(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-29
(45)【発行日】2023-07-07
(54)【発明の名称】同調回路及び同調のための方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/062 20060101AFI20230630BHJP
H01S 5/183 20060101ALI20230630BHJP
H01S 5/0687 20060101ALI20230630BHJP
【FI】
H01S5/062
H01S5/183
H01S5/0687
(21)【出願番号】P 2021575040
(86)(22)【出願日】2020-05-13
(86)【国際出願番号】 EP2020063357
(87)【国際公開番号】W WO2020259914
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2022-02-14
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521548733
【氏名又は名称】アーエムエス インターナショナル アーゲー
【氏名又は名称原語表記】AMS INTERNATIONAL AG
【住所又は居所原語表記】Eichwiesstrasse 18b, Jona, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スティール コリン
(72)【発明者】
【氏名】レーザー カタリン
(72)【発明者】
【氏名】ストヤノヴィチ ゴラン
【審査官】右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0076250(US,A1)
【文献】特開2005-064700(JP,A)
【文献】特開2002-204022(JP,A)
【文献】特開2003-298424(JP,A)
【文献】特開2016-127214(JP,A)
【文献】特表2009-542020(JP,A)
【文献】特開2017-207412(JP,A)
【文献】特開2010-214872(JP,A)
【文献】Laurens Breyne et.al.,Comparison Between Analog Radio-Over-Fiber and Sigma Delta Modulated Radio-Over-Fiber,IEEE PHOTONICS TECHNOLOGY LETTERS,米国,IEEE,2017年11月,Vol.29, No.21,1808
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00 - 5/50
H01L 33/00 - 33/64
H03M 1/00 - 1/88
H03M 3/00 - 9/00
H05B 39/00 - 39/10
H05B 44/00 - 45/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)(20)用の同調回路(1)であって、
前記同調回路(1)は、
ビット信号を含むビットストリーム(BS)を生成するように構成されたデルタシグマ変調器(10)と、
制御信号(CS)に応じてスイッチング可能な方法で前記VCSEL(20)に電流を供給するように構成された電流源(11)と、
を含み、
前記ビットストリーム(BS)は、目標状態信号(TS)に基づいて生成され、前記制御信号(CS)は、前記ビットストリーム(BS)の前記ビット信号に対応するか、又は前記ビットストリーム(BS)の前記ビット信号から導出さ
れ、
前記同調回路(1)は、前記VCSEL(20)の出力波長を同調させるように構成される、
同調回路(1)。
【請求項2】
前記制御信号(CS)は、パルス密度変調(PDM)信号である、請求項1に記載の同調回路(1)。
【請求項3】
前記電流は、バイアス電流として前記VCSEL(20)に供給される、請求項1又は2に記載の同調回路(1)。
【請求項4】
前記バイアス電流は、前記VCSEL(20)の温度及び/又は出力を制御するように構成される、請求項3に記載の同調回路(1)。
【請求項5】
前記目標状態信号(TS)は、目標波長に対応するか、又は目標波長から導出される、請求項1~4のいずれか1項に記載の同調回路(1)。
