品種の種子。
【請求項2】
プロシアニジンB2及びエピカテキンの総含量は、粉砕された前記種子を、70(v/v)%エタノール水溶液を使用し、約25℃~約55℃で6時間インキュベーションして得られた抽出物を基準、Wonheugに比べ、2.6倍ないし5.1倍高い、請求項1に記載の種子。
【請求項3】
プロシアニジンB2及びエピカテキンの総含量は、全体抽出物重量基準で、約1.3%ないし約2.4%である、請求項2に記載の種子。
【請求項4】
シアニジン-3-O-グルコシド、プロシアニジンB2及びエピカテキンは、重量基準で、1:2.0ないし2.1:0.43ないし0.48の含量比で含まれている、請求項2に記載の種子。
【請求項5】
請求項1または2に記載の種子から得られた、植物体またはその一部であって、前記植物体の一部は、花粉、根、種皮、細胞、葉、幹、葯、胚珠、豆もやし、または豆莢を含む、植物体またはその一部。
【請求項6】
請求項5に記載の植物体またはその一部を形質転換させて得られる、豆植物体。
【請求項7】
請求項に記載の豆植物体の種子。
【請求項8】
請求項に記載の豆植物体の子孫。
【請求項9】
シアニジン-3-O-グルコシド、プロシアニジンB2及びエピカテキンを含み、シアニジン-3-O-グルコシドの含量よりも、プロシアニジンB2の含量がさらに多く含まれた豆(Glycine max(L.)Merrill)品種の種子であり、2018年11月8日に、受託番号KACC 88002BPで、特許手続き目的のための微生物寄託の国際的承認に係わるブダペスト条約による国際寄託機関である国立農業科学院(KACC)に寄託されている豆品種の種子の植物体またはその部分を得る段階と、
前記植物体またはその部分から産物を生産する段階と、を含む、産物を生産する方法。
【請求項10】
前記産物は、蛋白質濃縮物、蛋白質分離物、豆皮、食物、粉、オイル、抽出物または豆もやしを含む、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
1.関連出願に係わる交差参照
本願は、参照により、その開示内容が、全体として、本明細書に統合される、韓国特許庁に、2018年6月29日に出願された韓国特許出願番号10-2018-0075957の恩典を主張する。
2.分野
1以上の具体例は、豆(Glycine max(L.)Merrill)品種SCEL-1の種子、そこから得られた植物体またはその一部、前記植物体またはその一部から産物を生産する方法、及び豆品種の種子を、水、C-Cアルコール、またはそれらの混合物から抽出して得られた抽出物を有効成分として含む抗酸化用、肝細胞保護用、または総コレステロール、HDL、LDL及びTGの含量を減少させるための組成物に関する。
〔背景技術〕
豆は、豊富な植物性蛋白質の源泉作物であり、蛋白質だけではなく、不飽和脂肪酸、アミノ酸、イソフラボン及びフェノール酸を含む機能性にすぐれる物質を多様に含んでいる。そのような理由により、豆は、動物性蛋白質を代替する蛋白質供給源として利用されている。
【0002】
CHA, Baecheon et al. (The Korean Society of Pharmacognosy, Vol. 27(3): pages 190-195 (published in 1996))は、大豆の野生型に該当するツルマメ(Glycine soja Siebold et Zucc.)は、そのエタノール抽出物において、大豆(Glycine max (L.) Merrill)のエタノール抽出物とは異なり、(-)-エピカテキンを含むことを明らかにしている。また、前記ツルマメのエタノール抽出物が、抗酸化活性を有することを開示している。しかし、CHA, Baecheon et al.は、大豆が(-)-エピカテキンを含むことを開示していない。
【0003】
従って、従来知られた大豆に比べ、優秀な抗酸化、及び/または他の生理的機能を有する大豆新品種が要求されている。
〔発明の概要〕
〔発明が解決しようとする課題〕
1以上の具体例は、シアニジン-3-O-グルコシド、プロシアニジンB2及びエピカテキンを含み、シアニジン-3-O-グルコシドの含量よりも、プロシアニジンB2の含量がさらに多く含まれた豆(Glycine max(L.)Merrill)品種SCEL-1の種子(seed)であり、前記豆品種の種子の代表的試料が、2018年11月8日に、受託番号KACC 88002BPで、特許手続き目的のための微生物寄託の国際的承認に係わるブダペスト条約による国際寄託機関である国立農業科学院(KACC)に寄託されているものである豆品種の種子、そこから得られた植物体またはその一部、及びその子孫を含む。
【0004】
1以上の具体例は、前記植物体またはその一部を形質転換させて得られる豆植物体、その種子及び子孫を含む。
【0005】
1以上の具体例は、シアニジン-3-O-グルコシド、プロシアニジンB2及びエピカテキンを含み、シアニジン-3-O-グルコシドの含量よりも、プロシアニジンB2の含量がさらに多く含まれた豆(Glycine max(L.)Merrill)品種SCEL-1の種子であり、前記豆品種の種子の代表的試料が、2018年11月8日に、受託番号KACC 88002BPで、特許手続き目的のための微生物寄託の国際的承認に係わるブダペスト条約による国際寄託機関である国立農業科学院(KACC)に寄託されているものである豆品種の種子の植物体またはその部分を得る段階と、前記植物体またはその部分から産物を生産する段階と、を含む産物を生産する方法を含む。
【0006】
1以上の具体例は、シアニジン-3-O-グルコシド、プロシアニジンB2及びエピカテキンを含み、シアニジン-3-O-グルコシドの含量よりも、プロシアニジンB2の含量がさらに多く含まれた豆(Glycine max(L.)Merrill)品種SCEL-1の種子であり、前記豆品種の種子の代表的試料が、2018年11月8日に、受託番号KACC 88002BPで、特許手続き目的のための微生物寄託の国際的承認に係わるブダペスト条約による国際寄託機関である国立農業科学院(KACC)に寄託されているものである豆品種の種子を、水、C-Cアルコール、またはそれらの混合物から抽出して得られた抽出物を有効成分として含む抗酸化用、肝細胞保護用、または総コレステロール、HDL、LDL及びTGの含量を減少させるための組成物を含む。
