(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-30
(45)【発行日】2023-07-10
(54)【発明の名称】ケラチン繊維の染色方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/46 20060101AFI20230703BHJP
A61Q 5/06 20060101ALI20230703BHJP
【FI】
A61K8/46
A61Q5/06
(21)【出願番号】P 2019090611
(22)【出願日】2019-05-13
【審査請求日】2022-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】595082283
【氏名又は名称】株式会社アリミノ
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 章雅
【審査官】伊藤 真明
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-046614(JP,A)
【文献】特開2003-073238(JP,A)
【文献】特開2002-087934(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
D06P 1/00- 7/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性染料を用いてケラチン繊維を染色する工程(A)、および
前記工程(A)の後、酸性染料を用いて染色されたケラチン繊維を、緑色204号を
0.20~1.00質量%含有する、pHが1.0~4.0である製剤を用いて染色する工程(B)を含む、
ケラチン繊維の染色方法。
【請求項2】
前記工程(B)の
1分前~2時間前に、
酸性染料を用いてケラチン繊維を染色する工程(A)を行う
、請求項
1に記載の染色方法。
【請求項3】
前記工程(A)で用いる
酸性染料が、
赤色227号、橙色205号、紫色401号、および黒色401号から選ばれる少なくとも1種である
、請求項
1または2に記載の染色方法。
【請求項4】
前記ケラチン繊維が毛髪である、請求項1~
3のいずれか一項に記載の染色方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケラチン繊維の染色方法に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪などのケラチン繊維に対して用いられる、蛍光物質を含有する染毛料組成物や染毛剤組成物等が、多く報告されている。(例えば、特許文献1~4参照。)
例えば、特許文献1において、(A)群および(B)群の酸性染料を含む染毛料組成物により染毛することで、染毛した後の洗髪時に色落ちが少なくなることが報告されている。特許文献1では、(A)群が、緑色204号、赤色230号および黄色202号から選ばれる1種または2種以上の酸性染料であり、(B)群がその他の酸性染料であることが、開示されている。
【0003】
また、特許文献2において、蛍光増白染料および直接染料を含有する染毛剤組成物により毛髪を染色することで、染色後の毛髪が明るく、かつあざやかになる発明が報告されている。
【0004】
蛍光物質を含有する染毛料組成物や染毛剤組成物を用いて毛髪を染色することは、従来から行われており、各目的に応じて様々な、組成物、方法が提案されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-073238号公報
【文献】特開2001-294519号公報
【文献】特開平09-183714号公報
【文献】特表2001-516706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、305nm~400nmの波長の光(以下、ブラックライトとも言う。)を当てることで蛍光を発する毛髪が、ファッション業界、音楽業界等の業界の一部で求められていた。
