(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】ポリテトラフルオロエチレン組成物の製造方法、ポリテトラフルオロエチレン組成物、成形品、導電性チューブ、熱伝導性フィルム及びCCL用基板
(51)【国際特許分類】
C08J 3/20 20060101AFI20230630BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20230630BHJP
B29B 7/04 20060101ALI20230630BHJP
B29B 7/22 20060101ALI20230630BHJP
B29B 9/12 20060101ALI20230630BHJP
C08L 27/18 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
C08J3/20 B CEW
C08J5/18
B29B7/04
B29B7/22
B29B9/12
C08L27/18
(21)【出願番号】P 2021531824
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(86)【国際出願番号】 CN2019122956
(87)【国際公開番号】W WO2020114419
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-06-03
(31)【優先権主張番号】201811474982.2
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910472616.1
(32)【優先日】2019-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518241908
【氏名又は名称】ダイキン・フルオロケミカルズ・(チャイナ)・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Daikin Fluorochemicals (China) Co., Ltd.
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ハイジュン
(72)【発明者】
【氏名】チュアン チェンマオ
(72)【発明者】
【氏名】田頭 修二
(72)【発明者】
【氏名】徳平 勝貞
(72)【発明者】
【氏名】山中 拓
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102807793(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101986405(CN,A)
【文献】特開2016-113617(JP,A)
【文献】特開平04-345836(JP,A)
【文献】特開昭62-100539(JP,A)
【文献】特開平03-212987(JP,A)
【文献】特開2015-151543(JP,A)
【文献】国際公開第2017/135168(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/20
C08J 5/18
B29B 7/04
B29B 7/22
B29B 9/12
C08L 27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリテトラフルオロエチレン組成物の製造方法であって、
パルス式気流混合機又は気流撹拌機である気流混合機を用いてポリテトラフルオロエチレン樹脂と充填材を混合して、ポリテトラフルオロエチレン樹脂及び充填材を含むポリテトラフルオロエチレン組成物を得る工程を備える製造方法。
【請求項2】
前記ポリテトラフルオロエチレン組成物は、
前記ポリテトラフルオロエチレン樹脂の粒子の表面を
前記充填材が被覆していること
を特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記気流混合機はパルス式気流混合機である請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記混合する工程において、前記パルス式気流混合機のパルス間隔を5秒以上30秒以下に調整する請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記混合する工程において、前記パルス式気流混合機の単回パルス気流時間を0.8秒以上2秒以下に設定する請求項3又は4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記混合する工程において、前記パルス式気流混合機のパルスの回数を5回以上40回以下に設定する請求項3~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記混合する工程において、前記気流混合機の吸気の圧力を0.4MPa以上0.8MPa以下に設定する請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
前記混合する工程において、前記気流混合機の温度を5℃以上30℃以下の範囲に制御する請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記混合する工程において、前記気流混合機の温度を5℃以上19℃以下の範囲に制御する請求項1~8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記混合する工程において、前記気流混合機の温度を冷却液の循環または冷凍式空気乾燥機により制御する請求項8又は9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記充填材は、機能性の充填材又はトナー粉末であり、
前記機能性の充填材は、
アラミド繊維、ポリフェニルエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレン、ポリアミド、全芳香族ポリエステル樹脂から選ばれる一種以上である有機充填材、又は、
金属粉、グラファイト、カーボンブラック、コークス、炭素粉、炭素繊維、グラフェン、カーボンナノチューブ、セラミックス、タルク、マイカ、酸化アルミ、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、チタン酸カリウム、ガラス繊維、ガラス片、ガラスビード、炭化ケイ素、弗化カルシウム、窒化ホウ素、硫酸バリウム、二硫化モリブデン及び炭酸カリウムウイスカから選ばれる一種以上である無機充填材である請求項1~10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記混合する工程において、前記充填材の添加量は前記ポリテトラフルオロエチレン樹脂と前記充填材の合計添加量に対して0.1重量%以上且つ60重量%以下である請求項1~11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記混合する工程において、前記充填材の粒子径は10nm以上且つ100μm以下である請求項1~12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記混合する工程において、前記ポリテトラフルオロエチレン樹脂と前記充填材の積載係数は0.2以上且つ0.6以下である請求項1~13のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項15】
前記ポリテトラフルオロエチレン樹脂はポリテトラフルオロエチレン分散樹脂である請求項1~14のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の製造方法により製造されたポリテトラフルオロエチレン組成物
であって、
前記ポリテトラフルオロエチレン樹脂の粒子は、平均粒子径が250μm以上800μm以下であるポリテトラフルオロエチレン組成物。
【請求項17】
ポリテトラフルオロエチレン樹脂の粒子と、前記粒子の表面を被覆する充填材とを含み、有機溶剤を実質的に含まず、
前記ポリテトラフルオロエチレン樹脂は、フィブリル化特性を有するポリテトラフルオロエチレン分散樹脂であり、
前記充填材による前記粒子の表面の被覆率が50%以上100%以下であり、
前記ポリテトラフルオロエチレン樹脂の粒子は、平均粒子径が250μm以上800μm以下であり、
前記充填材は、機能性の充填材又はトナー粉末であり、
前記機能性の充填材は、
アラミド繊維、ポリフェニルエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレン、ポリアミド、全芳香族ポリエステル樹脂から選ばれる一種以上である有機充填材、又は、
金属粉、グラファイト、カーボンブラック、コークス、炭素粉、炭素繊維、グラフェン、カーボンナノチューブ、セラミックス、タルク、マイカ、酸化アルミ、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、チタン酸カリウム、ガラス繊維、ガラス片、ガラスビード、炭化ケイ素、弗化カルシウム、窒化ホウ素、硫酸バリウム、二硫化モリブデン及び炭酸カリウムウイスカから選ばれる一種以上である無機充填材であるポリテトラフルオロエチレン組成物。
【請求項18】
前記充填材の平均粒子径が、前記ポリテトラフルオロエチレン樹脂の粒子の平均粒子径より小さい請求項17に記載のポリテトラフルオロエチレン組成物。
【請求項19】
前記充填材は、機能性の充填材又はトナー粉末であり、
前記機能性の充填材は、
ポリフェニルエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレン、ポリアミド、全芳香族ポリエステル樹脂から選ばれる一種以上である有機充填材、又は、
金属粉、グラファイト、カーボンブラック、コークス、炭素粉、グラフェン、カーボンナノチューブ、セラミックス、タルク、マイカ、酸化アルミ、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、チタン酸カリウム、ガラス片、ガラスビード、炭化ケイ素、弗化カルシウム、窒化ホウ素、硫酸バリウム、二硫化モリブデン及び炭酸カリウムウイスカから選ばれる一種以上である無機充填材である請求項17又は18に記載のポリテトラフルオロエチレン組成物。
【請求項20】
前記充填材の含有量は、前記ポリテトラフルオロエチレン樹脂の粒子と前記充填材との合計量に対して0.1重量%以上且つ60重量%以下である請求項17~19のいずれか一項に記載のポリテトラフルオロエチレン組成物。
【請求項21】
粉末状である請求項17~20のいずれか一項に記載のポリテトラフルオロエチレン組成物。
【請求項22】
平均粒子径が250μm以上1000μm以下である請求項21に記載のポリテトラフルオロエチレン組成物。
【請求項23】
