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特許7304939固体型エレクトロクロミック素子を作製する方法、固体型エレクトロクロミック素子及びその用途
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】固体型エレクトロクロミック素子を作製する方法、固体型エレクトロクロミック素子及びその用途
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/15 20190101AFI20230630BHJP
【FI】
G02F1/15 507
G02F1/15 505
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2021513409
(86)(22)【出願日】2019-09-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-11
(86)【国際出願番号】 US2019051112
(87)【国際公開番号】W WO2020056326
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2021-03-05
(31)【優先権主張番号】62/730,977
(32)【優先日】2018-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/839,419
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/861,399
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/849,810
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/839,431
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/849,808
(32)【優先日】2019-05-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/852,050
(32)【優先日】2019-05-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521095259
【氏名又は名称】アンビライト・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジアジ・ヒ
(72)【発明者】
【氏名】ホン・ワン
(72)【発明者】
【氏名】チャオ・ワン
(72)【発明者】
【氏名】ユリン・リ
(72)【発明者】
【氏名】リヤン・ヨウ
(72)【発明者】
【氏名】ユ・ジョウ
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-507082(JP,A)
【文献】特開平05-047210(JP,A)
【文献】特開平03-196408(JP,A)
【文献】米国特許第05523180(US,A)
【文献】米国特許第05883220(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0088426(US,A1)
【文献】特開平02-105855(JP,A)
【文献】特開平03-238704(JP,A)
【文献】特表2014-526717(JP,A)
【文献】特表平04-507006(JP,A)
【文献】特開昭60-048023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/15-1/163
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のフレキシブル基板、
前記第1のフレキシブル基板上に配置された第1の透明電極、
前記第1の透明電極上に配置されたエレクトロクロミック層、
前記エレクトロクロミック層上に配置された固体電解質層であって、固体電解質層が、ポリマー骨格構造を有する固体電解質ポリマーを含有し、前記固体電解質ポリマーが、
(a)モノマー若しくはオリゴマーと共重合したイオン伝導性ポリマーであり、モノマー若しくはオリゴマーが側鎖として可塑化部分を有しており、前記イオン伝導性ポリマーは以下の化学式によって表され
【化1】

(式中、n=3~4000である)
前記可塑化部分は、以下の基
【化2】

の1種若しくは複数を含む、イオン伝導性ポリマー
(b)-20℃未満のガラス転移温度を有する可塑化直鎖状ポリマーに共有結合しているイオン伝導性ポリマーであり、(b)固体電解質ポリマーは、
【化3】

(式中、n=3~4000、n1=1~4000、xおよびyは0超の整数であり、m=1~100である)、または
【化4】
(式中、n=3~4000、n1=1~4000、xは0超の整数であり、m=1~100である)、または
【化5】
(式中、n=3~4000、n1=1~4000、n2=1~100、xおよびyは0超の整数であり、m=1~100である)、または
【化6】
(式中、n=3~4000、n1=1~4000、xは0超の整数であり、m=1~100である)、または
【化7】
(式中、n=3~4000、n1=1~4000、n2=1~100、xおよびyは0超の整数であり、m=1~100である)、または
【化8】
(式中、n=3~4000、n1=1~4000、xは0超の整数であり、m=1~100である)、または
【化9】
(式中、n=3~4000、n1=1~4000、xは0超の整数であり、m=1~100である)、または
【化10】
(式中、n=3~4000、n1=1~4000、xおよびyは0超の整数であり、m=1~100である)、または
【化11】
(式中、n=3~4000、n1=1~4000、xおよびyは0超の整数であり、m=1~100である)、または
【化12】
(式中、n=3~4000、n1=1~4000、xは0超の整数であり、m=1~100である)、または
【化13】
(式中、n=3~4000、n1=1~4000、xは0超の整数であり、m=1~100である)、または
【化14】
(式中、n=3~4000、n1=1~4000、n2=1~100、x、y、pおよびqは0超の整数であり、m=1~100である)
を含む、イオン伝導性ポリマー、
(c)-20℃未満のガラス転移温度を有する可塑化ポリマーブロックに共有結合しているイオン伝導性ポリマーであり、前記可塑化ポリマーブロックは側鎖として前記可塑化ポリマーブロックに結合した可塑化基を有している、イオン伝導性ポリマー、又は
(d)1つ若しくは複数のイオン伝導性種及び1つ若しくは複数の不混和性基の側鎖を有するブラシコポリマー
を含む、固体電解質層、
前記固体電解質層上に配置されたイオン貯蔵層、
前記イオン貯蔵層上に配置された第2の透明電極、並びに
前記第2の透明電極上に配置された第2のフレキシブル基板
を含む、エレクトロクロミック素子。
【請求項2】
固体電解質層が中性有機小分子を含まない、請求項1に記載のエレクトロクロミック素子。
【請求項3】
第1のフレキシブル基板及び第2のフレキシブル基板が、ポリエチレンテレフタレート、環状オレフィンコポリマー又はトリアセテートセルロースのうちの1種を含む、請求項1に記載のエレクトロクロミック素子。
【請求項4】
第1の透明電極及び第2の透明電極が、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アルミニウム亜鉛(AZO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、銀ナノワイヤ、グラフェン、カーボンナノチューブ、金属メッシュベースの透明導電性電極又は銀ナノ粒子インクを含む、請求項1に記載のエレクトロクロミック素子。
【請求項5】
イオン貯蔵層が、4~12族の金属元素の1種又は複数の酸化物、又は前記酸化物の混合物、又は任意の他の金属酸化物でドープされた前記酸化物のうちの1種を含む、請求項1に記載のエレクトロクロミック素子。
【請求項6】
金属酸化物が、Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ir、Ni、Cu又はZnの酸化物を含む、請求項5に記載のエレクトロクロミック素子。
【請求項7】
イオン貯蔵層が遷移金属錯体を含む、請求項1に記載のエレクトロクロミック素子。
【請求項8】
イオン貯蔵層が、レドックス活性ニトロキシル若しくはガルビノキシルラジカルポリマー、又は共役ポリマーを含むレドックス活性ポリマーのうちの1種又は複数を含む、請求項1に記載のエレクトロクロミック素子。
【請求項9】
エレクトロクロミック層が、WO、ポリ(デシルビオロゲン)及びその誘導体、ポリアニリン及びその誘導体;ポリピロール及びその誘導体を含むエレクトロクロミック共役ポリマー、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)及びその誘導体、ポリ(プロピレンジオキシチオフェン)及びその誘導体、ポリフラン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、ポリカルバゾール及びその誘導体、並びにこれらのコポリマー、又はベンゾチアジアゾール、ベンゾセレナジアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、キノキサリン又はジケトピロロピロールを含むアクセプター単位を含有するコポリマーのうちの1種又は複数を含む、請求項1に記載のエレクトロクロミック素子。
【請求項10】
エレクトロクロミック素子を形成する方法であって、
第1のフレキシブル基板に第1の透明電極を塗布する工程と、
前記第1のフレキシブル基板上でエレクトロクロミック層を前記第1の透明電極上に塗布する工程と、
第2のフレキシブル基板に第2の透明電極を塗布する工程と、
前記第2のフレキシブル基板上でイオン貯蔵層を前記第2の透明電極上に塗布する工程と、
ポリマー電解質溶液又は電解質前駆体溶液を前記エレクトロクロミック層の表面に、又は前記イオン貯蔵層の表面に、又は前記エレクトロクロミック層の表面及び前記イオン貯蔵層の表面に、又は前記エレクトロクロミック層の表面と前記イオン貯蔵層の表面との間の間隙に供給する工程と、
一方の基板の領域が他方の基板で被着されないように、かつ前記ポリマー電解質溶液又は前記電解質前駆体溶液が前記エレクトロクロミック層と前記イオン貯蔵層との間に介在するように、前記第1のフレキシブル基板と前記第2のフレキシブル基板とを積層する工程と、
前記ポリマー電解質溶液又は前記電解質前駆体溶液を硬化させて、前記エレクトロクロミック素子を形成し、かつ固体電解質層を形成する工程であり、前記固体電解質層が、ポリマー骨格構造を有する固体電解質ポリマーを含有し、前記固体電解質ポリマーが、
(a)モノマー若しくはオリゴマーと共重合したイオン伝導性ポリマーであり、モノマー若しくはオリゴマーが側鎖として可塑化部分を有しており、前記イオン伝導性ポリマーは以下の化学式によって表され
【化1】
(式中、n=3~4000である)
前記可塑化部分は、以下の基
【化2】
の1種若しくは複数を含む、イオン伝導性ポリマー、
(b)-20℃未満のガラス転移温度を有する可塑化直鎖状ポリマーに共有結合しているイオン伝導性ポリマーであり、(b)固体電解質ポリマーは、
【化3】
(式中、n=3~4000、n1=1~4000、xおよびyは0超の整数であり、m=1~100である)、または
【化4】
(式中、n=3~4000、n1=1~4000、xは0超の整数であり、m=1~100である)、または
【化5】
(式中、n=3~4000、n1=1~4000、n2=1~100、xおよびyは0超の整数であり、m=1~100である)、または
【化6】
(式中、n=3~4000、n1=1~4000、xは0超の整数であり、m=1~100である)、または
【化7】
(式中、n=3~4000、n1=1~4000、n2=1~100、xおよびyは0超の整数であり、m=1~100である)、または
【化8】
(式中、n=3~4000、n1=1~4000、xは0超の整数であり、m=1~100である)、または
【化9】
(式中、n=3~4000、n1=1~4000、xは0超の整数であり、m=1~100である)、または
【化10】
(式中、n=3~4000、n1=1~4000、xおよびyは0超の整数であり、m=1~100である)、または
【化11】
(式中、n=3~4000、n1=1~4000、xおよびyは0超の整数であり、m=1~100である)、または
【化12】
(式中、n=3~4000、n1=1~4000、xは0超の整数であり、m=1~100である)、または
【化13】
(式中、n=3~4000、n1=1~4000、xは0超の整数であり、m=1~100である)、または
【化14】
(式中、n=3~4000、n1=1~4000、n2=1~100、x、y、pおよびqは0超の整数であり、m=1~100である)
を含む、イオン伝導性ポリマー、
(c)-20℃未満のガラス転移温度を有する可塑化ポリマーブロックに共有結合しているイオン伝導性ポリマーであり、前記可塑化ポリマーブロックは側鎖として前記可塑化ポリマーブロックに結合した可塑化基を有している、イオン伝導性ポリマー、又は
(d)1つ若しくは複数のイオン伝導性種及び1つ若しくは複数の不混和性基の側鎖を有するブラシコポリマー
を含む、工程と
を含む、方法。
【請求項11】
領域にある第1の透明電極又は第2の透明電極上の材料を除去する工程を更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
回路を領域に取り付ける工程を更に含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
ポリマー電解質溶液又は電解質前駆体溶液が、3000以下の分子量を有する中性有機小分子を20質量%未満有する電解質層を生成するために硬化される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
ポリマー電解質溶液又は電解質前駆体溶液が、基板を90℃より高い温度、30MP~500MPの圧力で互いに押圧することにより硬化される、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
電解質層が第1の基板上に、又はイオン貯蔵層が第2の基板上に、スプレーコーティング、スピンコーティング、スロットダイコーティング、スリットコーティング、ロールツーロールコーティング、微小凹面コーティング、スクリーン印刷、トランスファーコーティング又はワイヤバーコーティングにより塗布される、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
固体電解質層が3000以下の分子量を有する中性有機小分子を20質量%未満含有する、請求項1に記載のエレクトロクロミック素子。
【請求項17】
イオン貯蔵層が4~12族の金属元素の1種又は複数の酸化物、又は前記酸化物の混合物、又は任意の他の金属酸化物でドープされた前記酸化物のうちの1種を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
金属酸化物がTi、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ir、Ni、Cu又はZnの酸化物を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
イオン貯蔵層が遷移金属錯体を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
