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特許7305088動物用飼料添加物の調製にγ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物の適用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】動物用飼料添加物の調製にγ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物の適用
(51)【国際特許分類】
   A23K 20/142 20160101AFI20230703BHJP
   A61P 1/16 20060101ALN20230703BHJP
   A61P 3/04 20060101ALN20230703BHJP
   A61K 31/22 20060101ALN20230703BHJP
【FI】
A23K20/142
A61P1/16
A61P3/04
A61K31/22
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021552644
(86)(22)【出願日】2019-03-06
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-22
(86)【国際出願番号】 CN2019077191
(87)【国際公開番号】W WO2020177100
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-11-05
(73)【特許権者】
【識別番号】521513812
【氏名又は名称】源至技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】WISORIG TECHNOLOGIES PTE.LIMITED
【住所又は居所原語表記】138 CECIL STREET 13-02 CECIL COURT SINGAPORE SINGAPORE 069538
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲黄▼ ▲華▼成
(72)【発明者】
【氏名】彭 險峰
【審査官】竹中 靖典
(56)【参考文献】
【文献】特開昭56-121441(JP,A)
【文献】特公昭38-026364(JP,B1)
【文献】中国特許出願公開第107176911(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103044278(CN,A)
【文献】特表2017-525660(JP,A)
【文献】特表2018-537987(JP,A)
【文献】特表平06-507784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23K 10/00 - 50/90
A61P 1/16
A61P 3/04
A61K 31/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)で表されるγ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物の家禽又は家畜用飼料添加物への適用であって、
そのうち、Aは塩化物イオン又は臭化物イオンであり、Rは、直鎖のC -C アルキル基、若しくは1、2、3、4、又は5つのR で任意に置換されたフェニル基、又は-(C -C アルキレン基)-フェニル基であり
前記Rは、-OH、-NH、-NO、-CN、-SH、-X、-C-Cアルコキシ基、-C-Cアルキル基、又はXで置換されたC-Cアルキル基であり、XはF、Cl、Br、又はIから選択される
適用である。
【請求項2】
前記式(I)で表されるγ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物は、以下の式で表される、
ことを特徴とする請求項1に記載の適用。
【請求項3】
前記式(I)で表されるγ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物は、少なくとも1つの動物用飼料添加物と組み合わせて使用可能である、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の適用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動物用飼料添加物の分野に属し、特に、動物用飼料添加物又は動物用飼料の調製にγ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物の適用に関する。
【背景技術】
【0002】
カルニチン(carnitine)は、第四級アンモニウムカチオン複合体に属するアミノ酸の一種で、肝臓に広く分布しているアミノ酸であり、特に心筋や骨格筋に多く含まれている。体に必要なカルニチン成分は、ほとんど食事に含まれる肉や乳製品に由来し、或いは、生合成法によってリジンとメチオニンの2つのアミノ酸から合成される。カルニチンは、脂肪のエネルギーへの変換を促進するアミノ酸の一種であり、赤い肉は、有毒な副作用のないL-カルニチンの主な供給源である。カルニチンには、生物学的に活性なL-カルニチンと非生物学的に活性なエナンチオマーD-カルニチンを含む2つの立体異性体がある。研究により、L-カルニチンは脂肪酸のβ酸化に関与し、脂肪の分解と代謝を促進し、筋肉組織におけるアシル物質を除去し、アシル残基による筋肉細胞の破壊を回避することができ、それによって筋肉の乳酸を排除し、筋肉疲労やけいれんを緩和することができることが報告された。さらなる研究では、L-カルニチンの摂取により、水分と筋肉を減らすことなく体脂肪と体重を減らすことができることが報告された。2003年には、L-カルニチンは、副作用のない最も安全なダイエット栄養補助食品として国際肥満健康機構から認められた。
【0003】
L-カルニチンは、動物養殖産業で広く使用されており、主に動物の肉の脂肪含有量を減らし、体重を減らし、動物の肝臓・胆嚢の疾患を予防するために使用されている。研究の結果により、L-カルニチンを補給した犬用パフフードが肥満犬の脂肪を効果的に減らすとともに、肥満犬の健康を確保することができることが示された。また他の研究結果により、胆汁酸とL-カルニチンが脂肪代謝に重要な役割を果たし、養殖動物の肝臓・胆嚢の栄養疾患を効果的に予防できることが示された。別の研究では、ベタインとシュガーテルペンを使用してL-カルニチン酒石酸塩を相乗的に促進し、鶏肉の脂肪の酸化と分解を促進し、赤身の肉の割合を増やすことができることが示された。牛や羊の食事にカルニチンを添加することにより、高用量のタンパク質によって引き起こされるアンモニア毒性に効果的に対抗することができることを示す研究結果もある。人間医学の分野では、カルニチンは、血液透析患者に一般的に使用されている脂質低下薬であると言われている。多くの研究では、カルニチンは、さまざまな成長段階の肉用牛や羊などの反芻動物の養殖に生物学的影響を与えることが示されているが、乳生産や生産能力への影響はほとんど期待外れである。2018年12月13日には、Dong-Liang Luは、L-カルニチンのティラピアの生産能力への影響に関する研究を行った。この研究により、ブランクの対照群と比較して、基礎食にL-カルニチンを補給した試験群のティラピアの増重率は1.2%減少した。