【請求項6】
線形化アルゴリズムを入力信号に適用することによって、前記目標状態信号(TS)を生成するように構成された入力プロセッサ(12)をさらに備える、請求項1~5のいずれか1項に記載の同調回路(1)。
【請求項7】
前記ビットストリーム(BS)は、前記目標状態信号(TS)と、前記VCSEL(20)から受信される実際状態信号(AS)とに基づいて生成される、請求項1~6のいずれか1項に記載の同調回路(1)。
【請求項8】
前記ビットストリーム(BS)を変調することによって、前記制御信号(CS)を生成するように構成された変調器(13)をさらに備える、請求項1~7のいずれか1項に記載の同調回路(1)。
【請求項9】
前記変調器(13)は、パルス幅変調PWMを前記ビットストリーム(BS)に適用する、請求項8に記載の同調回路(1)。
【請求項10】
前記デルタシグマ変調器(10)は、少なくとも1MHzのサンプリングレートで動作する、請求項1~9のいずれか1項に記載の同調回路(1)。
【請求項11】
前記電流源(11)は、安定した低雑音電流源である、請求項1~10のいずれか1項に記載の同調回路(1)。
【請求項12】
前記VCSEL(20)をさらに含む、請求項1~
11のいずれか1項に記載の同調回路(1)。
【請求項13】
電子デバイスの光源を同調させるように構成されている、請求項1~
12のいずれか1項に記載の同調回路(1)を備える、オーディオデバイス、通信デバイス、又は医療センサなどの電子装置。
【請求項14】
垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL(20))を同調するための方法であって、
前記方法は、
ビット信号を含むビットストリーム(BS)をデルタシグマ変調器(10)によって生成することと、
前記ビットストリーム(BS)の前記ビット信号から制御信号(CS)を生成することと、
電流を生成するための前記制御信号(CS)に基づいてスイッチング可能な電流源(11)をスイッチングすることと、
前記VCSEL(20)へ前記電流を供給することと、
前記電流に基づいて前記VCSEL(20)の出力波長を調整することと、
を含み、
前記ビットストリーム(BS)は、目標状態信号(TS)に基づいて生成される、
方法。
【請求項15】
前記ビットストリーム(BS)を生成することは、パルス密度変調(PDM)信号を生成することを含む、請求項
14に記載の方法。
【請求項16】
前記制御信号(CS)を生成することは、パルス幅変調(PWM)を、前記ビットストリーム(BS)に適用することを含む、請求項
14又は
15に記載の方法。
【請求項17】
前記デルタシグマ変調器は、単一ビットデルタシグマアナログデジタルコンバータである、請求項1~12のいずれか1項に記載の同調回路(1)。
【請求項18】
前記同調回路は、集積回路である、請求項1~12のいずれか1項に記載の同調回路(1)。
【請求項19】
前記実際状態信号(AS)は、瞬間的な温度又は前記VCSELの発光波長に対応する、請求項7に記載の同調回路(1)。
【請求項20】
前記入力信号は、目標状態のためのデジタル化された表現に対応するデジタル制御ワードである、請求項6に記載の同調回路(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に、垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL:Vertical-Cavity Surface-Emitting Laser)のための同調回路、及びVCSELを同調させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの用途に対して、その波長に関して高分解能で同調可能なレーザを有することが望ましい。特に、光共振器を励起する場合、又は最新の高感度変位センサで一般に使用される光干渉計を動作させる場合、正確な波長に同調されたレーザ光は、システムの特定の効率及び/又は感度を達成するために必須である。垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)は、ウエハスケール処理を用いて所望のシステムとコスト効率良く製造し、集積することができるので、これらの用途に適したソリューションを提供する。従来のファブリペロー(Fabry-Perot)型ダイオードレーザと比較して、VCSELは、優れた高速変調効率を特徴とする。今日まで、VCSELは、いくつかの重み付けタッピングが基準空洞共振器又は干渉計などの光学構成要素の出力によって制御されるフィードバックループ内で並列に接続されるアナログ積分器又は高分解能IDACを使用して波長に関して同調される。これは、柔軟性に欠けることもある複雑で高感度な設定につながる。