エレクトロクロミック層が、WO、ポリ(デシルビオロゲン)及びその誘導体、ポリアニリン及びその誘導体;ポリピロール及びその誘導体を含むエレクトロクロミック共役ポリマー、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)及びその誘導体、ポリ(プロピレンジオキシチオフェン)及びその誘導体、ポリフラン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、ポリカルバゾール及びその誘導体、並びにこれらのコポリマー、又はベンゾチアジアゾール、ベンゾセレナジアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、キノキサリン又はジケトピロロピロールを含むアクセプター単位を含有するコポリマーのうちの1種又は複数を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項21】
固体電解質ポリマーが、(a)モノマー若しくはオリゴマーと共重合したイオン伝導性ポリマーを含み、モノマー若しくはオリゴマーが側鎖として可塑化部分を有しており、前記可塑化部分は、以下の群、
【化15】
の1種又は複数を含む、請求項1に記載のエレクトロクロミック素子。
【請求項22】
固体電解質ポリマーが、(c)-20℃未満のガラス転移温度を有する可塑化ポリマーブロックに共有結合しているイオン伝導性ポリマーであり、前記可塑化ポリマーブロックは側鎖として前記可塑化ポリマーブロックに結合した可塑化基を有している、イオン伝導性ポリマーを含み、前記可塑化基は、以下の群、
【化16】
の1種又は複数を含む、請求項1に記載のエレクトロクロミック素子。
【請求項23】
前記固体電解質ポリマーが、
【化17】
(式中、n=3~4000、n1=1~4000、n2=1~100、x、y、pおよびqは0超の整数であり、m=1~100である)
を含む、請求項1に記載のエレクトロクロミック素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年9月13日に出願された米国仮特許出願第62/730,977号、2019年4月26日に出願された同第62/839,419号、2019年4月26日に出願された同第62/839,431号、2019年5月17日に出願された同第62/849,808号、2019年5月17日に出願された同第62/849,810号、2019年5月23日に出願された同第62/852,050号及び2019年6月14日に出願された同第62/861,399号の優先権を主張する。これらの仮特許出願全ての全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は固体型エレクトロクロミック素子を作製する方法、固体型エレクトロクロミック素子、及び固体型エレクトロクロミック素子の用途に関する。
【背景技術】
【0003】
エレクトロクロミック素子(ECD)は、家庭及び車両の機能性を改善するその潜在的用途により高い関心を集めてきた。ECDは、電解質の使用に基づき、ゲル、液体及び固体型ECDを含む、様々な種類に分類され得る。液体又はゲル電解質を用いたECDの組み立ての過程で、作用電極(WE)及び対電極(CE)は、これらの間の間隙に充填される電解質を含むスペーサーにより分離されねばならない。その場合、空洞はエポキシで封止される。液体又はゲルベースのECDからの電解質の漏れを防止するために、複雑な封止及び端部設計が必要とされる。ポリマー増粘剤(例えば、PVA、PMMA、PVDF-HFP等)を添加してゲル電解質を形成すると、漏れの問題を最小限に抑えることができるが、ポリマーマトリックスの総量は、適切なイオン伝導率を維持するには20質量%未満である。電解質層の大部分は液体又はゲルを含有したままであり、機械的堅牢性が依然として懸念される。
【0004】
固体型ECDは、より良好な安全性、長期寿命、ロールツーロール加工の可能性等を含む、液体/ゲルベースのECDに勝る多くの利点を提供するため、多くの用途に望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
固体型エレクトロクロミック素子、固体型エレクトロクロミック素子を作製する方法、及び固体型エレクトロクロミック素子の用途が本明細書に記載される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様において、本開示はエレクトロクロミック素子を記載する。エレクトロクロミック素子は、第1のフレキシブル基板、第1のフレキシブル基板上に配置された第1の透明電極、第1の透明電極上に配置されたエレクトロクロミック層、及びエレクトロクロミック層上に配置された固体電解質層を含む。固体電解質層は、3000以下の分子量を有する中性有機小分子を20質量%未満含有する。エレクトロクロミック素子は、固体電解質層上に配置されたイオン貯蔵層、イオン貯蔵層上に配置された第2の透明電極、及び第2の透明電極上に配置された第2のフレキシブル基板を更に含む。一部の実施形態において、固体電解質層は、中性有機小分子を10質量%未満、5質量%未満又は3質量%未満含有する。一部の実施形態において、固体電解質層は、公知の装置で検出できない有機小分子を含まない。
【0007】
一部の実施形態において、第1のフレキシブル基板及び第2のフレキシブル基板は、ポリエチレンテレフタレート、環状オレフィンコポリマー、トリアセテートセルロース又は現在公知であるか若しくは今後開発される他のもののうちの1種を含む。
【0008】
一部の実施形態において、第1の透明電極及び第2の透明電極は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アルミニウム亜鉛(AZO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、銀ナノワイヤ、グラフェン、カーボンナノチューブ、金属メッシュベースの透明導電性電極、銀ナノ粒子インク、又は現在公知であるか若しくは今後開発される他のものを含む。
【0009】
一部の実施形態において、イオン貯蔵層は、還元反応中カチオンを貯蔵できる4~12族の金属元素の1種又は複数の酸化物を含む。例としては、現在公知であるか又は今後開発される他のものの中でも、Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ir、Ni、Cu、Znの酸化物、又はこれらの酸化物の任意の混合物、若しくは任意の他の金属酸化物でドープされたこれらの金属酸化物のいずれか1種、例えば、5質量%のTiOでドープされたNbが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、イオン貯蔵層は、遷移金属錯体を含む。遷移金属錯体としては、プルシアングリーン、プルシアンホワイト、プルシアンブラウン又はTenshi blue、Fe[Fe(CN)、酸化第一鉄、酸化第二鉄、四酸化三鉄(ferroferric oxide)、KFeFe(CN)、FeNiHCF、FeHCF、NiHCF、プルシアンブルーナノ粒子又はNxMy{Fe(CN)}(式中、Mは、現在公知であるか又は今後開発される他のものの中でもFe、Co、Ni、Mn、Zn又はCuを含む金属元素であり、Nはアルカリ金属イオンである)のうちの1種が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態において、イオン貯蔵層は、レドックス活性ニトロキシル若しくはガルビノキシルラジカルポリマー、又は共役ポリマーを含むが、これらに限定されないレドックス活性ポリマーのうちの1種又は複数を含む。一部の実施形態において、イオン貯蔵層は、遷移金属錯体及び金属酸化物、遷移金属錯体及びレドックス活性ポリマー、金属酸化物又はレドックス活性ポリマーのいずれかの複合体を含む。
【0010】
一部の実施形態において、エレクトロクロミック層は、WO、ポリ(デシルビオロゲン)及びその誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、あらゆる種類のエレクトロクロミック共役ポリマー、例えば、ポリピロール及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)及びその誘導体、ポリ(プロピレンジオキシチオフェン)及びその誘導体、ポリフラン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、ポリカルバゾール及びその誘導体、並びにこれらのコポリマー、又はベンゾチアジアゾール、ベンゾセレナジアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、キノキサリン及びジケトピロロピロール等の一定の比のアクセプター単位を含有するこれらのコポリマー、並びに現在公知であるか又は今後開発される他のもののうちの1種又は複数を含む。
【0011】
一部の実施形態において、固体電解質層は、モノマー又はオリゴマーが側鎖として可塑化部分を有する、モノマー又はオリゴマーと共重合したイオン伝導性ポリマーを含む。一部の実施形態において、固体電解質層は、-20℃未満のガラス転移温度を有する可塑化直鎖状ポリマーに化学結合しているイオン伝導性ポリマーを含む。一部の実施形態において、固体電解質層は、側鎖として可塑化基を有する可塑化ポリマーブロックに化学結合しているイオン伝導性ポリマーを含む。一部の実施形態において、固体電解質層は、軟質ポリマーの主鎖、並びにイオン伝導性種及び1つ又は複数の不混和性基の側鎖を有するブラシコポリマーを含む。一部の実施形態において、架橋官能基を有する添加剤は、固体電解質層の機械的モジュラス(mechanical modulus)を向上させるために添加され得る。
【0012】
別の態様において、本開示は、エレクトロクロミック素子を形成する方法を記載する。該方法は、第1のフレキシブル基板に第1の透明電極を塗布する工程と;第1のフレキシブル基板上でエレクトロクロミック層を第1の透明電極上に塗布する工程と;第2のフレキシブル基板に第2の透明電極を塗布する工程と;第2のフレキシブル基板上でイオン貯蔵層を第2の透明電極上に塗布する工程と;ポリマー電解質溶液又は電解質前駆体溶液をエレクトロクロミック層の表面に、又はイオン貯蔵層の表面に、又はエレクトロクロミック層の表面及びイオン貯蔵層の表面に、又はエレクトロクロミック層の表面とイオン貯蔵層の表面との間の間隙に供給する工程と;一方の基板の領域が他方の基板で被着されないように第1のフレキシブル基板と第2のフレキシブル基板とを積層する工程と;エレクトロクロミック層とイオン貯蔵層との間に介在するポリマー電解質溶液又は電解質前駆体溶液を硬化させて、エレクトロクロミック素子を形成する工程とを含む。
【0013】
一部の実施形態において、方法は、領域にある第1の透明電極又は第2の透明電極から材料を除去する工程を更に含む。一部の実施形態において、方法は回路を領域に取り付ける工程を更に含む。
【0014】
一部の実施形態において、ポリマー電解質溶液又は電解質前駆体溶液は、3000以下の分子量を有する中性有機小分子を20質量%未満有する電解質層を生成するために硬化される。一部の実施形態において、ポリマー電解質溶液又は電解質前駆体溶液は、塗布された基板を90℃より高い温度、30MP~500MPの圧力で互いに押圧することにより硬化される。一部の実施形態において、ポリマー電解質溶液又は電解質前駆体溶液は、室温(例えば、1気圧)で硬化され得る。
【0015】
一部の実施形態において、エレクトロクロミック層は第1の基板上に、又はイオン貯蔵層は第2の基板上に、現在公知であるか又は今後開発される他のものの中でも、スプレーコーティング、スピンコーティング、スロットダイコーティング、スリットコーティング、ロールツーロールコーティング、微小凹面コーティング、スクリーン印刷、トランスファーコーティング又はワイヤバーコーティングを含む、様々な溶液に適合したコーティング戦略のいずれか1つにより塗布される。また、無機材料の一部はスパッタリング法により作製され得る。
【0016】
本技術の様々な実施形態の特定の特徴は、添付の特許請求の範囲において詳細と共に説明される。技術の特徴及び利点のより良好な理解は、本発明の原理を利用する例示的な実施形態を説明する以下の詳細な説明、及び添付の図面を参照することにより得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】1つの例示的な実施形態による、エレクトロクロミック素子を示すブロック図である。
図2】1つの例示的な実施形態による、エレクトロクロミック素子を形成する方法を例示するフローチャートである。
図3A】例示的な実施形態による、一方の基板の領域が、他方の基板で被着されていない、2つの積層構成を例示する図である。
図3B】例示的な実施形態による、一方の基板の領域が、他方の基板で被着されていない、2つの積層構成を例示する図である。
図4】1つの例示的な実施形態による、六角形のエレクトロクロミック層膜及びイオン貯蔵層膜を示す図である。
図5】1つの例示的な実施形態による、電解質のための前駆体をエレクトロクロミック層にワイヤバーコーターにより分配する方法を示す略図である。
図6】1つの例示的な実施形態による、イオン貯蔵層が、電解質を塗布したエレクトロクロミック層に千鳥状にオーバーレイされることを示す略図である。
図7】1つの例示的な実施形態による、エレクトロクロミック素子の回路を示す略図である。
図8A】1つの例示的な実施形態による、矩形のエレクトロクロミック層膜及びイオン貯蔵層膜を示す図である。
図8B】1つの例示的な実施形態による、図8Aに示すイオン貯蔵層が、図8Aに示す電解質を塗布したエレクトロクロミック層に千鳥状にオーバーレイされることを示す略図である。
図8C】1つの例示的な実施形態による、図8Bに示すエレクトロクロミック素子の回路を示す略図である。
図9】1つの例示的な実施形態による、エレクトロクロミック層膜とイオン貯蔵層膜とをこれらの間に分配された電解質前駆体と共に積層するローラープレス技術を示す略図である。
図10】1つの例示的な実施形態による、様々な角度に曲げられた薄膜ECDの透過率の変化を示す図である。
図11】例示的な実施形態による、様々な作業中のECDを示す写真である。
図12】1つの例示的な実施形態による、1秒のスイッチング時間でのECDの透過率の変化を示すグラフである。
図13A】1つの例示的な実施形態による、固体型ECDを含有する防眩バックミラーを示す分解図である。
図13B図13Aに示す防眩バックミラーの断面図を例示する略図である。
図14A】例示的な実施形態による、薄膜を曲げて曲面バックミラーを形成するための構成を例示する略図である。
図14B】例示的な実施形態による、薄膜を曲げて曲面バックミラーを形成するための構成を例示する略図である。
図15】1つの例示的な実施形態による、バックミラーを形成するためのプロセススキームを示す図である。
図16A】例示的な実施形態による、薄膜を押圧してバックミラーを形成するためのローラーを例示する略図である。
図16B】例示的な実施形態による、薄膜を押圧してバックミラーを形成するためのローラーを例示する略図である。
図17】1つの例示的な実施形態による、バックミラーを形成するための別のプロセススキームを示す図である。
図18】1つの例示的な実施形態による、バックミラーを形成するためのプロセススキームを示す図である。
図19】1つの例示的な実施形態による、バックミラーを形成するための別のプロセススキームを示す図である。
図20】1つの例示的な実施形態による、バックミラーを形成するための別のプロセススキームを示す図である。
図21】1つの例示的な実施形態による、バックミラーを形成するための封止工程を示す略図である。
図22A】例示的な実施形態による、バックミラーを形成するための封止工程を示す略図である。
図22B】例示的な実施形態による、バックミラーを形成するための封止工程を示す略図である。
図23】1つの例示的な実施形態による、バックミラーを形成するための別の封止工程を示す略図である。