【0004】
カルニチン自体は、通常、吸湿性である第四級アンモニウムカチオン複合体である。1970年代の研究により、カルニチンのカルボキシル基の脂肪酸エステル誘導体は、吸湿性ではなく、安定した物理的及び化学的特性を持つ化学物質であることが分かった。このようなカルニチン誘導体は、化学工業分野において調製中間体であるカルボキシル基の保護スキームとして、カルニチン又は薬物リガンドとしてのカルニチンを薬物と組み合わせることによって形成されたプロドラッグの調製に使用される。このようなカルニチン誘導体は、更に、化粧品、食品、医薬品の分野で界面活性剤として使用される。
【0005】
飼料添加物とは、飼料の加工、製造、使用の過程で添加される少量又は微量の物質を指し、栄養飼料添加物や一般的な飼料添加物を含む。一般的な飼料添加物とは、飼料の品質を確保又は改善し、飼料利用率を高めるために飼料に組み込まれる少量又は微量の物質を指す。現在、飼料利用率を効率的かつ安定的に高め、動物の生産能力を改善することができる一般的な飼料添加物は、主に、高用量銅剤、高用量亜鉛剤、飼料用抗生物質、化学合成抗菌剤などを含む。ただし、養殖産業におけるこれらの物質の長期使用は、動物の肝臓及び腎臓の毒性、成長阻害、腎機能障害、尿路障害、催奇形性、変異原性、薬剤耐性、薬剤残留物、及び環境汚染などの大きな副作用をもたらす恐れがある。したがって、動物の健康を確保し、養殖産業の生産効率を向上するために、動物の生産能力を向上させることができる、新しい効果的で安定した安全な飼料添加物を開発する必要がある。
【発明の概要】
【0006】
そこで、本発明は、養殖動物の生産能力を改善することが可能であるγ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物、又はそのラセミ体、その立体異性体、その幾何異性体、その互変異性体、その溶媒和物、若しくはその飼料に許容可能な塩で動物用飼料添加物又は動物用飼料の調製への適用を提供することを目的としている。
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、式(I)で表されるγ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物、又はそのラセミ体、その立体異性体、その幾何異性体、その互変異性体、その溶媒和物、若しくはその飼料に許容可能な塩で動物用飼料添加物の調製への適用を提供する。
(式(I)では、Aはアニオンであり、Rは、C-C20アルキル基、若しくは1、2、3、4、又は5つのRで任意に置換されたC-C20アルキル基、又はC-C12アリール基、又はC-C12ヘテロアリール基、又は(C-Cアルキレン基)-C-C12アリール基、又は(C-Cアルキレン基)-C-C12ヘテロアリール基、若しくは1、2、3、4、又は5つのRで任意に置換されたC-C12アリール基、C-C12ヘテロアリール基、(C-Cアルキレン基)-C-C12アリール基、(C-Cアルキレン基)-C-C12ヘテロアリール基であり、前記Rは、-OH、-NH、-CN、-SH又は-Xであり、Xは、F、Cl、Br又はIから選択され、前記Rは、-OH、-NH、-NO、-CN、-SH、-X、-C-Cアルコキシ基、-C-Cアルキル基、又はXで置換されたC-Cアルキル基であり、XはF、Cl、Br、又はIから選択される。)
【0008】
本発明は、更に、飼料組成物を提供する。
【0009】
当該飼料組成物は、上記のγ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物、又はそのラセミ体、その立体異性体、その幾何異性体、その互変異性体、その溶媒和物、若しくはその飼料に許容可能な塩のうちの少なくとも1つを主成分として含む。
【0010】
本発明は、上記の飼料組成物で動物用飼料又は動物用飼料添加物の調製への適用を更に提供する。
【0011】
上記の技術案に基づいて、本発明は以下の効果を有する。
【0012】
本発明では、式(I)で表されるγ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物、又はそのラセミ体、その立体異性体、その幾何異性体、その互変異性体、その溶媒和物、若しくはその飼料に許容可能な塩で動物用飼料添加物の調製への適用が提供される。この化合物を特定の濃度比で動物の毎日の飼料に添加することにより、動物の1日飼料摂取量に明らかな影響を与えることなく、同じ飼料摂取量下で動物の1日平均増体重を向上させ、飼料要求率を低下させることができる。従って、本発明のγ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物、又はそのラセミ体、その立体異性体、その幾何異性体、その互変異性体、その溶媒和物、若しくはその飼料に許容可能な塩は、動物の1日増重率を効果的に向上させ、動物の成長能力を改善することができる。この化合物は、さらに、動物への副作用がなく、安定して安全であり、動物の健康を確保するとともに、養殖産業の生産効率を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を容易に理解するために、実施例を参照しながら本発明をより完全に説明する。本発明の好ましい実施例を以下に示している。しかし、本発明は、多くの異なる形態で実現されてもよく、本明細書に記載されている実施例に限定されるものではない。これらの実施形態は、本発明の開示をさらに徹底的かつ完全に理解するために提供されるものである。なお、下記の実施例において特定の条件を示さない実験方法は、通常、従来の条件又は製造業者によって提案された条件に従って実施される。実施例で使用される様々な一般的な試薬はすべて市販の製品である。
【0014】
他に定義されない限り、本明細書中で使用された全ての専門用語及び科学技術用語は、本発明に属する分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本発明の明細書で使用された用語は、具体的な実施例を説明するためのものだけであり、本発明を限定するためのものではない。本明細書で使用された用語「及び/又は」は、挙げられた1つ又は複数の関連項目の任意の組み合わせ、及びあらゆる組み合わせを含む。
【0015】
ここで、本発明の特定の実施形態が詳細に説明され、その例は、添加された構造式及び化学式によって示される。本発明は、すべての代替、修正、及び同等の技術案を覆うことを意図するものである。これらの技術案は、すべて特許請求の範囲で定義される本発明の範囲に含まれる。なお、明確にするために、本発明の特定の技術的特徴は、複数の独立した実施形態で別々に説明されるが、単一の実施形態で組み合わせ形態で提供されてもよいし、任意の適切なサブ組み合わせ形態で提供されてもよい。
【0016】
化合物:
本発明は、式(I)で表されるγ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物、又はそのラセミ体、その立体異性体、その幾何異性体、その互変異性体、その溶媒和物、若しくはその飼料に許容可能な塩で動物用飼料添加物の調製への適用に関する。
式(I)では、Aはアニオンであり、式(I)に示されるアニオンと陽イオンの関係は、その化合物がイオン性化合物であることを意味するだけであり、イオン間の正電荷と負電荷の合計が等しいことを意味するものではない。