【発明の概要】
【0003】
達成されるべき目的は、VCSELのための同調回路(tuning arrangement)及びVCSELを同調させるための方法のための改良された概念を提供することである。
【0004】
この目的は、独立請求項の主題によって達成される。改善された概念の実施形態及び発展形態は、従属請求項に定義される。
【0005】
改良された概念は、単一ビット又は低分解能IDAC又はスイッチを制御する単一ビット又は低分解能ビットストリームを与えるために、デルタシグマ変調器を用いてVCSELの波長をデジタル的に調整するアイデアに基づいている。マルチビットビットストリームは例えば、増加された解像度を達成し、例えば、ダイナミックエレメントマッチング(DEM)、又はディザリングのような従来のデジタル信号処理方法を実現するために、単純な4ビットIDACをデジタル的に支援するために使用されてもよい。特に、VCSELの波長は、VCSELに印加されるバイアス電流に依存するので、デルタシグマ変調器は、VCSELの波長を調整するために、バイアス電流を効果的に制御する。
【0006】
特に、改良された概念によるVCSELのための同調回路は、ビット信号を含むビットストリームを生成するように構成されたデルタシグマ変調器と、制御信号に応じてスイッチング可能な方法でVCSELに電流を供給するように構成された電流源とを含む。ビットストリームは、目標状態信号に基づいて生成され、制御信号はビットストリームのビット信号に対応するか、又はビットストリームのビット信号から導出される。
【0007】
VCSELでは、発光波長が例えば、ファブリ・ペロット型縁部発光レーザの場合のように、利得ピークによってではなく、空洞共振によって決定される。従って、VCSELは、VCSELの半導体層の熱膨張、すなわちキャビティ長、及び熱屈折効果、すなわち、温度ゆらぎによる共振器内の平均屈折率の変化の両方によって引き起こされる、それらの発光波長における顕著な温度依存性を示す。温度変化によるVCSELの典型的な発光波長変化は、約0.07nm/Kで起こる。VCSELに印加される電流、例えばバイアス電流を用いて、VCSELの温度の調節を簡単に行うことができる。
【0008】
強い温度挙動のために、従来のVCSELは、典型的なレーザダイオードの変調効率と比較して約2桁大きい0.5nm/mAのオーダの大きな変調効率によって特徴付けられる。したがって、VCSELの波長は、集積化CMOS電流源及び他の構成要素に対してさえも、妥当なレベルでバイアス電流を印加する手段によって効率的に同調することができる。
【0009】
改良されたコンセプトは、VCSELに一定のバイアス電流を供給する単一のスイッチ可能な電流源(single switchable current source)を用いて、VCSELの同調を実現する。この原理は、VCSELの温度、又はその半導体層のようなVCSELの構成要素の温度を、VCSEL内の熱を放散するバイアス電流をスイッチオン及びスイッチオフすることによって、ある設定点に調節するものと理解され得る。電流源は例えば、集積回路(IC)であり、電流源は、電流源に印加される制御信号のレベルに基づいてオン及びオフが切り替わる定出力電流を有する。
【0010】
電流源に印加される制御信号は、目標状態信号に基づいてデルタシグマ変調器によって生成されるビットストリームのビット信号に対応するか、又はビットストリームのビット信号から導出される。デルタシグマ変調器は例えば、単一ビットデルタシグマADCであり、これも同様に集積回路であり得る。デルタシグマ変調の動作原理は十分に確立されているので、ここではこれ以上詳述しない。例えば、電流源はビットストリームのビット信号が高い値、すなわち値1である場合にバイアス電流の出力をイネーブルし、低いビット信号、すなわち値0のビット信号の出力をディスエーブルするように構成される。