請求項16~22のいずれか一項に記載のポリテトラフルオロエチレン組成物を使用して得られた成形品。
【請求項24】
請求項16~22のいずれか一項に記載のポリテトラフルオロエチレン組成物を使用して得られた導電性チューブ。
【請求項25】
請求項16~22のいずれか一項に記載のポリテトラフルオロエチレン組成物を使用して得られた熱伝導性フィルム。
【請求項26】
請求項16~22のいずれか一項に記載のポリテトラフルオロエチレン組成物を使用して得られたCCL用基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリテトラフルオロエチレン組成物の製造方法、及び、該製造方法により製造されたポリテトラフルオロエチレン組成物、特定の物性を有するポリテトラフルオロエチレン組成物、並びに該ポリテトラフルオロエチレン組成物を使用して得られた成形品、導電性チューブ、熱伝導性フィルム及びCCL用基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)は優れている高低温耐性、腐食耐性、老化耐性、高い絶縁性、低い粘度などの性能を持つため、広く応用されている。なお、それ自体のサイズの安定性が悪く、熱伝導性が悪く、硬度が低く、磨耗しやすいため、ポリテトラフルオロエチレンは機械的載荷、摩擦と磨耗、密封と潤滑などの分野での応用が制限されている。
【0003】
ポリテトラフルオロエチレンの応用範囲を拡大するために、ポリテトラフルオロエチレンを他の充填材と共に混ぜて性能を改善することが提案されている。ポリテトラフルオロエチレンと充填材を混合する方法として、従来技術では、乾式混合と湿式混合が知られている。しかし、乾式混合(例えば、機械的攪拌)では、PTFE分散樹脂が剪断に敏感し、繊維化しやすく、充填材が凝集しやすいので、ポリテトラフルオロエチレンと充填材を均一的に混合することができなく、PTFE粒子の被覆が不完全である(複合後の粒子は
図1参照)。また、湿式混合は溶剤を使用する必要があり、環境にやさしくなく、プロセスが複雑である(複合後の粒子は
図2参照)。
【0004】
特許文献1には、RR1600での押出圧が25MPaより小さい変性ポリテトラフルオロエチレンと充填材を攪拌羽根付き機械式攪拌装置などにドライブレンドする方法が開示されている。
【0005】
特許文献2には、ポリテトラフルオロエチレンとフィラーを湿式混合により均一的な混合粉末を得る方法であって、ポリテトラフルオロエチレン乳化重合粒子の水性分散体から凝析によって乳化重合粒子が凝集したポリテトラフルオロエチレン凝集粉末を得て、当該凝集粉末を充填材及びドライアイスと混合した後、混合物にイソプロピルアルコール水を添加して造粒する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
特許文献1:特開2018-109149号公報
特許文献2:特開2015-151543号公報
【発明の概要】
【0007】
本発明は従来技術に存在する上記情況に鑑みてなされたものであり、ポリテトラフルオロエチレンと充填材をコアセルベーションがなく均一的に混合するポリテトラフルオロエチレン組成物の製造方法、及び、該製造方法により製造されたポリテトラフルオロエチレン組成物、特定の物性を有するポリテトラフルオロエチレン組成物、並びに該ポリテトラフルオロエチレン組成物を使用して得られた成形品、導電性チューブ、熱伝導性フィルム及びCCL用基板を提供することを目的とする。
【0008】
本発明のポリテトラフルオロエチレン組成物の製造方法は、気流混合機を用いてポリテトラフルオロエチレン樹脂と充填材を混合してポリテトラフルオロエチレン樹脂及び充填材を含むポリテトラフルオロエチレン組成物を得る工程を備える製造方法である。
【0009】
本発明の製造方法において気流混合機を用いてポリテトラフルオロエチレン樹脂と充填材を混合する。気流混合機で混合する過程において機械伝動がなく、剪断もないため、特にPTFE分散樹脂に適し、また、圧縮空気が凝集又はコアセルベーションした材料をデコアセルベーションさせることができる。これにより、本発明の製造方法でポリテトラフルオロエチレンと充填材をコアセルベーションがなく均一的に混合するポリテトラフルオロエチレン組成物を得ることが可能である。
【0010】
言い換えると、本発明の製造方法によれば、ポリテトラフルオロエチレンを過度に繊維化させることなく充填材と混合することが可能であり、ポリテトラフルオロエチレンと充填材とが均一的に混合されたポリテトラフルオロエチレン組成物を得ることが可能である。
【0011】
本発明の製造方法において、充填材がポリテトラフルオロエチレン樹脂の粒子の表面を覆うようにすることが好ましい。本発明において気流混合機を使用して混合するため、剪断に対して敏感なポリテトラフルオロエチレン樹脂が過度の繊維化を起こすことなく、ポリテトラフルオロエチレン樹脂と充填材をより均一的に混合することが可能であり、同時に、充填材がポリテトラフルオロエチレン樹脂の粒子の表面を均一的に覆うようにすることが可能である。
【0012】
本発明において、気流混合機はパルス式気流混合機であることが好ましい。これにより、混合の過程においてPTFEと充填材を接触する確率を向上して、より均一的な混合を実現できる。
【0013】
本発明の製造方法において、混合する工程において、パルス式気流混合機のパルス間隔を5秒以上30秒以下に調整することが好ましい。これにより、混合の過程においてPTFEと充填材を接触する可能性を向上して、より均一的な混合を実現でき、且つ製造の効率を向上できる。
【0014】
本発明の製造方法において、混合する工程において、パルス式気流混合機の単回パルス気流時間を0.8秒以上2秒以下に設定することが好ましい。これにより、混合機の底部にあるPTFEが混合に参加する可能性を向上できる同時に、PTFEと充填材を十分に混合できる。
【0015】
本発明の製造方法において、混合する工程において、パルス式気流混合機のパルスの回数を5回以上40回以下に設定することが好ましい。これにより、より十分且つ均一的な混合を実現できる同時に、混合の効率を向上する。
【0016】
本発明の製造方法において、混合する工程において、気流混合機の吸気の圧力を0.4MPa以上0.8MPa以下に設定することが好ましい。これにより、混合の空間を大きく、より十分且つ均一的な混合を実現できる同時に、大きすぎる気体の圧力により原料を混合室の上部と集塵装置に付着させることを避けることが可能である。
【0017】
本発明の製造方法において、混合する工程において、気流混合機の混合室内の温度を5℃以上30℃以下の範囲に制御することが好ましい。これにより、粒子の流動性を向上でき、混合の効率を向上できる。
【0018】
本発明の製造方法において、混合する工程において、気流混合機の混合室内の温度を5℃以上19℃以下の範囲に制御することがより好ましい。上記温度に制御する方法は特に限定されないが、例えば冷却液の循環または冷凍式空気乾燥機により混合室内を低い温度に制御することができ、より良い混合の効果を実現できる。
【0019】
本発明の製造方法において、ポリテトラフルオロエチレン樹脂はポリテトラフルオロエチレン分散樹脂であることが好ましい。通常、ポリテトラフルオロエチレン分散樹脂は剪断により敏感であるが、本発明の製造方法には剪断がないので、それがポリテトラフルオロエチレン分散樹脂と充填材の混合に対してより適切である。
【0020】
本発明の製造方法において、充填材は、機能性の充填材又はトナー粉末であり、機能性の充填材はアラミド繊維、ポリフェニルエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレン、ポリアミド、全芳香族ポリエステル樹脂から選ばれる一種以上である有機充填材、又は、金属粉、グラファイト、カーボンブラック、コークス、炭素粉、炭素繊維、グラフェン、カーボンナノチューブ、セラミックス、タルク、マイカ、酸化アルミ、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、チタン酸カリウム、ガラス繊維、ガラス片、ガラスビード、炭化ケイ素、弗化カルシウム、窒化ホウ素、硫酸バリウム、二硫化モリブデン及び炭酸カリウムウイスカから選ばれる一種以上である無機充填材であることが好ましい。種類の異なる充填材を組み合わせることもできる。また、同じ種類の充填材であっても、形状やサイズの異なるものを組み合わせることもできる。
【0021】
本発明の製造方法において、混合する工程において、充填材の添加量は前記ポリテトラフルオロエチレン樹脂と充填材の合計添加量に対して0.1重量%以上60重量%以下であることが好ましい。これにより、最終的な成形品の性能を向上することが可能である。
【0022】
本発明の製造方法において、混合する工程において、充填材の粒子径は10nm以上100μm以下であることが好ましい。これにより、より均一的な混合を実現できる。
【0023】
本発明の製造方法において、混合する工程において、ポリテトラフルオロエチレン樹脂と充填材の積載係数は0.2以上且つ0.6以下であることが好ましい。これにより、十分な混合空間を確保でき、混合の効果を向上できる同時に、混合室におけるPTFEと充填材の空間密度を確保でき、それらを接触する可能性を向上し、混合の効率を向上できる。
【0024】
本発明の製造方法によれば、ポリテトラフルオロエチレン樹脂と充填材をコアセルベーションがなく均一的に混合するポリテトラフルオロエチレン組成物を得ることが可能であり、該ポリテトラフルオロエチレン組成物を使用することにより、性能が良好である導電性チューブ、熱伝導性フィルム及びCCL用基板を得ることが可能である。
【0025】
本発明は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂の粒子と、前記粒子の表面を被覆する充填材とを含み、有機溶剤を実質的に含まず、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂は、フィブリル化特性を有するポリテトラフルオロエチレン分散樹脂であり、上記充填材による上記粒子の表面の被覆率が50%以上100%以下であるポリテトラフルオロエチレン組成物にも関する。当該ポリテトラフルオロエチレン組成物は、上記充填材に由来する特性を充分に発揮させることが可能な成形品を与えることができる。また、傷、断裂層、亀裂、穴等の欠陥が少なく、強度や耐久性に優れた成形品を与えることができる。
【0026】
上記ポリテトラフルオロエチレン組成物において、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂の粒子は、平均粒子径が250μm以上800μm以下であることが好ましい。
【0027】
上記ポリテトラフルオロエチレン組成物において、上記充填材の平均粒子径が、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂の粒子の平均粒子径より小さいことが好ましい。