Rは、置換又は非置換のC-C20アルキル基であり、置換のC-C20アルキル基の場合、1、2、3、4又は5つのRで任意に置換される。前記Rは、-OH、-NH、-CN、-SH又は-Xであり、Xは、F、Cl、Br又はIから選択される。或いは、Rは、置換又は非置換のC-C12アリール基、C-C12ヘテロアリール基、(C-Cアルキレン基)-C-C12アリール基、(C-Cアルキレン基)-C-C12ヘテロアリール基である。置換のC-C12アリール基、C-C12ヘテロアリール基、(C-Cアルキレン基)-C-C12アリール基、(C-Cアルキレン基)-C-C12ヘテロアリール基の場合、1、2、3、4、又は5つのRで任意に置換される。前記Rは、-OH、-NH、-NO、-CN、-SH、-X、-C-Cアルコキシ基、-C-Cアルキル基、又はXで置換されたC-Cアルキル基であり、XはF、Cl、Br、又はIから選択される。
【0017】
一般に、「置換」とは、所与の構造内の1つ又は複数の置換可能な水素原子が特定の置換基によって置換されることを意味する。置換は、各置換可能位置で1つの置換基によって置換されることであってもよい。所与の構造式中の複数の位置で特定の1つ又は複数の置換基によって置換されることが可能である場合、置換基は、同じ又は異なる形態で各位置で置換することができる。
【0018】
本発明において、「C-Cアルキル基」とは、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基などのa個からb個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖の飽和アルキル基を意味する。例えば、「C-Cアルキル基」とは、1個から5個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖の飽和アルキル基を意味する。「C-Cシクロアルキル基」とは、例えば、シクロプロピル基、2-メチルシクロプロピル基、シクロペンチル基などの3個から7個の炭素原子を含む、炭素及び水素の2つの元素のみを含む環状アルキル基を意味する。「C-Cアルコキシ基」とは、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基などの1個から5個の炭素原子及び1個の酸素原子を含む基を意味する。「C-C12アリール基」とは、例えばベンゼン環などの6個から12個の炭素原子を含む芳香族性を有する環状基を意味する。「C-C12ヘテロアリール基」とは、例えば、ピロリジニル基、ピリジニル基などの4個から12個の炭素原子及び1個以上のヘテロ原子(酸素原子(O)、硫黄原子(S)、窒素原子(N)を含むが、これらに限定されない。)を含む芳香族性を有する環状基を意味する。「C-Cアルキレン基」とは、例えばCH、(CHなどのn個又はm個のメチレン基を含むアルキル基を意味する。
【0019】
いくつかの実施形態において、前記式(I)で表されるγ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物におけるRは、置換又は非置換のC-C12アリール基である。
【0020】
さらに、前記非置換のC-C12アリール基は、フェニル基又はナフチル基を含むが、これらに限定されない。
【0021】
【0022】
なお、前記Rが置換のC-C12アリール基である場合、前記C-C12アリール基は、1、2、3、4、又は5つのRで任意に置換されたC-C12アリール基である。前記Rは、-OH、-NH、-NO、-CN、-SH、-X、-C-Cアルコキシ基、-C-Cアルキル基、又はXで置換されたC-Cアルキル基であり、XはF、Cl、Br、又はIから選択される。
【0023】
さらに、置換のC-C12アリール基は、好ましくは、置換されたCアリール基である。
【0024】
具体的には、置換されたフェニル基は、1、2、3、4又は5つのRで任意に置換されたものである。前記Rは、-OH、-NH、-NO、-CN、-SH、-X、-C-Cアルコキシ基、-C-Cアルキル基、又はXで置換されたC-Cアルキル基であり、XはF、Cl、Br、又はIから選択される。
【0025】
【0026】
いくつかの実施形態において、前記式(I)で表されるγ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物におけるRは、置換又は非置換の(C-Cアルキレン基)-C-C12アリール基である。
【0027】
さらに、Rが非置換の(C-Cアルキレン基)-C-C12アリール基である場合、前記C-C12アリール基は、フェニル基又はナフチル基を含むが、これらに限定されず、前記アルキレン基は、好ましくは、メチレン基である。
【0028】
【0029】
なお、前記Rが置換の-(C-Cアルキレン基)-C-C12アリール基である場合、前記C-C12アリール基は、1、2、3、4、又は5つのRで任意に置換されたC-C12アリール基である。前記Rは、-OH、-NH、-NO、-CN、-SH、-X、-C-Cアルコキシ基、-C-Cアルキル基、又はXで置換されたC-Cアルキル基であり、XはF、Cl、Br、又はIから選択される。
【0030】
さらに、C-C12アリール基は、好ましくは、Cアリール基である。
【0031】
具体的には、前記Rは、1、2、3、4又は5つのRで任意に置換されたベンジル基である。前記Rは、-OH、-NH、-NO、-CN、-SH、-X、-C-Cアルコキシ基、-C-Cアルキル基、又はXで置換されたC-Cアルキル基であり、XはF、Cl、Br、又はIから選択される。
【0032】
【0033】
いくつかの実施形態において、前記式(I)で表されるγ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物におけるRは、置換又は非置換のC-C12ヘテロアリール基である。
【0034】
さらに、Rが非置換のC-C12ヘテロアリール基である場合、前記C-C12ヘテロアリール基は、ピロリジニル基、ピラゾリル基又はピリジル基を含むが、これらに限定されない。
【0035】
【0036】
なお、前記Rが置換のC-C12ヘテロアリール基である場合、前記C-C12ヘテロアリール基は、1、2、3、4、又は5つのRで任意に置換される。前記Rは、-OH、-NH、-NO、-CN、-SH、-X、-C-Cアルコキシ基、-C-Cアルキル基、又はXで置換されたC-Cアルキル基であり、XはF、Cl、Br、又はIから選択される。
【0037】
さらに、前記C-C12ヘテロアリール基は、好ましくは、ピロリジニル基、ピラゾリル基又はピリジル基である。
【0038】
【0039】
いくつかの実施形態において、前記式(I)で表されるγ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物におけるRは、置換又は非置換の(C-Cアルキレン基)-C-C12ヘテロアリール基である。
【0040】
さらに、前記C-C12ヘテロアリール基は、非置換の(C-Cアルキレン基)-C-C12ヘテロアリール基であり、前記C-C12ヘテロアリール基は、ピロリジニル基、ピラゾリル基又はピリジル基を含むが、これらに限定されず、前記C-Cアルキレン基は、好ましくは、メチレン基である。
【0041】
【0042】
なお、前記Rが置換の(C-Cアルキレン基)-C-C12ヘテロアリール基である場合、前記C-C12ヘテロアリール基は、1、2、3、4、又は5つのRで任意に置換される。前記Rは、-OH、-NH、-NO、-CN、-SH、-X、-C-Cアルコキシ基、-C-Cアルキル基、又はXで置換されたC-Cアルキル基であり、XはF、Cl、Br、又はIから選択される。