【0011】
デルタシグマ変調器に供給される目標状態信号は例えば、VCSELの目標温度又はVCSELの部品に対応してもよい。このようにして、VCSELの波長の調整(regulation)、すなわち同調(tuning)は、デルタシグマ変調器によって生成される変調を介して温度を調整する手段によって達成される。
【0012】
同調回路は例えば、CMOS集積回路のような集積回路であってもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、制御信号がパルス密度変調(PDM)信号である。
【0014】
電流源がある基準及びあるデューティサイクルで、オン・オフされる古典的なパルス幅変調(PWM)と比較して、ビットストリームのビット信号は、パルス密度変調(PDM)を表すことができる。例えば、デルタシグマ変調器は、目標状態信号の振幅に応じて、ビットストリームのビット信号に対して高い値又は低い値のいずれかを生成する1ビット量子化器である。1ビット量子化器はさらに、量子化誤差がビットストリームの複数ビット信号にわたって平均化されるように、デルタシグマ処理ループにおける量子化誤差を負にフィードバックしてもよい。PDM信号は、PWM信号の一般化された形式であり、高い値と低い値の間に固定周波数はない。したがって、PDM型のビットストリームは、PWM信号と比較して、より効率的且つ確実に温度を調節することができる。
【0015】
一部の実施形態では、電流は、バイアス電流としてVCSELに供給される。一部の実施形態では、バイアス電流がVCSELの温度及び/又は出力を制御するように構成される。
【0016】
上述のように、バイアス電流は温度を上昇させ、したがって、発光波長の変化を引き起こすために、VCSELの構成要素内の熱を消散させる目的を果たしてもよい。したがって、バイアス電流がない場合、すなわち電流源がオフに切り替わるとき、VCSEL構成要素内に蓄積された熱は、VCSELの周囲に放散され、したがって、クールダウンを引き起こす。代替案として、又は追加案として、バイアス電流は例えば、VCSELの動作電流を増加させることによって、VCSEL自体の出力に影響を与える目的を果たしてもよい。より多くの光パワーは光吸収によるより多くの熱を意味するので、同様に、VCSELは発光波長を調整するために、温度に関して、このように上昇させるかもしれない。
【0017】
いくつかの実施形態では、目標状態信号が、目標波長に対応するか、又は目標波長から導出される。
【0018】
理想的には、同調回路が、発光波長が意図された調整量であるため、温度に代えて特定の波長にVCSELを調整することを可能にする。例えば、同調回路は、目標発光波長が目標温度に変換され、最終的にデルタシグマ変調器に供給される、ルックアップテーブルなどの手段を含む。このようにして、VCSELを特定の発光波長に同調させるために、手動変換を実行する必要はない。
【0019】
いくつかの実施形態では、同調回路が、入力信号に線形化アルゴリズムを適用することによって目標状態信号を生成するように構成される入力プロセッサをさらに含む。
【0020】
同調回路のための入力信号は、目標波長などの目標状態のためのデジタル化された表現に対応するデジタル制御ワードであってもよい。これらの実施形態では、入力信号を、同様にデルタシグマ変調器の実際の設定点に対応するデジタル制御ワードとすることができる目標状態信号に変換するために、入力プロセッサが使用される。例えば、目標状態信号は、VCSELの目標温度、従って、目標発光波長に対応するデューティサイクル値のためのデジタル化された表現である。この目的のために、同調回路に提供される入力信号と、デルタシグマ変調器に提供される目標状態信号との間の変換を実行するために、線形化アルゴリズムが適用されてもよい。したがって、変調器は適切な線形化アルゴリズムを適用することにより、VCSELの発光波長に対するデジタル符号の線形性を改善する手段であるとみなすことができる。
【0021】
一部の実施形態では、ビットストリームが目標状態信号及び、VCSELから受信される実際状態信号に基づいて生成される。
【0022】