【0028】
上記ポリテトラフルオロエチレン組成物において、上記充填材は、機能性の充填材又はトナー粉末であり、上記機能性の充填材は、アラミド繊維、ポリフェニルエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレン、ポリアミド、全芳香族ポリエステル樹脂から選ばれる一種以上である有機充填材、又は、金属粉、グラファイト、カーボンブラック、コークス、炭素粉、炭素繊維、グラフェン、カーボンナノチューブ、セラミックス、タルク、マイカ、酸化アルミ、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、チタン酸カリウム、ガラス繊維、ガラス片、ガラスビード、炭化ケイ素、弗化カルシウム、窒化ホウ素、硫酸バリウム、二硫化モリブデン及び炭酸カリウムウイスカから選ばれる一種以上である無機充填材であることが好ましい。
【0029】
上記充填材は、機能性の充填材又はトナー粉末であり、上記機能性の充填材は、ポリフェニルエステル、ポリフェニレンサルファイド、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレン、ポリアミド、全芳香族ポリエステル樹脂から選ばれる一種以上である有機充填材、又は、金属粉、グラファイト、カーボンブラック、コークス、炭素粉、グラフェン、カーボンナノチューブ、セラミックス、タルク、マイカ、酸化アルミ、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、チタン酸カリウム、ガラス片、ガラスビード、炭化ケイ素、弗化カルシウム、窒化ホウ素、硫酸バリウム、二硫化モリブデン及び炭酸カリウムウイスカから選ばれる一種以上である無機充填材であることがより好ましい。
【0030】
上記ポリテトラフルオロエチレン組成物において、上記充填材の含有量は、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂の粒子と上記充填材との合計量に対して0.1重量%以上且つ60重量%以下であることが好ましい。
【0031】
上記ポリテトラフルオロエチレン組成物は、粉末状であることが好ましい。
【0032】
上記ポリテトラフルオロエチレン組成物は、平均粒子径が250μm以上1000μm以下であることが好ましい。
【0033】
本発明は、上記ポリテトラフルオロエチレン組成物を使用して得られた成形品、導電性チューブ、熱伝導性フィルム及びCCL用基板にも関する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は従来技術(比較例1)における機械的混合により得られるPTFE-カーボンブラック複合粒子の光学顕微鏡写真(拡大倍率:200倍)である。
【
図2】
図2は従来技術(比較例2)における湿式混合により得られるPTFE-カーボンブラック複合粒子の光学顕微鏡写真(拡大倍率:200倍)である。
【
図3】
図3は実施例1~5に使用する混合前のPTFEの光学顕微鏡写真(拡大倍率:200倍)である。
【
図4】
図4は実施例1の製造方法により得られるPTFE-カーボンブラック複合粒子の光学顕微鏡写真であり、(a)は拡大倍率200倍の写真であり、(b)は拡大倍率350倍の写真である。
【
図5】
図5は実施例2の製造方法により得られるPTFE-カーボンブラック複合粒子の光学顕微鏡写真(拡大倍率:200倍)である。
【
図6】
図6は実施例3の製造方法により得られるPTFE-カーボンブラック複合粒子の光学顕微鏡写真(拡大倍率:200倍)である。
【
図7】
図7は実施例4の製造方法により得られるPTFE-カーボンブラック複合粒子の光学顕微鏡写真であり、(a)は拡大倍率200倍の写真であり、(b)は拡大倍率350倍の写真である。
【
図8】
図8は実施例5の製造方法により得られるPTFE-カーボンブラック複合粒子の光学顕微鏡写真(拡大倍率:200倍)である。
【
図9】
図9は実施例6の製造方法により得られるPTFE-炭素繊維複合粒子の光学顕微鏡写真(拡大倍率:200倍)である。
【
図10】
図10は実施例Aで得られた導電性チューブの光学顕微鏡写真(拡大倍率:8000倍)である。
【
図11】
図11は比較例A‘で得られた導電性チューブの光学顕微鏡写真(拡大倍率:8000倍)である。
【
図12】
図12は比較例A’’で得られた導電性チューブの光学顕微鏡写真(拡大倍率:8000倍)である。
【
図13】
図13は実施例Bで得られた熱伝導性フィルムの光学顕微鏡写真であり、(a)は拡大倍率50倍の写真であり、(b)は拡大倍率600倍の写真である。
【
図14】
図14は比較例B’で得られた熱伝導性フィルムの光学顕微鏡写真であり、(a)は拡大倍率50倍の写真であり、(b)は拡大倍率600倍の写真である。
【
図15】
図15はパルス式気流混合機の一例を示す断面模式図である。
【
図16】
図16は、実施例1で得られた組成物のビデオマイクロスコープ写真を二値化処理して得られた画像である。
【
図17】
図17は、比較例1で得られた組成物のビデオマイクロスコープ写真を二値化処理して得られた画像である。
【
図18】
図18は、比較例2で得られた組成物のビデオマイクロスコープ写真を二値化処理して得られた画像である。
【
図19】
図19(a)は実施例8で得られた組成物の電子顕微鏡写真であり、(b)は当該電子顕微鏡写真を用いてフッ素の元素マッピングを行って得られた元素マッピング画像であり、(c)は当該元素マッピング画像を二値化処理して得られた画像である。
【
図20】
図20(a)は比較例3で得られた組成物の電子顕微鏡写真であり、(b)は当該電子顕微鏡写真を用いてフッ素の元素マッピングを行って得られた元素マッピング画像であり、(c)は当該元素マッピング画像を二値化処理して得られた画像である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の製造方法においては、気流混合機を用いてポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂と充填材を混合してポリテトラフルオロエチレン樹脂及び充填材を含む均一的に混合したポリテトラフルオロエチレン組成物を得る。
【0036】
本発明の製造方法において気流混合機を用いてポリテトラフルオロエチレン樹脂と充填材を混合する。その原理は、混合機の下部から圧縮した空気を瞬間に噴射した後、混合室内の原料が沸騰状態になり、十分的な混合を開始し、噴入れた空気は上の空気フィルターから排出される。気流混合機で混合する過程において機械伝動がなく、剪断もないため、PTFE分散料に適し、また、圧縮空気が凝集又はコアセルベーションした材料をデコアセルベーションさせることができる。これにより、本発明の製造方法でポリテトラフルオロエチレンと充填材をコアセルベーションがなく均一的に混合するポリテトラフルオロエチレン組成物を得ることが可能である。
【0037】
言い換えると、本発明の製造方法によれば、ポリテトラフルオロエチレンを過度に繊維化させることなく充填材と混合することが可能であり、ポリテトラフルオロエチレンと充填材とが均一的に混合されたポリテトラフルオロエチレン組成物を得ることが可能である。
【0038】
本発明の製造方法において、充填材がポリテトラフルオロエチレン樹脂の粒子の表面を覆うようにすることが好ましい。本発明において気流混合機を使用して混合するため、剪断に対して敏感なポリテトラフルオロエチレン樹脂が過度の繊維化を起こすことなく、ポリテトラフルオロエチレン樹脂と充填材をより均一的に混合することが可能であり、同時に、充填材がポリテトラフルオロエチレン樹脂の粒子の表面を均一的に覆うようにすることが可能である。
【0039】
上記ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂は、フィブリル化特性を有することが好ましい。上記フィブリル化特性とは、容易に繊維化してフィブリルを形成する特性を指す。
【0040】
フィブリル化特性の有無は、テトラフルオロエチレン(TFE)の乳化重合体から作られた粉末(分散樹脂、すなわちファインパウダー)である「高分子量PTFE粉末」を成形する代表的な方法である「ペースト押出し」で判断できる。通常、ペースト押出しが可能であるのは、高分子量PTFE粉末がフィブリル化性を有するからである。ペースト押出しで得られた未焼成の成形物に実質的な強度や伸びがない場合、例えば伸びが0%で引っ張ると切れるような場合はフィブリル化性がないとみなすことができる。
【0041】
上記PTFE樹脂は、非溶融二次加工性を有することが好ましい。上記非溶融二次加工性とは、ASTM D-1238及びD-2116に準拠して、結晶化融点より高い温度でメルトフローレートを測定できない性質を意味する。
【0042】
上記PTFE樹脂は、粒子状であってよく、粉末状であってもよい。
【0043】
本発明の製造方法において、ポリテトラフルオロエチレン樹脂は、PTFE分散樹脂もPTFEサスペンション樹脂も使用できるが、ポリテトラフルオロエチレン樹脂はポリテトラフルオロエチレン分散樹脂であることが好ましい。通常、ポリテトラフルオロエチレン分散樹脂は剪断に対してより敏感であり、繊維化しやすいが、本発明の製造方法には剪断がないので、それがポリテトラフルオロエチレン分散樹脂と充填材の混合に対してより適切である。
【0044】
PTFE分散樹脂は、乳化重合によって形成された分散液が凝析して乾燥したものである。本発明で使用するポリテトラフルオロエチレン分散樹脂は既知の方法で調製されたものであってもよく、市販されるポリテトラフルオロエチレン分散樹脂であってもよい。市販されるポリテトラフルオロエチレン分散樹脂としては、例えば、POLYFLON PTFE F-104,F-208,F-302(大金工業株式会社制)などが挙げられる。
【0045】
PTFE分散樹脂は、PTFEファインパウダーであってよい。上記PTFEファインパウダーは、TFEを乳化重合することによりPTFE水性分散液を得た後、PTFE水性分散液中のPTFE一次粒子を凝集させて得られるパウダー(二次粒子)である。上記PTFEファインパウダーは、重合により得た粒子を公知の方法により造粒して得られたものであってもよい。
【0046】
PTFE分散樹脂の平均粒子径は250μm以上800μm以下であることが好ましく、300μm以上600μm以下であることがより好ましい。
【0047】
PTFE分散樹脂の基準比重(SSG)は2.13以上2.28以下であることが好ましく、2.14以上2.20以下であることがより好ましい。PTFE分散樹脂の見掛け密度は400g/L以上600g/L以下であることが好ましい。PTFE分散樹脂の圧縮比(RR:Reduction Ratio)は20以上3500以下であることが好ましく、100以上3500以下であることがより好ましい。なお、前記圧縮比は、押し出しシリンダーの中の樹脂の横断面積(S1)と型口にある樹脂の横断面積(S2)の比を指す。