このような要求に答えることが可能な技術として、蛍光物質を含有する染毛剤組成物等で毛髪を染色することが提案されている。ブラックライトを当てると蛍光色を発する染毛剤組成物等は存在するものの、従来技術において、毛髪に対して使用可能であり蛍光色を発する染料は、黄色や赤色等に限られ、ブラックライト非照射時における染色後の毛髪の色調が限られており、また、ブラックライトを照射した際の蛍光色の強さもまちまちであり、未だ改善が望まれていた。
【0007】
したがって本発明は、ブラックライト非照射時における染色後のケラチン繊維の色調を任意に制御することが可能であり、かつブラックライト照射時における染色後のケラチン繊維は強い蛍光を発することができる染色方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者が鋭意研究を行った結果、染料を用いて染色されたケラチン繊維を、特定の蛍光物質を特定の量以上含有する、特定の範囲のpHの製剤を用いて染色する工程を有するケラチン繊維の染色方法は、該方法を行うことにより、ブラックライト非照射時における染色後のケラチン繊維の色調を任意に制御することが可能であり、かつブラックライト照射時における染色後のケラチン繊維は強い蛍光を発することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は例えば以下の通りである。
[1] 染料を用いて染色されたケラチン繊維を、緑色204号を0.05質量%以上含有する、pHが1.0~4.0である製剤を用いて染色する工程(B)を含む、ケラチン繊維の染色方法。
[2] 前記製剤が、緑色204号を0.05~1質量%含有する、[1]に記載の染色方法。
[3] 前記染料を用いて染色されたケラチン繊維が、酸性染料、塩基性染料、HC染料、ニトロ染料および酸化染料から選ばれる少なくとも1種の染料を用いて染色されたケラチン繊維である、[1]または[2]に記載の染色方法。
[4] 前記染料を用いて染色されたケラチン繊維が、酸性染料を用いて染色されたケラチン繊維である、[1]または[2]のいずれかに記載の染色方法。
[5] 前記工程(B)の前に、染料を用いてケラチン繊維を染色する工程(A)を行う[1]~[4]のいずれかに記載の染色方法。
[6] 前記工程(A)で用いる染料が、酸性染料、塩基性染料、HC染料、ニトロ染料および酸化染料から選ばれる少なくとも1種である[5]に記載の染色方法。
[7] 前記工程(A)で用いる染料が、酸性染料である[5]に記載の染色方法。
[8] 前記ケラチン繊維が毛髪である、[1]~[7]のいずれかに記載の染色方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の染色方法は、ケラチン繊維に対する染色方法であり、ブラックライト非照射時における染色後のケラチン繊維の色調を任意に制御することが可能であり、かつブラックライト照射時における染色後のケラチン繊維は強い蛍光を発することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、染料を用いて染色されたケラチン繊維を、緑色204号を0.05質量%以上含有する、pHが1.0~4.0である製剤を用いて染色する工程(B)を含む、ケラチン繊維の染色方法である。
【0012】
以下、本発明の染色方法における工程(B)が行われる対象である染料を用いて染色されたケラチン繊維を説明した後、各工程について説明する。
【0013】
<染料を用いて染色されたケラチン繊維>
本発明では、染料を用いて染色されたケラチン繊維が、工程(B)において、後述の製剤により染色される。
ケラチン繊維とは、ケラチンタンパクを含む繊維のことを指す。具体的には、毛髪、ヤギ毛、羊毛、犬毛、猫毛が挙げられ、毛髪には、毛髪が使われたウィッグ、エクステンションなども含む。ケラチン繊維としては、好ましくはヤギ毛および毛髪、より好ましくは毛髪である。
【0014】