【0007】
1以上の具体例は、シアニジン-3-O-グルコシド、プロシアニジンB2及びエピカテキン、または生理学的に許容可能なその塩を有効成分として含む抗酸化または肝細胞保護用の組成物であり、シアニジン-3-O-グルコシド、または生理学的に許容可能なその塩、プロシアニジンB2、または生理学的に許容可能なその塩、及びエピカテキン、または生理学的に許容可能なその塩は、重量基準で、1:2.0ないし2.1:0.43ないし0.46の含量比であるものである組成物を含む。
〔課題を解決するための手段〕
下記において、その例が添付された図面に図示されている具体例を詳細に参照するが、明細書を通じて、類似参照番号は、類似要素を示す。従って、本具体例は、他の形態を有することができ、ここに開示された説明に限定されると解釈されるものではない。従って、本説明の様相について説明するために、図面を参照することにより、前記具体例について、以下に単に記述されるのみである。
【0008】
本開示の第1様相は、シアニジン-3-O-グルコシド、プロシアニジンB2及びエピカテキンを含み、シアニジン-3-O-グルコシドの含量よりも、プロシアニジンB2の含量がさらに多く含まれた豆(Glycine max(L.)Merrill)品種SCEL-1の種子(seed)であり、前記豆品種の種子の代表的試料が、2018年11月8日に、受託番号KACC 88002BPで、特許手続き目的のための微生物寄託の国際的承認に係わるブダペスト条約による国際寄託機関である国立農業科学院(KACC)に寄託されているものである豆品種の種子を提供する。
【0009】
本明細書において、「量」は、粉砕された前記種子を、70(v/v)%エタノール水溶液を使用し、約25ないし約55℃で6時間インキュベーションして得られた抽出物を基準に計算されたものでもある。本明細書において、「量」は、例示的に記載されたものであり、種子が得られる植物体を栽培するのに使用された土壌、気候条件及び個別種子などによって偏差があることにもなると理解されなければならない。
【0010】
前記種子において、シアニジン-3-O-グルコシド:プロシアニジンB2は、重量基準で、1:2.0以上、1:2.0ないし5.0、1:2.0ないし3.0、1:2.0ないし2.5、または1:2.0ないし2.1でもある。
【0011】
前記種子において、プロシアニジンB2及びエピカテキンの総含量は、Wonheugに比べ、重量基準で、2倍以上、2.5倍以上、例えば、2.6倍ないし5.1倍多くもある。
【0012】
前記種子において、プロシアニジンB2及びエピカテキンの総含量は、重量基準で、約0.20ないし約0.36%でもある。
【0013】
前記種子において、プロシアニジンB2及びエピカテキン含量は、全体抽出物重量基準で、約1.31ないし約2.4%でもある。
【0014】
前記種子において、シアニジン-3-O-グルコシド、プロシアニジンB2及びエピカテキン含量は、全体抽出物重量基準で、2.1ないし3.4%でもある。
【0015】
前記種子において、シアニジン-3-O-グルコシド、プロシアニジンB2及びエピカテキンは、重量基準で、1:2.0ないし2.1:0.43ないし0.48の含量比で含まれたものでもある。
【0016】
前記種子は、発芽して植物体を形成する場合、表1に列挙された特性を有するものでもある。本明細書で取り立てての言及がなければ、豆品種の特性は、植物新品種保護法第30条及び同法施行令第33条による種子管理要綱第2条の別表1に係わる作物別品種の特性について説明するのに必要な事項と、同法施行規則第47条規定による栽培審査のために必要な特性検定を実施する要領とを定めている、「新品種審査のための作物別特性調査の要領、豆(soybean Glycine max(L.)Merrill)(農林畜産食品部国立種子院、2014:http.//www.seed.go.kr)」に記載された要領によって測定されて検定されたことを示す。また、取り立てての言及がなければ、豆品種の特性のうち量的形質は、平均値を示す。
【0017】
本開示の第2様相は、前記種子から得られた植物体またはその一部を提供する。該植物体の一部は、花粉(pollen)、根、種皮(seed coat)、細胞、葉、幹、葯(anther)、胚珠(ovule)、豆もやし、豆莢、またはその抽出物でもある。
【0018】
本開示の第3様相は、前記植物体の子孫を提供する。
【0019】
本開示の第4様相は、前記植物体またはその一部を形質転換させて得られる豆植物体、その種子及び子孫を提供する。
【0020】
本開示の第5様相は、シアニジン-3-O-グルコシド、プロシアニジンB2及びエピカテキンを含み、シアニジン-3-O-グルコシドの含量よりも、プロシアニジンB2の含量がさらに多く含まれた豆(Glycine max(L.)Merrill)品種SCEL-1の種子であり、前記豆品種の種子の代表的試料が、2018年11月8日に、受託番号KACC 88002BPで、特許手続き目的のための微生物寄託の国際的承認に係わるブダペスト条約による国際寄託機関である国立農業科学院(KACC)に寄託されているものである豆品種の種子の植物体またはその部分を得る段階と、前記植物体またはその部分から産物を生産する段階と、を含む産物を生産する方法を提供する。
【0021】
一具体例において、豆品種の種子の植物体またはその部分を得る段階において、豆品種の種子については、前述の通りである。豆品種の種子の植物体またはその部分を得る段階は、種子を発芽させたり成長させたりすることを含む。前記成長は、土壌だけではなく、水耕栽培することを含む。前記段階は、また前記植物体またはその部分を切断したり粉砕したりすることを含んでもよい。前記部分が種子である場合、種子を粉砕したり剥皮したりすることを含んでもよい。