【0048】
PTFEサスペンション樹脂の平均粒子径は15μm以上200μm以下であることが好ましい。PTFEサスペンション樹脂の見掛け密度は300g/L以上600g/L以下であることが好ましい。PTFEサスペンション樹脂の基準比重は2.13以上2.28以下であることが好ましく、2.14以上2.20以下であることがより好ましい。
【0049】
PTFEサスペンション樹脂は、PTFEモールディングパウダーであってよい。上記PTFEモールディングパウダーは、TFEを懸濁重合することにより得られるパウダーである。上記PTFEモールディングパウダーは、重合により得た粒子を公知の方法により造粒して得られたものであってもよい。
【0050】
上記PTFE樹脂の平均粒子径は、JIS K6891に準拠して測定する。上記平均粒子径は、PTFE二次粒子の平均粒子径であってよい。
【0051】
上記PTFE樹脂のSSGは、ASTM D 4895-89に準拠して成形されたサンプルを用い、ASTM D-792に準拠した水置換法により測定する。
【0052】
上記PTFE樹脂の見掛け密度は、JIS K6891(サスペンション樹脂、すなわちモールディングパウダーの場合)又はJIS K6892(分散樹脂、すなわちファインパウダーの場合)に準拠して測定する。
【0053】
上記PTFE樹脂は、融点が324~360℃であることが好ましい。上記融点は第一融点を意味する。上記第一融点は、300℃以上の温度に加熱した履歴がないPTFEについて示差走査熱量計〔DSC〕を用いて10℃/分の速度で昇温したときの融解熱曲線における極大値に対応する温度である。
【0054】
上記PTFE樹脂は、テトラフルオロエチレン(TFE)のみからなるTFE単独重合体であっても、変性PTFEであってもよい。変性PTFEは、TFE単位と、TFEと共重合可能な変性モノマーに基づく変性モノマー単位とを含む。
【0055】
上記変性モノマーとしては、TFEとの共重合が可能なものであれば特に限定されず、例えば、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕等のパーフルオロオレフィン;クロロトリフルオロエチレン〔CTFE〕等のパーハロオレフィン;トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン〔VDF〕等の水素含有フルオロオレフィン;パーフルオロビニルエーテル;(パーフルオロアルキル)エチレン;エチレン;ニトリル基を有するフッ素含有ビニルエーテル等が挙げられる。また、用いる変性モノマーは1種であってもよいし、複数種であってもよい。
【0056】
上記パーフルオロビニルエーテルとしては特に限定されず、例えば、下記一般式(1)
CF2=CF-ORf1 (1)
(式中、Rf1は、パーフルオロ有機基を表す。)で表されるパーフルオロ不飽和化合物等が挙げられる。本明細書において、上記「パーフルオロ有機基」とは、炭素原子に結合する水素原子が全てフッ素原子に置換されてなる有機基を意味する。上記パーフルオロ有機基は、エーテル酸素を有していてもよい。
【0057】
上記パーフルオロビニルエーテルとしては、例えば、上記一般式(1)において、Rf1が炭素数1~10のパーフルオロアルキル基であるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕が挙げられる。上記パーフルオロアルキル基の炭素数は、好ましくは1~5である。
【0058】
上記PAVEにおけるパーフルオロアルキル基としては、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられるが、パーフルオロアルキル基がパーフルオロプロピル基であるパープルオロプロピルビニルエーテル〔PPVE〕が好ましい。
【0059】
上記パーフルオロビニルエーテルとしては、更に、上記一般式(1)において、Rf
1が炭素数4~9のパーフルオロ(アルコキシアルキル)基であるもの、Rf
1が下記式(2):
【化1】
(式中、mは、0又は1~4の整数を表す。)で表される基であるもの、Rf
1が下記式(3):
【化2】
(式中、nは、1~4の整数を表す。)で表される基であるもの等が挙げられる。
【0060】
パーフルオロアルキルエチレンとしては特に限定されず、例えば、パーフルオロブチルエチレン(PFBE)、パーフルオロヘキシルエチレン(PFHE)等が挙げられる。
【0061】
ニトリル基を有するフッ素含有ビニルエーテルとしては、CF2=CFORf2CN(式中、Rf2は2つの炭素原子間に酸素原子が挿入されていてもよい炭素数が2~7のアルキレン基を表す。)で表されるフッ素含有ビニルエーテルがより好ましい。
【0062】
上記変性PTFEにおける変性モノマーとしては、HFP、CTFE、VDF、PPVE、PFBE及びエチレンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。より好ましくは、HFP及びCTFEからなる群より選択される少なくとも1種の単量体である。
【0063】
変性モノマーに基づく重合単位(変性モノマー単位)が0.00001~1.0質量%の範囲であることが好ましい。変性モノマー単位の下限としては、0.0001質量%がより好ましく、0.0005質量%がより好ましく、0.001質量%が更に好ましい。変性モノマー単位の上限としては、0.90質量%が好ましく、0.50質量%がより好ましく、0.40質量%が更に好ましく、0.30質量%が更により好ましく、0.10質量%が殊更に好ましく、0.08質量%が特に好ましく、0.05質量%が特に好ましく、0.01質量%が特に好ましい。
【0064】
本明細書において、上記変性モノマー単位とは、PTFEの分子構造の一部分であって変性モノマーに由来する部分を意味する。
【0065】
本明細書において、PTFEを構成する各単量体の含有量は、NMR、FT-IR、元素分析、蛍光X線分析を単量体の種類によって適宜組み合わせることで算出できる。
【0066】
本発明の製造方法において「充填材」は成形品の各種物性を改善するために用いられる粉状の物質であり、機能性の充填材又はトナー粉末を用いることができる。機能性の充填材は、各種の有機充填材又は無機充填材であってもよい。有機充填材としては、例えば、アラミド繊維、ポリフェニルエステル(POB)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレン、ポリアミド、全芳香族ポリエステル樹脂が挙げられ、ポリフェニルエステル(POB)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリイミド(PI)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレン、ポリアミド、全芳香族ポリエステル樹脂が好ましい。無機充填材としては、金属粉、グラファイト、カーボンブラック、コークス、炭素粉、炭素繊維、グラフェン、カーボンナノチューブ、セラミックス、タルク、マイカ、酸化アルミ、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、チタン酸カリウム、ガラス繊維、ガラス片、ガラスビード、炭化ケイ素、弗化カルシウム、窒化ホウ素(BN)、硫酸バリウム、二硫化モリブデン及び炭酸カリウムウイスカなどが挙げられ、金属粉、グラファイト、カーボンブラック、コークス、炭素粉、グラフェン、カーボンナノチューブ、セラミックス、タルク、マイカ、酸化アルミ、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン、酸化ケイ素、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、チタン酸カリウム、ガラス片、ガラスビード、炭化ケイ素、弗化カルシウム、窒化ホウ素(BN)、硫酸バリウム、二硫化モリブデン及び炭酸カリウムウイスカが好ましい。種類の異なる充填材を組み合わせることもできる。また、同じ種類の充填材であっても、形状やサイズの異なるものを組み合わせることもできる。
【0067】
上記充填材は、無機充填材であってもよく、炭素系無機充填材及びセラミックスからなる群より選択される少なくとも1種であってもよく、グラファイト、カーボンブラック、炭素繊維及びセラミックスからなる群より選択される少なくとも1種であってもよく、グラファイト、カーボンブラック及びセラミックスからなる群より選択される少なくとも1種であってもよい。
【0068】
上記充填材は、粒子状であっても繊維状であってもよいが、粒子状であることが好ましい。
【0069】
充填材の粒子径は10nm以上100μm以下であることが好ましく、10nm以上50μm以下であることがより好ましい。これにより、より均一的な混合を実現できる。
【0070】
上記充填材の粒子径は、平均粒子径であってよく、充填材の種類に応じて、公知の測定方法、例えば、画像法、ふるい分け法、光散乱法等により測定することができる。
【0071】
上記充填材の平均粒子径は、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂の粒子の平均粒子径より小さいことが好ましい。これにより、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂の粒子の表面を、上記充填材により一層均一に被覆することができる。
【0072】
上記充填材は、アスペクト比が50以下であることが好ましい。これにより、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂の粒子の表面を、上記充填材により一層均一に被覆することができる。上記アスペクト比は、30以下がより好ましく、20以下が更に好ましく、10以下が特に好ましい。
【0073】
上記アスペクト比は、充填材を走査電子顕微鏡(SEM)で観察し、無作為に抽出した10個以上の粒子について画像処理を行い、その長径と短径の比の平均より求める。
【0074】
最終的な成形品の性能などから考慮して、充填材の添加量は前記ポリテトラフルオロエチレン樹脂と充填材の合計添加量に対して0.1重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましく、また、60重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましい。
【0075】
上記添加量はまた、前記ポリテトラフルオロエチレン樹脂と充填材の合計添加量に対して0.1重量%以上60重量%以下、より好ましくは1重量%以上60重量%以下、更に好ましくは1重量%以上20重量%以下であることが好ましい。
【0076】