発光波長の同調の効率及び信頼性をさらに高めるために、これらの実施形態では、フィードバックループが採用される。フィードバックループは、VCSELの実際の状態、例えば瞬間的な温度又は発光波長に対応する実際状態信号を、デルタシグマ変調器に、又は実際状態信号を目標状態信号と比較するための入力プロセッサにフィードバックする。この比較に基づいて、デルタシグマ変調は例えば、デルタシグマ変調器によって生成される制御信号をVCSELの実際の状態に適応させるために、目標状態信号を調整してもよい。
【0023】
いくつかの実施形態では、同調回路がビットストリームを変調することによって制御信号を生成するように構成された変調器をさらに備える。
【0024】
変調器は電流源のスイッチングをさらに微調整するために、PDM信号であってもよいデルタシグマ変調器のビットストリームを適応させることができる。例えば、変調器は、所定のPWMデューティサイクルを有するPWMのような、さらなる変調をビットストリームに適用することができる。このPWM変調は、PDM信号の上にある高分解能PWMと呼ばれることがある。PWM変調は例えば、VCSELの膨大で制御不能な温度上昇及び/又は有害な出力をもたらす、電流源が広範囲にわたってスイッチオンされるのを防止する目的を果たすことができる。
【0025】
例えば、PWMは、セルフクロッキングPWM回路によって生成される2又は3ビットの分解能を有してもよい。この文脈におけるセルフクロッキング(self-clocking)とは、デルタシグマ変調器のタイミングよりも4倍又は8倍速いタイミング要素を有するPWM回路を指す。その結果としてのPWMは、VCSELの同調においていくつかの余分なビットの分解能を提供する。
【0026】
いくつかの実施形態では、デルタシグマ変調器が少なくとも1MHzのサンプリングレートで動作する。例えば、サンプリングレートは、37.7kHzのオーバーサンプリングレート64倍に相当する2.4MHzであり、これは、37.7kHzの商用オーディオアプリケーションの典型的なサンプリングバンド幅である。
【0027】
一部の実施形態では、電流源は安定した低ノイズ電流源である。
【0028】
多くのセンシング応用に対して、VCSELの低雑音出力は、所望の感度を達成するために不可欠である。この目的のために、VCSELは好ましくはショットノイズレベルの付近で、又はショットノイズレベルで動作され、これは光強度ノイズに対する基本的な限界を構成する。特に、電流が、レーザの出力パワーを調整するように構成されている場合、電流源がいかなる追加の有意なノイズを導入することを阻止するために、これらの実施形態における電流源は、VCSELのショットノイズを下回るノイズレベルを有し、それは、同様にVCSELをバイアスする絶対電流に依存する。
【0029】
この目的は、上述の実施形態のうちの1つによる同調回路を備える、オーディオデバイス、通信デバイス、又は医療センサなどの電子デバイスによってさらに解決される。これらの電子デバイスにおける同調回路は例えば、光変位センサの光源を同調させるように構成される。同様に、分光法及び他の光音響装置における応用は、改良された概念による調整構成から利益を得るのであろう。
【0030】
この目的は、垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)を調整する方法によってさらに解決され、この方法はデルタシグマ変調器の手段によって、ビット信号を含むビットストリームを生成し、ビットストリームのビット信号から制御信号を生成することを含む。この方法は電流を生成するための制御信号に基づいてスイッチング可能な電流源をスイッチングし、その電流をVCSELに供給することをさらに含む。ビットストリームは、目標状態信号に基づいて生成される。
【0031】
本方法のさらなる実施形態は、上述の同調回路の実施形態から当業者に明らかになる。
【0032】
例示的な実施形態の図面の以下の説明は、改善された概念の態様をさらに例示し、説明することができる。同じ構造及び同じ効果を有する同調装置の構成要素及びパーツは、それぞれ、同等の参照符号で表される。同調回路の構成要素及び部品が異なる図面におけるそれらの機能に関して互いに対応する限り、それらの説明は、以下の図面の各々について繰り返さない。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】改善された概念による同調回路の例示的な実施形態の模式図を示す。