【0022】
前記植物体またはその部分から産物を生産する段階は、選択される産物によっても異なる。該産物が抽出物である場合、抽出する過程を含む。該産物がオイルである場合、圧搾のような油を搾り出す過程が含まれてもよい。前記産物は、蛋白質濃縮物(protein concentrate)、蛋白質分離物(protein isolate)、豆皮(soybean hulls)、食物(meal)、粉(flour)、オイル、抽出物または豆もやしを含む。
【0023】
本開示の第6様相は、シアニジン-3-O-グルコシド、プロシアニジンB2、及びエピカテキン、またはそれらの任意のものの生理学的に許容可能な塩を含み、シアニジン-3-O-グルコシドの含量よりも、プロシアニジンB2の含量がさらに多く含まれた豆(Glycine max(L.)Merrill)品種SCEL-1の種子であり、前記豆品種の種子の代表的試料が、2018年11月8日に、受託番号KACC 88002BPで、特許手続き目的のための微生物寄託の国際的承認に係わるブダペスト条約による国際寄託機関である国立農業科学院(KACC)に寄託されているものである豆品種の種子を、水、C-Cアルコール、またはそれらの混合物から抽出して得られた抽出物を有効成分として含む抗酸化用、肝細胞保護用、または総コレステロール、HDL、LDL及びTGの含量を減少させるための組成物を提供する。
【0024】
本開示の前記組成物において、前記抽出物において、前記プロシアニジンB2及び前記エピカテキンの総含量は、重量基準で、1.31ないし2.40%でもある。
【0025】
本開示の前記組成物において、前記抽出物において、シアニジン-3-O-グルコシド:プロシアニジンB2:エピカテキンは、重量基準で、1:2.0ないし約2.1:0.43ないし約0.48の含量比でもある。前記抽出物において、シアニジン-3-O-グルコシド、プロシアニジンB2及びエピカテキンの総量は、重量基準で、約2.1ないし約3.4%でもある。
【0026】
本開示の前記組成物において、前記抽出物の量は、前記組成物総重量に対し、約0.001%ないし約99.9%、約0.01%ないし約80.0%、約0.01%ないし約60.0%、約0.01%ないし約50.0%、約0.01%ないし約30.0%、約0.01%ないし約20.0%、約0.01%ないし約15.0%、約0.01%ないし約10.0%、約0.01%ないし約5.0%、約0.1%ないし約99.9%、約1.0%ないし約80.0%、約5.0%ないし約60.0%、約5.0%ないし約50.0%、約5.0%ないし約30.0%、約30.0%ないし約50.0%、約40.0%ないし約80.0%、約15.0%ないし約70.0%、または約50.0%ないし約90.0%でもある。
【0027】
本開示の第7様相は、シアニジン-3-O-グルコシド、プロシアニジンB2及びエピカテキン、または生理学的に許容可能なその塩を有効成分として含む抗酸化または肝細胞保護用の組成物であり、シアニジン-3-O-グルコシド、または生理学的に許容可能なその塩、プロシアニジンB2、または生理学的に許容可能なその塩、及びエピカテキン、または生理学的に許容可能なその塩は、重量基準で、1:2.0ないし2.1:0.43ないし0.46の比である組成物を提供する。
【0028】
本開示の前記組成物において、シアニジン-3-O-グルコシドまたは、または生理学的に許容可能なその塩、プロシアニジンB2または、または生理学的に許容可能なその塩、及びエピカテキン、または生理学的に許容可能なその塩は、前記組成物総重量に対し、約0.001%ないし約99.9%、約0.005ないし約95%、約0.01%ないし約80.0%、約0.01%ないし約60.0%、約0.01%ないし約50.0%、約0.01%ないし約30.0%、約0.01%ないし約20.0%、約0.01%ないし約15.0%、約0.01%ないし約10.0%、約0.01%ないし約5.0%、約0.05ないし約85%、約0.1%ないし約99.9%、約0.1ないし約80%、約0.5ないし約75%、約1.0%ないし約80.0%、約1ないし約70%、約1ないし約50%、約1ないし約30%、約1ないし約15%、約3ないし約15%、約5ないし約15%、約5ないし約65%、約5.0%ないし約60.0%、約5.0%ないし約50.0%、約5.0%ないし約30.0%、約10ないし約60%、約15ないし約55%、約20ないし約50%、約25ないし約45%、または約30ないし約40重量%、約30.0%ないし約50.0%、約40.0%ないし約80.0%、約15.0%ないし約70.0%、または約50.0%ないし約90.0%でもある。
【0029】
本開示の第6様相及び第7様相の組成物は、食品、化粧品組成物または薬学的組成物でもある。
【0030】
本開示の第6様相及び第7様相において、表現「生理学的に許容可能な塩」は、「薬学的に許容可能な塩」を含んでもよい。前記表現「薬学的に許容可能な塩」は、通常の医薬的服量(medicinal dosage)で利用するとき、相当する毒性効果を避けるものであり、動物、さらに具体的には、ヒトに使用することができるということを意味する。前記用語は、例えば、政府、またはそれに準ずる規制機構の承認を受けるか、承認されるか、薬典に列挙されるか、あるいはその他一般的な薬典に認知されるものを含む。
【0031】