図24】1つの例示的な実施形態による、ECDバックミラーの層構造を示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の記載において、ある特定の具体的詳細を、本発明の様々な実施形態の完全な理解を提供するために説明する。しかし、当業者ならば、本発明が、これらの詳細なしに実施できることを理解するであろう。更に、本発明の様々な実施形態を本明細書中に開示するが、多くの適合及び変更を、当業者に公知の共通の一般的知識に従って本発明の範囲内で行ってもよい。このような変更は、実質的に同じ方法で同じ結果を得るために、本発明の任意の態様に対する公知の均等物の置換を含む。
【0019】
文脈上別段要求されない限り、本明細書及び特許請求の範囲を通して、用語「含む」及びその変形形態、例えば、「含む(comprises)」及び「含んでいる(comprising)」は、開かれた包括的な意味、即ち、「含むが、これらに限定されない」と解釈されるものとする。本明細書を通して値の数値範囲の列挙は、範囲を定義する値を含む範囲に該当する各個別の値を個々に参照する簡易表記法として利用することが意図され、各個別の値が、あたかもこれが本明細書で個々に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。更に、文脈上別段明確な指示がない限り、単数形「1つ(種)の(a)、(an)」及び「その(the)」は、複数の指示物を含む。
【0020】
本明細書を通じて「1つの実施形態」又は「一実施形態」への言及は、この実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書を通じて様々な個所における表現「1つの実施形態において」又は「一実施形態において」の出現は、必ずしも全て同じ実施形態を指すわけではないが、場合によってはそうであってもよい。更に、特定の特徴、構造又は特性は、1つ又は複数の実施形態において任意の好適な方式で組み合わせられ得る。
【0021】
本明細書に記載される様々な実施形態は、作用電極及び対電極各々のための固体型薄膜を使用し、これらの薄膜が、更に、in-situ光架橋法又は熱架橋法により形成される高性能固体型透明電解質と一緒に結合される、全固体型ECDを対象とする。本開示の全固体型薄膜ECDは、優れたフレキシビリティを示し、実質的に任意の曲率又は形状に適合し得る。一部の実施形態において、固体型電解質の薄層(例えば、製造に適したコスト効率の高い方法により達成できる5μm)は、イオン伝導体及び電極のセパレータの両方として機能し得る。還元された中性有機小分子(例えば、溶媒、可塑剤、イオン性液体)により、本開示のECDは、より安定な電解質及び電極界面を有し、液体又はゲルベースのECDと比較して長いサイクル寿命をもたらす。一部の実施形態において、小電圧(例えば、1.5V)で、本開示と一致するECDを駆動することが可能であり得、これは、電池駆動用途に有益である。
【0022】
以下で実施形態を添付の図面と共に説明する。最初に図1を参照する。図1は、1つの例示的な実施形態による、エレクトロクロミック素子100のブロック図である。エレクトロクロミック素子100は、第1のフレキシブル基板102、第1のフレキシブル基板102上に配置された第1の透明電極104、第1の透明電極104上に配置されたエレクトロクロミック層106、エレクトロクロミック層106上に配置された固体電解質層108、固体電解質層108上に配置されたイオン貯蔵層110、イオン貯蔵層110上に配置された第2の透明電極112、第2の透明電極112上に配置された第2のフレキシブル基板114、並びに第1の透明電極104及び第2の透明電極112に接続された電源116を含む。一部の実施形態において、固体電解質層108は、3000以下の分子量を有する中性有機小分子を20質量%未満、10質量%未満、5質量%未満又は3質量%未満含有する。一部の実施形態において、固体電解質層108は、公知の装置で検出又は測定できる有機小分子を含まない。一部の実施形態において、固体電解質層108は、非モノマー/非オリゴマー成分のある特定の幾つかの有機対イオン、例えば、リチウム塩を含有し得る。
【0023】
便宜上、本開示において場合によっては、第1のフレキシブル基板102と第1の透明電極104とエレクトロクロミック層106との組み合わせは、作用電極(WE)と称され得、第2のフレキシブル基板114と第2の透明電極112とイオン貯蔵層110との組み合わせは、対電極(CE)と称され得る。
【0024】
一部の実施形態において、第1のフレキシブル基板102及び第2のフレキシブル基板114は、透明基板であり得る。基板102及び114の例示的な材料としては、ポリエチレンテレフタレート、環状オレフィンコポリマー、トリアセテートセルロース又は現在公知であるか若しくは今後開発される他の好適な材料が挙げられる。フレキシブル基板102及び114は、最終ECDを、車両又は船舶用のバックミラー、窓及びサンルーフ等の様々な用途の様々なケースに適合するように曲げることを可能にする。第1のフレキシブル基板102又は第2のフレキシブル基板114の厚さは、10~1000μmであり得る。
【0025】
一部の実施形態において、第1の透明電極104及び第2の透明電極112は、薄膜材料であり得る。透明電極104及び112の例示的な材料としては、反射素子用の酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アルミニウム亜鉛(AZO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、銀ナノワイヤ、グラフェン、カーボンナノチューブ、金属メッシュベースの透明導電性電極、銀ナノ粒子インク、又は現在公知であるか若しくは今後開発される他の好適な材料を挙げることができる。第1の透明電極104又は第2の透明電極112の厚さは、1~800nmであり得る。
【0026】
一部の実施形態において、イオン貯蔵層110は、還元反応中カチオンを貯蔵できる4~12族の金属元素の酸化物を含み得る。例としては、Ti、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ir、Ni、Cu、Znの酸化物、又はこれらの酸化物の任意の混合物、若しくは任意の他の金属酸化物でドープされたこれらの金属酸化物のいずれか1種、例えば、5質量%のTiOでドープされたNb、又は現在公知であるか若しくは今後開発される他の好適な材料が挙げられる。
【0027】
一部の実施形態において、イオン貯蔵層110は、還元反応を受け得る遷移金属錯体を含み得る。例示的な金属錯体としては、プルシアングリーン、プルシアンホワイト、プルシアンブラウン、Tenshi blue、Fe[Fe(CN)、酸化第一鉄、酸化第二鉄、四酸化三鉄、KFeFe(CN)、FeNiHCF、FeHCF、NiHCF、プルシアンブルーナノ粒子又は鉄の無機化合物NxMy{Fe(CN)}(式中、Mは、現在公知であるか又は今後開発される他のものの中でも、Fe、Co、Ni、Mn、Zn及びCuを含む金属元素であり、Nは、現在公知であるか又は今後開発される他のもの中でも、アルカリ金属イオン、例えば、Na、Kである)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
一部の実施形態において、イオン貯蔵層110は、可逆的な還元反応中カチオンを貯蔵できる、レドックス活性ポリマーを含み得る。例示的なレドックス活性ポリマーとしては、レドックス活性ニトロキシル又はガルビノキシルラジカルポリマー(例えば、ポリ(ニトロニルニトロキシルスチレン)及びポリ(ガルビノキシルスチレン))、及び共役ポリマー(現在公知であるか又は今後開発される他のものの中でも、ポリアニリン、PEDOT:PSS、ポリピロールを含む)を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0029】
一部の実施形態において、イオン貯蔵層110は、遷移金属錯体、金属酸化物及びレドックス活性ポリマーの任意の組み合わせの複合体を含み得る。イオン貯蔵層110の厚さは1nm~10μmであり得る。
【0030】
一部の実施形態において、エレクトロクロミック層106は、対イオンを還元/酸化し、貯蔵できる1種又は複数の材料を含み得る。エレクトロクロミック層106は、WO、ポリ(デシルビオロゲン)及びその誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、あらゆる種類のエレクトロクロミック共役ポリマー、例えば、ポリピロール及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)及びその誘導体、ポリ(プロピレンジオキシチオフェン)及びその誘導体、ポリフラン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、ポリカルバゾール及びその誘導体、並びにこれらのコポリマー、又はベンゾチアジアゾール、ベンゾセレナジアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、キノキサリン及びジケトピロロピロール等の一定の比のアクセプター単位を含有するこれらのコポリマー、並びに現在公知であるか又は今後開発される他のものを含む材料の1種又は複数から構成され得る。エレクトロクロミック層106の厚さは、1nm~10μmであり得る。
【0031】
一部の実施形態において、固体電解質層108は、0.1μm~1000μmの厚さを有する。一部の実施形態において、固体電解質層108は、紫外(UV)光又は熱暴露により硬化される液体材料から形成され得、硬化工程中液体から固体型に変化する。固体電解質層108は、(例えば、消泡工程及び用途のための)90℃超の高温で良好なイオン伝導率及び安定性を有する。ECD100における固体電解質層108の利用は、漏れやすさ、不安定性、加工困難性等の液体又はゲル電解質が有する一連の問題を克服し、生産及び工程、並びに安全性能において利点を有する。
【0032】
ECDの場合、固体電解質は透明であることが求められる。また、ECDに好適な固体電解質は、イオン貯蔵層とエレクトロクロミック層との間でイオンを伝達するために伝導性が高くなくてはならない。本開示は、高い透明性、適切なイオン伝導率(例えば、>10-6S/cm)、及び高い安定性を有する固体電解質を提案する。
【0033】
従来、固体電解質は、リチウムイオン電池用に主に開発されてきた。エレクトロクロミック素子は透明度の高い電解質を必要とし、多くの固体電解質についてはその限りではないため、これらの電解質は一般にエレクトロクロミック素子には適さない。エレクトロクロミック素子用の透明な固体電解質の数少ない利用可能な例全体で、一般に2種類が挙げられる。第1の種類は、無機固体電解質、例えば、リチウムリンオキシニトリド(LiPON)である。しかし、LiPONのイオン伝導率は、非常に低く(例えば、10-7S/cm)、LiPONは、高圧スパッタリングでしか加工できない。第2の種類の固体電解質は、可塑剤とブレンドしたポリマーから構成される。例えば、ポリエチレンオキシド(PEO)とスクシノニトリル及びリチウム塩とのブレンドにより、10-4S/cmと高いイオン伝導率を有する固体電解質が得られ得る。しかし、従来の固体電解質材料中の可塑剤は、作業プロセス中、エレクトロクロミック層に容易に浸透し、素子を損傷させる場合がある。
【0034】
本開示は、とりわけ、エレクトロクロミック素子に好適な固体電解質を形成するために、可塑化部分がイオン伝導性ポリマーに共有結合している固体電解質の設計において、新しい解を提供する。典型的なイオン伝導性ポリマー、例えば、PEOは、結晶化する傾向があり、透明性及びイオン伝導率の低下をもたらす。可塑化部分をイオン伝導性ポリマーに導入することにより、ポリマー鎖の規則充填が妨害されて、結晶化が抑制される。したがって、ポリマーの透明性及びイオン伝導率が大幅に向上し得、ECDに好適な電解質が得られる。可塑化部分は、小分子群又は軟質ポリマー鎖であり得る。これらの部分は、ポリマー鎖に共有結合しているため、これらは、ECDの他の層に浸透しない。提案されたポリマー電解質は、高いイオン伝導率、高い透明性及び良好な安定性を有し得る。
【0035】
一部の実施形態において、固体電解質層108は、モノマー又はオリゴマーが側鎖として可塑化部分を有する、モノマー又はオリゴマーと共重合したイオン伝導性ポリマーを含み得る。一部の実施形態において、可塑化部分はモノマー又はオリゴマーの側鎖に結合している小分子群であり、これはイオン伝導性ポリマーと更に共重合して固体電解質になり得る。例示的なポリマー電解質としては、
【0036】
【化1】
【0037】
(式中、x、y及びzは各々0超の整数である)
及び
【0038】
【化2】
【0039】
を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0040】
一部の実施形態において、主鎖の異なる部分間の結合、主鎖と可塑化基(PR)との結合、主鎖と架橋基(CL)との結合は、任意の種類の1つ又は複数の有機結合であり得る。
【0041】
例示的なPR基としては、
【0042】
【化3】
【0043】
を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0044】
一般に、2つ以上のモノマーに結合し得る任意の官能性化学物質は、
【0045】
【化4】
【0046】
を含むが、これらに限定されないCL基として用いられ得る。
【0047】
一部の実施形態において、これらのポリマーを形成するために、側基として可塑化基を有するモノマー又はオリゴマーが最初に合成される。これらのモノマー又はオリゴマーは鎖末端反応によりイオン伝導性ポリマーに更に結合される。これらの可塑化基は、イオン伝導性ポリマーの結晶化度を低下させ、イオン伝導率を向上させ、ポリマー電解質の透明性を改善することができる。また、可塑化基の添加はポリマー電解質の機械的モジュラスを低下させる場合があるため、その機械的特性を維持するために架橋部分も添加され得る。ポリマーは、ポリマー鎖中1つ又は複数の種類の可塑化基を含有し得る。
【0048】
例示的な合成方法を以下に示す。一部の実施形態において、原子移動ラジカル重合(ATRP)が、所望のポリマーを形成するために用いられる。
【0049】
【化5】
【0050】
エンドキャップされたPEGと、可塑化基を有する炭素-炭素二重結合置換モノマーと、架橋基を有する炭素-炭素二重結合置換モノマーとの混合物の溶液を、好適な有機溶媒中で、15分間窒素バブリングする。次いで、Cu(I)塩及びPMDETA(N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン)を添加する。重合前のこの溶液は、電解質前駆体溶液と称される。反応を窒素で保護し、50℃~130℃に加熱する。1時間~48時間の反応後、反応混合物は粘着性を示す。有機相をセライトで濾過し、次いで、溶媒をロータリーエバポレーターで除去して、生成物(ポリマー電解質溶液)を得る。収率は60~95%である。
【0051】
一部の実施形態において、加熱前の全出発原料の混合物(電解質又は電解質前駆体溶液のための前駆体と呼ばれる)はまた、加熱下でのin-situ重合による素子の作製に用いられ得る。
【0052】
一部の実施形態において、エステル化が、所望のポリマーを形成するために用いられる。
【0053】
【化6】
【0054】
アルコール溶液を酸塩化物又は活性エステルと共に-10℃~10℃で好適な有機溶媒に添加する。塩基を混合物に徐々に添加し、混合物を50℃~130℃に加熱して、反応させる。1時間~48時間の反応後、水を混合物に添加する。有機相を蒸留して、溶媒を除去し、ポリマーを得る。収率は60~95%である。
【0055】
一部の実施形態において、加熱前の全出発原料の混合物(電解質又は電解質前駆体溶液のための前駆体と呼ばれる)はまた、加熱下でのin-situ重合による素子の作製に用いられ得る。