充填材の添加量は、充填材の種類に応じて適切に設定することができる。例えば、充填材はグラファイトである場合、その添加量は15重量%以上25重量%以下であることが好ましい。充填材は炭素繊維である場合、その添加量は10重量%以上25重量%以下であることが好ましい。充填材はカーボンブラックである場合、その添加量は1重量%以上10重量%以下であることが好ましい。充填材はガラス繊維である場合、その添加量は15重量%以上30重量%以下であることが好ましい。充填材は二硫化モリブデンである場合、その添加量は0.1重量%以上5重量%以下であることが好ましい。充填材はセラミックス粉末である場合、その添加量は20重量%以上60重量%以下であることが好ましい。充填材は銅粉末である場合、その添加量は30重量%以上60重量%以下であることが好ましい。充填材はPOBである場合、その添加量は10重量%以上30重量%以下であることが好ましい。充填材はPIである場合、その添加量は5重量%以上15重量%以下であることが好ましい。充填材はPPSである場合、その添加量は10重量%以上30重量%以下であることが好ましい。充填材はPEEKである場合、その添加量は5重量%以上20重量%以下であることが好ましい。充填材はガラスビードである場合、その添加量は10重量%以上30重量%以下であることが好ましい。充填材はBNである場合、その添加量は5重量%以上15重量%以下であることが好ましい。充填材はステンレス粉である場合、その添加量は30重量%以上60重量%以下であることが好ましい。充填材は炭素粉である場合、その添加量は15重量%以上25重量%以下であることが好ましい。
【0077】
本発明の製造方法の一つ好ましい実施形態では、PTFEと充填材の積載係数は0.2以上0.6以下である。積載係数が高すぎると、混合の空間が不十分であり、混合の効果に影響する。積載係数が低すぎると、混合室内におけるPTFEと充填材の空間密度は小さくなり、接触の可能性が低くなり、混合の効率に影響する。なお、積載係数は混合機が攪拌効果に達するとき原料の実際体積と混合室の全体積の比である。
【0078】
本発明の製造方法において、気流混合機は、パルス式気流混合機、気流攪拌機、気流粉砕機などの多種類の気流混合機を使用できる。気流混合機は、攪拌装置を使用しなく、剪断に敏感するPTFE樹脂に適し、繊維化などにより凝集することを低減できる。その中で、パルス式気流混合機を用いることが好ましい。これにより、気体はパルスで混合室に入り、原料を散らし、特に原料の間の接触面積を増大させることができ、また、高速の空気が凝集又はコアセルベーションした材料をデコアセルベーションさせることができるので、原料の間の混合に寄与できる。
【0079】
パルス式気流混合機の一例を図面に基づいて説明するが、本発明の製造方法に用いることが可能なパルス式気流混合機はこれに限定されるものではない。
【0080】
図15は、パルス式気流混合機の一例を示す断面模式図である。
図15に示すパルス式気流混合機では、気流混合が行われる混合タンク本体3の下部に、原料貯蔵タンク4が設けられている。PTFE樹脂、充填材等の各原料は、原料貯蔵タンク4に設けられた原料投入口(図示せず)から投入される。
【0081】
気流混合に用いる空気は、まず、空気圧縮機10により圧縮され、次いで冷却乾燥機9によって冷却及び乾燥されて圧縮空気貯蔵タンク8に貯蔵される。圧縮空気は、パルスコントローラー7により制御されたパルス条件にてノズル5より原料貯蔵タンク4に供給される。原料貯蔵タンク4に貯蔵された各原料は、供給された圧縮空気により噴き上げられ、混合タンク本体3内で混合される。混合タンク本体3内の温度は、温度制御装置6により調整することができる。
【0082】
混合タンク本体3の上部にはフィルター装置2が設けられ、ここから気流混合に用いた空気が排出される。混合タンク本体3から排出された空気は、排気装置1により外部へ排出される。
【0083】
パルス式気流混合機を用いる場合、混合する工程において、パルス式気流混合機のパルス間隔を5秒以上30秒以下、より好ましくは10秒以上30秒以下、更に好ましくは20秒以上30秒以下に調整することが好ましい。パルス間隔が小さすぎると、充填材は完全に沈降しない状態で次のパルスが来る場合があり、充填材と下部のPTFEを接触する可能性を低減し、十分且つ均一的な混合の効果を低減する。パルス間隔が大きすぎると、全体の混合の時間を延長して、製造の効率を低減する可能性がある。
【0084】
パルス式気流混合機を用いる場合、充填材の見掛け密度に応じて単回パルス気流時間を具体的に設定できる。見掛け密度が大きいほど、当該時間を長く設定することができる。混合する工程において、パルス式気流混合機の単回パルス気流時間を0.8秒以上2秒以下、好ましくは0.8秒以上1.5秒以下に設定することが好ましい。単回パルス気流時間が短すぎると、混合機の下部にあるPTFEが混合に参加する可能性が低いである。一方、単回パルス気流時間が長すぎると、見掛け密度が小さい充填材は常に上に浮かぶ傾向があり、十分且つ均一的な混合の効果を低減する。
【0085】
パルス式気流混合機を用いる場合、積載係数、充填材の種類、充填材の添加量、充填材の比表面積などに応じてパルスの回数を具体的に設定できる。混合する工程において、パルス式気流混合機のパルスの回数を5回以上40回以下、より好ましくは10回以上40回以下、更に好ましくは15回以上40回以下に設定することが好ましい。パルスの回数は少なすぎると、混合が十分になる効果が低減する。パルスの回数は大きすぎると、混合のサイクルを延長し、混合の効率を低減する傾向がある。
【0086】
本発明の製造方法において、混合する工程において、気流混合機の吸気の圧力を0.4MPa以上0.8MPa以下、より好ましくは0.5MPa以上0.8MPa以下、更に好ましくは0.6MPa以上0.8MPa以下に設定することが好ましい。吸気の圧力を0.4MPaよりも小さくすると、原料は気流に吹き出された高さが低くなり、混合の空間が不十分になり、十分且つ均一的な混合を実現できる効果が低減する。吸気の圧力を0.8MPaよりも大きくすると、原料が混合室の上のフィルターに付着し、次の混合過程に参加しない可能性がある。
【0087】
本発明の製造方法において、混合する工程において、気流混合機の温度を5℃以上30℃以下の範囲、好ましくは5℃以上25℃以下、より好ましくは5℃以上19℃以下に制御することが好ましい。これにより、低温の環境で原料に対して混合することを実現でき、ポリテトラフルオロエチレン樹脂の繊維化を低減し、粒子の流動性を向上でき、混合の効率を向上できる。
【0088】
本発明の製造方法において、混合する工程において、気流混合機の温度を冷却液の循環または冷凍式空気乾燥機により制御することが好ましい。これにより、低温の制御をよく実現でき、より良い混合の効果を実現できる。
【0089】
本発明の製造方法の一つの好ましい実施形態は以下の工程を含む。パルス式の気流混合機を使用し、適切な積載係数を以って、それぞれの物質を混合室に加える。吸気の圧力、パルスの間隔、単回パルス気流時間、パルスの回数などのパラメーターを調整する。温度制御システムを起動して、混合室の温度を混合時の温度に低下させる。混合を開始する。
【0090】
本発明の製造方法により製造されたポリテトラフルオロエチレン組成物(第1のPTFE組成物ともいう。)では、充填材が均一的にポリテトラフルオロエチレン粒子の表面に被覆し、後続の加工に影響しなく、ポリテトラフルオロエチレンの製造の改善に有利である。
【0091】
本発明の製造方法においては、有機溶剤を使用しないことが好ましい。言い換えると、PTFE樹脂及び充填材のいずれをも、有機溶剤と混合しないことが好ましい。第1のPTFE組成物は、有機溶剤を実質的に含まないことが好ましい。これにより、残留する有機溶剤による不具合を低減することができる。有機溶剤の具体例については後述する。
【0092】
第1のPTFE組成物における有機溶剤の含有量は、上記PTFE組成物に対し、500質量ppb以下であることが好ましく、100質量ppb以下であることがより好ましく、100質量ppb未満であることがより好ましく、10質量ppb以下であることが更により好ましく、1質量ppb以下であることが特に好ましい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。
【0093】
上記有機溶剤の含有量は、ヘッドスペースサンプリングGC/MS法により測定することができる。具体的には、ヘッドスペースにて試料1gを200℃にて30分加熱処理した後、アジレント社5977A(カラムDB-624)を用いて測定を行う。この方法での検出限界は100質量ppbである。
【0094】
本発明は、ポリテトラフルオロエチレン樹脂の粒子と、上記粒子の表面を被覆する充填材とを含み、有機溶剤を実質的に含まず、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂は、フィブリル化特性を有するポリテトラフルオロエチレン分散樹脂であり、上記充填材による上記粒子の表面の被覆率が50%以上100%以下であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)組成物(第2のPTFE組成物ともいう。)にも関する。
【0095】
第2のPTFE組成物は、上記充填材による上記粒子の表面の被覆率が50%以上100%以下であるので、上記充填材に由来する特性を充分に発揮させることが可能な成形品を与えることができる。また、傷、断裂層、亀裂、穴等の欠陥が少なく、強度や耐久性に優れた成形品を与えることができる。
【0096】
上記被覆率は、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更に好ましく、90%以上であることが更により好ましく、95%以上であることが特に好ましい。
【0097】
上記被覆率は、ビデオマイクロスコープ(KEYENCE社製ビデオマイクロスコープVHX-900)を用いて撮影した200倍の拡大写真に二値化処理を行ったうえで、下記の方法にて算出する。
被覆率(%)=S2/(S1+S2)×100
(式中、S1は、PTFE樹脂が充填材によって被覆されていない領域の面積を表し、S2は、PTFE樹脂が充填材によって被覆されている領域の面積を表す。)
【0098】
二値化処理に用いる画像解析ソフトは特に限定されないが、例えば米国国立衛生研究所NIHから公開されているフリーソフトウエアのImage Jを使用することができる。
【0099】
第2のPTFE組成物における上記被覆率は、走査電子顕微鏡(SEM)及び元素マッピングの手法を用いて測定することもできる。
【0100】
PTFE樹脂と充填材の混合状態や充填材の色によっては、光学顕微鏡写真で被覆率を算出することが難しい場合がある。例えば、PTFE樹脂の一次粒子(乳化粒子、粒子径が1μm以下)の間に、PTFE樹脂の一次粒子より小さいサイズの充填材が分散混合された場合、光学顕微鏡写真ではその境界を見分けることが出来ない。このような場合、SEM及び元素マッピングによる方法により被覆率を求める方法が有効である。