本開示の第6様相及び第7様相において、「薬学的に許容可能な塩」は、薬学的に許容可能であり、親化合物(parent compound)の望ましい薬理活性を有する本発明の一観点による塩を意味する。前記塩は、(1)塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸のような無機酸によって形成されるか、あるいは酢酸、プロピオン酸、ヘキサン酸、シクロペンタンプロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、乳酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、3-(4-ヒドロキシベンゾイル)安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1,2-エタン-ジスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、4-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、4-メチルビシクロ[2,2,2]-oct-2-エン-1-カルボキシル酸、グルコヘプトン酸、3-フェニルプロピオン酸、トリメチル酢酸、tert-ブチルアセト酸、ラウリル硫酸、グルコン酸、グルタミン酸、ヒドロキシナフトエ酸、サリチル酸、ステアリン酸、ムコン酸のような有機酸によって形成される酸付加塩(acid addition salt)、あるいは(2)親化合物に存在する酸性プロトンが置換されるときに形成される塩を含んでもよい。
【0032】
本開示の第6様相及び第7様相において、「有効成分」は、単独で目的とする活性を示すか、あるいは自体活性がない担体と共に活性を示すことができる成分を意味するのである。
【0033】
本開示の第6様相及び第7様相において、「肝細胞保護用」とは、肝細胞の死滅を保護したり、酸化的ストレスから肝細胞を保護したりすることにより、健康な肝臓、または損傷された肝臓を保護する全ての用途を制限なしに含むものである。
【0034】
本明細書の一観点である肝細胞保護用組成物において、前記組成物は、肝臓疾患を予防するか、あるいは治療するのにも使用される。前記肝臓疾患は、アルコールまたはその混合物によって引き起こされたアルコール性肝疾患を含むのである。本開示の前記組成物は、肝臓と係わる疾患、または肝臓に発病する疾患の予防したり、前記疾患を治療したりすることができる。具体的には、前記「肝疾患の予防または治療」とは、tert-ブチルヒドロペルオキシドによって誘発された肝細胞死滅に対する保護、活性酸素種(ROS:reactive oxygen species)による肝臓損傷の回復を意味しうる。本明細書において、「アルコール、またはそれらの混合物によって引き起こされたアルコール性肝臓疾患」は、アルコール、またはそれらの混合物によって損傷された肝臓において引き起こされる疾患を含むのである。
【0035】
本開示の第6様相及び第7様相において、抗酸化用途は、酸化的ストレスから皮膚を保護するためであることを含む。
【0036】
本開示の第6様相及び第7様相において、総コレステロール、HDL、LDL及びTGの含量を減少させるための用途は、血中において、それらのレベルを低下させることを含む。総コレステロール、HDL、LDL及びTGの含量を減少させるための用途は、組織に由来するものでもある。前記組織は、肝臓組織または脂肪組織でもある。従って、前記組成物は、血中総コレステロール、HDL、LDL及びTGの含量を増加させる症状を伴う疾病を予防または治療するのにも使用される。前記疾病は、例えば、肥満または糖尿病でもある。
【0037】
本開示の第7様相において、前記組成物は、2018年11月8日に、受託番号KACC 88002BPで、特許手続き目的のための微生物寄託の国際的承認に係わるブダペスト条約による国際寄託機関である国立農業科学院(KACC)に寄託されているものである豆品種の種子を、水、C-Cアルコール、またはそれらの混合物から抽出して得られた抽出物を有効成分として含むものでもある。
【0038】
一具体例において、前記薬学組成物は、肝臓疾患に効果的な薬学組成物でもあり、具体的には、酸化ストレスによって誘発された肝臓疾患に効果的な薬学組成物でもある。
【0039】
本発明による組成物を医薬品に適用する場合には、前記組成物を有効成分にして常用される無機または有機の担体を加え、固体、半固体または液状の形態で、経口投与剤あるいは非経口投与剤に製剤化させることができる。
【0040】
前記経口投与のための製剤としては、錠剤、丸薬、顆粒剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、粉剤、乳濁剤、シロップ剤、ペレット剤などを挙げることができる。また、前記非経口投与のための製剤としては、注射剤、点滴剤、軟膏、ローション、スプレー、懸濁剤、乳剤、坐剤などを挙げることができる。本発明の有効成分を製剤化するためには、常法によって実施すれば、容易に製剤化することができ、界面活性剤、賦形剤、着色料、香辛料、保存料、安定剤、緩衝剤、懸濁剤、その他常用する補助剤を適切に使用することができる。
【0041】
本開示の本発明による前記薬学組成物は、経口、非経口、直腸、局所、経皮、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下などにも投与される。
【0042】
また、前記有効成分の投与量は、治療される対象の年齢・性別・体重、治療する特定疾患または病理状態、疾患または病理状態の深刻度、投与経路、及び処方者の判断によっても異なる。そのような因子に基づいた投与量決定は、当業者のレベル内にある。一般的な投与量は、約0.001mg/日ないし約2,000mg/kg/日、さらに具体的には、約0.5mg/kg/日ないし約1.500mg/kg/日である。
【0043】
本開示の一様相による肝臓保護用組成物において、前記組成物は、健康食品組成物を含む。
【0044】
前記組成物は、該組成物を含むドリンク剤、発酵乳、チーズ、ヨーグルト、ジュース、生菌製剤及び健康補助食品などに加工され、その以外に、多様な食品添加剤の形態でも使用される。
【0045】
1以上の具体例において、前記組成物は、本発明が目的とする主効果を損傷させない範囲内において、主効果に相乗効果を与えることができる他の成分などを含んでもよい。例えば、物性改善のために、香料、色素、殺菌剤、酸化防止剤、防腐剤、保湿剤、粘増剤、無機塩類、乳化剤及び合成高分子物質などの添加剤をさらに含んでもよい。それ以外にも、水溶性ビタミン、有用性ビタミン、高分子ペプチド、高分子多糖及び海草抽出物のような補助成分をさらに含んでもよい。前記成分は、剤形または使用目的により、当業者が困難さなしに、適宜選定して配合することができ、その添加量は、本発明の目的及び効果を損傷させない範囲内においても選択される。