工程(B)に供される、染料を用いて染色されたケラチン繊維とは、工程(B)の前に、染料を用いてケラチン繊維を染色することにより得られる繊維を指す。染料を用いて染色されたケラチン繊維としては、酸性染料、塩基性染料、HC染料、ニトロ染料および酸化染料から選ばれる少なくとも1種の染料を用いて染色されたケラチン繊維であることが好ましく、工程(B)を行った際に色味の変化が少ないため、酸性染料を用いて染色されたケラチン繊維であることがより好ましい。染料としては、後述の≪染料≫の項で記載した染料を用いることができる。染料を用いて染色されたケラチン繊維としては、1種の染料を用いて染色されたケラチン繊維でも、2種以上の染料を用いて染色されたケラチン繊維でもよい。また、染料を用いて染色されたケラチン繊維は、染料を用いて1回染色されたケラチン繊維でも、2回以上染色されたケラチン繊維であってもよい。染色が2回以上行われる場合には、各回で用いられる染料は同一でも異なっていてもよい。本発明では、工程(B)を行う対象であるケラチン繊維が、すでに染料を用いて染色されているため、該染料に起因する所望の色調を、本発明の染色方法を行ったケラチン繊維に付与することができる。
【0015】
染料を用いて染色されたケラチン繊維は、工程(B)の前に、他者(工程(B)を行う者以外の者)により染色されたものでも、自身(工程(B)を行う者)により染色されたものでもよく、特に限定はない。また、工程(B)の前に行われる、染料を用いた染色は、工程(B)の前であればよく、直前(例えば数分~数時間前)でもよく、それより前(例えば1日~数ヶ月前)であってもよい。染料を用いて染色されたケラチン繊維としては、例えば、工程(B)の1分前~1週間前に染色されることが好ましく、1分前~2時間前に染色されることがより好ましい。
染料を用いて染色されたケラチン繊維は、例えば、下記工程(A)により得ることができる。
【0016】
<工程(A)>
本発明におけるケラチン繊維の染色方法は、後述する工程(B)の前に、染料を用いてケラチン繊維を染色する工程(A)を行ってもよい。工程(A)で用いる染料が、酸性染料、塩基性染料、HC染料、ニトロ染料および酸化染料から選ばれる少なくとも1種であることが好ましく、酸性染料であることがより好ましい。
【0017】
≪染料≫
工程(A)で用いる染料は、酸性染料、塩基性染料、HC染料、ニトロ染料または酸化染料が好ましく、1種単独で用いてもよいし2種以上を併用してもよい。工程(B)を行った際に色味の変化が少なく、その後の色落ちの性質が近いという点から酸性染料を含むのがより好ましい。
【0018】
酸性染料としては例えば、緑色204号以外の染料である赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号(1)、赤色105号(1)、赤色106号、赤色201号、赤色213号、赤色227号、赤色230号(1)、赤色230号(2)、赤色231号、赤色232号、赤色401号、赤色502号、赤色503号、赤色504号、赤色506号、橙色205号、橙色207号、橙色402号、黄色4号、黄色5号、黄色202号(1)、黄色202号(2)、黄色203号、黄色402号、黄色403号(1)、黄色406号、黄色407号、青色1号、青色2号、青色202号、青色203号、青色205号、緑色3号、緑色201号、緑色205号、緑色401号、緑色402号、褐色201号、黒色401号、紫色401号を用いることができる。工程(A)において、染料を1種のみ用いる場合には、緑色204号は通常用いない。ただし、工程(A)において、染料を2種以上用いる場合には、染料の1種として緑色204号を用いてもよい。
【0019】
塩基性染料としては例えば、赤色213号、赤色214号、塩基性青7、塩基性青9、塩基性青26、塩基性青75、塩基性青99、塩基性赤2、塩基性赤22、塩基性赤51、塩基性赤76、塩基性黄57、塩基性黄87、塩基性橙31、塩基性茶16、塩基性茶17、塩基性紫3、塩基性紫4、塩基性紫14を用いることができる。
【0020】
HC染料としては例えば、HC青2、HC青6、HC青7、HC青8、HC橙1、HC橙2、HC橙3、HC赤1、HC赤3、HC赤7、HC赤10、HC赤13、HC赤14、HC紫1、HC紫2、HC黄2、HC黄4、HC黄5、HC黄6、1-アミノ-2-メチル-6-ニトロベンゼン、1-アミノ-2-メチル-4-メチルアミノベンゼン、4-(2-ヒドロキシエチル)アミノ-3-ニトロ-メチルベンゼン、1-ビス(β-ヒドロキシエチル)アミノ-3-ニトロ-4-アミノ、1-アミノ-2-ベンゼン(β-ヒドロキシプロピルアミノ)ベンゼン、1-ヒドロキシ-3-ニトロ-4-(3-ヒドトキシプロピルアミノ)ベンゼン、4-ヒドロキシプロピルアミノ-3-ニトロフェノールを用いることができる。