【0101】
上記SEM及び元素マッピングに基づく被覆率は、SEM(HITACHI製SU8020 Scanning Electron Microscope)を用いてフッ素の元素マッピングを行い画像化した後、この画像を二値化処理することで、ビデオマイクロスコープ画像からの被覆率の算出と同様の方法により求めることができる。
【0102】
第2のPTFE組成物において、上記粒子を構成するPTFE樹脂は、フィブリル化特性を有するPTFE分散樹脂である。これにより、第2のPTFE組成物は、優れたフィブリル化特性を有しており、均質なペースト押出物を与えることができる。上記PTFE分散樹脂としては、上述した本発明の製造方法において使用することが可能なPTFE分散樹脂と同様のものを使用することができる。
【0103】
上記PTFE樹脂は、非溶融二次加工性を有することが好ましい。非溶融二次加工性については、上述したとおりである。
【0104】
上記PTFE樹脂の粒子は、PTFE樹脂の二次粒子であってよい。
【0105】
上記PTFE樹脂の粒子は、平均粒子径が250μm以上800μm以下であることが好ましく、300μm以上600μm以下であることがより好ましい。
【0106】
第2のPTFE組成物における上記充填材としては、上述した本発明の製造方法において使用することが可能な充填材と同様のものを使用することができる。
【0107】
上記充填材は、粒子状であっても繊維状であってもよいが、粒子状であることが好ましい。
【0108】
充填材の平均粒子径は10nm以上100μm以下であることが好ましく、10nm以上50μm以下であることがより好ましい。
【0109】
上記充填材の平均粒子径は、上記PTFE樹脂の粒子の平均粒子径より小さいことが好ましい。
【0110】
上記充填材は、アスペクト比が50以下であることが好ましく、30以下がより好ましく、20以下が更に好ましく、10以下が特に好ましい。
【0111】
第2のPTFE組成物において、上記充填材の含有量は、上記ポリテトラフルオロエチレン樹脂の粒子と充填材との合計添加量に対して0.1重量%以上であることが好ましく、1重量%以上であることがより好ましく、また、60重量%以下であることが好ましく、20重量%以下であることがより好ましい。
【0112】
上記充填材の含有量は、充填材の種類に応じて適切に設定することができる。充填材の種類ごとの具体的な含有量範囲は上述したとおりである。
【0113】
第2のPTFE組成物は、有機溶剤を実質的に含まない。このため、残留する有機溶剤による不具合が発生しにくい。
【0114】
上記有機溶剤としては、特に限定されないが、水溶性有機溶剤、塩素化炭化水素、フッ素化炭化水素等が挙げられる。
【0115】
上記有機溶剤の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン;クロロメタン、ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン等のハイドロクロロカーボン;四塩化炭素;1,1,1,2-テトラフルオロエタン、1,1-ジフルオロエタン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,2,3,3-ヘキサフルオロプロパン等のハイドロフルオロカーボン;1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン、1,1-ジクロロ-2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロパン、1,3-ジクロロ-1,1,2,2,3-ペンタフルオロプロパン、1,1-ジクロロ-3,3,3-トリフルオロエタン等のハイドロクロロフルオロカーボン等が挙げられる。
【0116】
第2のPTFE組成物における有機溶剤の含有量は、上記PTFE組成物に対し、500質量ppb以下であることが好ましく、100質量ppb以下であることがより好ましく、100質量ppb未満であることが更に好ましく、10質量ppb以下であることが更により好ましく、1質量ppb以下であることが特に好ましい。下限は特に限定されず、検出限界未満の量であってよい。
【0117】
上記有機溶剤の含有量は、ヘッドスペースサンプリングGC/MS法により測定することができる。具体的には、ヘッドスペースにて試料1gを200℃にて30分加熱処理した後、アジレント社5977A(カラムDB-624)を用いて測定を行う。この方法での検出限界は100質量ppbである。
【0118】
第2のPTFE組成物は、粉末状であることが好ましい。
【0119】
第2のPTFE組成物が粉末状である場合、平均粒子径が250μm以上であることが好ましく、300μm以上であることがより好ましく、400μm以上であることが更に好ましく、また、1000μm以下であることが好ましく、800μm以下であることがより好ましく、600μm以下であることが更に好ましい。
【0120】
上記平均粒子径は、JIS K6891に準拠して測定する。
【0121】
第2のPTFE組成物は、圧縮比(RR:Reduction Ratio)400における押出圧力が60MPa以下であることが好ましく、50MPa以下であることがより好ましく、また、10MPa以上であることが好ましい。
【0122】
上記押出圧力は、以下の方法により測定する。PTFE組成物60gに対し押出助剤である炭化水素系油Isopar-G(Exxon Mobil社製)を12.3g加え、密閉容器中で均一に混合し、室温(25±2℃)で1時間熟成する。次いで、ASTM D 4895に準拠した押出機(リダクションレシオ400の金型を備える)のシリンダーに上記混合物を充填し、室温において1分間保持した後、直ぐにシリンダーに挿入したピストンに5.7MPaの負荷を加えて、直ちに室温においてラム速度20mm/分でオリフィスから押出する。押出操作で圧力が平衡状態になる時点の荷重(N)をシリンダー断面積で除した値を押出圧力(MPa)とする。
【0123】
第2のPTFE組成物は、上述した本発明の製造方法により製造することができる。
【0124】
第1及び第2のPTFE組成物を成形することにより、成形品を得ることができる。成形方法は特に限定されず、公知の方法を採用してよい。
【0125】
第1及び第2のPTFE組成物は、導電性チューブ、熱伝導性フィルム及びCCL用基板、電池の極片、PTFE予着色材などの製造に適用できる。ここで、「CCL」とは、銅張積層板(Copper-cald Laminate)を指すものである。
【0126】
具体的には、第1及び第2のポリテトラフルオロエチレン組成物を使用して公知の方法により導電性チューブを得ることができる。例えば、第1及び第2のポリテトラフルオロエチレン組成物を助剤と均一に混合し、所定の温度で所定時間熟成させた後に、チューブに成形することにより、導電性チューブを製造することができる。第1及び第2のポリテトラフルオロエチレン組成物を用いて得られた導電性チューブは、機械的混合または凝析混合により製造されたポリテトラフルオロエチレン組成物を用いて得られた導電性チューブに比べ、収率が高く、チューブの壁がなめらかで、導電性層が連続で均一であり、導電性が良好である。
【0127】
また、第1及び第2のポリテトラフルオロエチレン組成物を使用して公知の方法により熱伝導性フィルムを得ることができる。例えば、本発明の製造方法により製造されたポリテトラフルオロエチレン組成物を助剤と均一に混合し、所定の温度で所定時間熟成させた後に、予備成形を行い、その後、押出機を用いて棒状に押し出し、ローラーで圧延することにより熱伝導性フィルムを製造することができる。第1及び第2のポリテトラフルオロエチレン組成物を用いて得られた熱伝導性フィルムは、機械的混合により製造されたポリテトラフルオロエチレン組成物を用いて得られた熱伝導性フィルムに比べ、収率が高く、表面がなめらかで、導電性及び放熱パワーがより安定で均一であり、機械的強度などの特性が顕著に向上され、使用寿命がより長い。
【0128】
さらに、第1及び第2のポリテトラフルオロエチレン組成物を使用して公知の方法によりCCL用基板を得ることができる。例えば、第1及び第2のポリテトラフルオロエチレン組成物を助剤と均一に混合し、所定の温度で所定時間熟成させた後に、予備成形を行い、その後、押出機を用いて棒状に押し出し、ローラーで圧延することによりフィルムを製造し、製造した複数枚のフィルムを熱ラミネート処理することで、CCL用基板を製造することができる。第1及び第2のポリテトラフルオロエチレン組成物を用いて得られたCCL用基板は、機械的混合により製造されたポリテトラフルオロエチレン組成物を用いて得られたCCL用基板に比べ、誘電性能の安定性及びサイズの安定性が顕著に向上される。
【0129】
導電性チューブは、車両用導電性オイルチューブ等に利用することができ、熱伝導性フィルムは、車両用発熱座布団等に利用することができ、CCL用基板は、プリント回路板等に利用することができる。
【実施例】
【0130】
実施例1
混合の原料として、粒子径が550μm程度のPTFE樹脂及び充填材である粒子径50nmのカーボンブラックを使用した。混合前のPTFEの光学顕微鏡写真は
図3に示す。積載係数は0.2となるように、PTFE樹脂とカーボンブラックをパルス式気流混合機の混合室に加えた。PTFEとカーボンブラックの合計添加量に対するカーボンブラックの添加量を3重量%にした。混合室を閉じ、吸気の圧力を0.4MPaに調整し、パルス間隔を20秒に調整し、単回パルス気流時間を0.8秒にし、パルスの回数を20回にした。次いで、温度制御システム(冷却液の循環)を起動して、混合室の温度を19℃に低下した。パラメーターの設定が完了した後、混合を開始した。混合が完了した後、エアポンプを閉じ、混合室を開き、混合物を取り出した。
【0131】
実施例1で得られた混合後の組成物における粒子の光学顕微鏡写真を
図4に示す。それから、混合後でカーボンブラックがPTFEの表面に均一的に被覆することが明らかに認められる。
【0132】
実施例2
積載係数、吸気の圧力、パルス間隔、単回パルス気流時間、パルスの回数及び混合温度を表1に示す数値に調整した以外、実施例1と同様にした。
【0133】
実施例2で得られた混合後の組成物における粒子の光学顕微鏡写真を
図5に示す。それから、混合後でカーボンブラックがPTFEの表面に均一的に被覆することが明らかに認められる。
【0134】
実施例3
積載係数、吸気の圧力、パルス間隔、単回パルス気流時間、パルスの回数及び混合温度を表1に示す数値に調整した以外、実施例1と同様にした。
【0135】
実施例3で得られた混合後の組成物における粒子の光学顕微鏡写真を
図6に示す。それから、混合後でカーボンブラックがPTFEの表面に均一的に被覆することが明らかに認められる。
【0136】
実施例4
積載係数、吸気の圧力、パルス間隔、単回パルス気流時間、パルスの回数及び混合温度を表1に示す数値に調整した以外、実施例1と同様にした。