【0046】
本発明による組成物の剤形は、溶液、乳化物、粘性型混合物、錠剤、粉末などの多様な形態でもあり、それらは、単純飲用、注射投与、スプレー方式または圧搾方式のような多様な方法によっても投与される。
【0047】
前記組成物は、化粧品組成物を含む。前記組成物は、非経口投与剤形にも剤形化される。該非経口投与剤形は、注射剤または皮膚外用剤でもある。前記皮膚外用剤は、クリーム、ゲル、軟膏、皮膚乳化剤、皮膚懸濁液、経皮伝達性パッチ、薬物含有包帯、ローション、またはそれらの組み合わせでもある。
【0048】
前記皮膚外用剤は、通常の化粧品や医薬品のような皮膚外用剤に使用される成分、例えば、水性成分、油性成分、粉末成分、アルコール類、保湿剤、増粘剤、紫外線吸収剤、美白剤、防腐剤、酸化防止剤、界面活性剤、香料、色剤、各種皮膚栄養剤、またはそれらの組み合わせと、必要によって適切に配合されうる。
【0049】
前記皮膚外用剤は、エデト酸二ナトリウム、エデト酸三ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸のような金属封鎖剤;カフェイン、タンニン、ベラパミル、甘草抽出物、グラブリジン、カリンの果実の熱水抽出物、各種生薬、酢酸トコフェロール、グリチルリチン酸、トラネキサム酸、及びそれらの誘導体またはそれらn塩の薬剤;ビタミンC、アスコルビン酸リン酸マグネシウム、アスコルビン酸グルコシド、アルブチン、コウジ酸;グルコース、フラクトース、トレハロースのような糖類も適切に配合することができる。
【0050】
本発明の組成物において、前記抽出物は、前記種子を、水、C-Cアルコール、またはそれらの混合物と接触させる段階を含む方法によって抽出されたものでもある。前記接触させる段階は、前記種子を、水、C-Cアルコール、またはそれらの混合物と混合して得られる混合物をインキュベーションすることを含んでもよい。前記インキュベーションは、加温下またはが加圧下においても遂行される。前記インキュベーションは、また撹拌下においても遂行される。前記インキュベーションは、室温ないし還流温度、例えば、室温ないし約100℃、室温ないし約80℃、室温ないし約70℃、約50℃ないし約70℃、約40ないし約100℃、約40ないし約80℃、約40ないし約60℃、または約50℃の温度においても遂行される。前記インキュベーションは、またマイクロ波照射下においても遂行される。前記アルコールは、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノールまたはヘキサノール、またはそれらの混合物でもある。前記アルコールは、約30ないし約100体積%、約30ないし約90体積%、約30ないし約80体積%、約40ないし約80体積%、約50ないし約100体積%、約50ないし約90体積%、約50ないし約80体積%、または約60ないし100体積%の水溶液でもある。
【0051】
抽出時に使用される溶媒は、豆の約2ないし約15倍、約3ないし約15倍、約4ないし約15倍、約5ないし約15倍、または約10倍でもある。前記抽出は、加熱抽出、冷浸抽出、還流冷却抽出または超音波抽出などが利用されるが、当業者に自明な抽出法であるならば、制限がない。抽出時間は、約2ないし約8時間、約4ないし約8時間、約5ないし約7時間、約5.5ないし約6.5時間、または約6時間遂行することができる。温度は、抽出溶媒及び抽出温度などの条件によっても異なる。前記抽出は、活性成分をさらに多量得るためために、1回以上何回抽出することができ、例えば、1ないし5回、1ないし4回、または3回、連続抽出して合わせた抽出液を利用することができる。
【0052】
本明細書において、豆SCEL-1抽出物は、前述のように、豆SCEL-1の粗抽出物を含んでもよく、前記組抽出物を、極性が低い有機溶媒でさらに抽出して得られた有機溶媒の可溶性分画物として含んでもよい。
【0053】
前記有機溶媒としては、ヘキサン、塩化メチレン、酢酸エチル、n-ブタノールなどが利用されうる。前記方法から抽出した抽出物、またはその抽出物の可溶性分画物は、そのまま使用することもできるが、濾過後に濃縮し、濃縮物形態で使用することができ、濃縮後に凍結乾燥させ、凍結乾燥物の形態としても使用することができる。
【0054】
本開示の第8様相は、第6様相または第7様相による組成物を個体に投与する段階を含む、個体で酸化を予防または低減させること、肝細胞を保護すること、または総コレステロール、HDL、LDL及びTGのうち1以上のレベルを低下させるための方法を提供する。
【0055】
前記投与は、経口または非経口の投与でもある。前記方法は、個体において、肝細胞生存率を上昇させること、またはアルコール性肝疾患を予防または治療するためのものでもある。前記方法は、血中総コレステロール、HDL、LDL及びTGのうち1以上のレベルを低下させるものでもある。前記方法は、肥満または糖尿病を予防または治療するためのものでもある。
【0056】
本開示の前記方法は、前記組成物を個体の皮膚に投与することを含んでもよい。その場合、該投与は、皮膚に塗布または適用することでもある。前記方法は、化粧する方法でもある。前記方法は、皮膚において、活性酸素種の発生を予防したり、そのレベルを低下させたりするものでもある。前記活性酸素種は、紫外線が皮膚に照射される場合に発生するものでもある。
【0057】
前記個体は、哺乳動物、例えば、牛、豚、猫、犬または羊でもある。前記個体は、ヒトではない哺乳動物でもある。
〔図面の簡単な説明〕
以上及び/または他の様相は、下記に添付された図面と係わって考慮し、具体例の下記説明から明らかになるか、あるいはさらに容易に理解されるであろう。
【0058】
図1は、本願の豆品種の育成系統図を示す。
【0059】