【0056】
一部の実施形態において、ランダムコポリマーが、所望のポリマーを形成するために用いられる。
【0057】
【化7】
【0058】
反応(1)において、アミン溶液を酸塩化物と共に-10℃~10℃で好適な有機溶媒に添加する。塩基を混合物に徐々に添加し、混合物を50℃~130℃に加熱して、反応させる。1時間~48時間の反応後、水を混合物に添加する。有機相を蒸留して、溶媒を除去し、ポリマーを得る。収率は60~95%である。
【0059】
反応(2)において、アルキン及びアジドモノマーを好適な有機溶媒に窒素添加する。次いで、銅(I)塩を触媒として添加する。溶液を10℃~130℃で1時間~48時間反応させる。水を混合物に添加する。有機相を蒸留して、溶媒を除去し、ポリマーを得る。収率は60~95%である。
【0060】
反応(3)において、アルコールモノマー溶液をトリホスゲン及び塩基又はN,N’-カルボニルジイミダゾール(CDI)と共に-10℃~10℃で好適な有機溶媒に添加する。混合物を10℃~130℃で1時間~48時間撹拌する。水を混合物に添加する。有機相を蒸留して、溶媒を除去し、ポリマーを得る。収率は60~95%である。
【0061】
一部の実施形態において、加熱前の全出発原料の混合物(電解質又は電解質前駆体溶液のための前駆体と呼ばれる)はまた、加熱下でのin-situ重合による素子の作製に用いられ得る。
【0062】
一部の実施形態において、固体電解質層108は、-20℃未満のガラス転移温度を有する可塑化直鎖状ポリマーに化学結合しているイオン伝導性ポリマーを含み得る。例示的な直鎖状ポリマーとしては、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリイソブチレン、シロキサン等が挙げられるが、これらに限定されない。また、これらの可塑化直鎖状ポリマーとイオン伝導性ポリマーとの結合により、ポリマーのイオン伝導率及び透明性が向上し得る。
【0063】
例示的なポリマー電解質としては、
【0064】
【化8】
【0065】
(式中、x、y及びzは各々0超の整数である)
及び
【0066】
【化9】
【0067】
を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0068】
SPは低ガラス転移温度(<-20℃)を有する軟質ポリマーを意味する。主鎖の異なる部分間の結合及び主鎖とCLとの結合は、任意の種類の1つ又は複数の有機結合であり得る。
【0069】
架橋(CL)基は、2つ以上のモノマーに結合し得る任意の官能性化学物質を含み得る。例示的なCL基としては、
【0070】
【化10】
【0071】
を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0072】
一部の実施形態において、ECD電解質に好適なポリマーは、ポリエチレン、PEO及び架橋基で形成され得る。例示的な反応としては、
【0073】
【化11】
【0074】
が挙げられるが、これらに限定されない。
【0075】
上記の反応において、アルコールモノマー及び官能化ポリエチレンの溶液を、トリホスゲン及び塩基又はN,N’-カルボニルジイミダゾール(CDI)と共に-10℃~10℃で好適な有機溶媒に添加する。混合物を10℃~130℃で1時間~48時間撹拌する。水を混合物に添加する。有機相を蒸留して、溶媒を除去し、ポリマーを得る。収率は60~95%である。
【0076】
一部の実施形態において、加熱前の全出発原料の混合物(電解質又は電解質前駆体溶液のための前駆体と呼ばれる)はまた、加熱下でのin-situ重合による素子の作製に用いられ得る。
【0077】
一部の実施形態において、ECD電解質に好適なポリマーは、ポリイソブチレン、PEO及び架橋基で形成され得る。例示的な反応としては、
【0078】
【化12】
【0079】
が挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
上記の反応において、アルコールモノマー及び官能化ポリイソブチレンの溶液を、トリホスゲン及び塩基又はN,N’-カルボニルジイミダゾール(CDI)と共に-10℃~10℃で好適な有機溶媒に添加する。混合物を10℃~130℃で1時間~48時間撹拌する。水を混合物に添加する。有機相を蒸留して、溶媒を除去し、ポリマーを得る。収率は60~95%である。
【0081】
一部の実施形態において、加熱前の全出発原料の混合物(電解質又は電解質前駆体溶液のための前駆体と呼ばれる)はまた、加熱下でのin-situ重合による素子の作製に用いられ得る。
【0082】
一部の実施形態において、ECD電解質に好適なポリマーは、シロキサン、PEO及び架橋基で形成され得る。例示的な反応としては、
【0083】
【化13】
【0084】
が挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
上記の反応において、全出発原料及びシロキサンの溶液を、トリホスゲン及び塩基又はN,N’-カルボニルジイミダゾール(CDI)又は触媒と共に-10℃~10℃で好適な有機溶媒に添加する。混合物を10℃~130℃で1時間~48時間撹拌する。次いで、水を混合物に添加する。有機相を蒸留して、溶媒を除去し、ポリマーを得る。収率は60~95%である。
【0086】
一部の実施形態において、加熱前の全出発原料の混合物(電解質又は電解質前駆体溶液のための前駆体と呼ばれる)はまた、加熱下でのin-situ重合による素子の作製に用いられ得る。
【0087】
一部の実施形態において、ECD電解質に好適なポリマーは、以下のように形成され得る。
【0088】
【化14】
【0089】
この反応において、3g(10mmol)のポリエチレングリコール(Mn約300)、3.0g(1mmol)のポリ(ジメチルシロキサン)ビス(3-アミノプロピル)末端(Mn約3000)、0.015g(0.1mmol)のトリエチレンテトラミンを100mLのジクロロメタン(DCM)に添加する。溶液を0℃に冷却した後、1.13g(3.8mmol)のトリホスゲンを溶液に徐々に添加する。2.5g(24.7mmol)のトリエチルアミンを滴下添加する。0℃で2時間の撹拌後、溶液を室温まで再び昇温し、18時間撹拌する。100mlのDI水を混合物に添加して、有機溶液を洗浄する。有機相を回収し、MgSOで乾燥し、次いで、真空蒸留して、溶媒を除去し、生成物(ポリマーA)を得る。収率は80~100%である。
【0090】
一部の実施形態において、ECD電解質に好適なポリマーは、以下のように形成され得る。
【0091】
【化15】
【0092】
この反応において、6g(1mmol)のポリエチレングリコール(Mn約6000)、3.0g(1mmol)のポリ(ジメチルシロキサン)ビス(3-アミノプロピル)末端(Mn約3000)、0.015g(0.1mmol)のトリエチレンテトラミンを100mLのジクロロメタン(DCM)に添加する。溶液を0℃に冷却した後、0.21g(0.71mmol)のトリホスゲンを溶液に徐々に添加する。0.47g(4.6mmol)のトリエチルアミンを滴下添加する。0℃で2時間の撹拌後、溶液を室温まで再び昇温し、18時間撹拌する。100mlのDI水を混合物に添加して、有機溶液を洗浄する。有機相を回収し、MgSOで乾燥し、次いで、真空蒸留して、溶媒を除去し、生成物(ポリマーB)を得る。収率は80~100%である。
【0093】
一部の実施形態において、ECD電解質に好適なポリマーは、以下のように形成され得る。
【0094】
【化16】
【0095】
この反応において、6g(1mmol)のポリエチレングリコール(Mn約6000)、3.0g(1mmol)のポリ(ジメチルシロキサン)ビス(3-アミノプロピル)末端(Mn約3000)を100mLのトルエンに添加する。溶液を0℃に冷却した後、0.324g(2mmol)のN,N’-カルボニルジイミダゾール(CDI)を溶液に徐々に添加する。0℃で2時間の撹拌後、溶液を60℃に加熱し、18時間撹拌する。100mlのDI水を混合物に添加して、有機溶液を洗浄する。有機相を回収し、MgSOで乾燥し、次いで、真空蒸留して、溶媒を除去し、生成物(ポリマーC)を得る。収率は80~100%である。
【0096】
一部の実施形態において、ECD電解質に好適なポリマーは、以下のように形成され得る。
【0097】
【化17】
【0098】
この反応において、6g(1mmol)のポリエチレングリコール(Mn約6000)、0.8g(1mmol)のポリ(ジメチルシロキサン)ジグリシジルエーテル末端及び0.1g(1mmol)のトリエチルアミンを100mLのトルエンに添加する。溶液を110℃に24時間加熱する。100mlのDI水を混合物に添加して、有機溶液を洗浄する。有機相を回収し、MgSOで乾燥し、次いで、真空蒸留して、溶媒を除去し、生成物(ポリマーD)を得る。収率は80~100%である。
【0099】
一部の実施形態において、固体電解質層108は、側鎖として可塑化基を有する可塑化ポリマーブロックに化学結合しているイオン伝導性ポリマーを含み得る。
【0100】
例示的なポリマー電解質としては、
【0101】
【化18】
【0102】
(式中、x、y及びzは各々0超の整数である)、
及び
【0103】
【化19】
【0104】
を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0105】
主鎖の異なる部分間の結合、主鎖SPとPRとの結合、主鎖とCLとの結合は、任意の種類の1つ又は複数の有機結合であり得る。SPは、低ガラス転移温度(<-20℃)を有する軟質ポリマーである。
【0106】
例示的なPR基としては、
【0107】
【化20】
【0108】
を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0109】
例示的なCL基としては、
【0110】
【化21】
【0111】
を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0112】
一部の実施形態において、ECD電解質に好適なポリマーは、シロキサンポリマー上の可塑化基、PEO及び架橋基で形成され得る。例示的な反応としては、
【0113】
【化22】
【0114】
が挙げられるが、これらに限定されない。
【0115】
上記の反応において、アルコールモノマー及びシロキサンの溶液を、トリホスゲン及び塩基又はN,N’-カルボニルジイミダゾール(CDI)と共に-10℃~10℃で好適な有機溶媒に添加する。混合物を10℃~130℃で1時間~48時間撹拌する。次いで、水を混合物に添加する。有機相を蒸留して、溶媒を除去し、ポリマーを得る。収率は60~95%である。
【0116】
一部の実施形態において、加熱前の全出発原料の混合物(電解質又は電解質前駆体溶液のための前駆体と呼ばれる)はまた、加熱下でのin-situ重合による素子の作製に用いられ得る。
【0117】
一部の実施形態において、固体電解質層108は、軟質ポリマーの主鎖、並びにイオン伝導性種及び1つ又は複数の不混和性基の側鎖を有するブラシコポリマーを含み得る。直鎖型ポリマーとは異なり、ブラシ型ポリマーは、嵩高い側鎖により密な充填を形成するには非常に硬い。したがって、結晶領域を回避し、非晶質構造を形成して、十分に透明な固体電解質を得るために、新しい設計のブラシ型ポリマーが提案される。
【0118】
一部の実施形態において、ブラシ型ポリマーのための非晶質構造を確保するために、ポリマー主鎖は、自由に回転できる比較的軟質のポリマー鎖からなる。軟質ポリマー鎖の例としては、シロキサン鎖、エチレン鎖、アクリレート鎖、メチルアクリレート鎖及び上記材料の2種類以上の組み合わせが挙げられる。一部の実施形態において、イオン伝導性種に加えて、1つ又は複数の不混和性基が、ポリマー鎖の充填を破壊するためにポリマー側鎖に更に導入され得る。不混和性基は、例えば、アルキル鎖、芳香族基、又はイオン伝導性基と混和しない任意の基であり得る。ブラシポリマーが液体状態である場合、又は低い機械的モジュラスを有する場合、固体状態を確保するか、又は機械的モジュラスを向上させるために、架橋基が添加され得る。
【0119】
ポリマーの充填を妨害するための様々な側鎖を有する例示的なブラシ型ポリマーとしては、
【0120】
【化23】
【0121】
(式中、x、y及びzは各々0超の整数である)
が挙げられるが、これらに限定されず、主鎖としては、
【0122】
【化24】
【0123】
が挙げられるが、これらに限定されない。
【0124】
NMは、アルキル鎖、芳香族基、アルキルと芳香族基との組み合わせ又はイオン伝導性基と混和しない任意の基を含む構造を有する不混和性基を意味する。
【0125】
ICは、
【0126】
【化25】
【0127】
を含み得るが、これらに限定されないイオン伝導性基を意味する。
【0128】
CLは、2つ以上のモノマーを結合し得る任意の官能性化学物質を含む架橋基を意味する。例示的なCL基としては、
【0129】
【化26】
【0130】
を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0131】
一部の実施形態において、主鎖の異なる部分間の結合、主鎖とICとの結合、主鎖とNMとの結合、主鎖とCLとの結合は、任意の種類の1つ又は複数の有機結合であり得る。
【0132】
2つの方法がECD電解質用の上記ポリマーを形成するために用いられ得る。第1の方法は、最初に主鎖ポリマーを形成し、次いで、様々な側鎖を主鎖にグラフトして所望のポリマーを得る工程を含む。第2の方法は、様々な種類の側鎖を有するモノマー又はオリゴマーを形成し、次いで重合して、所望のポリマーを得る工程を含む。
【0133】
例示的な第1の方法において、シロキサンは主鎖として用いられる。例えば、所望のポリマーは、
【0134】
【化27】
【0135】
を含むが、これらに限定されない反応により形成され得る。
【0136】
上記の反応において、ポリメチルヒドロシロキサン、ビニル置換不混和性基、ビニル置換イオン伝導性基及びビニル置換架橋基の溶液を、好適な有機溶媒中で、約15分間窒素バブリングする。次いで、触媒としてPtを添加する。反応を窒素で保護し、40℃~110℃に加熱する。1時間~24時間後、反応混合物は粘着性を示す。混合物の溶媒をロータリーエバポレーターで除去して、生成物を得る。該方法の収率は60~97%である。
【0137】
一部の実施形態において、加熱前の全出発原料の混合物(電解質又は電解質前駆体溶液のための前駆体と呼ばれる)はまた、加熱下でのin-situ重合による素子の作製に用いられ得る。
【0138】
ECD電解質用の別の例示的なポリマーは、以下の反応:
【0139】
【化28】
により形成され得る。
【0140】
この反応において、2.3g(約1mmol)のポリ(メチルヒドロシロキサン)(Mn=2100~2400)、0.56g(5mmol)の1-オクテン、7.14g(35mmol)のアリルオキシ(トリエチレンオキシド)メチルエーテルを100mlのトルエンに添加する。溶液を約15分間窒素バブリングし、次いで、0.4g(0.4mmol)のカールシュテット触媒を窒素添加する。反応を窒素で保護し、50℃に加熱する。24時間後、反応混合物は粘着性を示す。混合物の溶媒をロータリーエバポレーターで除去して、生成物(ポリマーA)を得る。該方法の収率は80~100%である。
【0141】
ECD電解質用の更に別の例示的なポリマーは、以下の反応:
【0142】
【化29】
【0143】
により形成され得る。
【0144】
この反応において、2.3g(約1mmol)のポリ(メチルヒドロシロキサン)(Mn=2100~2400)、0. 56g(5mmol)の1-オクテン、6.73g(33mmol)のアリルオキシ(トリエチレンオキシド)メチルエーテル、0.22g(2mmol)の1,7-オクタジエンを100mlのトルエンに添加する。溶液を約15分間窒素バブリングし、次いで、0.4g(0.4mmol)のカールシュテット触媒をそこに窒素添加する。反応を窒素で保護し、50℃に加熱する。24時間後、反応混合物は粘着性を示す。混合物の溶媒をロータリーエバポレーターで除去して、生成物(ポリマーB)を得る。該方法の収率は80~100%である。