【0137】
実施例4で得られた混合後の組成物における粒子の光学顕微鏡写真を
図7に示す。それから、混合後でカーボンブラックがPTFEの表面に均一的に被覆することが明らかに認められる。
【0138】
実施例5
積載係数、吸気の圧力、パルス間隔、単回パルス気流時間、パルスの回数及び混合温度を表1に示す数値に調整した以外、実施例1と同様にした。
【0139】
実施例5で得られた混合後の組成物における粒子の光学顕微鏡写真を
図8に示す。それから、混合後でカーボンブラックがPTFEの表面に均一的に被覆することが明らかに認められる。
【0140】
【0141】
実施例6
混合の原料として、粒子径が28μm程度のPTFE樹脂及び充填材である炭素繊維(粒子径10μm、平均のアスペクト比10:1)を使用した。積載係数は0.3となるように、PTFE樹脂と炭素繊維をパルス式気流混合機の混合室に加えた。PTFEと炭素繊維の合計添加量に対する炭素繊維の添加量を15重量%にした。混合室を閉じ、吸気の圧力を0.6MPaに調整し、パルス間隔を5秒に調整し、単回パルス気流時間を1.5秒にし、パルスの回数を10回にした。次いで、温度制御システム(冷却液の循環)を起動して、混合室の温度を15℃に低下した。パラメーターの設定が完了した後、混合を開始した。混合が完了した後、エアポンプを閉じ、混合室を開き、混合物を取り出した。
【0142】
実施例6で得られた混合後の組成物における粒子の光学顕微鏡写真を
図9に示す。それから、PTFE樹脂の粒子と炭素繊維が均一的に混合することが明らかに認められる。
【0143】
【0144】
実施例7
混合の原料として、粒子径が550μm程度のPTFE樹脂及び充填材である粒子径50nmのカーボンブラックを使用した。積載係数が0.4となるように、PTFE樹脂とカーボンブラックをパルス式気流混合機の混合室に加えた。PTFEとカーボンブラックの合計添加量に対するカーボンブラックの添加量を3重量%にした。混合室を閉じ、吸気の圧力を0.6MPaに調整し、パルス間隔を25秒に調整し、単回パルス気流時間を1.2秒にし、パルスの回数を30回にした。次いで、温度制御システムを起動して、混合室の温度を19℃に低下させた。パラメーターの設定が完了した後、混合を開始した。混合が完了した後、エアポンプを閉じ、混合室を開き、混合物を取り出した。これにより、実施例7のPTFE組成物が得られた。
【0145】
実施例8
混合の原料として、粒子径が550μm程度のPTFE樹脂、充填材である粒子径36nmの導電性カーボンブラック、充填材である粒子径26μmの石墨を使用した。積載係数が0.5となるように、PTFE樹脂と導電性カーボンブラックと石墨をパルス式気流混合機の混合室に加えた。PTFEとカーボンブラックと石墨の合計添加量に対する導電性カーボンブラックの添加量を15重量%にし、PTFEとカーボンブラックと石墨の合計添加量に対する石墨の添加量を10重量%にした。混合室を閉じ、吸気の圧力を0.5MPaに調整し、パルス間隔を30秒に調整し、単回パルス気流時間を1.2秒にし、パルスの回数を30回にした。次いで、温度制御システム(冷却液の循環)を起動して、混合室の温度を19℃に低下させた。パラメーターの設定が完了した後、混合を開始した。混合が完了した後、エアポンプを閉じ、混合室を開き、混合物を取り出した。これにより、実施例8のPTFE組成物が得られた。
【0146】
実施例9
混合の原料として、粒子径が550μm程度のPTFE樹脂、充填材である粒子径20nmのセラミック粉を使用した。積載係数が0.35となるように、PTFE樹脂とセラミック粉をパルス式気流混合機の混合室に加えた。PTFEとセラミック粉の合計添加量に対するセラミック粉の添加量を50重量%にした。混合室を閉じ、吸気の圧力を0.7MPaに調整し、パルス間隔を20秒に調整し、単回パルス気流時間を1.5秒にし、パルスの回数を30回にした。次いで、温度制御システム(冷却液の循環)を起動して、混合室の温度を19℃に低下させた。パラメーターの設定が完了した後、混合を開始した。混合が完了した後、エアポンプを閉じ、混合室を開き、混合物を取り出した。これにより、実施例9のPTFE組成物が得られた。
【0147】
【0148】
比較例1(機械的混合)
実施例1と同様のPTFE樹脂及び充填材(カーボンブラック)を使用した。3%の質量比でPTFE樹脂とカーボンブラックを攪拌構造付きの機械的攪拌機の混合室に加えた。原料の体積を混合室の容積の1/3以下にした。スポイラの角度及び高度を調整し、混合室を閉じた。回転数を1200r/minに調整し、混合時間を120秒にして混合を始めた。混合が完了した後、混合物を取り出した。
【0149】
比較例1で得られた混合後の組成物における粒子の光学顕微鏡写真を
図1に示す。それから、PTFE樹脂が繊維化したことが明らかに認められる。
【0150】
比較例2(凝析混合)
実施例1と同様のPTFE樹脂及び充填材(カーボンブラック)を使用した。3%の質量比でカーボンブラックをエタノールと水の混合液(エタノールと水の体積比は1:2.5)に加え、超音波で分散し、カーボンブラックの予分散液を得た。カーボンブラックの予分散液を低速で機械的に攪拌してから2分間後に、PTFEの分散した原液を緩やかに加えた。3分間で攪拌した後、回転数を増加しながら少量の凝集剤を加えた。それにより多量の混合物を析出した。10分間で攪拌した後、攪拌を停止した。濾過して、ほとんどの溶剤を除去した。100℃で24時間以上乾燥して、比較例2のPTFE組成物を得た。
【0151】
比較例2で得られた混合後の組成物における粒子の光学顕微鏡写真を
図2に示す。それから、大部分のカーボンブラックはPTFE樹脂の内部に包まれることが明らかに認められる。
【0152】
上記実施例7~9で製造されたPTFE組成物をそれぞれ使用して下記実施例A~Cの製品を製造し、これらの製品の性能を下記方法で評価した。
【0153】
<性能評価>
1.電流値
本発明において、得られた導電性チューブを500mm切り取って、その両端に1000Vの直流電圧を印加し、この時の電流値をマルチメーターで測定した。
【0154】
電流値が高いほど、材料の抵抗が低く、導電性が高い。
【0155】
2.体積抵抗率
体積抵抗率は、材料の単位体積当りの電流に対する抵抗を示すものである。
【0156】
本発明において、規格GB/T1410-2006に従って、得られた熱伝導性フィルムの体積抵抗率を測定した。具体的には、熱伝導性フィルムを70mm×50mm×0.13mm(a*b*h)の試験シートに製作し、その後、試験シートを試験台に載せ、強く押すようにナットを調節し、500Vの電圧を印加し、ST2258C型デジタル四探針試験機で試験シートの抵抗値Rxを測定した。その後、式ρV=Rx*a*b/hに基づいて体積抵抗率(単位:Ω・cm)を算出した。
【0157】
体積抵抗率が高いほど、材料の絶縁性が高く、導電性が低い。本発明において、体積抵抗率は0.8Ω・cmより小さいのが好ましい。
【0158】
3.引張強度TSと破断伸び率EL
引張強度は、外力の作用で材料が永久的な変形および損傷に耐える能力を示すものである。破断伸び率は、試料が引っ張られて破断する時の変位値と元の長との比の値を示すものである。
【0159】
本発明において、規格ASTM D4894に従ってInstron3366万能引張試験機を利用して、得られた熱伝導性フィルムの引張強度と破断伸び率を測定した。具体的には、熱伝導性フィルムをダンベル状の試験シートに製作した後に、ゲージ長L0を設定し、試験シートの幅a、厚さbを測った。続いて、これを治具に置いた。変位と応力を0にした後に、測定を始めた。破断まで50mm/minの引張速度で引っ張った。破断時の応力Fと長さL1を記録した。下記式により引張強度と破断伸び率を算出した。
引張強度TS=F/(a×b)
破断伸び率EL=(L1-L0)/L0×100%
【0160】
引張強度が高いほど、材料の機械的強度が高い。破断伸び率が高いほど、材料の靭性が高い。本発明において、引張強度が20MPaより大きく、破断伸び率が200%より大きいのが好ましい。
【0161】
4.温度ドリフト
温度ドリフトは、一定の温度範囲内(-50~150℃)に温度が1℃上昇するごとの誘電率の相対平均変化率を示すものである。
【0162】
本発明において、規格IPC-TM-650 2.5.5.5に従ってAgilent N5234A試験器を利用して得られたCCL用基板の温度ドリフトを測定した。具体的には、CCL用基板を30mm×70mm×0.8mmの試験シートに製作し、試験シートを治具で固定し、常温で10GHz下のz軸方向における誘電率を測定した。当該測定を4~5回繰り返して行い、平均値を取った。次に、-50~150℃の温度範囲内に異なる温度で該測定を繰り返して行い、温度に対する誘電率のグラフを作成し、得られたグラフから傾きを求め、その傾きを温度ドリフトとする。
【0163】
温度ドリフトの絶対値が低いほど、温度に対する誘電率の変化率が低く、実際の使用中に誘電性能がより安定である。
【0164】
5.熱膨張係数
熱膨張係数は、温度が1℃上昇するごとに、対象物のサイズが相対的に変化する量を示すものである。
【0165】
本発明おいて、規格IPC-TM-650 2.4に従って、得られたCCL用基板の熱膨張係数を測定した。具体的には、CCL用基板を6.35mm×6.35mm×0.8mmのサンプルに製作し、TMAスタティック熱機械分析によってサンプルの熱膨張率を測定した。
【0166】
熱膨張係数が低いほど、温度の上昇につれて材料のサイズが変化する量が小さく、製品のサイズ安定性がより高い。本発明において、熱膨張係数は(x,y,z)<(50,50,100)であるのが好ましい。なお、「(x,y,z)」が、温度が1℃上昇するごとに、長さ方向、幅方向、厚さ方向にそれぞれx ppm、y ppm、及びz ppm増加したことを意味する。以下も同様である。
【0167】
実施例A
実施例7で得られたPTFE組成物を助剤オイルであるIsopar-G*1と均一に混合し、40℃で24時間熟成させた後に、チューブに成形した。これにより、実施例Aの導電性チューブを得た。
【0168】
成形中に使用するPTFEチューブの押出機は、日本田端社製であり、鋼筒/芯棒の直径が100/20mm、金型/ニードル金型の直径が10.5/8.3mm、RR比が232、成形時の押出圧力が19MPaである。
【0169】
光学顕微鏡を使用し、8000倍の拡大倍率で実施例Aで得られた導電性チューブの表面を観察し、導電性チューブ表面の光学顕微鏡写真を得た。得られた写真を
図10に示した。
図10から明らかなように、実施例Aで得られた導電性チューブは、表面がなめらかで、導電性層が連続で均一であり、明らかな傷や断裂層がない。
【0170】
また、実施例Aで得られた導電性チューブにおける電流値を測定した。得られた結果を表4に示した。
【0171】
*1:Exxon Mobil社製、比重が0.748であり、引火点が440℃であり、沸点が167~176℃である。