図2は、新たに選抜された新品種豆抽出物が、アルコール、またはそれらの混合物によって引き起こされた、アルコール性肝損傷を有する動物モデルにおいて、血中脂肪成分のレベルに及ぼす影響を示す。
【0060】
図3は、新たに選抜された新品種豆抽出物が、アルコール、またはそれらの混合物によって引き起こされたアルコール性肝損傷を有する動物モデルにおいて、肝組織に及ぼす影響を示す。
【0061】
図4は、選抜された品種SCEL-1の種子を撮影した写真である。
〔発明を実施するための形態〕
以下、1以上の具体例について、実施例を介してさらに、詳細に説明する。しかし、それら実施例は、1以上の具体例を例示的に説明するためのものであり、本発明の範囲は、それら実施例に限定されるものではない。
【0062】
〔実施例1:新品種の育成及び特性〕
(1.品種の育成)
京畿道龍仁市二東邑で収集した黒小粒でありながら、種子の形態が平たい遺伝資源豆種子20粒を確保した。該豆種子は、栽培した結果、花の形態及び色において分離が起こり、形質が固定されていないということが確認された。例えば、花色が白色またはピンク色が示されて分離された。従って、該豆種子は、形質が固定されておらず、安定性と均一性とがないために、種(species)として認められないものである。
【0063】
従って、本発明者らは、前記豆種子を利用し、純系選抜育種方法で品種を育成した。純系選抜は、2013年度から2017年まで進め、2013年から2014年までは、水原所在の農村振興庁国立食糧科学院全作物試験圃場で行い、2015年から2017年まえの期間の間には、完州郡伊西面に位置した国立食糧科学院付属圃場で進めた。
【0064】
前記収集された豆遺伝資源からの純系選抜過程は、具体的には、前記豆遺伝資源20個体を、2013年から2016年まで、毎年、農村振興庁付属試験圃場において、6月上旬に播種し、11月下旬、純度向上のために、1個体を選抜し、翌年の播種用種子として収穫した。その後、4年間、純系分離過程を経て、最終的に、固定された純系1個体を選抜した。
【0065】
均一性を確認するために、毎年、胚軸色、花色、毛茸色、莢色、葉形、伸育型、開花期、成熟期などの形質を調査した。前記収集遺伝資源の純系分離過程において、2013年の場合、胚軸色と花色との分離が観察され、残り形質は、分離が観察されなかった。2013年に選抜された後代は、2014年から2017年まで調査された形質において、調査形質において、均一性を維持したと調査された。標準品種(Wonheug)と対照品種(青磁3号)との区別性は、表1のように、伸育型、開化時日数、胚軸色、100粒重及び葉形の形質で明らかに区分される。表1は、最終的に純系選抜された系統の特性を示す。表1の資料は、前記選抜された系統(品種)を、SCEL-1と命名した。図4は、選抜された品種SCEL-1の種子を撮影した写真である。
【0066】
【表1】
【0067】
(2.対照品種備え品種特性の確認)
最終的に純系選抜されたSCEL-1の既存品種との農業性能比較のために、2017年の夏、国立食糧科学院圃場において、標準品種としてWonheug豆を、対照品種として青磁3号を使用し、乱塊法3反復で、品種性能を確認した。試験区は、2017年6月8日、60cmX15cm、1穴2種で、4m長で4列ずつ播種した後、栽培しながら、農業形質を調査した。Wonheug豆(品種出願公開番号:2010-341)は、国立食糧科学院で2009年に開発された黒色種皮、小粒種の豆品種であり、現在、農家で最も多く栽培されている品種であり、選抜されたSCEL-1と類似した品種であり、標準品種としても比較される品種であり、対照品種として使用された青磁3号(品種出願公開番号:2005-176)は、国立食糧科学院で2004年に開発された黒色種皮、大粒、炊飯(cooking with rice)用豆品種であり、対照品種として使用した。前記Wonheug豆と青磁3号は、国立種子院などから商業的に購入可能である。
【0068】
農業形質及び性能検定のために調査された形質は、茎長、節数、枝数などの収量構成要素形質を中心に調査した。それら収量構成要素形質は、成熟期に、試験区内10個体の茎長、節数、枝数、莢数、100粒重、株当たり収量、区当たり収量、10a当たり収量を調査した。
【0069】
表2及び表3は、選抜された豆品種、標準品種及び対照品種の特性を示す。
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
表2及び表3によれば、選抜された品種は、標準品種であるWonheugに比べ、茎長は、26cmさらに長く、節数は、1節多かった。また、枝数は、標準品種と類似し、6.4個と調査され、莢当たり粒数は、1莢、2莢、3莢の構成比率が標準品種と類似していた。収量構成要素を示す総莢数、粒数、株当たり収量、区当たり収量は、それぞれ184個、397粒、23.1g、4.6gと標準品種より低かった。100粒重は、9.4gと標準品種に比べて小粒であった。そのような結果を基に、10a当たり収量を計算したとき、413kg/10aと、標準品種であるWonheugに比べては、70%レベルであるが、乾燥重量粉末において、機能性物質であるプロシアニジンB2とエピカテキンとの含量が、それぞれ301%及び217%多かった。具体的には、プロシアニジンB2含量は、選抜品種SCEL-1、Wonheug、青磁3号において、それぞれ149.4μg/100mg、49.5μg/100mg及び34.3μg/100mgであり、エピカテキン含量は、選抜品種SCEL-1、Wonheug、青磁3号において、それぞれ46.9μg/100mg、21.6μg/100mg及び20.1μg/100mgであった。このとき、プロシアニジンB2含量及びエピカテキン含量は、下記実施例2の1.方法によって抽出して確認した。
【0073】
そのように前記実験を介し、SCEL-1は、均一性が高く、標準品種及び対照品種との比較を介し、既存品種と区別され、農業的形質と収量性との側面において、農業形質及び収量性、並びに機能性物質含有量の側面において、選抜された品種が区別される独立された品種と認められうる。