【0043】
さらに、前記C-C12ヘテロアリール基は、好ましくは、ピロリジニル基、ピラゾリル基又はピリジル基であり、前記C-Cアルキレン基は、好ましくは、メチレン基である。
【0044】
【0045】
いくつかの実施形態において、前記式(I)で表されるγ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物におけるRは、置換又は非置換のC-C20アリール基である。Rが置換のC-C20アリール基である場合、前記置換のC-C20アリール基は、1、2、3、4、又は5つのRで任意に置換されたC-C20アリール基である。Rは、-OH、-NH、-CN、-SH又は-Xであり、Xは、F、Cl、Br又はIから選択される。
【0046】
好ましくは、前記Rは、好ましくは、直鎖のC-C20アルキル基である。
【0047】
さらに、前記Rは、好ましくは、直鎖のC-C11アルキル基である。
【0048】
具体的には、前記直鎖のC-C11アルキル基は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基からなる群から選択されるものである。
【0049】
いくつかの実施例において、前記Rは、メチル基である。
【0050】
他の実施例において、前記Rは、エチル基である。
【0051】
また他の実施例において、前記Rは、n-プロピル基である。
【0052】
好ましくは、前記Rは、分岐鎖のC-C20アルキル基である。
【0053】
いくつかの実施例において、前記Rは、好ましくは、イソプロピル基又はtert-ブチル基である。
【0054】
いくつかの実施形態において、前記アニオンAは、1価のアニオンである。
【0055】
好ましくは、前記1価のアニオンは、塩化物イオン、臭化物イオン、ヨウ化物イオン、又は過塩素酸イオンを含むが、これらに限定されない。
【0056】
いくつかの実施形態において、前記アニオンAは、2価のアニオンである。
【0057】
好ましくは、前記2価のアニオンは、硫酸イオン又は炭酸イオンを含むが、これらに限定されない。
【0058】
いくつかの実施形態において、前記アニオンAは、有機酸イオンである。
【0059】
好ましくは、前記有機酸イオンは、酢酸イオン、フマル酸イオン、マレイン酸イオンなどを含むが、これらに限定されない。
【0060】
いくつかの特定の実施形態において、本発明に記載のγ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物には、以下の構造のうちの1つ、及び上記の化合物に対応するラセミ体、立体異性体、幾何異性体、互変異性体、溶媒和物、その飼料に許容可能な塩が含まれる。
【0061】
化合物の調製及び精製
本発明に係る式(I)で表されるγ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物の調製方法は、カルニチンを出発原料とする式(II)で示され、主な反応は置換反応である。
【0062】
明確にするために、式(II)の「sol.」は反応溶媒を表し、「Δ」は加熱を表す。
【0063】
いくつかの実施形態において、前記γ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物は、キラル構造を有するカルニチン(式(III)で表される)又はそのラセミ体から調製されるキラル化合物である。本発明のγ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物は、レボ異性体L-(-)-γ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物(構造は式(IV)で表される)、デキストロ異性体D-(+)-γ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物(構造は式(V)で表される)、又はラセミ体DL-(±)-γ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物などの立体異性体から選択されるものである。
【0064】
いくつかの実施形態において、上記のγ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物のキラル立体異性体は、適切な条件下で立体配座の変換を行うことができる。例えば、γ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物の立体配座は、互変異性体を形成するように相互変換される。相互変換のプロセスは、式(VI)に示されている。
【0065】
関与する反応物質が反応して形成された対応するγ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物は剛性構造を有する場合、反応基質は反応中に異なる幾何異性体の生成物を生成する可能性がある。
【0066】
上記の立体異性体、幾何異性体、及び互変異性体も、本発明の範囲内に含まれる。
【0067】
本発明の「立体異性体」とは、同じ化学構造を有するが原子又は基の空間的な配置が異なる化合物を指し、エナンチオマー、ジアステレオマー、配座異性体、幾何異性体、アトロプ異性体などを含む。「エナンチオマー」とは、互いに重ね合わせることができない像と鏡像の関係にある1つの化合物の2つの異性体を指す。「ジアステレオ異性体」とは、2つ以上のキラル中心があり、分子が互いに像と鏡像の関係にはない立体異性体を指し、それらの融点、沸点、スペクトル特性、反応性などの物理的性質が異なる。ジアステレオマーの混合物は、電気泳動やクロマトグラフィーなどの高分解能分析操作によって分離できる。「互変異性体」とは、低エネルギー障壁で互いに変換できる、エネルギーの異なる構造異性体を指す。
【0068】
いくつかの実施形態において、本発明によって提供されるγ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物の調製プロセスは、更に、反応生成物の分離、精製又は再結晶化などのプロセスに関する。反応生成物は、溶媒除去法により反応系から粗生成物として得ることができる。化学的純度が高く、不純物含有量が少ない固形物を得るために、粗生成物を、適切な温度、光及び機械的振動などの条件下でアルコール溶媒、アルコールと水の混合溶媒、又は製品の再結晶に使用できる他の有機溶媒に溶解、結晶化又は沈殿又は再結晶させ、及び分離して、特定の結晶状態を有するγ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物を得る。前記特定の結晶状態を有するγ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物は、γ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物の結晶、又はγ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物の溶媒和物である。前記γ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物の溶媒和物は、γ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物の水和物、又はγ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物のエタノール溶媒和物から選択されてもよい。