【0145】
ECD電解質用の別の例示的なポリマーは、以下の反応:
【0146】
【化30】
【0147】
により形成され得る。
【0148】
この反応において、2.3g(約1mmol)のポリ(メチルヒドロシロキサン)(Mn=2100~2400)、0.52g(5mmol)のスチレン、6.73g(33mmol)のアリルオキシ(トリエチレンオキシド)メチルエーテル、0.22g(2mmol)の1,7-オクタジエンを100mlのトルエンに添加する。溶液を約15分間窒素バブリングした後、0.4g(0.4mmol)のカールシュテット触媒をそこに窒素添加する。反応を窒素で保護し、50℃に加熱する。24時間後、反応混合物は粘着性を示す。混合物の溶媒をロータリーエバポレーターで除去して、生成物(ポリマーC)を得る。該方法の収率は80~100%である。
【0149】
別の例示的な第1の方法において、1,2-ポリブタジエンが主鎖として用いられる。例えば、所望のポリマーは、
【0150】
【化31】
【0151】
を含むが、これらに限定されない反応により形成され得る。
【0152】
条件1:加熱による重合。1,2-ポリブタジエン、チオール置換不混和性基、チオール置換イオン伝導性基及びチオール置換架橋基を、ラジカル開始剤あり又はなしで、好適な有機溶媒溶液中で、又は溶媒なしの条件下で混合する。混合物を40℃~110℃で10分~24時間加熱して、粘着性溶液又は固体を得る。合成した粘着性溶液又は固体は標的ポリマー電解質として使用でき、これを作用電極又は対電極上に塗布して、固体電解質膜を形成することができる。
【0153】
一部の実施形態において、重合前の全出発原料の混合物(電解質又は電解質前駆体溶液のための「前駆体」と呼ばれる)はまた、加熱下でのin-situ重合による素子の作製に用いられ得る。
【0154】
条件2:UV光による重合。1,2-ポリブタジエン、チオール置換不混和性基、チオール置換イオン伝導性基及びチオール置換架橋基を、ラジカル開始剤あり又はなしで、好適な有機溶媒溶液中で、又は溶媒なしの条件下で混合する。混合物をUV光に2分~150分間暴露して、粘着性溶液又は固体を得る。合成した粘着性溶液又は固体は標的ポリマー電解質として使用でき、これを作用電極又は対電極上に塗布して、固体電解質膜を形成することができる。
【0155】
一部の実施形態において、重合前の全出発原料の混合物(電解質又は電解質前駆体溶液のための「前駆体」と呼ばれる)はまた、UV光下でのin-situ重合による素子の作製に直接用いられ得る。
【0156】
例示的なラジカル開始剤としては、tert-アミルペルオキシベンゾエート、4,4-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルペルオキシド2、2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブタン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチル-3-ヘキシン、ビス(1-(tert-ブチルペルオキシ)-1-メチルエチル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロ-ヘキサン、tert-ブチルヒドロペルオキシド、tert-ブチルペルアセテート、tert-ブチルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンンゾエート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、2,4-ペンタンジオンペルオキシド、過酢酸及び過硫酸カリウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0157】
例示的な第2の方法において、様々な種類の側鎖を有するモノマーが、所望のポリマーを得るために形成され、次いで重合される。例えば、所望のポリマーは、
【0158】
【化32】
【0159】
を含む反応により形成され得る。
【0160】
条件1:加熱による重合。不混和性基を有するモノマー、イオン伝導性基を有するモノマー及び架橋基を有するモノマーを、ラジカル開始剤あり又はなしで、好適な有機溶媒溶液中で、又は溶媒なしの条件下で混合する。混合物を40℃~110℃に10分~24時間加熱して、粘着性溶液又は固体を得る。合成した粘着性溶液又は固体は標的ポリマー電解質として使用でき、これを作用電極又は対電極上に塗布して、固体電解質膜を形成することができる。
【0161】
一部の実施形態において、重合前の全出発原料の混合物(電解質又は電解質前駆体溶液のための「前駆体」と呼ばれる)はまた、加熱下でのin-situ重合による素子の作製に直接用いられ得る。
【0162】
条件2:UV光による重合。不混和性基を有するモノマー、イオン伝導性基を有するモノマー及び架橋基を有するモノマーを、ラジカル開始剤あり又はなしで、好適な有機溶媒溶液中で、又は溶液なしの条件下で混合する。混合物をUV光に2分~150分間暴露して、粘着性溶液又は固体を得る。合成した粘着性溶液又は固体は標的ポリマー電解質として使用でき、これを作用電極又は対電極上に塗布して、固体電解質膜を形成することができる。
【0163】
一部の実施形態において、重合前の全出発原料の混合物(電解質又は電解質前駆体溶液のための「前駆体」と呼ばれる)はまた、UV光下でのin-situ重合による素子の作製に用いられ得る。
【0164】
例示的なラジカル開始剤としては、tert-アミルペルオキシベンゾエート、4,4-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルペルオキシド2、2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブタン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチル-3-ヘキシン、ビス(1-(tert-ブチルペルオキシ)-1-メチル-エチル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、tert-ブチルヒドロペルオキシド、tert-ブチルペルアセテート、tert-ブチルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンンゾエート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、クメンヒドロペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、2,4-ペンタンジオンペルオキシド、過酢酸及び過硫酸カリウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0165】
一部の実施形態において、所望のポリマーは、
【0166】
【化33】
【0167】
を含むが、これらに限定されない反応により形成され得る。
【0168】
これらの反応において、不混和性基を有するノルボルネンモノマー、イオン伝導性基を有するノルボルネンモノマー及び架橋基を有するノルボルネンモノマーの溶液を、好適な有機溶媒中で、15分間窒素バブリングする。次いで、グラブス触媒をそこに添加する。反応を窒素で保護し、40℃~110℃に加熱する。10分~24時間後、反応混合物は粘着性を示す。混合物の溶媒をロータリーエバポレーターで除去して、生成物を得る。該方法の収率は60~97%である。
【0169】
一部の実施形態において、加熱前の全出発原料の混合物(電解質又は電解質前駆体溶液のための前駆体と呼ばれる)はまた、加熱下でのin-situ重合による素子の作製に用いられ得る。
【0170】
一部の実施形態において、エレクトロクロミック素子用の固体電解質薄膜に加工する前に、上記のポリマー電解質又は電解質前駆体(例えば、重合前の、1種又は複数のラジカル開始剤あり又はなし、触媒あり又はなしの、モノマー又はオリゴマー全ての混合物)のいずれか1種又は複数は、1種又は複数種の有機又は無機塩とブレンドされ得る。例示的な無機塩としては、Li、Na、K、Mg2+、Ca2+、A13+ベースの塩、及び現在公知であるか又は今後開発される他のものが挙げられる。例示的な有機塩としては、イオン性液体、例えば、EMITFSI、EMIOTF及び現在公知であるか又は今後開発される他のものが挙げられる。
【0171】
一部の実施形態において、例示的な塩のいずれか1種又は複数とブレンドする前に、本明細書に開示されるポリマー電解質のいずれか1種又は複数は、1種又は複数の適切な溶媒に溶解され得る。溶媒はポリマーと塩との十分なブレンドを補助でき、塗布されて膜になった後蒸発により除去できる。ポリマー電解質溶液は、スプレーコーティング、スピンコーティング、スロットダイコーティング、スリットコーティング、ロールツーロールコーティング、トランスファーコーティング及びワイヤバーコーティングを含むが、これらに限定されない様々な従来の溶液に適合したコーティング戦略のいずれか1つにより塗布されて膜になり得る。
【0172】
以下で図2を参照する。図2は、1つの例示的な実施形態による、エレクトロクロミック素子を形成する方法200を例示するフローチャートである。202では、第1のフレキシブル基板に第1の透明電極が塗布される。第1の透明電極は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アルミニウム亜鉛(AZO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、銀ナノワイヤ、グラフェン、カーボンナノチューブ、金属メッシュベースの透明導電性電極又は銀ナノ粒子インクを挙げることができるが、これらに限定されない。第1の透明電極は、物理的又は化学的蒸着法、例えば、スパッタリングにより塗布/蒸着され得る。204では、第1のフレキシブル基板上で、エレクトロクロミック層が第1の透明電極上に塗布される。206では、第2のフレキシブル基板に第2の透明電極が塗布される。第2の透明電極は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アルミニウム亜鉛(AZO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、銀ナノワイヤ、グラフェン、カーボンナノチューブ、金属メッシュベースの透明導電性電極又は銀ナノ粒子インクを挙げることができるが、これらに限定されない。第2の透明電極は、物理的又は化学的蒸着法、例えば、スパッタリングにより塗布/蒸着され得る。208では、第2のフレキシブル基板上で、イオン貯蔵層が第2の透明電極上に塗布される。
【0173】
210では、ポリマー電解質溶液又は電解質前駆体溶液が、エレクトロクロミック層の表面に、又はイオン貯蔵層の表面に、又はエレクトロクロミック層の表面及びイオン貯蔵層の表面に、又はエレクトロクロミック層の表面とイオン貯蔵層の表面との間の間隙に供給される。212では、一方の基板の領域が他方の基板で被着されないように、かつ電解質溶液がエレクトロクロミック層とイオン貯蔵層との間に介在するように、第1のフレキシブル基板と第2のフレキシブル基板とが積層される。
【0174】
例えば、上記の作業で調製した第1のフレキシブル基板(WE)と第2のフレキシブル基板(CE)の一方又は両方は、大理石板、ガラス等の平面に平らに敷設される。ポリマー電解質溶液又は電解質モノマー/オリゴマー溶液(固体電解質のための前駆体)は、第1のフレキシブル基板及び/又は第2のフレキシブル基板に、スプレーコーティング、スピンコーティング、スロットダイコーティング、スリットコーティング、ロールツーロールコーティング、微小凹面コーティング、スクリーン印刷、トランスファーコーティング、ワイヤバーコーティング等を含む様々な溶液に適合したコーティング戦略のいずれか1つにより塗布される。電解質溶液が基板の一方又は両方に均一に広げられた後、基板は互いに積層される。使用できる好適な膜積層法としては、交差被着、不整合被着及び完全被着が挙げられるが、これらに限定されない。図3A及び図3Bは、一方の基板の領域が、他方の基板で被着されていない2つの積層構成を例示する。
【0175】
一部の実施形態において、ポリマー電解質溶液が基板の一方又は両方に均一に広げられた後、ポリマー電解質溶液の溶媒の部分は、室温で、又は60~140℃の範囲の温度のオーブンのいずれかで、真空あり又はなしで乾燥させる。次いで、基板は互いに積層される。使用できる好適な膜積層法としては、交差被着、不整合被着及び完全被着が挙げられるが、これらに限定されない。
【0176】
積層後、ローラープレス機、平板プレス装置、真空プレス装置、又は現在公知であるか若しくは今後開発される他の装置が、前駆体を消泡するために用いられ得る。例えば、より具体的には、WE、CE及びこれらの間の前駆体からなる多層薄膜アセンブリは、平板プレス装置に配置され、室温(例えば、1気圧)で又は30MP~500MPの圧力で、加熱下(例えば、90℃超)で、所定の時間、例えば、1分~30分間押圧され得る。電解質層の気泡が除去された後、押圧工程は終了できる。或いは、多層薄膜アセンブリは圧延プレス機に配置され、例えば、0.5m/秒~30m/秒の速度で、室温で又は加熱下(例えば、90℃超)で気泡が電解質層から除去されるまで消泡され得る。
【0177】
一部の実施形態において、ポリマー電解質溶液又は電解質前駆体は、例えば、ディスペンサーでCEとWEとの間に均一に滴下され得る。WE及びCEは、その間に介在する電解質前駆体と共に、ローラープレスで一緒に押圧される。一部の実施形態において、ローラープレスの圧力は1MP~200MPの範囲であり、速度は、例えば、約0.1m/秒~約30m/秒の範囲であり得る。前駆体滴下速度は、例えば、X*Y*Zml/秒(式中、X(cm)は電解質の厚さであり、Y(cm/秒)はローラープレスの速度であり、Z(cm)はWEとCEの一致部分の幅である)により推定され得る。この技術は、ECDのコスト効率の良い大規模なオンライン組み立てに適用され得る。
【0178】
214では、電解質溶液が、エレクトロクロミック素子を形成するために硬化される。一部の実施形態において、電解質溶液は熱処理により硬化され得る。例えば、電解質溶液は80℃~120℃で、30MP~500MPの圧力で、1~30分間硬化され得る。例えば、多層薄膜アセンブリは、均一な熱放射のオーブンに配置され、90℃の温度で1分~30分間焼成されて、十分に架橋された固体型電解質薄膜を形成することができ、これは更にWE及びCE薄膜を一緒に結合する。
【0179】
一部の実施形態において、2つの電解質間に介在するポリマー電解質溶液を有する積層された素子は、60℃~140℃の範囲の温度のオーブンで、真空あり又はなしで乾燥させて、固体型電解質薄膜を形成し、これは更にWE及びCE薄膜を一緒に結合する。
【0180】
一部の実施形態において、電解質溶液はUV照射により硬化され得る。一部の実施形態において、電解質溶液は、3000以下の分子量を有する中性有機小分子を20質量%未満有する電解質層を生成するために硬化される。一部の実施形態において、電解質溶液は、3000以下の分子量を有する3質量%未満の中性有機小分子を有する電解質層を生成するために硬化される。あまりに多くの中性有機小分子が電解質層に存在する場合、これらは、イオン貯蔵層とエレクトロクロミック層との間のイオン伝導率を阻害する可能性がある。一部の実施形態において、電解質溶液は、利用可能な装置で検出又は測定できる中性有機小分子を含まない電解質層を生成するために硬化され得る。
【0181】