【0021】
ニトロ染料としては例えば、4-ニトロ-o-フェニレンジアミン、2-ニトロ-p-フェニレンジアミン、2-アミノ-4-ニトロフェノール、2-アミノ-5-ニトロフェノール、ピクラミン酸、ピクリン酸、およびそれらの塩類を用いることができる。なお、塩類としては例えば塩酸塩または硫酸塩等が挙げられる。
【0022】
酸化染料としては例えば、p-フェニレンジアミン、トルエン-2,5-ジアミン、p-アミノフェノール、2,2’-[(4-アミノフェニル)イミノ]ビスエタノール、p-メチルアミノフェノール、2-クロロ-p-フェニレンジアミン、N-フェニル-p-フェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルアミン、o-アミノフェノール、2-ヒドロキシエチル-p-フェニレンジアミン、2-アミノ-4-ヒドロキシエチルアミノアニソール、2,4-ジアミノフェノール、レゾルシン、5-アミノ-o-クレゾール、2,4-ジアミノフェノキシエタノール、m-アミノフェノール、5-(2-ヒドロキシエチルアミノ)-2-メチルフェノール、m-フェニレンジアミン、α-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、カテコール、ピロガロール、フログルシン、没食子酸、ハイドロキノン、トルエン-3,4-ジアミン、2,6-ジアミノピリジン、ジフェニルアミン、3,3’-イミノジフェニール、タンニン酸、およびそれらの塩類を用いることができる。なお、塩類としては例えば塩酸塩または硫酸塩等が挙げられる。
染料を用いてケラチン繊維を染色する際には、通常染料は、他の成分と組み合わせて製剤(染毛料、染毛剤)として用いられる。
【0023】
≪染色方法≫
工程(A)においては、通常ケラチン繊維に染料を含む製剤を塗布した後、任意で20℃~50℃で10秒~30分放置することにより染色を行うことができる。ケラチン繊維に染料を浸透させやすいことから、染料を塗布させた後、好ましくは20~50℃で5~30分、より好ましくは1剤式の場合45℃で10分以上、2剤式の場合25℃で20分間放置するとよい。工程(A)で用いられる製剤の量としては、ケラチン繊維に均一に塗布させることができればよく、特に限定はないが、例えばケラチン繊維1gに対し、製剤を好ましくは0.2~5g、より好ましくは0.5~3g用いて、均一に塗布させる。
【0024】
工程(A)では、1種の染料を用いても、2種以上の染料を用いてもよい。また、工程(A)は、1回行っても、2回以上行ってもよい。工程(A)が2回以上行われる場合には、各工程(A)で用いられる染料は同一でも異なっていてもよい。
【0025】
≪その他の成分≫
工程(A)で用いられる製剤は、染料以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば、油性成分類(炭化水素類、油脂類、ロウ類、高級アルコール類、高級脂肪酸類、エステル類)、増粘剤、浸透剤、保湿剤、界面活性剤(アニオン性界面活性剤類、カチオン性界面活性剤類、ノニオン性界面活性剤類、両性界面活性剤類)、シリコーン類、キレート剤、酸化防止剤、安定化剤、pH調整剤、保護剤、溶剤、消炎剤、香料、防腐剤、紫外線吸収剤、噴射剤、植物抽出物、生薬抽出物、ビタミン、樹脂およびイオン交換水が挙げられ、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0026】
≪剤型≫
工程(A)で用いられる製剤の剤型としては、例えば、クリーム状、ジェル状、液状、ミルク状、泡状およびローション状が挙げられ、具体的には、クリーム状またはジェル状を用いることができる。
【0027】
<工程(B)>
本発明におけるケラチン繊維の染色方法は、染料を用いて染色されたケラチン繊維を、緑色204号を0.05質量%以上含有する、pHが1.0~4.0である製剤を用いて染色する工程(B)を含む。
【0028】