【
図2】改善された概念による同調回路の例示的な実施形態の模式図を示す。
【
図3】改善された概念による同調回路の例示的な実施形態の模式図を示す。
【
図4】改善された概念による同調回路の例示的な実施形態の模式図を示す。
【
図5】同調回路の様々な実施形態で使用される制御信号の例を示す。
【0034】
図1は、改良された概念による同調回路1の例示的な実施形態の概略図を示す。この実施形態における同調回路1は、デルタシグマ変調器10と、電流源11とを備える。同調回路は、集積回路、例えばCMOS集積回路であってもよい。同調回路1は例えば、垂直共振面型発光レーザ(VCSEL)20をさらに含む半導体基板上に配置されてもよい。代替的に、VCSEL20は例えば、溶融又は接着の手段によって、同調回路1と共に半導体基板上に配置される追加の基板によって構成されてもよい。
【0035】
同調回路1は、入力側で目標状態信号TSを受信するように構成される。例えば、目標状態信号(TS:Target State)は、その発光波長又は温度などのVCSEL20の所望の目標状態を量子化するデジタル制御ワードである。デルタシグマ変調器10は例えば、従来のデルタシグマ変調を適用することによって目標状態信号(TS)に応じてビットストリーム(BS::BitStream)を生成するように構成された単一ビットデルタシグマADCである。ビットストリーム(BS)は、それぞれが高い値、すなわち「1」、又は低い値、すなわち「0」のいずれかであるビット信号を含む。例えば、ビットストリーム(BS)のビット信号は、VCSEL20の所望の目標状態に対応するアナログ又はデジタル信号を表すパルス密度変調(PDM)型信号を構成する。
【0036】
電流源11は、同調回路1のこの実施形態では、ビットストリーム(BS)に対応する電流源11に供給される制御信号(CS)に基づいて電流出力をイネーブル又はディスエーブルするように構成されたスイッチング可能な電流源である。例えば、電流源11は、高い値のビットストリーム(BS)のビット信号が受信された場合に電流出力をイネーブルにし、低い値のビット信号に対して電流出力をディスエーブルにするように構成される。電流出力は、例えばバイアス電流としてVCSEL20に供給される定電流である。電流源11は、VCSEL20のショットノイズレベルよりも小さいノイズレベルを有する電流を生成するように特徴付けることができる。バイアス電流は、VCSEL20又はVCSELの構成要素の温度の変化、及び/又はVCSEL20の出力光パワーの変化、に影響を及ぼすように構成される。
【0037】
任意選択で、VCSEL20の実際の状態に対応する実際状態信号(AS:Actual State)が、VCSEL20の閉ループ制御を実現するためにフィードバック信号として、例えばデルタシグマ変調器10などの同調回路1に供給される。
【0038】
図2は、
図1の実施形態に基づく同調回路1の実施形態の模式図を示している。本実施形態において、同調回路1は、同調回路1に提供された入力信号(IS:Input Signal)に応じて目標状態信号(TS)を生成するように構成された入力プロセッサ12をさらに備えている。入力信号(IS)は同様に、VCSEL20の所望の目標状態を量子化するデジタル制御ワードであってもよい。入力プロセッサ12は、目標状態信号(TS)を生成するために、入力信号(IS)に波長線形化アルゴリズムを適用するように構成される。この意味で、目標状態信号(TS)は、変換された入力信号(IS)と見なすことができる。例えば、入力プロセッサ12は、所望の目標波長を、温度設定点及び/又は出力電力設定点のようなVCSEL20のパラメータの対応する設定点に変換する。
【0039】
図3は、
図1の実施形態に基づく同調回路1のさらなる実施形態の模式図を示す。この実施形態では、同調回路1が、ビットストリーム(BS)を変調することによって制御信号(CS:Control Signal)を生成するように構成された変調器13をさらに備える。例えば、変調器13は、ビットストリーム(BS)にパルス幅変調(PWM)を適用するように構成される。したがって、変調器13によって生成される制御信号(CS)は、パルス密度変調(PDM)信号であってもよく、これに基づいて、電流源11は、その電流出力をイネーブル及びディスエーブルにする。