【0172】
比較例A’
比較例1で得られたPTFE組成物を使用した以外、実施例Aと同様にして比較例A’の導電性チューブを得た。
【0173】
実施例Aと同様にして比較例A’の導電性チューブ表面の光学顕微鏡写真を得た。得られた写真を
図11に示した。
図11から明らかなように、繊維化しており、小さな亀裂があった。これは、チューブの耐用年数と圧縮強度に影響する。
【0174】
また、実施例Aと同様にして比較例A’の導電性チューブにおける電流値を測定し、得られた結果を表4に示した。
【0175】
比較例A’’
比較例2で得られたPTFE組成物を使用した以外、実施例Aと同様にして比較例A’’の導電性チューブを得た。
【0176】
実施例Aと同様にして比較例A’’の導電性チューブ表面の光学顕微鏡写真を得た。得られた写真を
図12に示した。
図12から明らかなように、多くの白い凝集を含有しており、表面は非常に不均一であった。これは、カーボンブラックはPTFE樹脂の内部に包まれたからである。
【0177】
また、実施例Aと同様にして比較例A’’の導電性チューブにおける電流値を測定し、得られた結果を表4に示した。
【0178】
【0179】
表4の結果から明らかなように、本発明の製造方法により製造されたポリテトラフルオロエチレン組成物を使用して製造した導電性チューブは、電流値が高くて均一で安定であり、より良好な導電性が示された。これに対し、機械的混合法で製造されたポリテトラフルオロエチレン組成物を使用して製造した導電性チューブは、低い電流値が示された。このことは、比較例A’で得られた導電性チューブは、抵抗が高く、導電性が悪いことが示された。さらに、凝析混合法で製造されたポリテトラフルオロエチレン組成物を使用して製造したチューブは、電流値が検出されず、導電性がなく導電性チューブとして使用できないことが示された。
【0180】
凝析混合法で製造されたポリテトラフルオロエチレン組成物を使用して製造した製品は導電性がないため、該製品は熱伝導性もない。そのため、以下の試験では、凝析混合法で製造されたポリテトラフルオロエチレン組成物を使用して熱伝導フィルムを製造しない。
【0181】
実施例B
実施例8に得られたPTFE組成物を助剤オイルであるIsopar-M*2と均一に混合し、40℃で24時間熟成させた後に、3MPaの圧力で20分間保持し、予備成形した。その後、押出機を利用して5.2MPa程度の圧力で、直径11mmの棒状に押し出した。次に、ローラーで圧延することにより0.13mmのフィルムを製造し、乾燥、焼成を経て、PTFE熱伝導性フィルムを得た。
【0182】
光学顕微鏡を使用し、それぞれ50倍及び600倍の拡大倍率で実施例Bで得られた熱伝導性フィルムの表面を観察し、熱伝導性フィルム表面の光学顕微鏡写真を得た。得られた写真を
図13に示した。
図13から明らかなように、熱伝導性フィルムでは、表面がなめらかで均一であり、穴がなかった。
【0183】
また、実施例Bで得られた熱伝導性フィルムの体積抵抗率、引張強度、破断伸び率、熱膨張係数を測定した。得られた結果を合わせて表5に示した。
【0184】
*2:Exxon Mobil社製であり、比重が0.79であり、引火点が92℃であり、沸点が225~254℃である。
【0185】
比較例B’
比較例1で得られたPTFE組成物を使用した以外、実施例Bと同様にして比較例B’の熱伝導性フィルムを得た。
【0186】
実施例Bと同様にして比較例B’の熱伝導性フィルム表面の光学顕微鏡写真を得た。得られた写真を
図14に示した。
図14から明らかなように、部分的な繊維化現象があり、フィルムの表面に穴があった。これは、不十分な機械的強度、不均一な全体的な発熱、局部的な過熱の危険性、および低い耐用年数をもたらす。
【0187】
また、比較例B’で得られた熱伝導性フィルムの体積抵抗率、引張強度、破断伸び率を測定した。得られた結果を合わせて表5に示した。
【0188】
【0189】
表5の結果から明らかなように、本発明の製造方法により製造されたポリテトラフルオロエチレン組成物を使用して製造した熱伝導性フィルムは、機械的強度が高く、靭性が高く、これにより、その使用寿命が長く、また、体積抵抗率が低く、放熱効率が高く且つ放熱がより均一である。これに対し、機械的混合法で製造されたポリテトラフルオロエチレン組成物を使用して製造した熱伝導性フィルムは、体積抵抗率が高いため、放熱効率が低く、使用寿命も短い。
【0190】
実施例C
実施例9で得られたPTFE組成物を助剤オイルであるIsopar-M*2と均一に混合し、40℃で24時間熟成させた後に、3MPaの圧力で20分間保持し、予備成形した。その後、押出機を利用して4MPa程度の圧力で、直径16mmの棒状に押し出した。次に、ローラーで圧延することにより0.165mmのフィルムを製造し、乾燥、焼成を経て、PTFEフィルムを得た。製造した同一サイズのPTFEフィルムを8枚熱ラミネート処理して、0.8mmのCCL用基板を得た。
【0191】
その後、実施例Cで得られたCCL用基板の温度ドリフト、熱膨張係数を測定した。得られた結果を合わせて表6に示した。
【0192】
比較例C’
比較例1で得られたPTFE組成物を使用した以外、実施例Cと同様にして比較例C’のCCL用基板を得た。その後、比較例C’で得られたCCL用基板の温度ドリフト、熱膨張係数を測定した。得られた結果を合わせて表6に示した。
【0193】
【0194】
表6の結果から明らかなように、本発明の製造方法により製造されたポリテトラフルオロエチレン組成物を使用して製造したCCL用基板は、温度ドリフトが低く、熱膨張係数が小さく、これにより、実際の使用中に、より安定な誘電特性及びサイズの安定性を有し、信号伝送効率の向上に有利であり、損耗を低減でき、銅箔との良好な複合効果を有する。
【0195】
実験1
実施例1、比較例1及び比較例2で得られたPTFE組成物、並びに実施例1及び比較例1で使用したPTFE樹脂(PTFE組成物の原料)について、ペースト押出試験からフィブリル化特性に関する評価を行った。
【0196】
各PTFE組成物60gに対して、押出助剤である炭化水素系油としてIsopar-Gを12.3g加え、密閉容器中で均一に混合し、室温(25±2℃)で1時間熟成した。
【0197】
次いで、ASTM D 4895に準拠した押出機を用い、リダクションレシオ400の金型を使用し、ペースト押出試験を行った。すなわち、押出機のシリンダーに上記混合物を充填し、室温において1分間保持した後、直ぐにシリンダーに挿入したピストンに5.7MPaの負荷を加えて、直ちに室温においてラム速度20mm/分でオリフィスから押出した。オリフィスから押出された押出物(ビードと呼ばれる)の状態を観察するとともに、押出圧力を測定した。
【0198】
尚、押出操作で圧力が平衡状態になる時点の荷重(N)をシリンダー断面積で除した値を押出圧力(MPa)とした。
【0199】
実施例1及び比較例2で得られたPTFE組成物では、均質なペースト押出物が得られた。実施例1及び比較例2で得られたPTFE組成物の押出圧力は、原料であるPTFE樹脂の押出圧力(33MPa)と比較してもわずか20%しか上昇が認められなかった。
【0200】
一方、比較例1で得られたPTFE組成物の押出物は不均質であり、部分的にひび割れが発生し、またよじれていた。この押出物(未焼成)の引張試験を行ったところ、不均一な部分によって実質的な強度や伸びがなく、押出物が破断した。
【0201】
また、比較例1で得られたPTFE組成物では、原料であるPTFE樹脂の押出圧力と比較して押出初期から圧力上昇が認められた上に、押出圧力が安定せず、平衡状態に達しなかった。このため、押出圧力の算出ができなかった。
【0202】
ペースト押出試験の結果から、実施例1(気流混合)及び比較例2(凝析混合)で得られたPTFE組成物のフィブリル化特性は、原料であるPTFE樹脂と比較しても同等であり、優れる結果が得られた。
【0203】
一方、比較例1(機械的混合)で得られたPTFE組成物のフィブリル化特性は著しく劣る結果となった。
【0204】
実験2
実施例1、比較例1及び2で得られたPTFE組成物について、ヘッドスペースサンプリングGC/MS法によりPTFE組成物中に含まれる有機溶剤について分析を行った。
【0205】
具体的には、ヘッドスペースにて試料1gを200℃にて30分加熱処理した後、アジレント社5977A(カラムDB-624)を用いて測定を行った。
【0206】
分析の結果、実施例1及び比較例1から得られたPTFE組成物中には、有機溶剤は含まれていない(検出限界未満)ことがわかった。一方、比較例2から得られたPTFE組成物中からはエタノール(1.0質量ppm)が検出された。
【0207】
比較例3
特開平8-253600号公報記載の実施例4及び5に準拠して、PTFE樹脂とカーボンブラックと石墨から成るPTFE組成物を得た。
【0208】
上記PTFE樹脂としては実施例8で使用したPTFE樹脂の水性分散液を使用し、導電性カーボンブラックと石墨は実施例8と同じものを使用した。
【0209】
導電性カーボンブラックと石墨の混合比率は、実施例8と同様、PTFEとカーボンブラックと石墨の合計添加量に対する導電性カーボンブラックの添加量を15重量%とし、PTFEとカーボンブラックと石墨の合計添加量に対する石墨の添加量を10重量%とした。
【0210】
また非水溶性有機溶剤として、特開平8-253600号公報と同様に1,1-ジクロロ-1-フルオロエタンを使用した。
【0211】
実験3
実施例8及び比較例3で得られたPTFE組成物について、ヘッドスペースサンプリングGC/MS法によりPTFE組成物中に含まれる有機溶剤について分析を行った。
【0212】
具体的には、ヘッドスペースにて試料1gを200℃にて30分加熱処理した後、アジレント社5977A(カラムDB-624)を用いて測定を行った。
【0213】
分析の結果、実施例8から得られたPTFE組成物中には、有機溶剤は含まれていない(検出限界未満)ことがわかった。一方、比較例3から得られたPTFE組成物中からは1,1-ジクロロ-1-フルオロエタン(1.2質量ppm)が検出された。
【0214】
実験4
各実施例及び比較例で得られたPTFE組成物の被覆率を算出した。
結果を表7に示す。
【0215】
【0216】
図16、17及び18に、実施例1、比較例1及び比較例2で得られた組成物のビデオマイクロスコープ写真を二値化処理して得られた画像を示す。
【0217】
図19(a)、(b)及び(c)に、実施例8で得られた組成物の電子顕微鏡写真、当該電子顕微鏡写真を用いてフッ素の元素マッピングを行って得られた元素マッピング画像、及び、当該元素マッピング画像を二値化処理して得られた画像を示す。
【0218】
図20(a)、(b)及び(c)に、比較例3で得られた組成物の電子顕微鏡写真、当該電子顕微鏡写真を用いてフッ素の元素マッピングを行って得られた元素マッピング画像、及び、当該元素マッピング画像を二値化処理して得られた画像を示す。