【0074】
そのように選抜された新品種である黒色小粒偏楕円豆を、SCEL-1と命名し、2018年11月8日、受託番号KACC 88002BPで、特許手続き目的のための微生物寄託の国際的承認に係わるブダペスト条約による国際寄託機関である国立農業科学院(KACC)に寄託された。図1は、本願の豆品種の育成系統図を示す。
【0075】
〔実施例2:新たに選抜された豆種子の水、アルコール、またはそれらの混合物を使用した抽出過程を遂行して得られた抽出物、及びその用途〕
本実施例においては、実施例1で選抜された豆新品種SCEL-1の種子から抽出物を製造し、その効果を確認した。
【0076】
(1.抽出物の製造)
選抜された品種の種子を、分析直前に、高速粉砕機(Wonder Blender, 820W, 30000 RPM, Sanplatec Corp)で粉砕して粉末を製造した。得られた豆粉末1gを、70(v/v)%エタノール水溶液100mlと、ガラス管内で混合し、50℃で6時間、磁性バー(magnetic bar)を使用して撹拌した。その後、抽出物は、濾紙(Garde No.131 Qualitative filter paper, Advantec)で濾過させた。
【0077】
その後、前記エタノール層を、窒素ガス乾燥機(hurricane-Eagle, Chongmin Technology)で1時間乾燥させた後、一日凍結乾燥させ、完全に水分を除去した。その結果、豆抽出物0.135g(標準偏差(SD:standard deviation)±0.015)を得た。以下の実験において、前記抽出物は、50%v/v水溶性エタノール内において、30mg/ml濃度で溶解させて使用した。
【0078】
(2.抽出物の抗酸化効能)
1.で得られた抽出物が、細胞において、2,2-ジフェニル-1-ピクリルヒドラジル(DPPH)消去能に及ぼす影響、すなわち、抗酸化活性を調査した。
【0079】
DPPHラジカルの消去活性は、99.9%エタノール水溶液内の0.2mM DPPH溶液0.8mlに、豆抽出物を、最終濃度が、それぞれ0.0625g/mL、0.125g/mL、0.25g/mL、0.5g/mL、1.0g/mL及び2.0mg/mLになるように添加し、暗室で30分放置した。その後、マイクロプレートリーダー(molecular device, Sunnyvale, CA、米国A)を使用し、517nmにおける吸光度を測定し、抗酸化活性を評価した。対照群として、類似した品種特性を有するWonheugの抽出物を使用した。
【0080】
その結果、選抜された新品種豆及びWonheugの抽出物のDPPHラジカル消去能IC50は、それぞれ0.19mg/ml及び0.33mg/mlであり、選抜された新品種豆抽出物を使用した場合、Wonheugに比べ、抗酸化活性が高かった。ここで、DPPHラジカル消去能は、下記数式によって計算した:
DPPHラジカル消去能=[1-As/Abk]x100(ここで、As、Abkは、それぞれ試料とブランクとの吸光度を意味する)
その後、IC50値は、前記のところで使用された0.0625mg/mL、0.125mg/mL、0.25mg/mL、0.5mg/mL、1.0及び2.0mg/mLの濃度において、検量線を作成し、最大消去能値の50%である濃度を算出して示された。
【0081】
(3.豆抽出物のアルコール性肝疾患の予防効能または治療効能の確認)
アルコール性肝損傷ラットモデルにおいて、選抜された新品種豆抽出物のアルコール、またはそれらの混合物から抽出して得られた抽出物のアルコール性肝損傷に対する効能を調査した。
【0082】
具体的には、5週齢のラット(Sprague-Dawley rats)(雄、入手時:18.84~21.17g、投与開始時:21.73~24.23g、OrientBio)に対し、1週間自由食餌させた後、次のように、アルコール、または選抜された新品種豆抽出物が含まれた液状の食餌を21日間摂取させた後の肝損傷位を比較した。肝損傷程度を比較するために、血中脂質、コレステロール、HDL及びLDLの含量を、TG Cholesterol Assayキット(TG assay kit/cholesterol assay kit Abcam)を利用して測定した。血液は、2,580xgで10分間遠心分離し、上澄み液だけ利用して測定した。また、ラットを犠牲にした後の肝組織を採取し、ヘマトキシリン・エオシン及びオイルレッドを使用して染色を施し、肝実質における脂肪肝病変部位(hepatic steatosis region)の比率と、平均肝細胞径(mean diameter of hepatocyte)とを測定した。具体的には、剖検日に肝組織を摘出し、10%中性緩衝ホルマリン溶液に固定させた後、固定された組織を、10%中性緩衝ホルマリン固定液で24時間再固定させた後、パラフィンブロックを作製した。厚みは、約3μmにし、スライドを作製した後、組織染色を施した。
【0083】
(1)グループ1:対照群、液状食餌だけ摂取
(2)グループ2:エタノール摂取群
(3)グループ3:エタノール+選抜された新品種豆SCEL-1抽出物25mg/kg/日投与
(4)グループ4:エタノール+選抜された新品種豆SCEL-1抽出物100mg/kg/日投与
(5)グループ5:エタノール+シリマリン抽出物(Sigma Aldrich, Silymarin flavonolignans, Mixture of anti-hepatotoxic flavonolignans from the fruit of Silybum marianum)100mg/kg/日投与
図2は、選抜された新品種豆抽出物が、アルコール性肝損傷モデルにおいて、血中脂肪成分のレベルに及ぼす影響を示す。図2から分かるように、選抜された新品種豆抽出物は、総コレステロール、TG、HDL及びLDLを顕著に低下させた。図2において、TCHOは、総コレステロール、TGは、トリグリセリド、HDLは、高比重リポ蛋白(high density lipoprotein)、LDLは、低比重リポ蛋白(low density lipoprotein)を示す。