工程(B)で用いられる製剤の量としては、ケラチン繊維に均一に塗布させることができればよく、特に限定はないが、例えばケラチン繊維1gに対し、製剤を好ましくは0.2~5g、より好ましくは0.5~3g用いて、均一に塗布させる。
【0029】
≪製剤≫
本発明において用いられる製剤は、染料として緑色204号を0.05質量%以上含有し、好ましくは0.05~1質量%含有する。なお緑色204号は、ピラニンまたは8-ヒドロキシピレン-1,3,6-トリススルホン酸トリナトリウムとも言われ、化学式はC16H7Na3O10S3である。
【0030】
工程(B)で用いられる製剤は、緑色204号以外にも、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を通常含む。その他の成分としては、例えば、油性成分類(炭化水素類、油脂類、ロウ類、高級アルコール類、高級脂肪酸類、エステル類)、増粘剤、浸透剤、保湿剤、界面活性剤(アニオン性界面活性剤類、カチオン性界面活性剤類、ノニオン性界面活性剤類、両性界面活性剤類)、シリコーン類、キレート剤、酸化防止剤、安定化剤、pH調整剤、保護剤、溶剤、消炎剤、香料、防腐剤、紫外線吸収剤、噴射剤、植物抽出物、生薬抽出物、ビタミン、樹脂、およびイオン交換水が挙げられ、1種単独で用いても、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0031】
≪染色方法≫
本発明のケラチン繊維の染色方法は、緑色204号を0.05質量%以上含有する、pHが1.0~4.0である製剤を用いて染色する工程(B)を含む。
【0032】
染料をケラチン繊維に付着させる方法としては、調製した試料にケラチン繊維を浸漬する方法か、もしくはケラチン繊維に製剤を直接塗布させる方法があり、その後、任意で20℃~50℃で10秒~30分放置することができる。ケラチン繊維に染料を浸透させやすいことから、好ましくは調製した試料にケラチン繊維を浸漬させた後、20~50℃で15~30分、より好ましくは45℃で15分放置するとよい。
【0033】
≪剤型≫
工程(B)で用いられる製剤の剤型としては、例えば、液状、ミルク状、クリーム状、ジェル状およびローション状が挙げられ、好ましくはジェル状およびクリーム状である。また、液体化したものを噴射剤とともに用いることにより、スプレー用組成物としてケラチン繊維に塗布してもよい。
【0034】
<用途>
本発明のケラチン繊維の染色方法は、ケラチン繊維全体、またはケラチン繊維の所定の部分に対して行うことができる。例えば、ケラチン繊維を使ったウィッグの全体または一部に対して行うことや、頭髪の全体またはその一部に対して行うことができる。
【実施例】
【0035】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0036】
<試料の調製>
下記表1~表5に示す処方で各成分を混合することにより試料を調製した。処方A-1~A-9は後述する工程(A)において用いた試料の処方であり、処方B-1~B-4は後述する工程(B)において用いた試料の処方である。なお、処方A-1~処方A-9および処方B-1~処方B-4にしたがって調製することにより得られた試料(製剤)を、それぞれ試料A-1~A-9および試料B-1~B-4とする。表中の処方の数値は、各試料を100質量%とした場合の、各成分の質量%を表している。
【0037】
なお、表1および表2の各成分は、以下の市販品を用いた。
<染料>
・赤色227号:「赤色227号」(癸巳化成株式会社)
・橙色205号:「だいだい色205号」(癸巳化成株式会社)
・黒色401号:「精製黒色401号」(癸巳化成株式会社)
・紫色401号:「精製紫色401号」(癸巳化成株式会社)
・塩基性青75:「AHC BLUE SP」(保土谷化学工業株式会社)
・塩基性赤51:「AHC RED SP」(保土谷化学工業株式会社)
・HC青2:「TMブルーNO.2」(癸巳化成株式会社)
・4-ヒドロキシプロピルアミノ-3-ニトロフェノール:「TMレッドNO.2」(癸巳化成株式会社)
・p-フェニレンジアミン:「パラフェニレンジアミン」(三井化学)
・p-アミノフェノール:「パラアミノフェノール」(三井化学)
・5-アミノ-o-クレゾール:「5-アミノオルトクレゾール」(三井化学)