【0069】
本発明の「溶媒和物」は、本発明の化合物が、溶媒分子との接触中、外部条件及び内部条件の原因で、非共有結合の分子間力によって化学当量又は非化学当量の溶媒分子と結合して形成される共晶会合体を指す。溶媒和物を形成する溶媒には、水、アセトン、エタノール、メタノール、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、酢酸、及びイソプロパノールなどの溶媒が含まれるが、これらに限定されない。「水和物」とは、水の溶媒分子によって形成される会合体又は結晶を指し、すなわち、非共有結合の分子間力によって化学当量又は非化学当量の水と結合して形成される化合物である。
【0070】
より高い化学的純度及びより低い不純物含有量を有する固体物質を得るために、本発明によって提供されるγ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物の調製は、更に、塩析法によって後処理を行うことができる。前記塩析法は、酸・塩基の中和、酸・塩基の配位又は酸・塩基のキレート化の原理により、γ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物と対応する有機塩基、無機塩基、有機酸又は無機酸とを塩に形成させて沈殿させ、飼料に許容可能な塩を得るプロセスである。前記無機酸は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、硝酸、又はそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。前記有機塩基は、アンモニア又はトリエチルアミンを含むが、これらに限定されない。前記無機塩基は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、又は水酸化カルシウムを含むが、これらに限定されない。
【0071】
飼料に許容可能な塩は、本発明のγ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物と、動物に対して無毒である有機塩基、無機塩基、有機酸又は無機酸とによって形成される塩である。前記「飼料に許容可能」とは、物質又は組成物が化学的又は毒物学的に適当でなければないことを指し、組成された飼料又はそれを食べる養殖動物に関連する。
【0072】
いくつかの実施形態において、本発明のγ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物は、イオン性化合物であり、後処理の塩析・沈殿プロセスにおいて、無機酸又は有機酸と酸・塩基配位塩及び/又は酸・塩基キレート塩を形成する。前記有機酸は、酢酸、マレイン酸、コハク酸、マンデル酸、フマル酸、マロン酸、リンゴ酸、2-ヒドロキシプロピオン酸、ピルビン酸、シュウ酸、グリコール酸、サリチル酸、グルクロン酸、ガラクツロン酸、クエン酸、酒石酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、安息香酸、p-メチル安息香酸、ケイ皮酸、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、又はそれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない。前記無機酸は、硫酸、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸などを含むが、これらに限定されない。
【0073】
本発明は、γ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物の適用に関する。
【0074】
本発明によって提供されるγ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物、そのラセミ体、その立体異性体、その幾何異性体、その互変異性体、その溶媒和物、若しくはその飼料に許容可能な塩は、動物用飼料添加物の調製に適用される。
【0075】
本発明の「動物」とは、無機物質を有機物質に合成することはできなく、有機物のみを食物として摂食、消化、吸収、呼吸、循環、排泄、感覚、運動、及び繁殖などの生命活動を行う人又は養殖動物を指す。「養殖動物」は、家禽、家畜、養殖水産動物、及び猫や犬などのペットを含む、飼育下で合法的に捕獲されている他の動物を含む。「家畜」という用語は、例えば、ブタ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、シカ、及び多くの有用なげっ歯類の動物のいずれかを指す。「家禽」という用語は、例えば、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ウズラ、ハトなどを含む。「養殖水産動物」という用語は、例えば、魚、エビ、カメ、スッポンなどを含む。
【0076】
本発明によって提供されるγ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物、そのラセミ体、その立体異性体、その幾何異性体、その互変異性体、その溶媒和物、若しくはその飼料に許容可能な塩を使用して、様々な成長段階の動物の生産能力を改善するための非栄養添加物を調製する。前記動物は、様々な成長段階の家畜、家禽、養殖水産動物、又はペットから選択されてもよい。
【0077】
さらに、前記家畜は、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ウサギ、ミンク又はロバを含むが、これらに限定されない。前記家禽は、ニワトリ、七面鳥、アヒル、ガチョウ、ウズラ又はハトを含むが、これらに限定されない。前記養殖水産動物は、魚、エビ、カメ、カニ、スッポン、ブルフロッグ、タウナギ又はドジョウを含むが、これらに限定されない。前記ペットは、様々な亜種の犬又は猫を含むが、これらに限定されない。
【0078】
一実施例において、本発明によって提供されるγ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物、そのラセミ体、その立体異性体、その幾何異性体、その互変異性体、その溶媒和物、若しくはその飼料に許容可能な塩を使用して、ブタの生産能力を改善するための飼料添加物を調製することにより、ブタの1日平均増体重又は飼料効率を改善することができる。
【0079】
他の一実施例において、本発明によって提供されるγ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物、そのラセミ体、その立体異性体、その幾何異性体、その互変異性体、その溶媒和物、若しくはその飼料に許容可能な塩を使用して調製される飼料添加物は、肉用鶏や卵用鶏の生産能力を大幅に向上させることができる。
【0080】
本発明の飼料組成物
当該飼料組成物は、γ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物、そのラセミ体、その立体異性体、その幾何異性体、その互変異性体、その溶媒和物、若しくはその飼料に許容可能な塩のうちの少なくとも1つと、給餌可能な補助材料とを含む。前記給餌可能な補助材料は、給餌可能な担体、希釈剤、補助剤、溶媒、又はそれらの組み合わせである。