【0084】
図3は、選抜された新品種豆抽出物が、アルコール性肝損傷モデルにおいて、肝組織に及ぼす影響を示す。図3において、Hematoxylin-eosinは、ヘマトキシリン・エオシンによって染色された肝組織、Oil redは、オイルレッドによって染色された肝組織を示す。図3において、A、B、C、D及びEは、それぞれグループ1,2,3,4及び5を示し、CV、PTは、それぞれ中心静脈(central vein)、小葉間結合組織(portal triad area)を示す。
【0085】
図3から分かるように、アルコール誘発群の肝組織においては、巨大な脂肪分布と共に、組織学的な変化が、正常群の肝組織に対比して発生することを観察した。そのような組織学的変化や脂肪分布は、SCEL-1抽出物25mg/kg/日投与群(図3C)においても、依然として発生したが、SCEL-1抽出物100mg/kg/日投与群(図3D)、あるいはシリマリン抽出物100mg/kg/日投与群(図のE)においては、脂肪肝病変部位が低減すると共に、肝臓における組織学的変化発生を効果的に防ぐ結果を観察した。脂肪肝病変部位、及び脂肪蓄積による肝細胞径サイズのいずれも、SCEL-1抽出物100mg/kg/日投与群あるいはシリマリン抽出物100mg/kg/日投与群は、下表4から分かるように、統計的に有意に低減された結果を示した。
【0086】
【表4】
【0087】
表4のデータはLSDテスト法によって統計的に分析された平均±標準偏差として表現されている。
【0088】
##:G1とG2との間では、有意に異なる;P<0.01
**:G2から有意に異なる;P<0.01
G1:正常対照群(1%CMC内の1% Tween 80)、n=8
G2:ビークル対照群(1%CMC内の1% Tween 80)、n=8
G3:試験群(25mg/kg/日)、n=8
G4:試験群(100mg/kg/日)、n=8
G5:基準対照群(シリマリン100mg/kg/日)、n=8
(4.豆抽出物の成分分析)
豆抽出物に対し、質量分析(mass spectrometry)を行い、活性成分を分析した。
【0089】
具体的には、Agilent 1260 HPLCシステムと、Bruker MicrOTOF-Q II質量分析機とを使用し、豆抽出物の成分分析を行った。分析カラムは、Prevail C18(250x4.6mm、5μm)を使用し、このとき、移動相溶媒Aは、95%水/5%アセトニトリル(0.1%ギ酸)、移動相溶媒Bは、95%アセトニトリル/5%水(0.1%ギ酸)を利用した。溶媒流速は、0.7ml/分で設定した。成分分離のために使用された溶媒の濃度勾配条件は、表5の通りである。
【0090】
【表5】
【0091】
カラムの温度は、35℃を維持し、試料は10μLを注入した。質量分析器機は、ESI(+)モードにおいて、質量範囲:50~800m/z、噴霧ガス(nebulization gas):8L/min、ソースガス(source gas)温度:180℃、毛細管(capillary)電圧:+4,500V、コーン(cone):電圧35Vを使用し、豆抽出物内成分を分析した。
【0092】
その結果、選抜されたSCEL-1品種のエピカテキン及びプロシアニジンB2は、それぞれ約0.32%ないし約0.46%、約1.0%ないし約2.0%であり、対照品種Wonheugの約0.14%ないし約0.15%、約0.33%ないし約0.35%よりはるかに含量が多かった。
【0093】
アントシアニン抗酸化物質の代表物質であるシアニジン-3-O-グルコシド基準で選抜されたSCEL-1品種のシアニジン-3-O-グルコシド、プロシアニジンB2、エピカテキンの含量比は、1:2.0ないし2.1:0.43ないし0.48で含まれる。一方、Wonheugの場合は、1:0.43ないし0.70:0.19ないし0.25と示されている。
【0094】
1以上の具体例によれば、豆品種SCEL-1の種子、そこから得られた植物体またはその一部、及びその子孫は、産物を製造するのにも使用される。
【0095】
1以上の具体例によれば、前記種子の植物体またはその一部を形質転換して得られた豆植物体、その種子及び子孫は、産物を製造するのにも使用される。
【0096】
1以上の具体例によれば、前記植物体またはその部分から産物を生産する方法により、産物を効率的に生産することができる。
【0097】
1以上の具体例によれば、抗酸化用、肝細胞保護用、または総コレステロール、HDL、LDL及びTGの含量を減少させるための組成物は、抗酸化用、肝細胞保護用、または総コレステロール、HDL、LDL及びTGの含量を減少させるための用途にも使用される。
【0098】
本明細書に記述された具体例は、記述的意味にのみ考慮されなければならず、限定的目的に考慮されるものではないことが理解されるであろう。各具体例において、特徴または様相の説明は、他の具体例において、他の類似した特徴または様相について利用可能なものであると一般的に考慮されなければならない。図面を参照し、1以上の具体例が説明されたが、特許請求の範囲に定義されているような開示の精神及び範囲を外れることなしに、形態及び細部事項の多様な変化が、その中においてなされるということは、当業界の当業者によって理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0099】
図1】本願の豆品種の育成系統図を示す。
図2】新たに選抜された新品種豆抽出物が、アルコール、またはそれらの混合物によって引き起こされた、アルコール性肝損傷を有する動物モデルにおいて、血中脂肪成分のレベルに及ぼす影響を示す。
図3】新たに選抜された新品種豆抽出物が、アルコール、またはそれらの混合物によって引き起こされたアルコール性肝損傷を有する動物モデルにおいて、肝組織に及ぼす影響を示す。
図4】選抜された品種SCEL-1の種子を撮影した写真である。
【受託番号】
【0100】
KACC 88002BP
【その他】
【0101】

図1
図2
図3
図4