・塩酸2,4ジアミノフェノキシエタノール:「塩酸2,4ジアミノフェノキシエタノール」(三井化学)
・緑色204号:「緑色204号」(癸巳化成株式会社)
<界面活性剤>
・塩化ステアリルトリメチルアンモニウム:「カチナールSTC-70ET」(東邦化学)
・ポリオキシエチレンセチルエーテル:「ニッコールBC-30」(日光ケミカルズ株式会社)
<基材・溶剤>
・セトステアリルアルコール:「カルコール6850」(花王株式会社)
・エタノール:「95%エタノール」(日本合成アルコール株式会社)
・流動パラフィン:「ハイコールM-352」(カネダ株式会社)
・ポリエチレングリコール:「PEG400」(三洋化成)
<pH調整剤>
・90%乳酸:「発酵乳酸90%」(ピューラック社)
・60%乳酸Na:「発酵乳酸NAS/HQ60」(ピューラック社)
・28%アンモニア水:「28%アンモニア水」(大盛化工)
・89%リン酸:「89%リン酸」(日本化学工業)
<増粘剤>
・(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー:「セピノブEMT-10」(SEPPIC社)
<浸透剤>
・ベンジルアルコール:「ベンジルアルコール」(東京応化工業株式会社)
<酸化防止剤>
・亜硫酸ナトリウム:「亜硫酸ナトリウム」(大東化学)
<キレート剤>
・EDTA-4Na:「SD-2DS」(中部キレスト)
<酸化剤>
・35%過酸化水素水:「35%過酸化水素水」:(東海電化)
<安定化剤>
・フェナセチン:「フェナセチン」(山本化学工業)
【0038】
【0039】
【0040】
【0041】
【0042】
【0043】
<処理方法1>
[実施例1~18、比較例1~6]
[A工程]
各試料A-1~A-6を10cmのヤギ毛1gの毛束(ビューラックス製)に対し2g塗布し、45℃の恒温層で15分放置した。
充分に水洗し、10%のPOE(3)ラウリルエーテル硫酸塩水溶液にて洗浄後、充分にすすいだ。
[B工程]
タオルで軽く水気を取ったのち、試料B-1~B-4に浸漬させ、45℃の恒温層で15分放置した。
充分に水洗し、10%のPOE(3)ラウリルエーテル硫酸塩水溶液にて洗浄後、充分にすすぎ、ドライヤーにて乾燥させた。
染色されたヤギ毛の毛束の色を目視で観察し、下記の基準に従って評価した。表6および表8に評価結果を示す。
【0044】
<処理方法2>
[実施例19~24、比較例7、8]
[A工程]
各試料A-7またはA-8と試料A-9とをそれぞれ1:1の混合比(質量比)でよく混合し、その混合物を10cmのヤギ毛1gの毛束に対し2g塗布し、25℃で30分放置した。
充分に水洗し、10%のPOE(3)ラウリルエーテル硫酸塩水溶液にて洗浄後、充分にすすいだ。
[B工程]
タオルで軽く水気を取ったのち、試料B-1~B-4に浸漬させ、45℃の恒温層で15分放置した。
充分に水洗し、10%のPOE(3)ラウリルエーテル硫酸塩水溶液にて洗浄後、充分にすすぎ、ドライヤーにて乾燥させた。
染色されたヤギ毛の毛束の色を目視で観察し、下記の基準に従って評価した。表7および表9に評価結果を示す。
【0045】
[判定基準]
必須評価項目1.ブラックライト下での蛍光の強さ
◎ 強い蛍光を発する。
〇 蛍光を発する。
× 蛍光は感じられない。
任意評価項目2.B工程による変色度合い
◎ B工程前とほぼ同じ色。
〇 B工程前からあまり色が変わっていない。
△ B工程前とやや色が異なる。
× B工程前とは明らかに色が異なる。
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
本発明における必須の評価項目としては、「ブラックライト下での蛍光の強さ」であり、判定基準が○または◎であれば、実施例としている。
なお、任意の評価項目としては、「B工程による変色度合い」であるが、前記「ブラックライト下での蛍光の強さ」の評価が○または◎であれば、当該任意の評価項目の判定に関わらず実施例として分類した。
【0051】
本発明の比較例1~8において染色された毛髪は、B工程においてすべて、緑色204号の含有量が低い試料B-4が用いられており、ブラックライト下での蛍光の強さの判定が、実施例と比べて劣る結果となった。