【0081】
本発明の飼料とは、工業的に加工及び製造され、動物に餌として与えられる製品を指す。
【0082】
本発明の「組成物」は、1つ又は複数の化合物を有効成分として含む化合物の群を指す。
【0083】
本発明で言及される「含む」は、本発明で明示的に言及される内容を含むだけでなく、他の態様を除外しない、オープンな表現である。
【0084】
本発明の「担体」とは、有効成分を支持することができ、その分散性を改善し、良好な化学的安定性及び吸着性を有する給餌可能な物質を指し、有機担体及び無機担体である。前記有機担体は、粗繊維を多く含む材料であり、とうもろこし粉、とうもろこし穂軸粉、ふすま、籾殻粉、脱脂米ぬか、米ぬか、とうもろこしわら粉、ピーナッツ殻粉などを含むが、これらに限定されない。前記無機担体は、微量元素のプレミックスの製造に使用される、主にカルシウム塩系とシリコン酸化物系に分けられる鉱物であり、炭酸カルシウム、ケイ酸塩、バーミキュライト、ゼオライト、セピオライトなどを含むが、これらに限定されない。
【0085】
本発明の「希釈剤」とは、添加剤の原料を材料中に均一に分配し、高濃度の添加剤の原料を低濃度のプレミックスに希釈する物質を指す。微量成分を互いに分離することにより、有効成分間の相互反応を減らし、関連物質の物理的及び化学的性質には影響することなく有効成分の安定性を高めることができる。希釈剤は、有機希釈剤及び無機希釈剤である。有機希釈剤は、とうもろこし粉、胚芽を除いたとうもろこし粉、デキストロース(グルコース)、スクロース、ふすまを含むセモリナ粉、揚げ大豆粉、小麦ミドリング(次粉)、トウモロコシタンパク質粉を含むが、これらに限定されない。無機希釈剤には、石灰石、リン酸二水素カルシウム、シェルパウダー、カオリン(白い粘土)、食卓塩、及び硫酸ナトリウムを含むが、これらに限定されない。
【0086】
前記補助剤は、物質の固有粘度を誘発する湿潤剤、物質を結合する結合剤、物質のシート全体を多くの微粒子に分解する崩壊剤、粒子間の摩擦を減らすための保持補助剤又は材料の付着を防ぐための粘着防止剤であり、ステアリン酸マグネシウム、タルカムパウダー、植物油、ラウリル硫酸マグネシウム、でんぷん、でんぷんスラリー、水、無機塩、デキストリン、粉砂糖を含むが、これらに限定されない。
【0087】
本発明の「溶媒」は、水、エタノール、グリセリンなどを含むがこれらに限定されない、固体を溶解又は分散させるのに必要な溶媒を指す。
【0088】
いくつかの実施形態において、前記飼料組成物は、追加の動物用飼料添加物及び/又は動物用飼料原料をさらに含む。
【0089】
前記動物用飼料添加物は、栄養飼料添加物、一般的な飼料添加物、又は医薬用飼料添加物である。
【0090】
前記栄養飼料添加物とは、飼料栄養素のバランスを取り、飼料の利用を改善し、動物に直接栄養効果を及ぼすために配合飼料に添加される少量又は微量の物質を指し、アミノ酸、アミノ酸塩とその類似体、ビタミン、ビタミンの類似体、ミネラル要素とその複合体(キレート)、微生物酵素製剤又は非タンパク質窒素である。
【0091】
前記一般的な飼料添加物は、非栄養添加物とも呼ばれ、飼料の利用を改善し、飼料の品質を確保するために飼料に添加される動物の健康や代謝に有益なの非栄養物質を指し、成長促進剤、防虫剤、調味料及び食欲増進剤、飼料改質剤、飼料修飾剤、飼料貯蔵剤及び中国の漢方薬添加物を含む。
【0092】
より具体的には、前記非栄養添加物は、酪酸、酪酸カルシウム、酪酸ナトリウム、タンニン酸、p-チモール、p-チモールエステル、p-チモール塩、2-ヒドロキシ安息香酸、β-酸、β-エステル、β-酸塩、ヘキサヒドロβ-酸、ヘキサヒドロβ-エステル、ヘキサヒドロβ-酸塩、安息香酸又は安息香酸カルシウム、酸化亜鉛、硫酸亜鉛、塩化亜鉛を含むがこれらに限定されない成長促進剤である。
【0093】
一実施例において、前記非栄養添加物は酪酸カルシウムである。
【0094】
他の一実施例において、前記非栄養添加物はタンニン酸である。
【0095】
具体的には、前記医薬用飼料添加物は、動物の病患を予防し、動物の成長を促進する機能を有し、長期間飼料に添加されるために担体又は希釈剤を組み込む動物用医薬品プレミックスを含むが、これらに限定されない。
【0096】
さらに、具体的には、前記医薬用飼料添加物は、ポリミキシン、サリノマイシン、アベラマイシン、バシトラシン、バージニアマイシン、ノシヘプチド、フラボマイシン、エンラマイシン、キトリマイシン、オラキンドックス、オキシテトラサイクリン又はクロルテトラサイクリンを含むが、これらに限定されない飼料用抗生物質である。
【0097】
いくつかの実施例において、γ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物、又はそのラセミ体、その立体異性体、その幾何異性体、その互変異性体、その溶媒和物、若しくはその飼料に許容可能な塩を含む組成物は、更に、栄養飼料添加物、一般的な飼料添加物、及び医薬用飼料添加物のうちの1つ又は複数を含む。
【0098】
いくつかの実施例において、前記動物用飼料原料は、穀物とその加工品、油糧種子とその加工品、マメ科植物の種子とその加工品、塊茎、ルートとその加工品、他の種子、果物製品とその加工品、飼料草、粗飼料とその加工品、他の植物、藻類とその加工製品、乳製品とその副産物、陸生動物製品とその副産物、魚、他の水生生物とその副産物、鉱物、微生物発酵産物と副産物、他の飼料原料などの飼料物質である。
【0099】
飼料組成物の適用
本発明は、上記のγ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物、又はそのラセミ体、その立体異性体、その幾何異性体、その互変異性体、その溶媒和物、若しくはその飼料に許容可能な塩を含む飼料組成物の適用に関するものである。
【0100】
いくつかの実施例において、前記上γ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物、又はそのラセミ体、その立体異性体、その幾何異性体、その互変異性体、その溶媒和物、若しくはその飼料に許容可能な塩を含む飼料組成物は、動物用飼料添加物の調製に適用される。
【0101】
前記γ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物、又はそのラセミ体、その立体異性体、その幾何異性体、その互変異性体、その溶媒和物、若しくはその飼料に許容可能な塩を含む飼料組成物を使用して調製された動物用飼料添加物は、家畜用飼料添加物、家禽用飼料添加物、養殖水産動物用飼料添加物又はペット用飼料添加物である。
【0102】
具体的には、前記γ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物、又はそのラセミ体、その立体異性体、その幾何異性体、その互変異性体、その溶媒和物、若しくはその飼料に許容可能な塩を含む飼料組成物を使用して家畜用飼料添加物を調製する場合、前記家畜は、様々な成長段階のブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ウサギ、ミンクなどを含むが、これらに限定されない。
【0103】