一部の実施形態において、多層薄膜アセンブリは、均一な熱放射のオーブンに配置され、90℃の温度で1分~30分間焼成されて、十分に架橋された固体型電解質薄膜を形成することができ、これは更にWE及びCEの両方を一緒に結合する。
【0182】
一部の実施形態において、方法200は216を更に含み、そこで、他方の基板で被着されていない一方の基板の領域にある第1の透明電極又は第2の透明電極上の材料が除去される。この作業は、透明電極上の材料を除去し、透明電極の表面を暴露する。基板表面のエレクトロクロミック層、イオン貯蔵層及びイオン輸送(電解質)層を除去する技術としては、ぬぐい取り、レーザーエッチング及びプラズマエッチングが挙げられるが、これらに限定されない。無塵紙、無塵布等でぬぐい取る場合、これらの層からの材料を溶解できる適切な溶媒が用いられ得る。例えば、ぬぐい溶剤としては、当技術分野で公知の他のものの中でも、アセトン、エタノール、o-キシレンを挙げることができるが、これらに限定されない。ぬぐい取り前、シリカゲル又は同じ形状の他の材料の型が、膜の剥離及び領域の汚染を回避するために、プロテクターとして用いられ得る。レーザーエッチングが用いられる場合、装置のパラメータは、WE、CE及びイオン輸送層の厚さ及び材料特性に従って決定され得る。例えば、レーザーエッチングは、10w~200wのエネルギー及び10Hz~20000Hzの周波数を用いて10mm/秒~600mm/秒の速度で行われ得る。
【0183】
218では、回路が領域に取り付けられる。例えば、エレクトロクロミック素子を制御する回路は、暴露された透明電極に接続される。回路は、例えば、両面導電性テープを接着することによるか、又は導電性ペースト/インクを領域に分配して、暴露された導電性領域において一定の幅の導電性ワイヤを形成することにより、領域に取り付けられ得る。フレキシブル印刷回路板、銀ペースト又は銅ワイヤが回路上に接着され、延出されて、電源と接続することができる。
【0184】
次いで、上記の作業により形成された全固体型薄膜エレクトロクロミック素子は、数ある中でも自動車、航空機、建物、サングラス、医療処置及び教育等の様々な用途の様々な製品に封入され得る。
【0185】
1. 実施形態1:
1. WE薄膜の調製
800mgのポリ(エチルヘキサンプロピレンジオキシチオフェン)を10mlのo-キシレンに溶解し、10時間磁気撹拌して、溶液を形成する。溶液を、ナノ銀透明導電性膜(ナノ銀導電性層を塗布した基板)の表面にシートスリットコーティング装置で均一に塗布する。塗布したエレクトロクロミック層膜を120℃の高温で30分間焼成して、良好な接着性を有する膜をフレキシブル導電性基板の表面に形成して、WEを得る。その後、作製されたままのエレクトロクロミック層膜を、図4に示すように形状402に打抜機で切断する。
【0186】
2. イオン貯蔵層膜(CE)の調製
マグネトロンスパッタリング技術を使用して、数十マイクロメートルの厚さの三酸化タングステン膜をフレキシブルナノ銀透明導電性膜の表面に室温で蒸着して、イオン貯蔵層膜を得る。次いで、イオン貯蔵層膜を、図4に示すように、エレクトロクロミック層膜と同じ形状(404)に打抜機で切断する。
【0187】
3. イオン輸送層の調製
ブラシ型ポリマーを、イオン輸送層(電解質)として使用する。ポリマーを、リチウム塩及び紫外線硬化開始剤と45/45/10の質量比で混合する。30分間の磁気撹拌後、超音波振動を使用して、混合物を30分間消泡して、すぐに使用できる前駆体溶液を得る。前駆体502をエレクトロクロミック層504の端部に分配し、図5に示すようにWE506の表面にワイヤバーコーター508で均一に分布させる。
【0188】
4. 嵌合及び硬化
イオン貯蔵層を、図6に示すように、電解質を塗布したエレクトロクロミック層に千鳥状にオーバーレイし、WEとCEを互いに向かい合わせる。次いで、積層された複合膜を、ローラープレスに供給して、複合膜層の気泡を除去する。消泡後、積層されたECDをUV光下に置き、それにより電解質前駆体を完全に架橋して、固体複合体を形成し、かつWE及びCEを一緒に結合して、ECDを形成する。
【0189】
5. 導電性領域の暴露及び回路のレイアウト
(短冊状の)予備回路領域に残った電解質及びWEを、アセトンを用いてぬぐい去る。イオン貯蔵層をレーザーエッチング除去して、導電性層を暴露する。銅導電性テープ702を導電性層の暴露された領域に接着し、延出して、正極及び負極にする。その場合、WEに接続されたリードは正極であり、CEに接続されたリードは負極である。回路のレイアウト及び配線を図7に示す。
【0190】
実施形態2
1. エレクトロクロミック層薄膜(WE)の調製
800mgのECP(2,5-ジブロモ-及び2,5-トリブチルスタンニル-2-エチル-ヘキシルオキシ-置換エチルヘキサン-3,4-プロピレンジオキシチオフェン(ProDOT-(CHOEtHx))と4,7-ジブロモ-2,1,3-ベンゾチアジアゾール(BTD)とのコポリマー)を10mlのo-キシレンに溶解し、10時間磁気撹拌して、溶液を形成する。溶液を、ITO透明導電性膜の表面にスピンコーティングで均一に塗布する。次いで、塗布したエレクトロクロミック層膜を120℃の温度で30分間焼成して、フレキシブル導電性膜の表面に良好に接着する膜を形成して、エレクトロクロミック層膜を得る。その後、エレクトロクロミック層膜を、所望の形状に打抜機で切断する。
【0191】
2. イオン貯蔵層膜(CE)の調製
TiOでのドープあり又はなしのNbのインクをスロットダイコーティングにより数十ナノメートルの厚さにフレキシブルITO透明導電性膜の表面に室温で塗布して、イオン貯蔵層膜を得る。
【0192】
3. イオン輸送層の調製
ブラシ型ポリマーを、イオン輸送層(電解質)として使用する。ポリマーを、リチウム塩及び熱硬化開始剤と50/45/5の質量比で混合する。10分間の磁気撹拌後、超音波振動を使用して、混合物を10分間消泡して、すぐに使用できる前駆体溶液を得る。前駆体を、エレクトロクロミック層の表面にスクリーン印刷で均一に塗布する。
【0193】
4. 嵌合及び硬化
イオン貯蔵層を、電解質を塗布したエレクトロクロミック層に千鳥状にオーバーレイする。次いで、積層された複合膜を、真空積層機で平らにし、高圧で消泡して、複合膜層の気泡を除去し、次いで、複合膜を100℃の高温で10分間硬化させて、固体複合体を形成し、かつWE及びCEを一緒に結合して、ECDを形成する。
【0194】
5. 導電性領域の暴露及び回路のレイアウト
(短冊状の)予備回路領域に残った電解質及びWEを、アセトンを用いてぬぐい去る。イオン貯蔵層をレーザーエッチング除去して、導電性層を暴露する。銀ワイヤ又は銀ペースト布を使用して、回路を導電性層の暴露された領域に形成し、FPCを銀接着剤で固定することにより正極及び負極を配線する。その場合、WEに接続されたリードは正極であり、CEに接続されたリードは負極である。
【0195】
実施形態3
1. エレクトロクロミック層薄膜(WE)の調製
薄膜調製工程は、上の実施形態1に記載されるのと同じである。それ以外に、WEを2cm×2cmの大きさの正方形に打抜機で切断する。
【0196】
2. イオン貯蔵層膜(CE)の調製
薄膜調製工程は、上の実施形態2に記載されるのと同じである。それ以外に、CEを2cm×2cmの大きさの正方形に打抜機で切断する。
【0197】
3. イオン輸送層の調製
上の実施形態1に記載されるのと同じである。
【0198】
4. 嵌合及び硬化
イオン貯蔵層を、電解質を塗布したエレクトロクロミック層に千鳥状にオーバーレイする。次いで、積層された薄膜を、真空積層機で平らにし、高圧で消泡して、複合膜層の気泡を除去し、次いで、電解質前駆体をUV照射により完全に架橋して、固体複合体を形成し、かつWE及びCEを一緒に結合して、ECDを形成する。
【0199】
5. 導電性領域の暴露及び回路のレイアウト
(短冊状の)予備回路領域に残った電解質及びWEを、アセトンを用いてぬぐい去る。イオン貯蔵層をレーザーエッチング除去して、導電性層を暴露する。銅テープを使用して、回路を導電性層の暴露された領域に形成し、正極及び負極を銅テープで配線する。その場合、WEに接続されたリードは正極であり、CEに接続されたリードは負極である。
【0200】
実施形態4
1. エレクトロクロミック層薄膜(WE)の調製
1000mgのポリ(エチルヘキサンプロピレンジオキシチオフェン)を10mlのo-キシレンに溶解し、10時間磁気撹拌し、溶液を、ナノ銀透明導電性膜の表面にシートスリットコーティング装置で均一に塗布する。塗布したエレクトロクロミック層膜を120℃の高温で30分間焼成して、良好な接着性を有する膜をフレキシブル導電性基板の表面に形成して、WE(802)を得る。その後、WE802を、図8Aに示す形状に打抜機で切断する。
【0201】
2. イオン貯蔵層膜(CE)の調製
リガンドで官能化されたプルシアンブルーをアルコールに懸濁し、FTOフレキシブル透明導電性膜の表面にスリットコーティング技術で塗布して、イオン貯蔵層膜を得る。塗布後、膜を100℃で20分間焼成して、CE(804)を得る(図8A)。次いで、イオン貯蔵層膜を、エレクトロクロミック層膜と同じ形状に打抜機で切断する。
【0202】
3. イオン輸送層の調製
上の実施形態1に記載されるのと同じである。
【0203】
4. 嵌合及び硬化
イオン貯蔵層を、図8Bに示すように電解質を塗布したエレクトロクロミック層に千鳥状にオーバーレイする。積層された複合膜を、ローラープレスに供給して、複合膜層の気泡を除去する。ローラープレスによる消泡後、複合膜エレクトロクロミック層をUV照射下で硬化させて、全固体型ECDを得る。
【0204】
5. 導電性領域の暴露及び回路のレイアウト
予備回路領域に残った電解質、WE802及びCE804を、アセトンを用いてぬぐい去る。銀ワイヤ又は銀ペースト布を使用して、回路806を導電性層の暴露された領域に形成する。導電性布を導電性層の暴露された領域に配置して、正極及び負極を直接配線する。その場合、エレクトロクロミック層のリードアウト端は正極であり、イオン貯蔵層のリード部は負極である。回路のレイアウトを図8Cに示す。
【0205】
実施形態5
1. エレクトロクロミック層薄膜(WE)の調製
薄膜調製工程は、上の実施形態1に記載されるのと同じである。それ以外に、WEを4cm×20cmの大きさの矩形に打抜機で切断する。
【0206】
2. イオン貯蔵層膜(CE)の調製
薄膜調製工程は、上の実施形態2に記載されるのと同じである。それ以外に、CEを4cm×20cmの大きさの矩形に打抜機で切断する。
【0207】
3. イオン輸送層の調製
上の実施形態1に記載されるのと同じである。
【0208】
4. 嵌合及び硬化
上の実施形態1に記載されるのと同じである。それ以外に、全固体型ECDを4cm×20cmの大きさの矩形に打抜機で切断する。
【0209】
実施形態6
1. エレクトロクロミック層薄膜(WE)の調製
600gのECP(2,5-ジブロモ-及び2,5-トリブチルスタンニル-2-エチル-ヘキシルオキシ-置換エチルヘキサン-3,4-プロピレンジオキシチオフェン(ProDOT-(CHOEtHx))と4,7-ジブロモ-2,1,3-ベンゾチアジアゾール(BTD)とのコポリマー)を10Lのo-キシレンに溶解し、10時間磁気撹拌して、溶液を形成する。溶液を、ITO透明導電性膜を有するPET基板のフルロールの表面にロールツーロールコーティングで均一に塗布する。PET基板の幅は50cmである。次いで、塗布したエレクトロクロミック層膜を140℃の高温で3分間焼成した。次いで、WE薄膜を巻き取ってロール状にする。
【0210】
2. イオン貯蔵層膜(CE)の調製
リガンドで官能化されたプルシアンブルーをアルコールに懸濁し、ITO透明導電性膜を有するPET基板のフルロールの表面にロールツーロールコーティングで塗布する。PET基板の幅は50cmである。塗布後、膜を120℃で2分間焼成する。その後、巻き取って、ロール状のCE薄膜を得る。
【0211】
3. イオン輸送層の調製
上の実施形態1に記載されるのと同じである。
【0212】
4. 嵌合及び硬化
図9を参照する。CE膜902及びWE膜904をローラープレス906で一緒に押圧する。これらの2つの膜を完全に一致させる。ローラープレス906の速度は5m/秒である。前駆体滴下908の速度は25ml/秒である。これと同時に、図9に示すように、ディスペンサー909で電解質前駆体をCE膜902及びWE膜904の中間に均一に滴下した。積層されたECDをUV照射に暴露し、それにより、電解質を架橋して、固体複合体を形成し、かつWE904及びCE902を一緒に結合する。
【0213】
5. 導電性領域の暴露及び回路のレイアウト
大型の全固体型素子を、所望の形状にレーザーセミカッティング技術(laser semi-cutting technology)によって切断する。次いで、(短冊状の)予備回路領域に残った電解質、CE及びWEを、アセトンを用いてぬぐい去る。銅導電性テープを導電性層の暴露された領域に接着し、延出して、正極及び負極にする。その場合、WEに接続されたリードは正極であり、CEに接続されたリードは負極である。
【0214】
実施形態7
1. エレクトロクロミック層薄膜(WE)の調製
600mgのECP(2,5-ジブロモ-及び2,5-トリブチルスタンニル-2-エチル-ヘキシルオキシ-置換エチルヘキサン-3,4-プロピレンジオキシチオフェン(ProDOT-(CHOEtHx))と4,7-ジブロモ-2,1,3-ベンゾチアジアゾール(BTD)とのコポリマー)を10mlのトルエンに溶解し、10時間磁気撹拌して、溶液を形成する。溶液を10cm×10cmの大きさのフレキシブルITO透明導電性基板の表面にスロットダイコーティングで均一に塗布する。次いで、塗布したWEを80℃の高温で30分間焼成して、膜を形成し、かつフレキシブル導電性膜の表面に十分に接着して、WEを得る。
【0215】
2. イオン貯蔵層膜(CE)の調製
400mgのポリ(ニトロニルニトロキシルスチレン)を10mlのN-メチル-2-ピロリドンに溶解し、10時間磁気撹拌して、溶液を形成する。溶液を10cm×10cmの大きさのフレキシブルITO透明導電性基板の表面にスロットダイコーティングにより均一に塗布する。塗布したCE膜を100℃の温度で30分間乾燥して、CEを形成する。
【0216】
3. イオン輸送層の調製
この実施形態においては、可塑化直鎖状ポリマーに化学結合しているイオン伝導性ポリマーを使用する。ポリマーをリチウム塩と60/40の質量比で混合する。30分間の磁気撹拌後、超音波振動を使用して、混合物を30分間消泡し、すぐに使用できる前駆体溶液を得る。前駆体を、ディスペンサーでCE膜とWE膜との間に均一に滴下する。作製されたままmpWE及びCEをそこに配置された電解質前駆体と共にローラープレスで一緒に押圧する。ローラープレスの圧力は100MPであり、速度は10m/秒である。前駆体滴下の速度は10ml/秒である。複合体膜を100℃の高温で10分間硬化させて、固体複合体を形成し、かつWE及びCEを一緒に結合する。
【0217】
4. 嵌合及び硬化
(短冊状の)予備回路領域に残った電解質及びWEを、アセトンを用いてぬぐい去る。イオン貯蔵層をレーザーエッチング除去して、導電性層を暴露する。銅テープを使用して、回路を導電性層の暴露された領域に形成し、FPCを銀接着剤で固定することにより正極及び負極を配線する。その場合、WEに接続されたリードは正極であり、CEに接続されたリードは負極である。
【0218】