【0040】
図4は、
図2及び
図3に示す実施形態に基づく同調回路のさらなる実施形態の概略図を示す。この実施形態は、入力信号(IS)に線形化アルゴリズムを適用して目標状態信号(TS)を生成する入力プロセッサ12と、目標状態信号(TS)にデルタシグマ変調を適用してビットストリーム(BS)を生成するデルタシグマ変調器10と、ビットストリーム(BS)を変調して制御信号(CS)を生成するパーツ用変調器13とを組み合わせたものである。さらに、
図4の実施形態は、VCSEL20の実際の状態に関する情報を搬送し、フィードバック信号として同調回路1に供給される、実際状態信号(AS)に基づくフィードバックを採用する。上述したように、同調回路1の全ての構成要素、すなわちデルタシグマ変調器10、入力プロセッサ12、変調器13及び電流源11は、集積回路(IC)によって構成されてもよい。
【0041】
図5は、スイッチング可能な電流源11を制御するために同調回路1によって生成される制御信号(CS)の異なる例を含む図を示す。図中の制御信号(CS)の異なる例は、定性的に、すなわち任意の振幅で時間に対してプロットされている。
【0042】
制御信号(CS)の一番上の例は、パルス幅変調(PWM)のあるデューティサイクルを有するタイプの信号を表しており、この場合、デューティサイクルは50%である。この場合のデューティサイクルは、目標状態信号(TS)に対応するか、又はそれから導出される。制御信号(CS)は、ビット信号を含むビットストリームとみなすことができるので、この例は、制御信号(CS)の前半部が高い値、すなわち「1」のビット信号によって形成され、一方、制御信号(CS)の後半部は低い値、すなわち「0」のビット信号によって形成されることを意味している。したがって、制御信号(CS)のこの例では、電流源11を制御して、所定の期間の前半の電流出力をイネーブルにし、所定の期間の後半の電流出力をディスエーブルにする。制御信号(CS)のビット信号は、少なくとも1MHzのサンプリングレート、特に2.4MHzのサンプリングレートで、電流源11に供給され得る。サンプリングレートは、例えばデルタシグマ変調器のものと同等である。
【0043】
図5の制御信号(CS)の真ん中の例は、パルス密度変調(PDM)タイプの信号を表し、前の例のものに対応するデューティサイクルは、すなわち同じく50%を有する。PWM型の信号と比較して、同じデューティサイクルのPDM型の信号は、低い値と高い値のビット値が同じ量だけ含まれるが、PDM信号は、低い値と高い値の間でより頻繁に切り替わる。通常、パルス密度変調器の出力は、PDM型の信号を表す。
【0044】
図5の制御信号(CS)の一番下の例は、PDMとPWMの組み合わせを表す。特に、示された信号は、さらにパルス幅変調されたPDM型信号である。この意味で、PWMは、PDM型信号に適用される高分解能PWMとみなされ得る。
【0045】
上述した
図1~
図4に示す同調回路1の実施形態は、例示的な実施形態を表すものであり、したがって、これらは、改善された概念によるすべての実施形態の完全なリストを構成するものではない。実際の同調回路は例えば、追加の構成要素及び構成の点で、示された実施形態とは異なってもよい。
【0046】
VCSEL20の発光波長を同調させるための同調回路1は、特定の目標波長に同調されるVCSEL20からの光放射を必要とする様々な用途に都合よく採用され得る。可能な用途としては、例えば、ラップトップ、ノートブック、及びタブレットコンピュータなどのコンピューティングデバイスにおいて、ならびにスマートフォン及びスマートウォッチ、ヘッドフォン、及びイヤフォンなどの携帯通信デバイスにおいて、音声認識及びディープラーニング目的のための音響マイクロフォンとして使用される高感度光学変位センサが挙げられ、この場合、追加の構成要素のための空間は極めて限定される。さらなる用途には、医療用センサ及び表面振動を測定するように構成されたセンサが含まれる。
【符号の説明】
【0047】
1 同調回路
10 デルタシグマ変調器
11 電流源
12 入力プロセッサ
13 変調器
20 VCSEL
AS 実際状態信号
BS ビットストリーム
CS 制御信号
IS 入力信号
TS 目標状態信号
PDM パルス密度変調
PWM パルス幅変調
PDM+PWM PWM付きPDM