具体的には、前記γ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物、又はそのラセミ体、その立体異性体、その幾何異性体、その互変異性体、その溶媒和物、若しくはその飼料に許容可能な塩を含む飼料組成物を使用して家禽用飼料添加物を調製する場合、前記家禽は、様々な成長段階のニワトリ、アヒル、ガチョウ、ハトなどを含むが、これらに限定されない。
【0104】
具体的には、前記γ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物、又はそのラセミ体、その立体異性体、その幾何異性体、その互変異性体、その溶媒和物、若しくはその飼料に許容可能な塩を含む飼料組成物を使用してペット用飼料添加物を調製する場合、前記ペットは、飼育下の犬又は猫を含むが、これらに限定されない。
【0105】
いくつかの実施例において、前記γ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物、又はそのラセミ体、その立体異性体、その幾何異性体、その互変異性体、その溶媒和物、若しくはその飼料に許容可能な塩を含む組成物で調製された動物用飼料添加物は、プレミックス、複合プレミックス、液体又は顆粒である。
【0106】
いくつかの実施例において、前記γ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物、又はそのラセミ体、その立体異性体、その幾何異性体、その互変異性体、その溶媒和物、若しくはその飼料に許容可能な塩を含む飼料組成物は、動物用飼料の調製に適用される。
【0107】
前記γ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物、又はそのラセミ体、その立体異性体、その幾何異性体、その互変異性体、その溶媒和物、若しくはその飼料に許容可能な塩を含む飼料組成物を使用して調製された動物用飼料は、家畜用飼料、家禽用飼料、養殖水産動物用飼料又はペット用飼料である。
【0108】
具体的には、前記γ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物、又はそのラセミ体、その立体異性体、その幾何異性体、その互変異性体、その溶媒和物、若しくはその飼料に許容可能な塩を含む飼料組成物を使用して家畜用飼料を調製する場合、前記家畜は、様々な成長段階のブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ウサギ、ミンクなどを含むが、これらに限定されない。
【0109】
具体的には、前記γ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物、又はそのラセミ体、その立体異性体、その幾何異性体、その互変異性体、その溶媒和物、若しくはその飼料に許容可能な塩を含む飼料組成物を使用して家禽用飼料を調製する場合、前記家禽は、様々な成長段階のニワトリ、アヒル、ガチョウ、ハトなどを含むが、これらに限定されない。
【0110】
具体的には、前記γ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物、又はそのラセミ体、その立体異性体、その幾何異性体、その互変異性体、その溶媒和物、若しくはその飼料に許容可能な塩を含む飼料組成物を使用してペット用飼料を調製する場合、前記ペットは、飼育下の犬又は猫を含むが、これらに限定されない。
【0111】
いくつかの実施例において、前記γ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物、又はそのラセミ体、その立体異性体、その幾何異性体、その互変異性体、その溶媒和物、若しくはその飼料に許容可能な塩を含む飼料組成物で調製された飼料は、単一飼料、濃縮飼料、配合飼料、複合プレミックス又は濃縮サプリメントである。
【0112】
具体的には、前記配合飼料は、完全配合飼料である。
【0113】
養殖動物の生産能力を改善する方法
いくつかの給餌の実施例において、養殖農民は、γ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物、又はそのラセミ体、その立体異性体、その幾何異性体、その互変異性体、その溶媒和物、若しくはその飼料に許容可能な塩を含む飼料添加物を飼料と混合して動物に与えることで、動物の生産能力を大幅に改善することができる。
【0114】
いくつかの実施例において、前記飼料添加物は、プレミックス、複合プレミックス、顆粒又は液体であり、動物用飼料と混合されて動物に与えられる。
【0115】
前記動物は、家畜、家禽、養殖水産動物又はペットである。
【0116】
具体的には、前記家畜は、様々な成長段階のブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ウサギ、ミンクなどを含むが、これらに限定されない。前記家禽は、様々な成長段階のニワトリ、アヒル、ガチョウ、ハトなどを含むが、これらに限定されない。前記養殖水産動物は、様々な成長段階の魚、エビ、カニ、スッポン、タウナギなどを含むが、これらに限定されない。前記ペットは、飼育下の犬又は猫を含むが、これらに限定されない。
【0117】
一実施例において、養殖農民は、γ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物、又はそのラセミ体、その立体異性体、その幾何異性体、その互変異性体、その溶媒和物、若しくはその飼料に許容可能な塩を含む飼料添加物を飼料と混合して肉豚に与えることで、肉豚の1日平均増体重の増重率及び飼料効率を大幅に向上させることができる。
【0118】
一実施例において、養殖農民は、γ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物、又はそのラセミ体、その立体異性体、その幾何異性体、その互変異性体、その溶媒和物、若しくはその飼料に許容可能な塩を含む飼料添加物を飼料と混合して肉用鶏に与えることで、肉用鶏の飼料要求率を減少させ、飼料効率を大幅に向上させることができる。
【0119】
一実施例において、養殖農民は、γ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物、又はそのラセミ体、その立体異性体、その幾何異性体、その互変異性体、その溶媒和物、若しくはその飼料に許容可能な塩を含む飼料添加物を飼料と混合して子犬に与える。
【0120】
他のいくつかの給餌の実施例において、養殖農民は、γ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物、又はそのラセミ体、その立体異性体、その幾何異性体、その互変異性体、その溶媒和物、若しくはその飼料に許容可能な塩を含む飼料組成物を動物に与えることで、動物の生産能力を大幅に改善することができる。
【0121】
好ましくは、前記飼料組成物は、飼料添加物プレミックス、飼料添加物複合プレミックス、顆粒又は液体であり、飼料と混合されて動物に与えられる。
【0122】
一実施例において、前記飼料組成物は、飼料添加物プレミックスである。
【0123】
一実施例において、前記飼料組成物は、飼料添加物複合プレミックスである。
好ましくは、前記飼料組成物は、濃縮飼料、配合飼料、複合プレミックス又は濃縮サプリメントであり、動物用飼料として動物に直接与えられる。
【0124】
一実施例において、前記飼料組成物は、完全配合飼料である。
【0125】