物理的支持体の欠如、電解質を収容するチャンバーの要件、及び必要とされる繊細な封止技術により、液体又はゲルベースのECDは堅牢ではなく、かつ容易に曲げることができない。本開示の実施形態は、固体型ECDを完成させる固体電解質層を提供する。本開示のECDを曲げて、小さな曲率半径(例えば、2.5cmと低い)を有する0°~360°に曲げられた形状に固定することができ、これは実質的には任意の形状及び曲率を有する任意の表面に適合する能力を実証している。例えば、図10に示すように、本開示の実施形態と一致させた薄膜全固体型ECDを曲げて、一定の角度に固定し、-1.2~1.5Vでのスイッチング時のその透過率の変化をin-situで測定した。45°に曲げられたECDの曲率半径はこの例においては7.8cmである。開示された全固体型ECDで実証された、曲率半径が4.2cmであるこの例における最も極端な曲げは90°であり、これは、サンルーフ、バックミラー、建物用窓等を含む多くの用途において大部分の曲面に適合する大きな可能性を示している。対照的に、問題(WE又はCEの損傷、WE及びCEの互いの接触等)を起こさずに、任意のかなりの程度の曲げを達成するには、当技術分野で公知の液体又はゲルベースのECDの封止及び封入において、大変な努力が必要とされる。しかし、全固体電解質層を有する本開示のECDは、何らかのこのような手段を必要としない。
【0219】
図11は、例示的な実施形態による、作業中のECDを示す写真である。図11(a)において、ECDは、曲げなしで着色/調光状態(上)及び漂白状態(下)にある。図11(b)において、ECDは、ほぼ半円形に曲げられて着色/調光状態にある。図11(c)において、ECDは、ほぼ半円形に曲げられて漂白状態にある。図11(d)において、ECDは、円形に曲げられて着色/調光状態にある。図11(e)において、ECDは、円形に曲げられて漂白状態にある。これらの例は、本開示の実施形態に従って形成されたECDが非常にフレキシブルで安定であることを示している。
【0220】
開示された全固体型ECDは、着色及び漂白について迅速なスイッチング時間を示す。例えば、0.1秒~1秒のスイッチング時間を達成できる。2cm×2cmのECDに、-1.2~1.5Vで1秒の二重電位スイッチングを行い、透過率の変化をin-situで測定する。図12に示すように、1秒間にスイッチングされたECDは、完全スイッチングで約90%の光学コントラストを得ることができ、これにより、試験した全固体型ECDが迅速なスイッチング動態を有することが示された。
【0221】
固体型形態の電解質層により、例えば、0.1μmと薄い電解質膜を作製できる。当技術分野で公知の他のものの中でもローラー、プレート又は真空プレス法を含む、製造に適したコスト効率の高い方法により、電解質膜は、例えば、5μmまで容易に作製でき、したがって全固体型ECDは、例えば、25μmと細長くなり得る。各層及びECDの厚さは更に減少できる。開示された全固体型ECDの細長い設計は、小型の集積システムに適用するのにかなり有利であり得る。
【0222】
液体又はゲル電解質の非常に低い粘度により、ローラー、プレート又は真空プレス法は、液体又はゲル電解質ベースのECDに使用できない。しかし、堅牢性及び高温耐性により、開示された全固体型ECDは、安価な大規模オンライン生産のためのロールツーロールコーティング及びローラープレス法等の連続製造に適したコスト効率の高い方法を可能にし、様々な用途の製品に容易に封入できる。
【0223】
更に、固体型電解質の使用により、層間剥離、又はWE、CE/電解質界面で起こる多くの副反応が起こらない。したがって、開示されたECDは、より良好なサイクル性能を示す。開示された固体型ECDの低い消費電圧(1.5V程度の低さであり得る)は、電池駆動用途に有益である。
【0224】
上記技術に従って形成されたECDは、車両の防眩バックミラーに使用できる。図13Aは、1つの例示的な実施形態による、ECDを含有する防眩バックミラー1300を示す分解図である。図13Bは、防眩バックミラー1300の断面図を例示する略図である。防眩バックミラー1300は、ミラー1310、接着剤層1320、固体型ECD1330、ガラス板1340及び封止材1350を含む。
【0225】
ミラー1310は2つの面を有する。通常、接着剤1320に対向する面に、純金属(例えば、カドミウム、銀、アルミニウム、ロジウム、イリジウム等)、合金(例えば、青銅、銀合金等)、非金属材料(例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタンとポリマーマトリックス等)、ハイブリッド材料(例えば、金属と非金属材料)又はこれらの組み合わせで作られ得る反射層を塗布する。場合によっては、接着剤1320の代わりに空気に対向する面に反射層を塗布して、ミラーとして機能させてもよい。反射層の厚さは、例えば、0.01mm~0.5mmの範囲である。ミラーの厚さは、例えば、0.5mm~2.5mmの範囲である。ミラーの反射率は、例えば、50%~100%の範囲である。ミラーは平面であってもよく、又は一定若しくは変動する曲率を有していてもよい。非平面ミラーについて、曲率半径は、例えば、10mm~1500mmの範囲である。
【0226】
接着剤1320は透明接着剤である。例示的な透明接着剤としては、現在公知であるか又は今後開発される他のものの中でも、光学透明接着剤(OCA)(例えば、樹脂OCA、液体OCA又は固体OCA)、ホットメルト接着剤(エチレン酢酸ビニル膜(EVA)及びポリビニルブチラール膜(PVB)を含むが、これらに限定されない)が挙げられる。例示的な硬化方法としては、現在公知であるか又は今後開発される他のものの中でも、湿気硬化、熱硬化、UV硬化が挙げられる。光学透明接着剤については、一般に、接着剤を表面に塗布するか、又はECミラーに封入した後、UV硬化又は湿気硬化を行う。ホットメルト接着剤については、一般に、組み込み工程中に熱硬化を行う。選択された接着剤の光透過率は80%~100%であり得る。それに加えて、選択された接着剤は、ガラスからの屈折率と同様の屈折率を有する必要があり、これは通常1.1~1.6である。接着剤の厚さは、例えば、0.05mm~0.5mmの範囲である。
【0227】
全固体型薄膜エレクトロクロミック素子(ECD)1330は、上に開示されたものと一致する。ECD1330の厚さは、例えば、0.02mm~3.0mmの範囲である。
【0228】
ガラス板1340は、50%~100%の高い光透過率を有し得る。典型的には、ECミラーの反対を向く面が、反射率4%未満の反射率を排除するように修正される。ガラスは平面であってもよく、又は一定若しくは変動する曲率を有していてもよい。非平面ガラス板に関して、曲率半径は、例えば、10mm~1500mmの範囲である。
【0229】
封止材1350は、ガラスに対して非常に良好な接着性を有し、防水性である。例示的な封止材としては、現在公知であるか又は今後開発される他のものの中でも、ブチルゴム、エポキシゴム、ポリウレタン、アクリルが挙げられる。硬化後にガラス板1340とミラー1310とを密に貼着した状態を保ってより良好な封入を得るために、この封止材は、硬化(現在公知であるか又は今後開発される他のものの中でも、熱硬化、UV硬化、湿気硬化を含む)中の体積収縮が0.5%~2%であることが求められる。硬化方法は、封止材の特性に応じて選択される。
【0230】
用いられる様々な種類の接着剤に応じて、予め組み立てられたECDを、平面と曲面の両方を含むバックミラーに封入する少なくとも2つの例示的な調製方法を本明細書の以下に提示する。
【0231】
方法A:光学透明接着剤
1. 材料の調製:接着剤及びECDを所望の形状及び大きさに打抜機又はレーザー加工機又は当技術分野で公知の他のもので切断する。切断工程が確実に円滑に行われるように正確な装置パラメータを設定する。打抜機及びレーザー加工機の両方の設定パラメータを、材料の厚さ及び特性に基づき決定する。例えば、100μmの厚さの光学透明接着剤を使用する場合、レーザー加工機の移動速度は、例えば、1mm/秒~600mm/秒の範囲であり得る。レーザー加工機のエネルギーは、例えば、1w~500wの範囲であり得る。レーザー加工機の周波数は、例えば、1Hz~10000Hzの範囲であり得る。
【0232】
1.1 材料の熱成形:曲面バックミラーを製造する場合、最初に、エレクトロクロミック薄膜素子を(図14A及び図14Bに示すように)一定の曲率(曲率半径は、例えば、50mm~無限大の範囲であり得る)の曲面形状に、50℃~200℃のオーブンで、曲面の形状及び曲率に適合する型を用いて、型の硬度に応じて真空あり又はなしで5分~30分間熱で曲げ得る。熱で曲げたECDは作業中ガラス/ミラーと同じ曲率を維持できるため、この工程は以下の工程2を容易にする一助となり得る。しかし、本開示のECDはフレキシブルであり、任意の形状及び曲率を有する表面に適合するように容易に曲げることができるので、光学透明接着剤を含む曲面バックミラーを製造する場合、この工程は任意選択である。平面バックミラーについては、この工程を省略できる。
【0233】
2.ガラス/ミラー(ハーフセル)への接着剤の貼着:手順は、用いられる接着剤の様々な状態(液体又は固体)に応じて異なり得る。固体又は粘着性の接着剤については、圧延方法(詳細は以下の2.1項を参照のこと)又は垂直プレス法(詳細は以下の2.2項を参照のこと)を使用して接着剤をガラス又はミラーの表面に塗布する。平面バックミラーを調製する場合、実施がより容易である。曲面バックミラーを調製する場合、ガラス/ミラーの曲率と同じ曲率を有する治具を含むが、これらに限定されないカスタマイズされた治具を使用して、該方法を補助することができる。液体接着剤については、液体接着剤を表面に分配するために用いられる機械としては、例えば、当技術分野で公知の他のものの中でも、ディスペンサー、溶射ガン、スクリーン印刷機、塗布機が挙げられる。液体接着剤を分配した後、通常、垂直プレス法を採用する。
【0234】
2.1 圧延方法:図15は、1つの例示的な実施形態による、バックミラーを形成するためのプロセススキームを示す図である。ガラス又はミラーの表面(当技術分野で公知の他のものの中でも、平面、曲面及び球面を含む)を、鋼鉄ほど硬くない材料(例示的な材料としては、当技術分野で公知の他のものの中でも、ゴム、シリカゲル、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリエステル、エポキシを含むが、これらに限定されない)で作られた型を有する圧延台の特殊な治具に固定する。曲面試料については、型を、ガラス/ミラーの曲率に従ってカスタマイズする。一般に、型のショア硬度は50超である。ローラーとガラス/ミラーとの間の曲率偏差は10%未満であり得る。透明接着剤の端部をガラスの端部に取り付ける。透明接着剤としては、当技術分野で公知の他のものの中でも、ホットメルト接着剤、光学透明接着剤が挙げられるが、これらに限定されず、その厚さは、例えば、10μm~500μmの範囲であり得る。ガラスの厚さは、例えば、0.5mm~1.8mmの範囲であり得る。接着剤及びガラス又はミラーの表面を、鋼鉄ほど硬くない材料(当技術分野で公知の他のものの中でも、ゴム、シリカゲル、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリエステル、エポキシを含むが、これらに限定されない)で作られた図16A及び図16Bに示すローラーで押圧する。ローラーを、ガラス/ミラーの曲率に従ってカスタマイズする。一般に、ローラーのショア硬度は100未満である。ローラーとガラス/ミラーとの間の曲率偏差は10%未満であり得る。圧延工程中、接着剤層とガラス/ミラーの両方に加えられる圧力は、例えば、100Pa~1000kPaの範囲であり得る。
【0235】
2.2 垂直プレス法:図17は、1つの例示的な実施形態による、バックミラーを形成するための別のプロセススキームを示す図である。ガラス又はミラー(平面、曲面及び球面を含む)をガラス/ミラーに基づき決定される曲率を有する型に固定する。型の曲率半径とガラス/ミラーの曲率半径との間の偏差は、例えば、0mm~100mmの範囲であり得る。接着剤を、曲率がミラー/ガラスに基づき設計される別の特殊な型に固定する。型の曲率半径とガラス/ミラーの曲率半径との間の偏差は、例えば、0mm~500mmの範囲であり得る。接着剤を有する型とミラー/ガラスを有する型とを分離し、機械で保持して、押圧工程前の何らかの接触を回避する。真空が通常95%超の設定数に到達したら、接着剤を有する型を、ガラス/ミラーを有する型に、プレス機のエンジン又はギアで5秒~15分間押圧する。押圧工程中、加えられる圧力は、例えば、1kPa~1000kPaの範囲であり得る。
【0236】
3. ガラス/ミラー(他のハーフセル)へのECDの貼着:ECDを、工程2に記載されるようにガラス/ミラーにすでに接着した接着剤層に接着する。この工程に用いられる例示的な方法としては、当技術分野で公知の他のものの中でも、圧延、垂直プレスを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0237】
3.1 圧延方法:図18は、1つの例示的な実施形態による、バックミラーを形成するためのプロセススキームを示す図である。表面に接着剤を有するガラス又はミラー(平面、曲面及び球面を含む)を、鋼鉄ほど硬くない材料(例示的な材料としては、当技術分野で公知の他のものの中でも、ゴム、シリカゲル、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリエステル、エポキシを含むが、これらに限定されない)で作られた型を有する圧延台の特殊な治具に固定する。型を、ガラス/ミラーの曲率に従ってカスタマイズする。一般に、型のショア硬度は50超である。通常、ローラーとガラス/ミラーとの間の曲率偏差は10%未満であり得る。ECDの端部をガラス/ミラーの表面の接着剤の端部と整合させる。ECD及びガラス又はミラーの表面の接着剤を、図16A及び図16Bに示すローラーで押圧する。ローラーは、鋼鉄ほど硬くない材料(当技術分野で公知の他のものの中でも、ゴム、シリカゲル、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリエステル、エポキシを含むが、これらに限定されない)で作られている。ローラーを、ガラス/ミラーの曲率に従ってカスタマイズする。一般に、ローラーのショア硬度は100未満である。ローラーとガラス/ミラーとの間の曲率偏差は10%未満であり得る。圧延工程中、接着剤層とガラス/ミラーの両方に加えられる圧力は、例えば、100Pa~100kPaの範囲であり得る。
【0238】
3.2 垂直プレス法:図19は、1つの例示的な実施形態による、バックミラーを形成するための別のプロセススキームを示す図である。表面に接着剤を有するガラス又はミラー(平面、曲面及び球面を含む)を、ガラス/ミラーに基づき決定される曲率を有する型に固定する。型の曲率半径とガラス/ミラーの曲率半径との間の偏差は、例えば、0mm~100mmの範囲であり得る。ECDを、曲率がミラー/ガラスに基づき設計される別の特殊な型に固定する。型の曲率半径とガラス/ミラーの曲率半径との間の偏差は、例えば、0mm~500mmの範囲であり得る。ECDを有する型と、表面に接着剤を有するミラー/ガラスを有する型とを分離し、機械で保持して、押圧工程を開示する前の何らかの接触を回避する。真空が通常95%超の設定数に到達したら、接着剤を有する型を、他の型で保持されたガラス/ミラーに5秒~15分間押圧する。押圧工程中、加えられる圧力は、例えば、1kPa~1000kPaの範囲であり得る。
【0239】
4. 2つのハーフセルの一緒の充填:図20は、1つの例示的な実施形態による、バックミラーを形成するための別のプロセススキームを示す図である。一方のハーフセルを工程1により製造し、他方のハーフセルを工程2により製造する。この工程については、加熱あり又はなしで、及び真空あり又はなしでの押圧が挙げられるが、これらに限定されない、様々な方法により、2つのハーフセルを一緒に充填できる。表面に接着剤を有するガラス又はミラー(平面、曲面及び球面を含む)を、曲率がガラス/ミラーに基づき決定される型に固定する。型の曲率半径とガラス/ミラーの曲率半径との間の偏差は、0mm~100mmの範囲であり得る。表面に貼着したECDを有するミラー/ガラスを、曲率がまたミラー/ガラスに基づき設計される別の特殊な型に固定する。型の曲率半径とガラス/ミラーの曲率半径との間の偏差は、0mm~500mmの範囲であり得る。接着剤を有する型と、ミラー/ガラスを有する型とを分離し、機械で保持して、押圧工程前の何らかの接触を回避する。真空が通常95%超の設定数に到達したら、接着剤を有する型を、他の型で保持されたガラス/ミラーに5秒~15分間押圧する。押圧工程中、加えられる圧力は、通常、1kPa~1000kPaであり得る。