以下、具体的な実施例を参照しながら本発明について詳細に説明する。
【0126】
以下、L-カルニチンエチルブロミド及びL-カルニチンベンジルクロリドの調製プロセスのみを例として、γ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物の調製方法を詳細に説明する。
【0127】
[実施例1]
(R)-3-ヒドロキシ-4-(トリメチルアンモニウム)酪酸エチルブロミド(L-カルニチンエチルブロミドと略記)の調製
400gのL-カルニチンを2000mlの三口フラスコに量り取り、500mlのアセトニトリルを加え、混合物を完全に撹拌した。次に、還流管と乾燥管を配置し、油浴を40℃まで加熱し、次に450gのブロモエタンを滴下し、混合物を85℃で撹拌した。薄層クロマトグラフィー(TLC)によるモニタリングにより原料が存在しないことが確認された後、反応混合物を濾過し、フィルターケーキを70℃で乾燥させて、590gのL-カルニチンエチルブロミドを88.86%の収率で得た。
【0128】
[実施例2]
(R)-3-ヒドロキシ-4-(トリメチルアンモニウム)酪酸ベンジルクロライド(L-カルニチンベンジルクロリドと略記)の調製

400gのL-カルニチンを3000mlの三口フラスコに量り取り、1000mlのアセトニトリルを加え、混合物を完全に撹拌した。次に、還流管と乾燥管を配置し、油浴を70℃まで加熱し、次に400gの塩化ベンジルを滴下し、混合物を90℃で撹拌した。薄層クロマトグラフィー(TLC)によるモニタリングにより原料が存在しないことが確認された後、反応混合物を濾過し、フィルターケーキをエタノールで洗浄し、85℃で乾燥させて、610gの白色固体であるL-カルニチンベンジルクロリドを86.16%の収率で得た。
【0129】
養殖試験
[実施例3]
γ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物の肉豚の生産能力への影響
同様の体重の平均体重80kgの90頭の「ランドレース種・大.ヨークシャー種・デュロック種」三元交配赤身肉用豚をランダムに3つの処置群に分けた。1つの処置群当たりのレプリケート数は3とし、1レプリケートに10頭の豚を使用した。雌と雄の数は同数とした。試験の前に、豚舎及び調理器具を滅菌した。試験期間中、ブタは、同じ豚舎及び同じ飼育条件下で別々の囲いに飼育された。試験期間中、試験豚は、自由に飲食し、1日2回給餌された。各試験群は、対照群(群I)及び試験群II~IIIを含む。表1に示すように、対照群には基礎食のみを与え、試験群II~IIIには、基礎食に基づいて1000ppmの異なるγ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物を補給した食餌を与えた。
【0130】
全体の飼育期間において、各試験群には、他の抗酸化成分や成長促進剤を追加しなかった。試験期間は28日とし、1レプリケートを単位とし、試験の第28日で水を止めずに飼料を12時間止めた後体重を測定し、各試験群の1日平均飼料摂取量(ADFI、g/d*頭)、1日平均増体重(ADG、g/d*頭)、及び飼料要求率(FCR)を計算した。次のように計算された。
1日平均飼料摂取量=(飼料の総量-残りの量)/(試験日数×1レプリケート当たりの頭数)
1日平均増体重=(試験終了時の平均体重-試験開始時の平均体重)/試験日数
飼料要求率=1日平均飼料摂取量/1日平均増体重
【0131】
試験結果は、表1に示される。
【表1】
【0132】
表1の結果から分かるように、この試験では、試験豚の生産能力に対する試験サンプルの影響を、飼料摂取量、増体重、飼料要求率の3つの方面から比較及び評価した。
【0133】
具体的には、各試験群のγ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物は、飼料摂取量に明らかな影響を与えなかった。各試験群の試験豚の1日平均増体重は、対照群と比較して増加した。また、各試験群の飼料要求率は、比較的明らかな低下を示しており、低下率は約11.72%~9.26%となった。
【0134】
これにより、本発明によって提供されるγ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物は、肉豚の生産能力を効果的に改善することができることが分かった。
【0135】
[実施例4]
γ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物の肉用鶏の生産能力への影響
本試験は、単一因子ランダム設計を採用した。同様の体重の平均体重50gの黄色い羽の肉用鶏(中国語で、三黄羽肉鶏と呼ばれる。)360羽をランダムに3つの処置群に分けた。1つの処置群当たりのレプリケート数は6とし、1レプリケートに20羽の黄色い羽の肉用鶏を使用した。雌と雄の数は同数とした。試験の前に、鶏舎及び調理器具を滅菌した。試験期間中、肉用鶏は、同じ鶏舎及び同じ飼育条件下で飼育された。基礎食は主にとうもろこし-大豆粕であり、全体の飼育期間において、他の抗酸化成分や成長促進剤を追加しなかった。各試験群は、対照群(群I)及び試験群II~IIIを含む。対照群には基礎食のみを与え、試験群II~IIIには、基礎食に基づいて600ppmの異なるγ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物を補給した食餌を与えた。群分けを表2に示している。
【0136】
試験期間は20日とし、試験鶏は、自由に飲んだり食べたり、1日2回給餌された。1レプリケートを単位とし、21日齢で体重を測定し(水を止めずに飼料を12時間止め)、試験鶏の飼料消費量を統計し、各試験鶏の1日平均飼料摂取量(ADFI、g/d*羽)、1日平均増体重(ADG、g/d*羽)、及び飼料要求率(FCR)を計算した。
飼料要求率(FCR)=1日平均飼料摂取量/1日平均増体重
【0137】
試験結果は、表2に示される。
【表2】
【0138】
表2の結果から分かるように、試験サンプルは試験肉用鶏の飼料摂取量に影響を与えなかった。各試験群の1日平均増体重及び飼料要求率から分かるように、対照群と比較して、本発明のγ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物を添加した試験群は、試験肉用鶏の増体重及び飼料要求率に対して明らかな改善効果を持ち、飼料要求率の低下率は5.86%~6.64%となった。
【0139】
これにより、本発明によって提供されるγ-第四級アンモニウム酪酸エステル化合物は、肉用鶏の生産能力を効果的に改善することができることが分かった。
【0140】
上述した実施例の各技術的特徴は任意に組み合わせることができる。記述の簡潔化のために、上述した実施例における各技術的特徴のあらゆる組合せについて説明していないが、これらの技術的特徴の組合せは矛盾しない限り、本明細書に記述されている範囲内であると考えられるべきである。
【0141】
上述した実施例は、本発明のいくつかの実施形態を示したものにすぎず、その記述が具体的且つ詳細であるが、特許請求の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。なお、当業者にとって、本発明の趣旨から逸脱しない限り、若干の変形及び改良を行うことができ、これらもすべて本発明の保護範囲内に含まれる。したがって、本発明の保護範囲は、特許請求の範囲に準ずるべきである。