【0240】
5. 適当な封止材での端部の封入:この工程は、最初の4つの工程の後に行われてもよく(工程5.1に記載)、又は封止材の特性を含む、ガラスの端部の様々な態様に応じて、最初の4つの工程のうちの1つに統合されてもよい(5.2に記載)。封止材の粘度が低く、通常100cps~10,000cpsの範囲である場合、方法5.1が採用される。封止材の粘度が非常に高く、通常100,000cps~2,000,000cpsの範囲である場合、方法5.2が採用される。粘度が中程度である場合(高すぎず、低すぎない)、いずれかの方法が用いられ得る。
【0241】
5.1 図21は、1つの例示的な実施形態による、封止工程を示す略図である。図21に示すように、最初の4つの工程の後、封入材を、ミラー1310とガラス1340との間の端部に、当技術分野で公知の他のものの中でも、接着剤ディスペンサー、ホットメルト接着剤ディスペンサーを含むが、これらに限定されない適切な機械で均一に滴下する。封入材の量を十分に制御して、気泡及びオーバーフローを回避する。流速は、例えば、0.001mL/分~50mL/分の範囲であり得る。流速を封入材の厚さ及び幅で決定する。一般に、封入材の厚さは、例えば、0.1mm~3mmの範囲である。一般に、封入材の幅は、例えば、0.01mm~5mmの範囲である。ディスペンサー針の直径は、例えば、0.01mm~5mmの範囲であり得る。分配後、封入材を、当技術分野で公知の他のものの中でも、照射(例えば、UV)硬化、熱硬化、湿気硬化を含むが、これらに限定されない適切な硬化方法により硬化させる。
【0242】
5.2 封入材の分配は、工程2~工程4のうちの1つに統合されてもよい。封入材を、ミラー又はガラスの端部に、当技術分野で公知の他のものの中でも、接着剤ディスペンサー、ホットメルト接着剤ディスペンサーを含むが、これらに限定されない適切な機械で均一に滴下する。例えば、図22A及び図22Bに示すように、封入材を工程2の後に分配する、即ち、接着剤がガラス/ミラーの表面に接着した後で、封入材をガラス/ミラーの端部に沿って均一に分布させる。次いで、工程2に続く工程を行うことができる。図23には別の試料を示すが、封入材を工程3の後に分配する、即ち、ECDがガラス/ミラーの表面に接着した後で、封入材をガラス/ミラーの端部に沿って均一に分布させる。次いで、工程3に続く工程を行うことができる。
【0243】
方法B:ホットメルト接着剤
1. 材料の調製:接着剤及びECDを所望の形状及び大きさに打抜機又はレーザー加工機又は当技術分野で公知の他のもので切断する。切断工程が確実に円滑に行われるように正確な装置パラメータを設定する。ホットメルト接着剤の厚さは、例えば、0.01mm~5mmの範囲であり得る。
【0244】
2. 材料の熱成形:平面バックミラーを調製する場合、この工程は不要である。曲面バックミラーについては、熱成形は任意選択であるが、ECDを一定の形状で維持して、形状の変化により生じる欠陥可能性を排除するのに有用である。曲面バックミラーを調製する場合、最初に、エレクトロクロミック薄膜素子を、一定の曲率を有する曲面形状に、50℃~200℃の範囲の温度のオーブンで、曲面の形状及び曲率に適合する型を用いて、5分~30分間熱で曲げる。曲率半径は、例えば、50mm~無限大の範囲であり得る。
【0245】
3. 接着剤とミラーとガラスとの積層:接着剤とミラーとガラスとを層ごとに図13A及び図13Bに示す順番で積層する。次いで、接着剤を融解及び硬化する。この工程の後、5層を1つの単片に統合する。
【0246】
4. 封止材での端部の封入:この工程は方法Aの工程5と同じ方法で行うことができる。
【0247】
実施形態8:1200mmの曲率半径を有する曲面ECミラーを製造するための方法Aの使用
800. レーザー加工機での材料の調製。100μmの厚さの光学透明接着剤を切断するために、レーザー加工機の移動速度を100mm/秒に設定し、レーザーパワーを10Wに設定し、周波数を100Hzに設定する。接着剤層に対するレーザーの高さは0.2cmである。
【0248】
810. 熱成形工程:エレクトロクロミック薄膜素子を、1200mmの曲率半径を有するカスタマイズされた型(上部の型と下部の型の両方)に入れ、次いで、オーブンの温度を100℃、15分に設定し、次いで、これらを取り出し、室温に冷却する。エレクトロクロミック薄膜素子を、1200mmの一定の曲率半径を有する曲面形状に熱で曲げる。
【0249】
820. 圧延方法でのガラス(ハーフセル)への接着剤の貼着:ガラス/ミラーの表面をポリウレタン製の型を有する圧延台の特殊な治具に固定する。型を、ガラス/ミラーと同じ1200mmの曲率半径でカスタマイズする。型のショア硬度は85である。透明接着剤の端部(厚さ150μm)をガラスの端部(厚さ1.1mm)と整合させる。透明接着剤及びガラスの表面を、ガラスの曲率と同じ曲率を有するゴム製のローラーで押圧する。ローラーのショア硬度は65である。圧延工程中、接着剤層及びガラス/ミラーに加えられる圧力は、1kPaである。
【0250】
830. 圧延方法でのミラー(ハーフセル)へのECDの貼着:表面に接着剤を有するミラーを、ポリウレタン製であり、1200mmの曲率半径でカスタマイズされた型を有する圧延台の特殊な治具に固定する。型のショア硬度は85である。ECDの端部を透明接着剤の端部と整合させ、次いで、ECD及びミラーの表面の接着剤を、1200mmの曲率半径を有するゴム製のローラーで押圧する。ローラーのショア硬度は65である。圧延工程中、接着剤層及びガラス/ミラーに加えられる圧力は10kPaである。
【0251】
840. 2つのハーフセルの一緒の充填:表面に接着剤を有するガラスを、1250mmの曲率半径を有する型に固定する。表面にECDを有するミラーを、1150mmの曲率半径を有する別の特殊な型に固定する。接着剤を有する型と、ミラー/ガラスを有する型とを分離し、機械で保持して、押圧工程前の何らかの接触を回避する。真空が99.5%に到達したら、接着剤を有する型を、他の型で保持されたガラス/ミラーに1分間押圧する。押圧工程中、加えられる圧力は100kPaである。
【0252】
850. UV硬化封止材での端部の封入:UV硬化封入材を、ミラーとガラスとの間の端部に接着剤ディスペンサーで均一に滴下する。流速は0.5mL/分であり、ディスペンサー針の直径は0.5mmである。分配後、封入材を、2000mJ/cmのエネルギーでのUV硬化により硬化させる。
【0253】
実施形態9:1200mmの曲率半径を有する曲面ECミラーを製造するための方法Aの使用
900. レーザー加工機での材料の調製:実施形態8と同じである。
【0254】
910. 垂直プレス法でのガラス/ミラー(ハーフセル)への接着剤の貼着:ガラスを曲率半径が1250mmである型に固定する。接着剤を、曲率半径が1150mmである別の特殊な型に固定する。接着剤を有する型と、ガラスを有する型とを分離し、機械で保持して、押圧工程前の何らかの接触を回避する。真空が99.5%超に到達したら、接着剤を有する型を、他の型で保持されたガラス/ミラーに30秒間押圧する。押圧工程中、加えられる圧力は100kPaである。
【0255】
920. 垂直プレス法でのミラー(ハーフセル)へのECDの貼着:表面に接着剤を有するミラーを、曲率半径が1250mmである型に固定する。ECDを、曲率半径が1150mmである別の特殊な型に固定する。ECDを有する型と、表面に接着剤を有するミラーを有する型とを分離し、機械で保持して、押圧工程前の何らかの接触を回避する。真空が99.5%超に到達したら、接着剤を有する型を、他の型で保持されたミラーに30秒間押圧する。押圧工程中、加えられる圧力は100kPaである。
【0256】
930. 2つのハーフセルの一緒の充填:実施形態8と同じである。
【0257】
940. UV硬化封止材での端部の封入:実施形態8と同じである。
【0258】
実施形態10:方法Bによる平面ECミラーの製造
1000. 打抜機での材料の調製。打抜機のパラメータを以下のように設定して、PVBを切断する:形状がガラスの形状に基づき決定されるカスタマイズされた型を使用し、押圧力を5tに設定する。接着剤層に対する型の高さは1.0cmである。
【0259】
1010. 接着剤とミラーとガラスとを積層し(図24)、これらを真空、加熱及び圧力の機能を有するホットプレス機に入れる。真空99%、温度140℃、時間30分、圧力6barに設定する。この工程の後、5層を組み合わせる。
【0260】
1020. 適当な封止材での端部の封入。実施形態8と同じである。
【0261】
実施形態11:方法Bによる曲面ECミラーの製造
1100. レーザー加工機での材料の調製。レーザー加工機のパラメータを以下のように設定して、PVBを切断し、レーザーの移動速度は100mm/秒であり、パワーは100Wであり、周波数は100Hzである。接着剤層に対するレーザーの高さは0.5cmである。
【0262】
1110. 材料の熱成形:PVBを1200mmの曲率半径を有するカスタマイズされた型に固定する。これらを一緒に100℃のオーブンに15分間入れる。次いで、これらを取り出し、室温に冷却する。PVBは、型と同じ曲率を有する。
【0263】
1120. 接着剤とミラーとガラスとを積層し、次いで、実施形態10の1010と同じ工程を行う。
【0264】
1130. 適当な封止材での端部の封入:実施形態1と同じである。
【0265】
一部の実施形態において、図24に示す構造において、ガラス及びミラーの厚さは約0.5~1.8mmであり、PVB/EVA接着剤の厚さは約0.05~0.5mmであり、ECDの厚さは約0.1~1mmである。
【0266】
一部の実施形態において、本明細書に開示される技術は、全固体型フレキシブル薄膜ECDの形成を可能にする。エレクトロクロミック層及びイオン貯蔵層の両方を、フレキシブルプラスチック基板上に蒸着して、薄膜を形成する。電解質前駆体をいずれかの薄膜の上部に塗布する。次いで、他の薄膜を上部に積層して、積層された構造体を形成する。積層された構造体をUV光下に置き、80~120℃で加熱して、前駆体の架橋を誘導し、固体型電解質を形成し、これは更にエレクトロクロミック層及びイオン貯蔵層を一緒に接着する。予め組み立てられた薄膜ECDは、この場合には、様々な大きさ及び曲率を有する様々なガラス表面に容易に塗布することができる。更に、ゲル又は液体電解質を有する伝統的な遷移ガラスベースのECDと比較して、該ECDは、嵩高い封止を必要としないのでより軽い。
【0267】
従来のECDの欠点を克服するために、薄膜ECDを有するエレクトロクロミックバックミラーの新しい構成が開示される。この薄膜ECDにおいて、エレクトロクロミック層とイオン貯蔵層の両方を、ポリエチレンテレフタレート(PET)基板等のフレキシブル基板上にロールツーロール加工等のハイスループット加工方法により作製し、その間に介在する電解質前駆体と共に積層する。前駆体電解質をUV照射又は加熱により架橋し、これは固体型電解質を形成し、更にエレクトロクロミック層及びイオン貯蔵層を一緒に接着して、予め組み立てられた薄膜素子を形成する。
【0268】
一部の実施形態において、エレクトロクロミック層及びイオン貯蔵層の両方を、フレキシブルITO/PET基板にスプレーコーティング、又はスピンコーティング、又はスロットダイコーティング、又は現在公知であるか若しくは今後開発される任意の他の溶液に適合したコーティング技術により塗布し、次いで、20~100℃の範囲の温度、0.1~5m/分の範囲の速度、及び0.01~5MPaの範囲の圧力でロール成形法により中間の電解質前駆体と共に積層する。この方法で用いられるローラーは、ゴム、ステンレス鋼、セラミック、アルミニウム、又は高温(200℃)及び高圧(10MPa)に耐えることができる任意の他の材料で作られ得る。積層された薄膜中の電解質前駆体を、50~10000mJcm-2の範囲のエネルギーを有するUV光又は80~120℃のオーブンでの加熱のいずれかにより硬化させた。電解質の架橋は固体型電解質を形成し、エレクトロクロミック層及びイオン貯蔵層の両方を一緒に接着して、全固体型薄膜素子が得られる。このように組み立てられたフレキシブル固体型薄膜ECDは、他の窓型素子の作製にも容易に適用でき、曲率を有する/有さない任意のガラスをエレクトロクロミックスマートガラスに容易に変えることができる。
【0269】
一部の実施形態において、エレクトロクロミック層は、これらの材料:酸化タングステン(WO)、ポリ(デシルビオロゲン)及びその誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、あらゆる種類のエレクトロクロミック共役ポリマー、例えば、ポリピロール及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)及びその誘導体、ポリ(プロピレンジオキシチオフェン)及びその誘導体、ポリフラン及びその誘導体、ポリフルオレン及びその誘導体、ポリカルバゾール及びその誘導体、並びにこれらのコポリマー、又はベンゾチアジアゾール、ベンゾセレナジアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾイミダゾール、キノキサリン及びジケトピロロピロール等の一定の比のアクセプター単位を含有するこれらのコポリマー、並びに現在公知であるか又は今後開発される他のもののうちの1種であり得る。エレクトロクロミック層は1~1500nmの厚さを有する。イオン貯蔵層は、ニトロキシルベースのラジカルポリマー、NiOx、PEDOT等であり得、1~1000nmの範囲の厚さを有する。
【0270】
これらの技術は、固体型フレキシブル薄膜ECDを有する平面及び曲面自動調光バックミラーを作製する簡単な方法を提供する。従来の材料及び封入法と比較して、全固体型ECDは、ガラスが破損した場合、何も漏れないため安全である。更に、光学透明接着剤は、防爆を改善する一助となり得る。更に、全固体型ECD及び提案された方法は、より薄いガラス及びミラーの使用を可能にして、製品質量を低減する一助となる。
【0271】
開示された方法は、生産歩留まりの改善、並びに廃棄率及び不良率の低減と共に防眩バックミラーの工業生産をより製造に適したコスト効率の高いものにする。
【0272】
本開示に開示された防眩バックミラー以外に、予め組み立てられたフレキシブル固体型薄膜ECDは、他の窓型素子の作製にも容易に適用でき、曲率を有する/有さない任意のガラスをエレクトロクロミックスマートガラスに容易に変えることができる。
【0273】
本発明の上記記載は、例示及び記載の目的で提供された。これは、網羅的であるか、又は本発明を開示された厳密な形態に限定することを意図するものではない。本発明の幅及び範囲は、上記の例示的な実施形態のいずれかによって限定されるべきではない。多くの変更及び変形が、当業者には明らかとなるであろう。変更及び変形は、開示された特徴の任意の関連する組み合わせを含む。実施形態は、本発明の原理及びその実践的な応用を最良に説明し、それにより他の当業者が、企図される特定の使用に適する様々な変更を伴う様々な実施形態に対して本発明を理解できるように選択及び記載された。本発明の範囲は、以下の特許請求の範囲及びその均等物により定義されることが意図される。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図9
図10
図11(a)】
図11(b)】
図11(c)】
図11(d)】
図11(e)】
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図15
図16A
図16B
図17
図18
図19
図20
図21
図22A
図22B
図23
図24